説明

5面加工用インデックス装置

【課題】旋回割出装置や揺動装置がワーク固定台の外側に突出しないコンパクトな構造の5面加工用のインデックス装置を提供する。更にワーク固定台の高い割出精度及び面精度と高い剛性を備えた上記装置を提供する。
【解決手段】テーブルに固定される逆門形のフレームと、その逆門形の下辺と平行に配置された揺動駆動軸と、逆門形フレームの柱に沿って配置した揺動従動軸と、当該柱の先端に同一軸線上に設けた支え軸と、両側を支え軸に固定されたモータマウントと、このモータマウントに軸支されたワーク固定台とを備える。揺動駆動軸と揺動従動軸とは、ねじ歯車で回転連結され、揺動従動軸と支え軸とは、ハイポイドギヤで回転連結されている。モータマウント25には旋回割出モータが、逆門形フレームの両柱の間に位置するように装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械のテーブルや手工用の作業台に取り付けて使用する5面加工用のインデックス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボール盤やフライス盤のような回転工具軸を備えた工作機械で直方体のワークを加工する場合、その回転工具軸と平行なワーク固定面にワークの底面を固定して、当該ワーク固定面をその面直角方向の旋回軸回りに360度旋回割出すれば、ワークの4側面を加工することができる。更に当該ワーク固定面をその旋回軸及び回転工具軸と直交する揺動軸回りに90度揺動すれば、ワークの上面(ワーク固定面に固定した面と反対側の面)の加工が可能になる。
【0003】
直方体ワークの上面と4側面を加工可能にするための5面加工用のインデックス装置は、工作機械のワークテーブルや手工用の作業台(以下、「テーブル」と総称する。)に旋回割出装置と揺動装置とを介してワークを固定する固定台を取り付けることによって容易に実現できることから、従来から広く利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の5面加工用のインデックス装置は、ワークの固定台を旋回割出機構や揺動機構を介して支持する必要があることから、その旋回割出機構や揺動機構を構成している部材が固定台の外側に張り出しており、その張り出している部分が固定台に固定したワークを加工する際の作業の邪魔になるという問題があった。
【0005】
例えば、5面加工用のインデックス装置をテーブルに固定して、ワーク固定台に固定したワークを手作業で加工する場合、旋回割出装置や揺動装置が固定台からはみ出している部分に作業者の手がぶつかったり、ワークを加工しようとした際に主工具と干渉したりして円滑に加工を行うことができない場合があった。
【0006】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、旋回割出装置や揺動装置がワーク固定台の外周から外側に突出しないコンパクトな構造の5面加工用のインデックス装置を提供することを課題としている。更にこの発明は、旋回割出装置や揺動装置を小型かつコンパクトにすることによって、割出精度やワーク固定台の面精度が低下するのを防止して、ワーク固定台の高い割出精度及び面精度と高い剛性を備えた小型かつコンパクトな5面加工用のインデックス装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の5面加工用インデックス装置は、テーブルに固定される逆門形のフレーム2と、この逆門形フレームの下辺と平行に配置されて90度以上の角度範囲で揺動駆動される揺動駆動軸4と、逆門形フレーム2の柱21に沿って配置した揺動従動軸8と、逆門形フレーム2の両柱21の各々の先端に揺動駆動軸4と平行な同一軸線上に軸支された支え軸6、6と、両側を支え軸6に固定されたモータマウント25と、このモータマウントに支え軸6と直交する旋回軸回りに360度回転自在に軸支されたワーク固定台27とを備えている。
【0008】
