説明

AT−1またはAT−2レセプターの増加に関連する疾患の処置のための、AT−1レセプターアンタゴニストまたはAT−2レセプターモジュレーターの使用

【課題】
各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置のための医薬製品の製造における使用を提供すること。
【解決手段】遊離塩基形のバルサルタンおよびコア成分の総重量を基本にして30重量%以上の微結晶性セルロースを含む、錠剤により上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
α2−マクログリコプロテインであるアンギオテンシノーゲンは、酵素レニンによりデカペプチドアンギオテンシンIに分解され、それ自体生物学的に非常に僅かな活性しかない。カスケードの次の段階において、二つの更なるアミノ酸に、主に内皮細胞に結合している酵素アンギオテンシン変換酵素(ACE)の作用により、アンギオテンシンIIの形成と共に開裂される。後者は、最も強力な天然血管収縮剤の一つであると見なされている。
【背景技術】
【0002】
アンギオテンシンIIは、標的細胞の表面における特異的レセプターと相互作用する。例えば、ATレセプターおよびATレセプターと名付けられる、レセプターサブタイプの同定の達成が、現在成功している。レニン−アンギオテンシン系、特に高血圧との関係の研究は、最近の10年間において殆ど指数的に増加している。結果として、アンギオテンシンIIに関する多くのレセプターが現在同定されており、その中の幾つかは、クローン化され、分析されている。近年、ATレセプターに結合する物質の同定にかなりの努力がなされ、この性質の活性化合物は、アンギオテンシンIIと呼ばれている。ATレセプターの阻害の結果、これらのアンタゴニストは、例えば、抗高血圧剤として、または鬱血性心不全の処置に使用できる。
【0003】
ATおよびATレセプターはまたその分布および生物学的特性に関して試験されており、30%相同性にもかかわらず、非常に異なった分布および活性を有することが示されている。
【0004】
血圧調節における主要な部分を担うATレセプターは、副腎皮質、腎臓、子宮等で発見されている。細胞レベルでは、繊維芽細胞、マクロファージおよび平滑筋細胞(SMC)に発見されている。
【0005】
対照的に、ATレセプターは主に胎児組織で発見されているが、成人でも、特に虚血性心臓疾患のような病的組織で発見されている。この場合、線維芽細胞および内皮細胞に位置している。
【発明の概要】
【0006】
以後記載する試験の目的は、ATおよびATレセプターの、本質的に免疫細胞化学およびin situハイブリダイゼーション法を使用した、ヒト肺における分布の評価である。
【0007】
以前に特異的抗体がATレセプターのエピトープに対して作られているが、ATレセプターに対してはこのような特異的ツールは存在しない。組織学的試験は、したがって、オートラジオグラフィーを伴う放射線標識レセプターアンタゴニストに依存し、これは相対的に粗い組織局在化しか示さない。しかし、最近の2年間で、ヒトレセプターに対する、特異的な十分特徴付けされた抗体が利用可能になっており、したがって、以下の試験においては、これに依存した。
【0008】
材料および方法
1.抗体およびin situハイブリダイゼーション(ISH)プローブ特異性および力価測定
免疫細胞化学(ICC)およびISH試験の特性を確認するために、正常ヒト副腎(皮質および髄質)のパラフィン包埋ブロックを、Pathology Dept., University Hospital, Ghent, Belgiumのアーカイブから得、試験材料として使用する。ATレセプターは副腎皮質に、およびATは髄質に主に位置することが知られている。
【0009】
ヒト肺試験のために、患者が肺疾患以外、例えば、致命的な事故の理由で死亡した検屍体から、コントロール材料を得る。この材料のいくつかは、上記のChentからであり、他のものはPathology Dept. of The Pennsylvania Hospital, Philadelphia, USAのアーカイブからである。小気道を含む組織を、それらが損傷に対してより感受性であるように見えるため、選択する。
【0010】
全てのサンプルを、検死解剖後できるだけ直ぐに10%緩衝化ホルマリンに固定し、脱水し、パラフィンワックスに包埋させる。3−5μm切片を切断し、食塩水被覆ガラススライド上にマウントする。
【0011】
処理における変化を最小とするために、連続した切片の対を、各スライドに、一方はAT、他方はAT抗体曝露のためにマウントする。20枚のスライドまで同時に処理し、一次抗体の他は、色原体を含む全ての試薬を同じにする。切片の厚さは、したがって、完全には制御できない、唯一の変数である。
【0012】
2.抗体
Santa Cruz Inc., San Diego, CA, USAからの二つのATレセプター抗体(クローンN10および306)を試験し、同じ副腎皮質レセプター分布をすることが判明している。
【0013】
試験の主要な部分は、Santa Cruzから入手可能なATレセプター抗体(クローンC18)で行い、それを試験し、前記のものと、副腎髄質および肺において同じ染色パターンとなることが判明している。
【0014】
全ての抗体は、商業的および個人的供給者により、特異性および交差反応性が正確に試験されている。
【0015】
3.ISHプローブ
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)生産物を製造し、下記のように使用した:
ヒトアンギオテンシンIIレセプタータイプI(GenBank accession number M93394)およびアンギオテンシンIIレセプタータイプII(GenBank accession number U15592)に対して特異的なオリゴヌクレオチドを、Oligo 5.0ソフトウエアプログラムを使用して、両方の配列からの相同性領域に対して設計した(表1)。ヒト骨組織由来のcDNAを標準法にしたがって調製した(Sambrook J, Fritxch EF, Maniatis T. Molecular Cloning; a Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。PCRのために、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した:アンギオテンシンIIレセプタータイプI、5'-CTggCTgACTTATgCTTTTTACTgACT-3'、および5'-gATgCAggTgACTTTggCTACA-3';(PCR生産物サイズ236塩基対)およびアンギオテンシンIIレセプタータイプII、5'-ATTTACTCCTTTTggCTACTCTTCCTC-3'および5'-ggTCACgggTTATCCTgTTCTTC-3'(PCR生産物サイズ489塩基対)。PCR増幅を、10ngのテンプレートcDNAで、MJ Research PCR Cycleマシンを使用して、以下のPCRサイクル:1)94℃/2分、2)94℃/10秒、60℃/30秒、72℃/15秒を35サイクル、High Fidelity Taqポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)を使用して、製造者のキットに提供された成分で行った。PCR増幅の生産物を、0.8%アガロース/TBEゲルを通した電気泳動により同定した(Sambrook J, Fritsch EF, Maniatis T. Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。PCR増幅生産物の同一性を確認するために、DNAをゲルから抽出し、A/TクローニングベクターpMOSBlue(Amersham)にクローン化した。正確なサイズのDNA挿入物を含むコロニー(表1)を、両方の鎖に関して完全に配列決定し、その同一性を確認した。
【0016】
各プローブ、上記のようなATのセンスおよびアンチセンスの両方、およびアンチセンスのみをフルオレッシン(FITC)で標識し、mRNAの存在下、細胞でプローブとのハイブリダイゼーションに続いて検出し、マウス抗−FITC+アルカリホスファターゼ抗アルカリホスファターゼ(APAAP)検出システムを使用する。この標識法は、非常に少ないコピー数の検出を促進する。
【0017】
4.免疫細胞化学
全ての抗体について、方法は以下の通りである。5μm切片を、最初に抗原回復法により、マイクロ波(microwaving)と共に、クエン酸緩衝液(pH6.0)中で処理する。
【0018】
曝露は20分であり、スライドを緩衝液中で冷却したままにする。抗体がヤギポリクローナルである場合、色素源としてのジアミノベンジジン(DAB)と共にペルオキシダーゼ抗ペルオキシダーゼ(PAP)法を使用し、そうでない場合、ウサギポリクローナルに関して、APAAPシステムを新規Fuchsinと共に使用する。切片を最初に1%ウシ血清アルブメン(albumen)で30分遮断し、非特異的レセプターを遮断し、続いて、一次抗体と30分、室温でインキュベーションする。各抗体を力価測定し、最適な希釈は下記の通りである:
【表1】

