説明

A34およびA33様3DNA、タンパク質、それらに対する抗体、ならびに同一物を使用した治療方法

ポリヌクレオチド分子ならびにポリペプチド分子であるA34およびA33様3について記載し、さらにポリペプチド分子A34およびA33様3に対する抗体を記載する。さらにまた、これらのポリペプチドを発現する癌を検出する方法、前記癌を診断する方法およびキット、ならびに患者における癌の作用を阻害する方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A34およびA33様3ポリペプチド、およびこれらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびそれらのヌクレオチドおよびポリペプチドフラグメント、ならびにそれらのアンチセンス配列に関する。本発明はさらにまた、A34抗原および/またはA33様3抗原に特異的に結合する免疫グロブリン産物、ならびにそれらのCDRおよび可変領域に関する。本発明はさらにまた、そのような免疫グロブリン産物を用いて患者における癌を阻害する方法、およびそのような免疫グロブリン産物を含む組成物、ならびに癌を検出するキットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医学は、疾患に対する伝統的な治療法に分子生物学の進歩が交わることによって疑う余地なく質的に向上してきた。詳細には、免疫学は明確に特徴付けられた特異的抗体の提供によって、様々な疾患、特に腫瘍性疾患の治療にとって新たな希望を提供してきた。抗体は、特異的作用部位を標的にできるために治療薬として重要になっている。例えば、癌細胞は、特定抗体に対する結合部位または抗原である「マーカー」タンパク質を有していることがある。
【0003】
従来、抗体は、実験動物に長期にわたって対象抗原を注入することによって実験動物(通常はマウスまたはウサギ)中で産生されていた。(免疫グロブリンの構造および生合成に関する一般的考察については、ダブリュ・イー・ポール(W.E. Paul)、「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」,Raven Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1993年またはジェーンウェイ(Janeway)ら,「免疫生物学:健康および疾患における免疫系(Immunobiology The Immune System In Health and Disease)」,Garland Publishing、ニューヨーク州ニューヨーク、2001年などの標準的な免疫学の教科書を参照されたい。)外来抗原は免疫応答を生じさせた;次に、結果として生じる抗体を血液から精製することができた。しかし、このアプローチには限界がある。様々な種由来の抗体のin vivo使用は、潜在的な致死的応答を誘導することがある(例えば、マウス抗体をヒトに注入するとヒト抗マウス抗体応答−「HAMA」反応を引き起こすことがある。例えば、シッフ(Schiff)ら,Cancer Research 45:879−885(1985年)を参照)。さらに、非ヒト抗体はヒト補体または細胞性毒性を刺激するには有効性が低いであろう。
【0004】
分子生物学は、さらにこれらの問題に対する解答も提供し始めている。現在
では、これらの問題に対処するためにキメラ抗体および組換え抗体が使用されている。キメラ抗体は、様々な種由来の抗体の部分を結合することによって免疫グロブリン産物の成分の性質を活用する。例えば、マウス由来の可変領域をヒト由来の定常領域と結び付けることができる。その後に組換えDNA技術を使用して様々な成分を切断およびスプライシングすると、機能的免疫グロブリン産物が形成される。抗体の有用性を免疫グロブリン産物へ拡大するためのまた別のアプローチは、「CDR grafting」として知られる技術である。この方法では、相補性決定領域「CDR」だけがヒト抗体フレームワーク内に挿入される。さらにこのアプローチは、ヒト可変領域内の重要なマウス抗体残基を置換することによって微調整することさえできる。その標的抗原への抗体の結合は、その重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)を通して媒介されるが、重鎖のCDR3の役割が特に重要である(シウ(Xu)およびデイヴィス(Davis),Immunity,13:37−45,2000年)。そのようなヒト化抗体の使用および産生についての研究は今も続けられているが、これらの技術は一般には現在使用段階にある。米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;第5,585,089号;および第5,859,205号は、そのような技術の例を記載している。
【0005】
非ヒトタンパク質配列に対して起こり得る免疫原性応答の問題を回避するためのまた別のアプローチでは、完全ヒト抗体が使用されている。完全ヒト抗体を調製する方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、完全ヒト抗体はマウス免疫グロブリンではなくヒト免疫グロブリンを発現するトランスジェニックマウスを免役することによって調製できる。そのようなマウスにおける抗体応答は、直接的に完全ヒト抗体を産生する。そのようなマウスの例には、ゼノマウス(Xenomouse(商標))(アブジェニクス(Abgenix)社)およびHuMAb−Mouse@(メダレックス(Medarex)社)が含まれる。さらに米国特許第6,207,418号、第6,150,584号、第6,111,166号、第6,075,181号、第5,922,545号、第5,545,806号および第5,569,825号も参照されたい。抗体は、次に例えば標準ハイブリドーマ技術などの標準技術、またはファージディスプレイ法(下記を参照)によって調製できる。その場合、これらの抗体は完全ヒトアミノ酸配列しか含有していない。
【0006】
完全ヒト抗体を含むモノクローナル抗体は、ファージディスプレイライブラリーから生産および単離することもできる。ファージディスプレイライブラリーの構築およびスクリーニング法は当技術分野においてよく知られているが、例えばマークス(Marks)ら,J. Mol. Biol. 222(3):581−597(1991年);フーゲンブーム(Hoogenboom)ら,J.Mol.Biol., 227(2):381−388(1992年);ならびに米国特許第5,885,793号および第5,969,108号を参照されたい。
【0007】
次の参考文献は、そのような完全ヒト抗体およびファージディスプレイ法に関する例である:マークス(Marks)ら,「免疫の迂回。ファージ上でディスプレイされたV−遺伝子ライブラリー由来ヒト抗体(By−passing immunization. Human antibodies from V−gene libraries displayed on phage)」, J.Mol.Biol. 222(3):581−597(1991年);フーゲンブーム(Hoogenboom)ら,「免疫の迂回。in vitroで再編成された生殖細胞系VH遺伝子セグメントの合成レパートリー由来ヒト抗体(By−passing immunisation. Human antibodies from synthetic repertoires of germline VH gene segments rearranged in vitro)」, J.Mol.Biol. 227(2):381−388(1992年)。
【0008】
治療用モノクローナル抗体の有効性を改善するために、例えばそれらのin vivoエフェクター機能の強化、それらと細胞毒性物質または放射性核種との直接的結合、および前標的化プロドラッグでの、そのような結合物質の活性化、並びにモノクローナル抗体療法と従来型の化学療法措置との併用などの新規のストラテジーが導入されてきた。これらの第二世代モノクローナル抗体を使用する大規模臨床試験は現在進行中であるが、一部は癌治療のためのFDA承認を獲得しており、中でも最も注目に値するのは、乳癌治療のための抗c−erbB−2/Her2neu(ハーセプチン(Herceptin))、非ホジキンリンパ腫治療のための抗CD20(リツキサン(Rituxan))、およびB細胞慢性リンパ性白血病治療のための抗CD52(Campath)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新しい、治療上重要な細胞表面標的分子の発見は、モノクローナル抗体技術における急速な進歩に遅れを取っており、これに関して進んでいるのはほんの少数の抗原標的だけである。これは、ヒトゲノム、トランスクリプトーム、およびプロテオームの解析から生じる遺伝子発見における極めて重大な進歩を考えると特に当てはまる。これとは対照的に、活性特異的癌免疫療法、すなわち癌ワクチンのための細胞内標的の同定は最近10年間に広く行われてきた。そこで、新規の細胞表面抗原に対するヒトトランスクリプトームの発掘は高度に正当化されている。これに関連して、本発明の一部は、組織限定細胞表面タンパク質をコードする新規転写産物に対するヒト発現配列タグ(EST)データベースの探索から生じたのであるが、それはこれらがモノクローナル抗体に基づく治療法にとって新規標的となる可能性があるためである。
【0010】
A33/JAM遺伝子ファミリーには、以前から知られている少なくとも7種のタンパク質(A33、CAR、HCTX、ELAM、JAM1、JAM2、およびJAM3)が含まれている。これらのタンパク質は、一般に2つの膜貫通ドメイン(単一シグナル配列を含む)および2つのIg様ドメインによって識別される。メンバーの1つであるA33は、結腸癌と関連することが知られている。A33分子の単離および特徴解析は、米国特許第5,712,369号に記載されている。A33に対するヒト化抗体は、米国特許第5,958,412号;第6,307,026号、およびレーダー(Rader)ら,J.Biol.Chem. 275(18):13668−76(2000年)に記載されている。A33抗体を使用する方法は、米国特許第6,346,249 B1号および米国特許第6,342,587号に記載されている。これらすべての参考文献は、特に参照として本明細書に組み込まれる。
【0011】
A33に対するマウスおよびヒト化抗体を用いて、ヒトを対象とする臨床試験が実施されてきた。肝転移を伴う結腸癌患者では、131I−mAb A33の生体内分布および画像特性が研究されてきた。これらの研究は、mAb A33局在が抗原特異的であり、癌:肝比が非特異的抗体に比して特異的抗体については2.3から45倍高いことを証明した。例えば、ウェルト(Welt)ら,J.Clin.Oncol. 8:1894−1906(1990年)を参照。その後の131I−mAb A33による放射線免疫療法の第I/II相試験は、131I−mAb A33が、重度の前治療を受けていたが化学療法に対してもはや応答しない患者において穏当な抗癌作用を及ぼすことを証明した。例えば、ウェルト(Welt)ら,J.Clin.Oncol. 12:1561−1571(1994年)を参照されたい。
【0012】
A33 mAbsについての他の臨床試験およびその結果は、例えばウェルト(Welt)ら,「ヒト転移性結腸癌における抗体局在化の定量解析:モノクローナル抗体A33の第I相試験(Quantitative analysis of antibody localization in human metastatic colon cancer:a phase I study of monoclonal antibody A33)」,J.Clin. Oncol. 8(11):1894−906(1990年);およびウェルト(Welt)ら,「進行性結腸癌患者におけるヨウ素131標識モノクローナル抗体A33の第I/II相試験(Phase I/II study of iodine 131−labeled monoclonal antibody A33 in patients with advanced colon cancer)」,J.Clin.Oncol. 12(8):1561−71(1994年)に記載されている。
【0013】
しかし、A33は主として結腸癌に限定されるマーカーである。本明細書では、A33/JAMファミリーの2つの新規メンバーについて記載する。1つの新規タンパク質/遺伝子は「A34」と称する。このファミリーのもう1つの新規メンバーについても記載するが、これは「A33様3」と称する。
【0014】
