説明

4−イミダゾリン及びそれらの抗うつ剤としての使用

本発明は、式(I)[式中、Rは、水素、ハロゲン又は低級アルキルであり;Rは、水素又はアミノであり;X−Yは、−(CH−、N(R)−CH−、−O−CH−又は−S−CH−であり;Arは、フェニル又はナフチルであり;nは、1又は2であり;Rは、水素又は低級アルキルである]で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩に関するが、ラセミ化合物4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体(CAS 131548-83-9)を除くものとする。式(I)で示される化合物が微量アミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出されている。本化合物は、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用、及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害の処置に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【0002】
【化1】


[式中、
は、水素、ハロゲン又は低級アルキルであり;
は、水素又はアミノであり;
X−Yは、−(CH−、N(R)−CH−、−O−CH−又は−S−CH−であり;
Arは、フェニル又はナフチルであり;
nは、1又は2であり;
Rは、水素又は低級アルキルである]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩に関するが、ラセミ化合物4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体(CAS 131548-83-9)を除く。
【0003】
式Iで示される新規化合物の範囲から除かれる特定の化合物は、例えば以下に示される参考文献に記載されているか、又は公的化学ライブラリーに含まれる。
【0004】
本発明は、全てのラセミ混合物、対応する全ての鏡像異性体及び/又は光学異性体を含む。
【0005】
さらに、式Iで示される化合物の全ての互変異性型も、本発明に包含される。
【背景技術】
【0006】
式Iで示される化合物が、微量アミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出されている。本化合物は、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用、及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害の処置に使用できる。
【0007】
古典的生体アミン(セロトニン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン)は、中枢及び末梢神経系において神経伝達物質としての重要な役割を果たす[1]。それらの合成及び保存は、それらの分解及び放出後の再取り込みと同様に、厳密に制御されている。生体アミンのレベルのインバランスが、多くの病理学的な条件下において、脳機能の変化の要因であることが知られている[2〜5]。いわゆる微量アミン(TA)と呼ばれる第二の種類の内在性アミン化合物は、構造、代謝及び細胞内局在に関して古典的生体アミンと有意に重複する。TAは、p−チラミン、β−フェニルエチルアミン、トリプタミン及びオクトパミンを含み、それらは古典的生体アミンより一般的に低いレベルで哺乳類の神経系に存在する[6]。
【0008】
それらの調整不全は、統合失調症及びうつ病のようなあらゆる精神疾患と[7]、ならびに注意欠陥多動性障害、偏頭痛、パーキンソン病、物質乱用及び摂食障害のような他の状態[8、9]と関連づけられてきた。
【0009】
長い間、TAに特異的な受容体は、ヒト及び他の哺乳類のCNSにおける解剖学的に分離した高親和性TA結合部位に基づいてのみ仮説が立てられていた[10、11]。したがって、TAの薬理効果は、古典的生体アミンの周知の機構、つまりそれらの放出を促すこと、それらの再取り込みを阻害すること又はそれらの受容体システムと「交差反応する」ことのずれかにより媒介されると考えられてきた[9、12、13]。この見解は、微量アミン関連受容体(TAAR)である、新規なGPCRファミリーのいくつかのメンバーが最近特定されたことにより著しく変化した[7、14]。ヒトには9種のTAAR遺伝子が存在し(3種の偽遺伝子を含む)、マウスには16種の遺伝子(1種の偽遺伝子を含む)が存在する。TAAR遺伝子はイントロンを含まず(例外が一つだけあり、TAAR2はイントロンを1つ含む)、同じ染色体セグメント上で互いに隣り合うように位置している。受容体遺伝子の系統学的関連性は、綿密なGPCRファルマコフォア類似性比較及び薬理学的データと一致して、これらの受容体が三つの異なるサブファミリーを形成することを示唆する[7、14]。TAAR1は、4種の遺伝子(TAAR1〜4)の第一のサブクラスにあり、ヒトとげっ歯類の間で高度に保存されている。TAはGαを経由してTAAR1を活性化する。TA調整不全は、うつ病、精神病、注意欠陥多動性障害、物質依存、パーキンソン病、偏頭痛、摂食障害、代謝障害のような種々の疾患の病因論に寄与することが示され、そのためTAAR1リガンドはこれらの疾患の処置において高い可能性を有している。
【0010】
従って、微量アミン関連受容体に関する知識を増やすことに対して広範な興味がある。
【0011】
【表1】

