説明

APOE4陰性患者における認識機能の改善のためのPPARγアゴニスト

対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能の改善方法であって、(i)対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないことを決定するために対象をスクリーニングし;次いで、(ii)安全かつ有効な量のPPARγアゴニストを前記対象に投与する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽度認識障害およびアルツハイマー病ならびに他の認知症の治療または予防に関し、特に、その中で認識機能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、バイエルン人アロイス・アルツハイマーによって1907年に最初に記載された。それは、進行性、消耗性疾患であり、認知症の最も一般的な原因である。典型的な症状には、記憶障害、認知機能障害、行動変化(偏執症、妄想、抑制の喪失を含む)および言語機能の低下が含まれる。病理学的に、ADは、2種の異なる脳障害−老人班(neuritic plaque)(時折、老人班(senile plaque)として称される)および神経原繊維変化の存在によって伝統的に特徴付けられている。
【0003】
老人班は、細胞外アミロイドβ−タンパク質(Aβ)沈着であり、典型的には、線状体において、断面中約10〜150μmであり、軸索および樹状損傷に付随する。Aβは、一連のセクレターゼによるアミロイド前駆タンパク(APP)の開裂によって形成される。40残基ペプチドのAβ40は、細胞によって最大量で通常産生されるAβの形態であるが、老人班中で見出された多くのAβは、42個のアミノ酸を含有する(Aβ42)。Aβ40はまた、プラークで局在化しているけれども、Aβ42は、Aβ40より著しく疎水性であるため、より凝集する傾向にある。老人班は、十分な期間(数ヶ月〜数年)かけて発症すると考えられている。アミロイド沈着の範囲と認識障害の間の相関関係が論点となっているけれども、プラークの形態におけるアミロイド沈着は、臨床症状の出現前に生じることが知られている。
【0004】
神経原繊維変化は、通常、AD患者から核周囲細胞質のニューロン内で見出される。該変化は、らせん中に創傷がある繊維の対から形成される。これらの極めて不溶性の繊維は、異常に過リン酸化状態の微小管結合タンパク質タウからなることが知られている。変化の形成がAβの段階的蓄積に対するニューロンによる反応であるとする証拠がいくつかある。
【0005】
臨床上典型的なADは、常染色体優性遺伝しうるが、疾患の最も多くの場合(約90%)は散発性であると考えられている。より珍しい家族性ADが、一般には、散発性AD(例えば、しばしば遅発性ADまたはLOADとしても知られている)よりかなり早い時期に存在することを除き、これらの二形態の疾患は、表現型の上では極めて類似性が高い。発現機序常染色体優性型(APP変異ならびにプレセニリン1および2遺伝子など)を特徴付ける情報が遅発性散発型のADに関連していることをこの一般的表現型類似性は示唆する。一般には、家族性ADはAβの産生の増加に付随し、一方、散発性ADは規則性Aβ産生のクリアランス不全の結果でありうる。
【0006】
散発性ADに対する、年齢、低コレステロール濃度、高最大血圧、高グルコース濃度、高インスリン濃度、耐糖能異常およびアポリポタンパク質Eのe4対立遺伝子の存在を含む、多数の有力な要因が確認されている(Kuusisto Jら.BMJ 1997 315:1045−1049)。
【0007】
ADに対するさらなる情報について、一般に、Selkoe D Physiol.Rev.2001 81(2):741−766;Watson Gら.CNS Drugs 2003 17(1):27−45を参照。
【0008】
軽度認識障害は、対象が、発症前基準日から検出可能である認識機能のわずかな障害を有するが、ADの診断基準を満たすためにあまり重症でもない病態である。そのようなものとして、MCIは、正常に老化している対象の正常な認識機能と認知症の異常な認識機能の間の遷移状態として考えられうる。MCIは、検出される認知障害の種類に基づいてカテゴリーに分類されうる。記憶の喪失は、単に健忘性MCIの特徴を表し;一方、他の種類のMCIは、記憶を含む多重認識領域の欠損、または単一、非記憶領域の欠損に関する。健忘性MCIからADの進行の割合は、1年当たり10−20%にわたるコホート研究にて測定されている(より多くの情報については、Petersenら.Arch Neurol 2001 58:1985−1992を参照)。
【0009】
同様に認知障害を引き起こす他の認知症には、血管性認知症、レヴィー小体認知症、前頭側頭認知症およびパーキンソン病に付随する認知症が含まれる。
【0010】
アポリポタンパク質は、脳の発達、シナプス形成およびニューロン損傷への応答に付随する糖タンパク質である。アポリポタンパク質E(ApoE)は、血漿リポタンパク質の一のタンパク質成分である。単一遺伝子座で3種の対立遺伝子の生成物である、3種の主要なアイソフォームのApoE(すなわち、ApoE2、ApoE3およびApoE4)が存在する。したがって、個体は、ホモ接合型(APOE2/2、APOE3/3またはAPOE4/4)またはヘテロ接合型(APOE2/3、APOE2/4またはAPOE3/4)であってもよい。最も一般的な対立遺伝子は、白人個体群の約0.78の対立遺伝子頻度を有する、APOE3であり(Bales KRら.Mol.Interventions 2002 2:363−375)、最も一般的な遺伝子型はAPOE3/3である。
【0011】
3種のアイソフォームのアミノ酸配列は、わずかな変化のみ示し、以下の表1にて要約される。
【表1】

【0012】
APOE4対立遺伝子の輸送とADを発症する危険の間の関連性は、以前から知られており、文献にて十分に証明されている(Strittmatter WJら.PNAS 1993 90:1977−1981;Roses AD Ann Rev Med 1996 47:387−400)。しかしながら、e4対立遺伝子の存在は、感受性因子であり、疾患を引き起こさないので、APOE遺伝子型単独では、ADに対する診断テストは十分ではない(Mayeux Rら.New Engl.J.Med.1998 338:506−511)。
【0013】
2種のAPOE4対立遺伝子を有する個体におけるADの年齢調節リスクは、1種のAPOE4対立遺伝子のみを有する個体の3倍を超えることが示されており、次いで、APOE4対立遺伝子を有しない個体のほぼ3倍である(Corderら.Science 1993 261(5123):921−3;Kuusisto Jら.BMJ 1994 309:636−638)。他のAD患者と比べて、APOE4とホモ接合型である個体は、発症の低年齢化、増加したアミロイド量および減少したアセチルコリン濃度を示す。APOE4対立遺伝子頻度は、民族個体群ごとに変化し、白人個体群において約0.15であるが、ADの患者において最大0.4であることを見出した(Saundersら.Neurology 1993 43(8):1467−72)。
【0014】
3種の共通対立遺伝子で最も珍しい、APOE2は、最も一般的なAPOE3対立遺伝子に比べて保護効果を有することを示し、APOE2対立遺伝子を有する個体は、一般に、APOE2対立遺伝子を有しない個体より疾患の発症が遅いことを示す(Corderら.Nature Genetics 1994 7(2):180−4;Bales KRら.Mol Interventions 2002 2:363−375)。APOE2対立遺伝子頻度は、白人個体群において約0.07であることを見出した。いったん可能性のあるADの症状が存在すればAPOE4状態が進行速度に関係しないとのより多くの近年のデータがある。
【0015】
グルコース代謝は、中枢神経系内の細胞の機能において非常に重要である。地域特有である脳グルコース代謝の減少は、ADの患者において証明されている(Reiman EMら.New Eng J Med 1996 334:752−758;Alexander, GEら.Am J Psychiatry 2002 159:738−745),both in LOAD and in familial AD(Small GWら,PNAS 2000 97:6037−6042)。
【0016】
地域特有パターンの減少した脳グルコース代謝は、1または2個のAPOE4対立遺伝子を保有する個体において、臨床症状の発症の予測年齢より何年も前に見つけられうるので、ADの危険性がある患者における脳グルコース代謝の減少は、APOE状態に関連している(Reiman EMら.New Eng J Med 1996 334:752−758;Rossor Mら,Annals NY Acad Sci 1996 772:49−56;Small GWら,PNAS 2000 97:6037−6042)。
【0017】
インスリンはまた、末梢および中枢エネルギー代謝に非常に重要である。膵臓β細胞によって分泌され、血漿インスリンは、摂食および絶食の時期を介して血中グルコース濃度、インスリン感受性グルコーストランスポーターによって制御されるインスリン感受性組織のグルコース取り込みの割合を調節する働きをする。血中グルコースの増加は、インスリンの放出をもたらし、一方、血中グルコースの減少は、肝臓によって産生されるグルコースを増加する逆調節(counter−regulatory)ホルモンの放出をもたらす。II型糖尿病はグルコース取り込みを刺激し、肝グルコース産生(インスリン抵抗性として既知)を阻害する、減少したインスリン能ならびにインスリン抵抗性を代償する不十分なインスリン分泌反応に起因する。
【0018】
インスリンは、インスリン受容体媒介輸送方法によって血液/脳関門を透過させる。インスリンの末梢濃度は、中枢神経系(CNS)における濃度と一致する傾向にある、すなわち、増加した末梢インスリンは、増加したCNSインスリンをもたらす。インスリンが、正常な記憶機能に関与すること、ならびにインスリン抵抗性および高インスリン血症などの末梢インスリン代謝における障害が、記憶に悪影響を及ぼうしうるとの根拠を示唆する。グルコース利用のインスリン促進増加は、神経伝達物質アセチルコリンの合成における主要な基質、アセチルCoAの解糖生産をもたらしうる。アセチルコリン濃度の減少は、ADの主要な特徴である。
【0019】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)は、リガンド活性化転写因子のステロイド/甲状腺/レチノイド受容体スーパーファミリーのオーファン群である。PPAR−γは、独立遺伝子でコードされる密接に関連するPPARのサブファミリーの一つである(Dreyer Cら.Cell 1992 68:879−887;Schmidt Aら.Mol.Endocrinol.1992 6:1634−1641;Zhuら.J.Biol.Chem.1993 268:26817−26820;Kliewer SAら.Proc.Nat.Acad.Sci.USA 1994 91:7355−7359)。3種の哺乳類PPARが単離され、PPAR−α、PPAR−γおよびPPAR−δ(NUC−1としても既知)と称されている。これらのPPARは、PPAR応答エレメント(PPRE)と称される、DNA配列エレメントに結合することによって標的遺伝子の発現を調節する。今まで、PPREは、脂質代謝を調節するタンパク質をコードし、PPARが、脂質生成シグナル伝達カスケードおよび脂質ホメオスタシスにて極めて重要な役割を果たすことを示す多数の遺伝子のエンハンサーとして特定されている(Keller Hら.Trends Endocrin.Met.1993 4:291−296)。
