説明

9―オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体

【課題】穏和で中性の反応条件を使用、望ましくない副生成物の形成を抑制した、6−O−アルキルエリトロマイシンAの迅速且つ効率的な製造方法の提供。
【解決手段】9−オキシムエリトロマイシンA誘導体をシリル化して9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体を形成し、次いで9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体をアルキル化剤と反応させ6−酸素で選択的にアルキル化する9−O−オキシムシリル−6−O−アルキルエリトロマイシンA誘導体の製造方法。さらに該9−O−オキシムシリル−6−O−アルキルエリトロマイシンA誘導体を脱オキシム化することを含む6−O−アルキルエリトロマイシンAの製造方法。当該製造方法により製造した6−O−アルキルエリトロマイシンA、例えば、クラリスロマイシンは、重要なマクロライド系抗生物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体発明の技術分野 本発明は、エリトロマイシン誘導体に関する。特に本発明は、エリトロマイシンA 9−オキシムシリル及び6−O−アルキルエリトロマイシンA誘導体の製造時におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エリトロマイシンAの6−O−アルキル誘導体は、抗菌剤として有用である。例えば、以下に示される6−O−メチルエリトロマイシンA(クラリスロマイシン)は、重要なマクロライド系抗生物質である(米国特許第4,331,803号)。
【0003】
【化6】

【0004】
クラリスロマイシン
6−0−メチルエリトロマイシンAの種々の製造法が記載されてきた。6−O−メチルエリトロマイシンAは、エリトロマイシンAの2’−O−3’−N−ジベンジルオキシカルボニル−デス−N−メチル誘導体をメチル化することにより製造することができる(米国特許第4,331,803号)。
【0005】
6−O−メチルエリトロマイシンAは、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体からも製造することができる(例えば、米国特許第5,274,085号、同第4,680,386号、同第4,668,776号、同第4,670,549号及び同第4,672,109号並びに欧州特許出願第0260938A2号参照)。
【0006】
9−O−オキシムエリトロマイシンA誘導体を使用する場合、オキシムは、2−アルケニル基(米国特許第4,670,549号及び同第4,668,776号)、ベンジル若しくは置換ベンジル基(米国特許第、4,680,386号及び同第4,670,549号)、または低級アルキル、置換アルキル、低級アルケニル、アリール置換メチル、置換オキサルキル及び置換チオメチルからなる群から選択される茎(米国特許第4,672,109号)でメチル化時に保護されている。しかし、オキシムをトリメチルシリル基で保護する場合、これらはアルカリ条件下でのメチル化時には非常に不安定である(J.of Antibiotics,第46巻,No.6,647頁,1993)。
【0007】
6−0−メチルエリトロマイシンAを製造する現行方法には欠点がある。例えば、2’−OH基を保護するのに失敗すると、その基の望ましくないメチル化が起きる。2’−OH基を保護する現行方法は、これらの方法が3’−窒素の保護も必要とするため、不十分である。例えば、米国特許第4,680,386号は、ベンジルオキシカルボニル部分で2’−OH基を保護することを開示している。しかしならが、そのような条件下では、3’−窒素は、N−脱メチル化、続いてN−ベンジルオキシカルボニル形成も受けてしまう。この3’−N−ベンジルオキシカルボニル基は、6−O−メチル化の後に脱保護されなければならない。3’−ジメチルアミノ基は、6−O−メチル化の後、N−メチル化により再生される。米国特許第4,670,549号は、ベンジルまたは同様の置換基として2’−OH基の保護を開示している。これらの条件下では、3’−窒素基も、第4級塩として保護されなければならない。この第4級塩は、6−O−メチル化後除去されて、3’−ジメチルアミノ基を再生しなければならない。さらに例えば、2’−ヒドロキシ基の保護のためにベンジルオキシカルボニル基を使用すると(米国特許第4,331,803号)、非常に刺激性且つ毒性のベンジルクロロホーメートを多量に必要とする。オキシアルキルで保護された9−オキシムの脱保護は、望ましくない副生成物の形成を導く過酷な条件下で実施しなければならない。
【0008】
穏和で中性の反応条件を使用する6−O−アルキルエリトロマイシンAの迅速且つ効率的な製造方法の提供が望まれている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、6−O−アルキルーエリトロマイシンA誘導体の効率的且つ実際的な製造法を提供する。本合成法は、定義により6−ヒドロキシ基を含有する9−オキシムエリトロマイシンA誘導体から出発する。この誘導体を、2’−OH位置でO−保護化されている9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体に転換し、次いで6−酸素で選択的にアルキル化する。6−O−アルキル化誘導体を次いで、脱シリル化し、脱オキシム化すると、6−O−アルキルエリトロマイシンAが得られる。
【0010】
9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体を、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体とシリル化剤とを反応させて、式:
【0011】
【化7】

(式中、R’、R”及びR’’’は独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルである)の保護基を有するO−保護化−オキシムを形成することにより製造する。
