説明

3Dディスプレイ

【目的】表示パネルおよび視野スキャン層を含む3Dディスプレイを提供する。
【解決手段】表示パネルを使用して、複数の表示映像を迅速に表示する。視野スキャン層は、表示パネル上に配置され、表示映像を受信する。視野スキャン層は、複数の光屈折変調領域を有する。光屈折変調領域のそれぞれは、視野スキャンユニットを含む。視野スキャンユニットは、印加電場に応じて光の進行方向を変化させ、各表示映像の一部を異なる視野方向に投影する。ここで、各視野方向はそれぞれ光の進行方向に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイに関するものであり、特に、3Dディスプレイ(3D display)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の3Dディスプレイ技術は、主に、立体式(stereoscopic)と裸眼立体式(auto-stereoscopic)に分類される。裸眼立体式の技術は、ホログラフィ法(holography)、容積法(volumetric)、多面法(multi-plane)、および空間多重方式(spatial-multiplexed)等を利用することによって達成される。しかしながら、上記の全ての方法には欠点がある。例えば、ホログラフィ法を実施する場合には、大量のデータを処理する必要があり、容積法または多面法では、機械のサイズやスペースによって制限される。
【0003】
従来の空間多重方式の3Dディスプレイ技術では、表示パネルの前方にバリヤ(barrier)またはレンズ(lens)が配置され、異なる位置に映像を投影して、観覧者の左目と右目がそれぞれ異なる角度で映像を受け取ることができる。そして、観覧者の左目と右目によって受け取られた映像が、観覧者の脳内で融合されて、3D映像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,064,424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来の3D液晶ディスプレイ(3D-liquid crystal display, 3D-LCD)の概略図である。図1を参照すると、液晶ディスプレイ100は、ピクセルユニット110の前方に配置された複数のパララックスバリヤ(parallax barrier)120を含み、一定の角度から出射された光を遮断する。そのため、観覧者の左目と右目がそれぞれ異なるピクセルユニット110を観察することによって、3D映像を見ることができる。
【0006】
しかしながら、液晶ディスプレイ100のパララックスバリヤ120は、光の大部分を遮断するため、3D映像の輝度が低下する。
【0007】
また、パララックスバリヤ120は、3D映像を左目と右目で受け取った映像にそれぞれ分割する。そのため、液晶ディスプレイ100が3D映像を表示することはできても、液晶ディスプレイ100に表示される映像の解像度は低下する。
【0008】
さらに詳しく説明すると、観覧者が左目または右目を閉じた時に、映像の解像度が半分に減少する。
【0009】
その上、2つの映像だけがそれぞれ左目と右目に提供されるため、対応する3D映像を見るためには、観覧者が適切な距離および位置にいる必要があり、見る位置の選択が限定される。
【0010】
図2は、別の従来の3D液晶ディスプレイの概略図である。図2を参照すると、液晶ディスプレイ200は、第1基板210と、第2基板220とを含む。
【0011】
3D液晶ディスプレイ200は、第2基板220上に曲面レンズ230を製造し、各曲面レンズ230を1つのピクセルユニット240に対応して配置して、対応するピクセルユニット240を通過する光の屈折角を曲面レンズ230によって制御できるようにする。
【0012】
このように、観覧者の両目が、異なるピクセルユニット240によって生じた異なる映像を受け取ることによって、3D映像を見ることができる。
【0013】
さらに、曲面レンズ230は、ピクセルユニット240によって生じた映像を異なる角度になるよう屈折させるため、観覧者の左目と右目が、異なる角度で投影された2つの映像をそれぞれ受け取っている限り、3D映像を見ることができる。そのため、図1に示した液晶ディスプレイ100と比較すると、液晶ディスプレイ200は、観覧者がより多くの視角で映像を受け取れるようにすることができる。
【0014】
つまり、観覧者は、異なる方向から異なる3D映像を見ることができる。
【0015】
注意すべきこととして、液晶ディスプレイ200が、固定された解像度で異なる視角を有する単一の3D映像を表示する場合、液晶ディスプレイ200によって提供された3D映像の解像度は、単一の視角を提供する液晶ディスプレイ100と比べて、大幅に低下する。