【0020】
ヨーロッパ特許第306228号は、II型糖尿病の治療のインスリン増感剤として用いるためのチアゾリジンジオン誘導体である一群のPPAR−γアゴニストを記載している。これらの化合物は、抗高血糖活性を有する。本明細書に記載の一の好ましい化合物は、化学名5−[4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオンとして知られ、一般名ロシグリタゾンを付与されている。マレイン酸塩を含む、該化合物の塩は、WO94/05659に記載されている。ヨーロッパ特許出願、公開番号:0008203、0139421、0032128、0428312、0489663、0155845、0257781、0208420、0177353、0319189、0332331、0332332、0528734、0508740;国際特許出願、公開番号:92/18501、93/02079、93/22445ならびに米国特許番号5104888および5478852はまた、特定のチアゾリジンジオンPPAR−γアゴニストを開示している。5−[4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾンとしても既知)、5−[4−[(1−メチルシクロヘキシル)メトキシ]ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾンとしても既知)、5−[[4−[(3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ]フェニル]メチル]−2,4−チアゾリジンジオン(トログリタゾンとしても既知)および5−[(2−ベンジル−2,3−ジヒドロベンゾピラン)−5−イルメチル)チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾンとしても既知)を含む、特定化合物について言及してもよい。
【0021】
米国特許第6,294,580号(その開示は、出典明示により本明細書の一部とする)は、チアゾリジンジオン系化合物ではなく代わりにやはり、II型糖尿病の治療におけるインスリン増感剤として有効であるチロシンのO−およびN−置換誘導体である一連のPPARγアゴニストを記載している。一のかかる化合物は、化学名N−(2−ベンゾイルフェニル)−O−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチル]−L−チロシン(2(S)−(2−ベンゾイルフェニルアミノ)−3−{4−[2−5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ]−フェニル}−プロピオン酸、または一般名ファルグリタザルとしても既知)を有する。
【0022】
脳グルコース代謝の障害は、AD期間中、およびADの症状の臨床的発症前にAPOE4担体に存在していることを多数の臨床的根拠は示唆する(Reiman EMら.New Eng J Med 1996 334:752−758;Rossor Mら,Annals NY Acad Sci 1996 772:49−56;Small GWら,PNAS 2000 97:6037−6042)。
【0023】
ADを発症する危険性が、インスリン抵抗性に影響を及ぼしうることを収束する臨床的および疫学的根拠はまた示唆する。しかしながら、インスリン抵抗性とAD間の関係の正確な性質は、複雑であり、今まで十分に理解されていない。
【0024】
高インスリン血症は、ADの危険因子として知られている。一の研究では、それは、APOE遺伝型の独立であると著者によって結論付けられ(Kuusisto Jら.BMJ 1997 315:1045−1049)、ここで、APOE4対立遺伝子(APOE4−)を有しない高インスリン血症の高齢対象は、正常インスリン血症の対象における1.4%と比べて、高インスリン血症の対象にて7.5%のAD有病率を有しており;一方、APOE4対立遺伝子(APOE4+)を有する高インスリン血症の高齢対象は、正常インスリン血症の対象における7.1%に比べて、高インスリン血症の対象にて7.0%のAD有病率を有していた。APOE遺伝型とインスリン抵抗性間の因果関係を他の研究は示している(Watson Gら.CNS Drugs 2003 17(1):27−45)。
【0025】
例えば、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではなかった患者は、これらの患者におけるADの発症にて考えられる要因を示す、インスリン代謝の異常を有し(特に、増加した血漿インスリン濃度)、一方、APOE4対立遺伝子とホモ接合型であった患者は、正常なインスリンの末梢濃度を証明した。両群は、非AD対象と比べて減少した脳脊髄液インスリン濃度を証明した(Craft Sら.Neurology 1998 50:164−168)。さらに、APOE4対立遺伝子を有しない患者は、APOE4+である患者に比べて、インスリン媒介グルコース処理の割合が減少した(Craft Sら.Neuroendocrinology 1999 70:146−152)。
【0026】
記憶などの精神機能の適当な機能が必要であると十分に認められている。AD患者が、コリン作動性シグナル伝達の異常を有し、その範囲は、認識障害の濃度と相関することを多数の根拠は示している。AD研究の多数の態様と同様に、疾患の進行と観察されたコリン作動性機能障害間の因果関係は、完全に理解されていない。多数のコリンエステラーゼ阻害薬は、ADの治療に用いるために承認された許容される程度の副作用を有する十分な有効性を証明しているにもかかわらず、今まで、ムスカリン性またはニコチン性アセチルコリン受容体に対するアゴニストの使用は、臨床的価値があることを証明していない、これらには、タクリン(Cognex(登録商標))、ガランタミン(Reminyl/Radazyne(登録商標))、リバスティグミン(Exelon(登録商標))およびドネペジル(Aricept(登録商標))を含まれている。さらなる詳細については、例えば、Terry AVら.J.Pharmacol.Exp.Ther.2003 306(3):821−827を参照。
【0027】
3年で群の間に区別はなかったけれども、軽度認識障害(正常な老化と早期AD間の遷移状態)を有する個体におけるドネペジルの使用を調査する近年発表された研究において、ドネペジルは、投与の最初の12ヵ月間患者がADを発症する割合の減少を示した。さらに、最初の12ヵ月で有意な効果が見られ、次いで、次の24ヵ月でより急速な低下が見られた。プラセボに比べて個体群を治療する総合的目的の著しい相違は3年間観察されなかったけれども、1または2コピーのAPOE4対立遺伝子の保有者であった患者は、プラセボに比べてADに進行する危険性が減少した(Petersen Rら.New Engl.J.Med.2005 352:2379−2387)。
【0028】
グルタミン酸塩によるN−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)受容体の過度の刺激は、ADの発症に寄与すると考えられている。したがって、NMDA受容体アンタゴニストは、ADの臨床的治療に用いられる付加的な群の化合物である:メマンチン(Axura(登録商標)、Namenda(登録商標))は、FDAによって承認された最初のNMDA受容体アンタゴニストである。アダマンタンコア周辺に基づき、メマンチンは、副作用の発生率が低く、中程度から重度ADの患者において悪化の割合を著しく遅らせることが知られている(Resiberg Bら、New Engl.J.Med.2003 348:1333−1341)。メマンチンの作用機構が、NMDA阻害だけではなく、a7ニコチン性アセチルコリン受容体上の効果に関与しうるとする近年のデータがより多く存在する(Aracavaら,J Pharmacol Exper Therapeutics,2005 312(3):1195−1205)。
【0029】
細胞および分子レベルで、多数の炎症過程をAD患者の脳で観察することでき、これらの炎症過程は、障害の発症および進行に重要であると考えられる。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が、ADの危険性を低下され、疾患の進行を遅らせ、重度の認識症状を軽減しうる根拠がいくつかある(in t’Veld BAら.Epidemol.Rev.2002 24(2):248−268;Etminan Mら.BMJ 2003 327:128−132)。しかしながら、臨床試験は、被験者の心臓血管系作用の予期せぬ出現により無事に終了してない。ロフェコキシブを用いる一の臨床試験は、ADおよびMCIについては終了したが(Reinesら.Neurology 2004 62:66−71)、有効性は示さなかった。
【0030】
ADの治療におけるインスリン抵抗性改善薬の使用は、すでに提示されている。国際特許出願WO98/39967は、チアゾリジンジオンなどの血清インスリン濃度を減少する薬剤を投与することによってADの治療または予防する方法を開示している。国際特許出願WO99/25346は、アポトーシス阻害薬、例えば、ロシグリタゾンなどのインスリン抵抗性改善薬を投与することによってADおよびパーキンソン病を含む神経変性障害などのアポトーシスが介在する疾患の治療または予防する方法を開示している。国際特許出願WO00/32190は、チアゾリジンジオン誘導体ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなどのPPAR−γアゴニストを投与することによってADの治療または予防する法を開示している。国際特許出願WO00/35437は、チアゾリジンジオン誘導体ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなどのインスリン抵抗性改善薬の投与によって減少した精神行動に罹患している対象における精神行動を改善する方法を開示している。
【0031】
パーキンソン病モデルにおいて、チアゾリジンジオン誘導体(ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンを含む)は、アセトアルデヒド(Junら(2006) Biochem Biophys Res Comm 340,221−227)、MPTP(Dehmerら(2004) J Neurochem 88,494−501)および8−OHDA(Chenら(2004) FASEB 18,1162−1164)を含む様々な毒性傷害からドーパミン作動性細胞を保護しうることが証明されている。
【0032】