「分泌タンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチド(Secreted Proteins and Polynucleotides Encoding Them)」と題するジェイコブズ(Jacobs)らの米国特許第6,312,921号は、A34と一部重複するタンパク質およびポリヌクレオチドを開示している。しかし、これらの配列はA34またはA33様3とは同一ではない;そして本発明に開示した方法とは対照的に、ジェイコブ(Jacob)が開示した使用は非特異的である。すなわち生物学的活性が特定されておらず、研究での使用、および栄養食品での使用である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、A33タンパク質と同一のタンパク質ファミリー由来の新規タンパク質、そしてこれらの新規タンパク質を認識する、およびそれらに結合する免疫グロブリン産物に関する。A33タンパク質ファミリーの2つの追加のメンバー、すなわちA34およびA33様3タンパク質を同定し、本明細書に記載した。これら3つは、それらのアミノ酸配列および発現プロファイルによって示されるように、A33/JAMファミリーのメンバーである。A34に対する抗体は、食道癌、卵巣癌、および胃癌を治療する際に特に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(用語の定義)
二重特異性抗体:二重特異性抗体は、好ましくはヒトまたはヒト化された、少なくとも2種の抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。本出願の場合、1つの結合特異性はA34またはA33様3に対してであり、もう1つの結合特異性はいずれか他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質もしくは受容体もしくは受容体サブユニットに対してである。
【0017】
二重特異性抗体を作製する方法は当技術分野において知られている。従来的には、二重特異性抗体の組換え産生は2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づいており、このとき2本の重鎖は相違する特異性を有する[ミルスタイン(Milstein)およびクエロ(Cuello),Nature,305:537−539(1983年)]。組換えDNA技術を使用して二重特異性抗体または二重特異性抗体フラグメントを生成する方法もまた当技術分野においてよく知られている[クリアンクム(Kriangkum)ら,Biomol Eng. 2001 Sep;18(2):31−40]。
【0018】
癌:制御できない細胞成長および/又は増殖を特徴とする多数の疾患のいずれか1種。その例は、新生物、腺癌、上皮性癌、腫瘍、白血病などである。
【0019】
CDR:免疫グロブリン分子の部分である相補性決定領域。各重鎖および軽鎖において存在する、典型的には各々3つのCDRが存在する。
【0020】
エピトープ:免疫グロブリン産物によって特異的に認識される分子の一部分(一般には1つのタンパク質であるが、いずれの成分であってもよい)。
【0021】
フラグメント:当技術分野において、免疫グロブリンまたは抗体の様々なフラグメント、すなわちFab、Fab、F(ab’)、F、F、F、scFvsなどが知られている。Fabフラグメントは、一緒に共有結合して1種の抗原に特異的に結合できる、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域の免疫学的に活性部分から構成される多量体タンパク質である。Fabフラグメントは、無傷免疫グロブリン分子のタンパク質分解性開裂(例えば、パパインを用いて)を介して生産される。Fabフラグメントは、2つの連結したFabフラグメントを含んでいる。これら2つのフラグメントが免疫グロブリンヒンジ領域によって連結されると、F(ab’)フラグメントが生じる。Fフラグメントは、一緒に共有結合して1種の抗原に特異的に結合できる、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域の免疫学的に活性部分から構成される多量体タンパク質である。フラグメントは、軽鎖可変領域を1つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、もしくは関連する重鎖成分を含まずに軽鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメント、または重鎖可変領域を1つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、もしくは関連する軽鎖成分を含まずに重鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメント;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体であってよく、これは例えば米国特許第6,248,516号に記載されている。Fフラグメントまたは単一領域(ドメイン)フラグメントは、典型的には関連する同定された領域の宿主細胞系内での発現によって生成される。これらやその他の免疫グロブリンまたは抗体フラグメントは本発明の範囲内に含まれており、ポール(Paul)、Fundamental Immunologyまたはジェーンウェイ(Janeway)ら,Immunobiology(上記で言及した)などの免疫学の標準的な教科書に記載されている。分子生物学を利用すると、現在ではこれらのフラグメントの直接的合成(細胞内での発現または化学的)ならびにそれらの組み合わせの合成が可能である。抗体または免疫グロブリンのフラグメントはさらにまた、上記に記載した二重特異性機能を有することができる。
【0022】
免疫グロブリン分子(Ig):1クラスのタンパク質分子は、1つ以上の免疫グロブリンドメインを有する体液(例、血漿、初乳、および涙)中に存在する。典型的には、単量体免疫グロブリン分子は4本のポリペプチド鎖を含む。これら4本の鎖は2本の同一重鎖および2本の同一軽鎖であり、ジスルフィド結合によって連結されてY字形単量体抗体分子を形成している。
【0023】
免疫グロブリンスーパーファミリー分子:免疫グロブリンまたは免疫グロブリンドメインに高度に類似するドメインサイズおよびアミノ酸配列を有する分子。この類似度の有意性は、コンピュータプログラム(例えば、デイホフ(Dayhoff)ら,Meth. Enzymol. 91:524−545(1983年)によって記載されたプログラムであるAlign)によって決定される。Alignコンピュータプログラムのスコアが3未満である場合は、その分子が免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示している。その例には、IgM、IgD、IgG、IgA、またはIgE、軽鎖κおよびλ、主要組織適合性抗原など由来の免疫グロブリン重鎖が含まれる。
【0024】
多量体タンパク質:相互に結び付いて特定のタンパク質ユニットを生成する1以上の別個のポリペプチドまたはタンパク質鎖を含有するタンパク質。これらの単位は同一であっても相違していてもよい。すなわちホモダイマーおよびヘテロダイマーのどちらも包含される。
【0025】
ポリペプチドおよびペプチド:隣接アミノ酸のαアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって共有結合したアミノ酸の直鎖系。
【0026】
タンパク質:前記アミノ酸が隣接アミノ酸のαアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって共有結合している約50アミノ酸より長い直鎖系。
【0027】
治療有効量:治療の経過においてそれを必要とする患者に投与される組成物の量。有効成分の量および濃度は医学および生物医学分野の当業者の技術の範囲内に含まれ、治療を必要とする患者の年齢、健康、体重、身長、総合的健康状態、疾患状態、または他に摂取している薬剤が考慮に入れられる。
【0028】
療法または治療:患者における疾患の作用の全部または一部を阻害する、低減させる、緩和する、および/または改善する方法。治療には、現在は症状を経験していないが、その疾患のリスク状態にある、またはその可能性がある患者における疾患発生の予防が含まれる。
【0029】
本発明は、単離A34およびA33様3タンパク質および/またはポリペプチド分子、並びにこれらのタンパク質および/またはポリペプチド分子をコードする単離ポリヌクレオチド分子を含む。本発明は、さらにこれらのタンパク質および/またはそのエピトープ、に結合する単離免疫グロブリン産物ならびに可変領域および/またはCDRを含むそれらの様々なフラグメントも含む。
【0030】
本発明によるタンパク質および/または免疫グロブリン産物は、天然起源から単離できる、または宿主細胞中で組換え産生することができる。当業者に知られている保存的置換、すなわち実質的に類似の配列を生じさせる置換は、本発明の範囲内に含まれる。保存的置換は、置換前の分子に比較して分子の特性を重大には変化させないそれらのアミノ酸または核酸の置換である。本発明の実質的に類似の核酸フラグメントは、さらにまた当業者によって一般的に使用されるアルゴリズムによって決定されるような、本明細書に開示したアミノ酸配列に対するそれらがコードするアミノ酸配列の同一性率によって特性付けることができる。
【0031】
本明細書で使用する用語「保存的置換」は、他の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。したがって、本発明の状況では、保存的置換は当技術分野において1つのアミノ酸の類似の特性を有する他のアミノ酸に対する置換であると認識されていると理解されたい。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水性残基と他の残基との置換、あるいはアルギニンとリシン、グルタミン酸とアスパラギン酸、またはグルタミンとアスパラギンなどの1つの極性残基と他の残基との置換が含まれる。相互に置換できる天然親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが含まれる。用語「保存的置換」にはさらにまた、未置換親アミノ酸の代わりの置換アミノ酸の使用が含まれる。
【0032】
代表的な保存的置換は、国際特許出願第97/09433号からの下記の表1に記載されている。
【0033】
【表1】

【0034】
あるいは、保存的アミノ酸は下記の表2に記載されているように、レーニンガー(Lehninger)、Biochemistry、第二版;Worth Publishers社, ニューヨーク州ニューヨーク(1975年)、第71−77頁に記載されているように分類できる。
【0035】
【表2】

【0036】
代表的な保存的置換は、下記の表3に記載されている。
【0037】
【表3】

【0038】
所望であれば、本発明のペプチドは、本発明のポリペプチドの、例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、もしくはリン酸化によって、酸付加塩、アミド、エステル、特にはC末端エステル、の作製によって、およびN−アシル誘導体によって修飾できる。ペプチドは、さらにまた他の成分との共有または非共有複合体を形成することによってペプチド誘導体を作製するために修飾できる。共有結合複合体は、ペプチドを含むアミノ酸の側鎖上の官能基へ、またはN末端もしくはC末端で化学成分を連結させることによって調製できる。
【0039】
詳細には、上記のペプチドは、放射性同位体標識、蛍光標識、酵素(例えば、比色もしくは蛍光反応を触媒する酵素)、基質、固体マトリックス、または担体(例、ビオチンまたはアビジン)を含むがそれらに限定されないレポーター基へ結合できることが予想されている。
【0040】
適切な核酸フラグメント(本発明の単離ポリヌクレオチド)は、本明細書で報告したアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一であるポリペプチドをコードする。好ましい核酸フラグメントは、本明細書で報告したアミノ酸配列に対して約85%同一であるアミノ酸配列をコードする。より好ましい核酸フラグメントは、本明細書で報告したアミノ酸配列に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列をコードする。最も好ましいのは、本明細書で報告したアミノ酸配列に対して少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸フラグメントである。適切な核酸フラグメントは、上記の同一性を有するだけではなく、典型的には少なくとも50アミノ酸、好ましくは少なくとも100アミノ酸、より好ましくは少なくとも150アミノ酸、さらにいっそうより好ましくは少なくとも200アミノ酸、および最も好ましくは少なくとも250アミノ酸を有するポリペプチドをコードする。さらに本発明には、本発明の単離ポリヌクレオチドのアンチセンス配列が含まれる。
【0041】