揺動駆動軸4と揺動従動軸8とは、ねじ歯車(直交ヘリカルギヤ)5で回転連結され、揺動従動軸8と支え軸6とは、ハイポイドギヤ(ウオーム傘歯車)7で回転連結されている。モータマウント25には、その出力軸をワーク固定台27に固定した旋回割出モータ28が、逆門形フレームの両柱21の間に位置するように装着されている。ワーク固定台27は、旋回軸受などの軸受26により、逆門形フレーム2の中央を旋回中心として、モータマウント25に支持されている。ワーク固定台27は、モータマウント25及び逆門形フレームの両柱21の先端部分を覆うように装着されたカップ状ないしコ字状の部材であり、その上面及び側面にワークを固定することが可能である。
【0009】
2本の支え軸6、6は、その内の一本を揺動従動軸に連結してワーク固定台27を揺動駆動することができる。しかし、2本の揺動従動軸8、8を逆門形フレーム2の両柱21、21の各々に沿って配置し、両柱の先端の支え軸6を各揺動従動軸8に連結して同期駆動する構造がより好ましい。これにより、モータマウント25やワーク固定台27の捻れにより、ワーク固定台27の両端に固定したワーク相互の間に位相差が生ずるのを避けることができる。
【0010】
ワーク固定台27は、その外周側に設けた大径の旋回軸受26によりモータマウント25に自由回転可能に軸支されるが、更にその旋回中心近くに設けたスラストニードル軸受30でモーターマウント25に軸支することにより、ワーク固定台の中央部における撓みを防止すると共に、ワークに作用する加工反力が旋回割出モータ28の出力軸29に作用するのを避けることができる。
【0011】
更に好ましいこの発明のインデックス装置は、揺動駆動軸4が逆門形フレームの両柱21の中間部において分割されかつ分割された両軸部分4a、4bを連結する位相角度調整可能な軸継手41を備え、各揺動従動軸8がその中間部に軸方向長さの調整手段89を備えた構造である。これにより、歯車継手のバックラッシュを吸収し、更に装置を構成する各部材の加工誤差や組立誤差を吸収して、高剛性かつ高精度のインデックス装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
この発明のインデックス装置は、ワーク固定台の旋回割出装置及び揺動装置がカップ状又はコの字形ないしL形断面のワーク固定台の内側に収められ、揺動するモータマウントに当該モータマウントを覆うようにワーク固定台が設けられているため、ワーク固定台の外周より外側にはみ出している部材がなく、従ってワーク固定台に固定したワークの加工を円滑に行うことができる。
【0013】
また、この発明のインデックス装置では、フレームの先端部分に設けたワーク固定台を揺動させるための支え軸を、この支え軸と直交する方向に延びる揺動従動軸を介してフレームの基端側、すなわちワーク固定台から離れた位置にある揺動駆動軸で揺動させるようにしたので、揺動装置を構成する部材がワーク固定台の周辺部分でその外側に突出することがない。
【0014】
更に揺動従動軸を介しての支え軸6の揺動運動の伝達に歯筋が斜めになっているねじ歯車及びハイポイド歯車を使用し、かつこれらの歯車を両端に備えた揺動従動軸の軸長さの調整装置を設けたため、歯車による伝達系にバックラッシュなどによる誤差のない、正確で高剛性の揺動運動をワーク固定台に行わせることが可能である。更にワーク固定台の旋回割出は、揺動するモータマウントに装着した旋回モータを直結することによって行うので、正確で高剛性の割出精度が得られる。
【0015】
更にモータマウントを両側で支持する2本の支え軸を1本の揺動駆動軸で同期駆動する構造とし、更に当該揺動駆動軸を分割して、その分割された両者の間に組立の最終段階で両者の位相を合せるための位相調整部41を設けたので、ワーク固定台の捩れによる角度誤差の発生も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例装置の正面図
【図2】同側面図
【図3】実施例装置の内部構造を示す正面図
【図4】同側面図