【0012】
本発明の方法で使用する9−オキシムエリトロマイシンA誘導体は、2’−OH及び4’−OH位置では非置換であることができるか、これらの位置に慣用のO−保護基を含有することができる。例示的であり且つ好ましいO−保護基としては、シリル(SiR’R”R’’’、式中、R’、R”及びR’’’は上記定義通りである)、アシル、低級アルケニルモノカルボニル、低級アルコキシカルボニル−アルキルカルボニル及びアリールカルボニル基が挙げられる。
【0013】
9−オキシム誘導体は、3’−ジメチルアミノ位置で非置換であることができるか、またはその位置で慣用のN−保護基を含有することができる。例示的且つ好ましいN−保護基としては、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルコキシカルボニル基、ハロアルコキシカルボニル基、不飽和アルコキシカルボニル基、置換ベンジルオキシカルボニル基、置換フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0014】
本発明は、6−アルキルエリトロマイシンAの製造で有用な新規中間体にも関する。これらの中間体は、6−位置でアルキル化され、2’−、3’−及び/または4”−位置で非置換であるかまたは置換されている9−オキシムシリル誘導体である。
【0015】
一態様において、本発明は、エリトロマイシンAの6−O−アルキル誘導体の製造法を提供する。本方法は、9−オキシムエリトロマイシンAを9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体に転換し、次いで9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体をアルキル化剤と反応させる段階を包含する。
【0016】
本発明の方法は、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体から出発する。9−オキシム誘導体は、当業界で公知の標準的な方法を使用して製造する。エリトロマイシンA誘導体を、メタノール中、ヒドロキシルアミン塩酸塩及び塩基、遊離ヒドロキシルアミンと、またはヒドロキシルアミン及び有機酸のいずれかと反応させる(例えば、米国特許第5,274,085号参照、該特許の開示は本明細書中参照として含まれる)。
【0017】
9−オキシムエリトロマイシンA誘導体は、該誘導体とシリル化剤とを反応させることによりシリル化される。好ましいシリル化剤は、式:
【0018】
【化8】

[式中、R’、R”及びR’’’は独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルであり、Xはハロゲンまたはスルホネート(例えば、メシレート、トシレートである)である]を有する。シリル化反応は、好適な有機塩基、例えば、トリエチルアミン(EtN)、ピリジン、イミダゾールまたはジ−トリメチルシリルアミン[HN(TMS)]の存在下で実施する。
【0019】
他のシリル化剤の例としては、式:
【0020】
【化9】

(式中、R’、R”及びR’’’は上記定義通りである)を有するものが挙げられる。
シリル化反応を好適な酸、例えば、HCOHの存在下で実施する。
【0021】
当業界で公知の如く、6−OH位置でエリトロマイシンAを効率的且つ選択的にアルキル化するためには、2’−及び/または4”−位置のヒドロキシル基をメチル化前に保護しなければならない。3’−ジメチルアミノ部分を保護することも望ましい。そのような保護は、それらの基を慣用の0−またはN−保護基で保護することにより実施する。9−オキシム及び2’,4”−OH基の保護の順番は、変えることができる。
【0022】
本発明の合成時に形成された9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体は、以下の構造I:
【0023】
【化10】

[式中、R’、R”及びR’’’は上記定義通りであり、R及びRは、各々独立して、水素または慣用のO−保護基であり、Rは、−NRCH(但し、Rはメチル(CH)若しくは慣用のN−保護基である)であるか、−N+(CHX−(但し、Rは2−アルケニル、ベンジル若しくは置換ベンジルであり、Xはハロゲン、例えば、Br、ClまたはIである)である]に対応する。
【0024】
構造Iの化合物は、立体結合配向なしに示されている。従って、構造Iは、結合配向の全ての組み合わせを定義するものであり、全ての可能な立体−配置(例えば、エピマー)を網羅する。好ましい態様において、構造Iの結合配向は、6−O−メチルエリトロマイシンAに関して上記に示したものと同一である。
【0025】
一態様において、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体は、2’−、3’及び4”−位置で非置換(非保護)である。そのような誘導体をシリル化すると、構造I(式中、R及びRはいずれも水素であり、Rはメチルである)の9−オキシムシリル誘導体が形成する。
【0026】
別の態様では、本合成法で使用する9−オキシムエリトロマイシンA誘導体は、2’−及び4”−位置で慣用のO−保護基を有する。アルキル化からヒドロキシルを保護するための慣用のO−保護基は当業界で公知であり、シリル、アシル、低級アルケニル、モノカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、低級アルコキシカルボニルアルキル−カルボニル及びアリールカルボニル基が挙げられる。そのような置換9−オキシムエリトロマイシンA誘導体のシリル化により、構造Iの9−オキシムシリル誘導体(式中、R及びRはシリル、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、低級アルケニルモノカルボニル、低級アルコキシカルボニルアルキルカルボニルまたはアリールカルボニルである)が得られる。
