説明

ABLキナーゼのペプチド阻害剤

残基(10)のチロシンがリン酸化されている配列番号1を含む精製された化合物が提供される。化合物のアミノ酸配列が400未満のアミノ酸である、配列番号1を含む精製された化合物も提供される。その他に、ある薬剤がAblキナーゼの候補阻害剤であるかどうかを決定する方法も提供される。さらにAblキナーゼを阻害する方法も提供される。突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気を有する患者を処置する方法も提供される。加えて、突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気にかかるリスクのある患者を処置する方法も提供される。Ablキナーゼを標識化する方法も提供される。さらに、組織からAblキナーゼを単離する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年12月1日に出願された、米国仮特許出願第60/741,208号の利益を請求する。
【0002】
(政府支援の研究または開発に関する陳述)
米国政府は、本発明における一括払いライセンスおよび特定の条件下における権利を有し、The Department of Defenseにより与えられた助成金DAMD 17−01−1−00961、ならびにThe National Institute of Neurological Disorders and Strokeからの助成金R01の条項によって規定されるように、特許権者が、適切な条件で第三者に許可を与えることを要求する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般にキナーゼ活性の調節に関する。とりわけ、本発明はAblキナーゼの阻害剤に関する。
【背景技術】
【0004】
(関連技術の記載)
非受容体チロシンキナーゼ類は、細胞外刺激の下流の細胞シグナリングの主要な調節物質である。遍在する非受容体チロシンキナーゼc−Ablは、増殖因子類、インテグリン、およびサイトカインシグナリングの下流の細胞増殖、アポトーシスにかかわっている(非特許文献1)。細胞増殖におけるc−Ablキナーゼの重要な役割は、c−Ablのキナーゼ活性化突然変異型であるBCR−Ablの発現による慢性骨髄性白血球の発症によって説明される(Goldmann and Melo,2003)。しかし、BCR−Ablまたはc−Ablのキナーゼ活性が細胞において調節される仕組みは明らかでない。
【0005】
c−Srcおよびc−Ablのような非受容体チロシンキナーゼ類の主要な調節機序として、自己阻害が明らかになってきた(非特許文献2;Hantschel et al.2003;Nagar et al.2003;Thomas and Brugge,1997;Wang,2004)。これらのキナーゼは高度に保存された構造ドメイン:SH3、SH2、および触媒ドメインの存在によって与えられる高い構造的相同性を共有する。c−Src(Williams et al.1997;Xu et al.1999)およびc−Abl(Hantschel et al.2003;Nagar et al.2003)の結晶構造は、それらのSH3およびSH2ドメインが触媒ドメインに結合し、自己阻害コンフォメーションを誘起して、これらキナーゼの調節の基礎的機序となることを明らかにしている。一方で、これらキナーゼにはさらなる制約となる阻害を課する非相同配列があり、これによってc−Srcおよびc−Ablの別の調節がもたらされる。この阻害はc−SrcにおいてSH2ドメインと、同じ分子上のC−末端に位置するリン酸化チロシン527との分子内相互作用によって実現する(Thomas and Brugge,1997)。c−Ablにおいては、この阻害機序以外には内部ホスホチロシン−SH2ドメイン相互作用はない。さらにc−Srcとは対照的に、c−Abl上ではキナーゼドメインのC−末端部分に直接結合し、それによってその触媒ドメイン上のSH3−SH2“クランプ”をさらにロックするミリストイル化キャップによってさらに制約となる阻害があらわれる。しかしこの“分子ロック”は、部分的キャップ領域だけを含むc−Abl−1aの非ミリストイル化形には存在しない。このキャップ領域のより包括的な役割はc−Ablの結晶構造からは認識できないが、このキャップ領域は接近しやすさ(accessibility)の調節およびホスホチロシン含有ペプチドの結合に役割を果たすと考えられる(Hantschel et al.2003)。
【0006】
c−Ablキナーゼに結合する種々のプロテインはc−Abl共阻害剤であることが提起されている。プロテインF−アクチン、PagおよびRbはc−Ablの自己阻害されたコンフォメーションを安定化することによって受動的共阻害剤(passive co−inhibitor)として作用すると仮定されている(Wang,2004)。候補c−Abl阻害剤の別のセット、Abi1およびAbi2は、c−Abl−結合パートナーを同定する研究(Dai and Pendergast、1995;Shi et al.1995)並びに、ESb1(eps8SH3結合プロテイン1−Biosova et al.,1997)およびHssh3bp1(ヒトスペクトリンSrc相同3ドメイン結合プロテイン1−Ziemnicka−Kotula et al.1998)と名付けられたその他のプロテインからSH3ドメインの結合パートナーを同定する研究において単離された。c−AblキナーゼのシグナリングにおけるAbiプロテインの阻害的役割は主として細胞増殖の調節におけるAbi1およびAbi2の阻害的役割に基づくことが提案されているが(Dai and Pendergast,1995;Macoska et al.2001;Shi et al.1995)、それらの分子的機序は明らかでない。Abi1およびAbi2は富プロリン−リンカーPRLのc−AblキナーゼC−末端PXXP配列(Dai and Pendergast,1995;Shi et al.1995)、およびc−Abl SH3ドメイン(Ziemnicka−Kotula et al.1998)と相互作用する。こうして、このような機序の一つには、AbiのPXXP配列およびSH3ドメインと、c−Abl SH3ドメインおよびPRL領域との協力的結合による、c−Ablキナーゼの自己阻害的コンフォメーションの強化が含まれると思われる。しかしc−AblキナーゼおよびAbiプロテインでは、SH2をベースとするキナーゼ調節機序は明らかにされていない。
【非特許文献1】Woodring,P.J., Hunter,TおよびWangm J.Y.2003年,Regulation of F−actin−dependent processes by the Abl family of tyrosine kinases,J Cell Sci 116,2613−2616
【非特許文献2】Courtneidge,S.A.,2003,Cancer:Escape from inhibition,Nature 422,827−828
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の議論に基づき、c−Abl阻害におけるAbiプロテインの役割を特徴づけることが必要である。本発明はこの要求に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
よって、発明者はAblキナーゼを阻害するAbiプロテインから誘導されるペプチドを同定した。実施例を参照されたい。
【0009】
そこで本発明は残基10のチロシンがリン酸化されている配列番号1を含む精製された化合物類に関するものである。
【0010】
本発明は上記化合物のアミノ酸配列が400未満のアミノ酸である配列番号1を含む精製化合物にも関わる。
【0011】
本発明はさらに、ある薬剤がAblキナーゼの候補阻害剤であるかどうかを確認する方法にも関わる。これらの方法は上記化合物をAblキナーゼの存在下でこの薬剤と接触させ、上記化合物がAblキナーゼに結合するかどうかを評価することを含む。これらの方法において、上記化合物がAblキナーゼに結合しない場合はその薬剤はAblキナーゼの候補阻害剤であり、その化合物がAblキナーゼに結合する場合はその薬剤はAblキナーゼの候補阻害剤ではない。これらの方法によってAblキナーゼの阻害剤であると確認された薬剤、およびAblキナーゼをこれらの薬剤と接触させることによってAblキナーゼを阻害する方法も本発明の局面である。
【0012】
本発明はさらにAblキナーゼを阻害する方法に関わる。これらの方法はAblキナーゼを上記化合物類の一つと接触させることを含む。
【0013】
さらに、本発明は突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気をもつ患者を処置する方法にも関わる。これらの方法は突然変異体Ablキナーゼを阻害する上記化合物のいずれかを上記患者に投与することを含む。
【0014】
本発明は突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気のリスクのある患者を処置する方法にも向けられる。これらの方法は突然変異体Ablキナーゼを阻害する上記化合物類のいずれかを上記患者に投与することを含む。
【0015】
本発明はAblキナーゼを標識化する方法にも関わる。それらの方法はAblキナーゼと上記化合物類の一つとを、その化合物がAblキナーゼと相互作用する条件下で結合させることを含む。これらの方法に使用される化合物は検出可能部分も有する。
【0016】
本発明は組織からAblキナーゼを単離する方法にも関わる。これらの方法は組織を均質化し、その均質化した組織と、結合部分も有する上記化合物類の一つとを結合させ、Ablキナーゼに結合した化合物を単離することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
よって発明者らはAblキナーゼを阻害するペプチド類を同定した。これらのペプチドはAbiプロテインの富プロリン領域からのものである。実施例を参照されたい。
【0018】
したがって本発明は、残基10のチロシンがリン酸化されている配列番号1を含む精製化合物に関するものである。配列番号1は、Abi1、Abi2およびAbi3の、Ablキナーゼ相互作用領域のコンセンサス配列である。本出願の付録にはAbi1、Abi2およびAbi3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号2、配列番号3および配列番号4として記載されている。配列番号1の部分であるこれらプロテイン類の相互作用領域は、付録では下線が引かれており、ここには配列番号5(Abi1)および配列番号6(Abi2およびAbi3)としても記載されている。したがって発明の化合物は配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列も含むことができる。発明の化合物と相互作用するAblキナーゼのより長いバージョンは配列番号7(コンセンサス配列[図10])および配列番号8として提供されている。配列番号7または配列番号8を含む化合物が好ましい。なぜならばPXXP Ablキナーゼ結合モチーフがそのなかに存在し、より効果的なAblキナーゼ阻害を可能にしているからである。その化合物が、効果的Ablキナーゼ阻害剤として実施例に記載のように用いられた配列番号8を含むのがより好ましい。
【0019】
配列番号1によってあらわされる種々の14マーペプチドは、小ペプチドそれ自体、または大きいAbiプロテイン(配列番号2、配列番号3および配列番号4によってあらわされるヒト配列)として、Ablキナーゼ類の阻害物質である。さらに、配列番号1の14マーペプチド類のいずれかを含む任意の化学物質または巨大分子はAblキナーゼを阻害すると予想される。このような化学物質類または巨大分子の非制限的例は、任意の蛋白(酵素またはサイトカインなど)、プロテイン−核酸ハイブリッド類、糖蛋白、プロテオグリカン類、リポ蛋白類、および、例えば蛍光分子または抗原などの機能的部分を含む。14マーを含む任意の特定巨大分子のAblキナーゼ阻害特性は下記の実施例に記載される方法を含む任意の公知の方法によって試験できる。
【0020】
好ましくは、化合物は配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に、少なくとも85%は相同であるアミノ酸配列を含む。その化合物が天然に存在するAbi1、Abi2、またはAbi3の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含むのもより好ましい。このような天然に存在するAbi1、Abi2またはAbi3は、配列番号2、配列番号3または配列番号4に少なくとも85%相同であることが期待される。その化合物が配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に完全に相同であるのがより好ましく、配列番号2の少なくとも一部に完全に相同であるのが最も好ましい。
【0021】
その化合物は400未満のアミノ酸残基、100未満のアミノ酸残基、および20未満のアミノ酸残基を含む任意の14アミノ酸長さまたはより長いアミノ酸配列を含むことができる。そのアミノ酸配列は好ましくは14アミノ酸残基である。その化合物のために予想される特定のアミノ酸配列は配列番号1、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8である。化合物が、配列番号1内にはない野生型Abi1、Abi2またはAbi3のPXXP結合モチーフを含むのも好ましい。
【0022】
本発明の部分として予想される幾つかの化合物はペプチド模擬体によってあらわされる少なくとも1つのアミノ酸を有する。このような化合物は、すべて天然に存在するアミノ酸を有する対応する化合物に比べて、in vivo分解に対してより強く抵抗することが多いことは知られている。
【0023】
上記化合物がAblキナーゼの活性を阻害できることが好ましい。このような化合物が哺乳動物に投与されるとき、特にその阻害されたAblキナーゼが疾患を起こす場合に(例えばBCR−Abl)、このような化合物がAblキナーゼを阻害できることが最も好ましい。
【0024】
上記化合物類は検出可能部分または結合部分も含むことができる。本発明は任意の特定の検出可能部分または結合部分を有する化合物に狭く制限されるものではないが、検出部分または結合部分は放射性部分、抗原、蛍光部分、またはHis6部分であることが好ましい。多くの用途のために、検出可能部分または結合部分は蛍光部分であることが最も好ましい。これらの用途において、化合物がAblキナーゼと結合するとき、蛍光部分の検出可能蛍光は変化する。
【0025】
治療的に応用する場合、本発明の化合物は薬学的に容認される組成物中に含まれなければならない。
【0026】
本発明は配列番号1を含む精製された化合物にも向けられる。この際アミノ酸配列は400未満のアミノ酸である。好ましい化合物としては配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8を含むものなどがある。上記化合物類は好ましくは配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に少なくとも85%相同であるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、化合物は天然に存在するAbi1、Abi2またはAbi3の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む。配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む化合物も好ましく、配列番号2の一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む化合物が最も好ましい。
