説明

ABCA1の細胞膜上における安定化方法

【課題】本発明は、細胞膜上のABCA1を安定化する方法及び細胞膜上のABCA1を安定化物質のスクリーニング方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、SNX27とABCA1の相互作用を阻害することで、細胞膜上のABCA1の安定化を可能にする。さらに、本発明は、SNX27及びABCA1を細胞膜上に発現している細胞を用いて、SNX27とABCA1の相互作用の阻害を介して、細胞膜上のABCA1を安定化する物質のスクリーニング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABCA1を細胞膜上で安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病により引き起こされる動脈硬化症は、先進国における死因の上位を占める心臓疾患や脳卒中のリスクファクターとなることから、現代における重要な保健的課題である。これまでの研究より、血液中のLDL−コレステロール、トリグリセリドなどの脂質濃度の増加が、種々のメカニズムにより動脈硬化を進展させることが明らかにされている。従って、現在の動脈硬化の薬物療法としては、血液中のコレステロールを低下させるスタチン系薬剤、トリグリセリドを低下させるフィブラート系薬剤が用いられているが、これらの薬物療法では、日本動脈硬化学会が定める「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」や米国の診断基準であるNational Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel IIIの血液中脂質パラメータの管理目標値に到達しないことも多い。また、スタチン系薬剤では横紋筋融解症、フィブラート系薬剤では肝障害など投与患者における副作用の報告もあることから、新規薬効機序に基づく、動脈硬化症薬の開発が期待されている。
【0003】
近年、アメリカ、ヨーロッパにおける大規模な疫学調査から、血液中HDL濃度の低下が動脈硬化のリスクファクターとして示されており、血液中HDL濃度の調節機構を探ることによって新たな創薬標的を見出せるものと期待される。ABCトランスポーターファミリーに属するABCA1は、血液中HDL濃度が顕著に低下するタンジール病の原因遺伝子にコードされていることなどから、HDL合成を担う脂質トランスポーターであることが明らかにされている(非特許文献1及び非特許文献2)。また、遺伝子改変動物を用いた解析からは、その機能亢進が血液中HDL濃度を増加させ、動脈硬化の抑制に働くことが報告されている(非特許文献3)。
【0004】
発明者らは、ABCA1が属するABCトランスポーターファミリーの機能を明らかにするために、ABCトランスポーターファミリーと何らかの相互作用を行う因子の検索を行ってきた。その結果、ABCトランスポーターの1つであるMRP4のPDZ結合モチーフに相互作用し、その細胞膜発現量を制御するタンパク質として、タンパク質の細胞内ソーティングに関与するSorting nexin (SNX)familyに属すSNX27を同定した。SNX27は、他のSNXファミリーのメンバーと同様に、PXと呼ばれるドメインを有しており、このドメインを介して早期エンドソームに豊富に存在するイノシトールリン脂質(PI3P)と結合し、早期エンドソームに局在すると考えられている(非特許文献4)。SNX27は、MRP4以外にも、5−HT4(a)受容体のスプライスバリアント(非特許文献5)、ジアシルグリセロールキナーゼζ(非特許文献6)、Kir3チャネルタンパク質(非特許文献7)、CASP(非特許文献8)などとも相互作用することが報告されている。
【0005】
以上のような知見に基づいて、ABCA1が関連する疾患(例えば、動脈硬化など)の治療法や治療剤の開発が精力的に行われている。例えば、ABCA1遺伝子の転写を調節するための方法及び調節物質のスクリーニング方法(特許文献1)、ABCA1遺伝子の発現調節を介した神経系障害等の治療方法(特許文献2)、あるいは、ABCA1の発現制御等を介し脂質代謝などを改善する薬剤のスクリーニング方法(特許文献3)などがこれまでに報告されている。これに対し、SNX27については、現在のところ、疾患等との関連性などに関する詳細は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−82445
【特許文献2】WO2002/101392
【特許文献3】特許第4016280
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lewingtonら、Lancet 2007;370:1829−1839.
【非特許文献2】Wangら、J.Biol.Chem.2002;277:5692−5697.
【非特許文献3】Singarajaら、J.Biol.Chem.2001;276:33969−33979.
【非特許文献4】Worby及びDixon、Nat.Rev.Mol.Cell Biol. 2002 Dec;3(12):919−31
【非特許文献5】Joubertら、J.Cill Sci.2004;117:5367−5379.
【非特許文献6】Rinconら、Mol.Cell.Proteomics.2007;6:1073−1087.
【非特許文献7】Lunnら、Nat.Neurosci.2007;10:1249−1259.
