説明

ADAT1遺伝子に特異的なsiRNA

【課題】ADAT1遺伝子を標的とする臨床応用可能なsiRNAの提供
【解決手段】本発明のsiRNAは、ADAT1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAであって、19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNA、又は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAである。本発明の二本鎖siRNAは、オフターゲット効果及びインターフェロン応答を回避しつつ、ADAT1遺伝子に特異的なRNAiを媒介できる。本発明のsiRNAは、例えば、臨床応用が可能であり、ADAT1を標的分子とした医療や医薬組成物の分野、例えば、頭頸部癌を含むがん治療に関する治療や医薬組成物の分野で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADAT1遺伝子に特異的なsiRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、RNA干渉(RNAinterference:RNAi)技術は、生命科学研究に頻繁に利用され、その有用性は広く確認されている。RNAiとは、二本鎖RNAによって、その配列特異的にmRNAが分解され、その結果遺伝子の発現が抑制される現象をいう。2001年に21塩基の低分子二本鎖RNAが哺乳動物細胞内でRNAiを媒介できることが報告されてより(非特許文献1参照)、siRNA(small interferece RNA)は、標的遺伝子の発現抑制方法として頻用されている。また、より高いRNAi効果を得るためのsiRNAの配列選択基準についても報告されている(非特許文献2参照)。RNAi技術は、医薬品への応用や、がんを含む種々の難治性疾患の治療への応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、siRNAを臨床応用する場合、インターフェロン応答の問題がある。すなわち、高濃度の合成siRNAを細胞内に導入したり、細胞内において高濃度にsiRNAを発現させたりすると、インターフェロン応答が誘導され非特異的な発現阻害や非特異的な細胞増殖阻害が起こる。現在では、10nM以上の合成siRNAを細胞内導入するとインターフェロン応答が誘導されることが知られている。
【0004】
さらに、siRNAを臨床応用する場合、オフターゲット効果の問題がある。すなわち、siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できる優れた技術ではあるが、標的遺伝子以外の類似標的配列を有する遺伝子の発現も抑制することが明らかにされている(非特許文献3参照)。
【0005】
他方、ADAT1(adenosine deaminase,tRNA−specific 1)遺伝子は、RNAに作用するアデノシン脱アミノ酵素であるADAR(adenosine deaminase acting on RNA)ファミリー属し、tRNAのRNA編集に関与するタンパク質をコードする(非特許文献4)。
【0006】
しかしながら、これまでに、ADAT1遺伝子に特異的なsiRNAであって、上述したインターフェロン応答の問題や、オフターゲット効果の問題を回避できる臨床応用可能なsiRNAは報告されていない。また、ADAT1ががんの治療標的分子として有用であるという報告はない。
【非特許文献1】Elbashir SMら、「Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells.」 Nature 411 (6836): 494−498, 2001.
【非特許文献2】Reynolds Aら、「Rational siRNA design for RNA interference.」 Nat Biotechnol 22 (3): 326−330, 2004.
【非特許文献3】Jackson ALら、「Expression profiling reveals off−target gene regulation by RNAi.」 Nat Biotechnol 21 (6): 635−637, 2003.
【非特許文献4】Maas Sら、「Identification and characterization of a human tRNA−specific adenosine deaminase related to the ADAR family of pre−mRNA editing enzymes.」 Proc Natl Acad Sci USA 96 (16): 8895−8900, 1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ADAT1遺伝子を特異的に標的とする臨床応用可能なsiRNAの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のsiRNAは、ADAT1を標的とする二本鎖siRNAであって、19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNA、又は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAであり、前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5のいずれかの配列であり、前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8のいずれかの配列である二本鎖siRNAである。