【0027】
化合物のアミノ酸配列は約400未満のアミノ酸長さでよい、例えば100未満のアミノ酸残基、または200未満のアミノ酸残基など。好ましい長さは14アミノ酸残基である。特に、化合物は配列番号1、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8からなることができる。これまでに記載された化合物の場合のように、これらの化合物はペプチド模擬体をアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸として含むことができる。化合物は、配列番号1内にはない、野生型Abi1、Abi2またはAbi3のPXXP結合モチーフ、一般にはPPSPP、を含むのが好ましい。化合物は配列番号1のチロシンの残基10の位置がリン酸化されていてもよい。化合物がAblキナーゼの活性を阻害できることも好ましい。
【0028】
これらの化合物は検出可能部分または結合部分も含むことができる。治療的に応用するためにはこれらの化合物は薬学的に容認される組成物中に含まれなければならない。
【0029】
上記の化合物類はAblキナーゼ類を、これらの酵素類との相互作用によって阻害するから、その相互作用を阻害する薬剤がAblキナーゼの候補阻害剤である。上記化合物とAblキナーゼとの相互作用は上記化合物とAblキナーゼとの結合を評価することによって最も有効に測定される。そこで本発明はさらに、ある薬剤がAblキナーゼの候補阻害剤であるかどうかを確認する方法に向けられる。この方法はAblキナーゼの存在下で上記の化合物の一つを上記薬剤と接触させ、その化合物がAblキナーゼに結合するかどうかを確認することを含む。これらの方法において、もしも化合物がAblキナーゼに結合しないならば、その薬剤はAblキナーゼの候補阻害剤である。もしもその化合物がAblキナーゼに結合するならば、その薬剤はAblキナーゼの候補阻害剤ではない。
【0030】
これらの方法に使用される化合物はさらに検出可能部分を含み、その化合物とAblキナーゼとの結合をより容易に評価することができる。別法としてAblキナーゼがこの目的のための検出可能部分を含むことができる。好ましい検出可能部分は放射性部分、抗原、または蛍光部分である。検出可能部分が蛍光部分であるのが最も好ましい。
【0031】
これらの方法の幾つかの形において、蛍光部分の検出可能の蛍光は、化合物がAblキナーゼと結合すると強度が変化する。当業者は蛍光化合物、および上記化合物および/またはAblキナーゼ上のその結合位置を選択し、不当な実験を行わずにこの方法を実施できる。これらの方法において、化合物とAblキナーゼとの結合の評価は蛍光強度の測定による。その際、化合物のある場合の蛍光強度が、その化合物がない場合の蛍光強度より増加していれば、それは、その化合物がAblキナーゼに結合しないことを示す。
【0032】
化合物とAblキナーゼとの結合は非変性条件下でペプチドまたはAblキナーゼの見かけ上のサイズをゲル電気泳動法またはカラムクロマトグラフィーなどによって測定することによっても評価できる。
【0033】
候補阻害剤の同定にあたって、ある候補阻害剤の存在下でAblキナーゼのキナーゼ活性を評価することによって、その阻害剤をさらに試験することが好ましい。その際、あるAblキナーゼ阻害剤はそのAblキナーゼの活性を低下させる。
【0034】
本発明は上記の方法によって同定された薬剤も包含する。さらに、本発明はAblキナーゼと上記の方法によって同定された阻害物質とを接触させる工程を含むAblキナーゼ阻害法も含む。
【0035】
本発明はさらにAblキナーゼを阻害するその他の方法にも関係する。その方法はAblキナーゼを上記化合物類の一つと接触させることを含む。その化合物は配列番号1、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8からなるのが好ましい。Ablキナーゼが哺乳動物細胞にあることも好ましい。その哺乳動物細胞が生きている哺乳動物の部分であることがより好ましい。上記哺乳動物が突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気にかかっているか、またはそのリスクをもっているのがより好ましい。このような病気の一例は癌である。癌は好ましくは慢性骨髄性白血病(CML)または前立腺癌である。
【0036】
さらに、本発明は突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気を有する患者を治療する方法にも関わる。それらの方法は突然変異体Ablキナーゼを阻害する任意の上記化合物を患者に投与することを含む。その化合物は患者に非経口投与されるのが好ましい。これらの方法にとって、病気が慢性骨髄性白血病または前立腺癌であるのが好ましい。
【0037】
本発明は突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気にかかるリスクのある患者を処置する方法にも関わる。これらの方法は突然変異体Ablキナーゼを阻害する上記のある化合物を上記患者に投与することを含む。
【0038】
本発明はさらに、Ablキナーゼを標識化する方法にも関わるものである。その方法はAblキナーゼと上記化合物類の一つとを、上記化合物が上記Ablキナーゼと相互作用する条件下で結合させることを含む。これらの方法に用いられる化合物も上記のような検出可能部分を有する。これらの方法において標識化されるAblキナーゼは哺乳動物組織の部分、例えば生検でよい。生検組織は標識化の前または後に均質化することができ、前記均質化組織から得た蛋白中に存在する検出可能標識の量を定量することによってAblキナーゼ量、すなわちAblキナーゼ/化合物の組合わせのサイズを定量することができる。例えば細胞および/または生検中のAblキナーゼを局所化または定量することが所望の場合は上記標識化組織を組織学的分析にかけることもできる。
【0039】
本発明は組織からAblキナーゼを単離する方法にも関わる。これらの方法は、組織を均質化し、均質化した組織と、結合部分も有する上記化合物の一つと組合わせ、Ablキナーゼに結合した化合物を単離することを含む。当業者は公知の方法を用いて不当な実験を行うことなくこれらの方法を実施できる。Ablキナーゼをさらに特徴づけることが必要ならば、上記化合物を例えば塩処理などによってAblキナーゼから単離することができる。単離したAblキナーゼは当業者には公知の任意の方法によっても特徴づけられる。
【0040】
Ablキナーゼを阻害する上記のペプチド類は、例えば慢性骨髄性白血病患者などにおいてin vitroまたはin vivoでその目的に使用できる。
【0041】
発明の好ましい実施形態は次の実施例に記載される。添付の請求項の範囲内のその他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の詳細な説明または実施を考慮することにより、当業者には明らかである。詳細な説明は実施例と共に例示的であるに過ぎないものとする。発明の範囲および精神は実施例に続く請求項によって記載されている。
【実施例】
【0042】
(実施例.Abi1/Hssh3bp1から誘導されるペプチドによるc−Ablキナーゼの阻害)
実施例の概要
c−Srcとは異なり、c−Ablチロシンキナーゼ調節の自己阻害的機序には、cisに位置する阻害的ホスホチロシンは含まれない。ここで我々は、Abi/Hssh3bp1においてtransに位置するホスホチロシンによるc−Ablキナーゼ阻害のアロステリック非−ATP−競合的機序を確認したことを報告する。この機序は、ホスホチロシンのAbl SH2ドメインに対する、およびPXXPモチーフのAbl SH3ドメインに対する高い親和性結合を含み、したがってホスホ−Ablによる負のフィードバック阻害を意味する。in vivo c−Ablキナーゼ活性の調節におけるAbi1の決定的役割は、野生型の発現では細胞内キナーゼ活性が阻害されるが、Abi1のYないしF突然変異体によっては阻害されないという事実によって支持される。さらにデータは、細胞増殖がAbi1の調節的チロシンの存在によって制御されることを示唆する。しかし、細胞スプレディングはAbi1−依存性c−Ablチロシンキナーゼ活性によって調節され、チロシンそれ自体によって調節されるものではない。分子模型は、ホスホチロシンとc−Ablとの結合がそのキナーゼの自己阻害コンフォメーションを安定化することを示唆する。これらの結合はAblキナーゼが細胞内で調節される新規の機序を示唆し、抗白血病薬開発のための新規の戦略をもたらす。
【0043】
はじめに
遍在する非受容体チロシンキナーゼ、c−Ablキナーゼは、血小板由来増殖因子受容体、インテグリン、またはサイトカインシグナリング、アポトーシスまたは細胞増殖増強を起こす平衡化事象の下流で作用する(Koleske et al.,1998;Woodring et al.,2003)。細胞増殖におけるc−Ablキナーゼの決定的役割は、c−Ablチロシンキナーゼのキナーゼ活性化突然変異型であるBCR−Ablの発現による慢性骨髄性白血病(CML)の劇的発症によって説明される(Druker et al.,2001a;Goldman and Melo,2003)。BCR−Ablは染色体転座およびBCRとc−Ablとの融合から生ずる融合プロテインであり、それはキナーゼ活性の異常調節(disregulation)を効果的に起こす。このキナーゼ活性を低減する合理的研究はCML(Druker et al.,2001b;Druker et al.,1996)およびその他の数種類の癌の成功的処置として、STI−571(イマニティブ メシレート(imanitib mesylate)またはグリーヴェク(Gleevec))(Buchdunger et al.,1996)の開発に導いた。ATPとの競合により、および不活性キナーゼコンフォメーションの安定化によってキナーゼを阻害するSTI−571は(Schindler et al.,2000)、癌治療のための抗キナーゼ薬開発のテンプレートを提供した。第二世代の抗−Abl薬(Shah et al.,2004;Weisberg et al.,2005)を含む多数の抗キナーゼ化合物が現在トライアル中であり(Garber,2006)、CML治療後の長期緩解の期待につながっている(O’Hare et al.,2005)。抗Abl阻害剤の成功は薬剤耐性突然変異の出現によって取り消され(Gorr et al.,200一;von Bubnoff et al.,2002)、Bcr−Abl調節機序の再考につながった(Al−Ali et al.,2004;Khorashad et al.,2006;Miething et al.,2006)。これによりc−Ablが再び注目されるようになった、なぜならばBcr−Ablおよびc−Ablは大部分の調節ドメインを共有しているからである(Hantschel and Superti−Furga,2004;Woodring et al.,2003)。
【0044】
自己阻害がc−Srcおよびc−Abl調節の主要機序として浮上した(Courtneidge,2003;Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003;Pluk et al.,2002;Thomas and Brugge,1997;Wang,2004)。これらのキナーゼは高度に保存された構造ドメイン:SH3、SH2、および触媒ドメインの存在によって与えられる高度な構造相同性を共有する。c−Src(Williams et al.,1997;Xu et al.,1999)およびc−Abl(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003)の結晶構造は、SH3およびSH2ドメインが触媒ドメイン(CD)に結合し、自己阻害コンフォメーションを誘起し、これらキナーゼ類の基礎的調節機序を提供する。この基礎的調節はBCR−Ablに保存される。なぜならばBCR−AblはSH3ドメインを含んでその下流のすべてのc−Ablドメインを含むからである。
【0045】
c−Srcとc−Ablとは、これらキナーゼの活性を阻害する2つの機序において互いに異なる。c−Srcでは、阻害はSH2ドメインと、同じ分子上のC−末端に位置するリン酸化チロシン527との分子内相互作用によって実現する(Thomas and Brugger,1997)。c−Ablにおいては、内部ホスホチロシン−SH2ドメインの相互作用はなく、この阻害機序は除外される。さらにc−Srcとは対照的に、キナーゼドメインのC−末端ローブへの直接的ミリストイル化キャップ結合によって、およびSH2ドメインへのキナーゼ領域ホスホセリン69結合によって、付加的阻害的束縛がc−Ablに課せられる(Nagar et al.,2006)。これらの相互作用はさらにSH3−SH2“クランプ”を触媒ドメインにロックする。ミリストイル基(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003)またはその作用を真似る小化合物(Adrian et al.,2006)が触媒ドメインのC−末端らせん、αI、の位置を安定させ、その結果そのキナーゼの阻害的コンフォメーションが形成される。しかしミリストイル化キャップによって課せられる“分子ロック”は、部分的キャップ領域だけを含むc−Abl−アイソホーム1aの非ミリストイル化形、またはBCRによって置換されたBCR−Ablには存在しない。したがってミリストイル化キャップはBCR−Abl、またはc−Abl−1aのキナーゼ活性を調節しない、ただし後者にはホスホセリンが保存されており、それ(ホスホセリン69)が自己阻害機序の一因となる可能性はある(Nagar et al.,2006)。キャップ領域の分子内相互作用は接近し易さも調節するらしく、Abl活性化に役割を演ずるかも知れない増殖因子からのホスホチロシン含有ペプチド類を含むAbl SH3またはSH2リガンドの結合を調節するらしい(Hantschel et al.,2003)。Abl調節の複雑さを考慮すると、キナーゼ活性の活性化は、触媒ドメインからのSH3およびSH2の単離、および阻害からのキナーゼ“開放”につながる複数の工程を含むらしい。
【0046】