【0019】
ネガティブコントロールとして、ウサギポリクローナルについてはDako(Prosan, Ghent, Belgium)を使用し、ヤギポリクローナルについては一次抗体を削除する。
【0020】
ISH
5μm切片を脱パラフィン処理(deparaffinised)し、次いで十分確立された方法にしたがって“in situ”ハイブリダイゼーションに曝す。切片を最初に20分、55℃でプレハイブリダイゼーション溶液で処理する。次いで、それらを洗浄し、一晩55℃でプローブに曝す。更に洗浄した後、それらをマウス抗FITC抗体および特異的メッセージの局在化のためのAPAAP検出系で処理する。ATレセプターに関して、センスプローブはネガティブコントロールであり、ATレセプターに関して、プローブを除く。
【0021】
イメージ分析
染色強度を定量的に測定するために、スライドをライカMR500で可視化し、組織の単位領域あたりの染色の量を、ライカの指示にしたがって、ピクセルで記録する。これは、異なる領域におけるAT対ATレセプターの比率を確立するために行う。これらはa)気道上皮、b)上皮下間質(interstium)、c)SMC周囲血管およびd)粘液腺である。
【0022】
結果
副腎分布試験
AT分布:全ての二つの抗体は、副腎皮質で以下の分泌パターンとなり、即ち、予測されたような、血管を囲む平滑筋細胞の周囲の、およびまた繊維芽細胞上およびその周りの間質性ネットワークにおける特異的な染色である。内皮細胞の染色はない。
【0023】
AT分布:抗体は、強い染色の副腎褐色細胞腫が見られる副腎髄質に対して試験する。
ISH:両方のアンチセンスプローブが類似の像となる。
【0024】
コントロール肺
AT分布:気道上皮の基礎をなす(上皮下)間質性細胞の非常に明白な染色が見られ、また血管を囲む平滑筋細胞(SMC)の辺縁が見られる。加えて、マクロファージもポジティブである。
【0025】
AT分布:このレセプターは、刷子縁の密集した染色を伴い、気道上皮細胞と強く関連しているように見える。ポジティブ細胞がまた粘膜腺のいくつか、血管内皮細胞のいくつかおよび繊維芽細胞、軟骨細胞およびマクロファージで見られる。SMCの染色はない。
ISH:またプローブは同様の像となる。特に、ATプローブは内皮細胞およびある粘膜腺のみに強いシグナルを提供する。
【0026】
イメージ分析
染色強度、即ち、組織μm当りのピクセルにより示されるタンパク質、したがってレセプターの分布を、以下の表に示す。
【表2】

