説明

4サイクルディーゼルに用いる触媒およびその使用方法

ディーゼルエンジン排気流に含まれる一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質、およびガス状炭化水素を同時に改善するための触媒品、排出処理システムおよび方法が提供される。特定の実施形態の排出処理システムは、ディーゼルエンジン排ガスを単一の触媒品を用いて効果的に処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、係属米国特許出願シリアル番号第12/572730号(2009年10月2日出願)の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、排ガスを処理する触媒品、排出処理システムおよび方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、4サイクルディーゼルに用いる触媒およびこのような触媒を用いたシステムに関する。さらに、4サイクルディーゼルに用いる触媒の使用および下処理方法を開示する。本発明の実施形態は、ディーゼルエンジン排気流に含まれる二酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質、およびガス状炭化水素を改善する効果的な方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジン排ガスは、一酸化炭素(「CO」)、未燃炭化水素(「HC」)、および窒素酸化物(「NOx」)などのガス状排出物だけでなく、いわゆる微粒子または粒子状物質を構成する凝縮相物質(液体および固体)を含む不均一混合物である。ディーゼルエンジン排気システムには、多くの場合に、組成が決められた触媒組成および担体が供給され、これらの排気成分の一部または全てを無害成分に変える。例えば、ディーゼル排気システムは、ディーゼル酸化触媒、煤フィルタ、およびNOxを還元する触媒の1つ以上を含み得る。
【0004】
白金族金属、卑金属、およびそれらの組み合わせを含む酸化触媒は、HCおよびCOガス状汚染物質並びに一定割合の粒子状物質などの汚染物質を酸化して、二酸化炭素および水に物質変換することにより、ディーゼルエンジン排ガスの処理を容易にすることが知られている。このような触媒は、通常、ディーゼルエンジンの排ガスに入れられるディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる一群に含まれ、大気への放出前の排ガスを処理する。(通常、耐火性酸化物担体に分散される)白金族金属を含む酸化触媒は、ガス状HC、CO、および粒子状物質の物質変換だけでなくさらに一酸化窒素(NO)からN0への酸化を促進する。
【0005】
ディーゼル排気中の粒子状物質全体は3つの主成分から成る。1つの成分は固体、乾燥、固体炭素質画分、または煤画分である。この乾燥炭素質物質は、通常、ディーゼル排気に含まれる可視の煤排出の一因となる。粒子状物質の第2の成分は可溶性有機成分(「SOF」)である。可溶性有機成分は、本明細書に用いられる用語である揮発性有機画分(「VOF」)と呼ばれる場合もある。VOFはディーゼル排気の温度に応じて、その中において蒸気で存在する場合もあるし、エアロゾル(液体凝縮物の微細液滴)で存在する場合もある。これは通常、U.S.Heavy Duty Transient Federal Test Procedureなどの標準測定試験により規定されるような標準の微粒子収集温度52℃で、希釈された排ガス中に濃縮液体として存在する。これらの液体は2つの源、すなわち(1)ピストンが上下するたびに、エンジンのシリンダ壁から掃き出される潤滑油、(2)未燃または部分的に燃焼したディーゼル燃料から生じる。
【0006】
粒子状物質の第3の成分はいわゆる硫酸画分である。硫酸画分はディーゼル燃料に含まれる少量の硫黄成分から生成される。ディーゼルの燃焼中に少量のS0が生成され、これは次に排ガス中の水分と迅速に混合して硫酸となる。硫酸はエアロゾルとして微粒子を含む凝縮相のままで収集されるか、他の粒子成分に吸着し、これによりTPMの質量が増大する。
【0007】
高粒子状物質の還元に用いられる1つの重要な後処理技術には、ディーゼル微粒子除去装置がある。ディーゼル排気から粒子状物質を効果的に除去する多くのフィルタ構造が公知であり、例えば、ハニカム壁流フィルタ、巻き付けまたは充填した繊維フィルタ、開放気泡発泡体、焼結金属フィルタなどがある。しかしながら、下記するセラミック壁流フィルタが最も注目されている。このフィルタは、ディーゼル排気から90%超の粒子状物質を除去できる。フィルタは排ガスから粒子を除去するような物理的構造であり、堆積した粒子はエンジンのフィルタに加わる背圧を増大する。それ故堆積した粒子を、背圧を許容範囲に維持するために、フィルタから継続的または定期的に焼出する必要がある。酸素を豊富に含む(乏しい)排気状態下で燃焼するためには、不運にも、炭素煤粒子には500℃を上回る温度が要求される。この温度は、ディーゼル排気中の通常の温度よりも高い。
【0008】
フィルタを受動的に再生するために、通常、煤の燃焼温度を下げる対策が取られる。触媒が煤の燃焼を促進するため、現実的なデューティサイクル下で、ディーゼルエンジンの排ガス内で利用可能な温度においてフィルタが再生される。このような方法で、触媒煤フィルタ(CSF)または触媒ディーゼル微粒子フィルタ(CDPF)は、堆積した煤の受動的な燃焼に加えて、80%超の粒子状物質の還元を効果的に実現することにより、フィルタの再生を促進する。
【0009】
粒子を除去する別の手段には、排気流内の酸化剤としてN0を利用する手段がある。それ故、300℃超の温度において酸化剤としてN0を用いた酸化により、微粒子は除去され得る。上流のDOC酸化触媒により排ガスにも含まれるNOが酸化され、エンジンから出た排ガスに既に含まれるN0にさらに追加され得る。この受動的な再生手段はさらに、フィルタ内の煤負荷を減少して、再生サイクルの回数を減らし得る。
【0010】
世界中で採用されるさらなる排出基準は、ディーゼル排気からのNOx還元にも関連する。排気が少ない状態の固定汚染源に利用される実証済みのNOx減少技術には、選択的接触還元(SCR)がある。この処理では、卑金属から通常成る触媒により、NOxはアンモニア(NH)と反応して窒素(N)に還元される。この技術は90%超のNOxを還元可能であるため、積極的なNOx還元目標を達成する最も良い方法の1つとして知られている。SCRはアンモニア源として(通常、水溶液に含まれる)尿素を用いる自動車用途用に開発中である。排気温度が触媒の活性温度の範囲内にある限り、SCRはNOxの効率的な物質変換を達成する。