【0027】
例示的且つ好ましいO−保護基は、アルコキシカルボニル類[例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−イソプロポキシカルボニル、n−ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニルなど);アルコキシアルコキシカルボニル類(例えば、メトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニル、2−エトキシエトキシカルボニル、2−ブトキシエトキシカルボニル、2−メトキシエトキシ−メトキシカルボニルなど);ハロアルコキシカルボニル類(例えば、2−クロロエトキシ−カルボニル、2−クロロエトキシカルボニル、2,2,2−トリ−クロロエトキシカルボニルなど);不飽和アルコキシカルボニル類(例えば、アリルオキシカルボニル、プロパギルオキシカルボニル、2−ブテノキシカルボニル、3−メチル2−ブテノキシカルボニルなど);置換ベンジルオキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル、p−メチルベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロ−ベンジルオキシカルボニル、2,4−ジニトロベンジルオキシ−カルボニル、3,5−ジメチルベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニルなど)及び置換フェノキシカルボニル類(例えば、フェノキシカルボニル、p−ニトロフェノキシカルボニル、o−ニトロフェノキシカルボニル、2,4−ジニトロフェノキシカルボニル、p−メチルフェノキシカルボニル、n−メチルフェノキシカルボニル、o−ブロモフェノキシカルボニル、3,5−ジメチルフェノキシカルボニル、p−クロロフェノキシカルボニル、2−クロロ 4−ニトロフェノキシカルボニルなど)]が挙げられる。(例えば、Greene及びWut’s,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1991,この開示は本明細書中、参照として含まれる)。
【0028】
例示的且つ好ましい低級アルキルモノカルボニル基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルなどが挙げられる。例示的且つ好ましい低級アルケニルモノカルボニル基としては、アクリルオキシ、メタクリルオキシなどが挙げられる。例示的且つ好ましい低級アルコキシカルボニル−アルキルカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル−メチルカルボニル、エトキシカルボニルメチルカルボニル、エトキシカルボニル−エチルカルボニルなどが挙げられる。例示的且つ好ましいアリールカルボニル基の例としては、ベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、3,4,5−トリメトキシ−ベンゾイル、p−クロロベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイル、3,5−ジクロロベンゾイル、ジフェニルアセチル、1−ナフタレンアセチル、2−ナフタレンアセチル等が挙げられる。例示的且つ好ましいシリル基は、式:
【0029】
【化11】

(式中、R’、R”及びR’’’は、上記定義通りである)を有する。
【0030】
エリトロマイシン誘導体の製造でO−保護基を使用することは、既に記載されていた(例えば、米国特許第4,672,109号及び欧州特許出願0260938A2、これらの開示は本明細書中、参照として含まれる)。
【0031】
上述のように慣用のO−保護基は、当業界で公知の標準方法を使用して配置されている。例えば、トリメチルシリル基は、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体とシリル化剤ヘキサメチルジシラン(HMDS)とを、酸(例えば、HCOH)の存在下で反応させることにより、2’−及び4”−位置に配置させることができる。この同一変換を、他のシリル化剤(例えば、トリメチルシリルクロリド:TMSCl)を使用して、有機塩基(例えば、EtN、ピリジン又はイミダゾール)の存在下で実施することができる。他のシリル化条件も使用することができる。
【0032】
アセチル基は、エリトロマイシンA誘導体(9−オキシムまたは9−オキシムシリル)とアセチル化剤及び塩基とを反応させることにより、2’−及び4”−位置に配置することができる。好適なアセチル化剤としては、式(RCO)0またはRCOCl[式中、Rは、水素または、低級アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルなど)またはアリール(例えば、フェニル、p−メトキシフェニル、p−クロロフェニル、m−クロロフェニル、o−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、p−ブロモフェニル、m−ニトロフェニル、p−ニトロフェニル、ベンズヒドリル、1−ナフチルなど)などの置換基である]の無水物及び酸ハライド化合物が挙げられる。好適な塩基は、トリエチルアミン、ピリジン及びジエチルアミンなどの有機塩基である。
【0033】
