説明

9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの調製のためのプロセス

【課題】9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの調製法の提供。
【解決手段】9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17α水酸基と2-フロイルクロリドを反応させることによる、下記式で表される、対応する17−エステルの調製法。該化合物は抗炎症剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの合成のための新たなプロセスに関し、特に、炎症性疾患の処置に有用な合成抗炎症性ステロイドである、モメタゾンフロエート(MometasoneFuroate)の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モメタゾンフロエート(あるいは9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンの17−(2’−フロエート)として公知である)は、以下の構造を有する強力な高炎症性ステロイドである:
【0003】
【化1】

特許文献1、特に実施例12に記載されている。実施例12はモメタゾンフロエートの調製のための2つのプロセス(方法IおよびII)を記載しており、これは9α,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンおよび21−クロロ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4,9(11)−プレグナトリエン−3,20−ジオンをそれぞれ出発物質として使用する。その中で方法Iのみが本発明に関連する;それは以下のように例示され得る:
特許文献1の実施例12の方法I:
【0004】
【化2】

(ここで、4−DMAPは4−ジメチルアミノピリジンである)。実施例12のプロセス(方法I)は、上記スキームに示されるように、3つの別個で区別される段階で実施される。
【0005】
このプロセスのさらなる研究は、多くのステロイド副産物が各段階で形成されることが示され、その結果、収率が減少し、そして念入りな精製が要求される。従って、第1段階(21−塩素原子の導入)もまたヒドロキシスルトン(hydroxysultone)(以下参照)、9α,11β−クロロヒドリン、および21−ピリジン塩(この最後の化合物は、NMR解析によって生成物のおよそ5%に達する)を与える。第2段階(17−(2−フロイル−オキシ基)を導入するためのエステル化)は、代表的には約4〜6%の収率のエノールジフロエートエポキシド(21−クロロ−9β,11β−エポキシ−20(21)−エン−17α,20−ジオール17,20−ジフロエート)を生成する。本発明者らは、スルトンおよびエノールジフロエートエポキシドが以下の構造を有することを決定した:
【0006】
【化3】

第3段階(エポキシ環の開環)は、代表的には約7〜8%の2つの分離生成物を与え、これは芳香族化環Aを有し、9,10−結合が切断されている。従って、これらの全ての工程は、不純物を生成し、その結果所望の生成物の収率がそれによって減少され、そして最終生成物は、慎重な精製を必要とし、さらなる損失が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,472,393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、モメタゾンフロエートおよび9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの関連の17−エステル、特に抗炎症性ステロイドの調製のための改良されたプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの調製のためのプロセスを提供し、これは以下を包含する:
(1)トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、9β,11β−エポキシ−プレグナン−17α,21−ジオール−20−オンを、過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルハライドと反応させ、21−スルホネートエステルを形成し、次いで反応混合物を過剰のスルホニルハライドと実質的に等量のアルコールを添加し、9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンを得る工程;
(2) 得られた9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンを、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸の無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンの17−エステルを形成する工程;次いで
(3) 9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンの17−エステルを、不活性有機溶媒の存在下で水性ハロゲン化水素と反応させ、9β,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンを形成する工程。
【0010】
本発明はまた、以下の式IIのステロイドの調製のためのプロセスを提供する:
【0011】
【化4】

ここで、
Xは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
Yは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
RCO(またはCOR)は、カルボキシアシル基であり;
R1は水素または低級アルキル基(α−またはβ−配置)であり、かつ1,2−位の破線は単結合または二重結合を示し;
このプロセスは以下を包含する:
A.以下の式IIIの化合物を、トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、約0.03〜約3モル当量過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルフルオリド、クロリドまたはブロミドと反応させて、21−スルホネートエステルを形成し:
【0012】
【化5】

ここで、R1および点線は上記の定義と同様であり;
次いで、反応混合物に、過剰のスルホニルハライドと実質的に等量の低級1級アルカノールを添加し、以下の式IVの化合物を得る工程:
【0013】
【化6】

ここで、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;
B.得られた式IVの化合物を、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸RCOOHの無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、ここで、RCOは上記の定義と同様であり、以下の式Vの化合物を形成する工程:
【0014】
【化7】

ここで、RCO、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;次いで
C.得られた式Vの化合物を、不活性有機溶媒の存在下で水性HXと反応させ、ここでXは上記の定義と同様であり、上記で定義した式IIの化合物を形成する工程。
【0015】
本発明はまた、以下の式IIAのステロイドの調製のためのプロセスを提供する:
【0016】
【化8】

ここで、
Xは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
Yは、ヨウ素原子であり;
RCOは、カルボキシアシル基であり;
R1は水素またはアルキル基(α−またはβ−配置)であり、かつ1,2−位の破線は単結合または二重結合を示し;
このプロセスは以下を包含する:
A.以下の式IIIAの化合物を、トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、約0.03〜約3モル当量過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルフルオリド、クロリドまたはブロミドと反応させて、21−スルホネートエステルを形成し:
【0017】
【化9】

ここで、R1および点線は上記の定義と同様であり;
次いで、反応混合物に、過剰のスルホニルハライドおよび少なくとも1当量のイオン性ヨウ化物と実質的に等量のアルカノールを添加し、以下の式IVAの化合物を得る工程:
【0018】
【化10】

