説明

AS装置における分割送信方法、分割送信装置

【課題】AS装置が故障する直前のCSCFの処理に関する状態に基づいて通信再開の優先順位を決定する分割送信装置を提供する。
【解決手段】複数の通信ノードと接続するAS装置101において、このAS装置により通信の再開時、CSCFに対して再開信号を送信する分割送信装置200を、CSCFに接続されている携帯電話機によって実行されている処理の内容を示す情報である接続情報を取得する情報収集部205、接続情報蓄積部208、接続情報に基づいて、CSCFが再開信号を受けるにあたっての優先順位を決定し、決定された優先順位に基づいて複数のCSCFに対する再開信号の送信順序を決定する再開信号送信指示部202によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AS装置における分割送信方法、分割送信装置に係り、特に、AS装置の通信再開通知を分割送信する分割送信方法、この分割送信方法によって通信再開を通知する分割送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部3GGP等で規定されるIMS(IP Multimedia Subsystem)は、原則システムが正常に動作している場合の処理を規定するものであって、ノード装置の保守や保守後のサービス再開に関するSIP上の処理は規定されていない。IMSにおいて、AS(Application Server)装置は複数のCSCF(Call Session Control Function)と接続してサービスを提供することができるサーバ装置である。このため、AS装置の故障や保守後の再開時には複数のCSCFに対して通信の再開を通知する信号を送信することが必要となる。
【0003】
なお、本明細書では、CSCFに対して再開を通知する信号を再開信号と記す。再開信号は、SIPのプロトコルによる制御信号の一つとして規定されている信号であるものとする。AS装置において再開信号を送信するノードを分割送信装置と記す。
分割送信装置がCSCFに対して再開信号を送信する場合、多数のCSCFに一度に再開信号を送信すると、信号送信の処理にバーストが発生することが懸念される。バーストの発生を抑えるため、現在の分割送信装置では、送信すべき多数の再開信号を分割し、再開信号を一部ずつ送信する仕組みがある。本明細書では、このような仕組みを分割送信と記す。
【0004】
また、CSCFには、適用される処理等によってAS装置との通信を他のCSCFより優先すべきものがある。CSCFにおける通信再開の緊急性の高低を、本明細書では、通信再開の優先順位と記す。
CSCFに対して無作為に、あるいは通し番号等に基づいてCSCFを選択して順番に再開信号を送信すると、CSCFの通信再開の優先順位とは無関係に通信再開通知が送信されることになる。このため、通信再開の緊急性が高い呼あるいはCSCFよりも先に、緊急性がより低い呼あるいはCSCFの通信行われるという、不具合が生じる。
【0005】
このような不具合を解消するため、通信再開の優先順位に基づいてAS装置とCSCFとの通信を再開させる従来技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、ネットワークに接続された機器ごとにネットワークへの影響の大きさを示す「貢献度」を算出し、貢献度の大きい機器から順番に故障処理の手配を実行している。特許文献1でいう貢献度は、例えば、貢献度評価の対象となっているサービスが基幹サービスであるか否かといった、サービスの種別によって決まる重みを使って算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−313130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、CSCFでは、サービスに課される料金の課金制御が行われる。サービスでは、所定の時間、呼の接続が維持され、この間にサービスの提供が行われる。このため、サービスの提供が行われている途中で呼が切断され、所定の時間の経過後に再開された場合、課金が発生したにも関わらずサービスの提供が完了しないことがある。
また、メールの送信処理をしていたCSCFがある場合、比較的短時間のうち、このCSCFに対してメールの返信のための呼が要求される可能性がある。
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された発明では、リストから選択されたサービスが基幹サービスであるか否かといった、予め設定された情報に基づいてこのサービスに携わる器機のネットワークに対する貢献度を求めている。このため、課金処理やメール送信といったAS装置が故障する直前のCSCFの状態に基づいて通信再開の優先順位を決定することはできない。
【0009】
