説明

4−アミノジフェニルアミンの製造方法

本発明は、ニトロベンゼンとアニリンを原料として4−アミノジフェニルアミンの製造方法に関する。本発明の方法によると、縮合工程と水素化工程にそれぞれ適する複合型塩基触媒と複合粉状触媒を用いて、順次的に縮合工程、分離I工程、水素化工程、分離II工程及び精製の5工程を経て、連続的に4−アミノジフェニルアミンを製造することができる。複合型塩基触媒にて縮合反応を促進させ、かつ水素化反応の前にそれを分離して回収・使用するので、水素化工程における複合型塩基触媒の熱による分解を避け、水素化触媒の選択可能範囲を大きく広くさせ、より安価な水素化触媒を選択することができる。また、生産工程又は設備の選択・使用がより容易になり、工業化の困難さを低下させる。本発明に用いられる複合型塩基触媒は、安価で、触媒活性が高く、反応条件が温和で、水分の容許範囲が広く、副生成物が少なく、転化率と選択性が高い。労働者の負担が小さく、腐食性液体が産生されず、環境に対する汚染がほとんどない。4−アミノジフェニルアミンの純度は99%(重量)を超え、工業規模の生産における工程過程の収率は95%を越えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノジフェニルアミンの製造方法に関し、さらに詳しくは、ニトロベンゼンとアニリンを原料とし、縮合触媒として複合型塩基触媒を使用し、水素化反応の触媒として通常の水素化触媒又は複合粉状触媒を使用し、縮合工程と、複合型塩基触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、水素化工程と、アニリンを分離・回収して循環的に使用し、水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよく、必要に応じて、少なくとも一部再生させてもよい水素化触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、精製工程の、5工程を含む方法により、連続的に4−アミノジフェニルアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−アミノジフェニルアミンは、酸化防止剤や安定剤の中間体として重要な化合物であり、ゴム工業とポリマー工業において重要な化学工業製品である。現在、4−アミノジフェニルアミンの製造方法は、使用する原料によって次の三つの方法に分けられる。(1)アニリン法:p−ニトロクロロベンゼンとアニリンとを原料とし、触媒の存在下で反応させて4−ニトロジフェニルアミンを生成させ、それを硫化アルカリにより4−アミノジフェニルアミンに還元する方法;(2)ホルムアニリド法:ギ酸とアニリンとを原料としてホルムアニリドを製造し、さらに酸結合剤(例えば炭酸カリウム)の存在下でp−ニトロクロロベンゼンと反応させて4−ニトロジフェニルアミンを生成させ、硫化アルカリを用いて還元して4−アミノジフェニルアミンを製造する方法;(3)ジフェニルアミン法:すなわち、ジフェニルアミンを原料とし、有機溶媒中で亜硝酸塩によりニトロソ化してN−ニトロソジフェニルアミンを得、さらに無水塩化水素を用いて転位させて4−ニトロソジフェニルアミン塩酸塩を得、それを塩基で中和して4−ニトロソジフェニルアミンを生成させ、最後に硫化アルカリで還元して4−アミノジフェニルアミンを得る方法。これらの方法は、使っている原料は異なっているが、還元剤として全て伝統的な硫化アルカリを使って4−アミノジフェニルアミンを製造している。これらの反応の欠点は、反応の条件が苛酷であり、操作が複雑で、エネルギーの消耗が多く、収率が低く、コストが高く、かつ「三廃」(廃水、廃棄物、廃ガスの総称)の生成も伴うので、環境に対して悪影響をもたらすことである。
【0003】
4−アミノジフェニルアミンを製造するためのもう一つの方法として、ニトロベンゼン又はニトロベンゼンとアニリン又はニトロソベンゼンを原料として縮合反応を行わせ、さらに水素ガスで水素化して、4−アミノジフェニルアミンを製造する方法がある。実は、塩基の存在下で、ニトロベンゼンとアニリンを反応させ4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンを製造する方法は、1901年と1903年に報告されている(Wohl,Chemische Berichte,34,p.2442(1901) とWohl, Chemische Berichte,36,p.4135(1903))。しかし、その収率が比較的低いので、今までずっと重視されることがなく、発展することがなかった。1990年代に入り、該方法は改めて注目を浴び、それに対する研究と開発もよく行われ、ある程度の成果も得られた(DE19734055.5,DE19810929.6,DE19709124.5を参照)。しかしながら、これらの方法には、下記の共通する欠点が存在する。1)使っている触媒の値段が高く、工業規模の生産に利用しようとすると、生産コストがかなり高くなるので、従来の生産プロセスに比べて利点がない。例えば、縮合反応に使われる水酸化テトラアルキルアンモニウムとフッ化物、及び水素化反応に使われる貴金属であるパラジウム、白金、ロジウムなどは価格が高く、また水酸化テトラアルキルアンモニウムは、不安定性により回収利用が困難であり、貴金属水素化触媒の選択・利用は、原料及び設備に対する要求も高い。2)収率が比較的低く、試験室的な製法にすぎない。これも工業化を難しくしている一つの重要な原因になっている。3)操作が煩雑であり、連続的な操作に不利なので、生産規模が制限される。4)分離が難しく、製品の純度が高くない。
【0004】
US6395933には、ニトロベンゼンと置換アニリンを用いて、一定の温度下で、強塩基と相転移触媒の存在下、4−アミノジフェニルアミンを合成する方法が開示されている。しかし、この方法は、収率が理想からかけ離れたものであり、副反応も多く、合成過程で生成する4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンとの混合物中の、4−ニトロジフェニルアミンの比率が高すぎるので、水素化反応における水素ガスの消耗量が過大となり、生産コストの増加を招き、かつ酸化剤を必要とするので工業的な生産に適しない。
【0005】
WO9300324には、適切な溶媒の中で、塩基の存在下、溶液中のプロトン性物質の含有率を制御しながら、適切な温度下で、ニトロベンゼンとアニリンを反応させ4−アミノジフェニルアミンを生産する方法が開示されている。この発明においては、溶媒の存在が必須であり、かつ溶液中のプロトン性物質の含有率も制御しなければならない。しかいながら、溶媒の導入はエネルギーの消耗量を増加させ、かつ分離の難しさも増加させる。更に、プロトン性物質に対する制御は、反応の操作をより難しくさせる。特に、縮合反応の後段において、溶液中のプロトン性物質の含有率を制御(主に、脱水により相対的に小さい含有率に制御する)しようとすると、反応時間の延長を招き、一部のアニリンを減少させ、反応の終端に近くなるほどプロトン性物質の除去が困難になる。そして、プロトン性物質の含有率を一定の範囲に制御することの困難さが大きくなり、工業生産を不利にする。プロトン性物質を0.5〜4.0%の範囲に制御すると、価格の高いテトラアルキルアンモニウム塩基触媒が急速に分解されるので、生産コストの増加を招くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、縮合と水素化反応に用いられる、安価で性能の優れた触媒と、工業規模の生産に適するプロセスとを選択して、連続的に4−アミノジフェニルアミンを製造する方法を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、縮合触媒として複合型塩基触媒を用い、水素化反応の触媒として通常の水素化触媒又は複合粉末状触媒を用い、縮合と、分離I(複合型塩基触媒を分離・回収して循環的に使用する工程)と、水素化と、分離II(アニリンを分離・回収して循環的に使用し、水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよく、必要に応じて少なくとも一部再生させてもよい、水素化触媒を分離・回収して循環的に使用する工程)と、精製の、5工程を含む方法により、連続的に4−アミノジフェニルアミンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施態様では、4−アミノジフェニルアミンを製造する方法を開示しているが、該方法はニトロベンゼンとアニリンを原料とし、縮合工程と、分離I、すなわち複合型塩基触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、水素化工程と、分離II、すなわちアニリンを分離・回収して循環的に使用し、水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよく、必要に応じて、少なくとも一部を再生させてもよい、水素化触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、精製工程の、5工程を含んでおり、縮合触媒としては複合型塩基触媒を用いている。
【0009】
本発明のもう一つの実施態様において、水素化反応に選択・使用される水素化触媒が、元素周期律表の第VIII族元素か、若しくは銅、クロム、亜鉛、マンガンから選ばれるものを活性成分及び/又は補助触媒成分とする通常の水素化触媒又は複合粉状触媒である。
【0010】
また、本発明のもう一つの実施態様において、複合粉状触媒がニッケル、アルミニウムと元素Aを含んでおり、前記元素AがFe、Cu、Co、Mn、Cr、Mo、B、Pから選ばれる少なくとも1種であり、その中でニッケルの含有量が25〜99.9重量%、アルミニウムと元素Aの含有量の合計が0.1〜75重量%である。
【0011】
さらに、本発明のもう一つの実施態様において、縮合反応の反応条件としては、ニトロベンゼンとアニリンとのモル比が1:1〜1:15であり、反応温度が20〜150℃、反応圧力が0.005〜0.1MPa(絶対圧力)で、反応時間が3.5〜6hである。
【0012】
なお、本発明のもう一つの実施態様において、分離Iでは酸性物質を添加し、系を中和して分離させた後、塩基にて水相をアルカリ化する方法によって複合型塩基触媒を回収するが、前記酸性物質が、無機酸、その酸化物と水の組み合わせ及び他の無機酸型塩から選ばれるものであり、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素と水の組み合わせ、三酸化硫黄と水の組み合わせであり、用いられる塩基が、アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物又は酸化物から選ばれるものであるが、複合型塩基触媒の中のテトラアルキルアンモニウム塩と塩基に基づいて対応する酸性物質と塩基を選択する必要がある。
【0013】
また、本発明のもう一つの実施態様において、複合型塩基触媒の中の水酸基イオンとニトロベンゼンとのモル比が1:4〜4:1である。
【0014】
また、本発明のもう一つの実施態様において、縮合反応に用いられる複合型塩基触媒が水酸化テトラアルキルアンモニウム、アルキル金属の水酸化物、及びテトラアルキルアンモニウム塩の3種の成分を含む。
【0015】
また、本発明のもう一つの実施態様において、複合型塩基触媒の中の水酸化テトラアルキルアンモニウム:アルカリ金属の水酸化物:テトラアルキルアンモニウム塩のモル比が、(0〜9):(0.5〜3):(0.5〜3)であり、水酸化テトラアルキルアンモニウム、アルカリ金属の水酸化物、テトラアルキルアンモニウム塩の三者の濃度の合計が、10〜100重量%である。