ここで、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;
B.得られた式IVAの化合物を、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸RCOOHの無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、ここで、RCOは上記の定義と同様であり、以下の式VAの化合物を形成する工程:
【0019】
【化11】

ここで、RCO、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;次いで
C.得られた式VAの化合物を、不活性有機溶媒の存在下で水性HXと反応させ、ここでXは上記の定義と同様であり、上記で定義した式IIの化合物を形成する工程。
【0020】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの調製のためのプロセスであって、これは以下を包含する:
(1)トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、9β,11β−エポキシ−プレグナン−17α,21−ジオール−20−オンを、過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルハライドと反応させ、21−スルホネートエステルを形成し、次いで反応混合物を過剰のスルホニルハライドと実質的に等量のアルコールを添加し、9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンを得る工程;
(2) 得られた9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンを、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸の無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンの17−エステルを形成する工程;次いで
(3) 9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンの17−エステルを、不活性有機溶媒の存在下で水性ハロゲン化水素と反応させ、9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルを形成する工程。
(項目2)項目1に記載のプロセスであって、ここで:
工程(1)において、前記スルホニルハライドが芳香族スルホニルハライドであり、これが約0.01〜約3モル当量過剰で使用され、前記トリアルキルアミンがトリ(低級アルキル)アミンであり、前記不活性有機溶媒が水非相溶性であり、そして前記アルコールが低級1級アルカノールであり;
工程(2)において、前記カルボン酸の無水物、クロリド、またはブロミドが、前記ヘテロアリールカルボン酸のクロリドであり、そして前記トリアルキルアミンがトリ(低級アルキル)アミンであり;および
工程(3)において、前記水性ハロゲン化水素が水性HF、水性HCl、または水性HBrである
、プロセス。
(項目3)以下の式IIのステロイドの調製のためのプロセスであって:
【0021】
【化12】

ここで、
Xは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
Yは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
RCOは、カルボキシアシル基であり;
R1は水素または低級アルキル(α−またはβ−配置)であり、かつ1,2−位の破線は単結合または二重結合を示し;
このプロセスは以下を包含する:
A)以下の式IIIの化合物を、トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、約0.03〜約3モル当量過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルフルオリド、クロリドまたはブロミドと反応させて、21−スルホネートエステルを形成し:
【0022】
【化13】

ここで、R1および点線は上記の定義と同様であり;
次いで、反応混合物に、過剰のスルホニルハライドと実質的に等量の低級1級アルカノールを添加し、以下の式IVの化合物を得る工程:
【0023】
【化14】

ここで、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;
B)得られた式IVの化合物を、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸RCOOHの無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、ここで、RCOは上記の定義と同様であり、以下の式Vの化合物を形成する工程:
【0024】
【化15】

ここで、RCO、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;次いで
C)得られた式Vの化合物を、不活性水非相溶性有機溶媒の存在下で水性HXと反応させ、ここでXは上記の定義と同様であり、上記で定義した式IIの化合物を形成する工程。
(項目4)XがF、ClまたはBrであり、YがClまたはBrであり、R1がα−メチル基であり、1,2−位の破線が二重結合を示し、そしてRCOがヘテロ環カルボニル基である、項目3に記載のプロセス。
(項目5)項目3に記載のプロセスであって、ここで、工程Aにおいて、前記芳香族スルホニルハライドがクロリドまたはブロミドであり、前記トリ(低級アルキル)アミンがジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−プロピル)アミン、またはトリブチルアミンであり、前記不活性有機溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、または芳香族炭化水素であり、そして前記芳香族スルホニルハライドが塩素原子またはメチル基で置換され得るベンゼンスルホニルクロリドである、プロセス。
(項目6)項目3に記載のプロセスであって、ここで9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが、トリエチルアミンおよび塩化メチレン中で、約−10〜10℃で1〜10時間で、1.1〜2.5当量の4−トルエンスルホニルクロリドとの反応によって、その21−トシレートへ変換され;
9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン21−トシレートが次いで、反応混合物へのメタノールの添加により、21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンに変換され;
21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが、トリエチルアミンおよび塩化メチレン中で5〜15℃での2−フロイルクロリドとの反応によって、単離せずに21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)に変換され;
トリエチルアミンが、鉱酸での抽出によって最初に除去され、次いで21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)が、酢酸および塩化メチレン中で約12N水性HClとの反応により9α,21−クロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)に変換され、ここで該反応が約0℃で1〜3時間、次いで約20℃で2〜4時間実施され;そして
該反応混合物を洗浄して酸を除去し、塩化メチレンをメタノールに置換し、これにより21-クロロ-9β,11β-エポキシ-17α-ヒドロキシ-16α-メチル-1,4-プレグナジエン-3,20-ジオン17-(2’-フロエート)を沈殿させることによって、21-クロロ-9β,11β-エポキシ-17α-ヒドロキシ-16α-メチル-1,4-プレグナジエン-3,20-ジオン17-(2’-フロエート)が単離される、プロセス。
(項目7)9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)の調製のための項目3に記載のプロセスであって、該プロセスは以下を包含する:
A1)トリエチルアミンおよび塩化メチレンの存在下で9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンを4−トルエンスルホニルクロリドと反応させて21−トシレートを形成し、次いでメタノールを添加することによって21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)が形成される工程;
B1)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンを、トリエチルアミンの存在下で2−フロイルクロリドと反応させて、(単離せずに)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を得、次いでトリエチルアミンおよび他の水溶性物質を酸洗浄で除去する工程;および
C1)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を、酢酸の存在下で濃水性HClと反応させて、(単離せずに)9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を得る工程。
(項目8)項目7に記載のプロセスであって、ここで:
工程A1が、約3〜5当量のトリエチルアミンおよび十分な塩化メチレン中で、−5℃〜+5℃で2〜4時間で、約0.4〜1.0当量過剰の4−トルエンスルホニルクロリドを用いて実施され;次いで過剰の4−トルエンスルホニルクロリドが、十分なメタノールの添加によって除去され、そして該反応混合物が35〜40℃に4〜8時間加熱され;
工程B1が、約5〜15℃でかつ1.5〜2当量の2−フロイルクロリドの存在下で実施され;
工程C1が、0℃で約1〜3時間撹拌しながら、次いで約20℃で約1〜3時間実施され、9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を得る、プロセス。
(項目9)以下の式IIAのステロイドの調製のためのプロセスであって:
【0025】
【化16】

