説明

AMPにより活性化されたプロテインキナーゼ(AMPK)アクチベーターとしてのチエノピリドン誘導体

本発明は、式(I)、式中、R、RおよびB、Bは請求項1において定義した通りである、で表される化合物、それらの医薬組成物ならびに、AMPアゴニストによって調節される疾患および障害の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、中間体および式(I)で表される化合物の調製方法を対象とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、式(I)で表されるAMPKにより活性化されたプロテインキナーゼ(AMPK)のアクチベーターであるチエノピリドン誘導体に関する。
【化1】

【0002】
本発明はまた、これらのチエノピリドンの調製および障害、例えば糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、癌、炎症などの処置における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に医薬を調製するために用いることができるものを見出す目的を有していた。
本発明は、疾患、例えば糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、癌、炎症などの処置および/または予防において有用である化合物に関する。
また、本発明の化合物の有効量を投与することを含む、AMPKを活性化することによって処置することができる疾患および障害を処置する方法を提供する。
【0004】
したがって、本発明は、前記疾患の処置および/または予防における医薬および/または医薬活性成分としての本発明の化合物に、ならびに、前記疾患の処置および/または予防するための医薬の調製の本発明の化合物の使用に、ならびにまた、本発明の1種または2種以上の化合物を、かかる投与を必要とする患者に投与することを含む、前記疾患の処置のための方法に関する。
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、チエノピリドン誘導体がAMPKを活性化することを見出した;したがって、これらの化合物は、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、癌、炎症を予防および処置するのに特に適する。本発明の化合物およびその塩は、極めて有用な薬理学的特性を有し、一方良好に耐容されることが見出された。
特に、それらは、AMPK活性化効果を示す。
【0006】
宿主または患者は、任意の哺乳類種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯動物;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属し得る。動物モデルは、実験的研究のために興味深く、ここでそれらは、ヒト疾患の処置のためのモデルを提供する。
【0007】
AMPKは、細胞エネルギーホメオスタシスのセンサーおよびレギュレーターとして良好に確立されている(Hardie D.G.およびHawley S.A; “AMP-activated protein kinase: the energy charge hypothesis revisited” Bioassays, 23, 1112, (2001), Kemp B.E. et al. “AMP-activated protein kinase, super metabolic regulator”, Biochem; Soc. Transactions, 31, 162 (2003))。上昇するAMPレベルによるこのキナーゼのアロステリック活性化は、細胞エネルギー欠乏の状態において発生する。標的酵素の結果として生じるセリン/トレオニンリン酸化により、細胞代謝の低いエネルギー状態への適合がもたらされる。AMPK活性化により誘発された変化の正味の効果は、ATP消費プロセスの阻害およびATP発生経路の活性化、およびしたがってATP貯蔵の再生である。
【0008】
AMPK基質の例には、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)およびHMG−CoA還元酵素が含まれる(Carling D. et al., “A commun bicyclic protein kinase cascade inactivates the regulatory enzymes of fatty acid and cholesterol biosynthesis”, FEBS letters, 223, 217 (1987))。ACCのリン酸化ひいては阻害により、脂肪酸合成の減少(ATP消費)がもたらされ、同時に脂肪酸酸化の増大(ATP発生)がもたらされる。HMG−CoA還元酵素のリン酸化および結果として生じる阻害により、コレステロール合成の減少がもたらされる。
【0009】
AMPKの他の基質には、ホルモン感受性リパーゼ(Garton A. J. et al. ’phosphorylation of bovine hormone-sensitive lipase by AMP-activated protein kinase; A possible antilipolytic mechanism”, Eur. J. Biochem. 179, 249, (1989))、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(Muoio D. M. et al. “AMP-activated kinase reciprocally regulates triacylglycerol synthesis and fatty acid oxidation in liver and muscle: evidence that sn-glycerol-3-phosphate acyltranferase is a novel target”, Biochem. J., 338, 783, (1999))、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ(Sarah A. K. et al., “activation of malonyl- CoA decarboxylase in rat skeletal muscle by contraction and the AMP-activated protein kinase activator -D-ribofuranoside”, J. Biol. Chem., 275,5-aminoimidazole-4-caboxamide-1- 24279, (2000))が含まれる。
【0010】
AMPKはまた、肝臓代謝の調節に関与する。肝臓により上昇されたグルコース産生は、T2Dにおける空腹時高血糖の主な原因である(Saltiel et al., “new perspectives into the molecular pathogenesis and treatment of type 2 diabetes, cell 10, 517-529 (2001))。肝臓における糖新生は、複数種の酵素、例えばホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)およびグルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)などによって調節される。AMPKの活性化は、肝癌細胞中のこれらの遺伝子の転写を抑制する(Lochhead et al, “5- aminoimidazole-4-carboxamide riboside, mimics the effects of insulin on the expression of the 2 key gluconeogenic genes PEPCK and glucose-6-phosphatase, Diabetes, 49,896-903 (2000))。
【0011】
AMPK活性化はまた、いくつかの他の遺伝子発現に作用する糖新生を下方制御する。これらの効果は、重要な転写制御因子、例えばSREBP−1c(Zhou G. et al., “Role of AMP-activated protein kinase in mechanism of metformin action”, J. Clin. Invest., 108, 1167 (2001))、ChREBP(Kawaguchi T. et al., “ mechanism for fatty acids sparing effect on glucose induced transcription: regulation of carbohydrate response element binding protein by AMP-activated protein kinase” J. Biol. Chem. 277, 3829 involved in (Leclerc I. et al., “Hepatocyte nuclear factor-4(2001)) or HNF-4 type 1 maturity-onset diabetes of the young is a novel target of AMP-activated protein kinase” Diabetes, 50, 1515 (2001))などを下方制御するその能力によるもの、または転写共役因子、例えばp300(Yang W; et al., “Regulation of transcription by AMP-activated protein kinase; Phosphorylation of p300 blocks its interaction with nuclear receptors” J. Biol. Chem. 276, 38341 (2001))およびTORC2などの直接リン酸化によるものであり得る。
【0012】
AMPKは、AMPの上昇およびクレアチンリン酸エネルギー貯蔵の減少と平行して活性化されるため、収縮によって誘発された骨格筋グルコース取り込みについての魅力ある候補として考えられている(Hutber et al. “Electrical stimulation inactivates muscle acetyl - CoA carboxylase and increases AMP-activated protein kinase” Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 272, E262-E66 (1997))。さらに、AMPKのAICARによって誘発された活性化により、グルコース取り込み(Merrill et al. “AICA Riboside increases AMP-activated protein kinase, fatty acid oxidation and glucose uptake in rat muscle” Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 273, E1107-E1112 (1997))が、細胞膜とのグルコーストランスポーター4(GLUT4)融合(Kurth-Kraczek “5’-AMP-activated protein kinase activation causes GLUT4 translocation in skeletal muscle, Diabetes, 48, 21667-1671 (1999))と付随して増大する。
【0013】
骨格筋におけるキナーゼデッド(dead)サブユニットの過剰発現により、AICARが無効になるが、収縮により刺激されたグルコース取り込みが部分的に損傷される(Mu J. et al. “A role for AMP-activated protein kinase in contraction and hypoxia-regulated glucose transport in skeletal muscle, Mol. Cell. 7, 1085-1094 (2001))。これらの発見により、付加的経路が収縮によって誘発されたグルコース取り込みを媒介することが示唆され、一方AMPKがグルコース取り込みに対するAICARの効果を媒介することは明らかである。
【0014】
AMPKを活性化させる上流の刺激に関する広範囲な研究にもかかわらず、AMPKによって媒介されるグルコース取り込みの下流の基質(1種または2種以上)に関する研究は、不足している。より最近の報告により、160kDaのAkt基質(AS160)が、インスリンにより刺激されたグルコース取り込みに関与するAktの下流における重要な基質であることが明らかになった。インスリンに加えて、AICARによるAMPKの収縮および活性化は、げっ歯動物の骨格筋におけるAS160の増大したリン酸化と関連している。
【0015】
AS160のリン酸化は、AMPK a2ノックアウト、g3ノックアウトおよびa2−キナーゼデッドマウスからの骨格筋において、AICAR処置に応答して損傷されるかまたは無効になる(Treeback et al. AMPK-mediated AS160 phosphorylation in skeletal muscle is dependent on AMPK catalytic and regulatory subunits, Diabetes (2006))。これにより、これらのマウスの骨格筋において損傷され、AICARにより刺激されたグルコース取り込みの研究結果が裏付けられる( Jorgensen S..B. et al. Knockout of the a2 but not a1 5’-AMP-activated protein kinase isoform abolishes 5-aminoimidazole-4-carboxamide-1b-4 ribofuranoside but not contraction-induced glucose uptake in skeletal muscle, J. Biol. Chem. 279, 1070-1079 (2004))。したがって、AS160は、骨格筋におけるグルコース取り込みを媒介するにあたってのAMPKの下流の標的であると見られた。
【0016】
まとめると、すべてのこれらの代謝的効果により、AMPKが肝臓糖新生および脂質産生を抑制し、一方増大した脂質酸化による肝臓脂質の堆積が減少し、したがってT2Dにおけるグルコースおよび脂質のプロフィールが改善されるという証拠が提供される。
【0017】
より最近では、細胞のみならず全身のエネルギー代謝の調節におけるAMPKの関与が、明らかになった。脂肪細胞に由来するホルモンであるレプチンにより、AMPKの刺激がもたらされ、ひいては骨格筋における脂肪酸酸化の増大がもたらされることが示された(Minokoshi Y. et al, "leptin stimulates fatty-acid oxidation by activating AMP activated protein kinase", Nature, 415, 339 (2002))。
【0018】
アディポネクチン、即ち改善された炭水化物および脂質代謝をもたらす他の脂肪細胞から由来するホルモンは、刺激されたAMPK肝臓および骨格筋に対して例証されている(Yamanauchi T. et al., "adiponectin stimulates glucose utilization and fatty acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase", Nature Medicine, 8, 1288, (2002)), Tomas E. et al., " Enhanced muscle fat oxidation and glucose transport by ACRP30 globular domain: Acetyl-CoA carboxylase inhibition and AMP-activated protein kinase activation" PNAS, 99, 16309, (2002))。これらの条件におけるAMPKの活性化は、増大する細胞AMPレベルとは独立しているが、むしろ1種または2種以上の未だ確認されていない上流のキナーゼによるリン酸化のためであると考えられる。