【0016】
さらに、曲面レンズ230を第2基板220上に製造し、各曲面レンズ230をピクセルユニット240の1つに対応して配置しなければならない。その結果、製造中に高いアラインメント精度が要求されるため、各曲面レンズ230を適切な位置に配置し、光の出射角を制御することが保証される。さらに、曲面レンズ230の製造が比較的困難である上、曲面レンズ230のそれぞれをピクセルユニット240の1つと正確に並べることも容易ではないため、液晶ディスプレイ200の製造コストを下げるのは難しい。
【0017】
米国特許第6,064,424号は、図2に示す液晶ディスプレイ200と類似する3D液晶ディスプレイを提供しており、傾斜したレンズ素子(slanted lenticular element)(図2の曲面レンズ230に相当)を使用して、各ピクセルユニット(図2のピクセルユニット240に相当)の光を異なる方向に投影することで、観覧者の左目と右目が異なる映像を受け取ることができ、3D映像を見ることができる。
【0018】
したがって、上記の米国特許に開示されている3Dディスプレイは、液晶ディスプレイ200と同じ解像度の問題を有する。
【0019】
以上のように、従来の空間多重方式の3Dディスプレイには、依然として、解像度が低い、輝度が不十分、視角が狭い、映像クロストーク(crosstalk)等の欠点が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、視野スキャン層を有する3Dディスプレイを提供することを目的とする。視野スキャン層は、印加電場に応じて光の進行方向を変化させ、各表示映像の一部を異なる視野方向に投影する。
【0021】
本発明は、表示パネルおよび視野スキャン層を含む3Dディスプレイを提供することを目的とする。表示パネルを使用して、複数の表示映像を迅速に表示する。視野スキャン層は、表示パネル上に配置され、表示映像を受信する。視野スキャン層は、複数の光屈折変調領域を有する。光屈折変調領域のそれぞれは、視野スキャンユニットを含む。視野スキャンユニットは、印加電場に応じて光の進行方向を変化させて、各表示映像の一部を異なる視野方向に投影し、視野方向はそれぞれ光の進行方向に対応する。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、視野スキャン層は、さらに、第1基板と、第2基板とを含む。第1基板は、第1ベースと、共通電極とを含む。共通電極が第1ベース上に配置され、視野スキャンユニットが共通電極上に配置される。第2基板は、第2ベースと、複数の制御電極とを含む。制御電極が第2ベース上に配置され、第2ベースが視野スキャンユニット上に配置される。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、視野スキャン層は、さらに、第1基板と、第2基板とを含む。第1基板は、第1ベースと、共通電極とを含む。共通電極が第1ベース上に配置され、視野スキャンユニットが共通電極上に配置される。第2基板は、第2ベースと、複数の制御電極とを含む。制御電極が第2ベース上に配置され、視野スキャンユニットの近くに設けられる。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、表示パネルは、複数のサブピクセル領域を有し、各視野スキャンユニットは、サブピクセル領域の一部にそれぞれ対応する。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、表示パネルは、さらに、第1発光層を含む。第1発光層は、サブピクセル領域の1つにそれぞれ設けられた複数の第1発光素子を含む。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、表示パネルは、さらに、第2発光層を含む。第2発光層は、第1発光層上に配置され、サブピクセル領域の1つにそれぞれ設けられた複数の第2発光素子を含む。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、第1発光装置は、有機発光ダイオードを含む。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、第2発光装置は、有機発光ダイオードを含む。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、視野スキャンユニットの材料は、液晶(liquid crystal, LC)分子または電気泳動流体(electro-wetting fluid)を含む。
