説明

3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの高純度の塩基

【課題】3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの高純度の塩基、その製造および特に経皮および経粘膜投与のための薬剤としてのその使用を提供する。
【解決手段】一般式(I)


[式中、Aはジュウテリウムまたは水素であり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物は97質量%を超える純度を有する遊離塩基として存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの高純度の塩基、その製造および特に経皮および経粘膜投与のための薬剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去50年に全人口の高齢者の割合は著しく増加した。この群では膀胱機能障害が最も頻繁な老人性疾患に属する。従って膀胱疾患のできる限り効果的な、かつ保護的な治療の開発がますます大きな、および特別な意味を持つ。
【0003】
切迫失禁の場合、膀胱筋の欠陥機能において障害が存在する。その際、原因はしばしばムスカリン受容体の刺激または機能亢進である。この理由から機能亢進性膀胱およびこれと結びついた症状、たとえば高められた尿意、失禁、頻尿症または夜間頻尿症の治療のために有利には抗ムスカリン作用物質であるトルテロジンおよびオキシブチニンが使用される。
【0004】
オキシブチニンは効果的な抗ムスカリン作用物質であるが、しかしこれは著しい副作用を有する。特に多くの患者により顕著な口内乾燥はきわめて不快であると受け取られている。
【0005】
トルテロジンはオキシブチニンに対して低いムスカリン副作用率の利点を有するようである。トルテロジンは有機体中で主としてシトクロムP450−イソ酵素2D6を経由して活性な主代謝産物である2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールへと、ならびに徐々に、シトクロムP450イソ酵素3A4により不活性な代謝産物へと脱アルキル化される。
【0006】
トルテロジンはもっぱらp450−イソ酵素により代謝されるので、その他の作用物質との、たとえばワルファリン(Colucci、Annals of Pharmacotherapy 33、1999、1173)、抗真菌剤、たとえばケトコナゾール(Brynne、Br J Clin Pharmacol 48、1999、564)、マクロライド抗生物質またはプロテアーゼ阻害剤の分解と相互作用する潜在的な危険が生じる。この危険性は特に、2D6を欠いている、いわゆるスロー・メタボライザー(Langsam-Metabolisierer)の場合に生じ、トルテロジンはもっぱら3A4を経由して代謝され、かつ明らかに高いトルテロジン濃度を血漿中に有する。
【0007】
WO99/58478はムスカリン作用物質として3,3−ジフェニルプロピルアミンの新規の誘導体を記載している。開示されている3,3−ジフェニルプロピルアミン誘導体は2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールのプロドラッグであり、かつ生物膜を通過して浸透する際に、ならびに血漿中でエステラーゼにより加水分解される。このことにより2D6依存性の分解メカニズムが展開される。
【0008】
従ってこのような3,3−ジフェニルプロピルアミン誘導体、たとえば2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(INN:フェソテロジン)はトルテロジンに対してスロー・メタボライザーの場合でも蓄積されず、P450誘導物質/阻害物質の妨げとはならず、かつ潜在的な作用物質相互作用および作用物質蓄積に関して有利な安全性プロファイルを有する。
【0009】
従って、患者集団にWO99/58478に記載されている3,3−ジフェニルプロピルアミン誘導体の利点、特にフェソテロジンの利点を提供するという必要性が生じた。まさにトルテロジンの代謝経路およびオキシブチニンの欠点(口内乾燥)が、前記の両方の物質の欠点を有していない薬剤のための医学的な必要性を明らかにした。
【0010】
WO99/58478に開示されている3,3−ジフェニルプロピルアミンの塩基は、2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェノールを塩基性条件下で適切な酸塩化物、たとえば塩化イソ酪酸と反応させることにより製造される(WO99/58478の実施例3aaを参照のこと)。
【0011】
しかし残念ながらこの反応は所望の主生成物(B)約90%から最大で約94%を生じるのみである。生成物は規則的に、使用されるアシル化試薬の出発物質(A)の不純物を6〜10%含有し、ならびに不所望の反応生成物を4−ヒドロキシ基のモノエステル(D)の相応するジエステル(C)の形で(図1を参照のこと)、ならびに二量化/重合により含有する。
【0012】
合成反応を、たとえばアシル化試薬の量を変更するか、かつ/またはアシル化条件(温度、溶剤、濃度、添加の順序など)を変更することにより、より選択的にするという本特許出願の発明者らの試みは、所望の結果にはつながらなかった。
【0013】
高純度の塩基を医薬の目的のために必要とされる量で、従来の方法により生じた生成物混合物から精製するという包括的な試みもまた成果は得られなかった。
【0014】
結晶化による精製は問題にならない。というのも、一般式Iの塩基、たとえばフェソテロジンはEP1077912に記載されている製造法によれば粘性の油状物として存在しており、かつ生成物混合物からこれまで結晶化することができなかったからである。
【0015】
蒸留による精製の試みもまた所望の結果につながらなかった。
【0016】
しかしわずか90〜96質量%の純度は医薬製剤のために満足のいくものではない。むしろ通常は97質量%を上回る純度が有利である。従って3,3−ジフェニルプロピルアミンの高純度の遊離塩基に対する要求が生じた。
【0017】
WO01/35957は、3,3−ジフェニルプロピルアミン誘導体の安定した結晶質の塩を教示しており、これは非晶質の塩に対してより高い安定性および純度の利点を有する。
【0018】
このような塩は基本的に治療のための投与のために適切であり、かつたとえば経口または非経口による治療のために使用することができる。
【0019】
しかし作用物質の塩は多くの場合、たとえば経皮または経粘膜による適用のためのいくつかの適用にとって、あまり適切ではない。というのも、そのイオン化された形は、治療のために有効な量での皮膚または粘膜の通過を妨げるからである。従って経皮または経粘膜投与が所望される場合、しばしばアミノ含有作用物質を塩基の形で投与しなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO99/58478
【特許文献2】EP1077912
【特許文献3】WO01/35957
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Colucci、Annals of Pharmacotherapy 33、1999、1173
【非特許文献2】Brynne、Br J Clin Pharmacol 48、1999、564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って本発明の課題は、従来技術の欠点を有していない3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの高純度の塩基、その製造および特に経皮および経粘膜投与のための薬剤としてのその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
ところで意外なことに、遊離塩基を適切な反応試薬により高純度の結晶質の塩から遊離することにより遊離塩基を製造する場合に、一般式I(以下を参照のこと)の遊離塩基は規則的に97質量%を上回る、有利には98質量%を上回る、特に有利には98.5質量%を上回る、およびとりわけ有利には99質量%を上回る純度で、および80%(モル%)を上回り、通常は90%上回る良好な収率で取得することができることが判明した。
【0024】
従って本発明の対象は、式I
【化1】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物の遊離塩基であり、該遊離塩基が97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在することを特徴とする。
【0025】
有利な1実施態様ではRはメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチル、ヘキシル、C〜Cシクロアルキルまたはフェニルの群から選択される。
【0026】
特に有利な実施態様では、Rはイソプロピル(i−Pr)であり、従って化合物は2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(フェソテロジンの塩基)である。
【0027】
本発明の実施態様では一般式Iの化合物はラセミ体として、つまり(R)および(S)立体配置の分子の混合物として存在する。
【0028】
もう1つの有利な実施態様では、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)形で存在し、その際、有利には化合物の98質量%より多くが、特に有利には化合物の99質量%より多くが、およびとりわけ有利には化合物の99.5質量%より多くが(R)立体配置で存在する。
【0029】
とりわけ有利な実施態様では、化合物は(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(フェソテロジンの塩基)の高純度の遊離塩基であり、97質量%を上回る、有利には98質量%を上回る、特に有利には98.5質量%を上回る、およびとりわけ有利には99質量%を上回る純度を有する。
【0030】
"Cアルキル"という表現は、本出願において1〜6のC原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基であると理解される。有利なCアルキルは非置換の直鎖状もしくは分枝鎖状の基であり、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択される。
【0031】
"C10シクロアルキル"という表現は、3〜10の炭素原子を有する環式の炭化水素であると理解される。
【0032】
"高純度"という表現は、本出願では、少なくとも97質量%を上回り、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、およびとりわけ有利には99質量%を上回る一般式Iのモノエステルの純度であると理解される。つまり相応してわずかな割合のジエステル、ジヒドロキシ化合物、4−モノエステルまたはポリマーが存在する。この場合、純度は方法の部で記載されるとおりに測定される。
【0033】
"遊離塩基"という表現は、一般式Iの化合物の10質量%未満、有利には5質量%または3質量%未満、特に有利には1質量%未満が塩の形で存在していることを意味する。その際、塩含有率は方法の部に記載されるとおりに測定される。
【0034】
本発明による一般式Iの高純度の塩基は、一般式II
【化2】

[式中、AおよびRは上記の意味を有し、Xは生理学的に認容性の酸の酸基であり、かつ"*"(星印)で標識されたC原子は(R)立体配置、(S)立体配置またはこれらの混合物として存在していてよい]の高純度の結晶質の塩から該塩基を遊離することにより製造される。
【0035】
この場合、酸基Xとして特に以下に挙げる酸のアニオンが考えられる:
塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、DL−リンゴ酸、L−(−)−リンゴ酸、D−(+)−リンゴ酸、DL−酒石酸、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、クエン酸、L−アスパラギン酸、L−(+)−アスコルビン酸、D−(+)−グルクロン酸、2−オキソプロピオン酸(ピロ酒石酸)、フラン−2−カルボン酸(ピロムチン酸)、安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、バニリン酸、4−ヒドロキシケイ皮酸、没食子酸、馬尿酸(N−ベンゾイル−グリシン)、アセツル酸(N−アセチルグリシン)、フロレチン酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸)、フタル酸、メタンスルホン酸またはオロト酸、この場合、酸アニオンであるフマル酸水素イオンおよび塩酸イオンが特に有利である。