【0019】
AMPK活性化の上述した結果の知見に基づいて、広範囲の有益な効果が、AMPKのインビボでの活性化から期待される。肝臓において、低下した発現の糖新生酵素により、肝臓でのグルコース産出量が減少し、全体的のグルコースホメオスタシスが改善され、直接の阻害および/または脂質代謝における重要な酵素の低減された発現の両方により、グルコース取り込みおよび脂肪酸酸化が増大し、これと共にグルコースホメオスタシスの改善および、筋細胞内のトリグリセリド蓄積の減少により、改善されたインスリン作用がもたらされる。最終的に、エネルギー消費の増大により、体重の減少がもたらされるはずである。メタボリックシンドロームにおけるこれらの効果の組み合わせは、心血管疾患をもたらす危険性を顕著に低下させると期待される。
【0020】
げっ歯動物におけるいくつかの研究により、この仮説が支持される(Bergeron R. et al. "Effect of 5-aminoimidazole-4-carboxamide-1(beta)-D-rifuranoside infusion on in vivo glucose metabolism in lean and obese Zucker rats", Diabetes, 50, 1076 (2001)、Song S.M. et al., 5- aminoimidazole-4-dicarboxamide ribonucleoside treatment improves glucose homeostasis in insulin-resistant diabeted (ob/ob) mice", Diabetologia, 45, 56 (2002)、Halseth A.E. et al., "Acute and chronic treatment of ob/ob and db/db mice with AICAR decreases blood glucose concentrations", Biochem. and Biophys. Res. Comm., 294, 798 (2002)、Buhl E. S. et al., " Long-term AICAR administration reduces metabolic disturbances and lowers blood pressure in rats displaying feature of the insulin resistance syndrome", Diabetes, 51, 2199 (2002))。
【0021】
最近までは、大部分のインビボでの研究は、AMPKアクチベーターAICAR、即ちZMPの細胞浸透性前駆体に依存していた。ZMPは、細胞内AMP模倣体として作用し、高い十分なレベルに蓄積した場合には、AMPK活性を刺激することができる(Corton J.M. et al. "5- aminoimidazole-4-dicarboxamide ribonucleoside, a specific method for activating AMP-activated protein kinase in intact cells?", Eur. J. Biochem., 229, 558 (1995))。しかし、ZMPはまた、他の酵素の調節におけるAMP模倣体として作用し、したがって特定のAMPKアクチベーターとしては作用しない(Musi N. and Goodyear L. J., "Targeting the AMP-activated protein kinase for the treatment of type 2 diabetes", Current Drug Targets-immune, Endocrine and Metabolic Disorders, 2 119 (2002))。
【0022】
いくつかのインビボでの研究により、肥満の、および2型糖尿病のげっ歯動物モデルにおける急性および慢性AICAR投与の両方の有益な効果が例証された(Bergeron R. et al., "Effect of 5-aminoimidazole-4-carboximide-1b-D ribofuranoside infusion on in vivo glucose metabolism in lean and obese Zucker rats", Diabetes, 50, 1076, (2001)、Song S.M. et al., " 5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleotide treatment improves glucose homeostasis in insulin resistant diabetic (ob/bo) mice" , Diabetologia, 45, 56, (2002)、Halseth A.E. et al.,"Acute and chronic treatment of ob/ob and db/db mice with AICAR decreases blood glucose concentrations" Biochem.Biophys. Res. Comm. 294, 798, (2002)、Buhl E. S. et al., " Long-term AICAR administration reduces metabolic disturbances and lowers blood pressure in rats displaying feature of the insulin resistance syndrome", Diabetes, 51, 2199 (2002))。
【0023】
例えば、肥満のズッカー(fa/fa)ラットにおける7週のAICAR投与により、血漿トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の減少、HDLコレステロールの増大ならびに経口グルコース負荷試験によって評価したグルコース代謝の正常化がもたらされる(Minokoshi Y. et al., "Leptin stimulates fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase", Nature, 415, 339, -2002))。ob/obマウスとdb/dbマウスとの両方において、8日のAICAR投与により、血糖が35%減少する(Halseth A.E. et al., "Acute and chronic treatment of ob/ob and db/db mice with AICAR decreases blood glucose concentrations", Biochem. Biophys. Res. Comm., 294, 798 (2002))。
【0024】
AICARに加えて、糖尿病薬であるメトホルミンが、AMPKをインビボで高濃度にて活性化することができること見出された(Zhou G. et al.,"Role of AMP-activated protein kinase in mechanism of metformin action", J. Clin. Invest., 108, 1167,( 2001), Musi N. et al.," Metformin increases AMP-activated protein kinase activity in skeletal muscle of subjects with type 2 diabetes", Diabetes, 51, 2074, (2002))が、どの程度でその抗糖尿病作用がこの活性化に依存するかを決定しなければならない。レプチンおよびアディポネクチンと同様に、メトホルミンの刺激作用は、上流のキナーゼの活性化を通して間接的である(Zhou G. et al.,"Role of AMP-activated protein kinase in mechanism of metformin action", J. Clin. Invest., 108, 1167, ( 2001))。
【0025】
より最近では、小分子AMPKアクチベーターが記載されている。A−769662と称されるこの直接的AMPKアクチベーター、即ちチエノピリドン族の一種は、インビボで血漿グルコースおよびトリグリセリドの減少を誘発する(Cool. B. et al., "Identification and characterization of a small molecule AMPK activator that treats key components of type 2 diabetes and the metabolic syndrome", cell Metab., 3, 403-416, (2006))。
【0026】
薬理学的介入に加えて、数種のトランスジェニックマウスモデルが、最近数年において開発され、初期の結果が利用可能になりつつある。トランスジェニックマウスの骨格筋におけるドミナントネガティブAMPKの発現により、グルコース輸送の刺激に対するAICAR効果がAMPK活性化に依存し(Mu J. et al., "Role for AMP-activated protein kinase in contraction and hypoxia regulated glucose transport in skeletal muscle", Molecular Cell, 7, 1085, (2001))、ひいては非特異性のZMP効果によって生じるものではなさそうであることが例証された。他の組織における同様の研究は、AMPK活性化の因果関係をさらに明確にするのに役立つであろう。
【0027】
AMPKの薬理的活性化が、メタボリックシンドロームにおいて、改善されたグルコースおよび脂質代謝ならびに体重の減少を伴う利益を有することが期待される。患者をメタボリックシンドロームを有すると認定するために、以下の5つの基準のうち3つに適合しなければならない:130/85mmHgを上回る高血圧、110mg/dlを上回る空腹時血糖、40インチ(男性)または35インチ(女性)の胴囲を上回る腹部肥満、および150mg/dlを上回るトリグリセリドの増加または40mg/dl(男性)もしくは50mg/dl(女性)を下回るHDLコレステロールの減少によって定義される、血中脂質変化である。したがって、メタボリックシンドロームを有すると認定された患者におけるAMPKの活性化により達成され得る組み合わせの効果は、この目的の関心を高めるであろう。
【0028】
AMPKの刺激により、脱共役タンパク質3(UCP3)骨格筋の発現を刺激することが示されており(Zhou m. et al., "UCP-3 expression in skeletal muscle: effects of exercise, hypoxia, and AMP-activated protein kinase", AM. J. Physiol. Endocrinol. Metab., 279, E622, (2000))、したがって活性酸素種からの損傷を防止する方法であり得る。内皮型NO合成酵素(eNOS)により、AMPKによって媒介されるリン酸化を通して活性化され(Chen Z.-P. et al., "AMP-activated protein kinase phosphorylation of endothelial NO synthase", FEBS Letters, 443, 285, (1999))、したがってAMPK活性化を用いて、局所循環系を改善することができることが示された。
【0029】
AMPKは、mTOR経路を制御する役割を有する。mTORはセリン/トレオニンキナーゼであり、タンパク質合成の重要なレギュレーターである。細胞増殖を阻害し、細胞をグルコース飢餓によって誘発されるアポトーシスから保護するために、AMPKは、TSC2をThr−1227およびSer−1345にてリン酸化し、TSC1およびTSC−2複合体の活性を増大させて、m−TORを阻害する。さらに、AMPKは、Thr−2446に対するリン酸化によってmTOR作用を阻害する。したがって、AMPKは、mTORの活性を間接的におよび直接阻害して、タンパク質合成を制限する。AMPKはまた、PI3K−Aktシグナル経路の構成的活性化を有する多くの癌のための治療的標的であり得る。
【0030】
種々の癌細胞株のAICARによる処理により、細胞増殖がインビトロおよびインビボ研究の両方において減弱した(Giri R; R.,"5-Aminoimidazole-4-carboxamide-1-beta-4- ribofuranoside inhibits cancer cell proliferation in vitro and in vivo via AMP-activated protein kinase (AMPK", J. Biol. Chem. (2005))。2件の報告は、メトホルミンの治療を、糖尿病患者における癌のより低い危険性と関連づける(Evans J.M. "Metformin and reduced risk of cancer in diabetic patients", BMJ, 330,1304-1305, (2005))。
【0031】
AICARによるAMPKの活性化により、脂質合成酵素であるFASおよびACCの発現を低減し、前立腺癌細胞における増殖の抑制をもたらすことが示された。多くの癌細胞は、高レベルのFASと相関する、新たな脂肪酸合成の顕著な増加率を示す。FASの阻害により、癌細胞増殖が抑制され、細胞死が誘発される。したがって、AMPK活性化およびFAS活性の阻害は、癌の薬理療法のための明確な目的である。
【0032】
いくつかの出版物において、AMPKアクチベーターとしてのAICARが抗炎症性疾患を発現することが、記載されている。AICARが前炎症性サイトカインおよびメディエーターの産生を減弱させ(S. Giri et al. J. Neuroscience 2004, 24:479-487)、ラットモデルにおける、およびインビトロでのAICARが、血液脳関門(BBB)を通って白血球の浸潤を制限することによってEAE進行を減弱させる(N. Nath. Et al. J. of Immunology 2005, 175:566-574; R. Prasad et al. J. Neurosci Res. 2006, 84:614-625)ことが観察され、AMPKアクチベーターが抗炎症剤として作用し、クラッベ病/トウィッチャー病(遺伝性神経障害)における治療の可能性を保持できることが最近示唆された(S.Giri et al. J. Neurochem. 2008, Mar 19)。
【0033】
従来の技術
US5,602,144には、脳虚血または統合失調症を処置するためのチエノピリドン誘導体が開示されている。
US 7,119,205には、糖尿病、肥満を処置するために有用な処置のための、AMPKアクチベーターとしてのチエノピリドン誘導体が開示されている。
WO2007019914には、糖尿病、肥満を処置するために有用な処置のための、AMPKアクチベーターとしてのチエノピリドン誘導体が開示されている。
【発明の概要】
【0034】
発明の概要
本発明は、式(I)
【化2】