【0012】
本発明の目的は、式(I)で示される新規な化合物、それらの製造、本発明の化合物に基づく医薬及びそれらの生産、そして同様に、例えばうつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用、及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害などの疾病の制御又は予防における式(I)で示される化合物の使用である。
【0013】
本発明の化合物を使用する適応症は、好ましくはうつ病、精神病、パーキンソン病、不安症及び注意欠陥多動性障害(ADHD)である。
【0014】
本発明で使用される用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを意味する。好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0015】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素及び臭素を意味する。
【0016】
用語「薬学的に許容し得る酸付加塩」は、無機及び有機酸、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩を包含する。
【0017】
式Iで示される好ましい化合物は、Arがナフチルであり、そしてX−Yが−CH−であるもの、例えば以下の化合物
rac−4−ナフタレン−1−イルメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体、又は
(RS)−4−(8−エチル−ナフタレン−1−イルメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体
である。
【0018】
式Iで示されるさらに好ましい化合物は、Arが、フェニルであり、そしてX−Yが、−CH−CH−であるもの、例えば以下の化合物
rac−4−フェネチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体、又は
rac−4−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体
である。
【0019】
式Iで示されるさらに好ましい化合物は、Arが、フェニルであり、そしてX−Yが、−N(R)−CH−であるもの、例えば以下の化合物
rac−(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−エチル−フェニル−アミンもしくは互変異性体、又は
(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−メチル−フェニル−アミンもしくは互変異性体
である。
【0020】
式Iで示される本化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、当該技術分野において既知の方法によって、例えば以下に記載される方法によって製造することができ、該方法は、
a)式(2):
【0021】
【化2】


で示されるジアミノ化合物を、
式(3):
【0022】
【化3】


で示されるホルムアミジニウム塩と反応させ、式:
【0023】
【化4】


[式中、置換基は上記と同義である]で示される互変異性化合物の混合物とすること、又は
b)式(2):
【0024】
【化5】


で示される化合物を、式(4):
BrCN (4)
と反応させて、式:
【0025】
【化6】


で示される化合物とし、
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換すること
を含む。
【0026】
式Iで示される化合物は、上記に記載した方法の変法及び以下のスキーム1及び2にしたがって調製できる。出発物質は、市販されているか、あるいは化学文献において既知であるか、又は当該技術分野において周知の方法にしたがって調製できる。
【0027】
【化7】

【0028】
不活性溶媒中(好ましくはメタノール又はエタノール)、式(2)で示される1,2−ジアミノ化合物を、例えばホルムアミジニウムアセタート(この場合、HX=HOAc)のような式(3)で示されるホルムアミジニウム塩と、室温又は高温において反応させ、式Iで示される化合物を互変異性体Ia及びIbの混合物として形成する。両方の互変異性型が、本発明の目的である。
【0029】
手順は、例えば以下に記載されている。
[1]J. Med. Chem. 2004, 47, 3220
ホルムアミジニウム塩(3)の代わりに、1,2−ジアミノ化合物(2)をイミダゾリン化合物Iに変換させる他の試薬も記載されている。
[2]ギ酸エチル:Synthetic Communications, 2004, 34, 3535
[3]オルトギ酸トリエチル:Tetrahedron Lett. 2003, 44, 9111
[4]ジメチルホルムアミドジメチルアセタール:J. Org. Chem. 1997, 62, 3586
【0030】
【化8】

