A/D変換器及び情報記録再生装置
【課題】コンパレータのメタステーブル状態に起因するエラーを確実に抑止すること。
【解決手段】複数の異なる電圧を基準電圧として発生させ、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器CMP0〜CMP6と、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器CMP0〜CMP6の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部200と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路AVG0〜AVG6と、を備える。
【解決手段】複数の異なる電圧を基準電圧として発生させ、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器CMP0〜CMP6と、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器CMP0〜CMP6の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部200と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路AVG0〜AVG6と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器及び情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時において、A/D変換器は様々な電子機器に使用されている。例えば下記の特許文献1には、AD変換器において、入力されるサーモメータコードに含まれるバブルエラーの訂正機能を備え、動作速度の向上を目的としたA/D変換器が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11-88174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、A/D変換器においては、出力論理が反転するバブルエラーの他に、コンパレータ出力のメタステーブル状態に起因するエラーが生じることがある。メタステーブル状態は、入力信号と基準信号が比較的近い場合に、コンパレータが中間電位を出力する状態であり、特に比較のための時間が十分に確保できない高速動作のコンパレータにおいて生じ易い。メタステーブル状態が発生すると、コンパレータの出力が“0”と“1”のいずれにも判断され得るため、結果として出力値に誤差が生じてしまうという問題がある。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、メタステーブル状態に起因するエラーを訂正することは想定していないため、メタステーブル状態によって出力値に誤差が含まれてしまうという問題がある。特に、バブルエラーとメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合、エラーを救済することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コンパレータのメタステーブル状態に起因するエラーを確実に抑止することが可能な、新規かつ改良されたA/D変換器及び情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備えるA/D変換回路が提供される。
【0008】
上記構成によれば、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0009】
また、前記多数決回路は複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたものであってもよい。かかる構成によれば、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変するのみで論理しきい値を調整することができるため、製造プロセスを若干変更するのみで論理しきい値を容易に調整することが可能となる。
【0010】
また、前記多数決回路には3つの比較器の出力が入力され、前記3つの比較器のうち、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、残りの2つの比較器のうちの一方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも低く設定され、残りの2つの比較器のうちの他方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも高く設定されたものであってもよい。かかる構成によれば、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、基準電圧が中間の比較器以外の残りの比較器からの入力は、基準しきい値よりも高いしきい値、及び基準しきい値よりも低いしきい値に設定される。従って、基準電圧の増加又は減少方向に対して複数配列された多数決回路の出力を適合させることができ、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0011】
また、前記多数決回路は、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、前記残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるセレクタを含むものであってもよい。複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるため、サイクリック温度計コード用のA/D変換器において、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーを抑えることが可能となる。
【0012】
また、前記セレクタは複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたものであってもよい。かかる構成によれば、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変するのみで論理しきい値を調整することができるため、製造プロセスを若干変更するのみで論理しきい値を容易に調整することが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、前記受光部から検出された信号から再生信号を取得する再生回路と、前記再生回路に含まれるA/D変換器と、を備え、前記A/D変換器は、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備える情報再生装置が提供される。
【0014】
上記構成によれば、光記録媒体のトラックに光が照射され、受光部で光記録媒体からの反射光が受光され、受光部から検出された信号からA/D変換器を含む再生回路により再生信号が取得される。A/D変換器では、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、前記受光部から検出された信号からウォブル信号を取得するウォブル信号抽出回路と、前記ウォブル信号抽出回路に含まれるA/D変換器と、を備え、前記A/D変換器は、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備える情報再生装置が提供される。
【0016】
上記構成によれば、光記録媒体のトラックに光が照射され、受光部で光記録媒体からの反射光が受光され、受光部から検出された信号からA/D変換器を含むウォブル信号抽出回路によりウォブル信号が取得される。A/D変換器では、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンパレータのメタステーブル状態に起因するエラーを確実に抑止することが可能な、A/D変換器及び情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[関連技術の説明]
先ず、本発明の実施形態を説明する前に、前提となる技術について説明する。図1は、高速で動作するA/D 換器として、3ビットのバイナリコードを出力するフラッシュ型 A/D変換器の構成を示す模式図である。図1に示すように、フラッシュ型 A/D変換器は、コンパレータ部100、論理境界検出部200、エンコーダ部300を備えて構成されている。コンパレータ部100は、アナログ入力信号Ain と基準電圧Vr0〜Vr6を比較して入力信号の大きさに対応した温度計コードを出力するコンパレータCMP0〜CMP6を有して構成される。論理境界検出部200は、各コンパレータCMP0〜CMP6の出力の“0”と“1”の論理境界点を検出する。エンコーダ部300は、論理境界検出部200からの出力信号に基づいてバイナリコード
B[2:0] を出力する。
【0020】
コンパレータ部100では、高電位側参照電圧Vrtと低電位側参照電圧Vrbとの間に 8個の抵抗が直列接続され、各抵抗の間で7個の基準電圧Vr0〜Vr6が得られる。ここで、両端に位置する抵抗の値R/2はその他の抵抗の値Rの半分に設定される。そして、アナログ入力信号Ainと7個の基準電圧とを7個のコンパレータ群CMP0〜CMP6により比較する。ここで、各コンパレータCMP0〜CMP6では、アナログ入力信号AinがVr0〜Vr6より高いときは、出力信号CP0〜CP6が“1”となり、反転出力信号CN0〜CN6が“0”となる。また、アナログ入力信号Ainが基準電圧Vr0〜Vr6より低いときは、反転出力CN0〜CN6が“1”となり、出力信号CP0〜CP6が“0”となる。例えば、図2は、アナログ入力信号AinがVr3とVr4の間の電位である場合を示している。図2に示すように、アナログ入力信号AinがVr3より大きくVr4よりも小さい時には、出力信号として、CP0〜CP3までが“1”となりCP4〜CP6は“0”となる温度計コードが出力される。また、反転出力は、CN0〜CN3までは“0”となりCN4〜CN6は
“1”となる温度計コードが出力される。
【0021】
図1に示すように、コンパレータ部100の後段には論理境界検出部200が配置され、コンパレータ部100からの温度計コード出力CP0〜CP6、CN0〜CN6は、論理境界検出部200に設けられた8つの2入力NOR回路(NR0〜NR7)へ入力される。ここで、NRi(iは整数)には、コンパレータの出力信号CNi-1、CPiが入力される。NR0には、一方の入力にCP0が入力され、他方の入力には“1”が入力される。また、NR7には、一方の入力にCN6が入力され、他方の入力には“0”が入力される。従って、(CPi-1,CPi)=(1,0)の時にのみNRi の出力は “1” となる。これにより、連続して並ぶ出力信号CP0〜CP6、CN0〜CN6において、連続した “1” の並びから連続した “0” の並びへ変化した位置のNOR回路から論理境界点を示す信号“1”が出力される。図2の例では、(CP3、CP4)=(1,0)であるため、NR4から信号“1”が出力される。
【0022】
エンコーダ部300は、制御クロックであるエンコード(Encode)信号によりプリチャージモードとエンコードモードの2状態に設定される。エンコーダ部300は、PMOSトランジスタMP1〜MP3、およびNMOSトランジスタMN1〜MN12を備える。PMOSトランジスタMP1〜MP3は、エンコード信号をLレベルにすることにより、ビット線BL0〜BL2をVDDにプリチャージする。NMOSトランジスタMN1〜MN12は、論理境界検出部200からの出力ワード線WL0〜WL7に基づいて、プリチャージされたビット線BL0〜BL2の内、ワード線WL0〜WL7の出力が“1”である該当ビットをGNDにプルダウンすることにより所望のバイナリ出力B0〜B2を得る。
【0023】
従って、図2に示すように、例えばエンコード信号をLレベルにしてビット線BL0〜BL2をVDDにプリチャージした後に、Vr3よりも大きくVr4よりも小さい入力信号Ainが入力されると、論理境界検出部によりワード線WL4のみがHとなり、NMOSトランジスタMN3とMN4がオン状態になる。ここでエンコード信号をHにすると、ビット線BL1、BL0がGNDにプルダウンされ、エンコード後のバイナリ信号 B[2:0]=100が出力される。
【0024】
以上のような温度計コードを使用するA/D変換器では、温度計コードにおけるバブルエラーと呼ばれるエラーが発生する場合がある。これは、例えば図2におけるコンパレータ出力CP0〜CP6は、入力信号Ainのレベルを表すため、「1111000」のように“1”と“0”の変化点は1つでなければならない。一方、図3は、バブルエラーが発生し、CMP2の出力において、CP2=1、CNP2=0となった場合を示している。バブルエラーが発生すると、図3の場合、コンパレータ出力CP0〜CP6が「1101000」となり、“1”と“0”の変化点が2つ以上現われてしまい、2つ以上のワード線(図3では、WL2とWL4)を同時にオンすることで出力コードに大きな誤差を生じさせるものである。
