説明

7−ジヒドロコレステロールを含有する化粧料組成物

【課題】本発明は、7−ジヒドロコレステロールを安定した状態に含有する皮膚化粧料に関し、より詳しくは、7−ジヒドロコレステロールを高分子樹脂に吸着して安定化させることにより、皮膚老化などを改善するための皮膚化粧料に関する。
【解決手段】本発明によれば、7−ジヒドロコレステロールを、多孔性である親油性高分子樹脂を使用して安定化させることにより、既存の化粧品に適用するにおいて、安全性の問題を改善することができ、製品の活性度を長く持続することができる。従って、本発明の化粧料組成物は、このような特定の目的に有用に使用することができると期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7−ジヒドロコレステロールを安定した状態に含有する化粧料に関し、より詳しくは、7−ジヒドロコレステロールを高分子樹脂に吸着させることにより安定化させて、皮膚老化などを改善するための皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化に関しては、従来の色々な理論が提示されているが、そのうち皮膚の老化に一番科学的に接近した理論は、酸化による皮膚老化理論である。ヒトの皮膚は、角質層を含む表皮と真皮、そして結合組織から構成されており、そのうちの角質層は、表皮の基底細胞であるケラチノサイトの分化過程を通じて形成される、死んでいる細胞の層から構成されており、人体を外部環境の影響から保護する役割を担当している。また、皮膚の内部に存在する真皮層は、弾力繊維と知られたコラ−ゲンとエラスチンから構成されており、皮膚に弾力を与えて、皮膚が垂れ下がらないように守る役割を担当している。
【0003】
抗酸化理論は、このような弾力繊維であるコラ−ゲンとエラスチンが、外部の紫外線などの因子により生成されたフリーラジカルにより損傷され、これにより皮膚の弾力が減少されてシワが生じるとの理論である。今までは、このような皮膚の老化、特にシワを防止するために、レチノールのような物質や植物抽出物などを使用してきた。しかし、これらの物質は、その効果が低いか、皮膚刺激、発赤、炎症を誘発させて、皮膚に対する不作用が深刻な短所を有している。
【0004】
一方、先行特許文献(特許文献1)によれば、コレカルシフェロ−ルを直接皮膚化粧品に用いた例が提示されているが、このような場合には、フリーラジカルの生成の原因として注目されている紫外線による皮膚損傷に対処することができない問題点を有している。反面、7−ジヒドロコレステロールを使用する場合には、紫外線により、コレカルシフェロ−ルに活性化されるので、紫外線が皮膚に損傷を与えることに対する対処などができる長所を有している。
【0005】
これにより、本研究者は、既存の皮膚老化物質が、コラ−ゲンやエラスチンの合成などに対する部分だけを強調して、皮膚の刺激や損傷などの問題点を起こしたことに着眼して、皮膚に安全であり、特に皮膚のシワの主原因として作用する紫外線に積極的に対処することができる物質を明らかにしようと、長期間にわたって着実に努力し、その結果、今まで認識されてきたところとは異なり、7−ジヒドロコレステロールがこのような目的に符合し、紫外線防御効果、皮膚シワ改善効果、皮膚老化緩和用の化粧料組成物の有効成分として効果的に使われることを発見した。
【0006】
しかし、7−ジヒドロコレステロールは、紫外線により、プレビタミンD3、タギステロールに転化され、プレビタミンD3からフィトステロールやルミステロール、イソピロカルシフェロ−ルに転移する、不安全だという問題点を有している。皮膚においては、プレビタミンD3からビタミンD3に転移されるので、他の問題を誘発しないが、皮膚以外の所で保管する時には、プレビタミンD3が、フィトカルシフェロ−ルやルミステロール、イソピロカルシフェロ−ルに転移されることができるので、7−ジヒドロコレステロール状態に安定化させることが必要である。
【0007】
特に、プレビタミンD3からピロカルシフェロ−ルやルミステロール、イソピロカルシフェロ−ルに転移すれば、再度戻ってくることが容易ではないので、7−ジヒドロコレステロールが、ピロカルシフェロ−ルやルミステロール、イソピロカルシフェロ−ルに転移することを防止しなければならない。
【0008】
このような問題を解決するために、ドーラントーマス(特許文献2)等は、コレカルシフェロ−ル誘導体を使用して、皮膚疾患と乾癬治療に用いた例を示しており、牧野(特許文献3)は、酸化マグネシウムとソジウムクエン酸を使用して活性化されたコレカルシフェロ−ルを安定化させた例を示している。
【0009】
また、コレカルシフェロ−ルが溶解状態より固体状態において安定した点を利用して、安定性が改善された活性型コレカルシフェロ−ル類固形剤材特許(特許文献4)が提案された。
【0010】
しかし、上記したように、既存の特許は、7−ジヒドロコレステロールの安定化に対するものはなく、コレステロールの安定化に対する研究とコレカルシフェロ−ル誘導体に対する研究のみがあった。
【0011】
