説明

4−フェニルピリミジン誘導体を有効成分とするSTAT6活性化阻害剤

【課題】STAT6活性化阻害剤の提供。
【解決手段】次の一般式(1)


[式中、R及びRは水素原子、ハロゲン原子、又はC〜Cアルコキシ基を示すか、或いはRとRが一緒になってC〜Cアルキレンジオキシ基を示し、RはC〜Cアルコキシ基、又は次式(2)−NR (2)[式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキルスルホニル基又はC〜C10アリール基を示し、Rは水素原子又はC〜Cアルキル基を示す。]を示し、RはC〜Cアルキル基を示し、RはC〜Cアルコキシ基、5〜6員の不飽和複素環基を示す。]で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、STAT6活性化阻害剤、およびSTAT6が関与する疾患の予防・治療剤、詳細には喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
転写因子のSTATファミリー(signal transducer and activator of transcription Family)は、サイトカインなどの刺激に応答して遺伝子の発現を誘導する転写因子であり、STAT1からSTAT6までのサブタイプが知られている。STATは約750〜850個のアミノ酸からなるタンパク質であり、コイルドコイルドメイン、DNA結合ドメイン、リンカードメイン及びSH2ドメインを有している。これらはいずれも約700番目付近にリン酸化されるチロシンを含有しており、当該チロシンのリン酸化により活性化し、リン酸化チロシンとSH2ドメインにより二量化して安定な複合体となる。
【0003】
STAT6(signal transducer and activator of transcription 6)はインターロイキン−4(IL−4)及びインターロイキン−13(IL−13)のシグナル伝達に重要な役割を演じている転写因子である。IL−4又はIL−13がIL−4受容体又はIL−13受容体に結合すると、細胞内で受容体にアソシエートした蛋白質キナーゼJAK1とJAK3が活性化され、STAT6の641Tyr残基をリン酸化する。リン酸化されたSTAT6はそれ自身の持つSH2ドメインを介してホモ二量体を形成し、核内に移行して、種々の遺伝子のプロモーター領域に存在する特異的なDNA認識配列に結合する。STAT6の至適塩基配列はTTCNNNNGAA(Nは任意の塩基を示す。)であり、この認識配列が約10塩基対の間隔で直列に存在する場合には、各々の認識配列に結合した二量体が高い親和性で結合するとされている。STAT6認識配列をプロモーター領域に有する遺伝子として、アレルギー炎症への関与が知られているイムノグロブリン−E(IgE) ジャームラインCεトランスクリプトやCD23、エオタキシン等が報告されている。
【0004】
ヒトにおけるIL−4のシグナル伝達の異常と喘息の発症について、光安ら(非特許文献1)により、1)アトピー性喘息患者にIL−4受容体α鎖における50番目のアミノ酸の点突然変異(Val50Ile)が正常人と比較して高率に認められること、2)この点突然変異によりT細胞及びB細胞のシグナル伝達が亢進していること、3)従って、アトピー性喘息におけるIL−4シグナル伝達異常がひとつの発生因子であることが示唆されている。さらに、STAT6欠損マウスを用いて抗原の感作及び吸入誘発を行ったところ(マウス喘息モデル)、(1)野生型マウスと比較して気道炎症及び気道過敏性が抑制されていること、(2)IgE産生及び好酸球の気道内への浸潤は認められなかったこと、から喘息の発症にSTAT6が必須であることが直接証明された(非特許文献2)。また、感染防御を担うTh1細胞の分化、活性化は正常であり、個体の異常は何も観察されなかった。
【0005】
これらのことから、STAT6の活性化阻害剤は、アレルギー性疾患の病態に関与するSTAT6の活性化を阻害することによる全く新しいタイプの薬剤として期待でき、しかも、本メカニズムに基づく副作用発現の可能性は極めて低いと考えられ、STAT6の活性化阻害作用に基づく薬剤の開発研究が進められている。STAT6の活性化阻害剤としては、最近、複素環化合物(特許文献1、特許文献2)、三環性化合物(非特許文献3)、キノリン系化合物(特許文献3)、アミノイソオキサゾール誘導体(特許文献4参照)、テトラヒドロベンズイソオキサゾール誘導体(特許文献5参照)、イミノチアゾール誘導体(特許文献6参照)、イミダゾ[2,1−b]チアゾール誘導体(特許文献7参照)、ジヒドロチアジアゾール誘導体(特許文献8参照)等の化合物が報告されている。また、STAT6のデコイ(転写因子が結合する塩基配列を有する部位又はそれを含有してなるオリゴヌクレオチド)を用いる方法も報告されている(特許文献9及び10参照)。
【0006】
デコイ核酸をアトピー性皮膚炎モデルマウスや接触性皮膚炎モデルマウスに投与することによってアレルギー症状が改善されることが報告されたが(非特許文献4、非特許文献5)、核酸医薬は生体内で分解されやすいことや経口投与ができない等の問題がある。
【0007】
このような状況下、新たな骨格を有するSTAT6の活性化阻害剤が求められているが、4−フェニルピリミジン骨格を有するSTAT6の活性化阻害剤は知られていなかった。
【特許文献1】US2005227959公報
【特許文献2】WO200238107パンフレット
【特許文献3】WO200279165パンフレット
【特許文献4】特開平10−175964号公報
【特許文献5】特開平10−175965号公報
【特許文献6】特開平11−29475号公報
【特許文献7】特開平11−106340号公報
【特許文献8】特開2000−229959号公報
【特許文献9】特開2005−306877号公報
【特許文献10】特表2005−523703号公報
【非特許文献1】H Mitsuyasuら J.Immunol.(1999)162(3) 1227−1231
【非特許文献2】T Akimotoら J.Exp.Med.(1998)187(9) 1537−1542
【非特許文献3】J.Antibiot.,56,No.6,513−519(2003)
【非特許文献4】K Sumiら Gene Ther. (2004) 1763−1771
【非特許文献5】H Yokozekiら Gene Ther. (2004) 11(4) 1753−1762
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、STAT6の活性化を的確に阻害する、STAT6活性化阻害剤を提供することにある。また、STAT6が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬を提供することにある。さらに、STAT6活性化阻害剤、及びSTAT6が関与する疾患の発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬の有効成分として利用し得る新規な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは喘息や各種のアレルギー疾患に対し有効で副作用の少ない治療・予防剤を開発するために、STAT6に着目し、STAT6の活性化を阻害できる薬剤について鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がSTAT6活性化を阻害する作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は次の一般式(1)
【化3】

[式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又はC〜Cアルコキシ基を示すか、或いはRとRが一緒になってC〜Cアルキレンジオキシ基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は次式(2)

−NR (2)