【発明の効果】
【0009】
本発明者らは、まず、頭頸部癌などのがんの治療標的分子について鋭意研究を重ね、ADAT1が頭頸部癌などのがんの治療標的分子となりうることを見出した。すなわち、ヒト全遺伝子を対象にした網羅的遺伝子発現解析を行い、培養ヒト正常角化上皮細胞及び正常口腔粘膜組織には発現が認められず、培養ヒト頭頸部癌細胞及び頭頸部癌組織などの悪性腫瘍においてのみ共通して発現が認められる遺伝子として、ADAT1遺伝子を同定した。
【0010】
次に、本発明者らは、ADAT1遺伝子のsiRNAについてさらに鋭意研究を重ね、1nMという使用濃度であっても十分にRNAi効果を発揮でき、インターフェロン応答の誘導回避が可能な二本鎖siRNAを見出した。そして、本発明者らは、ADAT1遺伝子のsiRNAについて、BLASTサーチを駆使し、ADAT1mRNAの非翻訳領域を含めた全配列より他の遺伝子にホモロジーを示さない配列を標的配列として選択し、オフターゲット効果を回避できる二本鎖siRNAを見出し、本発明に到達した。
【0011】
本発明の二本鎖siRNAによれば、例えば、1nMという使用濃度であっても十分にRNAi効果を発揮できるから、好ましくは、インターフェロン応答を回避して使用できる。また、本発明の二本鎖siRNAは、ADAT1に特異的であるから、好ましくは、オフターゲット効果を回避して使用できる。したがって、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、臨床応用可能であり、例えば、がんの治療、がん治療の医薬組成物、ADAT1に特異的な阻害組成物等に利用できる。
【0012】
さらにまた、本発明の二本鎖siRNAがRNAi効果を発揮するADAT1遺伝子は、上述のとおり、頭頸部癌などの悪性腫瘍の治療標的分子となりうるから、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、頭頸部癌などの悪性腫瘍の腫瘍マーカーに利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAにおいて、前記3’末端オーバーハング部分の2塩基の配列は、TT(チミン・チミン)であることが好ましい。
【0014】
本発明の二本鎖siRNAは、その他の態様として、前記配列表の配列番号1から8の配列において、1若しくは数個の塩基が修飾され又は置換、付加若しくは欠失した二本鎖siRNAであって、ADAT1遺伝子に特異的なRNA干渉を誘導可能な二本鎖siRNAである。
【0015】
本発明のADAT1特異的阻害組成物は、RNA干渉によりADAT1遺伝子の発現を特異的に阻害するADAT1遺伝子に特異的な阻害組成物であって、本発明の二本鎖siRNAを含む。
【0016】
本発明の医薬組成物は、がん治療用の医薬組成物であって、本発明の二本鎖siRNAの少なくとも1つを含む医薬組成物である。本発明の医薬組成物は、さらに、アテロコラーゲンを含むことが好ましい。本発明の医薬組成物において、治療用途の対象となるがんは、例えば、頭頸部癌などである。
【0017】
本発明の腫瘍マーカーは、ADAT1遺伝子のADAT1mRNA、ADAT1タンパク質、及び、ADAT1タンパク質に対する自己抗体からなる群から選択される腫瘍マーカーであって、被検試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、被検者におけるがんの存在を示す腫瘍マーカーである。前記腫瘍マーカーは、頭頸部癌の存在を示すものであることが好ましい。
【0018】
本発明の腫瘍マーカーの使用方法は、被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む腫瘍マーカーの使用方法である。前記腫瘍マーカーは、頭頸部癌の存在を示すものであることが好ましい。
【0019】
本発明の検出キットは、腫瘍マーカーを検出するための検出キットであって、前記ADAT1mRNAを検出するためのプローブ及びプライマーの少なくとも一方であるポリヌクレオチド、前記ADAT1タンパク質のいずれかを検出するための抗体、並びに、抗ADAT1タンパク質抗体を検出するための抗原及び抗体からなる群から選択される少なくとも一つを含む検出キットである。前記腫瘍マーカーは、頭頸部癌の存在を示すものであることが好ましい。
【0020】
次に、本発明の二本鎖siRNAについて詳しく説明する。
【0021】
まず、本発明において、「ADAT1遺伝子」とは、上述のとおり、tRNA特異的アデノシン脱アミノ酵素1(adenosine deaminase,tRNA−specific 1)の遺伝子であって、RNAに作用するアデノシン脱アミノ酵素であるADAR(adenosine deaminase acting on RNA)ファミリー属し、tRNAのRNA編集に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。本発明の二本鎖siRNAの標的となるADAT1遺伝子としては、好ましくは、ヒトADAT1遺伝子であって、その配列は、例えば、GenBankアクセッション番号(2006年11月17日付)NM_012091などから入手可能であって、ヒトADAT1タンパク質のアミノ酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号(2006年11月17日付)NP_036223などから入手可能である。
【0022】
