説明

ABS装置の配管構造

【課題】車体組み付けライン上でのABS装置の組み付け工数を削減できるABS装置の配管構造を提供する。
【解決手段】ヘッドパイプ7から左右一対のフレーム部材10を後方に延ばす車体フレーム6を備え、前記左右フレーム部材10間にはABSモジュレータ61が配置され、前記ABSモジュレータ61と第一及び第二マスターシリンダ及び前後ブレーキキャリパとが各配管65,67,68,71を介して接続されるABS装置の配管構造において、前記各配管65,67,68,71は、前記フレーム部材10の上方を跨いで配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動二輪車等の車両におけるABS(アンチロックブレーキシステム)装置の配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記配管構造において、ヘッドパイプから左右一対のフレーム部材を後方に延ばした車体フレームを備え、前記左右フレーム部材間にはABSモジュレータが配置され、前記ABSモジュレータに接続される配管が、前記フレーム部材を貫通するように配設されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−178632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記配管構造においては、ABSモジュレータと配管との接続作業がフレーム部材の開口内で行われることから、その作業スペースが狭く、かつ該接続作業並びにABSモジュレータ及び配管内のエア抜き作業が車体組み立てライン上で行われることから、該車体組み立てライン上でのABS装置の組み付け工数を増加させるという課題がある。
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車体組み付けライン上でのABS装置の組み付け工数を削減できるABS装置の配管構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、ヘッドパイプ(例えば実施例のヘッドパイプ7)から左右一対のフレーム部材(例えば実施例の左右フレーム部材10)を後方に延ばした車体フレーム(例えば実施例の車体フレーム6)を備え、前記左右フレーム部材間にはABSモジュレータ(例えば実施例のABSモジュレータ61)が配置され、前記ABSモジュレータとマスターシリンダ(例えば実施例の第一及び第二マスターシリンダ54,58)及びブレーキキャリパ(例えば実施例の前後ブレーキキャリパ53,57)とが配管(例えば実施例の各配管65,67,68,71)を介して接続されるABS装置の配管構造において、前記配管は、前記フレーム部材の上方を跨いで配設されることを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記配管の途中にターミナル(例えば実施例の各ターミナル66d,69d,69f)を備え、前記ターミナルは、前記フレーム部材における車体側方に面する部位に支持されることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載した発明は、前記フレーム部材は、前記ABSモジュレータを支持する支持プレート(例えば実施例の支持プレート74)を備え、前記支持プレートにおける前記ABSモジュレータとの連結部(例えば実施例の連結部74a)は、車体側面視で前記フレーム部材を避けて配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載した発明は、前記ABSモジュレータは、油圧回路形成部(例えば実施例の油圧回路形成部62)及び駆動モータ(例えば実施例の駆動モータ63)を備え、前記駆動モータは、その軸線(例えば実施例の軸線C)を前後方向と略平行にして配置され、かつ前記油圧回路形成部及び駆動モータは、車体上面視で車体左右中心線(例えば実施例の車体左右中心線CL)を跨ぐように配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載した発明は、前記左右フレーム部材間にクロスメンバ(例えば実施例の中段クロスメンバ14e)を備え、前記クロスメンバには、前記ABSモジュレータを支持する支持ブラケット(例えば実施例の支持ブラケット75)が設けられ、前記支持ブラケットは、車体上面視で前記駆動モータの軸線と重なるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、配管がフレーム部材上を跨ぐことで、作業スペースの広い車体組み立てライン外で予めABSモジュレータと配管とを組み付けた状態でこれらを車体に搭載することが可能となり、車体組み立てライン上でのABS装置の組み付け工数の削減を図ることができる。