[式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキルスルホニル基又はC〜C10アリール基を示し、
は水素原子、又はC〜Cアルキル基を示す。]で表わされる基を示し、
はC〜Cアルキル基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は5〜6員の不飽和複素環基を示す。]
で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤に関する。
また、本発明は、一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物、より詳細にはSTAT6活性化阻害作用を有する医薬組成物に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の化合物を含有してなる喘息などの呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤、アレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤、並びに炎症性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
また、本発明は、STAT6活性化阻害剤、呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤、アレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤、及び/又は炎症性疾患の予防及び/又は治療剤のための製剤を製造するための本発明の化合物の使用(use)に関する。
また、本発明は、STAT6活性化阻害剤の有効量を投与して、呼吸器疾患、アレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患を、予防及び/又は治療する方法(method)に関する。
さらに、本発明は、一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に関する。
【0011】
本発明をより具体的に説明すれば以下のとおりとなる。
<1>一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるSTAT6活性化阻害剤。
<2>4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤。
<3>STAT6活性化阻害が、IL−4刺激に基づくSTAT6活性化の阻害である前記<1>又は<2>に記載のSTAT6活性化阻害剤。
<4>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物。
<5>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤。
<6>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤。
<7>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
<8>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む、STAT6の活性化を阻害する方法。
<9>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む、呼吸器疾患、アレルギー性疾患、及び炎症性疾患からなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療方法。
<10>STAT6の活性化を阻害するための製剤を製造するための、前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の使用。
<11>呼吸器疾患、アレルギー性疾患、及び炎症性疾患からなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療のための製剤を製造するための、前記<1>に記載の一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の使用。
<12>一般式(1)で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
<13>4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びこれを有効成分とするSTAT6活性化阻害剤は、優れたSTAT6活性化阻害作用を有する。また、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬は、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0014】
本発明において、「C〜Cアルキル 基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を意味する。具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチルブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
【0015】
本発明において、「C〜Cアルコキシ基」とは、前記定義の「C〜Cアルキル 基」が結合したオキシ基であることを意味する。具体的には例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、s−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチル−2−メチルプロポキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
本発明において、「C〜Cアルキルスルホニル基」とは、前記定義の「C〜Cアルキル基」が結合したスルホニル基であることを意味する。具体的には例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、イソプロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、イソブタンスルホニル基、s−ブタンスルホニル基、t−ブタンスルホニル基、n−ペンタンスルホニル基、1,1−ジメチルプロパンスルホニル基、1,2−ジメチルプロパンスルホニル基、2,2−ジメチルプロパンスルホニル基、1−エチルプロパンスルホニル基、n−ヘキサンスルホニル基、1−エチル−2−メチルプロパンスルホニル基、1,1,2−トリメチルプロパンスルホニル基、1−エチルブタンスルホニル基、1−メチルブタンスルホニル基、2−メチルブタンスルホニル基、1,1−ジメチルブタンスルホニル基、1,2−ジメチルブタンスルホニル基、2,2−ジメチルブタンスルホニル基、1,3−ジメチルブタンスルホニル基、2,3−ジメチルブタンスルホニル基、2−エチルブタンスルホニル基、2−メチルペンタンスルホニル基、3−メチルペンタンスルホニル基、シクロプロパンスルホニル基、シクロブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロへキサンスルホニル基等が挙げられる。
【0017】
本発明において、「C〜C10アリール基」とは、6乃至10個の炭素原子で構成されたアリール基を意味し、単環性環式基、または二環性環式基等の縮合環式基が含まれる。具体的には例えばフェニル基、インデニル基、ナフチル基またはアズレニル基等が挙げられる。なお、インダンやテトラヒドロナフタレンといった縮合環もアリール基に含まれる。
【0018】
本発明において、「C〜Cアルキレンジオキシ基」とは、1乃至3個の炭素原子を有するアルキレンジオキシ 基であり、例えば、メチレンジオキシ基、エチレン−1,2−ジオキシ基、1−メチルメチレンジオキシ基、プロピレン−1,3−ジオキシ基、1−メチルエチレン−1,2−ジオキシ基、2−メチルエチレン−1,2−ジオキシ基、1−エチルメチレンジオキシ基等が挙げられる。
【0019】
本発明において、「5〜6員の不飽和複素環基」とは、環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1乃至4個の複素原子を含む5乃至6員の芳香族複素環、不飽和複素環、又はこれらの複素環とベンゼン環が縮合した縮合複素環を意味する。例えば、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、ピロ−ル−1−イル基、ピロ−ル−2−イル基、ピロ−ル−3−イル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、ベンゾフラン−4−イル基、ベンゾフラン−5−イル基、ベンゾフラン−6−イル基、ベンゾフラン−7−イル基、ベンゾチオフェン−2−イル基、ベンゾチオフェン−3−イル基、ベンゾチオフェン−4−イル基、ベンゾチオフェン−5−イル基、ベンゾチオフェン−6−イル基、ベンゾチオフェン−7−イル基、インドール−1−イル基、インドール−2−イル基、インドール−3−イル基、インドール−4−イル基、インドール−5−イル基、インドール−6−イル基、インドール−7−イル基、イソインドール−1−イル基、イソインドール−2−イル基、イソインドール−3−イル基、イソインドール−4−イル基、イソインドール−5−イル基、イソインドール−6−イル基、イソインドール−7−イル基、イソベンゾフラン−1−イル基、イソベンゾフラン−3−イル基、イソベンゾフラン−4−イル基、イソベンゾフラン−5−イル基、イソベンゾフラン−6−イル基、イソベンゾフラン−7−イル基、イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ベンゾイミダゾール−1−イル基、ベンゾイミダゾール−2−イル基、ベンゾイミダゾール−4−イル基、ベンゾイミダゾール−5−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾオキサゾール−3−イル基、ベンゾオキサゾール−4−イル基、ベンゾオキサゾール−5−イル基、ベンゾオキサゾール−6−イル基、ベンゾオキサゾール−7−イル基、キノリン−2−イル基、キノリン−3−イル基、キノリン−4−イル基、キノリン−5−イル基、キノリン−6−イル基、キノリン−7−イル基、キノリン−8−イル基、イソキノリン−1−イル基、イソキノリン−3−イル基、イソキノリン−4−イル基、イソキノリン−5−イル基、イソキノリン−6−イル基、イソキノリン−7−イル基、イソキノリン−8−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基等が挙げられる。一般式(1)中、5〜6員の不飽和複素環基としては、ピリジル基等の、環を構成する原子として1乃至4個の窒素原子を含む5乃至6員の芳香族複素環が好ましい。
【0020】
一般式(1)中、R及びRとしては、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子又はフッ素原子が特に好ましい。好ましい一態様において、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子好ましくはフッ素原子である。別な好ましい一態様において、R及びRが一緒になって「C〜Cアルキレンジオキシ基」、好ましくはメチレンジオキシ基を形成する。
【0021】
一般式(1)中、Rとしては、メトキシ基やイソプロポキシ基等のC〜Cアルコキシ基、アミノ基、メチルアミノ基等のC〜Cアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のC〜Cジアルキルアミノ基、メタンスルホンアミノ基等のC〜Cアルキルスルホニルアミノ基、N−メタンスルホニル−N−メチルアミノ基等のN−(C〜Cアルキルスルホニル)−N−(C〜Cアルキル)アミノ基又はフェニルアミノ基等のC〜C10アリールアミノ基が好ましい。好ましい一態様において、Rは、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メタンスルホニルアミノ基、N−メタンスルホニル−N−メチルアミノ基、又はフェニルアミノ基であり、特に好ましくはアミノ基、ジメチルアミノ基、メタンスルホニルアミノ基、又はフェニルアミノ基である。別な好ましい一態様において、Rは、メトキシ基、又はイソプロポキシ基である。
【0022】
一般式(1)中、Rとしては、直鎖又は分岐鎖のC〜Cアルキル基が好ましく、直鎖又は分岐鎖のCアルキル基が特に好ましい。好ましい一態様において、Rはイソプロピル基である。別な好ましい一態様において、Rはn−プロピル基である。
【0023】
一般式(1)中、Rとしては、エトキシ基等のC〜Cアルコキシ基、3−ピリジル基等の5〜6員の不飽和複素環基が好ましい。好ましい一態様において、Rは、エトキシ基である。別な好ましい一態様において、Rは、3−ピリジル基である。
【0024】
一般式(2)中、Rとしては、水素原子、メチル基等のC〜Cアルキル基、メタンスルホニル基等のC〜Cアルキルスルホニル基又はフェニル基等のC〜C10アリール基が好ましい。好ましい一態様において、Rは、水素原子、メチル基、メタンスルホニル基、又はフェニル基である。
【0025】
一般式(2)中、Rとしては、水素原子又はC〜Cアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0026】
一般式(1)中、RとRの好適な組合せの例としては、
が前記式(2)で表わされる基(ただし、RがC〜Cアルキルスルホニル基であってRが水素原子である場合、及び/又は RがC〜C10アリール基であってRが水素原子又はC〜Cアルキル基である場合を除く)を示す場合おいては、Rが5〜6員の不飽和複素環基である組み合わせを好適な組み合わせとして挙げることができ、
が前記式(2)で表わされる基を示す場合においては、Rが5〜6員の不飽和複素環基である組み合わせを特に好適な組み合わせとして挙げることができる。
【0027】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
がC〜Cアルコキシ基であって、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0028】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
がC〜Cアルコキシ基であって、Rが5〜6員の不飽和複素環基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0029】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
がアミノ基であって、Rが5〜6員の不飽和複素環基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0030】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
がアミノ基であって、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0031】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
が前記式(2)で表わされる基であって、RがC〜Cアルキルスルホニル基であり、Rが水素原子であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0032】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
が前記式(2)で表わされる基であって、RがC〜C10アリール基であり、Rが水素原子であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0033】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
が前記式(2)で表わされる基であって、RがC〜Cアルキル基であり、Rが水素原子であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0034】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
が前記式(2)で表わされる基であって、RがC〜Cアルキルスルホニル基であり、RがC〜Cアルキル基であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0035】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
が前記式(2)で表わされる基であって、RがC〜Cアルキル基であり、RがC〜Cアルキル基であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRの一方が水素原子であり、もう一方がハロゲン原子であることが好ましい。
【0036】
また、一般式(1)中のRとRの別の好適な組み合わせの例としては、
がC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である組み合わせを挙げることができる。この組み合わせにおいて、R及びRが一緒になって「C〜Cアルキレンジオキシ基」、好ましくはメチレンジオキシ基を形成していることが好ましい。
【0037】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体としては、例えば、4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステルなどが挙げられる。本発明の4−フェニルピリミジン誘導体の好ましい例としては、例えば、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステルが挙げられる。
【0038】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体の付加塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられるが、薬学上許容される塩であれば特に制限されない。
【0039】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体又はその塩の溶媒和物としては、水和物等が挙げられる。
【0040】
本化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0041】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体は、下記図1〜図3で示すように、4−フェニルピリミジン誘導体を合成する公知の方法により製造することができる。
【0042】
1)RがC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である4−フェニルピリミジン誘導体の製造法
シアナミド(II)とメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類を酸性条件下で反応させると、一般式(III)で示されるイソウレア誘導体を製造することができる。反応は、シアナミドと等モル或いは過剰量のアルコール類を酸の存在下反応する。酸は、特に制限は無いが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の鉱酸又は酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸を使用することができる。反応温度は−80〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応時間は1時間〜10日間、好ましくは1日〜4日反応させることによって目的物(III)が得られる。
ベンズアルデヒド誘導体(IV)とベータケトカルボン酸エステル(V)を酸又は塩基存在下、脱水縮合反応を行うと化合物(VI)を製造することができる。反応は、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応I」(丸善株式会社、1977年、p221)等に記載の方法が適用できる。
化合物(VI)とイソウレア誘導体(III)を塩基存在下、環化反応を行うと分離不可能な1,4−ジヒドロピリミジン化合物および3,4−ジヒドロピリミジン化合物の混合物(VII)を製造することができる。反応は、化合物(VI)と等モル或いは過剰量のイソウレア誘導体(III)を塩基の存在下反応する。塩基は特に制限は無いが、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどの重炭酸アルカリ金属類、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルコールの金属塩類等を使用することができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応時間は1時間〜2日間、好ましくは1〜24時間反応させることによって目的物が得られる。
混合物(VII)は酸化剤と反応させるとRがC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I')を製造することができる。酸化剤としては、1,4−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン等が適用でき、混合物(VII)と等モル或いは過剰量の酸化剤と反応する。溶媒は、特に制限は無いが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応温度は1分〜1日、好ましくは30分〜4時間反応させることによってRがC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I')が得られる。
【0043】
【化4】