本発明において、「siRNA」とは、RNAiを媒介可能な短鎖のRNA分子であって、一般には、21塩基〜27塩基の二本鎖低分子RNAをいう。
【0023】
本発明の二本鎖siRNAは、2つの態様がある。第1の態様は、19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNAであり、第2の態様は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAである。前記19塩基対及び前記27塩基対の一方の鎖の配列を、下記表1に示す。下記表において、左欄が、それぞれのsiRNAのコードネームであり、右欄が、SeqID、すなわち、配列表の配列番号である。
【0024】
【表1】

【0025】
ここで、「特異的に標的とする」とは、オフターゲット効果が抑制され、好ましくはオフターゲット効果がないことをいう。すなわち、ADAT1遺伝子以外の遺伝子にRNAi効果を好ましくは及ぼすことがない、非常に高い特異性を示すことをいう。
【0026】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAにおいて、前記3’末端のオーバーハングとは、5’末端から19merが相補的な配列である2本の21merのRNA鎖が対合して二本鎖を形成したとき19塩基対の両端から突出する3’末端の2merの部分をいう。前記3’末端オーバーハングの2塩基の配列は、例えば、両端ともTT(チミン・チミン)が好ましい。なお、前記3’オーバーハングの2塩基の配列は、これに制限されず、RNAi効果や細胞増殖抑制効果に実質的に影響を及ぼさない範囲であれば、任意の天然核酸塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシシル)、並びに、天然及び人工の公知の修飾塩基であってもよい。また、前記3’末端オーバーハング部分のヌクレオチドは、通常、リボヌクレオチドを使用できるがこれに制限されず、RNAi効果や細胞増殖抑制効果に実質的に影響を及ぼさない範囲であれば、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、その他の公知のヌクレオチド類似体を使用してもよい。さらに、本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAは、必要に応じて、前記3’末端オーバーハングに代えて、5’末端オーバーハングとしてもよい。
【0027】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAの19塩基対の配列は、上記表1に記載の、267、528、752、1074、及び、2172(それぞれ、配列表の配列番号1〜5の配列)の5種類が使用できるが、好ましくは、1074及び2172であって、より好ましくは、2172である。
【0028】
本発明の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNAは、27merの相補的な2本のRNA鎖が対合して形成した二本鎖であるから、その末端は平滑である。本発明の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNAの27塩基対の配列は、上記表1に記載のとおり、749、1072、及び、2168(それぞれ、配列表の配列番号6〜8)の3種類が使用できるが、好ましくは、1072及び2168であって、より好ましくは、1072である。
【0029】
本発明の二本鎖siRNAの塩基対部分の配列(配列表の配列番号1〜8)は、ADAT1遺伝子特異的なRNAiを誘導できる範囲において、1又は数個の塩基が修飾され、又は置換、付加若しくは欠失したものであってもよい。前記数個とは、例えば、2、3、4個である。
【0030】
本発明の二本鎖siRNAの製造方法は、インビトロで化学的又は酵素的に合成しても、又は、インビボで合成してもよく、その製法は特に制限されないが、なかでも、従来公知の方法により化学合成して製造することが好ましい。合成二本鎖siRNAであれば、濃度調節が容易となり臨床応用に際してインターフェロン応答の回避が容易となる。また、コンタミネーションの防止が容易であり安全性においても利点がある。例えば、本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAの2172を製造する場合、まず、配列表の配列番号5の配列の3’末端に2塩基のオーバーハングを加えた21merのRNA鎖、及び、前記配列番号5の配列の相補配列の3’末端に2塩基のオーバーハングを加えた21merのRNA鎖をそれぞれ化学合成する。次に、前記2本のRNA鎖が対合する条件で対合させ、本発明の21塩基のオーバーハング二本鎖siRNAを得る。使用に際しては、必要に応じて、従来公知の方法により適宜精製することが好ましい。
【0031】
したがって、本発明は、その他の態様として、二本鎖siRNAの製造方法であって、前記二本鎖siRNAが、本発明の二本鎖siRNAであり、配列表の配列番号1〜5、のいずれかの配列及びその相補配列にそれぞれ2塩基のオーバーハングを加えた2本のRNA鎖、又は、配列表の配列番号6〜8のいずれかの配列及びその相補配列の2本のRNA鎖を合成する合成工程と、合成した前記2本のRNA鎖を対合して二本鎖RNAとする対合工程とを含む製造方法を含む。
【0032】