【0031】
式Ia1及びIb2で示される2−アミノ−イミダゾリン化合物を合成するため、テトラヒドロフランのような溶媒中、式(2)で示される1,2−ジアミノ化合物を、臭化シアン(4)と、室温又は高温において反応させる。炭酸カリウムのような塩基を加えても良い。互変異性型Ia1及びIb2の両方が、本発明の目的である。
【0032】
手順は、例えば以下に記載されている。
[5]J. Amer. Chem. Soc. 1964, 86, 2241
【0033】
スキーム1及び2において出発物質として用いられる1,2−ジアミノ化合物(2)は、例えば2−アミノニトリル又は1,2−ジアジド化合物の還元のような既知の方法を用いて入手することができる。そのような方法は、例えば以下に記載されている。
[6]J. Med. Chem. 1985, 28, 1280
[7]Helv. Chim. Acta 2005, 88, 1486
【0034】
化合物の単離及び精製
本明細書に記載される化合物及び中間体の単離及び精製は、所望であれば、任意の適切な分離又は精製の手法、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、分取の低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー又はこれらの手法の組み合わせによっても達成することができる。適切な分離及び単離手法の具体的な説明は、以下の調製及び実施例を参照することにより得られる。しかしながら、他の同等の分離又は単離手法も、当然のことながら用いることができる。式Iで示されるキラル化合物のラセミ混合物は、キラルHPLCを用いることで分離できる。
【0035】
式Iで示される化合物の塩
式Iで示される化合物は塩基性であり、対応する酸付加塩に変換できる。変換は、少なくとも化学量論量の適した酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などと処理することにより成し遂げられる。典型的には、遊離塩基を不活性有機溶媒、例えばジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、エタノール又はメタノールなどに溶解させ、酸を類似の溶媒中で加える。温度は0〜50℃に保たれる。結果として得られる塩は、自然に沈殿するか、又はより極性の低い溶媒により溶液から取り出してもよい。
【0036】
式Iで示される塩基性化合物の酸付加塩は、少なくとも化学量論量の適切な塩基、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどと処理することによって、対応する遊離塩基に変換できる。
【0037】
式(I)で示される化合物及びその薬学的に使用され得る付加塩は、有用な薬理学的性質を有する。具体的には、本発明の化合物は微量アミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出された。
【0038】
本化合物を、以下に与えられる試験にしたがって調べた。
【0039】
材料及び方法
TAAR発現プラスミド及び安定にトランスフェクトされた細胞株の構築
発現プラスミドの構築のために、ヒト、ラット及びマウスのTAAR1のコード配列を、本質的にはLindemannら[14]により記載されているようにして、ゲノムDNAから増幅した。Expand High Fidelity PCR System (Roche Diagnostics)を、1.5mM Mg2+で使用し、精製されたPCR生成物は製造者の使用説明書に従ってpCR2.1−TOPOクローニングベクター(Invitrogen)にクローン化された。PCR生成物は、pIRESneo2ベクター(BD Clontech, Palo Alto, California)にサブクローン化され、発現ベクターを、細胞株に導入する前に配列検証した。
【0040】
HEK293細胞(ATCC#CRL-1573)を本質的にはLindemannら(2005)が記載したようにして培養した。安定的にトランスフェクトされた細胞株を生成するために、HEK293細胞を、Lipofectamine2000(Invitrogen)によって、TAARコード配列(上記に記載)を含むpIRESneo2発現プラスミドで、製造者の使用説明書に従ってトランスフェクトし、24時間のトランスフェクション後、培地に1mg/mlのG418(Sigma, Buchs, Switzerland)を補充した。約10日の培養期間の後、クローンを単離し、増幅し、cAMP Biotrak Enzyme immunoassay (EIA) System (Amersham)を用いて製造者により提供された非アセチル化EIA法に従って微量アミン(全てSigmaから購入した化合物)に対する応答性を試験した。15継代に亘る培養期間において安定なEC50を示した単クローンの株細胞を、以降の全ての研究において使用した。
【0041】
膜の調製及び放射性リガンド結合
コンフルエンスの状態にある細胞を、Ca2+及びMg2+を含まず、10mM EDTAを含む氷冷リン酸緩衝生理食塩水ですすぎ、1000rpmで5分間、4℃で遠心分離してペレット化した。次にペレットを氷冷リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、細胞ペレットを液体窒素に浸すことで直ちに凍結させ、使用するまで−80℃で保存した。次に細胞ペレットを、10mM EDTAを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)20mlに懸濁し、Polytron (PT 3000, Kinematica)を用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。ホモジネートを48000xgで30分間、4℃で遠心分離し、ペレットを、0.1mM EDTAを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)(緩衝液A)20mlに再懸濁し、Polytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。次にホモジネートを48000xgで30分間、4℃で遠心分離し、ペレットを緩衝液A 20mlに再懸濁させ、Polytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。タンパク質濃度を、Pierce (Rockford, IL)の方法により決定した。次にホモジネートを48000xgで10分間、4℃で遠心分離し、1ml当りMgCl(10mM)及びCaCl gタンパク質、及び(2mM)を含むpH7.0のHEPES−NaOH(20mM)(緩衝液B)に再懸濁し、200においてPolytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。
【0042】
結合アッセイは、最終容量1mlにて4℃で、30分間のインキュベーション時間で行った。放射性リガンド[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリンを、計算されたK値である60nMと同じ濃度で使用し、添加した放射性リガンド総濃度のおよそ0.1%の結合、及び結合全体の約70〜80%に相当する特異的結合を得た。非特異的結合は、適切な非ラベル化リガンド(10μM)の存在下で結合した[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリンの量として規定された。広い濃度範囲(10pM〜30μM)において競合リガンドを試験した。アッセイにおける最終ジメチルスルホキシド濃度は2%であり、放射性リガンド結合には影響しなかった。各実験は重複して行った。全てのインキュベーションは、UniFilter−96プレート(Packard Instrument Company)及びガラスフィルターGF/Cを通す高速濾過、少なくとも2時間の0.3%ポリエチレンイミンへの予備浸漬、そしてFiltermate 96 Cell Harvester(Packard Instrument Company)の使用により停止させた。次に、チューブ及びフィルターを、1mlアリコートの冷緩衝液Bで3回洗浄した。フィルターは乾燥させず、Ultima gold(45μl/ウェル、Packard Instrument Company)に浸し、結合放射活性をTopCount Microplate Scintillation Counter(Packard Instrument Company)で計数した。
【0043】
好ましい化合物は、下記の表に示されるように、マウスのTAAR1に対するKi値(μM)は0.005〜0.5の範囲内にあった。
【0044】
【表2】

