説明

5−HT4受容体作動活性を有するベンズイミダゾロン化合物

本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩、およびその化合物を含有する組成物、ならびに胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、および無呼吸症候群のための医薬の製造のためのその化合物の使用を提供する。これらの化合物は、5−HT受容体作動活性を有し、したがって哺乳動物、特にヒトにおける胃食道逆流疾患、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候などの治療に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンズイミダゾロン化合物に関する。これら化合物は、選択的5−HT受容体作動活性を有する。本発明はまた、5−HT受容体活性が関与する疾患状態の治療のための、上記化合物を含む医薬組成物、治療および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、5−HT受容体作動薬は、胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、無呼吸症候群などの様々な疾患の治療に有用であることがわかっている(TiPs、1992年、第13巻、141ページ;Ford A.P.D.W.ら、Med.Res.Rev.、1993年、第13巻、633ページ;Gullikson G.W.ら、Drug Dev.Res.、1992年、第26巻、405ページ;Richard M.Eglenら、TiPS、1995年、第16巻、391ページ;Bockaert J.ら、CNS Drugs、第1巻、6ページ;Romanelli M.N.ら、Arzheim Forsch./Drug Res.、1993年、第43巻、913ページ;Kaumann A.ら、Naunyn−Schmiedeberg’s.1991年、第344巻、150ページ;およびRomanelli M.N.ら、Arzheim Forsch./Drug Res.、1993年、第43巻、913ページを参照されたい)。また、モサプリドが糖尿病の治療にも有用であることは知られている。
【0003】
5−HT受容体作動活性がより高い5−HT受容体作動薬が提供されるなら望ましいはずである。
【0004】
米国特許第5223511号は、ベンズイミダゾール化合物を5−HT受容体拮抗薬として開示している。特に、次式
【0005】
【化1】

で表される化合物が開示されている。
【0006】
WO93/18027は、ベンズイミダゾロン化合物を5−HT受容体拮抗薬として開示している。特に、次式
【0007】
【化2】

で表される化合物が開示されている。
【0008】
WO99/17772は、ベンズイミダゾロン化合物を5−HT受容体の作動薬および/または拮抗薬として開示している。特に、次式
【0009】
【化3】

で表される化合物が開示されている。
【0010】
WO94/00449は、ベンズイミダゾロン化合物を5−HT作動薬もしくは拮抗薬、および/または5−HT拮抗薬として開示している。特に、次式
【0011】
【化4】

で表される化合物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
好適な薬物候補である新規な5−HT作動薬を提供することが求められている。特に、好ましい化合物は、5−HT受容体に強力に結合しながらも、他の受容体に対してはほとんど親和性を示さず、かつ作動薬としての機能活性を示すべきである。このような化合物は、消化管からよく吸収され、代謝安定性があり、かつ好都合な薬物動力学的性質を有するべきである。中枢神経系の受容体に向けられるときは、血液脳関門を自由に通過するべきであり、末梢神経系の受容体に選択的に向けられるときには、血液脳関門を通過するべきでない。化合物は、非毒性であるべきであり、副作用をほとんど示すべきでない。理想的な薬物候補は、その上、安定であり、非吸湿性であり、かつ製剤しやすい物理的形態で存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
今回、驚くべきことに、本発明の化合物が、強力な選択的5−HT作動活性を有し、したがって、胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、(特に、オピオイドの投与によって引き起こされる)無呼吸症候群などの、5−HT活性が関与する疾患状態の治療に有用であることがわかった。
【0014】
また、本発明の化合物は、式(I)のRに極性基を導入することによって、QT延長の低減を示す。QT延長は、トルサードドポアント(TdP)という致死的な心不整脈を生じる潜在的な傾向があることが知られている。心臓の活動電位期間を延長する能力は、HERGカリウムチャネルでの作用のためであることが確認されている。例えば、シサプリドやテルフェナジンなどのQT延長のために市場から回収された薬物は、強力なHERGカリウムチャネル遮断薬であることが知られている(Expert Opinion of Pharmacotherapy、第2巻947〜973ページ、2000年)。HERG型カリウムチャネルに対する親和性から推測されるHERGチャネルでの阻害活性が、HERGチャネルでの阻害活性を予測することのできる[H]ドフェチリド結合を調べることによって検討されている(Eur.J.Pharmacol.、第430巻、147〜148ページ、2001年)。
【0015】
本発明の化合物は、より低い毒性、良好な吸収、分布、良好な溶解性、低いタンパク質結合親和性、より弱い薬物−薬物相互作用、および良好な代謝安定性を示し得る。
【0016】
本発明は、次式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【0017】
【化5】

[式中、
Hetは、Bの直接の結合相手である1個の窒素原子と、4〜7個の炭素原子とを有する複素環基を表し、前記複素環基は、非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜4個の置換基で置換されており、
Aは、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bは、共有結合、または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は、非置換、またはオキソ基で置換されており、
は、イソプロピル基またはシクロペンチル基を表し、
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、mは、0、1、2、3、または4であり、
は、
(i)3〜8個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)3〜8個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される]
【0018】
また、本発明は、哺乳動物対象において5−HT受容体が関与する疾患状態を治療するための、前記対象への治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩の投与を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、無呼吸症候群などから選択される疾患を治療するための、治療有効量の式(I)のベンズイミダゾロン化合物または薬学的に許容できるその塩と薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物も提供する。
【0020】
また、本発明は、哺乳動物対象において5−HT受容体が関与する疾患状態を治療するための、前記対象への治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩の投与を含む、ヒトを含む哺乳動物の治療方法を提供する。さらに、本発明は、上述のような疾患状態の治療方法を提供する。さらにまた、本発明は、5−HT受容体活性が関与する哺乳動物対象の疾患状態を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩の使用を提供する。5−HT受容体活性が関与する状態には、上述のような疾患または障害が含まれる。
【0021】
また、本発明は、次式(2−A’)の化合物またはその塩を提供する。
【0022】
【化6】

[式中、
は、水素原子またはN保護基を表し、
Hetは、Bの直接の結合相手である1個の窒素原子と4〜7個の炭素原子とを有する複素環基を表し、前記複素環基は、非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜4個の置換基によって置換されており、
Aは、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bは、共有結合、または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は、非置換、またはオキソ基で置換されており、
は、
(i)3〜8個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)3〜8個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される]
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書では、「Het」における用語「複素環」とは、
【0024】
【化7】

などの、1個の窒素原子および4〜7個の炭素原子を有する複素環基を意味する。
【0025】
本明細書では、「A」における用語「アルキレン」とは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和した基を意味し、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、s−ブチレン、t−ブチレンが含まれるがこの限りでない。「A」における「アルキレン」は、好ましくはメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基、より好ましくはメチレン基またはエチレン基、最も好ましくはメチレン基を表す。
【0026】
本明細書では、「B」における用語「アルキレン」とは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和した基を意味し、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、s−ブチレン、t−ブチレン、n−ペンチレン、イソペンチレン、s−ペンチレン、t−ペンチレンが含まれる。「B」における「アルキレン」は、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基、より一層好ましくはメチレン基またはエチレン基、さらに一層好ましくはメチレン基を表す。
【0027】
本明細書では、「R」における用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード、好ましくはフルオロまたはクロロを意味する。
【0028】
本明細書では、「R」における「アルキル」、「置換基α」における「ヒドロキシ置換アルキル基」および「1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基」の「アルキル」、「置換基β」における「アルキル」、ならびに「置換基β」における「ヒドロキシ置換アルキル基」および「アミノ置換アルキル基」の「アルキル」の各用語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和した基を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルが含まれるがこの限りでない。
【0029】
本明細書では、「R」における用語「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの、3〜8個の炭素原子を有する環状アルキル基を意味する。
【0030】
本明細書では、「R」における用語「複素環」とは、環中に1個または複数のヘテロ原子を有し、好ましくは2〜6個の炭素原子および1〜3個のヘテロ原子を有する複素環式の環を意味し、アジリジニル、アゼチジニル、ピペリジニル、(モルホリノを含む)モルホリニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラゾリル、ピラゾリニル、テトラヒドロピラニルなどが含まれる。
【0031】
用語「治療する」とは、本明細書では、このような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1種または複数の症状を逆行させ、緩和し、その進行を阻止し、または予防することを指す。用語「治療」とは、本明細書では、「治療する」が直前で規定したとおりであるとき、治療する行為を指す。
【0032】
本発明の好ましい式(I)の化合物は、Hetが、
【0033】
【化8】

から選択された複素環基であり、前記複素環基は非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基で置換されており、
Aが、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基を表す化合物である。
【0034】
本発明のより好ましい式(I)の化合物は、
Hetが式
【0035】
【化9】

の基を表し、この基は非置換、または置換基αからなる群から選択された1個の置換基で置換されており、
Aが、1〜2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bが、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は非置換、またはオキソ基で置換されており、
が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、または1〜2個の炭素原子を有するアルキル基を表し、mが、0、1、または2であり、
が、
(i)4〜7個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基によって置換されているシクロアルキル基、または
(ii)4〜7個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基によって置換されている複素環基
を表す化合物である。
【0036】
また、本発明のさらに好ましい式(I)の化合物は、
Hetが式
【0037】
【化10】

の基を表し、この基は非置換、または置換基αからなる群から選択された1個の置換基で置換されており、
Aがメチレン基を表し、
Bが、1〜2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
が、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、またはメチルを表し、
が、
(i)5〜7個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)5〜7個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、および1〜2個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜2個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜2個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される
化合物または薬学的に許容できるその塩である。
【0038】
本発明のさらに好ましい式(I)の化合物は、
Hetが式
【0039】
【化11】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、
Bがメチレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
がフッ素原子を表し、mが0または1であり、
が、
(i)5〜6個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)5〜6個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択される
化合物または薬学的に許容できるその塩である。
【0040】
本発明のさらに好ましい式(I)の化合物は、
Hetが式
【0041】
【化12】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、
Bがメチレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
がフッ素原子を表し、mが0であり、
が、
(i)ヒドロキシ基またはアミノ基からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)6個の原子を有し、かつヒドロキシ基またはアミノ基で置換されている複素環基
を表す化合物または薬学的に許容できるその塩である。
【0042】
本発明の最も好ましい式(I)の化合物は、
Hetが式
【0043】
【化13】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、
Bがメチレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
がフッ素原子を表し、mは0であり、

(i)1または2個のヒドロキシ基(特に、ジヒドロキシシクロヘキシル)で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)1または2個のヒドロキシ基(特に、ヒドロキシテトラヒドロピラニル)で置換されているテトラヒドロピラン基
を表す化合物または薬学的に許容できるその塩である。
【0044】
式(I)の化合物または薬学的に許容できる塩では、Rは、好ましくはフッ素原子、塩素原子、メチル基、またはエチレン基を表し、より好ましくはフッ素原子、塩素原子、メチル基、最も好ましくはフッ素原子を表す。
【0045】
式(I)の化合物または薬学的に許容できる塩では、mは、好ましくは0、1、または2であり、より好ましくは0または1であり、より一層好ましくは0である。
【0046】
本発明の個々の好ましい化合物は、
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、
N−({1−[(トランス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、
N−({1−[(シス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、および
6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、
または薬学的に許容できるその塩である。
【0047】
本発明の式(2−A’)の好ましい化合物は、Rが水素原子またはt−ブトキシカルボニル基を表し、
Hetが式
【0048】
【化14】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、Bがメチレン基を表し、Rがヒドロキシテトラヒドロピラニルまたはジヒドロキシシクロヘキシルを表す化合物である。
【0049】
一般合成
本発明の化合物は、この種類の化合物を調製するための周知の様々な方法によって、例えば、以下の反応スキームに示すように調製することができる。別段の指摘がない限り、以下の反応スキームおよび論述中のRからRおよびmは、上で規定したとおりである。以下で使用する用語「保護基」とは、T.W.Greeneら編、「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley & Sons、1991年)に記載されている典型的なヒドロキシもしくはアミノ保護基から選択されるヒドロキシもしくはアミノ保護基を意味し、以下の一般合成の出発材料はすべて、市販されていることもあれば、または当業者に知られている従来の方法によって得ることもできる。
【0050】
Hetが
【0051】
【化15】

である式(I)の化合物は、以下の合成によって調製する。さらにHetが
【0052】
【化16】

以外である式(I)の化合物も、同様のやり方で、または当業者に知られている方法によって調製することができる。
【0053】
以下のスキームのステップ1a、1b、1d、2a、2c、2e、3a、3c、3dでは、各反応を塩基の存在下で実施することが好ましい。使用する塩基の性質に特に制限はなく、この種の反応で一般に使用されるどんな塩基もここでは等しく使用することができる。用いる塩基には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウムなどのアルカリ金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;ブチルリチウムやメチルリチウムなどのアルキルリチウム;リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのリチウムアミド;炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;およびトリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級有機アミンが含まれる。
【0054】
ベンズイミダゾロン(1−A)の合成:
以下の反応スキームは、式1−Aのベンズイミダゾロン化合物の調製を例示するものである。
【0055】
【化17】

【0056】
上記式中、Zは、塩素、臭素、ヨウ素の各原子などの「ハロ」を表す。
【0057】
ステップ1a
ステップ1aでは、還元剤または金属試薬存在下または不在下の不活性溶媒中で、(1〜4個の炭素原子を有する)アルカノン化合物を式1−1のアミン化合物による還元的アミノ化にかけると、式1−3のアミン化合物を調製することができる。
【0058】
この反応は、溶媒の存在下で行うことが一般的であり、好ましい。使用する溶媒の性質に特に制限はないが、ただし、溶媒は、反応または関連試薬に有害な影響を及ぼさず、試薬を少なくともある程度溶解することのできるものとする。適切な水性もしくは非水性有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル;アセトニトリル;N,N’−ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;酢酸;およびジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素が含まれる。
【0059】
この反応は、広い範囲の温度で実施でき、正確な反応温度は、本発明にとって絶対不可欠ではない。好ましい反応温度は、溶媒の性質、使用する出発材料または試薬などの要因に応じて決まる。しかし、一般に、−78℃〜100℃、より好ましくは約−20℃〜60℃の温度で還元剤を用いて反応を実施すると好都合である。反応に要する時間も、多くの要因、特に反応温度、使用する試薬および溶媒の性質に応じて広く変動し得る。しかし、上で概略を述べた好ましい条件下で反応を実施するという前提で、5分間〜1週間、より好ましくは30分間〜24時間の期間で通常は十分となる。金属試薬との反応の場合では、20℃〜100℃、好ましくは約20℃〜60℃の温度で10分間〜48時間、好ましくは30分間〜24時間反応を実施すると好都合である。
【0060】
適切な還元試薬は、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、またはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを含めて、還元で通常使用されるものである。
【0061】
金属試薬と水素ガスの組合せを還元剤として使用することもできる。適切な金属試薬の例には、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム−炭素、酸化白金、白金−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−酸化アルミニウム、および塩化トリス[トリフェニルホスフィン]ロジウムが含まれる。金属試薬との反応は、1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧の範囲の圧力の水素雰囲気中で実施することができる。
【0062】
この還元は、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性反応溶媒中で、20〜130℃の範囲の温度で1時間から1週間かけて、対応するアルカノン化合物のエナミンまたはアルカノン化合物のイミンを生成させた後に実施することができる。
【0063】
あるいは、好ましくは塩基の存在下、以下(ステップ1d)の条件と本質的に同じに、式1−1の化合物を、式Z−R(Zはハロであり、ハロは、クロロ、ブロモ、またはヨードである)のハロゲン化アルキルでアルキル化して、式1−3の化合物を調製することもできる。
【0064】
ステップ1b
このステップでは、式1−2の化合物を式R−NHの化合物でアルキル化して、式1−3の化合物を調製することができる。
【0065】
この反応は、広い範囲の温度で実施でき、正確な反応温度は、本発明にとって絶対不可欠ではない。好ましい反応温度は、溶媒の性質、使用する出発材料または試薬などの要因に応じて決まる。しかし、一般に、0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜120℃の温度で反応を実施すると好都合である。反応に要する時間も、多くの要因、特に反応温度、使用する試薬および溶媒の性質に応じて大きく変動し得る。しかし、上で概略を述べた好ましい条件下で反応を実施するという前提で、5分間〜48時間、より好ましくは30分間〜24時間の期間で通常は十分となる。
【0066】
ステップ1c
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン(THF)などの不活性反応溶媒(好ましくは、メタノールまたはエタノール)中で、式1−3の化合物を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)、ジボラン、水素と金属触媒、鉄と塩酸、塩化スズと塩酸、亜鉛と塩酸、ギ酸、ボランジメチルスルホキシド錯体、ボラン−THFなどの、通常は過剰量の適切な還元剤(好ましくは、水素と金属触媒)を用い、通常は−78℃〜60℃、好ましくは約0℃〜45℃の温度で5分間〜24時間、好ましくは60分間〜12時間かけて還元すると、式1−4の化合物を調製することができる。
【0067】
ステップId
ステップ1dでは、ステップlaと類似の条件下で、アルカノン化合物を式1−5のアミン化合物による還元的アミノ化にかけて、式1−4のアミン化合物を調製することができる。
【0068】
あるいは、式1−4の化合物は、式1−5の化合物を式Z−Rの化合物でアルキル化して調製することもできる。
【0069】
この反応は、広い範囲の温度で実施でき、正確な反応温度は、本発明にとって絶対不可欠ではない。好ましい反応温度は、溶媒の性質、使用する出発材料または試薬などの要因に応じて決まる。しかし、一般に、0℃〜120℃、より好ましくは0℃〜70℃温度で反応を実施すると好都合である。反応に要する時間も、多くの要因、特に反応温度、使用する試薬および溶媒の性質に応じて大きく変動し得る。しかし、上で概略を述べた好ましい条件下で反応を実施するという前提で、5分間〜48時間、より好ましくは30分間〜24時間の期間で通常は十分となる。
【0070】
ステップ1e
ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)などの不活性反応溶媒(好ましくはTHF)中で、式1−4の化合物を、通常は過剰量のカルボニルジイミダゾール、クロロギ酸トリクロロメチル、トリホスゲン、尿素などの適切なカルボニル化剤(好ましくはカルボニルジイミダゾール)を用い、一般に−78℃〜120℃、好ましくは約20℃〜100℃の温度で5分間〜24時間、好ましくは60分間〜12時間かけて閉環して、式1−Aの化合物を調製することができる。
【0071】
あるいは、以下のスキーム1bに従って、当業者に知られている反応条件下で、式1−6のアルケニル−ベンズイミダゾロン化合物から(Rが、スキーム1bに示すようにイソプロピルである)1−Aの化合物を調製することもできる。
【0072】
【化18】