【0011】
排ガス中の別々の成分に対応する触媒を各々が含む個々の担体が排気システムに供給され得るが、システムの全体サイズを減少し、システムの組立を容易にし、かつシステムの費用全体を抑えるために、利用される担体がより少量であることが所望される。この目標を達成する1つの方法は、NOxの無害成分への物質変換に効果的な触媒組成を用いて煤フィルタを被覆することである。この方法を利用したSCR触媒煤フィルタは、排気流中の粒子成分の除去と、排気流中のNOx成分のNへの物質変換との2つの触媒機能を有すると見なされる。
【0012】
NOx還元目標を達成し得る被覆された煤フィルタには、煤フィルタにおけるSCR触媒組成を十分に含有する必要がある。排気流中の一定の有害成分への露出により長期間起こり得る組成の触媒効率の段階的な損失を軽減するため、SCR触媒組成へのより高い触媒の含有が必要となる。しかしながら、より高い触媒を含有する被覆された煤フィルタの前処理により、排気システム内に許容されない高い背圧が生じることがある。それ故、フィルタが許容範囲にある背圧を加える流量特性をなおも維持可能であり、かつより高い触媒を壁流フィルタに含有できる被覆技術が所望される。
【0013】
壁流フィルタの被覆において考慮されるさらなる態様は、適切なSCR触媒組成の選択である。第1に、フィルタの再生特性であるより高温に長期にさらされた後でさえも、触媒組成はそのSCR触媒作用を維持する耐久性を有する必要がある。例えば、粒子状物質の煤画分の燃焼は、多くの場合に700℃超の温度に至る。このような温度は、バナジウムおよびチタンの混合酸化物などの多くの一般に利用されるSCR触媒組成の触媒的な効果を小さくする。第2に、SCR触媒組成は、車両の運転温度を超える種々の温度領域に適応し得る十分に広い運転温度領域を有することが好ましい。通常、低負荷状態または起動時などにおいて300℃未満の温度にさらされる。SCR触媒組成は排ガスのNOx成分の還元に触媒作用を及ぼし得、低い排気温度でさえも、NOx還元目標を達成することが好ましい。
【0014】
国際特許出願公開第WO2008/101585号には、酸化機能触媒が壁の断面の半分のみではあるが、フィルタの全長に沿って分散された触媒構造が示される(公開出願の図3および図4参照)。SCR触媒は酸化触媒で満たされた壁の残りに加えて、フィルタ断面の半分のみを通過するが、フィルタの前面領域の壁に配置されてもよいし、フィルタ全長に沿って壁に配置されてもよい。第1の構造では(ガス流がSCR層を通って送られないため)、SCR触媒周囲のガスが迂回できない可能性があり、フィルタを通じる通路ではNOxが処理されず、さらにはNHをNOxに酸化する可能性がある。さらに、両方の構造は、実験からSCR触媒の容積が酸化触媒の容積よりも高くなることが推測されるため、背圧を増大する可能性があり、これは悪影響を及ぼす。この構造ではSCR触媒が壁のより小さい部分に制限され、触媒が壁の断面における細孔容積のより大きな割合を満たすか、その吸気チャネルへの流入が制限される場合により高い背圧が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
大きなスペースを占有することなく、効果的かつ安価な方法でディーゼルエンジンが排出する一酸化炭素、炭化水素窒素酸化物、および粒子状物質を処理する触媒品、方法およびシステムに対する技術がなおも要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態は、ディーゼル排気用の4サイクル触媒に関する。名前に暗示されるように、排ガスの主要な4つの排気全て、すなわちCO、HC、NOxおよび煤は、単一成分または単一の収容成分中で除去される。煤を除去するために、4サイクル成分担体はフィルタでもよいし、ろ過特性を有するものでもよい。フィルタの触媒被覆のために、背圧の最小化と、フィルタに配置される触媒周囲の排ガスの迂回を阻止することの2つが考慮される。背圧の最小化は燃料節約、さらには潜在的なエンジン寿命の長期化に直接影響する。1つ以上の触媒周囲の排ガスの迂回の阻止は、要求される物質変換を確実に実行し、極端な場合では、NHをNOxに酸化するなどして、さらなる排出の可能性を阻止するために重要である。チャネル下方においてフィルタ壁を通り抜ける複数のガス経路を利用するため、触媒周囲の迂回はフィルタ担体を利用して実行し得る。
【0017】
個々のSCRおよび酸化触媒材料を用いて、4サイクル成分、すなわちNH、COおよびHCに準拠するNOxを除去するために、排ガスはまずSCR触媒を通過して、次に、酸化触媒を通過する必要がある。排ガスがSCR触媒を迂回し、まず酸化作用を受ける場合には、還元剤(例えば、NHまたは炭化水素)は酸化されてNOxとなり、NOxを減少する作用は損なわれ、さらには、触媒に入れられる還元剤としてNHが用いられる場合よりも多量のNOxが放出される。
【0018】
本発明の例示の実施形態は、背圧とガス迂回との両方の課題に対処する。一部の実施形態では、SCR触媒は、その全長に沿ってフィルタ壁の至るところに、壁全体の断面を通じて配置される。これにより、SCR触媒全体が散布されるように、フィルタ孔が最大容積になり、背圧が最小になる。フィルタの排気端における領域として、排気チャネルの壁の上面に酸化機能触媒が分散される。これにより、壁の至るところに分散されたSCR触媒により全体が覆われた層が壁の上面に形成される。酸化触媒は、フィルタ壁に不透水領域を形成し、ガスがフィルタ前面における壁を通過するように配置され得る。代替的な例示の実施形態では、壁に十分なSCR触媒が存在し、ガスが酸化触媒を通過する前にNOxおよびNHの全てが除去される限り、酸化触媒はその下部において直接壁を通過し得る一部のガス流路を通じて移動できる。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態は、通路を境界付けおよび画定する縦方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する通路を有する壁流フィルタを備えている触媒品に関連する。通路は、吸気端において開かれており、排気端において閉じられている吸気通路と、吸気端において閉じられており、排気端において開かれている排気通路とを備えている。