説明

4‐ヒドロキシタモキシフェン系ゲル製剤

【課題】4‐ヒドロキシタモキシフェンを含有する医薬組成物及びゲル、並びにそれらの使用方法を提供すること。
【解決手段】0.105−0.950%の4−ヒドロキシタモキシフェンと、50−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコールと、0.1−5.0%の少なくとも1種類のゲル化剤と、0.1−5.0%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−50%の水性媒体とを含み、パーセンテージ(%)は組成物の重量に対する重量である医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4‐ヒドロキシタモキシフェンを含有する医薬組成物及びゲル、並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物4‐ヒドロキシタモキシフェン(以下、4‐OHTと称する)又は1‐[4‐(2‐N‐ジメチルアミノエトキシ)フェニル]‐1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐フェニルブタ‐1‐エンは、良好な特徴を有する抗エストロゲン化合物のタモキシフェンの活性代謝産物を構成する。2個の炭素原子の間の二重結合の存在により、4‐ヒドロキシタモキシフェンには、2種類の立体異性体が存在する。医学・生化学の文献によると、4‐ヒドロキシタモキシフェンの異性体は、通常、シス異性体及びトランス異性体と命名される。しかしながら、純粋に化学的な考え方から、二重結合の炭素原子の各々は同じ化学基を含まないため、この命名は厳密には正確でない。このため、異性体を(E)(いわゆるシス形態)と(Z)(いわゆるトランス形態)の構造と称するのが適切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Mauvais‐Jarvisらの米国特許第4919937号明細書は、4‐OHT製剤を開示している。しかしながら、この製剤は浸透促進剤を含まず、特に、4‐OHTと一緒にプロゲステロンを共投与するように設計されている。とりわけ、高用量の送達について、患者にとって取り扱いや服薬遵守が容易であり、改良された安全プロファイルと適切な全身作用によって、4‐OHTの再現的な送達を可能にする改良された4‐OHT含有製剤に対するニーズが存在している。また、皮膚に対して活性成分の有効的な浸透を可能にする4‐OHT局所製剤に対するニーズも存在している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、4‐OHTを含有する医薬組成物及びゲル、並びにその使用方法を提供する。詳しくは、本発明は、局所及び経皮塗布に適した水アルコール性医薬組成物を提供し、前記組成物は、組成物の全重量に対して0.105〜0.950重量%の4‐ヒドロキシタモキシフェンを含有する。本発明の組成物は、単独又は別の医薬と組み合わせて、極めて効果的な4‐OHTの送達を達成する。更に、本発明の組成物は、とりわけ高用量(例えば、1mg以上の4‐OHT、好ましくは、2mg以上の4‐OHT)を考慮しながら、有効的な患者の服薬遵守を可能にする。また、本発明の組成物は、適切な全身暴露を示す。
【0005】
このように、本発明は、4‐OHT、少なくとも1種類のC〜Cアルコール、少なくとも1種類のゲル化剤、少なくとも1種類の浸透促進剤、及び水性媒体を含む医薬組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記医薬組成物を、例えば、ゲル、溶液、クリーム、ローション、スプレー、軟膏、及びエアロゾルのような種々の形態で製造することができる。好ましくは、前記医薬組成物は、ゲルであり、局所投与に適する。
【0007】
本願明細書における「4‐OHT(4‐ヒドロキシタモキシフェン)」という用語は、1‐[4‐(2‐N‐ジメチルアミノエトキシ)フェニル]‐1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐フェニルブタ‐1‐エンを意味する。4−OHTには、(Z)異性体及び(E)異性体の双方、その混合物のみならず、ラセミと非ラセミの混合物が含まれる。(Z)異性体は、(E)異性体よりも活性的であるため好ましい。
【0008】
〜Cアルコールは当該技術で周知である。こうしたアルコールには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(プロパン‐2‐オール)、n‐プロパノール(プロパン‐1‐オール)、ブタノール、ブタン‐1‐オール、ブタン‐2‐オール、ter‐ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールが挙げられる。エタノールは、皮膚に接触すると直ちに蒸発して4‐OHTを有効的に経皮通過を導くため、好ましい。ゲル化剤は、当該技術で周知である。
【0009】
「ゲル化剤」という用語は、一般に、ポリマー特性を有するとされる化合物であって、水のような特定の溶媒と接触するとゲル化する能力を有する化合物を意味する。ゲル化剤は、本発明による医薬組成物の粘度を高めることができるが、可溶化剤として作用することもできる。ゲル化剤の例には、アクリル酸系ポリマー(例えば、CARBOPOL(登録商標)(B.F. Goodrich Specialty Polymers and Chemicals Division、クリーブランド、オハイオ州)等のアニオン性ポリマー等)、セルロース誘導体、ポロキサマー及びポロキサミン、詳しくは、カルボマー又はアクリル酸系ポリマー、(例えば、Carbopol(登録商標)980又は940、981又は941、1382又は1382、5984、2984、934又は934P(Carbopol(登録商標)は、通常、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸ポリマー)、Pemulen TR1(登録商標)又はTR2(登録商標)、Ultrez, Synthalen CR等)と、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、及びこれらの混合物と、Lutrol(登録商標)グレード68又は127等のポロキサマー又はポリエチレン‐ポリプロピレンコポリマー、ポロキサミン、及びキトサン、デキストラン、ペクチン、及び天然ガム等の別のゲル化剤、が挙げられる。これらのゲル化剤はいずれも、単独又は組み合わせにより、本発明による医薬組成物に使用することができる。本発明の目的に照らして、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、及びこれらの混合物は、特に好ましい。
【0010】