【0025】
そして、複数のワード線が同時にオンしてしまうと、図3の例のように、全てのビット線BL0〜BL2がGNDにプルダウンされてしまう可能性が高くなる。この場合、エンコード後のバイナリ信号はB[2:0]=000となり、本来のバイナリ信号の真値であるB[2:0]=100からの誤差が大きくなる。
【0026】
このバブルエラーの発生を改善する方法として、対象ビットとその前後のビットの多数決(アベレージ)を取るディジタルアベレージという手法がある。図4は、図1の回路において、多数決回路AVG0〜6を挿入したものである。また、図5は、ブロックレベルで記述された多数決回路を示す模式図である。多数決回路は、論理式がOut=In0*In1+In1*In2+In2*In0で与えられ、その真理値表を図 5 に示す。論理式から分かるように、In0、In1、In2、の3つの入力のうち、2つ以上が“1”となったときOut=1となり、2つ以上が“0”となったときOut=0となるため、多数決回路と称している。
【0027】
図4に示すように、多数決回路AVG0〜6は、コンパレータ群CMP0〜6と論理境界検出部100のNOR回路の間に配置される。AVGi(iは整数)は、3入力1出力回路であり、CPi-1、CPi、CPi+1の3入力より多数決をとりその結果を出力する。図4は、これら多数決回路AVGiにより図3で説明したバブルエラーが抑制される様子を示している。
【0028】
図4に示すように、CMP2にて発生したCP2のバブルエラー“0”は、AVG2にて上下のCP1、CP3と多数決を取られることにより1に修正されてエンコーダ部へ入力される。従って、結果としてバブルエラーが生じていない図1の場合と同じバイナリ信号が出力される。また、多数決回路出力が論理境界を一つしかもたないということも図4より自明であり、バブルエラーの対策として、多数決回路を用いることがとても有効であることがわかる。多数決回路AVGiは、反転回路INV0〜INV2、2入力の否定論理和回路NOR0〜NOR2、及び、1つの2入力の否定論理積回路NAND0というとてもシンプルな構造にも関わらず、バブルエラーの抑制に絶大な効果を発揮するため、本構成のようなA/D変換器では特に効果的である。
【0029】
以上のようにバブルエラーは多数決回路の導入によって抑制することができるが、A/D変換器において、バブルエラーの他にメタステーブル状態によって生じるエラーがある。メタステーブル状態とは、アナログ入力Ainと比較電圧Vr0〜Vr6のいずれかがほぼ等しいようなときに、コンパレータCP0〜CP6がその数値の大小を決めることができず、不確定の中間電位を出力する状態をいう。特に、高速に動作するA/D変換器では、比較のための時間が限られるため、コンパレータCP0〜CP6は、“0”か“1”、または、そのどちらでもない“中間電位”のいずれか出力してしまう。ここでは、説明の便宜上、メタステーブル状態のCMPの出力コード(中間電位)をメタステーブルの頭文字を取って“m”と表すことにする。
【0030】
例えば、図1の回路において、Ain≒Vr3となる信号が入力された場合に、コンパレータCP3からメタステーブル状態を示す“m”が出力されたとする。この時、CP0〜CP2からは“1”、それ以外のCP4〜CP6からは“0”が出力されるため「111m000」がコンパレータ群の出力として得られる。エラーがメタステーブル状態によるものだけであれば、“m”の真値が“1”、”0” のいずれであったとしても、論理境界部200の出力からは“0”と“1”の論理境界点が1点しか検出されないため、2つ以上のワード線を同時にオンさせることによる出力コードの大きな誤差は生じない。
【0031】
しかし、メタステーブル状態によるエラーと同時にバブルエラーが生じると、出力されたバイナリ信号に大きな誤差が発生する場合がある。図6は、上述したCP0〜CP6の出力「111m000」において、出力CP3,CP4にバブルエラーが生じ、CP0〜CP6の出力が「110m100」となった場合を示している。図6に示すように、多数決回路AVG2〜4には、“0”,“1”,“m”のそれぞれが入力されるため、アベレージ出力は“m”の値に依存し、概略的にはAVGの出力は「11mmm00」となる。より詳細には、上述の説明では、アベレージ回路AVG0の入力、つまり、コンパレータCMP0〜6の出力において、中間電位も含むメタステーブル状態“m”を想定している。一方、アベレージ回路AVG0〜6の構成要素であるディジタル論理回路は、論理しきい値付近での利得がとても高いため、アベレージ回路AVG0〜6の出力においては、中間電位が出力されることはない。従って、アベレージ回路AVG0〜6の出力は、メタステーブル状態“m”に応じて必ず“0”か“1”の一方の値(不定値)に決まる。ここでは、コンパレータCMP0〜6の出力の中間電位を含むメタステーブル状態を“m”、アベレージ回路の出力であり中間電位を含まないものを不定値“x”と表記することとする。つまり、上述したアベレージ回路の出力「11mmm00」は、中間電位を含まない「11xxx00」と定義され、xは“0”又は“1”のいずれかである。ここで、xxx=101であった場合、「1110100」となり、複数のワード線(この場合、WL3とWL4)をオンすることになってしまう。これは、多数決回路によるディジタルアベレージの技術のみでは、メタステーブル状態を含めたエラーの抑制が不完全なことを示しており、最悪の場合、図6に示すように「110m100」が「11xxx00」となってしまう。以上のようなバブルエラー、およびメタステーブルは、ある確率で必ず同時に起こるものであるため、エラー対策を施すことは重要である。なお、バブルエラーは、広義には論理境界検出を困難にするエラーの総称として用いられる場合があり、メタステーブル状態に起因するエラーを含む場合があるが、本明細書ではコンパレータ出力の中間電位に起因するエラーをメタステーブル状態に起因するエラーとして記載するものとする。
【0032】
[本発明の実施形態の概要]
以下、本発明の実施形態において、バブルエラーおよびメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合に、エラーを抑制する手法について説明する。まず、図6に示した「11xxx00」という出力になったとしても、xxxの値が000, 100, 110, 111のいずれかであれば、多数決回路の出力は「1100000」、「1110000」、「1111000」、「1111100」となり、論理境界部が一箇所しかないため、複数のワード線をアクティブにするようなことはない。しかし、この場合、xxx=000, 100, 110, 111以外の組み合わせ、すなわちxxx=001, 010, 011, 101となった場合は、やはり複数のワード線をアクティブにしてしまい、出力コードと真値との間に誤差を生じさせてしまう。つまり、「11xxx00」という出力の場合、50%という非常に高い確率でコードの誤差が生じてしまう。本実施形態は、こういった事態を回避するためのものである。
【0033】
まず、上述の例においてNGとならない正解の出力パターンxxx=000, 100, 110,111を参照すると、AVGi(i は整数)の出力においてiの値が小さい程“1”が多く、iの値が大きい程“0”が多いという特徴がある。NGとならない正解の出力パターンにおいて、AVG2〜4の出力における“1”の出現回数は、AVG2の出力では3回であり、AVG3 の出力では2回であり、AVG4 の出力では1回である。従って、 (AVG2 の出力)>(AVG3 の出力)>(AVG4 出力)の順で“1”の出現確率が減っている。また、図6に示すように、AVG2にはCMP3で発生した前段のメタステーブル状態“m”がCの端子に入る。同様にAVG3には“m”がBの端子に入り、AVG4には“m”がAの端子に入る。このように、メタステーブル状態“m”が入力される3つの多数決回路AVG2〜4において、多数決回路毎に異なる端子に入力される。
【0034】
本実施形態では、以上の点を利用し、メタステーブル状態 “m” が C 端子に入った場合は“1”を出しやすく、A端子に入った場合は“0”を出しやすいディジタルアベレージ回路を多数決回路として使用する。また、メタステーブル状態“m”がB端子に入った場合は、“m”に応じて“0”、“1”のいずれかを出力するものとする。
【0035】
図7は、メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1からの出力を示す模式図である。ここで、図7(A)は、“m”の中間電位を入力として、この電位が0からVDDまで変化した場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1から出力される値を示している。図7(A)に示すように、“m”の中間電位の増加に伴って、AVGi-1、AVGi、AVGi+1から出力される3桁のバイナリコードは、(AVGi-1,AVGi,AVGi+1)=(0,0,0)→(0,0,1)→(0,1,1)→(1,1,1)のように変化する。従って、上述したNGとならない正解の出力パターンxxx=000,100, 110, 111が出力され、出力コードの誤差を抑制することができる。
【0036】
図7(B)、図7(C)、図7(D)は、図7(A)の結果を出力するため、各AVGi-1、AVGi、AVGi+1のしきい値が調整された様子を模式的に示す図である。ここで、図7(B)は、AVGi-1において、端子Cに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGi-1からの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(B)に示すように、AVGi-1からは、中間電位の値がVDD/4以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値がVDD/4を越えると“1”が出力される。従って、端子Cに“m”が入力された場合に、“1”を出し易い構成とすることができる。
【0037】
また、図7(D)は、AVGi+1において、端子Aに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGi+1からの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(D)に示すように、AVGi+1からは、中間電位の値が3/4*VDD以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値が3/4*VDDを越えると“1”が出力される。従って、端子Aに“m”が入力された場合に、“0”を出し易い構成とすることができる。
【0038】
図7(C)は、AVGiにおいて、端子Bに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGiからの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(C)に示すように、AVGiからは、中間電位の値がVDD/2以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値がVDD/2を越えると“1”が出力される。従って、端子Bに“m”が入力された場合は、通常のVDD/2のしきい値により“m”に応じた値が出力される。
【0039】
これにより、メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合、AVGi-1は“1”を出し易い回路となり、AVGi+1は“0”を出し易い回路となる。従って、上述した場合に、xxxの値として000,100, 110, 111のいずれかが出力されることになり、メタステーブル状態による A/D 変換器の出力コード誤差を抑制することができる。
【0040】
[しきい値調整のための具体的構成]
多数決回路は、図5で説明したように、論理ゲートを組み合わせた構造をしている。例えば、反転回路INVにおいて“1”が出易いということは、反転回路の論理しきい値が高いということと等価である。図8は、CMOSインバータからなる反転回路において、論理しきい値を高くする原理を示す模式図である。ここで、図8(A)は論理しきい値Vthを通常のVDD/2にした場合を示しており、図8(B)は論理しきい値VthをVDD/2よりも高くした場合を示している。
【0041】