【0073】
アミン部分(2−A)の合成:
以下の反応スキームは、式(2−A)のピペリジン化合物の調製を例示するものである。
【0074】
【化19】

【0075】
上記式中、PGは保護基を表す。用語「保護基」とは、ここでは、T.W.Greeneら編「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley & Sons、1991年)に記載されている典型的なアミノ保護基から選択されるアミノ保護基を意味する。典型的なアミノ保護基には、ベンジル、CO(C=O)−、CH(C=O)−、テトラブチルジメチルシリル(TBS)、t−ブチルジフェニルシリル、Zとして表されるベンジルオキシカルボニル、およびt−BocまたはBocとして表されるt−ブトキシカルボニルが含まれる。
【0076】
ステップ1aと類似の条件下で、式2−1の化合物を、式アルキル−R、ハロ−R、またはH(C=O)−Rの化合物によるアルキル化または還元的アミノ化にかけると、式2−2の化合物を調製することができる。−B−Rが4−ヒドロキシテトラヒドロピラニルメチルを表すとき、1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン化合物を使用してこのアルキル化を行うことができる。
【0077】
次いで、この反応の後に脱保護を行って、式1−Aの化合物を得る。当業者に知られている手順に従ってこの脱保護を実施すると、式2−Aの化合物が得られる。
【0078】
あるいは、以下のスキーム2bに従って、当業者に知られている反応条件下で、式2−3のピペリジン化合物から式(2−A)の化合物を調製することもできる。
【0079】
【化20】

【0080】
例えば、ステップ2cでは、スキーム2aのステップ2aに記載のものと本質的に同じ条件下でのアルキル化または還元的アミノ化によって化合物2−4を調製することができる。次いで、LiAlHなどの還元試薬の存在下、THFなどの不活性反応溶媒中でステップ2dの還元を実施することができる。適切な反応温度は、約−78℃〜約100℃、好ましくは約−30℃〜約40℃の範囲である。
【0081】
式(1−A)の化合物は、当業者に知られている反応条件を用いる以下のスキーム2cに従って、式2−5のピペリジン化合物から調製することができる。
【0082】
【化21】

【0083】
例えば、ステップ2eでは、スキーム2aのステップ2aに記載のものと本質的に同じ条件下でのアルキル化または還元的アミノ化によって化合物2−6を調製することができる。次いで、H、およびPtOなどの水素化触媒の存在下、THFなどの不活性反応溶媒中でステップ2fの還元を実施することができる。適切な反応温度は、約−78℃〜約100℃、好ましくは約−30℃〜約40℃の範囲である。
【0084】
式(I)の化合物の合成:
以下の反応スキームは、式Iのベンズイミダゾロン化合物の調製を例示するものである。
【0085】
【化22】

【0086】
ステップ3a:
カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸トリクロロメチル、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、尿素などの、通常は過剰量の適切なカルボニル化剤(好ましくはトリホスゲン)の存在下、ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、クロロホルムなどの不活性反応溶媒(好ましくはTHF)中で、式1−Aの化合物と式2−Aの化合物とのカルボニル化を、一般に−78℃〜120℃、好ましくは約0℃〜90℃の温度で5分間〜24時間、好ましくは60分間〜12時間かけて実施して、式3−1の化合物を調製することができる。
【0087】
ステップ3b:
式3−1の化合物の脱保護を塩酸塩などの酸を用いて行って、式3−2の化合物を調製する。
【0088】
ステップ3c:
スキーム2aのステップ2aに記載のものと類似の条件下でアルキル化または還元的アミノ化を行って、式(Ia)の化合物を調製することができる。
【0089】
あるいは、以下のスキーム3bに従って、当業者に知られている反応条件化で、アルキルベンズイミダゾロン化合物から式(Ia)の化合物を調製することもできる。
【0090】
【化23】

【0091】
例えば、ステップ3dでは、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸トリクロロメチル、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、尿素などの、通常は過剰量のカルボニル化剤(好ましくはトリホスゲン)の存在下、ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、クロロホルムなどの不活性反応溶媒(好ましくはTHF)中で、式1−Aの化合物と式2−Aの化合物とを、一般に−78℃〜120℃、好ましくは約0℃〜90℃の温度で5分間〜24時間、好ましくは60分間〜12時間かけて反応させることができる。
【0092】
当業者に知られている反応を使用して、式7の化合物を調製することができる。式7の化合物は、例えば、以下のスキーム3cに従って、当業者に知られている反応条件下で式3の化合物から調製することができる。
【0093】
【化24】