また、浸透促進剤は、当該技術で周知である。「浸透促進剤」は、一般に、皮膚に浸透する薬物又は活性成分の送達を促進すると知られている薬剤である。また、これらの薬剤は、透過促進剤、浸透補助剤、及び吸収促進剤と称されている。この分類の薬剤には、薬物の溶解性と拡散性を改善する機能を有するものと、角質層の能力を変化させて水分を保持するか、皮膚を軟化させるか、皮膚の浸透性を改善するか、浸透助剤又は毛包オープナーとして作用するか、或いは境界層のような皮膚の状態を一時的に変化させることによって経皮吸収を改良するものと、を含む、様々な作用機序を有するものが挙げられる。本発明に適する浸透促進剤は、脂肪酸の官能基誘導体であってよく、脂肪酸の等配電子変種、又は脂肪酸のカルボキシル官能基の非酸性誘導体、若しくはその等配電子変種を含む。一実施形態において、脂肪酸の官能基的誘導体は、アルコール、ポリオール、アミド、及びこれらの置換誘導体のように、−COOH基がその官能基的誘導体で置換された不飽和アルカン酸である。用語「脂肪酸」は、4〜24個の炭素原子を有する脂肪酸を意味する。浸透促進剤の非限定的な例として、イソステアリン酸、オクタン酸、及びオレイン酸のようなC〜C22脂肪酸と、オレイルアルコール及びラウリルアルコールのようなC〜C22脂肪アルコールと、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、及びラウリン酸メチルのようなC〜C22脂肪酸の低級アルキルエステルと、アジピン酸ジイソプロピルのようなC〜C二酸のジ(低級)アルキルエステルと、モノラウリン酸グリセリルのようなC〜C22脂肪酸のモノグリセリドと、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルと、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールと、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテルと、ジエチレングリコールモノメチルエーテルと、ポリエチレンオキシドのアルキルアリールエーテルと、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルと、ポリエチレンオキシドジメチルエーテルと、ジメチルスルホキシドと、グリセロールと、酢酸エチルと、アセト酢酸エステルと、ピロリドン及びN−アルキルピロリドンと、テルペンと、ヒドロキシ酸と、尿素と、精油と、これらの混合物が挙げられる。好ましい例には、ミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。これらの浸透促進剤はいずれも、単独又は組み合わせにより、例えば2又は3種類の異なる浸透促進剤を使用することもできる。
【0011】
水性媒体は、当該技術で周知である。本発明の別の態様によると、前記水性媒体は、水以外にも、例えば、少なくとも1つの緩衝剤のようなpH調節に有用な成分を含む。緩衝剤、とりわけ薬理学的に許容できる緩衝剤は、当該技術で周知である。一態様において、前記水性媒体は、好ましくは、クエン酸ナトリウム及び/又はクエン酸カリウム等のクエン酸塩緩衝剤、トリスマレイン酸塩等のトリス緩衝剤、セーレンセンの緩衝剤、二塩基又は一塩基リン酸ナトリウム等の二塩基性又は一塩基性リン酸塩を含むリン酸塩緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1種類の緩衝剤を含む。
【0012】
別の態様において、本発明の医薬組成物は、塩基を更に含む。好適には、前記塩基は、好ましくは、薬理学的に許容できるトリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノール又はトロメタミン、及びこれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。前記医薬組成物のpHが、経皮投与について最適化されていない場合、例えば、前記ゲル化剤が、少なくとも1種類のアクリル酸系ポリマーを含む場合、前記塩基は、ヒトの皮膚への局所塗布用の前記医薬組成物を中和させる。更に、前記塩基(中和剤)は、電荷の中和及びポリマー塩の形成の際に、ポリマー鎖の膨潤を最適にする。とりわけ前記ゲル化剤が、アクリル酸系ポリマーを含む場合、前記塩基は、好ましくは、トリエタノールアミンを含む。また、本発明による医薬組成物において、最適な粘度が得られることを可能にする。組成物の最終pHを望ましいものにするため、とりわけ、組成物中に存在する前記ゲル化剤の性質と組成物中のアルコール含有量に応じて、組成物中の前記塩基の適量を選択する方法は、当業者に周知である。例えば、カルボマー及び/又はアルコールの含有率が高い場合、塩基として適量のトロメタミン及び/又はNaOHを用い、組成物の最終pHを望ましいものにすることができる。塩基/ゲル化剤の比は、好ましくは10:1〜0.1:1、より好ましくは7:1〜0.5:1、更により好ましくは4:1〜1:1である。
【0013】
特に明記しない限り、パーセント(%)は、組成物の全重量に対する重量を意味する。本願明細書におけるアルコールの量は、無水エタノール等の無水アルコールの含有量を意味する。
【0014】
一態様において、前記医薬組成物は、0.105−0.950%、好ましくは、0.105−0.195%、より好ましくは、0.105−0.185%、より好ましくは、0.105−0.175%、より好ましくは、0.105−0.165%、より好ましくは、0.105−0.155%、より好ましくは、0.105−0.145%、より好ましくは、0.105−0.135%、より好ましくは、0.105−0.125%、より好ましくは、0.107−0.119%、より好ましくは、0.111−0.118%、より好ましくは、0.112−0.117%、更により好ましくは、0.113−0.116%、最も好ましくは、0.114−0.115%の4−OHTを含む。
【0015】
別の態様において、前記医薬組成物は、0.205−0.950%、好ましくは、0.210−0.900%、より好ましくは、0.215−0.800%、更により好ましくは、0.220−0.750%、更により好ましくは、0.220−0.700%、更により好ましくは、0.220−0.600%、更により好ましくは、0.220−0.500%、更により好ましくは、0.220−0.400%、最も好ましくは、0.220−0.350%の4−OHTを含む。
【0016】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物は、40−80%、好ましくは、45−75%、より好ましくは、50−75%、更により好ましくは、55−75%、最も好ましくは、60−75%の少なくとも1種類のアルコールを含む。
【0017】
本発明の別の態様において、前記C−Cアルコールは、エタノール、プロパン−1−オール、及びプロパン−2−オール、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記C−Cアルコールは、エタノールである。
【0018】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物は、0.1−5.0%、好ましくは、0.15−4.5%、より好ましくは、0.2−4.0%、更により好ましくは、0.25−3.5%、更により好ましくは、0.3−3.0%、更により好ましくは、0.4−2.5%、更により好ましくは、0.5−2.0%、最も好ましくは、約0.5−1.5%の少なくとも1種類のゲル化剤を含む。