〔式中、R、R及びRは前記と同じ置換基を示し、R10及びR11はC〜Cアルキル基を示す〕
図1
【0044】
2)Rが5〜6員の不飽和複素環基である4−フェニルピリミジン誘導体の製造法
アルコール体(VIII)はRがC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I')をリチウムアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリドなどの還元剤で還元し製造することができる。溶媒は特に制限はないが、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エーテル、トルエン等不活性溶媒を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−70〜60℃、好ましくは−20〜0℃で、反応時間は1分〜10時間、好ましくは30分〜3時間反応させることによってアルコール体(VIII)が得られる。
アルデヒド体(IX)はアルコール体(VIII)をテトラプロピルアンモニウムパールテネート(TPAP)と4−メチルモルホリン−N−オキシドなどで酸化することにより製造することができる。溶媒は、特に制限は無いが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は0〜60℃、好ましくは室温で、反応時間は10分〜10時間、好ましくは30分〜3時間反応させることによって得られる。
アルコール体(X)は、アルデヒド体(IX)をハロゲン化した5〜6員の不飽和複素環から調整した有機リチウム化合物とテトラヒドロフランなどの溶媒中―80〜30℃、好ましくは―80〜−40℃で、1分〜10時間、好ましくは30分〜3時間反応させることによって得られる。
がC〜Cアルコキシ基であり、Rが5〜6員の不飽和複素環基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I'')は、アルコール体(X)から、上記したアルコール体(VIII)の酸化反応と同様にして製造することができる。
ピリミジン−2−オン誘導体(XI)はRがC〜Cアルコキシ基であり、Rが5〜6員の不飽和複素環基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I'')の2位のエーテル結合を開裂することで製造することができる。反応は、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応I」(丸善株式会社、1977年、p456)等に記載の方法が適用できる。溶媒は、特に制限は無いが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。酸は、特に制限は無いが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸などの鉱酸又は酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を使用することができる。反応温度は−80〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応時間は1分〜5日間、好ましくは1〜24時間反応させることによって得られる。
2−クロロピリミジン誘導体(XII)はピリミジン−2−オン(XI)を塩素で置換することで製造することができる。反応は、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応I」(丸善株式会社、1977年、p369)等に記載の方法が適用できる。反応試薬としては五塩化リン、オキシ塩化リン、ホスゲンなどが使用することができる。反応温度は0〜180℃、好ましくは100〜150℃で、反応時間は1分〜24時間、好ましくは10分〜6時間反応させることによって得られる。
が前記式(2)で表わされる基であり、Rが5〜6員の不飽和複素環基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I''')は、2−クロロピリミジン誘導体(XII)をアジド化し還元するか、1級又は2級アミンを反応することで製造することができる。
アジド化反応は、2−クロロピリミジン誘導体(XII)と等モル或いは過剰量のアジ化ナトリウムとを反応する。反応溶媒は特に制限はないが、例えばアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の不活性な溶媒を単独又は組み合わせて使用することができる。反応条件は、−80〜150℃、好ましくは0〜100℃で、1分〜5日間、好ましくは1〜24時間反応させることによって得られる。アジドの還元は、接触還元法が適用でき、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応III」(丸善株式会社、1978年、p1336)等に記載の方法が適用できる。触媒としては白金、ラネーニッケル、白金−炭素、パラジウム−炭素等を使用することができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜160℃、好ましくは0〜100℃で、1分〜24時間、好ましくは10分〜6時間反応させることによって得られる。さらに、目的とする4−フェニルピリミジン誘導体に応じ、常法に従い、アジド化後還元することにより生じるピリミジンの2位のアミノ基をアルキル化反応やスルホニル化反応を行うことによって、Rが前記式(2)で表わされる基であり、Rが5〜6員の不飽和複素環である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I''')を製造することができる。
1級或いは2級アミンとの反応は、2−クロロピリミジン誘導体(XII)と等モル或いは過剰量のアミンとを反応する。溶媒は、特に制限は無いが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応温度は1分〜1日、好ましくは30分〜10時間反応させることによってRが前記式(2)で表わされる基であり、Rが5〜6員の不飽和複素環基である4−フェニルピリミジン誘導体(I''')が得られる。
【0045】
【化5】