したがって、従来の通信システムでは、課金処理中のサービス呼(サービスを要求するための呼)があった場合にも、このサービス呼を送信した携帯電話機と接続されていたCSCFの通信再開が優先されないことになる。また、AS装置の故障の直前にメールを受信したユーザが、このメールに返信しようとした場合、メールが正常に送信できない可能性が高くなる。このような場合にあっても、従来技術は、ユーザにサービスに対する不満を与えることになる。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであって、AS装置が故障する直前のCSCFの処理に関する状態に基づいて通信再開の優先順位を決定するAS装置における分割送信方法、分割送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明のAS装置における分割送信方法は、複数の通信ノードと接続するAS装置において、当該AS装置の通信の再開時、前記通信ノードに対して通信の再開を通知する再開信号を送信する、AS装置における分割送信方法であって、前記通信ノードに接続されている移動機によって実行されている処理の内容を示す情報である接続情報を収集する情報収集ステップ(例えば図4に示したステップS401〜403)と、前記接続情報に基づいて、複数の前記通信ノードの各々について、前記再開信号を送信するにあたっての優先順位を決定する優先順位決定ステップ(例えば図4に示したステップS405)と、前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位に基づいて、複数の前記通信ノードに対する前記再開信号の送信順序を決定する送信順序決定ステップ(例えば図4に示したステップS406)と、を含むことを特徴とする。
【0011】
このような発明によれば、通信ノードに接続されている移動機によって実行されている処理の内容に基づいて通信再開の優先順位を決定することができる。また、優先順位に基づいて通信ノードに再開信号を送信することにより、通信ノードに接続されている移動機のユーザのAS装置の故障による不満を緩和することができる。
また、本発明のAS装置における分割送信方法は、上記した発明において、前記情報ステップが、前記通信ノードに接続されている移動機の契約に関する契約情報を取得する契約情報取得ステップ(例えば図4に示したステップS403)を含み、優先順位決定ステップは、前記接続情報と共に前記契約情報を考慮して前記通信ノードの優先順位を決定することが望ましい。
【0012】
このような発明によれば、通信再開の優先順位の決定に契約情報を考慮することができるから、ユーザのAS装置の故障による不満をさらに緩和することができる。
また、本発明のAS装置における分割送信方法は、上記した発明において、前記接続情報が、前記移動機によって実行されている処理に課金が発生していたか否かを示す情報と、前記移動機がメールを送信する処理を行っていたか否かを示す情報との少なくとも一方を含むことが望ましい。
【0013】
このような発明によれば、AS装置の故障によって課金処理が中断され、再度課金処理を実行する操作や、後に非課金処理がされる煩雑さがなくなって、ユーザのAS装置の故障による不満を緩和することができる。また、送信されたメールに対する返信メールの受信に支障が出ることを低減し、ユーザのAS装置の故障による不満を緩和することができる。
【0014】
また、本発明のAS装置における分割送信方法は、上記した発明において、前記契約情報が、前記移動機が他の特定の移動機との間の通信にかかる料金の割引契約をしているか否かを示す情報を含むことが望ましい。
このような発明によれば、頻繁に通信することが予想されるユーザの移動機が接続されていたCSCFの通信を優先して再開させることができる。このため、ユーザのAS装置の故障による不満を緩和することができる。
【0015】
また、本発明のAS装置における分割送信方法は、上記した発明において、前記送信順序決定ステップが、前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位が高い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定する、または前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位が低い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定することを特徴とする。
【0016】
このような発明によれば、優先順位が高い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定することにより、早期に通信再開を通知すべきCSCFを優先して再開信号を送信することができる。また、優先順位が低い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定することにより、すでに確立されている通信をより長い時間維持することができる。