式中:
は、H、A、OA、OH、Hal、NO、COOA、COOH、CHO、COA、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONH、ArまたはHetを示し、
は、ArまたはHetを示し、
は、Ar−ジイルまたはHet−ジイルを示し、
は、ArまたはHetを示し、
Arは、フェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、CHO、COA、NH、NHA、NA、NO、COOA、COOH、CONH、CONA、CONA、SOA、CN、C(=NH)NH、C(=NH)NHOHおよび/またはHetによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
【0035】
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、Hal、A、OA、OH、CHO、COA、COOH、COOA、CN、NO、NH、NHA、NA、CONH、CONHAおよび/またはCONAによって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の不飽和のまたは芳香族の複素環を示し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよいか、あるいは
3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示す、
で表される化合物、
ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0036】
式(I)で表されるいくつかの好ましい化合物は、以下のものである:
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0037】
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(2’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0038】
3−(3’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0039】
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(3’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0040】
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−シアノビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルスルホニルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロ−2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0041】
3−ビフェニル−4−イル−5−(4−シアノフェニル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
メチル4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボキシレート、
【0042】
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−[4−(3−フリル)フェニル]−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0043】
4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(3’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0044】
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0045】
4−ヒドロキシ−3−[4−(3−フリル)フェニル]−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0046】
3−(4’−フルオロ−2’−メトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’,4’−ジヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’,5’−ジメトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0047】
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチル−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0048】
4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2,4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−2’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸、
2’−ヒドロキシ−4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
【0049】
4−ヒドロキシ−3−(2−メトキシ−2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチル−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[3−メトキシ−4−ピリジン−3−イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−ヒドロキシ−4−ピリジン−4イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0050】
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−2−カルボン酸、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−カルボン酸、
【0051】
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−3’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[4−(3−フリル)フェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0052】
4−ヒドロキシ−3−(4’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0053】
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−[3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−ビフェニル−3−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0054】
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メトキシフェニル)ピリジン−5−イル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−フェニルピリジン−5−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジン−5−イル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン。
【0055】
これらの好ましい化合物の選択は、以下のものである。
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0056】
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0057】
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−ヒドロキシ−4−ピリジン−4−イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン塩酸塩、
【0058】
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−フェニルピリジン−5−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン。
【0059】
これらの好ましい化合物の選択は、以下のものである。
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0060】
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0061】
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−ヒドロキシ−4−ピリジン−4−イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
【0062】
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−フェニルピリジン−5−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン。
【0063】
本発明は、式(I)で表される化合物およびそれらの塩、ならびに請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物およびそれらの薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法であって、
式(II)
【化3】

式中、R、R、Bは、請求項1に示す意味を有し、
Xは、ハロゲン原子、Cl、Br、I、好ましくはCl、Br原子を示す、
で表される化合物を、
【0064】
ボロン酸誘導体B−B(OH)
式中、Bは、請求項1において定義した通りである、
と、
鈴木反応条件(Journal of organometallic chemistry, 1999, 576(1-2), 147-168 / Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds(第2版)(2002), 1, 591-598)下で反応させ、
かつ/または式Iで表される塩基もしくは酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法に関する。
【0065】
式(II)で表される化合物を、塩基性条件下での式(III)
【化4】

式中、R、R、Bは、請求項1に示す意味を有し、
ALKは、C〜Cアルキルを示す、
で表される化合物からの環化反応によって合成する。
【0066】
式(IV)で表される化合物、式(V)で表される化合物は、化学的プロセスの出発物質であり、
【化5】

式中、R、R、Bは、請求項1に示す意味を有し、ALKは、C〜Cアルキルを示し、Yは、OHまたはハロゲン、好ましくはClまたはBrを示す。
【0067】
2−アミノチオフェン出発化合物(IV)は、商業的に入手可能(chemos Gmbh, Fluorochem, Acros, Interchim)か、またはJournal Heterocycle Chemistry, 第36巻、333頁、1999に記載されているGewald反応によって、当業者により容易に調製される。
【0068】
式IVで表される化合物において、Yは、好ましくはCl、Br、Iあるいは遊離の、または反応的に修飾されたOH基、例えば活性化エステル、イミダゾリドまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくはメチルスルホニルオキシもしくはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個の炭素原子を有するアリールスルホニルオキシ(好ましくはフェニルもしくはp−トリルスルホニルオキシ)などであり、結合剤、例えばカルボジイミダゾール(CDI)、ジシクロヘキシルカルボジイミン(DCC)、好ましくはDCCを用いる。
結合剤がカルボジイミンである場合には、好ましい誘導体は、参照インターネットリンク(http://chemicalland21.com/lifescience/phar/HBTU.htm)中に記載されている。
【0069】
式(I)で表される化合物を、3段階の化学的プロセスにおいて製造する:
a)段階1
【化6】

【0070】
アミノチアゾール(V)を、化合物IVと反応させる:
・Yがハロゲン原子、好ましくはClであり、それを、不活性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサンなど、好ましくはジオキサン中で、0〜100度で5分〜24時間反応させて、式(III)で表される化合物を調製する。
・YがOHであり、それを、非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサンなど、好ましくはテトラヒドロフラン中で、縮合剤、例えばカルボジイミダゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミン(DCC)など、好ましくはDCCと、0℃〜溶媒の還流温度にて、15分〜24時間、好ましくは室温にて溶媒還流にて一晩反応させる。
【0071】
好適な不活性溶媒は、例えば炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンなど;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタンなど;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなど;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサンなど;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)など;ケトン、例えばアセトンもしくはブタノンなど;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF)など;ニトリル、例えばアセトニトリルなど;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)など;二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸もしくは酢酸など;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼンなど;エステル、例えば酢酸エチルなど、または前記溶媒の混合物である。
【0072】
b)段階2
【化7】

次に、式(III)で表される化合物を、塩基性条件下で環化して、式(II)で表される化合物を、塩基、例えばヘキサメチルジシリルアザン、カリウムまたはナトリウム塩、例えばナトリウムまたはカリウムターシオアミレート(tertioamylate)、ナトリウムエチラートを用いて、好ましくはヘキサメチルジシラジドを用いて、不活性溶媒中で、好ましくはテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン中で、20℃〜150℃にて、好ましくは室温にて、30分〜24時間、より好ましくは30分〜1時間にわたり、環化反応によって合成する。
【0073】
好適な不活性溶媒は、例えば炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンなど;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタンなど;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなど;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサンなど;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)など;ケトン、例えばアセトンもしくはブタノンなど;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF)など;ニトリル、例えばアセトニトリルなど;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)など;二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸もしくは酢酸など;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼンなど;エステル、例えば酢酸エチルなど、または前記溶媒の混合物である。
【0074】
c)段階3
【化8】