本願の最も早期の優先日前には、MCI、ADまたは他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象における認識機能を改善するロシグリタゾンなどのPPARγアゴニストの使用が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない対象のみに利益を提供し、APOE4対立遺伝子の非保有者である対象に最も利益を提供することを示す明確な根拠は存在していなかった。
【0033】
(図面の簡単な説明)
図1は、実施例2の包括解析個体群における基準日からのモデル修正ADAS−cog変化を示す。
【0034】
図2は、治療計画およびAPOE4対立遺伝子状態によって実施例2の遺伝子型個体群における基準日からのモデル修正ADAS−cog変化を示す。
【0035】
図3は、APOE4ヘテロ接合体(「Het」)およびAPOE4ホモ接合体(「Homo」)個体群におけるモデル修正ADAS−cog変化のプロットを示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の別の態様にしたがって、対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象における認識機能を改善する方法であって、以下:
i)対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないことを決定するために対象をスクリーニングし;次いで
ii)ロシグリタゾン又はその医薬上許容される塩およびドネペジルまたはその医薬上許容される塩を含む安全かつ有効な量の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0037】
スクリーニング法(i)は、対象がAPOE2またはAPOE3対立遺伝子を有するかどうかの決定に関与しうる。
【0038】
本発明の一の実施態様において、スクリーニング工程(i)は、対象が単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有することを決定することに関する。例えば、対象は、APOE3/APOE4であると決定されうる。
【0039】
本発明のより好ましい実施態様において、スクリーニング工程(i)は、対象がAPOE4−(すなわち、APOE4対立遺伝子を保有しない)であることを決定することに関する。例えば、対象は、APOE3/APOE3またはAPOE2/APOE3であると決定されうる。
【0040】
例えば、対象は、MCIまたはADに罹患しているかまたは罹患しやすくてもよい(例えば、罹患していてもよい)。本発明の一の実施態様において、対象はMCI(特に、健忘性MCI)に罹患している。本発明の別の実施態様において、対象は、アルツハイマー病に罹患している。本発明の別の実施態様において、対象は、MCI(特に、健忘性MCI)に罹患しやすい。本発明の別の実施態様において、対象は、アルツハイマー病に罹患しやすい。さらなる実施態様において、対象は、血管性認知症、レヴィー小体認知症、前頭側頭認知症またはパーキンソン病に付随する認知症などの他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい。
【0041】
対象が、0または1コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するかどうかを決定するスクリーニングを含む、ロシグリタゾンまたはその医薬上許容される塩およびドネペジルまたはその医薬上許容される塩を含む組成物の投与に対する対象の反応を予測する補助としてMCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象をスクリーニングする方法がまた本発明にしたがって提供される。
【0042】
方法は、特に、対象がAPOE4−であるかどうかを決定するスクリーニングを含みうる。スクリーニング方法は、例えば、対象がAPOE2またはAPOE3対立遺伝子を有するかどうかを決定することを含みうる。
【0043】
本発明の別の態様において、対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するのに用いるPPARγアゴニストが提供される。対象は、例えば、APOE−であるように予め決定されうる。
【0044】
本発明のさらなる態様において、対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能の改善におけるPPARγアゴニストの使用が提供される。対象は、例えば、APOE4−であるように予め決定されうる。
【0045】
本発明の別の態様において、対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するための医薬の製造におけるPPARγアゴニストの使用が提供される。対象は、例えば、APOE4−であるように予め決定されうる。
【0046】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善する方法であって、安全かつ有効な量のPPARγアゴニストを前記対象に投与することを含む方法;ならびに、対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するのに用いるPPARγアゴニスト;ならびに、対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善する医薬の製造におけるPPARγアゴニストの使用がまた提供される。本発明のある態様によれば、前記方法、PPARγアゴニストまたは使用において、対象はAPOE4−である。
【0047】
対象の認識機能を改善する方法であって、治療上有効な量のPPARγアゴニストをそれを必要とする対象に投与することを含む方法がまた提供され、ここで、対象は、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない(例えば、対象はAPOE4−である)。
【0048】
認識障害に影響を及ぼす疾患を発症しているかまたは発症するおそれのある対象がPPARγアゴニストで治療することができるかどうかを決定する方法であって、それを必要とする対象が2個のAPOE4対立遺伝子を有するかどうかを決定することを含む方法がまた提供され、ここで、対象が2個のAPOE4対立遺伝子を有しない(すなわち、対象がAPOE4対立遺伝子を有しないかまたは1個のAPOE4対立遺伝子を有する)ならば、対象はPPARγアゴニストで治療されうる。特定のかかる方法は、治療を必要とする対象がAPOE4対立遺伝子を有していないかどうかを決定することを含み、ここで、対象がAPOE4対立遺伝子を有していないならば、対象はPPARγアゴニストで治療されうる。
【0049】
APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない対象(例えば、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないと予め決定されている対象)に(i)ロシグリタゾンまたはその医薬上許容される塩およびドネペジルまたはその医薬上許容される塩を含む組成物(ii)PPARγアゴニストの投与を指示する使用説明書(典型的には、医薬組成物の形態で)を含むキットがまた提供される。例えば、使用説明書は、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないMCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象に組成物の投与を指示する。本発明の特定の態様によれば、対象は、APOE4−である(例えば、対象は、任意のコピーのAPOE4対立遺伝子を有しないように予め決定されている)。
【0050】
キットは、対象が、0、1または2種のAPOE4対立遺伝子を有するかどうかを決定する1種または複数の試薬を所望により含んでいてもよい。かかる試薬は、典型的には、プローブ、プライマー、抗体およびその組合せからなる群より選択されていてもよい。
【0051】
PPARγアゴニストおよび対象が1または2個(例えば、2個)のAPOE4対立遺伝子を有するかどうかを決定する1種または複数の試薬を含むキットがまた提供される。
【0052】
別法として、本発明の上記態様において、対象は、単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有していてもよく、あるいは決定されるかまたは保有するために予め決定されてもよい。例えば、対象は、APOE3/APOE4であると決定されるかまたは予め決定されていてもよい。
【0053】
以下の実施例にて示されるように、本発明者らは、PPARγアゴニストであるロシグリタゾンが、APOE4対立遺伝子を保有しない軽度から中程度のADを有する対象におけるプラセボに比べて認識機能の臨床上関連性のある改善をもたらすことを意外にも見出した。1コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する患者が、ロシグリタゾンとの治療にて認識障害の安定化(すなわち、著しい改善でも低下でもない)を経験することを結果は示唆する。
【0054】
低下が治療の結果または疾患の自然的進行によるものであるかどうかは明らかではないけれども、APOE4対立遺伝子とホモ接合型である患者は、ロシグリタゾンとの治療にて臨床的低下を経験しうることを結果は示唆する。
【0055】
理論に制限されることなく、本発明者らは、本発明を合理化しようとした。一の理論によれば、アイソフォーム間のアミノ酸配列の相違は、そのタンパク質折り畳みの相違をもたらす。特に、ApoE2およびApoE3は、112位のCysおよび61位のArgの存在によって特徴付けられる。ApoE4は、112位のArgおよび61位のArgの存在によって特徴付けられる。残基61および112は、折り畳まれたタンパク質で相互作用し、Argは正電荷であり、Cysは負電荷であるので、ApoE2およびApoE3タンパク質折り畳みは、ApoE4タンパク質折り畳みより該領域において密接である。ApoEアイソフォームは細胞内分解を経験するけれども、アイソフォーム間の立体配座の相違の結果として、ApoE4は、高速速度の分解を経験すると考えられている。分解にてもたらされるフラグメントは、同時にミトコンドリア毒性を引き起こす脂質および受容体結合部位を有する。ApoE4フラグメントの脂質結合部位は、ApoE2またはApoE3フラグメントの部位より強い脂質の結合剤であるように思われる。したがって、ApoE4フラグメントは、ApoE2およびApoE3フラグメントより大きな範囲で結合し、ミトコンドリアを分裂させる;該分裂はまた、体細胞からシナプスのミトコンドリア輸送に影響を及ぼす。該分裂はまた、PPARγアゴニストとの治療の結果であるグルコースまたは乳酸塩基質の増加に対するミトコンドリア反応性の低下を示しうる。効果は、1コピーを有するものより2コピーのAPOE4対立遺伝子を有する対象にて優れ、コピーを保有しないものより1コピーのAPOE4対立遺伝子を有する対象に対し優れると期待されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