当業者は、慣用のN−保護基を使用してエリトロマイシンAの3’−位置でジメチルアミノ部分のメチル基も置換すると都合がよいことにすぐに気づくだろう。例示的且つ好ましいN−保護基としては、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、メチルオキシカルボニル基等);アルコキシアルコキシカルボキシル基(例えば、メトキシメトキシカルボニル基、エトキシメトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、2−エトキシエチルカルボニル基、2−エトキシエトキシカルボニル基、2−ブトキシエトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシメトキシカルボニル基等);ハロアルコキシカルボニル基(例えば、2−クロロエトキシカルホニル基、2−クロロエトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等);不飽和アルコキシカルボニル基(例えば、アリルオキシカルボニル基、プロパギルオキシカルボニル基、2−ブテノキシカルボニル基、3−メチル−2−ブテノキシカルボニル基等);置換ベンジルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メチルベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2,4−ジニトロベンジルオキシカルボニル基、3,5−ジメチルベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−ブロモベンジルオキシカルボニル基等);及び置換フェノキシカルボニル基[例えば、フェノキシカルボニル基、p−ニトロフェノキシカルボニル基、o−ニトロフェノキシカルボニル基、2,4−ジニトロフェノキシカルボニル基、p−メチルフェノキシカルボニル基、m−メチルフェノキシカルボニル基、o−ブロモフェノキシカルボニル基、3,5−ジメチルフェノキシカルボニル基、p−クロロ−フェノキシカルボニル基、2−クロロ−4−ニトロフェノキシカルボニル基等(米国特許第4,672,109号)]が挙げられる。
【0034】
3’位置のジメチルアミノ部分は、該部分と誘導体R−X[式中、Rは2−アルケニル基、ベンジル基または置換ベンジル基であり、及びXはハロゲン原子である(例えば、米国特許第4,670,549号参照)]とを反応させることにより第4級塩として保護することもできる。次いで、9−オキシムシリル、2’−及び4”−置換エリトロマイシンA誘導体を、6−位置で選択的にアルキル化する。エリトロマイシンA誘導体の6−位置でのアルキル化の方法及び試薬は、当業界で公知である(例えば、米国特許第4,672,109号及び同第4,670,549号参照)。
【0035】
端的には、式Iの化合物を、塩基の存在下、好適なアルキル化剤と反応させる。例示的且つ好ましいアルキル化剤としては、臭化メチル、臭化エチル、臭化 n−プロピル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化 n−プロピル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル、メチル−p−トルエンスルホネート、エチルメタンスルホネート、n−プロピルメタンスルホネート及びアルキルトリフレートが挙げられる。
【0036】
例示的且つ好ましい塩基としては、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドからなる群から好ましくは選択される強アルカリ金属塩基;及びトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン、2−メトキシピリジン、1−メチルピロリジン、1−メチルピペリジン及び1−エチルピペリジンからなる群から好ましく選択される弱有機アミン塩基が挙げられる。
【0037】
メチル化段階は、好適な溶媒中で実施する。例示的且つ好ましい溶媒としては、アルキル化を実施するのに十分な時間及び反応温度、好ましくは1〜8時間、−15℃〜室温に保持した、極性非プロトン性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホン酸トリアミド、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸エチル若しくはメチル−t−ブチルエーテル)またはそのような極性非プロトン性溶媒の混合物が挙げられる。好ましい溶媒としては、少なくともメチル−t−ブチルエーテルが挙げられる。
【0038】
構造の化合物の6−位置でのアルキル化により、以下の構造II:
【0039】
【化12】

(式中、R’、R”、R’’’、R、R及びRは構造Iで定義した通りである)の化合物が形成する。
【0040】
6−O−アルキルエリトロマイシンAの製造は、2’−及び4”−位置からO−保護基及び、9−オキシムシリルからシリル基を除去し、次いで9−オキシムを脱オキシム化することにより進行する。2’−及び4”−位置のO−保護基を除去する手段は公知であり、保護基の性質に依存する。
【0041】
例えば、2’及び/または4”−位置がアセチル化されている場合、アセチル基は、アセチル化誘導体と式:ROH[式中、Rは、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルなど)である]の化合物とを反応させることにより除去することができる。反応は、酸(例えば、蟻酸、酢酸)若しくは水の存在下若しくは非存在下、または塩基(例えば、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO)の存在下若しくは非存在下で実施することができる。
【0042】
2’及び/または4”−位置がシリル化されている場合、シリル基は、シリル化誘導体と蟻酸(HCOH)とをイソプロピルアルコール(IPrOH)中で反応させることにより除去することができる。当業界で公知の如く、シリル基の除去は、
(a)THF中BuNF、
(b)HOAc/THF/HO、
(c)クエン酸/MeOH、
(d)Dowex樹脂/MeOH、KCO/MeOH、
(e)n−BuNCl/KFまたは
(f)HF/CHCN
を使用しても実施できる。
【0043】
9−オキシムシリルからシリル基を除去するのは、2’−及び/または4”−位置からシリル基を除去することに関連して記載したものと同一方法を使用して実施する。これらの基は、9−オキシムシリルからシリル基を除去するのと同一段階で実施できるので、2’−及び4”−位置の保護用のシリル基を使用すると都合がよい。シリル基を使用するもう一つの都合の良い点は、脱保護(脱シリル化)を穏和な(室温)、中性条件を使用して実施できる点にある。