ここで、
Xは、フッ素、塩素または臭素原子であり;
Yは、ヨウ素原子であり;
RCOは、カルボキシアシル基であり;
R1は水素またはアルキル基(α−またはβ−配置)であり、かつ1,2−位の破線は単結合または二重結合を示し;
このプロセスは以下を包含する:
A)以下の式IIIAの化合物を、トリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で、約0.03〜約3モル当量過剰の有機(芳香族またはアルキル)スルホニルフルオリド、クロリドまたはブロミドと反応させて、21−スルホネートエステルを形成し:
【0026】
【化17】

ここで、R1および点線は上記の定義と同様であり;
次いで、反応混合物に、過剰のスルホニルハライドおよび少なくとも1当量のイオン性ヨウ化物と実質的に等量の低級1級アルカノールを添加し、以下の式IVAの化合物を得る工程:
【0027】
【化18】

ここで、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;
B)得られた式IVAの化合物を、トリアルキルアミンの存在下でカルボン酸RCOOHの無水物、クロリドまたはブロミドと反応させ、ここで、RCOは上記の定義と同様であり、以下の式VAの化合物を形成する工程:
【0028】
【化19】

ここで、RCO、R1、Yおよび点線は上記の定義と同様であり;次いで
C)得られた式VAの化合物を、不活性有機溶媒の存在下で水性HXと反応させ、ここでXは上記の定義と同様であり、上記で定義した式IIの化合物を形成する工程。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、9α,21−ジハロ−プレグナン−11β,17α−ジオール−20−オンの17−エステルの調製のための本プロセスにおいて:
工程(1)(9β,11β−エポキシ−プレグナン−17α,21−ジオール−20−オンと、有機(芳香族またはアルキル)スルホニルハライドとの反応)は、好ましくは、約0.01〜約3モル当量過剰のスルホニルハライドを用いて実施され、これは好ましくは、芳香族スルホニルフルオリドまたは特にクロリドあるいはブロミドであり;アミンは好ましくはトリ(低級アルキル)アミンであり;不活性有機溶媒は好ましくは、水非相溶性(immiscible)であり;
そしてアルカノールは好ましくは、低級1級アルカノール(例えば、メタノール)であり;
工程(2)(得られた9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンと、カルボン酸の無水物、クロリドまたはブロミドとの反応)は、好ましくは、トリ(低級アルキル)アミンの存在下でヘテロアリールカルボン酸のクロリドを用いて実施され;
次いで
工程(3)(不活性有機溶媒の存在下での9β,11β−エポキシ−21−ハロ−プレグナン−17α−オール−20−オンの17−エステルと、不活性有機溶媒の存在下で水性ハロゲン化水素との反応)は、好ましくは水性HF、水性HCl、または水性HBr、さらに特に水非相溶性の不活性有機溶媒の存在下、および水相溶性有機共溶媒(co−solvent)の存在下で水性HClを用いて実施される。
【0030】
類似の条件は、上記で定義した式IIまたはIIAのステロイドの調製のためのプロセスの工程A、BおよびCにそれぞれ適用される。
【0031】
本発明は、9α,21−ジハロ−11β,17α−ジヒドロキシ−20−ケトーステロイドの17−エステルの調製、そして特にプレグナン類の9,21−ジハロ−11β,17α−ジヒドロキシステロイドの抗炎症性17−エステルの調製のための新規プロセスを提供する。さらに、この新規プロセスは、公知の方法に対して、さらに特にはモメタゾンフロエートおよび類似抗炎症性ステロイドの調製のための米国特許第4,472,393号の実施例12の方法Iのもとで概略されたプロセスに対して、多くの利点を有する。従って、本プロセスで生成した廃棄副産物の量は、上記の方法Iのプロセスに比べてかなり減少され得、そしてこの新規プロセスは、3つの異なる溶媒を用いる3つの別個で区別される工程のかわりに、単一の溶媒中でインサイチュ(または1ポット)反応として、より短時間で、そしてより少量の溶媒で実施され得る。より詳細には、モメタゾンフロエートの調製は、米国特許第4,472,393号の方法Iの調製より50%高い収率で、そして半分の時間で行われ得る。さらに、方法Iのプロセスに必要ないくつかの試薬は不要であり得、使用される塩化メチレンの量、強力な発ガン物質が半分まで減少され得る。
【0032】
本明細書中において、特に別の記載がない限り、用語は以下の意味を有する:
「アルキル」は、1〜12炭素原子を有する飽和脂肪族基を表し、そして「低級アルキル」は、1〜4炭素原子を有する飽和脂肪族基、特にメチル基またはエチル基を表す;
「芳香族スルホニルハライド」に関する「芳香族」は、ハロゲン原子および低級アルキル基から選択される0、1または2置換基を有するベンゼンまたはナフタレン核を表し、この核から伸びるスルホニル基への結合を有する;
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;
カルボン酸RCOOHの「アシル」基は、基RCO(実際には本明細書中の化学式の「COR」として示される)であり、そしてアルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、またはヘテロアリール−C(O)−によって例示され得る;
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、そして2〜10炭素原子、好ましくは2〜6炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状脂肪族炭化水素基を表す;