【0030】
本発明の1つの実施形態において、共通電極および制御電極の材料は、透明導電材料を含む。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、共通電極および制御電極の材料は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide, ITO)または酸化インジウム亜鉛(indium zinc oxide, IZO)を含む。
【発明の効果】
【0032】
以上に基づき、本発明は、視野スキャンユニットの特性を利用して、つまり、印加電場に応じて光の進行方向を変化させることによって、各表示映像の異なる部分を異なる時間で複数の視野方向に投影する。そのため、観覧者の左目と右目は、異なる方向から表示映像を受け取ることができ、3D映像を見ることができる。
【0033】
本発明の上記及び他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の3D液晶ディスプレイの概略図である。
【図2】別の従来の3D液晶ディスプレイの概略図である。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る3Dディスプレイの概略的断面図である。
【図3B】図3Aに示す3Dディスプレイの領域Aの部分的拡大図である。
【図3C】図3Bに示す領域Cの液晶分子が電場を印加しない時の配列を図示したものである。
【図3D】図3Bに示す領域Cの液晶分子が電場を印加した時の配列を図示したものである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る3Dディスプレイの一部を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る3Dディスプレイ300の概略的断面図である。図3Aを参照すると、本実施形態の3Dディスプレイ300は、表示パネル310と、視野スキャン層320とを含む。表示パネル310は、表示映像I1〜I12(図3Aでは、12個のディスプレイのみを概略的に示す)を順番に迅速に表示するために用いられる。視野スキャン層320は、表示パネル310上に配置され、表示映像I1〜I12を受信する。図3Bは、図3Aに示す3Dディスプレイ300の領域Aの部分的拡大図である。図3Aおよび図3Bを同時に参照すると、視野スキャン層320は、複数の光屈折変調領域Bを有し、光屈折変調領域Bのそれぞれは、視野スキャンユニット322を含む。
【0036】
また、図3Bに示すように、視野スキャン層320は、さらに、第1基板324と、第2基板326とを含む。第1基板324は、第1ベース324aと、共通電極324bとを含む。共通電極324bが第1ベース324a上に配置され、視野スキャンユニット322が共通電極324b上に配置される。第2基板326は、第2ベース326aと、複数の制御電極326bとを含む。制御電極326bが第2ベース326a上に配置され、第2ベース326aが視野スキャンユニット322上に配置される。本実施形態において、共通電極324bおよび制御電極326bは、例えば、酸化インジウムスズ(indium tin oxide, ITO)または酸化インジウム亜鉛(indium zinc oxide, IZO)等の透明導電材料である。
【0037】
注意すべきこととして、本実施形態の視野スキャンユニット322は、印加電場に応じて光の進行方向を変化させる。そのため、視野スキャンユニット322は、各表示映像I1〜I12の一部を異なる視野方向d1〜d6(図3Aおよび図3Bでは、6つの方向のみを概略的に示す)に投影し、視野方向のそれぞれは光の進行方向に対応する。さらに、本実施形態において、視野スキャン層320は、例えば、液晶分子322aで構成され、光屈折変調領域Bのそれぞれは、複数の液晶分子(図3Bでは、1つの液晶分子のみを概略的に示す)を含む。
【0038】
図3Cは、図3Bに示す領域Cの液晶分子322aが電場を印加しない時の配列を図示したものである。図3Dは、図3Bに示す領域Cの液晶分子322aが電場を印加した時の配列を図示したものである。図3Bおよび図3Cを同時に参照すると、共通電極324bおよび制御電極326bに印加電圧を供給する前は、液晶分子が印加電場に影響されないため、全ての液晶分子は同じ方向(つまり、紙面に垂直な方向)に沿って配列される。また、液晶分子は複屈折性(birefringence)を有し、その実効屈折率はで示される(no およびneはそれぞれ液晶分子の正常屈折率(ordinary refractive index)および異常屈折率(extraordinary refractive index)である)。そのため、同じ方向で液晶分子322aに入射した光については、液晶分子322aの実効屈折率は全て同じである。このように、同じ方向の入射光は、異なる位置の液晶分子322aを通過した後、同じ屈折方向を有する。