【0044】
6−O−アルキルエリトロマイシンAの製造の最終段階は、脱オキシム化である。脱オキシム化は、当業界で公知の標準方法に従って実施する(例えば、米国特許第4,672,109号参照)。9−オキシム誘導体をアルコール(例えば、エタノール)中、亜硫酸水素ナトリウムと反応させ、還流させる。溶液を冷却し、アルカリ性にして、重炭酸ナトリウム水溶液で沈澱させる。上記反応から形成した沈澱を濾過により集め、洗浄し、アルコールから再結晶させる。
【0045】
本発明の方法を使用する6−O−メチルエリトロマイシンAの合成の詳細な説明は、以後記載する実施例にて行う。本発明の合成スキームの一態様の図解による説明を、図1に表す。
【0046】
図1では、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体(化合物1)をアセトニトリル(CHCN)中、蟻酸(HCOH)の存在下、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)と反応させて、2’,4”−ビス−トリメチルシリル、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体(化合物2)を形成する。
【0047】
次いで、化合物2をトリエチルアミン(EtN)及びテトラヒドロフラン(THF)の存在下、シリル化剤(RSiCl)と反応させ、2’,4”−ビス−トリメチルシリル、9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体(化合物3)を形成する。
【0048】
次いで、6−OHのメチル化を、好適な溶媒[ジメチルスルホキシド(DMSO)及びTHF]中、化合物3を、メチル化剤(MgX)及び水素化ナトリウム(NaH)と反応させて、2’,4”−ジ−トリメチルシリル、6−O−メチル、9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体(化合物4)を形成することにより行う。2’,4”−位置及び9−位置のシリル基を、THF中、化合物4とBuNFとを反応させることにより除去し、2’,4”−ジヒドロキシ、6−O−メチル、9−オキシムエリトロマイシンA誘導体(化合物5)を形成する。次いで、化合物5を脱オキシム化して6−O−メチルエリトロマイシンA(クラリスロマイシン)を製造する。
【0049】
本発明は、6−O−アルキルエリトロマイシンAの合成の中間体であるエリトロマイシンAの9−オキシムシリル誘導体も提供する。本発明の9−オキシムシリル誘導体は、6−位置でアルキル化または非置換(即ち、6−OHまたは6−O−アルキル)、2’、4”または3’−位置で非置換(即ち、2’−OH、4”−OH、3’−ジメチル)または上述の慣用の保護基で置換することができる。
【0050】
従って、一態様において、本発明の9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体は、構造IまたはIIに対応する。
【0051】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を説明するが、本明細書及び請求の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0052】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンAオキシムの製造
アセトニトリル200ml中のエリトロマイシンAオキシム50グラムと蟻酸(HCOH)との混合物に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)をゆっくりと、温度を33℃未満に保持しながら添加した。混合物を28℃で一晩、撹拌した。混合物を約10℃に冷却し、2N NaOHでpHを約10の塩基性にした。生成物をヘプタンで抽出し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させると、白色固体の2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 29.5グラムが得られた。構造をNMR及びマススペクトルから確認した。
【実施例2】
【0053】
2’、4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9(O−t−ブチルジメチルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA10.7グラムのTHF 25ml中溶液に、トリエチルアミン3.4ml及びt−ブチルジメチルシリルクロリド2.17グラムを添加した。混合物を室温で一晩、撹拌した。白色固体が沈澱した。固体を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。次いで、水100ml及びt−ブチルメチルエーテル200mlを残渣に添加した。混合物を5分間撹拌し、有機層を分離し、NaSOで乾燥し、濃縮すると、2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9(O−t−ブチルジメチルシリル)オキシム11.2グラムが白色ガラス状固体で生成した。構造をNMR 及びマススペクトルで確認した。1H NMR(500MH,CDCL);d(ppm)=1.45(3H,s,6−CH),2,24[6H,S,N(CH],3.30(3H,s,3”−OCH).13C NMR(CDCL);d(ppm)=0.9,1.0(2’−OTMS及び4”−OTMS),40.9[3’−N(CH],49.7(3”−OCH),75.5(6−C),96.5(1”−C),102.5(1’−C).175.5,175.6(1−C 及び 9−C).マススペクトル(FAB):[M+K]m/z=1045, MW=1006.