c−Ablキナーゼに結合する種々のプロテインはc−Abl共阻害剤であることが提唱されている。プロテインF−アクチン、PagおよびRbは、c−Ablの自己阻害コンフォメーションを安定化することによって受動的共阻害剤として作用すると仮定されている(Wang,2004)。候補c−Abl阻害剤の別のセット、Abi1およびAbi2はc−Abl結合パートナーを同定する研究(Dai and Pendergast,1995;Shi et al.,1995)並びにその他のプロテインからのSH3ドメインの結合パートナー、名称E3b1(Biesova et al.,1997)、またはHssh3bp1(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)を確定する研究において単離された。c−AblキナーゼシグナリングにおけるAbiプロテインの阻害的役割は、主として細胞増殖の調節におけるAbi1およびAbi2の阻害的役割に基づくことが提唱されているが(Dai and Pendergast,1995;Macoska et al.,2001;Shi et al.,1995)、それらの作用の分子的機序は明らかでない。LnCAP前立腺腫瘍細胞系はエクソン6の決失をおこすAbi1遺伝子の異型接合突然変異を含むから、これがAbi1の重要な増殖調節領域である可能性が指摘される(Macoska et al.,2001)。Abi1およびAbi2は富プロリン−リンカー、PRL、のc−AblキナーゼC−末端PXXP配列(Dai and Pendergast,1995;Shi et al.,1995)、およびc−Abl SH3ドメイン(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)と相互作用する。そこで増殖調節の一つの機序として、AbiのPXXP配列およびSH3ドメインをc−Abl SH3ドメインおよびPRLの領域に協同結合することによってc−Ablキナーゼ自己阻害コンフォメーションを強化することによるc−Ablキナーゼの調節が含まれるかも知れない。しかしSH3またはSH2を基礎とするキナーゼ調節機序は、c−AblキナーゼおよびAbiプロテインについては証明されなかった。その上、STI−571耐性突然変異がAbl SH3およびSH2ドメインに見いだされ(Azam et al.,2003)、もしAbiプロテインがこれらのドメインへの結合によってAbl触媒活性が調節されるならば、それらはin vivo STI−571耐性を調節する上で重要である可能性が示唆される。
【0047】
Abi1のAbl SH3およびSH2結合領域から誘導されるホスホペプチドによるc−Ablキナーゼ阻害の新しいアロステリック機序の発見をここに報告する。分子模型化からは、ホスホペプチドがc−Ablキナーゼの自己阻害コンフォメーションを安定化し、Abl触媒ドメインのC−ローブに結合したミリストイル基およびSH2ドメインで観察されるものと同様のコンフォメーションに導くことが示唆される。ここに明らかにされたキナーゼ阻害機序が、AblおよびBcr−Ablキナーゼ類のアロステリック阻害剤を開発する新規の方法として利用できると考えられる。
【0048】
結果
c−Ablはin vitroでAbi1のY213をリン酸化する。Abi1のチロシンリン酸化部位の探査において、以前Abl SH3ドメインに結合することが証明されたAbi1の富プロリン−領域内に、候補チロシン残基、Y198およびY213が位置することを我々は確認した(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)。上記プロテインのN−末端半分をコードする翻訳されたポリペプチドをin vitroで用い、Y213がAblキナーゼによるin vitroリン酸化の好ましい位置であることを確認した(図1)。Y213のリン酸化部位は、組換えAbi1および活性c−Ablを含むキナーゼ反応後、トリプシンペプチドの質量分析によって確認された(表1)。
【0049】
【表1】

トリプシン消化後に試料を分析した。記載されるチロシン213またはフェニルアラニン置換を含む特異的イオンの予測および実験的質量を列挙する。野生型(WT)トリプシンペプチドの配列はTLEPVKPPTVPNDpYTSPARである;ホスホチロシン213は太字で書かれている。F213:WTと同じだが太字のY213F置換有する:TLEPVKPPTVPNDFTSPAR。T15WSはAbi1アイソホーム4の残基144−303を含み(Ziemnicka−Kotula et al,1998)、WTと同じトリプシンペプチドを含む。Met−O:すべての試料に存在した酸化メチオニンである(上のトリプシンフラグメントでは下線が引かれている);したがって2種類(非リン酸化試料)または4種類(リン酸化試料)の分子が認められた。方法。ニューイングランド ビオラボ社(New England Biolabs)からのAblキナーゼ、T15WS、またはバキュロウイルス精製Abl、アイソホーム2によって試料をリン酸化した。キナーゼ反応を30分間行った後に4−12%Bis−Trisゲル上でプロテイン類を分離した。特異的プロテインバンドを単離し、トリプシン分解にかけた(シグマ−アルドリッヒ社、セントルイス、MO)。それら試料を0.5%TFAで酸化した後、ZIP TIP−18(ミリポア コーポレーション(Millipore Corporation)、ベッドフォード、MA)を用いて試料を濃縮し、0.1%TFAおよび50%アセトニトリルで溶出し、50%アセトニトリルおよび0.5%TFA中α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸基質(シグマ アルドリッヒ社、セントルイス、MO)を含むチューブに受け入れた。質量分析はアプライド ビオシステムズ社(Applied Biosystems)(フォスターシティ、CA)のVoyager DE MALDI質量分析計を用いて行われた。
【0050】
Abi1の最小Abl SH3およびSH2ドメイン結合部位の同定。最初に、c−Abl SH3ドメインの結合がAbi1の残基144−260に位置づけられた(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)。その後Abl SH3結合を、チロシン213から上流に位置するPXXP SH3結合モチーフを含むAbi1配列にマッピングした。PXXP配列、181PPSPP185、を含むAbi1の残基173〜187の決失は、Abl SH3ドメインへの結合を完全に破壊した(図2A)。
【0051】
Abl SH3結合部位がチロシン213に接近していることは、リン酸化チロシンがAbl SH2ドメインと相互作用することを示唆する。この相互作用を、リン酸化チロシン213(pY213)およびGST−Abl SH2ドメイン融合プロテインを含むビオチニル化14残基ペプチドを用いて分析した(図2B−D)。最初に、Abl SH2ドメインはホスホペプチドpY213とは相互作用するが非リン酸化ペプチド(ノンホスホペプチド)Y213とは相互作用しないことが明らかになった(図2B)。我々は種々濃度のAbl SH2ドメインを用いて、pY213がSH2ドメインと高度の親和性をもって相互作用することを確認した(会合常数、K=3.01×10;解離常数、K=3.32×10−8;会合速度、Kon=1.13×105s−1;解離速度、Koff=3.76×10−3−1−1)(図2C)。対照実験は、Abl SH2R171K突然変異体がpY213と相互作用しないことを示した(図2D)。この結果は、R171突然変異がSH2ドメインとホスホペプチドとの相互作用を不可能にするという知見(Mayer et al.,1992)と一致する。
【0052】
pY213ホスホペプチドは非競合的機序によってc−Ablキナーゼ活性を阻害する。c−Ablキナーゼの結晶構造に基づくと、SH2ドメイン−ホスホペプチド相互作用はc−Ablキナーゼ活性を調節するポテンシャルを有する(Hantschel et al.,2003)。そこでチロシン213を含むAbiの諸配列がc−Ablキナーゼ活性に影響を与えるかどうかを試験する実験が行われた。これらの実験には、活性c−Abl(Tanis et al.,2003)、モデル基質ペプチド(Brasher and Van Etten,2000;Pluk et al.,2002)および、ホスホチロシン、pY213、または位置213にチロシンのフェニルアラニン置換があるF213を含む14残基ペプチドの形(ペプチド配列は図1Aを参照)を用いた。pY213ホスホペプチドはVmaxの38%減少を示し、基質ペプチドのKには有意な効果を与えなかった。これは非競合的阻害機序に一致する(図3A−B、および表2)。ペプチドF213ではキナーゼ活性に対する影響は認められなかった。
【0053】
【表2】

Abi1ペプチドについて2mMのF213およびpY213のVmaxおよびKの概要(平均値±s.d.;n=3)。p≦0.05;**p≦0.001;PEP、基質ペプチド。ペプチドの記述は図1Aを参照。
【0054】
非リン酸化ペプチドY213は2mMでpY213に比べてキナーゼ活性の有意な減少を示す(表2)。上記Y213は、pY213ペプチドより低濃度で有意なキナーゼ阻害を示した(図3Eおよび3F、および表2)。14残基ペプチドY213はAblキナーゼ自体の基質として作用することができ、それはモデル基質ペプチドと競合した。しかしラインウェーバーバーク曲線は基質ペプチドのKの減少を示し(Y213ペプチド濃度0.1mMおよび2.0mMでは有意、表2)、したがってより低いVmaxは基質ペプチドのターンオーバーの低下によるキナーゼ活性の阻害を示唆する。興味深いことに、pY213ホスホペプチドのN−末端にSH3ドメイン結合配列が含まれると、ペプチド濃度2mMでc−Ablキナーゼに対する阻害効果は高まった。しかしより低い濃度では阻害は観察されなかった(図3)。つまり、Y213Fを除いて、試験したすべてのペプチド14マー、すなわちpY213およびY213、並びに49マーであるProYp213はc−Ablキナーゼ活性の阻害を示した。しかし阻害機序は、異なるペプチドでは異なる。
【0055】
SH3ドメイン結合はc−Ablキナーゼ活性の阻害において重要である。pY213ホスホペプチドのN−末端に、181PPSPP185を含むSH3ドメイン結合配列があると(ペプチドPro−pY213)、ペプチド濃度2mMでc−Ablキナーゼに対する阻害効果は高まるが、より低濃度では阻害は認められなかった(図3C)。実際、c−Ablキナーゼは、0.5ないし1mMの間で活性の若干の増加を示した。この効果についてより多くを学ぶために、pY213のN−末端に上記配列を含むPro−pY213から誘導されるペプチドを用いてキナーゼ活性を測定した(図3D)。ペプチドPro−Y198はペプチド濃度の上昇につれて阻害が増加することを示した;この効果はSH3結合モチーフ181PPSPP185181PESEP185(ペプチドEE−Y198)への突然変異で、またはY198のF198置換(ペプチドPro−F198)で失われた。ペプチドPro−pY213は0.75から1.25mMまでの濃度でキナーゼ活性を高めた。その後は1.5mMで活性は減少し、1.75および2mMで阻害が起きた。これらのデータは:(a)Pro−pY213が、濃度に応じてc−Abl活性をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションすることができ;(b)Abi1の配列181PPSPP185、Y198、およびpY213が、Pro−pY213によるc−Ablキナーゼ活性の調節に重要であることを示している。
【0056】
Abi1 Y213はc−Ablに依存する様態でリン酸化される。チロシン213がin vivoでリン酸化されるかどうかを調べるために、培養細胞系をモデル系として用いた。リン特異的抗体を用いるAbl−/−Arg−/−二重ノックアウト細胞における実験により、Abi1がc−Ablキナーゼと共にトランスフェクトされる場合に限り、Y213がリン酸化されることが示される(図4A)。突然変異体Y213Fは、c−Ablと共にトランスフェクトされるたとき、Abi1−F213の安定性を明らかに低下させた(図4A)。c−Ablとの共トランスフェクションでAbi1−△Ex6の安定性も明らかに低くなる。ただし組換えバンドはIgGバンドとオーバーラップする。一過性トランスフェクション効率または組換え蛋白の局在性において、いずれのAbi1突然変異体でも変化は認められず、それらはすべて組換えc−Ablと共に局在した(データは示されず)。
【0057】
Abi1発現は、c−Ablキナーゼ活性の調節によってLnCAP細胞の細胞増殖および細胞スプレディングを調節する。Abi1が細胞のc−Ablチロシンキナーゼ活性を調節するかどうかを確認するために、LnCAP前立腺細胞系をモデル系として用いた。このLnCAP細胞系は異形接合、エクソン6−スキッピング突然変異を含み、Y213を含むAbi1領域の消失を起こす(Macoska et al.,2001)。これはLnCAP細胞におけるAbi1の明白な低レベル発現につながる(図9を参照)。c−Ablキナーゼの確立された機能と一致して、Abi1−wtを補充した安定な細胞系は増殖阻害(図5)および細胞スプレディング活性低下(図5B−C)を示した。我々は同じアッセイを用いて、STI−571がAbi1の発現として、LnCAP細胞の細胞スプレディング活性に対して同様な阻害効果を有することを示した(図5C)。Abi1をトランスフェクトしたLnCAP細胞においては、総Abi1発現のわずかの増加が認められるという事実にもかかわらず(図6A)、c−Abl活性は有意に減少した(図6)。c−Ablは、外因性Crk基質または内因性Crkのリン酸化減少(図6B)並びに8E9免疫反応性バンドのチロシンリン酸化の減少(図6C)によって示されるように活性の低下を示した。c−Ablの活性化ループ チロシンY412のリン酸化も減少した。これらはLnCAP細胞内の蛋白リゼートのチロシンリン酸化の減少を伴った。これらのデータから、Abi1をトランスフェクトした細胞ではc−Ablの活性が低くなることが、はっきりとわかった。こうしてAbi1(+)細胞系におけるAbi1のレベル上昇は、c−Abl活性のダウンレギュレーションによる細胞増殖および細胞スプレディングの減少につながった。チロシン213がc−Ablの活性上昇によってより多くリン酸化されているLnCAP細胞では、Abi1(+)細胞に比べてAbi1がより効率的にc−Ablと共沈殿するという事実は(図6D)、c−Ablの基質、すなわちAbi1によるc−Abl阻害の負のフィードバック機序を裏付ける。
【0058】
Abi1のpY213および181PPSPP185配列はc−Ablチロシンキナーゼ活性を調節し、それを細胞増殖および細胞スプレディングの調節につなげる。一過性トランスフェクションにおけるAbi1−F213の明らかに低い安定性を回避するために、およびc−Ablキナーゼ活性および細胞増殖におけるAbi1のpY213および181PPSPP185の役割に、より詳細に取り組むために、野生型Abi1−wt、またはAbi1の下記の突然変異体:Y213F、Abi1−Y213F、および181PPSPP185ないし181AESEA185およびAbi1−Proを安定的にトランスフェクトしたLnCAPクローンを得た。Abi1−F213の発現はc−Ablキナーゼ活性を阻害しなかったし、Abl−Proの発現もc−Ablキナーゼ活性を阻害しなかった(図7Aおよび7B)。これは活性化ループチロシンのリン酸化レベルによって(pY412)、または内因性Crkリン酸化レベルによって測定したようにAbi1−wtとは対照的である。例えば、Abi1−F213細胞にはAbi1−wt細胞より高レベルの阻害物質が発現しているとはいえ、負のフィードバック機序によるc−Ablキナーゼの阻害はAbi1−F213細胞にはあらわれない。Abi1クローンの増殖速度を分析した結果、最も遅い速度で増殖し、Abi1(+)およびAbi1−wtクローンに類似しているが対照的に高c−Abl活性を有するAbi1−Y213Fクローンを除いて、これらの速度はより高いc−Abl活性を有する細胞ではより高いことが判明した(図7C)。コラーゲン上におけるAbi1クローンの細胞スプレディング活性も評価した。野生型Abi1、すなわちクローンAbi1(+)およびAbi1−wtを発現する細胞だけが細胞スプレディングの減少を示した(図7D)。これらの細胞はより低いc−Ablキナーゼ活性を有した。したがってLnCAP細胞の細胞スプレディング活性はAbi1依存性c−Ablチロシンキナーゼ活性によって調節される。興味深いことに、細胞の高い細胞スプレディング活性はAbi1の増殖シグナルとは無関係であった、すなわちAbi1−F213クローンはAbi1−Proクローンに類似した細胞スプレディング活性を示した。しかしそれらは有意により緩徐に増殖した)。