【0094】
上記スキーム1aから3cでは、適切な溶媒の例に、各ステップで記載した溶媒のいずれか2種以上の混合物が含まれる。
【0095】
式(I)の化合物、および上述の調製法の中間体は、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー精製などの従来の手順によって単離精製することができる。
【0096】
いくつかの方法によって、光学活性のある本発明の化合物を調製することができる。光学活性のある本発明の化合物は、例えば、最終化合物からのクロマトグラフィーによる分離、酵素による分割、または分別結晶法によって得ることができる。
【0097】
いくつかの本発明の化合物は、不斉中心を有する。したがって、その化合物は、(+)および(−)の光学活性のある別々の形、ならびにそのラセミ化合物の形で存在し得る。本発明は、そのようなすべての形をその範囲内に含む。個々の異性体は、最終生成物またはその中間体の調製の際に、光学的に選択を行う反応やクロマトグラフィーによる分離などの知られている方法によって得ることができる。
【0098】
本発明は、1個または複数の原子が自然界で通常見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子と入れ換えられていることを別にすれば式(I)で列挙されるものと同一である同位体標識化合物も含む。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例には、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clなどの、それぞれ水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体が含まれる。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物、そのプロドラッグ、前記化合物の薬学的に許容できるエステル、および前記化合物、前記エステル、もしくは前記プロドラッグの薬学的に許容できる塩は、本発明の範囲内である。本発明のある種の同位体標識化合物、例えば、Hや14Cなどの放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物および/または基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム、すなわちH、および炭素−14、すなわち14Cの各同位体は、呈しやすく、検出可能であるので特に好ましい。さらに、重水素、すなわちHなどのより重い同位体で置換すると、より高い代謝安定性、例えばin vivo半減期の延長や投与必要量の減少のためにもたらされる治療上の強みを得ることができ、したがって、ある状況では好ましいことがある。本発明の式(I)の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬に替えて容易に入手できる同位体標識試薬を代用しながら、上記開示されたスキームおよび/または以下の実施例および調製例で開示する手順を実施して調製することができる。
【0099】
本発明は、得られる式(I)の塩の形態を含む。
【0100】
式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩には、(二塩を含めて)その酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。
【0101】
薬学的に許容できる非毒性の式(I)の化合物は、従来の技術によって、例えば、水、またはエタノール、イソプロパノール、これらの混合物などの適切な有機溶媒中で、前記化合物と、化学量論量の適切なアルカリ金属またはアルカリ土類金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウム)の水酸化物またはアルコキシドとを接触させることで調製できる。
【0102】
本発明の酸性の式(I)の化合物の、薬学的に許容できる塩基付加塩の調製に使用する塩基は、アデニン、アルギニン、シトシン、リシン、ベネタミン(すなわち、N−ベンジル−2−フェニルエチルアミン)、ベンザチン(すなわち、N,N−ジベンジルエチレンジアミン)、コリン、ジオラミン(すなわち、ジエタノールアミン)、エチレンジアミン、グルコサミン、グリシン、グアニジン、グアニン、メグルミン(すなわち、N−メチルグルカミン)、ニコチンアミド、オラミン(すなわち、エタノールアミン)、オルニチン、プロカイン、プロリン、ピリドキシン、セリン、チロシン、バリン、トロメタミン(すなわち、トリスもしくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)などの、非毒性の塩基付加塩、すなわち薬学的に許容できるカチオンを含む塩を生成する塩基である。塩基付加塩は、従来の手順によって調製することができる。
【0103】
本発明のある特定の化合物が塩基性の化合物である限り、こうした化合物は、様々な無機酸および有機酸と広範な種類の異なる塩を形成することができる。
【0104】
本発明の塩基性の式(I)の化合物の、薬学的に許容できる酸付加塩の調製に使用する酸は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩もしくは重硫酸塩、リン酸塩もしくは酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩もしくは酸性クエン酸塩、酒石酸塩もしくは酒石酸水素塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、カンシル酸塩、エジシラート(すなわち、1,2−エタンジスルホン酸塩)、エストラート(すなわち、ラウリル硫酸塩)、グルセプタート(すなわち、グルコヘプトン酸)、グルコン酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、キシノホアート(xionofoate)(すなわち、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、イセチオン酸塩(すなわち、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、粘液酸塩(すなわち、ガラクタル酸塩)、2−ナフシラート(すなわち、ナフタレンスルホン酸塩)、ステアリン酸塩、コール酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、馬尿酸塩、ラクトビオン酸塩、リシン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、ナパジシル酸、ニコチン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、タンニン酸、トリプトファナート、ホウ酸塩、炭酸塩、オレイン酸塩、フタル酸塩、パモ酸塩(すなわち、1.1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)塩)などの非毒性の酸付加塩、すなわち薬学的に許容できるアニオンを含む塩を生成する酸である。これらのうち、(ヘミエジシラートを含む)エジシラートおよび塩酸塩が好ましい。酸付加塩は、従来の手順によって調製することができる。
【0105】
適切な塩の総説については、Bergeら、J.Pharm.Sci.、第66巻、1〜19ページ、1977年を参照されたい。
【0106】
本発明は、得られる式(2−A’)の化合物の塩の形態を含む。
【0107】
式(2−A’)の化合物は、カチオンになることができる。式(2−A’)の化合物のカチオンは、従来の技術によって、例えば、水、またはエタノール、イソプロパノール、これらの混合物などの適切な有機溶媒中で、前記化合物と、化学量論量の適切なアルカリ金属またはアルカリ土類金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウム)の水酸化物またはアルコキシドとを接触させることで調製できる。
【0108】
酸性の式(2−A’)の化合物の塩基付加塩の調製に使用する塩基は、塩基付加塩を生成する塩基である。そのような塩基付加塩には、上述の薬学的に許容できる塩基付加塩、およびトリエチルアミン、ピリジン、アンモニアなどのカチオンを含む塩が含まれる。
【0109】
式(2−A’)の化合物は、様々な無機酸および有機酸と広範な種類の異なる塩を形成することができる。
【0110】
式(2−A’)の化合物の酸付加塩の調製に使用する酸は、酸付加塩を形成する酸である。そのような酸付加塩には、上述のような薬学的に許容できる酸付加塩、およびシアン化物などのアニオンを含む塩が含まれる。
【0111】
式(I)の化合物のバイオプレカーサー(プロドラッグとも呼ぶ)も本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物のバイオプレカーサーは、生体系で容易に変換されて式(I)の親化合物へと戻るその化学誘導体である。特に、式(I)の化合物のバイオプレカーサーは、哺乳動物対象、例えばヒト対象に投与され、吸収された後に変換されて式(I)の親化合物へと戻る。例えば、ヒドロキシ基のエステルを作ることによって、LおよびWの一方または両方がヒドロキシ基を含む式(I)の化合物のバイオプレカーサーを製することが可能である。LおよびWの一方のみがヒドロキシ基を含むとき、モノエステルしか考えられない。LおよびWの両方がヒドロキシを含むとき、モノエステルおよびジエステル(同じでも、異なるものでもよい)を製することができる。典型的なエステルは、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステルなどの単純なアルカン酸エステルである。さらに、LまたはWがヒドロキシ基を含むとき、バイオプレカーサーは、ハロゲン化アシルオキシメチル(例えば、塩化ピバロイルオキシメチル)との反応によって、ヒドロキシ基をアシルオキシメチル誘導体(例えば、ピバロイルオキシメチル誘導体)に変換して製することができる。
【0112】
本発明の式(I)の化合物が水和物などの溶媒和化合物を生成し得るとき、そのような溶媒和化合物を本発明の範囲内に含める。
【0113】
1個または複数の不斉炭素原子を含む式(I)の化合物は、2種以上の立体異性体として存在し得る。式(I)の化合物がアルケニル基またはアルケニレン基を含む場合では、シス/トランス(またはZ/E)幾何異性体が考えられる。化合物が、例えばケト基、オキシム基、または芳香族部分を含む場合では、互変異性が起こり得る。これは、単一の化合物が、1種類を超える異性を示し得るということである。
【0114】
1種類を超える異性を示す化合物、その1種または複数の混合物を含めて、式(I)の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体、および互変異性の形態が、本発明の範囲内に含まれる。対イオンが光学活性を有する酸付加塩または塩基の塩、例えばD−ラクトースやL−リシン、またはラセミ化合物、例えばDL−酒石酸やDL−アルギニンも含まれる。
【0115】
シス/トランス異性体は、当業者によく知られている従来の技術、例えば、クロマトグラフィーや分別結晶法によって分離することができる。
【0116】
個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来の技術には、光学的に純粋な適切な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してのラセミ化合物(またはラセミ化合物の塩もしくは誘導体)の分割が含まれる。
【0117】
あるいは、ラセミ化合物(またはラセミ前駆体)を、光学活性のある適切な化合物、例えばアルコールと反応させてもよいし、または式(I)の化合物が酸性もしくは塩基性の部分を含む場合では、酒石酸や1−フェニルエチルアミンなどの酸もしくは塩基と反応させてもよい。得られるジアステレオ異性体混合物をクロマトグラフィーおよび/または分別結晶法によって分離し、ジアステレオ異性体の一方または両方を、当業者によく知られている手段によって対応する純粋な鏡像異性体に変換することができる。
【0118】
立体異性体の集合物は、当業者に知られている従来の技術によって分離することができるが、例えば、E L Elielの「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley、米国ニューヨーク、1994年)を参照されたい。
【0119】
薬学的な使用を目的とした本発明の化合物は、結晶生成物または非晶質生成物として投与することができる。そのような化合物は、例えば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾燥などの方法によって、固体充填物、粉末、またはフィルムとして得ることができる。この目的のためにマイクロ波乾燥または高周波乾燥を使用してもよい。
【0120】
こうした化合物は、単独で投与してもよいし、あるいは1種または複数の他の本発明化合物または1種または複数の他の薬物(またはこれらの組合せ)と併せて投与してもよい。一般に、これらは、薬学的に許容できる1種または複数の賦形剤と共に製剤として投与される。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明の化合物以外の原材料を述べるのに使用する。賦形剤の選択は、特定の投与方式、賦形剤が溶解性および安定性に及ぼす影響、剤形の性質などの要因に応じて決まるところが大きい。
【0121】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に明らかとなろう。そのような組成物およびその調製方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第19版(Mack Publishing Company、1995年)の中に見ることができる。
【0122】
経口投与
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように飲み込むものであり、あるいは化合物が口から血流に直接侵入する舌下投与または頬側投与を用いてもよい。
【0123】
経口投与に適する製剤には、錠剤などの固体製剤;粒子、液体、もしくは粉末を含むカプセル、ロゼンジ(液体充填型を含む)、咀しゃく錠(chew)、多成分ナノ粒状体、ゲル、固体の溶液、リポソーム、フィルム(粘膜付着性のものを含む)、腔坐剤、スプレー、および液体製剤が含まれる。
【0124】
液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟もしくは硬カプセル中の詰め物として用いることができ、通常は、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、適切な油といった担体と、1種または複数の乳化剤および/もしくは懸濁化剤とを含んでよい。液体製剤は、例えば小袋から出した固体を再形成して調製することもできる。
【0125】
本発明の化合物は、LiangおよびChenのExpert Opinion in Therapeutic Patents、第11巻(6)、981〜986ページ(2001年)に記載されているものなどの、急速溶解急速崩壊型剤形中に使用することもできる。
【0126】
錠剤剤形では、用量に応じて、剤形の1重量%〜80重量%、より一般には剤形の5重量%〜60重量%を薬物が占めていてよい。薬物に加えて、錠剤は一般に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例には、ナトリウムデンプングリコラート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが含まれる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を占める。
【0127】
錠剤製剤に粘着性の性質を与えるために、結合剤が一般に使用される。適切な結合剤には、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有していてもよい。
【0128】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤を含んでいてもよい。存在するとき、界面活性剤は錠剤の0.2重量%〜5重量%を占めていてよく、錠剤の0.2重量%〜1重量%を占めていてよい。
【0129】
錠剤は、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は、一般に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を占める。
【0130】
考えられる他の成分には、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および矯味剤(taste−masking agent)が含まれる。
【0131】
好例となる錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0132】
錠剤配合物は、直接にまたはローラーによって圧縮して錠剤にすることができる。あるいは、打錠する前に、錠剤配合物または配合物の一部分を湿式、乾式、もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押出にかけることができる。最終製剤は、1種または複数の層からなっていてよく、コーティングされていてもされていなくてもよく、カプセル封入されていてもよい。
【0133】
錠剤の製剤については、H.LiebermanおよびL.Lachmanの「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1」、Marcel Dekker、米国ニューヨーク州ニューヨーク、1980年(ISBN0−8247−6918−X)で論述されている。
【0134】
経口投与用の固体製剤は、即効性放出および/または変更型放出がなされるように製剤してもよい。放出調整製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム式放出が含まれる。
【0135】
本発明の目的に適する放出調整製剤は、米国特許第6106864号に記載されている。高エネルギー分散液、浸透性粒子、被覆粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、Vermaら、Pharmaceutical Technology On−line、第25巻(2)、1〜14ページ(2001年)に出ている。制御放出を実現するためのチューインガムの使用は、WO00/35298に記載されている。
【0136】
非経口投与
本発明の化合物は、血流、筋肉、または内臓に直接投与してもよい。非経口投与に適する手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、子宮内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が含まれる。非経口投与に適するデバイスには、有針(微細針を含む)注射器、無針注射器、および注入技術が含まれる。
【0137】
非経口製剤は、通常は、塩類、炭水化物、緩衝剤(好ましくはpH3〜9)などの賦形剤を含有していてもよい水溶液であるが、一部の適用例では、無菌の非水性溶液として、または発熱物質を含まない無菌水などの適切な媒体と共に使用される乾燥形態として製剤することがより適切な場合もある。
【0138】
例えば凍結乾燥による無菌条件下での非経口製剤の製剤は、当業者によく知られている標準の製薬技術を使用して容易に実現することができる。
【0139】
溶解性改善剤を混ぜるなどの適切な製剤技術の使用によって、非経口溶液の調製に使用する式(I)の化合物の溶解性を増大させてもよい。
【0140】
非経口製剤用の製剤は、即効性放出および/または変更型放出がなされるように製剤してもよい。放出調整製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、プログラム式放出が含まれる。したがって、本発明の化合物を、移植デポー剤として投与するための固体、半固体、揺変性液体として製剤して、活性化合物の変更型放出を提供することができる。このような製剤の例には、薬物で被覆したステントおよびPGLAマイクロスフェアが含まれる。
【0141】
局所投与
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち経皮的に投与してもよい。この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散粉剤、包帯剤、泡、フィルム、皮膚パッチ、ウエファース、植込錠、スポンジ、繊維、帯具、およびマイクロエマルジョンが含まれる。リポソームを使用してもよい。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが含まれる。浸透強化剤を混ぜてもよく、例えば、FinninおよびMorganのJ Pharm Sci、第88巻(10)、955〜958ページ(1999年10月)を参照されたい。
【0142】
局所投与の他の手段には、電気穿孔法、イオン導入法、音波泳動法、超音波泳動(sonophoresis)、および微細針もしくは無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が含まれる。
【0143】
局所投与用の製剤は、即効性放出および/または変更型放出がなされるように製剤してもよい。放出調整製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム式放出が含まれる。
【0144】
吸入/鼻腔内投与
本発明の化合物は、通常、乾燥粉末吸入器から(単独、または例えばラクトースとのドライブレンドにした混合物として、または例えばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合成分粒子としての)乾燥粉末の形で、あるいは加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気水力学を使用して微細な霧を生じるアトマイザー)、またはネブライザーから、1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用し、または使用せずにエアロゾルスプレーとして、鼻腔内投与または吸入による投与を行うことができる。鼻腔内の使用では、粉末は、生体接着剤、例えばキトサンやシクロデキストリンを含んでもよい。
【0145】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、例えば、溶媒としてのエタノール、エタノール水溶液、または活性物を分散、溶解、もしくはその放出を広げるのに適する別の薬品、すなわち噴射剤を含み、さらにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸などのオプションの界面活性剤も含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0146】
乾燥粉末製剤または懸濁液製剤中に使用する前に、薬物製品を超微粉砕して吸入による送達に適する大きさ(通常5ミクロン未満)にする。これは、スパイラルジェット微粉砕、流動床ジェット微粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧均質化、噴霧乾燥などの、適切などんな微粉砕法でも実現できる。
【0147】
吸入器または注入器での使用のための(例えば、ゼラチンやHPMCでできた)カプセル、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物の粉末ミックス、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤、およびl−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウムなどの性能改変剤を含有するように製剤することができる。ラクトースは、無水でも一水和物の形でもよいが、後者が好ましい。他の適切な賦形剤には、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。
【0148】
電気水力学を使用して微細な霧を生じるアトマイザーでの使用に適する溶液製剤は、1作動あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有し、1作動の体積は1μl〜100μlと様々でよい。典型的な製剤は、式(I)の化合物、プロピレングリコール、無菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含んでよい。プロピレングリコールの代わりに使用してよい別の溶媒には、グリセロールおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0149】
吸入/鼻腔内投与を目的としたこれら本発明の製剤に、メントールやL−メントールなどの適切な着香剤、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの適切な甘味剤を加えてもよい。
【0150】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、例えば、DL−乳酸/グリコール酸共重合体(poly(DL−lactic−coglycolic acid)(PGLA)を使用して、即時放出および/または調整放出がなされるように製剤してもよい。調整放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム式放出が含まれる。
【0151】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合では、計量された量を送達する弁によって投与量単位が決定される。本発明による単位は、通常、1〜100μgの式(I)の化合物を含有する計量された用量または「一吹き」が投与されるように取り決める。全体としての1日用量は、通常50μg〜20mgの範囲であり、この量を1回で投与してもよいし、またはより一般的には、その日を通して数回に分けて投与してよい。
【0152】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、例えば坐剤、ペッサリー、または浣腸剤の形で直腸投与または膣内投与してもよい。カカオ脂が旧来の坐剤基剤ではあるが、様々な代替物を適宜使用してよい。
【0153】
直腸/膣内投与のための製剤は、即効性放出および/または変更型放出がなされるように製剤してもよい。放出調整製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム式放出が含まれる。
【0154】
眼/耳への投与
本発明の化合物は、通常、pHを調整した等張性の無菌生理食塩水の微粉化懸濁液または溶液の液滴の形で、眼または耳に直接に投与してもよい。眼および耳への投与に適する他の製剤には、軟膏、生分解性(例えば吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えばシリコーン)植込錠、ウエファース、レンズ、およびニオソームやリポソームなどの微粒系もしくは小胞系が含まれる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、例えばゲランガムなどのポリマーを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と共に混ぜてもよい。このような製剤は、イオントフォレシスによって投与してもよい。
【0155】
眼/耳への投与のための製剤は、即効性放出および/または変更型放出がなされるように製剤してもよい。放出調整製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム式放出が含まれる。
【0156】
他の技術
本発明の化合物は、上述のいずれかの投与様式での使用に向けてその溶解性、溶解速度、矯味、生物学的利用能、および/または安定性を向上させるために、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体や、ポリエチレングリコールを含むポリマーなどの可溶性の高分子存在物と組み合わせることができる。
【0157】
薬物−シクロデキストリン複合体は、例えば、一般に大部分の剤形および投与経路に有用であることがわかっている。包含複合体および非包含複合体のどちらを使用してもよい。薬物との直接の複合体化に代わるものとして、シクロデキストリンを補助添加剤として、すなわち担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。こうした目的のために最も一般に使用されるのは、α、β、およびγの各シクロデキストリンであり、その例は、国際特許出願WO91/11172、WO94/02518、およびWO98/55148の中に見ることができる。
【0158】
成分キット
例えば、特定の疾患または状態を治療する目的のために、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合があるので、そのうちの少なくとも1種が本発明による化合物を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の同時投与に適するキットの形態にして好都合に組み合わせられることは、本発明の範囲内である。
【0159】
したがって、本発明のキットは、そのうちの少なくとも1種が本発明による式(I)の化合物を含有する2種以上の別個の医薬組成物と、容器、分割型ボトル、分割型フォイル小包装などの前記組成物を別々に保持する手段とを含む。そのようなキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装に使用されるなじみのブリスターパックである。
【0160】
本発明のキットは、別個の組成物を異なる投与間隔で投与するため、または別個の組成物を互いに対して滴定するために、異なる剤形、例えば経口と非経口とを投与するのに特に適する。服薬遵守を助けるために、キットは、投与の説明書を含むことが一般的であり、いわゆる記憶補助手段を設けてもよい。
【0161】
投与量
ヒト患者への投与では、本発明の化合物の総1日用量は、当然のことながら投与様式に応じて変わるが、一般に0.05mg〜100mgの範囲であり、0.1mg〜50mgの範囲であることが好ましく、0.5mg〜20mgの範囲であることがより好ましい。例えば、経口投与では、1mg〜20mgの総1日用量が必要となる場合があるが、静脈内の用量では、0.5mg〜10mgしか必要とならない場合がある。総1日用量は、1回で投与しても、数回に分けて投与してもよい。
【0162】
これらの投与量は、体重が約65kg〜70kgの平均的なヒト対象に基づく。医師ならば、乳幼児や高齢者などの、体重がこの範囲外である対象のための用量を容易に決定することができよう。
【0163】
疑わしさをなくすために、本明細書では、「治療」への言及には、治癒的、待期的、予防的治療が指すものが含まれる。
【0164】
本発明の5−HT作動薬は、特に胃食道逆流疾患の治療では、薬理活性のあるもう1種の化合物、または薬理活性のある2種以上の他の化合物と有益に組み合わせることができる。例えば、5−HT作動薬、特に、上で規定した式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和化合物は、
(i)ヒスタミンH受容体作動薬、例えば、ラニチジン、ラフチジン、ニザチジン、シメチジン、ファモチジン、ロキサチジン、
(ii)プロトンポンプ阻害剤、例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、テナトプラゾール、イラプラゾール、ランソプラゾール、
(iii)酸ポンプ拮抗薬、例えば、ソラプラザン(soraprazan)、レバプラザン(revaprazan)(YH−1885)、AZD−0865、CS−526、AU−2064、YJA−20379−8、
(iv)経口制酸剤混合物、例えば、Maalox(登録商標)、Aludrox(登録商標)、Gaviscon(登録商標)、
(v)粘膜保護剤、例えば、ポラプレジンク、エカベットナトリウム、レバミピド、テプレノン、セトラキサート、スクラルファート、クロロピリン−銅(chloropylline−copper)、およびプラウノトール、
(vi)GABA作動薬、例えば、バクロフェン、AZD−3355、
(vii)α2作動薬、例えば、クロニジン、メデトミジン、ロフェキシジン、モキソニジン、チザニジン、グアンファシン、グアナベンツ、タリペキソール、デキサメデトミジン、
(viii)キサンチン誘導体、例えば、テオフィリン、アミノフィリン、ドキソフィリン、
(ix)カルシウムチャネル遮断薬、例えば、アラニジピン、ラシジピン、ファロジピン(falodipine)、アゼルニジピン、クリニジピン(clinidipine)、ロメリジン、ジルチアゼム、ガロパミル、エホニジピン、ニソルジピン、アムロジピン、レルカニジピン、ベバントロール、ニカルジピン、イスラジピン、ベニジピン、ベラパミル、ニトレンジピン、バルニジピン、プロパフェノン、マニジピン、ベプリジル、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ファスジル、
(x)ベンゾジアゼピン作動薬、例えば、ジアゼパム、ザレプロン、ゾルピデム、ハロキサゾラム、クロナゼパム、プラゼパム、クアゼパム、フルタゾラム、トリアゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、トフィソパム、クロバザム、フルニトラゼパム、フルトプラゼパム、
(xi)プロスタグランジン類似体、例えば、プロスタグランジン、ミソプロストール、トレプロスチニル、エソプロステノール(esoprostenol)、ラタノプロスト、イロプロスト、ベラプロスト、エンプロスチル、イブジラスト、オザグレル、