孔壁内にはSCR触媒組成が配置されており、排気端から延在し、壁流フィルタの軸長よりも短い排気通路の壁には酸化触媒が配置されている。1つ以上の実施形態では、酸化触媒の一部はまた、その下方において直接フィルタ壁に浸透し得る。詳細な実施形態では、触媒品は排気端から始まり、壁流フィルタの軸長に沿って一部が延在するガス不浸透性領域をさらに備えている。特定の実施形態では、ガス不浸透性領域は酸化触媒により形成される。一部の実施形態では、ガス不浸透性領域は排ガス成分に反応しない物質から生成される。一部の実施形態では、ガス不浸透性領域はアルミナおよび白金族金属を含む組成、またはHCおよびCOを酸化可能な任意の他の物質から生成される。一部の特定の実施形態では、酸化触媒は、ガス不浸透性領域における排気通路の壁のみに実質的に配置されている。詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は、壁流フィルタの軸長の最大約70%まで延在する。他の詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は壁流フィルタの軸長の最大約50%まで延在する。他の詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は壁流フィルタの軸長の最大約30%まで延在する。他の詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は壁流フィルタの軸長の最大約10%まで延在する。
【0020】
詳細な実施形態では、SCR触媒組成はフィルタの軸の全長まで延在して配置される。特定の実施形態のSCR触媒は孔壁に均一に浸透する。特定の実施形態では、孔壁は実質的に均一の空隙率を有する。他の詳細な実施形態では、SCR触媒はフィルタの軸の全長よりも短い領域においてフィルタ壁に浸透する。残りのフィルタ壁容積は、不活性物質で満たされてもよい。
【0021】
特定の実施形態では、触媒品は排気流から煤の少なくとも約70%を除去するのに効果的である。特定の実施形態では、触媒品はディーゼルエンジンから出た排ガス流から一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、および煤を除去するのに効果的である。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む希薄燃焼のディーゼル排気流を処理する方法に関する。この方法は、前述したように排ガス流が触媒品を通過することを含む。特定の実施形態では、触媒品は壁流フィルタの軸長に沿って排気端から延在するガス不浸透性領域をさらに備えている。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、希薄燃焼のディーゼルエンジンから出た排ガスを処理するシステムに関する。システムは、前述のようにエンジンの下流に位置する触媒品を備えている。特定の実施形態では、触媒品は、排気端から始まり、壁流フィルタの軸長に沿って延在するガス不浸透性領域をさらに備えている。詳細な実施形態では、システムは触媒の上流に位置する尿素噴射装置をさらに備えている。
【0024】
本発明の一部の実施形態は、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む排ガス流を処理する方法に関する。この方法は、吸気端、排気端、および軸長を有する壁流フィルタを備える単一触媒品を排ガス流が通過することを含む。壁流フィルタは、排気流における実質的に全てのNOxを除去する、軸の全長を延在する第1の範囲と、CO、炭化水素、または煤の1つ以上を酸化する、軸長よりも短い、壁流フィルタの排気端から延在する第2の範囲とを含む。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む排気流を処理するための触媒品に関する。触媒品は、吸気端、排気端、および軸長を有する壁流フィルタを備える。壁流フィルタは、軸の全長を延在する第1の範囲と、軸長よりも短い、壁流フィルタの排気端から延在する第2の範囲とを含み、第1の範囲は排気流における実質的に全てのNOxを除去するのに効果的であり、第2の範囲はCO、炭化水素、および煤の1つ以上を酸化するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】壁流フィルタ担体を示す斜視図である。
【図2】壁流フィルタ担体の断面を示す切欠図である。
【図3】本発明の1つ以上の実施形態に従う壁流フィルタ担体の断面を示す切欠図である。
【図4】尿素噴射装置を含む、本発明の排出処理システムの実施形態を示す図である。
【図5】尿素噴射装置および選択的なエンジン部品を含む、本発明の排出処理システムの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態は、ディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質、NOx、および他のガス状成分を効果的に同時処理する排出処理システムに関する。排出処理システムは、統合された煤フィルタおよびSCR触媒を用いることにより、排ガスシステムに要求される重量および容積を著しく低減する。さらに、システムに用いる触媒組成の選択の結果として、種々の温度の排気流における汚染物質を効果的に減少できる。この特徴は、このような車両のエンジンから放出された排気温度に多大な影響を及ぼす、種々の積載量および車両速度のディーゼル車の運転において利点となる。さらに、排気システムのサイズ縮小はまた、触媒が効果的に作用する温度までそれを加熱する熱質量、それ故熱速度を低減することにより、システム効率を改善する。
【0028】
NOx還元および微粒子除去機能の単一の触媒品への統合は、SCR触媒組成により被覆された壁流担体を用いて達成される。出願人らは、SCR触媒組成を壁流担体に利用して、高いろ過効率が要求される用途に用い得る担体を生成する方法を発見した。例えば、この方法で生成された担体は、本発明の実施形態の排出処理システムにおいて粒子状物質を(例えば、80%超)効果的に除去するのに適している。本明細書に開示する被覆方法は、排出処理システムにおいて実施される場合に、被覆品全体に過剰の背圧を及ぼすことなく、壁流担体が実用的なレベルのSCR触媒を含有することを可能にする。
【0029】