【0019】
本発明の別の態様において、前記ゲル化剤は、セルロースエステル及び誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体)、並びにそれらの混合物を含むセルロース化合物の群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む。好ましくは、前記ゲル化剤は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、前記ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばKlucel)を含む。
【0020】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物は、0.1−5.0%、好ましくは、0.15−4.5%、より好ましくは、0.2−4.0%、更により好ましくは、0.25−3.5%、更により好ましくは、0.3−3.0%、更により好ましくは、0.4−2.5%、更により好ましくは、0.5−2.0%、最も好ましくは、約0.5−1.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤を含む。
【0021】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物は0.4−2.0%、好ましくは、0.5−1.9%、より好ましくは、0.5−1.8%、更により好ましくは、0.5−1.7%、更により好ましくは、0.5−1.6%、更により好ましくは、0.5−1.5%、更により好ましくは、0.6−1.4%、更により好ましくは、0.7−1.3%、更により好ましくは、0.8−1.2%、最も好ましくは、約0.9−1.1%、又は1.0%のミリスチン酸イソプロピルを含む。
【0022】
本発明による組成物は、数種類の浸透促進剤を含むことができる。
【0023】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物は20−50%、好ましくは、20−40%の水性媒体を含む。
【0024】
本発明の別の態様において、前記水性媒体は、好ましくは、少なくとも1種類の緩衝液、特にリン酸塩緩衝液を含む。
【0025】
本発明の別の態様において、前記医薬組成物のpHは、好ましくは、7−11、より好ましくは、7.5−10.5、更により好ましくは、8.0−10.0、更により好ましくは、8.5−10.0、最も好ましくは、約8.5−9.5である。
【0026】
一実施形態において、本発明は、0.205−0.950%(それぞれ0.105−0.950%)の4−OHTと、40−80%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.1−5.0%の少なくとも1種類のゲル化剤、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.1−5.0%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−50%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、0.210−0.900%(それぞれ0.105−0.185%)の4−OHTと、40−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.15−4.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.15−4.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、0.215−0.800%(それぞれ0.105−0.165%)の4−OHTと、45−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.2−4.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.2−4.0%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.750%(それぞれ0.105−0.145%)の4−OHTと、45−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.25−3.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.25−3.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.700%(それぞれ0.105−0.125%)の4−OHTと、50−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.3−3.0%の少なくとも1種類のゲル化剤と,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.3−3.0%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.600%(それぞれ0.111−0.118%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.4−2.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.4−2.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.500%(それぞれ0.112−0.117%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.5−2.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.5−2.0%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.400%(それぞれ0.113−0.116%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.5−1.5%の少なくとも1種類のゲル化剤と、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.5−1.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.350%(それぞれ0.114−0.115%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.5−1.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.5−1.5%の少なくとも1種類の浸透促進剤と、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、0.205−0.950%(それぞれ0.105−0.950%)の4−OHTと、40−80%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.1−5.