【図5】実施例装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。テーブルに固定される基台1は、45度の角度で斜め上方に延びる逆門形のフレーム2を備えている。このフレーム2の逆門形の底辺となる部分に、揺動割出モータ51で回転駆動される水平方向の揺動駆動軸4が軸支されている。この揺動駆動軸4は、逆門形の両側の柱21の基端に位置する2個の軸部分4a、4bに分割され、かつその分割された両者4a、4bが位相調整継手41で連結一体化された構造となっている。2分割された揺動駆動軸の2個の軸部分4a、4bは、それぞれ両端を軸受42、42でフレーム2に軸支されている。
【0018】
逆門形フレームの柱21の先端には、揺動駆動軸4と平行に支え軸6が軸受62、62で自由回転可能に軸支されている。揺動駆動軸の軸部分4a、4bには、駆動ねじ歯車44が固定されており、支え軸6には、ハイポイドギアのホイール64が固定されている。そして、図4に示すように、基端に駆動ねじ歯車44に噛合する従動ねじ歯車81を固定し、先端にハイポイドギアのウオーム82を固定した揺動従動軸8が、逆門形フレームの柱21に沿うように配置されている。
【0019】
揺動従動軸8は、基端側のねじ歯車軸86と先端側のウオーム軸87とに分割されかつ両者がスプライン89で連結された構造を備えており、軸方向長さが調整可能である。そして、ねじ歯車軸86は、フレーム2に固定したねじ歯車ケース23に軸受83、83で軸支されており、ウオーム軸87は、フレームの柱21にねじ88で位置調整自在に固定した軸受ケース84に設けた図示されていない軸受で軸支されている。軸受ケース84に設けられているねじ挿通孔は、図4に示すようにウオーム軸87の軸方向に長い長孔となっており、ねじ88を緩めて軸受ケース84を移動することにより、従動ねじ歯車81とハイポイド歯車のウオーム82との間隔、すなわち揺動従動軸8の実質的な長さを調整することができる。
【0020】
なお、ハイポイドギア7は、傘歯車型のウオーム歯車で、揺動従動軸8と支え軸6は、90度で交差する食違い軸となっている。また、ねじ歯車5は、45度のヘリカルギアで、揺動駆動軸4と揺動従動軸8とは、90度で交差する食違い軸となっている。
【0021】
逆門形フレームの2本の柱21の先端にそれぞれ軸支された支え軸6の外側端部には、フランジ24が一体に設けられ、当該フランジにモータマウント25がその両側に設けた支え鍔25a部分で固定されている。このモータマウント25の外周に旋回軸受26が装着され、当該旋回軸受によってワーク固定台27が旋回自在に装着されている。
【0022】
一方、モータマウント25には、その出力軸29を旋回軸受26の中心軸と一致させて、減速機を内蔵した旋回割出モータ28が搭載されており、その出力軸29がワーク固定台27に固定されている。ワーク固定台27とモータマウント25との間には、ワーク固定台27の旋回中心に近接して、スラストニードル軸受30が装着されており、ワーク固定台27の中央部が加工反力によって撓むのを防止して、加工反力が旋回割出モータの出力軸29に作用しないようにしている。
【0023】
ワーク固定台27は、図5に示すように、上面視で正八角のカップ状をしており、その上面のみでなく、図1、2に示されている側面にもワークが固定できるようになっている。このカップ状のワーク固定台は、モータマウント25及びこれを支持する逆門形フレームの柱21の先端部分を総て覆うように装着されており、モータマウント25や逆門形フレーム2は、このワーク固定台27の外周より外側に突出する部分を有していない。
【0024】
位相調整継手41は、軸心にテーパシャンク47とこれに嵌合するシャンク孔48及び両者を締め付けるフランジ49とボルト群50とを備えており、シャンク孔48側の軸とテーパシャンク47側の軸とが、それぞれの側のフランジ46、46で、揺動駆動軸4の分割された両側の軸部分4a、4bの軸端に連結されている。なお図には示してないが、シャンク孔48を設けた部材とその側の軸との間に滑りキーが設けてあり、テーパシャンク47とシャンク孔48を嵌合する際の軸方向移動が許容されている。
【0025】