【実施例3】
【0054】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 10.7グラムのTHF 40ml中溶液に、EtN 3.4ml及びt−ブチルジフェニルクロリド2.2グラムを添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。HPLCは、少量の出発物質が残存していることを示した。さらに、EtN 1ml及びt−ブチルジフェニルクロリド1mlを添加した。次いで、混合物を50℃に8時間加熱した。形成した白色固体を濾過した。水40ml及びt−ブチルメチルエーテル200mlを濾液に添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮すると、白色ガラス状固体の2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム11.8グラムが得られた。構造をNMR及びマススペクトルで確認した。H NMR(400 MH, CDCL);d(ppm)=1.50(3H,s,6−CH),2,27[6H,S,N(CH],3.33(3H,s,3”−OCH),7.39−7.43(6H,m,Ar),7.65−7.73(4H,m,Ar).13C NMR(CDCL);d(ppm)=0.8,1.0(2’−OTMS 及び 4”−OTMS),40.9[3’−N(CH],49.6(3”−OCH),75.3(6−C),96.6(1”−C),102.5(1’−C).175.4(9−C),175.6(1−C).マススペクトル(FAB):[M+H] m/z=1131,MW=1130.
【実施例4】
【0055】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 10.7グラムのTHF 40ml中溶液に、EtN 3.4ml及びトリイソプロピルシリルクロリド3.1mlを添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。さらに、EtN 3.0mlおよびトリイソプロピルシリルクロリド3.1mlを添加した。混合物を約50℃に4時間加熱し、次いで室温で一晩撹拌した。形成した固体を濾過し、濾液を濃縮すると油状物となった。水40ml及びt−ブチルメチルエーテル200mlを油状物に添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮すると、2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシム12.7グラムが白色ガラス状固体で得られた。構造をNMR及びマススペクトルで確認した。H NMR(400MHZ,CDCL);d(ppm)=1.46(3H,s,6−CH),2,26[6H,S,N(CH],3.29(3H,s,3”−OCH).13CNMR(CDCL);d(ppm)=0.8,1.0(2’−OTMS 及び 4”−OTMS),40.9[3’−N(CH],49.6(3”−OCH),75.4(6−C),96.5(1”−C),102.5(1’−C).175.1(9−C),175.3(1−C).マススペクトル(FAB):[M+K] m/z=1087,MW=1048.
【実施例5】
【0056】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジメチルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−エリトロマイシンA 9(O−t−ブチルジメチルシリル)オキシム1.0グラムのジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフラン10ml(1:1混合物)中の氷冷溶液に、ヨウ化メチル0.12ml及び60%水素化ナトリウム80mgを添加した。混合物を約5℃で2時間撹拌した。50%ジメチルアミン水溶液1mlを反応溶液に添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液20ml中に注いだ。生成物をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下濃縮すると、粗な生成物が得られた。粗な生成物をヘキサン20ml及びアセトニトリル10mlの混合物中に溶解させた。上部ヘキサン層を分離し、減圧下で濃縮すると、2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジメチルシリル)オキシム680mgが得られ、これをさらに精製することなく脱シリル化工程で使用した。マススペクトル(FAB):[M+H]m/z=1021,HW=1020.
【実施例6】
【0057】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム1.13グラムのジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフラン10ml(1:1混合物)中の氷冷溶液に、ヨウ化メチル0.12ml及び60%水素化ナトリウム80mgを添加した。混合物を約5℃で2時間撹拌した。ジメチルアミン50%水溶液1mlを反応溶液に添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液20mlに注いだ。生成物をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。次いでNaSOで乾燥し、減圧下で濃縮させると、粗な生成物が得られた。粗な生成物をヘキサン20ml及びアセトニトリル10mlの混合物中に溶解させた。上部ヘキサン層を分離し、減圧下で濃縮すると、2’,4’−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム858mgが得られ、これをさらに精製することなく脱シリル化工程で使用した。生成物はMeOHから再結晶により精製することができる。マススペクトル(FAB):[M+H]m/z=1145,MW=1144.
【実施例7】
【0058】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム1.13グラムのジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフラン10ml(1:1混合物)中の氷冷溶液に、メチル0.12ml及び粉末化水酸化カリウム128mgを添加した。混合物を約5℃で1.5時間撹拌した。ジメチルアミン50%水溶液を反応溶液に添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液20ml中に注いだ。生成物をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。次いでNaSOで乾燥し、減圧下濃縮すると、粗な生成物が得られた。粗な生成物をヘキサン20ml及びアセトニトリル10ml中に溶解させた。上部ヘキサン層を分離し、減圧下濃縮すると、2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム805mgが得られ、これをさらに精製することなく脱シリル化工程で使用した。生成物はさらにMeOHから再結晶することができる。マススペクトル(FAB):[M+H]m/z=1145,MW=1144.