【0016】
また、本発明のもう一つの実施態様において、前記複合型塩基触媒は、次の方法によって製造することができる。温度を0〜90℃に制御しながら、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とを所定のモル比で、水の中で均一に撹拌すると、水含有複合型塩基触媒を得ることができる。その原料である前記水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩は、いずれも固体でもよく、水溶液でもよい。
【0017】
また、本発明のもう一つの実施態様において、前記複合型塩基触媒は、次の方法によって製造することができる。温度を0〜90℃に制御しながら、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とを、所定のモル比で、水の中で均一に撹拌した後、ベンゼンを添加し共沸させることにより水分を完全に除去すると、無水複合型塩基触媒を得ることができる。その原料である前記水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩は、いずれも固体でもよく、水溶液でもよい。
【0018】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩は、下記の一般式:
[(R1)(R2)(R3)(R4)N]+nn-
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同じものであっても異なるものであってもよい、炭素原子数が1〜4のアルキル基を表し、前記アルキル基は、親水性置換基を有していてもよく;Xn-は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸水素イオン、アルキル(C1〜C2)炭酸イオン、アルキル(C1〜C2)硫酸イオンから選ばれる基であり;n=1〜2である。)
で表される。
【0019】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩の一般式におけるR1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個は親水性置換基を有し、前記親水性置換基は、ヒドロキシ、メトキシ、ポリエーテル、カチオンポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンポリアミン、易水溶性のアンモニウム塩含有基から選ばれる基である。
【0020】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩としては、ポリメチル化トリエチレンテトラアミン硫酸塩、ポリメチル化ジエチレントリアミン炭酸塩、N,N−ジメチル−N,N−ジメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N−メチル−N,N,N−トリメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウム炭酸塩、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)エチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウムクロリド、N,N−ジメチル−N,N−ビス((ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピル)アンモニウム炭酸塩から選ばれる親水性置換基を有しているテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0021】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチル炭酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム炭酸塩、エチル炭酸テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム硫酸塩、メチル硫酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム硫酸塩、及びエチル硫酸テトラエチルアンモニウムから選ばれるものが挙げられる。
【0022】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩は、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルとを、極性溶媒の中で反応させて得ることができる。
【0023】
本発明のもう一つの実施態様において、前記テトラアルキルアンモニウム塩を製造する反応における反応圧力が0.1〜3MPa(ゲージ圧力)で、反応温度が50〜200℃で、反応時間が1.5〜6hであり、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルとの比率が2:1〜1:2(モル)で、用いられる極性溶媒が、メタノール、エタノール又はイソプロパノールであり、極性溶媒の使用量がトリアルキルアミンの重量の1〜10倍である。
【0024】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合反応が、無酸素条件下で行われる。
【0025】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合反応では、プロトン性物質の別途添加又は制御が不要である。
【0026】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合反応が、無溶媒下で行われる。
【0027】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合反応では、反応の初期に一部の複合型塩基触媒を添加するだけで、反応過程においては、複合型塩基触媒中のテトラアルキルアンモニウム塩及び/又はアルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ金属酸化物のみを補充すればよい。
【0028】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合反応が、縮合循環ポンプと、流下薄膜反応器と、第1段反応器からなる循環システム及び必要に応じて設置する後続反応器の中で行われる。
【0029】
本発明のもう一つの実施態様において、前記縮合工程では流下薄膜反応器を使い、流下薄膜反応器の熱媒として、アルコール蒸気、又は温水、水蒸気、又はメタノール蒸気を使うことができる。
【0030】
本発明のもう一つの実施態様において、前記水素化反応の条件が、還元剤として水素ガスを使い、気体と液体の比が10:1〜1,500:1(体積)で、非固定床での水素化工程を採用する際の固体と液体の比が0.5:100〜16:100(重量)で、溶媒:分離Iによる生成液すなわち複合型塩基触媒を分離した後の縮合液=1:10〜5:10(重量)であり、気体は水素ガスを指し、液体は溶媒と分離Iによる生成液を含み、固体は水素化触媒を指し、水素化反応の温度が50〜150℃で、反応器の圧力が0.2〜6.0MPa(絶対圧力)で、反応時間が2〜7hである。
【0031】
本発明のもう一つの実施態様において、前記水素化反応に用いられる複合粉状触媒は、ニッケル粉と、アルミニウム粉と、元素Aとを、所定の比率で混合し、その後、高温状態で溶融させ、急速に冷却し、反応器から排出した後、粉砕して粉末にした後、水酸化物の水溶液を用いて処理することにより製造される。
【0032】
本発明のもう一つの実施態様においては、前記水素化反応の後に、磁気分離機を用いて、磁性を有する複合粉状触媒を回収する。
【0033】
本発明のもう一つの実施態様においては、ベンチュリー式の固液混合輸送装置を用い、原料を供給するときの動力を利用して、磁気分離機によって回収した複合粉状触媒を水素化反応器に循環させる。
【0034】
本発明のもう一つの実施態様においては、超音波振動及び/又は強塩基処理によって、失活した複合粉状触媒を再生させる。
【0035】
本発明のもう一つの実施態様において、水素化反応で使用した溶媒が、アルコール類及び/又は水である。
【0036】
本発明のもう一つの実施態様において、前記精製工程では、3塔の連続精留と回分精留プロセスを採用し、その中で、第1、第2、第3の精留塔の真空度がそれぞれ独立に0.09〜0.098MPaであり、塔底温度がそれぞれ260〜290℃、260〜300℃、120〜170℃で、還流比がそれぞれ2:1〜10:1、1:0.5〜1:4、1:0.5〜1:2であり、回分精留における真空度が0.09〜0.098MPaで、塔底温度が280〜330℃である。
【0037】
本発明の工程における「分離I」とは、複合型塩基触媒を分離・回収して循環的に使用し、「分離II」とは、アニリンを分離・回収して循環的に使用し、水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよく、必要に応じて、少なくとも一部を再生させてもよい、水素化触媒を分離・回収して循環的に使用する工程を指す。本文において、「水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよい」とは、水素化溶媒として水を使う場合には、前記水を分離・回収して循環的に使用してもよく、後述のアルコール類溶媒を水素化溶媒として用いる場合には、必ず前記アルコール類水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用することをいう。
【0038】
図1を参照して説明すると、本発明の好ましい実施態様としての4−アミノジフェニルアミンの製造方法は、次の工程を含む。
【0039】
ニトロベンゼンと、アニリンと、複合型塩基触媒とを、所定の比率で計量ポンプによって連続的に縮合工程に供給して反応させ、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミン及び/又はそれらの塩を含む縮合液(7)を生成させる。
【0040】
縮合液(7)を連続的に分離I工程に供給し、酸性物質を添加して中和することによって縮合液(7)を分離し、さらに、塩基により水相をアルカリ化する方法によって複合型塩基触媒を回収し、回収した複合型塩基触媒(1)を縮合工程に循環させる。
【0041】
分離Iの生成液、すなわち複合型塩基触媒を分離した縮合液(8)、水素化溶媒(補充した水素化溶媒(3)と回収してもよい水素化溶媒(5)を含む)を所定の比率で連続的に水素化工程に供給して、複合粉状触媒(補充した複合粉状触媒(2)と、循環的に使用する少なくとも一部を再生させてもよい複合粉状触媒(4)を含む)の存在下で、水素ガスと反応させ、4−アミノジフェニルアミンを含む水素化液(9)を得る。
【0042】
水素化液(9)を分離II工程に供給し、ここで、(a)複合粉状触媒(4)と、(b)縮合工程に循環させるアニリン(6)と、任意的に、(c)水素化工程に循環させる水素化溶媒(5)とを分離して得るが、前記複合粉状触媒(4)を、直接、水素化工程に循環させるか、あるいは少なくとも一部を再生させてから水素化工程に循環させる。
【0043】
ほとんどのアニリンを分離した4−アミノジフェニルアミンの粗生成物(10)を精製工程に供給し、ここで、(a)縮合工程に循環させる一部のアニリン(6)と、(b)4−アミノジフェニルアミンの製品を分離して得る。上記の全体工程は連続的に行われる。