配列アライメントおよび同一性率の計算は、例えばLASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR社、ウィスコンシン州マディソン)を使用して実施できる。配列マルチプルアライメントは、デフォルトパラメータ(ギャップペナルティ(GAP PENALTY)=10、ギャップ長ペナルティ(GAP LENGTH PENALTY)=10)を用いて、Clustal法(Higgins and Sharp(1989年)、CABIOS. 5:151−153)を使用して実施できる。Clustal法を使用したペアワイズアライメントのデフォルトパラメータは、例えばKTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であってよい。
【0042】
本明細書に示したマルチプル配列アライメントに対しては、ギャップオープンペナルティ(GAP OPEN PENALTY)=10およびギャップ伸長ペナルティ(GAP EXTENSION PENALTY)=0.05に基づくClustal(http://clustalw.genome.ad.jp/で見いだされる)デフォルト設定を利用した。本明細書に示したペアワイズアライメントのためには、GAP OPEN PENALTY=11およびGAP EXTENSION PENALTY=1に基づく、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.html)で見いだされる)のためのデフォルト設定を使用した。
【0043】
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的部分」は、アミノ酸またはヌクレオチド配列が含むタンパク質または遺伝子の推定同一性を得るために十分なアミノ酸またはヌクレオチド配列を含んでいる。アミノ酸およびヌクレオチド配列は、当業者によって手作業で、またはBLAST(Basic Local Alignment Search Tool(基本的局所アライメント検索ツール);アルチュル(Altschul)ら,J.Mol.Biol. 215:403−410(1993年);www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/も参照)などのアルゴリズムを使用するコンピュータによる配列比較および同定ツールを使用することによって評価できる。
【0044】
一般に、ポリペプチドもしくは核酸配列が既知のタンパク質または遺伝子と相同であると推定同定するためには、10個以上の連続アミノ酸または30個以上の連続ヌクレオチドの配列が必要である。さらにその上、ヌクレオチド配列に関して、30個以上の連続ヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子同定(例、サザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのインサイチュー・ハイブリダイゼーション)の配列依存方法において使用できる。さらに、12個以上のヌクレオチドを含む短いオリゴヌクレオチドは、PCRにおける増幅プライマーとして、そのプライマーを含む特定核酸フラグメントを入手するために使用できる。
【0045】
したがって、ヌクレオチド配列の「実質的部分」は、その配列を含む核酸フラグメントの特異的同定および/または単離を生じるヌクレオチド配列を含む。本明細書は、A34およびA33様3を含むポリペプチドをコードするアミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。本明細書に報告した配列を利用できる当業者は、当業者に知られている目的に本明細書に開示された配列の全部または実質的部分を使用することができる。したがって、本発明は添付の図面および配列表に報告した完全配列、並びに上記に定義したそれらの配列の実質的部分、およびそれらのアンチセンス配列を含む。
【0046】
「コドンの縮重」は、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなくヌクレオチド配列の変化を許容する遺伝子コードにおける相違を意味する。したがって、本発明には本明細書に記載したアミノ酸配列の全部または実質的部分をコードするヌクレオチド配列を含む核酸フラグメントが含まれる。当業者は、所定のアミノ酸を特定するためのヌクレオチドコドンの使用における特異的宿主細胞によって示される「コドン偏位(codon bias)」をよく知っている。このため、宿主細胞中での発現を向上させるために核酸フラグメントを合成する場合には、コドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近づくように核酸フラグメントを設計するのが望ましい。
【0047】
免疫グロブリン分子は、抗体、Fフラグメント、Fフラグメント、Fフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFvsフラグメント、一本鎖抗体、多量体抗体、またはそれらの組み合わせであってよい。免疫グロブリン分子は、レポーターもしくは化学療法剤分子へ連結させられてよい、または追加のフラグメントへ結合させられてよい、そして単量体もしくは多量体産物であってよい。免疫グロブリン分子は、さらにまた可変領域および/またはCDRの全部または一部を含むように組換え生産することもできる。
【0048】
本発明の1種以上のタンパク質/1種以上の抗体は、A34および/またはA33様3ポリペプチドもしくはポリヌクレオチド分子を検出して、これらのタンパク質のいずれかを発現する癌の存在についての正確な診断を患者に提供することを可能にする。本発明による検出方法およびキットは、当技術分野において知られているいずれかの方法でA34およびA33様3分子を検出することができる。例えば、A34およびA33様3の発現は、直接的に、例えばPCRに基づく技術によってmRNAもしくはアンチセンステクノロジーを介して検出できる、または発現したタンパク質に結合する物質は、例えば前記A34およびA33様3分子に結合して複合体を生成する抗体もしくはポリペプチドフラグメントを用いて直接的に検出できる。複合体を形成できる抗体もしくはポリペプチドフラグメントは、複合体の検出を容易にするために標識と連結させることができる。そのような標識は当技術分野においてよく知られており、例えば放射能標識および蛍光標識が含まれる。
【0049】
結合した複合体は、A34タンパク質に対する親和性を備える免疫グロブリン分子を含んでいる。この親和性は、例えば表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))またはその他のバイオセンサーシステムによって測定されるように、約50nM、または好ましくは約5nMより大きい可能性がある。
【0050】
本発明は、癌細胞中のA34抗原の存在を特徴とする癌を診断する方法を含んでおり、この方法は対象細胞のサンプルを入手するステップと;前記サンプルとA34抗原に特異的に結合する物質とをA34/物質複合体が形成されるように接触させるステップと;および前記複合体の存在または不在を検出するステップであって、前記複合体の存在が癌陽性の診断を示すステップと、を含む。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、癌性状態の退行、進行、または発症を決定するための方法を含んでおり、この方法は対象サンプルを入手するステップと;前記サンプルとA34抗原に特異的に結合する少なくとも1種の物質とをA34/物質複合体が形成されるように接触させるステップと;および前記複合体の存在、不在または変化を検出するステップであって、前記複合体の存在、不在または発現レベルの変化が癌の進行、退行または発症の診断を示すステップと、を含むA34抗原の存在、不在、または発現レベルの変化について前記癌性状態を備える患者からのサンプルをモニターするステップを含む。
【0052】
さらにまた別の実施形態では、本発明は、A34を発現する癌細胞がサンプル中に存在するかどうかを決定するための方法を含むが、この方法は対象サンプルとA34をコードする核酸分子へ特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを接触させるステップであって、前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子の核酸分子へのハイブリダイゼーションが前記サンプル中でのA34を発現する癌細胞の指標であるステップと;およびそのようなハイブリダイゼーションの存在または不在を検出するステップであって、前記ハイブリダイゼーションの存在がA34を発現する癌細胞の存在を示すステップと、を含む。
【0053】
本発明によるキットは、一般に少なくとも1つのA34およびA33様3分子と複合体を形成する適切な物質(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子のどちらか)および対象サンプル中で複合体を形成かつ検出する方法についての取扱説明書を含む。
【0054】
一般に、患者は哺乳動物である;好ましくは、患者はヒトである。
【0055】
本発明による免疫グロブリン産物のまた別の利点は、A34および/またはA33様3タンパク質を発現する癌または新生物の治療方法にある。これらの癌を検出することに加えて、本発明の免疫グロブリンを使用すると、本発明の免疫グロブリン産物を単独で、または医薬上許容される担体と一緒に、または別の抗癌剤と併用して投与することにより、前記癌および新生物を治療するため、または前記癌および新生物の作用を低下させるために使用できる。本発明の免疫グロブリン産物が追加の抗癌剤と併用して投与されると、その複合体は癌細胞を特異的に標的とするので、したがって健常組織の損傷を最小限に抑えながら抗癌剤の治療能力を最大限に発揮する。
【0056】
(図面の簡単な説明)
以下では、添付の図面に示した代表的実施形態を参照しながら、本発明についてより詳細に記載する。
【0057】
図1は、24種の正常組織中のA34 mRNAのエンドポイントRT−PCR発現を示した図である。
【0058】
図2は、リアルタイムPCRを使用して正常組織および悪性組織でのA34発現の解析を示した図である。
【0059】
図3は、全長A34アミノ酸配列(配列番号1)およびA34とA33(配列番号2)とのアミノ酸配列比較を示した図である。
【0060】
図4は、最初に入手したA34のポリヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)を示した図である。
【0061】
図5は、追加のA34クローンポリヌクレオチド配列(配列番号5)およびアミノ酸配列(配列番号6)を示した図である。
【0062】
図6は、A33様3のポリヌクレオチド配列(配列番号7)およびアミノ酸配列(配列番号8)を示した図である。
【0063】
図7は、追加のA33様3(配列番号9)およびA33(配列番号10)のアミノ酸配列比較を示した図である。
【0064】
図8は、mAb 342を用いた正常結腸粘膜および正常胃粘膜のウェスタンブロットを示した図である。
【0065】
図9は、正常精巣でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0066】
図10は、正常精巣でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0067】
図11は、正常胃粘膜/表面上皮でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0068】
図12は、正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0069】
図13は、正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0070】
図14は、正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0071】
図15は、正常膵臓でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0072】
図16は、正常膵臓でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0073】
図17は、胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0074】
図18は、胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0075】
図19は、胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0076】
図20は、胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図である。