次に、本発明の二本鎖siRNAの使用方法について説明する。本発明の二本鎖siRNAは、インビトロにおいて細胞や組織に対して使用できることに加えて、ヒトに対して臨床応用可能である。ヒトへの投与方法は、特に制限されず、従来公知のデリバリーシステムを利用できる。しかしながら、例えば、口腔癌等のように、直視直達の可能な部位に対しては、例えば、アテロコラーゲンを用いた局所投与法が好ましい。前記アテロコラーゲンは、例えば、局所止血剤として既に臨床応用されており、また、前記アテロコラーゲンを用いたsiRNAの局所投与法は、血管内皮増殖因子(VEGF)を分子標的とした動物実験でその有意性が示されている(Takei Yら、Cancer Res 64(10):3365−3370、2004)。
【0033】
また、その他のデリバリーシステムとして、生体内での分解を防ぎ、細胞内透過性を高めるための化学修飾(Rossi JJ.、Nature 432(7014):155−156、2004; Soutschek Jら、Nature 432(7014):173−178、2004)やカチオニックリポソーム(Yano Jら、Clin Cancer Res 10(22):7721−7726、2004)を用いたデリバリーシステムを利用しても良い。さらに、必要に応じて、本発明の二本鎖siRNAを発現するsiRNA発現ベクターを構築し、遺伝子治療技術を利用したデリバリーシステムを利用することもできる。
【0034】
本発明の二本鎖siRNAは、がんの治療や、がん治療の用途に使用する医薬組成物若しくはそれらの製造に使用することが好ましい。とりわけ、前記がんとしては、例えば、頭頸部癌があげられる。本発明において、「頭頸部癌」とは、脳と眼を除いた首から上にできるがんをいい、一般的に、口腔癌、鼻副鼻腔癌、口唇癌、咽頭癌、喉頭癌、頸部腫瘍、耳の癌を含む。なかでも、本発明の二本鎖siRNAは、口腔癌の治療や、口腔癌の治療の用途に使用する医薬組成物若しくはそれらの製造に使用することが好ましい。口腔癌とは、一般に、歯肉、舌、頬部、口蓋、口底、唾液腺等の口腔を構成する部位の粘膜により発生するがんをいう。口腔は、摂食、構音等、日常生活を営む上で極めて重要な機能を担っている。手術手技の進歩により進行口腔癌の治療成績は向上しているものの、治療後のQOL(生活の質)の低下は避けられない。したがって、進行口腔癌に対しては特に手術を用いない根治性の高い新規治療法の開発が急務となっている。マウスの骨肉腫及び肝細胞癌のモデルで単一のがん遺伝子の発現を一時的に抑制するのみで、腫瘍細胞の分化誘導による治癒が観察され、がん遺伝子への依存ががんのアキレス腱であることが示された。また、ヒトがんにおいても、EGFR、Her−2、Bcr−Abl等の単一のがん遺伝子を分子標的とする薬剤が開発され、がん臨床においてその有用性が示されている。本発明においては、ADAT1遺伝子を分子標的とする。ADAT1ががんにおいて分子標的となることは、本発明者らが初めて見出した事実である。
【0035】
すなわち、本発明の二本鎖siRNAを使用してRNAi効果によりADAT1遺伝子の発現を阻害することで、好ましくは、がん細胞の細胞増殖を抑制できる。これに対し、がん細胞以外の細胞は、本発明の二本鎖siRNAの影響を、好ましくは、受けない。なお、前記がんとしては、例えば、頭頸部癌が好ましい。
【0036】
前述したとおり、従来、siRNAを臨床応用する上で大きな問題が2つあった。すなわち、インターフェロン応答が誘導される問題と、オフターゲット効果の問題である。前記インターフェロン応答を回避するには、細胞内導入濃度を少なくとも10nM未満とする必要があるが、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、1nMという超低濃度でADAT1遺伝子に対して十分なRNAi効果を発揮することができる。
【0037】
また、前記オフターゲット効果についても、本発明の二本鎖siRNAの標的配列は、BLASTサーチを駆使して他の遺伝子の非翻訳領域も含めた全配列にホモロジーを示さない配列であるため、オフターゲット効果を回避できる。このように、本発明の二本鎖siRNAは、臨床応用における大きな2つの障壁をクリアしており、臨床応用可能である。なお、臨床応用においては、本発明の二本鎖siRNAは、合成二本鎖siRNAであることが好ましい。
【0038】
したがって、本発明は、その他の態様として、RNA干渉によりADAT1遺伝子の発現を特異的に阻害するADAT1特異的阻害組成物であって、本発明の二本鎖siRNAを含む組成物である。本発明のADAT1特異的阻害組成物は、細胞内のADAT1遺伝子の発現を特異的にノックダウンするために、インビトロ及びインビボで使用できる。その剤形は、特に制限されない。
【0039】
さらに、本発明は、その他の態様として、がん、好ましくは頭頸部癌、より好ましくは口腔癌の治療方法であって、本発明の二本鎖siRNAを使用することを含むがんの治療方法を含む。本発明の治療方法は、既存の放射線及び/又は抗癌剤の使用と本発明の二本鎖siRNAの使用とを併用することを好ましく含む。また、さらにその他の態様として、本発明は、がん、好ましくは頭頸部癌、より好ましくは口腔癌の治療における二本鎖siRNAの使用であって、前記二本鎖siRNAが、本発明の二本鎖siRNAである使用を含む。同様に、本発明の二本鎖siRNAの使用は、既存の放射線及び/又は抗癌剤の使用との併用を好ましく含む。
【0040】
次に、本発明の医薬組成物について説明する。本発明の医薬組成物は、がん治療用の医薬組成物であって、本発明の二本鎖siRNAを含むものである。本発明の医薬組成物は、さらに、アテロコラーゲンを含むことが好ましい。上述のとおり、本発明の医薬組成物の治療用途の対象となるがんは、特に制限されないが、好ましくは頭頸部癌、より好ましくは口腔癌である。
【0041】