「アリール」は、6〜10炭素原子を有し、そして少なくとも1つのベンゼン環を有する炭素環式基を表し、結合可能な点として意図される炭素環式基の全て利用可能で置換可能な炭素原子を有し、この炭素環式基は必要に応じて1〜3Q基で置換され、ここで各基Qは独立してハロ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、およびジアルキルアミノ基から選択される。好ましいアリール基はフェニル、置換フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルおよびインダニル(indanyl)である;
「シクロアルキル」は、3〜10炭素原子、好ましくは3〜6炭素原子を有する飽和炭素環式基を表す;
「ヘテロアリール」は、炭素環式環構造に割り込む少なくとも1つのO、Sおよび/またはN(例えば、1〜4、好ましくは1〜3、特に1または2)を有し、そして芳香族性を与える十分な数の非局在化pi電子を有する環状芳香族基を表し、この芳香族ヘテロ環式基は2〜9、好ましくは4または5炭素原子を有する。例えば、2−、3−または4−ピリジル、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、2−、4−または5−チアゾリル、2−、4−または5−イミダゾリル、2−、4−または5−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−または4−ピリダジニル、3−、5−または6−[1,2,4−トリアジニル]、3−または5−[1,2,4−チアジアゾリル]、2−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾフラニル、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、3−、4−または5−ピラゾリル、あるいは2−、4−または5−オキサゾリルなど。好ましいヘテロアリール基は、2−、3−または4−ピリジル、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、2−、4−または5−イミダゾリルあるいは7−インドリルを含む;
「ヘテロアロイル」は、ヘテロアリール−C(O)−を表し、ここでヘテロアリールは上記の定義と同様であり、そして好ましくは2−、3−または4−ピリジル、3−または特に2−フリル、2−または3−チエニル、2−、4−または5−イミダゾリルあるいは7−インドリルである。
【0033】
式IIまたはIIAの化合物において:
Xは、好ましくはフッ素または塩素であり;
R1は、好ましくはα−配置であり、そして特にメチル基であり;
1,2−位の破線は、好ましくは二重結合を示す;
そして基RCOは、好ましくはヘテロ環カルボニル基である。ヘテロ環(これらの好ましい化合物のR)は、好ましくはOまたはS原子を含む5員ヘテロ環である。ヘテロ環カルボニルは、例えば2−または3−フロイル(furoyl)、あるいは2−または3−テノイル(thenoyl)、特にフロイルである。
【0034】
式IIの化合物において、Yは、好ましくは臭素または最も好ましくは塩素である。
【0035】
本プロセスによって調製され得る化合物は以下を含む:
9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンの17−(2−テノエート(thenoate))、17−(3−テノエート)、17−(2−フロエート(furoate))エステル、そして特に17−(3−フロエート)エステル;
9α−フルオロ−21−クロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンの17−(2−テノエート)、17−(3−テノエート)、17−(2−フロエート)、および17−(3−フロエート)エステル;
9α−ブロモ−21−クロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンの17−(2−テノエート)、17−(3−テノエート)、17−(2−フロエート)、および17−(3−フロエート)エステル;
およびこれらの6α−フルオロ誘導体。
【0036】
以下の段落において:
「第1工程」は、上記の工程(1)または工程Aを指し;「第2工程」は、上記の工程(2)または工程Bを指し;そして「第3工程」は、上記の工程(3)または工程Cを指す。
【0037】
第1工程において、スルホニルハライドは、好ましくは芳香族スルホニルハライドであり、これによりスルトン(スルホニルハライドがアルキルスルホニルハライドである場合の頻繁な副産物)の形成が回避され得る。このスルホニルハライドは、好ましくはスルホニルクロリドまたはブロミド、特にクロリドであり、そしてその芳香族基はベンゼンまたはナフタレン核であり得る。特に、この芳香族基は、好ましくは塩素原子またはメチル基、好ましくは4−位で置換され得るベンゼン核である。従って、芳香族スルホニルハライドは、ベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド、または特に4−トルエンスルホニルクロリドであり得る。使用され得る他のスルホニルハライドはメタン−およびエタン−スルホニルクロリドおよびブロミドを含む。
【0038】
トリアルキルアミンは、塩基および酸結合剤として機能する。それらの機能を満たし得、そして反応混合物から水性酸で容易に除去され得る任意のトリアルキルアミンが適切である。従って、本発明のプロセスで使用可能なトリアルキルアミンは、トリ(低級アルキル)アミン(例えば、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−プロピル)アミン、N,N−ジ(2−プロピル)エチルアミンおよびトリブチルアミン)を含む。トリエチルアミンは、効果的であり、そしてその利便性および低コストのために特に好ましい。芳香族スルホニルハライドは、反応して21−スルホネートエステルを形成し、そしてそのハライドは、例えば、トリ(低級アルキル)アミンヒドロクロリドまたはヒドロブロミドとして結合される。