【0044】
縮合反応において、ニトロベンゼンとアニリンとのモル比は1:1〜1:15であり、反応温度は20〜150℃、好ましくは50〜90℃であり、反応温度を90℃未満に制御することにより、縮合工程における複合型塩基触媒の分解率を0.5%以下にすることができる。反応圧力は0.005〜0.1MPa(絶対圧力)で、縮合反応体系全体における原料の滞留時間は3.5〜6hである。
【0045】
縮合反応に使われる複合型塩基触媒は、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩との3種の成分を含み、さらに水を含んでもよく、その中で、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩との濃度の合計は、10〜100重量%、好ましくは25〜38重量%であり、かつ水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とのモル比は、(0〜9):(0.5〜3):(0.5〜3)である。一部の水酸化テトラアルキルアンモニウムと、安価なアルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩を併用することで、従来技術の、高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウムを触媒として使う場合と同様な効果を得ることができる。縮合反応の混合物において、複合型塩基触媒中の水酸基イオンとニトロベンゼンとのモル比は1:4〜4:1である。
【0046】
縮合反応に用いられる複合型塩基触媒は次の方法によって製造することができる。すなわち、温度を0〜90℃に制御しながら、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とを、(0〜9):(0.5〜3):(0.5〜3)のモル比で、水中で均一に撹拌すると、水を含有する複合型塩基触媒を得ることができる。水を含有する複合型塩基触媒を得た後、ベンゼンを添加して共沸させることにより、水分を完全に除去して無水の複合型塩基触媒としてもよい。原料である水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩は、いずれも固体でもよく、水溶液でもよい。
【0047】
工業生産過程において、反応物は、不可避的に外界の空気、及び水素ガス中に混入している二酸化炭素や一酸化炭素と接触するが、この接触により、水酸化テトラアルキルアンモニウムが、テトラアルキル炭酸アンモニウム塩に転化されるので、水酸化テトラアルキルアンモニウムの量が減少する。触媒として水酸化テトラアルキルアンモニウムのみを用いる反応においては、アンモニウム塩への転化は触媒量の減少を招くことになるので、触媒の量を増加し、アンモニウム塩を除去しなければならない。しかしながら、本発明の複合型塩基触媒によれば、複雑な工程が不要で、複合型塩基触媒におけるアルカリ金属の水酸化物又は酸化物の比率を上げればよい。
【0048】
本発明では、一定の条件下、前記複合型塩基触媒にて、ニトロベンゼンとアニリンを縮合させ、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミン及び/又はその塩を生成させる。本発明の縮合反応では、無水型の複合型塩基触媒を用いて、ニトロベンゼンとアニリンを、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミン及び/又はその塩に転化させることができるが、このような無水系の環境においては、反応の選択性と転化率を、我々の望む水準に到達させることができる。
【0049】
もし複合型塩基触媒を使うのであれば、水、メタノールなどのプロトン性物質について厳しく制御しなくてもよく、プロトン性物質に対する制御による複合型塩基触媒の損失と、操作の面の煩さを避けることができる。いずれかの特定の理論に局限されることは好まないが、これは、複合型塩基触媒に含まれる水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩との3種類の化合物の総合作用によってもたらされた現象であると推測することができ、これにより反応制御の困難の度合が低くなる。水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩との3種類の化合物からなる複合型塩基触媒を用いる場合には、反応体系中の、水等のプロトン性物質に対する制限は重要なものではなくなる、すなわち、反応において水分等のプロトン性物質がなくても、又は溶液体系中の水分等のプロトン性物質の含有率が高くても、いずれの場合においても縮合反応を正常に行わせることができ、転化率と選択性に好ましくない影響を招くことがない。したがって、これにより反応制御の難度が低くなり、脱水共沸によるアニリンの減少量が少なくなるので、前記方法は、工業的生産にいっそう有利となる。
【0050】
本発明において、水分等のプロトン性物質は、反応を制約する因子とはならない。そして、無水であっても、又は水などのプロトン性物質が存在しても、いずれの場合でも、我々が要求する選択性と転化率を達成することができる。その上、我々は、複合型塩基触媒の分解率が、水酸化テトラアルキルアンモニウムを単独で用いる場合よりも低いことを見出した。
【0051】
本発明の好ましい実施態様において、縮合反応は、下記のように行われる。
【0052】
計量ポンプにより、ニトロベンゼン、アニリン及び複合型塩基触媒を、所定の比率で連続的に流下薄膜反応器に供給し、加熱して縮合反応を行う。流下薄膜反応器内の縮合液を流下薄膜反応器の下部から排出し、第1段反応器に供給し、引き続いて縮合反応を行う。第1段反応器の底部の一部の縮合液を、循環ポンプによって流下薄膜反応器に循環し、これにより本発明の縮合反応の局部循環系を構成する。該循環系は、主に流下薄膜反応器と第1段反応器からなるが、縮合循環ポンプを用いて、被反応物を該循環系で不断に循環させる。循環過程においては、流下薄膜反応器の中で均一な薄膜を形成するように縮合液の量を保持する必要がある。流下薄膜反応器の熱媒としては、アルコール蒸気、温水、水蒸気、又はメタノール蒸気が挙げられるが、体系の温度を十分に均一にし、局部の過熱現象を避ける面から、アルコール蒸気が好ましい。流下薄膜反応器内の反応液は、ほとんど逆流混合することがないので、生成物と原料との接触のチャンスを大幅に減少させ、副反応を最低限度までに減少させる。流下薄膜反応器を有する局部循環系により、縮合反応の反応速度を速め、かつ反応時間を短縮し、従来10数hと長かった反応時間を3.5〜6hに縮めることができる。
【0053】
本発明者はまた、連続薄膜式反応が全体混合式反応よりも反応の選択性と収率が高いことを見出した。この反応において、ニトロベンゼンはアニリンと反応して4−ニトロソジフェニルアミンを生成するが、ニトロベンゼンは、さらに4−ニトロソジフェニルアミンと反応して4−ニトロジフェニルアミンを生成すると同時に、ニトロベンゼン自身もニトロソベンゼンに還元される。ニトロソベンゼンはアニリンと反応してアゾベンゼンを生成するが、この反応は主反応に対して不利なものであり、反応の選択性を低下させる。反応開始の時点でニトロベンゼンの量は比較的多いが、反応の進行に伴い、ニトロベンゼンが次第に4−ニトロソジフェニルアミンに転化され、ニトロベンゼンの量が少なくなる。連続薄膜式の反応器を使うことにより、原料を投入する際に、ニトロベンゼンが後で生成した4−ニトロソジフェニルアミンと接触して反応する機会を減少させることができ(反応器に進入して反応し始める際には、ニトロベンゼンの濃度が相対的に高く、4−ニトロソジフェニルアミンの濃度が相対的に低いが、反応終端では、4−ニトロソジフェニルアミンの濃度が相対的に高く、ニトロベンゼンの濃度が相対的に低い)、ニトロベンゼンが4−ニトロソジフェニルアミンによってニトロソベンゼンに還元される機会が少なくなり、ニトロソベンゼンがアニリンと反応してアゾベンゼンになる反応も減少する。
【0054】
ニトロベンゼンとアニリンが複合型塩基触媒の存在下で行う縮合反応において、主な副反応は、アゾベンゼンとフェナジンを副生成物として生成する反応である。本発明者は、アニリンの量が多いほど、ニトロベンゼンがフェナジンに転化される副反応が少ないことを見出した。この反応におけるもう一つの副生成物は、アゾベンゼンであるが、アゾベンゼンは水素化工程において容易にアニリンに転化されるので、生産過程で循環的に使用することができる。そして、本発明において、ニトロベンゼンとアニリンのモル比は1:1〜1:15で行われる。
【0055】
同時に、本発明の方法では、系中に溶媒を導入しなくてもよく、ニトロベンゼンとアニリンとを適当な比率で縮合反応させるだけでも、好ましい収率を得ることができる。
【0056】
本発明では、上記の方法により縮合反応の収率を高め、反応を望ましい方向に導いた。
【0057】
本発明の縮合反応において、更に複数段の直列反応器を使うことができるということは、当業者にとって想到できることである。
【0058】
縮合工程において、該工程に使われている複合型塩基触媒は、反応の進行につれてその一部が不可避的に損なわれる。触媒を補充添加する場合、複合型塩基触媒中のアルカリ金属水酸化物とテトラアルキルアンモニウム塩の2種類の成分のみを添加してよく、両者のモル比は4:1〜1:4である。アルカリ金属水酸化物の代わりにアルカリ金属酸化物を使用してもよく、その添加量は、対応する水酸化物からの換算により計算することができる。
【0059】
本発明に用いられるテトラアルキルアンモニウム塩は、下記の一般式で表される。
[(R1)(R2)(R3)(R4)N]+nn-
【0060】
式中、R1、R2、R3及びR4は、同じものでも異なるものでもよい、炭素原子数が1〜4のアルキル基を表し、前記アルキル基は親水性置換基を有していてもよく、前記親水性置換基はヒ、ドロキシ、メトキシ、ポリエーテル、カチオンポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンポリアミン、易水溶性のアンモニウム塩含有基から選ばれる基である。Xn-は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸水素イオン、アルキル(C1〜C2)炭酸イオン、アルキル(C1〜C2)硫酸イオンから選ばれる基であり、n=1〜2である。テトラアルキルアンモニウム塩の例としては、ポリメチル化トリエチレンテトラアミン硫酸塩、ポリメチル化ジエチレントリアミン炭酸塩、N,N−ジメチル−N,N−ジメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N−メチル−N,N,N−トリメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウム炭酸塩、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)エチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウム塩酸塩、N,N−ジメチル−N,N−ビス((ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピル)アンモニウム炭酸塩、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチル炭酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム炭酸塩、エチル炭酸テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム硫酸塩、メチル硫酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム硫酸塩、エチル硫酸テトラエチルアンモニウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