【0059】
検討
Abi1がc−Ablチロシンキナーゼ活性を調節する際に考えられる機序が提供される。その機序は、Abi1のN末端領域のY213をc−Ablキナーゼによってリン酸化し、それをAbl SH2ドメインに結合し、その後のキナーゼ阻害を起こすことを含む。これは、別のプロテイン、すなわちAbi1においてトランスに位置するホスホペプチドによってc−Ablキナーゼが阻害されるという最初の証明である。c−AblキナーゼによるAbi1のY213位置のリン酸化はこれまでは証明されていない。ただしBCR−AblのSTI−571依存性基質標的を決定するためのショーグン(shogun)法では、それがBCR−Ablのリン酸化部位であることが確認されている(Goss et al.,2006)。
【0060】
Abi1ホスホペプチド類はアロステリック機序によってc−Ablキナーゼを阻害する。この機序はリン酸化Y213のAbl SH2ドメインへの高親和性結合を含む。Kmは変化せず、Vmaxの減少が観察されたのは、pY213を含むホスホペプチドによるキナーゼ活性阻害の非競合的機序と一致する。c−Ablの構造研究(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003)は、SH3−SH2−触媒ドメインアセンブリーを含む非ミリストイル化c−Ablフラグメントの結晶構造においてホスホチロシン結合部位が一部妨害されていることを示す。得られたin vitroキナーゼデータは、このキナーゼのIaおよびIb両方の型によって共有された非ミリストイル化、アンキャップドc−Ablキナーゼに関係している。例えばAbi1ホスホペプチドpY213との相互作用は、c−Abl分子の(特にSH2およびキナーゼドメインの)顕著なコンフォメーション変化を含むはずである。
【0061】
分子模型は、Abi1が不活性キナーゼコンフォメーションを安定化することを示す。(図8A参照)。このコンフォメーションはミリストイル化キナーゼで観察されるもの、またはミリストイル結合ポケットへのGNF−2結合によって安定化されると言われているものに類似している(Adrian et al.,2006)。ミリスチン酸塩結合状態において、キナーゼドメインのC−末端αI’らせんの特異的位置によって不活性キナーゼコンフォメーションが得られる(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003)。これはSH3、SH2およびCDドメインの自己阻害アセンブリーをさらに強化する。Abi1のc−Ablへの結合は、Abl触媒ドメインのC−ローブにおけるC−末端らせんの位置に影響を与えることによって、Ablキナーゼの阻害コンフォメーションを強化できることが予想される。これは分子模型データによって裏付けられるように、SH2ドメイン−触媒ドメイン相互作用がAbi1ホスホペプチドによって安定化されることによる(図8A)。曲がったαI’らせんコンフォメーションを安定化することによってミリストイル基のように作用すると仮定されているGNF−2のような小分子(図8B)が、なぜ細胞内でBCR−Ablを阻害するかは、Abi1とBCR−Ablとの結合によって説明されるかも知れない(Adrian et al.,2006)。
【0062】
Abl SH3ドメインへの結合はAbi1によるc−Ablキナーゼ活性の調節において重要である。これはAbi1のAbl SH2およびAbl SH3ドメイン結合領域両方を含むホスホペプチドPro−pY213によるキナーゼ活性の調節によって証明される。Pro−pY213はキナーゼ活性に対するアップレギュレーションおよびダウンレギュレーション効果の両方を引き出す。これらの効果はペプチド濃度に左右される。より低い濃度ではPro−pY213はAbl活性をアップレギュレートする;これは十中八、九、SH3およびSH2ドメインと触媒ドメイン(CD)およびSH2触媒ドメインリンカーとの阻害的相互作用と競合し、これを緩和することによる(Brasher et al.,2001;Nagar et al.,2003)。これらのデータは、最近c−Srcで観察されたように(Cowan−Jacob et al.,2005)、または活性c−AblのSAXS分析によって示唆されたように(Nagar et al.,2006)、CDドメインからのSH3およびSH2ドメインの単離を含む、Pro−pY213のc−Abl活性化の諸工程を示唆する。Pro−pY213のN−末端領域から誘導されるペプチド類のその後の分析は、SH3結合配列、181PPSPP185、およびY198が、c−Ablキナーゼの調節のために重要であることを示している;これは十中八、九、キナーゼの阻害されたコンフォメーションを安定化することによると考えられる。キナーゼ活性のアップレギュレーションは完全な長さのPro−pY213でなければ観察されず、したがってこのペプチドPPSPP、Y198、およびpY213の3つの要素すべてがこの効果を引き出すのに必要である。より高濃度ではPro−pY213は3つのすべてのc−Ablドメイン、すなわちSH3、SH2およびCDとの相互作用に十分に関与するらしく、キナーゼの新しい、阻害されたコンフォメーションを安定化させるらしい(図8A)。バイアコアを用いて、低ミリモル範囲ではGST−SH3−SH2が、GST−SH2およびPro−pY213で観察されるものに非常に近いKdでpY213と相互作用することが確認された(データは示されず)。これらおよび、ホスホセリン69の役割に関する構造データは、GST−SH3−SH2においてSH3およびSH2ドメインが全く無秩序であることを示唆する。そこで、in vitroでPro−pY213とSH3−SH2ドメインとの相互作用を安定化するためには高濃度のPro−pY213が必要である。これはin vitroキナーゼアッセイにおいてc−Abl活性に対する影響を引き出すために、なぜ極めて高い濃度のPro−pY213ペプチドが必要であるかも説明できる。しかし最近のc−Abl構造は、Abl SH3およびSH2ドメインの相互作用がホスホセリン69によって安定化されることを示している。これは、これらのドメインが会合構造における1ユニットとして働くことを示唆する(Nagar et al.,2006)。c−Ablに関する最近の構造情報を取り入れた、Abi1によるc−Abi1キナーゼ調節のこのモデルにおいて(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003;Nagar et al.,2006)、SAXS分析によって提起されるように、Pro−pY213が先ず最初に自己阻害された構造を開き、伸長した、より大きい活性を有するAblが生成することが考えられる(Nagar et al.,2006);この後に、一部または完全に閉鎖した構造を有する、活性のより小さい、および不活性の中間体が生成する(図8B)。
【0063】
以前、Hantschel ら、2003(Hantschel et al.,2003)は短いホスホチロシン含有ペプチドがミリストイル化c−Ablキナーゼを活性化できることを明らかにした。多分in vivo増殖因子受容体細胞質ドメインを代表するこのようなホスペプチド類は、阻害プロテインAbi1と競合してAblのホスホチロシン結合部位に結合することによってc−Ablキナーゼを活性化することができる。
【0064】
基質チロシン213を含むペプチドY213は、Ablキナーゼ活性の最も強力な阻害を示した。この基質ペプチドのKmの減少並びにVmaxの減少(0.1mMおよび2mMにおける)は、Y213ペプチドがその他のAbl基質のターンオーバーを減らすことを示唆する。これは生理学的に意味をもつかも知れない、なぜならばAbi1/Hssh3bp1はAblキナーゼのその他の細胞基質を標的にするからである(Maruoka et al.,2005)。
【0065】
LnCAP細胞における実験は、Abi1に対するSH3およびSH2結合によるc−Abl調節機序を裏付ける。Abl SH2ドメイン(Y213F)またはSH3ドメイン(181PPSPP185)結合配列、181PPSPP185、に突然変異を有するAbi1の発現は、Abi1のc−Abl阻害能力を低下させる。Abi1突然変異体を安定的にトランスフェクトした細胞において、c−Ablの活性化ループチロシンpY412のリン酸化によって、並びにその基質であるCrkの高められたチロシンリン酸化によって測定して、より高いc−Abl活性が観察された。LnCAP細胞における野生型Abi1発現の際の負のフィードバック阻害の結果としてのより低いc−Ablキナーゼ活性は、PDGFまたはインテグリンシグナリングのような増殖因子受容体から下流の細胞分裂促進効果におけるc−Ablの役割のダウンレギュレーションと一致する(Wang,2004;Woodring et al.,2002)。したがって、より低いc−Ablキナーゼ活性は細胞増殖および細胞スプレディング活性の阻害につながる。以前、c−Ablキナーゼ活性は、インテグリンシグナリング(Lewis et al.,1996)、ミクロスパイク形成(Woodring et al.,2002;Stuart et al.,2006)、または細胞スプレディング(Leng et al.,2005)の増加と関連づけられた。しかしそのプロセスの明らかな機序はAbi1に対しては提起されなかった。
【0066】
最も速い速度で増殖したAbi1−Proクローンは高いAblチロシンキナーゼ活性を有し、それらはY213を含む、という事実は、Y213および/またはpY213(後者の方がより確からしい)がc−Ablキナーゼの下流の増殖シグナルの伝達に役割を演じていることを示唆する。野生型Abi1をトランスフェクトしたLnCAPクローンは野生型LnCAP細胞よりも高レベルのY213を含むが、基質Y213のリン酸化産物であるpY213による負のフィードバックによって、より低いc−Abl活性を有する。Abi1(+)細胞は、pY213レベルが低いために、一貫して野生型LnCAP細胞よりもゆっくり増殖する(図6Dを参照)。この考え方は、組換えAbi1−F213がY213上ではリン酸化されないのでAbi1−F213細胞も緩徐に増殖するという事実とも一致する。pY213が例えばダウンストリームエフェクターに結合することによって細胞増殖を促進し、その間c−Ablキナーゼ活性阻害もするならば、これは、c−Abl依存性増殖シグナルがその基質であるAbi1によって非常にきっちりと調節されることを示唆するものである。基質Abi1は負のフィードバックループによってc−Abl阻害剤としても作用する。
【0067】
興味深いことに、細胞スプレディング活性は細胞内の高Ablキナーゼ活性と対応する;これは増殖阻害をあらわすAbi1−F213細胞を含んでいた。そこでAbi1依存性増殖調節は細胞スプレディングのAbi1依存性調節とは切り離される。この調節はWave2のリン酸化の調節を含むらしい。c−AblによるWave2のリン酸化は、細胞スプレディングを調節するArp2/3およびアクチン細胞骨格の再構成を促進することが示唆されている(Leng et al.,2005;Stuart et al.,2006)。野生型LnCAP細胞におけるAbi1の比較的低い発現、またはAblキナーゼ活性に対するAbi1の阻害効果を完全になくす突然変異を有するAbi1の発現は、Wave2の高リン酸化を起こし得る。そしてこれが細胞の細胞スプレディング増加につながるらしい。こうして増加した細胞スプレディング活性は高いc−Ablチロシン活性と一致し、Y213の存在とは一致しない(細胞増殖とは対照的である)(図10)。
【0068】
これらのデータは、c−AblおよびArgのような非受容体Ablチロシンキナーゼ類がAbi/Hssh3bp1プロテインファミリーによって調節される一般的機序を示唆する。Hssh3bp1遺伝子は染色体10p11.2上にある(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)、ジーンバンク受入れ番号No.U18766;Hssh3bp1はAbi1のヒト相同体である。Abi1の部分的配列が最初に確定されたのはマウスであり(Shi et al.,1995)、マウスAbi1の完全配列がより最近報告された(Ikeguchi et al.,2001)。調節チロシン213を含む領域はヒトからツメガエルにいたるまでAbi1とAbi2との間に高度に保存されており、キイロショウジョウバエのAbiに存在する(表3)。この保存された配列はPXXPモチーフ、181PPSPP185も含む。これはc−Abl−SH3ドメインおよびチロシン198に結合する。これまでに同定されたAbi1またはAbi2のすべてのアイソホーム(Ziemnicka−Kotula et al.,1998、およびL.Kotula、未発表データ)はすべてのAbiアイソホームにc−Abl調節が保存されていることを示唆する調節配列を含む。Abiの保存された領域は明らかに細胞内のc−Ablキナーゼ活性の調節にある役割を果たしている。ここで我々はAbi1のアイソホーム2におけるこの調節配列の役割を研究した。調節性Y213のリン酸化後に、AbiがAbl SH2およびSH3ドメインに結合する。これはc−Ablキナーゼ活性の一過性のアップレギュレーションおよびその後のダウンレギュレーションにつながる。この分子調節は生理学的意味を有する。なぜならばAbi1に結合する多数のプロテインが、リン酸化の基質としてc−Ablキナーゼの標的とされているからである(Leng et al.,2005;Maruoka et al.,2005;Tani et al.,2003)。そこでc−Ablキナーゼは、Abiプロテイン、c−Ablおよびリン酸化サイクル後にターンオーバーする基質を含む複合体のためにきっちりと調節されなければならない。Abi1もc−Ablの基質であるから、提案された調節は負のフィードバック機序を示唆する。Abi1に対するc−Abl SH3およびSH2結合は細胞内のこの調節機序のために重要である。これらのドメインにおける突然変異が細胞の形質転換を起こすからである(Jackson and Baltimore,1989;Mayer et al.,1992)。すべての調節ドメインをc−Ablと共有し、並びに同様なSTI−571阻害機序を有するAblファミリーの第二メンバーであるArgキナーゼ(Tanis et al.,2003)も、提起された機序によって調節されるらしい。
【0069】
【表3】

Abiプロテインファミリーのc−Ablキナーゼ調節領域の種間比較。コアPXXPコンセンサスを含むAbl SH3ドメイン結合部位、PPSPP、Y198、およびSH2ドメイン結合部位(下線を引いてある、調節ホスホチロシン、pYを有する)を含むAbi1の領域は、Abiプロテインファミリーの進化の際に高度に保存される。重要な残基は太線で書かれている。配列のジーンバンク受入れ番号は次の通りである:Abi1:Homo sapiens、U87166およびNM_005470;Bos taurus、XP_881074.1;Canis familiaris、XP_858231.1;Mus musculus、Q8CBW3;Xenopus laevis、AAH81178.1;Abi2:Homo sapiens、NP_005750.3;Mus musculus、AAH79646.1;Gallus gallus、XP_421962.1;Xenopus tropicalis、NP_001007488.1;Danio rerio、XP_685431.1、Drosophila melanogaster、AAD38382.1。**は、Drosophila melanogasterにおける配列RAGNTGTLGKSVSNTの挿入を示す。