【0039】
さらに、図3Dに示すように、共通電極324bおよび制御電極326bに電圧Vを印加した時、異なる位置の液晶分子322aは、対応する位置の電場に応じて、異なる方向に向かって傾斜する。そのため、同じ方向で液晶分子322aに入射する光については、液晶分子322aの実効屈折率が異なる。このように、同じ方向の入射光は、異なる位置の液晶分子322aを通過した後、異なる屈折方向を有する。
【0040】
以上に基づき、同じ方向で液晶分子322aに入射した光については、液晶分子322aの実効屈折率が印加電場によって連続変化した時、表示パネル310に表示された各表示映像I1〜I12の異なる部分は、異なる時間の液晶分子322aによって、異なる視野方向d1〜d6にそれぞれ投影される(いわゆる時間多重(time-multiplexed)概念である)。注意すべきこととして、液晶分子322aの実効屈折率の連続変化は、図3Bに示す視野スキャンユニット322の連続移動に等しいとみなされ、視野スキャンユニット322の機能は、屈折率こう配レンズ(gradient-index lens, GRIN lens)の機能と類似する。
【0041】
図3Aおよび図3Bを同時に参照して、さらに詳しく説明すると、表示パネル310が、表示映像I1〜I12をそれぞれ映像表示時間t1〜t12で表示しても、視野スキャンユニット322は、映像表示時間t1から映像表示時間t6までの位置P1にあるとみなされ、視野スキャンユニット322は、各表示映像I1〜I6の一部をそれぞれ映像表示時間t1〜t6で視野方向d1〜d6に屈折させる。映像表示時間t7から映像表示時間t12までの時、視野スキャンユニット322は、位置P2にあるとみなされ、視野スキャンユニット322は、各表示映像I7〜I12の一部をそれぞれ映像表示時間t7〜t12で視野方向d1〜d6に屈折させる。つまり、液晶分子322aで構成された視野スキャンユニット322は、可動式切換用液晶レンズ(moveable switching LC lens)に等しく、光屈折変調領域Bにおいて前後に連続移動する。
【0042】
さらに、本実施形態において、表示映像I1およびI7は実質的に同じ表示映像であるが、視野スキャンユニット322は、表示映像I1(表示映像I7)の異なる部分を異なる位置に投影する。そのため、観覧者が完全な3D表示映像を見られるようにするためには、位置P1から位置P2までの視野スキャンユニット322の移動を、フレーム時間(frame period)内に完成させなければならない。
【0043】
特に、本実施形態において、位置P1および位置P2の視野スキャンユニット322は、各表示映像I1〜I6(または表示映像I7〜I12)の半分にそれぞれ貢献する。
【0044】
このように、3Dディスプレイ300は、時間多重方式を利用して、3D映像全体を表示するため、表示映像を左目で受け取った映像と右目で受け取った映像に空間的に分割することによって3D映像を表示する従来の3Dディスプレイ(すなわち、図1の液晶ディスプレイ100)とは異なる。
【0045】
また、3Dディスプレイ300は、従来の時間多重方式ディスプレイで生じる映像のブレ(image flicker)がない。
【0046】
注意すべきこととして、図3Bでは位置P1およびP2の2つしか示していないが、別の実施形態において、位置P3〜P6(図示せず)等の他の位置が、位置P1およびP2の間に含まれてもよい。
【0047】
したがって、視野スキャンユニット322の移動経路は、順番に位置P1、P3、P4、P5およびP6から位置P2までである。さらに、位置P1〜P6のそれぞれの視野スキャンユニット322は、各表示映像I1〜I6の一部(つまり、1/6)を視野方向d1〜d6に投影する。
【0048】
つまり、異なる位置の視野スキャンユニット322は、各表示映像I1〜I6の一部(つまり。1/6)に貢献する。視野スキャンユニット322の迅速な移動および高速スキャンによって、異なる位置の視野スキャンユニット322を使用して、完全な表示映像I1〜I6を各視野方向d1〜d6に表示し、各表示映像I1〜I6の異なる部分を同じ視野方向に投影することができる。
【0049】
同様にして、位置P1、P3、P4、P5およびP6から位置P2までの視野スキャンユニット322の移動も、フレーム時間内に完成されなければならない。
【0050】