【0027】
副腎皮質および髄質におけるアンギオテンシンIIレセプターの存在は、先に、生化学的および組織学的手段の両方により証明されている。データを、商業的に入手可能な、および個人的に提供された抗体の両方で得、両方ともこれらの発見だけでなく、本免疫細胞化学的およびISH法の信頼性も確立する。
【0028】
これらの試験の結果の観点から、ATおよびATレセプターの正常および疾患肺組織における分布が、特異的ATおよびAT分泌および比率を決定するために、比較すべきである。
【0029】
肺におけるATセレプターの存在は、先に、生化学的に示されており、現在、その正確な細胞性の存在は証明されている。この情報は、正常および異常状態下の肺の異なる領域におけるATおよびATレセプターの比率の確立に重大である。
【0030】
特にATレセプターの分布のデータは、その存在または分布に関する以前のデータが存在していないため、完全に新規である。幾つかの重要な点がこの試験から発生している。
【0031】
第1に、ATレセプターの、小気道上の気管上皮細胞の存在。このレセプターが抗繊維性(anti-fibrotic)、抗増殖性およびアポトーシス促進性(pro-apoptotic)であると見なされていることは既知である。したがって、上皮細胞における上方または下方制御は、上皮細胞置換、過形成の発症に深い影響を有し、肺癌の発症に役割を担いさえする。
【0032】
第2に、かなりの量のタンパク質の、上皮細胞の刷子縁における存在は、粘膜腺のいくつかの上皮細胞がまたレセプターを担持することが示されているため、粘膜分泌の量と関連する。ISHデータから、ある腺は高レベルのmRNAを含む。
【0033】
最後に、ATレセプターの血管内皮細胞における存在は、現在、免疫細胞化学およびin situハイブリダイゼーションにより確認されている。その分布は、普通ではないだけでなく、一つの特定の血管の全ての細胞において発見されていない。
【0034】
これらの試験は、ヒト肺におけるアンギオテンシンIIタイプATおよびATの存在および分布の既存のデータを確認し、広げる。ATレセプターの小気道上皮細胞における存在は、これらの細胞における機能の変化に由来する疾患の理解にかなり重要である。
【0035】
ヒト肺におけるATレセプターの局在化およびその分布、正常および疾患肺組織における上方または下方制御および比率はほとんど知られていない。この試験のために、サンプルを正常肺、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)±高血圧の患者から採取する。
【0036】
肺サンプル
全て臨床的に定義された以下のグループから得る。
NN (n=3) − 非喫煙者、正常組織
C (n=5) − 喫煙者、それ以外正常
COPD (n=8) − COPDポジティブ、正常BP
COPD/H(n=3) − COPD+高血圧
H (n=4) − 上昇した血圧の喫煙者
【0037】
腫瘍切除または他の理由のために患者から肺を除去した後、直ぐ、気道を注意深く肺から切開する。領域を注意深く癌組織がないように選択する。次いで、小ブロックを4%パラホルムアルデヒドで2時間、室温で固定し、パラフィンワックスに包埋させる。これは、最適構造無傷さおよび抗原性活性の保持を確実にする。
【0038】
レセプター局在化を確立するための方法
a)免疫細胞化学(ICC)。2×AT抗体を試験する、Santa Cruz(クローンN-10および306)。一つのAT抗体も試験する、Santa Cruz(クローンC 18)。
【0039】
デジタルイメージ示唆:
刷子縁を含む細気管支上皮細胞におけるおよび粘膜腺細胞上のATの分布。
ATレセプターを染色された隣接切片は、平滑筋細胞、繊維芽細胞/間質およびマクロファージにおける非常に異なる分布を説明する。
【0040】
患者からのヒト肺の分析
今日まで得た全ての材料は、ATおよびATレセプター両方の局在化のために、適当なネガティブコントロールと共に切片にし、ICCにより染色している。イメージ分析は、今日まで患者当りの一つの切片の読取で開始している(これは、ベースラインが正確に接着しなければならないため、ゆっくりした進行である)。測定は上皮対上皮下および血管で行っている。この分析は、ある“患者”が明らかに平均よりも十分離れたレベルであるという事実以外のコメントができないように、“盲検”法で行う。切片の厚さおよび染色の変化による不一致は、ATおよびAT ICCを同時に連続切片で行うことにより最小にしている。したがって、色原体の同じバッチも使用する。
【0041】
ATレセプターに関する肺上皮局在化の発見は、多くの結論を導く。このレセプターが抗繊維性、抗増殖性およびアポトーシス促進性の両方であることが示されているため、その上方制御は多くの肺疾患;例えば、喫煙のみが影響をするようなものの結果を有することが予測される。成人呼吸窮迫症候群(ARDS)のような線維症状態、または肺癌における上皮の増殖能の減少においてさえ、役割を担う。
【0042】
結果
レセプター局在化
全ての抗体およびリボプローブを、両方のレセプタータイプが比較的豊富に存在することが知れている、正常副腎皮質および髄質で試験する。
【0043】
方法を、ATおよびATレセプターの両方およびそれらのmRNAを検出できる正常肺組織で繰り返す。局在化は下記の通りである:
AT − 平滑筋細胞、繊維芽細胞/間質、マクロファージ。これは、正常肺におけるレセプターの強度および数がかなり高い以外、全く予測可能である。
AT− 気管支上皮細胞(刷子縁以外)、粘膜腺(いくつか)。加えて、血管上皮細胞、繊維芽細胞、マクロファージおよび軟骨細胞。
【0044】
これは、完全に予測されず、新規な発見であり、さらに試験する必要がある。上皮細胞および粘膜腺局在化は、タンパク質およびmRNA含量の両方で確認し、刷子縁局在化は粘膜分泌に比例する。
【0045】
【表3】