〔式中、R、R、R、R及びRは前記と同じ置換基を示し、R10及びR11はC〜Cアルキル基を示し、R12は5〜6員の不飽和複素環基を示す〕
図2
3)Rが前記式(2)で表わされる基であり、Rがアルコキシ基である4−フェニルピリミジン誘導体の製造法
ピリミジン−2−オン誘導体(XIII)はRがC〜Cアルコキシ基であり、RがC〜Cアルコキシ基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I’)の2位のエーテル結合を開裂することで製造することができる。反応は、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応I」(丸善株式会社、1977年、p456)等に記載の方法が適用できる。溶媒は、特に制限は無いが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。酸は、特に制限は無いが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸などの鉱酸又は酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を使用することができる。反応温度は−80〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応時間は1分〜5日間、好ましくは1〜24時間反応させることによって得られる。
2−クロロピリミジン誘導体(XIV)はピリミジン−2−オン誘導体(XIII)を塩素で置換することで製造することができる。反応は、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応I」(丸善株式会社、1977年、p369)等に記載の方法が適用できる。反応試薬としては五塩化リン、オキシ塩化リン、ホスゲンなどが使用することができる。反応温度は0〜180℃、好ましくは100〜150℃で、反応時間は1分〜24時間、好ましくは10分〜6時間反応させることによって得られる。
が前記式(2)で表わされる基であり、Rがアルコキシ基である4−フェニルピリミジン誘導体(I'''')は、2−クロロピリミジン誘導体(XIV)をアジド化し還元するか、或いは2−クロロピリミジン誘導体(XIV)と1級又は2級アミンを反応することで製造することができる。
アジド化反応は、2−クロロピリミジン誘導体(XIV)と等モル或いは過剰量のアジ化ナトリウムとを反応する。反応溶媒は特に制限はないが、例えばアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の不活性な溶媒を単独又は組み合わせて使用することができる。反応条件は、−80〜150℃、好ましくは0〜100℃で、1分〜5日間、好ましくは1〜24時間反応させることによって得られる。アジドの還元は、接触還元法が適用でき、例えば日本化学会編「新実験化学講座 14巻 有機化合物の合成と反応III」(丸善株式会社、1978年、p1336)等に記載の方法が適用できる。触媒としてはとしては白金、ラネーニッケル、白金−炭素、パラジウム−炭素等を使用することができる。溶媒としては、特に制限は無いが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜160℃、好ましくは0〜100℃で、1分〜24時間、好ましくは10分〜6時間反応させることによって得られる。さらに、目的とする4−フェニルピリミジン誘導体に応じ、常法に従い、アジド化後還元することにより生じる2位のアミノ基をアルキル化反応やスルホニル化反応を行うことによって、Rが前記式(2)で表わされる基であり、Rがアルコキシ基である本発明の4−フェニルピリミジン誘導体(I'''')を製造することができる。
1級或いは2級アミンとの反応は、2−クロロピリミジン誘導体(XIV)と等モル或いは過剰量のアミンとを反応する。溶媒は、特に制限は無いが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、メチルエチルケトン等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は−40〜150℃、好ましくは0〜100℃で、反応温度は1分〜1日、好ましくは30分〜10時間反応させることによってRが前記式(2)で表わされる基であり、Rがアルコキシ基である4−フェニルピリミジン誘導体(I'''')が得られる。
【化6】