一方、映像表示時間t1と、視野スキャンユニット322が位置P1に戻って表示映像I1と同じ部分を表示する時間との間の時間間隔は、人間の視覚残留時間の範囲よりも短くなくてはならない。
【0051】
こうして、観覧者は、異なる視野方向(すなわち、d1〜d6)からでも、映像表示時間t1で同じ映像を見ることができ、完全な3D映像を見ることができる。
【0052】
注意すべきこととして、本実施形態の視野スキャンユニット322は、レンズに等しい。しかしながら、視野スキャンユニット322は、例えばプリズムや液晶格子(LC grating)のように、共通電極324bおよび制御電極326bの相対位置を変化させることによって光の進行方向を変化させる全ての素子に等しくてもよい。さらに、本実施形態の視野スキャンユニット322は液晶分子で構成されているが、別の実施形態において、視野スキャンユニット322は電気泳動流体(electro-wetting fluid)で構成されてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態において、6個の模式的な視野方向d1〜d6があるが、別の実施形態において、3Dディスプレイはそれ以上またはそれ以下の視野方向を提供することができる。例えば、32個の異なる視野方向を提供する場合、視野スキャンユニット322は、それぞれの表示映像を32個の映像表示時点毎に32個の視野方向に繰り返し投影し、第1映像表示時間と第32映像表示時間の間の時間間隔は人間の視覚残留時間の範囲よりも短い。さらに、本実施形態の3Dディスプレイ300は、複数の制御電極326bを含むため、共通電極324bおよび制御電極326bに印加電圧が供給された時、複数の視野スキャンユニット322は、機能上、視野スキャン層320全体に形成されたレンズまたはプリズムに等しく、各視野スキャンユニット322は、光屈折変調領域Bのうちの1つにそれぞれ設置される。本実施形態の視野スキャン層320は、複数の制御電極326bを含むため、光屈折変調領域Bのそれぞれは、対応する視野スキャンユニット322の1つを有し、図3Bに示すように、本実施形態の視野スキャンユニット322は、表示映像I1〜I12のそれぞれの異なる部分を視野方向d1〜d6に正確に投影することができる。つまり、視野スキャンユニット322の機能は、完全レンズまたは完全プリズムとほぼ同じである。
【0054】
また、図3Aおよび図3Bに示すように、表示パネル310は、さらに、第1発光層312と、第2発光層314とを含む。表示パネル310は複数のサブピクセル領域D1を有し、3個毎のサブピクセル領域D1が1つの画素領域Dを形成する。第1発光層312は、サブピクセル領域D1の1つにそれぞれ設けられた複数の第1発光素子312aを含む。第2発光層314は、サブピクセル領域D1の1つにそれぞれ設けられた複数の第2発光素子314aを含む。そのため、第1発光層312および第2発光層314の両方は、それぞれ完全な表示映像を提供することができる。注意すべきこととして、表示映像I1〜I12の各ピクセル情報は、観覧者の左目と右目によって完全に受け取ることができるため、各表示映像を左目の表示領域と右目の表示領域に部分的に分割する従来の空間多重ディスプレイとは異なる。このように、観覧者は完全な表示映像を各視野方向で見ることができるため、本実施形態の3Dディスプレイに表示された映像の解像度は、従来の3Dディスプレイに表示された映像の解像度よりも高い。
【0055】
また、本実施形態の3Dディスプレイ300は、2つの発光層(すなわち、第1発光層312と第2発光層314)を有するため、3Dディスプレイ300の映像リフレッシュレートは、1つの発光層しか持たないディスプレイの2倍になる。さらに詳しく説明すると、第1発光層312によって表示映像I1のバックライトが映像表示時間t1で提供された場合、第2発光層314によって表示映像I2のバックライトが映像表示時間t2で提供される。そのため、表示パネル310が表示映像I2を提供した時、第1発光層312は、次の映像表示時間t3で表示映像I3のバックライトを提供する準備をすることができる。すなわち、表示映像I1〜I12のバックライトは、第1発光層312および第2発光層314によって交互に提供される。そのため、3Dディスプレイ300の映像リフレッシュレートは、1つの発光層しか持たないディスプレイの2倍になる。注意すべきこととして、発光層の数は設計者によって変更されてもよい。別の実施形態において、3Dディスプレイ300は、さらに、第3発光層(図示せず)を含んでもよく、この3Dディスプレイの映像リフレッシュレートは、1つの発光層しか持たないディスプレイの3倍になる。
【0056】