【0045】
式(I)で示される化合物及び式(I)で示される化合物の薬学的に許容され得る塩は、医薬、例えば医薬製剤の形態で用いることができる。医薬製剤は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤又は懸濁剤の剤形で経口投与され得る。しかし、投与はまた、例えば、坐剤の剤形で直腸内にも、例えば、注射液の剤形で非経口的にも遂行することができる。
【0046】
式(I)で示される化合物は、医薬製剤を製造するため、薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に製剤化することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などは、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のための、そのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオールなどである。しかし、活性物質の性質によっては、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセリン、植物油などである。坐剤に適切な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体のポリオールなどである。
【0047】
更に、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含むことができる。これらはまた、更に他の治療上有用な物質を含むことができる。
【0048】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び治療上不活性な担体を含有する医薬もまた、式(I)で示される化合物及び/又は薬学的に許容され得る酸付加塩の1種以上と、所望により、他の治療上有益な物質の1種以上とを、治療上不活性な担体の1種以上と共に、ガレヌス製剤の投与形態にすることを含む製剤方法と同様に、本発明の目的である。
【0049】
本発明の最も好ましい適応症は、中枢神経系の障害を含むものであり、例えば、統合失調症、うつ病、認知障害及びアルツハイマー病の治療又は予防である。
【0050】
用量は、広い範囲内で変えることができ、当然特定の症例それぞれにおける個別の要求に適合させなければならない。経口投与の場合、成人への用量は、一般式(I)で示される化合物1日当たり約0.01mg〜約1000mg、又は対応する量の、その薬学的に許容され得る塩で変えることができる。1日量を、1回量として又は分割量として投与してよく、さらに、必要性が示される場合、上限を超えることもできる。
【0051】
錠剤の処方(湿式顆粒化)
項目 成分 mg/錠剤
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式(I)の化合物 5 25 100 500
2.無水乳糖DTG 125 105 30 150
3.Sta-Rx 1500 6 6 6 30
4.微晶質セルロース 30 30 30 150
5.ステアリン酸マグネシウム 1 1 1 1
合計 167 167 167 831
【0052】
製造手順
1.品目1、2、3及び4を混合し、精製水と共に造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な微粉砕装置に通す。
4.品目5を加え、3分間混合し、適切な成形機で圧縮する。
【0053】
カプセルの処方
項目 成分 mg/カプセル
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式(I)の化合物 5 25 100 500
2.含水乳糖 159 123 148 ---
3.トウモロコシデンプン 25 35 40 70
4.タルク 10 15 10 25
5.ステアリン酸マグネシウム 1 2 2 5
合計 200 200 300 600
【0054】
製造手順
1.品目1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.品目4及び5を加え、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0055】
実験
下記の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0056】
実施例1
(R)−4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0057】
【化9】

【0058】
エタノール(5ml)中の(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミン(0.20g,1.33mmol)の溶液に、ホルムアミジンアセタート(0.15g,1.45mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、水酸化ナトリウム(2N ,5ml)を加え、混合物をジクロロメタン(10ml)で3回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させて、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル/メタノール=90:10)で精製して、無色の油状物(0.20g,92%)を得た;MS(ISP):161.4((M+H)+.)。
【0059】
実施例2
rac−4−ナフタレン−1−イルメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0060】
【化10】

【0061】
(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンの代わりに3−(1−ナフタレニル)−1,2−プロパンジアミンを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):211.1((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0062】
実施例3
rac−4−フェネチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0063】
【化11】

【0064】
(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンの代わりに4−フェニル−1,2−ブタンジアミンを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):175.0((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0065】
実施例4
rac−(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−エチル−フェニル−アミン又は互変異性体
【0066】
【化12】