本発明の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるキャリアを含んでもよい。前記薬学的キャリアとしては、特に制限されないが、例えば、本発明の二本鎖siRNAが、標的の部位、組織、細胞等に侵入する効率を高めることができるキャリア、例えば、リポソーム、カチオンリポソーム等があげられる。本発明の医薬組成物の剤形は、特に制限されず、例えば、注射剤、クリーム剤、軟膏、錠剤、懸濁剤等があげられる。また、投与方法も特に制限されず、例えば、注射、経口、局所、鼻内、直腸、静脈内、動脈内投与等があげられる。
【0042】
次に、本発明の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の腫瘍マーカーは、ADAT1遺伝子の発現をマーカーとして利用するものである。本発明において、「腫瘍マーカー」とは、悪性腫瘍細胞の目印(マーカー)になる物質であって、がんの診断や治療の判断基準として役立つ物質の総称をいう。本発明の腫瘍マーカーは、がん、好ましくは、頭頸部癌、より好ましくは、口腔癌の腫瘍マーカーである。本発明の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる物質は、ADAT1遺伝子の転写産物であるADAT1mRNA、前記転写産物の翻訳産物であるADAT1タンパク質、及び、ADAT1タンパク質に対する自己抗体の少なくとも一つを含む。本発明の腫瘍マーカーにおいて、前記「被検試料」とは、特に制限されないが、例えば、リンパ節、唾液、血液などである。本発明の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが「陽性」であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や良性の腫瘍患者における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や良性の腫瘍患者等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値があげられる。
【0043】
前記ADAT1mRNAの塩基配列は、前述のとおり、GenBankアクセッション番号(2006年11月17日付)NM_012091に登録されており、ADAT1タンパク質のアミノ酸配列は、NP_036223に登録されている。
【0044】
次に、本発明の腫瘍マーカーの使用方法について説明する。本発明の腫瘍マーカーの使用方法としては、特に制限されず、従来公知の腫瘍マーカーと同様の使用方法にて使用できるが、例えば、被検者から被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む使用方法があげられる。まず、前記準備工程において、被検者から被検試料を準備する。次に、前記検出工程において、本発明の腫瘍マーカーのマーカー物質であるADAT1mRNA、ADAT1タンパク質、抗ADAT1タンパク質自己抗体の少なくとも1つを、例えば、従来公知の方法等を用いて検出し、最後に、前記判定工程において、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する。検出対象は1種類に限られず、2種類又は3種類を組み合わせて使用することも好ましい。
【0045】
前記判定工程における本発明の腫瘍マーカーが陽性か陰性かの判定は、前述のとおり、例えば、健常者等の値を基準として設定するしきい値と比較して判定することができる。
【0046】
本発明の腫瘍マーカーにおける前記ADAT1mRNAを検出する方法としては、特に制限されないが、前記RNAを定量できる従来公知の方法があげられる。その方法も特に制限されないが、例えば、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットプロット、RNaseプロテクションアッセイ等のほか、マイクロアレイを用いる方法、リアルタイムPCR法等のPCRを利用する方法、前記RNAを直接測定する方法等の迅速な測定が可能な方法があげられる。前記定量は、前記判定工程において前記しきい値との比較ができる相対的な定量であってもよく、例えば、適当な内部標準や外部標準を利用することができる。
【0047】
前記マイクロアレイを用いる方法としては、前記ADAT1mRNAに対応するプローブが配置されたマイクロアレイを準備し、このマイクロアレイに、前記被検試料中の前記ADAT1mRNAを鋳型として調製した標識化ターゲットをハイブリダイズさせ、前記プローブに結合した前記ターゲットの標識シグナルを測定して前記RNA鎖を定量する方法があげられる。前記リアルタイムPCR法としては、例えば、被検試料のトータルRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型に前記マーカー転写産物領域をPCRで増幅し、リアルタイムモニタリング用試薬を用いて増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングして解析する方法があげられる。また、前記mRNAを直接測定する方法としては、例えば、Invader(登録商標:Third Wave Technologies社)RNAアッセイ等があげられる。ただし、前記mRNAを検出する方法としては、これらの方法に限られず、種々の定量方法を適用できる。
【0048】