【0039】
不活性有機溶媒は、好ましくは非極性水非相溶性溶媒であり、そして便利には塩化メチレン、CH2Cl2である。他の使用可能な溶媒は、四塩化炭素、シクロヘキサン、および芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンおよびトルエン)を含む。
【0040】
スルホニルハライドは、好ましくは少量過剰に(例えば、全体として約1.1〜2.5当量)、より好ましくは約1.3〜2当量(例えば、1.5〜1.8当量、すなわち約0.5〜0.8当量過剰)使用される。トリアルキルアミン(好ましくはトリ(低級アルキル)アミン)は、少量から中程度過剰で使用される(例えば、全体として約2〜6当量、好ましくは約3〜4当量)。
【0041】
反応は、好ましくは中程度から低温(例えば、−20℃〜室温、より好ましくは約−10〜10℃)で1〜10時間実施される。反応は、すなわち式IIIまたはIIIAの基本的に全てのステロイドが、その21−スルホネートエステルに変換されるまで、完結され得る。代表的には、反応は数時間かかる(例えば、9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンのその21−トシレートへの変換に−5℃〜+5℃で約3〜4時間)。
【0042】
次いで、ごく少量過剰のアルカノールが好ましい(例えば、0.01〜0.2、好ましくは0.05〜0.1当量過剰)が、少量のアルコール(例えば、メタノールのような低級1級アルカノール)は、実質的に過剰のスルホニルハライドと等量で反応混合物に添加され、これでスルホネートエステルを形成する(例えば、低級アルキル芳香族スルホネートエステル)。アルコールの添加は、過剰のスルホニルハライドをクエンチし、そしてさらなるハライドイオンを放出し、これは21−スルホネートエステル基を置換し得る。メタノールの添加は、別に形成される不純物の量を強力に減少し、そしてハライド(フッ素、塩素または臭素)によって21−スルホネートエステルの置換速度を上昇する。フッ素、塩素または臭素によって21−スルホネートエステルの置換を達成するためにハライドをさらに添加することは、この改良されたプロセスにおいて必要ない;反応混合物にすでに存在するハライドが、必要な置換を達成する。従って、LiClまたはLiBrのようなクロリドまたはブロミドの添加(米国特許第4,472,393号の実施例12の方法Iのプロセスのような)は必要ない。しかし、21−ヨーディドを生成するために、カリウムヨーディドまたはテトラアルキルアンモニウムヨーディドのような可溶性ヨーディドが、反応混合物に添加されるべきである。
【0043】
この反応は、中程度の温度(例えば、20〜50℃、好ましくは30〜40℃)で数時間で都合良く実施される。塩化メチレンが溶媒として存在する場合、反応はちょうど還流温度より下(すなわち、40℃より少し下)で、4〜8時間、好ましくは5〜6時間実施され得る。例えば、9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン21−トシレートの21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α,21−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンへの変換は、代表的には数時間かかり、例えば、塩化メチレンの還流温度の少し下で約4〜8時間かかる。
【0044】
上記の定義のエステル基RCOを導入するための第2段階のエステル化は、次いで好ましくはアシルブロミドRCOBrまたは特にクロリドRCOClの添加によって実施され、しかし、無水物RCOOCORまたは混合無水物RCOOR2(ここでR2は、強力に妨害された酸(例えば、トリメチル酢酸)のアシル基である)もまた使用され得る。好ましいエステル形成誘導体は酸クロリドであり、例えば2−フロイルクロリドである。エステル化は塩基としてのトリアルキルアミンの存在下で実施される;その結果この反応は第1(前の)段階からの生成物の単離または精製をせずに行われ得、同じトリ(低級アルキル)アミン(例えば、トリエチルアミン)は、好ましくは塩基としてこの第2段階で使用され得る。過剰のエステル形成誘導体は、好ましくは例えば、全体として1.2〜2.5モル、好ましくは1.5〜2.0モル、特に約1.8モルで使用される。反応は中程度〜低温で、代表的には0〜30℃そして特に室温以下で、数時間(例えば、5〜15℃で5〜15時間)で達成される。21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが、トリエチルアミンおよび塩化メチレン(溶媒として第1段階から保持されている)中で2−フロイルクロリドとの反応によって、21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17(2’−フロエート)に変換される場合、反応は、代表的には10〜14時間で完結する(例えば、約12時間、5〜15℃、例えば約10℃で約12時間)。
【0045】
塩基(トリ(低級アルキル)アミン)は、次いで第2段階から生じる反応溶液を水性酸で洗浄することによって除去される。希釈した強い鉱酸(例えば硫酸)が便利である。酸が、エポキシド環を開くことによる9α−クロロまたは9α−ブロモステロイドのそれぞれの生成のために第3段階で使用される場合、塩酸または臭化水素酸もまた使用され得る。
【0046】