このように、7−ジヒドロコレステロールの安定化に対する研究がないのは、7−ジヒドロコレステロールが、紫外線防御効果、皮膚改善効果などに優れたにもかかわらず、紫外線と温度により、簡単に他の物質に転移するからであり、空気中の酸素と反応して、他の物質に簡単に転移されることができる、構造的な短所を有しているからである。これに対し、本研究者は、7−ジヒドロコレステロールを安定した状態で皮膚に適用することができるように、多年間研究し、その成果として7−ジヒドロコレステロールを安定化させることができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許公開1998−028477
【特許文献2】米国特許5、342、833
【特許文献3】米国特許5、747、478
【特許文献4】韓国特許公開1992−700036
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、7−ジヒドロコレステロールを安定した状態に含有することができる化粧料を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、本発明をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0015】
本発明は、皮膚の老化を抑制するために、7−ジヒドロコレステロール使用する組成物に関し、7−ジヒドロコレステロールを、高分子樹脂を使用して安定化させることにより完成するようになる。この時に発生するいろいろな難題を解決するために、本研究者は、色々な方面で多孔性である親油性高分子樹脂に、7−ジヒドロコレステロールを安定化させる方法を試みた結果、特定の多孔性である親油性高分子樹脂だけで7−ジヒドロコレステロールが安定化されるということを発見した。よって、所望の目的を達成するために、本研究者は、7−ジヒドロコレステロールを、多孔性である親油性高分子樹脂を使用して保護する方法を選択するようになった。これは、7−ジヒドロコレステロールが、化粧品に使用される精製水の中に溶けている溶存酸素との接触を最小化させるためであり、紫外線により7−ジヒドロコレステロールが他の物質に転移するのを防止するためである。
【0016】
従って、本研究者は、7−ジヒドロコレステロールをアルコールに溶解させた後、溶解された状態において多孔性である親油性高分子樹脂を使用して吸着させ、アルコールを蒸発させることにより、高分子樹脂細孔に7−ジヒドロコレステロールを固着させた。これにより、7−ジヒドロコレステロールが外部の空気と遮断された状態で保護されるようにした。また、多孔性である親油性高分子樹脂の細孔に7−ジヒドロコレステロールが固着されているので、外部の紫外線から比較的安全に保護されることができた。
【0017】
また、この状態において、多孔性である親油性高分子樹脂を、油状成分に分散させて、外部の水状との接触を最小化させ、これにより7−ジヒドロコレステロールが他の物質に転移するのを防止できるようになった。
【0018】
本発明に係る化粧料組成物は、有効成分である7−ジヒドロコレステロールを0.00001乃至10%(W/V)含有することが好ましく、特に0.01乃至1%(W/V)含有することが好ましい。0.0001%未満に含有させる場合には、所望の効果を達成することができなく、10%以上を超過する場合には、皮膚炎症や発赤などを誘発する可能性があるからである。
【0019】
外部の水状から7−ジヒドロコレステロールを保護するために使用される多孔性である親油性高分子樹脂は、0.01%乃至30%含有することが好ましく、特に0.1%乃至15%(W/V)含有することが好ましい。
【0020】
上記多孔性である親油性高分子樹脂の例としては、アクリレートコポリマー、アリメタクリルコポリマー、アルキルアクリレートコポリマー等が挙げられ、これらの分子量は、1、000から1、000、000であるのが好ましい。
【0021】
また、抗酸化剤として用いたヒポタウリンは、0.01乃至10%含有することが好ましく、特に0.1乃至5%含有することが好ましい。
【0022】
二重で安定化させるために使用する乳化方法では、油状/水状形態の乳液が適当であり、製造のために非イオン界面活性剤が0.5乃至10%含有することが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る化粧料の組成物の剤形として好ましいのは、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、及びパック等である。
【0024】
上記説明した7−ジヒドロコレステロールを含有した化粧料は、以下の実験で詳しく説明するように、温度、紫外線に対する安定性を評価し、安定化させない7−ジヒドロコレステロールと比較することにより、皮膚老化の緩和に有用に使用することができると評価された。
【0025】
このような本発明を、実施例に基づいてより詳しく説明すれば、次のようであるが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
先ず、7−ジヒドロコレステロールを含有した化粧品組成物の配合は、表1と同じである。(イ)のアルコールと7−ジヒドロコレステロールとを混合溶解させる。溶解が完全にされると、多孔性である親油性高分子樹脂を混合して、7−ジヒドロコレステロールを吸着させ、アルコールを50℃程度で完全に揮発させ、多孔性でありながら親油性であるポリマーに7−ジヒドロコレステロールを固着させる。多孔性である親油性高分子樹脂に
【0027】
固着された7−ジヒドロコレステロールを、油状に混合し、水状に投入する。
【0028】
[表1]7−ジヒドロコレステロールを含有した化粧料の配合成分比