【0036】
これらの一般式IIの高純度の化合物から適切な塩基性試薬("遊離試薬")の添加により相応する高純度の遊離塩基が遊離する。
【0037】
遊離試薬はたとえば
− 水酸化物、炭酸塩およびアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウムの炭酸水素塩、
− アミン、ポリアミンおよび塩基性のポリアミノ酸、これらは溶液であっても、担体上に固定されて存在していてもよい、
− 塩基性イオン交換体
の群からのアルカリ性化合物であり、その際、8〜11のpKを有する弱アルカリ性の化合物が有利である。
【0038】
遊離試薬として、その都度の溶剤中で3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの塩基の沈殿を防止する試薬が有利である。更にエステル結合の加水分解が回避されるべきである。
【0039】
水性の環境でたとえば式IIの化合物と炭酸水素塩との反応は、まず中間生成物として3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの水溶性の炭酸水素塩の形成につながる。有機溶剤、たとえばジクロロメタンを用いて振とうすると、COが抜け、かつ難水溶性の3,3−ジフェニルプロピルアミンモノエステルの遊離塩基をそれ以上精製することなく高純度の油状物として有機相から取得することができる。
【0040】
この方法実施により、結果としてわずかな純度および/またはわずかな収率を生じうる、3,3−ジフェニルモノエステルの塩基が直接遊離の後で沈殿するということが防止される。エステル結合の加水分解も回避される。
【0041】
一般式Iの化合物の炭酸水素塩、特にフェソテロジンの炭酸水素塩は有利な中間生成物として明らかに本発明の対象となる。
【0042】
従って遊離試薬としてアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニウムの炭酸水素塩が特に有利であり、その際、炭酸水素ナトリウムがとりわけ有利である。
【0043】
従って有利な製造方法ではまず式IIの塩を水中にとり、かつ塩基性の遊離試薬、たとえば炭酸水素塩を添加する。次いで適切な溶剤と共に振とうし、かつ式Iの高純度の塩基が粘性の油状物として残留するまで有機相を濃縮する。このような方法を実施例1Cで詳細に記載する。
【0044】
遊離塩基の精製のために適切な溶剤は特にジクロロメタン、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルアセテート、エチルメチルケトンならびにトルエンであり、その際、ジクロロメタンが特に有利である。
【0045】
代替的な製造法では、式IIの高純度の塩を適切な溶剤中にとり、かつ次いで、たとえば固定化されたイオン交換体を含む担体上に導入する。溶出液はこの場合、一般式Iの高純度の塩基を含有する。
【0046】
特に有利には(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートの高純度の塩基を製造するために、出発化合物として(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアンモニオ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートのフマル酸水素塩を使用する。
【0047】
従って本発明の対象は、一般式I
【化3】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]高純度の遊離塩基を、少なくとも97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%およびとりわけ有利には99質量%を上回る純度で製造するための方法であり、この方法は、97質量%の純度、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度を有する一般式II
【化4】

[式中、AおよびRは上記の意味を有し、かつXは生理学的に認容性の酸の酸基であり、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の結晶質の塩から、一般式Iの高純度の遊離塩基を遊離することを特徴とする。
【0048】
有利には、"*"で標識したC原子が(R)立体配置で存在し、かつ/または置換基Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択されている一般式Iの高純度の塩基を製造するために本発明による製造方法を使用する。
【0049】
特に有利には、(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートの高純度の遊離塩基を製造するために本発明による製造方法を使用し、この場合、特に有利には式IIの出発化合物として(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアンモニオ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートフマル酸水素塩を使用する。
【0050】
式IIの高純度の塩の製造はWO01/35957から公知である。このためにまず、塩基性溶液としての2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールの溶液を酸塩化物、たとえば塩化イソ酪酸と反応させる。次いで低い純度を有する得られた塩基に加熱しながら酸、たとえばフマル酸を添加する。一般式IIの生じる塩を適切な溶剤中で晶出させることができる。結晶を改めて溶解し、かつ再結晶させる。
【0051】
この方法を場合により式IIの化合物が所望の純度で得られるまで繰り返すことができる。これらの塩から式Iの高純度の遊離塩基が上記のとおりに得られる。
【0052】
この場合、式Iの高純度の遊離塩基の収率は通常、使用される式IIの3,3−ジフェニルアミノモノエステルの量に対して理論値の90%を超える。
【0053】
第1表は、本発明による方法によるフェソテロジン塩基の精製を示している。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明による一般式Iの純粋な塩基は製造後に油状物の形で存在し、かつ−20℃で安定している。
【0056】
これより高い温度、たとえば2℃〜8℃の場合、本発明による遊離塩基は有利には乾燥剤の存在下で貯蔵する。
【0057】
本発明による方法により初めて、高純度の形の一般式Iの遊離塩基の効率的な製造が可能になる。本方法は基準化することができ、かつ商業的な規模での高純度の化合物の製造を可能にし、かつ初めて一般式Iの高純度の塩基を含有する医薬製剤を提供する。
【0058】
従って本発明のもう1つの対象は一般式I
【化5】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物ならびに薬学的に認容性の少なくとも1の担体を含有する医薬製剤であり、その際、化合物Iの遊離塩基は、97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%およびとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在する。
【0059】
本発明の有利な1実施態様では、本発明による医薬製剤は、Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択されており、その際、Rは特に有利にはイソプロピルであり、かつその際、"*"で標識されたC原子は特に有利には(R)立体配置で存在する一般式Iの化合物を含有する。
【0060】
本発明のとりわけ有利な実施態様では医薬製剤は(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートの遊離塩基(フェソテロジン遊離塩基)を、少なくとも97質量%、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で含有する。
【0061】
本発明による遊離塩基は加水分解に、もしくはエステル交換に敏感であるため、医薬製剤の貯蔵は有利には<25℃、特に有利には<8℃で、かつ乾燥剤の存在下に行うべきである。
【0062】
有利には本発明による遊離塩基は医薬製剤中でわずかに酸性の環境で、つまり3〜7のpHで、有利にはpH3〜6またはpH3〜5で存在する、というのも、この条件下で遊離塩基の安定性が最も高いからである。
【0063】
更に安定性の理由から、医薬製剤が短鎖のCアルコールを含有していない、特にCアルコールを含有していないことが有利である。
【0064】
医薬製剤の形状は特に適用経路ならびにその都度の投与形の所望の特性に依存する。
【0065】
従ってたとえば次のものが可能である:
→経口形:粉末、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、溶液または懸濁液、
→非経口形:液剤または懸濁剤、
→経皮形:経皮吸収治療システム(TTS)、軟膏、クリーム、フィルム、ローション、スプレー、ゲルまたはフォーム、
→経粘膜形:
●バッカルもしくは舌下の形:迅速に放出する錠剤、スプレー、液滴、オブラート状の薬剤ならびに粘膜付着性のペレットもしくは硬膏剤、
●経鼻形:ローション、液滴、スプレー、軟膏、
●肺投与形:エーロゾル。
【0066】
薬学的に認容性の担体物質として基本的に製薬技術の分野で当業者に公知の助剤、たとえばSucker、FuchsおよびSpeiserのPharmazeutische Technologie、Georg Thieme Verlag,Stuttgartおよびその他の、相応する薬剤形について概要を記載した文献に記載されているようなものが考えられる。
【0067】
このような医薬製剤は通例のものであってもよいが、しかし患者の特別な要求に依存して迅速に放出される製剤もしくは遅延製剤として構成されていてもよい。
【0068】
一般式Iの塩基、たとえばフェソテロジンは意外にも、膜透過性であることが判明した。この理由から経皮もしくは経粘膜投与のために適切な医薬製剤が特に提供される。
【0069】
有利には本発明による一般式Iの高純度の医薬製剤は、作用物質を制御して放出する経皮もしくは経粘膜投与のために使用される。この場合、最初のフラッジング期(Anflutungsphase)の後で、少なくとも24時間、有利には少なくとも48時間にわたり、患者の皮膚または粘膜を通過する一定の流出比を保証する医薬製剤が特に有利である。
【0070】
このような、制御される作用物質放出を保証するために、医薬製剤は有利には、その中に一般式Iの高純度の塩基が分散しているか、または溶解している少なくとも1のポリマー層を有する。
【0071】
このようなポリマー層の組成により作用物質の放出挙動に対して影響を与えることができる。従ってたとえばポリマーマトリックス中の作用物質の溶解挙動は経皮/経粘膜吸収治療システムからの作用物質の放出ひいては皮膚もしくは粘膜を通過する流出比を決定的に決定する。
【0072】
さらにポリマー層は、患者の皮膚または粘膜上での医薬組成物の固定を可能にする粘着物質を含有していてもよい。
【0073】
たとえばバッカル製剤は、作用物質が遅延(protahiert)放出される粘膜付着システムとして構成されていてもよい。粘膜への付着のために粘着性ポリマー/コポリマーたとえばPVP、ペクチン、カルボポール、ポリアクリレート、セルロース誘導体、キトサンまたはポリオキシエチレンを使用する。相応する例および概要はたとえばUS6210699;US4855142;US4680323;US5700478;US4948580;US4715369;US4876092;US5750136;Woodley、Clin Pharmacokinet 40、2001、77またはSingla、Drug Dev Ind Pharm 26(2000)913に記載されている。これらの粘着性ポリマー/コポリマーは、たとえば錠剤の接着性外被層として機能することができるが、しかしたとえばバッカル硬膏剤では、作用物質がその中に溶解もしくは分散して存在している接着性ポリマーマトリックスの成分であってもよい(Wong、Int J Pharm. 178、1999、11)。
