説明

5−リポキシゲナーゼ阻害剤

【課題】 食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野において好適に使用できる5−リポキシゲナーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする5−リポキシゲナーゼ阻害剤。


(式(1)中のR1は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHであり、Zは−CO−CH=CH−等、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等の分野で好適に使用可能な5−リポキシゲナーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の様々の組織に存在し、細胞膜を構成する不飽和脂肪酸のアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ又はリポキシゲナーゼが関与する代謝酵素によって、それぞれプロスタグランジンやロイコトリエン(LT)などの代謝産物を生成する。
【0003】
リポキシゲナーゼ類には5−リポキシゲナーゼ、8−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼ、及び15−リポキシゲナーゼなど複数のリポキシゲナーゼの存在が確認されており、例えば炎症性疾患やアレルギー性疾患では5−リポキシゲナーゼが主に関与する。その代謝過程としては、5−リポキシゲナーゼがサイトカインなどの刺激によって酵素活性を発現し、基質であるアラキドン酸の5位を酸化し、5−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)を生成する。この5−HPETEから、LTA4が生成し、次いでLTB4又はLTC4が生成する。さらにLTC4からはLTD4及びLTE4が生成する。
【0004】
LTの薬理作用は、気道抵抗上昇作用や気管粘膜分泌促進作用、その他炎症反応系では、血管透過性亢進作用や白血球遊走作用などの様々な作用を持っている(非特許文献1〜3)。例えば、LTC4、LTD4、LTE4などからなるアナフィラキシー緩反応性物質(slow reacting substance of anaphylaxis,略号SRS-A)は、気管支喘息やアナフィラキシーなどのアレルギー性疾患の発現に関与しているといわれる。またLTB4は、低濃度で白血球に対して脱顆粒、血管透過亢進、遊走亢進、カルシウム輸送等を起こす生物活性が知られている。これらLTB4の作用は、例えばリューマチ、脊椎関節炎、痛風、乾癬、潰瘍性大腸炎、呼吸器疾患などの原因と考えられている(特許文献1)。
【0005】
このように5−リポキシゲナーゼは関節炎、乾癬、アレルギー、喘息及び炎症の媒介物の生合成に重要な役割を演じており、5−リポキシゲナーゼの活性を阻止或いは抑制する薬剤は、これらのロイコトリエン由来の疾病の治療に有用であることが知られている。
また、動脈硬化では従来12−あるいは15−リポキシゲナーゼが関与すると言われていたが、最近、動脈硬化巣に存在するリポキシゲナーゼは、5−リポキシゲナーゼが大部分であることが報告され、5−リポキシゲナーゼの阻害により炎症と動脈硬化が抑制できる可能性が示唆されている(非特許文献4及び5)。
【0006】
5−リポキシゲナーゼに対して阻害作用を示す物質の具体例としては、AA−861(特許文献2)、ノルジヒドログアイアレチン酸(非特許文献6)、ヒドロキサム酸(特許文献3及び4)、カフェ酸などがあげられる。
【0007】
一方、ショウガオールやジンゲロールは、生姜抽出物の主要成分であり、例えば、血行促進作用(特許文献5)、体臭抑制効果(特許文献6)、抗酸化効果(非特許文献7)、保湿効果(非特許文献8)、プロスタグランジン産生阻害作用(非特許文献9〜11)を有することが知られている。また、ショウガオールやジンゲロールの生体内での代謝経路も研究されており、代謝産物の構造も報告されている(非特許文献12及び13)。
本発明者らは、すでに、ショウガオールを大量生産する製造方法について報告している(特許文献8)。またショウガオールと類似構造の化合物について、チロシナーゼ活性阻害作用及び抗酸化作用をも見出している(特許文献7及び8)。さらには、ショウガオール及びジンゲロールの水溶性の乏しさを改善した、その類縁化合物についても、チロシナーゼ活性阻害作用及び抗酸化作用を見出している(特許文献9)。