【0070】
要するに、抗−Ablキナーゼ薬の新しい開発戦略として利用できるAblキナーゼの調節機序が確認された。c−Ablキナーゼの突然変異型はある種の癌に関係している、例えばBCR Ablは慢性骨髄性白血病(CML)に関係しており、急性リンパ性白血病(ALL)の幾つかの型にも関係している(Druker et al.,2001a;Goldman and Melo,2003)。STI−571の使用がこれら疾患を処置するために大きい希望をもたらすとはいえ、若干の患者は長期処置後にこの薬剤に対する耐性をもつようになる。STI−571耐性−突然変異がAbl SH3およびSH2ドメインに見いだされ(Azam et al.,2003)、これらの症例においてBCR−AblがAbi1による調節を逃れる可能性につながる(これはN−末端におけるBCRの存在および調節性キャップ領域の欠如によってすでに影響を受けている)。ここに記載される機序はBCR−Ablの将来の研究に直接強い影響を与え、CMLを処置するための新規のアロステリック化合物の開発を助けるはずである。
【0071】
実験法
Ablキナーゼ。Hisタグ付、アンキャップド活性c−Abl、E46からC−末端まで(アイソホーム1b)(Tony Koleske(エール大学、ニューヘブン、CT)のご好意により寄贈された)は、昆虫細胞を、細胞溶解前に30μMのSTI−571(ノバルティス ファーマ社(Novartis Pharma AG)、バーゼル、スイス)で48時間処理した後、記載のようにバクロウイルスから作製、精製された(Tanis et al.,2003)。発現したプロテインはニッケル−ニトリロ酢酸アガロース上でアフィニティ精製し、洗浄して阻害物質を除去し、その後Mono Sカラム(アマーシャムビオサイエンシス社(Amersham Biosciences)、ピスカタウエイ、NJ)を用いてイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。c−Abl SH2ドメイン野生型とR171K突然変異を含むSH2ドメインとのGST融合物、およびc−Abl−GSTを含む哺乳動物発現プラスミド(アイソホーム1b、C−末端にGSTを有する)をBruce Mayer(Unibersity of Connecticut Health Center、ファーミントン、CT)から入手した。
【0072】
Abi1(ジーンバンク受入れ番号NM005470およびU87166)。野生型または突然変異体Abi1アイソホーム2(残基番号はZiemnicka−Kotula et al.,1998による)はプラスミドから発現した。Abi1のエクソン6が欠如している突然変異体Abi1−△Ex6(Macoska et al.,2001)はLnCAP細胞からサブクローニングされた。突然変異体Abi1−F213はY213F置換を含む。突然変異体Abi1−Proは、Abi1の残基181−185であるPPSPPの代わりに配列AESEAを含み、その結果PXXP SH3結合モチーフを喪失している。GFPをコードする配列を除去し、C−末端にHAタグを導入した後、すべてのAbi1 cDNAsをpEGFP−N2プラスミドにサブクローンニングした(クロンテック社(Clontech)、マウンテンビュー、CA)。質量分析(表1)、またはSH3結合アッセイ(図2A)のためにAbi1のGST融合プロテインをpGEX−2Tプラスミド(アマーシャム ビオサイエンシス社、ピスカタウエイ、NJ)から発現させた。すべての発現プラスミドをシーケンシングによって確定した。Abi1のN−末端のin vitro翻訳を記載のように実施した(Macoska et al.,2001)。
【0073】
キナーゼアッセイ。キナーゼ活性の測定は、ビオチニル化モデル基質ペプチドGGEAIYAAPFKK(Brascher and Van Etten,2000;Songyang et al.,1995)および32P−γ−ATPを用いて、実質上記載のように行われた(Tanis et al.,2003)。SAM2ストレプトアビジン塗布膜(プロメガ コーポレーション(Promega Corporation)、マジソン WI)を用いて基質を捕獲した。キナーゼアッセイ混合物は、記載のように50mM Tris−HCl pH7.5、10mMのMgCl、1mMのEGTA、2mMのジチオスレイトール、0.01%Brij35、および100μMのATP、2nMのAblキナーゼ、基質ペプチド、およびAbi1リガンドペプチドを含んでいた。反応は30℃で5分間行われた。LnCAP細胞系のc−Ablキナーゼを評価するために、細胞溶解前に細胞を10分間ペルバナデートで処理した。溶解した細胞からの免疫沈降物を、基質としてGST−Crkを用いて試験した。
【0074】
ペプチドおよび抗体。すべてのペプチドは、ゲネムド シンテシス社(Genemed Synthesis,Inc.)(サンフランシスコ、CA)で合成された。抗−pY213ポリクローナル抗体をペプチドpY213に対して作製し、ホスホペプチド特異的カラムを用いてアフィニティ精製し、その後非ホスホペプチド(Y213)カラム上で精製した。PY99抗体はサンタクルス バイオテクノロジー社(サンタクルス、CA)からのもであった。ポリクローナルおよびモノクローナルHA抗体はコバンス社(バークレー、CA)およびロッシュ ディアグノスティック コーポレーション(Roche Diagnostic Corporation)(インディアナポリス、IN)から入手した。ここで使用したc−Ablに対する抗体は8E9(BD ビオサイエンシス、サンホゼ、CA)、K12(サンタクルス バイオテクノロジー、サンタクルス、CA)、pY412(ビオソース インターナショナル(Biosource International)、カマリロ、CA)から入手した;Crk抗体はBDビオサイエンシス社、サンホセ、CA(マウスモノクローナル);サンタクルス バイオテクノロジー社、サンタクルス、CA(ウサギポリクローナル);およびセル シグナリング テクノロジー社(Cell Signaling Technology)(ホスホ−Crk pY221)から得たものである。Abi1に対するポリクローナル抗体Ab−2が記載されている(Xu et al.,2000)。Abi1に対するモノクローナル抗体7B6が組換えAbi1に対して作製された;この抗体のエピトープはMab 4E2と一致した(Ziemnicka−Kotula et al.,1998)。グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)はイムゲネックス コーポレーション(Imgenex Corporation)(サンジエゴ、CA)から;GST抗体はチムド社(Zymed)(サンフランシスコ、CA)から入手した。ホスホチロシンに対するジェネリック抗体、PY99およびpY350、はサンタクルス バイオテクノロジー社、サンタクルス、CAから入手した。
【0075】
細胞培養およびトランスフェクション。Cos7およびLnCAP細胞(ATCC、ロックヴィル、MD)はATCCのインストラクションによって維持された。シングルAbl(−/−)ノックアウト線維芽細胞(Koleske et al.,1998)はウシ胎児血清を用いて維持された。リポフェクタミン プラス試薬(Lipoefetamine Plus Reagent)(インヴィトロジェン(Invitrogen)、カールスバド、CA)を用いてすべての細胞に発現プラスミドをトランスフェクトした。c−Ablのアイソホーム1b、およびAbi1のアイソホーム2(野生型または突然変異体)で、Abi1とc−Ablとによるすべての共トランスフェクションを行った。トランスフェクションの22時間後に、Xu et al.(2000)が報告したように、細胞を間接的免疫沈降または免疫蛍光法のために処理した。Abi1アイソホーム2の野生型またはHAタグ付または突然変異体を発現する安定な細胞系をG418選択を用いて得た(インヴィトロジェン社、カールスバド、CA);サブクローン化細胞系、Abi1(+)クローン1、およびAbi1(+)、クローン10における組み換え遺伝子の発現は、特異的プライマーを用いて得られたRT−PCR生成物のシーケンシングによって確定された。HA−タグ付Abi1の選択後、上記組換え蛋白の同レベルの発現を有する二重クローンが選択され、分析された。安定クローンの選択後、LnCAP細胞またはそのAbi1(+)サブクローンにおけるすべての実験はG418を添加せずに行われた。細胞増殖速度の測定は、標準としてBD FACSCantoTMフローサイトメーターおよびFlow−CountTMフルオロスフェアーズCat.No 7547053−200を用いて細胞数を数えることによって行われた(BDビオサイエンシス社、サンホセ、CA)。
【0076】
免疫沈降およびウエスタンブロッティング。細胞を、細胞溶解前に0.1mM過バナジウム酸ナトリウムで処理し、ホスファターゼを阻害した。免疫沈降を記載のように行った(Xu et al.,2000)。Abl SH3ドメイン結合を定量するためのウエスタンブロッティングおよび結合アッセイを記載のように行った(Ziemnicka−Kotula et al.,1998);ブロットはスーパーシグナル・ウエスト・ピコ化学ルミネッセンス基質(ピアス バイオテクノロジー社、ロックフォード、IL)を用いて展開した。コダックGL440画像化装置を用いて画像化し、コダック1D画像分析ソフトウエア(バージョン3.6.4)を用いて直接定量するかまたはあらかじめフィルムに露出させてから定量した。
【0077】
共焦点顕微鏡。LnCAPおよびAbi1−トランスフェクテド細胞系における細胞スプレディング活性を評価するために、8−チェンバ培養スライド(BDビオサイエンシス社、サンホセ、CA)を用いて生細胞の観察を行った。細胞スプレディング活性は次のように評価した:細胞が何らかの伸長を示した場合スプレディング活性を有すると評価し(陽性)、または細胞が丸い場合はスプレディング活性はない(陰性)と評価した。対照実験において、STI−571を3μMで24時間培地に加え、その後この化合物を加えずに再培養した。指示された時点に対象の4つのランダム領域の細胞を評価した。それは各時点にまたはn>100細胞の群で16時間続けられた。観察は、Zeiss510META共焦点顕微鏡を用いて培養後16時間行われた。LnCAPの細胞のスプレディングを確認するために、コラーゲンセル上のクローンをコラーゲンで覆った皿(マトテック・コーポレーション(MatTek Corporationアシュランド、MA)上に培養し、再培養後6時間の各クローンについて平均細胞面積(n=20)を評価した(ImageJ,version1.36b、ナショナルインスティチュート・オブ・ヘルス、USA)。
【0078】
表面プラスモン共鳴アッセイ。表面プラスモン共鳴アッセイはバイアコア3000インスツルメント(BIAコア社(BIAcore Inc.)、ピスカタウエイ、NJ)を用いて行われた。ビオチニル化14残基ペプチド、pY213またはY213、をストレプトアビジン−コーテド(SA)バイオセンサーチップ(BIAコア社,ピスカタウエイ、NJ)の表面に結合させた。結合反応は10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%(v/v)表面活性剤P20を含むHBS−EP緩衝液中で行われた。新たな各注入の前に50mMのNaOHおよび1MのNaClを用いて表面を再生した。バイアコア機器は、同じ再生された表面上でGST Abl SH2ポリペプチドの濃度を高めながら一連の結合アッセイを行うようにプログラムされた。誘導されたセンソグラム(表面上の反応単位の変化を時間の関数としてプロットする)をソフトウエアBIAeval3.0を用いて分析した。アフィニティ常数は1:1結合モデルを用いてフィットする曲線によって推定された。
【0079】
分子模型化。Abi1(P206−P217)からのペプチドを含む12残基のホスホチロシンをc−Srcプロテイン(pdbエントリー2src)のC−末端領域(F520−E531)のx線結晶構造に基づいて模型化した。c−Ablおよびc−Srcキナーゼ類は高度の相同性を有し、c−Srcのホスホチロシン残基(pY)527はSH2ドメインに結合するから、2つの構造をQuanta2000ソフトウエア(アクセルリーズ社、サンジエゴ、CA)でペプチド(F520−E531)を整列させ、c−SRCプロテインからの上記c−Ablおよびペプチドを合流させることによって、ペプチド(F520−E531)をc−Ablのx−線構造(pdbエントリー1opl)上に置いた。このペプチドをその後トリトン(Triton)ソフトウエアの突然変異誘発フィーチャーを用いてAbi1(P206−P217)ペプチドに突然変異させた。上記フィーチャーはプロテイン突然変異体のin silico構造のために設計されたものである(Dambosky et al.,2001)。トリトンは外部プログラム、Modeller、を用いて突然変異体の三次元構造を作り出す(Fisher and Sali、2003)。TRITONはホスホチロシン残基を確認しないから、最初はその代わりにチロシンを置いた。チロシン残基を、TRITON突然変異誘発工程後に、Quanta2000で突然変異させてホスホチロシン残基に戻した。その残基をQuantaの蛋白設計オプション(Protein Design option)内の“模型側鎖”を用いてさらに模型化した。c−Abl構造上に入っている突然変異ペプチドのプロテイン・ヘルス・チェックにより、密な接触は少なく、Charmmエネルギーが高いことが明らかになった。その構造をSteepest Descentの50工程、および100工程のConjugate Gradient法によって最小化し、これらの密な接触を除去した。
【0080】
統計分析。細胞増殖および細胞スプレディング活性の評価以外のすべての分析はMicrosoft Excel 2004 for Mac Version11.0を用いて行われた。表2(KmおよびVmaxの評価)および図7Bおよび7D(LnCAPクローンのAblキナーゼ活性、およびコアーゲン上の細胞スプレディング)では両側対t検定が用いられた。細胞スプレディング活性の評価、図5C、では、χ検定が用いられた;細胞増殖の評価、図7C、では、二元配置ANOVAを用いた(SigmaStatバージョン2、シスタト ソフトウエア社(Systat Software Inc.ポイントリッチモンド、CA)。図6Aでは、両側等分散性t−検定が用いられた。
【0081】
(参考文献)
【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
【表8】

上記から、本発明の幾つかの有益性が実現し、その他の有益性も得られることがわかる。
【0087】
上記方法および組成物には本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得るから、上記の記載に含まれ、添付の図面に示されるすべての事柄は例証的なものであり、制限するものではない。
【0088】
本明細書に記載されるすべての参考文献は参照としてここに組み込まれる。本明細書中の参考文献の検討は単に著者によってなされる主張をまとめたものに過ぎず、任意の参照が先行技術を構成することの承認はなされていない。出願人は記載の参考文献の正確さおよび適切性を吟味する権利を保有するものである。
【0089】
(付録−配列番号)
【0090】
【表9】