【非特許文献8】MacNeilら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2007;359:848−853.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、ABCA1の細胞膜上における発現量調節の分子機構解明のため鋭意研究を行ったところ、ABCA1がSNX27と相互作用すること、及び、この相互作用を抑制することでABCA1を細胞膜上に安定に存在させることを初めて見出し、本発明を完成させた。
よって、本発明は、SNX27とABCA1との相互作用を調節することで、ABCA1の細胞膜上での安定性を制御する方法に関する。
また、本発明は、SNX27とABCA1との相互作用を調節することで、apoA−Iを介したコレステロールの細胞外への排泄を制御する方法に関する。さらには、本発明は、血中のHDL濃度を調節する方法に関する。
本発明は、SNX27とABCA1との相互作用を調節する物質のスクリーニング方法に関する。さらには、本発明は、血中のHDL濃度を調節する物質のスクリーニング方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、これまでにABCトランスポーターの1つであるMRP4の細胞膜発現量を制御するタンパク質としてSNX27を同定している。ABCA1はMRP4と同様にカルボキシル末端にPDZ結合モチーフを有するABCトランスポーターであることから、SNX27がMRP4と同様に、ABCA1の細胞膜発現量も制御している可能性を考え、ABCA1を内因性に発現する肝由来培養細胞であるHuh7細胞においてSNX27をノックダウンし、検討を行った。その結果、SNX27のノックダウンにより、細胞膜上に存在するABCA1の分解速度が遅延され、ABCA1の細胞膜上における発現量が増加することを始めて見出した。さらに、ABCA1の発現量増加に伴う機能亢進により、apoA−Iを介したコレステロールの細胞外排泄が増大することを見出した。
すなわち、本発明の以下の(1)〜(15)である。
(1)SNX27とABCA1の相互作用を調節し、細胞膜上のABCA1の安定性を制御する方法。
(2)SNX27とABCA1の相互作用を阻害し、細胞膜上のABCA1を安定化する方法。
(3)前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、細胞に内在するSNX27遺伝子全体を破壊することで達成されることを特徴とする上記(2)に記載の方法。
(4)前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、細胞に内在するSNX27遺伝子に突然変異を導入することで達成されることを特徴とする上記(2)に記載の方法。
(5)前記突然変異が、SNX27のPDZドメインに導入されることを特徴とする上記(4)に記載の方法。
(6)前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、RNAi法によることを特徴とする上記(2)に記載の方法。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかの記載の方法により細胞膜上のABCA1を安定化し、細胞内からのコレステロール排泄量を増大させる方法。
(8)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法により細胞膜上のABCA1が安定化した細胞。
(9)上記(7)に記載の方法により細胞内からのコレステロール排泄量が増大した細胞。
(10)上記(8)又は(9)に記載の細胞から調製したiPS細胞。
(11)上記(8)又は(9)に記載の細胞から、iPS細胞を介さずに調製した、該細胞とは異なる細胞型を有する細胞。
(12)SNX27又はその一部、ABCA1又はその一部及び試験物質を共存させてインキュベートした後、SNX27とABCA1が相互作用しているかどうかを確認することを含む、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法。
(13)SNX27及びABCA1を細胞膜上に発現している細胞を試験物質の存在下でインキュベートした後、該細胞膜上のABCA1の存在量と、試験物質の非存在下でインキュベートした細胞の細胞膜上のABCA1の存在量とを比較することを含む、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法。
(14)上記(12)又は(13)に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を試験物質として、細胞内からのコレステロールの排泄を増大させる物質をスクリーニングする方法。
(15)上記(12)又は上記(13)に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を試験物質として、血中HDL濃度を上昇させる物質をスクリーニングする方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、細胞膜上のABCA1の安定性を制御することができる。
【0011】
本発明により、細胞膜上のABCA1を安定化することができる。