本発明の腫瘍マーカーにおける前記ADAT1タンパク質を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記ADAT1タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫学的測定方法があげられる。前記免疫学的測定方法としては、ウェスタンブロット、ELISA、サンドウィッチELISA、免疫組織化学染色等があげられる。前記抗体は、前記ADAT1タンパク質等を用いた従来公知の方法で作製してもよく、市販のものを購入してもよい。前記抗体は、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。
【0049】
本発明の腫瘍マーカーにおける前記ADAT1タンパク質に対する自己抗体を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記自己抗体の抗原であるADAT1タンパク質を固相に固定化し、前記自己抗体と抗原抗体反応により複合体を形成させ、さらに、前記自己抗体に対する標識抗体により前記複合体を検出する方法等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明の検出キットについて説明する。本発明の検出キットは、本発明の腫瘍マーカーの検出するためのキットである。本発明の検出キットは、第1の態様として、前記マイクロアレイを含む検出キットが挙げられる。検出前記キットには、さらに、被検試料からトータルRNAを調製するプライマーや試薬、ターゲットを調製するための標識化された本発明のプライマーや試薬等を含んでもよい。前記試薬としては、従来公知の試薬が利用でき、例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、標識化合物、バッファー等があげられる。また、本発明の検出キットは、第2の態様として、前述のPCR等の遺伝子増幅技術を用いたADAT1mRNA検出及び/又は測定方法に使用するプローブやプライマーを含むキットが挙げられる。これらのプローブやプライマーの配列は、特に制限されず、当業者であれば容易に設定可能である。前記検出キットは、例えば、マイクロアレイを製造する場合や、リアルタイムPCR法により検出する場合に使用できる。さらに、本発明の検出キットは、第3の態様として、ADAT1タンパク質に対する抗体を含む検出キットが挙げられ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA等の前記ポリペプチドの免疫学的測定に使用できる。第4の態様として、自己抗体の抗原であるADAT1タンパク質、及び、前記自己抗体に対する標識化抗体を含む検出キットが挙げられ、例えば、上述したとおり、自己抗体の免疫学的測定に使用できる。前記自己抗体を検出することで、間接的にADAT1遺伝子の発現を検出できる。前記ADAT1タンパク質は、固相に固定化されていることが好ましい。本発明の検出キットは、上述のいずれの態様においても検出方法などを記載した取扱説明書を含んでもよい。
【0051】
さらに、本発明は、その他の態様として、がんの診断方法であって、本発明の腫瘍マーカーを使用することを含む診断方法であってもよい。また、本発明は、本発明の腫瘍マーカーの使用であって、がんの診断における本発明の腫瘍マーカーの使用を含む。前記診断対象のがんは、好ましくは、頭頸部癌であり、より好ましくは、口腔癌である。
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0053】
<治療標的分子の同定(マイクロアレイ解析)>
頭頸部癌腫瘍組織(9例)、正常上皮組織(3例)、培養ヒト頭頸部癌細胞株(10株)、及び、正常ヒト角化上皮細胞株(1株)をそれぞれホモジナイズした後、商品名:Isogen(Nippon Gene社製)を用いてトータルRNAを抽出し、精製した。2gのトータルRNAを、商品名:ケミルミネッセントRT−IVTラベリングキット(Applied Biosystems社製)を用いて増幅し、ジゴキシゲニン(Roche Molecular Biochemicals社製)標識cRNAを合成した。合成cRNAを、商品名:ヒトゲノムサーベイマイクロアレイ(Applied Biosystems社製)にハイブリダイゼーションさせたのち、商品名:ケミルミネッセントディテクションキット(Applied Biosystems社製)を用いて洗浄、発色後、商品名:Applied Biosystems1700マイクロアレイアナライザー(Applied Biosystems社製)にて29,098ヒト全遺伝子の発現定量を行った。各症例の遺伝子発現量の比較は、商品名:GeneSpring(Silicon Genetics社製)を用いて解析した。
【0054】
その結果、培養ヒト正常角化上皮細胞及び正常上皮組織には発現が認められず、培養ヒト頭頸部癌細胞及び頭頸部癌組織においてのみ共通して発現が認められる遺伝子として、ADAT1遺伝子を同定した。
【0055】
<本発明の二本鎖siRNAのRNAi効果及び細胞増殖抑制効果の確認>
上記表1の5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(267、528、752、1074及び2172;それぞれ、配列表の配列番号1〜5)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(749、1072及び2168;それぞれ、配列表の配列番号6〜8)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、それぞれの合成二本鎖siRNAについて、1nMの濃度で使用した場合のADAT1遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を確認した。具体的には、以下のようにして行った。