【0008】
【特許文献1】特開平8−143529号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許第4393075号明細書
【特許文献3】米国特許第4608390号明細書
【特許文献4】米国特許第4623661号明細書
【特許文献5】特開平6−183959号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】米国特許6264928号明細書
【特許文献7】特開2003−327574号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特願2003−086818号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】国際公開第WO2004/085373号(請求の範囲)
【非特許文献1】Adams G. K., Lichtenstein L. M., J. Immunol., 122, 555-562(1979)
【非特許文献2】Watanabe-Kohno S., Yasui K. et. al., Jpn. J. Pharmacol., 60, 209-216(1992)
【非特許文献3】Coles s S. J., Neill K. H. et. al., Prostaglandins, 25, 155-170(1983)
【非特許文献4】Lotzer K.,Habenicht A. J.,Arterioscler Thromb Vasc Biol.,23,E32-36(2003)
【非特許文献5】Spanbroek R.,Grabner R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,100,1238-1243(2003)
【非特許文献6】Corey, E. J. et. al., J. Am. Chem. Soc., 106, 1503(1984)
【非特許文献7】Kikuzaki,H.et al.,J.Food Sci.,58,6,1407-1410(1993)
【非特許文献8】鈴木正人 監修、「新しい化粧品機能素材300 上巻」、311−312頁、シーエムシー出版(2002)
【非特許文献9】Kiuchi, F., Shibuya, M., Sankawa, U., Chem. Pharm. Bull., 30, 754(1982)
【非特許文献10】三川潮、医学のあゆみ、126、867−874(1983)
【非特許文献11】末川守他7名、日薬理誌、88、263−269(1986)
【非特許文献12】Takahashi,H.et al.,Phytochemistry,34,1497-1500(1993)
【非特許文献13】Lee,S.S.,Arch.Pharm.Res.,18,136-137(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述のような状況をふまえ、食品、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野で有用な5−リポキシゲナーゼ阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記一般式(1)で示される化合物が優れた5−リポキシゲナーゼ阻害効果を有していることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)中のR1は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHであり、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CO−CH2CH2−、−CHOH−CH2CH2−、−CO−CH2CHOH−、−CHOH−CH2CHOH−、−CO−CH2CHOR4−、−CHOH−CH2CHOR4−、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。
【0013】
式(1)における低級アルキル基とは炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。また、式(1)における−CHOH−1,2−エポキシ−とは、下記式(2)で表されるものである。
【0014】
【化2】