前記複合型塩基触媒に用いられる水酸化テトラアルキルアンモニウムの構造式は、R′4+OHであり、式中、R′は、独立に炭素数が1〜2のアルキル基を表す。これは、相応するテトラアルキルアンモニウム塩と塩基とを極性溶媒中で反応させて製造することができる。
【0062】
アルカリ金属の水酸化物又は酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、及びルビジウムの水酸化物又は酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどが挙げられる。
【0063】
本発明に用いられるアルキル炭酸テトラアルキルアンモニウム又はアルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムは、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルを、極性溶媒の中で反応させて得ることができる。
【0064】
本発明において、アルキル炭酸テトラアルキルアンモニウム又はアルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムを製造する反応の温度は、50〜200℃で、好ましい温度は60〜150℃であり、反応の圧力は0.1〜3MPa(ゲージ圧力)である。一般的に圧力と、選定された温度、溶媒の種類、使用量との間には密接な関係があり、溶媒の使用量が少ないほど体系の圧力が高くなり、温度が高いほど圧力が高くなる。本発明の反応の圧力は、0.4〜2MPaに制御することが好ましく、これにより高収率で生成物を得ることができる。
【0065】
本発明のアルキル炭酸テトラアルキルアンモニウム又はアルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムを製造する反応に用いられる原料である、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルとの比率は、2:1〜1:2(モル)である。トリアルキルアミンの比率が高すぎると、反応系においてそれが過剰になるので、次の工程の操作に困難をもたらすことになり、また環境を汚染する。逆にトリアルキルアミンの比率が低すぎると、炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルが過剰になって、次の反応において炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルの損失を招き、生産コストの上昇を招くことになる。
【0066】
本発明のアルキル炭酸テトラアルキルアンモニウム又はアルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムを製造する反応に用いられる原料である、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルとの反応時間は、1.5〜6hである。反応の初期速度は速く、発熱現象が顕著であるが、原料の減少に伴って、反応速度が遅くなり、発熱も少なくなる。反応においては、冷却水の使用量を不断に制御することにより、反応温度や圧力を一定に制御することができる。
【0067】
本発明のアルキル炭酸テトラアルキルアンモニウム又はアルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムを製造する反応において用いられる極性溶媒には、メタノール、エタノール又はイソプロパノールなどが含まれ、溶媒の使用量はトリアルキルアミンの重量の1〜10倍である。
【0068】
分離I工程において、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミン及び/又はそれらの塩を含む縮合液をろ過した後、ろ過液に酸性物質を添加して溶液のpHを約8に保持させる。溶液が分相した後の有機相が、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンの混合物である。そして、水相に塩基性物質を添加するが、前記塩基性物質と上記添加するの酸性物質の当量比は1:1〜3:1である。複合型塩基触媒を得た後、必要に応じて、それを濃縮させてから縮合工程に循環させる。
【0069】
分離I工程に用いられる酸性物質としては、無機酸、その酸化物と水、及び他の無機酸型塩から選ばれるものが挙げられ、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素と水の組み合わせ、三酸化硫黄と水の組み合わせ等であり、用いられる塩基は、アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物又は酸化物から選ばれるものであり、これは複合型塩基触媒の中のテトラアルキルアンモニウム塩と塩基に基づいて、対応する酸性物質と塩基を選択する必要がある。選択する方法としては、当業者が公知の方法を採用することができる。例えば、アルキルアンモニウム塩が塩素化塩の場合には、塩酸を酸性物質として使用することにより、他の異物の導入を避けることができ、アルキルアンモニウム塩が炭酸塩の場合には、二酸化炭素と水にて中和した後、さらに水酸化カルシウムでアルキル化を行う。
【0070】
特に、本発明では、酸性物質を用いて、分離I工程において、複合型塩基触媒と4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンを分離させることによって、水素化工程における複合型塩基触媒の熱による分解を避けているので、水素化触媒の選択可能範囲を大いに拡張した。本発明の水素化反応に用いられる水素化触媒は、元素周期律表の第VIII族元素若しくは銅、クロム、亜鉛、マンガンを活性成分及び/又は補助触媒成分とする、通常の水素化触媒又は複合粉状触媒のいずれかである。水素化反応の温度は、50〜150℃の範囲であり、水素化反応器としては、1段又は複数段の流動床を用いることができ、1段又は複数段の固定床直列反応器を用いてもよい。固定床に適する触媒型、例えば粒子状の触媒を使うと、化学工業の分野における公知の方法によって、工程を相応的に調整することができる。例えば、後述する分離II工程において水素化触媒をろ過する必要がなく、水素化工程においても磁気回収器をもって水素化触媒を回収・分離しなくてもよい。これらの方案も本発明の範囲内に属する。
【0071】
以下に本発明の複合粉状触媒、流動床水素化工程を採用する本発明の方法の水素化工程、及び分離II工程を説明する。
【0072】
本発明の水素化反応では、還元剤として水素ガスを使うことができる。反応温度は50〜150℃で、圧力は0.2〜6.0MPa(絶対圧力)で、反応時間は2〜7hで、気体と液体の比は10:1〜1500:1(体積)で、固体と液体の比は0.5:100〜16:100(重量)である。気体は水素ガスを指し、液体は水素化溶媒と分離I液(分離I工程で触媒を分離した後の液)を含み、固体は複合粉状触媒を指す。
【0073】
本発明において、水素化反応ではアルコール類及び/又は水を、水素化溶媒として用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール又はイソプロパノールが好ましい。水素化溶媒は、水素化溶媒:分離I液=1:10〜5:10(重量)になるような量で用いる。
【0074】
本発明の水素化反応に用いられる複合粉状触媒には、ニッケル、アルミニウム、元素Aが含まれ、前記元素Aは、Fe、Cu、Co、Mn、Cr、Mo、B、Pから選ばれる少なくとも1種であり、その中でニッケルの含有率は25〜99.9重量%であり、アルミニウムと元素Aの含有率の合計は0.1〜75重量%である。触媒の粒子径は40〜300メッシュでよい。
【0075】
上記のFe、Cu、Cr、Co、Mn、Mo、B、Pから選ばれる少なくとも1種の調製助剤Aは、ニッケル‐アルミニウム合金の結晶形態を修飾することができ、水素化反応の選択性と触媒活性を向上させる効果を達成することができる。
【0076】
本発明の複合粉状触媒は下記の方法により製造することができる。ニッケル粉と、アルミニウム粉と、元素Aを所定の比率で混合し、その後、高温状態で溶融させ、反応器から排出し、急速に冷却させた後、40〜300メッシュの粉末に粉砕し、その後、水酸化物の水溶液によって処理する。水酸化物の濃度は5〜50%(重量)でよく、反応温度は50〜90℃でよい。
【0077】
後の工程で用いられる磁気分離機で水素化溶媒を回収する効果を向上させるために、少なくとも鉄を調製助剤として用いて、複合粉状触媒の磁性を増大させることが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施態様において、本発明の複合粉状触媒は下記のようにして製造する。望ましい比率でニッケル粉と、アルミニウム粉と、鉄粉、及び必要に応じてCu、Cr、Co、Mn、Mo、B、Pから選ばれる他の調製助剤Aを取り、誘導電気炉中で合金状に溶融してから、溶融した合金を、気体の圧力を利用してノズルから、高速で回転している銅ドラム上に吐出し、105〜106K/sの冷却速度で急速に冷却する。冷却された合金をボールミルで40〜300メッシュに、好ましくは、100〜200メッシュの粉末に粉砕し、その後、5〜50%(重量)の水酸化物の水溶液で50〜90℃で処理を行う。
【0078】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、水素化反応は、下記の方法によって行うことができる。分離I液と、水素化溶媒と、回収した複合粉状触媒及び必要に応じて補充する新鮮な複合粉状触媒を、固液輸送装置にて第1段、第2段及び必要に応じて設けるより後段の水素化反応器に供給し、水素循環器にてバブリング方式により各反応器の底部から水素ガスを反応器内部に供給し、前記水素化反応の条件下で水素化反応を行って、4−アミノジフェニルアミンを含む粗水素化液を生成する。沈降機と磁気分離機を用いて前記粗水素化液に含まれる複合粉状触媒を分離し、水素化液から分離された高濃度の複合粉状触媒を含む固液相を、固液混合輸送装置により、改めて第1段の反応器に戻して循環的に使用するとともに、4−アミノジフェニルアミンを含む水素化液を得ることができる。
【0079】
水素化反応において、本発明の複合粉状触媒は、固体状態のものである。工業生産においては、一般的にポンプで水素化触媒を循環させるが、ポンプによって高濃度の粉状金属を含む触媒を循環させようとすると、ポンプの空腔部が容易に破壊され、かつ輸送効果も理想には程遠い。本発明者は、ベンチュリー式に類似した固液輸送装置を設計し、かつ分離I液を供給する際のポンプの動力を巧みに利用して無ポンプ循環を行い、複合粉末状触媒の水素化体系における循環を実現して、水素化反応混合物中の触媒の濃度を大幅に増加させ、触媒の損失を大幅に減少させた。
【0080】
本発明の好ましい実施態様によると、連続水素化反応において、粗水素化液中の複合粉状触媒は、沈降と磁気分離機によって回収するが、ベンチュリー式の固液輸送装置をもって循環させることにより、循環される水素ガスを、バブリングの形で反応器に進入させることができる。水素化反応の全体は、連続供給、複数段の反応器が直列に連結された全体混合流動方式によって行われる。水素化溶媒は循環的に使用することができる。