(xii)ヒスタミンH作動薬、例えば、R−α−メチルヒスタミン、BP−294、
(xiii)抗胃酸剤(anti−gastric agent)、例えば、抗ガストリンワクチン、イトリグルミド(itriglumide)、Z−360、
(xiv)5−HT拮抗薬、例えば、ドラセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、アザセトロン、ラモセトロン、ミトラザピン、グラニセトロン、トロピセトロン、E−3620、オンダンセトロン、インジセトロン、
(xv)三環系抗うつ薬、例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、アモキサピン、ロフェプラミン、
(xvi)GABA作動薬、例えば、ギャバペンチン、トピラマート、シノラゼパム(cinolazepam)、クロナゼパム、プロガビド(progabide)、ブロチゾラム、ゾピクロン、プレガバリン、エスゾピクロン、
(xvii)オピオイド鎮痛薬、例えば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシン、
(xviii)ソマトスタチン類似体、例えば、オクトレオチド、AN−238、PTR−3173、
(xix)Clチャネル活性化薬、例えば、ルビプロストン、
(xx)選択的セロトニン再取込み阻害剤、例えば、セルトラリン、エスシタロプラム、フルオキセチン、ネファゾドン、フルボキサミン、シタロプラム、ミルナシプラン、パロキセチン、ベンラファキシン、トラマドール、シブトラミン、デュロキセチン、デスベンラファキシン(desvenlafaxine)、デポクキセチン(depocxetin)、
(xxi)抗コリン作用薬、例えば、ジシクロミン(dicyclomine)、ヒオシアミン(hyoscyamine)、
(xxii)緩下薬、例えば、Trifyba(登録商標)、Fybogel(登録商標)、Konsyl(登録商標)、Isogel(登録商標)、Regulan(登録商標)、Celevac(登録商標)、Normacol(登録商標)、
(xxiii)繊維製品、例えば、Metamucil(登録商標)、
(xxiv)鎮痙薬、例えば、メベベリン、
(xxv)ドーパミン拮抗薬、例えば、メトクロプラミド、ドンペリドン、レボスルピリド(levosulpiride)、
(xxvi)コリン作用薬、例えば、ネオスチグミン、
(xxvii)AChE阻害剤:ガランタミン、メトリホナート、リバスチグミン、イトプリド、ドネペジル、
(xxviii)タキキニン(NK)拮抗薬、特にNK−3、NK−2、NK−1拮抗薬、例えば、ネパズタント(nepadutant)、サレズタント(saredutant)、タルネタント(talnetant)、(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、ラネピタント(lanepitant)、ダピタント(dapitant)、3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]メチルアミノ]−2−フェニル−ピペリジン(2S,3S)
から選択された1種または複数の薬剤と組み合わせて、同時に、連続的に、または別々に投与することができる。
【0165】
生物活性の評価方法:
本発明の化合物の5−HT受容体結合親和性は、以下の手順によって決定される。
【0166】
膜の調製
屠殺場からブタ頭部の供給を受けた。線条体組織を切除し、秤量し、ポリトロンホモジナイザーを用い15容の50mM氷冷HEPES(pH7.5)中でホモジナイズした(最高速度で30秒間)。懸濁液を48,000gかつ4℃で15分間遠心分離した。得られたペレットを、適切な体積の50mM氷冷HEPESに再懸濁し、一定分量に分注し、使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0167】
屠殺場からウシ頭部の供給も受けた。線条体組織を切除し、秤量し、ポリトロンホモジナイザーを用い20容の50mM氷冷トリス−HCl(pH7.4)中でホモジナイズした(最高速度で30秒間)。懸濁液を20,000gかつ4℃で30分間遠心分離した。得られたペレットを15容の50mM氷冷トリス−HClに再懸濁し、ホモジナイズし、同じようにして再度遠心分離した。最終ペレットを、適切な体積の50mMトリス−HClに再懸濁し、一定分量に分注し、使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0168】
オスのSprague−Dawley(SD)系ラット(日本エスエルシー株式会社)から大脳皮質組織を取り出し、秤量し、10容の50mM氷冷トリス−HCl(pH7.5)の中に入れた。これをポリトロンホモジナイザーでホモジナイズし(最高速度で30秒間)、その後48,000gかつ4℃で15分間遠心分離にかけた。得られたペレットを、50mMの氷冷トリス−HClに再懸濁し、ホモジナイズし、同様にして再度遠心分離した。最終ペレットを適切な体積の50mMトリス−HClに再懸濁し、一定分量に分注し、使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0169】
ホモジネートのタンパク質濃度は、標準物質としてBSAを用い、ブラッドフォード法またはBCA protein method(Pierce)によって測定した。
【0170】
結合アッセイ
ブタもしくはウシ5−HT受容体およびラット5−HT受容体に対する化合物の親和性を、放射標識した特異的リガンド、すなわちGR113808({1−[2−(メチルスルホニル)エチル]−4−ピペリジニル}[メチル−H]−1H−インドール−3−カルボキシラート)およびBRL43694(1−メチル−N−(9−[メチル−H]−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−3−イル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド)を使用して評価した。化合物を、25〜100pMの[H]−GR113808(Amersham)、および最終体積0.8〜1mlの50mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁したブタもしくはウシ線条体膜タンパク質0.6〜1mgと共にインキュベートした。10〜50μMの5−HTを用い、非特異的結合を測定した。最終体積500μlの50mMトリス−HCl(pH7.5)に懸濁させた400μgのラット皮質膜タンパク質を使用して、0.3nMの[H]−BRL43694(NEN)の結合を測定した。10μMの5−HTを用い非特異的結合を測定した。
【0171】
プレートシェーカーに載せたプレートを室温で30分間インキュベートした。Brandell細胞収集器を使用し、4℃で60〜90分間かけて、0.2%のポリ(エチレンイミン)に予浸したWallac−Bフィルターで急速濾過して、アッセイを停止した。フィルターを1mlの氷冷50mMHEPESで3回洗浄し、電子レンジに入れ、または室温で乾燥させた。これらを袋に入れ、Meltilexシンチラント(Wallac)で加熱し、またはBetaplateScint(Wallac)に浸した。受容体によって結合された放射能を、Big−spotカウンター、Betaplateカウンター(Wallac)、またはLSカウンター(Packard)を使用して定量した。
【0172】
ヒト5−HT結合(1)
ヒト5−HT4(d)が形質移入されたHEK293細胞を社内で調製し、増殖させた。細胞を収集し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Boehringer、1:1000希釈)を補充した50mMのHEPES(4℃でpH7.4)中に懸濁させ、ハンディータイプのポリトロンPT1200ディスラプターセットをフルパワーで使用して氷上で30秒間ホモジナイズした。ホモジネートを4℃で30分間40,000×gで遠心分離した。次いで、ペレットを50mMのHEPES(4℃でpH7.4)に再懸濁し、もう一度同じようにして遠心分離した。最終ペレットを、適切な体積の50mM HEPES(25℃でpH7.4)に再懸濁し、ホモジナイズし、等分し、使用するまで−80℃で貯蔵した。一定分量の膜画分を使用して、BCAタンパク質アッセイキット(PIERCE)およびARVOsxプレートリーダー(Wallac)を用いるタンパク質濃度測定を行った。
【0173】
結合実験では、25μlの試験化合物を、25μlの[H]−GR113808(Amersham、最終0.2nM)、150μlの膜ホモジネート、およびWGA−SPAビーズ(Amersham)懸濁液(タンパク質10μgおよびSPAビーズ1mg/ウェル)と共に室温で60分間インキュベートした。1μMのGR113808(Tocris)による非特異的結合を最終濃度で測定した。1000rpmでの遠心分離にかけてインキュベートを終わらせた。受容体によって結合された放射能を、MicroBetaプレートカウンター(Wallac)で計数して定量した。
【0174】
以下で記載する実施例で調製したすべての化合物をこの方法によって試験したが、それらの化合物は、5−HT受容体での結合の阻害に関して0.3nM〜30nMのKi値を示した。
【0175】
ヒト5−HT結合(2)
ヒト5−HT4(d)が形質移入されたHEK293細胞を社内で調製し、増殖させた。細胞を収集し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Boehringer、1:1000希釈)を補充した50mMのトリス緩衝液(4℃でpH7.4)中に懸濁させ、ハンディータイプのポリトロンPT1200ディスラプターセットをフルパワーで使用して氷上で30秒間ホモジナイズした。ホモジネートを4℃で10分間40,000×gで遠心分離した。次いで、ペレットを50mMのトリス緩衝液(4℃でpH7.4)に再懸濁し、もう一度同じようにして遠心分離した。最終ペレットを、10mMのMgClを含有する適切な体積の50mMトリス緩衝液(25℃でpH7.4)に再懸濁し、ホモジナイズし、等分し、使用するまで−80℃で貯蔵した。一定分量の膜画分を、BCAタンパク質アッセイキット(PIERCE)およびARVOsxプレートリーダー(Wallac)を用いるタンパク質濃度測定に使用した。
【0176】
結合実験では、50μlの試験化合物を、50μlの[H]5−HT(Amersham、最終8.0nM)および400μlの膜ホモジネート(タンパク質300μg/試験管)と共に室温で60分間インキュベートした。50μMのGR113808(Tocris)による非特異的結合を最終濃度で測定した。BRANDEL収集器を使用しながら、0.2%のPEIに浸したガラスファイバー濾紙での急速減圧濾過にかけて、すべてのインキュベートを終わらせた後、50mMのトリス緩衝液(25℃でpH7.4)で3回洗浄した。受容体によって結合された放射能を、PackardのLSカウンターを使用する液体シンチレーション計数によって定量した。
【0177】
実施例のすべての化合物が5−HT受容体親和性を示した。
【0178】
機能アッセイ:
ラットの食道に5−HT受容体が存在し、TMM調製物中で部分的なアゴニズムを示し得ることは、文献で報告されている(G.S.Baxterら、Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmacol(1991年)第343巻:439〜446ページ;M.Yukikoら、JPET(1997年)第283巻:1000〜1008ページ;およびJ.J.Reevesら、Br.J.Pharmacol.(1991年)第103巻:1067〜1072ページを参照のこと)。より詳細には、部分アゴニスト活性は、以下の手順に従って測定することができる。
【0179】
体重が250〜350gのオスのSD系ラット(Charles River)に針を刺し、次いで首を脱臼させて屠殺した。(遠位末端に印を付けるために胃の一部を含む)胃のすぐ近くから気管の高さまでの食道を切除し、次いで新鮮なクレブス液の中に入れた。
【0180】
鉗子を使用して、外側の骨格筋層を、下にある平滑筋層から(胃から気管支に向けて)一息で剥ぎ取って取り出した。残った平滑筋の内側の管は、TMMであることがわかった。これを、本来の「胃の末端」から2cmに切り、残りを廃棄した。
【0181】
完全な「開いた」管としてのTMMを、温(32℃)曝気クレブスで満たした5ml容器官槽に縦方向に据え付けた。組織に750mgの最初の張力をかけ、60分間かけて釣り合わせた。釣り合わせる期間の間に組織を15分間隔で2回引っ張り直した。この間ポンプ流速は2ml/分にセットした。
【0182】
釣り合わせた後、ポンプのスイッチを切った。組織を1μMのカルバコールにさらし、収縮させ、15分間以内に安定な収縮プラトーに到達させた。次いで、組織を1μMの5−HTにさらした(これによって組織に呼び水を差した)。組織は、5−HTに応答してかなり速やかに(1分間以内に)弛緩した。弛緩が最大になり、測定を終え次第、少なくとも1分間、かつもとの基線(カルバコールおよび5−HTにさらす前)が戻るまで(基線は通常、最初に釣り合わせた後のもとの基線より下に落ち込む)、組織を最大速度(66ml/分)で洗浄した。ポンプ流速を2ml/分に落とし、組織を60分間放置した。
【0183】
0.1nM〜1μMの範囲を半対数単位で増加していく、5−HTの累積濃度−効果曲線(CEC)を構築した(データ解析用の5−HT曲線1)。各供与の間の接触時間は、3分間、またはプラトーが確立するまでとした。組織は、槽中の5−HT濃度が増大するにつれてよりすばやく応答した。曲線が終わる時点で、受容体の感度が落ちるのを避けるために、組織をできるだけすぐに(最大速度で)洗浄した。ポンプ速度を2ml/分に落とし、組織を60分間放置した。
【0184】
5−HT(時間対照組織用)、別の5−HTアゴニスト(標準)、または試験化合物(データ解析用の曲線2)に対して第2のCECを実施した。別の5−HTアゴニストおよび試験化合物では接触時間を様々に変え、特定の各作用物質に対する組織各個の応答に従って調整した。試験化合物にさらした組織では、最後の濃度の試験化合物に続いて、高濃度(1μM)の5−HTアンタゴニスト(SB203、186:1H−インドール−3−カルボン酸、2−(1−ピペリジニル)エチルエステル、Tocris)を槽に加えた。これは、アゴニストによって誘発された弛緩(存在すれば)が逆転し得るかどうかを見るためのものであった。SB203、186は、5−HTによって誘発された弛緩を逆転させ、カルバコールによって誘発された、組織のもとの張り具合を回復させた。
【0185】
試験化合物のアゴニスト活性は、組織をSB203、186などの100nMの標準5−HTアンタゴニストと共に予めインキュベートすることで確認した。曲線2の前にカルバコールを加える5分前にSB203、186を槽に加えた。データ解析では、組織を「対」にする、すなわち、一方の組織のSB203、186なしの試験化合物と、別の組織のSB203、186存在下の試験化合物とを比較しなければならない。曲線3を実施する、すなわち、5−HT曲線1の後の試験化合物曲線2(−SB203、186)のまた後の試験化合物曲線3(+SB203、186)を実施することは不可能であった。
【0186】
ヒト5−HT4(d)形質移入HEK293細胞における、アゴニストよって誘発されるcAMP上昇
ヒト5−HT4(d)を形質移入したHEK293細胞を社内で樹立させた。37℃の5%CO存在下、10%のFCS、20mMのHEPES(pH7.4)、200μg/mlのヒグロマイシンB(Gibco)、100単位/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM中で細胞を増殖させた。
【0187】
細胞を60〜80%の集密度に増殖させた。化合物で処置する前の日に、標準を透析FCS(Gibco)に替え、細胞を終夜インキュベートした。
【0188】
96ウェルプレート(12.5μl/ウェル)に化合物を準備した。細胞をPBS/1mM EDTAと共に収集し、遠心分離にかけ、PBSで洗浄した。アッセイ開始時に、細胞ペレットを、20mMのHEPES、10μMのパルギリン(Sigma)、および1mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma)を補充したDMEMに1.6×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、室温で15分間放置した。プレートに細胞を加えて(12.5μl/ウェル)反応を開始した。室温で15分間インキュベートした後、1%のTriton X−100を加えて反応を止め(25μl/ウェル)、プレートを室温で30分間放置した。Homogenous time−resolved fluorescence(Schering)に基づくcAMP検出を、製造者の指示に従って行った。ARVOsxマルチラベルカウンター(Wallac)を使用して、HTRFを測定した(励起320nm、発光665nm/620nm、遅延時間50μs、空白時間400μs)。
【0189】
各ウェルの620nmと665nmでの蛍光強度の比に基づいてデータを解析した後、cAMP標準曲線を使用してcAMPの定量化を行った。各化合物によって誘発されたcAMP産生の増強を、1000nMのセロトニン(Sigma)によって産生されたcAMPの量に対して正規化した。
【0190】
実施例のすべての化合物が、5−HT受容体作動活性を示した。
【0191】
ヒトドフェチリド結合
ヒトHERGが形質移入されたHEK293S細胞を社内で調製し、増殖させた。細胞を収集し、50mMのトリス−HCl(4℃でpH7.4)に懸濁させ、ハンディータイプのポリトロンPT1200ディスラプターセットをフルパワーで使用して氷上で20秒間ホモジナイズした。ホモジネートを4℃で20分間48,000×gで遠心分離した。次いで、ペレットを再懸濁し、ホモジナイズし、もう一度同じようにして遠心分離した。最終ペレットを、適切な体積の50mMトリス−HCl、10mM KCl、1mM MgCl(4℃でpH7.4)に再懸濁し、ホモジナイズし、等分し、使用するまで−80℃で貯蔵した。一定分量の膜画分を使用して、BCAタンパク質アッセイキット(PIERCE)およびARVOsxプレートリーダー(Wallac)を用いるタンパク質濃度測定を行った。
【0192】
結合アッセイは、96ウェルプレートにおいて合計体積200μlで実施した。20μlの試験化合物を、20μlの[H]−ドフェチリド(Amersham、最終5nM)および160μlの膜ホモジネート(タンパク質25μg)と共に室温で60分間インキュベートした。10μMのドフェチリドによる非特異的結合を最終濃度で測定した。Skatron細胞収集器を使用しながら、4℃でpH7.4の50mMのトリス−HCl、10mMのKCl、1mMのMgClと共に、0.5%の予浸GF/B Betaplateフィルターでの急速減圧濾過にかけてインキュベートを終わらせた。フィルターを乾燥させ、試料袋に入れ、Betaplate Scint.で満たした。フィルターに結合した放射能を、WallacのBetaplateカウンターで計数した。
【0193】
HERGアッセイ
HERGカリウムチャネルを安定に発現させるHEK293細胞を電気生理学試験に使用した。HEK細胞にこのチャネルを安定に形質移入する方法は、ほかの場所で見ることができる(Z.Zhouら、1998年、Biophysical journal、第74巻、230〜241ページ)。実験日の前に、培養フラスコから細胞を収集し、カバーガラス上の10%のFCSを含む標準MEM培地に播いた。播かれた細胞を、95%O/5%COの雰囲気に保たれた37℃のインキュベーターで貯蔵した。収集後15〜28時間の間に細胞を調査した。
【0194】
ホールセルモードの標準のパッチクランプ法を使用して、HERG電流を調査した。実験の際、細胞に、次の組成(mM)、すなわちNaCl(130)、KCl(4)、CaCl(2)、MgCl(1)、グルコース(10)、HEPES(5)をNaOHでpH7.4にしたものからなる標準の外部溶液を灌流させた。パッチクランプアンプ、および次の組成(mM)、すなわちKCl(130)、MgATP(5)、MgCl(1.0)、HEPES(10)、EGTA(5)をKOHでpH7.2にしたものからなる標準の内部溶液で満たされるときに1〜3Mオームの抵抗を有するパッチピペットを使用して、ホールセル記録を行った。この先の実験では、接触抵抗が15MΩを下回り、シール抵抗が>1GΩである細胞のみを受け入れた。最大で80%までの直列抵抗補償を適用した。漏れは差し引かなかった。しかし、許容される接触抵抗は、記録された電流の大きさおよび安全に使用できる直列抵抗補償のレベルに応じて決まるものであった。ホールセル配置、およびピペット溶液による細胞透析に十分な数値を実現した後(>5分間)、細胞に標準の電圧プロトコルを適用して、膜電流を誘発した。電圧プロトコルは次のとおりである。膜を、−80mV〜+20mVの保持電位から1000msの間脱分極させた。この後、電圧傾斜が保持電位に戻って弱くなった(速度0.5mVmsec−1)。電圧プロトコルは、実験を通して4秒毎に細胞に適用した(0.25Hz)。傾斜の間に−40mV付近で誘発されたピーク電流の振幅を測定した。外部溶液中で安定な誘発電流応答が得られたなら、溶媒(標準外部溶液中0.5%のDMSO)をぜん動ポンプによって10〜20分間適用した。溶媒対照条件下での誘発電流応答の振幅の変化が最小限に抑えられるという前提で、0.3、1、3、または10μMの試験化合物を10分間適用した。この10分間は、ポンプによって供給溶液が溶液溜めから記録チャンバーへと管を通過する時間を含むものであった。細胞を化合物溶液にさらす時間は、チャンバー中の薬物濃度が企図する濃度に十分に到達した後、5分間を超えるものとした。最後に、細胞を特異的IKr遮断薬である高用量のドフェチリド(5μM)にさらして、反応しない内発性の電流を評価した。
【0195】
実験はすべて室温(23±1℃)で実施した。誘発膜電流は、コンピューターによってオンラインで記録し、500〜1KHzでフィルタ処理し(Bessel−3dB)、さらにパッチクランプアンプおよび特殊なデータ解析ソフトウェアを使用して1〜2KHzでサンプリングした。40mV付近で生じたピーク電流振幅は、コンピューターによってオフラインで測定した。
【0196】
対照条件下および薬物存在下での10件の振幅値の相加平均を算出した。各実験での減少度(%)Iは、正規化電流値から、式I=(1−I/I)×100(式中、Iは薬物存在下での平均電流値であり、Iは対照条件下での平均電流値である)を使用して得た。各薬物濃度または年齢一致対照について別々の実験を実施し、各実験の相加平均を試験の結果とした。
【0197】
ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)における半減期
試験化合物(1μM)を、96穴ディープウェルプレートで、3.3mMのMgClおよび0.78mg/mLのHLM(HL101)の入った100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)と共に37℃でインキュベートした。反応混合物を非P450群とP450群の2群に分けた。P450群の反応混合物にはNADPHのみを加えた。0、10、30、および60分の各時点(ここで、0分の時点は、P450群の反応混合物にNADPHを加えた時期を示したものである)で、一定分量のP450群サンプルを集めた。非P450群サンプルの一定分量は、−10および65分の各時点で集めた。集めた各一定分量を、内部標準を含有するアセトニトリル溶液での抽出にかけた。沈殿したタンパク質を遠心機でスピンダウンさせた(2000rpm、15分間)。上清の化合物濃度をLC/MS/MSシステムによって測定した。
【0198】
半減期の値は、時間に対する化合物/内部標準のピーク面積比の自然対数をプロットして得た。各点を通して最もフィットする線の傾きが代謝率(k)を与えた。これを次の等式を使用して半減期の値に変換した。
半減期=ln2/k
【0199】
ラットでの胃排出モデル法:
化合物がラットの胃排出に及ぼす影響を、D.A.Dropplemanら(J.Pharmacol.Methods第4巻、227〜230ページ(1980年))の方法の変法によって調べた。S.Uekiら、Arzneim.−Forsch./Drug Res.第49巻(II)、618〜625ページ(1999年))の方法に従って、試験食、すなわち無脂肪カロリー食を調製した。IGS−SD系ラット(オス、7週齢、230〜270g)を日本チャールスリバー株式会社(厚木市)から購入した。これらのラットを1週間順化させた後に実験に使用した。実験では、実験の15時間前にラットを絶食させ、水には自由に接触させた。実験開始の45分前に、ケージから水を取り出してラットに水を飲ませなくした。試験食を与える5分前に、体重100gあたり0.1mlの体積の試験化合物、シサプリド、または賦形剤を適切な経路でラット(n=8〜10)に投与した。シサプリド(3mg/kg)は、実験の正の対照として使用した。ラットに胃管栄養法によって3mlの試験食を与え、ケージに戻した。食餌を与えてから30分後、ラットをCOにさらしてと殺した。正中開腹の後、胃の下部食道括約筋(LES)および幽門の箇所を結紮する。次いで、胃を取り出し、秤量した(A)。胃を開き、0.9%生理食塩水ですすいだ後、表面にティシューを当てて余分な液体を取り除き、再度秤量した(B)。糞を食べ、または、人為的なミスのあったラットを除いた後、個々の動物の胃排出速度を次式によって算出した。
GE速度(%)=(A−B)/試験食重量
【0200】
意識のあるイヌにおける胃運動性:
イヌの外科手術は、Z.Itohら(Gastroenterol.Jpn.、第12巻、275〜283ページ(1977年))の方法の変法によって実施した。試験化合物がイヌの胃運動性に及ぼす影響を、N.Toshidaら(J.Pharmacol.Exp/Ther.、第257巻、781〜787ページ(1991年))の方法の変法によって調べた。
【0201】
絶食状態での評価:動物の胃部に歪ゲージ力変換器を長期にわたって埋め込み、実験前に終夜絶食させた。化合物の投与後に遠隔測定システムによって胃運動性を8時間継続して記録した。胃腸運動性の変化の量を見積もるために、それぞれ2時間の期間中の収縮曲線下面積を消化間期移動収縮のピーク高さで割ったものとして運動指数を求めた。
【0202】
食後状態での評価:動物の胃部に歪ゲージ力変換器を長期にわたって埋め込み、実験前に終夜絶食させた。固形食(100グラム)を与えて食後の運動性を誘発し、化合物を2時間後に投与した。化合物の投与後に遠隔測定システムによって胃運動性を8時間継続して記録した。胃腸運動性の変化の量を見積もるために、それぞれ1時間の期間中の収縮曲線下面積を化合物投与前の1時間の収縮曲線下面積で割ったものとして運動指数を求めた。
【0203】
本発明の式(I)の化合物は、経口、非経口、または局所のいずれかの経路によって動物に投与することができる。一般に、これらの化合物は、1日0.3mg〜750mg、好ましくは1日10mg〜500mgの範囲の用量でヒトに投与することが最も望ましいが、治療対象の体重および状態、治療する疾患状態、および選択された特定の投与経路に応じて必然的に変動が生じる。しかし、例えば、炎症の治療では、体重1kgあたり1日0.06mg〜2mgの範囲の投与量レベルを用いることが最も望ましい。
【0204】
本発明の化合物は、以前に指摘した上記経路のいずれかによって単独で、または薬学的に許容できる担体もしくは希釈剤と共に投与してよく、このような投与は、1回または複数回の用量で実施することができる。より詳細には、本発明の新規な治療薬は、広範な種類の異なる剤形にして投与することができ、すなわち、薬学的に許容できる様々な不活性担体と組み合わせて、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ剤、ハードキャンディー、粉末、スプレー、クリーム、塗薬、坐剤、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射溶液、エリキシル、シロップなどの形にすることができる。そのような担体には、個体希釈剤もしくは充填剤、無菌水性媒質、および様々な非毒性有機溶媒などが含まれる。さらに、経口医薬組成物には、適切に甘味および/または香味を付けることができる。一般に、本発明の治療上有効な化合物は、こうした剤形中に5重量%〜70重量%、好ましくは10重量%〜50重量%の範囲の濃度レベルで存在する。
【0205】
経口投与では、微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カリウム、グリシンなどの様々な賦形剤を含有する錠剤を、デンプン、好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、もしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩などの様々な崩壊剤、およびポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、アカシアのような造粒結合剤と共に用いることができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの滑沢剤は、打錠する目的のためにしばしば非常に有用である。同様の種類の固体組成物を、ゼラチンカプセルの充填材として使用してもよく、これに関して好ましい材料には、ラクトース(乳糖)、ならびに高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。経口投与に水性懸濁液および/またはエリキシルが望ましいとき、活性成分は、様々な甘味剤もしくは着香剤、着色物質もしくは染料、および所望であればさらに乳化剤および/もしくは懸濁化剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびこれらの様々な組合せなどの希釈剤と組み合わせることができる。
【0206】
非経口投与では、本発明の化合物をゴマ油もしくはラッカセイ油またはプロピレングリコール水溶液に溶かした溶液を用いることができる。水溶液は、必要であれば適切に緩衝剤処理し(好ましくはpH>8)、液体希釈剤をまず等張性にしなければならない。このような水溶液は、静脈内注射の目的に適する。油性溶液は、関節内、筋肉内、および皮下注射の目的に適する。これらすべての溶液の無菌条件下での調製が、当業者によく知られている標準の製薬技術によって容易になされる。さらに、皮膚の炎症状態を治療するとき、本発明の化合物を局所に投与することも可能であり、これは、標準の薬学の慣行に従って、クリーム、ゼリー、ゲル、ペースト、軟膏などとして行うことが好ましいといえる。
【実施例】
【0207】
本発明を以下の非限定的な実施例の中で説明する。実施例では、別段の記述がない限り、すべての操作は、室温または周囲温度、すなわち18〜25℃の範囲で実施した。溶媒の蒸発は、減圧下でロータリーエバポレーターを最高60℃の浴温度で使用しながら実施した。反応は薄層クロマトグラフィー(tlc)によってモニターしており、反応時間は例示のために示すにすぎない。示した融点(m.p.)は補正していない(多形が異なる融点を与えるかもしれない)。単離されたすべての化合物の構造および純度は、次の技術、すなわち、tlc(Merck製シリカゲル60F254プレコーティッドTLCプレートまたはMerck製NH254sプレコーティッドHPTLCプレート)、質量分析、核磁気共鳴(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、微量分析、粉末X線回折(PXRD)パターンのうちの少なくとも1つによって確実なものにした。収率は、例示のために示すにすぎない。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Merck製シリカゲル60(230〜400メッシュASTM)または富士シリシア製クロマトレックス(登録商標)DU3050(アミノ型、30〜50μm)を使用して実施した。低分解能質量スペクトルデータ(EI)は、Integrity(Waters)質量分析計またはAutomass120(JEOL)質量分析計で得た。低分解能質量スペクトルデータ(ESI)は、ZMD2(Waters)質量分析計またはQuattroII(Micromass)質量分析計で得た。NMRデータは、別段の指摘がない限り重水素化したクロロホルム(99.8%D)またはジメチルスルホキシド(99.9%D)を溶媒として使用し、百万分率(ppm)で内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)を基準として、270MHz(JEOL JNM−LA270分光計)または300MHz(JEOL JNM−LA300)で測定した。使用した従来の略語は、s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項、br.=ブロードなどである。IRスペクトルは、島津製作所製赤外分光計(IR−470)によって測定した。旋光は、JASCO DIP−370デジタル旋光計(日本分光株式会社)を使用して測定した。PXRDパターンは、自動サンプル交換装置、2θ−θ軸ゴニオメーター、ビーム発散スリット、第2モノクロメーター、およびシンチレーションカウンターを装備したリガク製RINT−TTR粉末X線回折計を使用して測定した。分析用のサンプルは、アルミニウム製サンプルホルダーに粉末を詰めて調製した。試料を60.00rpmまで回転させ、4°/分で走査した。化学記号は、その通常の意味を有する。b.p.(沸点)、m.p.(融点)、l(リットル)、ml(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq.(当量)。
【0208】
(実施例1)
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0209】
【化25】