【0046】
ライカ装置(イメージアナライザーMR500)は、染色強度をグレースケール(0−250)に翻訳し、各ユニットは1ピクセルである。これは、正確なデータの定量を可能にする。
【0047】
これらのデータは患者のイメージ分析に基づく。データを陽性染色組織の単位領域当りのピクセルとして、およびスライド当り5視野の平均として示す。
【0048】
これらの結果から導かれるように、正常肺組織における上皮下のATと上皮細胞におけるATの分布の比率は、有意に1より小さく、一方、疾患肺組織では1に近いか1を超える。上皮は気管および主気管支の内部を形成する。コントロールと比較した、慢性気管支炎患者由来の肺の気管支上皮下領域におけるAT/ATレセプター比率の増加は、主に気道上皮の周りの繊維芽細胞およびマクロファージに見られるATレセプターの増加したレベルによるものであり、COPDで見られる炎症および繊維症の増加したレベルを反映する。
【0049】
上記の結果は、アンギオテンシンIIを調節するATレセプターが、上皮下肺組織に位置し、特に対応する肺組織における分布が増加することを明らかに証明する。したがって、ATレセプターアンタゴニストの手段によるアンギオテンシンIIの阻害は、気道閉塞を減少させる。
【0050】
更に、実験は、上皮性肺組織、特に対応する疾患組織、例えば、主に気管支上皮細胞上の、およびまた肺胞の構造的細胞におけるATの分布が増加することを示す。ATレセプターが抗増殖性、抗繊維性およびアポトーシス促進性であるため、その調節は肺の状態および疾患の特定の形態の処置、特に、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置、および肺および乳癌における上皮の増殖能の減少、更に、セプシス症候群、肺炎、胃内容物の吸引、胸部外傷、ショック、火傷、脂肪エンボリア(embolia)、心肺バイパス、O毒性、出血性膵炎、間質性および気管支肺胞炎症、上皮および間質性細胞の増殖、コラーゲン蓄積、繊維症のような肺損傷形成の処置に有用である。
【0051】
正常胸部組織および乳癌患者におけるレセプター分布
本発明に関する胸部切片は、Pathology Dept, University Hospital, Chentのファイルから無作為に集める。全てホルマリンに固定され、パラフィンワックス中に加工され、その病理学的状態の診断は病理部門により成されている。16例が含まれている:14例は侵襲性腺管癌、1例は侵襲性膠様癌および1例は侵襲性小葉癌。
【0052】
免疫細胞化学をパラフィンワックス包埋組織切片で、前記のように、肺試験で使用したATおよびATに対するポリクローナル抗体を、ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体法と共に使用して行う。
【0053】
試験するレセプターアンタゴニストのための可能性のあるモデルを提供するために、ヒト胸部組織由来の細胞系もそのレセプター含量について試験する。これは、更なる生化学および細胞学的試験のための有用なインビトロ作業モデルを提供できる。
【0054】
結果
得られるデータは、正常ヒト胸部組織におけるアンギオテンシンIIタイプ1および2レセプターの存在を明らかに証明し、ATは管の基礎をなす立方上皮に見られ、ATは主に管筋上皮細胞に存在する。全ての染色は、インキュベーションから一次抗体を除くことにより廃止した。
【0055】
全ての例で、癌細胞の染色なし(11/16)かまたは弱い染色(5/16)を伴って、結合組織はATレセプターについてポジティブであった。ATレセプターに関して、全ての癌がポジティブであり、殆ど間質性反応性がない(1/16)、正反対のことが観察された。
【0056】
試験した全ての細胞系からの結果は、各々で異なる染色パターンが見られ、非常に興味深かった。正常乳房上皮細胞の短期間培養は、ATレセプターに関して強いポジティブであるが、ATレセプターについては非常に弱い染色であった。
【0057】
【表4】