【0067】
a)rac−3−(エチル−フェニル−アミノ)−プロパン−1,2−ジオール
N−エチルアニリン(1.21g,10mmol)、グリシドール(1.11g,15mmol)及びエタノール(1ml)の混合物を、マイクロ波照射により10分間120℃で加熱した。混合物を水(10ml)に溶解し、酢酸エチル(3回、25ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘプタン=1:2)で精製して、無色の液体(1.85g,94%)を得た;MS(ISP):196.3((M+H)+.)。
【0068】
b)rac−(2,3−ジアジド−プロピル)−エチル−フェニル−アミン
ジクロロメタン(10ml)中のrac−3−(エチル−フェニル−アミノ)−プロパン−1,2−ジオール(1.80g,9.2mmol)とトリエチルアミン(2.05g,20.3mmol)の溶液を、氷冷したジクロロメタン(20ml)中のメタンスルホニルクロリド(2.2g,19.35mmol)の溶液にゆっくり加えた。反応混合物を冷蔵庫中に一晩保管した。後処理として、これを塩酸(0.1M ,20ml),重炭酸ナトリウム溶液(20ml)及び水(20ml)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をジメチルホルムアミド(35ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(3.9g,60mmol)を加え、混合物を60℃で一晩撹拌した。冷却後、水(70ml)及び酢酸エチル(100ml)を加えた。有機層を分離し、混合物を再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘプタン=1:4)により精製し、明黄色の液体(1.17g,52%)を得た。
【0069】
c)rac−N1−エチル−N1−フェニル−プロパン−1,2,3−トリアミン
メタノール(5ml)中のrac−(2,3−ジアジド−プロピル)−エチル−フェニル−アミン(0.245g,1mmol)の溶液に、酸化白金(IV)(50mg)を加え、混合物を大気圧下で一晩水素化した。触媒を、セライト上での濾過により除去し、濾液を蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル)で精製して、明黄色の液体(0.19g,98%)を得た;MS(ISP):194.1((M+H)+.)。
【0070】
d)rac−(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−エチル−フェニル−アミン又は互変異性体
エタノール(5ml)中のrac−N1−エチル−N1−フェニル−プロパン−1,2,3−トリアミン(0.19g,1.0mmol)の溶液に、ホルムアミジンアセタート(0.11g,1.08mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、水(5ml)を加え、混合物をジクロロメタン(10ml)で3回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル/メタノール=90:10)で精製して、オフホワイトの無定形の固体(0.042g,21%)を得た;MS(ISP):204.1((M+H)+.)。
【0071】
実施例5
(S)−4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0072】
【化13】

【0073】
(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンの代わりに(2S)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):161.4((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0074】
実施例6
(RS)−4−(8−エチル−ナフタレン−1−イルメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
a)8−ブロモ−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル
【0075】
【化14】

【0076】
DMF(15ml)中の8−ブロモ−ナフタレン−1−カルボン酸(1.6g)の溶液を、炭酸カリウム(2.2g)及びヨードエタン(1.03ml)で処理した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次に水でクエンチして酢酸エチルで抽出した。有機物をMgSOで乾燥させ、濾過して濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配:シクロヘキサン−>シクロヘキサン/EtOAc 1:1)により精製して、8−ブロモ−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.57g)を無色の液体として得た。MS(ISP):279.1((M+H)+.)。
【0077】
b)8−ビニル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル
【0078】
【化15】

【0079】
トルエン(15ml)中の8−ブロモ−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.44g)の溶液に、アルゴン流を15分間通した。次に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(179mg)及びビニルトリブチルスタンナン(1.65ml)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で一晩100℃に加熱し、次に室温まで冷却し、4M フッ化カリウム溶液で処理した。懸濁液を10分間撹拌し、次に濾過した。固形物をトルエンで洗浄した。濾液を4M KF溶液で洗浄し、次にMgSOで乾燥させ、濾過して濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配:シクロヘキサン−>シクロヘキサン/EtOAc 3:2)により精製して、8−ビニル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.11g)を明黄色の液体として得た。MS(ISP):227.1((M+H)+.)。
【0080】
c)8−エチル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル
【0081】
【化16】

【0082】
EtOH(25ml)中の8−ビニル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.1g)の溶液を、酢酸(1ml)及びPd/C(270mg;10%)で処理し、一晩常圧で水素化した。触媒を濾別した。濾液を濃縮した。粗生成物を、クロマトグラフィー(シリカゲル;勾配:シクロヘキサン−>シクロヘキサン/EtOAc 3:2)により単離して、8−エチル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.05g)を無色の液体として得た。MS(ISP):229.3((M+H)+.)。
【0083】
d)(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−メタノール
【0084】
【化17】