【0081】
沈降と磁気分離機にて一部の複合粉状触媒を回収した水素化液は、分離IIの工程に供給され、ここで、ろ過により水素化液中の残りの極少量の複合粉状触媒が回収されるが、直接、水素化工程へ循環させるか、又は少なくとも一部を再生してから、水素化工程へ循環させる。
【0082】
本発明の水素化反応においては、連続的に少量の水素化触媒を更新するとともに、反応システム中の触媒の濃度を常時高濃度に保持してもよい。このように触媒を循環的に使用する方法によれば、体系内の触媒の総活性を、常時安定に高い範囲に保持することができるので、固定床触媒を使う方法を採用する場合の、触媒の活性が次第に低下するという問題を避けることができる。磁気分離機の使用は、触媒の回収を便利にさせ、固液混合輸送装置の設計及び応用は、水素化工程における複合粉状触媒の循環流動を実現する。
【0083】
本発明において、触媒の失活は、一般に無機物又は有機物の炭素沈着などにより触媒の穴が塞がれ、これにより触媒の活性点が被覆されることによって引き起こされる。したがって、本発明では、高濃度の塩基溶液、例えば5〜50重量%のアルカリ金属水酸化物の水溶液による洗浄を、超音波振動と結合して、触媒を再生させるようにしている。超音波振動は、無機沈積物、又は有機物の沈着炭素を除去するのに有利であり、高濃度の塩基溶液は、触媒の中の第1回の塩基溶解において溶解しなかったアルミニウムを溶解させることができ、新たなパフ状の多孔構造を形成し、これにより触媒活性を向上させることができる。
【0084】
本発明者は、沈降と磁気分離機によって、磁性を有する水素化触媒を回収し、ベンチュリー式の固液混合輸送装置を設計し、原料を供給するときの動力を利用して、触媒を水素化反応器に循環させることにより、複合粉状触媒の循環使用を実現しており、また触媒をろ過した後で、さらに再生させて元の活性を回復させることを並存させることができるので、触媒の消耗量を大幅に低下させ、触媒の活性寿命を延長させる。
【0085】
分離II工程において、水素化反応に用いられた水素化溶媒が水である場合には、残余の複合粉状触媒をろ過し、分離させた後の水素化液を分相した後、有機相を連続的にアニリン塔へ供給し、塔頂部からアニリンを得てそれを縮合工程に循環させる。塔底部の液は、4−アミノジフェニルアミンを含む粗生成物である。水素化反応に用いられた水素化溶媒がアルコール/水の混合物である場合には、残りの複合粉状触媒をろ過し、分離させた後の水素化液を分相した後、有機相と水相をそれぞれ精留して、アルコール溶媒とアニリンを回収して使用することができる。水素化反応に用いられた水素化溶媒がアルコール類溶媒である場合には、残りの複合粉状触媒をろ過し分離させた後の水素化液を精留塔に供給し、塔頂部から水素化溶媒を分離して、それを水素化工程に循環させ、さらに塔底部の液体をアニリン塔に供給して、その塔頂部からアニリンを得て縮合工程に循環させる。その塔底部の液は、4−アミノジフェニルアミンを含んでいる粗生成物である。アニリン塔の操作圧力は0.005〜0.1MPa(絶対圧力)で、塔底温度は120〜320℃で、気体温度は60〜190℃であってよい。
【0086】
分離IIの工程においてほとんどのアニリンが分離された有機相には、4−アミノジフェニルアミン、アニリン、アゾベンゼン、フェナジン等が含まれる。本発明の一つの実施態様において、精製工程は3塔の連続精留と回分精留により行われ、前記精製すべき有機相が、ポンプにより第1精留塔に供給され、塔頂からアニリン、フェナジンとアゾベンゼンが取り出される。塔底から取り出すものは、粗生成物の4−アミノジフェニルアミンである。第1精留塔の塔頂から取り出したものを第3精留塔に供給して、第3精留塔の塔頂部からアニリンを蒸出させ、その含有量は約99%であり、直接に縮合工程に循環させてもよい。塔底に残ったものはフェナジンとアゾベンゼンである。第1精留塔の塔底液をポンプにより第2精留塔に輸送し、第2精留塔の塔頂部から製品である4−アミノジフェニルアミンを留出させる。塔底液が一定の量に達すると、回分蒸留釜に輸送して蒸留し、留出液中に残存している少量の4−アミノジフェニルアミンを蒸出させて、これを第2精留塔に循環し、他の残渣は釜底部から放出する。
【0087】
上述の本発明の精製工程において、第1精留塔の真空度は0.09〜0.098MPa、還流比は2:1〜10:1、塔頂温度は80〜130℃で、塔底温度は260〜290℃であり、第2精留塔の真空度は0.09〜0.098MPa、還流比は1:0.5〜1:4で、塔頂温度は140〜190℃、塔底温度は260〜300℃であり、第3精留塔の真空度は0.09〜0.098MPa、還流比は1:0.5〜1:2、塔頂温度は80〜120℃、塔底温度は120〜170℃であり、回分精留の塔底真空度は0.09〜0.098MPa、塔頂温度は235〜250℃、塔底温度は280〜330℃である。第2精留塔の塔底温度は相対的に低いが、これにより4−アミノジフェニルアミンの炭化の程度を低下させることができ、総量が96%又はそれ以上である4−アミノジフェニルアミンを、塔底温度が相対的に低い第2精留塔の塔頂から分離するので、回分蒸留を行う液体中の4−アミノジフェニルアミンの量を大幅に減少させることができる。
【0088】
本発明の4−アミノジフェニルアミンの製造方法によれば、ニトロベンゼンとアニリンとを原料とし、順を追って、縮合工程、複合型塩基触媒を分離する工程、水素化工程、水素化溶媒と粉状触媒及びアニリンを分離する工程、精製工程を行い、製造の過程全体を連続的に行うので、工業規模の生産に適している。また、縮合工程において複合型塩基触媒を用いるので、反応制御の困難さを最大限低下させ、反応系における水分が反応を制約する要因にならないようになる。なお、複合型塩基触媒の分解は、水酸化テトラアルキルアンモニウム触媒を単独で用いる場合に比べてきわめて低く、流下薄膜反応器と、反応原料の比率を選択することにより、反応の選択性を向上させた。かつ、溶媒が不要で、複合型塩基触媒にて縮合反応を促進させ、水素化反応の前にそれを分離して回収・使用するので、水素化工程における複合型塩基触媒の熱による分解を避け、水素化触媒の選択可能範囲を大きく広くさせ、より安価な水素化触媒を選択することができた。また、コストを低下させ、水素化反応の温度範囲を拡張し、かつ粒子状触媒を取り込んだ固定床反応器を使うことができ、水素化反応の工業化の技術難度を低下し、同時に水素化後の抽出工程(抽出剤と補助抽出剤で複合型塩基触媒と有機液を分離する工程)を省略した。水素化触媒として複合粉状触媒を使うと、触媒の抗毒性が高く、副生成物が少なく、転化率と選択性が高い。水素化工程においては、磁気回収器にて磁性を有する複合粉状触媒を回収し、ベンチュリー式の固液混合輸送装置で、原料を供給する時の動力を利用して水素化触媒を水素化反応器に戻させることができた。また、化学的及び/又は物理的方法により触媒を再生させ、触媒の消耗量を減少させた。製造過程全体において、反応条件が温和で、副生成物が少なく、転化率と選択性が高い。労働者の負担が小さく、腐食性液体が産出されず、環境に対する汚染がほとんどない。4−アミノジフェニルアミンの純度は99%を越え、工業規模の生産における工程過程の収率は95%を越える。
【実施例】
【0089】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
複合型塩基触媒の製造:
冷却器と撹拌機付きの1,000mL三口フラスコに、任意の順序で水酸化テトラメチルアンモニウム20%(重量)水溶液227.5g(0.50モル)と、水酸化ナトリウム10g(0.25モル)と、テトラメチルアンモニウム炭酸塩30%(重量)水溶液346g(0.50モル)とを仕込み、72〜77℃で均一に撹拌して、27.3(重量)%の複合型塩基触媒を得た。
【0091】
実施例2
複合粉状触媒の製造
ニッケル粉46gと、アルミニウム粉51gと、鉄粉3gとを均一に混合した後、誘導電気炉内で合金状に溶融し、溶融合金を、気体の圧力を利用して、ノズルから高速で回転している銅ドラム上に吐出し、急速に冷却した(冷却速度は105〜106K/sである)。冷却された合金をボールミルで粉末に粉砕し、ふるいを用いて40〜300メッシュの粉末99.7gを得た。容積が500mLの、温度計と撹拌器付き三口フラスコに、水酸化ナトリウム20%(重量)水溶液375gを仕込み、上記により得た粉末を徐々に添加して、60℃で4h撹拌した。その後、固体を中性になるまで脱イオン水で洗浄して、複合粉状触媒を得た。
【0092】
実施例3
A.縮合工程
真空下で、前記複合型塩基触媒と、アニリンと、ニトロベンゼンの輸送ポンプを同時に起動させ、アニリンが150kg/h、ニトロベンゼンが30kg/h、複合型塩基触媒が200kg/hになるように流量を調整して、前記複合型塩基触媒と、アニリンと、ニトロベンゼンを連続的に流下薄膜反応器に送入して加熱し、縮合反応を行った。流下薄膜反応器の縮合液を下部から排出して第1段反応器に送入し、引き続いて縮合反応を行った。第1段反応器の底部の、一部の縮合液を、循環ポンプによりさらに流下薄膜反応器に戻し、局部循環系を構成した。流下薄膜反応器の熱媒として、78〜90℃のエタノール蒸気を用いた。反応温度を75℃で、圧力を0.008MPa(絶対圧力)、循環液の流量を1m3/hになるように制御した。第1段反応器の内容物を、第2段反応器にオーバーフローさせた。第2段反応器の操作温度、圧力などの工程条件を、第1段反応器と同一にした。流下薄膜反応器、第1段反応器及び第2段反応器中の物質の総滞留時間が、5hになるように制御した。縮合反応が安定した後、後述する方法により回収した複合型塩基触媒を用い、実施例1によって製造した新鮮な複合型塩基触媒を少量のみ供給して、反応系における水酸基とニトロベンゼンとのモル比が1:1以上になるように制御した。第2段反応器から排出されたマテリアルについて分析した結果、ニトロベンゼンが≦0.1%、水分が24.9%、4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンの含有率が16.1%(重量)であった。
【0093】
B.分離I工程
このようにして得た縮合液を、連続的に分離I工程に供給した。ここで、ろ過した後の縮合液に炭酸ガスと水を導入し、溶液のpHを約8に調整した。系を分相した後、水相に水酸化カルシウムを25kg/hの流量で供給し、ろ過、濃縮して得られた複合型塩基触媒の濃度を元の触媒濃度に回復させてから、それを縮合工程に循環させて使用した。有機相には、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンが含まれていた。
【0094】
C.水素化工程
分離I工程においてろ過して得た4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンを含む有機相を、密封された磁気撹拌機と、冷却及び加熱システムとを有する第1段水素化反応器に供給した。水素ガスで置換し、圧力が1.3MPaになるまで加圧した。水素循環機を作動させ、循環水素ガスの流量を1Nm3/hに保持しながら、反応時の気液移動効果を向上させるために、バブリング形式で循環水素ガスを水素化反応器に供給した。4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンを含む有機相の流量が180kg/h、メタノールが48kg/hになるように制御するとともに、上述のようにして製造した複合粉状触媒を反応器へ投入して、固体と液体の比率を6:100(重量比)に制御した。水素化還元液は、第1段反応器から第2段反応器へ、さらに第3段反応器へ、最後に沈降槽にオーバーフローさせた。反応温度は75〜80℃、圧力は1.3MPa、総滞留時間は5hであった。磁気分離機の作用によって、最大限に前記複合粉状触媒を回収することができた。沈降槽の底部の、より高い濃度の固体触媒を含む固液混合物を、ベンチュリー式の固液輸送装置で、原料を供給する時の動力を利用して、第1段水素化反応器に戻した。還元反応の終点の状況を検出することにより、水素化反応における触媒の活性を判断して、複合粉状の水素化触媒の補充投入が必要であるかどうかを決めた。水素化還元液について、高効率液相クロマトグラフィー法により測定した結果、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンを含んでいなかった。