対象が、0、1または2コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するかどうかの前決定は、本明細書記載のAPOE4スクリーニング法によって行われてもよい。
【0057】
本発明の一の実施態様において、対象は、II型糖尿病に罹患しているであろう。本発明の別の実施態様において、対象は、II型糖尿病に罹患していないであろう。
【0058】
APOE4対立遺伝子の有無を決定するための対象の診断スクリーニングの製法は、文献にて十分に立証され、当業者の能力の範囲内である。
【0059】
APOE4対立遺伝子の欠失は、対立遺伝子の存在を示す試験における陰性結果によって直接的に、あるいは、間接的に、例えば、APOE2およびAPOE3対立遺伝子の存在を示す(その結果、APOE4対立遺伝子が存在する可能性を除外する)試験の陽性結果によって決定されてもよい。
【0060】
スクリーニング方法は、等電点電気泳動法、免疫学的方法、免疫化学的方法またはシークエンス法などの多数の手法に基づいていてもよい(ApoEタンパク質自体かそれをコードする核酸のいずれか)。特定の方法は、制限断片酵素またはTaqManプライマーを用いるPCRに基づく方法を含む。
【0061】
免疫学的方法は、アイソフォームの特定の抗体の使用によるApoEアイソフォームの検出に関する。しかしながら、免疫学的検出方法は、結果の信頼性に影響を及ぼしうる、抗体交差反応性に関する問題によって阻止されうる。
【0062】
免疫化学的方法は、国際特許出願WO94/09155(付与された特許EP0625212、JP03265577およびUS5508167に関連する)に記載のものを含み、ADの診断についてApoE4の存否を検出する方法を開示する。WO94/09155に開示されるApoE4の存否を検出する方法はまた、本発明の実施に用いられる。簡単に言えば、対象からの試料(例えば、血液試料)は、特に、スルフヒドリル基と反応するように設計された固体担体と接触される。次いで、液体試料は、固体担体から分離され、適当な担体の使用によってApoEの存在を試験される。対象がAPOE4対立遺伝子の担体であることを分離された試料におけるApoE4の存在は示す。ApoE2およびApoE3とは異なり、ApoE4タンパク質は任意のシステイン残基を含有しないので、固体担体上で反応および固定化しない。個体がApoE4+であることを固体担体に通した後の液体試料における非結合ApoEの存在は示し;個体がApoE4−であることを固体担体に通した後の液体試料におけるApoE免疫活性の不存在は示す。ApoEアイソフォームの免疫学的分化を必要としないので、抗体特異性の問題は、主に該手法によって否定される。
【0063】
配列アプローチは、対象からのApoEタンパク質またはApoEをコードするDNAのいずれかの単離および精製、一般的手法によるアミノ酸またはDNA配列の決定、および結果と異なる対立遺伝子についての既知のアミノ酸またはDNA配列との比較に関する。
【0064】
APOE遺伝型を決定する好ましい方法は、PCRに基づく方法−一部のAPOE遺伝子の一次PCR、次いで、対立遺伝子を識別するDNA置換を認識する制限酵素による消化およびゲル電気泳動を用いることまたは最も一般には、TaqManリアルタイムPCRを用いることに関する。特に、APOE遺伝子型決定は、確立されたTaqmanプロトコル、対立遺伝子特異的蛍光プローブとの5’−ヌクレアーゼアッセイに依存する蛍光検出システムを用いて実施されうる。そのプローブが鋳型に結合する場合、これらのプローブのみ蛍光を発する。該方法は、Macleodら.Eur J Clinical Investigation 2001 31(7):570−3に記載される。APOE遺伝子型を決定する市販用製品は、LabCorp社およびAthena Diagnostics社から入手可能である。
【0065】
患者における認識機能の改善は、1種または複数の確立された方法、例えば、ADAS−cogおよび/またはCIBIC+および/またはDAD法によって決定されうる(その各々の詳細は、本明細書の他の部分に記載され、関連文献は、出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)。好ましい方法は、ADAS−cogである。適当には、ADAS−cogの改善は、24週の治療期間かけて少なくとも1点、特に、少なくとも2点である。
【0066】
別の可能な方法は、Buschke Selective Reminding Testである(Grober Eら.Neurology 1988 38:900−903)。
【0067】
「認識機能の改善」によって、治療を受けていない個体に比べて時間の経過とともに薬物治療による認識治療の改善が表される。認知症(例えば、AD)患者は、典型的には、時間とともに認識機能が低下するので、「認識機能の改善」は、低下の遅延または阻止ならびに完全な改善を包含する。実施例2に示されるように、認識機能の完全な改善は、本発明を実施する好ましい方法に由来しているように思われる。
【0068】
本明細書で用いられるPPARγアゴニストなる語は、PPARγ受容体のアゴニストまたは部分的アゴニストとして作用する化合物または組成物を含むことを意味する。本発明に用いる適当なPPARγアゴニストには、ドコサヘキサエン酸、プロスタグランジンJ、プロスタグランジンJ類似体(例えば、Δ12−プロスタグランジンJおよび15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ)、ファルグリタザル(GI262570)、オキサゾリジンジオン類およびチアゾリジンジオン類が含まれる。チアゾリジンジオン類の例として、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン(BRL49653)、ダルグリタゾンおよびエングリタゾンが挙げられる。
【0069】
好ましくは、PPARγアゴニストはチアゾリジンジオンである。より好ましくは、チアゾリジンジオンはロシグリタゾンまたはピオグリタゾン、特にロシグリタゾンである。ファルグリタザルはまた、特に興味深い。
【0070】
他のPPAR受容体(例えば、PPAR−αおよびPPAR−δ)に対し選択的であるPPARγアゴニストは、本発明に包含される(「選択的」によって、アゴニスト活性が、例えば、少なくとも10倍高い、例えば、PPAR−αまたはPPAR−δのいずれかに対するよりPPAR−γに対し少なくとも50倍高いであろうことが分かる)。相対的アゴニスト活性を評価する適当な基準は、下記のトランスフェクション・アッセイにて得られるEC50値である。例えば、選択的PPARγアゴニストは、PPAR−αまたはPPAR−δのいずれかのアッセイで得られるEC50値より少なくとも10倍低いPPARγアッセイのEC50値を有しうる。1種または複数の他のPPAR受容体、例えば、PPAR−αおよび/またはPPAR−δに対する著しいアゴニスト活性をまた有するPPARγアゴニストがまた、本発明に包含される。
【0071】
PPAR受容体アゴニスト活性は、一般的なスクリーニング方法で測定されうる。適当なスクリーンは、例えば、下記のとおりである:
【0072】
結合アッセイ:
化合物を、シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いてhPPARγ、hPPARαまたはhPPARδへの結合能について試験してもよい。PPARリガンド結合ドメイン(LBD)を、標識された融合タンパク質として大腸菌で発現し、精製してもよい。次いで、LBDを、ビオチンで標識化し、ストレプトアビジン修飾シンチレーション近接ビーズ上で固定してもよい。次いで、ビーズを、一定量の適当な放射性リガンド(5−{4−[2−(メチル−ピリジン−2−イル−アミノ)−エトキシ]−ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(J.Med.Chem 1994,37(23),3977)、PPARγについて)でインキュベートし、GW2433で標識化した(Brown,P.Jら.Chem.Biol.1997 4:909−918を参照)、PPARαおよびPPARδに対する該リガンドの構造および合成ならびに試験化合物の可変濃度について、平衡後ビーズに結合した放射能を、シンチレーションカウンターで測定してもよい。50μMの対応する非標識化リガンドを含有する対照ウェルで測定される、非特異的結合の量は、各データ点から引き算される。試験される各化合物について、リガンド濃度対放射性リガンド結合のCPMのプロットを構成してもよく、見掛けKi値を、単一の競合的結合を予測するデータの非線形最小二乗フィットから予測する。該アッセイの詳細は、他で報告されている(Blanchard,S.G.ら.Anal.Biochem.1998 257:112−119を参照)。
【0073】
トランスフェクション・アッセイ:
PPARサブタイプの活性能についてのCV−1細胞における過渡トランスフェクション・アッセイ(トランス活性化アッセイ)にて機能的能力で化合物をスクリーニングしてもよい。予め構築されたキメラ受容体系を、結果の解釈を複雑にすることから同一標的遺伝子上の受容体サブタイプの相対的転写活性の比較をし、内因性受容体活性を阻害するのに利用してもよい。例えば、Lehmann,J.Mら J.Biol.Chem.,1995 270:12953−6を参照。マウスおよびヒトPPARα、PPARγおよびPPARδのリガンド結合ドメインを各々、酵母転写因子GAL4DNA結合ドメインに融合する。CV−1細胞を、一時的に、分泌された胎盤アルカリホスファターゼ(SPAP)およびβ−ガラクトシダーゼの発現を促進する5コピーのGAL4DNA結合部位を含有するレポーター構築物と一緒のPPARキメラの発現ベクターでトランスフェクトする。16時間後、培地を、10%脱脂されたウシ胎仔血清および適当な濃度の試験化合物で補われたDME培地に交換する。さらに24時間後、細胞抽出物を調製し、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイする。アルカリホスファターゼ活性を、内部標準としてβ−ガラクトシダーゼ活性を用いてトランスフェクション効率を修正する(例えば、Kliewer,S.A.ら.Cell 1995 83:813−819を参照)。ロシグリタゾン(BRL49653)を、hPPARγアッセイの陽性対照として用いてもよい。hPPARαアッセイの陽性対照は、2−4−[2−(3−[4−フルオロフェニル]−1−ヘプチルウレイド)エチル]−フェノキシ−(2−メチル)プロピオン酸(WO97/36579)であってもよい。PPARδアッセイの陽性対照は、2−{2−メチル−4−[({4−メチル−2−{トリフルオロメチル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−イル}メチル)スルファニル]フェノキシ}酢酸(WO 01/00603)であってもよい。化合物が適当な陽性対照に比べて50%活性化を達成する濃度としてEC50を測定してもよい。
【0074】