ステップ1。({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)カルバミン酸t−ブチル
【0210】
【化26】

(ピペリジン−4−イルメチル)カルバミン酸t−ブチル(22.3g、104mmol)のメタノール溶液を攪拌したものに、周囲温度で1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン(14.2g、124mmol、Satyamurthy、Nagichettiarら、Phosphorus Sulfur、1984年、第19巻、113ページ)を加えた。
【0211】
次いで、混合物を60℃で4時間加熱した。揮発性成分を蒸発させて除去し、得られる粘性の油を、ヘキサンとジエチルエーテルの混合物で沈殿させた。沈殿を濾過によって収集し、ヘキサンと2−プロパノールの混合物で再結晶させて、表題化合物14.2g(42%)を無色の粉末として得た。
MS(ESI)m/z:329(M+H)。
m.p.:104℃。
H−NMR(CDCl)δ:1.23〜1.31(2H,m)、1.44(9H,s)、1.51〜1.69(8H,m)、2.27〜2.38(4H,m)、2.83〜2.88(2H,m)、3.00(2H,t,J=6.2Hz)、3.70〜3.85(4H,m)。
元素分析:C1732の計算値:C,62.17;H,9.82;N,8.53。実測値:C,62.07;H,9.92;N,8.58。
【0212】
ステップ2。4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール
【0213】
【化27】

({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)カルバミン酸t−ブチル(50.28g、153mmol)のメタノール溶液に、室温でジオキサン中4N HCl(200mL、800mmol)を加えた。4時間後、揮発性材料を蒸発させて除去した。得られる非晶質物を、ジエチルエーテル/メタノール(5:1)で沈殿させた。沈殿を収集し、氷冷6N NaOH水溶液(200mL)に徐々に加えた。混合物を、ジクロロメタン/メタノール(10:1)での抽出に4回かけた。有機相を合わせてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、24.90g(99%)の表題化合物を淡褐色の非晶質物として得た。
MS(ESI)m/z:229(M+H)。
H−NMR(CDCl)δ:1.19〜1.28(2H,m)、1.44〜1.63(8H,m)、1.65〜1.71(2H,m)、2.32(2H,s)、2.35(2H,t,J=11.0Hz)、2.57(2H,d,J=5.7Hz)、2.85〜2.90(2H,m)、3.70〜3.81(4H,m)。
【0214】
ステップ3。N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0215】
【化28】

1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(J.Med.Chem.1999年、第42巻、2870〜2880ページ)(23.0g、130mmol)およびトリエチルアミン(54.6mL、392mmol)のテトラヒドロフラン(300mL)中混合物を攪拌したものに、トリホスゲン(38.8g、130mmol)の入ったテトラヒドロフラン(200mL)を室温で徐々に加えた。次いで、混合物を80℃で4時間加熱した。冷却した後、混合物に、4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)(24.9g、109mmol)およびトリエチルアミン(45mL、109mmol)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液を加えた。次いで、混合物を80℃で6時間加熱した。冷却した後、混合物に飽和NaHCO水溶液を加えた。混合物を酢酸エチル(500mL×4)での抽出にかけた。抽出物をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(3:1)を溶離液とするアミノプロピル−シリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、31.3g(67%)の表題化合物を白色の固体として得た。
H NMR(DMSO−d)δ8.80(1H,br t,J=6.0Hz)、8.06(1H,m)、7.41(1H,m)、7.19(1H,dt,J=1.5,7.7Hz)、7.12(1H,dt,J=1.3,7.7Hz)、4.64(1H,七重線,J=7.0Hz)、4.08(1H,br s)、3.68〜3.44(4H,m)、3.19(2H,t,J=6.0Hz)、2.89(2H,m)、2.20(2H,br s)、2.09(2H,m)、1.68〜1.10(9H,m)、1.47(6H,d,J=7.0Hz)。
MS(ESI)m/z:431(M+H)。
元素分析:C23H34N4O4の計算値:C,64.16;H,7.96;N,13.01。実測値:C,64.13;H,7.97;N,12.99。
【0216】
ステップ4。N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(27.0g、62mmol)のメタノール(150mL)溶液を攪拌したものに、周囲温度で10%のHCl−メタノール(100mL)を加えた。30分後、揮発性材料を蒸発させて除去した。得られる非晶質物を、エタノール/ジエチルエーテルによって沈殿させた。沈殿を、エタノール/ジエチルエーテル(1:1)から再結晶させて、26.5g(90%)の表題化合物を無色の粉末として得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:1.49(6H,d,J=6.9Hz)、1.50〜1.70(4H,m)、1.76〜1.91(5H,m)、3.00〜3.12(3H,m)、3.15〜3.45(3H,m)、3.60〜3.70(6H,m)、4.61〜4.69(1H,m)、5.46〜5.49(1H,m)、7.13(1H,t,J=7.8Hz)7.20(1H,t,J=7.8Hz)、7.42(1H,d,J=7.9Hz)、8.07(1H,d,J=8.0Hz)、8.86(1H,m)、9.61〜9.81(1H,m)
MS(ESI)m/z:431(M+H)。
元素分析:C23H35N4O4Clの計算値:C,59.15;H,7.55;N,2.00。実測値:C,58.81;H,7.57;N,11.85。
【0217】
4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール合成の代替経路を以下で述べる。
【0218】
ステップ1。({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)カルバミン酸ベンジル
【0219】
【化29】