壁流担体における実用的なレベルのSCR触媒組成の達成には、可能なNOx還元レベルを達成し、かつフィルタに捕集される煤画分の燃焼温度を低くするのに十分な触媒作用を有することが重要である。煤フィルタにおける適正レベルのSCR洗浄被覆組成の達成には、触媒に対する十分な耐久性を確保することがさらに重要である。排出処理システムの長期の使用では、潤滑油の機能停止に起因するか、ディーゼル燃料内の不純物に含まれ得る種々のレベルの触媒毒に触媒は必ずさらされる。このような触媒毒の例には、リン、亜鉛、アルカリ、およびアルカリ土類元素が含まれる。それ故、より高レベルの触媒組成には、通常、触媒担体が沈着し、触媒作用の避けられない損失を軽減する。
【0030】
本明細書に用いる「実質的に全て」という用語は、重量単位で約95%超を意味する。さらなる特定の実施形態では、「実質的に全て」は重量単位で約99%超を意味する。本明細書に用いる「断面において実質的に均一の空隙率」は、壁の断面の至るところに近い大きさの孔が分布するような空隙率を意味する。例えば、「断面において実質的に均一の空隙率」は、壁の断面を貫通する細孔径を意図的に変化させた、例えば、排気面に隣接する孔に対して吸気面に隣接する孔を大きくしたような壁構造は含まない。
【0031】
本明細書に用いる「白金族金属」は、白金族金属またはそれらの酸化物の1つを意味する。
【0032】
図1および図2に、複数の通路12を有する代表的な(壁流フィルタとも呼ばれる)壁流フィルタ担体10を示す。フィルタ担体の内壁13により通路は管状に閉じられている。担体は吸気端14および排気端16を有する。代替的な通路は吸気プラグ18で吸気端を塞がれ、かつ排気プラグ20で排気端を塞がれており、吸気口14および排気口16において相対する格子パターンを形成する。ガス流22は塞がれていないチャネル吸気口24から入り、排気プラグ20により進路を阻まれ、(多孔質である)チャネル壁13を通過して排気側26に拡散する。ガスは吸気プラグ18により進路を阻まれるため、壁の吸気側には戻らない。
【0033】
図3は本発明の例示の実施形態の拡大断面図を示す。示す触媒品は、通路24および26を境界付けおよび画定し、かつ吸気端14と排気端16との間を軸長「L」を有して縦方向に延在する孔壁13により形成された複数の縦方向に延在する通路を有する壁流フィルタを備えている。一部の詳細な実施形態では、孔壁はその全範囲において実質的に均一の空隙率を有する。吸気通路24は吸気端14において開かれており、かつ排気端16において閉じられており、排気通路26は吸気端14において閉じられており、かつ排気端16において開かれている。孔壁13内にはSCR触媒組成30が配置される。排気端16から延在する排気通路26の壁13には、壁流フィルタの軸長「L」よりも短い距離に酸化触媒32が配置される。1つ以上の実施形態に従えば、酸化触媒32は壁には浸透せず、壁上に配置される。ただし、その大部分は壁に埋め込まれずに壁上に存在するが、その一部は壁に浸透し得ることが理解される。
【0034】
排ガス流22は吸気通路24に入り、壁流フィルタの排気端16に向かい流れる。ガスは吸気通路から排気通路26に通じる孔壁13の浸透路34を含む、フィルタ内の複数の経路を通り得、そしてフィルタの排気端16を通じて排出される。流路36では、ガスは孔壁13に入るが、酸化触媒32または壁を不浸透性にする一部の他の物質が存在するため、壁を貫通できない。別の代替的な経路38では、排ガス22の一部がSCR触媒30を含む孔壁13内で拡散し、酸化触媒32を通り得る。この拡散は、酸化触媒または一部の追加的な層がこの範囲を実質的にガス不浸透性にする場合でさえも起こり得る。
【0035】
SCR触媒30は孔壁13の全てまたは一部に配置され得る。詳細な実施形態では、SCR触媒30は孔壁13に実質的に均一に浸透する。特定の実施形態では、SCR触媒組成はフィルタの軸の全長を延在する。詳細な実施形態では、SCR触媒組成30は、フィルタの軸長の少なくとも約10%を延在する。他の詳細な実施形態では、SCR触媒組成30は、フィルタの軸長の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を延在する。
【0036】
一部の実施形態では、触媒品は、排気端から始まり、壁流フィルタの軸長に沿って一部が延在するガス不浸透性領域をさらに備える。用語「不浸透性領域」は、ガス流が衝突する抵抗がより高い領域であって、それ故正常な流動条件下で、2つの因数未満、より詳細には、5または10の因数未満のはるかに低い条件でガスが流れるフィルタ壁における範囲を意味する用語として定義される。一部の詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は酸化触媒により形成される。追加的な詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は排ガス成分に反応しない物質から生成される。さらなる詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は、酸化触媒として作用しないが、ガス種に反応する物質でもよい。代替的に、ガス不浸透性領域は、酸化触媒、不活性物質および/または反応性が異なる物質の組み合わせから形成されてもよい。特定の実施形態では、ガス不浸透性領域は、アルミナおよび白金族金属を含む組成から生成される。
【0037】
追加的な実施形態では、ガス不浸透性領域は壁流フィルタの軸長の最大約70%まで延在する。一部の詳細な実施形態のガス不浸透性領域は、フィルタの排気端から始まり、吸気端に向かい延在する。詳細な実施形態では、ガス不浸透性領域は、壁流フィルタの軸長の最大約60%、50%、40%、30%、20%および10%まで延在する。一部の実施形態では、酸化触媒は実質的にガス不浸透性領域における排気通路の壁のみに配置される。ガス不浸透性領域が酸化触媒以外の組成から生成される場合には、酸化触媒は不浸透性組成の全てまたは一部の範囲に存在し得る。追加的に、酸化触媒はガス不浸透性組成におけるより長い軸長の範囲に存在してもよい。
【0038】
一部の特定の実施形態に従えば、触媒品は、排気流から少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%の煤を除去するのに効果的である。他の特定の実施形態では、触媒品は、ディーゼルエンジンが放出する排ガス流から一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、および煤の約80%、85%、90%、95%超、または実質的に全てを除去するのに効果的である。