【0017】
本発明の分割送信装置は、複数の通信ノードと接続するAS装置(例えば図1に示したAS装置101)において、当該AS装置により通信の再開時、前記通信ノードに対して通信の再開を通知する再開信号を送信する分割送信装置(例えば図2に示した分割送信装置200)であって、前記通信ノードに接続されている移動機によって実行されている処理の内容を示す情報である接続情報を取得する情報収集手段(例えば図2に示した情報収集部205、接続情報蓄積部208)と、前記接続情報に基づいて、複数の前記通信ノードの前記再開信号を受けるにあたっての優先順位を決定する優先順位決定手段(例えば図2に示した再開信号送信指示部202)と、前記優先順位決定手段によって決定された優先順位に基づいて、複数の前記通信ノードに対する前記再開信号の送信順序を決定する送信順序決定手段(例えば図2に示した再開信号送信指示部202)と、を含むことを特徴とする。
【0018】
このような発明によれば、通信ノードに接続されている移動機を使ってユーザにより実行されている処理の内容に基づいて通信再開の優先順位を決定することができる。また、優先順位に基づいて通信ノードに再開信号を送信することにより、通信ノードに接続されている移動機のユーザのAS装置の故障による不満を緩和することができる。
【発明の効果】
【0019】
AS装置が故障する直前のCSCFの処理に関する状態に基づいて通信再開の優先順位を決定し、早期に通信を再開すべきCSCFとの通信を優先的に再開することができる。このため、ユーザが通信の中断によって感じる煩わしさを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の分割送信装置が適用される通信システムを説明するための図である。
【図2】図1に示したAS装置の分割送信装置を説明するための図である。
【図3】図2に示した情報テーブルを例示するための図である。
【図4】本発明の一実施形態の分割送信方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示した処理によって決定されたCSCFの優先順位に基づいて再開信号送信順序を決定する処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態の他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態の分割送信方法、この分割送信方法を使って分割送信をする分割送信装置を説明する。
(システム構成)
図1は、本実施形態の分割送信装置が適用される通信システムを説明するための図である。通信システムは、AS装置(Application Server)101と、AS装置101と接続する複数(n個)のCSCF(Call Session Control Function)102a〜102nと、HLR(Home Location Register)103とを含んでいる。なお、本実施形態は、本実施形態が移動機である携帯電話機の通信に適用される例について説明するものとする。
【0022】
AS装置101は、ユーザからの要求を受け付けて、データベースなどの業務システムの処理に橋渡しする機能を持ったサーバ装置である。HLR103は、携帯電話番号や端末識別番号等の契約情報を管理するデータベースで、携帯電話網全体の情報を管理する。本実施形態でいう契約情報とは、携帯電話機の契約者に関する情報や、携帯電話機に提供されるサービスに関する契約に関する情報を含んでいる。
【0023】
図1に示した通信システムでは、AS装置101は複数のCSCF102a〜102nと通信している。AS装置101は、故障等によってダウンすることがある。故障が修復されてAS装置101がダウンから復帰すると、CSCF102a〜102nに通信を再開することを通知する、再開信号がAS装置101に含まれる分割送信装置からCSCF102a〜102nに送信される。再開信号の送信は、1つのCSCFを単位にし、分割送信によって行われる。
なお、AS装置101は、CSCF102a〜102nと共に、CSCF102a〜102n以外の通信ノード104と通信を行う場合もある。本実施形態では、説明の簡単のため、AS装置101が、接続されている複数のCSCF102a〜102nにのみ再開信号を送信する例について説明する。
【0024】
(分割送信装置)
図2は、図1に示したAS装置101に含まれる分割送信装置200を説明するための図である。分割送信装置200は、AS装置の故障が修復されたとき、AS装置中の図示しない故障修復を検出するノードから、通信再開を指示する指示信号を受信する。このため、分割送信装置200は、指示信号を受信する入出力I/F201a、指示信号の指示によりCSCFが再開信号の送信を受ける順番を決定する再開信号送信指示部202、再開信号送信指示部202の指示にしたがって、再開信号を入出力I/F201bを介してCSCFに送信する再開信号送信指示部203を備えている。