【0091】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、c−Ablキナーゼリン酸化部位として同定されたAbi1Y213を示すウエスタンブロットの図および写真である。パネルAはAbi1の調節領域を示す。最上部は本研究に用いたペプチドの図である。その図の下は調節因子チロシン213を含むAbi1の配列(残基169から217まで、ジーンバンク受入れ番号U87166)である。実施例に記載される実験に用いたペプチド類の名称は特異的ペプチドを描くライン上にある。ProはPXXPモチーフ、PPSPPが含まれることをあらわす;Yはチロシンを示す;pYはホスホチロシンを示す、Fはチロシンのフェニルアラニン置換を示す。キナーゼアッセイに用いられるペプチドPro−pY213、pY213、およびF213ペプチドのN−末端は配列上にかぎ付矢印でマークされる。ペプチドPro−Y198およびPro−F198は残基169−203に及ぶ;これらのペプチドにはpY213配列はない。ペプチドEE−Y198はPPSPPの代わりに配列PESEPを含み、その結果PXXP SH3結合モチーフは喪失する。パネルAの最下部はAbi1のN−末端のチロシンリン酸化を最初に特徴づけるために用いたin vitro翻訳ポリペプチド類を描いた図である。特徴的チロシン(Y)のフェニルアラニン(F)置換を含むポリペプチド類(矩形)が野生型full−lenghプロテインの下に図式的に描かれる。突然変異により、対象領域におけるチロシン残基Y198、およびY213のどちらかまたは両方が置換される。各ポリペプチドのキナーゼアッセイ結果は右側に示される。黒色領域はLnCAP細胞中に欠如しているAbi1のエクソン6を示す。パネルBはAbi1のin vitro翻訳N−末端のチロシンリン酸化を示すウエスタンブロットである。このプロテインのN−末端の半分およびチロシン残基の指示された突然変異を含むAbi1ポリペプチド類はc−Ablチロシンキナーゼとのin vitroキナーゼ反応を受けた。ポリペプチド類はSDSトリシン ポリアクリルアミドゲル(7%)で分離され、その後PVDF膜上にブロットされた。左のブロットはanti−HA抗体でブロットした膜を示す。HAエピトープは各ポリペプチドのC−末端に挿入された。右のブロットはanti−ホスホチロシン抗体PY−99でブロットした同じポリペプチドを示す。WT、野生型ポリペプチド;F213、チロシン213のフェニルアラニン置換を含むポリペプチド(Y213F);F198、チロシンのフェニルアラニン置換を含むポリペプチド(Y198F);FF、Y213FおよびY198Fを含むポリペプチド;リゼート、Abi1cDNAをもたない溶解物。
【図2−1】図2は、Abi1のN−末端における、c−Abl SH3およびSH2ドメインの最小結合領域の確定を示すウエスタンブロットのグラフおよび写真である。パネルAはこのc−Abl SH3ドメインへの結合を示す。Abi1/Hsshb3plのN−末端領域を含む組換えGST融合ポリペプチド類をSDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。次に示すAbi1ポリペプチドを分析した:残基1−187をコードするNl−187;残基1−172をコードするNl−172;残基1−253をコードするNl−253;残基1−253をコードするが、Abi1のエクソン6配列が欠如しているNl−253△Ex6(Macoska et al,2001);GSTはグルタチオンS−トランスフェラーゼである。左のウエスタンブロットの一番下の写真は、プロテイン発現レベルを示すために抗GSTモノクローナル抗体(抗GST)で試験した際の結果を示す。最上部の写真はビオチニル化GST−Abl−SH3ドメイン(GST−Abl−SH3−B)で得られた。ビオチニル化GST(GST−B)への結合は認められなかった(真中のパネル)。グラフは、独立的3実験から定量されたポリペプチドの相対的結合(n=3、±s.d.)をNl−253のパーセントとして示す。パネルB−Dはc−Abl SH2ドメインへの結合を示す。表面プラズモン共鳴分析を用いて、GST標識Abl SH2ドメインに対する、リン酸化チロシン213(pY213)または非リン酸化チロシン213(Y213)を含むビオチニル化14−残基ペプチド類の相互作用を決定した。パネルBは、pY213またはY213ペプチド類と結合したバイオセンサーチップスをAbl SH2ドメイン(1μM)と共に注入した際の結果を示す;パネルCはpY213結合バイオセンサーチップを指示された種々濃度のAbl SH2ドメインと共に注入した際の結果を示す。パネルDはpY213結合バイオセンサーチップを0.5μMのAbl SH2ドメインまたはAbl SH2ドメインR171K突然変異体と共に注入した際の結果を示す。GSTプロテインだけに対する結合は認められなかった(図示されず)。RUは反応単位。
【図2−2】図2は、Abi1のN−末端における、c−Abl SH3およびSH2ドメインの最小結合領域の確定を示すウエスタンブロットのグラフおよび写真である。パネルAはこのc−Abl SH3ドメインへの結合を示す。Abi1/Hsshb3plのN−末端領域を含む組換えGST融合ポリペプチド類をSDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。次に示すAbi1ポリペプチドを分析した:残基1−187をコードするNl−187;残基1−172をコードするNl−172;残基1−253をコードするNl−253;残基1−253をコードするが、Abi1のエクソン6配列が欠如しているNl−253△Ex6(Macoska et al,2001);GSTはグルタチオンS−トランスフェラーゼである。左のウエスタンブロットの一番下の写真は、プロテイン発現レベルを示すために抗GSTモノクローナル抗体(抗GST)で試験した際の結果を示す。最上部の写真はビオチニル化GST−Abl−SH3ドメイン(GST−Abl−SH3−B)で得られた。ビオチニル化GST(GST−B)への結合は認められなかった(真中のパネル)。グラフは、独立的3実験から定量されたポリペプチドの相対的結合(n=3、±s.d.)をNl−253のパーセントとして示す。パネルB−Dはc−Abl SH2ドメインへの結合を示す。表面プラズモン共鳴分析を用いて、GST標識Abl SH2ドメインに対する、リン酸化チロシン213(pY213)または非リン酸化チロシン213(Y213)を含むビオチニル化14−残基ペプチド類の相互作用を決定した。パネルBは、pY213またはY213ペプチド類と結合したバイオセンサーチップスをAbl SH2ドメイン(1μM)と共に注入した際の結果を示す;パネルCはpY213結合バイオセンサーチップを指示された種々濃度のAbl SH2ドメインと共に注入した際の結果を示す。パネルDはpY213結合バイオセンサーチップを0.5μMのAbl SH2ドメインまたはAbl SH2ドメインR171K突然変異体と共に注入した際の結果を示す。GSTプロテインだけに対する結合は認められなかった(図示されず)。RUは反応単位。
【図3−1】図3はAbi1からのホスホペプチド類がin vitroでc−Abl−キナーゼ活性を調節することを示す結果である。パネルAは指示されたペプチド類を2mMで添加した後のc−Abl−のキナーゼ活性を示す。垂直棒は±s.d.を示す;n=3。基質ペプチド濃度を高めながら、活性を5分間キナーゼアッセイで測定した。パネルBはパネルAのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。垂直棒は±s.d.を示す(n=3)。パネルEは指示された濃度のY213(非リン酸化)ペプチドを添加した後のc−Ablのキナーゼ活性(平均値±sem;n=3)を示す。パネルFは2mM濃度を除いて、パネルEのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。これらの実験からのVmaxおよびKmデータについては表2を参照されたい。パネルC、DおよびGは、基質ペプチド、PEP、100μMで、指示されたAbi1ペプチド濃度で、Abi1からのペプチド類(図1A)の添加後のc−Ablキナーゼ活性を示す;垂直棒はs.e.m.をあらわす(n=3)。パネルGはCと同じであるが、Y213実験からの追加的データを含む。ここに使用したペプチド類の配列情報については図1Aを参照されたい。
【図3−2】図3はAbi1からのホスホペプチド類がin vitroでc−Abl−キナーゼ活性を調節することを示す結果である。パネルAは指示されたペプチド類を2mMで添加した後のc−Abl−のキナーゼ活性を示す。垂直棒は±s.d.を示す;n=3。基質ペプチド濃度を高めながら、活性を5分間キナーゼアッセイで測定した。パネルBはパネルAのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。垂直棒は±s.d.を示す(n=3)。パネルEは指示された濃度のY213(非リン酸化)ペプチドを添加した後のc−Ablのキナーゼ活性(平均値±sem;n=3)を示す。パネルFは2mM濃度を除いて、パネルEのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。これらの実験からのVmaxおよびKmデータについては表2を参照されたい。パネルC、DおよびGは、基質ペプチド、PEP、100μMで、指示されたAbi1ペプチド濃度で、Abi1からのペプチド類(図1A)の添加後のc−Ablキナーゼ活性を示す;垂直棒はs.e.m.をあらわす(n=3)。パネルGはCと同じであるが、Y213実験からの追加的データを含む。ここに使用したペプチド類の配列情報については図1Aを参照されたい。
【図3−3】図3はAbi1からのホスホペプチド類がin vitroでc−Abl−キナーゼ活性を調節することを示す結果である。パネルAは指示されたペプチド類を2mMで添加した後のc−Abl−のキナーゼ活性を示す。垂直棒は±s.d.を示す;n=3。基質ペプチド濃度を高めながら、活性を5分間キナーゼアッセイで測定した。パネルBはパネルAのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。垂直棒は±s.d.を示す(n=3)。パネルEは指示された濃度のY213(非リン酸化)ペプチドを添加した後のc−Ablのキナーゼ活性(平均値±sem;n=3)を示す。パネルFは2mM濃度を除いて、パネルEのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。これらの実験からのVmaxおよびKmデータについては表2を参照されたい。パネルC、DおよびGは、基質ペプチド、PEP、100μMで、指示されたAbi1ペプチド濃度で、Abi1からのペプチド類(図1A)の添加後のc−Ablキナーゼ活性を示す;垂直棒はs.e.m.をあらわす(n=3)。パネルGはCと同じであるが、Y213実験からの追加的データを含む。ここに使用したペプチド類の配列情報については図1Aを参照されたい。
【図3−4】図3はAbi1からのホスホペプチド類がin vitroでc−Abl−キナーゼ活性を調節することを示す結果である。パネルAは指示されたペプチド類を2mMで添加した後のc−Abl−のキナーゼ活性を示す。垂直棒は±s.d.を示す;n=3。基質ペプチド濃度を高めながら、活性を5分間キナーゼアッセイで測定した。パネルBはパネルAのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。垂直棒は±s.d.を示す(n=3)。パネルEは指示された濃度のY213(非リン酸化)ペプチドを添加した後のc−Ablのキナーゼ活性(平均値±sem;n=3)を示す。パネルFは2mM濃度を除いて、パネルEのデータの二重逆数ラインウェーバーバーク・プロットを示す。これらの実験からのVmaxおよびKmデータについては表2を参照されたい。パネルC、DおよびGは、基質ペプチド、PEP、100μMで、指示されたAbi1ペプチド濃度で、Abi1からのペプチド類(図1A)の添加後のc−Ablキナーゼ活性を示す;垂直棒はs.e.m.をあらわす(n=3)。パネルGはCと同じであるが、Y213実験からの追加的データを含む。ここに使用したペプチド類の配列情報については図1Aを参照されたい。
【図4】図4は、Y213がc−Ablキナーゼによってリン酸化されていることを示すウエスタンブロットである。パネルAは、組換えAbi1のY213リン酸化がc−Ablキナーゼの発現に依存することを示している。二重Abl(−/−)Arg(−/−)ノックアウト細胞に野生型または突然変異体Abi1プラスミドを単独でトランスフェクトし、または示されるようにAbi1とc−Ablとを一緒にトランスフェクトした:野生型Abi1(Abi1−Wt);Y213F突然変異を有するAbi1(Abi1−F213);Y213を含む、エクソン6が欠如しているAbi1突然変異体(Abi1−△ex6);PXXP181AESEA185突然変異を含むAbi1突然変異体(Abi1−Pro)。細胞溶解物の部分を、モノクローナル抗HA抗体、またはc−Ablに対するK12ポリクローナル抗体で免疫沈降させた。免疫沈降サンプルを4−12%Bis−Trisポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜上に移した。その膜を最初にpY213(A)またはPY99(B)に対するリン特異的抗体でブロットし(パネルBも参照)、その後ストリッピングし、HAに対するポリクローナル抗体(Abi1−HA)でブロットし、それからストリッピングし、pY213(A)およびPY99(B)に対するリン特異的抗体でブロットした。“c−Abl”は、8E9でブロットして得られたc−Abl発現(アイソホーム1b)のレベルを示す。パネルBは、ペプチドpY213を含むホスホチロシンに対するポリクローナル抗体が、c−Ablによってリン酸化されたAbi1に高度に特異的であることを示す。漸増量の全長GST−Abi1をバキュロウイルス精製c−Ablと共に(+c−Abl)、またはこれなしで(−c−Abl)、実施例の実験法の部、キナーゼアッセイの部分に記載のようにインキュベートした。一致する量の反応混合物(漸増する相対的量1.0x、1.5x、2.0x)をSDS PAGE上で分離し、その後ホスホペプチドpY213(pY213)に対するアフィニティ精製抗体でブロットするかまたはホスホチロシンpY350(pY350)に対するジェネリック抗体でブロットした;“Abi1”はGSTに対するポリクローナル抗体を用いて測定したGST融合プロテインのレベルを示す。
【図5−1】図5はAbi1を強化したLnCAP細胞の増殖阻害および細胞スプレディング活性阻害を示す細胞のグラフおよび顕微鏡写真である。パネルAはAbi1による増殖阻害を示すグラフである。増殖速度は最初の培養後の指示された時点における細胞数を数えることによって評価した。組換えAbi1を安定的に発現するLnCAPクローン:Abi(+)クローン1、クローン1;Abi1(+)クローン10、クローン10;LnCAP、野生型LnCAP細胞。垂直誤差棒は±s.d.(n=4)。パネルBおよびCはLnCAP細胞のスプレディング活性を示す。パネルBは生きている細胞の観察からの代表的画像である。各画像の下部に記載された数は培養後経過した時間(hours)を示す。パネルCは、Abi1移入細胞系およびLnCAP細胞、またはSTI−571で処理したLnCAP細胞においてスプレディング活性を有する細胞のパーセントを示す。各群におけるスプレディング活性を有する細胞を指示された時点に評価した;LnCAP対Abi1(+)細胞系:2時間、p=0.46;4時間−16時間 p<0.001(χ);未処理LnCAP対STI−571−処理LnCAP細胞 2時間、p=0.40;4時間−10時間 p<0.001(χ);12−16時間 p>0.05;各時点における細胞数n>100。LnCAP、野生型LnCAP細胞;Abi1(+)、クローン10;STI−571、STI−571で処理したLnCAP細胞。LnCAP細胞を、薬剤なしで再培養する前に24時間STI−571(3μM)で処理した。時間量が増すにつれて細胞スプレディング活性に対する薬剤の阻害効果は減少することに注目されたい。