【表5】

【0058】
結論
これらの結果から見ることができるように、ATレセプターの正常上皮細胞への存在は、肺と非常に異なるように見える。しかし、上皮細胞タイプは筋上皮であり、一方、両方の組織におけるATレセプターは立方上皮細胞に見られる。同時に、ATのためのポジティブ間質染色は、両方の組織で同じである。後者は、細胞外マトリックスにおける線維芽細胞の存在と明らかに関連している。
【0059】
ATレセプターの癌細胞上の存在、およびこのような、拡大された、再現性のある方法は驚きである。特異的なレセプターを担持する本明細書に記載の細胞タイプは、このような試験の理想的なインビトロモデルを提供する。
【0060】
これらの実験は、乳癌細胞を使用した本モデルにおいて、ATレセプターは主に間質に分布し、一方ATレセプターは主に癌細胞内に確認されているという、驚くべき効果を明らかに証明している。
【0061】
全てのこのような驚くべき結果は、ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーターが、上皮下領域(sub-epithelial area)におけるATレセプターの増加または上皮(epithelia)におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置、特に、閉塞性気道疾患の処置に使用し得ることを明らかに証明する。閉塞性気道疾患、減少した気道のサイズと増加した気道分泌により特徴付けられ、減少した肺胞換気をもたらす呼吸器疾患の分類である。閉塞性気道疾患は、可逆性および非可逆性状態を含み、例えば、気管支炎、例えば、慢性気管支炎および気腫、喘息由来の同様なもの、嚢胞性繊維症、間質性肺弛緩、侵襲性肺癌、肺血管疾患および強制呼気の間の気流に対する抵抗性の増加のような、慢性閉塞性肺疾患から選択される。このような処置は、必ずしもではないが、また非喫煙者および喫煙者の高血圧の処置に関連し得る。
【0062】
これらの驚くべき結果は、ATレセプターモジュレーターが、上皮肺組織におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置、特に、肺状態および疾患の特定の形の処置、特に、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置、および侵襲性肺癌における上皮の増殖能の減少、更に、セプシス症候群、肺炎、胃内容物の吸引、胸部外傷、ショック、火傷、脂肪エンボリア(embolia)、心肺バイパス、O毒性、出血性膵炎、間質性および気管支肺胞炎症、上皮および間質性細胞の増殖、コラーゲン蓄積、繊維症のような肺損傷形成の処置に使用し得ることを明らかに証明する。
【0063】
ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーターは、宿主の腫瘍細胞に対する生物学的応答を変え、治療的利点をもたらす薬剤である。哺乳類腺管筋上皮細胞における増加したATレセプター発現、および哺乳類立方上皮におけるATレセプターは、ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーターが侵襲性乳癌の処置に使用し得ることを証明する。これらは、硬性、浸潤性、乳頭状、腺管、髄様および小葉乳癌、ならびに肺、胸膜、骨および肝臓への転移癌を含む。処置は手術、放射線治療、または、軽減療法の場合、ホルモン治療、またはインターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、モノクローナル抗体のような他の生物学的応答修飾剤と組合わせたアジュバント治療と見なされるべきである。
【0064】
臨床試験およびマモグラフィーは乳癌を示しているが、診断を成すために可能である組織生検の試験だけである。ATおよびATレセプターの分布パターンは、過形成(ATレセプターの位置)および侵襲性癌(ATレセプターの位置)の、したがって、腫瘍の悪性度の診断のマーカーとして使用できる。
【0065】
ATレセプターアンタゴニストは、異なる構造的性質を有する化合物を含む。例えば、公開番号443983の欧州特許出願(EP443983)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、その特許請求の範囲の対象は、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0066】