図8(B)に示すように、論理しきい値 Vth が VDD/2 より上に移動することにより、入力をLowと判断する区間 (Lで示す区間) が広くなる。従って、論理しきい値Vth を高くすることにより、”1” (High) が出易い反転回路とすることができる。ここで、論理ゲートの論理しきい値Vthは、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタの電流値が等しい状態で定義される。論理しきい値Vthを高くするためには、NMOSトランジスタを流れる電流による電圧降下を大きくし、PMOSトランジスタを流れる電流による電圧降下を小さくすれば良い。このような調整は、PMOSトランジスタのW/LとNMOSトランジスタの抵抗値、すなわちチャンネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lを相対的に調整することで可能である。
【0042】
より詳細には、PMOSトランジスタの電流値 Ip は、その移動度μp、μn、酸化膜容量Cox、チャネル長Lp、チャネル幅 Wp、電源電圧 VDD、トランジスタ自体のしきい値Vth,p、これに入力電圧Vin を用いて以下のように示される。
【0043】
【数1】
【0044】
同様に NMOS の電流値 In は、以下のように与えられる。
【0045】
【数2】
【0046】
この中で、チャネル長Lとチャネル幅Wは比較的容易に変更できるため、特に今回のように、Vinが高い入力の場合にIp = In とするためには、2乗の項 (VDD - Vin + Vth,p)2が小さくなり、(Vin - Vth,p)2 が大きくなるため、(Wn/Ln) に比べ、(Wp/Lp)を大きくすれば良いことがわかる。一般的に、Vin = VDD/2 で Ip = In を与える典型的な値として、(Wn/Ln):(Wp/Lp)= 1:2 であるため、その比を 1:4 とすれば、論理しきい値 Vth は高くなり、1:1 とすれば、論理しきい値 Vthは低くなる。
【0047】
以上の原理を応用して、本実施形態では、多数決回路において、“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成する。なお、以下の説明では、トランジスタのW/Lを変化させることで論理しきい値を調整する手法を説明するが、論理しきい値の調整はこれに限定されるものではない。例えば、多数決回路を構成するトランジスタとして応答速度の異なるトランジスタを組み合わせることで、論理しきい値を調整しても良い。この場合、応答速度の速いトランジスタは抵抗値が小さいため、このトランジスタを流れる電流による電圧降下は小さくなる。従って、W/Lを変化させた場合と同様に、しきい値電圧を調整することが可能である。
【0048】
図9は、CMP3からメタステーブル状態“m”が出力された図6の状態において、AVG2〜AVG4に入力されたメタステーブル状態“m”がゲートレベルでどのように不定値“x”を伝播させるのかを示した図である。
【0049】
図9に示すように、AVG2においては、NOR0の一方の入力端子には端子Aから信号“1”が入力されるため、NOR0の他方の入力端子に入力されるメタステーブル状態“m”の値がいかなる値であってもNOR0の出力は0となる。また、INV0の入力端子には端子Bから信号“0”が入力されるため、INV0の出力は1となる。このため、NOR1の2つの入力端子には、“0”、“1”がそれぞれ入力されNOR1からは“0”が出力される。従って、メタステーブル状態“m”は、NOR0、INV0、NOR1の出力として伝播することはない。
【0050】
一方、NAND0の一方の入力端子には端子Aから信号“1”が入力され、他方の入力端子に“m”が入力されると、NAND0の出力は“m”の値に応じて異なる値が出力され、NAND0の出力は“0”である場合と“1”である場合の双方が考えられる。INV1はNAND0の出力を反転させてNOR2へ入力する。NOR2は、一方の入力端子に0が入力されているため、INV1の出力を反転させて出力する。そして、INV2はNOR2の出力を反転させて出力する。従って、AVG2はメタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はNAND0→INV1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。
【0051】
同様の原理により、AVG3は、メタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はINV0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。また、AVG4は、メタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はNOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。
【0052】
このため、多数決回路の構成として、“m”がC端子に入力された場合に、出力“x”として“1”を出し易くするためには、“x”が伝播する経路にあるNAND0の論理しきい値を調整して、NAND0から“0”が出易くなるようにすれば良い。NAND0から“0”が出力されると、INV1→NOR2→INV2の経路で反転が繰り返されるため、図9に示すように、AVG2から“1”を出力することができる。
【0053】
同様に、“m”がA端子に入力された場合に、出力“x”として“0”を出し易くするためには、“x”が伝播する経路にあるNOR0の論理しきい値を調整して、NOR0から“1”が出易くなるようにすれば良い。NOR0から“1”が出力されると、NOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転が繰り返されるため、図9に示すように、AVG4から“0”を出力することができる。
【0054】
図10は、本発明の一実施形態に係る多数決回路の構成を詳細に示す模式図である。ブロックレベルの図としては図5と同様であり、図10ではNAND0,NOR0,INV0をMOSトランジスタのゲートレベルで図示している。本実施形態の多数決回路において、INV0、INV1、INV2、NOR1、NOR2については、論理しきい値は通常のVDD/2付近で構わない。
【0055】
一方、NAND0については、上述のように“m”がC端子に入力された場合にNAND0から“0”が出易くなるようにするため、論理しきい値を下げている。このため、直列に接続された2つのNMOSトランジスタのW/Lを大きくしている。2入力のNAND 回路では、典型的なしきい値VDD/2の場合は(Wn/Ln):(Wp/Lp) = 1:1 であるため、これを(Wn/Ln):(Wp/Lp)
=1:2 とすれば、論理しきい値は高くなり、2:1 とすれば論理しきい値は低くなる。従って、NMOSトランジスタのW/Lを大きくすることで、しきい値がVDD/2の場合に比べて“0”が出易くなる構成にできる。
【0056】
また、NOR0については、上述のように“m”がA端子に入力された場合にNOR0から“1”が出易くなるようにするため、論理しきい値を上げている。このため、直列に接続された2つのPMOSトランジスタのW/Lを大きくしている。2入力のNOR回路では、典型的なしきい値VDD/2の場合は(Wn/Ln):(Wp/Lp) = 1:4であるため、PMOSトランジスタのW/Lを大きくすることで、しきい値がVDD/2の場合に比べて“1”が出易くなる構成にできる。
【0057】
以上のように、多数決回路のNAND0、NOR0のしきい値を調整することで、多数決回路AVGi(iは整数)において、i が小さい側から順に“1”を出しやすくする構成とすることが可能となる。
【0058】
以上の説明では、図4、図6におけるコンパレータCMPiの出力CPiについて、入力Ainの増加に伴って、iが小さい側の出力CPiから順に出力“0”が出力“1”に切り換わる(“1”が下位から積み上がる)通常の温度計コードについて説明した。一方、温度計コードとしては、図11に示すように、Ainの増加に伴ってiが小さい側の出力CPiから順に出力“0”が出力“1”に切り換わり、全ての出力CPiが“1”になると、iが小さい側の出力CPiから順に出力“1”が出力“0”に切り換わるサイクリック温度計コードがある。図10では、複数の多数決回路の出力を列毎に示している。
【0059】
サイクリック温度計コードでは、“1”が下位から積み上がるモードと“0”が下位から積み上がるモードがある。このため、“1”が下位から積み上がるモードでは、上述した手法によりエラーを救済できるが、“0”が下位から積み上がるモードではエラーを救済できない。
【0060】
図12〜図15に示す構成は、サイクリック温度計コードについても、バブルエラーとメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合にエラーを救済するものである。図11において、最下位のコードに注目すると、最下位のコードが“1” である場合、必ず “1”が下から積みあがるモードである。同様に、最下位コードが“0”である場合、必ず “0” が積みあがるモードであることがわかる。
【0061】
同様に、最上位コードが “0” である場合、必ず “1” が積みあがるモードであり、最上位コードが“1” である場合、必ず “0” が積みあがるモードである。
【0062】
このため、図12〜図15に示す構成では、最下位コードまたは最上位コードに基づいて、多数決回路の入力端子A,B,Cの接続状態を切り換えるようにしている。図12は、サイクリック温度計コードに対応した多数決回路の構成を示す模式図である。図5の多数決回路と比較すると、図12の回路では前段にセレクタSEL0,SEL1が設けられている。セレクタには最下位または最上位コードに応じた制御信号Ctr1が入力される。
【0063】
図12に示すように、セレクタ回路はINV10、およびNAND10〜12により構成される。図12に示すセレクタSEL0,SEL1は、論理式がO=A*Ctrl+B*Ctrlで与えられ、Ctrl=1の場合、セレクタのA端子の入力がセレクタから出力される(図12において、出力O=セレクタのA端子の入力)。一方、Ctrl=0の場合、セレクタのB端子の入力がセレクタから出力される(図12において、出力O=セレクタのB端子の入力)。また、セレクタの制御信号として最下位コードを使うものとする。
【0064】
このように、図12に示す多数決回路は、サイクリック温度計コードにおいて“1”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、多数決回路の端子A,B,CとNAND0, NOR0との接続状態は図5の回路と同様になる。一方、“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=0)は、接続状態が切り換わり、NAND0,NOR0に対する端子Aと端子Cの接続が入れ替わる。これにより、“1”が下位から積み上がるモードと“0”が下位から積み上がるモードの2つを有するサイクリック温度計コードにおいても、前段からメタステーブル状態“m”が入力された場合に、エラーの発生を抑えることが可能となる。
【0065】
図5に示す回路では、NAND0とNOR0の論理しきい値を調整することで、メタステーブル状態 “m”が入力された端子に応じて“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成している。図12に示す回路では、セレクタSEL0,SEL1を構成する回路の論理しきい値を調整することで、メタステーブル状態“m”が入力された端子に応じて“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成している。
【0066】
図13は、Ctrl=1のときにメタステーブル“m”が伝播する経路を示している。また、図14は、Ctrl=0のときにメタステーブル“m”が伝播する経路を示している。
【0067】
図13に示すように、Ctrl=1の場合は、下位から“1”が積みあがるモードであり、AVG2 においては、セレクタの後段でNAND0→INV1→NOR2→INV2の経路で“x”が伝播する。
そして、Ctrl=1の場合は、セレクタのA端子の入力がセレクタから出力されるため、AVG2のA端子の入力がNAND0に入力され、AVG2のC端子の入力がNOR0に入力される。従って、“x”はセレクタSEL1を通って伝播し、セレクタSEL1のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND10→NAND12→NAND0→INV1→NOR2→INV2となる。
【0068】