【0025】
再開信号送信指示部202によるCSCFへ再開信号を送信する順番(本実施形態では、以下、「再開信号送信順序」と記す)の決定は、情報テーブル204を使って行われる。このため、分割送信装置200は、情報テーブル204に書き込まれる情報を収集するための情報収集部205を備えている。情報収集部205は、収集されたQoS情報が蓄積されるQoS情報蓄積部206、収集された契約情報が蓄積される契約情報蓄積部207、収集された接続情報が蓄積される接続情報蓄積部208を備えている。
【0026】
QoS情報は、信号品質に係る情報であり、例えば、CSCFと接続されていた携帯電話機の通信帯域を示す情報を含んでいる。接続情報は、CSCFに接続されている携帯電話機によって実行されている処理の内容を示す情報であって、本実施形態では、再開の直前にCSCFと接続されていた携帯電話機に対する課金処理が行われていたか否か、携帯電話機がメールの送受信を行っていたか否かを示す情報を含んでいる。
【0027】
契約情報には、携帯電話機の通信料金及び通信のデータ量に関する情報や、特定の携帯電話機との間に設定される通信料金に関する情報が含まれている。なお、特定の携帯電話機との間の通信料金に関する情報とは、特定の携帯電話機との間の通信料金の無料化、あるいは割引に関する情報を含む。以下、本実施形態では、通信料金の無料化や割引に関する情報を、割引情報と記す。
再開信号送信指示部202は、再開信号の送信に先立ち、情報収集部205が備える各構成によって蓄積された情報を使って情報テーブル204を作成し、再開信号送信順序を決定する。再開信号送信指示部203は、再開信号送信指示部202によって指示された順番で各CSCFに再開信号を送信する。
【0028】
(優先順位の決定)
図3は、図2に示した情報テーブル204を例示するための図である。図示した情報テーブルのうち、「CSCF番号」の欄301にはCSCF番号を特定するために付されたID番号が書き込まれる。以下、図3の説明では、「CSCF番号」1のCSCFを「CSCF:NO1」、「CSCF番号」2のCSCFを「CSCF:NO2」のように、「CSCF:」の語句に続けて欄301中の数字を記して各CSCFを特定する。
CSCF番号は、契約情報とは無関係に付されたものとする。また、「ユーザ」の欄302には、AS装置のダウン直前にCSCFに接続されていた携帯電話機の電話番号が書き込まれる。なお、図3には電話番号が1つ書き込まれた状態が示されているが、CSCFには同時に複数の携帯電話機が接続されている場合が多い。
【0029】
「優先呼」の欄303には、CSCFが優先呼に専用のCSCFであるか否かが書き込まれる。優先呼とは、他の呼に優先してCSCFが処理すべき呼であって、例えば、基幹サービスにかかる呼等を指す。通信システムでは、優先呼を他の呼に優先して確実に接続するため、優先呼を処理する専用のCSCFが設定される。図3に示した例では、「○」はCSCFが優先呼に専用のCSCFであることを示し、「×」はCSCFが優先呼に専用のCSCFではないことを示している。
【0030】
「契約サービス」の欄304には、CSCFに接続されている携帯電話機ごとに、その携帯電話機が契約しているサービス数が書き込まれている。「課金済み呼」の欄305には、AS装置のダウン直前に、CSCFと接続されていた携帯電話機の呼について課金が発生していたか否かが書き込まれる。図3に示した例では、「○」はAS装置のダウン直前にCSCFに課金済みの呼が発生していたことを示し、「×」は課金済みの呼が発生していないことを示している。
【0031】
「割引契約者あり」の欄306には、携帯電話機ごとに、その携帯電話機が他の携帯電話機との間で割引契約を結んでいるか否かを示す割引情報である。「メール送信履歴あり」の欄307には、AS装置と接続されていた携帯電話機がAS装置のダウン直前にメール送信をしていたか否かが書き込まれる。
以上の情報のうち、「ユーザ」、「課金済み呼」、「メール送信履歴あり」の情報は各CSCFから取得され、接続情報蓄積部208に記憶される情報である。「優先呼」、「契約サービス数」、「割引契約者あり」の情報は、HLR103から取得され、契約情報蓄積部207に記憶される情報である。
【0032】
上記した情報テーブルを使い、図2に示した再開信号送信指示部202は、最優先情報と第2優先順位とに基づいてCSCFを選択する。本実施形態では、「課金済み呼」、「優先呼」に該当する呼に最も高い優先順位である最優先順位を付し、その他の「契約サービス数」、「割引契約者あり」、「メール送信履歴あり」の条件に該当する呼に最優先順位の次に優先される優先順位である第2優先順位を付す。
【0033】