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.4−2.0%のミリスチン酸イソプロピルと、20−50%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、0.210−0.900%(それぞれ0.105−0.185%)の4−OHTと、40−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.15−4.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.5−1.8%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、0.215−0.800%(それぞれ0.105−0.165%)の4−OHTと、45−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.2−4.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.6−1.4%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.750%(それぞれ0.105−0.145%)の4−OHTと、45−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.25−3.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.5−1.5%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0039】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.700%(それぞれ0.105−0.125%)の4−OHTと、50−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.3−3.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.6−1.4%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.600%(それぞれ0.111−0.118%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.4−2.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.7−1.3%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.500%(それぞれ0.112−0.117%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.5−2.0%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.8−1.2%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.400%(それぞれ0.113−0.116%)の4−OHTと、60−75%の少なくとも1種類のC−Cアルコール,好ましくは、エタノールと、0.5−1.5%の少なくとも1種類のゲル化剤,好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースと、0.9−1.1%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、0.220−0.350%(それぞれ0.114−0.115%)の4−OHTと、60−75%のエタノール、0.5−1.5%のヒドロキシプロピルセルロースと、0.4−2.0%のミリスチン酸イソプロピルと、20−40%の水性媒体とを含む医薬組成物を提供する。
【0044】
更に、前記医薬組成物は、塩、緩和剤、安定剤、抗菌剤、芳香剤、及び/又は噴射剤を含む通常の医薬品添加物を含むことができる。前記医薬組成物は、少なくとも1種類の有効成分を更に含むこともできる。
【0045】
また、本発明は、本発明による前記医薬組成物を含む経皮性又は経皮的の送達に有用なゲルを提供する。従って、本発明は、4−OHT含有水性アルコールゲルもまた目的とする。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、前記医薬組成物又は前記水性アルコールゲルを含有する服用パケット、単位剤形用パケット又は多回投与用パケットを提供する。好都合には、このような前記医薬組成物の調節によって、患者への塗布が容易になる。従って、これらのパケットの形態が塗布計画(例えば毎日投与又は毎週投与)を反映してもよい。
【0047】
他の実施形態は、前記医薬組成物又は前記水性アルコールゲルを含有する、例えば手動ポンプ又は弁を備えたディスペンサーを提供する。このようなディスペンサーは、塗布される組成物の量に応じて投薬量の変化させることができる。
【0048】
一実施形態において、前記パケット又はディスペンサーには、その使用方法の注意書きを付記してもよい。
【0049】
本発明の医薬品組成物、ゲル、パケット、及び容器は、様々な症状及び/又は疾患の治療に有用である。
【0050】
本願明細書における用語「治療する」又は「治療」は、哺乳類の抑うつ障害に関連する症状、障害、又は疾病の治療を意味し、限定されるものではないが、その症状、障害、又は疾病に罹患しやすいが、その症状、障害、又は疾病に罹患しているとは未だ診断されていない被検者において、その症状、障害、又は疾病の発症を予防すること、その症状、障害、又は疾病を阻害、例えば、その症状、障害、又は疾病の発症を抑止すること、その症状、障害、又は疾病を軽減、例えば、その症状、障害、又は疾病を後退させること、或いは、その疾病又は障害に起因する症状を軽減、例えば、その疾病もしくは障害の症状を停止させることが挙げられる。
【0051】
症状、障害、又は疾病に関連する用語「予防する」又は「予防」は、症状、障害、又は疾病が発症していない場合はそれらを発症させず、その症状、障害、又は疾病が発症している場合は、更に症状、障害、又は疾病を発生させないことを意味する。
【0052】
とりわけ、本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、緻密な乳房組織に関する症状を治療する及び/又は予防するのに有用である。高密度の乳房組織は、乳癌リスクの予測因子であり、マンモグラフの診断感度を低下させることから、これは、癌の検出及び診断にとって大きな問題である。前記緻密な乳房組織は、散在性又は結節性であり得る。
【0053】