【0056】
合成二本鎖siRNAの調製
前記5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(267、528、752、1074及び2172)は、配列表の配列番号1〜5の19塩基の配列及びその相補配列それぞれの3’末端にTT配列からなる2塩基オーバーハング部分を加えたRNA鎖を、定法により化学合成し、それらを対合させて調製した。また、前記3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(749、1072及び2168)は、配列表の配列番号6〜8の配列及びその相補配列のRNA鎖を定法により化学合成し、それらを対合させて調製した。以下のRNAi効果及び細胞増殖抑制効果の確認に際しては、適宜、HPLC等で精製したものを使用した。
【0057】
細胞及び培養法
RNAi効果の確認には、ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株SASに緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を導入して分離したGFP安定発現株GFP−SAS細胞、及び、ヒト唾液腺癌細胞株ACCMにGFP遺伝子を導入して分離したGFP安定発現株GFP−ACCM細胞を用いた。前記細胞の培養には、10%ウシ胎児血清(FBS;Biosource International社製)、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン、0.25mg/mlアンホテリシンB(Invitrogen社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma−Aldrich社製)を増殖培養液として用い、空気中に5%の割合で炭酸ガスを含む培養器内で、37℃で行った。
【0058】
合成二本鎖siRNAの細胞内導入
60mm径プラスチックペトリ皿(商標:Falcon、BD Biosciences社製)に、8×105個の前記GFP−SAS細胞又はGFP−ACCM細胞を植え込み、24時間培養後opti−MEM(Invitrogen社製)にて2回洗浄し、1nMの合成二本鎖siRNAを含むLipofectamine2000(Invitrogen社製)溶液を加えた。5時間後10%FBSを含むDMEMに培地交換した。
【0059】
ウエスタンブロッティング法
上述のとおり、合成二本鎖siRNAを導入後48時間培養した後に、培養した細胞を、商品名:CelLytic M Cell Lysis Reagent(Sigma−Aldrich社製)を用いて可溶化した。前記可溶化試料を、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動)にて展開し、商品名:Mini−PROTEAN II(Bio−Rad社製)を用いて、2時間PDVF(polyvinylidene difuoeide)膜(Millipore社製)に転写した。転写後は、5%スキムミルク(和光純薬社製)を含むT−TBS(25mM Tris−HCl、125mM NaCl、0.1% Tween20;Sigma−Aldrich社製)にて4℃、1晩ブロッキングした。さらに、一次抗体をブロッキング溶液にて希釈し、室温にて1時間反応させ、前記T−TBS溶液にて3回洗浄後、二次抗体を同様に1時間反応させた。商品名:ECLplusキット(Amersham Biosciences社製)にて発色させた後、商品名:LAS3000(富士フィルム社製)を用いてデジタル画像化した。
【0060】
細胞増殖評価法
前記GFP−SAS細胞に前記合成二本鎖siRNAを導入した細胞を、6ウェルマイクロプレート(商標:Falcon、BD Biosciences社製)に5×104個植え込み、4日間培養した後、0.05%トリプシン−0.53mM EDTA(Invitrogen社製)にて細胞を回収し、商品名:Z1 Coulter Counter(Beckman Coulter社製)を用いて細胞数を計測した。
【0061】
<RNAi効果についての結果>
前記8種類の合成二本鎖siRNAを前記培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株GFP−SAS細胞、及び、前記培養ヒト唾液腺癌細胞株GFP−ACCM細胞に導入し、RNAi効果をADAT1タンパク質の発現レベルで評価した。その結果、前記8種類の全ての合成二本鎖siRNAが、1nMの濃度で標的遺伝子ADAT1の発現を有意に抑制することが確認された。その結果の一例を図1に示す。同図は、GFP−SAS及びGFP−ACCMに、5種類の21塩基オーバーハング合成二本鎖siRNA(267、528、752、1074及び2172)を導入した48時間後にRNAi効果を確認した結果の一例である。それぞれ、上段が、ADAT1タンパク質に対するウエスタンブロッティングの結果を示し、下段が、内部対照マーカーであるβ−チューブリンに対するウエスタンブロッティングの結果を示す。また、同図において、GFPのレーンは、GFP遺伝子に対する合成二本鎖siRNA(21塩基オーバーハング)を導入した場合のコントロールである。同図に示すとおり、導入した本発明の二本鎖siRNAは、ADAT1に対してRNAi効果を示した。
【0062】
<細胞増殖抑制効果についての結果>