【0074】
本発明の1実施態様では式Iの高純度の塩基の経皮投与のための医薬製剤は、一般式Iの高純度の塩基がその中に溶解もしくは分散して存在しているポリマー層を少なくとも1つ有するバッカル製剤として、特にバッカル硬膏剤として構成されていてもよい。高純度の塩基を含有するこれらのポリマー層は有利には粘膜付着性を有する。
【0075】
本発明の特に有利な実施態様では、式Iの高純度の塩基の経皮投与のための医薬製剤は経皮硬膏剤として構成されている。
【0076】
経皮硬膏剤(しばしば経皮吸収治療システム、TTSとも呼ばれる)は種々の方法でカテゴリー化することができ、その際しばしば次の3つの主要グループが区別される:
− 作用物質がその中で溶液として、またはゲルとして存在しており、かつ速度を制御する膜を通過して患者の皮膚へ到達するレザバータイプ、
− マトリックスタイプ、これはさらに次のように分類することができる:
→作用物質がその中で非粘着性ポリマーの層(マトリックス)中に存在するラミネートタイプ。TTSは皮膚への固定のための別の層、たとえば接着層を有していてもよいが、しかし別の接着フィルム("オーバーテープ")により皮膚に固定されていてもよい。
→モノリスタイプ、これは作用物質がその中で感圧接着層(接着剤マトリックス)中に存在している。モノリシックTTSの典型的な構造のための1例は、図4に記載されている。例示的なモノリシックTTSは作用物質を含有する接着剤マトリックス(1)、接着剤マトリックスの含有物質に対して不活性であり、かつTTSを施与した後に皮膚とは反対側に存在する非透過性の裏側層(2)ならびにTTSを皮膚上に施与する前に除去される剥離可能な層(3)からなる。
− 皮膚を通過する作用物質流出が、その中で電圧の印加により促進されるイオン導入システム。
【0077】
本発明の意味で特に有利な薬剤はマトリックスタイプのTTSであり、その際、作用物質が接着剤マトリックス中に存在するモノリシックTTSがとりわけ有利である。
【0078】
本特許出願では、以下で"ポリマーマトリックス"または"マトリックス"の概念は、ポリマーを含有する層または組成物であると理解され、その際、"接着剤マトリックス"の概念はこれに包含されている。
【0079】
"ポリマーマトリックスの全質量"の表現は、本特許出願では、その中に導入された作用物質および若干の助剤を含んだポリマーマトリックスの質量であると理解される。
【0080】
経皮システムの製造のために適切であり、かつ一般式Iの作用物質を、溶解した、部分的に溶解した、もしくは分散した形で含有していてもよい粘着性ポリマー/コポリマーのための非限定的な例は、シリコーン接着剤、エチルビニルアセテート(EVA)接着剤、スチレン−ブロック−コポリマー(SXS)接着剤、アクリレート接着剤、ポリウレタン接着剤、ビニルアセテート接着剤ならびに接着ゴム、たとえばポリイソブチレン、ポリブタジエン、ネオプレンまたはポリイソプレンならびにこれらの接着剤の適切な混合物である。
【0081】
感圧接着剤として特に適切であるのは、硬膏剤技術で公知のシリコーンタイプ、アクリレートタイプ、SxSタイプならびにエチルビニルアセテートタイプ(EVAタイプ)のポリマー接着剤であり、これらは従来技術から公知である。これらの感圧性接着剤の特性を以下に詳細に記載する。
【0082】
本発明による化合物の投与は患者の年齢、体重および状態、投与法および投与間隔に依存する。一般に効果的な日用量は0.5〜20mgの範囲である。一般に経口投与の場合、少なくとも3mg/日、たとえば3〜15mg/日、有利には4〜12mg/日を使用する。一般的な経皮もしくは経粘膜による日用量はたとえばフェソテロジンに関して大人の患者ではたとえば少なくとも3mg、有利には3〜15mgの範囲および特に有利には4〜12mgである。
【0083】
従って一日一回の投与のために適切な医薬組成物は有利には一般式Iの高純度の塩基を3〜15mg含有する。
【0084】
医薬組成物が経皮製剤である場合、これは安全性の理由から一般に投与すべき作用物質量の約2倍を含有している。従って一般式Iの高純度の化合物の経皮投与のための一般的な本発明による製剤は投与単位あたり、作用物質を少なくとも6mg含有するが、しかし投与量および投与間隔に応じて10mg、20mg、30mg、40mgまたは50mg以上の一般式Iの高純度の作用物質、たとえばフェソテロジンを含有していてもよい。一日5回または7回の投与間隔が計画される場合、個々の投与単位の作用物質含有量は70、80、90を超えるか、または100mgを超えてもよい。
【0085】
"投与単位"とは、本特許出願では、定義された量の作用物質を含有し、かつ該作用物質を患者に一回投与した後で、規定の時間、治療上有効な量を放出する医薬製剤であると理解される。従って"投与単位"の概念は、本特許出願では一日三回投与するための錠剤であっても、毎週投与するための硬膏剤であってもよい。
【0086】
従って本発明の対象は、一般式I
【化6】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を少なくとも3mgならびに少なくとも1の薬学的に認容性の担体物質を含有する投与単位であり、その際、化合物Iの遊離塩基は、97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在する。
【0087】
本発明のもう1つの実施態様では投与単位は少なくとも10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgを超える一般式Iの高純度の作用物質を含有する。
【0088】
本発明の有利な1実施態様では、本発明による投与単位は、Rがメチル、エチル、イソ−プロピル(i−Pr)、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択される一般式Iの化合物を含有し、この場合、特に有利にはRはイソプロピルであり、かつその際"*"(星印)で標識された炭素原子は特に有利には(R)立体配置で存在する一般式Iの化合物を含有する。
【0089】
本発明のとりわけ有利な実施態様では、投与単位は(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートの遊離塩基(フェソテロジン遊離塩基)を少なくとも97質量%、有利には98質量%以上、特に有利には98.5質量%以上、およびとりわけ有利には99質量%以上の純度で含有する。
【0090】
医薬製剤が経皮投与形として構成されている場合、患者の皮膚を通過する流出比は、血漿中の濃度の変動を回避するためにできる限り一定であるべきである。
【0091】
従って日用量は50cm、有利には最大で40cmの塗布面積の場合、6μg/cm/h以上、有利には8μg/cm/h以上、特に有利には10μg/cm/h以上、およびとりわけ有利には12μg/cm/h以上の一定の、ヒトの皮膚を通過する流出比で投与されるべきであり、その際、流出比は実施例3.2に記載されているように、Tanojoによるインビトロのヒトの皮膚モデルで測定される。
【0092】
本発明はまた薬剤の製造にも関する。
【0093】
本発明による高純度の塩基は、特に失禁を治療するための、特に有利には切迫失禁を治療するための、ならびに排尿筋の機能亢進、膀胱の機能亢進、頻尿症、夜間頻尿症または切迫尿意を治療するための薬剤を製造する際に使用するために適切である。
【0094】
従って本発明の対象は、薬剤を製造するため、有利には経皮もしくは経粘膜投与のための薬剤を製造するための一般式I
【化7】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の遊離塩基の使用であり、その際、該遊離塩基は、97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在する。
【0095】
本発明の有利な1実施態様では、上記の薬剤を製造するために、Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択されている一般式Iの化合物を使用し、この場合、Rは特に有利にはイソプロピルであり、かつその際、"*"で標識されたC原子は特に有利には(R)立体配置で存在する。
【0096】
式Iの高純度の塩基はたとえばバッカルで使用することができる薬剤、たとえばWO02/02085に記載されているような、たとえばスプレー、粘膜付着性ペレットまたは迅速に溶解するオブラートを製造するために使用することができる。
【0097】
式Iの塩基のその他の有利な薬剤形は経皮製剤、たとえば軟膏、クリーム、ローション、スプレー、ペースト、フィルムまたは作用物質を含有する硬膏剤である。
【0098】
この場合、一般式Iの高純度の塩基は有利には遅延された経皮もしくは経粘膜投与のための薬剤を製造するために使用され、かつこの目的のために有利には粘着性もしくは非粘着性ポリマーマトリックス中に導入される。
【0099】
従って本発明の対象は、経皮もしくは経粘膜投与のために薬剤を製造するための一般式I
【化8】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の遊離塩基の使用であり、その際、化合物Iの遊離塩基は、97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在しており、式Iの化合物がポリマー層中に、有利には粘着性のポリマー層中に溶解または分散して存在していることを特徴とする。
【0100】
本発明の有利な実施態様では、上記の経皮薬剤を製造するために、Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択される一般式Iの化合物を使用し、この場合、特に有利にはRはイソプロピルであり、かつ"*"で標識したC原子は特に有利には(R)立体配置で存在する。
【0101】
有利には一般式Iの高純度の化合物は、10質量%未満、特に有利には5質量%または3質量%、とりわけ有利には1質量%未満の結合した塩の割合を有する遊離塩基の形で存在する。
【0102】
WO01/35957から公知の3,3−ジフェニルプロピルアミン誘導体の高純度の塩、たとえばフェソテロジンのフマル酸塩は経皮投与の場合に治療上不十分な流出比につながるのみである。帯電した分子、たとえばケイ酸塩またはキトサン、または皮膚侵透促進剤、たとえばオレイン酸またはPGMLの、作用物質塩を含有するマトリックスへの添加もまた満足のいく流出比にはつながらない(第2表)。
【0103】
WO94/07486に記載されているように、接着剤マトリックスの製造中にケイ酸カルシウムの添加により相応する塩から塩基をインサイチューで遊離することもまた、ヒトの皮膚を通過する所望の流出比にはつながらない(第2表)。というのも、遊離塩基へのインサイチュー反応は一般に完全には進行しないため、作用物質の大部分はマトリックス中でプロトン化された形で存在するからである。
【0104】
従って本発明によるシステムを製造する際に、一般式Iの化合物はすでに高純度の遊離塩基の形でポリマーマトリックスに添加することができる。
【0105】
【表2】

【0106】
n.b.=測定されず;=マトリックスに遊離塩基としてフェソテロジンを添加;=フェソテロジンフマル酸塩を使用することにより製造した比較例;=浸透促進剤としてオレイン酸を使用し、フェソテロジンフマル酸塩を使用して製造した比較例;=接着剤マトリックス中でフマル酸塩からの塩基のインサイチュー遊離により製造した比較例;=フェソテロジンのジヒドロキシ代謝産物(2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール)を使用することにより製造した比較例;PVAc=ポリビニルアセテート。
【0107】
図2は、(R)−フェソテロジンの高純度の塩基が、SXSタイプまたはEVAタイプの適切な接着剤マトリックス中に15質量%の量で導入されたTTSは、ヒトの皮膚を用いたインビトロ試験において、相応する塗布面積5〜50cmで、治療上所望の日用量が以下のように可能となる流出比が生じることを示している(第3表):
【0108】
【表3】

【0109】