本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、良性の乳房疾病を治療及び/又は予防するのに有用である。良性の乳房疾病は、通常、乳房組織における一連の一般的な非悪性の異常群を意味する。この異常には、明確な組織学的特徴を有する多数の病変が含まれ、増殖性又は非増殖性に分類することができる。本方法によって治療可能な良性乳腺疾患には、腺疾患、嚢胞、管拡張症、線維腺腫、線維症、過形成、異形成、及び他の線維嚢胞性変化が挙げられる。この疾病の各々は、有病率により「変化」又は「症状」と称されることが多く、明確な組織学的及び臨床的特徴を有する。腺疾患とは、全般的な乳腺の疾患を言う。典型的に、乳腺小葉の拡大によって通常よりも腺が多く含まれることを意味する。「硬化性腺症」又は「線維症」において、拡大した小葉は、瘢痕状線維組織によって変形する。嚢胞は、流体又は半固体物質で満たされた異常な嚢であり、乳房上皮細胞に覆われ、小葉構造から発達する。それらは、乳房腺内の過剰な流体として始まるが、周りの乳房組織を拡張させるまで成長し、疼痛を引き起こす場合がある。線維性嚢胞は、大量の線維性結合組織に包囲された又はその中に存在する嚢胞性病変である。管拡張症とは、脂質と細胞残屑による乳管の拡張を言う。管破裂は、顆粒球と形質細胞による湿潤を引き起こす。線維腺腫は、腺上皮に由来し、増殖型線維芽細胞と結合組織の顕著な間質を含む良性腫瘍を意味する。線維症は、単に、乳房中の線維組織の突出を意味する。過形成は、腫瘍形成なしに、複数層の細胞が基底膜で覆われる細胞の過成長を意味する。過形成は、乳房組織の体積を増加させ、「上皮過形成」は、乳管と小葉で覆われる細胞が関与し、用語「管過形成」と「小葉過形成」を生じさせる。組織学的判断に基づいて、過形成は、「定型」又は「非定型」を特徴とすることができる。異形成は、ある種類の分化組織が別な種類の分化組織に変化する現象を意味する。異形成は、環境変化に起因することが多く、細胞がその変化に適切に抵抗することである。
【0054】
本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、過剰瘢痕化、ケロイド瘢痕、及び肥大性瘢痕等の瘢痕を予防及び/又は治療するのに有用である。「過剰瘢痕」又は「過剰瘢痕化」とは、一般に、異常な創傷治癒に起因する緻密な線維組織の過成長を意味する。過剰瘢痕は、通常の創傷治癒にとって必要以上に成長し、細胞、コラーゲン、及び/又はプロテオグリカンの過剰産生を特徴とする。ケロイド瘢痕は、緻密な線維組織が元の創傷又は切断の境界を超えて広がる過剰瘢痕であり、通常、自然に退行しない。ケロイドは、他の肥大性瘢痕に外面的に類似することが多いため、瘢痕がケロイドか否かの判断は、困難である。しかしながら、ケロイドには、識別可能な組織学的特徴がある。こうした特徴のひとつには、高密度の線維芽細胞と、高度に組織化された独特な配向で一方向性のコラーゲン原線維を含むコラーゲン小結節である。更に、ケロイドは、脈管構造が豊富であり、葉間の細胞密度が高く、上皮細胞層が厚い。肥厚性瘢痕は、緻密な線維組織が、創傷又は切開の境界を超えて広がらない過剰瘢痕である。肥厚性瘢痕は、通常の創傷治癒にとって必要以上に広くなる傾向にある。組織学的に、肥厚性瘢痕のコラーゲン線維は、ケロイドより組織化され、その粘液基質は少量である。肥大性病変は、一軸方向に配向した細胞外基質と細胞からなる無作為的に分布した組織束を特徴とする。
【0055】
本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、女性化乳房を治療するのに有用である。女性化乳房は、一般的な病態であり、多くは基礎疾患から二次的に発症し、若年男性と成人男性において、良性で場合により疼痛を伴う乳組織の増殖を示す。
【0056】
本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、乳癌、特に非侵襲性の乳癌を予防及び/又は治療するのに有用である。
【0057】
本発明の医薬組成物、ゲル、パケット、及び容器は、乳房痛を治療するのに有用である。乳房痛は、「乳痛」又は「乳房痛」とも称され、女性たちが一般開業医に相談する最も一般的な乳房の問題となる。その重症度は様々であるが、乳房痛は、一般的な日常活動を妨げ、それに悩まされる個体が活動できないようにさえしてしまうほど、長期の激痛を伴う場合がある。乳房痛は、3種類の疼痛の一般的原因、即ち、(1)乳房の周期的疼痛、(2)乳房の非周期的疼痛、及び(3)乳房外の疼痛に分類することができる。乳房の周期的疼痛は、月経周期の黄体期においてエストロゲン依存性血管変化によって生じる生理的な乳房拡大に起因し、閉経前の女性の多くに影響を与える。また、乳房の周期的疼痛は、エストロゲン補充療法中の用量依存的作用によって閉経後の女性に再発することがある。乳房の非周期的疼痛は、その名称が示唆するように、月経周期に関連しない乳房の疼痛を意味する。硬化性腺症、Tietz症候群、及び稀に乳癌を含む多くの症状によって乳房の非周期的疼痛が生じる。最後に、乳房外乳房痛には、例えば、患者の乳房の下にある筋肉又は肋骨から疼痛が生じるような他の原因による乳房の疼痛が挙げられる。
【0058】
また、本医薬組成物とゲルは、別な活性剤との「併用療法」に使用することもできる。
【0059】
また、別の態様において、本発明は、少なくとも1種類の上述の適応症の治療のための経皮塗布用の医薬製品を調製するための本発明のゲル又は溶液の使用に関する。
【0060】
別の態様において、本発明は、治療方法に関する。
【0061】
一実施形態において、その方法は、それを必要とする被検者に4−OHTを局所投与する工程を含む。
【0062】
一態様によると、本発明の医薬組成物又はゲルは、徴候に応じて、乳房の一方又は双方又は瘢痕に塗布される。
【0063】
4−OHTの薬用量は、当業者によって調節することができる。乳房皮膚に塗布する場合、4−OHTの薬用量、0.50〜3.0mg/日/乳房、好ましくは0.60〜2.5mg/日/乳房、より好ましくは0.75〜2.3mg/日/乳房、更により好ましくは1.0〜2.0mg/日/乳房である。理想的には、組成物(ゲル)の単位用量は、約0.5〜約3.5gであり、この量は、本発明のゲルにおける薬物動態学的直線性の概算範囲を表す。3.5gを超える場合、薬物動態学的可変性に加えて患者の服薬遵守が制限することがわかった。更に、約0.5gより少ないと、薬物動態が非線形性となる。より好ましくは、ゲルの単位用量は、約0.75g、更には約1gよりも多い。
【0064】
瘢痕の場合、薬用量は、0.25〜3.0μg/cm、好ましくは0.5〜2.5μg/cm、より好ましくは1.0〜2.0μg/cmである。
【0065】
本発明の医薬組成物と方法は、患者、とりわけ女性に、特に高用量を考慮しながら、容易で再現的な服薬遵守を可能にする範囲において特に有用である。本願明細書で用いられる高用量は、1mg以上の4−OHTの用量、好ましくは2mg以上の4−OHTの用量と理解される。
【0066】
こうした高用量の4−OHTについて、患者に送達されるゲルの実際の量は、塗布に使用される皮膚の表面積(例えば、乳房の大きさ)に関係なく適切である。言い換えると、ある程度において、患者の服薬遵守は、塗布に使用される皮膚の面積(例えば、乳房又は瘢痕の大きさ)に依存しない。一方、他の濃度が低い製剤において、患者に実際に送達される用量は、塗布される皮膚の面積に依存するため、適切な服薬遵守が行われなくなる可能性がある。