【0085】
THF(30ml)中の8−エチル−ナフタレン−1−カルボン酸エチルエステル(1.04g)の溶液を、0℃に冷却し、ジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液(11.4ml;トルエン中の1.2M)で処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次に再び0℃に冷却し、HO(50ml)及び0.1N HCl(50ml)で処理した。混合物をEtOAcで抽出した。有機物をMgSOで乾燥させ、濾過して濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配シクロヘキサン−>シクロヘキサン/EtOAc 4:1)により精製して、(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−メタノール(769mg)を白色の固体として得た。MS(ISP):187.3((M+H)+.)。
【0086】
e)1−ブロモメチル−8−エチル−ナフタレン
【0087】
【化18】

【0088】
ジクロロメタン(15ml)中の(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−メタノール(760mg)の溶液を0℃に冷却し、四臭化炭素(2.03g)で処理した。ジクロロメタン(15ml)中のトリフェニルホスフィン(1.28g)の溶液を滴下した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次に濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;シクロヘキサン−>シクロヘキサン/EtOAc 4:1)により精製して、1−ブロモメチル−8−エチル−ナフタレン(670mg)を明黄色の液体として得た。
【0089】
f)(RS)−2−アミノ−3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロピオニトリル
【0090】
【化19】

【0091】
ジクロロメタン(7ml)中のN−(ジフェニルメチレン)アミノアセトニトリル(449mg)の懸濁液を、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下で、テトラブチルアンモニウムブロミド(61mg)及びKOH(111mg)で処理した。ジクロロメタン(8ml)中の1−ブロモ−メチル−8−エチル−ナフタレン(470mg)の溶液を滴下した。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、次に濾過した。固形物をジクロロメタンで洗浄した。濾液を濃縮した。残留物をジエチルエーテル(16ml)及び水(16ml)にとり、一晩撹拌した。層を分離した。水層を、4N NaOH溶液でpH12にし、CHCl/MeOH 95:5で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液:CHCl−>CHCl/MeOH 95:5)により精製して、(RS)−2−アミノ−3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロピオニトリル(243mg)を、明褐色の油状物として得た。MS(ISP):225.4((M+H)+.)。
【0092】
g)(RS)−3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロパン−1,2−ジアミン
【0093】
【化20】

【0094】
THF(2ml)中のLiAlH(117mg)の懸濁液を、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下、THF(4ml)中の(RS)−2−アミノ−3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロピオニトリル(230mg)の溶液で処理した。反応混合物を、室温で5時間撹拌し、次に、0℃で0.1ml HO、0.1ml 4N NaOH及び0.5ml HOで順次処理した。30分間撹拌した後、固形物を濾別し、THFで洗浄した。濾液を濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液:CHCl−>CHCl/MeOH 9:1)により単離して、3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロパン−1,2−ジアミン(66mg)を明褐色の油状物として得た。MS(ISP):229.3((M+H)+.)。
【0095】
h)(RS)−4−(8−エチル−ナフタレン−1−イルメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0096】
【化21】

【0097】
EtOH(6ml)中の3−(8−エチル−ナフタレン−1−イル)−プロパン−1,2−ジアミン(60mg)の溶液を、室温で、アルゴン雰囲気下、ホルムアミジンアセタート(30mg)で処理した。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、次に濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液:CHCl−>CHCl/MeOH 9:1)により精製して、(RS)−4−(8−エチル−ナフタレン−1−イルメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(38mg)を明黄色のガム状物として得た。MS(ISP):239.3((M+H)+.)。
【0098】
実施例7
(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−メチル−フェニル−アミン又は互変異性体
【0099】
【化22】

【0100】
工程a中のN−エチルアニリンの代わりにN−メチルアニリンを使用し、実施例4に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):190.2((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0101】
実施例8
4−{[(3−クロロ−フェニル)−メチル−アミノ]−メチル}−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミン又は互変異性体
【0102】
【化23】

【0103】
a)N1−(3−クロロ−フェニル)−N1−メチル−プロパン−1,2,3−トリアミン
N−エチルアニリンの代わりに3−クロロ−N−メチルアニリンから出発し、実施例4の工程a)、b)及びc)に関して記載された手順にしたがってN1−(3−クロロ−フェニル)−N1−メチル−プロパン−1,2,3−トリアミン、MS(ISP):214.2(M+H)+.)を調製した。
【0104】
b)4−{[(3−クロロ−フェニル)−メチル−アミノ]−メチル}−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミン
N1−(3−クロロ−フェニル)−N1−メチル−プロパン−1,2,3−トリアミン(0.321g,1.5mmol)を、テトラヒドロフラン(5ml)に溶解し、炭酸カリウム(0.249g,1.8mmol)を加えた。氷浴による冷却下、テトラヒドロフラン(5ml)中の臭化シアン(0.191g,1.8mmol)の溶液を滴下した。冷却浴を除去し、撹拌を1時間続けた。酢酸エチル(50ml)及び水(20ml)を加え、有機層を分離した。混合物を、再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物を、酢酸エチルから再結晶化して、白色の固体0.1g(28%)を得た;MS(ISP):239.2((M+H)+.)。
【0105】
実施例9
4−(4−クロロ−ベンジル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0106】
【化24】