【0012】
本発明により、細胞内からのapoAを介するコレステロール排泄量を増大させることができる。
【0013】
本発明により、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングすることができる。
【0014】
本発明により、細胞内からのapoAを介するコレステロール排泄量を増大させる物質をスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Aは、ABCA1とSNX27の相互作用を検討した結果を示す。Huh7細胞の細胞可溶液から、ABCA1(左図)、SNX27(右図)抗体を用いて免疫沈降(IP)を行った。得られた免疫沈降サンプルを、ABCA1検出用は6%、SNX27検出用は8.5%SDS−PAGEにかけ、ABCA1、SNX27抗体にてウェスタンブロッティング(IB)を行った。Bは、ABCA1とSNX27の相互作用におけるPDZ結合モチーフ依存性について検討した結果を示す。ABCA1をコードするDNA又はABCA1Δ4をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターをトランスフェクションしたHEK293細胞の細胞可溶液を調製し、SNX27抗体にて免疫沈降を行った。免疫沈降サンプルは、SDS−PAGE後、抗ABCA1抗体又は抗SNX27抗体でウェスタンブロッティングを行った。「Input」は、免疫沈降を行わずに調製サンプルをそのままウェスタンブロッティングに用いた結果である。「IgG」は抗SNX27抗体の代わりに非特異的なIgGを用いて行ったコントロール実験である。Cは、SNX27によるABCA1の細胞膜上における発現量制御に対するPDZ結合モチーフ依存性について検討した結果である。HEK293細胞にABCA1をコードするDNA又はABCA1Δ4をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターをトランスフェクションし、その24時間後にSNX27遺伝子を標的としたsiRNA又はコントロールのsiRNAをトランスフェクションした。siRNAのトランスフェクション48時間後に細胞可溶液の調製を行い、調製したサンプルについて、抗ABCA1抗体(IB:ABCA1)、抗SNX27抗体(IB:SNX27)によるウェスタンブロッティングを行った。
【図2】SNX27が細胞膜上のABCA1の発現量に及ぼす影響について検討した結果を示す。Huh7細胞にSNX27遺伝子を標的としたsiRNAをトランスフェクションし、その72時間後に、細胞可溶液の調製(A)と、ビオチン化による細胞膜分画の調製(B)を行った。調製したサンプルのうち、25μg(A)又は全量(B)を6%SDS−PAGEにかけ、ABCA1、SNX27抗体にてウェスタンブロッティングを行った。
【図3】ABCA1の細胞膜からの分解速度に対するSNX27の影響を示す。Huh7細胞にSNX27遺伝子を標的としたsiRNAをトランスフェクションし、その72時間後に細胞表面をビオチン化した。37℃で0、2、4、8時間培養後、細胞可溶液を調製し、ストレプタビジンビーズを用いて残存しているビオチン化タンパク質を単離した。単離したサンプルは、6%SDS−PAGEにかけ、抗ABCA1抗体にてウェスタンブロッティングを行った(A)。Aの結果に示されるABCA1のバンドの濃度を、Image gauge softwareで定量化した。各バーは3回の測定の平均値±標準誤差を表す。スチューデントテストによるcontrolとの有意差(***P<0.001、P<0.05)。
【図4】SNX27がapoA−Iをアクセプターとする細胞外へのコレステロール排泄に及ぼす影響を検討した結果を示す。「control」はコントロールのsiRNAを用いた結果を示し、「SNX27KD」はSNX27遺伝子に対するsiRNAを用いた結果を示す。「Cholesterol efflux」はCholesterol efflux =(メディウムのカウント)/(メディウムのカウント+可溶液のカウント)より算出し、「apoA−I mediated choresterol efflux」はapoA−I添加時、非添加時のcholesterol efflux値の差分から評価した。
【図5】SNX27とオルガネラマーカーとの共局在を確認した結果を示す。COS1細胞を固定、可溶化し、オルガネラマーカー抗体((A)EEA1、(B)TGN38、(C)LAMP−1)及びSNX27抗体(中図)にて免疫染色を行った。左図は、オルガネラマーカー抗体による結果。中図は、SNX27抗体による結果。右図は、左図と中図を併せた図。
【図6】SNX27とGFP融合Rabファミリータンパク質との共局在を確認した結果を示す。COS1細胞に、Rab4(A)、Rab5(B)、Rab7(C)及びRab11(D)を発現させるAcGFP発現ベクターをトランスフェクションし、その48時間後に細胞を固定、可溶化し、SNX27抗体にて免疫染色を行った。左図はAcGFP−Rabタンパク質の局在を、中図はSNX27の局在を示した図である。右図は左図と中図を併せた図。
【図7】SNX27と蛍光標識トランスフェリン(Tf)との共局在を確認した結果を示す。COS1細胞をAlexa594−Tf(0.1mg/mL)で、0、2、10、30及び60分間、37℃で培養した。左図はSNX27の局在を、中図は、Alexa594−Tfの局在を示す。右図は左図と中図を併せた図。