また、同じく車体組み立てライン外で予めABSモジュレータ及び配管内のエア抜き作業を行うことが可能となり、車体組み立てライン上でのABS装置の組み付け工数をさらに削減できる。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、ターミナルの車体フレームへの取り付け作業を車体側方から行うことができ、車体組み立てライン上でのターミナルの取り付けを容易にしてABS装置の組み付け作業をさらに削減できる。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、支持プレートの連結部とABSモジュレータとの連結作業を車体側方から行うことができ、車体組み立てライン上でのABSモジュレータの取り付けを容易にしてABS装置の組み付け工数をさらに削減できる。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、重量のあるABSモジュレータをその車体左右での重量バランスを良好にして配置できる。
【0013】
請求項5に記載した発明によれば、重量のあるABSモジュレータを左右でバランス良く支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
【0015】
図1,2に示すように、自動二輪車(鞍乗り型車両)1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に軸支される。各フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して車体フレーム6前端部のヘッドパイプ7に操舵可能に枢支される。ステアリングステム4の上部には、前輪転舵用のハンドル5がハンドルバー5aを介して取り付けられる。ヘッドパイプ7の上部からは、左右一対のメインチューブ8が斜め下後方に延びる。ヘッドパイプ7の下部からは、左右一対のダウンチューブ9がメインチューブ8よりも急傾斜をなして斜め下後方に延びる。
【0016】
車体フレーム6の前後中間部には、左右非対称のピボットプレート11が設けられる。左ピボットプレート11は上下に長く、その上部が斜め上前方に湾曲して左メインチューブ8の後端部に接続される。一方、右ピボットプレート11は上下に短く、その上部がこれに向かって延びる右メインチューブ8の後端部に接続される。また、左右ピボットプレート11の下部には、左右ダウンチューブ9の後端部が接続される。これにより、ダブルクレードル型のメインフレーム部12が構成される。このようなメインフレーム部12と、該メインフレーム部12の後部から後方に延びるシートフレーム部13とを主に、自動二輪車1の車体フレーム6が構成される。
【0017】
図3を併せて参照し、ヘッドパイプ7後方の左右両側において、メインチューブ8の前部とダウンチューブ9の前部との間には、後上がりに傾斜する左右一対のガセットパイプ14がそれぞれ渡設される。また、ヘッドパイプ7後方の左右両側において、メインチューブ8の前部、ヘッドパイプ7、及びダウンチューブ9の前部で囲まれる部位には、これらに跨るように左右一対のガセットプレート14aがそれぞれ設けられる。以下、左右メインチューブ8の前部、左右ダウンチューブ9の前部、左右ガセットパイプ14、及び左右ガセットプレート14aからなる部位を、左右一対のフレーム部材10ということがある。なお、左右ダウンチューブ9の前部の下方には、該前部とヘッドパイプ7の下部とに跨る第一ガセット14bが設けられ、左右ガセットパイプ14の前部の下方には、該前部とダウンチューブ9の中間部とに跨る左右第二ガセット14cが設けられる。
【0018】
ピボットプレート11は、スイングアーム15の前端部を揺動可能に枢支する。スイングアーム15は、その前端部(基端部)から車体左側にオフセットした一本のアーム16を後方に延出し、該アーム16の後端部(先端部)で後輪17を軸支する片持ち式のものとされる。アーム16は中空とされ、その内部には不図示のドライブシャフトが挿通される。アーム16の後端部はファイナルギヤケース18とされ、該ファイナルギヤケース18内にて前記ドライブシャフトと後輪17とがベベルギヤを介して連係する。アーム16の前後中間部と左ピボットプレート11上部のクッション支持部11aとの間には、リアクッションユニット19が配設される。
【0019】