最終または第3工程(9β,11β−エポキシド環を開いて、式IIまたは式IIAの9α−ハロ−11β−ヒドロキシステロイドを形成する)は、次いで水性溶液中での要求されるハロゲン化水素の手段によって達成される。濃縮水性ハロゲン化水素(ここでハライドはフルオリド、クロリドまたはブロミド)は、不活性水相溶性有機溶媒(例えば、2〜4炭素原子を有する低級アルカノール酸、特に氷酢酸、例えば、アセトンのような低級ケトン、エタノールのような低級アルカノール、DMF、DMSO、THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンと共に、式IVまたはIVAのステロイドの溶液に添加される。第1工程および第2工程からの不活性水相溶性有機溶媒(代表的には塩化メチレン)は、この第3工程もまた通して実施される。この反応は基本的に2相であるので、この反応は、好ましくは、大過剰のハロゲン化水素(例えば、10〜20当量、好ましくは約15当量)を用いて実施される;従って、混合(例えば、撹拌によって)が必要とされる。代表的には、低温から中程度の温度で数時間かかり、例えば0〜20℃で1〜4時間かかる。21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17(2’−フロエート)が、酢酸および塩化メチレンの存在下で、12N水性HClとの反応により9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)に変換される場合、この反応は好ましくは約0℃で1〜3時間、次いで約20℃で1〜3時間実施される。
【0047】
次いで、ステロイド生成物は標準的な手順(例えば、水溶性物質(特に酸)を除去するための洗浄、次いで単離および再結晶)で単離され得る。9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)の単離において、蒸留によって塩化メチレンをメタノールに置換することが特に有利である;ステロイドが沈殿し、そしてろ過され得、そしてCH2Cl2およびCH3OHから再結晶され得、薬学的に純粋なモメタゾンフロエートを得る。
【0048】
特に、本発明は9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)の調製のための改良されたプロセスを提供し、このプロセスは以下を包含する:
A1)トリエチルアミンおよび塩化メチレンの存在下で9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンを4−トルエンスルホニルクロリドと反応させて21−トシレートを形成し、次いでメタノールを添加することによって21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが形成される工程;
B1)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンを、トリエチルアミンの存在下で2−フロイルクロリドと反応させて、(単離せずに)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を得、次いでトリエチルアミンおよび他の水溶性物質を酸洗浄(好ましくは鉱酸(例えば水性HCl))で除去する工程;および
C1)21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を、酢酸の存在下で濃水性HClと反応させて、(単離せずに)9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を得る工程。
【0049】
工程A1が、好ましくは約3〜5当量のトリエチルアミンおよび十分な塩化メチレン(例えば、約6容量、ここで「1容量」はステロイド1キログラム当たり1リットルを示す)中で、低温(例えば、−5℃〜+5℃で2〜4時間)で、少量過剰(約0.4〜1.0当量過剰)の4−トルエンスルホニルクロリドを用いて実施され;次いで好ましくはスルホニルクロリドに関して0.01〜0.1当量過剰の4−トルエンスルホニルクロリド中で、4−トルエンスルホニルクロリドをクエンチするために十分なメタノールが添加され、そして反応混合物が還流温度付近(それより少し低い)(例えば、35〜40℃で4〜8時間)まで加熱される。この間に4−トルエンスルホニルクロリドから遊離したクロリドが、21−(4−トルエンスルホニルオキシ基に置換し、そしてこの21−クロロ化合物である、21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが、米国特許第4,472,393号、実施例12の方法Iの特徴である不純物が、実質的に形成されずに生成される。
【0050】
工程B1を行うためにこの化合物を単離する必要はない;反応混合物は、約−5〜0℃まで冷却され、そして少量過剰(例えば、全体として1.5〜2当量)の2−フロイルクロリドが添加される。工程A1の塩基であるトリエチルアミンは、再度塩基として機能するが、さらなる量(例えば、1〜5当量、好ましくは3〜4当量)を添加することが望ましい。17−エステルである、21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)が、形成される。エステル化は、好ましくは低温で実施される(例えば、約5〜15℃で、約10〜14時間)。
【0051】
再度生成物(17−エステル)を単離する必要はない;工程B1の終わりに、反応混合物は希釈鉱酸で、好ましくは水性HClで簡単に洗浄され、トリエチルアミン(および他の水溶性物質)を除去する。次いで、工程C1において、洗浄された反応混合物は約0℃まで冷却され、大過剰の(例えば、10〜15当量)濃縮(12N)HClが、0.5〜2容量の氷酢酸と共に添加される。この反応は、好ましくは0℃で短時間(例えば、1〜3時間)、次いで室温(約20℃)で約1〜3時間撹拌されながら実施される。
【0052】
このプロセスは、以下のように表され得る:
【0053】
【化20】