同様に、AVG4においては、セレクタの後段でNOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で“x”が伝播する。そして、Ctrl=1の場合は、AVG4のA端子の入力がNAND0に入力され、AVG4のC端子の入力がNOR0に入力されるため、“x”はセレクタSEL0を通って伝播する。従って、セレクタSEL0のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND10→NAND12→NOR0→NOR1→NOR2→INV2となる。
【0069】
従って、”1” が積みあがるモードにおいては、AVG2 は “1” を出しやすくするため、AVG2において“x”が伝播するセレクタSEL1のNAND10は、論理しきい値を下げる、すなわち(Wn/Ln) の比を(Wp/Lp)よりも大きくすれば良い。
【0070】
同様に、AVG4 は “0” を出しやすくするため、AVG4において“x”が伝播するセレクタSEL0の NAND10 の論理しきい値を上げるため、(Wp/Lp) の比を大きくすれば良い。
【0071】
“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、図14に示すように、AVG2においては、“x”はセレクタSEL0を通って伝播し、セレクタSEL0のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND11→NAND12→NOR0→NOR1→NOR2→INV2となる。従って、“0”が積みあがるモードにおいては、AVG2は“0”を出しやすくするため、SEL0のNAND11の(Wp/Lp)の比を大きくすれば良い。
【0072】
同様に、“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、図14に示すように、AVG4においては、“x”はセレクタSEL1を通って伝播し、セレクタSEL1のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND11→NAND12→NAND0→INV1→NOR2→INV2となる。従って、“0”が積みあがるモードにおいては、AVG4が“0”を出しやすくするため、SEL1の NAND11 の (Wn/Ln) の比を大きくすれば良い。
【0073】
図15は、サイクリック温度計コード用の多数決回路の構成を示す模式図であり、セレクタSEL0,SEL1をゲートレベルで示している。上述した構成をまとめると、セレクタSEL0では、NAND10の論理しきい値を上げるため、(Wp/Lp)の比を大きくし、NAND11の(Wp/Lp)の比を大きくすれば良い。また、セレクタSEL1では、NAND10の論理しきい値を下げるため、(Wn/Ln)の比を大きくし、NAND11の (Wn/Ln) の比を大きくすれば良い。
【0074】
また、セレクタの制御信号として、最上位コードを採用した場合は、反転してしまえば、最下位コードとほぼ同じという特性を利用して、Ctrl 信号に反転回路を直列に挿入しセレクタ制御信号とする。または、図12に示すように、セレクタは内部に反転回路INV10を有しているので、これを利用し、図12において、NAND11側に挿入されている INV10 を NAND10 側に入れ替えてセレクタを構成すれば良い。
【0075】
なお、セレクタの構成は、図12に示す構成に限定されるものではない。セレクタとして他の回路を用いる場合も、上述した構成と同様に、不定値“x”の伝播する経路を明らかにし、その経路上のゲートに対して論理しきい値を操作するという工程を踏むことにより、同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、セレクタを組み合わせ論理ゲートで構成せず、スイッチで実現した場合、そのセレクタには、メタステーブル状態 “m” を単なる不定状態 “x” に変換するだけのゲインがないため、メタステーブル状態は、そのまま次段の多数決回路へと入力されることになる。この場合は、図5で説明した多数決回路を用いれば良い。
【0077】
図16は、本実施形態のA/D変換器が適用される光ディスク装置を示す模式図である。光ディスク装置は、ウォブル信号処理系を備えている。ウォブル信号処理系は、ディスク状記録媒体50のトラックを読み出す光学ヘッド(光ピックアップ)102、プリアンプ104、GCA(Gain Control Amp)106、ウォブル抽出回路108、アナログフィルタ110、AD変換回路(ADC)112、アドレス復調器113、アドレス復号器114、PLL(PhaseLocked Loop)115、コントローラ116を有して構成されている。
【0078】
また、光学ヘッド102には、ディスク状記録媒体50から検出された再生信号のフィルタリングとデジタル化等の処理を行う再生回路10が接続され、再生回路10にはデータフォーマットを変換するデコーダ12が接続されて信号再生系が構成されている。
【0079】
また、記録すべき情報はコントローラ116からエンコーダ14へ送られ、エンコーダ14によりデータフォーマットを変換し、レーザ制御回路16で情報ビットに応じて光学ヘッド102内の光源の発光制御を行うことでディスク状記録媒体に情報が書き込まれ、これにより信号記録系が構成されている。
【0080】
また、光学ヘッド102の受光素子により検出された出力信号からサーボ信号が生成され、サーボ回路18にて光学ヘッド102の位置制御が行われる。また、サーボ回路18は、ディスク状記録媒体50が搭載されているスピンドルモータ20の回転制御を行う。
【0081】
ディスク状記録媒体50としては、記録面にウォブリングされて形成されたトラックを有する光ディスクが用いられる。光学ヘッド102は、レーザダイオード等の光源、レーザ光を集光する対物レンズ、ディスク状光記録媒体50からの反射光を受光する受光素子、反射光を受光素子に導く光学系、フォーカシングサーボやトラッキングサーボを行うためのアクチュエータなどを有して構成される。
【0082】
ウォブル信号処理系では、光学ヘッド102から出力されてプリアンプ104で増幅された信号は、GCA106で後段回路のDレンジに合わせて振幅調整され、ウォブル抽出回路108でウォブル信号が抽出され、更にアナログフィルタ110に入力される。アナログフィルタ110では、入力された信号に対して低域及び高域の不要な信号成分が除去される。アナログフィルタ110で不要な信号成分が除去された再生信号(ウォブル信号)は、AD変換回路112に入力される。AD変換回路112からの出力信号は、アドレス復調器114に入力される。アドレス復調器114は、入力されたウォブル信号の変調信号を検出してアドレス復調を行い、後段のアドレス復号器114に出力する。アドレス復号器114は、復調データからアドレスの復号を行い、アクセス位置のアドレス情報を再生してコントローラ116に出力する。コントローラ116は、アドレス情報に基づいて光ディスク装置の信号再生系、信号記録系を制御する。PLL115は、AD変換回路112、アドレス復調器114、アドレス復号器114、及びコントローラ116で使用されるクロックを生成する機能を有する。
【0083】
本実施形態に係るA/D変換器は、例えば再生回路10に含まれるデータ読取り用のAD変換器として使用することができる。また、ウォブル信号処理系におけるAD変換回路112として使用することができる。上述したように、本実施形態に係るA/D変換器は、メタステーブル状態が生じたとしても精度良くバイナリ信号を出力できるため、特に高速動作に適しており、光ディスク装置などへ適用することができる。
【0084】
以上説明したように本実施形態によれば、A/D変換器の出力コードにおいて、コンパレータのメタステーブル状態に起因する出力コードの誤差を大幅に低減することが可能となる。従って、コンパレータがどの程度小さな電位差を検出できるかの目安となる最小オーバードライブ電圧を大きくし、メタステーブル状態に陥る可能性を増やしたとしても、エラーを確実に救済することができる。従って、MCLを低電力、かつ、面積も小さく実装可能となる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】高速で動作する A/D 換器として、3ビットのバイナリコードを出力するフラッシュ型A/D変換器の構成を示す模式図である。
【図2】図1のA/D変換器において、アナログ入力信号AinがVr3とVr4の間の電位である場合を示す模式図である。
【図3】図1のA/D変換器においてバブルエラーが発生した状態を示す模式図である。
【図4】図1のA/D変換器に多数決回路AVG0〜6を挿入した例を示す模式図である。
【図5】多数決回路をブロックレベルで記述した模式図である。
【図6】図4のA/D変換器において、メタステーブル状態に起因するエラーが生じた状態を示す模式図である。
【図7】メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1からの出力を示す模式図である。
【図8】CMOSインバータからなる反転回路において、論理しきい値を高くする原理を示す模式図である。
【図9】図6の状態において、AVG2〜AVG4に入力されたメタステーブル状態“m”がゲートレベルで不定値“x”を伝播させる様子を示す模式図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る多数決回路の構成を詳細に示す模式図である。
【図11】サイクリック温度計コードの出力を示す模式図である。
【図12】サイクリック温度計コードに対応した多数決回路の構成を示す模式図である。
【図13】サイクリック温度計コードにおいて、“1”が下位から積み上がる場合にメタステーブル状態に起因する不定値“x”が伝播する経路を示す模式図である。
【図14】サイクリック温度計コードにおいて、“0”が下位から積み上がる場合にメタステーブル状態に起因する不定値“x”が伝播する経路を示す模式図である。
【図15】サイクリック温度計コード用の多数決回路の構成を示す模式図である。
【図16】本実施形態のA/D変換器が適用される光ディスク装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
100 コンパレータ部
200 論理境界検出部
AVG0〜AVG6 多数決回路
SEL0,SEL1 セレクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器及び情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時において、A/D変換器は様々な電子機器に使用されている。例えば下記の特許文献1には、AD変換器において、入力されるサーモメータコードに含まれるバブルエラーの訂正機能を備え、動作速度の向上を目的としたA/D変換器が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11-88174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、A/D変換器においては、出力論理が反転するバブルエラーの他に、コンパレータ出力のメタステーブル状態に起因するエラーが生じることがある。メタステーブル状態は、入力信号と基準信号が比較的近い場合に、コンパレータが中間電位を出力する状態であり、特に比較のための時間が十分に確保できない高速動作のコンパレータにおいて生じ易い。メタステーブル状態が発生すると、コンパレータの出力が“0”と“1”のいずれにも判断され得るため、結果として出力値に誤差が生じてしまうという問題がある。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、メタステーブル状態に起因するエラーを訂正することは想定していないため、メタステーブル状態によって出力値に誤差が含まれてしまうという問題がある。特に、バブルエラーとメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合、エラーを救済することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コンパレータのメタステーブル状態に起因するエラーを確実に抑止することが可能な、新規かつ改良されたA/D変換器及び情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備えるA/D変換回路が提供される。
【0008】
上記構成によれば、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0009】