【0015】
式(1)におけるケタール誘導体とは、非環状ケタールまたは環状ケタールであり、好ましくは環状ケタールである。この環状ケタールとしては、カルボニル基に対してエチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールから得られるものが挙げられる。
【0016】
○一般式(1)で表わされる化合物について
一般式(1)においてR1は水素原子、低級アルキル基である。R1のフェノール性水酸基の保護基としては、保護基の導入および除去が容易であることが好ましく、シリル型保護基、アシル型保護基、ベンジル型保護基、エーテル型保護基等が例示される。具体的には、t−ブチルジメチルシリル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基が好適である。
一般式(1)において、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基またはブチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
一般式(1)において、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜9のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。
【0017】
一般式(1)において、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHである。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、ベンジル基が好適である。さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
一般式(1)において、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CO−CH2CH2−、−CHOH−CH2CH2−、−CO−CH2CHOH−、−CHOH−CH2CHOH−、−CO−CH2CHOR5−、−CHOH−CH2CHOR4−、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。
【0018】
一般式(1)で表わされる化合物は、例えば国際公開WO2004/085373号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0019】
一般式(1)で表わされる化合物のなかには、一つ、もしくは二つの不斉炭素を有する化合物がある。これらは通常ラセミ混合物として得られるが、必要に応じて不斉合成にて一方の光学活性体のみを合成する方法や、もしくは光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフィー等の方法により、一方の光学活性体のみを分離して使用することも可能である。
【0020】
一般式(1)で表わされる化合物は、後記の実施例からも明らかなように、5−リポキシゲナーゼ阻害作用を有することから、食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の処方に配合して使用することができる。
【0021】
医薬品として用いる場合は、本発明の化合物を単独か或いは製薬上受け入れられる腑形剤又は担体や他の添加剤と共に各種の製剤形態に調合され使用される。その割合および性質は選ばれる化合物の溶解度及び化学的性質、選ばれた投与経路、及び標準の製剤学的慣用法によって決定される。腑形剤又は担体は固体、半固体、又は液体物質であることができ、これらは活性成分のビヒクル又は担体としての役目をすることができる。適当な腑形剤又は担体は製剤学の分野で一般的なものである。製剤組成物は経口又は非経口の使用のために適合化することができ、錠剤、カプセル、坐薬、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与することができる。
【0022】
製剤組成物は経口的、例えば不活性希釈剤または食べることのできる担体と共に投与できる。これらはゼラチンカプセル中に包むか又は錠剤に圧縮することができる。経口投与を行うためには、本発明の化合物は腑形剤と共に混入させることができ、錠剤、トローチ、カプセル、エルキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの形態で使用できる。錠剤、トローチ、カプセルなどは一つ又はそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは、結合剤、(例えば微結晶セルロース、トラガカントゴム、ゼラチン)、腑形剤(例えば、澱粉、乳糖)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プライモゲル、コーンスターチ)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステロテックス)、滑剤(例えば、コロイド状二酸化シリコン)、甘味剤(例えば、ショ糖、サッカリン)、及び香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー)などである。投与単位形がカプセルであるときには上記の種類の物質に加えて液体担体(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪族油)を含有させることができる。他の投与単位系は投与単位の物理的形態を変更する他の物質(例えば、コーティング)を含有させることができる。このように錠剤又は坐薬は、糖、シェラック又は他の腸溶皮剤で被覆することができる。シロップは活性成分のほか、甘味剤としてショ糖及びある種の防腐剤、染料及び着色及び香味剤を含有させることができる。
【0023】
非経口投与を行うためには、本発明の化合物は溶液又は懸濁液中に混入できる。溶液又は懸濁液は一つまたはそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは滅菌希釈剤(例えば、注射用水、塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール、他の合成溶媒)、抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラペン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩)、及び毒性を調製するための薬剤(例えば、塩化ナトリウム、デキストロース)などである。非経口製剤はアンプル、使い捨て注射、またはガラス又はプラスチック製の複数投与のバイアル中に封入することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、Tsはp−トルエンスルホニル基を示す。
【0025】
<合成例1>
化合物1を出発物質とし、化合物2、化合物3を経由して、化合物5を調製した。
【0026】
[化合物1]
【化3】