(ピペリジン−4−イルメチル)カルバミン酸ベンジル(7.77g、31.3mmol、Bose,D.Subhasら、Tetrahedron Lett.、1990年、第31巻、6903ページ)および1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン(4.29g、37.6mmol、Satyamurthy、Nagichettiarら、Phosphorus Sulfur、1984年、第19巻、113ページ)のメタノール(93mL)中混合物を室温で20時間攪拌した。次いで、混合物を8時間還流させた。室温に冷却した後、真空中で溶媒を除去した。残渣を、メタノール/ジクロロメタン(1:20)を溶離液とするシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、5.60g(49%)の表題化合物を無色の油として得た。
【0220】
ステップ2。4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール
【0221】
【化30】

({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)カルバミン酸ベンジル(5.60g、15.5mmol、ステップ1)およびパラジウム担持活性炭(10重量%、1.20g)のメタノール(250mL)中混合物を、室温で20時間かけて水素化にかけた。次いで、この混合物をCeliteパッドで濾過し、濾液を真空中で濃縮して、3.30g(94%)の表題化合物を黄色がかった油として得た。
【0222】
以下は、4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール合成の別の経路である。
【0223】
ステップ1。1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−カルボキサミド
ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(0.791g、3.52mmol)および2N NaOH水溶液(1.76mL、3.52mmol)のアセトニトリル(1.62mL)中混合物を50℃で30分間攪拌した。次いで、この混合物にテトラヒドロ−4H−ピラン−4−オン(0.324g、3.20mmol)を加え、得られる混合物を50℃で3時間攪拌した。反応混合物に室温で飽和NaCl水溶液(10mL)を加え、有機層をCHCl(20mL)での抽出にかけ、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。
【0224】
溶媒を除去した後、残渣にMeOH(1.62mL)およびイソニペコタミド(0.381g、2.88mmol)を加え、混合物を75℃のN中で14時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をMeOH−アセトニトリルから再結晶させて、0.484g(2.00mmol)の表題化合物を白色の固体として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ7.19(br s,1H)、6.69(br s,1H)、4.10(s,1H)、3.70〜3.50(m,4H)、2.95〜2.85(m,2H)、2.20(s,2H)、2.15〜1.85(m,3H)、1.65〜1.50(m,6H)、1.40〜1.25(m,2H)。
【0225】
ステップ2。4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オールトシラート
NaBH(0.505g、13.2g)のトリエチレングリコールジメチルエーテル(12.8mL)懸濁液を攪拌したものに、80℃のN中で、1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−カルボキサミド(0.640g、2.64mmol)およびAcOH(0.765mL、13.2mmol)のトリエチレングリコールジメチルエーテル(3.2mL)溶液を滴下した。反応混合物を、pH値が<3になるまで2N HCl水溶液で失活させ、次いで、得られる混合物を室温で1時間攪拌した。この混合物に、水層のpH値が>10になるまでCHCl(30mL)および2N NaOH水溶液を加えた。有機層をCHClでの抽出に3回かけ、有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。
【0226】
残りの溶液(表題化合物が溶け込んだトリエチレングリコールジメチルエーテル)に、60℃でp−トルエンスルホン酸一水和物(0.408g、2.11mmol)のMeOH(1.28mL)溶液を加え、次いで混合物を室温に冷却した。現れた固体を吸い込んで収集し、ヘキサンで洗浄して、表題化合物(0.340g、0.849mmol)を白色の固体として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ7.61(br s,2H)、7.55〜7.40(m,2H)、7.15〜7.05(m,2H)、4.11(br s,1H)、3.70〜3.45(m,4H)、2.95〜2.85(m,2H)、2.68(d,J=7.0,2H)、2.29(s,3H)、2.22(s,2H)、2.07(t,J=11.0,2H)、1.65〜1.45(m,4H)、1.55〜1.35(m,1H)、1.40〜1.25(m,2H)、1.30〜1.10(m,2H)。
【0227】
(実施例2)
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミドヘミエジシラート
【0228】
【化31】

N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド1.51g(3.51mmol)を酢酸エチル(10mL)およびメタノール(10mL)に溶かして攪拌した溶液に、1,2−エタンジスルホン酸二水和物397mg(1.75mmol)のメタノール(5.0mL)溶液を加え、得られる懸濁液を室温で5時間攪拌した。混合物を濾過し、最初の収穫物を100℃の真空中で5時間乾燥させて、1.78gの粗生成物を得た。1.61gmの粗生成物をメタノール(20mL)に溶解させ、溶液に酢酸エチル(20mL)を加えた。得られる懸濁液を室温で2時間攪拌した。混合物を濾過し、収穫物を100℃の真空中で4時間乾燥させて、表題化合物1.13g(61%)を無色の結晶として得た。
MS(ESI)m/z:431(M+H)
m.p.:233℃。
IR(KBr)ν:2866、1738、1683、1558、1373、1217、1028、756cm−1
H NMR(DMSO−d)δ8.96(0.25H,br s)、8.85(1H,br t,J=6.0Hz)、8.61(0.75H,br s)、8.06(1H,m)、7.43(1H,m)、7.21(1H,dt,J=1.3,7.7Hz)、7.13(1H,dt,J=1.2,7.7Hz)、5.26(1H,br s)、4.65(1H,七重線,J=7.0Hz)、3.74〜2.92(12H,m)、2.64(2H,s)、2.00〜1.35(9H,m)、1.47(6H,d,J=7.0Hz)。
元素分析:C2334・0.5 Cの計算値:C,54.84;H,7.09;N,10.66;S,6.10。実測値:C,54.50;H,7.24;N,10.60;S,6.08。
PXRDパターン角度(2−θ°):10.2、11.9、16.3、17.3、17.6、21.8、24.2。
【0229】
(実施例3)
3−イソプロピル−N−{[1−(2−モルホリン−4−イル−2−オキソエチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド一シュウ酸塩
【0230】
【化32】

表題化合物は、4−(クロロアセチル)モルホリン(B.G.Hazra、V.S.Pore、S.P.Maybhate、Org.Prep.Proced.Int.、1989年、第21巻、355〜8ページ)を使用し、調製例1のステップ3で示すものと類似の方法によって調製した。
MS(ESI)m/z:440(M+H)
m.p.:194.2℃。
IR(KBr)ν:3443、2934、1765、1728、1686、1659、1612、1551cm−1
H−NMR(CDCl)(遊離塩基)δ:9.00〜8.88(1H,m)8.30〜8.22(1H,m)、7.23〜7.12(3H,m)、4.78〜4.62(1H,m)、3.66(4H,s)、3.70〜3.58(4H,m)、3.32(2H,t,J=6.3Hz)、3.15(2H,s)、2.94〜2.84(2H,m)、2.14〜2.01(2H,m)、1.86〜1.23(5H,m)、1.56(6H,d,J=7.0Hz)。
H−NMR(DMSO−d)(塩型)δ:8.92〜8.80(1H,m)8.07(1H,d,J=7.7Hz)、7.45(1H,d,J=7.5Hz)、7.26〜7.06(2H,m)、4.76〜4.56(1H,m)、4.10〜2.60(18H,m)、1.90〜1.40(3H,m)、1.49(6H,d,J=6.9Hz)。
元素分析:C2535の計算値:C,56.27;H,6.61;N,13.13。実測値:C,56.25;H,6.82;N,12.98。
【0231】
(実施例4)
3−イソプロピル−N−{([1−(3−モルホリン−4−イル−3−オキソプロピル)ピペリジン−4−イル]メチル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド一シュウ酸塩
【0232】
【化33】

3−イソプロピル−2−オキソ−N−(ピペリジン−4−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(150mg、0.474mmol)および4−(3−クロロ−プロパノイル)−モルホリン(G.Mattalia、C.Serafini、U.Bucciarelli、Farmaco,Ed.Sci.、1976年、第31巻、457〜67ページ)(300mg、1.185mmol)を4.7mlのN,N−ジメチルホルムアミドに混ぜた混合物に、トリエチルアミン(0.23ml、1.659mmol)およびヨウ化ナトリウム(178ml、1.185mmol)を加えた。反応混合物を90℃で6日間攪拌した。次いで、この反応混合物を蒸発によって濃縮した。残渣をNaHCO水溶液10mlで希釈し、ジクロロメタン30mlでの抽出に3回かけた。抽出物を合わせてMgSOで乾燥させ、濃縮した。分取TLC(溶離液:CHCl/メタノール=10/1)にかけると、褐色の非晶質の油130mg(60%)が得られた。この非晶質物(130mg)を3mlのメタノールに溶解させ、24mgのシュウ酸を2mlのMeOHに溶かした溶液によって酸性化した。混合物を濃縮した。得られる残渣をAcOEt−EtOHで結晶化すると、白色の非晶質物107mgが表題化合物として得られた。
MS(ESI)m/z:458(M+H)
IR(KBr)ν:3443、2941、1732、1697、1686、1647、1638、1558cm−1
H−NMR(CDCl)(遊離塩基)δ:9.06〜8.94(1H,br)8.24〜8.19(1H,m)、7.26〜7.10(3H,m)、4.76〜4.64(1H,m)、3.75〜2.80(10H,m)、2.60〜1.30(13H,m)、1.56(6H,d,J=7.0Hz)。
H−NMR(CDCl)(塩型)δ:9.10〜9.00(1H,m)8.27〜8.17(1H,m)、7.33〜7.12(3H,m)、4.87〜4.62(1H,m)、3.78〜2.65(16H,m)、2.20〜1.60(7H,m)、1.56(6H,d,J=6.9Hz)。元素分析:C2637・0.9C・1.3HOの計算値:C,51.21;H,6.40;N,10.74。実測値:C,50.90;H,6.26;N,11.13。
【0233】
(実施例5)
3−イソプロピル−N−{[1−(4−モルホリン−4−イル−4−オキソブチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド一シュウ酸塩
【0234】
【化34】

表題化合物は、4−(4−クロロ−ブチリル)−モルホリン(Schlesinger、Prill、B.G.Hazra、J.Amer.Chem.Soc.、1956年、第78巻、6123〜6124ページ)を使用し、実施例4で示したものと類似の方法によって調製した。
MS(ESI)m/z:472(M+H)
IR(KBr)ν:3443、1728、1686、1647〜1616、1551cm−1
H−NMR(CDCl)(遊離塩基)δ:9.02〜8.88(1H,m)8.31〜8.20(1H,m)、7.22〜7.04(3H,m)、4.80〜4.60(1H,m)、3.66〜3.56(8H,m)、3.40〜3.22(2H,m)、3.00〜2.88(2H,m)、2.50〜2.30(6H,m)、2.00〜1.20(7H,m)、1.57(6H,d,J=7.1Hz)。
H−NMR(DMSO−d)(塩型)δ:8.93〜8.79(1H,m)8.07(1H,d,J=7.5Hz)、7.44(1H,d,J=7.5Hz)、7.27〜7.08(2H,m)、4.75〜4.58(1H,m)、4.47〜2.30(18H,m)、1.90〜0.90(7H,m)、1.49(6H,d,J=6.9Hz)。
元素分析:C2739の計算値:C,57.74;H,7.00;N,12.47。実測値:C,57.52;H,7.03;N,12.32。
【0235】
(実施例6)
N−({1−[(トランス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル)ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0236】
【化35】

ステップ1。t−ブチル(1−オキサスピロ[2.5]オクタ−6−イルオキシ)ジフェニルシラン
【0237】
【化36】

水素化ナトリウム(鉱油中60%、441mg、11.0mmol)のDMSO(7ml)懸濁液を攪拌したものに、室温でヨウ化トリメチルスルホキシニウム(2.53g、11.5mmol)を加え、混合物を室温で30分間攪拌した。この混合物に、室温で4−{[t−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}シクロヘキサノン(Okamura、William H.ら、J.Org Chem.、1993年、第58巻、600〜610ページ、3.53g、10.0mmol)のDMSO(35ml)溶液を滴下し、混合物を室温で2時間攪拌した。次いで、この混合物を水(600ml)で希釈し、ジエチルエーテル(200ml×4)での抽出にかけた。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を、n−ヘキサン/酢酸エチル(1:10)を溶離液とするシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけ、次いでn−ヘキサン/酢酸エチル(1:15)を溶離液とするPTLCによって精製して、459mg(13%、トランス)および390mg(11%、シス)の表題化合物をそれぞれ無色の油として得た。
(トランス)
H−NMR(CDCl)δ:7.70〜7.66(4H,m)、7.46〜7.35(6H,m)、4.03〜3.97(1H,m)、2.63(2H,s)、2.07〜1.63(8H,m)、1.08(9H,s)。
(シス)
H−NMR(CDCl)δ:7.70〜7.65(4H,m)、7.46〜7.35(6H,m)、3.97〜3.83(1H,m)、2.58(2H,s)、1.83〜1.37(8H,m)、1.07(9H,s)。
【0238】
ステップ2。N−{[1−({トランス−4−[t−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ−1−ヒドロキシシクロヘキシル}メチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダソール−1−カルボキサミド
【0239】
【化37】

t−ブチル[(3R,6R)−1−オキサピラノ[2.5]オクタ−6−イルオキシ]ジフェニルシラン(ステップ1、トランス異性体、283.0mg、0.772mmo1)および3−イソプロピル−2−オキソ−N−(ピペリジン−4−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(調製例1、ステップ2、2.48g、0.0194mo1)のMeOH(4ml)中混合物を、50℃で2日間攪拌しながら加熱した。冷却した後、反応混合物を蒸発にかけて溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル/n−ヘキサン(1:10)、次いでメタノール/ジクロロメタン(1:20)を溶離液とするシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、308.1mg(58%)の表題化合物を無色のシロップとして得た。
MS(ESI)m/z:683(M+H)
H−NMR(CDCl)δ:8.93(1H,m)、8.32〜8.23(1H,m)、7.72〜7.60(4H,m)、7.46〜7.32(6H,m)、7.22〜7.10(3H,m)、4.80〜4.62(1H,m)、3.96(1H,m)、3.31(2H,t,J=6.26Hz)、2.92(2H,d,J=10.88Hz)、2.45〜2.29(4H,m)、1.85〜1.65(6H,m)、1.65〜1.43(9H,m,6Hを含む,d,J=7.09Hz,1.56ppm)、1.43〜1.25(4H,m)、1.06(9H,s)。
【0240】
ステップ3。N−({1−[(トランス−1,4−ジヒドロキシシクロヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0241】
【化38】

t−ブチルN−{[1−({トランス−4−[t−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ−1−ヒドロキシシクロヘキシル}メチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(234mg、0.343mo1)とHClのMeOH溶液(50ml)の混合物を室温で4時間攪拌した。次いで、真空中で溶媒を除去した。残渣を飽和NaHCO水溶液(30m1)で塩基性にし、CHCl(30ml×3回)での抽出にかけ、有機層を合わせてNaSOで乾燥させた。溶媒を除去すると残渣が得られ、これを、酢酸エチル/n−ヘキサン(1:1〜2:1)を溶離液とするNH−シリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、140.1mg(92%)の表題化合物を無色のシロップとして得た。
MS(ESI)m/z:445(M+H)
H NMR(CDCl)δ:8.93(1H,br t,J=5.87Hz)、8.32〜8.20(1H,m)、7.25〜7.03(3H,m)、4.80〜4.62(1H,m)、3.94(1H,m)、3.31(2H,t,J=6.10Hz)、2.89(2H,br d,J=11.53Hz)、2.36(2H,s)、2.34(2H,t,J=11.86Hz)、2.00〜1.85(2H,m)、1.82〜1.25(18H,m,6Hを含む,d,J=7.09Hz,1.56ppm)。
【0242】
このシロップ140.1mgをHClのMeOH溶液(4ml)に溶解させ、濃縮し、50℃の真空中で5時間乾燥させて、139.2mgの表題化合物を黄色の非晶質固体として得た。
MS(ESI)m/z:445(M+H)
H NMR(DMSO−d)δ:9.35〜8.75(1H,m)、8.86(1H,t,J=6.59Hz)、8.07(1H,d,J=7.74Hz)、7.44(1H,d,J=7.58Hz)、7.22(1H,dt,J=1.15Hz,7.42Hz)、7.14(1H,dt,J=1.32Hz,7.74Hz)、5.04(1H,br s)、4.75〜4.45(1H,m)、3.70(1H,br s)、3.59(2H,d,J=11.70Hz)、3.50〜2.90(8H,m)、1.90〜1.57(8H,m)、1.57〜1.30(10H,m,6Hを含む,d,J=6.92Hz,1.49ppm)
IR(KBr):3285、2936、2677、1728、1686、1611、1549、1481、1375、1298、1204、1157、1101、1018、762cm−1
元素分析:C2436−HCl−2HOの計算値:C,57.76;H,7.88;N,11.23。実測値:C,57.54;H,7.90;N,11.21。
PXRDパターン角度(2−θ°):8.3、14.5、17.7、18.3、19.1、26.4、27.5。
【0243】
(実施例7)
N−({1−[(シス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0244】
【化39】