【図8】細胞膜分画におけるSNX27の発現確認結果を示す。HEK293細胞の細胞膜分画をビオチン化により調製した。調製したサンプルを8%SDS−PAGEにかけ、SNX27、HRS、EEA1及びMRP4抗体にてウェスタンブロッティングを行った。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の1つは、SNX27とABCA1の相互作用を調節して、細胞膜上のABCA1の安定性を制御する方法である。
SNX27は、細胞内ソーティングに関与するSNX(Sorting nexin)ファミリーに属するタンパク質である。SNX27が由来する動物種は特に限定されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコなどが好ましく、特に、ヒトが好ましい。SNX27のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号1〜配列番号15で表されるアミノ配列、及びこれらの配列と実質的に同一のアミノ酸配列である。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、配列番号1〜配列番号15で表されるアミノ配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、該アミノ酸配列からなるタンパク質が細胞内ソーティング活性を有する配列、あるいは、配列番号1〜配列番号15で表されるアミノ配列中の1又は数個(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、該アミノ酸配列からなるタンパク質が細胞内ソーティング活性を有する配列のことである。
また、ABCA1とは、PDZ結合モチーフを有し、ABCトランスポーターファミリーに属するタンパク質のことで、その遺伝子配列、アミノ酸配列等に関する情報は、公開のデータベースなどを検索することで容易に入手することができる。
【0017】
SNX27とABCA1の「相互作用」とは、直接的又は間接的に互いに何らかの影響を与えることであり、例えば、互いに直接的又は間接的に「結合」している状態を意味する。また、「相互作用」を調節するとは、相互作用を強めたり、又は、弱めたりすることで、例えば、「結合」を増強又は阻害(抑制あるいは低下)することである。
細胞膜上のABCA1の「安定性」とは、一般的に理解される意味であって、例えば、ABCA1が細胞膜上で発現している時間の長短のことである。例えば、ABCA1が細胞膜上に発現している時間が長くなれば、細胞膜上のABCA1が「安定化」したということができる。
SNX27は、ABCA1との相互作用を介してABCA1のソーティングに関与していると考えられるため(後述の実施例を参照のこと)、SNX27とABCA1との相互作用を調節すれば、ABCA1の細胞内への内在化をコントロールすることができ、その結果、細胞膜上のABCA1の安定性を制御することができる。
【0018】
SNX27とABCA1との相互作用は、例えば、ABCA1と相互作用する能力を保持したSNX27の細胞膜上の存在量を変化(増加又は減少)させるか、あるいは、ABCA1と相互作用するSNX27の能力を変化(増強又は低下)させることにより調節することができる。
特に、SNX27とABCA1の相互作用を阻害(又は抑制、低下)するために、SNX27の細胞膜上の存在量を低下させる場合、例えば、適当なターゲティングベクターを利用して細胞に内在するSNX27遺伝子の全体を破壊する方法、RNAi法によりSNX27遺伝子の発現阻害を誘導する方法など当該技術分野において公知の方法により容易に行うことができる。RNAi法による場合には、SNX27遺伝子の発現を阻害する核酸等であれば如何なるものを利用してもよいが、例えば、センス鎖:5’-GGUUGGCAUGGACAGUACGtt-3’(配列番号17)及びアンチセンス鎖:5’-CGUACUGUCCAUGCCAACCtt-3’(配列番号18)からなるsiRNA、あるいは、センス鎖:5’-GCAAUAAUCUAGGGUAUGUtt-3’(配列番号19)及びアンチセンス鎖:5’-ACAUACCCUAGAUUAUUGCtg-3’(配列番号20)からなるsiRNAなどを利用することができる。
また、ABCA1と相互作用(又は結合)するSNX27の能力を低下させるためには、ABCA1と相互作用するSNX27側の領域、例えば、PDZドメインに突然変異などを導入し、ABCA1との相互作用を喪失又は低下させることにより達成してもよい。SNX27のPDZドメインは、公知のデータベース等により容易に検索することができ、例えば、ヒト由来のSNX27の場合、アミノ酸位置40〜150、好ましくはアミノ酸位置43〜134までの領域を挙げることができる。他の動物種においても、ヒトのSNX27のアミノ酸配列との相同性を手掛かりにして、ヒトのPDZドメインに相当する領域を該動物種のPDZドメインと予測することは当業者にとって容易である。従って、ABCA1との相互作用に必要なSNX27のPDZドメイン(例えば、ヒト由来の場合、アミノ酸位置43〜134)にCre−loxシステムなどを利用して変異(アミノ酸の置換、挿入又は欠失、あるいは、改変又は修飾)を導入することなどにより、SNX27のABCA1と相互作用する能力を低下させることができる。また、SNX27のPDZドメインを修飾(例えば、リン酸化など)することによってもABCA1との相互作用を調節することが可能である。特に、SNX27のPDZドメイン内のリン酸化部位がABCA1との相互作用に重要であると考えられていることから、このドメインに含まれるアミノ酸のリン酸化・脱リン酸化を介した相互作用の調節が可能である。