【0107】
(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンの代わりに3−(4−クロロフェニル)−1,2−プロパンジアミンを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):195.1((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0108】
実施例10
rac−4−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0109】
【化25】

【0110】
a)2−アミノ−4−(4−クロロ−フェニル)−ブチロニトリル
3−(4−クロロフェニル)−プロピオンアルデヒド(0.74g,4.39mmol)に、ヨウ化亜鉛(0.07g,0.22mmol)及びシアン化トリメチルシリル(0.522g,5.27mmol)を注意深く加えた(発熱反応)。混合物を室温で20分間撹拌した後、メタノール中のアンモニア溶液(7N ,4.4ml,31mmol)を加え、撹拌を一晩続けた。溶媒を蒸発させ、残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=2:1)で精製して、明黄色の液体(0.43g,50%)を得た;MS(ISP):195.3((M+H)+.)。
【0111】
b)4−(4−クロロフェニル)−1,2−ブタンジアミン
テトラヒドロフラン(4ml)中の2−アミノ−4−(4−クロロ−フェニル)−ブチロニトリル(0.425g,2.18mmol)の溶液を、0℃、アルゴン雰囲気下で、テトラヒドロフラン(4ml)中の水素化アルミニウムリチウム(0.331g,8.73mmol)の懸濁液に滴下した。反応混合物を一晩還流させた。0℃に冷却した後、固体の硫酸ナトリウム10水和物を加え、1時間撹拌を続けた。灰色の懸濁液を、セライトを通して濾過し、溶媒を蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル/メタノール=90:10)で精製して、無色の油状物(0.091g,21%)を得た;MS(ISP):199.1((M+H)+.)。
【0112】
c)rac−4−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
エタノール(8ml)中の4−(4−クロロフェニル)−1,2−ブタンジアミン(0.084mg,0.42mmol)の溶液に、ホルムアミジンアセタート(0.15g,1.45mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、水(5ml)を加え、混合物をジクロロメタン(10ml)で3回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル/メタノール=90:10)で精製して、オフホワイトの無定形の固体(0.041g,47%)を得た;MS(ISP):209.3((M+H)+.)。
【0113】
実施例11
rac−5−(4−クロロ−フェノキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0114】
【化26】

【0115】
a)rac−1−アジド−3−(4−クロロ−フェノキシ)−プロパン
水(1ml)中のアジ化ナトリウム(0.977g,15mmol)の溶液を、アセトニトリル(11ml)中のrac−(4−クロロフェノキシ)オキシラン(1.85g,10mmol)の溶液に加えた。混合物を一晩加熱還流した。飽和塩化アンモニウム溶液(20ml)を加え、混合物を酢酸エチル(3回、25ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物を、クロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘプタン=1:1)で精製して、無色の液体(1.73g,76%)を得た。MS(EI):227.1((M+.)。
【0116】
b)rac−1−クロロ−4−(2,3−ジアジド−プロポキシ)−ベンゼン
ピリジン(9ml)中のp−トルエンスルホニルクロリド(1.88g,10mmol)の溶液を、ピリジン(9ml)中のrac−1−アジド−3−(4−クロロ−フェノキシ)−プロパン(1.73g,8mmol)の溶液に、−5〜−2℃の温度で1時間かけて滴下した。反応混合物を4℃で48時間保管し、次に氷水に注いだ。混合物を酢酸エチル(3回、25ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘプタン=1:1)で精製して、無色の油状物(1.87g,64%)を得た。本化合物をジメチルホルムアミド(6ml)中に溶解し、アジ化ナトリウム(0.80g,12mmol)を加えた。混合物を、90℃で4時間撹拌した。後処理として、水(20ml)及び酢酸エチル(50ml)を混合物に加えた。層を分離し、水層を再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘプタン=1:1)により精製して、無色の液体(0.89g,72%)を得た;MS(EI):252.1;254.1((M+.)。
【0117】
c)rac−3−(4−クロロ−フェノキシ)−プロパン−1,2−ジアミン
メタノール(5ml)中のrac−1−クロロ−4−(2,3−ジアジド−プロポキシ)−ベンゼン(0.89g,3.5mmol)の溶液に、パラジウム担持炭(50mg)を加え、混合物を、大気圧下で1時間水素化した。触媒を、セライト上での濾過により除去し、濾液を蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル)で精製して、明黄色の液体(0.19g,27%)を得た;MS(ISP):201.3((M+H)+.)。
【0118】
rac−4−(4−クロロ−フェノキシメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール
エタノール(5ml)中の3−(4−クロロ−フェノキシ)−プロパン−1,2−ジアミン(0.19g,0.95mmol)の溶液に、ホルムアミジンアセタート(0.1g,1.0mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、水(5ml)を加え、混合物をジクロロメタン(10ml)で3回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。残留物をクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)Flash−NH、Separtis製;溶離液:酢酸エチル/メタノール=90:10)で精製して、明黄色の油状物(0.063g,32%)を得た;MS(ISP):211.2((M+H)+.)。
【0119】
実施例12
(R)−5−フェニルスルファニルメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又は互変異性体
【0120】
【化27】