図2に示した再開信号送信指示部202は、先ず、最優先順位である「課金済み呼」、「優先呼」の条件に該当する(「課金済み呼」、「優先呼」が「○」である)CSCFを情報テーブルから抽出する。図3に示した例では、「課金済み呼」、「優先呼」の少なくとも一方が「○」である「CSCF:NO1」、「CSCF:NO5」、「CSCF:NO3」が最も早く再開信号を送信すべき最優先順位のCSCF(以下、最優先CSCFと記す)に設定される。
【0034】
次に、図2に示した再開信号送信指示部202は、「課金済み呼」、「優先呼」以外の条件である「契約サービス数」に着目する。「契約サービス数」が多い携帯電話機の方が呼接続をCSCFに要求する回数が多い傾向があると考えられる。このため、再開信号送信指示部は、「契約サービス数」が最も多い「CSCF:NO5」が第2優先CSCFに設定可能であると判断する。ただし、図3に示した例では、「CSCF:NO5」は既に最優先CSCFに設定されているから、「CSCF:NO5」はそのまま最優先CSCFに設定される。
【0035】
また、再開信号送信指示部は、「課金済み呼」、「優先呼」以外の条件である「割引契約者あり」、「メール送信履歴あり」に着目する。このとき、「割引契約者あり」、「メール送信履歴あり」の少なくとも一方が「○」である「CSCF:NO2」、「CSCF:NO3」が第2優先順位のCSCF(以下、第2優先CSCFと記す)に設定可能であると判断される。ただし、図3に示した例では、「CSCF:NO3」は既に最優先CSCFに設定されている。このため、「CSCF:NO3」はそのまま最優先CSCFに設定され、「CSCF:NO2」だけが第2優先CSCFに設定される。
【0036】
図4は、以上説明した最優先CSCF、第2優先CSCFを決定する処理を説明するための図である。このフローチャートは、図2に示した分割送信装置200の再開信号送信指示部202によって実行される。再開信号送信指示部202は、入出力I/F201aから指示信号が入力されると、図4のフローチャートに示した処理を開始する。処理の開始後、先ず、CSCFから再開直前の状態を示す情報の取得が開始される(ステップS401)。ここでいう「直前」とは、現在から所定の比較的短い時間遡った時点をいう。接続情報の取得は、情報収集部205がCSCFから定期的にQoS情報、契約情報、接続情報を問い合わせて取得するものであってもよい。
【0037】
ステップS401の処理により、CSCFからは、課金に関する接続情報やQoS情報が図2に示した情報収集部205によって収集される(ステップS402)。また、情報収集部205は、HLR103から契約情報を取得する。収集、取得されたQoS情報、契約情報、接続情報は、各々対応するQoS情報蓄積部、契約情報蓄積部207、接続情報蓄積部208に蓄積される。
【0038】
分割信号送信指示部は、情報テーブルの作成に必要な情報の取得が完了したか否か判断する(ステップS404)。判断の結果、必要な情報が全て収集されていると判断されると(ステップS404:YES)、最優先順位、第2優先順位によってCSCFの優先順位、すなわち最優先CSCF、第2優先CSCFが決定される(ステップS405)。そして、最優先CSCF、第2優先CSCFと一度に再開信号を送信し得るCSCFの数とによってCSCFの再開信号送信順序が決定される(ステップS406)。
なお、ステップS404において、CSCFの情報が取得できていないと判断された場合(ステップS404:NO)、情報が取得されるまでステップS401〜403の処理が繰り返される。
【0039】
(分割送信方法)
以上のようにして最優先CSCF、第2優先CSCFが決定される本実施形態では、最優先CSCF、第2優先CSCF、その他のCSCFの順序で再開信号が送信される。しかし、再開信号送信部が一度に送信できる再開信号の数には上限があって、この上限を超えるとバーストが発生することになる。このため、本実施形態では、情報テーブルで決定されたCSCFの優先順位と1度に送信できる再開信号の上限数とによって再開信号送信順序が決定されるものとする。
【0040】
つまり、1度に送信できる再開信号の上限数をNmax、同時に送信された再開信号を受信する複数のCSCFを「1セット」とすると、図2に示した再開信号送信指示部202は、最優先CSCFの数と上限数Nmaxとを比較する。そして、最優先CSCFの数が上限数Nmaxより多い場合、最優先CSCFからランダムに上限数Nmax以内の最優先CSCFが選択され、選択されたCSCFが1セットとなる。
【0041】
一方、最優先CSCFの数が上限数Nmaxより少ない場合、図2に示した再開信号送信指示部202は、最優先CSCFの数と第2優先CSCFの数との合計が上限数Nmax以下であるか否か判断する。合計が上限数Nmax以下であれば、最優先CSCFと第2優先CSCFとを1セットにして再開信号が送信される。また、最優先CSCFの数と第2優先CSCFの数との合計が上限数Nmaxより多ければ、最優先CSCFのみを1セットにして再開信号が送信される。
【0042】