前記8種類の合成二本鎖siRNAを前記培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株GFP−SASに導入し、上述のとおり、細胞増殖抑制効果を評価した。その結果、前記8種類の全ての合成二本鎖siRNAが、1nMの濃度で前記口腔癌細胞の増殖を有意に抑制することが確認された。その結果の一例を図2に示す。同図において、“‐”のレーンは、siRNAを導入しなかった場合のコントロールであり、左から2番目の“GFP”のレーンは、GFPを標的とした21塩基オーバーハングsiRNAを導入した場合のコントロールであり、右から4番目の“GFP”のレーンは、GFPを標的とした27塩基ブラントエンドsiRNAを導入した場合のコントロールである。また、同図において、縦軸は、前記siRNAを導入しなかった場合の細胞数を1とした場合の相対的な細胞数を示す。同図に示すとおり、前記8種類の中でも、2172、1072、及び、2168の3種類の合成二本鎖siRNAは、70%以上の顕著な頭頸部癌細胞の増殖抑制効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したとおり、本発明の二本鎖siRNAは、オフターゲット効果及びインターフェロン応答を回避しつつ、ADAT1遺伝子特異的なRNAiを媒介できるから、例えば、臨床応用が可能であり、ADAT1を標的分子とした医療や医薬組成物の分野、例えば、頭頸部癌を含むがん治療に関する治療や医薬組成物の分野で有用である。その他、本発明の二本鎖siRNAは、例えば、学術及び基礎医学的研究開発分野においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の二本鎖siRNAのADAT1遺伝子を標的としたRNAi効果をウエスタンブロッティングで確認した結果の一例である。
【図2】図2は、本発明の二本鎖siRNAの頭頸部癌細胞に対する増殖抑制効果を確認した結果の一例である。
【配列表フリーテキスト】
【0065】
配列番号1 オーバーハングsiRNA 267
配列番号2 オーバーハングsiRNA 528
配列番号3 オーバーハングsiRNA 752
配列番号4 オーバーハングsiRNA 1074
配列番号5 オーバーハングsiRNA 2172
配列番号6 ブラントエンドsiRNA 749
配列番号7 ブラントエンドsiRNA 1072
配列番号8 ブラントエンドsiRNA 2168

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADAT1遺伝子を標的とする二本鎖siRNAであって、
19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNA、又は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAであり、
前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5のいずれかの配列であり、
前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8のいずれかの配列である二本鎖siRNA。
【請求項2】
前記3’末端オーバーハング部分の2塩基の配列が、TTである請求項1記載の二本鎖siRNA。
【請求項3】
前記配列表の配列番号1から8の配列において、1若しくは数個の塩基が修飾され又は置換、付加若しくは欠失し、かつ、ADAT1遺伝子特異的なRNA干渉を誘導可能な請求項1又は2に記載の二本鎖siRNA。
【請求項4】
ADAT1特異的阻害組成物であって、請求項1から3のいずれか一項に記載の二本鎖siRNAを含み、RNA干渉によりADAT1遺伝子の発現を特異的に阻害するADAT1特異的阻害組成物。
【請求項5】
がん治療用の医薬組成物であって、請求項1から3のいずれか一項に記載の二本鎖siRNAを含む医薬組成物。
【請求項6】
さらに、アテロコラーゲンを含む請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記がんが、頭頸部癌である請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ADAT1遺伝子のADAT1mRNA、ADAT1タンパク質、及び、ADAT1タンパク質に対する自己抗体からなる群から選択される腫瘍マーカーであって、被検試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、被検者におけるがんの存在を示す腫瘍マーカー。
【請求項9】
腫瘍マーカーの使用方法であって、被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に請求項8記載の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む腫瘍マーカーの使用方法。
【請求項10】
請求項8記載の腫瘍マーカーを検出するための検出キットであって、前記ADAT1mRNAを検出するためのプローブ及びプライマーの少なくとも一方であるポリヌクレオチド、前記ADAT1タンパク質を検出するための抗体、並びに、抗ADAT1タンパク質抗体を検出するための抗原及び抗体からなる群から選択される少なくとも一つを含む検出キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−228655(P2008−228655A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73155(P2007−73155)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】