〔式中、R、R、R、R、Rは前記と同じ置換基を示し、R10及びR11はC〜Cアルキル基を示す〕
図3
【0046】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、上述した方法により得られるが、更に必要に応じて再結晶法、カラムクロマトグラフィーなどの通常の精製手段を用いて精製することができる。また必要に応じて、常法によって前記した所望の溶媒和物又は塩にすることもできる。
【0047】
本発明において「STAT6活性化阻害」とは、転写因子としてのSTAT6の活性化を阻害することができればよく、特にIL−4刺激に基づく活性化を阻害することができるものであればよい。より具体的には、STAT6の関与するシグナル伝達系における活性化を阻害、例えばリン酸化の阻害、二量化による活性化の阻害、STAT6による転写反応の阻害など、いずれの段階での阻害であってもよい。なお、STAT6の関与するシグナル伝達系としては、例えばIL−4刺激に基づくもの等が挙げられる。
【0048】
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、後記試験例に示すように、STAT6活性化阻害作用を有することから、STAT6活性化阻害剤として、及びSTAT6が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬として有用である。
【0049】
本発明の医薬は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とするものであり、この投与形態は、特に限定されず治療目的に応じて適宜選択でき、例えば、経口用固形製剤、経口用液体製剤、注射剤、坐剤、外用剤、点眼剤、吸入剤、エアゾール剤、貼付剤のいずれでもよく、これらの投与形態は、薬学的に許容される担体を配合し、当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。なお、本発明における塩又は溶媒和物は、遊離の化合物を有効成分として製剤化する際に、製剤化における取り扱いを容易にするための化合物であり、溶媒和物又は塩になって初めて有効性が生じるものではない。
【0050】
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、微結晶セルロース、珪酸等を、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ゼラチン液、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等を、崩壊剤としてはカンテン末、炭酸水素ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等を、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を、着色剤としては、β−カロチン、黄色三二酸化鉄、カルメラ等を、矯味剤としては白糖、橙皮等を例示できる。
【0051】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば矯味剤としては白糖等が、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント等が、保存剤としてはパラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0052】
注射剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物にpH調節剤、安定化剤、等張化剤等を添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えばpH調節剤としては、リン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム等が、等張化剤としては、塩化ナトリウム等が例示できる。
【0053】
坐薬を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に担体、界面活性剤を加えて常法により製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、担体としてはポリエチレングリコール、ハードファット等を、界面活性剤としてはポリソルベート80等を例示できる。
【0054】
外用剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に基剤、水溶性高分子、溶媒、界面活性剤、保存剤等を加えて、常法により液剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン等が、水溶性高分子としてはカルボキシビニルポリマー等が、溶媒としてはグリセリン、水等が、界面活性剤としてはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が、保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0055】
点眼剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物にpH調節剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等を加えて常法により製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、pH調節剤としては、リン酸ナトリウム等を、安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA等を、等張化剤としては、塩化ナトリウム等を、保存剤としては、クロロブタノール等を例示できる。
【0056】
吸入剤、エアゾール剤として使用するには、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を溶液、懸濁液又は微小粉体の形で、気体又は液体噴射剤と共に、且つ所望により湿潤剤又は分散剤のような通常の補薬と共にエアゾール容器内に充填すればよい。
【0057】
貼付剤を調製する場合は、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物に粘着剤、溶媒、架橋剤、界面活性剤等を加えて常法により含水型貼付剤、プラスター貼付剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、粘着剤としてはポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等を、溶媒としてはグリセリン、水等を、架橋剤としては、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル等を、界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を例示できる。
【0058】
本発明の医薬の投与量、投与方法は患者の年齢、体重、症状、並びに投与形態及び投与回数などによって異なるが、通常は成人に対して本発明の4−フェニルピリミジン誘導体として1日1〜1000 mgを1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与するのが好ましい。
【0059】
実施例
以下に試験例、実施例を例示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
[製造例1]
O−イソプロピルイソウレア メタンスルホン酸塩 の合成
【化7】

シアナミド 50.0 g を2−プロパノール 150 mL に溶かし、氷水冷却下、メタンスルホン酸 114 g の2−プロパノール 100 mL 溶液を約30分間かけて滴下し、室温で63時間攪拌した。2−プロパノールを留去し、表題化合物230g(98 %)を無色固体として得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ:1.29(6H, d, J = 6.1 Hz), 2.37(3H, s), 4.80-4.92(1H, m), 8.42(4H, brs).
【0061】
[製造例2]
4−メチル−3−オキソ−2−(4−フルオロベンジリデン)ペンタン酸 エチルエステル の合成 (MK-040322, A327, p.106)
【化8】

4−フルオロベンズアルデヒド 70 g、イソブチリル酢酸エチルエステル 89.25 g をトルエン 350 mL に溶かし、ピペリジン 2.38 g、酢酸 6.79 g を加え、ジーン・スタークトラップを付け、17時間加熱還流した。反応液を飽和重曹水、水で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去すると、表題化合物 135.3 g (91 %)を黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.07(d, J = 7.1 Hz), 1.19(d, J = 7.1 Hz)(併せて6H), 1.28(t, J = 7.1 Hz), 1.32(t, J = 7.1 Hz)(併せて3H), 2.65-2.75(m), 3.11-3.21(m)(併せて1H), 4.26-4.35(2H, m), 7.10-7.17(2H, m), 7.35-7.49(2H, m), 7.55(s), 7.73(s)(併せて1H).
【0062】
[製造例3]
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル及び4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−3,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル の合成
【化9】

4−メチル−3−オキソ−2−(4−フルオロベンジリデン)ペンタン酸 エチルエステル 135.3 g、O−イソプロピルイソウレア メタンスルホン酸塩 203 g をN,N−ジメチルホルムアミド 1.2 L に溶かし、重曹 171.4 g を加え浴温 70℃で13時間攪拌した。不溶物をろ過して除き、N,N−ジメチルホルムアミドを留去した。残留物に水を加えエーテル抽出し、抽出液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。黄色油状物 156 g をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物74.2 g(42 %)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.07-1.20(9H, m), 1.22-1.30(6H, m), 3.93-4.24(3H, m), 4.94-5.04(m), 5.19-5.29,(m)(併せて1H), 5.06(brs), 5.99(brs) (併せて1H), 5.38(d, J = 2.4 Hz), 5.99(brs) (併せて1H), 6.92-7.01(2H, m), 7.21-7.31(2H, m).
【実施例1】
【0063】
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル の合成
【化10】