また、前記多数決回路は複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたものであってもよい。かかる構成によれば、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変するのみで論理しきい値を調整することができるため、製造プロセスを若干変更するのみで論理しきい値を容易に調整することが可能となる。
【0010】
また、前記多数決回路には3つの比較器の出力が入力され、前記3つの比較器のうち、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、残りの2つの比較器のうちの一方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも低く設定され、残りの2つの比較器のうちの他方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも高く設定されたものであってもよい。かかる構成によれば、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、基準電圧が中間の比較器以外の残りの比較器からの入力は、基準しきい値よりも高いしきい値、及び基準しきい値よりも低いしきい値に設定される。従って、基準電圧の増加又は減少方向に対して複数配列された多数決回路の出力を適合させることができ、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0011】
また、前記多数決回路は、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、前記残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるセレクタを含むものであってもよい。複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるため、サイクリック温度計コード用のA/D変換器において、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーを抑えることが可能となる。
【0012】
また、前記セレクタは複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたものであってもよい。かかる構成によれば、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変するのみで論理しきい値を調整することができるため、製造プロセスを若干変更するのみで論理しきい値を容易に調整することが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、前記受光部から検出された信号から再生信号を取得する再生回路と、前記再生回路に含まれるA/D変換器と、を備え、前記A/D変換器は、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備える情報再生装置が提供される。
【0014】
上記構成によれば、光記録媒体のトラックに光が照射され、受光部で光記録媒体からの反射光が受光され、受光部から検出された信号からA/D変換器を含む再生回路により再生信号が取得される。A/D変換器では、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、前記受光部から検出された信号からウォブル信号を取得するウォブル信号抽出回路と、前記ウォブル信号抽出回路に含まれるA/D変換器と、を備え、前記A/D変換器は、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、を備える情報再生装置が提供される。
【0016】
上記構成によれば、光記録媒体のトラックに光が照射され、受光部で光記録媒体からの反射光が受光され、受光部から検出された信号からA/D変換器を含むウォブル信号抽出回路によりウォブル信号が取得される。A/D変換器では、複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係が複数の比較器で比較され、基準電圧の大きさに応じて並べられた複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点が検出される。そして、連続する基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、多数決判定により出力を決定する多数決回路において、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整されている。従って、多数決回路では、連続する基準電圧に応じた複数の比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値を最適に設計することができ、バブルエラーやメタステーブル状態によるエラーが発生した場合であっても、多数決回路の出力に複数の論理境界点が発生してしまうことを抑止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンパレータのメタステーブル状態に起因するエラーを確実に抑止することが可能な、A/D変換器及び情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[関連技術の説明]
先ず、本発明の実施形態を説明する前に、前提となる技術について説明する。図1は、高速で動作するA/D 換器として、3ビットのバイナリコードを出力するフラッシュ型 A/D変換器の構成を示す模式図である。図1に示すように、フラッシュ型 A/D変換器は、コンパレータ部100、論理境界検出部200、エンコーダ部300を備えて構成されている。コンパレータ部100は、アナログ入力信号Ain と基準電圧Vr0〜Vr6を比較して入力信号の大きさに対応した温度計コードを出力するコンパレータCMP0〜CMP6を有して構成される。論理境界検出部200は、各コンパレータCMP0〜CMP6の出力の“0”と“1”の論理境界点を検出する。エンコーダ部300は、論理境界検出部200からの出力信号に基づいてバイナリコード
B[2:0] を出力する。
【0020】
コンパレータ部100では、高電位側参照電圧Vrtと低電位側参照電圧Vrbとの間に 8個の抵抗が直列接続され、各抵抗の間で7個の基準電圧Vr0〜Vr6が得られる。ここで、両端に位置する抵抗の値R/2はその他の抵抗の値Rの半分に設定される。そして、アナログ入力信号Ainと7個の基準電圧とを7個のコンパレータ群CMP0〜CMP6により比較する。ここで、各コンパレータCMP0〜CMP6では、アナログ入力信号AinがVr0〜Vr6より高いときは、出力信号CP0〜CP6が“1”となり、反転出力信号CN0〜CN6が“0”となる。また、アナログ入力信号Ainが基準電圧Vr0〜Vr6より低いときは、反転出力CN0〜CN6が“1”となり、出力信号CP0〜CP6が“0”となる。例えば、図2は、アナログ入力信号AinがVr3とVr4の間の電位である場合を示している。図2に示すように、アナログ入力信号AinがVr3より大きくVr4よりも小さい時には、出力信号として、CP0〜CP3までが“1”となりCP4〜CP6は“0”となる温度計コードが出力される。また、反転出力は、CN0〜CN3までは“0”となりCN4〜CN6は
“1”となる温度計コードが出力される。
【0021】
図1に示すように、コンパレータ部100の後段には論理境界検出部200が配置され、コンパレータ部100からの温度計コード出力CP0〜CP6、CN0〜CN6は、論理境界検出部200に設けられた8つの2入力NOR回路(NR0〜NR7)へ入力される。ここで、NRi(iは整数)には、コンパレータの出力信号CNi-1、CPiが入力される。NR0には、一方の入力にCP0が入力され、他方の入力には“1”が入力される。また、NR7には、一方の入力にCN6が入力され、他方の入力には“0”が入力される。従って、(CPi-1,CPi)=(1,0)の時にのみNRi の出力は “1” となる。これにより、連続して並ぶ出力信号CP0〜CP6、CN0〜CN6において、連続した “1” の並びから連続した “0” の並びへ変化した位置のNOR回路から論理境界点を示す信号“1”が出力される。図2の例では、(CP3、CP4)=(1,0)であるため、NR4から信号“1”が出力される。
【0022】
エンコーダ部300は、制御クロックであるエンコード(Encode)信号によりプリチャージモードとエンコードモードの2状態に設定される。エンコーダ部300は、PMOSトランジスタMP1〜MP3、およびNMOSトランジスタMN1〜MN12を備える。PMOSトランジスタMP1〜MP3は、エンコード信号をLレベルにすることにより、ビット線BL0〜BL2をVDDにプリチャージする。NMOSトランジスタMN1〜MN12は、論理境界検出部200からの出力ワード線WL0〜WL7に基づいて、プリチャージされたビット線BL0〜BL2の内、ワード線WL0〜WL7の出力が“1”である該当ビットをGNDにプルダウンすることにより所望のバイナリ出力B0〜B2を得る。
【0023】
従って、図2に示すように、例えばエンコード信号をLレベルにしてビット線BL0〜BL2をVDDにプリチャージした後に、Vr3よりも大きくVr4よりも小さい入力信号Ainが入力されると、論理境界検出部によりワード線WL4のみがHとなり、NMOSトランジスタMN3とMN4がオン状態になる。ここでエンコード信号をHにすると、ビット線BL1、BL0がGNDにプルダウンされ、エンコード後のバイナリ信号 B[2:0]=100が出力される。
【0024】
以上のような温度計コードを使用するA/D変換器では、温度計コードにおけるバブルエラーと呼ばれるエラーが発生する場合がある。これは、例えば図2におけるコンパレータ出力CP0〜CP6は、入力信号Ainのレベルを表すため、「1111000」のように“1”と“0”の変化点は1つでなければならない。一方、図3は、バブルエラーが発生し、CMP2の出力において、CP2=1、CNP2=0となった場合を示している。バブルエラーが発生すると、図3の場合、コンパレータ出力CP0〜CP6が「1101000」となり、“1”と“0”の変化点が2つ以上現われてしまい、2つ以上のワード線(図3では、WL2とWL4)を同時にオンすることで出力コードに大きな誤差を生じさせるものである。
【0025】
そして、複数のワード線が同時にオンしてしまうと、図3の例のように、全てのビット線BL0〜BL2がGNDにプルダウンされてしまう可能性が高くなる。この場合、エンコード後のバイナリ信号はB[2:0]=000となり、本来のバイナリ信号の真値であるB[2:0]=100からの誤差が大きくなる。
【0026】
このバブルエラーの発生を改善する方法として、対象ビットとその前後のビットの多数決(アベレージ)を取るディジタルアベレージという手法がある。図4は、図1の回路において、多数決回路AVG0〜6を挿入したものである。また、図5は、ブロックレベルで記述された多数決回路を示す模式図である。多数決回路は、論理式がOut=In0*In1+In1*In2+In2*In0で与えられ、その真理値表を図 5 に示す。論理式から分かるように、In0、In1、In2、の3つの入力のうち、2つ以上が“1”となったときOut=1となり、2つ以上が“0”となったときOut=0となるため、多数決回路と称している。
【0027】
図4に示すように、多数決回路AVG0〜6は、コンパレータ群CMP0〜6と論理境界検出部100のNOR回路の間に配置される。AVGi(iは整数)は、3入力1出力回路であり、CPi-1、CPi、CPi+1の3入力より多数決をとりその結果を出力する。図4は、これら多数決回路AVGiにより図3で説明したバブルエラーが抑制される様子を示している。
【0028】
図4に示すように、CMP2にて発生したCP2のバブルエラー“0”は、AVG2にて上下のCP1、CP3と多数決を取られることにより1に修正されてエンコーダ部へ入力される。従って、結果としてバブルエラーが生じていない図1の場合と同じバイナリ信号が出力される。また、多数決回路出力が論理境界を一つしかもたないということも図4より自明であり、バブルエラーの対策として、多数決回路を用いることがとても有効であることがわかる。多数決回路AVGiは、反転回路INV0〜INV2、2入力の否定論理和回路NOR0〜NOR2、及び、1つの2入力の否定論理積回路NAND0というとてもシンプルな構造にも関わらず、バブルエラーの抑制に絶大な効果を発揮するため、本構成のようなA/D変換器では特に効果的である。
【0029】