ステップ1。N−{[1−({シス−4−[t−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ−1−ヒドロキシシクロヘキシル}メチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0245】
【化40】

表題化合物は、実施例6のステップ2に記載の手順に従い、t−ブチル[(3R,6R)−1−オキサスピロ[2.5]オクタ−6−イルオキシ]ジフェニルシランの代わりにt−ブチル[(3S,6S)−1−オキサスピロ[2.5]オクタ−6−イルオキシ]ジフェニルシラン(実施例6、ステップ1、シス異性体、311.0mg、0.848mmol)を使用して調製した。
MS(ESI)m/z:683(M+H)
H−NMR(CDCl)δ:8.91(1H,t,J=5.87Hz)、8.30〜8.22(1H,m)、7.72〜7.63(4H,m)、7.45〜7.30(6H,m)、7.20〜7.10(3H,m)、4.80〜4.63(1H,m)、3.59(1H,m)、3.29(2H,t,J=6.24Hz)、2.83(2H,d,J=11.74Hz)、2.26(2H,t,J=11.55Hz)、2.18(2H,s)、1.85〜1.65(4H,m)、1.65〜1.50(11H,m,6Hを含む,d,J=7.15Hz,1.56ppm)、1.40〜1.30(2H,m)、1.15〜1.00(11H,m,9Hを含む,s,1.05ppm)。
【0246】
ステップ2。N−({1−[(シス−1,4−ジヒドロキシシクロヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0247】
【化41】

表題化合物は、実施例6のステップ3に記載の手順に従い、N−{[1−({トランス−4−[ジフェニル(トリメチルシリル)メトキシ]−1−ヒドロキシシクロヘキシル}メチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミドの代わりに、N−{[1−({シス−4−[t−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ−1−ヒドロキシシクロヘキシル}メチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(295.0mg、0.432mmol)を使用して調製した。
MS(ESI)m/z:445(M+H)
H NMR(CDCl)δ:8.93(1H,br t,J=5.60Hz)、8.31〜8.22(1H,m)、7.25〜7.10(3H,m)、4.80〜4.62(1H,m)、3.63〜3.49(1H,m)、3.31(2H,t,J=6.10Hz)、2.89(2H,br d,J=11.54Hz)、2.33(2H,dt,J=1.81Hz,11.70Hz)、1.85〜1.60(16H,m,6Hを含む,d,J=7.09Hz,1.57ppm)、1.45〜1.18(4H,m)。
【0248】
このシロップ165.7mgをHClのMeOH溶液(4ml)に溶解させ、濃縮し、50℃の真空中で5時間乾燥させて、164.7mgの表題化合物を黄色の非晶質固体として得た。
MS(ESI)m/z:445(M+H)
H NMR(DMSO−d)δ:9.30〜8.90(1H,m)、8.86(1H,t,J=5.93Hz)、8.07(1H,d,J=7.58Hz)、7.44(1H,d,J=7.58Hz)、7.22(1H,dt,J=1.48Hz,7.75Hz)、7.15(1H,dt,J=1.15Hz,7.74Hz)、4.75〜4.58(1H,m)、3.70〜2.90(11H,m)、1.90〜1.67(6H,m)、1.67〜1.20(12H,m,6Hを含む,d,J=6.92Hz,1.49ppm)。
IR(KBr):3294、2936、2673、1728、1686、1611、1545、1479、1375、1298、1203、1158、1134、1101、1051、762cm−1
元素分析:C2436−HCl−5HOの計算値:C,54.79;H,8.05;N,10.65。実測値:C,54.75;H,7.88;N,10.56。
【0249】
(実施例8)
6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0250】
【化42】

ステップ1。6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0251】
【化43】

表題化合物は、実施例1のステップ3に記載の手順に従い、5−フルオロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(I.Tapiaら、J.Med.Chem.、1999年、第42巻、2880ページ)と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:449(M+H)。
H−NMR(CDCl)δ:1.12〜1.70(8H,m)、1.55(6H,d,J=7.0Hz)、1.74(2H,brd,12.8Hz)、2.31(2H,s)、2.35(2H,brt,J=11.9Hz)、2.88(2H,brd,J=11.7Hz)、3.30(2H,t,J=6.2Hz)、3.70〜3.85(4H,m)、4.62〜4.75(1H,m)、6.90(1H,td,J=9.0,2.4Hz)、7.02〜7.07(1H,m)、8.05(1H,dd,J=9.5,2.6Hz)、8.85〜8.92(1H,m)。
【0252】
ステップ2。6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
表題化合物は、実施例1のステップ4に記載の手順に従い、6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(実施例8のステップ1)から調製した。
MS(ESI)m/z:449(M+H)。
H−NMR(DMSO−d)δ:1.46(6H,d,J=6.9Hz)、1.55〜1.65(4H,m)、1.70〜1.91(4H,m)、2.90〜3.28(8H,m)、3.50〜3.67(6H,m)、4.56〜4.69(1H,m)、5.30〜5.37(1H,m)、5.76(1H,s)、7.08(1H,td,J=9.0,2.4Hz)、7.44〜7.49(1H,m)、7.85(1H,dd,J=9.5,2.5Hz)、8.81〜8.85(1H,m)。
元素分析:C2334FNClの計算値:C,56.96;H,7.07;N,11.55。実測値:C,57.00;H,7.20;N,11.43。
PXRDパターン角度(2−θ°):10.0、14.6、16.2、18.5、23.2、25.3、27.3。
【0253】
(実施例9)
5−フルオロ−N−({1−[4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0254】
【化44】

ステップ1。(5−フルオロ−2−ニトロフェニル)イソプロピルアミン
2,4−ジフルオロ−1−ニトロベンゼン(4.77g、30mmol)およびKCO(4.14g、30mmol)のTHF(30mL)中混合物を攪拌したものに、イソプロピルアミン(1.77g、30mmol)の入ったTHF(10mL)を0℃で加えた。13時間攪拌した後、不溶性の材料をCeliteパッドで除去し、減圧下で濾液を濃縮して、表題化合物(5.25g、88%)を淡黄色の油として得た。
MS(ESI)m/z:405(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.21(1H,dd,J=9.3,6.0Hz)、6.48(1H,dd,J=11.7,2.6Hz)、6.39〜6.29(1H,m)、3.81〜3.66(1H,m)、1.33(6H,d,J=6.4Hz)
【0255】
ステップ2。6−フルオロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
(5−フルオロ−2−ニトロフェニル)イソプロピルアミン(実施例9のステップ1、5.85g、30mmol)および10%Pd−C(600mg)のMeOH中混合物を、室温の水素ガス雰囲気中で12時間攪拌した。触媒をCeliteパッドで濾別し、減圧下で濾液を蒸発にかけた。残渣に1,1’−カルボニルジイミダゾール(4.5g、28mmol)およびTHF(100mL)を加え、次いで100℃で10時間攪拌した。冷却した後、減圧下で揮発性材料を除去し、残渣を酢酸エチルとHOとに分配した。酢酸エチルでの抽出(3回)にかけた後、有機相を合わせてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を溶離液とするシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、3.47g(60%)の表題化合物を白色の固体として得た。
MS(ESI)m/z:195(M+H)、193(M−H)。
H NMR(CDCl):δ7.06〜6.99(1H,m)、6.90(1H,dd,J=9.2,2.4Hz)、6.82〜6.72(1H,m)、4.83〜4.62(1H,m)、1.54(6H,d,J=7.1Hz)
【0256】
ステップ3。5−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
6−フルオロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例9のステップ2、0.58g、3mmol)およびクロロギ酸p−ニトロフェニル(0.66g、3.3mmol)のジクロロメタン(15mL)中混合物を攪拌したものに、室温でトリエチルアミン(1.25mL、9.0mmol)を加えた。2時間攪拌した後、混合物に4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2、0.75g、3.3mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液を加えた。4時間攪拌した後、混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈した。次いで、有機層を0.5N NaOH水溶液(10mL)で5回、さらにブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(3:1)を溶離液とするアミノプロピル−シリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、0.97g(79%)の表題化合物を白色の固体として得た。
MS(ESI)m/z:449(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.84〜8.74(1H,m)、8.21〜8.11(2H,m)、7.02〜6.91(2H,m)、4.68〜4.56(1H,m)、3.87〜3.72(4H,m)、3.34〜3.25(2H,m)、2.93〜2.82(2H,m)、2.42〜2.25(4H,m)、1.79〜1.68(2H,m)、1.67〜1.29(13H,m)。
元素分析:C2333Fの計算値:C,61.59;H,7.42;N,12.49。実測値:C,61.45;H,7.33;N,12.40。
【0257】
(実施例10)
5,6−ジフルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0258】
【化45】

ステップ1。4,5−ジフルオロ−N−イソプロピル−2−ニトロアニリン
4,5−ジフルオロ−2−ニトロアニリン(3.48g、20mmol)、2,2−ジメトキシプロパン(11.9mL、100mmol)、およびトリフルオロ酢酸(1.6mL、21mmol)をトルエン(40mL)に溶解させ、室温で1時間攪拌した。ホウ素−ピリジン錯体(2.12mL、21mmol)をゆっくりと加えた。反応混合物を20時間攪拌した。真空中で溶媒を蒸発させ、残渣を水に溶かし、ジクロロメタンでの抽出にかけた。有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(30:1)を溶離液とするアミノプロピル−シリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、2.42g(56%)の表題化合物を鮮やかな橙色の固体として得た。
H NMR(CDCl):δ8.05(1H,dd,J=10.8,8.6Hz)、6.61(1H,dd,J=12.6,6.8Hz)、3.77〜3.62(1H,m)、1.33(6H,d,J=6.2Hz)。
【0259】
ステップ2。5,6−ジフルオロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
表題化合物は、実施例9のステップ2に記載の手順に従い、4,5−ジフルオロ−N−イソプロピル−2−ニトロアニリン(実施例10のステップ1)から調製した。
MS(ESI)m/z:213(M+H)、211(M+H)。
H NMR(CDCl):δ7.00〜6.89(2H,m)、4.76〜4.57(1H,m)、3.86〜3.69(4H,m)、3.31(2H,t,J=7.0Hz)、2.95〜2.82(2H,m)、2.35(2H,t,J=,13.7Hz)、2.31(2H,s)、1.67〜1.25(10H,m)、1.55(6H,d,J=7.7Hz)。
【0260】
ステップ3。5,6−ジフルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、5,6−ジフルオロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例10のステップ2)と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:467(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.88〜8.78(1H,m)、8.25〜8.15(1H,m)、6.94〜6.79(2H,m)、4.73〜4.57(1H,m)、3.86〜3.69(4H,m)、3.31(2H,t,J=7.0Hz)、2.95〜2.82(2H,m)、2.35(2H,t,J=,13.7Hz)、2.31(2H,s)、1.67〜1.25(10H,m)、1.55(6H,d,J=7.7Hz)。
【0261】
ステップ4。5,6−ジフルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
5,6−ジフルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(実施例10のステップ3、113mg、0.242mmol)と10%のHCl−メタノール(5mL)の混合物を1時間攪拌した。次いで、減圧下で揮発性成分を除去し、残渣を、エタノール−ジエチルエーテルから再結晶させて、88mg(72%)の表題化合物を無色の粉末として得た。
MS(ESI)m/z:467(M+H)。
H NMR(DMSO−d):δ8.82〜8.71(1H,m)、8.08〜7.93(1H,m)、7.78〜7.67(1H,m)、5.35〜5.26(1H,m)、4.69〜4.52(1H,m)、3.70〜3.51(6H,m)、3.41〜2.91(7H,m)、1.94〜1.53(8H,m)、1.45(6H,d,J=7.0Hz)。
元素分析:C2333Cl・1HOの計算値:C,53.96;H,6.69;N,10.94。実測値:C,53.67;H,6.64;N,10.89。
【0262】
(実施例11)
6−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0263】
【化46】

ステップ1。6−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、5−クロロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(I.Tapiaら、J.Med.Chem.、第42巻、2880ページ(1999年))と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:465(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.33〜8.30(1H,m)、7.19〜7.14(1H,m)、7.04〜7.03(1H,m)、4.73〜4.57(1H,m)、3.82〜3.71(4H,m)、3.31(2H,t,J=6.4Hz)、2.95〜2.83(2H,m)、2.41〜2.29(4H,m)、1.79〜1.68(2H,m)、1.67〜1.25(8H,m)、1.54(6H,d,J=7.0Hz)。
【0264】
ステップ2。6−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
表題化合物は、実施例10のステップ4に記載の手順に従い、6−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(実施例11のステップ1)から調製した。
MS(ESI)m/z:465(M+H)。
H NMR(DMSO−d):δ8.84〜8.76(1H,m)、8.10〜8.07(1H,m)、7.51〜7.45(1H,m)、7.32〜7.25(1H,m)、5.38〜5.32(1H,m)、4.73〜4.56(1H,m)、3.70〜3.55(6H,m)、3.41〜2.91(7H,m)、1.95〜1.58(8H,m)、1.48(6H,d,J=7.7Hz)。
元素分析:C2334Cl2・0.5HOの計算値:C,54.12;H,6.91;N,10.98。実測値:C,53.85;H,6.90;N,10.78。
【0265】
(実施例12)
5−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0266】
【化47】

ステップ1。5−クロロ−N−イソプロピル−2−ニトロアニリン
表題化合物は、実施例10のステップ1に記載の手順に従い、5−クロロ−2−ニトロアニリンから調製した。
H NMR(CDCl):δ8.12(1H,d,J=9.2Hz)、6.84(1H,d,J=2.0Hz)、6.57(1H,dd,J=9.2,2.0Hz)、3.81〜3.71(1H,m)、1.33(6H,d,J=6.2Hz)
【0267】
ステップ2。6−クロロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
5−クロロ−N−イソプロピル−2−ニトロアニリン(実施例12のステップ1、0.76g、3.54mmol)、鉄(0.99g、17.7mmol)、および塩化アンモニウム(0.38g、7.08mmol)からなる混合物を、エタノール(27mL)およびHO(9mL)に懸濁させた。次いで、混合物を80℃で3時間加熱した。冷却した後、不溶性の材料をCeliteパッドで濾別し、濾液を減圧下で蒸発にかけた。残渣にN,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI、0.57g、3.50mmol)およびTHF(10mL)を加え、次いで100℃で10時間攪拌した。冷却した後、減圧下で揮発性材料を除去し、残渣を酢酸エチルとHOとに分配した。酢酸エチルでの抽出(3回)にかけた後、有機層を合わせてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を溶離液とするシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、0.30g(40%)の表題化合物を白色の固体として得た。
H NMR(CDCl):δ6.99〜6.90(2H,m)、6.84〜6.74(1H,m)、4.94〜4.77(1H,m)、1.64(6H,d,J=7.0Hz)
【0268】
ステップ3。5−クロロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、6−クロロ−1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例12のステップ2)と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:465(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.88〜8.78(1H,m)、8.21〜8.14(1H,m)、7.19〜7.10(2H,m)、4.73〜4.56(1H,m)、3.87〜3.69(4H,m)、3.30(2H,t,J=6.2Hz)、2.94〜2.84(2H,m)、2.41〜2.27(4H,m)、1.79〜1.68(2H,m)、1.67〜1.25(11H,m)。
元素分析:C2333Clの計算値:C,59.41;H,7.15;N,12.05。実測値:C;59.27;H,7.10;N,11.72。
【0269】
(実施例13)
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0270】
【化48】

ステップ1。N−イソプロピル−5−メチル−2−ニトロアニリン
表題化合物は、実施例9のステップ1に記載の手順に従い、2−フルオロ−4−メチル−1−ニトロベンゼンから調製した。
H NMR(CDCl):δ8.12〜8.01(2H,m)、6.63(1H,brs)、6.42(1H,d,J=10.3Hz)、3.94〜3.72(1H,m)、2.33(3H,s)、1.32(6H,d,J=6.4Hz)
【0271】
ステップ2。1−イソプロピル−6−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
表題化合物は、実施例9のステップ2に記載の手順に従い、N−イソプロピル−5−メチル−2−ニトロアニリン(実施例13のステップ1)から調製した。
MS(ESI)m/z:191(M+H)。
H NMR(CDCl):δ7.04〜6.93(2H,m)、6.90〜6.80(1H,m)、4.82〜4.63(1H,m)、2.40(3H,s)、1.55(6H,d,J=7.0Hz)。
【0272】
ステップ3。N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、1−イソプロピル−6−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例13のステップ2)と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:445(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.97〜8.84(1H,m)、8.10(1H,d,J=8.8Hz)、7.01〜6.93(2H,m)、4.76〜4.58(1H,m)、3.85〜3.69(4H,m)、3.30(2H,t,J=6.4Hz)、2.94〜2.82(2H,m)、2.41(3H,s)、2.43〜2.27(4H,m)、1.80〜1.68(2H,m)、1.67〜1.25(11H,m)。元素分析:C2436の計算値:C,64.84;H,8.16;N,12.60。実測値:C,64.78;H,8.29;N,12.58。
【0273】
(実施例14)
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−4−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0274】
【化49】