4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル及び4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−3,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステルの混合物58 g を塩化メチレン 250 mL に溶かし、−5℃冷却下、1,4−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン 38.2 g を30分間かけて少量ずつ加え、室温で1時間攪拌した。不溶物をろ過して除き、水洗を3回繰り返し、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。淡褐色油状物 58.37 g をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物 55.4 g(96 %)を微黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.10(3H, t, J = 7.2 Hz), 1.31(6H, d, J = 6.6 Hz), 1.43(6H, d, J = 6.1 Hz), 3.14-3.25(1H, m), 4.17(2H, q, J = 7.2 Hz), 5.35-5.45(1H, m), 7.08-7.14(2H, m), 7.62-7.68(2H, m).
【0064】
[製造例4]
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−5−ヒドロキシメチルピリミジン の合成
【化11】

4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 23.8 g をトルエン 230 mL に溶かし、−10℃に冷却した。ジイソプロピルアルミニウムヒドリド 1.01 mol/L トルエン溶液を1時間30分かけて滴下し、同温度で30分間攪拌した。反応液に 2 mol/L 塩酸水を加え室温で30分間攪拌し、不溶物をろ過して除き、飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、微黄色固体 22.8 g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物 20.02 g(97 %)を無色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.32(6H, d, J = 6.8 Hz), 1.41(6H, d, J = 6.4 Hz), 1.69(1H, t, J = 4.4 Hz), 3.42-3.52(1H, m), 4.63(2H, d, J = 4.4 Hz), 5.32-5.42(1H, m), 7.11-7.17(2H, m), 7.72-7.78(2H, m).
【0065】
[製造例5]
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボアルデヒド の合成
【化12】

4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピル−5−ヒドロキシメチルピリミジン 19.7 g を塩化メチレン 360 mL に溶かし、4−メチルモルホリン N−オキシド 18.96 g、モレキュラーシーブス 4A 粉末 19.5 g を加えた。氷水冷却下テトラプロピルアンモニウムパールテネート 682 mg を加え室温で30分間攪拌した。不溶物をろ過して除き、1 mol/L 塩酸水、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、黒色固体 24 g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物 16.92 g(87 %)を無色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)
δ:1.32(6H, d, J = 6.6 Hz), 1.46(6H, d, J = 6.1 Hz), 3.94-4.03(1H, m), 5.42-5.52(1H, m), 7.16-7.22(2H, m), 7.56-7.62(2H, m), 9.95(1H, s).
【0066】
[製造例6]
2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−[1−ヒドロキシ−1−(3−ピリジル)メチル]−6−イソプロピルピリミジン の合成
【化13】

3−ブロモピリジン 783.9 mgをテトラヒドロフラン 3 mL に溶かし、アルゴンガス存在下、-78℃に冷却し、1.56 mol/L n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液 2.65 mL を加え5分間攪拌した。次に、4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボアルデヒド 500 mg を加え、同温度で20分間攪拌した。反応液に水を加え、クロロホルム抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。褐色油状物1.02 g をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、表題化合物235.1 mg(40.1 %)を微黄色アモルファスとして得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:0.80(3H, d, J = 6.6 Hz), 1.23(3H, d, J = 6.6 Hz), 1.42 (6H, d, J = 6.0 Hz), 2.76(1H, br), 3.07-3.13(1H, m), 5.34-5.40(1H, m), 6.16(1H, d, J = 4.4 Hz), 7.07-7.12(2H, m), 7.26-7.30(1H, m), 7.44-7.52(2H, m), 7.58-7.64(1H, m), 8.48-8.52(2H, m).
【実施例2】
【0067】
2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン の合成
【化14】

2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−[1−ヒドロキシ−1−(3−ピリジル)メチル]−6−イソプロピルピリミジン 206 mg を塩化メチレン 3 mL に溶かし、氷水冷却下テトラプロピルアンモニウムパールテネート 5.7 mg、4−メチルモルホリン N−オキシド 158.9 mg を順に加え、室温でモレキュラーシーブス4Aパウダー 200 mgを加え、同温度で2時間攪拌した。不要物をセライトろ過、溶媒を留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、表題化合物171.3 mg(83.2 %)を無色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.26(6H, d, J = 6.6 Hz), 1.49(6H, d, J = 6.1 Hz), 2.94-3.04(1H, m), 5.41-5.51(1H, m), 6.88-6.95(2H, m), 7.24-7.29(1H, m), 7.48-7.56(2H, m), 7.92-7.56(1H, m), 8,62-8.66(1H, m), 8.68-8.72(1H, m).
【0068】
[製造例7]
4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン−2−オン の合成
【化15】

2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン 38 mg をエタノール2mL に溶かし、塩酸 1 mL を加え浴温 70℃ で6時間攪拌した。エタノールを留去し、残留物に飽和重曹水を加えクロロホルム抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、淡黄色固体 32 mgをアセトン−ヘキサンから再結晶し、表題化合物27 mgを微黄色結晶性粉末として得た。
Mp.:203−207℃.(Dec.)
1H-NMR(CDCl3)δ:1.43(6H, d, J = 6.4 Hz), 3.03-3.15(1H, m), 6.89-6.97(2H, m), 7.24-7.28(1H, m), 7.48-7.54(2H, m), 7.91-7.96(1H, m), 8.62-8.66(1H, m), 8.74-8.77(1H, m), 12.85(1H, br).
【0069】
[製造例8]
2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン の合成
【化16】

4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン−2−オン 164 mg をオキシ塩化リン 3 mL に溶かし、浴温 100℃ で1時間30分攪拌した。氷水冷却下、水を加え水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、クロロホルム抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。黄色油状物 255 9 mg をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、表題化合物87.9 mg(50.8 %)を淡黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.27(6H, brs), 2.91-3.02(1H, m), 6.94-7.01(2H, m), 7.29-7.34(1H, m), 7.53-7.59(2H, m), 7.92-7.97(1H, m), 8.69-8.72(2H, m).
【0070】
[製造例9]
2−アジド−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン の合成
【化17】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン 85 mg をN,N−ジメチルホルムアミド 1 mL に溶かし、アジ化ナトリウム 23.3 mg を加え浴温100℃で4時間攪拌した。N,N−ジメチルホルムアミドを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:1)で精製し、表題化合物37.2 mg(43.0 %)を淡黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.27(6H, d, J = 6.6 Hz), 2.94-3.05(1H, m), 6.92-6.98(2H, m), 7.27-7.32(1H, m), 7.52-7.58(2H, m), 7.92-7.97(1H, m), 8.65-8.72(2H, m).
【実施例3】
【0071】
2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン(化合物1) の合成
【化18】