式(I)で表される化合物を、塩基、好ましくは炭酸塩およびより好ましくは炭酸セシウムの存在下での、パラジウム触媒、例えばパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)の存在下での、不活性雰囲気下での、溶媒、例えば極性の非プロトン性溶媒/不活性溶媒/プロトン性溶媒/水などの混合物中での、ボロン酸誘導体、例えばアリールボロン酸などを用いた鈴木反応によって製造する。溶媒の組み合わせは、好ましくは、10/1/6/3または25/2.6/15/7.5の比率であるジメチルホルムアミド/トルエン/エタノール/水の、20度〜溶媒の還流温度における、1時間〜48時間、好ましくは6時間〜24時間である。
【0075】
3段階の化学的プロセスを、スキーム1にまとめる。
【化9】

【0076】
本発明はまた、一般式(I)で表される化合物のラセミ体、互変異性体型、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、エピマーおよび有機塩または無機塩、ならびにそれらの結晶形態、ならびにそれらの多形相および式(I)で表される化合物の多形相に関する。
本発明は、これらの化合物のラセミ混合物のみならず、すべての比率でのこれらの混合物同様、それらの個別の立体異性体および/またはジアステレオ異性体も対象とする。
【0077】
本発明はまた、これらの化合物の立体異性体(E、Z異性体を含む)および水和物および溶媒和物に関する。化合物の溶媒和物は、それらの相互の引力により形成される化合物上への不活性溶媒分子のアダクション(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば一もしくは二水和物またはアルコラートなどである。
【0078】
薬学的に使用可能な誘導体は、例えば本発明の化合物の塩およびまたいわゆるプロドラッグ(prodrug)化合物などを意味するものと解釈される。
プロドラッグ誘導体は、例えばアルキル基もしくはアシル基、糖またはオリゴペプチドなどで修飾され、生物体中で迅速に切断されて本発明の活性化合物を形成する、式Iで表される化合物を意味するものと解釈される。
【0079】
これらはまた、例えばInt. J. Pharm. 115, 61-67 (1995)などに記載されているように、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体を含む。
本明細書中で用いる用語「プロドラッグ」は、生体系に投与された際に、「薬物」物質(生物活性化合物)を、自発的な化学反応(1もしくは2以上)、酵素触媒化学反応(1もしくは2以上)および/または代謝化学反応(1もしくは2以上)の結果として発生する、すべての化合物に関する。
【0080】
表現「有効量」は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師などにより求められているかまたは照準を定められている生物学的または医学的応答を生じる、医薬または薬学的活性成分の量を意味する。
【0081】
さらに、表現「治療的に有効な量」は、この量を施与されていない対応する対象と比較して、以下の結果:
疾患、症候群、状態、愁訴、障害の改善された処置、治癒、予防もしくは解消または副作用の防止またはまた疾患、状態、障害もしくは副作用の進行の低減またはまた疾患、状態もしくは障害の進行の低減
を有する量を意味する。
表現「治療的に有効な量」はまた、正常な生理学的機能を増大させるのに有効である量を包含する。
【0082】
本発明はまた、本発明の式Iで表される化合物の混合物、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000などの比率での、例えば、2種のジアステレオマーの混合物などに関する。
これらは、特に好ましくは立体異性体化合物の混合物である。
【0083】
1回よりも多く出現するすべてのラジカルについて、それらの意味は、互いに独立している。
本明細書中で、ラジカルおよびパラメーターR、R、Rは、他に明確に示さない限り式Iについて示す意味を有する。
【0084】
Aは、アルキルを示し、非分枝状(直鎖状)または分枝状であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。Aは、好ましくはメチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、さらに好ましくは例えばトリフルオロメチルなどを示す。
【0085】
Aは、極めて特に好ましくは1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを示す。
【0086】
さらに、Aは、好ましくは、1〜10個のC原子を有し、ここで1〜7個のH原子がOH、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよい、非分枝状または分枝状アルキルを示す。
シクロアルキルは、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを示す。
【0087】
は、好ましくはH、A、Hal、COOA、COOH、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONHまたはフェニルを示す。
は、好ましくはフェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
あるいはHetを示す。
【0088】
は、Ar−ジイルであり、1,2フェニレンまたは1,3フェニレンまたは1,4フェニレン基を示し、それは、非置換であるかまたはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CN、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換されている。
好ましくは、Bは、非置換であるかまたはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CN、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換されている1,4フェニレンを示す;Bはまた、Het−ジイルを示し、それは、好ましくは非置換Het−ジイル、最も好ましくは2,5ピリジルを意味する。
【0089】
は、好ましくはフェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CN、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
あるいはHetを示す。
【0090】
Arは、例えばフェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−ウレイドフェニル、o−、m−またはp−ホルミルフェニル、o−、m−またはp−アセチルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメチルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメトキシフェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,4−もしくは2,5−ジニトロフェニル、2,5−もしくは3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−もしくは2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−もしくは3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0091】
他の置換基とは無関係に、Hetは、例えば、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−もしくは−5−イルまたは2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イルを示す。
【0092】
複素環式基はまた、部分的にまたは完全に水素化され得る。
Hetは、したがってまた、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは5−フリル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、1−、2−もしくは3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−もしくは−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−もしくは−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−もしくは−6−ピリジル、1−、2−、3−もしくは4−ピペリジニル、2−、3−もしくは4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−もしくは−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−もしくは−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−もしくは−5−ピリミジニル、1−、2−もしくは3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−もしくは8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−もしくは6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたはまた3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−もしくは−7−イル、さらに好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニルまたは2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルを示すことができる。
【0093】
Hetは、好ましくは1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を示す。
最も好ましくは、Hetは、ピリジル、ピリミジニル、フラニル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリルまたはインダゾリルを示す。
【0094】
したがって、本発明は特に、少なくとも1つの前述のラジカルが前に示した好ましい意味の1つを有する、式(I)で表される化合物に関する。いくつかの好ましい群の化合物を、以下の従属式Ia〜Ihにより表すことができ、これは式Iに適合し、ここで一層詳細に表示していないラジカルは、式Iについて示した意味を有するが、ここで、
【0095】
Iaにおいて、Rは、H、A、Hal、COOA、COOH、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONHまたはフェニルを示し;
Ibにおいて、Rは、フェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており;
【0096】
Icにおいて、Bは、Ar−ジイルを示し、前記化合物は、1,2フェニレンまたは1,3フェニレンまたは1,4フェニレン基であり、それは、非置換であるかまたはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CN、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換されており;
Idにおいて、Bは、フェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるかまたはA、Hal、OA、OH、NH、NHA、NA、COOA、COOH、CONH、CONA、CONA、SOA、CN、C(=NH)NHおよび/またはC(=NH)NHOHによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており;
【0097】
Ieにおいて、Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を示し;
Ifにおいて、Hetは、ピリジル、ピリミジニル、フラニル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリルまたはインダゾリルを示し;
【0098】
Igにおいて、Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよく;
【0099】
Ihにおいて、Rは、H、A、Hal、COOA、COOH、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONHまたはフェニルを示し;
は、フェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるかまたはA、Hal、OA、OH、COOAによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体であり、すべての比率でのそれらの混合物を含む。
【0100】
したがって、本発明は特に、少なくとも1種の前述のラジカルが上記に示した好ましい意味の1つを有する、式Iで表される化合物に関する。いくつかの好ましい群の化合物を、以下の従属式Ia〜Ihにより表すことができ、それは式Iに適合し、ここで一層詳細に表示していないラジカルは、式Iについて示した意味を有するが、ここで、
【0101】
本発明の化合物を、以下に記載するものを含むがこれには限定されない、当業者に周知の多数の方法において、または有機合成の当業者に知られている標準的な技法を適用することによるこれらの方法の改良により調製し得る。本発明に関連して開示するプロセスはすべて、ミリグラム、グラム、マルチグラム(multigram)、キログラム、マルチキログラム(multikilogram)または商業的で産業的な規模を含む任意の規模において実施されることを意図する。
【0102】
当然のことながら、本発明の化合物は、1個または2個以上の非対称に置換された炭素原子を含み得、光学活性型またはラセミ型で単離され得る。したがって、特定の立体化学または異性体型を特に示さない限りは、構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ型およびすべての幾何学的な異性体型を意図する。かかる光学活性型を調製する方法は、当該分野において周知である。例えば、立体異性体の混合物を、ラセミ型の分割、順相、逆相およびキラルクロマトグラフィー、優先的塩生成、再結晶などを含むがこれには限定されない標準的な手法によって、あるいは活性な出発物質からのキラル合成によって、または標的中心の意図的なキラル合成によって、分離され得る。
【0103】
以下に記載する反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基などを保護することが必要であり得、ここでこれらは、最終生成物において、それらが反応において不要の関与を回避することが所望される。慣用の保護基を、標準的な慣例に従って用いてもよい。例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry, John Wiley and Sons, 1991中;J. F. W. McOmie、Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973中などを参照。
【0104】
いくつかの反応を、塩基の存在下で行ってもよい。それが分子の他の部分に悪影響を及ぼさない限りは、この反応において用いるべき塩基の性質について特定の限定はなく、このタイプの反応において慣用的に用いられる任意の塩基を、ここで同様に用いることができる。好適な塩基の例は、以下のものを含む:水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムターシオブチレート(potassium tertiobutylate)、ナトリウムターシオアミレート(sodium tertioamylate)、トリエチルアミン、カリウムヘキサメチルジシラジド、アルカリ金属水素化物、例えば水素化ナトリウムおよび水素化カリウムなど;アルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウムおよびブチルリチウムなど;ならびにアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなどである。
【0105】
通常、反応を、好適な溶媒中で行う。それが反応に対して、または関与する試薬に対して悪影響を及ぼさない限りは、種々の溶媒を用いてもよい。好適な溶媒の例は、以下のものを含む:芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素であってよい炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなど;アミド、例えばジメチルホルムアミドなど;アルコール、例えばエタノールおよびメタノールなど、ならびにエーテル、例えばジエチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなどである。
【0106】
反応は、広範囲の温度にわたり行うことができる。一般的に、本発明者らは、反応を0℃〜150℃(より好ましくは、およそ室温〜100℃)の温度にて行うことが好都合であることを見出している。反応に必要な時間もまた、多くの要因、特に反応温度および試薬の性質に依存して広範囲に変化し得る。しかし、反応を上記で概説した好ましい条件下で行う場合には、3時間〜20時間の時間が好ましい。
【0107】
このように調製した化合物を、反応混合物から慣用の手段によって回収してもよい。例えば、化合物を、反応混合物から溶媒を蒸留して除去するか、または必要に応じて、溶媒を反応混合物から蒸留して除去した後に、残留物を水中に注ぎ、続いて水と混ざらない有機溶媒で抽出し、溶媒を抽出物から蒸留して除去することによって回収してもよい。さらに、生成物を、必要に応じて種々の公知の手法、例えば再結晶、再沈殿または種々のクロマトグラフィー手法、特にカラムクロマトグラフィーもしくは分取薄層クロマトグラフィーなどによってさらに精製することができる。
【0108】
薬学的塩および他の形態
本発明の前述の化合物を、これらの最終的な非塩形態で用いることができる。一方、本発明はまた、これらの化合物を、当該分野において既知の手順により、種々の有機および無機酸類および塩基類から誘導し得るこれらの薬学的に許容し得る塩の形態で用いることを包含する。式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩形態は、大部分、慣用的な方法により調製される。式Iで表される化合物がカルボキシル基を含む場合には、この好適な塩の1種を、当該化合物を好適な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を得ることにより、生成することができる。このような塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム;アルカリ金属アルコキシド類、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;ならびに種々の有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンである。
【0109】
式Iで表される化合物のアルミニウム塩は、同様に包含される。式Iで表される数種の化合物の場合において、これらの化合物を、薬学的に許容し得る有機および無機酸類、例えばハロゲン化水素、例えば塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素、他の鉱酸およびこれらの対応する塩、例えば硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など、ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩類、例えばエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩、ならびに他の有機酸およびこれらの対応する塩、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などで処理することにより、酸付加塩を生成することができる。
【0110】
したがって、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩には、以下のものが含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩、しかしこれは、限定を表すものではない。
【0111】
さらに、本発明の化合物の塩基性塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が含まれるが、これは、限定を表すことを意図しない。前述の塩の中で、好ましいのは、アンモニウム;アルカリ金属塩、ナトリウムおよびカリウム、ならびにアルカリ土類金属塩、カルシウムおよびマグネシウムである。