【0027】
[化合物2]
【化4】

【0028】
[化合物3]
【化5】

【0029】
〔1〕はじめに、6−ブロモヘキサン酸エチルの6−ヨードヘキサン酸エチルへの変換反応を行った。
すなわち、250mlのアセトンに39.1g(175mmol)の6−ブロモヘキサン酸エチルを溶解し、29.1g(175mmol)のヨウ化カリウムを加えて、20時間にわたって加熱還流した。つぎに、反応溶液を室温まで放冷した後、溶媒を留去し、残渣を150mlの酢酸エチルエステルで抽出した。得られた有機層を蒸留水50mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、減圧乾燥することにより、47.4gの粗生成物を得た。1H−NMR分析を行った結果、本粗生成物はモル分率で90%の6−ヨードヘキサン酸エチルを含有することがわかった。本粗生成物をそのまま次工程に使用した。
つぎに、450mlのテトラヒドロフランに30.5g(155mmol)の化合物1を溶かした溶液を、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.56Mのn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液100ml(156mmol)を滴下した。そして同温度で45分間攪拌後、上述のごとく調製した6−ヨードヘキサン酸エチルの粗生成物を50mlのテトラヒドロフランに溶かした溶液を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−10℃になったところで、50mlの5%クエン酸水溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に、100mlの10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、150mlの飽和食塩水および50mlの酢酸エチルエステルを加えて分配した。有機層を分取し、水層を50mlの酢酸エチルエステルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の低粘度液状の化合物49.5g(収率94%)を得た。
【0030】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.70(9H,m)、2.03-2.15(2H,m)、2.23-2.35(2H,m)、2.44(3H,s)、3.43-3.55(1H,m)、4.11(2H,q)、5.04(1H,d)、5.25-5.35(1H,m)、5.53-5.68(1H,m)、7.32 (2H,d)、7.70(2H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,2860,1730,1600,1300,1290, 1180,1140, 940, 670であった。さらに、元素分析の結果は、炭素64.09%、水素7.87%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物2であることを確認した。
【0031】
〔2〕つぎに、化合物2から化合物3への変換を行った。
49.5g(146mmol)の化合物2を360mlのテトラヒドロフランおよび120mlのメタノールに溶かし、3.38g(2.92mmol)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加えた。この反応溶液を16時間にわたって加熱還流した。つぎに、反応溶液を室温まで放冷した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡褐色の低粘度液状の化合物47.1g(95%)を得た。下記に示した1H−NMR分析、赤外線吸収スペクトル分析、および、元素分析の結果、本品は、モル分率で73%の化合物3を含有し、残りの27%は化合物3中の炭素−炭素二重結合がシス型に配置した幾何異性体であることを確認した。
【0032】
化合物3の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.33(7H,m)、1.50-1.60(2H,m)、1.99(2H,t)、2.20-2.30(2H,m)、2.45(3H,s)、3.73(2H,d)、4.08-4.15(2H,q)、5.35-5.55(2H,m)、7.34(2H,d)、7.72 (2H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,2860,1730,1600,1320,1150,1090,1030,820,740であった。さらに、元素分析の結果は、炭素64.03%、水素7.57%であった。
【0033】
<合成例2>
合成例1で得られた化合物3および化合物4を原料とし、化合物5を調製した。
【0034】
[化合物4]
【化6】

【0035】
[化合物5]
【化7】

【0036】
11.9g(35.2mmol)の化合物3を100mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液を、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.40Mのt−ブチルリチウム/ヘプタン溶液26.0ml(36.4mmol)を滴下した。そして同温度で10分間攪拌後、9.00g(34.0mmol)の化合物4を50mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液を加えた。滴下後、同温度で5分間攪拌後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−5℃になったところで、30mlの10%クエン酸水溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に、60mlの飽和食塩水を加えて分配した。有機層を分取し、水層を50mlの酢酸エチルエステルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の中粘度液状の化合物6.03g(収率29%)を得た。
【0037】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.17-2.30(24H,m),2.45(3H,s),2.56-2.92(2H,m),3.15-4.58(8H,m),4.95-5.83(2H,m),6.65-6.94(3H,m),7.29-7.38(2H,m),7.63-7.77(2H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3510, 2970,2940,2860,1750,1730,1600,1510,1280,1200,1120,1030,670であった。さらに、元素分析の結果は、炭素65.51%、水素7.45%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物5であることを確認した。
【0038】
<合成例3>
合成例2で得た化合物5を原料として、化合物6を調製した。
【0039】
[化合物6]
【化8】

【0040】
6.00g(9.95mmol)の化合物5を60gの1,2−ジクロロエタン、および、15gのメタノールに溶解した溶液に、2.10ml(15.1mmol)のトリエチルアミン、130mg(0.496mmol)のトリフェニルホスフィン、および575mg(0.498mmol)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加えて、バス温100℃で16時間攪拌した。放冷、濃縮後、50mlの飽和食塩水、および、50mlの酢酸エチルエステルを加えて分配した。有機層を分取し、10mlの飽和食塩水で洗浄した。合わせた水層を30mlの酢酸エチルエステルで抽出した。合せた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の中粘度液状の化合物936mg(収率21%)を得た。
【0041】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.25(3H,t),1.29-1.52(15H,m),1.57-1.68(2H,m),2.16-2.33(4H,m),2.82-2.96(4H,m),3.80(3H,s),4.13(2H,q)、6.10(1H,d),6.70-6.94(4H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2970, 2930,2860,1750,1740,1670,1630,1610,1510,1270,1200,1120,1040であった。さらに、元素分析の結果は、炭素70.17%、水素8.80%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物6であることを確認した。
【0042】
<合成例4>
化合物3および化合物7を原料とし、化合物8を調製した。
【0043】
[化合物7]
【化9】