【実施例8】
【0059】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA9(O−トリイソプロピル)オキシム1.05グラムのジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフラン10ml(1:1混合物)中の氷冷溶液に、ヨウ化メチル0.12ml及び60%水酸化ナトリウム80mgを添加した。混合物を約5℃で2.0時間撹拌した。50%ジメチルアミン水溶液1mlを反応溶液に添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液20mlに注いだ。生成物をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。次いでNaSOで乾燥し、減圧下で濃縮して粗な生成物を得た。粗な生成物をヘキサン20ml及びアセトニトリル10mlの混合物に溶解させた。上部ヘキサン層を分離し、減圧下で濃縮すると、2’,4”−0−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピル)オキシム810mgが得られ、これをさらに精製することなく脱シリル化段階で使用した。生成物はMeOHから再結晶させることにより、さらに精製することができる。構造をNMR及びマススペクトルで確認した。H NMR(400MH,CDCL);d(ppm)=1.47(3H,s,6−CH),2,27[6H,S,N(CH],3.11(3H,s,6−OCH),3.32(3H,s,3”OCH).13C NMR(CDCL);d(ppm)=0.8,1.1(2’−OTMS 及び 4”−OTMS),40.9[3’−N(CH],49.7(3”−OCH),51.2(6−OCH),78.9(6−C),96.2(1”−C),102.5(1’−C).174.3(9−C),175.9(1−C).マススペクトル(FAB):[M+H]m/z=1163,MW=1062.
【実施例9】
【0060】
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)エリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシム1.05グラムのジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフラン10ml(1:1混合物)中の氷冷溶液に、ヨウ化メチル0.12ml及び粉末水酸化カリウム128mgを添加した。混合物を約5℃で1.5時間撹拌した。50%ジメチルアミン水溶液1mlを反応溶液に添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで、飽和塩化ナトリウム溶液20mlに注いだ。生成物をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮すると粗な生成物が得られた。粗な生成物をヘキサン20ml及びアセトニトリル10mlの混合物中に溶解させた。上部ヘキサン層を分離し、減圧下濃縮すると、2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシム805mgが得られ、これをさらに精製することなく脱シリル化工程で使用した。生成物はMeOHから再結晶させることによりさらに精製できる。構造をNMR及びマススペクトルで確認した。H NMR(400MH,CDCL)CDCL3;d(ppm)=1.47(3H,s,6−CH),2.27[6H,S,N(CH],3.11(3H,s,6−COH),3.32(3H,s,3”−OCH33).13C NMR(CDCL);d(ppm)=0.8,1.1(2’−OTMS 及び 4”−OTMS),40.9[3’−N(CH],49.7(3”−OCH),51.2(6−OCH),78.9(6−C),96.2(1”−C),102.5(1’−C).174.3(9−C),175.9(1−C).マススペクトル(FAB):[M+H]m/z=1163,MZ=1062.
【実施例10】
【0061】
6−O−メチルエリトロマイシンオキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−t−ブチルジフェニルシリル)オキシム400mgのイソプロピルアルコール5ml中の溶液に、水5ml及び蟻酸10滴を添加した。溶液を室温で20分間撹拌し、次いで2N水酸化ナトリウム溶液でpHを約10の塩基性にした。生成物を酢酸イソプロピルで抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮すると、6−O−メチルエリトロマイシンオキシム231グラムが白色固体で得られた。これは、EtOH/ヘキサンから再結晶できる。マススペクトル:MW=762.
【実施例11】
【0062】
6−O−メチルエリトロマイシンオキシムの製造
2’,4”−O−ビス(トリメチルシリル)−6−O−メチルエリトロマイシンA 9−(O−トリイソプロピルシリル)オキシム3グラムのテトラヒドロフラン10ml中溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド1M溶液15mlを添加した。得られた溶液を室温で1/2時間撹拌した。水10mlをこの溶液に添加した。テトラヒドロフランを減圧下で除去し、生成物を酢酸イソプロピルで抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させると粗な生成物が得られた。これをEtOH/ヘキサンから結晶化させると、6−O−メチルエリトロマイシンオキシム600mgが白色固体で得られた。構造をNMR及びマススペクトルで確認した。H NMR(400MH,CDCL);d(ppm)=1.48(3H,s,6−CH),2,29[6H,S,N(CH],3.10(3H,s,6−OCH),3.33(3H,s,3”−OCH).13C NMR(CDCL);d(ppm)=40.3[3’−N(CH],49.5(3”−OCH),51.2(6−OCH),78.7(6−C),96.0(1”−C),102.8(1’−C).170.5(9−C),175.7(1−C).マススペクトル(DCI):[M+H]m/z=763,MW=762.