ステップ1。N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−4−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、1−イソプロピル−7−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(I.Tapiaら、J.Med.Chem.、第42巻、2880ページ(1999年))と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:445(M+H)。
H NMR(CDCl):δ9.11〜8.97(1H,m)、8.17(1H,d,J=7.7Hz)、7.10〜6.88(2H,m)、4.99〜4.82(1H,m)、3.91〜3.69(4H,m)、3.29(2H,t,J=6.2Hz)、2.94〜2.82(2H,m)、2.59(3H,s)、2.43〜2.27(4H,m)、1.84〜1.19(7H,m)、1.62(6H,d,J=6.8Hz)。元素分析:C2436の計算値:C,64.84;H,8.16;N,12.60。実測値:C,64.73;H,8.35;N,12.56。
【0275】
(実施例15)
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−4,5−ジメチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0276】
【化50】

ステップ1。N−イソプロピル−2,3−ジメチル−6−ニトロアニリン
表題化合物は、実施例10のステップ1に記載の手順に従い、2,3−ジメチル−6−ニトロアニリンから調製した。
H NMR(CDCl):δ7.82(1H,d,J=8.6Hz)、6.79(1H,d,J=8.4Hz)、3.52〜3.34(1H,m)、2.30(3H,s)、2.24(3H,s)、1.11(6H,d,J=6.2Hz)
【0277】
ステップ2。1−イソプロピル−6,7−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
表題化合物は、実施例9のステップ2に記載の手順に従い、N−イソプロピル−2,3−ジメチル−6−ニトロアニリン(実施例15のステップ1)から調製した。
H NMR(CDCl):δ7.11(1H,brs)、6.92〜6.70(1H,m)、5.00〜4.82(1H,m)、2.45(3H,s)、2.32(3H,s)、1.63(6H,d,J=7.0Hz)。
【0278】
ステップ3。N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−4,5−ジメチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
1−イソプロピル−6,7−ジメチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例15のステップ2、204mg、1mmol)およびクロロギ酸p−ニトロフェニル(220mg、1.1mmol)のジクロロメタン(7mL)中混合物を攪拌したものに、室温でトリエチルアミン(0.42mL、3.0mmol)を加えた。2時間攪拌した後、混合物に4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2、230mg、1.0mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液を加えた。4時間攪拌した後、混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈した。次いで、有機層を0.5N NaOH水溶液(5mL)で5回、さらにブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(3:1)で溶出しながらアミノプロピル−シリカゲルパッドで濾過し、濾液を濃縮した。混合物に10%のHCl−メタノール(5mL)を加え、1時間攪拌した。次いで、減圧下で揮発性成分を除去し、残渣をエタノール−ジエチルエーテルから再結晶させて、100mg(20%)の表題化合物を無色の粉末として得た。
MS(ESI)m/z:459(M+H)。
H NMR(DMSO−d):δ8.96〜8.87(1H,m)、7.84(1H,d,J=8.3Hz)、6.95(1H,d,J=8.3Hz)、5.34〜5.21(1H,m)、5.01〜4.86(1H,m)、3.69〜3.53(6H,m)、3.41〜2.91(7H,m)、2.45(3H,s)、2.28(3H,s)、1.87〜1.70(3H,m)、1.67〜1.48(5H,m)、1.52(6H,d,J=6.6Hz)。
元素分析:C2539Cl・0.5HOの計算値:C,59.57;H,8.00;N,11.12。実測値:C,59.53;H,7.98;N,11.10。
【0279】
(実施例16)
6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
【0280】
【化51】

ステップ1。4−フルオロ−N−イソプロピル−5−メチル−2−ニトロアニリン
表題化合物は、実施例9のステップ1に記載の手順に従い、1,4−ジフルオロ−2−メチル−5−ニトロベンゼン(T.Timothyら、J.Med.Chem.、第35巻、2321ページ(1992年))から調製した。
MS(ESI)m/z:213(M+H)。
H NMR(CDCl):δ7.82(1H,d,J=10.3Hz)、6.64(1H,d,J=6.4Hz)、3.88〜3.67(1H,m)、2.30(3H,s)、1.31(6H,d,J=6.4Hz)
【0281】
ステップ2。5−フルオロ−1−イソプロピル−6−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン
表題化合物は、実施例9のステップ2に記載の手順に従い、4−フルオロ−N−イソプロピル−5−メチル−2−ニトロアニリン(実施例16のステップ1)から調製した。
MS(ESI)m/z:209(M+H)。
H NMR(CDCl):δ7.00〜6.96(1H,m)、6.92〜6.90(1H,m)、4.75〜4.56(1H,m)、2.31(3H,s)、1.55(6H,d,J=7.0Hz)。
【0282】
ステップ3。6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
表題化合物は、実施例9のステップ3に記載の手順に従い、5−フルオロ−1−イソプロピル−6−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(実施例16のステップ2)と4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(実施例1のステップ2)とから調製した。
MS(ESI)m/z:463(M+H)。
H NMR(CDCl):δ8.92〜8.83(1H,m)、7.96(1H,d,J=10.1Hz)、6.91(1H,d,J=6.2Hz)、4.75〜4.56(1H,m)、3.85〜3.70(4H,m)、3.30(2H,t,J=6.4Hz)、2.94〜2.82(2H,m)、2.42〜2.29(7H,m)、1.84〜1.19(7H,m)、1.55(6H,d,J=7.0Hz)。
【0283】
ステップ4。6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド塩酸塩
表題化合物は、実施例10のステップ4に記載の手順に従い、6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−5−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(実施例16のステップ3)から調製した。
MS(ESI)m/z:463(M+H)。
H NMR(DMSO−d):δ9.55〜9.11(1H,m)、8.89〜8.74(1H,m)、7.77(1H,d,J=10.4Hz)、7.40(1H,d,J=6.6Hz)、5.42〜5.34(1H,m)、4.70〜4.56(1H,m)、3.69〜3.53(6H,m)、3.52〜2.91(7H,m)、2.29(3H,s)、1.87〜1.70(3H,m)、1.95〜1.55(8H,m)、1.48(6H,d,J=6.8Hz)。
元素分析:C2436FClの計算値:C,57.76;H,7.27;N,11.23。実測値:C,57.47;H,7.40;N,11.05。
【0284】
調製例1
ステップ1。4−({[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)カルボニル]アミノ}メチル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル
【0285】
【化52】

1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(J.Med.Chem.1999年、第42巻、2870〜2880ページ)(3.00g、17.02mmol)およびトリエチルアミン(7.12ml、51.06mmol)を70mlのテトラヒドロフランに溶かして攪拌した溶液に、トリホスゲン(5.15g、17.02mmol)の入った14mlのテトラヒドロフランを室温で加えた。反応混合物を19時間還流させた。次いで、混合物を室温に冷却し、4−(アミノメチル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル(J.Prugh、L.A.Birchenough、およびM.S.Egbertson、Synth.Commun.、1992年、第22巻、2357〜60ページ)(3.28g、15.32mmol)の入った10mlのテトラヒドロフランを加えた。反応混合物をさらに24時間還流させた。次いで冷却し、飽和NaHCO水溶液50mlで塩基性にし、酢酸エチル100mlでの抽出に3回かけた。抽出物を合わせてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1〜1/2)にかけると、無色の油3.99g(62%)が表題化合物として得られた。
H−NMR(CDCl)δ:9.04〜8.88(1H,m)、8.83〜8.20(1H,m)、7.26〜7.10(3H,m)、4.80〜4.60(1H,m)、4.28〜4.02(2H,m)、3.32(2H,t,J=6.1Hz)、2.82〜2.60(2H,m)、1.94〜1.10(5H,m)、1.57(6H,d,J=7.1Hz)、1.45(9H,s)。
【0286】
ステップ2。3−イソプロピル−2−オキソ−N−(ピペリジン−4−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
【0287】
【化53】

4−({[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)カルボニル]アミノ}メチル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル(3.992g、9.58mmol)を10%のメタノール中塩酸50mlに溶かした溶液と、10mlの濃塩酸を室温で18時間攪拌した。次いで、混合物を濃縮し、NaCO水溶液で塩基性にし、CHCl100mlでの抽出に3回かけた。抽出物を合わせて乾燥させ濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(NH−シリカゲル、溶離液:CHCl/メタノール=100/1)にかけると、無色の油2.272g(75%)が表題化合物として得られた。
MS(ESI)m/z:317(M+H)
H−NMR(CDCl)δ:8.93(1H,br)、8.32〜8.22(1H,m)、7.24〜7.02(3H,m)、4.80〜4.61(1H,m)、3.31(2H,t,J=6.0Hz)、3.20〜3.05(2H,m)、2.79〜2.54(2H,m)、1.84〜1.52(3H,m)、1.57(6H,d,J=6.9Hz)、1.36〜1.13(2H,m)。
【0288】
ステップ3。N−{[1−(3−ヒドロキシ−3−メチル−2−オキソブチル)ピペリジン−4−イル]メチル}−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド,一シュウ酸塩
【0289】
【化54】

3−イソプロピル−2−オキソ−N−(ピペリジン−4−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(250mg、0.790mmol)、1−ブロモ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン−2−オン(G.Bertram、A.Scherer、W.Steglich、W.Weber、Tetrahedron Lett.、1996年、第37巻、7955〜7958ページ)(181mg、1.343mmol)およびトリエチルアミン(0.28ml、1.975mmol)を8mlのテトラヒドロフラン中に混ぜた混合物を15時間還流させた。次いで冷却し、100mlの酢酸エチルで希釈し、NaHCO水溶液20ml、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/メタノール=100/1〜30/1)にかけると、無色の油202mg(61%)が得られた。この油(202mg)を3mlのメタノールに溶解させ、シュウ酸44mgのMeOH(1ml)溶液で酸性化した。混合物を濃縮した。得られる固体をEtOH−AcOEtで再結晶させると、白色の固体246mgが表題化合物として得られた。
MS(ESI)m/z:417(M+H)
m.p.:140.5℃。
IR(KBr)ν:3404、3306、2980、2941、1728、1690、1612、1541cm−1
H−NMR(CDCl)(遊離塩基)δ:8.90(1H,br)8.30〜8.20(1H,m)、7.24〜7.10(3H,m)、4.78〜4.61(1H,m)、3.37(2H,s)、3.33(2H,t,J=6.3Hz)、3.00〜2.86(2H,m)、2.22〜2.06(2H,m)、1.90〜1.22(5H,m)、1.57(6H,d,J=7.0Hz)、1.35(6H,s)。
H−NMR(DMSO−d)(塩型)δ:8.92〜8.81(1H,m)8.07(1H,dd,J=7.7,6.8Hz)、7.44(1H,d,J=7.7Hz)、7.28〜7.10(2H,m)、4.74〜4.60(1H,m)、4.36(2H,bv)、4.00〜2.70(6H,m)、1.90〜1.44(5H,m)、1.49(6H,d,J=6.4Hz)、1.24(6H,s)。
元素分析:C2434・0.3CO・1HOの計算値:C,54.88;H,7.08;N,10.41。実測値:C,55.26;H,7.18;N,10.07。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

[式中、
Hetは、Bの直接の結合相手である1個の窒素原子と、4〜7個の炭素原子とを有する複素環基を表し、前記複素環基は、非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜4個の置換基で置換されており、
Aは、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bは、共有結合、または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は、非置換、またはオキソ基で置換されており、
は、イソプロピル基またはシクロペンチル基を表し、
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、mは、0、1、2、3、または4であり、
は、
(i)3〜8個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)3〜8個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される]
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
Hetが、
【化2】

から選択された複素環基であり、前記複素環基は非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基で置換されており、
Aが、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基を表す、
請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
Hetが式
【化3】

の基を表し、この基は非置換、または置換基αからなる群から選択された1個の置換基で置換されており、
Aが、1〜2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bが、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は非置換、またはオキソ基で置換されており、
が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、または1〜2個の炭素原子を有するアルキル基を表し、mが、0、1、または2であり、
が、
(i)4〜7個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基によって置換されているシクロアルキル基、または
(ii)4〜7個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜3個の置換基によって置換されている複素環基
を表す、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
Hetが式
【化4】

の基を表し、この基は非置換、または置換基αからなる群から選択された1個の置換基で置換されており、
Aがメチレン基を表し、
Bが、1〜2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
が、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、またはメチルを表し、
が、
(i)5〜7個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)5〜7個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、および1〜2個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜2個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜2個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される、
請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
Hetが式
【化5】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、
Bがメチレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
がフッ素原子を表し、mが0または1であり、
が、
(i)5〜6個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)5〜6個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択される、
請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
Hetが式
【化6】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、
Bがメチレン基を表し、
がイソプロピル基を表し、
がフッ素原子を表し、mが0であり、
が、
(i)ヒドロキシ基またはアミノ基からそれぞれ独立に選択された1〜2個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)6個の原子を有し、かつヒドロキシ基またはアミノ基で置換されている複素環基
を表す
請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
が、
(i)1または2個のヒドロキシ基で置換されているシクロヘキシル基、または
(ii)1または2個のヒドロキシ基で置換されているテトラヒドロピラン基
を表す、請求項6に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項8】
がヒドロキシテトラヒドロピラニルまたはジヒドロキシシクロヘキシルを表す、請求項7に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項9】
N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、
N−({1−[(トランス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、
N−({1−[(シス−1,4−ジヒドロキシヘキシル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド、および
6−フルオロ−N−({1−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}メチル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド
から選択される、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項10】
薬学的に許容できる塩が塩酸塩またはヘミエジシラートである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物対象における5−HT受容体活性が関与する疾患状態の治療方法であって、その治療を必要とする前記対象に、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を治療有効量投与することを含む方法。
【請求項13】
胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、および無呼吸症候群から選択される疾患の治療方法であって、前記対象に、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を治療有効量投与することを含む方法。
【請求項14】
哺乳動物対象における5−HT受容体活性が関与する疾患状態の治療のための医薬の製造のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項15】
前記状態が、胃食道逆流疾患、胃腸疾患、胃運動性障害、非潰瘍性消化不良、機能性消化不良、過敏性腸症候(IBS)、便秘、消化不良、食道炎、胃食道疾患、悪心、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経疾患、痛み、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、および無呼吸症候群から選択される、請求項14に記載の化合物の使用。
【請求項16】
次式(2−A’)の化合物
【化7】

[式中、
は、水素原子またはN保護基を表し、
Hetは、Bの直接の結合相手である1個の窒素原子と4〜7個の炭素原子とを有する複素環基を表し、前記複素環基は、非置換、または置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜4個の置換基によって置換されており、
Aは、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Bは、共有結合、または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、Rが複素環基を表すとき前記アルキレン基は、非置換、またはオキソ基で置換されており、
は、
(i)3〜8個の炭素原子を有し、かつ置換基αからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されているシクロアルキル基、または
(ii)3〜8個の原子を有し、かつ非置換もしくは置換基βからなる群からそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されている複素環基
を表し、
前記置換基αは、ヒドロキシ基およびアミノ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基αは、ヒドロキシ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基からそれぞれ独立に選択され、
前記置換基βは、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアミノ置換アルキル基、およびカルバモイル基からそれぞれ独立に選択される]またはその塩。
【請求項17】
が水素原子またはt−ブトキシカルボニル基を表し、
Hetが式
【化8】

の基を表し、
Aがメチレン基を表し、Bがメチレン基を表し、Rがヒドロキシテトラヒドロピラニルまたはジヒドロキシシクロヘキシルを表す、請求項16に記載の化合物またはその塩。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬理活性のある別の薬剤の組合せ。
【請求項19】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬理活性のある別の薬剤とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2007−533613(P2007−533613A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525197(P2006−525197)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【特許番号】特許第3983269号(P3983269)
【特許公報発行日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002741
【国際公開番号】WO2005/021539
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000204343)ファイザー株式会社 (38)
【Fターム(参考)】