【0039】
本発明のさらなる実施形態は、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む排気流を処理する触媒品に関連する。触媒品は、軸の全長を延在する第1の範囲、および軸長よりも短い部分を延在する第2の範囲を含む軸長を有する壁流フィルタを備える。第1の範囲は排気流における実質的に全てのNOxを除去するのに効果的であり、第2の範囲はCO、炭化水素、および煤の1つ以上を酸化するのに効果的である。
【0040】
本発明のさらなる実施形態は、希薄燃焼のディーゼルエンジンから出た排ガスを処理するシステムに関する。システムは、エンジンの下流に位置する前述の4サイクル触媒品を備える。本発明の排出処理システムの一実施形態の概略を図4に示す。図4に示すように、(未燃炭化水素、一酸化炭素およびNOxを含む)ガス状汚染物質および粒子状物質を含む排ガスは、前述したように、エンジン41からコネクタ42を通り4サイクル触媒43に運ばれる。排ガスは4サイクル触媒43に移動後、排気管44からシステム外部に排出される。4サイクル触媒43の前に追加の部品が利用されない場合には、コネクタ42は無くともよい。このような実施形態では、4サイクル触媒43はエンジン41に直接連結される。エンジンと4サイクル触媒との間の距離は、いわゆる「密結合」触媒配置となるように極端に短くてもよい。代替的に、エンジンと触媒との距離は「床下」構造となるようにより長くてもよい。
【0041】
詳細な実施形態では、排出処理システムは図4に示すように、触媒の上流に配置された尿素噴射装置をさらに備える。酸化触媒の下流には、この場合は尿素である還元剤がノズル(不図示)を利用して噴霧として排気流に注入される。一方の線48に示す尿素水は、混合ステーション46内で他方の線49から送られた空気と混合し得るアンモニア前駆体として作用し得る。排気流内でアンモニアに変化する尿素水の正確な量を計測するために弁45が用いられ得る。追加のアンモニアを含む排気流は、4サイクル触媒成分43に運ばれる。
【0042】
図4に示す例示の実施形態では、排出処理システムは、前述したように単一の4サイクル触媒品43を含む。システムは尿素噴射装置などの他の部品を含み得るが、単一の触媒成分43のみを含んでもよい。
【0043】
図5に示すように、一部の実施形態の処理システムは、1つ以上の個々の任意の部品47を含む。これらの任意の部品47は、ディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、還元剤噴射装置、空気噴射装置、触媒部分酸化触媒、粒子フィルタ、および選択的な触媒還元触媒の1つ以上を含み得る。NOx除去の所望レベルに応じて、4サイクル触媒43の上流または下流に追加のSCR触媒が配置されてもよい。例えば、追加のSCR触媒は、モノリシック構造、ハニカムの貫流担体、または煤フィルタ下流におけるセラミック発泡体担体において配置されてもよい。これらの実施形態ではさらに、被覆されたSCR煤フィルタの使用により、NOx還元目標を満たすために要求される触媒の全容積をなおも縮小できる。除去する炭化水素の所望レベルに応じて、4サイクル触媒43の上流または下流に追加の酸化触媒を配置してもよい。
【0044】
煤画分およびVOFを含む粒子状物質はさらに、煤フィルタにより大部分(80%超)が除去される。煤フィルタに沈着した粒子状物質は、SCR触媒組成の存在によっても助長されるプロセスであるフィルタの再生時にも燃焼される。煤フィルタに配置された触媒組成が、粒子状物質の煤画分を燃焼する温度をより低くする。さらに、排気流中のNOが、煤が除去される温度を原子状酸素よりも低温にして煤酸化を効果的にする。
【0045】
本発明の1つ以上の実施形態は、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む希薄燃焼のディーゼル排気流を処理する方法に関する。この方法は、前述したように排ガス流が4サイクル触媒品を通過することを含む。詳細な実施形態では、ガス流が4サイクル触媒品を通過する前に、尿素がガス流に注入される。方法およびシステムの代替的な実施形態では、SCR反応に触媒作用を及ぼす他の適切な還元剤が供給されてもよい。このような還元剤はディーゼル燃料などの排ガスに供給されてもよいし、排気流に個別に注入されてもよい炭化水素を含み得る。
【0046】
〔SCR触媒〕
システムに用いられる適切なSCR触媒組成は、低い排気温度に典型的に伴う低負荷状態下でさえも、適正なレベルのNOxを処理できるように、600℃未満の温度でNOx成分を還元するのに効果的な触媒作用を有する。特定の実施形態では、250℃かつ約80000h−1の空間速度において、システムが少なくとも約25%のNOxを変換可能なSCR触媒が選択される。特定の実施形態では、これと同じ条件下でシステムが少なくとも約50%のNOxを変換可能なSCR触媒が選択される。さらに、一部の実施形態に従うシステムに用いられるSCR触媒組成は、粒子状物質の煤画分の燃焼温度を低くすることにより、フィルタの再生を助長できる。組成に関する他の所望の特性には、NHが大気中に放出されないように、任意の過剰なNHを利用してNおよびH0と0との反応に触媒作用を及ぼす能力がある。
【0047】
本発明のシステムに用いられる有用なSCR触媒組成はさらに、650℃超の温度に対する熱抵抗を有する。このような温度は、煤フィルタの再生中に多くの場合に達し得る高い温度である。さらに、1つ以上の実施形態に従うSCR触媒組成が、ディーゼル排気に多くの場合に含まれる組成である硫黄成分にさらされることによる劣化に耐性を有することは言うまでもない。
【0048】
適切なSCR触媒組成は、例えば、米国特許第4961917号(917特許)および同第5516497号に開示されており、この両開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。917特許に開示される組成は、助触媒とゼオライトとの総重量のうちの、重量単位で約0.1〜30%、特に約0.5〜5%の量の、ゼオライト中に含まれる鉄および銅助触媒のいずれかまたは両方を含む。NHを利用したNOxのNへの還元に触媒作用を及ぼす能力に加えて、開示する組成はさらに、0を利用して過剰なNH、特により高い助触媒濃度を有するこれらの組成の酸化を促進できる。
【0049】
