説明

AC−DCコンバータ

【課題】電力損失の少ないAC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】RCC方式によるAC−DCコンバータにおいて、電圧変換トランスTrと、前記電圧変換トランスTrの二次側出力を整流して直流出力とする整流ダイオードD2と、前記電圧変換トランスTrの二次側と前記整流用ダイオードD2との間に挿入したカーレントトランスCTと、前記整流用ダイードD2に並列に接続されるFETスイッチ14と、を備え、通電電流に同期したFETスイッチ14と、整流ダイードD2とを混成的に併用することからなるハイブリッド整流方式を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の交流電源を用いて所望の直流電圧の電源を得る電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AC−DCコンバータの小電力クラスではフライバック方式とも呼ばれるRCC方式のものが一般に使用されるが、家庭用交流電源から所望の直流電圧を得る際に、その交流入力と直流出力間に電力損失が発生する。この入出力間電力損失は、一般的に無駄な発熱として消費されることから、この電力損失を減らすこと、換言すれば電力変換効率を改善することは省エネルギー効果を生むだけではなく、当該コンバータ機器の小型化に極めて有効であることは言を俟たない。
【0003】
AC−DCコンバータを主要ブロック別に見ると、この電力損失は主に入力の交流電圧を直接整流して直流電圧を得る一次側整流部と、この直流電圧を高速スイッチングしトランス等を介して電圧変換する部分と、この変換された交流電圧から所望の直流電圧を得る二次側整流部と、その他の部分とのそれぞれから構成される。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
これらの部分の中でも、近年、小型化、高効率化の需要が高まるにつれ、一次側整流部及び二次側整流部に使用されるダイオードについて損失を減らすさまざまな工夫が施されているが、未だ充分なものではないのが現状である。本発明はこの中で前記二次側整流部の損失を改善しようとするものであり、不要な発熱を極度に減少させ、従来使用されてきた整流用ダイオードの放熱器を不要なものとすることを課題としている。
【問題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は本発明によれば、RCC方式によるAC−DCコンバータにおいて、電圧変換トランスと、前記電圧変換トランスの二次側出力を整流して直流出力とする整流用ダイオードと、前記電圧変換トランスの二次側と前記整流用ダイオードとの間に挿入したカレントトランスと、前記整流用ダイオードに並列に接続されるFETスイッチと、を備え、前記カレントトランスの検出する電流変化を電圧増幅部、波形整形部を経て前記FETスイッチに制御信号として供給する回路を設けて前記FETスイッチを開閉し、前記FETスイッチのオンするタイミングは前記カレントトランス通電開始から所定時間遅れるように設定し、前記所定時間内は前記整流用ダイオード電流を出力し、前記所定時間後は前記FETスイッチの電流を主として出力する、通電電流に同期したFETスイッチと、整流用ダイオードとを混成的に併用することからなるハイブリッド整流方式を用いたことで解決される。
【0006】
また、上記の課題は本発明によれば、前項において、カレントトランスの検出する電流変化を増幅する電圧増幅部には遅延時定数回路とトランジスタとを配置して一定電圧以上からの電圧増幅度を徐々に上昇させるようにしてこれをFETスイッチに制御信号として供給し、電源投入時のFETスイッチの動作特性をソフトスタートするようにしたことによって解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二次側整流部の不要な発熱を極度に減少させ、従来使用されてきた整流用ダイオードの放熱器も不要なものとし、機器を小型化することができる有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明はRCC方式によるAC−DCコンバータに最適なものであり、AC−DCコンバータの電圧変換トランスの二次側出力と、この出力を整流して直流出力とする整流用ダイオードとの間にカレントトランスを挿入し、このカレントトランスの検出する電流変化を電圧増幅部、波形整形部を経て、整流用ダイオードに並列に接続した半導体スイッチの制御信号として供給する。半導体スイッチにはドレイン−ソース間ON抵抗の低いFETスイッチを使用する。制御信号によって半導体スイッチを開閉し、半導体スイッチをオンするタイミングはカレントトランス通電開始から所定時間遅れるように設定し、所定時間内は整流用ダイオード電流を出力し、所定時間後は半導体スイッチの電流を主として出力する。即ち、カレントトランスCTを使用した本発明の方式は当初の所定時間内は整流用ダイオードに通電し、この通電電流をカレントトランスCTで検出し半導体スイッチを動作せしめ、所定時間後は半導体スイッチの電流を主として出力するようにする。その結果、従来方式の整流用ダイオードの通電電流は従来のものより極度に少なく、ダイオードの整流損失ならびに発熱量が大幅に改善され、ダイオードが小型のものですみ、その放熱器も不要となり、機器の小型化を図ることができる。
【0009】