【化1】

の(S)−N−(1−カルボキシ−2−メチルプロピ−1−イル)−N−ペンタノイル−N−(2'(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]アミン[バルサルタン]およびその薬学的に利用可能な塩が好ましい。
【0067】
更に、公開番号253310の欧州特許出願(EP253310)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0068】
以下の式
【化2】

の化合物[ロサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0069】
更に、公開番号403159の欧州特許出願(EP403159)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0070】
以下の式
【化3】

の化合物[エプロサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0071】
更に、公開番号WO91/14679のPCT特許出願に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0072】
以下の式
【化4】

の化合物[イルベサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0073】
更に、公開番号420237の欧州特許出願(EP420237)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0074】
以下の式
【化5】

の化合物[E−1477]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0075】
更に、公開番号502314の欧州特許出願(EP502314)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0076】
以下の式
【化6】

の化合物[テルミサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0077】
更に、公開番号459136の欧州特許出願(EP459136)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0078】
以下の式
【化7】

の化合物[カンデサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0079】
更に、公開番号504888の欧州特許出願(EP504888)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0080】
以下の式
【化8】

の化合物[SC−52458]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0081】
更に、公開番号514198の欧州特許出願(EP514198)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0082】
以下の式
【化9】

の化合物[サプリサルタン]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0083】
更に、公開番号475206の欧州特許出願(EP475206)に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0084】
以下の式
【化10】

の化合物、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0085】
更に、公開番号WO93/20816のPCT特許出願に、特に、化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、それらを、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0086】
以下の式
【化11】