図5は、図4に示したステップS406の処理をより詳細に説明するためのフローチャートであって、CSCFの優先順位に基づいて再開信号送信順序を決定する処理を説明するための図である。図5に示した処理も、図4に示した処理と同様に、再開信号送信指示部によって実行される。
図2に示した再開信号送信指示部202は、図2に示した情報テーブル204を参照し、再開信号送信順序が未だ決定されていないCSCFのうち、現状で最も優先順位が高いCSCFがあるか否か判断する(ステップS501)。以下、本実施形態では、現状で最も優先順位が高いCSCFを最高優先順位CSCFと記す。最高優先順位CSCFは、処理の開始直後においては図3に示した最優先CSCFである。ただし、送信順序は優先順位がより高いCSCFから決定されていくから、処理が進むにつれて第2優先順位CSCFやそれ以下の優先順位を持つCSCFが最高優先順位CSCFになり得る。
【0043】
ステップS501において、最高優先順位CSCFがあると判断された場合(ステップS501:YES)、この最高優先順位CSCFの数が、分割送装置が再開信号を一度に送信できる上限数以下であるか否か判断される(ステップS502)。一方、ステップS501において、特に最高優先順位CSCFがない場合(ステップS501:NO)、ステップS504において優先順位が下位のCSCFの有無が判断される。
【0044】
ステップS502において、最高優先順位CSCFの数が再開信号の上限数より大きいと判断された場合(ステップS502:NO)、最高優先順位CSCFから上限数以内の数の最高優先順位CSCFがランダムに選択される(ステップS503)。図2に示した再開信号送信指示部202は、選択された最高優先順位CSCFを1セットとして再開信号送信順序を決定する(ステップS508)。
【0045】
次に、ステップS502において、最高優先順位CSCFの数が再開信号の上限数以下であるかと判断された場合(ステップS502:YES)、図2に示した再開信号送信指示部202は、優先順序がより下位のCSCFが図2に示した情報テーブル204上にあるか否か判断する(ステップS504)。優先順位が下位のCSCFがあると判断された場合(ステップS504:YES)、再開信号送信指示部は、優先順位が上位のCSCFと下位のCSCFとの合計が再開信号の上限数以下であるか否か判断する(ステップS505)。
【0046】
また、ステップS504において、優先順位が下位のCSCFがない場合(ステップS504:No)、及び最高優先順位CSCFと優先順位が下位のCSCFとの合計が再開信号の上限数以下ではない場合(ステップS505:NO)、最高優先順位CSCFのみが1セットに設定され(ステップS506)、再開信号送信順序が決定される(ステップS508)。
ステップS505において、優先順位が上位のCSCFと下位のCSCFとの合計が再開信号の上限数より大きいと判断された場合(ステップS505:YES)、最高優先順位CSCFと優先順位が下位のCSCFとが1セットに設定され(ステップS507)、再開信号送信順序が決定される(ステップS508)。
【0047】
再開信号送信の順序決定後、図2に示した再開信号送信指示部202は、未だ送信順序の決まっていないCSCFがあるか否か判断する(ステップS509)。送信順序が決まっていないCSCFがある場合には(ステップS509:Yes)、図2に示した再開信号送信部202は、最高優先順位CSCFを、優先順位がより下位のCSCFに置き換えて再開信号の送信順序の決定を繰り返す。
【0048】
また、ステップS509において、送信順序が決まっていないCSCFがないと判断された場合(ステップS509:No)、図5に示したフローチャートは終了する。
以上説明した本実施形態によれば、移動機の契約情報ばかりでなく、通信の再開の直前にCSCFに接続されていた携帯電話機の処理の内容(課金処理やメール送信処理)に基づいてCSCFごとの通信再開に係る優先順位を判定することができる。そして、この優先順位に基づいて再開信号を送信しているから、通信を早期に再開すべきCSCFから順次通信を再開させることができる。
【0049】
このような本実施形態によれば、AS装置が故障した場合に課金処理が中断される可能性を低減し、送信したメールに対する受信に支障がでることを緩和することができる。このため、本実施形態は、AS装置の故障後であっても通信にかかるサービスの提供が中断されることを極力なくし、CSCFと接続していた移動機のユーザの満足度を高めることができるという効果を得ることができる。
なお、以上説明した本実施形態では、タイムアウトが発生する処理の例として課金処理を示したが、本実施形態は課金処理に限定されるものでなく、例えば、ネットワークを介したショッピングのように、所定の時間に入力がなかった場合、手続きが未完了のまま終わるシステムにも適用することが可能である。
【0050】
(変形例1)
図6(a)、(b)は、上記した本実施形態の変形例1を説明するための図であって、AS装置101の分割送信装置が契約情報や接続情報を取得、収集する処理のバリエーションを説明している。