【0112】
薬学的に許容し得る有機無毒性塩基から誘導される、式Iで表される化合物の塩には、第一、第二および第三アミン類、また天然に存在する置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0113】
塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物を、剤、例えば(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル;ジ(C〜C)アルキル硫酸塩、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジアミル;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ならびにアリール(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルを用いて四級化することができる。本発明の水溶性および油溶性の化合物を共に、このような塩を用いて調製することができる。
【0114】
好ましい前述の薬学的塩には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0115】
式Iで表される塩基性化合物の酸付加塩を、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を生じることにより、調製する。塩形態を塩基と接触させ、慣用の方法で遊離塩基を単離することにより、遊離塩基を再生することができる。遊離塩基形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離塩基形態に相当する。
【0116】
述べたように、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属またはアミン類、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン類を用いて生成する。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミン類は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0117】
本発明の酸性化合物の塩基付加塩を、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を生じることにより、調製する。塩形態を酸と接触させ、慣用的な方法で遊離酸を単離することにより、遊離酸を再生することができる。遊離酸形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離酸形態に相当する。
【0118】
本発明の化合物が、このタイプの薬学的に許容し得る塩を生成することができる1つよりも多い基を含む場合には、本発明はまた、多重塩(multiple salt)を包含する。典型的な多重塩形態には、例えば、重酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0119】
上記で述べたことに関して、本文脈における表現「薬学的に許容し得る塩」は、式Iで表される化合物をこの塩の1種の形態で含む活性成分を意味するものと解釈されることが明らかであり、特に、この塩形態が、活性成分に対して、前に用いられていた活性成分の遊離形態または活性成分のすべての他の塩形態と比較して改善された薬物動態学的特性を付与する場合には、このように解釈されることが明らかである。活性成分の薬学的に許容し得る塩形態はまた、活性成分に前には有していなかった所望の薬物動態学的特性を初めて付与することができ、さらに、活性成分の薬力学に対して身体における治療的有効性に関する正の影響を有することができる。
【0120】
本発明の式Iで表される化合物は、それらの分子構造のためにキラルであり得、したがって種々の鏡像異性体型で存在し得る。したがって、それらは、ラセミ体または光学活性型で存在し得る。
【0121】
本発明の化合物のラセミ化合物または立体異性体の薬学的活性が異なり得るため、鏡像異性体を用いることが望ましい場合がある。これらの場合において、最終生成物、または中間体であっても、当業者には既知の化学的または物理的手段によって鏡像異性体化合物に分離するか、またはさらにそれ自体を合成において用いることができる。
【0122】
ラセミ体アミンの場合において、ジアステレオ異性体は、光学分割剤との反応によって混合物から生成する。好適な光学分割剤の例は、光学的に活性な酸、例えば酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、好適にN保護されたアミノ酸(例えばN−ベンゾイルプロリンもしくはN−ベンゼンスルホニルプロリンなど)、または種々の光学的に活性なカンファースルホン酸のRおよびS体である。また有利なのは、光学分割剤(例えばジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートまたはシリカゲル上に固定した炭水化物またはキラルに誘導体化されたメタクリレートポリマーの他の誘導体など)を用いたクロマトグラフィーによる鏡像異性体分割である。この目的に適する溶離剤は、水性またはアルコール性溶媒混合物、例えば82:15:3の比率などでの、例えばヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルなどである。
【0123】
ラセミ体のキラル分割のために、以下の酸およびアミンを用いることができる:
例として、以下のキラルな酸を用いることができる:(+)−D−ジ−O−ベンゾイル酒石酸、(−)−L−ジ−O−ベンゾイル酒石酸、(−)−L−ジ−O,O’−p−トルイル−L−酒石酸、(+)−D−ジ−O,O’−p−トルイル−L−酒石酸、(R)−(+)−リンゴ酸、(S)−(−)−リンゴ酸、(+)−ショウノウ酸、(−)−ショウノウ酸、R−(−)1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジイルハイドロゲノホスホニック(hydrogenophosphonic)、(+)−カンファン酸、(−)−カンファン酸、(S)−(+)−2−フェニルプロピオン酸、(R)−(+)−2−フェニルプロピオン酸、D−(−)−マンデル酸、L−(+)−マンデル酸、D−酒石酸、L−酒石酸またはそれらの任意の混合物である。
【0124】
例として、以下のキラルなアミンを用いることができる:キニーネ、ブルシン、(S)−1−(ベンジルオキシメチル)プロピルアミン(III)、(−)−エフェドリン、(4S,5R)−(+)−1,2,3,4−テトラメチル−5−フェニル−1,3−オキサゾリジン、(R)−1−フェニル−2−p−トリルエチルアミン、(S)−フェニルグリシノール、(−)−N−メチルエフェドリン、(+)−(2S,3R)−4−ジメチルアミノ−3−メチル−1,2−ジフェニル−2−ブタノール、(S)−フェニルグリシノール、(S)−α−メチルベンジルアミンまたはそれらの任意の混合物である。
【0125】
本発明はさらに、化合物および/またはその生理学的に許容し得る塩の、特に非化学的方法による医薬(医薬組成物)を調製するための使用に関する。それらをここで、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体賦形剤またはアジュバントと共に、および必要に応じて1種または2種以上の他の活性成分と組み合わせて、好適な剤形に変換することができる。
【0126】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の化合物および/または、これらの薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体(すべての比率でのこれらの混合物を含む)、ならびに任意に賦形剤および/または補助剤を含む医薬に関する。
【0127】
医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で、投与することができる。このような単位は、処置される疾患状態、投与の方法、ならびに患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、特に好ましくは5mg〜100mgの本発明の化合物を含んでもよく、または医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投薬単位の形態で投与してもよい。好ましい投与単位処方物は、前に示したように、毎日の用量もしくは部分的用量を含むもの、または活性成分のこの対応する部分である。さらに、このタイプの医薬処方物を、薬学分野において一般的に知られている方法を用いて製造することができる。
【0128】
医薬処方物を、すべての所望の好適な方法による、例えば経口(口腔内もしくは舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所的(口腔内、舌下もしくは経皮的を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内もしくは皮内を含む)方法による投与のために適合させることができる。このような処方物を、薬学分野において知られているすべての方法を用いて、例えば活性成分を賦形剤(1種もしくは2種以上)または補助剤(1種もしくは2種以上)と混ぜ合わせることにより、製造することができる。
【0129】
経口投与のために適合された医薬処方物を、別個の単位、例えばカプセルもしくは錠剤;散剤もしくは顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液;食用発泡体もしくは発泡体食品;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして、投与することができる。
【0130】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合において、活性成分要素を、経口的な、無毒性の、かつ薬学的に許容し得る不活性賦形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと混ぜ合わせることができる。散剤を、化合物を好適な微細な大きさに粉砕し、これを同様にして粉砕した薬学的賦形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することにより、製造する。風味剤、保存剤、分散剤および色素が、同時に存在してもよい。
【0131】
カプセルを、上記のように散剤混合物を調製し、成形したゼラチン殻をこれで充填することにより、製造する。流動促進剤および潤滑剤、例えば固体形態での高度に分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールを、充填操作の前に散剤混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを、同様に加えて、カプセルを服用した後の医薬の有効性を改善することができる。
【0132】
さらに、所望により、または所要に応じて、好適な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに染料を、同様に混合物中に包含させることができる。好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えばグルコースまたはベータ−ラクトース、トウモロコシから製造された甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ろうなどが含まれる。これらの投与形態において用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定されずに、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどが含まれる。錠剤を、例えば散剤混合物を調製し、混合物を顆粒化または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を加え、混合物全体を圧縮して錠剤を得ることにより、処方する。
【0133】
散剤混合物を、好適な方法で粉砕した化合物を上記のように希釈剤または塩基と、および随意に結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤、例えばパラフィン、吸収促進剤、例えば第四級塩および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することにより、調製する。散剤混合物を、これを結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液またはセルロースの溶液またはポリマー材料で湿潤させ、これをふるいを通して押圧することにより、顆粒化することができる。顆粒化の代替として、散剤混合物を、打錠機に通し、不均一な形状の塊を得、これを崩壊させて、顆粒を形成することができる。
【0134】
顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることにより潤滑化して、錠剤流延型への粘着を防止することができる。次に、潤滑化した混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明の化合物をまた、自由流動の不活性賦形剤と混ぜ合わせ、次に直接圧縮して、顆粒化または乾燥圧縮工程を行わずに錠剤を得ることができる。セラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびろうの光沢層からなる透明な、または不透明な保護層が、存在してもよい。色素を、これらのコーティングに加えて、異なる投与単位間を区別することができるようにすることができる。
【0135】
経口液体、例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤を、投与単位の形態で調製し、したがって所定量が予め特定された量の化合物を含むようにすることができる。シロップを、化合物を水性溶液に好適な風味剤と共に溶解することにより調製することができ、一方エリキシル剤を、無毒性アルコール性ビヒクルを用いて調製する。懸濁液を、化合物を無毒性ビヒクル中に分散させることにより、処方することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類、保存剤、風味添加剤、例えばペパーミント油もしくは天然甘味剤もしくはサッカリン、または他の人工甘味料などを、同様に加えることができる。
【0136】
経口投与用の投与単位処方物を、所望により、マイクロカプセル中にカプセル封入することができる。処方物をまた、放出が延長されるかまたは遅延されるように、例えば粒子状材料をポリマー、ろうなどの中にコーティングするかまたは包埋することにより、調製することができる。
【0137】
本発明の化合物および塩、溶媒和物およびこれらの生理学的な機能性誘導体をまた、リポソーム送達系、例えば小さい単層の小胞、大きい単層の小胞、および多層の小胞の形態で、投与することができる。リポソームを、種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類から生成することができる。
【0138】
本発明の化合物および塩、溶媒和物およびこれらの生理学的な機能性誘導体をまた、化合物分子が結合した個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。化合物をまた、標的化された医薬担体としての可溶性ポリマーに結合させることができる。このようなポリマーは、パルミトイルラジカルにより置換されたポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパラタミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidophenol)またはポリエチレンオキシドポリリジンを包含することができる。化合物をさらに、医薬の制御された放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの群、例えばポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロキシピラン類、ポリシアノアクリレート類、およびヒドロゲルの架橋ブロックコポリマーまたは両親媒性のブロックコポリマーに結合することができる。
【0139】
経皮的投与用に適合された医薬処方物を、レシピエントの表皮との長期間の、密接な接触のための独立した硬膏剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分を、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されているように、イオン泳動により硬膏剤から送達することができる。
局所的投与用に適合された医薬化合物を、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油として処方することができる。
【0140】
目または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置のために、処方物を、好ましくは、局所的軟膏またはクリームとして適用する。軟膏を施与するための処方物の場合において、活性成分を、パラフィン系または水混和性クリームベースのいずれかと共に用いることができる。あるいはまた、活性成分を処方して、水中油型クリームベースまたは油中水型ベースを有するクリームを得ることができる。
【0141】
目への局所的適用のために適合された医薬処方物には、点眼剤が含まれ、ここで、活性成分を、好適な担体、特に水性溶媒中に溶解するかまたは懸濁させる。
口における局所的適用のために適合された医薬処方物は、薬用キャンデー、トローチおよび洗口剤を包含する。
直腸内投与のために適合された医薬処方物を、坐剤または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0142】
担体物質が固体である鼻腔内投与のために適合された医薬処方物は、例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒子の大きさを有する粗末を含み、これを、嗅ぎタバコを服用する方法で、即ち鼻に近接して保持した散剤を含む容器からの鼻の経路を介しての迅速な吸入により、投与する。担体物質としての液体を有する鼻腔内スプレーまたは点鼻剤としての投与に適する処方物は、水または油に溶解した活性成分溶液を包含する。
【0143】
吸入による投与のために適合された医薬処方物は、微細な粒子状ダストまたはミストを包含し、これは、エアゾール、噴霧器または吸入器を有する種々のタイプの加圧ディスペンサーにより発生し得る。
膣内投与のために適合された医薬処方物を、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー処方物として投与することができる。
【0144】
非経口投与のために適合された医薬処方物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含む水性および非水性の無菌注射溶液であって、これにより処方物が処置されるべきレシピエントの血液と等張になるもの;ならびに水性の、および非水性の無菌懸濁液であって、懸濁媒体および増粘剤を含むことができるもの、が含まれる。処方物を、単一用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルにおいて投与してもよく、使用の直前に無菌の担体液体、例えば注射用水を添加することしか必要としないようにフリーズドライした(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態において貯蔵してもよい。処方により製造される注射溶液および懸濁液を、無菌の散剤、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0145】
上記で特定的に述べた構成成分に加えて、処方物はまた、処方物の特定のタイプに関して当該分野において普通である他の剤を含むことができることは、言うまでもない;したがって、例えば、経口投与に適する処方物は、風味剤を含んでいてもよい。
【0146】
本発明の化合物の治療的に有効な量は、例えば、ヒトまたは動物の年齢および体重、処置が必要である正確な疾患状態およびその重篤度、処方物の性質および投与の方法を含む多くの要因に依存し、最終的には、処置する医師または獣医師により決定される。しかし、本発明の化合物の有効な量は、一般的に、1日あたり0.1〜100mg/レシピエント(哺乳類)の体重1kgの範囲内、特に典型的には1日あたり1〜10mg/体重1kgの範囲内である。したがって、体重が70kgである成体の哺乳類についての1日あたりの実際の量は、通常70〜700mgであり、ここで、この量を、1日あたり個別の用量として、または通常1日あたり一連の部分用量(例えば2回分、3回分、4回分、5回分または6回分)において投与し、したがって合計の日用量が同一であるようにすることができる。塩もしくは溶媒和物の、またはこの生理学的な機能的誘導体の有効量を、本発明の化合物自体の有効量の比として決定することができる。同様の用量が、前述の他の状態の処置に適すると、推測することができる。
【0147】