このような組成に用いられるゼオライトは硫黄被毒に耐性を有し、SCRプロセスにおいて高い活性レベルを維持し、過剰なアンモニアを酸素と酸化できる。これらのゼオライトは、反応物分子NOおよびNHがその内部において適正に動作し、生成物分子NおよびH0がそこから出るのに十分な大きさの孔を有しており、短期間の硫黄被毒において硫黄酸化物分子が細孔系に生成され、かつ/または長期間の硫黄被毒において硫酸が沈着する。適切な大きさの細孔系は、結晶寸法の三次元全てにおいて相互接続する。ゼオライト分野の当業者に公知のように、ゼオライトの結晶構造はおおよそ一定の間隔で接続点、交点などが繰り返される複雑な細孔構造である。所定の寸法の直径または断面構造などの特定の特性を有する孔は、これらの孔が他の類似する孔と交わらない場合には、一次元の孔であると称される。孔が他の類似する孔と所定の面のみで交わる場合には、その孔の特性は(結晶学的に)二次元で相互接続すると称される。孔が同一面と他の面との両方に位置する他の類似する孔と交わる場合には、このような孔は三次元(「すなわち、立体」)で相互接続すると称される。硫酸毒に強い耐性を示し、SCRプロセスと酸素によるアンモニアの酸化との両方に良好な活性をもたらし、高温、熱水条件および硫酸毒を受けても良好な活性を維持するゼオライトが、少なくとも約7オングストロームの孔径を有し、三次元において相互接続する孔を有することが発見された。任意の特定の理論による制限を望まなくても、少なくとも7オングストロームの直径を有する孔の三次元における相互接続が、ゼオライト構造の至るところに存在する硫酸分子に良好な移動性を与えることにより、硫酸分子が触媒から解放され、NOx分子とNH分子との反応剤、およびNH分子と0分子との反応剤が利用可能な多くの吸着場所を開放可能であることが明らかになっている。前述の基準を満たす任意のゼオライトが、本発明の1つ以上の実施形態の実行に適切に用いられ、これらの基準を満たす特定のゼオライトはUSY、BetaおよびZSM−20である。前述の基準を満たす他のゼオライトを用いてもよい。
【0050】
このようなSCR触媒組成が壁流フィルタ担体に沈着する場合には、少なくとも0.8g/inの濃度で沈着するため、所望のNOx還元および微粒子除去レベルが確実に達成され、長期使用においても触媒の適正な耐久性が維持される。詳細な実施形態では、SCR組成は少なくとも1.0g/inであり、特に1.0〜2.0g/inで壁流フィルタに配置される。
【0051】
〔担体〕
本発明の実施形態に適切に用いられる壁流担体は、担体の縦軸に沿って延在する複数の微細な、略平行のガス流通路を有する。典型的には、各通路は担体本体の片側の端部において阻止される。代替的には、通路は反対側の端面において阻止される。このようなモノリシック構造のキャリアは、断面において平方インチごとに最大約400以上の流路(または「気泡」)を有し得る。ただし、流路ははるかに少なくてもよい。例えば、キャリアは平方インチごとに約100〜400、より一般的には約200〜300の気泡(「cpsi」)を有してもよい。気泡の断面は長方形、正方形、円形または他の多角形でもよい。通常、壁流担体の壁厚は0.01〜0.03インチの範囲である。特定の壁流担体の壁厚は0.012〜0.015インチの範囲である。
【0052】
一部の適切な壁流フィルタ担体は、コージライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、多孔質物質、または耐熱金属などのセラミック類の物質から形成される。壁流担体はセラミック繊維の複合材料から形成されてもよい。特に、有用な壁流担体は、コージライトおよび炭化ケイ素から生成された物質を含む。このような物質は、特に排気流の処理中の高温環境に耐性を有する。
【0053】
本発明のシステムに用いられる他の適切な壁流担体は、触媒品全体に加えられる背圧または圧力を過剰に増大することなく流体ガス流が通り抜ける、薄い多孔質の壁のある1つ以上のハニカム(モノリス)構造を含む。システムに用いられるセラミック壁流担体は、特定の実施形態では、平均細孔径が少なくとも5ミクロン(例えば、5〜30ミクロン)であり、空隙率が少なくとも50%(例えば、50〜85%)である物質から形成される。さらなる特定の実施形態では、担体の空隙率は少なくとも55%であり、平均細孔径は少なくとも15ミクロンである。これらの空隙率および平均細孔径を有する担体が下記の技術により被覆されると、適正レベルのSCR触媒組成が担体に含有され、優れたNOx変換効率が達成され得る。これらの担体はSCR触媒を含有するか否かに関わらず、適正な排気流特性、すなわち許容範囲にある背圧をなおも維持し得る。米国特許第4329162号には、適切な壁流担体が開示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
商業的に利用される典型的な壁流フィルタは、通常、本発明の実施形態に利用される壁流フィルタよりも低い空隙率、例えば、約35%〜50%の壁で形成されている。一般に、市販の壁流フィルタの細孔径分布は非常に広範囲であり、通常、その平均細孔径は17ミクロンよりも小さい。
【0055】
SCR触媒組成により壁流担体を被覆するために、担体はその上面がスラリ表面の真上に位置するように、液体中の固体粒子の触媒スラリの一部に垂直に浸される。サンプルは約30秒間スラリに浸した。スラリからの担体の除去は、まず、それをチャネルから流出させて、次に、(スラリが浸透する方向とは反対方向に)圧縮空気を吹き付けることにより、壁流担体から過剰なスラリを除去する。この技術を用いることにより、触媒スラリは担体の壁に浸透するが、過剰な背圧が完成した担体に影響を与える程度には孔は塞がれない。本明細書に用いる用語「浸透する」は、担体における触媒スラリの分散の記述に用いられる場合には、触媒組成が担体の壁の至るところに分散していることを意味する。
【0056】
通常、約100℃で被覆担体を乾燥し、その後より高温(例えば、300〜450℃)で焼成する。焼成後、担体の被覆されたおよび被覆されていない重量の計算により触媒の含有量を決定し得る。当業者に明らかなように、被覆スラリの固形分を変更することにより、触媒の含有量は修正され得る。代替的に、前述の過剰なスラリの除去後に、被覆スラリ内の担体を繰り返し浸してもよい。
【0057】
〔尿素噴射装置〕