以上のようにバブルエラーは多数決回路の導入によって抑制することができるが、A/D変換器において、バブルエラーの他にメタステーブル状態によって生じるエラーがある。メタステーブル状態とは、アナログ入力Ainと比較電圧Vr0〜Vr6のいずれかがほぼ等しいようなときに、コンパレータCP0〜CP6がその数値の大小を決めることができず、不確定の中間電位を出力する状態をいう。特に、高速に動作するA/D変換器では、比較のための時間が限られるため、コンパレータCP0〜CP6は、“0”か“1”、または、そのどちらでもない“中間電位”のいずれか出力してしまう。ここでは、説明の便宜上、メタステーブル状態のCMPの出力コード(中間電位)をメタステーブルの頭文字を取って“m”と表すことにする。
【0030】
例えば、図1の回路において、Ain≒Vr3となる信号が入力された場合に、コンパレータCP3からメタステーブル状態を示す“m”が出力されたとする。この時、CP0〜CP2からは“1”、それ以外のCP4〜CP6からは“0”が出力されるため「111m000」がコンパレータ群の出力として得られる。エラーがメタステーブル状態によるものだけであれば、“m”の真値が“1”、”0” のいずれであったとしても、論理境界部200の出力からは“0”と“1”の論理境界点が1点しか検出されないため、2つ以上のワード線を同時にオンさせることによる出力コードの大きな誤差は生じない。
【0031】
しかし、メタステーブル状態によるエラーと同時にバブルエラーが生じると、出力されたバイナリ信号に大きな誤差が発生する場合がある。図6は、上述したCP0〜CP6の出力「111m000」において、出力CP3,CP4にバブルエラーが生じ、CP0〜CP6の出力が「110m100」となった場合を示している。図6に示すように、多数決回路AVG2〜4には、“0”,“1”,“m”のそれぞれが入力されるため、アベレージ出力は“m”の値に依存し、概略的にはAVGの出力は「11mmm00」となる。より詳細には、上述の説明では、アベレージ回路AVG0の入力、つまり、コンパレータCMP0〜6の出力において、中間電位も含むメタステーブル状態“m”を想定している。一方、アベレージ回路AVG0〜6の構成要素であるディジタル論理回路は、論理しきい値付近での利得がとても高いため、アベレージ回路AVG0〜6の出力においては、中間電位が出力されることはない。従って、アベレージ回路AVG0〜6の出力は、メタステーブル状態“m”に応じて必ず“0”か“1”の一方の値(不定値)に決まる。ここでは、コンパレータCMP0〜6の出力の中間電位を含むメタステーブル状態を“m”、アベレージ回路の出力であり中間電位を含まないものを不定値“x”と表記することとする。つまり、上述したアベレージ回路の出力「11mmm00」は、中間電位を含まない「11xxx00」と定義され、xは“0”又は“1”のいずれかである。ここで、xxx=101であった場合、「1110100」となり、複数のワード線(この場合、WL3とWL4)をオンすることになってしまう。これは、多数決回路によるディジタルアベレージの技術のみでは、メタステーブル状態を含めたエラーの抑制が不完全なことを示しており、最悪の場合、図6に示すように「110m100」が「11xxx00」となってしまう。以上のようなバブルエラー、およびメタステーブルは、ある確率で必ず同時に起こるものであるため、エラー対策を施すことは重要である。なお、バブルエラーは、広義には論理境界検出を困難にするエラーの総称として用いられる場合があり、メタステーブル状態に起因するエラーを含む場合があるが、本明細書ではコンパレータ出力の中間電位に起因するエラーをメタステーブル状態に起因するエラーとして記載するものとする。
【0032】
[本発明の実施形態の概要]
以下、本発明の実施形態において、バブルエラーおよびメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合に、エラーを抑制する手法について説明する。まず、図6に示した「11xxx00」という出力になったとしても、xxxの値が000, 100, 110, 111のいずれかであれば、多数決回路の出力は「1100000」、「1110000」、「1111000」、「1111100」となり、論理境界部が一箇所しかないため、複数のワード線をアクティブにするようなことはない。しかし、この場合、xxx=000, 100, 110, 111以外の組み合わせ、すなわちxxx=001, 010, 011, 101となった場合は、やはり複数のワード線をアクティブにしてしまい、出力コードと真値との間に誤差を生じさせてしまう。つまり、「11xxx00」という出力の場合、50%という非常に高い確率でコードの誤差が生じてしまう。本実施形態は、こういった事態を回避するためのものである。
【0033】
まず、上述の例においてNGとならない正解の出力パターンxxx=000, 100, 110,111を参照すると、AVGi(i は整数)の出力においてiの値が小さい程“1”が多く、iの値が大きい程“0”が多いという特徴がある。NGとならない正解の出力パターンにおいて、AVG2〜4の出力における“1”の出現回数は、AVG2の出力では3回であり、AVG3 の出力では2回であり、AVG4 の出力では1回である。従って、 (AVG2 の出力)>(AVG3 の出力)>(AVG4 出力)の順で“1”の出現確率が減っている。また、図6に示すように、AVG2にはCMP3で発生した前段のメタステーブル状態“m”がCの端子に入る。同様にAVG3には“m”がBの端子に入り、AVG4には“m”がAの端子に入る。このように、メタステーブル状態“m”が入力される3つの多数決回路AVG2〜4において、多数決回路毎に異なる端子に入力される。
【0034】
本実施形態では、以上の点を利用し、メタステーブル状態 “m” が C 端子に入った場合は“1”を出しやすく、A端子に入った場合は“0”を出しやすいディジタルアベレージ回路を多数決回路として使用する。また、メタステーブル状態“m”がB端子に入った場合は、“m”に応じて“0”、“1”のいずれかを出力するものとする。
【0035】
図7は、メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1からの出力を示す模式図である。ここで、図7(A)は、“m”の中間電位を入力として、この電位が0からVDDまで変化した場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1から出力される値を示している。図7(A)に示すように、“m”の中間電位の増加に伴って、AVGi-1、AVGi、AVGi+1から出力される3桁のバイナリコードは、(AVGi-1,AVGi,AVGi+1)=(0,0,0)→(0,0,1)→(0,1,1)→(1,1,1)のように変化する。従って、上述したNGとならない正解の出力パターンxxx=000,100, 110, 111が出力され、出力コードの誤差を抑制することができる。
【0036】
図7(B)、図7(C)、図7(D)は、図7(A)の結果を出力するため、各AVGi-1、AVGi、AVGi+1のしきい値が調整された様子を模式的に示す図である。ここで、図7(B)は、AVGi-1において、端子Cに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGi-1からの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(B)に示すように、AVGi-1からは、中間電位の値がVDD/4以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値がVDD/4を越えると“1”が出力される。従って、端子Cに“m”が入力された場合に、“1”を出し易い構成とすることができる。
【0037】
また、図7(D)は、AVGi+1において、端子Aに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGi+1からの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(D)に示すように、AVGi+1からは、中間電位の値が3/4*VDD以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値が3/4*VDDを越えると“1”が出力される。従って、端子Aに“m”が入力された場合に、“0”を出し易い構成とすることができる。
【0038】
図7(C)は、AVGiにおいて、端子Bに“m”が入力された場合に、その中間電位の値に応じてAVGiからの出力が変化する様子を示す模式図である。図7(C)に示すように、AVGiからは、中間電位の値がVDD/2以下の場合は“0”が出力され、中間電位の値がVDD/2を越えると“1”が出力される。従って、端子Bに“m”が入力された場合は、通常のVDD/2のしきい値により“m”に応じた値が出力される。
【0039】
これにより、メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合、AVGi-1は“1”を出し易い回路となり、AVGi+1は“0”を出し易い回路となる。従って、上述した場合に、xxxの値として000,100, 110, 111のいずれかが出力されることになり、メタステーブル状態による A/D 変換器の出力コード誤差を抑制することができる。
【0040】
[しきい値調整のための具体的構成]
多数決回路は、図5で説明したように、論理ゲートを組み合わせた構造をしている。例えば、反転回路INVにおいて“1”が出易いということは、反転回路の論理しきい値が高いということと等価である。図8は、CMOSインバータからなる反転回路において、論理しきい値を高くする原理を示す模式図である。ここで、図8(A)は論理しきい値Vthを通常のVDD/2にした場合を示しており、図8(B)は論理しきい値VthをVDD/2よりも高くした場合を示している。
【0041】
図8(B)に示すように、論理しきい値 Vth が VDD/2 より上に移動することにより、入力をLowと判断する区間 (Lで示す区間) が広くなる。従って、論理しきい値Vth を高くすることにより、”1” (High) が出易い反転回路とすることができる。ここで、論理ゲートの論理しきい値Vthは、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタの電流値が等しい状態で定義される。論理しきい値Vthを高くするためには、NMOSトランジスタを流れる電流による電圧降下を大きくし、PMOSトランジスタを流れる電流による電圧降下を小さくすれば良い。このような調整は、PMOSトランジスタのW/LとNMOSトランジスタの抵抗値、すなわちチャンネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lを相対的に調整することで可能である。
【0042】
より詳細には、PMOSトランジスタの電流値 Ip は、その移動度μp、μn、酸化膜容量Cox、チャネル長Lp、チャネル幅 Wp、電源電圧 VDD、トランジスタ自体のしきい値Vth,p、これに入力電圧Vin を用いて以下のように示される。
【0043】
【数1】
【0044】
同様に NMOS の電流値 In は、以下のように与えられる。
【0045】
【数2】
【0046】
この中で、チャネル長Lとチャネル幅Wは比較的容易に変更できるため、特に今回のように、Vinが高い入力の場合にIp = In とするためには、2乗の項 (VDD - Vin + Vth,p)2が小さくなり、(Vin - Vth,p)2 が大きくなるため、(Wn/Ln) に比べ、(Wp/Lp)を大きくすれば良いことがわかる。一般的に、Vin = VDD/2 で Ip = In を与える典型的な値として、(Wn/Ln):(Wp/Lp)= 1:2 であるため、その比を 1:4 とすれば、論理しきい値 Vth は高くなり、1:1 とすれば、論理しきい値 Vthは低くなる。
【0047】
以上の原理を応用して、本実施形態では、多数決回路において、“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成する。なお、以下の説明では、トランジスタのW/Lを変化させることで論理しきい値を調整する手法を説明するが、論理しきい値の調整はこれに限定されるものではない。例えば、多数決回路を構成するトランジスタとして応答速度の異なるトランジスタを組み合わせることで、論理しきい値を調整しても良い。この場合、応答速度の速いトランジスタは抵抗値が小さいため、このトランジスタを流れる電流による電圧降下は小さくなる。従って、W/Lを変化させた場合と同様に、しきい値電圧を調整することが可能である。
【0048】
図9は、CMP3からメタステーブル状態“m”が出力された図6の状態において、AVG2〜AVG4に入力されたメタステーブル状態“m”がゲートレベルでどのように不定値“x”を伝播させるのかを示した図である。
【0049】