【0077】
図21は、209−970と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図である。CDRは影付き囲みの中に下線付きで表示した。
【0078】
図22は、209−564と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図である。CDRは影付き囲みおよび下線付きで表示した。
【0079】
図23は、209−342と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図である。
【0080】
図24は、3つのA34抗体クローンについてのCDR領域のアミノ酸配列(配列番号32−49)を示した図である。
【0081】
図25は、全長A34ヌクレオチド配列(配列番号50)を示した図である。
【0082】
図25は、全長A34アミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。
【0083】
(発明の概要)
本発明は、A33タンパク質と同一のタンパク質ファミリー由来の新規タンパク質、そしてこれらの新規タンパク質を認識する、およびそれらに結合する免疫グロブリン産物に関する。A33タンパク質ファミリーの2つの追加のメンバー、すなわちA34およびA33様3タンパク質を同定し、本明細書に記載した。これら3つは、それらのアミノ酸配列および発現プロファイルによって示されるように、A33/JAMファミリーのメンバーである。A34に対する抗体は、食道癌、卵巣癌、および胃癌を治療する際に特に重要である。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
逆転写およびPCRのための一般的な材料および方法
【0085】
腫瘍組織は、Cornell大学Weill Medical College Memorial Sloan−Kettering癌センターおよび日本の名古屋市立愛知がんセンター、研究センターから入手した。正常組織RNA調製物はクローンテック ラボラトリー(Clontech Laboratories)社(カリフォルニア州パロアルト)およびAmbion社(テキサス州オースティン)から購入した。腫瘍組織からのトータルRNAはグアニジンチオシアネート法によって調製した。
【0086】
様々な正常組織由来の規準化cDNA調製物は、クローンテック ラボラトリー(Clontech laboratories)社(カリフォルニア州パロアルト)から購入した。その他のcDNA調製物(腫瘍組織および正常組織)は、インビトロジェン ライフ テクノロジー(Invitrogen Life Technologies)社(カリフォルニア州カールズバッド)製のスーパースクリプトファーストストランド合成キット(Superscript First strand synthesis kit)を使用して、製造業者の取扱説明書にしたがって40mL反応液中で5μgのトータルRNAを使用して調製した。正常組織cDNAは、オリジーン テクノロジー(Origene Technologies)社(メリーランド州ロックビル)からも購入した。これは、図1に示したエンドポイントRT−PCRデータに使用した24種の組織についてのcDNAパネルの入手源である。
【0087】
正常組織中のA33、A34およびA33様3 mRNA転写物の濃度は、リアルタイムPCRによって、6種のハウスキーピング遺伝子(クローンテック(Clontech)社)に対して規準化されている16種の正常組織cDNA調製物(卵巣、白血球、前立腺、脾臓、精巣、胸腺、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、胎盤、骨格筋、膵臓、小腸および結腸)を使用して測定した。遺伝子特異的TaqManプローブおよびPCRプライマーは、プライマー発現ソフトウエア(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用して設計した。それらの配列は以下に提供する。
【0088】
マルチプレックスPCR反応は、1.25μLのVic標識ヒトβグルクロニダーゼ(GUS)内因性コントロールプローブ/プライマーミックス(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製の専売色素)、200nMの6−カルボキシ−フルオレセイン標識遺伝子特異的TaqManプローブ、ならびに濃度900nMの遺伝子特異的フォワードプライマーおよびリバースプライマー(300−900nM)を補充したTaqMan PCR Master Mix中で希釈した2.5μLのcDNAを使用して調製した。各cDNAサンプルについてトリプリケートPCR(Triplicate PCR)反応液を調製した。PCRは、95℃での変性(15秒間)および60℃でのアニーリング/伸長(60秒間)の40サイクルから構成した。
【0089】
熱サイクリングおよび蛍光モニタリングはABI 7700型配列解析装置(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社)を使用して実施した。サイクル閾値(cycle threshold:Ct)と呼ばれる固定閾値(fixed threshold)の上方でPCR産物が最初に検出される点を各サンプルについて測定した。正常組織中の遺伝子特異的転写物の存在度は、例えばA33、A34および/またはA33様3をコードするプラスミドDNAテンプレートの既知の濃度のCt値から作成した標準曲線との比較によって決定した。
【0090】
様々な癌標本および追加の正常組織(乳房、胃、食道、子宮頚部、副腎)に存在する対象の特異的転写物(すなわち、A34、A33様3など)の量は、同様に調製した正常精巣cDNA標本と比較して計算した。これらの実験では、結果として生じるCt値は、GUS内因性コントロールから入手したCt値を差し引くことによって最初に規準化した(DCt=Ct FAM−Ct VIC)。
【0091】
様々な癌標本および追加の正常組織(実験サンプル)中の対象mRNA(すなわち、A34、A33様3など)の濃度は、実験サンプルを用いて入手した規準化Ct値から正常組織を用いて入手した規準化Ct値を差し引く(A34については、正常精巣を用いて入手した規準化Ct値を差し引く)ことによって正常精巣と比較して計算し(DDCt=実験サンプルのDCt−正常組織のDC)、そして相対濃度を決定した(相対濃度=2−DDCt(Applied Biosystems社によって導き出され、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System User Bulletin #2, 12/11/97に公表された式)。
【0092】
次に標準物質として規準化精巣cDNA調製物(クローンテック(Clontech)社)を使用して、実験サンプル中の相対濃度をcDNA出発物質(fg)に関してブロットした。例えば、A34 mRNAは胃癌標本#5中では精巣で検出されたレベルの0.387倍のレベルで発現し、規準化した正常精巣標本中のA34の発現レベルは3.38fgのcDNA出発物質と等価であった。標準物質として正常精巣中の発現レベルを使用すると、胃癌標本#5は1.31fgのcDNA出発物質と等価のレベルで発現した(0.387×3.38)。
【0093】
(実施例2)
A34遺伝子およびそのマウスオルソログ
【0094】
ヒトゲノムデータベースの解析によってA34遺伝子は染色体Xq22.1−22.3へマッピングされたが、高類似度の配列は判明せず、これはA34がさらなる追加のファミリーメンバーを有していない単一コピー遺伝子であることを示唆していた。A34遺伝子は長さがおよそ34Kbであり、染色体Xゲノム連続配列NT 011765の塩基対117203−151283と等価である。A34遺伝子は7エクソンに及び、それによりエクソン1は5’非翻訳領域およびシグナル配列の大部分をコードし、エクソン2および3は可変(V)免疫グロブリン(Ig)様ドメインをコードし、エクソン4および5は定常型2(C)Ig様ドメインをコードし、エクソン6は膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの大部分をコードし、そしてエクソン7は細胞質ドメインの残りおよび3’非翻訳領域をコードする。このイントロン/エクソン構造は、A33遺伝子のイントロン/エクソン構造に極めて類似している。
【0095】
A34の推定マウスオルソログは、ヌクレオチド類似度、相同ESTの組織分布、タンパク質類似度、染色体局在、および遺伝子構造に基づいて同定した。ヒトA34ヌクレオチド配列とマウスESTデータベースとの比較は、マウスUnigeneクラスターMm.66893に属するEST配列との83%を超えるヌクレオチド同一性を示した。現在、Unigeneクラスター内には、正常精巣由来の23EST、正常胃由来の6ESTおよび正常盲腸由来の2ESTを含む31配列が存在する。この組織分布は、ヒトA34 EST配列の組織分布に極めて類似している。
【0096】
全長マウスESTクローンであるRIKEN cDNA 4930405J24(Genbank受託番号NM 030181)は、このマウス遺伝子にとって基準cDNA配列である。この転写物は2182ヌクレオチドから構成されており、ヒトA34と73%同一であり(330アミノ酸が重複する)、ヒトA34ドメイン構造、すなわち細胞外V型およびC型Ig様ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを維持している407アミノ酸のタンパク質をコードする。細胞外システイン残基はヒトおよびマウスタンパク質間で保存されており、そしてヒトA34と同様に、6つの潜在的N−グリコシル化部位がある。細胞内ドメインはタンパク質の最少保存部分であるが、ヒトA34と同様に、EP反復配列が推定マウスタンパク質の細胞内ドメインのカルボキシル末端残基内で見いだされる。マウスA34遺伝子はマウス染色体Xゲノム連続配列NT039716の塩基対5534868−5566206と等価で長さがおよそ31Kbであり、そして上記に記載したヒトA34の7エクソンと同一タンパク質ドメインをコードする7エクソンに及ぶ。
【0097】
(実施例3)
以下のプライマーを使用して、正常組織でのA34 mRNA発現を実施例1の実験方法にしたがってRT−PCRによる最初の実験で調査した:
ACTGTTGGATCTAATGTCAC A33L2F、塩基対222(配列番号11)
AAGGTTTCACTAACACACTG A33L2R、塩基対543(配列番号12)
【0098】
これらの結果は、A34が精巣および胃では発現することを証明したが、試験した他の22種の正常組織のいずれにおいても有意な発現は見いだされなかった。図1を参照(24種の正常組織についてのOrigene cDNAパネルを使用した)。
【0099】
引き続いて、348アミノ酸(配列番号6)をコードする1045塩基対のA34クローン(配列番号5)を入手した。入手したタンパク質は一部分であったが、その配列はアミノ末端最多48アミノ酸(細胞外ドメインの一部である)およびカルボキシル末端最多48アミノ酸(細胞内ドメインの一部である)を除く全部を含んでいる。
【0100】
リアルタイムRT−PCRを使用した正常組織および腫瘍組織に対する詳細な発現分析には、次のプライマー:
L2f=GAAGGAGATGGAGCCAATTTCTATT(配列番号13)
L2r=CCTGTAATTCGATCTTTAAATTGCC(配列番号14)
を利用し、さらに次のTaqmanプローブも使用した:
6FAM−CTTTTCTCAAGGTGGACAAGCTGTAGCCATC−TAMARA(配列番号15)。実験は、実施例1に記載した実験方法と同様に実施した。実施例2では、レポーター色素としてのVICまたはFAMとともに、TAMARAをクエンチャー色素として使用したが、当業者に知られているあらゆるクエンチャー/レポーターシステムもまた使用できる。
【0101】
この実験は精巣および胃での有意なA34発現を示したが、他の19種の標本は低から微量レベルのA34発現を示した。これらの結果は図2にグラフ表示した。A34はさらに、表4に示したように、胃癌6例中2例、食道癌16例中9例、および卵巣癌17例中4例において高レベルで発現した。この差次的発現は、抗体などの免疫グロブリン分子、および/または抗体−薬剤複合物もしくは抗体―放射性核種複合物などの抱合(conjugated)免疫グロブリン分子を用いてターゲッティングすることによって治療または診断のために活用できる。差次的発現は、さらにまたA34核酸発現を測定する際にPCRなどの技術を使用することによって診断のために活用することもできる。
【0102】
【表4】

【0103】
A34 mRNA転写物の発現プロファイル
【0104】