【0095】
D.分離II工程
上記水素化液を分離II工程に供給し、ろ過によって、水素化液の中に含まれている極少量の複合粉状触媒を回収し、該複合粉状触媒を再生させた後、水素化工程に循環させた。ろ過によって得たろ液を228kg/hの流量でメタノール塔に供給し、塔頂部からメタノールを分離して水素化工程に循環させ、塔中の液体をアニリン塔に供給して塔頂部からアニリンを得、縮合工程に循環させた。塔底の液体は、粗4−アミノジフェニルアミンであった。アニリン塔の操作圧力は0.005MPa(絶対圧力)、塔底温度は150〜160℃、気体の温度は115〜125℃であった。
【0096】
E.精製工程
複数の分離II装置から提供された4−アミノジフェニルアミンを含有する粗生成物を、精製装置に供給した。4−アミノジフェニルアミンの粗生成物を(4−アミノジフェニルアミン78.1%と、アニリン21.75%と、アゾベンゼン0.05%と、フェナジン0.1%を含む)を、120kg/hの流量で、ギアポンプを用いて連続的に第1精留塔へ輸送した。塔底温度が270℃、塔頂温度が110℃、真空度が0.094MPa、還流比が5:1になるように制御した。軽質成分であるアニリン、アゾベンゼン及びフェナジンを塔頂から採集して、第3精留塔へ輸送した。その流量は約26.2kg/hであった。第3精留塔の塔底温度は150℃で、塔頂温度は90℃で、真空度は0.094MPaで、還流比は1:1であった。塔頂から、24kg/hの流量でアニリンが留出し、塔底の残留物は、アゾベンゼンとフェナジンであった。第1精留塔の塔底液を第2精留塔へ輸送した。第2精留塔を、塔底温度が280℃、塔頂温度が170℃、真空度が0.097MPa、還流比が1:1になるように制御した。第2精留塔の塔頂から得られたものは、4−アミノジフェニルアミンの精製品であった。第2精留塔の塔底液を回分蒸留釜へ輸送した。回分蒸留釜の塔底温度を285〜320℃、真空度を0.094MPa、塔頂温度を235〜250℃に保持し、留出した後の残余の4−アミノジフェニルアミンを第2精留塔へ循環し、さらに蒸留した。全体の4−アミノジフェニルアミンの精製工程を、連続的に行った。得られた4−アミノジフェニルアミンの製品の純度は99.1%で、融点は72℃、凝固点は72.4℃であった。該工程の工業規模生産の収率は95.1%であった。
【0097】
実施例4
実施例3と同様にして4−アミノジフェニルアミンを製造したが、その中の縮合工程を、次のように行った。
すなわち、真空下で、前記複合型塩基触媒と、アニリンと、ニトロベンゼンの輸送ポンプを同時に作動させ、アニリンが150kg/h、ニトロベンゼンが30kg/h、複合型塩基触媒が200kg/hになるように流量を調整して、前記複合型塩基触媒と、アニリンと、ニトロベンゼンを所定の比率で連続的に流下薄膜反応器へ供給して加熱し、縮合反応を行った。流下薄膜反応器の中の縮合液を下部から排出して第1段反応器に供給し、引き続いて縮合反応を行った。第1段反応器の底部の一部の縮合液を循環ポンプによりさらに流下薄膜反応器に戻し、局部循環系を構成した。流下薄膜反応器の熱媒として、78〜90℃のエタノール蒸気を用いた。反応温度が75℃で、圧力が0.008MPa(絶対圧力)、循環液の流量が1m3/hになるように制御した。なお、第1段反応器の内容物を第2段反応器にオーバーフローさせた。第2段反応器の操作温度、圧力などの工程条件は、第1段反応器と同一にした。物質の流下薄膜反応器、第1段反応器及び第2段反応器の中での総滞留時間が5hになるように制御した。縮合反応が安定した後で、回収した複合型塩基触媒を用いた。水酸化ナトリウム:テトラアルキルアンモニウム塩(実施例1によるとテトラメチル炭酸アンモニウムである)が、1:1(モル)の比率になるように、塩基触媒を補充投入して、反応系における水酸基イオンとニトロベンゼンとのモル比が1:1以上になるように制御した。第2段反応器から排出された物質について分析した結果、ニトロベンゼンが≦0.1%、水分が15.6%、4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンの含有率が17.6%(重量)であった。
【0098】
実施例5
触媒の再生方法
水素化液のろ過によって回収した複合粉状触媒20gを、撹拌機と温度計付き100mLの三口フラスコに仕込み、さらに40%の水酸化ナトリウム溶液を20mL加えた。該混合物を撹拌しながら90℃に加熱し、この温度で1h反応させた。反応が終わった後、超音波洗浄器に触媒を入れて、30分間かけて、洗浄水のpHが7〜8になるまで、水で複数回洗浄した。得られた固体は、再生後の複合粉状触媒であった。
【0099】
実施例6
複合型塩基触媒の製造
撹拌機と冷却器付き500mLの三口フラスコに、230gの水を仕込み、温度を75±2℃に制御しながら、任意の順序で水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物91g(0.水酸化テトラメチルアンモニウム50モルを含有)、水酸化ナトリウム20g(0.5モル)、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド70g(0.5モル)を加え、均一に撹拌して、複合型塩基触媒を得た。濃度は32.85(重量)%であった。
【0100】
実施例7
複合型塩基触媒の製造
撹拌機と冷却器付き500mLの三口フラスコに、水230gを仕込み、混合温度を75±2℃に制御しながら、任意の順序で、水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物91g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.50モルを含有)、水酸化ナトリウム20g(0.5モル)、メチル炭酸テトラメチルアンモニウム([(CH34N]+[CO3CH3-)74.5g(0.5モル)を加え、均一に撹拌して、複合型塩基触媒を得た。濃度は33.7(重量%)であった。
【0101】
実施例8
撹拌機と、冷却器と、分水器付き500mLの四口フラスコに、150gの水を仕込み、任意の順序で、水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物91g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.50モルを含有)、水酸化ナトリウム20g(0.5モル)、メチル炭酸テトラメチルアンモニウム([(CH34N]+[CO3CH3-)74.5g(0.5モル)を加え、ベンゼン25gを加えて加熱還流した。分水器中には水相と油相が存在したが、油相を四口フラスコに戻し、水相を取り出した。留出した液体が水を含まなくなるまで蒸留して、無水の複合型塩基触媒を得た。
【0102】
実施例9
メチル炭酸テトラメチルアンモニウム([(CH34N]+[CO3CH3-)の製造
撹拌装置と加熱装置付き1.5Lのオートクレーブに、炭酸ジメチルエステル90g(1.0モル)、トリメチルアミン59g(1.0モル)、メタノール510g(15モル)を仕込んだ。密閉した後、攪拌しはじめ、140℃に達するまで加熱し、そのときの圧力は1.5MPaであった。該温度を保持しながら4h反応させた。その後、50℃まで温度を下げ、1Lの三口フラスコに取り出して、メチル炭酸テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液を得た。減圧により一部のメタノールを除去し、室温まで冷却し、白色結晶を析出させた。ろ過、乾燥した後、さらにメタノールで再結晶させて、メチル炭酸テトラメチルアンモニウムを119.5g得た。クロマトグラフィー法で分析した結果、純度は99.2%で、収率は80.2%であった。
【0103】
実施例10
1−クロロ−2,3−プロピレンオキシド92.5g(1.0モル)、N−メチルジエタノールアミン3g(1.0モル)、水酸化ナトリウム2g、水700gを、撹拌装置と、加熱装置と、温度測定装置付き反応釜に仕込んで撹拌しはじめ、温度を徐々に120℃まで上昇させ、反応釜にエチレンオキシドガスを導入し、反応釜の圧力を0.3MPaに保持して、反応の圧力が低下した後、導入したエチレンオキシドガスの量が150gになるまで、さらにエチレンオキシドガスを導入し、該条件下で2h反応させてClCH2[CH2CH2O]2−5Hを得、更にトリメチルアミンガス60gを導入し、140℃に加熱した。圧力は1.5MPaであった。該温度で4h反応させた。室温まで温度を低下させ、常法で脱水乾燥して、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウム塩酸塩105gを得た。
【0104】
実施例11
水酸化テトラメチルアンモニウムの製造
撹拌装置と加熱装置付き1.5Lのオートクレーブに、炭酸ジメチルエステル90g(1.0モル)、トリメチルアミン59g(1.0モル)、メタノール510g(15モル)を仕込んだ。密閉した後、撹拌しはじめ、140℃まで加熱した。圧力は1.5MPaであった。該温度を保持しながら4h反応させた。その後、室温まで温度を下げ、1Lの三口フラスコに放出し、それに水酸化カルシウム148g(2.0モル)と水350gで調製したスラリーを投入した。撹拌しながら8h加熱してメタノールを留去し、ろ過して、水酸化テトラメチルアンモニウムの溶液355gを得た。分析の結果、水酸化テトラメチルアンモニウムの含有率は24.4%で、全体反応収率は95.2%であった。
【0105】
実施例12
水酸化テトラエチルアンモニウムの製造
撹拌装置と加熱装置付き1.5Lのオートクレーブに、硫酸ジエチルエステル154g(1.0モル)、トリエチルアミン101g(1.0モル)、エタノール690g(15モル)を仕込んだ。密閉した後、撹拌しはじめ、140℃まで加熱した。圧力は1.0MPaであった。該温度を保持しながら4h反応させた。その後、室温まで温度を下げ、1Lの三口フラスコに放出し、それに水酸化ナトリウム80g(2.0モル)を加えて、撹拌しながら加熱した。反応温度は45℃に、反応時間は4hに制御した。ろ過した後、濾液からまず一部のエタノールを留去して、水500gを加えながらエタノールを蒸発(その一部は水に含まれた)させ、604gの水酸化テトラエチルアンモニウム溶液を得た。分析の結果、水酸化テトラエチルアンモニウムの含有率は23.3%(重量)で、全体反応収率は95.7%であった。
【0106】
実施例13
アニリンとニトロベンゼンの量の反応に対する影響