2−アジド−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン 35 mg をメタノール 10 mL に溶かし、10%パラジウム炭素(wet type)16 mg を加え、水素気流下室温で1時間攪拌した。10%パラジウム炭素をろ過して除き、メタノールを留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、表題化合物21.5 mg(66.2 %)を微黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.21(6H, d, J = 6.8 Hz)), 2.92-3.02(1H, m), 5.31(2H, brs), 6.87-6.93(2H, m), 7.21-7.25(1H, m), 7.40-7.46(2H, m), 7.90-7.94(1H, m), 8.59-8.62(1H, m), 8.69-8.71(1H, m).
IR(ATR): 3426, 3314, 3186, 1654, 1636, 1544, 1507, 1418, 1268, 925, 848, 815 cm-1.
【0072】
[製造例10]
2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル
【化19】

WO2003/06439公報記載の方法又は類似の方法により製造することができる4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−2−オン−5−カルボン酸 エチルエステル300 mg及びオキシ塩化リン0.2 mLの混合物を浴温100℃で2時間30分攪拌した。氷水冷却下、反応混合物に氷水5mLを加え、飽和重曹水を加えアルカリ性にし、クロロホルムで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、表題化合物305 mg (96 %)を微黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.14(3H, t, J = 7.2 Hz), 1.33(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.13-3.20(1H, m), 4.23(2H, q, J = 7.2 Hz), 7.11-7.18(2H, m), 7.65-7.71(2H, m).
【0073】
[製造例11]
2−アジド−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル
【化20】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 180 mg をN,N−ジメチルホルムアミド 0.5 mL に溶かし、アジ化ナトリウム 54 mg を加え浴温100℃で4時間攪拌した。N,N−ジメチルホルムアミドを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物143 mg(78 %)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.07(3H, t, J = 7.1 Hz), 1.33(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.19-3.30(1H, m), 4.13(2H, q, J = 7.1 Hz), 7.31-7.37(2H, m), 7.68-7.73(2H, m).
IR:2135, 1729, 1549, 1535, 1352, 1250, 1218 cm-1.
【実施例4】
【0074】
2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物2)の合成
【化21】

2−アジド−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 143 mg をメタノール 5 mL に溶かし、10%パラジウム炭素(wet type)70 mg を加え、水素気流下室温で1時間攪拌した。10%パラジウム炭素をろ過して除き、メタノールを留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物113 mg(86 %)を無色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.04(3H, t, J = 7.2 Hz), 1.26(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.11-3.22(1H, m), 4.09(2H, q, J = 7.2 Hz), 5.20(2H, br), 7.08-7.14(2H, m), 7.53-7.58(2H, m).
IR:3497, 1712, 1631, 1554, 1508, 1259, 1149 cm-1.
【実施例5】
【0075】
4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物3)の合成
【化22】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 90 mg を酢酸n-ブチルエステル 1 mL に溶かし、メタンスルホンアミド 80 mgと炭酸カリウム 116 mgを加え、浴温110℃で24時間攪拌した。反応液に水5 mL を加え酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物88 mg (83 %)を微黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.10(3H, t, J = 7.1 Hz), 1.30(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.16-3.26(1H, m), 3.49(3H, s), 4.19(2H, q, J = 7.2 Hz), 7.11-7.18(2H, m), 7.62-7.68(2H, m), 7.76(1H, br).
IR:1721, 1547, 1455, 1251, 1154 cm-1.
【実施例6】
【0076】
4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物4)の合成
【化23】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 80 mg をN−メチル−2−ピロリジノン 0.5 mL に溶かし、アニリン 46 mg を加え浴温100℃で5時間攪拌した。N−メチル−2−ピロリジノンを留去し、残留物をクロロホルム5 mL に溶かし、水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物78 mg(83 %)を微黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.06(3H, t, J = 7.1 Hz), 1.33(6H, d, J = 6.6 Hz), 3.20-3.31(1H, m), 4.13(2H, q, J = 7.1 Hz), 7.02-7.07(1H, m), 7.09-7.16(2H, m), 7.31-7.36(3H, m), 7.60-7.66(2H, m), 7.68-7.72(2H, m).
IR:1716, 1548, 1509, 1446, 1431, 1258, 1235 cm-1.
【実施例7】
【0077】
4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物5)の合成
【化24】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 100 mg を30 % メチルアミン エタノール溶液に溶かし、封管中浴温80℃で2時間攪拌した。30 % メチルアミン エタノール溶液を留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物96 mg(98 %)を微黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.02(3H, t, J = 7.2 Hz), 1.26(6H, d, J = 6.6 Hz), 3.03(3H, d, J = 4.9 Hz), 3.15-3.25(1H, m), 4.08(2H, q, J = 7.2 Hz), 5.35(1H, brs), 7.06-7.13(2H, m), 7.53-7.62(2H, m).
IR:1715, 1598, 1555, 1510, 1261 cm-1.
【実施例8】
【0078】
4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物6)の合成
【化25】

4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル370mg(1.213mmol)のDMF5ml溶液に氷冷下、60%NaH60mgを加えて、30分間撹拌後メタンスルホニルクロライド208mgを加えて室温とし、更に2時間撹拌する。次いで、氷水を加えてエ−テルで抽出し、水洗、乾燥する。エ−テルを減圧下、留去し残渣をエ−テル−n−ペンタンにて洗浄し表題化合物322mg(収率:57.6%)を得た。
NMR(CDCl3 )δ:1.10 (3H,t, J=7.2 Hz),1.32 (6H,d, J=7.2Hz),3.24 (1H,hept, J=7.2Hz),3.52 (3H,s),3.60 (3H,s); 4.19 (2H,q, J=7.2Hz); 7.14 (2H,m); 7.68 (2H,m)
【実施例9】
【0079】
2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物7)の合成
【化26】

2−クロロ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル 100 mg をエタノール0.5 mLに溶かし、40 % ジメチルアミン 水溶液 1 mLを加え、封管中浴温80℃で2時間攪拌した。揮発物を留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物100 mg(97 %)を微黄色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.-01 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.26(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.18-3.31(1H, m), 3.25(6H, s), 4.07(2H, q, J = 7.2 Hz), 7.05-7.11(2H, m), 7.56-7.63(2H, m).
IR:1715, 1560, 1506, 1409, 1205 cm-1.
【0080】
[製造例12]
4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピル−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル及び4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピル−3,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル の合成
【化27】