【0067】
別の態様において、本発明は、本発明による前記医薬組成物又はゲルを調製する方法を提供する。
【0068】
一態様において、前記方法は、少なくとも1種類のC−Cアルコール及び少なくとも1種類の浸透促進剤を含有する混合物を調製する工程を含む。
【0069】
別の態様において、前記方法は、所望量の4−OHTを加えて混合する工程を含む。
【0070】
別の態様において、前記方法は、少なくとも1種類のゲル化剤を加えて混合する工程を含む。
【0071】
別の態様において、前記方法は、少なくとも1種類の水性媒体を加えて混合する工程を含む。
【0072】
別の態様において、前記方法は、少なくとも1種類のC−Cアルコール及び少なくとも1種類の浸透促進剤を含有する混合物を調製する工程と、
所望量の4OHT及び混合する工程と、
少なくとも1種類のゲル化剤を加えて及び再び混合する工程と、
少なくとも1種類の水性媒体を加えて再び混合する工程を含む。
【0073】
当業者は、このような工程及び対応する技術に精通しており、前記方法の実施を開始する方法を理解している。
【0074】
本発明の利点は、単なる例証として示し、限定されない以下の実施例から明らかとなる。
【0075】
当業者は、本発明が、上記の任意の複数の好ましい特徴を組み込むことができることを認識するであろう。
【0076】
本願明細書に記載の引用文献はいずれも、全体として、参照として組み込まれる。当業者に自明で、本発明の範囲及び精神にある本発明の他の実施形態は、本願明細書では示されていない。本発明の実施は、他に示していなければ、当該分野の技術の中で、薬理学及び薬剤学の従来技術を採用する。
【実施例】
【0077】
実施例1 医薬組成物(ゲル)の調製
様々な医薬組成物を調製した。
【表1】

※diluted 1:4 → 1:4希釈、q.s. →100gとなるまで添加
EP:ヨーロッパ薬局方、USP:米国薬局方
【0078】
4−OHTを含有する組成物を、多段階混合工程に従って製造した。
【0079】
端的には、浸透促進剤(ここでは、ミリスチン酸イソプロピル)とアルコール(ここでは、エタノール)を混合し、次いで、その混合物に所望の量の4−OHTを添加し、次いで、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel HF)を混合した。工程の最後に、製剤に水性媒体(ここでは、緩衝水溶液)を混合した。得られた生成物を、タービンによって容器/密封システムに移した。この製剤は、光感受性であるため、この製剤原料が関与する工程は、安全光下で行った。
【0080】
リン酸塩緩衝水溶液pH7の調製
1000gのpH7のリン酸塩緩衝水溶液を得るため、0.85gのKHPO及び3.46gのNaHPOを秤量し、1000gの純水で希釈した。この溶液をポータブルミキサーで少なくとも10分間混合した。
第1ミキサータンクをチェックし、適切な洗浄処理が行われたことを確認した。
800ミリバールの減圧下で、混合せずに、アルコールをミキサータンクに添加した。 このタンクにミリスチン酸イソプロピルを添加した。賦形剤の容器をアルコールで洗浄した。
安全光を点灯し、室内光を消灯した。4−OHTをミキサータンクに装填し、容器をアルコールで洗浄した。
この溶液を、タービンを2000rpm、スクレーパを40rpmで、20分間にわたって混合した。
800ミリバールの減圧下で、タービンを2000rpmで、ミキサータンクに、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel HF)を充填した。操作の最後にタービンを停止した。
【0081】
他の方法を用い、即ち、タービンを2000rpmで20秒間及び600rpmで20秒間、スクレーパを40rpm/分で材料を20分間混合した。操作の最後にタービンを停止した。
800ミリバールの減圧下で、スクレーパを40rpm/分で、リン酸塩緩衝液を、ミキサータンクに移した。他の方法、即ち、タービンを2000rpmで20秒間及び600rpmで20秒間、スクレーパを40rpm/分で生成物を20分間混合した。操作の最後にタービンを停止した。
ミキサータンクを、徐々に100ミリバールまで減圧し、即ち、第1工程で250ミリバール、第2工程で150ミリバール、第3工程で100ミリバールにした。スクレーパを40rpm/分で100ミリバールの減圧下で2分間保持した。
スクレーパを40rpm/分で生成物を10分間混合した。操作の最後にスクレーパを停止した。
余分な空気の混入を避けるため、抽出タービンを経て、カバーを備えたステンレス鋼タンクの中にゲルを移した。ゲルを移しながら、サンプリングをした。
【0082】
このようにして得られたゲルは、安定性があり、無色透明からやや乳白色であった。
【0083】
実施例2
インビトロの吸収検討
材料と方法
4−OHTゲル
放射標識の4−OHT(H)を、上記の医薬組成物の調製に使用した。
0.057%、0.114%、及び0.228%の4−OHT濃度に組成物(ゲル)を調製した。
【0084】
インビトロの皮膚吸収
原理
皮膚への吸収によって投与される生存液(レセプター液)に真皮が接触するように、静置型フランツ拡散セル(フランツセル)に配置して、ヒトの腹部皮膚分節の生検によるインビトロの経皮吸収を定量的に検討した。
【0085】
セル
皮膚生検標本はセルの2つの部分との間に水平に設置され、2つの区画を区切る:
−一方の表皮側の区画は、ガラス製のシリンダー(正確な1.77cmの領域を有し、皮膚の上側に配置される);
−他方は真皮側であり、外皮の下部面に位置し、横方向の収集ポートを有する一定体積の貯蔵ポートを含む。
この2要素は、クランプを用いて組み立てた。
下部区画(真皮)には、15g/Lのウシ血清アルブミン添加した9g/Lの塩化ナトリウムからなるレセプター液体を満たす。各時点で、側部収集部から生存液を全体的に抽出し、新鮮な液体に置換した。
セルの下部を37℃に温度調節した。受容体の流体の温度と内容物の均一性は、撹拌(磁気スターラー)によって維持した。上部(上皮区画)は、外側に曝されているため、上皮表面が実験室の空気に曝された。
【0086】
ヒトの腹部皮膚分節の皮膚生検のサンプル
これらは、ヒトの腹部皮膚から、形成外科による白人ドナーからのサンプルであった。使用前に、皮膚を−20℃で保存した。付着した皮下脂肪を小刀で除去し、デルマトームを用いて皮膚を約0.5mmの厚さにした。検査される各々の製剤及び各々の容量に対して12セルのフランツセルを用意し、3種類の異なるドナーの皮膚サンプルを12セルの間に均等に分配した。
【0087】
一般的なプロトコル
フランツセルを、検査される製剤を添加する前日に、通常どおり設置した。
上皮区画を、実験室の空気に接触させ、真皮区画を37℃に温度調節し、皮膚を、アルブミネート入り生理学的血清に約17時間にわたって接触させた。