「アゴニスト」は、典型的には、上記の結合アッセイの関連PPARに対して少なくとも6.0、好ましくは、少なくとも7.0のpKiを有するであろうし、10−5M以下の濃度で上記のトランスフェクション・アッセイにおいて示された適当な陽性対照に比べて関連PPARの少なくとも50%活性化を達成するであろう。
【0075】
所望により、1種以上のPPARγアゴニストを本発明で利用してもよい(例えば、2種のPPARγアゴニストの組合せ)。本発明の好ましい実施態様において、単一のPPARγアゴニストを利用する。
【0076】
本発明に記載のPPARγアゴニストは、通常、標準的な薬務にしたがって医薬組成物に処方されるであろう。
【0077】
医薬が医薬上許容される塩または溶媒和物の形態で存在しうることは当業者に明らかであろう。
【0078】
適当な溶媒和物には、水和物が含まれる。
【0079】
ロシグリタゾンおよびドネペジルの適当な医薬上許容される塩には、有機および無機酸または塩基と形成されるものが含まれる。
【0080】
医薬上許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフェニル酢酸、スルファミン酸、スルファニル酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アリールスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸またはナフタレンジスルホン酸)、サリチル酸、グルタル酸、グルコン酸、トリカルバリル酸、桂皮酸、置換桂皮酸(例えば、フェニル、メチル、メトキシまたはハロ置換桂皮酸、4−メチルおよび4−メトキシ桂皮酸を含む)、アスコルビン酸、オレイン酸、ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸(例えば、1−または3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、ナフタレンアクリル酸(例えば、ナフタレン−2−アクリル酸)、安息香酸、4−メトキシ安息香酸、2−または4−ヒドロキシ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−フェニル安息香酸、ベンゼンアクリル酸(例えば、1,4−ベンゼンジアクリル酸)およびイセチオン酸から形成されたものが含まれる。
【0081】
医薬上許容される塩付加塩には、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩ならびにジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩が含まれる。
【0082】
PPARγアゴニストがロシグリタゾンの場合、ロシグリタゾンはマレイン酸ロシグリタゾンの形態であることが好ましい。PPARγアゴニストがピオグリタゾンである場合、ピオグリタゾンは塩酸ピオグリタゾンであることが好ましい。PPARγがファルグリタザルである場合、典型的な塩形態は、ナトリウム塩である。
【0083】
最も適当な経路は、例えば、レシピエントの状態に依存しうるけれども、適当な処方には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内および関節内を含む)、吸入(多種の定量加圧エアロゾル、噴霧器または吸入器によって生じうる微粒子ダストまたはミスト)、経皮(例えば、皮膚用パッチを介して)、直腸および局所(皮膚、口腔、舌下および眼内を含む)投与用のものが含まれる。処方は、好都合なことに、単位剤形で存在し、薬学分野にて既知な方法のいずれかで調製されうる。全ての方法は、活性成分を1種または複数の副成分を構成する担体に関連させる工程を含む。一般には、処方は、液体担体または微粉化固体担体あるいは両方と活性成分を関連させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の処方に成形することにより均一かつ密接に調製される。
【0084】
経口投与に適当な本発明に用いる処方は、所定の量の活性成分を各々含有するカプセル剤、カプセル(cachets)または錠剤などの不連続単位として;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体の液剤または懸濁剤として;あるいは、水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤として存在しうる。活性成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして存在しうる。
【0085】
錠剤は、1種または複数の副成分と所望により、圧縮または成形することにより製造されうる。圧縮錠は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性または分散剤と所望により混合された、粉末または顆粒などの自由流動性形態の活性成分を適当な機械で圧縮することにより調製されうる。成形錠は、不活性液体希釈剤で浸した粉末化化合物の混合物を適当な機械で成型することにより製造されうる。錠剤は、所望により、コーティングされてもよくまたは分割されてもよく、その中に叙放もしくは制御放出または持続放出の活性成分を提供するように処方されてもよい。
【0086】
非経口投与用処方には、処方を対象であるレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および溶質を含有しうる水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含みうる水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。処方は、単回量または多回量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで存在していてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば、セイラインまたは注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存してもよい。要時注射溶液および懸濁液は、そのように前述された滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製されうる。
【0087】
吸入による肺への局所デリバリー用ドライパウダー組成物は、インヘラーまたは吸入器で用いるために、例えば、カプセルおよび例えば、ゼラチンの薬包、または例えば、層状アルミホイルのブリスターに含まれうる。粉末混合物処方は、一般に、本発明の化合物および単糖類、二糖類または多糖類(例えば、ラクトースまたはデンプン)などの適当な粉末基剤(担体/希釈剤/賦形剤物質)の吸入用粉末混合物を含有する。ラクトースの使用が好ましい。
【0088】
吸入による肺への局所デリバリー用スプレー組成物は、例えば、適当な液化高圧ガスの使用とともに、水性溶液または懸濁液としてあるいは定量インヘラーなどの加圧パックからデリバリーされるエアロゾルとして処方されうる。吸入に適当なエアロゾル組成物は、懸濁液または溶液のどちらかであることができ、一般に、別の治療上活性な成分および適当な高圧ガス、例えば、フッ化炭素または水素含有クロロフルオロカーボンまたはその混合物、特に、ヒドロフルオロアルカン、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラ−フルオロエタン、特に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパンまたはその混合物を所望により組み合わせて式(I)で示される化合物を含有する。二酸化炭素または他の適当な気体はまた、高圧ガスとして用いられうる。エアロゾル組成物は、遊離な賦形剤であってもよくまたは界面活性剤、例えば、オレイン酸またはレクチンおよび共溶媒、例えば、エタノールなどの当該分野にて既知な付加的な処方賦形剤を所望により含有していてもよい。加圧処方は、一般には、バルブ(例えば、計量バルブ)で閉められた容器(例えば、アルミニウム容器)で保持され、吸口が備わっている作動装置に適合されるであろう。
【0089】
吸入による投与用薬剤は、望ましくは、制御粒子を有する。気管支系に吸入のための最適粒径は、通常、1−10um、好ましくは、2−5umである。末梢気道を達するように吸入される場合、20umを超える大きさを有する粒子は、一般には、大きすぎる。これらの粒径を達成するために、製造されるような活性成分の粒子は、一般法によって、例えば、微細化(micronisation)によって縮小された大きさであってもよい。所望のフラクションは、空気分級またはふるいによって分離されていてもよい。好ましくは、粒子は結晶であろう。ラクトースなどの希釈剤/賦形剤が用いられる場合、一般に、賦形剤の粒径は、本発明中の吸入された薬剤よりかなり大きいであろう。賦形剤がラクトースである場合、典型的には、最大85%のラクトース粒子が60−90umのMMDを有し、少なくとも15%が15um未満のMMDを有するであろう、粉砕ラクトースとして存在するであろう。
【0090】
鼻腔内スプレーは、増粘剤、緩衝塩または酸もしくはpHを調節するアルカリ、等張調節剤または抗酸化剤などの薬剤を添加して水性または非水性ビヒクルで処方されうる。
【0091】
噴霧化による吸入用液剤は、酸もしくはアルカリ、緩衝塩、等張調節剤または抗菌剤などの薬剤を添加して水性ビヒクルで処方されうる。それらは、濾過またはオートクレーブで加熱により滅菌されうるか、または非滅菌製剤として損際しうる。
【0092】
直腸投与用処方は、ココアバターまたはポリエチレン・グリコールなどの通常の担体を有する坐薬として存在してもよい。
【0093】
口、例えば、口腔または舌下の局所投与用処方には、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどのフレーバー主成分の活性成分を含むドロップ、ならびにグリセリンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの主成分の活性成分を含むトローチが含まれる。
【0094】
特に上記の成分に加えて、本発明の処方が、問題になっている処方の種類を考慮して当該分野にて一般的な他の薬剤を含まれうる、例えば、経口投与に適当なものには、香料添加物が含まれうることは分かるであろう。
【0095】
PPARγアゴニストがロシグリタゾンまたはピオグリタゾンである場合、化合物は、好ましくは、経口投与用、特に錠剤として処方される。
【0096】
MCI、ADまたは他の認知症に付随する認知に関する問題を考慮すると、PPARγアゴニストが持続放出用に処方され、その結果、投与を要する頻度が減少させることが好ましい(例えば、1日1回用量)。
【0097】