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本明細書の一部を形成する図面中、6−O−メチルエリトロマイシンAの製造法の一態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9−オキシムエリトロマイシンA誘導体をシリル化して9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体を形成し、次いで9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体をアルキル化剤と反応させることを含む、6−O−アルキルエリトロマイシンA誘導体の製造方法。
【請求項2】
9−オキシムエリトロマイシンA誘導体と、式:
【化1】

(式中、R′、R″及びR’’’は独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルであり、Xはハロゲンまたはスルホネートである)のシリル化剤とを反応させることによりシリル化を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
9−オキシムエリトロマイシンA誘導体が、(a)2′−ヒドロキシル基の水素、(b)4″−ヒドロキシル基の水素、(c)3′−ジメチルアミノ基のメチル基、(d)2′−ヒドロキシル基及び4″−ヒドロキシル基の水素、(e)3′−ジメチルアミノ基のメチル基及び2′−または4″−ヒドロキシル基の水素の一方、または(f)3′−ジメチルアミノ基のメチル基並びに2′−及び4″−ヒドロキシル基の両方の水素の代わりに、慣用の保護基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
9−オキシムエリトロマイシンA誘導体が、(a)2′−ヒドロキシル基の水素の代わりに慣用のO−保護基、(b)4″−ヒドロキシル基の水素の代わりに慣用のO−保護基、(c)2′−ヒドロキシル基及び4″−ヒドロキシル基の両方の水素の代わりに慣用のO−保護基、(d)2−アルケニル基、ベンジル基または置換ベンジル基との第4級塩として保護された3′−ジメチルアミノ基、(e)2−アルケニル基、ベンジル基または置換ベンジル基との第4級塩として保護された3′−ジメチルアミノ基及び2′−または4″−ヒドロキシル基の一方の水素の代わりに慣用のO−保護基、または、(f)2−アルケニル基、ベンジル基または置換ベンジル基との第4級塩として保護された3′−ジメチルアミノ基並びに2′−及び4″−ヒドロキシル基の両方の水素の代わりに慣用のO−保護基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
9−オキシムシリルエリトロマイシンA誘導体が、以下の構造I:
【化2】

[式中、R′、R″及びR’’’は各々独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルであり;R及びRは、各々独立して、水素、シリル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アシル、低級アルケニルモノカルボニル、低級アルコキシカルボニルアルキルカルボニルまたはアリールカルボニルであり;及びRは、−NR(CH(但し、Rはメチル(CH)または慣用のN−保護基である)であるか、−N(CH(但し、Rは2−アルケニル、ベンジル若しくは置換ベンジルであり、Xはハロゲン、例えば、Br、ClまたはIである)であるが、但し、R及びRの少なくとも一方は水素ではない]を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
が−N(CHであり、R及びRが両方とも式:
【化3】

である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により製造した6−O−アルキル、9−オキシムシリル、エリトロマイシンA誘導体。
【請求項8】
構造II:
【化4】

[式中、R′、R″及びR’’’は各々独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルであり;R及びRは、各々独立して、水素、シリル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アシル、低級アルケニルモノカルボニル、低級アルコキシカルボニルアルキルカルボニルまたはアリールカルボニルであり;及びRは、−NR(CH(但し、Rはメチル(CH)または慣用のN−保護基である)であるか、−N(CH(但し、Rは2−アルケニル、ベンジル若しくは置換ベンジルであり、Xはハロゲン、例えば、Br、ClまたはIである)である]を有する化合物。
【請求項9】
以下の構造I:
【化5】

[式中、R′、R″及びR’’’は各々独立して、水素、低級アルキル、アリール、フェニル、フェニル置換低級アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルであり;R及びRは、各々独立して、水素、シリル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アシル、低級アルケニルモノカルボニル、低級アルコキシカルボニルアルキルカルボニルまたはアリールカルボニルであり;及びRは、−NR(CH(但し、Rはメチル(CH)または慣用のN−保護基である)であるか、−N(CH(但し、Rは2−アルケニル、ベンジル若しくは置換ベンジルであり、Xはハロゲン、例えば、Br、ClまたはIである)である]を有する化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造したエリトロマイシンA 9−オキシムシリル、6−O−アルキル誘導体を脱オキシム化することを含む6−O−アルキルエリトロマイシンAの製造法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−224035(P2007−224035A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100369(P2007−100369)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【分割の表示】特願平9−535252の分割
【原出願日】平成9年2月6日(1997.2.6)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】