使用されるTanojoによるインビトロモデル(J. Control Rel. 45(1997)41−47)は、測定されるインビトロ流出比が、種々の臨床的な研究において測定されたインビボ流出比に著しく相関する優れたモデルであることが判明した。ここから、少なくとも3mg、たとえば3〜15mg、有利には4〜12mgまたは6〜12mgの治療上所望される1日の作用物質流出比を、本発明によるTTSの使用により達成することができる。
【0110】
アクリレートおよびシリコーンベースのマトリックスもまた、哺乳動物皮膚を通過する、インビトロで匹敵するフェソテロジン(高純度の遊離塩基)の流出比を達成することができた(図3、第2表)。
【0111】
従って1実施態様では本発明は、経皮投与のための薬剤を製造するための一般式I
【化9】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の遊離塩基の使用に関し、その際、遊離塩基は、97質量%を上回る純度で、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度で存在しており、式Iの化合物をポリマー層へ、有利には粘着性のポリマー層へ導入し、かつ薬剤が哺乳動物の皮膚を通って、特にヒトの皮膚を通って一般式Iの化合物を0.5mg〜20mg/日、有利には少なくとも3mg/日、たとえば3〜15mg/日、特に有利には4〜12mgおよびとりわけ有利には6〜12mgの日用量で放出することを特徴とする。
【0112】
本発明の有利な1実施態様では、上記の薬剤を製造するために、Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択される一般式Iの化合物を使用し、この場合、特に有利にはRはイソプロピルであり、かつ"*"で標識されたC原子は特に有利には(R)立体配置で存在する一般式Iの化合物を使用する。
【0113】
特に有利な実施態様では薬剤は活性な作用物質としてフェソテロジンの高純度の塩基を含有する。
【0114】
従って特に有利な実施態様では本発明は、薬剤を製造するための一般式Iの高純度の化合物の使用に関し、その際、薬剤は、
(a)フェソテロジンの高純度の塩基を含有する粘着性ポリマー層を有し、かつ
(b)フェソテロジンの高純度の塩基を0.5〜20mg/日、有利には少なくとも3mg/日、たとえば3〜15mg/日、特に有利には4〜12mg/日の流出比でヒトの皮膚を通過して放出する。
【0115】
図2が示すように、このような薬剤からの作用物質の放出は最初のフラッジング期の後で、少なくとも24時間にわたりほぼ一定している。
【0116】
従ってもう1つの特別な実施態様では、本発明は薬剤を製造するための一般式Iの高純度の化合物、たとえばフェソテロジンの使用に関し、この場合、薬剤は最初のフラッジング期の後で、一般式Iの溶液を少なくとも24時間、有利には36時間もしくは48時間にわたって一定の流出比で放出する。
【0117】
"定常状態"という表現は、本出願では、本発明によるシステムを最初に塗布した後で、初期の遅延期の後に調節される流れの平衡状態であると理解される。
【0118】
"定常状態の流出比"とは、最初の遅延期の後に調節される流出比であると理解される。
【0119】
"一定の流出比"という表現は、本特許出願では、一般式Iの化合物が、最大で30%、有利には最大で20%の時間にわたり個人内の特性の差異CVを有する平均的な流出比でヒトの皮膚を通って輸送される、定常状態の流出比であると理解され、この場合、CVは式CV=(sd:x)×100%により決定される("Parameters for Compartment−free Pharmacokinetics"、Shaker Verlag、Aachen、1999、第112頁の計算Cawello(ED)を参照のこと)。この場合、日用量は30%のCVで日用量:24(mg/時)の平均的な流出比で投与される。当業者には、一定の流出比はシステムを最初に施与した後、初期フラッジング期(遅延期)後に初めて調節される。従って遅延期は一定の流出比の計算の場合には考慮されない。
【0120】
"ヒトの皮膚を通過する流出比"の表現は、本特許出願では、明示的にその他の記載がない限り、Tanojoによるインビトロのヒトの皮膚モデルにおいて実施例3.2に記載されているように測定された流出比であると理解される。
【0121】
有利なポリマーマトリックスはEVA、SXS、シリコーンまたはアクリレートタイプの粘着性のポリマーマトリックスであり、これらの特性および製造を以下に詳細に記載する。
【0122】
シリコーン接着剤
有利なシリコーン接着剤は、アミン抵抗性のポリオルガノシロキサン感圧接着剤である。
【0123】
シリコーン感圧接着剤は多くの場合、ポリジメチルシロキサンであるが、しかし原則としてメチル基の代わりにその他の有機基、たとえばエチル基またはフェニル基が存在していてもよい。アミン抵抗性のシリコーン感圧接着剤は一般に、遊離のシラノール官能基を有していないか、またはわずかに有するのみである。というのも、Si−OH基はアルキル化されたからである。このような接着剤はEP180377に記載されている。特に有利な接着剤は、たとえばUS RE 35474に記載されているようなシリコーン樹脂とポリオルガノシロキサンとの縮合物または混合物である。
【0124】
適切な接着剤はたとえばDow CorningからいわゆるBio−PSA接着剤として市販されている。この場合、接着剤Bio PSA Q7−4301とQ7−4201との、特に40:60〜60:40の比での混合物が特に適切である。
【0125】
シリコーン接着剤をベースとする硬膏剤マトリックスは、主として溶剤法で加工される。このために第一工程で有機溶剤または溶剤混合物中の接着剤と作用物質とからなる溶液を製造する。第二工程で溶液を塗布し、かつ積層し、かつ次いで溶剤を除去する。このような方法はたとえばWO99/49825に記載されている。
【0126】
有機溶剤の使用を断念する代替的な方法は、ホットメルト法である。この方法の場合、ポリマーもしくは感圧接着剤を70〜200℃、有利には90〜160℃および特に有利には100〜150℃の温度で溶融し、かつ作用物質を均質化されたマトリックス溶融液へ導入する。短時間の均質化の後で、作用物質を含有する接着剤マトリックスを再び冷却して作用物質を一般には5分未満、所望の場合には4、3、2または1分未満、熱的に負荷する。その後、作用物質は硬化したポリマー溶融物中に存在する。この方法の間、作用物質は臨界的な環境の影響(光、酸素)から十分に保護されている。
【0127】
この方法は溶剤法に対して、一般式Iの高純度の塩基を、熱い溶融液中に添加することができ、ここで冷却されたポリマーマトリックス中で短時間の均質化の後で安定化される限り、溶剤の影響を受けることがないという利点を有する。ホットメルト法は有利には押出機中で、WO99/48493に記載されているように、たとえば二軸スクリュー押出機中で実施される。
【0128】
シリコーン接着剤は上記の加工温度で一般に粘性でありすぎる、つまり150Pasを超える動的粘度を有する。特許文献には、シリコーン接着剤の粘度を、適切な添加剤(可塑剤)の添加により高温溶融性にするための種々の方法が記載されている。シリコーンのためのこのような可塑剤のための例は、EP835136に記載されているようなグリセロールモノラウレートまたはラウリルアセテート、EP360467に記載されているような式R−C(O)−OR′のワックス、EP524775に記載されているようなアルキルメチルシロキサンワックス、EP663431に記載されているようなシロキシ化ポリエーテルワックスまたはUS RE36754に記載されているような有機ワックスである。
【0129】
可塑剤は一般に、高温溶融性の接着剤混合物の全混合物に対して1〜30質量%の量で添加される。有利な可塑剤はUS RE36754に記載されているような有機ワックス、たとえばオゾケライト、セレシン、パラフィン、カンデリラ、カルナウバ、蜜ろうまたはこれらのワックスの混合物であり、その際、オゾケライトおよびセレシンが特に有利である。
【0130】
あらかじめ製造された高温溶融性のシリコーン感圧接着剤、特にシリコーン感圧接着剤とセレシンまたはオゾケライトとからなる混合物は、Dow Corning、Michiganにおいて入手可能である。セレシン10質量%をシリコーン感圧接着剤に添加することにより、たとえば得られる感圧接着剤混合物の、加工温度150℃で150Pasを上回る動的粘度を50Pasに低下させることができる。このようなシリコーンベースの感圧接着剤混合物は70℃〜200℃の温度範囲で、および特に100℃〜150℃の範囲でホットメルト法で良好に加工することができる。
【0131】
意外なことに、高温溶融性のシリコーン感圧接着剤は、一般式Iの化合物を経皮投与するために優れていることが判明した。
【0132】
従って本発明の対象は、式I
【化10】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を経皮投与するためのシステムであり、一般式Iの化合物が97質量%を上回る純度、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度の遊離塩基の形で粘着性ポリマー層(接着剤マトリックス)中に導入され、その際、接着剤マトリックスがアミノ抵抗性のシリコーンを含有することを特徴とする。
【0133】
本発明の特に有利な1実施態様では、接着剤マトリックスはシリコーンベースの感圧接着剤および少なくとも1の可塑剤、たとえばオゾケライトからなる高温溶融性の混合物をベースとする。有利には本発明によるシリコーンベースのマトリックスへ作用物質としてフェソテロジンの高純度の遊離塩基を導入する。
【0134】
"高温溶融性の"とは、この場合、感圧接着剤がホットメルト法で通例の、たとえば160℃の作業温度で最高で150Pas、有利には最高で120Pasの動的粘度を有することであると理解される。
【0135】
本発明のもう1つの実施態様は、一般式Iの化合物を経皮投与するための薬剤であり、これは、
(a)感圧接着剤混合物50〜99質量%、これは
(i)アミン抵抗性のシリコーン接着剤70〜99質量%、
(ii)適切な可塑剤、有利にはオゾケライト、セレシン、パラフィン、カンデリラ、カルナウバ、蜜ろうまたはこれらのワックスの混合物の群から特に有利に選択される有機ワックス1〜30質量%、有利には3〜15質量%からなり、その際、オゾケライトおよびセレシンが特に有利である、
(b)高純度の遊離塩基の形でマトリックスへ導入される一般式Iの化合物1〜40質量%
を含有する接着剤マトリックスを有する。
【0136】
シリコーン感圧接着剤は市販されており、かつたとえばDow CorningからBio−PSA Q7−4300またはBio−PSA Q7−4200として市販されている。PSA 7−4300と有機ワックス、たとえばオゾケライトまたはセレシンとからなる混合物からなる高温溶融性のシリコーン感圧接着剤は、同様にDow Corningから入手可能である。
【0137】
図3は、ホットメルト法で製造された、接着剤マトリックスのための可塑剤としてオゾケライトを含有し、かつ接着剤マトリックス中のフェソテロジンの高純度の遊離塩基を含有するシリコーンベースの硬膏剤により達成された、マウスの皮膚を通過するインビトロの流出を示している。
【0138】
EVA接着剤
EVA感圧接着剤は、エチレンビニルアセテートコポリマーをベースとする高温溶融性の感圧接着剤である("EVA感圧接着剤")。このようなEVA接着剤はたとえばUS4,144,317に記載されている。EVA接着剤は良好な接着特性、簡単な製造および投与、ならびに良好な皮膚相容性により優れている。EVA接着剤はたとえばBeardow Adamsにおいて入手することができる(13/BA)。
【0139】
ホットメルト法での加工のために、基本的にシリコーンにおいて記載したことが該当し、その際、EVA感圧接着剤には一般に可塑剤を添加する必要はない。
【0140】
従って本発明の対象は、式I
【化11】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を経皮投与するためのシステムであり、一般式Iの化合物が97質量%を上回る純度、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度の遊離塩基の形で粘着性ポリマー層(接着剤マトリックス)中に導入され、その際、接着剤マトリックスがEVAタイプの感圧接着剤を含有することを特徴とする。