【0121】
(2R)−3−フェニル−1,2−プロパンジアミンの代わりに(2R)−3−(フェニルチオ)−1,2−プロパンジアミンを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):193.1((M+H)+.)を同等の収率で得た。
【0122】
実施例13
(R)−5−フェニルスルファニルメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミン臭化水素酸塩又は互変異性体
【0123】
【化28】

【0124】
(2R)−3−(フェニルチオ)−1,2−プロパンジアミン(0.20g,1.1mmol)を、トルエン(3ml)に溶解し、トルエン(1ml)中の臭化シアン(0.116g,1.1mmol)の溶液を室温で滴下した。混合物を90分間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、残留物をエタノール(1.5ml)に溶解した。酢酸エチル(8ml)をゆっくり加えることにより、明褐色の固体が析出した,0.152g(66%),MS(ISP):207.9(M+H)+.)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化29】


[式中、
は、水素、ハロゲン又は低級アルキルであり;
は、水素又はアミノであり;
X−Yは、−(CH−、N(R)−CH−、−O−CH−又は−S−CH−であり;
Arは、フェニル又はナフチルであり;
nは、1又は2であり;
Rは、水素又は低級アルキルである]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩であって、ラセミ化合物4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体を除く。
【請求項2】
Arが、ナフチルである、式Iで示される化合物。
【請求項3】
X−Yが、−CH−である、請求項2記載の式Iで示される化合物。
【請求項4】
化合物が、
rac−4−ナフタレン−1−イルメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体、又は
(RS)−4−(8−エチル−ナフタレン−1−イルメチル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体
である、請求項3記載の式Iで示される化合物。
【請求項5】
Arが、フェニルである、式Iで示される化合物。
【請求項6】
X−Yが、−CH−CH−である、請求項5記載の式Iで示される化合物。
【請求項7】
化合物が、
rac−4−フェネチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体、又は
rac−4−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールもしくは互変異性体
である、請求項6記載の式Iで示される化合物。
【請求項8】
X−Yが、−N(R)−CH−である、請求項5記載の式Iで示される化合物。
【請求項9】
化合物が、
rac−(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−エチル−フェニル−アミンもしくは互変異性体、又は
(4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾール−4−イルメチル)−メチル−フェニル−アミンもしくは互変異性体
である、請求項8記載の式Iで示される化合物。
【請求項10】
式Iで示される化合物の製造方法であって、
a)式(2):
【化30】


で示されるジアミノ化合物を、
式(3):
【化31】


で示されるホルムアミジニウム塩と反応させ、式:
【化32】


[式中、置換基は請求項1と同義である]で示される互変異性化合物の混合物とすること、又は
b)式(2):
【化33】


で示される化合物を、式(4):
BrCN (4)
と反応させて、式:
【化34】


で示される化合物とし、
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換すること
を含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の工程又は同等の方法により製造された、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
請求項1記載の式Iで示される化合物及び化合物
4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体
の1個以上ならびに薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬。
【請求項13】
うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、統合失調症、神経障害、パーキンソン病、神経変性障害、アルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害、及び心血管障害の処置のための、請求項12記載の医薬。
【請求項14】
うつ病、精神病、パーキンソン病、不安障害及び注意欠陥多動性障害(ADHD)の処置のための、請求項1記載の化合物及び4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体を1個以上含有する、請求項13記載の医薬。
【請求項15】
請求項1記載の式Iで示される化合物及び化合物
4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール又はその互変異性体
の、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、統合失調症、神経障害、パーキンソン病、神経変性障害、アルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害、及び心血管障害の処置のための医薬の製造における使用。
【請求項16】
本明細書に記載の発明。

【公表番号】特表2010−531836(P2010−531836A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513878(P2010−513878)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057980
【国際公開番号】WO2009/003867
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】