さらに、図3Bに示すように、各視野スキャンユニット322は、サブピクセル領域D1(本実施形態では、9つのサブピクセル領域D1を概略的に示す)の一部にそれぞれ対応する。その上、3Dディスプレイ300が提供することのできる視角の数(つまり、視野方向の数)は、視野スキャンユニット322に対応するサブピクセル領域D1の数(またはピクセル領域Dの数)と関連する。さらに詳しく説明すると、視野スキャンユニット322に対応するサブピクセル領域D1が多ければ多いほど、3Dディスプレイ300が提供することのできる視角も多い。つまり、3Dディスプレイ300は、より広い視角を提供することができる。そのため、視野スキャンユニット322に対応するサブピクセル領域D1の数(またはピクセル領域Dの数)を調整することによって、必要な視角の数を調整することができる。
【0057】
その上、本実施形態の表示パネル310は、さらに、第3基板316と、第4基板318とを含み、第1発光層312が第3基板316上に配置され、第2発光層314が第4基板318上に配置される。第3基板316および第4基板318は、例えば、透明基板である。第1発光素子312aおよび第2発光素子314aは、例えば、有機発光ダイオード(organic light emitting diode, OLED)である。さらに詳しく説明すると、第1発光素子312aおよび第2発光素子314aは、例えば、赤・緑・青の有機発光ダイオードであり、赤・緑・青の有機発光ダイオードは、異なるサブピクセル領域D1にそれぞれ設置される。言及すべきこととして、第1発光素子312aおよび第2発光素子314aは有機発光ダイオードであるが、別の実施形態において、第1発光素子312aおよび第2発光素子314aは他の自己発光性素子(self-luminous device)でもよい。さらに、本実施形態に係る3Dディスプレイ300は、有機発光ダイオードをバックライトソースとして使用するため、バックライトがピクセルモジュールとして直接画像形成に使用され、3Dディスプレイ300がカラーフィルター(color filter, CF)またはその他の素子を利用しなくても、表示映像を提供することができる。そのため、3Dディスプレイ300の輝度は、従来のディスプレイの輝度よりも高い。
【0058】
以下の実施形態および図面において、同一または類似する構成要素に対して同一または類似する参照符号を示し、簡潔に説明する。
【0059】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る3Dディスプレイの一部を示す概略的断面図である。本実施形態の3Dディスプレイ400は、図3Bの3Dディスプレイ300と類似するが、この二者間の主な差異は、3Dディスプレイ400の制御電極326bが第2ベース326a上に配置され、視野スキャンユニット322の近くに設けられていることである。そのため、視野スキャンユニット322は、制御電極326bに異なる電圧を印加することによって、フレネルレンズ(Fresnel lens)に等しいとみなすことができる。詳細は、以下の通りである。
【0060】
図4に示すように、制御電極326bは、第2ベース326a上に配置され、視野スキャンユニット322の近くに設けられており、異なる数の制御電極326bは複数の等価電極にそれぞれ分割され、それぞれの制御電極326bは同じ幅を有する。注意すべきこととして、各等価電極は、それぞれ等価電圧V0〜V3に対応するため、視野スキャンユニット322はフレネルレンズの効果と同じ効果をもたらす。
【0061】
一般的に、フレネルレンズは伝統的な凸面レンズの曲面および孤度を有するが、伝統的な凸面レンズよりも薄い。そのため、フレネルレンズを製造する材料およびフレネルレンズの体積を減らすことができる。同様に、上記の原理に基づいて、視野スキャン層320の厚さも減らすことができる。詳しくは、図4に示した厚さLの部分である。
【0062】
また、視野スキャンユニット322は、それぞれの制御電極326bに異なる時間で異なる電圧が印加された時に前後に継続的に動くフレネルレンズに等しいとみなされる。そのため、上述したような視野スキャンユニット322のスキャン効果が達成される。特に、制御電極326bに対応する印加電圧V0〜V3がx方向に沿ってシフトした場合に、視野スキャンユニット322も同じくx方向に沿って移動する。そのため、3Dディスプレイ400は、視野スキャン層320の厚さ(特に厚さL)が減ることによって、視野スキャン層320の液晶分子322aの応答時間が短くなるため、視野スキャン層320が固定時間の間にスキャン操作を迅速に行うことができる。
【0063】