以下の例は、本発明を例示するが、それを限定しない。用いる出発物質は、既知の生成物または既知の手順によって調製される生成物である。百分率を、他に述べない限り重量ベースで表す。
化合物を、特に以下の分析手法によって同定した。
NMRスペクトルを、Bruker Avance DPX 300 MHz NMR分光計を用いて得た。
質量を、Agilent Series 1100質量検出器に連結したHPLCによって決定した。融点(m.p.)を、Stuart Scientificブロック上で測定した。
【0148】
中間体1:
3−(4−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
段階1:ジオキサン(100mL)中の、エチル2−アミノ−4−(4−ブロモフェニル)チオフェン−3−カルボキシレート(12g、36.8mmol)の溶液に、ジオキサン(100mL)中の、塩化フェニルアセチル(5.84mL)溶液を滴加した。室温にて15分後、反応混合物を1時間にわたり70℃に加熱した。溶媒を減圧下で除去し、帯黄色の残留した固体を、最小量の酢酸エチル中に吸収させた。石油エーテルを加え、オフホワイトの固体(14.3g)を回収した。
【0149】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 10.98 (bs, 1H), 7.53-7.20 (m, 9H), 6.93 (s, 1H), 4.01 (q, 2H), 3.92 (s, 2H), 0.91 (t, 3H)
【0150】
段階2:テトラヒドロフラン(630mL)中の、前の化合物(14.3g)の溶液に、カリウムヘキサメチルジシラザン(256mL、トルエン中0.5M)を加えた。室温にて30分後、反応混合物を塩酸溶液(4M)で反応停止し、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残留する黄色油を最小量の酢酸エチル中に吸収させた。石油エーテルを加え、生成したオフホワイトの固体(11g)を回収した。
【0151】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 7.55-7.40 (dd, 4H), 7.35-7.25 (m, 5H), 7.06 (s, 1H)
【0152】
中間体2:
3−(4−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシ−5−(ピリジン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
段階1:テトラヒドロフラン(200mL)中の、エチル2−アミノ−4−(4−ブロモフェニル)チオフェン−3−カルボキシレート(10g、30.7mmol)、3−ピリジル酢酸塩酸塩(12.8g)の溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(15g)を滴加した。溶液を、一晩加熱還流させ、次に濾過した。有機相を酢酸エチル中に吸収させ、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた粗製の固体を、石油エーテル/最小量の酢酸エチル混合物で洗浄した。オフホワイトの固体(9.8g)を回収した。
【0153】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 11.10 (bs, 1H), 8.59 (s, 1H), 8.53 (d, 1H), , 7.82 (d, 1H), 7.54 (d, 2H), 7.41 (dd, 1H), 7.27 (d, 2H), 6.99 (s, 1H), 4.06 (q, 2H), 4.04 (s, 2H), 0.96 (t, 3H)
【0154】
段階2:テトラヒドロフラン(250mL)中の前の化合物(5g、11.2mmol)に、カリウムヘキサメチルジシラザン(90mL、トルエン中0.5M溶液)を滴加した。1時間後、反応混合物を濃縮して乾燥させ、酢酸エチル/水混合物中に吸収させた。水相を、固体が沈殿するまで部分的に濃縮した。これを濾過し(3.46g)、酢酸エチルで洗浄した;MS:399.0(M+1);
【0155】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 8.83 (s, 1H), 8.03 (m, 2H), 7.41 (m, 5H), 7.09 (m, 1H), 6.59 (s, 1H)
【0156】
例1:
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
段階1:トルエン(55mL)/エタノール(65mL)/水(32mL)の混合物中の、段階1の中間体1(2g、4.50mmol)、2−メトキシフェニルボロン酸(1.37g)、炭酸セシウム(4.40g)およびパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(468mg)の溶液を、アルゴン下で、80℃にて一晩加熱した。溶液を、celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、酢酸エチル中に吸収させた。有機溶液を塩酸塩溶液(4M)で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた粗製の固体(1.57g)を、石油エーテル/最小量の酢酸エチルの混合物で洗浄した。
【0157】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 11.01 (bs, 1H), 7.67-7.03 (m, 13H), 6.99 (s, 1H), 4.08 (q, 2H), 3.96 (s, 2H), 3.78 (s, 3H), 0.96 (t, 3H)
【0158】
段階2:クロロホルム(20mL)中の、前の化合物(1.54g、3.27mmol)、N−クロロスクシンイミド(0.48g)の溶液を、50℃にて一晩加熱した。溶媒を蒸発させ、粗製物を酢酸エチル中に吸収させた。この溶液を水で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残留した油を、イソプロピルエーテル/最小量の酢酸エチルの混合物で結晶化させた。生成した固体(1.18g)を濾過した。
【0159】
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 11.51 (bs, 1H), 7.50-7.13 (m, 13H), 3.97 (s, 2H), 3.95 (q, 2H), 3.76 (s, 3H), 0.79 (t, 3H)
【0160】
段階3:カリウムヘキサメチルジシラザン(18.6mL、トルエン中0.5M)の溶液に、前の化合物(1.18g、2.32mmol、45mLのテトラヒドロフラン中)を滴加した。1時間後、溶媒を減圧下で除去し、塩酸の溶液(4N)を粗製の固体に加えた。数分間撹拌した後に、固体を濾過し(1g)、石油エーテル/最小量の酢酸エチル混合物で洗浄した;
【0161】
MS: 460.0 (M+1);
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 7.55-7.06 (m, 13H), 3.80 (s, 3H)
【0162】
例2:
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
アルゴンの下でジメチルホルムアミド(10mL)/トルエン(1mL)/エタノール(6mL)/水(3mL)の混合物中の、中間体1(0.4g、1mmol)、2−ヒドロキシフェニルボロン酸(277mg)、炭酸セシウム(981mg)およびパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(100mg)を、80℃にて一晩加熱した。溶液を、celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。アセトニトリルを加えた。沈殿した固体(244mg)を濾過し、水、塩酸塩溶液(4M)、アセトニトリルおよび石油エーテルによって洗浄した;
【0163】
MS: 412.1 (M+1);
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 7.52-7.45 (m, 4H), 7.37-7.23 (m, 6H), 7.17-7.11 (m, 1H), 7.04 (s, 1H), 6.96-6.84 (m, 2H)
【0164】
例3:
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−(ピリジン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
アルゴンの下でジメチルホルムアミド(25mL)/トルエン(2.6mL)/エタノール(15mL)/水(7.5mL)の混合物中の、中間体2(1g、2.50mmol)、2−ヒドロキシフェニルボロン酸(0.69g)、炭酸セシウム(2.45g)およびパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(260mg)の溶液を、80℃にて6時間加熱した。溶液を、celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。アセトニトリルを加えた。沈殿した固体(629mg)を濾過し、水、アセトン、酢酸エチルおよび石油エーテルによって洗浄した;
【0165】
MS: 413 (M+1);
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 9.66 (bs, 1H), 8.90 (m, 1H), 8.79-8.77 (m, 1H), 8.56-8.53 (m, 1H), 8.06-8.01 (m, 1H), 7.54-7.47 (m, 4H), 7.26-7.09 (m, 3H), 7.00-6.83 (m, 2H)
【0166】
例4:
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−(ピリジン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
アルゴンの下でジメチルホルムアミド(25mL)/トルエン(2.6mL)/エタノール(15mL)/水(7.5mL)の混合物中の、中間体2(1g、2.50mmol)、3−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸(0.76g)、炭酸セシウム(2.45g)およびパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(260mg)の溶液を、80℃にて一晩加熱した。溶液を、celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。アセトニトリルおよび塩酸溶液(5M)を加えた。沈殿した固体(527mg)を濾過し、水、酢酸エチルおよび石油エーテルによって洗浄した;MS:427.1(M+1);1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 8.89-8.01 (m, 4H), 7.65-7.29 (m, 8H), 7.12 (s, 1H), 4.56 (s, 2H)
【0167】
例5:4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メトキシフェニル)ピリジン−5−イル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
段階1:アルゴンの下でトルエン(10mL)/エタノール(12mL)/水(6mL)の混合物の、5−アセチル−2−クロロ−ピリジン(4.45g、28.6mmol)、2−メトキシフェニルボロン酸(8.96g)、炭酸セシウム(27.9g)およびパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(2.97g)の溶液を、80℃にて一晩加熱した。溶液を、celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。粗製物を、シリカ(ジクロロメタン、次にジイソプロピルエーテル)上で精製した;
MS:228.1(M+1)。
【0168】
段階2:前の化合物(5.73g、25mmol)、硫黄(6.47g)、エチルシアノアセテート(3.28mL)、モルホリン(4.4mL)および無水エタノール(100mL)の溶液を、一晩50℃に加熱した。反応混合物を濾過し、溶媒を蒸発させた。残留した油を、水/酢酸エチルの混合物中に吸収させた。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相全体をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗製の油を、シリカ(石油エーテル80/酢酸エチル20)上で精製して、所望の化合物(2.38g)を得た;
MS:355.1(M+1)。
【0169】
段階3:ジオキサン(15mL)中の前の化合物(2.38g)に、塩化フェニルアセチル(5mLのジオキサン中1.15mL)を滴加した。2時間後、反応混合物を蒸発乾固させた。残留した油に、氷冷した水およびジイソプロピルエーテルを加えた。沈殿した固体(2.4g)を濾過し、水およびジイソプロピルエーテルで洗浄した。テトラヒドロフラン(40mL)中のこの固体に、カリウムヘキサメチルジシラザン(40L、トルエン中0.5M)を加え、反応混合物を70℃にて一晩加熱する。溶媒を減圧下で除去した。残留した油に、水および酢酸を加えた(pH4まで)。沈殿した固体(1.77g)を濾過し、水で洗浄した;
MS: 427.1 (M+1);
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d [ppm] 12.09 (bs, 1H), 9.65 (bs, 1H), 8.67 (s, 1H), 7.85-7.71 (m, 3H), 7.37 (m, 9H), 3.78 (s, 3H)
【0170】
以下の化合物を、同様の方法によって得ることができる:
【表1】