【0141】
本発明の特に有利な1実施態様ではEVAベースの接着剤マトリックスはホットメルト法で製造される。有利には本発明によるEVAベースのマトリックスに作用物質としてフェソテロジンの高純度の遊離塩基を導入する。
【0142】
図2および3は、ホットメルト法で製造された、接着剤マトリックス中にフェソテロジンの高純度の遊離塩基を含有する、EVAベースの硬膏剤により達成される、ヒトの皮膚もしくはマウスの皮膚を通過するインビトロの流出比を示している。
【0143】
SxS感圧接着剤
SxS感圧接着剤は溶剤法でも、ホットメルト法でも加工することができる。"SxS接着剤"の概念は、本特許出願では、末端に非エラストマーのスチレンブロックおよび中央にエラストマーのブロックを有するスチレン−ブロックコポリマーをベースとする接着剤であると理解される。エラストマーのブロックはたとえばポリエチレンブチレン、ポリエチレンプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレンまたはポリイソプレンを表す。
【0144】
適切なSxS接着剤はたとえばUS5,559,165またはUS5,527,536に記載されており、かつ良好な接着性、簡単な製造および加工ならびに良好な皮膚相容性により優れている。
【0145】
SxS感圧接着剤は市販品を入手する(たとえばNational Starch & ChemicalのDuro Tak 378−3500として)こともでき、また作用物質含有硬膏剤の製造自体の際にホットメルト押出装置自体を用いて製造することもできる。
【0146】
このためにたとえば(少なくとも次の成分の)スチレン−ブロックコポリマー(たとえばShell Kraton GX1657またはKraton D−1107CU)と、脂肪族および/または芳香族樹脂(たとえばKeyser Mackay Regalite R1090またはRegalite R1010またはRegalite R1100)およびオイル(たとえばShell Ondina 933またはOndina 941)の相応する量を個々の供給ステーションから押出機へと供給し、ここで混合し、かつ溶融する。最後の工程でこうして製造した作用物質の感圧接着剤を押出機に供給し、かつ該組成物をフィルム上に積層する。ポリマー:樹脂:オイルの一般的な例示的な質量割合はたとえば100:120:20または100:200:50である。これらの量割合を変更することによりSxS感圧接着剤の特性をその都度所望のTTSの特性(接着力、最小低温流れ、接着寿命、作用物質の放出プロファイル)に適合させることができる。
【0147】
従って本発明の対象は、式I
【化12】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を経皮投与するためのシステムであり、一般式Iの化合物が98質量%を上回る純度で、有利には97質量%を上回り、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつ特に有利には99質量%を上回る純度の遊離塩基の形で粘着性ポリマー層(接着剤マトリックス)中に導入され、その際、接着剤マトリックスがSXSベースの感圧接着剤を含有することを特徴とする。
【0148】
本発明の特に有利な実施態様ではSXSベースの接着剤マトリックスはホットメルト法で製造されたものである。有利には本発明によるSXSベースのマトリックスに作用物質としてフェソテロジンの高純度の遊離塩基を導入する。
【0149】
図2および3はホットメルト法で製造された、フェソテロジンの高純度の遊離塩基が導入されたSXSベースの硬膏剤により達成された、ヒトの皮膚もしくはマウスの皮膚を通過するインビトロの流出比を示している。
【0150】
SxS接着剤の酸化作用に基づいて、SxSベースの接着剤マトリックスは有利には酸化防止剤が添加される。市販の適切な酸化防止剤のための1例はIrganox(R)(CIBA)である。
【0151】
アクリレート接着剤
ポリアクリレートは(メタ)アクリル酸誘導体のラジカル重合により製造され、その際、その他の適切な化合物、たとえばビニルアセテートをその他のモノマーとして利用することができる。"ポリアクリレート"の表現は、本特許出願では、アクリル酸および/またはメタクリル酸をベースとする単位を有するポリマーならびにこれらのコポリマーおよび混合物を含む。
【0152】
適切なモノマーを選択する場合、ここから得られる感圧接着剤は原則として、特別な特性を有する、つまり作用物質に対して有利な溶解能、マトリックス中での作用物質の所望の移動度ならびに皮膚を経由した所望の輸送速度を有するように設計することができる。輸送速度は実質的に、作用物質の分布係数および皮膚による吸収により制限される。
【0153】
ポリアクリレートタイプの感圧接着剤は、有機溶剤中の溶液の形のアクリル酸および/またはメタクリル酸誘導体の少なくとも1のホモポリマーおよび/またはコポリマーであってよい。ポリアクリレートタイプの感圧接着剤は架橋性であるか、または非架橋性であってよい。架橋性の試薬は、反応基によりポリマー鎖を結合する。これは感圧接着剤の高い凝集力に起因しうる。
【0154】
有利にはポリアクリレートタイプのポリマー感圧接着剤は少なくとも次のモノマーからなる:
アクリル酸、アクリルアミド、ヘキシル−アクリレート、2−エチル−ヘキシル−アクリレート、ヒドロキシ−エチル−アクリレート、オクチル−アクリレート、ブチル−アクリレート、メチル−アクリレート、グリシジル−アクリレート、メチル−アクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、ヘキシル−メタクリレート、2−エチル−ヘキシルアミド−アクリレート、オクチル−メタクリレート、メチル−メタクリレート、グリシジル−メタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、アリル−アクリレート。
【0155】
有利にはアクリレートタイプのポリマー感圧接着剤は、次のモノマーの組み合わせから重合される架橋性感圧接着剤である:
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ブチル−アクリレート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/アリル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/ジビニル−ベンゼン/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/アリルメタクリレート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/2−ヒドロキシ−エチル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート/2−ヒドロキシ−エチル−メタクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/フマル酸−ジエチル−エステル/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート//マレイン酸−ジエチル−エステル/2−ヒドロキシ−エチル−アクリレート。
【0156】
有利な架橋性材料として次の化合物が挙げられる:ジフェニル−メタン−4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、アセチルアセトナトチタン、アセチルアセトナトアルミニウム、アセチルアセトナト鉄、アセチルアセトナト亜鉛、アセチルアセトナトマグネシウム、アセチルアセトナトジルコニウム、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール−チタネート、テトラ−イソオクチル−チタネート、テトラ−ノニル−チタネート、多官能性プロピレン−イミン−誘導体、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、高度にメチル化されたウレタン樹脂、イミノ−メラミン樹脂のエーテル誘導体。
【0157】
非架橋性感圧接着剤は有利には次のモノマーの組み合わせから重合することができる:
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/ビニルアセテート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/アリル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−N−ブチル−アクリレート/アリル−メタクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/ジビニル−ベンゼン、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/フマル酸−ジエチル−エステル/アリル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/マレイン酸−ジエチル−エステル/アリル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/アクリルアミド/ビニルアセテート/アリル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/イソ−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/アリル−アクリレート。
【0158】
さらに、いくつかの感圧接着剤は水性分散液の形で(分散液タイプ)使用することができる。この分散液タイプの感圧接着剤の使用は、被覆および乾燥の間に、燃焼性もしくは毒性の溶剤が気化しないという利点をもたらしうる。
【0159】
分散液タイプの感圧接着剤は有利には次のモノマーの組み合わせから重合することができる:
N−ブチル−アクリレート/イソ−ブチル−アクリレート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/2−ヒドロキシ−エチル−アクリルアミド、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/アクリルアミド、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/2−ヒドロキシ−エチル−アクリレート、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/アリル−アクリレート/アクリル酸、
2−エチル−ヘキシル−アクリレート/N−ブチル−アクリレート/ビニルアセテート/ジビニル−ベンゼン。
【0160】
本発明において使用するために適切なポリアクリレートは、感圧接着剤の物理的特性を改善するため、または感圧接着剤を特定の要求に適合させるために、多価の金属イオンにより架橋される。金属イオンは通常、有機溶剤中に可溶性である金属キレートの形で適用される。特に適切な架橋剤はアセチルアセトナトアルミニウムおよびアセチルアセトナトチタンである。
【0161】
本発明により使用される感圧接着剤がポリアクリレート感圧接着剤である場合、溶解能は一般に接着剤中の遊離官能基の種類および量に依存する。
【0162】
本発明のシステム中で使用するためにもっとも有利な感圧接着剤は、極性基、特に遊離のヒドロキシ基を有するポリアクリレートである。このような感圧接着剤の例はポリアクリレートであり、その製造のために、極性のモノマー、たとえばヒドロキシ−エチル−アクリレート、ヒドロキシ−エチル−メタクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸を約1〜10%(w/w)の量で、特に有利には3〜8%(w/w)の量で、とりわけ有利には4〜6%(w/w)の量で使用する。このような感圧接着剤は商品名Duro−Tak(R)(National Starch & Chemicals、Hamburg)で市販されている。
【0163】
本発明のシステムにおいて使用するためにとりわけ有利であるのは、ヒドロキシ−エチルアクリレートおよび/またはヒドロキシエチルメタクリレートモノマーが、重合の間に3〜8%(w/w)の量で、とりわけ有利には4〜6%(w/w)の量で混合されるポリアクリレートタイプの感圧接着剤である。
【0164】