【図5−2】図5はAbi1を強化したLnCAP細胞の増殖阻害および細胞スプレディング活性阻害を示す細胞のグラフおよび顕微鏡写真である。パネルAはAbi1による増殖阻害を示すグラフである。増殖速度は最初の培養後の指示された時点における細胞数を数えることによって評価した。組換えAbi1を安定的に発現するLnCAPクローン:Abi(+)クローン1、クローン1;Abi1(+)クローン10、クローン10;LnCAP、野生型LnCAP細胞。垂直誤差棒は±s.d.(n=4)。パネルBおよびCはLnCAP細胞のスプレディング活性を示す。パネルBは生きている細胞の観察からの代表的画像である。各画像の下部に記載された数は培養後経過した時間(hours)を示す。パネルCは、Abi1移入細胞系およびLnCAP細胞、またはSTI−571で処理したLnCAP細胞においてスプレディング活性を有する細胞のパーセントを示す。各群におけるスプレディング活性を有する細胞を指示された時点に評価した;LnCAP対Abi1(+)細胞系:2時間、p=0.46;4時間−16時間 p<0.001(χ);未処理LnCAP対STI−571−処理LnCAP細胞 2時間、p=0.40;4時間−10時間 p<0.001(χ);12−16時間 p>0.05;各時点における細胞数n>100。LnCAP、野生型LnCAP細胞;Abi1(+)、クローン10;STI−571、STI−571で処理したLnCAP細胞。LnCAP細胞を、薬剤なしで再培養する前に24時間STI−571(3μM)で処理した。時間量が増すにつれて細胞スプレディング活性に対する薬剤の阻害効果は減少することに注目されたい。
【図6−1】図6は、Abi1の発現がLnCAP細胞のc−Ablキナーゼ活性を阻害することを示す、ウエスタンブロットおよび染色されたゲルのグラフおよび写真である。c−Ablキナーゼ活性を、野生型細胞系(LnCAP)およびAbi(Abi1+)を安定的にトランスフェクトした細胞系(クローン10)において評価した。パネルAはc−AblキナーゼおよびAbi1の発現レベルを示す。左側は、c−Abl(8E9)およびAbi1(Ab−2)がそれぞれK12および7B6で免疫沈降し、指示された抗体でブロットした場合のウエスタンブロットを示す。右のグラフは細胞系におけるAbi1の発現レベルを示す(n=3;±s.d.;p=0.2861)。パネルBはLnCAP細胞系から免疫沈降したc−Ablキナーゼの活性を示す。左側はc−Ablキナーゼアッセイが基質としてGST−Crkを用いて行われ;反応混合物をSDS−PAGEゲル上で分離し、抗ホスホチロシン抗体(PY99)または抗GST抗体(抗GST)でブロットするウエスタンブロットを示す。“抗GST”は各反応にGST基質が入れられることを示唆する。“LnCAP”は、LnCAPにおけるCrkリン酸化を示す。“対照”はLnCAP細胞系からの対照IgG免疫沈降に加えられた反応混合物である。グラフは細胞系におけるCrkリン酸化レベルを示す(±s.d.;n=3;p=0.0124)。パネルCはAbi1を補充したLnCAP細胞系におけるチロシンリン酸化を示す。左側は、c−Ablキナーゼを細胞系から免疫沈降させ(K12抗体)、8E9(c−Ablプロテインレベル)またはPY99(c−Abl上のチロシンリン酸化を示す)抗体でブロットするウエスタンブロットを示す。“GAPDH”は免疫沈降のために用いるリゼート投入レベルを示す。右側は、SDS−PAGE上で分離され、その後クーマッシー染色(“クーマッシー”)されるか、またはブロッティングされ、抗ホスホチロシン抗体PY99で染色される指示された細胞系からの総細胞リゼート類を示す。グラフは細胞系の総リン酸化レベルを示す(±s.d.;n=3;p=0.0101)。パネルDは、Abi1がc−Ablキナーゼと相互作用することを示す。Abi1を指示された細胞系から免疫沈降させ、免疫沈降した蛋白類は、特異的抗体:Ab−2(Abi1);K−12(c−Abl−coIP)を用いてウエスタンブロッティングによって分析した。“c−Abl−IP”は、K12抗体で免疫沈降させ、8E9と共にブロッティングした後の細胞系のc−Ablキナーゼのレベルをあらわす。“pY213”はY213におけるリン酸化Abi1の免疫反応性をあらわす。免疫沈降したAbi1は比較のために等レベルで担持された。実施例の実験法の部に記載されているように、全ての細胞系は溶解および免疫沈降の前にプレバナデートで処理された。
【図6−2】図6は、Abi1の発現がLnCAP細胞のc−Ablキナーゼ活性を阻害することを示す、ウエスタンブロットおよび染色されたゲルのグラフおよび写真である。c−Ablキナーゼ活性を、野生型細胞系(LnCAP)およびAbi(Abi1+)を安定的にトランスフェクトした細胞系(クローン10)において評価した。パネルAはc−AblキナーゼおよびAbi1の発現レベルを示す。左側は、c−Abl(8E9)およびAbi1(Ab−2)がそれぞれK12および7B6で免疫沈降し、指示された抗体でブロットした場合のウエスタンブロットを示す。右のグラフは細胞系におけるAbi1の発現レベルを示す(n=3;±s.d.;p=0.2861)。パネルBはLnCAP細胞系から免疫沈降したc−Ablキナーゼの活性を示す。左側はc−Ablキナーゼアッセイが基質としてGST−Crkを用いて行われ;反応混合物をSDS−PAGEゲル上で分離し、抗ホスホチロシン抗体(PY99)または抗GST抗体(抗GST)でブロットするウエスタンブロットを示す。“抗GST”は各反応にGST基質が入れられることを示唆する。“LnCAP”は、LnCAPにおけるCrkリン酸化を示す。“対照”はLnCAP細胞系からの対照IgG免疫沈降に加えられた反応混合物である。グラフは細胞系におけるCrkリン酸化レベルを示す(±s.d.;n=3;p=0.0124)。パネルCはAbi1を補充したLnCAP細胞系におけるチロシンリン酸化を示す。左側は、c−Ablキナーゼを細胞系から免疫沈降させ(K12抗体)、8E9(c−Ablプロテインレベル)またはPY99(c−Abl上のチロシンリン酸化を示す)抗体でブロットするウエスタンブロットを示す。“GAPDH”は免疫沈降のために用いるリゼート投入レベルを示す。右側は、SDS−PAGE上で分離され、その後クーマッシー染色(“クーマッシー”)されるか、またはブロッティングされ、抗ホスホチロシン抗体PY99で染色される指示された細胞系からの総細胞リゼート類を示す。グラフは細胞系の総リン酸化レベルを示す(±s.d.;n=3;p=0.0101)。パネルDは、Abi1がc−Ablキナーゼと相互作用することを示す。Abi1を指示された細胞系から免疫沈降させ、免疫沈降した蛋白類は、特異的抗体:Ab−2(Abi1);K−12(c−Abl−coIP)を用いてウエスタンブロッティングによって分析した。“c−Abl−IP”は、K12抗体で免疫沈降させ、8E9と共にブロッティングした後の細胞系のc−Ablキナーゼのレベルをあらわす。“pY213”はY213におけるリン酸化Abi1の免疫反応性をあらわす。免疫沈降したAbi1は比較のために等レベルで担持された。実施例の実験法の部に記載されているように、全ての細胞系は溶解および免疫沈降の前にプレバナデートで処理された。
【図7−1】図7は、Abi1がc−Ablキナーゼ活性の調節によって細胞増殖および細胞スプレディングを調節することを示すウエスタンブロットのグラフおよび写真である。パネルAにより、Abi1のY213F以外の野生型または181AESEA185突然変異体の発現は、LnCAP細胞においてc−Ablチロシンキナーゼ活性を阻害することが示される。Abi1の野生型または突然変異体を安定的に発現する細胞系について、c−Ablキナーゼ活性を試験した。そのキナーゼ活性は、内因性Abl基質Crk(pY−Crk)のリン酸化レベル;c−Abl活性化ループホスホチロシンpY412(pY412)のレベルの試験によって評価した。c−Abl(PY99)の総チロシンリン酸化も記載のように試験した。プロテイン類は指示された安定細胞系から免疫沈降させた:c−Ablは抗K−12で、Crkは抗−Crkで、Abi1は抗7B6で免疫沈降させた。細胞リゼート中の組換えAbi1の発現を、抗−HA抗体(Abi1−HA Lys)で評価した;Abi1(+)およびLnCAP細胞系における総Abi1の発現は免疫沈降したAbi1をポリクローナル抗体Ab−2(Abi1−IP)でブロットすることによって評価した。右のグラフはそれら細胞系のc−Ablキナーゼ活性の定量を示す(n=3;±s.d.)。Crkリン酸化はAbi1(+)ではLnCAP細胞系より低い(p<0.001)。それは、Wt.HAにおいてもF213.HaまたはPro.Haより低い(p<0.001)。群内におけるpY412またはPY99リン酸化の差も有意である(p<0.01)。パネルBは、Abi1のY213および181PPSPP185配列が、安定的にトランスフェクトされたLnCAP細胞系の増殖速度を調節することを示す。LnCAPクローンの増殖速度を、最初の培養から経過した指示された時点の細胞数を数えることによって評価した(n=3;棒はs.e.m.を示す)。観察4日間すべてを考慮した二元配置ANOVA分析は、Abi−Pro細胞系がAbi1−wt、Abi1(+)、またはAbi1−F213細胞系より速い速度で増殖することを示した(p<0.05);Abi1−wt、Abi1(+)およびAbi1−F213は互いに差はなかった(p>0.05);LnCAPおよびMockはAbi1−Proとは異ならなかった(p>0.05)。パネルCは、Abi1によって細胞スプレディングが調節されることを示す。LnCAP細胞はコラーゲン上に培養された。培養後6時間目に観察した。平均面積を各クローンで評価した(n=20;棒はs.e.m.を示す);細胞系を発現するHA−タグ付Abi1の複製クローンを評価した。野生型Abi1を発現するクローンは、LnCAP細胞単独に対して有意な平均細胞面積の減少を示した:Abi1(+)、p<0.0001;Wt.Ha−1、p=0.0002;Wt.Ha−2、p=0.007。その他のAbi1クローンは、LnCAPと比較して細胞スプレディングの有意差を示さなかった。下記のLnCAP細胞系を分析した:野生型タグなしAbi1、Abi1(+)、またはHa−タグ付Abi1(Wt.Ha−1およびWt.Ha−2)を安定的に発現する細胞系;Ha−タグ付Abi1突然変異体Abi1 Y213F(F213.Ha−1およびF213.Ha−2)およびAbi1−181AESEA185(Pro.Ha−1およびPro.Ha−2);野生型LnCAP細胞系(LnCAP);および未改変プラスミドをトランスフェクトしたLnCAP細胞系(Mock)。細胞増殖および細胞スプレディングアッセイのために、HA−タグ付Abi1を発現する複製クローンを評価した;Ablキナーゼ活性のためには(図7AおよびB)Wt.Ha−1(Wt.Ha)、F213.Ha−1(F213.Ha)、およびPro.Ha−1(Pro.Ha)を評価した。“GAPDH”は細胞リゼート中のプロテイン類のレベルを示す。
【図7−2】図7は、Abi1がc−Ablキナーゼ活性の調節によって細胞増殖および細胞スプレディングを調節することを示すウエスタンブロットのグラフおよび写真である。パネルAにより、Abi1のY213F以外の野生型または181AESEA185突然変異体の発現は、LnCAP細胞においてc−Ablチロシンキナーゼ活性を阻害することが示される。Abi1の野生型または突然変異体を安定的に発現する細胞系について、c−Ablキナーゼ活性を試験した。そのキナーゼ活性は、内因性Abl基質Crk(pY−Crk)のリン酸化レベル;c−Abl活性化ループホスホチロシンpY412(pY412)のレベルの試験によって評価した。c−Abl(PY99)の総チロシンリン酸化も記載のように試験した。プロテイン類は指示された安定細胞系から免疫沈降させた:c−Ablは抗K−12で、Crkは抗−Crkで、Abi1は抗7B6で免疫沈降させた。細胞リゼート中の組換えAbi1の発現を、抗−HA抗体(Abi1−HA Lys)で評価した;Abi1(+)およびLnCAP細胞系における総Abi1の発現は免疫沈降したAbi1をポリクローナル抗体Ab−2(Abi1−IP)でブロットすることによって評価した。右のグラフはそれら細胞系のc−Ablキナーゼ活性の定量を示す(n=3;±s.d.)。Crkリン酸化はAbi1(+)ではLnCAP細胞系より低い(p<0.001)。それは、Wt.HAにおいてもF213.HaまたはPro.Haより低い(p<0.001)。群内におけるpY412またはPY99リン酸化の差も有意である(p<0.01)。パネルBは、Abi1のY213および181PPSPP185配列が、安定的にトランスフェクトされたLnCAP細胞系の増殖速度を調節することを示す。LnCAPクローンの増殖速度を、最初の培養から経過した指示された時点の細胞数を数えることによって評価した(n=3;棒はs.e.m.を示す)。観察4日間すべてを考慮した二元配置ANOVA分析は、Abi−Pro細胞系がAbi1−wt、Abi1(+)、またはAbi1−F213細胞系より速い速度で増殖することを示した(p<0.05);Abi1−wt、Abi1(+)およびAbi1−F213は互いに差はなかった(p>0.05);LnCAPおよびMockはAbi1−Proとは異ならなかった(p>0.05)。パネルCは、Abi1によって細胞スプレディングが調節されることを示す。LnCAP細胞はコラーゲン上に培養された。培養後6時間目に観察した。平均面積を各クローンで評価した(n=20;棒はs.e.m.を示す);細胞系を発現するHA−タグ付Abi1の複製クローンを評価した。野生型Abi1を発現するクローンは、LnCAP細胞単独に対して有意な平均細胞面積の減少を示した:Abi1(+)、p<0.0001;Wt.Ha−1、p=0.0002;Wt.Ha−2、p=0.007。その他のAbi1クローンは、LnCAPと比較して細胞スプレディングの有意差を示さなかった。下記のLnCAP細胞系を分析した:野生型タグなしAbi1、Abi1(+)、またはHa−タグ付Abi1(Wt.Ha−1およびWt.Ha−2)を安定的に発現する細胞系;Ha−タグ付Abi1突然変異体Abi1 Y213F(F213.Ha−1およびF213.Ha−2)およびAbi1−181AESEA185(Pro.Ha−1およびPro.Ha−2);野生型LnCAP細胞系(LnCAP);および未改変プラスミドをトランスフェクトしたLnCAP細胞系(Mock)。細胞増殖および細胞スプレディングアッセイのために、HA−タグ付Abi1を発現する複製クローンを評価した;Ablキナーゼ活性のためには(図7AおよびB)Wt.Ha−1(Wt.Ha)、F213.Ha−1(F213.Ha)、およびPro.Ha−1(Pro.Ha)を評価した。“GAPDH”は細胞リゼート中のプロテイン類のレベルを示す。