A34mRNAの発現パターンを調査するために、21種の正常成体組織および種々の悪性組織由来の規準化cDNAパネルを使用して、リアルタイム定量的RT−PCRを実施した。図2に示したように、A34 mRNAは精巣(3.4fg)および胃(7.4fg)では高レベルで、正常膵臓(0.07fg)中では低レベルで発現した。他の13種の正常組織(脾臓、PBL、胸腺、脳、心臓、肝臓、肺、胎盤、小腸、乳房、食道、副腎、子宮頚部(cervix))では微量レベル(0.03−0.001fg)のmRNAしか検出されなかった。残り5種の正常組織(卵巣、前立腺、結腸、腎臓、および骨格筋)中では、A34 mRNAは検出されなかった。様々な悪性組織由来の規準化cDNAパネル中でもA34 mRNA発現について試験した。図2に示したように、胃癌標本6例中2例、食道癌標本16例中8例、および卵巣癌標本17例中4例では高レベルA34 mRNA発現(0.5fg以上)が検出された。A34 mRNAは、肺癌(0/9標本)、結腸癌(0/5標本)、または乳癌(0/13標本)では検出されなかった。そこで、試験したcDNAパネルでは、A34 mRNAの発現は主として正常精巣および胃、並びに卵巣癌、胃癌および食道癌に限定された。
【0105】
(実施例4)
A34mRNA転写物の同定
【0106】
ヒトの癌に対するモノクローナル抗体に基づく治療法の新規標的として役立つであろうA33結腸癌抗原のパラログを同定するために、アミノ酸配列糖タンパク質A33を翻訳非冗長ヌクレオチドデータベース:(tblastn, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)と比較した。
【0107】
A34と称する新規転写物が同定されたが、これは仮説的翻訳を行うと推定シグナル配列、免疫グロブリン(Ig)様ドメインおよび、細胞表面タンパク質をコードすることを示唆する膜貫通ドメインの限定された保存を含んでA33との31%のアミノ酸同一性を示した。A34転写物は、全長精巣由来cDNAクローン、MGC:44287(Genbank受託番号BC043216)、並びに主に正常精巣(7EST)由来、およびさらに正常胃(2EST)、正常大動脈(1EST)、子宮癌(2EST)、膵臓癌(1EST)、およびプール組織(2EST)由来の他の15種の相同発現配列タグ(EST)を含有するUnigeneクラスターHs.177164(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)によって示めされた。限定された相同ESTの分布は、A34転写物が差次的に発現することを示唆した。
【0108】
ヒトゲノムデータベースの分析(http:/www.ncbi.nlm.nih.gov/genome)はA34をコードする遺伝子を染色体Xq22.1へマッピングした。そこで、A34は、その発現が配偶子形成(gametogenic)組織および癌に限定され、そして治療用癌ワクチンにとっての標的分子と見なされる免疫原性タンパク質のグループである癌/精巣(CT)抗原ファミリーのメンバーと精巣由来ESTの有病率および染色体Xへのマッピングなどの一定の特徴を共有している。このため、A33結腸癌抗原との類似度、相同ESTの限定された組織分布、およびCT抗原との類似度に基づいて、A34遺伝子産物は癌で発現する新規の細胞表面分子に関する本発明者らの研究の焦点となった。
【0109】
精巣由来cDNAクローンであるMGC:44287によって示めされる全長A34転写物は、32P標識A34 cDNAプローブを用いてハイブリダイズした精巣mRNAのノーザンブロットで検出された3.1Kbの単一ハイブリダイゼーションシグナルと一致する長さである3017ヌクレオチドから構成される(図25を参照)。MGC:44287によって表されるようなA34転写物は、122塩基対の5’非翻訳配列および1731塩基対の3’非翻訳配列を含有している。A34ヌクレオチド配列は、追加の全長A34 ESTクローン、IMAGE:5266771、ならびにヒト精巣RNAのRT−PCRによって生成したA34の全タンパク質コーディング領域を含む4種の独立cDNAクローンをシーケンシングすることにより検証した。どちらのストラテジーもタンパク質コーディング領域においてMGC:44287と同一であるcDNA配列を産生したが、IMAGE:5266771はMGC:44287のヌクレオチド1702−2413に対応する3’非翻訳領域において712塩基対欠失を含有していた。
【0110】
A34タンパク質
【0111】
初期の実験は、A34(配列番号3)が387アミノ酸のタンパク質(配列番号4)をコードすることを証明した。引き続いて上記で詳述したA34転写物のクローニングは、完全タンパク質およびDNAを解明した(配列番号1および50を参照)。
【0112】
予想ATG開始部位は、タンパク質翻訳の開始のためのKozakコンセンサス配列に適合するクローンMGC:44287の塩基対123で現れ、そして最長の可能性がある1161塩基対のオープンリーディングフレームが続く。A34タンパク質は、3つの構造ドメイン:233アミノ酸の細胞外ドメイン、23アミノ酸の膜貫通ドメイン、および131アミノ酸の細胞内ドメインを含む387アミノ酸(Mr.41,816)から構成された(図3)。最初のメチオニン残基に続いて、N末端最多21アミノ酸は残基21と22との間の切断可能部位を含む推定疎水性シグナル配列を形成した。アミノ酸残基33−123は、ジスルフィド結合を形成することが予測される2つのシステイン残基(C43、C116)を含有するN末端、V型Ig様ドメインを含んでいた。31アミノ酸のセグメントは、2つのシステイン残基(C16l、C211)を含有する残基154−218に存在するC型の第2のIg様ドメインからV型Ig様ドメインを分離した。
【0113】
A34の細胞外ドメインは6つの潜在的N結合グリコシル化部位を有する。オリゴ糖鎖の平均サイズがおよそ2.5kDaであることを前提にすると、A34の糖部分は潜在的におよそ15kDaの質量に寄与し、従って天然A34タンパク質の予想サイズ(2.3kDaのシグナルペプチドより小さい)は54.4kDaである。疎水性プロットおよび膜貫通ドメイン予測ソフトウエア:
http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/sosuiframe0.htmlおよび
http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM/)は膜貫通ドメインを、その後に残基257−387を包含するC末端細胞内ドメインが続く残基234−256に位置つけた。A34細胞内ドメインは、7つの潜在的セリン/トレオニンリン酸化部位(カゼインキナーゼIIリン酸化部位)、および1つのGSK3リン酸化部位を含有していた。2つのTRAF2−結合コンセンサスモチーフは、アミノ酸314−317および324−327に存在する。さらに、A34のカルボキシル末端ではグルタミン酸/プロリン反復配列(EP)の独特のパターンが見いだされる。このパターンは、造血系細胞特異的タンパク質(HS1)およびsrc基質タンパク質p85/コータクチンの他の既知ヒトタンパク質でのみ見いだされる。
【0114】
A34のドメイン組織およびアミノ酸配列はそれをジャンクション接着分子(JAM)ファミリー内に置いた。JAMファミリーには、細胞−細胞接着を媒介し、上皮細胞および内皮細胞のタイトジャンクションに局在すると考えられるGPA33、コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CXADR)、皮質性胸腺細胞受容体様タンパク質(cortical thymocyte receptor−like protein:CTXL)、JAM1/F11受容体、JAM2、およびJAM3/Mac−1受容体などの分子が含まれる。メンバーは、2つの細胞外Ig様ドメイン(V型およびC型)、細胞外ドメイン内の保存されたシステイン残基、および単一膜貫通ドメインによって特徴付けられる。A34ドメイン構造は類似の組織を有する。A34およびA33のアライメントは図3に提供されている。A34アミノ酸配列は、細胞外ドメインにおける少なくとも4/6システイン残基の保存を伴って、CTXL(244アミノ酸の重複)、A33(262アミノ酸の重複)、JAM2(232アミノ酸の重複)、CXADR(259アミノ酸の重複)、JAM1(270アミノ酸の重複)、およびJAM3(113アミノ酸の重複)と各々35%、32%、28%、26%、25%、および27%同一である。
【0115】
A34は41.8kDaの予想分子量を有するが、これはA33とは32%同一およびA33と49%類似である。他のA33/JAMファミリータンパク質との比較については表5を参照(類似度率はBLASTによって入手した)。
【0116】
A34は、染色体Xq22.1−22.3上のunigeneクラスターHs. 177164内に位置づけられた。A34アミノ酸配列は、親水性シグナル(リーダー配列)残基2−21、2つのIg様ドメイン(残基33−123、および154−218)、ならびに単一の膜貫通ドメイン(残基234−256)を含有している。
【0117】
【表5】

【0118】
A34を含むJAMファミリーの細胞内ドメインの保存は不良である。例えば、A34の細胞内ドメインは131アミノ酸から構成されるが、A33の細胞内ドメインは60アミノ酸から構成され、2つの細胞内ドメイン間で組成における有意な類似度は見られない(図3)。
【0119】
A34抗体:
【0120】
A34タンパク質をin vivoおよびin vitroで調査するために、A34の細胞外ドメイン(アミノ酸35−231)に対してマウスモノクローナル抗体を生成した。A34の細胞外ドメイン由来の209アミノ酸(23kDa)を含む組換えHISタグ組換えポリペプチドを産生した。マウスをこの組換えポリペプチドで免役し、3種のIgG1モノクローナル抗体を単離し(342、564、および970であると同定した)、そしてミリグラム量で精製した。
【0121】
3種のIgG1モノクローナル抗体に対応するハイブリドーマから標準RNA単離技術(Chomczynski & Sacchi,Anal.Biochem. 1987 162:156−159)によってトータルRNAを抽出した。1本鎖cDNAは1本鎖cDNA合成キット(Pharmacia Biotech社)を使用して調製し、重鎖および軽鎖のどちらに対してもd(T)18を用いてプライミングした(レンナー(Renner)ら,Biotechniques 1998年 24(5):720−2)。マウス重鎖および軽鎖に対する標準プライマーの組み合わせを使用してこのcDNAをPCRにかけた。重鎖および軽鎖可変領域に対するPCR産物は、TA Cloning System(インビトロジェン(Invitrogen)社、カリフォルニア州カールスバッド)を使用してクローニングし、引き続いて標準方法を用いてシーケンシングした。3種のマウス抗体の可変領域およびCDR領域の配列は図21−24に示した。
【0122】
図8に示したように、モノクローナル抗体342はウェスタンブロットにおいてヒト胃粘膜から調製した51kDaタンパク質を認識した。このタンパク質は、ヒト結腸粘膜から調製した類似の可溶化液中には存在していなかった。ウェスタンブロットによって検出されたA34タンパク質の51kDaサイズは、A34 cDNAの仮定翻訳および予想糖寄与により決定された54.4kDAの予想サイズと一致している。
【0123】
A34の予備免疫組織化学的分析を下記の通りにホルマリン固定パラフィン包埋組織について実施した。
【0124】
最初は、ELISAによって陽性であった4つの抗体クローンを免疫組織化学的検査(IHC)によって分析した。最初に既知のA34mRNA発現を示した冷凍組織について反応性を試験し、新しく生成したハイブリドーマ上清の様々な希釈液について試験した。これらの組織は、OCT(最適切断温度)化合物中に包埋した急速冷凍標本であった。5mm切片を低温アセトン中で10分間固定し、3% Hを使用して内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害を実施した。予備抗体インキュベーションを5℃で一晩実施した。一次抗体はビオチン化ウマ抗マウス(Vector, Labs社、カリフォルニア州バーリンゲーム)二次抗体、その後にアビジン−ビオチン複合体(ABC−Elite、Vector Labs社)システムによって検出した。3,3’−ジアミノベンジジン(Liquid DAB, BioGenex社、カリフォルニア州サンラモン)を色素原として機能させ、ヘマトキシリンを対比染色色素として使用した。
【0125】
次に反応性クローンを精製し、組織標本上でのIHC滴定によって最適作業濃度を確立した。4種中3種(342、970、564)のハイブリドーマクローンは冷凍胃および精巣組織で反応性を示し、希釈率はこれら全3種のクローンについて1:20であった。これらのクローンを精製し、再び滴定すると、1.0μg/mLで良好な染色が明らかになった。