図9に示すように、AVG2においては、NOR0の一方の入力端子には端子Aから信号“1”が入力されるため、NOR0の他方の入力端子に入力されるメタステーブル状態“m”の値がいかなる値であってもNOR0の出力は0となる。また、INV0の入力端子には端子Bから信号“0”が入力されるため、INV0の出力は1となる。このため、NOR1の2つの入力端子には、“0”、“1”がそれぞれ入力されNOR1からは“0”が出力される。従って、メタステーブル状態“m”は、NOR0、INV0、NOR1の出力として伝播することはない。
【0050】
一方、NAND0の一方の入力端子には端子Aから信号“1”が入力され、他方の入力端子に“m”が入力されると、NAND0の出力は“m”の値に応じて異なる値が出力され、NAND0の出力は“0”である場合と“1”である場合の双方が考えられる。INV1はNAND0の出力を反転させてNOR2へ入力する。NOR2は、一方の入力端子に0が入力されているため、INV1の出力を反転させて出力する。そして、INV2はNOR2の出力を反転させて出力する。従って、AVG2はメタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はNAND0→INV1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。
【0051】
同様の原理により、AVG3は、メタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はINV0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。また、AVG4は、メタステーブル状態“m”に応じた不定値“x”を出力し、不定値“x”はNOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転を繰り返しながら伝播する。
【0052】
このため、多数決回路の構成として、“m”がC端子に入力された場合に、出力“x”として“1”を出し易くするためには、“x”が伝播する経路にあるNAND0の論理しきい値を調整して、NAND0から“0”が出易くなるようにすれば良い。NAND0から“0”が出力されると、INV1→NOR2→INV2の経路で反転が繰り返されるため、図9に示すように、AVG2から“1”を出力することができる。
【0053】
同様に、“m”がA端子に入力された場合に、出力“x”として“0”を出し易くするためには、“x”が伝播する経路にあるNOR0の論理しきい値を調整して、NOR0から“1”が出易くなるようにすれば良い。NOR0から“1”が出力されると、NOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で反転が繰り返されるため、図9に示すように、AVG4から“0”を出力することができる。
【0054】
図10は、本発明の一実施形態に係る多数決回路の構成を詳細に示す模式図である。ブロックレベルの図としては図5と同様であり、図10ではNAND0,NOR0,INV0をMOSトランジスタのゲートレベルで図示している。本実施形態の多数決回路において、INV0、INV1、INV2、NOR1、NOR2については、論理しきい値は通常のVDD/2付近で構わない。
【0055】
一方、NAND0については、上述のように“m”がC端子に入力された場合にNAND0から“0”が出易くなるようにするため、論理しきい値を下げている。このため、直列に接続された2つのNMOSトランジスタのW/Lを大きくしている。2入力のNAND 回路では、典型的なしきい値VDD/2の場合は(Wn/Ln):(Wp/Lp) = 1:1 であるため、これを(Wn/Ln):(Wp/Lp)
=1:2 とすれば、論理しきい値は高くなり、2:1 とすれば論理しきい値は低くなる。従って、NMOSトランジスタのW/Lを大きくすることで、しきい値がVDD/2の場合に比べて“0”が出易くなる構成にできる。
【0056】
また、NOR0については、上述のように“m”がA端子に入力された場合にNOR0から“1”が出易くなるようにするため、論理しきい値を上げている。このため、直列に接続された2つのPMOSトランジスタのW/Lを大きくしている。2入力のNOR回路では、典型的なしきい値VDD/2の場合は(Wn/Ln):(Wp/Lp) = 1:4であるため、PMOSトランジスタのW/Lを大きくすることで、しきい値がVDD/2の場合に比べて“1”が出易くなる構成にできる。
【0057】
以上のように、多数決回路のNAND0、NOR0のしきい値を調整することで、多数決回路AVGi(iは整数)において、i が小さい側から順に“1”を出しやすくする構成とすることが可能となる。
【0058】
以上の説明では、図4、図6におけるコンパレータCMPiの出力CPiについて、入力Ainの増加に伴って、iが小さい側の出力CPiから順に出力“0”が出力“1”に切り換わる(“1”が下位から積み上がる)通常の温度計コードについて説明した。一方、温度計コードとしては、図11に示すように、Ainの増加に伴ってiが小さい側の出力CPiから順に出力“0”が出力“1”に切り換わり、全ての出力CPiが“1”になると、iが小さい側の出力CPiから順に出力“1”が出力“0”に切り換わるサイクリック温度計コードがある。図10では、複数の多数決回路の出力を列毎に示している。
【0059】
サイクリック温度計コードでは、“1”が下位から積み上がるモードと“0”が下位から積み上がるモードがある。このため、“1”が下位から積み上がるモードでは、上述した手法によりエラーを救済できるが、“0”が下位から積み上がるモードではエラーを救済できない。
【0060】
図12〜図15に示す構成は、サイクリック温度計コードについても、バブルエラーとメタステーブル状態によるエラーが同時に発生した場合にエラーを救済するものである。図11において、最下位のコードに注目すると、最下位のコードが“1” である場合、必ず “1”が下から積みあがるモードである。同様に、最下位コードが“0”である場合、必ず “0” が積みあがるモードであることがわかる。
【0061】
同様に、最上位コードが “0” である場合、必ず “1” が積みあがるモードであり、最上位コードが“1” である場合、必ず “0” が積みあがるモードである。
【0062】
このため、図12〜図15に示す構成では、最下位コードまたは最上位コードに基づいて、多数決回路の入力端子A,B,Cの接続状態を切り換えるようにしている。図12は、サイクリック温度計コードに対応した多数決回路の構成を示す模式図である。図5の多数決回路と比較すると、図12の回路では前段にセレクタSEL0,SEL1が設けられている。セレクタには最下位または最上位コードに応じた制御信号Ctr1が入力される。
【0063】
図12に示すように、セレクタ回路はINV10、およびNAND10〜12により構成される。図12に示すセレクタSEL0,SEL1は、論理式がO=A*Ctrl+B*Ctrlで与えられ、Ctrl=1の場合、セレクタのA端子の入力がセレクタから出力される(図12において、出力O=セレクタのA端子の入力)。一方、Ctrl=0の場合、セレクタのB端子の入力がセレクタから出力される(図12において、出力O=セレクタのB端子の入力)。また、セレクタの制御信号として最下位コードを使うものとする。
【0064】
このように、図12に示す多数決回路は、サイクリック温度計コードにおいて“1”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、多数決回路の端子A,B,CとNAND0, NOR0との接続状態は図5の回路と同様になる。一方、“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=0)は、接続状態が切り換わり、NAND0,NOR0に対する端子Aと端子Cの接続が入れ替わる。これにより、“1”が下位から積み上がるモードと“0”が下位から積み上がるモードの2つを有するサイクリック温度計コードにおいても、前段からメタステーブル状態“m”が入力された場合に、エラーの発生を抑えることが可能となる。
【0065】
図5に示す回路では、NAND0とNOR0の論理しきい値を調整することで、メタステーブル状態 “m”が入力された端子に応じて“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成している。図12に示す回路では、セレクタSEL0,SEL1を構成する回路の論理しきい値を調整することで、メタステーブル状態“m”が入力された端子に応じて“1”が出易い回路、“0”が出易い回路を構成している。
【0066】
図13は、Ctrl=1のときにメタステーブル“m”が伝播する経路を示している。また、図14は、Ctrl=0のときにメタステーブル“m”が伝播する経路を示している。
【0067】
図13に示すように、Ctrl=1の場合は、下位から“1”が積みあがるモードであり、AVG2 においては、セレクタの後段でNAND0→INV1→NOR2→INV2の経路で“x”が伝播する。
そして、Ctrl=1の場合は、セレクタのA端子の入力がセレクタから出力されるため、AVG2のA端子の入力がNAND0に入力され、AVG2のC端子の入力がNOR0に入力される。従って、“x”はセレクタSEL1を通って伝播し、セレクタSEL1のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND10→NAND12→NAND0→INV1→NOR2→INV2となる。
【0068】
同様に、AVG4においては、セレクタの後段でNOR0→NOR1→NOR2→INV2の経路で“x”が伝播する。そして、Ctrl=1の場合は、AVG4のA端子の入力がNAND0に入力され、AVG4のC端子の入力がNOR0に入力されるため、“x”はセレクタSEL0を通って伝播する。従って、セレクタSEL0のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND10→NAND12→NOR0→NOR1→NOR2→INV2となる。
【0069】
従って、”1” が積みあがるモードにおいては、AVG2 は “1” を出しやすくするため、AVG2において“x”が伝播するセレクタSEL1のNAND10は、論理しきい値を下げる、すなわち(Wn/Ln) の比を(Wp/Lp)よりも大きくすれば良い。
【0070】
同様に、AVG4 は “0” を出しやすくするため、AVG4において“x”が伝播するセレクタSEL0の NAND10 の論理しきい値を上げるため、(Wp/Lp) の比を大きくすれば良い。
【0071】
“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、図14に示すように、AVG2においては、“x”はセレクタSEL0を通って伝播し、セレクタSEL0のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND11→NAND12→NOR0→NOR1→NOR2→INV2となる。従って、“0”が積みあがるモードにおいては、AVG2は“0”を出しやすくするため、SEL0のNAND11の(Wp/Lp)の比を大きくすれば良い。
【0072】
同様に、“0”が下から積み上がる場合(Ctrl=1)は、図14に示すように、AVG4においては、“x”はセレクタSEL1を通って伝播し、セレクタSEL1のINV10,NAND10,NAND11,NAND12を含めると、“x”が伝播する経路はNAND11→NAND12→NAND0→INV1→NOR2→INV2となる。従って、“0”が積みあがるモードにおいては、AVG4が“0”を出しやすくするため、SEL1の NAND11 の (Wn/Ln) の比を大きくすれば良い。
【0073】
図15は、サイクリック温度計コード用の多数決回路の構成を示す模式図であり、セレクタSEL0,SEL1をゲートレベルで示している。上述した構成をまとめると、セレクタSEL0では、NAND10の論理しきい値を上げるため、(Wp/Lp)の比を大きくし、NAND11の(Wp/Lp)の比を大きくすれば良い。また、セレクタSEL1では、NAND10の論理しきい値を下げるため、(Wn/Ln)の比を大きくし、NAND11の (Wn/Ln) の比を大きくすれば良い。
【0074】
また、セレクタの制御信号として、最上位コードを採用した場合は、反転してしまえば、最下位コードとほぼ同じという特性を利用して、Ctrl 信号に反転回路を直列に挿入しセレクタ制御信号とする。または、図12に示すように、セレクタは内部に反転回路INV10を有しているので、これを利用し、図12において、NAND11側に挿入されている INV10 を NAND10 側に入れ替えてセレクタを構成すれば良い。
【0075】