すなわち、本実施形態は、図2に示した情報収集部205によってQoS情報、契約情報、接続情報が一定の周期でCSCF102a〜102nから収集されるものとした。しかし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、図2に示した情報収集部205が再開信号の送信が必要になったときにCSCFからQoS情報等を収集するものであってもよい。
【0051】
CSCF102a〜102nは、接続情報を蓄積しておくメモリを備え、接続情報は、このメモリに時間に対応付けて記憶されている。図2に示した情報収集部205が再開信号の送信が必要になったとき契約情報を収集する場合、CSCFは、再開信号送信の直前の時間に対応する接続情報を読み出して情報収集部205に通知する。
また、本実施形態は、図6(a)のようにCSCF102a〜102nの各々から情報を収集するものに限定されるものではない。例えば、図6(b)のように、AS装置101に接続されている複数の接続ノードのうちの1つに他の接続ノードがQoS情報や契約情報を送信し、蓄積しておくものであってもよい。図6(a)に示した例では、複数のCSCFからOPS(Operation System)601に接続情報が蓄積されている。AS装置101は、OPSから複数のCSCFの接続情報を収集している。
【0052】
(変形例2)
図7(a)、(b)は、AS装置101の故障が重度の場合に適用される変形例2を説明するための図である。図7(a)は、AS装置101が複数のCSCF102a〜102nのメモリから接続情報が読み取れない場合に適用される処理を説明するための図である。このような場合、AS装置101は、AS装置101が含まれるネットワークの他のAS装置101’に、接続情報等の取得の時間を指定して通信を再開する処理の代替えを依頼する。
なお、AS装置101’は、AS装置101の代替えとして予め設定されている冗長用AS装置であってもよいし、通常は他のCSCFと接続されるAS装置であってもよい。
【0053】
図7(b)は、AS装置101が開始した通信の再開処理が継続できなくなった場合に適用される処理を説明するための図である。AS装置101とAS装置101’とは定期的にヘルスチェックしていて、AS装置101’はAS装置101がヘルスチェックに応答しなくなったとき、能動的に動作してAS装置101の通信再開処理を代替えするものであってもよい。また、AS装置101が、ヘルスチェックに応答できない状態になったとき、AS装置101’に通信の再開処理の代替えを依頼するものであってもよい。
【0054】
(変形例3)
さらに、本実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。すなわち、上記した分割送信方法及び分割送信装置では、CSCFの優先順位を決定し、この優先順位がより高いCSCFから順に再開信号を送信している。しかし、本実施形態では、決定された優先順位の低いCSCFから順に再開信号を送信するようにしてもよい。このような動作は、次のような場合に効果を奏する。
【0055】
一般的に知られているように、CSCFとAS装置、CSCFと携帯電話機とは、ユーザデータを送受信するためのユーザ情報転送プレーン(U−plane)と、ユーザデータの転送に先立って接続要求をする、あるいはユーザデータの転送終了後に切断を要求する呼制御信号プレーン(C−plane)とによって通信している。CSCFが携帯電話機とU−planeによる通信が継続しているとき、AS装置がCSCFに再開信号(保守信号)を送信すると、CSCFと携帯電話機とのU−planeによる通信が切断される場合がある。
優先順位の低いCSCFから順に再開信号を送信する変形例は、上記の場合を考慮したものである。このような変形例によれば、上記の場合において、CSCFでいったん確立された通信を可能な限り長時間維持することができる。
【0056】
(変形例4)
また、本実施形態では、優先順位の高いCSCFから順に再開信号を送信する場合に、CSCFでいったん確立された通信の有無を考慮することもできる。このような場合、例えば、CSCFごとにカウント値を設定し、このカウント値の大きさにしたがってCSCFに再開信号を送信する優先順位を決定することが考えられる。
すなわち、図3に示した情報テーブル204中の「優先呼」、「課金済み呼」が「○」であること、「契約サービス数」が多いこと、「割引契約者」、「メール送信履歴」が「あり」であること等について該当するCSCFのカウント値をカウントアップし、携帯電話機との通信が確立されているCSCFについてはカウント値をカウントダウンする。そして、カウントアップ、カウントダウンの結果得られた総合的なカウント値が大きいCSCFから順番に再開信号を送信してもよい。
【0057】