【0126】
第2ステップでは、スチーマーおよび種々の抗原回収溶液から構成される抗原回収技術を使用して冷凍組織での3種の陽性クローンをホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織ブロック上で試験した。一次抗体のインキュベーションおよび検出は、冷凍組織を用いた場合と同様に実施した。1パネルの正常組織ならびに胃癌を分析した。ホルマリン固定パラフィン包埋組織では、最高の染色は、Tris酢酸塩(TA)緩衝液(pH 8.0、lmM)中において93℃で30分間スライドを加熱するステップを使用する抗原回収技術を使用して達成した。全3種のクローンは類似の染色を示し、その後の分析のためには342を選択した。
【0127】
結果
【0128】
正常組織では、免疫反応性は主として胃および精巣に存在した。胃では、粘膜で強度の染色が観察された。ほとんどは表面上皮から分化した腺(specialized gland)の底部にまで達する全上皮細胞成分の膜性およびさらに細胞質の染色であった(図11−14)。精巣では、全ての細管(tubule)に存在した生殖細胞の細胞質染色を観察することができた(図9−10)。膵臓では、管上皮の限局的な染色がときどき見られた(図15−16)。結腸、食道、小腸、肺、肝臓、皮膚および腎臓などの他の正常組織中では染色は存在しなかった。
【0129】
20種の正常組織のパネルでは、A34は胃粘膜(図11−14)、精巣(図9−10)で観察できたが、膵臓(図15−16)でははるかに小さな程度で観察された。胃では、上皮細胞が粘膜全体で染色された。他の組織成分は染色されなかった。粘膜細胞は、典型的な膜性染色パターンを示した。類似の染色パターンが膵臓の管上皮細胞で観察されたが、しかし、膵臓では限局的な細胞だけが免疫陽性であった。
【0130】
精巣では、完全に生殖細胞から構成される反応性染色パターンが観察された。精巣間質組織では染色は観察されなかった。
【0131】
胃癌、卵巣癌および食道癌の限定されたグループでは、A34は腫瘍細胞のほとんどが不均一な標識化またはときどきは均一な標識化を示した。正常組織と同様に、免疫反応性パターンは膜性であった。
【0132】
下記の表は、A34クローン342を用いて胃癌細胞、卵巣癌細胞、および食道癌細胞について実施した免疫組織化学的分析の結果を表形式で表したものである。“Neg”は陰性反応、+記号は染色された腫瘍細胞のパーセンテージを示している。限局性:〜<5%(極めて少数の細胞に対して);+:>5−25%;++>25−50%;+++>50−75%;および++++>75%。この等級付けは再現性であり、文献で見られる標準方法に適合している。
【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
表9は、A34抗体クローン342によって検出されるような正常組織でのA34タンパク質発現についての免疫組織化学的分析を示している。試験した組織の大半は陰性であった。胃および精巣は陽性であった。
【0137】
【表9】

【0138】
(実施例5)
ヒトおよびマウス両方のA34転写物の胃/精巣関連発現プロファイルは、これらの2種のオルソログの発現がそれらの対応するプロモーターにおける類似の調節配列の制御下にあることを示した。ヒトおよびマウスA34開始部位の上流に位置するDNA配列の比較は、推定開始部位の1から600位でのオルソログ遺伝子間で64%ヌクレオチド同一性を解明した(1から300の推定開始部位の80%同一性)。これらの領域はA34プロモーター領域を構成する可能性がある。
【0139】
ヒトおよびマウスA33遺伝子と同様に、これらの推定A34プロモーターは開始部位の25−30塩基対内でTATA boxが欠如しており、これはmRNA転写がTATA配列からは独立しているが、ヒトおよびマウスATG開始部位の上流67位および70位に位置するCAAT boxを含んでいることを示している。3種の組織特異的転写因子に対する結合部位は、腸特異的ホメオボックス転写因子CDX1、ならびに2種の精巣関連転写因子SRYおよびSOX−5を含むヒトおよびマウスA34オルソログ間で高度に保存されている。A33オルソログにおいても見いだされるCDX1結合部位は、ヒトおよびマウスATG開始部位、各々の上流の236および233各々で存在する。2種の精巣関連転写因子に対する結合部位SRYおよびSOX−5は相互に重複し、各々ヒトおよびマウスATG開始部位の上流294および288位で見いだされている。推定A34プロモーターにおけるこれら3種の転写因子に対する結合部位の存在は、A34の胃/精巣関連mRNA発現プロファイルと一致している。
【0140】
ヒトA34プロモーター領域
【0141】
GGTAGTGACAACTGCCAGTGTTTCAAAAAAGAGTAACATATCC
AGAGTTTGTTCACACAGAAATGAATGCTTTTTAGCTTCATAACCCCTGT
GCCCTTCCCGTGAGCCCCATCTCCCCAGGAAACGATATAGTACCAATTT
ACTAACTTAATTTGTAAAAGGAGGTTAGTGAATCAATTCTGTAAGACTC
ATGGAAATATTTGAAATTAATTAGCCTTGTCAGCTTTTATTTGCATAGG
CTCTCTTCCAACCATATCCCCCAGCCCAAGTACAACGTTTTAGTAAGAT
TGATTTTAAACAATGAGACTTAGAGAATCTGTGTACAAGGAGCTTGAAT
AATTTAAATGCGTGGGTTTATTATTAACACAGTAGCAAATATATCAAGG
AAACACGCCCCATGAAAAGTGTTTCAAAGAAACACAAATCTGTACTGAA
AAAAGTCTATACGCAATAAGTAAGCCCAAAGAGGCATGTTTGCTTGGC
GATGCCCAGCAGATAAGCCAGGCAAACCTCGGTGTGATCGAAGAAGCC
AATTTGAGACTCAGCCTAGTCCAGGCAAGCTACTGGCACCTGCTGCTCT
CAACTAACCTCCACACAATG(配列番号:16)
【0142】
マウスA34プロモーター領域
【0143】
GGATTTGCTGACAGTCCAATCACTGGAAAGTGTTACTGGAAAT
GCCTTATTAGAGTTGAGATTTTTAGCCTGGGACTGGTACAAATTATTAC
ATAGGATGAAGGAGAAAGAAACCCAGGAGACCATTCAGGAAGCTGTTG
CTTTAGGCTAACGTAATATCTAGAACAAAATGGAAGCAGCAGGTTGGA
GATGGGACAAATCTACCATTCACTTTAGAAGCAGCAGGACCAAGATAT
CTTATGGGAAGAACTGGAGGAGGCCCTCCAAGTACAACTTTCTTTTTTT
AAAAAGGGTTGATTTTAAACAATGTAACCTAAGAGAATCTGTGTACAAA
GAACTGAAAGGATTTAAGTGCGTGGTTTATTATTAACACAGTAGCAAAT
ATATCAAGGGGACACACCCCGGGGGAAAAGGGTTTCAAATAAACACAG
ATTTGTTCAGAGAGAACTCAGTGCCCAATAAGCAAGCGTAAGGAGGCC
TATTTGCTTGGTGATGCCCAGCCGATAAGCCAGGCTGTGACTGAAGAA
GCCAATTTGAAACTCAGCCTAGTTCAGGCAGCCTTCGGACTGGCACCT
GCTGCTCCAAGCGACTTTCAGCATG(配列番号:17)
【0144】
ATG開始コドンは、マウスおよびヒト配列中で下線が付けられている。
【0145】
(実施例6)
A33様3(配列番号7)は、ヒト染色体1上の>gi|18547605|ref|XM_089096.1|に位置し、コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体様タンパク質との類似度を有している。A33様3ポリペプチド分子(配列番号8)の重量はおよそ40,085Da(およそ370アミノ酸)であり、これはA33と27%同一で、A33と40%類似である(アルゴリズム、すなわちBLASTもしくは類似プログラムを使用するコンピュータによる配列比較および同定ツールを使用して)。
【0146】
A33様3タンパク質はアミノ酸4−26に伸びる1つの膜貫通ドメインを有し、そしてアミノ酸37−128および160−241へ伸びる2つのIg様ドメインを有している。表10は、A33様3と新規ポリペプチドA34を含む他のファミリーメンバーとの比較を示している。
【0147】
【表10】

【0148】
正常組織中でのA33様mRNA発現は、以下のプライマーを使用して実施例1の実験方法によってRT−PCRによる最初の実験で調査した:
TGCCCATGTGCTGGACAGAG、
A33L3F、733塩基対(配列番号18)
CACGTTGTTGGCCACTGTGC、
A33L3R、1025塩基対(配列番号19)
【0149】
(実施例7)
組換えタンパク質A34およびA33様3、またはそのフラグメントは適切な単離cDNA配列から産生する。マウス、ウサギ、または他の適切な哺乳動物を少なくとも1種の組換えもしくは単離A34タンパク質(全体または適切な抗原性フラグメントのどちらか)で免役し、抗体を産生し、そして以前に言及した参考文献に詳述されていて当業者に知られている標準技術によって精製する。
【0150】
(実施例8)
A34および/またはA33様3抗原を標的とする抗体は、診断および治療の両方の目的に使用される。治療目的では、例えばADCCおよび/またはCDC応答を刺激して腫瘍に対する免疫反応を引き出すことによって、裸の(非結合)抗体自体を治療薬として使用される。治療および/または診断の両方の目的では、A34および/またはA33様3特異的抗体は放射性同位体または化学療法剤もしくは細胞毒性剤と結合させられる。放射性同位体は、例えば125I、131I、99Tc、90Yおよび111Inまたはいずれか他のγ、αもしくはβ放射体である。当業者であれば、抗体と放射性同位体とを結合させるためには、例えば米国特許第5,160,723号および第5,851,526号に記載されているような多数の方法が適切であることを理解できる。
【0151】
A34および/またはA33様3抗原に結合する抗体は任意で少なくとも1種の化学療法剤と、または少なくとも1種の細胞毒性剤と結合させることができる、あるいはそのような物質と併用することができる。例えば、抗体はQFA(葉酸代謝拮抗薬)、BCNU、メルカプトプリン、メトトレキセート、ドセタキセル、アドリアマイシンまたはカリケアミシンと結合することができる、またはそれらと一緒に併用療法で使用することができる。これらはすべてよく知られている化学療法剤または細胞毒性剤であり、これらと抗体を含むタンパク質との結合ならびに併用は例えばヘルストローム(Hellstrom)ら,Methods Mol. Biol. 166:3−16(2001年);シーヴァース(Sievers)ら, Curr.Opin.Oncol. 13(6):522−7(2001);ワイナー(Winer)ら,Oncology 61 Suppl. 2:50−7(2001年)に記載されている。
【0152】
抗体、またはそれらのフラグメントもまたいずれかの細胞毒素、細菌またはその他、例えばシュードモナス外毒素、リシン、もしくはジフテリア毒素などに結合させられてよい、または組換え融合させられてよい。使用される毒素の部分は毒素全体であってよい、またはその毒素のいずれか特定のドメインであってもよい。そのような抗体−毒素分子はこれまで様々な種類の癌を標的として治療のために使用され、良好な成果が得られている。例えばパスタン(Pastan),Biochim.Biophys.Acta.,1333(2):C1−6(1997年10月24日);クライトマン(Kreitman)ら,New Engl.J.Med. 345(4):241−247(2001年);シュネル(Schnell)ら,Leukemia 14(1):129−35(2000)およびゲティ(Ghetie)ら,Mol.Biotechnol.,18(3):251−68(2001年)を参照されたい。
【0153】
例えばADEPTアプローチのように、酵素、およびプロドラッグなどのその他の結合パートナーを本発明において使用される抗体に結合させることもできる。例えばシウ(Xu)ら,Clin Cancer Res. 7(11):3314−24(2001年)を参照されたい。本発明において有用な複合物を生成するためには、抗体複合物を調製するために当技術分野において知られている方法を使用することができる。細胞毒性剤もしくは化学療法剤と抱合したA34もしくはA33様3特異的抗体は、それを必要とする患者に、非抱合形態のA34もしくはA33様3特異的抗体の投与前、投与後、または同時に投与することができる。