このような接着剤は相応して、以下に記載するような、US特許第5,498,418号明細書に記載される一般的な方法により得られる:感圧接着剤は、ラジカル重合により得られる。第一工程で、有機溶剤中、混合物中のモノマー100質量%を有する、ビニルアセテート21〜40質量%、アクリル酸−C−アルキルエステル55〜70質量%およびアクリル酸−C−ヒドロキシ−アクリル−エステル3〜10質量%からなる混合物を製造する。
【0165】
第二工程で、有機溶剤中の通例の架橋剤および、場合により、経皮システム(硬膏剤)の意図される使用のために要求される品質の作用物質を、必要であれば有機溶剤中で、混合する。
【0166】
最後に第三工程で、特別なアクリレート−ビニルアセテートコポリマーの得られた混合物を付加的な工程で架橋させ、次いで加熱し、かつ有機溶剤または使用された溶剤の混合物を除去する。得られる作用物質を、特定のアクリレート−ビニルアセテートコポリマーの連続的かつ付加的な架橋により特別な方法で感圧接着剤物質へ"組み込む"。
【0167】
あるいは、アクリレート−ビニルアセテート−コポリマーを作用物質の不存在下で重合し、かつ架橋することができる。次いで作用物質をまずアクリレート−ビニルアセテートコポリマーの使用中に硬膏剤製造の際に添加する。アクリレート−ビニルアセテートコポリマーは20℃で3.0〜4.2の相対粘度を有する。
【0168】
有利にはモノマーの混合物はビニルアセテートに加えてさらに2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとを含有する。有利にはその後の特定のアクリレート−ビニルアセテート−コポリマーの架橋を、ポリブチル−チタネートおよび/またはアセチルアセトナトチタンとからなるチタン酸エステルを、有利にはコポリマーの質量に対する比で0.3〜3質量%の量で用いて実施する。
【0169】
本発明によるTTSを製造するための方法は、次の工程を有していてよい:第一工程として、場合により作用物質がTTSの意図される使用のために必要とされる量で、ならびに通例の架橋剤または架橋剤混合物が含有されており、かつその際、ビニルアセテート21〜40質量%、アクリル酸−C−アルキル−エステル55〜70質量%およびアクリル酸−C−ヒドロキシアルキルエステル1〜10質量%からなるモノマーの混合物のラジカル重合によりコポリマーが得られるコポリマーの溶液の製造、TTSを保護フィルム上への必要とされる層厚さでの上記の溶液の塗布および加熱による溶剤もしくは溶剤混合物の除去、これにより特定のアクリレート−ビニルアセテート−コポリマーの付加的な架橋が生じる。
【0170】
このような方法の1実施態様は、アクリレート−ビニルアセテート−コポリマー、場合により作用物質および架橋性材料をまず、エタノールまたはエタノールとメタノールとの混合物20〜40質量%を含有する溶剤中に、特定のアクリレート−ビニルアセテートコポリマー、架橋性材料および作用物質の混合物40〜60質量%からなる固体成分の比で溶解する。
【0171】
本発明のもう1つの有利な実施態様では、作用物質をまずアクリレートの架橋の後で分散液に添加し、これを次いで均質化した後で保護フィルム上に塗布する。
【0172】
このようなアクリレート−ビニルアセテート感圧接着剤を製造するための特別な実施例はUS−A−5,498,418、第2欄、第61行目から第3欄、第10行目に開示されており、ここで参照として挙げる。
【0173】
本発明において使用するための特に有利な感圧接着剤は市販の感圧接着剤Duro−Tak(R)387−2287およびDuro−Tak(R)(3)87−4287(National Starch & Chemicals、Hamburg)である。本発明の特に有利な実施態様では、Duro−Tak感圧接着剤を適切な溶剤中で所望の量の作用物質と混合し、かつ得られる均質な分散液を所望の厚さで塗布する。最後に溶剤または溶剤混合物を高めた温度(50〜70℃)で除去する。
【0174】
従って本発明の対象は、式I
【化13】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を経皮投与するためのシステムであり、一般式Iの化合物が97質量%を上回る純度、有利には98質量%を上回り、特に有利には98.5質量%を上回り、かつとりわけ有利には99質量%を上回る純度の遊離塩基の形で粘着性ポリマー層(接着剤マトリックス)中に導入され、その際、ポリマー層が、アクリレートおよび/またはメタクリレートタイプの少なくとも1のポリマーを有することを特徴とする。
【0175】
有利には本発明によるアクリレートベースのマトリックス中には作用物質としてフェソテロジンの高純度の遊離塩基が導入される。
【0176】
図3は、ホットメルト法で製造され、フェソテロジンの高純度の遊離塩基がその中に導入された、アクリレートベースの硬膏剤により達成された、マウスの皮膚を通過するインビトロの流出比を示している。
【0177】
助剤および添加剤
本発明による経皮システムの上記の作用物質含有ポリマーマトリックスはその他の助剤および添加剤を含有していてよい。その例は、緩衝液、可溶化剤、化学的な安定剤、酸化防止剤、その他の遅延のための助剤ならびに皮膚浸透性促進剤である。
【0178】
皮膚浸透性促進剤はたとえば、皮膚を透過する作用物質量を増加させるため、またはシステムの塗布面積を縮小するために添加することができる。通例の浸透性促進剤のための、非限定的な例は、アルコール、特に短鎖のアルコール、たとえばエタノール、脂肪アルコール、たとえばラウリルアルコール、ポリアルコール、たとえばグリセリン、アミド、たとえば芳香族アミド、たとえばN,N−ジエチル−m−トルアミド、アミノ酸、アゾン、オイル、たとえばメントールまたはペパーミント油、脂肪酸およびこれらのエステル、たとえばオレイン酸、ラウリル酸、イソプロピルミリステートまたはグリセロールモノラウレート、大環状化合物、たとえばシクロペンタデカノン、ホスホリピド、たとえばレシチン、2−ピロリドン、スルホキシド、たとえばジメチルスルホキシドである。
【0179】
一般式Iの遊離塩基の良好な浸透性に基づいて、促進剤の添加が省略される本発明の実施態様が有利である。
【0180】
その他の成分として、接着剤マトリックスは、親水性成分、たとえば親水性ポリマーを添加することができる。これらの親水性ポリマーは一般式Iの化合物のための可溶化剤もしくは結晶化防止剤として作用することができ、かつ接着剤マトリックス中の作用物質の均一な分布のために貢献する。
【0181】
本発明によるTTSで使用するために適切な親水性ポリマーは、たとえば多糖類、置換された多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン(PVP)、適切な可塑剤を含有するPVP、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドンおよび(ポリ)ビニルアセテートからなるコポリマー、エチレンおよびビニルアセテートのコポリマーならびに適切な可塑剤、たとえばグリセリンを含有するポリビニルアルコールの群から選択されていてよい。
【0182】
有利な親水性ポリマーはPVP、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアセテート(PVAc)ならびにPVPおよびビニルアセテートからなるコポリマーである。
【0183】
親水性ポリマーはたとえば接着剤層の全質量に対して0.5〜40質量%の割合で接着剤層に添加することができる。有利には2〜25質量%、特に有利には2〜15質量%または2〜10質量%の親水性ポリマーを添加する。
【0184】
ホットメルト法で使用するために、170℃より低い温度で最大150Pas、有利には120Pasより小さい、および特に有利には80Pasより小さい動的溶融粘度を有する親水性ポリマーが特に適切である。所望の加工温度で親水性ポリマーの動的粘度が低すぎる場合、場合により適切な可塑剤、たとえばグリセリンをあらかじめ添加しなくてはならない。
【0185】
上記の親水性ポリマーの添加は、特にきわめて疎水性の接着剤マトリックス、たとえばシリコーン、ポリイソブチレンまたはSXSのマトリックスの場合に有利であり得る。
【0186】
すでにWO01/35957に記載されているように、3,3−ジフェニルプロピルアミン−モノエステルの遊離塩基は、たとえば加水分解およびエステル交換により含有率が減少する傾向がある。ところで意外なことに、3,3−ジフェニルプロピルアミン−モノエステルは、親水性成分によりマトリックス中で著しく安定化することができることが判明した。
【0187】
たとえばフェソテロジンの遊離塩基を油状物として5℃で6ヶ月貯蔵すると約3〜4%まで分解される一方で、極性成分を含有するマトリックス中にフェソテロジンを混合すると、含有率の低下は確認されないか、または実質的にわずかな程度であるにすぎないことを確認することができる。
【0188】
一般式Iのモノエステルの安定化につながるこのようなマトリックスのための例は、たとえばポリアクリレート、特に極性の基を有するポリアクリレート、EVAまたはシリコーン接着剤と親水性ポリマー、たとえばPVPまたはPEOとの混合物が含有されているマトリックスである。
【0189】
【表4】

【0190】
安定化係数は原料(油状物)として貯蔵した際にフェソテロジンの塩基の平均的な1月の含有率の低下を、マトリックス中で貯蔵した場合の平均的な1月の含有率の低下により除することにより測定した;6月後の測定期間の終了まで;Cer=セレシン。
【0191】
第4表が示すように、EVA接着剤、ポリアクリレート接着剤またはシリコーン接着剤と親水性ポリマー、たとえばPEOまたはPVPとからなる混合物からなるマトリックスへのフェソテロジンの混合は、フェソテロジンの明らかな安定化につながり、しかも製造法(ホットメルト法または溶剤法)とは無関係である。
【0192】
従って本発明の1実施態様は、遊離塩基としての一般式Iの化合物がその中で、同一の条件下で遊離塩基がポリマー中に埋め込まれず油状物として貯蔵される場合よりも、含有率の低下がより遅いマトリックスもしくは医薬製剤またはシステムに関する。有利な実施態様は5℃および/または25℃で、遊離塩基としての貯蔵と比較して3,3−ジフェニルプロピルアミン−モノエステルの少なくとも2倍、3倍、7倍または10倍安定化される実施態様である。
【0193】
特に有利な本発明による医薬製剤もしくはシステムは、遊離塩基が、一般式Iの化合物の含有率の低下が4℃で6月貯蔵した場合に3%以下、有利には2%または1%以下であり、かつ25℃および空気湿度60%で3月貯蔵した場合に10%以下、有利には5%以下、および特に有利には3%以下または1.5%であるポリマー層中に存在するものである。
【0194】
有利なマトリックスは、
− アクリレート接着剤ならびにこれらのコポリマー、特に極性基、たとえば遊離ヒドロキシ基を有するアクリレート接着剤、
− EVA接着剤、
− 親水性ポリマー、特にPEO、PVPまたはPVAcから選択される親水性ポリマーを2〜25質量%、有利には2〜10質量%含有するシリコーン接着剤、
− 親水性ポリマーを2〜25質量%、有利には2〜10質量%含有するSXSまたはPIB接着剤、
− 親水性感圧接着剤(たとえば極性のポリアクリレート)と、疎水性の感圧接着剤(たとえばシリコーン、SXSまたはPIB接着剤)とからなる混合物
の群から選択される接着剤を50〜95質量%含有するマトリックスである。
【0195】
本発明によるマトリックスを製造するためにとりわけ有利な感圧接着剤はポリアクリレート、特に極性基を有するポリアクリレートである。これらのマトリックスはフェソテロジンに関して優れた放出プロファイルならびに3,3−ジフェニルプロピルアミン−モノエステルに関して優れた安定化特性を有する。
【0196】
TTSのサイズとして、経験上、最大で約50cmまでの底面積が患者により認容される。一般にTTSは40cmまでの大きさを有し、有利には5〜35cmおよび特に有利には10〜30cmの大きさである。
【0197】
TTSのマトリックス質量は一般に30〜300g/mの間で変化し、その際、40〜200g/mおよび特に40〜150g/mの質量を有するマトリックスが有利である。
【0198】
作用物質による負荷は作用物質に対するその都度のマトリックスの吸収/放出能ならびに製造法に依存する。
【0199】