還元剤投与システムとも呼ばれる尿素噴射装置が4サイクル触媒の上流に配置され、排気流にNOx還元剤を注入する。米国特許第4963332号に開示されているように、触媒コンバータの上流および下流のNOxが検知され、上流および下流シグナルにより、パルスの投与弁が制御され得る。代替的な構造である米国特許第5522218号に開示されているシステムでは、還元剤噴射装置のパルス幅は、排気温度とエンジンの毎分回転数、伝動装置およびエンジン速度などのエンジンの運転条件との関数により制御される。米国特許第6415602号に開示されている還元剤パルス計測システムの記述も参照され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本発明は図4に示す尿素水計測配置に限定されない。ガス窒素基の反応物の利用が考慮される。例えば、尿素またはシアヌル酸小球の噴射装置が、排ガスに加熱された室における尿素の固体ペレットを計測し、固体還元剤を(約300〜400℃の昇華温度領域で)気化し得る。シアヌル酸はイソシアン酸(HNCO)に気化し、尿素はアンモニアおよびHNCOに気化する。いずれの還元剤を用いても、室内および室内で計測された(十分な水蒸気を含む)排ガスの後流に加水分解触媒が供給され得、HNCOを(約150〜350℃の温度で)加水分解し、アンモニアを生成できる。
【0059】
尿素およびシアヌル酸に加えて、本発明の実施形態に従う制御システムに特に適切に用いられる窒素基を減少する他の反応物または還元剤には、アメライド、アンメリン、シアン酸アンモニウム、ビウレット、シアヌル酸、カルバミン酸アンモニウム、メラミン、トリシアノ尿素、およびこれらの任意の数の混合物が含まれる。ただし、より広い意味での本発明は窒素基還元剤に限定されず、アルコール、エーテル、有機窒素化合物など(例えば、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルなど)を含む留出燃料、およびグアニジン、メチルアミン炭酸塩、ヘキサメチルアミンなどを含む種々のアミンおよびそれらの塩(特に、それらの炭酸塩)などの炭化水素を含む任意の還元剤を含み得る。炭化水素還元剤はさらに、SCR反応に触媒作用を及ぼすのに十分な量の炭化水素を含み得る。炭化水素還元剤は個々の供給物質から生成されてもよいし、排ガスの一部としてSCR反応を引き起こす触媒成分に流入されてもよい。
【0060】
〔酸化触媒〕
酸化触媒は未燃ガスおよび不揮発性炭化水素(すなわち、VOF)並びに一酸化炭素を効果的に燃焼する任意の組成から生成され得る。排出処理システムに用いられ得る1つの特定の酸化触媒組成は、高表面積に分散する白金族成分(例えば、白金、パラジウムまたはロジウム成分)、ゼオライト成分(例えば、ベータゼオライト)と混合され得る耐火性酸化物担体(例えば、γ−アルミナ)を含む。特定の実施形態では、白金族金属成分は白金である。貫流ハニカム担体などの耐火性酸化物担体が含まれる組成では、白金濃度は、通常、約10〜120g/ftである。
【0061】
酸化触媒の生成に適切に用いられる白金族金属基組成は、米国特許第5100632(632特許)号にも開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。632特許は白金、パラジウム、ロジウム、およびルテニウムの混合物、並びに白金族金属とアルカリ土類金属との原子比率が約1対250〜約1対1、より詳細には約1対60〜約1対6である酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、または酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化膜を有する組成が記述されている。
【0062】
酸化触媒に適切に用いられる触媒組成は、触媒として卑金属を用いても形成され得る。例えば、(その開示が参照により本明細書に組み込まれる)米国特許第5491120号は、BET表面積が少なくとも約10m/gであり、基本的にチタニア、ジルコニア、セリアジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、およびa−アルミナの1つ以上でもよいバルク第2金属酸化物から成る触媒材料を含む酸化触媒組成が開示されている。
【0063】
(その開示が参照により本明細書に組み込まれる907特許である)米国特許第5462907号に開示されている触媒組成もまた有用である。907特許は、その各々の表面積が少なくとも約10m/gであり、互いの重量比が例えば約1.5対1〜1対1.5であるセリアおよび活性アルミナを含有する触媒材料を含む組成を示している。選択的に、907特許に記述する組成には、COおよび未燃炭化水素の気相酸化を効果的に促進するが、SOのS0への過酸化を妨げるようには制限されない量の白金が含まれてもよい。代替的に、任意の所望の量のパラジウムが触媒材料に含まれてもよい。
【0064】
以下の例は本発明をさらに説明するが、当然ながら、本発明の範囲を多少でも限定するようには解釈されない。実施例1はフィルタ上のSCRにおいてPdアルミナを含む4サイクル触媒のサンプルを合成した例である。
【0065】
直径1インチ、全長3インチであり、塞がれ、皮で覆われ、壁の空隙率が約65%であるコージライト壁流フィルタのサンプル1をSCR触媒により被覆した。触媒はCu CHAゼオライトを用いた。水と混合したゼオライトのスラリに30秒間浸して、フィルタの壁内に加え、残りのスラリをフィルタから外へ圧縮空気を利用して吹き付けることにより除去および流出した。触媒が加えられたフィルタを乾燥して、450℃で1時間焼成した。結果生じた触媒含有量は1.3g/inであった。高表面積アルミナに分散したPd硝酸塩を用いて第2のスラリに含ませた。DI水を用いてスラリを約23%の固体に希釈し、次に、排気端から1インチの距離のフィルタをディッピングして、Pdアルミナスラリを用いてSCR含有フィルタを被覆した。スラリを排気端から流出し、残りの過剰な物質を吸気端からフィルタの外へ圧縮空気を利用して吹き付けた。結果生じたPd含有量は10g/ft(/領域ft)であった。フィルタを再度乾燥し、450℃で1時間焼成した。実施例2は酸化領域を被覆しない、フィルタ上のSCR合成の比較例である。
【0066】
実施例1に概要を説明した被覆技術を用いて、全長が1インチ、直径が3インチである、塞がれ、皮で覆われ、壁の空隙率が約59%であるコージライト壁流フィルタをSCR触媒により被覆した。触媒はCu CHAゼオライトを用いた。含有量は1.14g/inであった。450℃で焼成した後、さらなる被覆または処理を実行しなかった。実施例3は4サイクル触媒の反応試験である。