所望量のゲルを(5μL、10μL、又は20μL)、ガラスシリンダーで区切られた表皮の表面全体に、マイクロピペットを用いて塗布した。真皮区画に含有される液体のサンプリングは、24時間目に、側部収集ポートから行った。
【0088】
放射能測定
粒子カウンターのPackard−tricarb 2900TRを用い、液体シンチレーションにより検出した。
【0089】
放射性サンプルの調製
拡散セルの下部区画からサンプリングした受容体の液体を、15mLの液体シンチレーションカクテル(Picofluor 4OR、Packard)に直接入れ、放射能測定を行った。
【0090】
放射能測定
各サンプルの真の活性を示す1分間あたりの崩壊度(dpm)を得るため、クエンチングを考慮しながら、外部較正の方法により測定速度を較正した。バックグラウンドを減算し、各サンプルのcpmを求めた。各シンチレーション液体に関する特定のクエンチング曲線を作成した。結果を、適切に較正した測定希釈速度から求め、投与量に対するサンプル中の物質の重量又は百分率で表す。
【0091】
プロトコル
組成物中の4−OHTの所与の濃度と、皮膚に塗布された組成物の所与の容量について、11〜12の実験測定の平均値と併せて標準偏差(Sd)で表す。
【0092】
結果
フランツセルにおけるインビトロの4−OHT調製
24時間におけるレセプター液体中の4−OHT量の平均値±Sd
【表2】

※ Sd →標準偏差
【0093】
例えば、上記の表において、「114mg/10μL」は、「1.77cmの皮膚表面への10μLのゲル製剤の塗布」を意味し、前記ゲル製剤は、100gのゲルあたり114mgの4−OHTを含む(0.114%の4−OHT)。
【0094】
上記の結果は、4−OHTの吸収量が、等量塗布される4−OHTの0.057%組成物より、0.114%及び0.228%の組成物で極めて良好にコントロールされたことを示した。0.057%組成物について、塗布量を4倍(5μLから20μL)に増加させるのみで、吸収率は、予想外に約5倍増加した。つまり、4−OHTの塗布量を4倍に増加しただけで、4−OHTの吸収量が23.5倍増加(塗布容量は5μLから20μLに増加)するという結果をもたらした。換言すると、4−OHTの塗布量を4倍に増やすと、実吸収量は、その23.5倍であった。結論として、0.057%組成物を用いると、4−OHTの吸収量は大幅に変動し、吸収量は、塗布容量に対して非線形的であった。この効果は、0.114%及び0.228%の組成物の場合では著しく減少した。
【0095】
例えば、0.228%組成物において、塗布容量が4倍増加(5μLから20μL)することにより、4−OHTの吸収率が穏やかに増加(約3倍)し、4−OHTの吸収量がわずか16.6倍増加した。
【0096】
この特徴は、本発明の組成物が乳房への塗布に特に好適であり、上記の実験は、4−OHTの吸収量変化が、0.057%組成物と比較し、0.114%と0.228%の組成物では容量に対してより小さいことを示した。
【0097】
上記の実験は、いずれも同一の皮膚表面積(1.77cm)について行った。このため、このプロトコルは(同一皮膚面積に対してゲル塗布容量を変化させる)、様々な皮膚表面積に対して同量のゲルを塗布した場合の結果を反映した。これは、正確には、組成物が乳房皮膚に塗布される場合の課題である。
【0098】
好適には、本発明の組成物は、即ち、塗布した同一薬用量(高用量)に対して0.228%及び0.114%の組成物を用いることによって、患者による服薬遵守の改善を可能にし、塗布される組成物/ゲルの量を減少させることによって、1日2回ではなく、1日1回の塗布を必要とする。期待されるように、4−OHTの同量の塗布(10μLの0.114%製剤又は5μLの0.228%製剤のいずれか)によって、4−OHTの同様量の吸収量となる(34±24対20±14、p>0.05、Mann Whitney)。しかしながら、上記のような高用量の0.057%製剤の場合の非線形的な増加吸収を考慮し、0.057%製剤の20μL又は0.114%製剤の10μLを使用した同量の4−OHTの塗布によって、4−OHTの有意に異なる吸収量(74±35対34±24、p=0.004、Mann Whitney)となり、同様に、0.057%製剤の20μL又は0.228%製剤の5μLを使用した同量の4−OHTの塗布によって、4−OHTの有意に異なる吸収量となった(74±35対20±14、p=0.001、Mann Whitney)。このように、乳房のサイズが小さい患者に厚層下に0.057%製剤を塗布(1.77cmのフランツセルあたり20μLに相当)する場合、広い皮膚表面積に対して同量/容量で同一製剤が塗布される患者と比較して過剰暴露であると理解することができる。従って、乳房のサイズが小さい患者は、本発明の組成物によって適切な服薬遵守が提供されるため、本発明による製剤の恩恵を受ける。
【0099】
実施例2
インビボ吸収検査
プロトコル
本検査は、規則的な月経周期である32人の女性の種々の4−OHTの用量レベルでの非盲検であった。女性らに対して、用量を無作為選択し(4−OHTの日用量は、群Aと群Bに対して1mg、群Cには2mg群Dに対して4mg)、21日間毎朝、女性らの乳房に塗布した。
【0100】
実施例1に記載のように、4−OHTを、0.228重量%の水性アルコールゲル(検査される4−OHTの日用量:1日1mg(群B)又は4mg(群D))、若しくは0.057重量%の水性アルコールゲル(検査される4−OHTの日用量:1日1mg(群A)又は2mg(群C))で製剤化した。
【0101】
血漿中最大濃度の時間(tmax)、血漿中最大濃度(Cmax)、24時間及び血漿中濃度が最終測定できるときまでの時間曲線に対する血漿中濃度下の面積(AUC0〜24とAUCtlast)、及び無限大時間までの外挿値(AUCo ∞)を最終投薬日(第21日)に評価した。
【0102】
結果
4−OHTの用量、1mg、2mg、及び4mg各々を複数回投与後、第14日と第20日との間は安定状態となった。
【0103】
1mg(0.057%ゲル)、1mg(0.228%ゲル)、2mg(0.057%ゲル)、及び4mg(0.228%ゲル)の用量群に各々投薬した後、平均で、12.8、6.0、11.8、及び3.5時間後に、最終用量後の最大濃度となった。しかしながら、個々のtmax値は、極めて変動し、0〜24時間であった。極めて変動するtmaxは、(明確なピーク濃度がない)濃度時間プロフィルが平坦的であることを反映する。
【0104】
Cmax(pg/mL)とAUC0〜24(pg時間/mL)を下記の表に示す。
【表3】

ゲル0.057%=0.057%の4−OHTを含むゲル
ゲル0.228%=0.228%の4−OHTを含むゲル
【0105】
これらの結果について以下に注釈をする。
【0106】
(AUCで表される)4−OHTの吸収量が変動的であることを考慮し、2mgの用量と4mgの用量との間で用量に比例し(群Dの結果に対する群Cの結果を参照)、ゲルの容量が極めて大量(両方の乳房で7g)であるため、0.057%ゲルを4mg用量1回/日で塗布することは不可能であるため、0.228%のゲルによって、適量のゲルと、低濃度のゲル(2998pg時間/mL、群Cの吸収量の2倍)の理論的吸収量に類似量である適量吸収量(2810pg時間/mL、群D)が好適に提供され、これは、上記のインビトロ結果と一致し、これらの濃度のゲルで、適量のゲル(10μLと5μL)に対する4−OHTの類似吸収量となることを示す(吸収量が用量に比例)。