エチル 3−オキソヘキサノエート 84 mg、O―メチルイソウレア 硫酸塩 100 mg、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド 73 mgをN,N―ジメチルホルムアミド 1.5 mL に溶かし、重曹 163 mg を加え浴温 70℃で18時間攪拌した。不溶物をろ過して除き、N,N−ジメチルホルムアミドを留去した。残留物に水を加え酢酸エチル抽出し、抽出液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。黄色油状物 260 mg をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物142 mg(85 %)を淡黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:0.99(3H, t, isomer1 ,J = 7.3 Hz), 1.00(3H, t, isomer2 ,J = 7.3 Hz), 1.17(3H, t, isomer1 ,J = 7.0 Hz), 1.19(3H, t, isomer2 ,J = 7.0 Hz), 1.60-1.70(2H, m), 2.58-2.80 (2H, m), 3.72(3H, s, isomer2), 3.82(3H, s, isomer1), .4.05-4.15(2H, m), 5.16(1H, s, isomer1) and ,5.35(1H, d, isomer1, J = 2.2 Hz), 5.53(1H, s, isomer2), 5.90-5.95(1H, m, isomer2), 5.90-5.95 (2H, m), 6.69-6.85(3H, m), the ratio isomer1/isomer2 is ca. 1:2.
IR:3309, 1699, 1616, 1488, 1241, 1095, 1041 cm-1.
【実施例10】
【0081】
4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物8)の合成
【化28】

4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピル−1,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル及び4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピル−3,4−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステルの混合物100 mg をジクロロメタン 1 mL に溶かし、氷冷下DDQ 72 mg を加え15分攪拌後、室温下一晩攪拌を続けた。反応液を減圧濃縮後、アルミナカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物66 mg(66 %)を微黄色油状物として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:0.99(3H, t, J = 7.4 Hz), 1.17(3H, d, J = 7.2 Hz), 1.75-1.85(2H, m), 2.76(2H, t, J = 5.1 Hz), 4.06(3H, s), 4.22(2H, q, J = 7.2 Hz), 6.02(2H, s), 6.84(1H, d, J = 8.1Hz), 7.18(1H, dd, J = 8.1, 1.7Hz),7.23(1H, d, J = 1.7Hz).
IR:1722, 1549, 1445, 1378, 1254 cm-1.
【0082】
[試験例]
本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物のSTAT6活性化阻害作用を以下の方法で測定した。
(1)測定方法(STAT6活性化阻害試験)
STAT6結合モチーフを4個繰り返した配列を含む次の配列1
配列1: 5‘−TCGACC([AGTCCACTTCCCAAGAACAGA]×4)GGATC−3’ (配列1)
で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含むルシフェラーゼベクターをネオマイシン耐性遺伝子と共に組み込んだヒト肺癌上皮細胞A549(大日本製薬)由来安定形質転換細胞株を樹立し、化合物の評価に用いた。細胞を5×10個/0.1ml/ウェルとなるように、96ウェルマイクロプレート(ヌンク製)にまき、一晩培養した。翌日、ジメチルスルホキシドに溶解し、培地で希釈した試験化合物(0.25mg/ml)を0.01ml添加し、その30分後にヒト組換えIL−4を含有するCOS−7細胞培養上清液0.01mlを添加して4時間培養した。培養後、Bright-Glo Luciferase Assay System反応液(プロメガ製)0.08ml/ウェルを加え、ルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Wallac 1420 ARVOsx、パーキンエルマー製)で測定した。試験化合物のSTAT6活性化阻害作用は、IL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性に対する阻害率(%)として下記の式1により算出し、結果を表1にまとめた。
【0083】
阻害率(%)=100−(A−B)/(C−B)×100 (式1)
式中、A:試験化合物の存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
B:試験化合物の非存在下、無刺激時に誘導されるルシフェラーゼ活性
C:試験化合物の非存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
をそれぞれ示す。
(2)各試験化合物の試験結果を次の表1示す。
【0084】
【表1】

【0085】
薬理試験結果より、実施例1〜10に記載した化合物(化合物1〜10と表す)はいずれもSTAT6活性化阻害作用があることがわかった。また、表1に示した結果から、実施例3、4、8及び10の化合物(それぞれ化合物3、4、8及び10と表す)は特に優れたSTAT6活性化阻害作用があること、化合物4、8、及び10は阻害率20%以上を示す点で特に優れていること、化合物4及び10は阻害率25%以上を示す点で特に優れていること、化合物4は阻害率50%以上を示す点で特に優れていることが明らかとなった。すなわち、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が、優れたSTAT6活性化阻害剤であることが明らかとなった。
以上の結果から、本発明の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬は、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の2−フェニルベンゾイミダゾール誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びこれを有効成分とするSTAT6活性化阻害剤は、優れたSTAT6活性化阻害作用を有し、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等のための医薬として使用でき、例えば医薬品産業において利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0087】
配列番号1:STAT6結合モチーフを4回繰り返した配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又はC〜Cアルコキシ基を示すか、或いはRとRが一緒になってC〜Cアルキレンジオキシ基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は次式(2)

−NR (2)

[式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキルスルホニル基、又はC〜C10アリール基を示し、
は水素原子、又はC〜Cアルキル基を示す。]で表わされる基を示し、
はC〜Cアルキル基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は5〜6員の不飽和複素環基を示す。]
で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤。
【請求項2】
で表わされる5〜6員の不飽和複素環基が、ピリジル基である、請求項1記載のSTAT6活性化阻害剤。
【請求項3】
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜3に記載の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項6】
請求項1〜3に記載の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項7】
請求項1〜3に記載の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項8】
次の一般式(1)
【化2】

[式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又はC〜Cアルコキシ基を示すか、或いはRとRが一緒になってC〜Cアルキレンジオキシ基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は次式(2)

−NR (2)

[式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルキルスルホニル基、又はC〜C10アリール基を示し、
は水素原子、又はC〜Cアルキル基を示す。]で表わされる基を示し、
はC〜Cアルキル基を示し、
はC〜Cアルコキシ基、又は5〜6員の不飽和複素環基を示す。]
で表わされる4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
【請求項9】
で表わされる5〜6員の不飽和複素環基が、ピリジル基である請求項8記載の4−フェニルピリミジン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
【請求項10】
4−(4−フルオロフェニル)−2−イソプロピルオキシ−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−イソプロピルオキシ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ピリジルカルボニル)−6−イソプロピルピリミジン、2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メタンスルホニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−フェニルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−N−メチルアミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メタンスルホニル−N−メチル)アミノピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、2−(N, N−ジメチルアミノ)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−メチルオキシ−6−プロピルピリミジン−5−カルボン酸 エチルエステル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。

【公開番号】特開2008−162978(P2008−162978A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356230(P2006−356230)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】