位相調整継手41は、インデックス装置の組立における最終段階で揺動駆動軸の分割された2つの軸部分4a、4bを連結一体化するものである。すなわち、両側の支え軸6のそれぞれを揺動従動軸8で軸部分4a、4bに連結し、かつねじ歯車5及びハイポイドギヤ7にバックラッシュによる誤差が生じないように軸受ケース84の位置を調整したとき、その組立誤差が従動駆動軸の両側の軸部分4a、4bの位相差となって現れてくるので、その位相差を吸収した状態で軸部分4a、4bを一体化するためのものである。
【0026】
すなわち、逆門形フレーム2に支え軸6、モータマウント25及びワーク固定台27を取り付け、2本の支え軸6のそれぞれを揺動従動軸8で分割された揺動駆動軸の軸部分4a、4bに連結し、軸受ケース84の位置を調整したあと、最後に位相調整継手41で分割された2個の軸部分4a、4bを連結することにより、シャンク47とシャンク孔48の嵌合により一体の揺動駆動軸4とするのである。
【0027】
上記のように構成された実施例の5面加工用インデックス装置は、揺動駆動軸4を揺動割出モータ51で駆動することにより、支え軸6で支持されたモータマウント25、旋回割出モータ28及びワーク固定台27が一体的に支え軸6回りに揺動割出しされる。一方、旋回割出モータ28を駆動することにより、ワーク固定台27が支え軸6と直交する旋回中心軸回りに旋回割出しされる。
【0028】
そして、モータマウント25並びにこれに装着した旋回割出モータ28及びこれらを支持する逆門形フレームの先端部分が総てワーク固定台27で覆われた状態となっており、ワーク固定台の外周から突出する部材が存在しない。また、ワーク固定台27が同期駆動される2本の支え軸6、6で両側を支持され、かつこの2本の支え軸6、6は、歯車対のバックラッシュによるがたのない状態で、かつ組立誤差に起因する位相差を吸収された状態で、同期駆動されるので、高い割出精度と割出角度の高い支持剛性が得られる。
【符号の説明】
【0029】
2 逆門形のフレーム
4 揺動駆動軸
4a,4b 揺動駆動軸の分割された軸部分
5 ねじ歯車
6 支え軸
7 ハイポイドギヤ
8 揺動従動軸
21 逆門形フレームの柱
25 モータマウント
26 旋回軸受
27 ワーク固定台
28 旋回割出モータ
30 スラストニードル軸受
41 位相角度調整用の軸継手
89 軸方向長さの調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆門形のフレームと、この逆門形の下辺と平行に配置した揺動駆動軸と、逆門形の柱に沿って配置した揺動従動軸と、揺動駆動軸と揺動従動軸とを連結するねじ歯車と、逆門形の両柱の各々の先端に揺動駆動軸と平行に軸支された支え軸と、揺動従動軸と支え軸とを回転連結するハイポイドギヤと、両側を支え軸に固定されたモータマウントと、モータマウントに装着されて逆門形の両柱の間に位置する旋回割出モータと、逆門形の中央においてその中心軸回りに旋回自在にしてモータマウントに支持されてモータマウント及び逆門形の両柱の先端部分を覆うように装着されたカップ状ないしコ字形断面のワーク固定台とを備えた、インデックス装置。
【請求項2】
揺動従動軸が前記逆門形の両柱の各々に沿って設けられ、両柱の先端の支え軸が各揺動従動軸に連結されて同期駆動される、請求項1記載のインデックス装置。
【請求項3】
ワーク固定台がその外周側に設けた大径の軸受と旋回中心近くに設けたスラストニードル軸受とでモーターマウントに軸支されている、請求項1又は2記載のインデックス装置。
【請求項4】
揺動駆動軸が逆門形の両柱の中間部において分割されかつ分割された両者を連結する角度調整可能な軸継手を備え、各揺動従動軸がその中間部に軸方向長さの調整手段を備えている、請求項2記載のインデックス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6121(P2012−6121A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145255(P2010−145255)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(393028117)株式会社テック・ヤスダ (12)
【Fターム(参考)】