【0019】
さらに、SNX27とABCA1の相互作用を阻害(又は抑制、低下)するために、抗体、アプタマー(ペプチド又は核酸)又は化合物を使用してもよい。これらの抗体、アプタマー又は化合物は、SNX27とABCA1との相互作用を阻害(又は抑制、低下)するものであれば、SNX27又はABCA1のいずれかに結合しても、両方に結合してもよい。このような抗体、アプタマー又は化合物は、例えば、SNX27のPDZドメイン及び/又はABCA1のPDZ結合モチーフに結合するものなどを例示することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態は、SNX27とABCA1の相互作用を調節し、細胞膜上のABCA1の安定性を制御し、細胞内からのコレステロール排泄量を調整することである。特に、SNX27とABCA1の相互作用を阻害(又は抑制、低下)し、細胞膜上のABCA1の安定性を増強し、細胞内からのコレステロール排泄量を増大させることである。SNX27の細胞内発現量を低下させると、細胞膜上にABCA1が安定に維持され、ABCA1を介したapoA−Iをアクセプターとするコレステロールの細胞外排泄量が増大する。apoA−IはHDLの形成に関与することから、本発明により、血中HDL濃度の上昇をも達成することができる。
【0021】
また、本発明の実施形態には、SNX27とABCA1の相互作用を調節し、細胞膜上のABCA1の安定性を制御した細胞、及び、SNX27とABCA1の相互作用を調節し、細胞内からのコレステロール排泄量を制御した細胞が含まれる。好ましくは、SNX27とABCA1の相互作用を阻害(又は抑制、低下)し、細胞膜上のABCA1が安定化した細胞、及び、SNX27とABCA1の相互作用を阻害(又は抑制、低下)し、細胞膜上のABCA1が安定化し、細胞内からのコレステロール排泄量が増大した細胞である。
本発明により、細胞膜上のABCA1が安定化した、あるいは、コレステロール排泄量が増大した、分化多能性細胞(例えば、ES細胞やiPS細胞)を調製することもできる。このような分化多能性細胞は、所望の分化状態を有し、所望の細胞型を有する細胞へ分化誘導することができるため、種々の疾患の治療などに利用することができる。
【0022】
また、iPS細胞やES細胞などの分化多能性細胞を介さずに直接所望の細胞型を有する細胞を調製することも可能である。このよう方法として、例えば、特定の転写因子を細胞中で発現させ、該細胞を所望の細胞型に変換する方法が報告されている(Zhou et al., Nature 455, 627-633, 2008)。本報告においては、3種の遺伝子(Ngn3,Pdx1,Mafa)を膵外分泌細胞中で発現させ、β細胞に変換する方法が開示されている。また、任意の浸透化した細胞を、所望の細胞型を有する細胞から調製した間期細胞抽出物又は有糸分列細胞抽出物と共にインキュベートし、該任意の細胞を所望の細胞型の細胞へ変換する方法が報告されている(特開2009−142278)。このような方法を利用することで、細胞膜上のABCA1が安定化した細胞、又は、コレステロール排泄量が増大した細胞を所望の細胞型の細胞に直接変換することができる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、SNX27又はその一部、ABCA1又はその一部及び試験物質を共存させ、適当な条件で(例えば、少なくとも、SNX27とABCA1が相互作用する温度、塩濃度、pHなどの条件)インキュベートすることで、SNX27とABCA1との相互作用に影響(例えば、阻害又は増強)を与えるような物質をスクリーニングする方法である。本発明のスクリーニングは、単離したSNX27及びABCA1を使用した無細胞系を利用して行ってもよく、あるいは、両タンパク質を細胞膜上に発現している細胞を使用して行ってもよい。単離したSNX27及びABCA1を使用してスクリーニングを行う場合には、SNX27及びABCA1の全長を使用してもよいが、その一部、例えば、SNX27とABCA1が相互作用している領域(例えば、SNX27のPDZドメイン、又は、ABCA1のPDZ結合モチーフを含む領域など)のみを使用して、実施してもよい。試験物質が、SNX27とABCA1との相互作用に影響を与えているか否かの判断は、SNX27(又はその一部)、ABCA1(又はその一部)及び試験物質を混合した状態でインキュベートした後、SNX27(又はその一部)又はABCA1(又はその一部)のいずれか一方を特異的に単離したときに、他方が共に単離されてくるか否かを確認することにより行うことができる。例えば、SNX27(又はその一部)に対する特異的な抗体により、免疫沈降を行ったときに、ABCA1(又はその一部)が共沈した場合には、試験物質は、SNX27(又はその一部)とABCA1(又はその一部)との相互作用に影響を与えない(又は、相互作用を増強する)と判断することができ、ABCA1(又はその一部)が共沈しなかった場合には、試験物質は、SNX27(又はその一部)とABCA1(又はその一部)との相互作用を阻害(又は抑制、低下)すると判断することができる。