一般に作用物質の負荷率は、作用物質を含有するマトリックスの全質量に対して5〜約40質量%であり、その際、1〜3日のTTSを製造するために7〜30質量%および特に8〜20質量%のより低い最大負荷率が有利である。一般式Iの化合物の7日間の投与のための薬剤を製造する場合、たとえば15〜14質量%の比較的高い作用物質濃度を使用することができる。
【0200】
ここから、0.1〜12、有利には0.25〜7.5、特に有利には0.3〜4およびとりわけ有利には0.6〜2.5の作用物質の負荷(mg/cmマトリックス面積)が生じる。7日間の適用のためのシステムの場合、負荷は有利には少なくとも2mg/mである。
【0201】
本発明のもう1つの対象は、前記の通り、一般式Iの化合物を遊離塩基として、かつ本発明による純度で、失禁、排尿筋の機能亢進、膀胱の機能亢進、頻尿症、夜間頻尿症または切迫尿意を予防および/または治療することを必要としている哺乳動物、特にヒトに投与することにより、前記の疾患を予防および/または治療するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】3,3−ジフェニルプロピルアミンの塩基の製造工程を示す図
【図2】SXSタイプまたはEVAタイプの接着剤マトリックスを使用した場合のフェソテロジンの高純度塩基の流出比を示す図
【図3】アクリレートおよびシリコーンベースの接着剤マトリックスを使用した場合のフェソテロジンの高純度塩基の流出比を示す図
【図4】モノリシックTTSの構造の概略を示す図
【実施例】
【0203】
以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するために役立つものである。
【0204】
実施例:
1.フェソテロジンの高純度の遊離塩基の製造
A.塩基フェソテロジンの製造(B、図1を参照のこと、R=i−Pr)
ジクロロメタン750ml中に溶解した(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(A、図1を参照のこと)59.8g(175.1モル)の、−3℃に冷却した溶液に、攪拌および氷浴での冷却下に、ジクロロメタン250ml中の塩化イソ酪酸18.6gの溶液を約10分間で滴加した。約5分後に白色の物質が沈殿した。ここに攪拌および氷浴での冷却下に、ジクロロメタン250ml中のトリエチルアミン17.7gの溶液を5分間で滴加した。該バッチを順次、その都度水250ml、約5%の水性NaHCO溶液250mlおよび水250mlで洗浄した。NaSOにより乾燥させたジクロロメタン抽出液を質量が一定になるまで回転蒸発器で濃縮し、その際、淡黄色の粘稠な油状物が残留した。
粗収率:63.7g(88.5%)。
【0205】
HPLC中でのBの純度はこの例では94.1%であった。Bに関する一般的な範囲:90.5%〜94.4%。高真空蒸留の試験ではAおよびCの形成下に分解が生じた。
【0206】
B.フェソテロジンのフマル酸塩の製造(E.図1、R=i−Pr、X=フマル酸水素イオン)
2−ブタノン90ml中の(R)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルイソ酪酸エステル(B)41.87g(102ミリモル)の溶液に加熱下にフマル酸(11.81g、102ミリモル)を添加した。酸が溶解した後で撹拌下に濁りが生じるまでシクロヘキサン(20〜30ml)をゆっくり添加した。無色の均質なバッチをまず室温で18時間、次いで0℃で数時間放置した。沈殿した無色の結晶を吸引し、少量のシクロヘキサン/2−ブタノン(90:10、体積%)で洗浄し、かつ30℃で真空下に乾燥させた。
【0207】
収率:無色のフレークの形での(R)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルイソ酪酸エステルのフマル酸水素塩(E)44.6g(理論値の83.1%)。
【0208】
融点:98.8℃、同一の溶剤混合物からの第二の結晶化により、103℃の融点を有する生成物が生じた。
[α]20=+6.0(c=1.0、エタノール);−19.3(c=1.0、アセトニトリル)。
【0209】
H−NMR(CDCl):特にフマル酸水素のアニオンのC=に関して6.84ppm、
13C−NMR(CDCl):特にフマル酸水素イオンのオレフィン−およびカルボニル炭素に関して135.58ppmおよび170.56ppm。
【0210】
この例でのEの純度(HPLCで測定)は99.2%であった。
【0211】
C.フェソテロジンの高純度の塩基の製造(B、図1、R=i−Pr)
結晶質の(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)−フェニル−2−メチルプロパノエート−フマル酸塩(E)250g(0.474モル)を撹拌下に水1lに添加し、かつ30℃に加熱した。約30分後にほぼ清澄な溶液が存在していた。RTに冷却した溶液に、撹拌下に約10分間で炭酸水素ナトリウム96.0gを少量ずつ添加した。ほぼ清澄な無色のフェソテロジン炭酸水素塩水溶液に、ジクロロメタン1lを添加した。RTでしばらく攪拌した(著しいCOの発生)後、ジクロロメタン相を分離し、かつ順次、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液0.2リットルおよび水0.2lで1回ずつ洗浄した。濾過した清澄な無色のジクロロメタン相を、質量が一定になるまで約40℃の浴温で回転蒸発器により濃縮し、その際、最後に膜ポンプ真空(最終真空5ミリバール)を適用した。その際、(R)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルイソ酪酸エステル(B)がほぼ無色の粘性油状物として残留した。
【0212】
収率:180.6g(92.6%)。
【0213】
[α]20=+5.9(c=1.0、エタノール);−6.7(c=1.0、アセトニトリル)。
【0214】
NMR(CDCl):19.01、19.95、20.59、21.12、34.28、36.89、41.88、42.32、43.90、48.78、64.68、122.57、125.59、126.16、126.86、127.96、128.54、136.88、138.82、143.92、147.90、175.69(ppm)。
【0215】
HPLC中での純度はこの例では99.0%であった。一般的な純度は98.7%〜99.5%である。
【0216】
H−および13C−NMR:フマル酸水素アニオンに関して共鳴シグナルは検出できなかった(Eを参照のこと)。
【0217】
長期貯蔵は有利には暗所でアルゴン下に−20℃で行う。
【0218】
D.炭酸水素塩の製造(E、図1、R=i−Pr、X=炭酸水素イオン)
フェソテロジン(107.7mg、(R)−2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルイソ酪酸エステル、B)を蒸留水で覆い、かつ室温で攪拌する。2日間の攪拌後、反応バッチは変化することなく2相のままである。上方の水相中で薄膜クロマトグラフィーによれば有機材料(BまたはE)は検出されなかった(シリカゲル、溶離剤系石油エーテル/アセトン/トリエチルアミン、70/20/10体積%)。
【0219】
2相の反応バッチ中、室温で撹拌下に二酸化炭素ガスの弱い流を導入する。2日後に下方の油相(フェゾテロジン)は完全に、および清澄に水相に溶解した。
【0220】
フェソテロジンの炭酸水素塩の13C−NMRスペクトル(δ値):
14.11、15.36、15.51、29.32、31.09、38.95、43.31、52.38、60.45、120.04、124.07、124.33、124.83、126.12、131.97、136.55、139.06、144.60、157.46(H)、175.75。
【0221】
塩基を1Mの塩酸水溶液中に溶解することにより製造したフェゾテロジンの塩酸塩の13C−NMRスペクトルとの良好な一致が生じた(δ値):
13.26、15.32、15.48、29.29、31.06、38.95、43.34、52.42、60.49、120.10、124.18、124.38、124.85、126.13、131.97、136.50、139.02、144.61、175.94。
【0222】
2.TTSマトリックスの製造
2.1.ホットメルト法でのシリコーンベースのマトリックスの製造
オゾケライト(Dow Corningにおいて入手可能)5質量%を含有するシリコーン接着剤Bio−PSA 7−4300(Dow Corning、Michigan)からなるシリコーンベースの感圧接着剤混合物8.5gを、均質な溶融液が生じるまで約20分間、150℃に加熱した。フェソテロジン(高純度の遊離塩基)1.5gを添加し、かつ混合物を150℃でさらに5分間維持した。次いで混合物を手作業により均質化し、かつ予熱したフィルム(120℃、ギャップ幅250μm)上に積層した。放出試験のために、5cmの切片を切り出した。
【0223】
2.2.溶液法でのアクリレートベースのマトリックスの製造
高純度のフェソテロジンの塩基1.5gをジクロロメタン中に溶解し、かつDuro Tak(R)387−2287 8.5gの溶液(酢酸エチル中)を添加した。均質な分散液が生じるまで、得られる混合物を攪拌した。次いで該分散液をフィルム上に塗布した(エリクセン100μm、6mm/sec、乾燥時間:50℃で30分)。
【0224】
2.3.ホットメルト法でのSXSベースのマトリックスの製造
SIS(Kraton D1107CU)100部、Regalite R 1090 150部、Ondinaoel 20部およびIrganox 1部を140℃に加熱して混合し、かつ溶融した。溶融液8.5gごとにフェソテロジン(高純度の遊離塩基)1.5gを添加し、かつ該混合物をさらに140℃で1〜5分間維持した。次いで該混合物を機械的に均質化し、かつ予熱したフィルム(120℃、250μm)上に積層した。所望の大きさの切片を切り出した。
【0225】
2.4.ホットメルト法でのEVAベースのマトリックスの製造
EVAホットメルト接着剤8.5gを、均質な溶融液が得られるまで約20分間、160℃で加熱した。高純度のフェゾテロジン塩基1.65gをここに添加し、かつ該混合物を次いで手作業により均質化した。次いで該混合物を予熱し(120℃)、チルドロール積層した。それぞれ5cm(浸透性試験のため)を切り出した。
【0226】
3.放出試験
3.1.マウスの皮膚モデル中での作用物質の影響の測定
マウスの皮膚を通過する流出測定のために、厚さ約120〜150μmの腹部および背部の皮膚を水平な拡散セル中で使用した。媒体:ホスフェート緩衝液(0.066モル)pH6.2、32℃。
【0227】
作用物質の放出をHPLCにより測定した。
【0228】
3.2.ヒトの皮膚モデルでの作用物質流出の測定
(a)実験計画
ヒトの皮膚を通過するフェソテロジン流出の測定はほぼ、H.Tanojo等、J. Control Rel.45(1997)41〜47に記載されているように実施し、その際、シリコーン膜の代わりに、透析膜[Diachema透析膜、10.14タイプ、Dianorm社、Muenchen、DEにおいて入手可能、中性セルロースから製造、排除サイズ(Ausschlussgroesse)5000Da、厚さ(乾燥):25μm、製造元の記載に従って前処理]を使用した。
【0229】
ヒトの皮膚を腹部から約250μmの厚さで取得した。2545cmの面積の面を有するTTSを同一の面積のヒトの皮膚上に施与し、その際、皮膚はシリコーン膜上のアクセプター側に存在する(図式1)。アクセプター層としてPBS(0.066モル)をpH6.2および温度32±0.5℃で使用した。実験は5mL/hの流出で72時間にわたって実施し、その際、3時間ごとに試料を取り出した。試料採取時間に放出媒体を32±0.5℃に温度調節した新鮮な媒体と交換し、かつ放出されたフェソテロジンの量をHPLCにより測定した。
【0230】
流出比Q(t)の測定を、次の式に従って測定セルの面積(0.552cm)に対して行った:
Q(t)=μg/cm=アクセプター体積のフェソテロジン濃度/0.552cm
【0231】
【表5】

【0232】
(b)作用物質放出の分析
皮膚調製物を通過する作用物質流出の測定をHPLC(カラムSpherisorb 5CN 25cm)により次の条件下で行った:アセトニトリル4体積部/HO 6体積部/TFA0.1%体積部、225nm、流れ1ml。
【0233】
4.分析:作用物質の純度の測定
フェゾテロジンの化学的な純度を測定するために、定常的な逆相を用いた分離に基づいたHPLC法を使用し、かつ溶離のために溶剤勾配を使用した。
【0234】