メインフレーム部12の内側には、車幅方向(左右方向)と平行なクランク軸を有するエンジン21が搭載される。エンジン21は、クランクケース22上に前傾シリンダ23及び後傾シリンダ24を立設させた狭角V型二気筒エンジンとされる。クランクケース22の後部には変速機ケース25が連設され、該変速機ケース25左側の出力部にて前記ドライブシャフトとエンジン21とがベベルギヤを介して連係する。これにより、ドライブシャフトを介してエンジン21と後輪17との間の動力伝達が可能となる。なお、エンジン21等のメンテナンス性を考慮し、例えば右ダウンチューブ9は着脱可能に構成される。
【0020】
図4を併せて参照し、両シリンダ23,24のバンク間には、各シリンダ23,24に対応するスロットルボディ26が左右に並設される。各スロットルボディ26の下流側は、前傾シリンダヘッド23aの後部あるいは後傾シリンダヘッド24aの前部の吸気ポートに接続される。各スロットルボディ26の上流側は、斜め上前方に延びるコンチューブ27eを介して、前傾シリンダ23の上方に位置するエアクリーナボックス27の後部に接続される。
【0021】
エアクリーナボックス27は、各スロットルボディ26が接続される車幅方向に長い接続部27aと、該接続部27aの左側から前方に延びるエレメント収容部27bとを有してなる。エアクリーナボックス27は上面視略L字状をなし、かつその直角部分の内側が滑らかな円弧状をなすように設けられる。接続部27aは、各スロットルボディ26の直上よりもやや前方に位置し、両メインチューブ8の上縁間に渡るように設けられる。エレメント収容部27bは、左メインチューブ8の前部を跨いでこれよりも車幅方向外側に位置し、車体側面視ではガセットパイプ14よりも上方に位置する。
【0022】
エレメント収容部27bの外側部は着脱可能なカバー27cとされ、その内側には車幅方向と略直交する板状をなす不図示のエアクリーナエレメントが収容される。カバー27cの前端部には、前方に延びた後に湾曲して下方に向けて開口する管状の吸気ダクト27dが設けられる(図1参照)。エアクリーナボックス27上には、例えばエンジンコントロールユニット等の放熱性を要する電装部品28が取り付けられる。
【0023】
図1,2に示すように、前傾シリンダヘッド23aの前部及び後傾シリンダヘッド24aの後部における排気ポートからは、それぞれ排気管29が導出される。各排気管29はエンジン21右側に取り回されて一本に集合し、後方に延びた後に車体後部右側のサイレンサ29aに接続される。サイレンサ29aは概ね前後方向に沿って延在し、かつ車体側面視で前記スイングアーム15と概ね重なるように設けられる。サイレンサ29aの前部には、車幅方向内側に突出する排気触媒29bが設けられる。
【0024】
シートフレーム部13は、メインフレーム部12の後部上側から後方に延びる左右のアッパシートレール31と、メインフレーム部12の後部下側から斜め上後方に延びる左右のロアシートレール32とを主としてなる。各シートレール31,32の後端部は、車体後端部にて互いに合流して結合される。各シートレール31,32の長手方向中間部は、これらに渡るリアガセットパイプ33を介して結合される。
【0025】
シートフレーム部13の前部及び後部には、運転者用の前部シート34及び後部搭乗者用の後部シート35がそれぞれ支持される。前部シート34の着座位置は比較的低く設定され、該前部シート34における後部シート35との段差部分にはバックレスト34aが配置される。前部シート34の前端部両側は、メインチューブ8の上縁に沿うように前方に延出する。車体前部両側には、車体側面視でクランクケース22及びダウンチューブ9を横断するように運転者用のステップボード36が設けられる。
【0026】
自動二輪車1の燃料タンクは、前部シート34の前方に位置する上段燃料タンク37aと、前部シート34の下方かつ右側に偏倚した部位に位置する下段燃料タンク37bとに分割構成される。上段燃料タンク37aは、前部シート34に着座した運転者の両膝間に配置され、下段燃料タンク37bは、アッパシートレール31の前部とロアシートレール32の前部との間に配置される。なお、図中符号38は左右ダウンチューブ9の前縁間に渡るラジエータを、符号39は車体を左側に傾けた状態で支持する可倒式のサイドスタンドを示す。
【0027】
自動二輪車1の車体には、樹脂製部品を主とする車体カバーが取り付けられる。車体カバーは、ヘッドパイプ7の前方から両側方に渡る範囲を覆うフロントカウル41と、フロントカウル41の後方に連なりエアクリーナボックス27及び上段燃料タンク37aを覆うタンクカバー42と、フロントカウル41の下部両側から下方に延びてダウンチューブ9及びラジエータ38等を覆うフロントサイドカバー43と、エンジン21の下部、排気管29、及びサイレンサ29a等を覆うアンダーカバー44と、車体後部両側を覆うリアサイドカバー45とを主としてなる。
【0028】
ここで、自動二輪車1は、油圧式の前後輪ブレーキ51,55を備える