【0107】
用量の比例性は、上記のとおり観察されるが、0.228%ゲルについて、1mgと4mgの4−OHTとの間で予想外で線形的ではなく(2810pg時間/mL÷4≠383pg時間/mL、群Dの結果に対する群Bの結果を参照、群Dの用量は群Bの4倍であるが、群Dの吸収量は群Bの4倍ではない)、これは、吸収量を左右するゲルの量を示すインビトロのデータと一致し、過剰量のゲルが非線形的に吸収量に左右することを実証するが、この場合、乳房に塗布されるゲルの量は過剰量ではなく、これにより、このインビボのデータは、極めて少量のゲル(0.44g)にもかかわらず、驚くべき結果を与えた。
【0108】
上記の結果の結論は、限定範囲(乳房)に塗布される2種類のゲル(0.057%と0.228%)に対する同一の薬用量1mgの吸収が同等ではなく、ゲル/cmの量が4倍増加すると吸収量が有意に影響されることを意味し、4−OHTの代わりにテストステロンを含む極めて類似したゲルでは、所与の用量を4箇所に対して1箇所塗布し、ゲル/cmの量を4倍変化させても、テストステロンの吸収量が有意に影響されなかったという矛盾する結果が観察されたことは、驚くべきことであり、かつ全体的に予想外であった(Wang C & al, ”PharmacokineticsのTransdermal testosterone gel in hypogonadal men : applicationのgel at one site versus four sites : a general clinical research center study” The journalのClinical Endocrinology & Metabolism, 2000, vol 85, n°3, p964−969)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−ヒドロキシタモキシフェン0.105−0.950%と、
少なくとも1種類のC−Cアルコール50−75%と、
少なくとも1種類のゲル化剤0.1−5.0%と、
少なくとも1種類の浸透促進剤0.1−5.0%と、
水性媒体20−50%と、を含み、
パーセンテージ(%)が、前記医薬組成物の重量に対する重量である医薬組成物。
【請求項2】
4−ヒドロキシタモキシフェン0.205−0.950%と、
少なくとも1種類のC−Cアルコール50−75%と、
少なくとも1種類のゲル化剤0.1−5.0%と、
少なくとも1種類の浸透促進剤0.1−5.0%と、
水性媒体20−50%と、を含み、
パーセンテージ(%)が、前記医薬組成物の重量に対する重量である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
4−ヒドロキシタモキシフェン0.220−0.350%、好ましくは、約0.228%と、
エタノール60−75%と、
ヒドロキシプロピルセルロース0.5−1.5%と、
ミリスチン酸イソプロピル0.4−2.0%と、
リン酸塩緩衝液20−40%と、を含み、
パーセンテージ(%)が、前記医薬組成物の重量に対する重量である、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記C−Cアルコールが、エタノール、プロパン−1−オール、及びプロパン−2−オール、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれかに一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ゲル化剤が、アクリル酸系のポリマー、セルロース化合物、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のゲル化剤を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ミリスチン酸イソプロピルを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記水性媒体が、少なくとも1種類の塩基、好ましくは、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノール、トロメタミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される塩基を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記水性媒体が、少なくとも1種類の緩衝液、好ましくは、クエン酸塩、トリスマレイン酸塩、リン酸緩衝液、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
pHが、7.5−10.0である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
経皮性又は経皮的送達に有用なゲルであって、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むゲル。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項11に記載のゲルを含有する、投与パケット、単回投与パケット又は複数回投与パケット。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項11に記載のゲルを含有する、例えば手動ポンプを備えたディスペンサー。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項11に記載のゲルを調製する方法であって、
少なくとも1種類のC−Cアルコール及び少なくとも1種類の浸透促進剤を含有する混合物を調製する工程と、
所望量の4−ヒドロキシタモキシフェンを添加し混合する工程と、
少なくとも1種類のゲル化剤を添加し及び再び混合する工程と、
少なくとも1種類の水性媒体を添加し再び混合する工程を含む方法。
【請求項15】
良性の乳房疾患、瘢痕及びケロイド、女性化乳房症、乳癌、乳房痛、及び高密度の胸部組織が関与する症状の治療及び/又は予防において使用するための、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項11に記載のゲル。

【公表番号】特表2008−525316(P2008−525316A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536126(P2007−536126)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011654
【国際公開番号】WO2006/040196
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505233549)ラボラトワール ブザン アンテルナスィヨナル (9)
【Fターム(参考)】