このスキームにおいて、TsClは4−トルエンスルホニルクロリド、TEAはトリエチルアミン、そして2−Fu−Clは2−フロイルクロリドである。
【0054】
このスキームのプロセスは、背景のセクションで示した方法I(米国特許第4,472,393号のプロセスに対していくつかの利点がある。工程A1での4−トルエンスルホニルクロリドの使用は、ヒドロキシスルトンの形成を妨害する(4−トルエンスルホニルクロリドの硫黄原子上のメチルまたはメチレン基が活性化されないので)。さらに、塩基としてのトリエチルアミンの使用(少量過剰で)は、21−4級アンモニウム塩の形成を大きく妨害する;トリエチルアミンは、(溶媒として大過剰で使用される)ピリジンおよび4−ジメチルアミノピリジンよりもそのような塩を形成する傾向がさらに小さい。さらに、9α−クロロ−11β−ヒドロキシ生成物(9β,11β−エポキシド環の早発性の開環によって形成される)は、かなり減少する。さらに、21−スルホネートエステル基を置換するためのリチウムクロリドの使用は、妨害される。さらに、21−クロロ化合物の溶液収率は、約77%から約98%に上昇する。反応混合物は、同様に次の工程にそのまま用いられ得る;ワークアップ(work−up)または精製の必要はない。
【0055】
工程B1において、塩基としてのトリエチルアミンの代わりに4−DMAPの使用は、方法Iの対応する工程の上記エノールジフルオレート副産物(21−クロロ−20(21)−エン−17α,20−ジオール17,21−ジフルオレート)の形成を、方法Iのプロセスにおける約4〜6%から工程B1の1%未満(0.5%)に強く減少する。さらに、17(2’−フロエート)エステルの溶液収率が、約82%から約97%に上昇する。鉱酸での洗浄の後、反応混合物は、同様に次の工程にそのまま用いられ得る;ワークアップ(work−up)または精製の必要はない。
【0056】
工程C1において、慎重な温度の制御(約0℃で反応を開始し、そして約20℃で反応を完結する)を伴う2相系の使用は、切断された9−10結合を伴う芳香族化された環Aを有する副産物の収率を約7〜8%から3%未満にまで減少する。さらに、9α,21−ジクロロ−11β−ヒドロキシ化合物の溶液収率は、約83%から約95%に上昇する。HPLCは、所望の化合物への約95%の転化率が生じたことを示す。
【0057】
さらに、方法Iの対応工程に対する工程A1における副産物の一般的な減少は、副産物がより減少され、そしてそのまま工程B1およびC1に用いられることを意味する;同様に、方法Iの対応工程に対する工程B1における副産物の一般的な減少は、副産物がより減少され、そしてそのまま工程C1に用いられることを意味する;従って、本プロセスは、米国特許第4,472,393号の方法Iよりもかなり大きな収率の純粋な生成物を提供する;
そしてこのより純粋な生成物は単純な方法(例えば、カラムクロマトグラフィーの代わりに溶媒置換および再結晶)で精製され得る。特に、このプロセスが商業的規模で行われる場合、これら全ては、非常に顕著な利点である。
【0058】
本プロセスの別の利点は、中間体の単離および精製をせずに「1ポット」プロセスとして実施され得るということである。これは1次的には、新しくかつ効果的な反応工程A1、B1およびC1の新しい発明のためであり、これは慎重に設計され、そして同じ溶媒、最も好ましくはCH2Cl2中で行われるように発展させた。従って、本発明は非常に増強された効率でのモメタゾンフロエートの調製のためのプロセスを提供する。その結果、バッチをプロセスに通すために必要な合計の時間は、8日から4日に減少され得る。さらに、プロセスの全体収率は、再結晶生成物に基づいて、約52%から約80%に上昇し、そして生成物はより良質である。さらに、新規プロセスは、ピリジン、4−DMAP、リチウムクロリド、および(クロマトグラフィー精製のための)シリカゲルの使用を避けるという点で環境に優しく、そして塩化メチレン(強力な発ガン物質)の使用を約50%まで減少する。従って、この新規プロセスは、特に9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)[モメタゾンフロエート]の調製のためのその好ましい実施態様において、非常に大きな商業的利点を有し、そして当該分野において非常に顕著な進歩を示す。
【実施例】
【0059】
実施例
以下の実施例は例示するが、本発明をいかなるようにも限定しない:
実施例1:21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン
9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン(50.0g,純度約98%)を、1Lの3つ口フラスコに充填し、温度計、窒素吸入口および機械式スターラーを設置した。窒素雰囲気を反応中保持した。4−トルエンスルホニルクロリド(41.0g,水含有0.3%未満)およびCH2Cl2(300mL,水含有0.05%未満)を添加し、そしてこのバッチを−5℃〜5℃に撹拌しながら冷却した。トリエチルアミン(56.0mL,水含有0.3%未満)を、効果的に撹拌しながらゆっくりと(2〜3時間にわたって)バッチに添加し、そして慎重に温度を−5℃〜5℃で制御した。反応温度を、HPLCで決定した9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン21−トシレートの形成が基本的に完結するまで(0.4%未満の9β,11β−エポキシ−17α,21−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン)(通常3〜4時間)−5℃〜5℃で保持した。次いで、メタノール(3.80mL,水含有0.2%未満)を−5℃〜5℃でゆっくりと添加し、そして反応混合物を30分間にわたってゆっくりと室温まで加熱した。
【0060】
次いで反応混合物を35℃〜40℃に加熱し、この温度をHPLCで決定した21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンの形成が基本的に完結するまで保持した(例えば、0.1%未満の残存21−トシレート、通常4〜8時間)。次いで反応溶液を0〜5℃に冷却した。
【0061】
実施例2:21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)