PPARγアゴニストがロシグリタゾンである場合、例えば、WO05/013935に開示される種類の持続放出処方は、特に適当である(これらの処方はまた、他のPPARγアゴニストに適応されうるけれども)。その中に記載される錠剤は、2種の異なる活性組成物を含有するコア、即効型処方および放出調節処方からなる。さらに、錠剤は、2個の貫通孔、1個は即効型デポーに対するものおよび1個は放出調節デポーに対するものを介してヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のコーティングで固められる。その配置は、ロシグリタゾンの非常に制御された溶解を確保する。2mg、4mgまたは8mgの単一錠剤(例えば、8mg)は、例えば、1日1回投与されてもよい。
【0098】
したがって、本発明の態様として、前述の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキットが提供され、ここで、PPARγアゴニストは、即効型処方のデポーおよび放出調節処方のデポーを含有するコアを含む持続放出錠として存在する。特に、方法、PPARγアゴニスト、使用またはキットが提供され、ここで、前記錠剤は、貫通孔;少なくとも1個(例えば、1個)の即効型デポーへの貫通および少なくとも1個(例えば、1個)の放出調節デポーへの貫通を介して例えば、HPMCのコーティングで固められる。
【0099】
この種類のロシグリタゾン8mg持続放出錠は、典型的には、即効型デポー中に3mgのロシグリタゾンおよび放出調節デポー中に5mgのロシグリタゾンを含有していてもよい。この種類のロシグリタゾン4mg持続放出錠は、典型的には、即効型デポー中に1.5mgのロシグリタゾンおよび放出調節デポー中に2.5mgのロシグリタゾンを含有していてもよい。この種類のロシグリタゾン2mg持続放出錠は、典型的には、即効型デポー中に0.75mgのロシグリタゾンおよび放出調節デポー中に1.25mgのロシグリタゾンを含有していてもよい。
【0100】
PPARγアゴニストの適当な日用量は、当業者に明らかであろうし、選択されている特定のPPARγアゴニストによるであろう。例えば、ロシグリタゾンの場合において、日用量は、典型的には、0.01mg〜12mgの範囲であろう(例えば、1日2mg、4mgまたは8mg)。8mg以上、例えば、8mgの日用量は、特に適当でありうる。
【0101】
APOE4ヘテロ接合体に関する本発明の出願の関連において、より高用量のロシグリタゾンの投与(例えば、4mg以上、例えば、4mgまたは8mg)は、有意であるように思われるであろう。
【0102】
本発明で用いるPPARγアゴニストは、アルツハイマー病の治療または予防に用いる1種または複数の付加的な医薬と組み合わせて投与されてもよい。アルツハイマー病の治療または予防の付加的な医薬には、コリンエステラーゼ阻害薬(例えば、タクリン、ガランタミン、リバスティングアミンまたはドネペジル)およびNMDA阻害薬(例えば、メマンチン)が含まれる。本発明に用いるPPARγアゴニストは、他の認知症の治療または予防に用いる1種または複数の付加的な医薬を組み合わせて投与されうる。他の付加的な医薬には、ナプロキセン、イブプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトン、ピロキシカム、セレコキシブおよびアスピリンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が含まれる。本発明のPPARγアゴニストと組み合わせてもよい他の医薬には、スタンチン系(例えば、シンバスタチン(Zocor)、アトルバスタチン(Lipitor)、ロスバスタチン(Crestor)、フルバスタチン(Lescol))HMG−CoA還元酵素阻害薬が含まれる。
【0103】
ドネペジル(例えば、塩酸ドネペジル)と本発明に用いるPPARγアゴニスト(特に、ロシグリタゾン、例えば、マレイン酸ロシグリタゾン)の組合せは、特に興味深くてもよい。
【0104】
同時投与の併用療法に利用される個々の医薬によれば、それらは、(安定な処方を調製してもよい場合および所望の投与計画が矛盾しない場合)組み合わせて処方されるかまたは医薬は、(同一または別経路を介する同時または個別投与について)個別に処方される。
【0105】
本発明の方法および使用が、軽度認識障害、アルツハイマー病または他の認知症に罹患している対象の予防ならびに(より適当には)治療に用いられうることが分かるであろう。
【0106】
医薬の投与に関する本明細書に用いられる同時投与なる語は、個々の医薬が同時に対象中存在するような医薬の投与をいう。(同一または別経路を介する)医薬の同時投与に加えて、同時投与には、それぞれ異なった時間の(同一または別経路を介する)医薬の投与が含まれていてもよい。
【実施例】
【0107】
実施例1−マレイン酸ロシグリタゾン持続放出錠の調製
2mg、4mgまたは8mgのPPARγアゴニストのロシグリタゾン(マレイン酸塩の形態で)を含有する持続放出性錠剤は、WO05/013935に記載の方法(本明細書の実施例3に対応する)にしたがって調製された。
【0108】
(a)2mgロシグリタゾン持続放出錠
コアは、200mgの7mmの通常の凹面二層錠(50mgの即効型層および150mgの放出調節層)を形成するために圧縮によって以下の組成物から形成された。
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
錠剤コアを、217.3mgの総重量にpH5.5で可溶なHPMC保護被膜およびポリメタクリン酸樹脂でコーティングした。
【0111】
直径3.0mmの開口部は、コアの表面を露出させるためにコーティングされたコアの各二層の第1表面のコーティングに穴を開けられた。
【0112】
最終錠剤は、2mgロシグリタゾン−即効型層中に0.75mgロシグリタゾンおよび放出調節層中に1.25mgロシグリタゾンを含有した。
【0113】
(b)4mgロシグリタゾン持続放出錠
コアを、200mgの7mmの正常の凹面二層錠(50mgの即効型層および150mgの放出調節層)を形成するために圧縮によって以下の組成物から形成した。
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
錠剤コアを、217.3mgの総重量にpH5.5で可溶なHPMC保護被膜およびポリメタクリン酸樹脂でコーティングした。
【0116】
直径3.0mmの開口部は、コアの表面を露出させるためにコーティングされたコアの各二層の第1表面のコーティングに穴を開けられた。
【0117】
最終錠剤は、4mgロシグリタゾン−即効型層中に1.5mgロシグリタゾンおよび放出調節層中に2.5mgロシグリタゾンを含有した。
【0118】
(c)8mgマレイン酸ロシグリタゾン持続放出錠
コアは、200mgの7mmの通常の凹面二層錠(50mgの即効型層および150mgの放出調節層)を形成するために圧縮によって以下の組成物から形成された。
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
錠剤コアを、217.3mgの総重量にpH5.5で可溶なHPMC保護被膜およびポリメタクリン酸樹脂でコーティングした。
【0121】
直径3.0mmの開口部は、コアの表面を露出させるためにコーティングされたコアの各二層の第1表面のコーティングに穴を開けられた。
【0122】
最終錠剤は、8mgロシグリタゾン−即効型層中に3mgロシグリタゾンおよび放出調節層中に5mgロシグリタゾンを含有した。
【0123】
実施例2−アルツハイマー病患者のADAS−cogおよびCIBIC+におけるPPARγアゴニスト(マレイン酸ロシグリタゾン)治療の効果
【0124】
方法
全包括解析(ITT)個体群の分析は、4つの治療計画の一つに無作為に割り当てられた511の対象で行われた。遺伝子型決定分析は、ITT個体群の63%(323/511)で行われた。
【0125】
軽度から中程度ADと診断されていた年齢50−85歳の白人男性および女性を含んだ患者個体群は、研究を逆に害しうる薬物療法を受けていなかったか(例えば、PPARγアゴニストまたは一般的AD薬剤)あるいは他の潜在的に不利益な疾患を有していた(例えば、糖尿病または主要な精神疾患)。
【0126】
患者は、プラセボまたは1日1回提供される持続放出型ロシグリタゾンの3種の投与濃度(実施例1に記載の2mg、4mgおよび8mg錠)の一つのいずれかを投与された。患者は、認識アルツハイマー病評価スケール(ADAS−cog;さらなる情報については、Rosen WGら.Am.J.Psychiatry.1984 141:1356−1364を参照)およびClinician’s Interview−Based Impression of Change with caregiver information(CIBIC+;さらなる情報については、Knopman DSら.Neurology 1994 44:2315−2321を参照)を用いて観察され;ならびに、二次評価は、研究の開始日(基準日)および研究期間中(治療の8,16および24週後)に認知症の障害評価(DAD、さらなる情報については、Gelinas Lら.Am J Occup Ther 1999 53:471−81を参照)および神経精神症状評価試験(NPI、さらなる情報については、Cummingsら(1994)Neurology 44,2308−2314を参照)を用いて行われた。
【0127】
APOE遺伝子型は、下記のMcLeodら2001のTaqMan PCRに基づく方法を用いて決定された。
【0128】
全統計学は、時系列データでの欠測に最直前のデータを補完すること(last observed assessment carried forward)(LOCF)測定を反映する。
【0129】
表8および9は、治療計画による遺伝型および全ITT個体群の年齢および性別の詳細を要約する。
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
結果
注目すべきは、ADAS−cogの場合において、より高いスコアが低下した認識機能を示すことである。したがって、基準日から研究期間中の負の変化は改善を示し、基準日からの正の変化は低下を示す。同様に、負の治療差異は、治療がプラセボに比べて改善をもたらしたことを示し、正の治療差異は、治療がプラセボに比べて低下をもたらしたことを示す。
【0132】
より高いCIBIC+スコアは、臨床的改善を意味する4を超えないスコアおよび臨床的低下を意味する4を超えるスコアを有するより高い濃度の低下を示す。したがって、負のCIBIC+治療差異は、治療がプラセボに比べて改善をもたらしたことを示し、正の治療差異は、治療がプラセボに比べて低下をもたらしたことを示す。
【0133】
(i)ITT個体群
表10は、基準日からのモデル修正ADAS−cog変化およびITT個体群の各4つの治療計画の24週の試験後のCIBIC+結果を説明する。図1は、研究期間中のITT個体群の基準日からのモデル修正ADAS−cog変化を示す(分析には、基準スコア、国、ミニ精神状態試験スクリーニングおよび基準肥満度指数の効果の調節が含まれる)。
【0134】
表10および図1のADAS−cogデータは、PPARγアゴニストのロシグリタゾンを用いる治療の結果として臨床的改善(すなわち、基準日からの負の変化)の傾向をサポートする。どの時点でも、全体として分析される個体群の最終的改善がある。しかしながら、AD患者におけるロシグリタゾン治療の効果の統計分析は、この傾向が統計上有意でないことを示す。CIBIC+結果は、24週で治療群とプラセボ間の区別できる相違をもたらさなかった。