の化合物[ZD−8731]、およびその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0087】
ATレセプターリガンド(モジュレーター)は、異なる構造的性質を有する化合物を含む。例えば、WO94/13651に列記の化合物、特に化合物の請求項に、および作業実施例の最終生産物に列記の化合物が特記でき、その特許請求の範囲の対象は、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0088】
更に、WO94/13642、特に、化合物の請求項および作業実施例の最終生産物にに列記の化合物を、本明細書にこの公開を引用することにより包含させる。
【0089】
ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターリガンドは、各々、例えば、少なくとも一つの塩基中心を有し、酸付加塩を形成できる。これらは、例えば、鉱酸、例えば、硫酸、リン酸または水素化ハライド酸のような強無機酸を使用して、非置換であるか、または例えば、ハロゲンにより置換されているC−Cアルカンカルボン酸、例えば、酢酸のような、飽和または不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、ギ酸、フタル酸またはテレフタル酸のような、ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸のような、アミノ酸、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸のような、または安息香酸のような強有機カルボン酸を使用して、または、非置換または、例えば、ハロゲンにより置換されているC−Cアルカンスルホン酸またはアリールスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸を使用して、形成する。塩基との適当な塩の例は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩のような金属塩、またはモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリドン、モノ−、ジ−、またはトリ−低級アルキルアミン、例えば、エチル−、tert−ブチル、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチルプロピル−アミン、またはモノ−、ジ−またはトリ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンのようなアンモニアまたは有機アミンとの塩である。更に、対応する分子内塩を形成できる。
【0090】
本発明は、各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む、上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置のための、医薬製品を提供する。
【0091】
本発明はまた各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置のための医薬製品の製造における使用も提供する。
【0092】
本発明は、更に、治療的有効量の各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩を投与することを含む、上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連した状態または疾患の処置の方法を提供する。
【0093】
本発明はまた上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連した状態または疾患の処置のための、各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0094】
医薬製品は、恒温動物への経口のような経腸、およびまた直腸または非経腸投与用であり、製品は薬理学的活性化合物を単独で、または慣用的な薬学的補助物質と共に含む。例えば、医薬製品は約0.1から100%、好ましくは約1%から約80%の活性化合物を含む。経腸または非経腸、およびまた眼投与用の医薬製品は、たとえば、被覆錠剤、錠剤、カプセルまたは坐薬、およびまたアンプルのような単位投与形である。これらは、それ自体既知の方法で、例えば、慣用の混合、造粒、被覆、可溶化または凍結乾燥法を使用して調剤する。このように、経口使用のための医薬製品は、活性化合物と固体賦形剤を混合し、必要な場合、得られた混合物を造粒し、必須であるかまたは必要な場合、混合物または顆粒を錠剤または被覆錠剤コアに、適当な補助物質を添加した後に加工することにより得ることができる。
【0095】
活性化合物の投与量は、投与の形態、恒温動物種、年齢および/または個体の状態のような種々の因子に依存し得る。通常、経口投与のために、約10mgから約360mgの、例えば、バルサルタンの場合、約40mg、80mg、160mgまたは320mgの一日量が、75kgの体重の患者で概算される。
【0096】
本発明の更なる態様は、例えば、前記のような疾患および状態の処置に使用し得る、バルサルタンの固体経口投与形である。
【0097】
WO97/49394(その内容を引用して本明細書に包含させる、特に(しかし限定しないが)特許請求の範囲の対象)は、バルサルタン(所望により塩形)の、所望によりヒドロクロロチアジド(HCTZ)と組合わせた、例えば、圧密による、圧縮固体経口投与形を記載している。WO97/49394において、セルロースの好ましい範囲は、バルサルタン/HCTZ組成物では10から30%、例えば、21%、バルサルタン単独では5%としている。架橋ポリビニルピロリドン(Crospovidone)の好ましい範囲は10から20%、例えば13%とされている。
【0098】
徹底的な試験の後、驚くべきことに、バルサルタンの既知固体製剤のバイオアベイラビリティー特性が、微結晶性セルロースの比率の増加により改善できることが判明した。驚くべきことに、バルサルタンの該既知固体製剤の品質、例えば、良好な重量均質性および錠剤の良好な圧縮が、架橋PVPクロスポビドンの比率の減少により改善することが可能であることも判明した。
【0099】
したがって、更なる態様において、本発明は活性成分としてのバルサルタン、および固体経口投与形のコア成分の総重量を基本にして30重量%以上、例えば、31から65重量%、例えば50重量%の微結晶性セルロースを含む固体経口投与形に関する。
【0100】
更なる態様において、本発明は活性成分としてのバルサルタンおよび微結晶性セルロースを含み、バルサルタン対微結晶性セルロースの比率が2.5:1から0.3:1、例えば、2:1から1:1、例えば、1.4:1である、固体経口投与形に関する。
【0101】
更なる態様において、本発明の固体経口投与形は、該固体経口投与形のコア成分の総重量を基本にして、13重量%より少ない、例えば、2から10重量%のクロスポビドンを含む。
【0102】
好ましくは、バルサルタン対クロスポビドンの重量比は7:1から3:1、例えば、6:1から4:1、例えば、5.3:1である。
好ましくは、微結晶性セルロース対クロスポビドンの重量比は7:1から1:1、例えば、4:1から2:1、例えば、3.6:1である。
【0103】