次いで、トリエチルアミン(56.0mL)を実施例1の冷反応溶液に0〜10℃で添加した。次いで、フロイルクロリド(23.8mL)を0〜10℃でゆっくりと添加した;発熱反応が生じ、そして添加および温度を慎重に制御することを要した。反応溶液の温度を、残存の21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオンが1.0%未満としてHPLCで決定されるまで5〜12℃で保持した(代表的には10〜14時間)。次いで、反応溶液を0〜5℃に冷却し、そして2NHCl(約170mL)を、冷却し撹拌しながらゆっくりと慎重に添加した。この反応は発熱反応であったが、温度は20℃を越えさせなかった。2NHClの量を、水層のpHが1〜2であるように調節した。溶液を分液漏斗に移し、そして15分間静置した。次いで、下の有機層を1L3つ口フラスコに戻し、そしてCH2Cl2(100mL)で水層を抽出した。有機層(21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を含む)を合わせて、そして−5℃〜5℃に冷却した。
【0062】
実施例3:9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)
濃HCl(160mL,36%または12N)、次いで氷酢酸(50mL)を添加し、そして各添加は温度を−5℃〜5℃に保持して行った。この温度をさらに、残存の21−クロロ−9β,11β−エポキシ−17α−ヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)が5%未満としてHPLCでモニターされるまで保持した(代表的には1〜3時間)。次いで、反応混合物を20〜25℃に温め、そしてこの温度を、エノールジフロエートクロロヒドリン(エノールジフロエートエポキシドから形成され、これは「発明の背景」のセクションに記載されている)の量が0.6%未満になるまで保持した(代表的には1〜3時間)。
【0063】
MeOH(50mL)を添加し、そして混合物を全ての固体が溶解するまで撹拌した。下の有機層を分離し、そして上の水層をCH2Cl2(25mL)で抽出し、そして有機層を合わせた。さらに、MeOH(50mL)を添加し、そして混合物を全ての固体がなくなるまで撹拌した。次いで、水(200mL)を有機層に添加し、そしてpHを4〜7に、25%NaOH(約18〜25mL)で調節した。有機溶液(9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を含む)を分離した。
【0064】
1L3つ口フラスコを300mlでプレキャリブレーションし、そして有機溶液を添加した。溶液を蒸留によってプレキャリブレーションマーク(300ml)まで濃縮した。さらに、MeOH(200mL)を再度添加し、そして混合物を300mLに濃縮した(沈殿はこの工程の終わりに形成され得る)。
【0065】
さらに、再度MeOH(200mL)を添加し、そして混合物を300mLまで濃縮した。反応混合物を20〜25℃まで30分にわたってゆっくりと冷却し、次いでさらに5〜10℃まで冷却し、この温度で約1〜2時間撹拌した。次いで、9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)をろ過し、そして冷メタノール(0〜10℃、2×50mL)で洗浄した。
【0066】
実施例4:9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)の精製
実施例3の湿潤ケーキ(9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート))を、予め300mLにマークされた1L3つ口フラスコに充填した。脱色性木炭(5g,「Darco」)、CH3OH(200mL)およびCH2Cl2(200mL)を添加し、そしてステロイドを撹拌しながら溶解した。次いで、この溶液をろ過し、そしてフラスコおよびろ紙をCH2Cl2(50mL)でリンスし、そしてリンスした液を溶液と合わせた。次いで、合わせた溶液を300mLまで蒸留によって濃縮した(ときどきスラリーが得られる)。MeOH(200mL)を添加し、そして混合物を300mLまで濃縮した。次いで、それを20〜25℃まで30分にわたって冷却し、次いでさらに5〜10℃まで冷却し、この温度で約1〜2時間撹拌した。次いで、9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)をろ過し、そして冷メタノール(0〜10℃、2×50mL)で洗浄した。
【0067】
9α,21−ジクロロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)を、乾燥における減少が0.2%未満になるまで真空オーブンにて65〜70℃で乾燥した。56gの生成物を得た(収率:80%)。
【0068】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願は特にそして個々に参考として援用されるよう指示されるように同程度に参考として援用される。
【0069】
本発明の多くの実施態様が本明細書中で記載されるが、実施態様が、本発明の組成物およびプロセスを利用する他の実施態様を提供するように改変され得ることは明白である。従って、本発明の範囲が、上記の明細書に定義される別の実施態様および改変を含むこと:そして本発明は、実施例の様式で本明細書中に記載された特定の実施態様に限定されないことが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−149076(P2012−149076A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62497(P2012−62497)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2008−203650(P2008−203650)の分割
【原出願日】平成9年6月25日(1997.6.25)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】