なお、このような変形例4は、携帯電話機との通信が確立されている、あるいは「優先呼」に該当する、といった各項目について一定の値をカウントするものに限定されるものではない。例えば、CSCFと通信が確立されている携帯電話機の数や「優先呼」、「課金済み呼」、「契約サービス数」、「割引契約者」、「メール送信履歴」の別によってカウントダウン、またはカウントアップされる値に重みを付すようにすることも考えられる。
このような変形例4によれば、優先順位の高い、低いを総合的に考慮してCSCFに対する再開信号の送信順序を決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明した本発明は、ユーザのサービスや通信を制御する複数の接続装置とアプリケーションサーバとが接続し、サービスや通信を制御する形態で、故障から回復したアプリケーションサーバが接続する、ユーザのサービスや通信を制御する複数の接続装置に対して、通信再開を通知するシステムであれば、どのような場合にでも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
101 AS装置
102 CSCF
103 HLR
200 分割送信装置
202 再開信号送信指示部
203 再開信号送信指示部
204 情報テーブル
205 情報収集部
206 QoS情報蓄積部
207 契約情報蓄積部
208 接続情報蓄積部
301〜307 欄
601 OPS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信ノードと接続するAS装置において、当該AS装置の通信の再開時、前記通信ノードに対して通信の再開を通知する再開信号を送信する、AS装置における分割送信方法であって、
前記通信ノードに接続されている移動機によって実行されている処理の内容を示す情報である接続情報を収集する情報収集ステップと、
前記接続情報に基づいて、複数の前記通信ノードの各々について、前記再開信号を送信するにあたっての優先順位を決定する優先順位決定ステップと、
前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位に基づいて、複数の前記通信ノードに対する前記再開信号の送信順序を決定する送信順序決定ステップと、
を含むことを特徴とするAS装置における分割送信方法。
【請求項2】
前記情報ステップは、
前記通信ノードに接続されている移動機の契約に関する契約情報を取得する契約情報取得ステップを含み、
優先順位決定ステップは、
前記接続情報と共に前記契約情報を考慮して前記通信ノードの優先順位を決定することを特徴とする請求項1に記載のAS装置における分割送信方法。
【請求項3】
前記接続情報は、前記移動機によって実行されている処理に課金が発生していたか否かを示す情報と、前記移動機がメールを送信する処理を行っていたか否かを示す情報との少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のAS装置における分割送信方法。
【請求項4】
前記契約情報は、前記移動機が他の特定の移動機との間の通信にかかる料金の割引契約をしているか否かを示す情報を含むことを特徴とする請求項2に記載のAS装置における分割送信方法。
【請求項5】
前記送信順序決定ステップは、前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位が高い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定する、または前記優先順位決定ステップにおいて決定された優先順位が低い前記通信ノードから順番に前記再開信号が送信されるよう送信順序を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のAS装置における分割送信方法。
【請求項6】
複数の通信ノードと接続するAS装置において、当該AS装置の通信の再開時、前記通信ノードに対して通信の再開を通知する再開信号を送信する分割送信装置であって、
前記通信ノードに接続されている移動機によって実行されている処理の内容を示す情報である接続情報を取得する情報収集手段と、
前記接続情報に基づいて、複数の前記通信ノードの各々について、前記再開信号を送信するにあたっての優先順位を決定する優先順位決定手段と、
前記優先順位決定手段によって決定された優先順位に基づいて、複数の前記通信ノードに対する前記再開信号の送信順序を決定する送信順序決定手段と、
を含むことを特徴とする分割送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129863(P2012−129863A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280594(P2010−280594)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】