前輪ブレーキ51は、前輪2両側に設けられてこれと一体に回転する左右の前ブレーキディスク52と、該左右前ブレーキディスク52に対応する左右の前ブレーキキャリパ53とを有する。左右前ブレーキキャリパ53はフロントフォーク3に取り付けられ、該各前ブレーキキャリパ53に油圧が供給されることで、各前ブレーキディスク54が挟圧されて前輪2の回転が制動される。
【0029】
後輪ブレーキ55は、後輪17内側に設けられてこれと一体に回転する後ブレーキディスク56と、該後ブレーキディスク56に対応する後ブレーキキャリパ57とを有する。後ブレーキキャリパ57はスイングアーム15に取り付けられ、該後ブレ−キキャリパ57に油圧が供給されることで、後ブレーキディスク56が挟圧されて後輪17の回転が制動される。なお、図中符号55aは機械式のパーキングブレーキを示す。
【0030】
ハンドル5は左右別体式のもので、ステアリングステム4のトップブリッジ4aの上面から斜め上方向に向けて相互間の距離を広げるように延びるハンドルバー5aを介して、トップブリッジ4aから後方かつ左右外側へ離間した位置に配置される。
右ハンドル5の近傍には第一マスターシリンダ54が設けられると共に、左ハンドル5の近傍には第二マスターシリンダ58が設けられる。各マスターシリンダ54,58は、それぞれの作動のための第一及び第二ブレーキレバー54a,58aを有し、これら各ブレーキレバー54a,58aを操作することで、各マスターシリンダ54,58で発生した油圧が、各油圧配管及びABSモジュレータ61を介して各ブレーキキャリパ53,57に供給されて、前後輪2,17の回転が適宜制動される。
【0031】
ABSモジュレータ61は、例えば第一ブレーキレバー54aの操作時には前輪ブレーキ51を作動させ、第二ブレーキレバー58aの操作時には前後輪ブレーキ51,55を連動して作動させるように、前後ブレーキキャリパ53,57への油圧の供給をコントロールする。また、前後輪2,17の車輪速センサが車輪のスリップを検知した際には、その検知信号に基づき車輪のスリップを回避するべく電子制御ユニット64(図5参照)が作動し、前後ブレーキキャリパ53,57への供給油圧を減圧する等により制動力を適切にコントロールする。すなわち、前後輪ブレーキ51,55は、アンチロック制御及び前後連動制御がなされる。
【0032】
図4,5に示すように、左右メインチューブ8及びダウンチューブ9の各前部は、ヘッドパイプ7から斜め左右後方に分岐して延び、それぞれ湾曲部を介した後に車体側面と略平行をなして後方へ延びる。左右ガセットパイプ14は、メインチューブ8及びダウンチューブ9の前記湾曲部間に渡るように設けられる。
【0033】
図3を併せて参照し、左右ガセットパイプ14の上部間及び上下中間部間には、それぞれ上段及び中段クロスメンバ14d,14eが渡設される。そして、車体フレーム6のヘッドパイプ7の後方において、左右メインチューブ8の前部、左右ダウンチューブ9の前部、左右ガセットパイプ14、及び上段及び中段クロスメンバ14d,14eで囲まれる空間内に、前記ABSモジュレータ61が配置される。
【0034】
ABSモジュレータ61は、略箱型の外観をなす油圧回路形成部62と、その後方に突接される円筒状の外観をなす駆動モータ63と、油圧回路形成部62内の油圧回路を切り替えるべく駆動モータ63を制御する前記電子制御ユニット64とを有してなる。油圧回路形成部62及び駆動モータ63は車体右側にややオフセットして配置され、これらの左側に電子制御ユニット64が取り付けられる。ここで図4を参照し、駆動モータ63の中心軸線(回転軸線)Cは、前後方向と略平行に設けられ、かつ車体上面視で車体左右中心線CLの近傍に設けられる。これにより、ABSモジュレータ61の本体部である油圧回路形成部62及び駆動モータ63は、車体上面視で車体左右中心線CLを跨いでいる。このABSモジュレータ61が、後面視方形状をなす枠型の支持ステー73内に配置され、該支持ステー73を介して左右フレーム部材10に支持される。
【0035】
左右メインチューブ8の前部下側には、車体側面と略平行な板状をなして下方に延びる左右一対の支持プレート74が設けられ、該左右支持プレート74における連結部74aに支持ステー73の両側辺部上側がラバーマウントされる。一方、中段クロスメンバ14eの中間部上側には、台状の支持ブラケット75が設けられ、該支持ブラケット75に支持ステー73の下辺部略中央がラバーマウントされる。ここで図3を参照し、左右支持プレート74の連結部74aは、車体側面視で左右フレーム部材10を避けるように配置され、かつ左右フレーム部材10におけるメインチューブ8、ダウンチューブ9、ガセットパイプ14、及びガセットプレート14aで囲まれる開口(窓部)内に臨むように配置される。一方、支持ブラケット75は、駆動モータ63のほぼ真下に配置され、かつ車体上面視では前記軸線Cと重なるように配置される(図5参照)。