【0067】
実施例1で下処理したサンプルを、以下の混合物、すなわち各々が500ppmのNOおよびNH、50ppmのC、100ppmのCO、8%のCO、5%のHO、およびそれに釣り合うNの反応ガスを供給することにより、SCRと酸化活性との反応を同時に試験した。ガス流を吸気側から排気側に送り被覆した。フィルタコアの空間速度は17500hr−1であった。NOおよびNOに加えて吸気ガスの排気口濃度をFTIR測定する前に、ガス流下方の各試験温度を電気波により上昇させ、少なくとも15分間均衡化することにより、200〜450℃の範囲の温度でサンプルを試験した。表1は測定した排気口濃度と、計算した物質変換とを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
反応試験結果は、触媒がCOおよびCを250℃で完全に変換可能であり、過剰なNOまたはNOを生成することなく、同時にNHを利用してNOを変換できることを示している。実施例4は4サイクル触媒を反対方向に流した反応試験である。
【0070】
実施例1のサンプル、および実施例3の試験プロトコルを用いて、4サイクル触媒サンプルの流れ方向を逆にした。すなわち、排気端から吸気端に流した。表2は、逆流構造における(この実施例では吸気端において測定した)排気口における濃度および計算した物質変換を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2のデータは、逆構造の動作では、300℃超におけるサンプルが、NHは完全に物質変換したが、NOの全ては変換しなかったことを示す。さらに、300℃超で生成されるNOおよびNOは顕著に増大している。それ故、SCR触媒の逆れ方向が逆転すると明確に機能が劣ることが示された。COおよびCの物質変換は、300℃超の温度では定量的となったが、点火温度は正常の流れ方向よりも高いため、逆流構造では酸化触媒の機能も劣ることが示された。実施例5はフィルタ触媒における比較SCRの反応試験である。
【0073】
実施例2のサンプルおよび実施例3の反応プロトコルの比較SCRのみを用いて、SCRと酸化触媒との混合物の機能を示す試験が実行された。表3は排気口の濃度と計算した物質変換とを示す。
【0074】
【表3】

【0075】
過剰なNOまたはNOを生成することなく、SCR触媒はNOの変換を良好に実行した。しかしながら、350℃未満のC変換と同様に、CO変換率は非常に低かった。それ故、SCR触媒は、それ単独では酸化能力が不十分なため、4サイクル触媒として適正ではなかった。
【0076】
本発明を詳細な、特定のかつ好ましい実施形態に重点を置いて記述したが、装置および方法の変更がなされ得ることが当業者に明らかであり、本発明が、特に本明細書に記載されたのとは異なる方法で実行され得ることが意図される。従って本発明は、以下の請求項に定義される本発明の精神および範囲内の全ての変更を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を境界付けおよび画定する縦方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する前記通路を有する壁流フィルタを備えている触媒品であって、
前記通路が、
前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路と、
前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路と、
前記孔壁に配置されたSCR触媒組成と、
前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも短い長さである前記排気通路の壁に配置された酸化触媒と、を備えていることを特徴とする触媒品。
【請求項2】
前記排気端から始まり、前記壁流フィルタの軸長に沿って一部が延在するガス不浸透性領域をさらに備えている請求項1に記載の触媒品。
【請求項3】
前記ガス不浸透性領域は前記酸化触媒により形成されている請求項2に記載の触媒品。
【請求項4】
前記ガス不浸透性領域は、アルミナおよび白金族金属を含む組成から形成されている請求項2に記載の触媒品。
【請求項5】
前記SCR触媒は前記孔壁に均一に浸透する請求項1に記載の触媒品。
【請求項6】
前記酸化触媒は前記ガス不浸透性領域における前記排気通路の前記壁のみに実質的に配置されている請求項2に記載の触媒品。
【請求項7】
ディーゼルエンジンから出て、通路を境界付けおよび画定する縦方向に延在する孔壁と、吸気端と排気端との間を延在する軸長とにより形成された複数の縦方向に延在する前記通路を有する壁流フィルタを通って流れる排ガスを含有する、CO、炭化水素、NOx、および煤を含む希薄燃焼のディーゼル排気流を処理する方法であって、
前記通路が、前記吸気端において開かれており、前記排気端において閉じられている吸気通路と、前記吸気端において閉じられており、前記排気端において開かれている排気通路と、を備えており、
前記排ガス流は前記孔壁内に配置されたSCR触媒組成と接触し、その後、前記排気端から延在し、前記壁流フィルタの軸長よりも小さい長さの前記排気通路の壁に配置された酸化触媒と接触することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記壁流フィルタの軸長に沿って前記排気端から延在するガス不浸透性領域を備えている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エンジンの下流に位置する請求項1に記載の前記触媒品を含む、希薄燃焼のディーゼルエンジンから出た排ガスを処理するシステム。
【請求項10】
前記触媒の上流に配置された尿素噴射装置をさらに備えている請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506787(P2013−506787A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532383(P2012−532383)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051261
【国際公開番号】WO2011/041769
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】