【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
【表5】

【0175】
生物学的アッセイ
・酵素活性
以下の生物学的試験により、式(I)で表される化合物のAMPKタンパク質(組換え型α1β1γ2)に対する有効性を測定できる。
ヒト組換え型AMPK酵素を、大腸菌中で発現させ、LKB1によってインビトロで再活性化させ、その後酵素活性を測定した。
【0176】
AMPK酵素活性を、A Delfia技術を用いることによりアッセイした。AMPK酵素活性を、マイクロタイタープレート(50mMのHepes緩衝液、pH7.4、それぞれ125μMのATPを含む)中で、合成ペプチド基質(AMARAASAAALARRR、「AMARA」ペプチド)およびアクチベーターの存在下で、連続的希釈において行った。反応を、AMPK(50〜100ng)の添加によって開始した。混合に続いて、プレートを、30分間室温にてインキュベートした。酵素活性を、抗ホスホセリン抗体を用いることによりアッセイして、AMARAA中に取り入れられたリン酸塩の量を測定した。
【0177】
:分子の番号
活性:30μMにおける式(I)で表される化合物の対照の%(定常活性)と30μMにおけるAMP(天然基質)の対照の%(定常活性)との比率。
【0178】
当該比率が90%またはそれより高い場合には、表II中の式(I)で表される化合物を、AMPKの直接的アクチベーターと見なす。
【0179】
【表6】