【0029】
表1の成分比を有する化粧料を製造して、常温25℃と45℃で、4週間保管し、紫外線の条件下においても2週間や4週間保管し、7−ジヒドロコレステロールの含有量を分析した。分析結果は、表2と同じである。
【0030】
経時変化を測定した結果、7−ジヒドロコレステロールを多孔性である親油性高分子樹脂に吸着させ固定させた実施例では、7−ジヒドロコレステロールが、外部の酸素と接触することが防止されるので、そうでない比較例1と比較して安定性に大きな差があることを示している。
【0031】
[表2]7−ジヒドロコレステロールを含有した化粧料の経時変化

【実施例2】
【0032】
7−ジヒドロコレステロールの紫外線に対する角質形成細胞の防御効果は、次のような方法で実施した。
【0033】
角質形成細胞を適正細胞濃度で96ウェルフレートに分注し、最適培養条件で24時間安定化させた。24時間後、最適濃度の7−ジヒドロコレステロールと、比較物質であるレチノールとを投与し、4時間安定化させて、原料が十分に分散するようにした。原料を十分に分散させた後、無菌実験室において40Wのダブルランプで8分間紫外線を照射した。24時間後、何も処理せずに、8分間照射した陰性対照群と比較して、細胞の生存率を求め、原料に対する紫外線防御機能を測定した。
【0034】
測定結果、以下の表3のように、7−ジヒドロコレステロールを投与した細胞群は、63%、レチノールを投与した細胞群は、55%、そして陰性対照群は、56%であった。これは、レチノールが紫外線に対する防御効果が全くない一方、7−ジヒドロコレステロールは、紫外線防御効果がより高いことを示している。
【0035】
[表3]老化緩和効果の測定結果

【実施例3】
【0036】
安定化した7−ジヒドロコレステロールと、エマルジョンに投入された7−ジヒドロコレステロールとの活性を評価するために、実施例2の製品と比較例1の製品とを45℃で4週間保管した後、老化緩和の効果を検証するために、各実験群に対して生後15乃至20週の脱毛ネズミ30匹ずつを使用して、次のような実験を行った。
【0037】
脱毛ネズミの背の部位に紫外線照射器(UV SIMULATOR)を利用して、2mJ/cmの照射量で照射するのを、週2回の頻度で4週間実施することにより、皮膚の非正常的な過角質化を誘発させた。その後、7−ジヒドロコレステロールが安定に含まれている実施例2の化粧料を、脱毛ネズミの背の部位の一方の面に、1日2回、2週間適量塗布する反面、他の一方の面には、比較のために、7−ジヒドロコレステロールが安定化されていない比較例1の化粧料を適用した。2週後、老化緩和効果を肉眼で観察し評価し、その結果を表4に示した。
【0038】
[表4]老化緩和効果の測定結果