また、カレントトランスの検出する電流変化を増幅する電圧増幅部には遅延時定数回路とトランジスタとを配置して一定電圧以上からの電圧増幅度を徐々に上昇させるようにしてこれを半導体スイッチに制御信号として供給し、電源投入時の半導体スイッチの動作特性をソフトスタートする。このようにすることで、電源投入後の半導体スイッチのドレイン−ソース間ON抵抗を徐々に低くすることができるので、電源投入時の不慮の機器の損傷問題も解消することができる。
【実施例1】
【0010】
図1(A)に一般的なRCC方式AC−DCコンバータ回路を示すが、公知の回路であるので詳細な説明は省略する。図1(A)において、1は交流100〜240Vの商用電源に接続されるフィルター、2は整流部、Tは電圧変換トランス、Trはトランジスタ、Cはコンデンサ、4はスイッチングコントロール部であり、このスイッチングコントロール部4は後述の発光ダイオードD11の出力光を受光するフォトトランジスタTr11により制御される。電圧変換トランスTの二次側には整流用ダイオードD、コンデンサCが接続、また、抵抗Rを経て発光ダイオードD11、3端子レギュレータIC或は電圧制御素子ICが接続される。R、Rは抵抗、3は直流出力電圧Vを出力するフィルターである。
【0011】
二次側整流用ダイオードDに電圧変換トランスTの二次側出力電圧が供給され、その接続点A点における電圧波形が図2(A)に、通電電流波形が図2(B)に示される。この電流が二次側整流用ダイオードDを通過しコンデンサCに蓄積され直流出力電圧Vを得るようになっている。
【0012】
このような一般的なRCC方式AC−DCコンバータ回路の電圧変換トランスTと、共振用コンデンサCとを有する部分共振型RCC方式AC−DCコンバータ回路において、本発明では、図1(A)の二次側整流用ダイオードDに代えてその両端A点、B点間に、図1(B)に示す回路を挿入する。
【0013】
図1(A)に示す回路の電圧変換トランスTの二次側出力電流は図1(B)においてカレントトランスCTに通電され、通電電流の変化はこのカレントトランスCTで電圧変化としてC点において検出される。11は電圧増幅部、12は波形整形部、13は電力増幅部である。電力増幅部13の出力はスイッチ制御信号としてカレントトランスCTに接続されたFETに代表される半導体スイッチ14(以降FETスイッチという)に供給される。DはFETスイッチ14に並列に接続された整流用のダイオードである。また、Cは図1(A)同様、FETスイッチ14と整流用のダイオードDとの並列接続の出力、B点に配置されるコンデンサである。なお、FETスイッチ14にはドレイン−ソース間ON抵抗の低いものが使用される。
【0014】
前記したように、図1(A)に示す回路の電圧変換トランスTの二次側出力電流は図1(B)においてカレントトランスCTに通電され、通電電流の変化はこのカレントトランスCTで電圧変化としてC点に検出される。その電圧波形は図2(B)の電流波形と相似であり、電圧増幅部11において電圧増幅されたD点での電圧波形を図3(A)に示す。そのあと、波形整形部12、電力増幅部13においてそれぞれ波形整形、電力増幅され、ドレイン−ソース間ON抵抗の低いFETスイッチ14の制御信号として供給されFETスイッチ14を開閉する。
【0015】
このとき、FETスイッチ14を開閉するタイミングはカレントトランスCTの通電電流開始タイミングからΔtの時間遅らせることが必要となる。このことを、図1(B)のF点における電圧波形が、図3(B)の遅れタイミングである事を示す。このスイッチング遅れ時間は波形整形部等で容易に実現することができる。
【0016】
遅れ時間Δtを経過した後はFETスイッチ14がオンし、この低いオン抵抗により殆どの通電電流はダイオードDを避け、FETスイッチ14に集中することから、図4(B)に示すように一気にFETスイッチ14に通電電流が流れる。
【0017】
以上のことから、カレントトランスCTを使用した本発明の方式は当初のタイミング期間Δtは整流ダイオードDに通電し、この通電電流をカレントトランスCTで検出しFETスイッチ14を動作せしめることになる。以下、この方式をハイブリッド整流方式と呼称する。
【0018】
その結果、図2(B)と図4(A)を対比して明らかなように、従来方式の整流用ダイオードDの通電電流よりハイブリッド整流方式に供される整流用ダイオードDの通電電流が極度に少なく、ダイオードの整流損失ならびに発熱量が大幅に改善され、ダイオードの放熱器も不要となり、機器の小型化を図ることができる。又、半導体スイッチとして使用するFETは、そのドレイン−ソース間ON抵抗が極めて低い素子を容易に選択使用することが可能であり、FET自体の発熱量も極めて少ない。
【0019】
また、本実施例では正極性整流タイプで記述したが、もちろん負極性整流タイプでも同様の効果が期待できる。整流ダイオードDはFETに内蔵されている保護用ダイオードを利用することも可能である。又、通常使用されているRCC方式PWM型AC−DCコンバータにおいても当該ハイブリッド型整流方式を利用することが可能である。
【0020】
次に、AC−DCコンバータの電源投入時の動作の安定化について説明する。一般にAC−DCコンバータでは定格電圧、定格電流を超えて過大な出力電流を引き出そうとすると過大な発熱が生じ機器の不慮の損焼等を起こすことがある。これを防止するために出力過電流防止策が講じられ、過負荷時の瞬断回路機能や電圧電流垂下特性機能等が用いられる。一例として図5に出力の過電流に対してフの字特性を有する電圧電流垂下特性を伴う出力特性を示した。