【表10】

【0135】
(ii)遺伝子型個体群
(2種の付加的な対象の導入に影響を及ぼす)表11および表11aは、遺伝子型個体群におけるAPOE4対立遺伝子決定の結果を示す。治療計画は、APOE4対立遺伝子決定前に割り当てられるにもかかわらず、あまり一般的ではない表現型の一部はいつくかの群を示すけれども(例えば、APOE4ホモ接合体の大部分は、8mgロシグリタゾン治療群である)、一般に、統計的平均化の結果として様々な群間では表現型の優れた分布がある。
【0136】
【表11】

【0137】
【表12】

【0138】
APOE対立遺伝子状態および治療計画による24週の研究後のADAS−cogの変化の分析は、以下の表12に示される。
【0139】
APOE保有状態と基準日から24週のADAS−cog全スコア変化の間の相互作用の予測的に定義された試験(prospectively defined test)は、有意であった(P=0.0194)。改善がプラセボに比べて最も高い8mgのロシグリタゾン用量での治療によるものということが証明されている(P=0.027)、PPARγアゴニストのロシグリタゾンでの治療の結果として認識機能の改善の一般的傾向を、24週後のAPOE4−(APOE4対立遺伝子を有しないもの)患者が示したことをその後の探索試験は明らかにした。
【0140】
APOE4ヘテロ接合体(単一APOE4対立遺伝子を有するもの)は、はっきりとした傾向を示さない。2mgロシグリタゾンを投与している群では低下しているけれども、4mgおよび8mg両方の用法はほとんど変化を示さず、24週の治療後個々に有意である点がない。
【0141】
APOE4ホモ接合体(2種のAPOE4対立遺伝子を有するもの)は、ロシグリタゾン治療の結果としてADAS−cogスコアの比較的大きな正の変化を示す。試料番号は小さいけれども、該低下が、24週の治療後の全3つの投与濃度の治療による(未調整P<0.05)とするいくつかの証拠があった。しかしながら、治療の結果として臨床的低下の範囲は、投与濃度の増加に伴って減少する。治療群の臨床的低下がロシグリタゾンによるかまたはアルツハイマー病の自然的進行によるかどうか明らかではない。
【表13】

【0142】
図2は、治療計画およびAPOE対立遺伝子状態(一緒に示されている1または2種のAPOE4対立遺伝子の担体)によって分析される個体群における基準日からのモデル修正ADAS−cog変化のプロットを示す。図3は、APOE4ヘテロ接合体(「Het E4+」によって示される)上のデータは、APOE4ホモ接合体(「Homo E4+」によって示される)上のデータから分離されている。
【0143】
ロシグリタゾン治療の結果として認識改善の明確な傾向は、特に、APOE4−個体において明らかである。どの時点でも(8、16および24週)、プラセボ群は、認識機能の継続的低下を示し、一方、2mg、4mgまたは8mgのPPARγアゴニストで治療される群は、著しい改善を示す。
【0144】
APOE4+個体に関する状況は、あまり明確ではない。治療の8週後、プラセボを投与する群は、認識機能のわずかな低下を示すが、ロシグリタゾン(2mg、4mgまたは8mg)を投与する全ての群は、わずかな改善を示す。治療の16週後、4mgおよび8mgでの治療は同一またはより良い臨床状態を示すけれども、プラセボを投与する群は、認識機能の継続的低下を示す。2mgロシグリタゾンでの治療は、プラセボより大きな低下を示す。最後に、治療の24週後、プラセボを投与するAPOE4保因者の大きく滑驚くべき改善が観察される。この明らかな改善は、ADAS−cogスコアの予想外かつ大きな改善を有する少数の対象に影響しうる。全3種のロシグリタゾン治療群は、臨床的低下が終わり、この時点でプラセボ群の著しい改善の結果として、ロシグリタゾン治療は、プラセボと比較して臨床的低下を示すように思われる。いくつかのAPOE4+群にて観察される臨床的低下はADの自然の臨床経過による可能性がある。
【0145】
図3は、APOE4ホモ接合体の結果から分離されたAPOE4ヘテロ接合体の結果を示す。APOE4ホモ接合体の数は少ないけれども、全APOE4ホモ接合体は、臨床的低下を経験したロシグリタゾンで治療するのに対し、高用量のロシグリタゾン(4、8mg)を投与したAPOE4ヘテロ接合体は、研究期間ほぼ基準のままであることが見られうる。
【0146】
認知症の障害評価(DAD)試験(Gelinas Lら.Am J Occup Ther 1999 53:471−81)を用いて同様の結果を示した。24週のAPOE4保因状態とDADスコア間相互作用の予測的に定義された試験は有意であった(P=0.006)。次の試験は、定性的に、ADAS−Cogと同様の結果のパターンを証明した:すなわち、APOE4−対象は、DAD上の改善を証明し、一方、APOE4+対象は、改善を証明しなかった。
【0147】
神経精神症状評価(NPI)試験を用いて同様の結果が示された(Cummingsら(1994)Neurology 44,2308−2314)。24週のAPOE4保因状態とNPIスコア間相互作用の予測的に定義された試験は有意であった(P=0.086)。次の試験は、定性的に、ADAS−Cogと同様の結果のパターンを証明した:すなわち、APOE4−対象は、NPI上の改善を証明し、一方、APOE4+対象は、改善を証明しなかった。
【0148】
(付加的な対象を考慮する最新の分析である)表13および表13aは、APOE4対立遺伝子状態および治療計画によって分離される、24週後のCIBIC+結果を示す。治療とAPOE4コピー間相互作用の証拠は存在しなかったので、亜群間の下記の差異は、差動効果よりむしろ確率的誤差に起因しやすい。
【0149】
APOE4−(APOE4対立遺伝子を有しないもの)患者全員が、2mgのロシグリタゾンで治療される群で観察される最も大きな改善とともに、24週かけてわずかな改善を示す(未調整P=0.052)。
【0150】
APOE4ヘテロ接合体(単一APOE4対立遺伝子を有するもの)は、2mgのロシグリタゾンで治療される群の低下を示す(P=0.056)。(比較は、予備解析の有意性に近づかないけれども)4mgのロシグリタゾンを投与する群においてより小さな低下を示し、8mgのロシグリタゾンを投与する群においてわずかな改善が見られる。
【0151】
改善の範囲は治療用量で減少したけれども、APOE4ホモ接合体(APOE4対立遺伝子を有するもの)全て、プラセボに比べて24週間治療上CIBIC+のわずかな改善を示す。
【表14】

【0152】
【表15】

【0153】
考察
ロシグリタゾンに対するPPARγを用いるAD患者の治療が、全体としてITT個体群の全面的改善への非統計的に重大な動向をもたらすことを実施例2の結果は示す。
【0154】
試験された個体群において、8mgロシグリタゾン上のAPOE4対立遺伝子を有しない患者における(ADAS−cogで測定されるような)認識障害の根拠が存在した。8mgロシグリタゾン上のAPOE4対立遺伝子を有しない患者の24週のプラセボからの平均的変化は、−2.86、P=0.027であった。
【0155】
試験される個体群において、APOE4対立遺伝子を保有する患者における(ADAS−cogによって測定されるような)治療上の認識改善の根拠は存在しなかった。しかしながら、2コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する患者と1コピーを保有する患者の分離は、1コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する患者における著しい傾向(例えば、認識機能の起こり得る安定化)を伴わない(しかしながら、ロシグリタゾンに対する反応よりむしろ疾患の自然的進行に起因しうる)2コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する患者における(ADAS−cogによって測定されるような)最も大きな認識衰退を示唆する。
【0156】
特許および特許出願を含む、本出願において言及される全ての刊行物は、できる限り出典明示により本明細書の一部とする。
明細書および特許請求の範囲において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「comprise」なる語、ならびに「comprises」および「comprising」などのバリエーションは、規定された整数、工程、整数の群または工程の群を含むが、他の整数、工程、整数の群または工程の群を除外しないという意味を含むと理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】実施例2の包括解析個体群における基準日からのモデル修正ADAS−cog変化を示す。
【図2】治療計画およびAPOE4対立遺伝子状態によって実施例2の遺伝子型個体群における基準日からのモデル修正ADAS−cog変化を示す。
【図3】APOE4ヘテロ接合体(「Het」)およびAPOE4ホモ接合体(「Homo」)個体群におけるモデル修正ADAS−cog変化のプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善する方法であって、
(i)対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないことを決定するために対象をスクリーニングし;次いで、
(ii)安全かつ有効な量のPPAR−γアゴニストを前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
スクリーニング工程(i)が、対象がAPOE−であることを決定することに関する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
スクリーニング工程(i)が、対象が、単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有することを決定することに関する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PPARγアゴニストの投与に対する対象の反応を予測する補助としてMCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象をスクリーニングする方法であって、対象が0または1コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するかどうかを決定するスクリーニングを含む方法。
【請求項5】
スクリーニングが、対象がAPOE4−であるかどうかを決定するスクリーニングに関する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