【0036】
ABSモジュレータ61には、各マスターシリンダ54,58から延びる左右一次油圧配管65が接続されると共に、ABSモジュレータ61からは、前輪2近傍で分岐して左右前ブレーキキャリパ53に接続される主及び副二次油圧配管67,68、並びに左メインチューブ8に沿うように取り回されて後方に延びた後に後ブレーキキャリパ57に接続される後二次油圧配管71が導出される。
【0037】
左右一次油圧配管65は、各マスターシリンダ54,58からABSモジュレータ61近傍まで配される可撓配管66aと、ABSモジュレータ61近傍に配される剛性配管66bとを有してなる。
可撓配管66aは、例えばトップブリッジ4aの前方からその下方に回りこむように湾曲し、ヘッドパイプ7両側にて左右メインチューブ8上を跨いだ後に、支持ステー73上にて第一ターミナル66cに接続される。可撓配管66aの中間部には第二ターミナル66dが設けられ、該第二ターミナル66dが右メインチューブ8の前部において車体右側方に面するように取り付けられる。一方、第一ターミナル66cは支持ステー73の上辺部に取り付けられ、この第一ターミナル66cから後方に延びる剛性配管66bが、支持ステー73の上辺部後方にて湾曲して油圧回路形成部62に後方から接続される。
【0038】
主及び副二次油圧配管67,68は、油圧回路形成部62前側から支持ステー73上を通過して後方に延びる第一剛性配管69aと、右メインチューブ8の車幅方向内側に配される第一ターミナル69bと、第一ターミナル69bから右メインチューブ8上を跨いで車幅方向外側に至る第一可撓配管69cと、右ガセットプレート14aの外側に配される第二及び第三ターミナル69d,69fと、第二及び第三ターミナル69d,69f間を連通する第二剛性配管69eと、第三ターミナル69fから下方に延びて左右前ブレーキキャリパ53に至る第二可撓配管69gとを有してなる。第二及び第三ターミナル69d,69fは、右ガセットプレート14aの外側において車体右側方に面するように取り付けられる。
一方、後二次油圧配管71は、油圧回路形成部62前側から左メインチューブ8上を跨いだ後に該左メインチューブ8に沿って後方へ延びる後剛性配管72aを主としてなる。
【0039】
ABSモジュレータ61の後方には、エアクリーナボックス27の接続部27aが近接配置される。接続部27aの前部は、その左側のエレメント収容部27bに滑らかに連なるべく、左側ほど前後の厚さを増すように前方へ張り出しており、エアクリーナボックス27における吸気の圧損を抑えている。一方、ABSモジュレータ61の本体部である油圧回路形成部62及び駆動モータ63は、車体右側にややオフセットして配置されており、これらと接続部27aとを近接配置することで、車体における部品搭載スペースを効率良く利用している。
【0040】
以上説明したように、上記実施例におけるABS装置の配管構造は、ヘッドパイプ7から左右一対のフレーム部材10を後方に延ばした車体フレーム6を備え、前記左右フレーム部材10間にはABSモジュレータ61が配置され、前記ABSモジュレータ61と第一及び第二マスターシリンダ54,58及び前後ブレーキキャリパ53,57とが各配管65,67,68,71を介して接続されるものであって、前記各配管65,67,68,71は、前記フレーム部材10の上方を跨いで配設されるものである。
【0041】
この構成によれば、各配管65,67,68,71がフレーム部材10上を跨ぐことで、作業スペースの広い車体組み立てライン外で予めABSモジュレータ61と各配管65,67,68,71とを組み付けた状態でこれらを車体に搭載することが可能となり、車体組み立てライン上でのABS装置の組み付け工数の削減を図ることができる。また、同じく車体組み立てライン外で予めABSモジュレータ61及び各配管65,67,68,71内のエア抜き作業を行うことが可能となり、車体組み立てライン上でのABS装置の組み付け工数をさらに削減できる。ものである。
【0042】
また、上記配管構造においては、前記配管65,67,68,71の途中にターミナル66d,69d,69fを備え、前記各ターミナル66d,69d,69fは、前記フレーム部材10における車体側方に面する部位に支持されることで、各ターミナル66d,69d,69fの車体フレーム6への取り付け作業を車体側方から行うことができ、車体組み立てライン上での各ターミナル66d,69d,69fの取り付けを容易にしてABS装置の組み付け作業をさらに削減できる。
【0043】