ここで得られたSNX27(又はその一部)とABCA1(又はその一部)との相互作用を阻害する物質は、細胞膜上のABCA1を安定化する物質の試験物質として使用してもよい。
【0024】
本発明には、さらに、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法が含まれる。SNX27(又はその一部)及びABCA1(又はその一部)を細胞膜上に発現している細胞を試験物質の存在下でインキュベートした後、該細胞膜上のABCA1の存在量と、試験物質の非存在下でインキュベートした細胞の細胞膜上のABCA1の存在量とを比較し、試験物質の存在下でインキュベートした細胞の細胞膜上のABCA1の存在量が多い場合、該試験物質を細胞膜上のABCA1を安定化する物質の候補とすることができる。本スクリーニングの過程で行うインキュベーションは、試験物質が細胞表面(より具体的には、細胞膜上に存在するSNX27及び/又はABCA1)と接触して、SNX27(又はその一部)とABCA1(又はその一部)との相互作用に影響を与えるような条件であればいかなる条件であってもよく、例えば、本スクリーニングに使用する細胞の培養条件等を参考にして適宜決定することができる。例えば、37℃前後の温度で、試験物質の存在下で、10〜60分程度インキュベートしてもよい。
細胞膜上に存在するABCA1量の測定は、細胞表面のタンパク質をビオチン化し、細胞を可溶化し、該調製液からストレプトアビジンなどでビオチン化されたタンパク質を調製し、該調製物中のABCA1を抗ABCA1抗体などで定量することで実施できる。その他、当該技術分野において公知の方法であればいずれの方法を使用してもよい。
ここに記載の細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法に用いる試験物質として、上述のSNX27とABCA1との相互作用を阻害する物質をスクリーニングする方法により得られた物質を使用してもよい。
【0025】
さらに本発明には、細胞内からのコレステロールの排泄を増大させる物質をスクリーニングする方法が含まれる。本スクリーニングの試験物質として、上述のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法によって得られた物質を使用することができる。細胞膜上のABCA1が安定化すると、apoA(−I又は−II)を介したコレステロールの細胞外への排泄量が増大する。従って、細胞膜上のABCA1を安定化する物質を試験物質とすれば、細胞内からのコレステロールの排泄を増大させる物質のスクリーニングを効率的に行うことが可能となる。細胞内からのコレステロールの排泄を増大させる物質のスクリーニングは、例えば、細胞膜上にSNX27及びABCA1を発現している細胞に、該細胞にapoA(−I又は−II)を添加してインキュベートし、試験物質の存在下でさらにインキュベートした後、培養液に排泄されたコレステロールの量を試験物質非存在下の場合と比較することで、スクリーニングを実施することができる。コレステロールの排泄量は、例えば、放射性物質又は蛍光物質などで標識したコレステロールを予め細胞に取り込ませておき、標識の活性(放射活性や蛍光強度)を測定することで、評価することができる。
apoA(−I又は−II)を介した細胞外へのコレステロールの排泄は、血中のHDL濃度を上昇させると考えられるので、本スクリーニング方法は、血中のHDL濃度を上昇させる物質のスクリーニングとしても使用することができる。
【0026】
本発明において、SNX27とABCA1の相互作用を調節する対象となる細胞としては特に限定はされないが、SNX27とABCA1の相互作用の調節によって、他の細胞内現象(つまり、ABCA1の細胞膜上における安定性の変化、あるいは、コレステロールの細胞外排泄量の変化以外の細胞内現象)に影響が及ばない細胞が好ましい。このような細胞として、肝臓・マクロファージ・膵臓β細胞などを例示することができる。
【0027】
以下に本発明を具体例によって説明するが、本発明の範囲はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
1.SNX27とABCA1の相互作用
SNX27とABCA1との相互作用の有無について検討を行った。SNX27とABCA1を発現するHuh7細胞から細胞可溶液を調製し、この細胞可溶液に対し、抗ABCA1抗体(図1A、左図)及び抗SNX27抗体(図1A、右図)を用いて免疫沈降を行った。沈降産物を、6%SDS−PAGE(ABCA1検出用)又は8.5%SDS−PAGE(SNX27検出用)にかけ、抗ABCA1抗体と抗SNX27抗体にてウェスタンブロッティングを行った。その結果、抗ABCA1抗体及び抗SNX27抗体による免疫沈降物中に、各々、ABCA1とSNX27の存在がみとめられ、SNX27とABCA1の結合が確認された。