スクリーニングが、対象が、単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するかどうかを決定するスクリーニングに関する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型にならないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善する方法であって、安全かつ有効な量のPPARγアゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項8】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型にならないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するのに用いるためのPPARγアゴニスト。
【請求項9】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型にならないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能の改善におけるPPARγアゴニストの使用。
【請求項10】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型にならないように予め決定されている、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善する医薬の製造におけるPPARγアゴニストの使用。
【請求項11】
対象が、APOE4−であるように予め決定されている、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニストまたは使用。
【請求項12】
対象が、単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するように予め決定されている、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニストまたは使用。
【請求項13】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能の改善方法であって、安全かつ有効な量のPPARγアゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項14】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するのに用いるPPARγアゴニスト。
【請求項15】
対象が、APOE4ホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能の改善におけるPPARγアゴニストの使用。
【請求項16】
対象が、APOE4ホモ接合型ではない、MCI、アルツハイマー棒または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象の認識機能を改善するための医薬の製造におけるPPARγアゴニストの使用。
【請求項17】
対象がAPOE4−である、請求項13〜16のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニストまたは使用。
【請求項18】
対象が単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する、請求項13〜16のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニストまたは使用。
【請求項19】
(i)PPARγアゴニスト(ii)APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない対象にPPARγアゴニストの投与を指示する使用説明書を含むキット。
【請求項20】
使用説明書が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないMCI、アルツハイマー病または他の認知症に罹患しているかまたは罹患しやすい対象にPPARγアゴニストの投与を指示する請求項19記載のキット。
【請求項21】
対象が、APOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないように予め決定されている、請求項19または20記載のキット。
【請求項22】
対象がAPOE4−である請求項19または20記載のキット。
【請求項23】
対象が単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有する請求項19または20記載のキット。
【請求項24】
対象がAPOE4−であるように予め決定されている、請求項21記載のキット。
【請求項25】
対象が単一コピーのAPOE4対立遺伝子を保有するように予め決定されている、請求項21記載のキット。
【請求項26】
対象がMCIに罹患している、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項27】
対象がアルツハイマー病に罹患している、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項28】
対象がII型糖尿病に罹患しない、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項29】
対象がII型糖尿病に罹患しない、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項30】
PPARγアゴニストがファルグリタザルである、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項31】
PPARγアゴニストがチアゾリジンジオンである、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項32】
チアゾリジンジオンがピオグリタゾンである、請求項31記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項33】
チアゾリジンジオンがロシグリタゾンである、請求項31記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項34】
ロシグリタゾンがマレイン酸ロシグリタゾンの形態である、請求項33記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項35】
ロシグリタゾンが、1日0.01mg〜12mgの間の投与濃度で提供される、請求項33または34のいずれか記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項36】
ロシグリタゾンが、1日2mg、4mgまたは8mgの投与濃度で提供される、請求項35記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項37】
ロシグリタゾンが、1日8mg以上の投与濃度で提供される、請求項35記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項38】
PPARγアゴニストが、持続放出処方として存在する、請求項1〜37のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項39】
PPARγアゴニストが、即効型処方のデポーおよび放出調節処方のデポーを含有するコアを含む持続放出錠として存在する、請求項1〜37のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項40】
錠剤が、貫通孔を貫通するコーティング;即効型デポーに少なくとも1個貫通することおよび放出調節デポーに少なくとも1個貫通することによって囲まれる、請求項39記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項41】
PPARγアゴニストが、1日1回用量として投与に適当な形態で存在する、請求項1〜40のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項42】
PPARγアゴニストが、アルツハイマー病または他の認知症の治療または予防のための付加的な医薬を組み合わせて投与される、請求項1〜41のいずれか一項記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項43】
付加的な医薬がコリンエステラーゼ阻害薬である、請求項42記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項44】
コリンエステラーゼ阻害薬が、タクリン、ガランタミン、リバスティグミンまたはドネペジルである、請求項43記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項45】
付加的な医薬がNMDA受容体アンタゴニストである、請求項42記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項46】
NMDA受容体アンタゴニストがメマンチンである、請求項45記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項47】
付加的な医薬が非ステロイド性抗炎症薬である、請求項42記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項48】
非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、イブプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトン、ピロキシカム、セレコキシブまてゃあアスピリンである、請求項47記載の方法、PPARγアゴニスト、使用またはキット。
【請求項49】
対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないことを決定するスクリーニングが、PCRに基づく方法を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではない、MCIまたはアルツハイマー病に罹患している対象の認識機能を改善する方法であって、
(i)対象がAPOE4対立遺伝子とホモ接合型ではないことを決定するために対象をスクリーニングし、;次いで
(ii)安全かつ有効な量のPPARγアゴニストを前記対象に投与する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−508960(P2009−508960A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532341(P2008−532341)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036603
【国際公開番号】WO2007/038115
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(502078239)エスビー・ファルムコ・プエルト・リコ・インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】SB Pharmco Puerto Rico Inc
【Fターム(参考)】