さらに、上記配管構造においては、前記フレーム部材10は、前記ABSモジュレータ61を支持する支持プレート74を備え、前記支持プレート74における前記ABSモジュレータ61との連結部74aは、車体側面視で前記フレーム部材10を避けて配置されることで、支持プレート74の連結部74aとABSモジュレータ61との連結作業を車体側方から行うことができ、車体組み立てライン上でのABSモジュレータ61の取り付けを容易にしてABS装置の組み付け工数をさらに削減できる。
【0044】
さらにまた、上記配管構造においては、前記ABSモジュレータ61は、油圧回路形成部62及び駆動モータ63を備え、前記駆動モータ63は、その軸線Cを前後方向と略平行にして配置され、かつ前記油圧回路形成部62及び駆動モータ63は、車体上面視で車体左右中心線CLを跨ぐように配置されることで、重量のあるABSモジュレータ61をその車体左右での重量バランスを良好にして配置できる。
【0045】
そして、上記配管構造においては、前記左右フレーム部材10間に中段クロスメンバ14eを備え、前記中段クロスメンバ14eには、前記ABSモジュレータ61を支持する支持ブラケット75が設けられ、前記支持ブラケット75は、車体上面視で前記駆動モータ63の軸線Cと重なるように配置されることで、重量のあるABSモジュレータ61を左右でバランス良く支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施例における自動二輪車の左側面図である。
【図2】上記自動二輪車の右側面図である。
【図3】上記自動二輪車のヘッドパイプ周辺の右側面図である。
【図4】上記自動二輪車のヘッドパイプ周辺の上面図である。
【図5】上記自動二輪車のヘッドパイプ周辺を斜め後から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動二輪車
6 車体フレーム
7 ヘッドパイプ
10 フレーム部材
14e 中段クロスメンバ(クロスメンバ)
53 前ブレーキキャリパ(ブレーキキャリパ)
57 後ブレーキキャリパ(ブレーキキャリパ)
54 第一マスターシリンダ(マスターシリンダ)
58 第二マスターシリンダ(マスターシリンダ)
65 一次油圧配管(配管)
67 主二次油圧配管(配管)
68 幅二次油圧配管(配管)
71 後二次油圧配管(配管)
61 ABSモジュレータ
62 油圧回路形成部
63 駆動モータ
66d 第二ターミナル(ターミナル)
69d 第二ターミナル(ターミナル)
69f 第三ターミナル(ターミナル)
74 支持プレート
74a 連結部
75 支持ブラケット
C 軸線
CL 車体左右中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプから左右一対のフレーム部材を後方に延ばした車体フレームを備え、前記左右フレーム部材間にはABSモジュレータが配置され、前記ABSモジュレータとマスターシリンダ及びブレーキキャリパとが配管を介して接続されるABS装置の配管構造において、
前記配管は、前記フレーム部材の上方を跨いで配設されることを特徴とするABS装置の配管構造。
【請求項2】
前記配管の途中にターミナルを備え、前記ターミナルは、前記フレーム部材における車体側方に面する部位に支持されることを特徴とする請求項1に記載のABS装置の配管構造。
【請求項3】
前記フレーム部材は、前記ABSモジュレータを支持する支持プレートを備え、前記支持プレートにおける前記ABSモジュレータとの連結部は、車体側面視で前記フレーム部材を避けて配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のABS装置の配管構造。
【請求項4】
前記ABSモジュレータは、油圧回路形成部及び駆動モータを備え、前記駆動モータは、その軸線を前後方向と略平行にして配置され、かつ前記油圧回路形成部及び駆動モータは、車体上面視で車体左右中心線を跨ぐように配置されることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のABS装置の配管構造。
【請求項5】
前記左右フレーム部材間にクロスメンバを備え、前記クロスメンバには、前記ABSモジュレータを支持する支持ブラケットが設けられ、前記支持ブラケットは、車体上面視で前記駆動モータの軸線と重なるように配置されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のABS装置の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−74206(P2008−74206A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254612(P2006−254612)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】