【0044】
[化合物8]
【化10】

【0045】
合成例2の方法に従い1.19g(3.52mmol)の化合物3および851mg(3.40mmol)の化合物7から、淡黄色の中粘度液状の化合物として663mg(収率32%)の化合物8を得た。
化合物8の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.22-1.60(18H,m),1.99-2.2.45(4H,m),2.78(3H,s),2.77-2.84(2H,m), 2.94(1H,t),3.71-3.80(4H,m),4.12(2H,q),5.37-5.5.43(1H,m),5.47-5.53(1H,m), 6.74-6.94(3H,m),7.30-7.35(2H,m),7.72-7.77(2H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3510,2970,2940, 2860,1750,1730,1600,1510,1280,1200,1120,1030,670であった。さらに、元素分析の結果は、炭素65.28%、水素7.53%であった。
【0046】
<合成例5>
合成例4で得た化合物8を原料として、化合物9を調製した。
【0047】
[化合物9]
【化11】

【0048】
合成例3の方法に従い6g(9.95mmol)の化合物8から、淡黄色の中粘度液状の化合物として936mg(収率21%)の化合物9を得た。
化合物9の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.73(17H,m),2.18-2.31(4H,m),2.79-2.93(5H,m),3.79(3H,s), 4.12(2H,q),6.09(1H,d),6.75-6.83(3H,m),6.91(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2979、1760、1732、1668、1603、1512、1468、1369、1267、1150、1127、1038であった。さらに、元素分析の結果は、炭素69.42%、水素8.39%であった。
【0049】
<合成例6>
化合物3および化合物10を原料とし、化合物11を調製した。
【0050】
[化合物10]
【化12】

【0051】
[化合物11]
【化13】

【0052】
すなわち、化合物3の49.1g(145mmol)およびトリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン4.70ml(14.7mmol)をテトラヒドロフラン300mlに溶解した溶液に、−78℃で1.0Mのリチウムヘキサメチルジシラザン/テトラヒドロフラン溶液145mlを滴下した。同温で60分間攪拌後、化合物10の32.6g(145mmol)を加えた。同温で5分間攪拌後、徐々に昇温した。−10℃で、20%クエン酸水溶液100mlを加えて反応を停止した。
ついで、飽和食塩水300mlを加え、分配後、有機層を分取した。水層を酢酸エチル100mlで抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、淡黄色中粘度液状の化合物60.1g(74%)を得た。
【0053】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.05-1.32(7H,m),1.40-1.72(4H,m),1.78-2.00(2H,m),2.18-2.31(2H,m), 2.45(3H,s),2.53-2.85(2H,m),3.10-3.38(1H,m), 3.51(3H,s),3.86 (3H,s), 4.13 (2H,q),4.22-4.60 (1H, m), 5.03-5.78 (4H, m), 6.61-6.75(2H,m),7.00-7.09 (1H,m),7.29-7.38(2H,m),7.64-7.73(2H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3520、2940、1730、1600、1510、1290、1140、1080、1000であった。さらに、元素分析の結果は、炭素64.03%、水素7.54%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物11であることを確認した。
【0054】
<合成例7>
合成例6で得た化合物11を原料として、化合物12を調製した。
【0055】
[化合物12]
【化14】

【0056】
合成例3の方法に従い16.0g(28.4mmol)の化合物11から、淡黄色の中粘度液状の化合物として5.64g(51%)の化合物12を得た。
【0057】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.27(3H,t),1.30-1.40(4H,m),1.42-1.52(2H,m),1.58-1.68(2H,m),2.20 (2H,dd),2.29(2H,t),2.82-2.93(4H,m),3.51(3H,s),3.87(3H,s), 4.13(2H,q), 5.12(2H,s),6.10(1H,d),6.66-6.86(3H,m),7.06(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930、1730、1670、1630、1510、1370、1260、1160、990であった。さらに、元素分析の結果は、炭素67.96%、水素8.43%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物12であることを確認した。
【0058】
<合成例8>
合成例7で得た化合物12を原料として、化合物13を調製した。
【0059】
[化合物13]
【0060】
【化15】