【0154】
薬物複合物などについて記載している例は、下記の参考文献の中に見いだされる:ヘルストローム(Hellstrom)ら,「BR96−ドキソルビシン免疫複合物の発生および活性(Development and activities of the BR96−doxorubicin immunoconjugate)」,Methods Mol Biol. 166:3−16(2001年);シーヴァース(Sievers)ら,「Mylotarg:抗体を標的とする化学療法の成熟(Mylotarg:antibody−targeted chemotherapy comes of age)」, Curr Opin Oncol. 13(6):522−7(2001年);ワイナー(Winer)ら,「転移性乳癌におけるハーセプチンの新しい組み合わせ(New combinations with Herceptin in metastatic breast cancer)」,Oncology 61 Suppl. 2:50−7(2001年);パスタン・アイ(Pastan I.),「組換え免疫毒素を用いた癌のターゲティング療法(Targeted therapy of cancer with recombinant immunotoxins)」,Biochim Biophys Acta. 1333(2):C1−6(1997年);クライトマン(Kreitman)ら,「化学療法耐性毛様細胞性白血病における抗CD22組換え免疫毒素BL22の有効性(Efficacy of the anti−CD22 recombinant immunotoxin BL22 in chemotherapy−resistant hairy−cell leukemia)」, New Engl.J.Med. 345(4):241−7(2001年);シュネル(Schnell)ら,「抗CD25リシンA鎖免疫毒素を用いた難治性ホジキンリンパ腫患者の治療(Treatment of refractory Hodgkin’s lymphoma patients with an anti−CD25 ricin A−chain immunotoxin)」,Leukemia 14(1):129−35(2000年);ゲティ(Ghetie)ら,「免疫毒素の化学構造(Chemical construction of immunotoxins)」,Mol Biotechnol. 18(3):251−68(2001年);シウ(Xu)ら,「酵素/プロドラッグ抗癌療法のための戦略(Strategies for enzyme/prodrug cancer therapy)」,Clin.Cancer Res. 7(11):3314−24(2001年);ハドソン(Hudson)ら,「癌の診断および療法のための組換え抗体(Recombinant antibodies for cancer diagnosis and therapy)」,Expert Opin.Biol.Ther. 1(5):845−55(2001年)。
【0155】
(実施例9)
A34および/またはA33様3に結合するヒト化抗体、完全ヒト抗体、および/またはキメラ抗体および/または免疫グロブリン産物は、他の抗癌療法と併用するターゲティング剤として使用される。それを必要とする患者に、抗体、フラグメント、またはその他の免疫グロブリン産物を追加の抗癌剤と連結させ、生成した治療有効量の複合物が投与される。あるいは、その物質は検出用の標識と結合させられる。標識の例には、放射性同位体および蛍光マーカーが含まれる。その結合は、本質的に共有結合またはイオン結合であってよい。
【0156】
(実施例10)
さらにヒト化抗体を作製するために、当技術分野において知られている分子生物学技術によってA34および/またはA33様3に結合するこれらの抗体、またはそれらの抗原活性フラグメントは操作される。これらの抗体は完全ヒトまたは部分ヒトであってよい。
【0157】
(実施例11)
A34および/またはA33様3に結合するヒト化抗体、完全ヒト抗体、および/またはキメラ抗体および/または免疫グロブリン産物、あるいはA34および/またはA33様3の少なくとも1つに結合する適切な抗原性フラグメントは、放射性同位体、化学療法剤、サイトカイン、細胞毒性剤、または他の免疫グロブリン産物などの他の物質と組み合わせられる、または結合される。この結合はイオン結合または共役結合であってよく、当技術分野において知られている方法によって形成する(上記に挙げた参考文献を参照)。
【0158】
(実施例12)
少なくとも1種の免疫グロブリン産物の組成物(抗体、フラグメント、若しくは他の物質に結合した免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせのいずれか)は、治療有効量の前記免疫グロブリン産物と医薬上許容される担体とを組み合わせることによって形成されるが、このとき前記少なくとも1種の免疫グロブリン産物はA34および/またはA33様3の少なくとも1つと結合する。この組成物は次にそれを必要とする患者(すなわち、ヒトまたは他の哺乳動物)に投与される。
【0159】
そのような患者は、免疫グロブリン産物が結合する抗原(すなわち、A34またはA33様3)を発現する腫瘍疾患などの疾患を患っている。
【0160】
少なくとも1種の免疫グロブリン産物(抗体、フラグメント、もしくは他の物質に結合した免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせのいずれか)を備える組成物、または治療措置は、治療有効量の前記免疫グロブリン産物と化学療法剤とを組み合わせることによって形成されるが、このとき前記少なくとも1種の免疫グロブリン産物はA34および/またはA33様3の少なくとも1つと結合する。化学療法剤は、A34および/またはA33様3特異的免疫グロブリン産物が患者に投与される前に、同時に、あるいは投与された後に投与することができる。そのような組み合わせに使用できる化学療法剤の例は、オキサリプラチン、イリノテカン、トポテカン、カルムスチン、ビンクリスチン、ロイコボリン、ストレプトゾシン、Orzel(商標)およびフルオロピリミジン系、例えば5−フルオロウラシル、フトラフルール、カペシタビン、ゲムシタビン、フロキシウリジンおよびフルオリチン、ならびに他のヌクレオシドアナログ、およびビンブラスチン、ナベルビン、およびビンゾリジンを含むがそれらに限定されないビンカアルカロイドアナログ、トポテカンおよびカンプトテシンを含むがそれらに限定されないトポイソメラーゼI阻害剤、ならびにシスプラチンおよびカルボプラチンを含むがそれらに限定されない他の白金アナログである、がそれらに限定されない。
【0161】
少なくとも1種の免疫グロブリン産物を備える組成物、または治療措置(抗体、フラグメント、もしくは他の物質に結合した免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせのいずれか)は、前記免疫グロブリン産物とA34および/またはA33様3抗原に対して特異的ではない他の免疫グロブリンとを組み合わせることによって形成されるが、このとき前記少なくとも1種の免疫グロブリン産物はA34および/またはA33様3の少なくとも1つと結合する。そのような他の免疫グロブリンの例はセツキシマブ(エルビタックス:Erbitux(商標)、イムクローン システムズ(ImClone Systems)社)およびトラスツズマブ(ハープセプチン:Herceptin(商標)、ジェネンテック(Genentech)社)のような、上皮増殖因子受容体(EGFR)タンパク質ファミリーの受容体を標的とする抗体である。
【0162】
少なくとも1種の免疫グロブリン産物を備える組成物、または治療措置(抗体、フラグメント、もしくは他の物質に結合した免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせのいずれか)は、前記免疫グロブリン産物と小分子シグナル伝達阻害剤とを組み合わせることによって形成されるが、このとき前記少なくとも1種の免疫グロブリン産物はA34および/またはA33様3の少なくとも1つと結合する。そのような小分子シグナル伝達阻害剤の例は、メシル酸イマチニブ(グリベック:Glivec(登録商標)、ノバルティス(Novartis AG)社)およびゲフィニチブ(イレッサ:Iressa(商標)、アストラゼネカ(AstraZeneca)社)である。
【0163】
上記の説明および例は単に本発明を例示するために記載したものであり、限定することは意図していない。本発明の精神および本質を組み込んでいる本明細書に記載した実施形態の修飾は当業者であれば思い付くことであるので、本発明は添付の請求項およびその同等物の範囲内に含まれるすべての変形を含むと広く解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】24種の正常組織中のA34 mRNAのエンドポイントRT−PCR発現を示した図
【図2】リアルタイムPCRを使用して正常組織および悪性組織でのA34発現の解析を示した図
【図3】全長A34アミノ酸配列(配列番号1)およびA34とA33(配列番号2)とのアミノ酸配列比較を示した図
【図4】最初に入手したA34のポリヌクレオチド配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)を示した図
【図5】追加のA34クローンポリヌクレオチド配列(配列番号5)およびアミノ酸配列(配列番号6)を示した図
【図6】A33様3のポリヌクレオチド配列(配列番号7)およびアミノ酸配列(配列番号8)を示した図
【図7】追加のA33様3(配列番号9)およびA33(配列番号10)のアミノ酸配列比較を示した図
【図8】mAb 342を用いた正常結腸粘膜および正常胃粘膜のウェスタンブロットを示した図
【図9】正常精巣でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図10】正常精巣でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図11】正常胃粘膜/j面上皮でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図12】正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図13】正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図14】正常胃粘膜/胃底腺でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図15】正常膵臓でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図16】正常膵臓でのA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図17】胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図18】胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図19】胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図20】胃癌におけるA34発現の免疫組織化学的分析を示した図
【図21】209−970と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図であり、CDRは影付き囲みの中に下線付きで表示した図
【図22】209−564と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図であり、CDRは影付き囲みおよび下線付きで表示した図
【図23】209−342と名づけられたマウスA34可変領域軽鎖クローンおよび重鎖クローンのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示した図
【図24】3つのA34抗体クローンについてのCDR領域のアミノ酸配列(配列番号32−49)を示した図
【図25】全長A34ヌクレオチド配列(配列番号50)を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A34抗原に特異的に結合する実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項2】
前記分子が、抗体、Fフラグメント、Fフラグメント、Fフラグメント、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、scFvsフラグメント、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、または多量体抗体を含む請求項1記載の分子。
【請求項3】