【0180】
筋肉におけるグルコース取り込み
骨格筋は、インスリンにより刺激された糖処理の主要な部位であり、この標的組織におけるインスリン耐性は、2型糖尿病(T2D)の病因における寄与因子として長期にわたり見なされていた。したがって、インスリンのシグナル伝達とは独立した骨格筋グルコース取り込みを刺激する別の経路は、T2D対象における血糖管理を潜在的に改善することができた。運動が、骨格筋におけるグルコース取り込みをインスリン経路とは独立して刺激するが、根本的な分子機構は、依然として明らかではない。
【0181】
グルコース輸送が、単離した骨格筋における収縮に応答してインビトロで増大され得るという発見により、内部の細胞エネルギー欠乏によって引き起こされたシグナル経路が収縮によって誘発されたグルコース取り込みについて部分的に説明可能であることが示唆される。AMPKは、それがAMPの上昇およびクレアチンリン酸エネルギー貯蔵の減少を伴い、平行して活性化されるため、収縮によって誘発された骨格筋グルコース取り込みについての魅力ある候補として考えられている(Hubter C.A., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 272:E262-E266; 1997)。さらに、AMPKのAICARによって誘発された活性化により、グルコース取り込みが増大する(Merrill G.F.and al.., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 273:E1107-E1112 ; 1997)。
【0182】
・H−2Kb細胞におけるグルコース取り込み(インビトロ細胞試験)
以下の細胞試験により、AMPKアクチベーター、例えば式(I)で表される化合物などの筋肉細胞モデルにおけるグルコース取り込みに対する効果を測定できる。
Fryer et al. (Diabetes 49 (12): 1978, 2000)によって既に記載されているように、ヘテロ接合体H−2Kb tsA58トランスジェニックマウス由来のH−2Kb細胞を、マトリゲルで被覆したプレート中で24ウェルにおいて増殖させ、許容的条件下で33℃にて4日間培養した。
【0183】
筋肉における分化のために、細胞を、非許容的培養条件(インターフェロン−γの不存在での37℃)に切り替えた。3日後、細胞を、種々の濃度の試験された分子を含むDMEM 1g/lグルコース培養培地中で4時間インキュベートした。次に、グルコース取り込みを、放射性同位体で標識した2−デオキシ−D−[1,2 H]グルコースで、10分間細胞をインキュベートすることにより測定した。グルコース取り込みを、氷冷NaCl 0,9%で2回プレートを迅速に洗浄することによって終了した。次に、細胞を、0.1N NaOH中で30分間可溶化した。放射能を、液体シンチレーション計数によって測定した。
【0184】
:分子の番号
活性 表III:インスリン(170nM)によって誘発されるグルコース取り込みに等しいかまたはそれより高いグルコース取り込みのための化合物(I)の濃度
** 化合物(I)の濃度≦10マイクロモル
化合物(I)の濃度>10マイクロモル
【0185】
【表7】

【0186】
本発明の化合物は、H−2Kbと称される筋肉細胞系におけるグルコース取り込みを、インスリンとは独立して増大させることができる。
酵素試験、続いて細胞試験から得られるこれらのデータにより、式(I)において定義したチエノピリドン誘導体が、直接的AMPKアクチベーターであり、これらの化合物が、好ましくは筋肉細胞においてグルコース取り込みを増大させることができることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中:
は、H、A、OA、OH、Hal、NO、COOA、COOH、CHO、COA、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONH、ArまたはHetを示し、
は、ArまたはHetを示し、
は、Ar−ジイルまたはHet−ジイルを示し、
は、ArまたはHetを示し、
Arは、フェニル、ナフチルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、CHO、COA、NH、NHA、NA、NO、COOA、COOH、CONH、CONA、CONA、SOA、CN、C(=NH)NH、C(=NH)NHOHおよび/またはHetによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、Hal、A、OA、OH、CHO、COA、COOH、COOA、CN、NO、NH、NHA、NA、CONH、CONHAおよび/またはCONAによって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の不飽和のまたは芳香族の複素環を示し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよいか、あるいは
3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示す、
で表される化合物、
ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項2】
が、H、A、Hal、COOA、COOH、CONH、CONHA、CONA、CN、SOA、SONHまたはフェニルを示す、
請求項1に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項3】
が、フェニル、ナフチルを示し、その各々が、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、あるいはHetを示す、
請求項1または2に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項4】
が、Ar−ジイルを示し、前記化合物が、1,2フェニレンまたは1,3フェニレンまたは1,4フェニレン基であり、それが、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、COOA、COOH、CN、CONH、CONA、CONAおよび/またはSOAによって単置換、二置換、三置換、四置換されている、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項5】
Hetが、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を示す、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項6】
Hetが、ピリジル、ピリミジニル、フラニル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリルまたはインダゾリルを示す、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項7】
Aが、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子が、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよい、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項8】
が、H、A、Halを示し、
が、ArまたはHetを示し、
が、Ar−ジイルまたはHet−ジイルを示し、
が、ArまたはHetを示し、
Arが、フェニル、ナフチルを示し、その各々が、非置換であるか、またはA、Hal、OA、OH、CHO、COA、NH、NHA、NA、NO、COOA、COOH、CONH、CONA、CONA、SOA、CN、C(=NH)NH、C(=NH)NHOHおよび/またはHetによって単置換、二置換、三置換、四置換もしくは五置換されており、
Hetが、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の不飽和または芳香族複素環を示し、それが、Hal、A、OA、OH、CHO、COA、COOH、COOA、CN、NO、NH、NHA、NA、CONH、CONHAおよび/またはCONAによって単置換、二置換または三置換されていてもよく、
Aが、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子が、OH、F、Clおよび/またはBrによって置き換えられていてもよく、あるいは、
3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを示し、
Halが、F、Cl、BrまたはIを示す、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項9】
以下の群
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(2’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(3’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(3’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−フェニル−3−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−4−イル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−シアノビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルスルホニルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロ−2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−ビフェニル−4−イル−5−(4−シアノフェニル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
メチル4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボキシレート、
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−[4−(3−フリル)フェニル]−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−ピリジン−4−イル−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(3’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[4−(3−フリル)フェニル]−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロ−2’−メトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’,4’−ジヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’,5’−ジメトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチル−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2,4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−2’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸、
2’−ヒドロキシ−4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(2−メトキシ−2’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチル−2−メトキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[3−メトキシ−4−ピリジン−3−イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−ヒドロキシ−4−ピリジン−4イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−2−カルボン酸、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−カルボン酸、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−3’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[4−(3−フリル)フェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−メトキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−[3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−ビフェニル−3−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−3−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メトキシフェニル)ピリジン−5−イル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−フェニルピリジン−5−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジン−5−イル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
から選択される、請求項1に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項10】
以下の群
3−ビフェニル−4−イル−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
2−クロロ−4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(4’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−4−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
3−(2’−フルオロビフェニル−4−イル)−4−ヒドロキシ−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−メチルビフェニル−4−イル)−5−ピリジン−3−イル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−[2−ヒドロキシ−4−ピリジン−4−イルフェニル]−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(3’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシメチルビフェニル−4−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4’−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−カルボン酸、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−4−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(4−ピリジン−3−イルフェニル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン、
4−ヒドロキシ−3−(2−フェニルピリジン−5−イル)−5−フェニル−6,7−ジヒドロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
から選択される、請求項1に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項11】
以下の群
から選択される、請求項1に記載の化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項12】
式(I)で表される化合物を製造するための、式(II)
【化2】

式中、
、R、Bは、請求項1に示す意味を有し、
Xは、ハロゲン原子である、
で表される化合物およびその塩。
【請求項13】
式(II)で表される化合物を製造するための、式(III)
【化3】

式中、
、R、Bは、請求項1に示す意味を有し、
Xは、ハロゲン原子であり、ALKは、C〜Cアルキルを示す、
で表される化合物およびその塩。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物ならびにそれらの薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法であって、
式(II)
【化4】

式中、R、RおよびBは、請求項1に示す意味を有し、Xは、Cl、BrまたはIである、
で表される化合物を、
鈴木反応において、ボロン酸誘導体B−B(OH)、式中、Bは、請求項1に示す意味を有する、と反応させ、
かつ/または式Iで表される塩基もしくは酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)で表される少なくとも1種の化合物、および/またはそれらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物、ならびに、任意に賦形剤および/または補助剤を含む、医薬。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物ならびに、その薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物の、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、癌、炎症、心血管疾患の処置のための医薬の調製のための使用。
【請求項17】
直接的AMPKアクチベーターとしての、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の、筋肉細胞におけるグルコースの取り込みを増大させる医薬の調製のための使用。

【公表番号】特表2011−519876(P2011−519876A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507805(P2011−507805)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002606
【国際公開番号】WO2009/135580
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】