【0061】
すなわち、化合物12の7.73g(20.0mmol)をテトラヒドロフラン50mlに溶解した溶液に、1N塩酸5mlを加えて攪拌した。55℃で5時間後、1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを加えて中和した。飽和食塩水20mlを加えて分配し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し淡黄色中粘度液状の化合物2.64g(36%)を得た。
【0062】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.25(3H,t),1.30-1.38(4H,m),1.40-1.50(2H,m),1.58-1.68(2H,m),2.16-2.24(2H,m),2.29(2H,t),2.79-2.90(4H,m),3.87(3H,s),4.12(2H,q),5.52(1H,s), 6.08(1H,d),6.65-6.73(2H,m),6.75-6.85(2H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3440、2940、1730、1670、1630、1520、1370、1270、1200、1030、980.であった。さらに、元素分析の結果は、炭素69.59%、水素8.34%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物13であることを確認した。
【0063】
<合成例9>
合成例5で得た化合物9をケタール化し、化合物14を得た。
【0064】
[化合物14]
【化16】

【0065】
本反応は窒素雰囲気下で行った。11μl(0.0614mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、および0.9ml(3.69mmol)の1,2−ビストリメチルシロキシエタンを6mlのジクロロメタンに溶解した溶液に、氷冷下133mg(0.307mmol)の化合物9を1mlのジクロロメタンに溶解した溶液を滴下した。50分間攪拌後、反応混合物にトリエチルアミンを加え反応を停止させた。次に5mlの飽和重曹水および5mlのクロロホルムを加え分配した。有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物114mg(78%)を得た。
【0066】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.64(17H,m),1.98-2.06(4H,m),2.28(2H,t),2.67-2.71(2H,m),2.80-2.84(1H,m),3.79(3H,s),3.91-3.98(4H,m),4.12(2H,q),5.38(1H,d),5.81(1H,dt), 6.74-6.78(2H,m),6.89(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2924、1758、1737、1608、1510、1466、1420、1127、1042であった。さらに、元素分析の結果は、炭素68.04%、水素8.46%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物14であることを確認した。
【0067】
<合成例10>
合成例9で得た化合物14を水素化アルミニウムリチウムで還元し、化合物15を得た。
【0068】
[化合物15]
【化17】

【0069】
159mg(0.334mmol)の化合物14を6mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液に、氷冷下50.0mg(1.33mmol)の水素化アルミニウムリチウムを加えた。室温にて1時間攪拌後、反応混合物に1N塩酸を加えて反応を停止させた。次に5mlの飽和食塩水を加え、5mlの酢酸エチルエステルによる抽出を3回繰り返した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより精製し、黄色中粘度液状の化合物 121mg(99%)を得た。
【0070】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.26-1.55(10H,m),1.96-2.06(4H,m),2.62-2.66(2H,m),3.62(2H,t),3.86 (3H,s),3.91-3.99(4H,m),5.38(1H,d),5.61(1H,s),5.81(1H,dt),6.66-6.69(2H,m), 6.82(1H,d)であった。さらに、元素分析の結果は、炭素69.20%、水素8.85%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合15であることを確認した。
【0071】
<合成例11>
合成例10で得た化合物15のケタールを除去し、化合物16を得た。
【0072】
[化合物16]
【化18】

【0073】
122mg(0.335mmol)の化合物15を2mlのアセトンおよび2mlの蒸留水に溶解した溶液に、8.4mg(0.0335mmol)のp−トルエンスルホン酸ピリジニウムを加えた。この反応溶液を3時間加熱還流した。つぎに、反応溶液を室温まで放冷した後、溶媒を留去し、得られた残渣に5mlの飽和食塩水を加え、5mlの酢酸エチルエステルによる抽出を3回繰り返した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物 85.2mg(80%)を得た。
【0074】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.30-1.58(10H,m),2.17(2H,dd),2.81-2.86(4H,m),3.63(2H,t), 3.86(3H,s), 5.73(1H,s),6.08(1H,dt),6.67-6.71(2H,m),6.78-6.83(2H,m)であった。さらに、元素分析の結果は、炭素71.22%、水素8.81%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物16であることを確認した。
【0075】
<合成例12>
合成例3で得た化合物6を接触水素添加し、化合物17を得た。
【0076】
[化合物17]
【化19】