次に、ABCA1とSNX27の相互作用が、PDZ結合モチーフに依存しているかどうかを検討した。ABCA1をコードするDNA又はPDZ結合モチーフを欠失させたABCA1Δ4(カルボキシル末端の4つのアミノ酸ESYVが欠失)をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞から、細胞可溶液を調製し、この細胞可溶液に対しSNX27抗体を用いて免疫沈降を行った。得られた免疫沈降産物はのうち、ABCA1検出用は6%、SNX27検出用は8.5%SDS−PAGEにかけ、抗ABCA1抗体、SNX27抗体にてウェスタンブロッティングを行った(図1B)。その結果、抗SNX27抗体で免疫沈降を行った沈降物中に、ABCA1の存在は確認されたが、ABCA1Δ4は確認されなかった。従って、SNX27とABCA1は、ABCA1のPDZ結合モチーフを介して相互作用すると考えられる。
さらに、SNX27によるABCA1発現量制御が、PDZ結合モチーフを介して行われているかどうかについて検討を行った。ABCA1をコードするDNA又はPDZ結合モチーフを欠失させたABCA1Δ4をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションし、その24時間後にSNX27遺伝子を標的とするsiRNAをトランスフェクションした。siRNAのトランスフェクション48時間後に細胞可溶液の調製を行った。調製したサンプルのうち、15μgを6%SDS−PAGEにかけ、抗ABCA1、抗SNX27抗体にてウェスタンブロッティングを行った。その結果、SNX27をノックダウンしてもABCA1の細胞内での総発現量は、PDZ結合モチーフの有無に関わらず影響を受けなかった(図1C)。
【0029】
2.SNX27が細胞膜上のABCA1の発現に及ぼす影響
SNX27が細胞膜上のABCA1の安定化にどのような影響を及ぼしているのか検討を行った。まず、細胞に内在するSNX27の発現を阻害するために、ABCA1を内因性に発現する肝由来培養細胞であるHuh7細胞に、SNX27遺伝子を標的としたsiRNA(センス; 5’-GGUUGGCAUGGACAGUACGtt(配列番号17)、アンチセンス; 5’-CGUACUGUCCAUGCCAACCtt(配列番号18))をトランスフェクションし、SNX27のノックダウンを行った。細胞から細胞可溶液を調製しSNX27のノックダウンを抗SNX27抗体によるウェスタンブロッティングで確認したところ、ほぼ完全にSNX27の発現が阻害されていた(図2A)。また、SNX27をノックダウンした細胞表面をビオチン化し、細胞可溶液を調製し、ストレプタビジンビーズでビオチン化タンパク質を単離したのち、この単離サンプルに対して抗ABCA1抗体でウェスタンブロッティングを行った。その結果、コントロールのsiRNAで処理したサンプルについては、ABCA1をほとんど検出できなかったのに対し(図2B、control)、SNX27遺伝子に対するsiRNAで処理したサンプルについては、ABCA1の存在を確認することができた(図2B、SNX27)。
【0030】
3.ABCA1の細胞膜からの分解速度に対するSNX27の影響
Huh7細胞にSNX27遺伝子を標的としたsiRNAをトランスフェクションし、その72時間後に細胞表面をビオチン化した。37℃で0、2、4、8時間培養した後、細胞可溶液を調製し、ストレプタビジンビーズを用いて残存しているビオチン化タンパク質を単離した。単離したサンプルは、6%SDS−PAGEにかけ、ABCA1抗体にてウェスタンブロッティングを行った(図3A)。また、ウェスタンブロッティングの結果を定量化した結果を図3Bに示す。実験の結果、SNX27をノックダウンすると、ABCA1の細胞膜上からの消失速度が遅延することが明らかとなった。
【0031】
4.SNX27がapoA−Iをアクセプターとした細胞外へのコレステロール排泄に及ぼす影響
Huh7細胞にABCA1遺伝子を標的としたsiRNAをトランスフェクションし、24時間後にSNX27遺伝子を標的としたsiRNAをトランスフェクションした。さらに、その24時間後、[H]Cholesterol(2mCi/ml)を加え24時間培養した。その後、apoA−I(10mg/ml)を含むメディウムで4時間培養し、メディウムの回収と可溶液の調製を行った。apoA−Iを介してメディウムに排泄されたコレステロールの量を評価したところ、SNX27遺伝子に対するsiRNAを用いた場合のコレステロール排泄量は、コントロールに比べて約2倍程度増加することが明らかとなった(図4)。この結果は、SNX27のノックダウンにより、SNX27とABCA1との相互作用を阻害すると、apoA−Iを介したコレステロールの細胞外排泄が促進されることを示す。従って、SNX27のノックダウンなどにより、SNX27とABCA1との相互作用を阻害すれば、HDLの血中濃度を上昇させることも可能となる。
【0032】
5.SNX27とオルガネラマーカーとの共染色
COS1細胞を固定、可溶化し、オルガネラマーカー抗体(図5A:EEA1、図5B:TGN38、図5C:LAMP−1)、SNX27(図5A,B及びC、SNX27(中図))抗体にて免疫染色を行った。その結果、SNX27と前記オルガネラが細胞内において、一部、共局在していることが確認された(図5A、B及びC、Merge(右図))。
【0033】
6.SNX27とGFP融合Rabファミリータンパク質との共局在