材料(例):
HPLC用のアセトニトリル、メタンスルホン酸(<99%、Fluka)、水(精製水、HPLC品質)、水ポンプ510、カラム炉(Waters Column Heater Modul、35℃)、試料供給装置(Waters Wisp 717、注入体積20μL)、UV検出器(Shimazu SPD 10A)、カラム(150×3.9mm、Symmetry Shield RP8、Waters Part No.WAT200655)。
【0235】
移動相:
メタンスルホン酸0.05%を含有するアセトニトリル(v/v、%)、成分A、
メタンスルホン酸0.05%を含有する水(v/v、%)、成分B、
勾配プログラム:時間(分)0.0、成分A15%および成分B85%を使用、
15分後:A60%およびB40%、20分後:A15%およびB85%、流速:1.2ml/分。
【0236】
A、BおよびCの参照溶液の濃度(図1、R=i−Pr)は、10〜250μg/mLであった。これより高い濃度ではピークの重なりによるテーリングが現れた。
【0237】
評価:
100%法による評価のために、すべてのピーク面積の平均値(三重測定)を加算し、かつ100%とした。個々のピークの面積(%)はこの値に対するものである。A、BおよびCに関する保持時間(分):5.9、9.0および12.6。
【0238】
5.分析:残留塩含有率の測定
溶剤としてのCDCl中の遊離塩基フェソテロジンの200MHzまたは500MHzのH−NMRスペクトルを記録し、かつ特徴的な共鳴シグナル群を次のように電子的に積分した:
δ=6.97ppm(二重線、芳香族水素、H、1H)、
δ=4.59ppm(一重線、HO−C、2H)、
δ=4.10ppm(三重線、H−プロピル、1H)。
【0239】
アニオン、たとえばフマル酸水素イオンの共鳴シグナル(δ=6.84ppm、=C−、2H)に対する関係は、残留塩の割合を生じる(モル%)。
【符号の説明】
【0240】
1 接着剤マトリックス、 2 裏側層、 3 剥離可能な層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、Aはジュウテリウムまたは水素であり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物において、前記化合物が97質量%を超える純度を有する遊離塩基として存在することを特徴とする、一般式Iの化合物。
【請求項2】
Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択されている、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
"*"により標識されたC原子が(R)−立体配置で存在する、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、(R)2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(フェソテロジン)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
医薬として使用するための請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
一般式I
【化2】

[式中、Aはジュウテリウムまたは水素であり、RはC−アルキル、C10−シクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はその都度Cアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物の、少なくとも97質量%の純度を有する一般式II
【化3】

[式中、AおよびRは上記の意味を有し、かつXは生理学的に認容性の酸の酸基であり、かつその際、"*"(星印)により標識されたC原子は(R)−立体配置、(S)−立体配置またはこれらの混合物として存在していてもよい]の結晶質の塩からの塩基の遊離による製法。
【請求項8】
式IIの化合物と、適切な遊離試薬との反応を水溶液中で行うことを特徴とする、請求項7記載の製法。
【請求項9】
遊離試薬が8〜11のpKを有し、かつ式Iの化合物の沈殿を生じない、請求項8記載の製法。
【請求項10】
(a)アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムの炭酸水素塩、
(b)アミン、ポリアミンおよび塩基性のポリアミノ酸および
(c)塩基性イオン交換体
の群から選択されている試薬を添加することにより、一般式IIの結晶質の塩から一般式Iの遊離塩基を遊離することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の製法。
【請求項11】
アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムの炭酸水素塩を添加することにより式IIの結晶質の塩から式Iの化合物を遊離することを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項記載の製法。
【請求項12】
式IIの塩から式Iの高純度の塩基を遊離した後で、ジクロロメタン、エチルメチルケトン、エチルアセテート、第三ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルならびにトルエンの群から選択されている溶剤を添加することを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載の製法。
【請求項13】
Rがメチル、エチル、イソ−プロピル、1−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、ペンチルおよびヘキシルの群から選択されており、かつ"*"(星印)で標識されたC原子が(R)−立体配置で存在することを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項記載の製法。
【請求項14】
式Iの化合物が(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートである、請求項7から13までのいずれか1項記載の製法。
【請求項15】
式IIの化合物が、(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアンモニオ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレートフマル酸水素塩である、請求項7から14までのいずれか1項記載の製法。
【請求項16】
請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物を含有する医薬製剤の製法において、該化合物が請求項7から15までのいずれか1項記載の方法により製造され、かつ次いで薬学的に認容性の担体と混合されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物を含有する医薬製剤の製法。
【請求項17】
請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物および薬学的に認容性の担体を含有する医薬製剤。
【請求項18】
薬学的に認容性の担体がポリマーである、請求項17記載の医薬製剤。
【請求項19】
請求項17または18記載の医薬製剤において、医薬製剤中で式Iの化合物を安定化し、その際、医薬製剤を5℃で貯蔵した場合に式Iの化合物の平均的な1月の含有率の低下を、相応する式Iの化合物を油状物として、および薬学的に認容性の担体の不存在下に貯蔵した場合の平均的な1月の含有率の低下により除することにより得られる安定化係数が少なくとも2であることを特徴とする、請求項17または18記載の医薬製剤。
【請求項20】
製剤が3.0〜6.0のpH値を有する、請求項17から19までのいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項21】
医薬製剤が経皮もしくは経粘膜投与のために適切である、請求項17から20までのいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項22】
医薬製剤が、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物がその中に溶解または分散しているポリマー層を有する、請求項17から21までのいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項23】
ポリマー層が、患者の皮膚上への医薬製剤の固定を可能にする感圧接着剤を含有する、請求項22記載の医薬製剤。
【請求項24】
ポリマー層が、患者の皮膚または粘膜上への医薬製剤の固定を可能にし、かつシリコーン、アクリレート、SXS、PIBまたはEVAをベースとする感圧接着剤から選択されている感圧接着剤を含有する、請求項22記載の医薬製剤。
【請求項25】
医薬製剤が接着剤中の作用物質のタイプの経皮吸収治療システムである、請求項17から24までのいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項26】
請求項17から25までのいずれか1項記載の医薬製剤および乾燥剤を含有するキット。
【請求項27】
一般式I
【化4】

[式中、Aは水素またはジュウテリウムであり、RはCアルキル、Cシクロアルキルまたはフェニルから選択される基を表し、該基はそれぞれCアルコキシ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、オキソ、メルカプトまたはジュウテリウムにより置換されていてもよく、かつ"*"(星印)で標識されたC原子は(R)−立体配位、(S)−立体配位またはこれらの混合物として存在していてもよい]の化合物を少なくとも3mg、ならびに少なくとも1の薬学的に認容可能な担体を含有し、その際、化合物Iの遊離塩基は97質量%を超える純度で存在する投与単位。
【請求項28】
化合物が、(R)−2−[3−(1,1−ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルイソブチレート(フェソテロジン)である、請求項27記載の投与単位。
【請求項29】
薬剤を製造するための請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項30】
薬剤が、失禁、排尿筋の機能亢進、膀胱の機能亢進、頻尿症、夜間頻尿症または切迫尿意の治療のために適切である、請求項29記載の使用。
【請求項31】
薬剤が、経皮または経粘膜の投与のための適切である、請求項29または30記載の使用。
【請求項32】
薬剤が、硬膏剤である、請求項29から31までのいずれか1項記載の使用。
【請求項33】
薬剤が、
(a)フェソテロジンの高純度の塩基が導入された粘着性ポリマー層を有し、かつ
(b)フェソテロジンが3〜15mg/日の流出比でヒトの皮膚を介して放出される
請求項29から32までのいずれか1項記載の使用。
【請求項34】
フェソテロジンの炭酸水素塩。
【請求項35】
失禁、排尿筋の機能亢進、膀胱の機能亢進、頻尿症、夜間頻尿症または切迫尿意の治療法において、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物または請求項17から25までのいずれか1項記載の医薬製剤を哺乳動物に投与することを特徴とする、失禁、排尿筋の機能亢進、膀胱の機能亢進、頻尿症、夜間頻尿症または切迫尿意の治療法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−215643(P2010−215643A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114291(P2010−114291)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2006−504989(P2006−504989)の分割
【原出願日】平成16年4月3日(2004.4.3)
【出願人】(591071997)ウーツェーベー ファルマ ゲーエムベーハー (39)
【氏名又は名称原語表記】UCB PHARMA GMBH
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】