【0077】
1.00g(2.24mmol)の化合物6を25mlのエタノールに溶解した溶液に、100mgのパラジウム−炭素を加えた。反応系内を水素雰囲気下3.5時間攪拌した後、反応液をセライトろ過し、パラジウム触媒をろ別した。ろ液を減圧下濃縮すると、淡黄色の中粘度液状の化合物0.97g(収率97%)を得た。
【0078】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.61(24H,m),2.28(2H,t),2.37(2H,t),2.71(2H,t),2.87(2H,t), 3.78 (3H,s),4.12(2H,q),6.72-6.77(2H,m),6.89(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930、1760、1730、1639、1511、1452、1419、1369、1267、1183、1126であった。さらに、元素分析の結果は、炭素69.61%、水素8.99%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物17であることを確認した。
【0079】
<合成例13>
合成例12で得た化合物17をケタール化し、化合物18を得た。
【0080】
[化合物18]
【化20】

【0081】
合成例9の方法に従い、234mg(0.522mmol)の化合物17から、淡黄色中粘度液状の化合物として200mg(78%)の化合物18を得た。
化合物18の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.35(22H,m),1.59-1.64(4H,m),1.90-1.94(2H,m),2.28(2H,t), 2.64-2.68(2H,m),3.78(3H,s),3.98(4H,s),4.12(2H,q),6.74-6.78(2H,m),6.88 (1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2936、1755、1735、1606、1511、1464、1418、1266、1203、1117、1036あった。さらに、元素分析の結果は、炭素68.54%、水素8.63%であった。
【0082】
<合成例14>
合成例13で得た化合物18を水素化アルミニウムリチウムで還元し、化合物19を得た。
【0083】
[化合物19]
【化21】

【0084】
合成例10の方法に従い、186mg(0.378mmol)の化合物18から、黄色中粘度液状の化合物として137mg(99%)の化合物19を得た。
化合物19の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.70(16H,m),1.88-1.93(2H,m),2.59-2.63(2H,m),3.64(2H,t), 3.87(3H,s),3.98(4H,s),5.50(1H,br),6.67-6.70(2H,m),6.82(1H,d)であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素69.20%、水素8.85%であった。
【0085】
<合成例15>
合成例14で得た化合物19のケタールを除去し、化合物20を得た。
【0086】
[化合物20]
【化22】

【0087】
合成例11の方法に従い、137mg(0.377mmol)の化合物19から、無色結晶性の化合物として120mg(99%)の化合物20を得た。
化合物20の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.51(14H,m),2.29(2H,t),2.62(2H,t),2.75(2H,t),3.59(2H,t), 3.81(3H,s),5.47(1H,s),6.64-6.67(2H,m),6.80(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3415、2920、1705、1611、1520、1463、1455、1365、1278、1236、1151、1122、1064、1028であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素70.77%、水素9.38%であった。
【0088】
<合成例16>
合成例3で得た化合物6を水素化アルミニウムリチウムで還元し、化合物21を得た。
【0089】
[化合物21]
【化23】

【0090】
594mg(1.33mmol)の化合物6を40mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液に、氷冷下202mg(5.32mmol)の水素化アルミニウムリチウムを加えた。室温にて1時間攪拌後、反応混合物に1N塩酸を加えて反応を停止させた。次に15mlの蒸留水を加え、20mlの酢酸エチルエステルによる抽出を2回繰り返した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色中粘度液状の化合物 315mg(73%)を得た。
【0091】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.83(12H,m),2.02(2H,m),2.56-2.69(2H,m),3.61(2H,t),3.84(3H,s), 4.04(1H,dd),5.45-5.49(1H,m),5.58-5.66(1H,m),6.65-6.67(2H,m),6.79(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3349、2930、1666、1602、1516、1464、1453、1431、1368、1273、1236、1154、1036 であった。さらに、元素分析の結果は、炭素70.77%、水素9.38%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物21であることを確認した。
【0092】
<合成例17>
合成例5で得た化合物9を接触水素添加して還元し、化合物22を得た。
【0093】
[化合物22]
【化24】