以上のように、本発明の実施形態の視野スキャンユニットは、印加電場に応じて光の進行方向を変化させることができる。そのため、時間多重方式を利用することによって、異なる映像を異なる時間で異なる視野方向に継続的に投影することができ、幅広い視角を達成することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態の3Dディスプレイは、2層の有機発光ダイオードをバックライトソースとして使用するため、3Dディスプレイは映像フレーム速度および輝度が高い。この他、上記の実施形態で説明した3Dディスプレイは、観覧者に完全な表示映像を異なる視野方向に提供するもので、映像解像度を減らすことによって複数の視角を達成する従来の3Dディスプレイとは異なるため、上記の実施形態において説明した3Dディスプレイは、従来の3Dディスプレイよりも高い解像度を有する。
【0065】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0066】
100、200 液晶ディスプレイ
110、240 ピクセルユニット
120 パララックスバリヤ
210、324 第1基板
220、326 第2基板
230 曲面レンズ
300、400 3Dディスプレイ
310 表示パネル
312 第1発光層
312a 第1発光素子
314 第2発光層
314a 第2発光素子
316 第3基板
318 第4基板
320 視野スキャン層
322 視野スキャンユニット
322a 液晶分子
324a 第1ベース
324b 共通電極
326a 第2ベース
326b 制御電極
1〜d6 視野方向
1〜I12 表示映像
1〜t12 映像表示時間
B 光屈折変調領域
D ピクセル領域
1 サブピクセル領域
L 厚さ
1〜P6 位置
V0〜V3 等価電圧
x 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示映像を表示する表示パネルと、
前記表示パネル上に配置されて前記表示映像を受信し、複数の光屈折変調領域を有する視野スキャン層と
を含み、前記光屈折変調領域のそれぞれが、印加電場に応じて光の進行方向を変化させ、前記各表示映像の一部を異なる視野方向に投影する視野スキャンユニットを有し、前記各視野方向がそれぞれ前記光の前記進行方向に対応する3Dディスプレイ。
【請求項2】
前記視野スキャン層が、さらに、
第1ベースおよび共通電極を有し、前記共通電極が前記第1ベース上に配置され、前記視野スキャンユニットが前記共通電極上に配置された第1基板と、
第2ベースおよび複数の制御電極を有し、前記制御電極が前記第2ベース上に配置され、前記第2ベースが前記視野スキャンユニット上に配置された第2基板と
を含む請求項1記載の3Dディスプレイ。
【請求項3】
前記視野スキャン層が、さらに、
第1ベースおよび共通電極を有し、前記共通電極が前記第1ベース上に配置され、前記視野スキャンユニットが前記共通電極上に配置された第1基板と、
第2ベースおよび複数の制御電極を有し、前記制御電極が前記第2ベース上に配置され、前記視野スキャンユニットの近くに設けられた第2基板と
を含む請求項1記載の3Dディスプレイ。
【請求項4】
前記表示パネルが複数のサブピクセル領域を有し、前記各視野スキャンユニットが前記サブピクセル領域の一部にそれぞれ対応する請求項1記載の3Dディスプレイ。
【請求項5】
前記表示パネルが第1発光層をさらに含み、前記第1発光層が前記サブピクセル領域の1つにそれぞれ設置された複数の第1発光素子を含む請求項4記載の3Dディスプレイ。
【請求項6】
前記表示パネルが前記第1発光層上に配置された第2発光層をさらに含み、前記第2発光層が前記サブピクセル領域の1つにそれぞれ設置された複数の第2発光素子を含む請求項5記載の3Dディスプレイ。
【請求項7】
前記第1発光素子が有機発光ダイオードを含む請求項5記載の3Dディスプレイ。
【請求項8】
前記第2発光素子が有機発光ダイオードを含む請求項6記載の3Dディスプレイ。
【請求項9】
前記視野スキャンユニットの材料が液晶分子または電気泳動流体を含む請求項1記載の3Dディスプレイ。
【請求項10】
前記共通電極および前記制御電極の材料が透明導電材料を含む請求項2記載の3Dディスプレイ。
【請求項11】
前記共通電極および前記制御電極の前記材料が酸化インジウムスズまたは酸化インジウム亜鉛を含む請求項10記載の3Dディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−277064(P2010−277064A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−241178(P2009−241178)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】