【0039】
人為的に老化が誘発された脱毛ネズミに、7−ジヒドロコレステロールを安定化させた実施例2の化粧料を適用した場合に、30匹の全ての動物から非正常的な皮膚過角質化の緩和効果が現れることを観察することができたが、これは、7−ジヒドロコレステロールを安定化させていない化粧料が、ほとんどの場合に緩和効果を表せない事実を照らしてみる時、画期的な結果であることを知ることが出来る。
【実施例4】
【0040】
30から40才の女性を対象に、安定化した7−ジヒドロコレステロールのシワ緩和効果を検証するために、各実験群に対して、20人を選択し、次のような実験を実施した。安定化した7−ジヒドロコレステロールが配合された実施例2の化粧料と、比較例1の化粧料とを、45℃で4週間保管した後、実施例2の製品を、1日2回の頻度で4週間女性の右側の目の周囲に塗布し、他の一方の目の周囲には、比較のために比較例1の製品を塗布した。4週後、シワ緩和の効果を肉眼で観察し、その結果を次のように整理した。
【0041】
[表5]シワ緩和効果の測定結果

【0042】
上記表5の結果からわかるように、7−ジヒドロコレステロールを安定化させた化粧料を適用した場合、20人の全ての女性が少なくとも若干の緩和効果を表し、特に9人には、顕著な緩和効果を表す等、7−ジヒドロコレステロールを安定化させていない化粧料に比べて、画期的な結果を示した。従って、7−ジヒドロコレステロールを安定化させた化粧料が、安定化させずに配合した化粧料に比べて、その効果が優秀だということが立証された。
[発明の効果]
【0043】
以上のように、7−ジヒドロコレステロールを、多孔性である親油性高分子樹脂を使用して安定化させることにより、既存の化粧品に適用する場合に安全性の問題を改善することができ、また製品の活性も長く持続することができた。従って、本発明の化粧料組成物は、このような特定の目的に有用に使用することができると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した状態の7−ジヒドロコレステロールを含有したことを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
上記7−ジヒドロコレステロールは、多孔性である親油性高分子樹脂に固着されたことを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
上記7−ジヒドロコレステロールを、0.0001乃至10重量%含有したことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
上記多孔性である親油性高分子樹脂を、0.01乃至30重量%含有したことを特徴とする請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
上記多孔性である親油性高分子樹脂は、分子量が1、000乃至1、000、000であることを特徴とする請求項2または4に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
抗酸化剤として、ヒポタウリン0.01乃至10重量%を更に含有したことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
その剤形が、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、及びパックのうち、選択された一つの種であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
7−ジヒドロコレステロールを安定化させた後、これを組成物に含有させる段階を備えることを特徴とする化粧料組成物の製造方法。
【請求項9】
上記7−ジヒドロコレステロールを、多孔性である親油性高分子樹脂に吸着させて安定化することを特徴とする請求項8に記載の化粧料組成物の製造方法。
【請求項10】
7−ジヒドロコレステロールをアルコールに溶解させた後、溶解された状態で多孔性である親油性高分子樹脂を使用して吸着させ、アルコールを蒸発させることにより、高分子樹脂細孔に7−ジヒドロコレステロールを固着させる段階を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の化粧料組成物の製造方法。
【請求項11】
上記段階以後に、上記7−ジヒドロコレステロールが固着された高分子樹脂を、油状成分に分散させて、外部の水状との接触を最小化させる段階を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の化粧料組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−195702(P2010−195702A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41052(P2009−41052)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(509053857)韓佛化粧品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】