小型反応器、流下薄膜反応器及び循環ポンプによって、真空系及び温度制御系とを有する、総体積が1Lの局部循環系を構成した。先にアニリンを充満させ、循環ポンプの流量を2L/hに設定した。ニトロベンゼン:アニリン:複合型塩基触媒中のOH-のモル比が1:1:1.8であるニトロベンゼン、アニリン、及び実施例1によって製造した複合型塩基触媒を含む混合液を、200mL/hの速度で反応器に供給した。滞留時間は5hであった。系の温度を75℃、圧力を0.008MPa(絶対圧力)に保持した。反応液がアニリンを置換して、反応液の組成が安定した後、サンプルを取って分析したところ、ニトロベンゼンの存在は、ほとんど検出できなかった。反応によって生成した4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンのモル数の合計により、反応の選択性を計算した。
【0107】
同じ条件により、ニトロベンゼンとアニリンの比率のみを変更して、表1に示す結果を得た。
【0108】
【表1】

【0109】
表のデータから分かるように、アニリンとニトロベンゼンとのモル比を増大させることにより、反応の選択性を改善することができ、目的生成物の量を増加させ、副生成物を減少させることができる。しかしながら、実際の応用においてアニリンの量が多すぎると、分離工程におけるアニリンの消耗とエネルギーの消耗が多くなる。
【0110】
実施例14
縮合反応に対する水の影響
小型反応器、流下薄膜反応器及び循環ポンプによって、真空系及び温度制御系とを有する、総体積が1Lの局部循環系を構成した。該反応器系に、先にアニリンを充満させ、循環ポンプの流量を2L/hに設定した。ニトロベンゼン、アニリンと複合型塩基触媒を含む混合液を、所定の速度で反応器に供給し、ニトロベンゼン:アニリンのモル比を1:7に、ニトロベンゼン:複合型塩基触媒のOH-のモル比を1:1.15に保持した。系の温度は75℃、圧力は0.008MPa(絶対圧力)であった。反応液がアニリンを置換して、反応液の組成が安定した後、供給する原料の流量を調整して、ニトロベンゼンの量が≦0.1%になるように反応滞留時間を調整し、反応によって生成した4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンに基づいて計算した収率が97%になった時、反応液の出口の水分含量を測定して下記の結果を得た。
【0111】
【表2】

【0112】
表から分かるように、複合型塩基触媒中のN,N−ジメチルーN,N−ジ((ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピル)アンモニウム炭酸塩の比率の増大に伴い、反応終点における含水率も高くなっている。本発明の複合型塩基触媒によれば、反応終点において、反応混合物に含まれても構わない含水率値についての許容範囲が非常に広くなり、系内に比較的多い水を含有する場合であっても、好ましい収率を得ることができた。反応の後期に水分が少ないほど脱水効率は低くなるので、本発明によれば、反応の困難さを低下させることができる。逆に、触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムのみを用いると、系中の水分を1.2%までに脱水しても97%の収率しか得られず、これは反応の制御に困難さをもたらすことになり、エネルギーの消耗を増加する。
【0113】
実施例15
実施例8によって製造した無水複合型触媒を、アニリン651gとともに、撹拌装置と温度計の付いた四口フラスコに仕込んで撹拌しはじめ、温度を75℃、圧力を0.008MPa(絶対圧力)に保持して、系中の含水率が0.5%未満になるまで加熱した。留出したアニリンと水の共沸物を二つの層に分けた後、アニリンを四口フラスコに戻し、2hかけてニトロベンゼン123gを滴下し、4h保持しながら引き続いて脱水した。クロマトグラフィー法で分析した結果、4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンの収率は97.4%で、系中の含水率は0.5%未満であった。
【0114】
実施例16
連続薄膜式反応と全体混合反応の結果の比較
アニリン:ニトロベンゼン:複合型塩基触媒中のOH-のモル比を7.5:1:1.5に、反応温度を75℃、反応時間を5h、圧力を0.005MPa(絶対圧力)に制御して、連続薄膜式反応と全体混合反応を比較した。その結果を表2及び表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
実施例17
固定床による触媒水素化
400mLの反応器に、直径5mm、柱面の高さ5mmの円柱型の銅触媒をランダムに投入した。触媒には、酸化銅42%、酸化亜鉛42%、三酸化二アルミニウム6%が含まれ、残余は物理水である。水素気流下、110〜240℃で触媒床を24h活性化した。実施例3の分離I工程から得た4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンを含む有機相を、少し加熱して溶融させた後、その30%体積に相当するメタノールと混合した。該混合物を100ml/hの流量で水素ガスと混合して予熱した後、上記水素化反応器に供給した。圧力が5.0MPaで、気体と液体の比率が、1,000:1で、温度が135℃という条件下で水素化を行った。水素化還元液を高効率液体クロマトグラフィー法で分析した結果、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミンは含まれていなかった。この装置を上記条件下で、500h連続的に作動させた。
【0118】
実施例18
回分水素化実施例
撹拌装置と温度制御装置付き1Lのオートクレーブに、4−ニトロソジフェニルアミン17.5%と4−ニトロジフェニルアミン3.0%を含む分離I液を500g仕込んだ。エタノール150gと、本発明の実施例2で製造した複合粉状触媒5gを加えた。水素ガスで三回置換した後、0.8MPaまで加圧した。撹拌しながら、反応混合物を100℃まで加熱し、かつ該温度で4h反応させた。反応が完了した後、冷却し、減圧して生成物を取り出した。高効率液相クロマトグラフィー法で反応液を分析した結果、反応液には4−ニトロソジフェニルアミンと4−ニトロジフェニルアミンが含まれておらず、4−アミノジフェニルアミンの含有率は14.6%(クロマトグラフィー含有量)であった。
【0119】
複合粉状触媒と貴金属触媒の比較
5重量%のパラジウムを含むPd/C触媒と、本発明の複合粉状触媒とを比較した。試験は上述の回分式水素化実施例に記載された条件下で行い、投入した触媒の量も同じにした。反応が完了した後、2種類の触媒をいずれも回収して使用した。回収使用する回数が21回に達する前には、両者の反応液では、いずれも4−ニトロソジフェニルアミンを検出できなかった。しかしながら、回収使用の回数が第21回目の時、Pd/C触媒を用いて得た反応液には0.1%の4−ニトロジフェニルアミンが含まれていた。しかしながら、本発明の複合粉状触媒を用いて得た反応液では、4−ニトロジフェニルアミンを検出できなかった。これより、本発明の触媒の抗毒性が、貴金属触媒に比べて優れていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明の4−アミノジフェニルアミンを製造する方法の一つの実施態様におけるプロセスフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロベンゼンとアニリンを原料とし、
縮合工程と、
分離I、すなわち複合型塩基触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、
水素化工程と、
分離II、すなわちアニリンを分離・回収して循環的に使用し、水素化溶媒を分離・回収して循環的に使用してもよく、必要に応じて、少なくとも一部が再生されたものでもよい、水素化触媒を分離・回収して循環的に使用する工程と、
精製工程、
の5工程を含み、
縮合触媒として複合型塩基触媒を用いることを特徴とする、4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項2】
水素化反応に用いられる水素化触媒が、元素周期律表の第VIII族元素若しくは銅、クロム、亜鉛、マンガンから選ばれるものを活性成分及び/又は補助触媒成分とする、通常の水素化触媒又は複合粉状触媒であることを特徴とする、請求項1に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項3】
水素化反応に用いられる水素化触媒が、複合粉状触媒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項4】
前記複合粉状触媒が、ニッケル、アルミニウム、元素Aを含み、前記元素Aは、Fe、Cu、Co、Mn、Cr、Mo、B、Pから選ばれる少なくとも1種であり、その中でニッケルの含有率が25〜99.9重量%で、アルミニウムと元素Aの含有率の合計が0.1〜75重量%であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項5】
縮合反応の条件が、ニトロベンゼン:アニリン=1:1〜1:15(モル比)であり、反応温度が20〜150℃で、反応圧力が0.005〜0.1MPa(絶対圧力)で、反応時間が3.5〜6hであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項6】
前記分離I工程において、酸性物質を添加して体系を中和して分離させた後、塩基により水相をアルカリ化する方法によって複合型塩基触媒を回収し、前記酸性物質が、無機酸、その酸化物と水の組み合わせ、及び他の無機酸型塩から選ばれるものであり、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素と水の組み合わせ、又は三酸化硫黄と水の組み合わせであり、用いられる塩基が、アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物又は酸化物から選ばれるものであり、複合型塩基触媒の中のテトラアルキルアンモニウム塩と塩基に基づいて対応する酸性物質と塩基を選択することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項7】
複合型塩基触媒中の水酸基イオンとニトロベンゼンとのモル比が1:4〜4:1であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項8】
縮合反応に使われる複合型塩基触媒は、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩との3種の成分を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項9】
複合型塩基触媒中の水酸化テトラアルキルアンモニウム:アルカリ金属水酸化物:テトラアルキルアンモニウム塩の比率が(0〜9):(0.5〜3):(0.5〜3)(モル比)で、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩の合計の濃度が10〜100重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項10】
前記複合型塩基触媒を、温度を0〜90℃に制御しながら、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とを所望のモル比で、水の中で均一に撹拌して、含水複合型塩基触媒を得ることによって製造し、前記原料である水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩が、いずれも固体又は水溶液の形態であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項11】