【図8】図8はAbi1ホスホペプチドによるc−Abl調節の模型を示す。パネルAはc−AblキナーゼのSHドメインに結合する模型化されたリン酸化ペプチドを示す。模型化されたペプチドのホスホチロシン残基213(pY213)はSH2ドメインの結合ポケットに示される。c−AblキナーゼのSH2ドメインの3種類のアルギニン、R153、R171およびR194(緑)はリン・ペプチドのpY213残基に極めて近く、相互作用が可能である。すべてのらせんはシリンダー形(トルコ玉)に示されている。不活性c−AblキナーゼのαI’らせんは標識されている。点線のついたシリンダーは活性形における同じらせん(αIらせん)の位置を示し(Nagar et al.2003)、それはSH2ドメインと衝突する可能性を示す。残基S173−Q179をあらわすc−Ablキナーゼ構造のループは明確ではない。図はPyMOLソフトウエアを用いて作られた(Delano Scientific LLC,South San Francisco,CA)。パネルBはpY213およびPro−pY213によるc−Ablキナーゼの調節を説明する図式的模型である。上方の図は結晶構造によって測定した際の、自己阻害の主要要素を有する調節された構造を示す(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003):SH3ドメインはSH2−CDリンカーおよびCDと相互作用する;SH2ドメインはCDと相互作用する。キナーゼのミリストイル化片において、CDのC−末端らせん、αI’はミリステートのための結合ポケットを形成する。ミリステートの分解を含む幾つかの作用機序によるc−Ablの活性化は(Hantschel et al.,2003;Nagar et al.,2003)、SH2−CDリンカーのリン酸化および活性化ループにつながる。これらのできごとはSH2およびSH3をCDから分離させ、そのC−末端らせんはαIとなり、SH2ホスホチロシン結合部位を部分的に塞ぐ。pY213がAbl SH2ドメインに結合すると、多分新しいαI’様コンフォメーションのC−末端らせんが安定化することによって、このキナーゼは阻害される(これは分子模型化データによって裏付けられる、パネルA)。下方の図は、Pro−pY213の結合が、SH3およびSH2ドメインのCDドメインからの転置によって、キナーゼの最初の一過性活性化を起こすことを示す。これはNagarらが示唆したように(2006)、CDドメインのN−ローブ上にドッキングしたSH2ドメインを有する細長くなった活性化Ablを含むPro−pY213−Abl複合体の形成に導く。これに続いて、より活性の低い、および不活性のPro−pY213−Ab複合体が形成される。αI’様らせんの位置はpY213模型に基づいて仮定される。小さい化合物、GNF−2、は、ミリストイル結合ポケットに結合し(Adrian et al.,2006)、それによってミリストイル基のように作用することによって、αI’様らせんと同様なコンフォメーションを強化する。SH3、Src相同性3ドメイン;SH2、Src相同性2ドメイン;CD、触媒ドメイン。c−Abl分子のN−末端キャップ領域およびC−末端半分は、簡明化するために省略した。
【図9】図9は、Abi1の発現レベルが一次前立腺細胞およびAbl(−/−)Arg(−/−)二重ノックアウト細胞系に比較して、LnCAP細胞では低いことを示すウエスタンブロットの写真である。Abi1は指示された細胞系のリゼートからモノクローナル抗体7B6で免疫沈降させ、Abi1に対するポリクローナル抗体Ab−2でブロットした;c−AblキナーゼはK12で免疫沈降させ、モノクローナル抗体8E9でブロットした。LnCAPはLnCAP細胞系を示し;PrPECは前立腺細胞系を示し;DKOはAbl(−/−)Arg(−/−)二重ノックアウト細胞系を示す。IgGは交差反応性IgGバンドを示す。
【図10】図10はcAblおよびAbi1による増殖および細胞スプレディングの調節を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残基10のチロシンがリン酸化されている配列番号1を含む、精製された化合物。
【請求項2】
前記化合物が配列番号5を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が配列番号6を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が配列番号7を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が配列番号8を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
化合物が配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に少なくとも85%相同であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が天然に存在するAbi1、Abi2、またはAbi3の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含み、該天然に存在するAbi1、Abi2またはAbi3が配列番号2、配列番号3または配列番号4に少なくとも85%は相同である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が配列番号2の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、400未満のアミノ酸残基であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
前記アミノ酸配列が100未満のアミノ酸残基である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
前記アミノ酸配列が20未満のアミノ酸残基である、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
前記アミノ酸配列が14アミノ酸残基である、請求項10記載の化合物。
【請求項14】
配列番号1からなる請求項1記載の化合物。
【請求項15】
配列番号5からなる請求項1記載の化合物。
【請求項16】
配列番号6からなる請求項1記載の化合物。
【請求項17】
配列番号7からなる請求項1記載の化合物。
【請求項18】
配列番号8からなる請求項1記載の化合物。
【請求項19】
配列番号1内にはない野生型Abi1、Abi2またはAbi3のPXXP結合モチーフを含む、請求項1記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物の少なくとも1つのアミノ酸がペプチド模倣物によって表される、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
前記化合物がAblキナーゼの活性を阻害できる、請求項1記載の化合物。
【請求項22】
検出可能部分または結合部分をさらに含む、請求項1記載の化合物。
【請求項23】
前記検出可能部分または結合部分が放射性部分、抗原、蛍光部分またはHis6部分である、請求項1記載の化合物。
【請求項24】
前記検出可能部分または結合部分が蛍光部分である、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物がAblキナーゼと結合するとき、前記蛍光部分の検出可能蛍光が強度を変える、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
薬学的に容認される組成物中の、請求項1記載の化合物。
【請求項27】
配列番号1を含む精製された化合物であって、該化合物のアミノ酸配列が400未満のアミノ酸である、精製された化合物。
【請求項28】
配列番号5を含む請求項27記載の化合物。
【請求項29】
配列番号6を含む請求項27記載の化合物。
【請求項30】
配列番号7を含む請求項27記載の化合物。
【請求項31】
配列番号8を含む請求項27記載の化合物。
【請求項32】
配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に少なくとも85%は相同であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項33】
天然に存在するAbi1、Abi2またはAbi3の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項34】
配列番号2、配列番号3または配列番号4の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項35】
配列番号2の少なくとも一部に完全に相同であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項36】
100未満のアミノ酸残基であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項37】
20未満のアミノ酸残基であるアミノ酸配列を含む、請求項27記載の化合物。
【請求項38】
前記アミノ酸配列が14アミノ酸残基である、請求項27記載の化合物。
【請求項39】
配列番号1からなる請求項27記載の化合物。
【請求項40】
配列番号5からなる請求項27記載の化合物。
【請求項41】
配列番号6からなる請求項27記載の化合物。
【請求項42】
配列番号7からなる請求項27記載の化合物。
【請求項43】
配列番号8からなる請求項27記載の化合物。
【請求項44】
前記アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸がペプチド模倣物である、請求項27記載の化合物。
【請求項45】
配列番号1内にはない野生型Abi1、Abi2またはAbi3のPXXP結合モチーフを含む、請求項27記載の化合物。
【請求項46】
配列番号1の残基10の前記チロシンがリン酸化されている、請求項27記載の化合物。
【請求項47】
前記化合物がAblキナーゼの活性を阻害できる、請求項27記載の化合物。
【請求項48】
検出可能部分または結合部分をさらに含む請求項27記載の化合物。
【請求項49】
薬学的に容認される組成物中の、請求項27記載の化合物。
【請求項50】
薬剤がAblキナーゼの候補阻害剤であるかどうかを決定する方法であって、
請求項1〜49のいずれか一項に記載の化合物を該Ablキナーゼの存在下で該薬剤と接触させる工程と;
該化合物が該Ablキナーゼに結合するかどうかを評価する工程、
とを含み、ここで、該化合物が該Ablキナーゼに結合しない場合は、該薬剤は該Ablキナーゼの候補阻害剤であり、該化合物が該Ablキナーゼに結合する場合は、該薬剤は該Ablキナーゼの候補阻害剤ではない、
方法。
【請求項51】
前記化合物がさらに検出可能部分を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記Ablキナーゼがさらに検出可能部分を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
Ablキナーゼに結合する化合物の評価が、非変性条件下において該ペプチドまたはAblキナーゼの見かけサイズの測定によって行われる、請求項50記載の方法。
【請求項54】
候補阻害剤の存在下で前記Ablキナーゼのキナーゼ活性を評価する工程をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項55】
Ablキナーゼを阻害する方法であって、該Ablキナーゼを請求項21または請求項47のいずれか一項に記載の化合物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項56】
前記化合物が配列番号1からなる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記化合物が配列番号5からなる、請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記化合物が配列番号6からなる、請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記化合物が配列番号7からなる、請求項55記載の方法。
【請求項60】
前記化合物が配列番号8からなる、請求項55記載の方法。
【請求項61】
前記Ablキナーゼが哺乳動物細胞にある、請求項55記載の方法。
【請求項62】
前記Ablキナーゼが生きている哺乳動物の一部である、請求項55記載の方法。
【請求項63】
前記Ablキナーゼが、突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気にかかっているかまたはそのリスクを有する生きている哺乳動物の一部である、請求項55記載の方法。
【請求項64】
前記病気が慢性骨髄性白血病である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記病気が前立腺癌である、請求項63記載の方法。
【請求項66】
突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気にかかっている患者を処置する方法であって、該方法は請求項26記載の化合物を該患者に投与する工程を含み、該化合物は該突然変異体Ablキナーゼの活性を阻害できる、方法。
【請求項67】
前記化合物が前記患者に非経口投与される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記病気が慢性骨髄性白血病である、請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記病気が前立腺癌である、請求項66記載の方法。
【請求項70】
突然変異体Ablキナーゼによって特徴づけられる病気のリスクを有する患者を処置する方法であって、該方法は請求項26記載の化合物を該患者に投与することを含み、該化合物は該突然変異体Ablキナーゼの活性を阻害できる、方法。
【請求項71】
Ablキナーゼを標識化する方法であって、前記Ablキナーゼと請求項22または請求項48記載の化合物とを、該化合物が該Ablキナーゼと相互作用するような条件下で結合させることを含む、方法。
【請求項72】
前記Ablキナーゼが哺乳動物組織の一部である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
Ablキナーゼを組織から単離する方法であって、
該組織を均質化する工程と;
該均質化した組織と請求項22または請求項48の化合物とを結合させる工程であって、前記検出可能部分または結合部分が結合部分である工程と;
該Ablキナーゼに結合した化合物を単離する工程
とを含む、方法。
【請求項74】
前記Ablキナーゼから前記化合物を分離する工程をさらに含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記Ablキナーゼを定量する工程をさらに含む、請求項73記載の方法。
【請求項76】
請求項45〜54のいずれか一項に記載の方法によって同定される薬剤。
【請求項77】
Ablキナーゼを阻害する方法であって、前記Ablキナーゼと請求項76記載の薬剤とを接触させる工程を含む、方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−519237(P2009−519237A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543394(P2008−543394)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045570
【国際公開番号】WO2007/064647
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(592239833)ニューヨーク・ブラッド・センター・インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】NEW YORK BLOOD CENTER INC.
【Fターム(参考)】