前記分子が、IgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEを含む請求項1記載の分子。
【請求項4】
前記分子が、A34に対して50nMを超える親和性を有する請求項1記載の分子。
【請求項5】
前記分子が、A34に対して5nMを超える親和性を有する請求項1記載の分子。
【請求項6】
治療有効量の請求項1記載の分子および少なくとも1種の医薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項7】
抗癌剤に抱合したA34に結合する治療有効量の免疫グロブリン産物および少なくとも1種の医薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項8】
A34抗原を発現する癌の患者における作用を低減させる方法であって、前記患者にA34タンパク質に結合する治療有効量の免疫グロブリン分子を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
A34抗原を発現する癌の患者における作用を低減させる方法であって、前記患者に抗癌剤と抱合させたA34タンパク質に結合する治療有効量の免疫グロブリン産物を投与するステップを含む方法。
【請求項10】
A34タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド分子。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチド分子が少なくとも1種のプロモーターと機能的に関連して位置している、請求項10記載の単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項10記載の単離ポリヌクレオチド分子で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項13】
請求項11記載の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項14】
A34、または前記A34の抗原性フラグメントを含む単離ポリペプチド分子。
【請求項15】
前記単離ポリペプチドが、配列番号1または配列番号6を含む請求項14記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
請求項10の単離ポリヌクレオチド分子の組換え発現によって産生したポリペプチド。
【請求項17】
癌細胞におけるA34抗原の存在によって特徴付けられる癌を診断する方法であって:
対象の細胞サンプルを入手するステップと;
前記サンプルとA34抗原に特異的に結合する物質とを、A34/物質複合体が形成されるように接触させるステップと;
前記複合体の存在または不在を検出するステップであって、前記複合体の存在が癌陽性の診断を示すステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記物質が抗体、またはその免疫学的に活性なフラグメントであり、前記抗体またはフラグメントが、A34タンパク質に対して特異的である請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記物質が核酸分子であり、前記サンプルとA34の核酸分子の全部または一部にハイブリダイズする核酸分子とを接触させるステップを含む請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記癌が、卵巣癌、胃癌、または食道癌である請求項17記載の方法。
【請求項21】
癌性状態の退行、進行、または発症を決定する方法であって:
対象サンプルを入手するステップと;
前記サンプルとA34抗原に特異的に結合する少なくとも1種の物質とを、A34/物質複合体が形成されるように接触させるステップと;
前記複合体の存在、不在または変化を検出するステップであって、前記複合体の存在、不在または発現レベルの変化が癌の進行、退行または発症の診断を示すステップと、を含むA34抗原の存在、不在、または発現レベルの変化について前記癌性状態を備える患者からのサンプルを監視するステップを含む方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の物質が抗体、またはその免疫学的に活性なフラグメントであり、前記抗体またはフラグメントが、A34ポリペプチドに対して特異的である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記物質が核酸分子であり、前記サンプルとA34の核酸分子の全部または一部にハイブリダイズする核酸分子とを接触させるステップを含む請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、卵巣癌、胃癌、または食道癌である請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記免疫グロブリン分子が、ヒト化されてある請求項1から4のいずれか一項記載の免疫グロブリン分子。
【請求項26】
前記免疫グロブリン分子が、完全ヒトである請求項1から4のいずれか一項記載の免疫グロブリン分子。
【請求項27】
前記免疫グロブリン分子が、組換えである請求項1から4のいずれか一項記載の免疫グロブリン分子。
【請求項28】
少なくとも1種の抗癌剤に抱合したA34に結合する免疫グロブリン分子。
【請求項29】
前記抗癌剤が、放射性同位体、化学療法剤および細胞毒性剤からなる群から選択される請求項28記載の免疫グロブリン分子。
【請求項30】
前記物質が、125I、131I、99Tc、90Y、および111Inからなる群から選択される放射性同位体である請求項29記載の免疫グロブリン分子。
【請求項31】
前記物質が、QFA、葉酸代謝拮抗剤、BCNU(カルムスチン)、メルカプトプリン、メトトレキサート、ドセタキセル、アドリアマイシン、カリケアミシン細胞毒素、細菌毒素、シュードモナス外毒素、リシン、およびジフテリア毒素からなる群から選択される化学療法剤または細胞毒性剤を含む請求項28記載の免疫グロブリン分子。
【請求項32】
前記物質が、少なくとも1つの毒素全体または毒素の特定ドメインを含む請求項29記載の免疫グロブリン分子。
【請求項33】
A34を発現する癌細胞がサンプル中に存在するかどうかを決定する方法であって:
対象サンプルとA34をコードする核酸分子へ特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子とを接触させるステップであって、前記少なくとも1つのオリゴヌクレオチド分子の核酸分子へのハイブリダイゼーションが前記サンプルにおけるA34を発現する癌細胞の指標であるステップと;
そのようなハイブリダイゼーションの存在または不在を検出するステップであって、前記ハイブリダイゼーションの存在がA34を発現する癌細胞の存在を示すステップと、を含む方法。
【請求項34】
A34のアンチセンス配列であるポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子。
【請求項35】
該免疫グロブリン分子が、A34の細胞外部分に結合する請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項36】
少なくとも1つの可変領域を含み、前記可変領域が配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号43、配列番号46、または配列番号49からなる群から選択される少なくとも1つのCDR3配列を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項37】
少なくとも1つの重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が配列番号37、配列番号43、または配列番号49からなる群から選択される少なくとも1つのCDR3配列を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項38】
少なくとも1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が配列番号37、配列番号43、または配列番号49からなる群から選択される少なくとも1つのCDR3配列を含み;および前記軽鎖可変領域が配列番号34、配列番号40、または配列番号46から選択される少なくとも1つのCDR3配列を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項39】
配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号47、配列番号48、および配列番号49からなる群から選択される3つのCDR領域を含む重鎖可変領域を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項40】
配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号44、配列番号45、および配列番号46からなる群から選択される3つのCDR領域を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項41】
配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号47、配列番号48、および配列番号49からなる群から選択される3つのCDR領域を含む重鎖可変領域と、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号44、配列番号45、および配列番号46からなる群から選択される3つのCDR領域を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項42】
配列番号32、配列番号33、および配列番号34からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む軽鎖可変領域と、配列番号35、配列番号36、および配列番号37からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項43】
配列番号38、配列番号39、および配列番号40からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む軽鎖可変領域と、配列番号41、配列番号42、および配列番号43からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項44】
配列番号44、配列番号45、および配列番号46からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む軽鎖可変領域と、配列番号47、配列番号48、および配列番号49からなる群から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む重鎖可変領域と、を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項45】
配列番号23、配列番号27、および配列番号31から選択される少なくとも1つの重鎖可変領域を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項46】
配列番号21、配列番号25、および配列番号29から選択される少なくとも1つの軽鎖可変領域を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。
【請求項47】
配列番号23、配列番号27、および配列番号31から選択される少なくとも1つの重鎖可変領域と、および配列番号21、配列番号25、および配列番号29から選択される1つの軽鎖可変領域と、を含む、請求項1記載の実質的に純粋な免疫グロブリン分子。

【図25】全長A34アミノ酸配列(配列番号1)を示した図
【配列表】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2006−512910(P2006−512910A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547109(P2004−547109)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033707
【国際公開番号】WO2004/037999
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500025570)ルードヴィッヒ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ (16)
【Fターム(参考)】