【0094】
合成例12の方法に従い、161mg(0.379mmol)の化合物9から、淡黄色中粘度液状の化合物として148mg(収率91%)の化合物22を得た。
化合物22の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23―1.71(21H,m),2.28(2H,t),2.38(2H,t),2.43-2.45(1H,m), 2.72 (2H,t),2.87(2H,t),3.79(3H,s),4.12(2H,q),6.72-6.78(2H,m),6.90(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930、1760、1730、1639、1511、1452、1419、1369、1267、1183、1126、1098、1029、1015であった。さらに、元素分析の結果は、炭素69.10%、水素8.81%であった。
【0095】
<合成例18>
合成例17で得た化合物22を水素化アルミニウムリチウムで還元し、化合物23を得た。
【0096】
[化合物23]
【化25】

【0097】
合成例16の方法に従い、148mg(0.330mmol)の化合物22から、無色結晶性の化合物として97.4mg(91%)の化合物23を得た。
化合物23の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.26-1.72(18H,m),2.54-2.61(1H,m),2.66-2.70(1H,m),3.54-3.73 (3H,m),3.85(3H,s),6.66-6.68(2H,m),6.80(1H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3426、2930、1607、1515、1481、1468、1437、1365、1268、1239、1155、1124、1039であった。さらに、元素分析の結果は、炭素70.33%、水素9.94%であった。
【0098】
<実施例1>
合成例8で得られた化合物13、合成例11で得られた化合物16、合成例15で得られた化合物20、合成例16で得られた化合物21、および合成例18で得られた化合物23について5−リポキシゲナーゼ阻害活性を測定した。
5−リポキシゲナーゼ源としてラット好塩基性白血病細胞(RBL−1)を使用し、これによるアラキドン酸から5−HETEへの転換率を酵素活性として算出した。活性測定は、以下のように行った。
【0099】
ジメチルスルホキシド水溶液に溶解した被検試料5μLに、200mM塩化カルシウム水溶液10μLと20mg/mLのアラキドン酸−メタノール溶液を10μL加え、37℃で5分間プレインキュベーションした。これに、0.25Mスクロース、1.0mM EDTA、2mMグルタチオンを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に1.5×10cell/mLで分散させたRBL−1細胞縣濁液475μLを添加して攪拌し、37℃で3分間反応させた。その後、メタノールを500μL加えて反応を停止し、この溶液を4℃、4000rpmで20分間遠心した。この上清400μLを分取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析をした。HPLC分析は、日立製ポンプL6200、 日立製検出器L4000UV、およびナカライテスク製カラムCOSMOSIL 5C18−MS(内径4.6×長さ150mm)を用いて、0.04%の酢酸を含む60%アセトニトリル−水溶液で展開し、検出波長235nmでピーク面積を測定した。
【0100】
また、対照としてジメチルスルホキシド水溶液に溶解した6−ショウガオール5μL、またはノルジヒドログアイアレチン酸 (NDGA)を被検試料5μLの代わりに用いた。被検試料無添加の場合のピーク面積と比較して、アラキドン酸から5−HETEへの転換率を算出した、{100%−転換率(%)}を転換阻害率(%)とした。
転換阻害率と被検試料濃度との関係から、5−HETEへの転換を50%阻害する濃度(IC50)を算出し、結果を表1に示した。
【0101】
【表1】

【0102】
化合物13、化合物16、化合物20、化合物21、および化合物23はNDGAに及ばないものの濃度依存的に5−リポキシゲナーゼ阻害活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
式(1)で示される化合物は優れた5−リポキシゲナーゼ阻害効果を有しており、食品、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする5−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【化1】

(式(1)中のR1は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHであり、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CO−CH2CH2−、−CHOH−CH2CH2−、−CO−CH2CHOH−、−CHOH−CH2CHOH−、−CO−CH2CHOR4−、−CHOH−CH2CHOR4−、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。)


【公開番号】特開2007−45716(P2007−45716A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229098(P2005−229098)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】