なお、セレクタの構成は、図12に示す構成に限定されるものではない。セレクタとして他の回路を用いる場合も、上述した構成と同様に、不定値“x”の伝播する経路を明らかにし、その経路上のゲートに対して論理しきい値を操作するという工程を踏むことにより、同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、セレクタを組み合わせ論理ゲートで構成せず、スイッチで実現した場合、そのセレクタには、メタステーブル状態 “m” を単なる不定状態 “x” に変換するだけのゲインがないため、メタステーブル状態は、そのまま次段の多数決回路へと入力されることになる。この場合は、図5で説明した多数決回路を用いれば良い。
【0077】
図16は、本実施形態のA/D変換器が適用される光ディスク装置を示す模式図である。光ディスク装置は、ウォブル信号処理系を備えている。ウォブル信号処理系は、ディスク状記録媒体50のトラックを読み出す光学ヘッド(光ピックアップ)102、プリアンプ104、GCA(Gain Control Amp)106、ウォブル抽出回路108、アナログフィルタ110、AD変換回路(ADC)112、アドレス復調器113、アドレス復号器114、PLL(PhaseLocked Loop)115、コントローラ116を有して構成されている。
【0078】
また、光学ヘッド102には、ディスク状記録媒体50から検出された再生信号のフィルタリングとデジタル化等の処理を行う再生回路10が接続され、再生回路10にはデータフォーマットを変換するデコーダ12が接続されて信号再生系が構成されている。
【0079】
また、記録すべき情報はコントローラ116からエンコーダ14へ送られ、エンコーダ14によりデータフォーマットを変換し、レーザ制御回路16で情報ビットに応じて光学ヘッド102内の光源の発光制御を行うことでディスク状記録媒体に情報が書き込まれ、これにより信号記録系が構成されている。
【0080】
また、光学ヘッド102の受光素子により検出された出力信号からサーボ信号が生成され、サーボ回路18にて光学ヘッド102の位置制御が行われる。また、サーボ回路18は、ディスク状記録媒体50が搭載されているスピンドルモータ20の回転制御を行う。
【0081】
ディスク状記録媒体50としては、記録面にウォブリングされて形成されたトラックを有する光ディスクが用いられる。光学ヘッド102は、レーザダイオード等の光源、レーザ光を集光する対物レンズ、ディスク状光記録媒体50からの反射光を受光する受光素子、反射光を受光素子に導く光学系、フォーカシングサーボやトラッキングサーボを行うためのアクチュエータなどを有して構成される。
【0082】
ウォブル信号処理系では、光学ヘッド102から出力されてプリアンプ104で増幅された信号は、GCA106で後段回路のDレンジに合わせて振幅調整され、ウォブル抽出回路108でウォブル信号が抽出され、更にアナログフィルタ110に入力される。アナログフィルタ110では、入力された信号に対して低域及び高域の不要な信号成分が除去される。アナログフィルタ110で不要な信号成分が除去された再生信号(ウォブル信号)は、AD変換回路112に入力される。AD変換回路112からの出力信号は、アドレス復調器114に入力される。アドレス復調器114は、入力されたウォブル信号の変調信号を検出してアドレス復調を行い、後段のアドレス復号器114に出力する。アドレス復号器114は、復調データからアドレスの復号を行い、アクセス位置のアドレス情報を再生してコントローラ116に出力する。コントローラ116は、アドレス情報に基づいて光ディスク装置の信号再生系、信号記録系を制御する。PLL115は、AD変換回路112、アドレス復調器114、アドレス復号器114、及びコントローラ116で使用されるクロックを生成する機能を有する。
【0083】
本実施形態に係るA/D変換器は、例えば再生回路10に含まれるデータ読取り用のAD変換器として使用することができる。また、ウォブル信号処理系におけるAD変換回路112として使用することができる。上述したように、本実施形態に係るA/D変換器は、メタステーブル状態が生じたとしても精度良くバイナリ信号を出力できるため、特に高速動作に適しており、光ディスク装置などへ適用することができる。
【0084】
以上説明したように本実施形態によれば、A/D変換器の出力コードにおいて、コンパレータのメタステーブル状態に起因する出力コードの誤差を大幅に低減することが可能となる。従って、コンパレータがどの程度小さな電位差を検出できるかの目安となる最小オーバードライブ電圧を大きくし、メタステーブル状態に陥る可能性を増やしたとしても、エラーを確実に救済することができる。従って、MCLを低電力、かつ、面積も小さく実装可能となる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】高速で動作する A/D 換器として、3ビットのバイナリコードを出力するフラッシュ型A/D変換器の構成を示す模式図である。
【図2】図1のA/D変換器において、アナログ入力信号AinがVr3とVr4の間の電位である場合を示す模式図である。
【図3】図1のA/D変換器においてバブルエラーが発生した状態を示す模式図である。
【図4】図1のA/D変換器に多数決回路AVG0〜6を挿入した例を示す模式図である。
【図5】多数決回路をブロックレベルで記述した模式図である。
【図6】図4のA/D変換器において、メタステーブル状態に起因するエラーが生じた状態を示す模式図である。
【図7】メタステーブル“m”を出力したコンパレータがCMPiである場合に、AVGi-1、AVGi、AVGi+1からの出力を示す模式図である。
【図8】CMOSインバータからなる反転回路において、論理しきい値を高くする原理を示す模式図である。
【図9】図6の状態において、AVG2〜AVG4に入力されたメタステーブル状態“m”がゲートレベルで不定値“x”を伝播させる様子を示す模式図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る多数決回路の構成を詳細に示す模式図である。
【図11】サイクリック温度計コードの出力を示す模式図である。
【図12】サイクリック温度計コードに対応した多数決回路の構成を示す模式図である。
【図13】サイクリック温度計コードにおいて、“1”が下位から積み上がる場合にメタステーブル状態に起因する不定値“x”が伝播する経路を示す模式図である。
【図14】サイクリック温度計コードにおいて、“0”が下位から積み上がる場合にメタステーブル状態に起因する不定値“x”が伝播する経路を示す模式図である。
【図15】サイクリック温度計コード用の多数決回路の構成を示す模式図である。
【図16】本実施形態のA/D変換器が適用される光ディスク装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
100 コンパレータ部
200 論理境界検出部
AVG0〜AVG6 多数決回路
SEL0,SEL1 セレクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、A/D変換器。
【請求項2】
前記多数決回路は複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたことを特徴とする、請求項1に記載のA/D変換器。
【請求項3】
前記多数決回路には3つの比較器の出力が入力され、
前記3つの比較器のうち、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、残りの2つの比較器のうちの一方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも低く設定され、残りの2つの比較器のうちの他方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも高く設定されたことを特徴とする、請求項1に記載のA/D変換器。
【請求項4】
前記多数決回路は、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、前記残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるセレクタを含むことを特徴とする、請求項2に記載のA/D変換器。
【請求項5】
前記セレクタは複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたことを特徴とする、請求項4に記載のA/D変換器。
【請求項6】
光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、
前記受光部から検出された信号から再生信号を取得する再生回路と、
前記再生回路に含まれるA/D変換器と、を備え、
前記A/D変換器は、
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、情報記録再生装置。
【請求項7】
光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、
前記受光部から検出された信号からウォブル信号を取得するウォブル信号抽出回路と、
前記ウォブル信号抽出回路に含まれるA/D変換器と、を備え、
前記A/D変換器は、
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、情報記録再生装置。
【請求項1】
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、A/D変換器。
【請求項2】
前記多数決回路は複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたことを特徴とする、請求項1に記載のA/D変換器。
【請求項3】
前記多数決回路には3つの比較器の出力が入力され、
前記3つの比較器のうち、基準電圧が中間の比較器から入力を受ける端子の論理しきい値が基準しきい値とされ、残りの2つの比較器のうちの一方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも低く設定され、残りの2つの比較器のうちの他方から入力を受ける端子の論理しきい値が前記基準しきい値よりも高く設定されたことを特徴とする、請求項1に記載のA/D変換器。
【請求項4】
前記多数決回路は、前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力の最上位または最下位の出力に応じて、前記残りの2つの比較器の出力が入力される端子を相互に入れ換えるセレクタを含むことを特徴とする、請求項2に記載のA/D変換器。
【請求項5】
前記セレクタは複数のMOSトランジスタから構成され、MOSトランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を可変することで、前記論理しきい値が調整されたことを特徴とする、請求項4に記載のA/D変換器。
【請求項6】
光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、
前記受光部から検出された信号から再生信号を取得する再生回路と、
前記再生回路に含まれるA/D変換器と、を備え、
前記A/D変換器は、
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、情報記録再生装置。
【請求項7】
光記録媒体のトラックに光を照射し、受光部で前記光記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップと、
前記受光部から検出された信号からウォブル信号を取得するウォブル信号抽出回路と、
前記ウォブル信号抽出回路に含まれるA/D変換器と、を備え、
前記A/D変換器は、
複数の基準電圧のそれぞれとアナログ入力値との大小関係を比較する複数の比較器と、
前記基準電圧の大きさに応じて並べられた前記複数の比較器の出力において、出力が切り換わる論理境界点を検出する論理境界検出部と、
連続する前記基準電圧に対応した複数の比較器の出力が入力され、各比較器からの入力を受ける端子毎に論理しきい値が調整され、多数決判定により出力を決定する多数決回路と、
を備えることを特徴とする、情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−147648(P2009−147648A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322461(P2007−322461)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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