前記複合型塩基触媒を、温度を0〜90℃に制御しながら、水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩とを所望のモル比で、水中で均一に撹拌して、ベンゼンを添加し、共沸によって水を完全に除去して、無水複合型塩基触媒を得ることによって製造し、前記原料である水酸化テトラアルキルアンモニウムと、アルカリ金属の水酸化物又は酸化物と、テトラアルキルアンモニウム塩が、いずれも固体又は水溶液の形態であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項12】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が、下記の一般式:
[(R1)(R2)(R3)(R4)N]+nn-
(式中、R1、R2、R3とR4は、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子数が1〜4のアルキル基を表し、前記アルキル基は親水性置換基を有してもよく、Xn-は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸水素イオン、アルキル(C1〜C2)炭酸イオン、アルキル(C1〜C2)硫酸イオンから選ばれる基であり、n=1〜2である。)
で表されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項13】
前記テトラアルキルアンモニウム塩の一般式において、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が親水性置換基を有し、該親水性置換基が、ヒドロキシ、メトキシ、ポリエーテル、カチオンポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンポリアミン、及び強水溶性のアンモニウム塩含有基から選ばれる基であることを特徴とする、請求項12に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項14】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が、ポリメチル化トリエチレンテトラアミン硫酸塩、ポリメチル化ジエチレントリアミン炭酸塩、N,N−ジメチル−N,N−ジメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N−メチル−N,N,N−トリメトキシエチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウム炭酸塩、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)エチルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチル−N−(ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピルアンモニウムクロリド、N,N−ジメチル−N,N−ビス((ポリ)オキシエチレン(1〜4モルEO)プロピル)アンモニウム炭酸塩から選ばれる親水性置換基含有テトラアルキルアンモニウム塩であることを特徴とする、請求項13に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項15】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチル炭酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム炭酸塩、エチル炭酸テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム硫酸塩、メチル硫酸テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム硫酸塩、エチル硫酸テトラエチルアンモニウムから選ばれるものであることを特徴とする、請求項12に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項16】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルを、極性溶媒中で反応させて得たものであることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項17】
前記テトラアルキルアンモニウム塩を製造する反応において、反応圧力が0.1〜3MPaで、反応温度が50〜200℃で、反応時間が1.5〜6hで、トリアルキルアミンと炭酸ジアルキル(C1〜C2)エステル又は硫酸ジアルキル(C1〜C2)エステルの比率が2:1〜1:2(モル)で、前記極性溶媒が、メタノール、エタノール又はイソプロパノールであり、極性溶媒の使用量が、トリアルキルアミンの重量の1〜10倍であることを特徴とする、請求項16に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項18】
前記縮合反応が、無酸素条件下で行われることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項19】
前記縮合反応において、プロトン性物質の別途添加又は制御が不要であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項20】
前記縮合反応が、無溶媒下で行われることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項21】
前記縮合反応において、反応の初期に一部の複合型塩基触媒を添加するだけで、反応過程においては、複合塩基触媒中のテトラアルキルアンモニウム塩及び/又はアルカリ金属の水酸化物若しくはアルカリ金属の酸化物のみを補充することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項22】
前記縮合反応が、縮合循環ポンプと、流下薄膜反応器と、第1段反応器からなる循環システム、及び必要に応じて設置する後続反応器の中で行われることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項23】
前記縮合工程において流下薄膜反応器を使い、流下薄膜反応器の熱媒として、アルコール蒸気、又は温水、水蒸気、又はメタノール蒸気を使うことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項24】
水素化反応の条件が、還元剤として水素ガスを使い、気体と液体の比が10:1〜1500:1(体積)で、非固定床水素化工程を採用する場合の固体と液体の比が0.5:100〜16:100(重量)で、溶媒:分離I液、すなわち複合型塩基触媒を分離した後の縮合液=1:10〜5:10(重量)であり、気体は水素ガスを指し、液体は溶媒と分離I液を含み、固体は水素化触媒を指し、水素化反応の温度が50〜150℃で、反応器の圧力が0.2〜6.0MPa(絶対圧力)で、反応時間が2〜7hであることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項25】
水素化反応に用いられる複合粉状触媒が、ニッケル粉と、アルミニウム粉と、元素Aとを所定の比率で混合し、その後、高温状態で溶融させ、急速に冷却した後、反応器から排出し、粉末に粉砕し、その後、水酸化物の水溶液によって処理することにより製造されることを特徴とする、請求項2〜24のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項26】
前記水素化反応の後に、磁気分離機により、磁性を有する複合粉状触媒を回収することを特徴とする、請求項3〜25のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項27】
ベンチュリー式の固液混合輸送装置を用い、原料を供給するときの動力を利用して、磁気分離機により回収した複合粉状触媒を、水素化反応器に循環させることを特徴とする、請求項3〜26のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項28】
超音波振動及び/又は強塩基処理によって、失活した複合粉状触媒を再生させることを特徴とする、請求項3〜27のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項29】
水素化反応で使用した溶媒が、アルコール類及び/又は水であることを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項30】
精製工程において、3塔連続精留と回分精留を採用し、その中で、第1、第2、第3の精留塔の真空度が、それぞれ独立に0.09〜0.098MPaであり、塔底温度が、それぞれ260〜290℃、260〜300℃、120〜170℃で、還流比が、それぞれ2:1〜10:1、1:0.5〜1:4、1:0.5〜1:2であり、回分精留における真空度が0.09〜0.098MPaで、塔底温度が280〜330℃であることを特徴とする、請求項1〜29のいずれか1項に記載の4−アミノジフェニルアミンの製造方法。
【請求項31】
(i)ニトロベンゼンと、アニリンと、複合型塩基触媒とを所定の比率で、計量ポンプにより連続的に縮合工程に供給し、反応させ、4−ニトロジフェニルアミンと4−ニトロソジフェニルアミン及び/又はそれらの塩を含む縮合液(7)を生成する工程;
(ii)縮合液(7)を連続的に分離I工程に供給し、酸性物質を添加して中和することによって縮合液(7)を分離し、さらに、塩基にて水相をアルカリ化する方法によって複合型塩基触媒を回収し、回収した複合型塩基触媒(1)を縮合工程に循環させる工程;
(iii)分離Iの生成液すなわち複合型塩基触媒を分離した縮合液(8)、水素化溶媒(補充した水素化溶媒(3)と、回収してもよい水素化溶媒(5)を含む)を所定の比率で連続的に水素化工程に供給して、複合粉状触媒(補充した複合粉状触媒(2)と、循環的に使用する少なくとも一部を再生させてもよい複合粉状触媒(4)を含む)の存在下で、水素ガスと反応させ、4−アミノジフェニルアミンを含む水素化液(9)を得る工程;
(iv)水素化液(9)を分離II工程に供給し、ここで、(a)複合粉状触媒(4)と、(b)縮合工程に循環させるアニリン(6)と、任意的に、(c)水素化工程に循環させる水素化溶媒(5)とを分離して得て、前記複合粉状触媒(4)を、直接、水素化工程に循環させるか、あるいは少なくとも一部再生させてから水素化工程に循環させる工程;
(v)アニリンの大部分を分離した4−アミノジフェニルアミンの粗生成物(10)を精製工程に供給し、ここで、(a)縮合工程に循環させる一部のアニリン(6)と、(b)4−アミノジフェニルアミンの製品を分離して得る工程
を含むことを特徴とする、4−アミノジフェニルアミンの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506672(P2007−506672A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517937(P2006−517937)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000734
【国際公開番号】WO2005/003079
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506240425)シノケム・カンパニー・シャンドン (1)
【氏名又は名称原語表記】Sinorgchem Co., Shandong
【Fターム(参考)】