【0021】
同図中、A点は定格出力電圧、出力電流を示す。定格領域を超えて過大な出力電流を引き出そうとすると、動作はA点からB点に向かい、垂下領域に入り、より一層出力電流を引き出そうとするとやがてC点に移動する。また、電源投入時には一般にO→D→Aの動作軌跡を描いて定格出力動作点A点に到達する。
【0022】
本発明のハイブリッド整流方式では、前記したように電源投入時においても図1(B)に示したカレントトランスCTは通電電流を検出し速やかにFETスイッチ14を動作させる。
【0023】
この結果、図5に示す電源投入後にO→D点に到達した時点でダイオード通過電流が導通インピーダンスの低いFETスイッチ14に切り替わるため一瞬過大な通電電流が流れ、動作軌跡がD→A点に到らず、D→A′点に向かい、D→B点に至り定格出力点Aに到達しないことがある。
【0024】
これを回避する方法の一つはA′を抱含したA→A′→B′点を含む垂下特性に拡大することであるが、このことは出力過電流保護特性上好ましくない。
【0025】
そこで本発明では図1(B)に示すソフトスタート15機能を採用することとした。
【0026】
図6は電源投入時のソフトスタート回路の主要部を示す。
【0027】
電源投入後、整流ダイオードDの通電電流によりコンデンサCに蓄積されたB点の直流電圧は上昇し図5のO→D点に到達する。D点の電圧は図6のコンデンサC61、抵抗R61とツェナーダイオードD61で構成する遅延時定数回路に依存するが、D点を通過するとTrは動作を開始しその電圧増幅度は徐々に増加し図7(A)に示すようにFETスイッチの制御信号もそれに伴い徐々に増加することになる。
【0028】
一般的なFETスイッチのドレイン−ソース間のON抵抗RDSのゲートソース間電圧VGS依存特性を図7(B)に示す。
【0029】
図7(A)、(B)から明らかなように電源投入後図5のO→D点以降はFETスイッチ14のドレイン−ソース間ON抵抗が徐々に低くなることでソフトスタートを実現し、O→D→A点の動作軌跡を安定的に得ることができるので、電源投入時の問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(A)は従来の、RCC方式コンバータの主要部をブロック図とした回路図、(B)は本発明の実施例として、その一部をブロック図とした回路図である。
【図2】(A)、(B)は、電圧変換トランスの二次側出力電圧波形と電流波形である。
【図3】(A)、(B)は、同期整流部制御信号の電圧増幅波形とFETスイッチの制御信号である。
【図4】(A)、(B)は、ハイブリッド整流電流のダイオードD2通電電流とFETスイッチの通電電流である。
【図5】直流出力特性である。
【図6】ソフトスタート回路例である。
【図7】(A)、(B)は、ハイブリッド整流ソフトスタート図とFETのドレイン−ソース間ON抵抗特性である。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルター
2 整流部
3 フィルター
4 スイッチングコントロール部
11 電圧増幅部
12 波形整形部
13 電力増幅部
14 FETスイッチ
15 ソフトスタート部
T 電圧変換トランス
CT カレントトランス
、D ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RCC方式によるAC−DCコンバータにおいて、
電圧変換トランスと、
前記電圧変換トランスの二次側出力を整流して直流出力とする整流用ダイオードと、
前記電圧変換トランスの二次側と前記整流用ダイオードとの間に挿入したカレントトランスと、
前記整流用ダイオードに並列に接続されるFETスイッチと、を備え、
前記カレントトランスの検出する電流変化を電圧増幅部、波形整形部を経て前記FETスイッチに制御信号として供給する回路を設けて前記FETスイッチを開閉し、
前記FETスイッチのオンするタイミングは前記カレントトランス通電開始から所定時間遅れるように設定し、
前記所定時間内は前記整流用ダイオード電流を出力し、前記所定時間後は前記FETスイッチの電流を主として出力する、
通電電流に同期したFETスイッチと、整流用ダイオードとを混成的に併用することからなるハイブリッド整流方式を用いたことを特徴とするAC−DCコンバータ
【請求項2】
カレントトランスの検出する電流変化を増幅する電圧増幅部には遅延時定数回路とトランジスタとを配置して一定電圧以上からの電圧増幅度を徐々に上昇させるようにしてこれをFETスイッチに制御信号として供給し、電源投入時のFETスイッチの動作特性をソフトスタートするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のAC−DCコンバータ。

【図1】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−304582(P2006−304582A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158009(P2005−158009)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(390022437)株式会社テーケィアール (10)
【Fターム(参考)】