COS1細胞にRab4(図6A)、Rab5(図6B)、Rab7(図6C)及びRab11(図6D)を組み込だAcGFP発現ベクターをトランスフェクションし、その48時間後に細胞を固定、可溶化し、SNX27抗体にて免疫染色を行った。その結果、SNX27とRabファミリータンパク質が細胞内において、一部、共局在していることが確認された(図6A〜D、Merge(右図))。
【0034】
7.SNX27と蛍光標識トランスフェリン(Tf)との共局在
COS1細胞をAlexa594−Tf(0.1mg/mL)で、0、2、10、30及び60分間、37℃で培養した(図7)。その後、抗SNX27抗体による免疫染色像(図7、SNX27(左図))、トランスフェリン(図7、Tf(中図))の局在を観察した。その結果、SNX27とトランスフェリンは、細胞内において、一部、共局在していることが確認された(図7、Merge(右図))。
【0035】
8.細胞膜分画におけるSNX27の発現の確認
SNX27が細胞膜上に発現していることを確認するために、HEK293細胞の細胞膜分画を、ビオチン化法を用いて調製した。調製した細胞膜画分サンプルを8%SDS−PAGEにかけ、抗SNX27、抗HRS、抗EEA1、抗MRP4抗体にてウェスタンブロッティングを行ったところ、エンドソーム膜上に存在するEFA1とHRSは検出されず、SNX27とABCトランスポーターであるMRP4が検出された。従って、SNX27は細胞膜上に存在することが確認された(図8)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ABCA1の細胞膜上における安定化方法、及びABCA1を細胞膜上に安定化する物質をスクリーニングする方法を提供し、コレステロールの代謝を調節し、血中HDL濃度の上昇に有用な方法及び薬剤の開発に貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SNX27とABCA1の相互作用を調節し、細胞膜上のABCA1の安定性を制御する方法。
【請求項2】
SNX27とABCA1の相互作用を阻害し、細胞膜上のABCA1を安定化する方法。
【請求項3】
前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、細胞に内在するSNX27遺伝子全体を破壊することで達成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、細胞に内在するSNX27遺伝子に突然変異を導入することで達成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記突然変異が、SNX27のPDZドメインに導入されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SNX27とABCA1の相互作用の阻害が、RNAi法によることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの記載の方法により細胞膜上のABCA1を安定化し、細胞内からのコレステロール排泄量を増大させる方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により細胞膜上のABCA1が安定化した細胞。
【請求項9】
請求項7に記載の方法により細胞内からのコレステロール排泄量が増大した細胞。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の細胞から調製したiPS細胞。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の細胞から、iPS細胞を介さずに調製した、該細胞とは異なる細胞型を有する細胞。
【請求項12】
SNX27又はその一部、ABCA1又はその一部及び試験物質を共存させてインキュベートした後、SNX27とABCA1が相互作用しているかどうかを確認することを含む、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法。
【請求項13】
SNX27及びABCA1を細胞膜上に発現している細胞を試験物質の存在下でインキュベートした後、該細胞膜上のABCA1の存在量と、試験物質の非存在下でインキュベートした細胞の細胞膜上のABCA1の存在量とを比較することを含む、細胞膜上のABCA1を安定化する物質をスクリーニングする方法。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を試験物質として、細胞内からのコレステロールの排泄を増大させる物質をスクリーニングする方法。
【請求項15】
請求項12又は請求項13に記載のスクリーニング方法によって得られた物質を試験物質として、血中HDL濃度を上昇させる物質をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−160744(P2011−160744A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28493(P2010−28493)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(592173607)
【出願人】(507237163)
【Fターム(参考)】