本発明の固体経口投与形は、20から360mg、例えば、40、80、160、320mgのバルサルタンを含み得る。この範囲の投与量で、例えば、血圧低下における、処置柔軟性および効果は増加し得る。
【0104】
更なる態様において、本発明は
20から65%のバルサルタン
31から65%の微結晶性セルロース
2から13%のクロスポビドン
を含む固体経口投与形に関する。
【0105】
典型的な組成物は:
20から65%のバルサルタン
31から50%の微結晶性セルロース
2から10%のクロスポビドン
1から10%のステアリン酸マグネシウム
0.5から5%のコロイド状無水シリカ
を含み得る。
【0106】
所望により、コア組成物の1から10重量%、例えば、5から10重量%のCutina、またはコア組成物の1から10重量%、例えば、5から10重量%のステアリン酸を添加し得る。
【0107】
好ましくは、本発明の固体経口投与形は圧縮錠剤の形である。
更なる態様において、本発明は、250mgを越えて360mgまでの、例えば、320mgのバルサルタンを活性成分として含む、固体経口投与形、たとえば、圧縮錠剤に関する。
【0108】
固体経口製剤で一般的に使用されている滑沢剤および流動促進剤を使用し得、適当な物質の広範囲な文献を引用し、特に、その内容を本明細書に引用して包含させるFiedler's "Lexicon der Hilfstoffe" 4th Edition, ECV Aulendorf 1996および"Handbook of Pharmaceutical Excipients" Wade and Weller Ed. (1994)に見られる。
【0109】
本発明の固体経口投与形は糖衣錠の形であり得、この場合、固体経口投与形は典型的に糖、セラックまたは他の完全に当分野で一般的なフィルムコーティングでコーティングされて提供される。当分野で用いられるコーティングの多くの既知の方法、Accela Cota法による穴開きパンにおける、または水中スウォードコーティング(sword coating)法のための、例えば、Aeromatic、Glatt、WursterまたはHuettlinから入手可能な装置を使用した既知の方法による、例えば、流動床における噴霧コーティングに注目する。一般的に糖衣に使用する添加剤をこのような方法で用いる。例えば、使用し得るコーティングは、WO97/49394、Opadryに記載されているもの等を使用し得る。
【0110】
本発明の医薬組成物は、そのなかに包含される特定の活性剤の既知の処方に有用である。
【0111】
投与する活性剤および特定の製剤の正確な量は多くの因子、例えば、処置する状態、所望の処置期間および活性剤の放出速度に依存する。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、どの程度の期間、血漿中における特定の活性剤の濃度が、治療的効果の許容可能なレベルで残るかを決定する、既知のインビトロまたはインビボ法を基本にして決定し得る。
【0112】
例えば、臨床試験における本発明の組成物は、Diovan(登録商標)と同等なバイオアベイラビリティーを有する。
好ましくは本発明の固体形の崩壊速度は30分間で90%を越える。
【0113】
例えば、755キログラム哺乳類、例えばヒトに関して、および標準動物モデルにおいて、1日当り10mgから360mgのバルサルタンを使用し得る。本組成物により提供されるバルサルタンの優れた耐容性が、標準動物試験および臨床試験で観察され得る。
【0114】
その他の態様において、本発明は、上記のような固体経口投与形を製造するための方法を提供する。このような固体経口投与形は、WO97/49394(本明細書に引用して包含させる)のような、成分を、例えば、上記で定義ような、適当な量で混ぜ合わせ、単位投与形を形成する。
【0115】
例えば、
i)活性剤と薬学的に許容される添加剤を挽き、
ii)挽いた活性剤と添加剤の混合物を圧縮に付して、コプリメート(coprimate)(圧密塊)を形成し、
iii)コプリメートを顆粒の形に変換し、そして
iv)顆粒を圧縮して固体経口投与形を形成する
段階を含む、上記のような固体経口投与形態の製造法を提供する。
【0116】
本方法は、水の非存在下で行い、すなわち、乾燥圧縮法である。本方法は温度と湿度は環境条件で行い得る;本方法を乾燥雰囲気中で行うことを確実にする必要はない。
最初の挽く段階i)は、慣用の製粉法または微粉化法により行い得る。
【0117】
活性剤と添加剤を、個々にまたは一緒に、約0.1マイクロメートル(μ)から約1500μ、例えば、1.0μから900μ、例えば60μから600μの粒子サイズに製粉できる。活性剤と添加剤の両方の結晶の少なくとも90%がこれらの範囲にある。このサイズの粒子は、慣用の粉砕法、例えば、ジェットミル、ハンマーおよびスクリーンミル、ファインインパクト(fine impact)ミル、ボールミルまたはバイブレーターミル中での製粉により得られる。
【0118】
微粉化は、好ましくは、例えば、BRANSON Sonifierタイプの、超音波粉砕機を使用した既知の方法により、または高速撹拌器による、例えば、HOMOREXタイプの撹拌懸濁液の撹拌により、行う。
挽いた粒子は、所望により、既知の方法でこの段階でふるいにかけ、混合し得る。
【0119】
コプリメートを形成するための圧縮は、乾燥粉砕成分の圧密を必要とする。圧密は、スラッジング法、または、好ましくは、ローラー圧密を使用して行い得る。ローラー圧密装置は慣用であり、本質的に、互いの方に転がる二つのローラーを利用する。水撃ポンプはローラーの一方を他方に対して押し進め、スクリューコンベヤーシステムを介してローラー圧縮機に供給された粉砕粒子に対して、圧密力を働かせる。
【0120】
25から65kN、例えば、25から45kNの間の圧密力を使用し得る。驚くべきことに、この範囲の圧密力で、各粒子製剤に関して、固体経口投与形を得るために最小の圧密力を使用すべきであり、顆粒が望ましい速度で分離した最初の粒子に崩壊し、例えば、崩壊が最小圧密力を超えて圧縮された固体経口投与形よりも約6倍早く起こることが判明した。このような早い崩壊速度は錠剤では珍しく、カプセル製剤の崩壊速度と同等である。特定の最小圧密力は、ある製剤における活性剤含量に依存し、したがってまた存在する添加剤の量および性質に依存する。
【0121】
この情報から、当業者は慣用の実験を用いて、過度の負担なく、他の製剤の最小圧密力を明らかに決定できる。
【0122】
ローラー速度は1から20rpm、および好ましくは9から15rpmの間に設定し得る。ローラーを通過した後、詰まった塊(コプリメート)は分かれた薄いリボンに似ている。
【0123】
コプリメートをふるい、または製粉して顆粒を作る。尤も単純な形のふるい分けは、ローラーから出たコプリメートを、機械的圧力の下にふるいを通すことを含む。より好ましくは、コプリメートは振動ミル、例えば、MGI 624 Frewitt(Key International Inc.)を使用してふるう。
【0124】
顆粒の錠剤コアへの圧縮は、慣用の打錠機、例えば、EK-o Korsch偏心打錠機、または回転圧縮機で、例えば、2kNを越える圧縮で行うことができる。錠剤コアは、形が異なり得、例えば、球形、卵形、長方形、筒状、または他の適当な形であり得、また治療剤の濃度に依存してサイズが変わり得る。本発明の錠剤の特徴は、その中に包含された活性剤の量を考えると小さいサイズである。
【0125】
本発明の好ましい態様において、上記の圧縮法により得られた錠剤は、僅かに卵形である。錠剤の縁は面取りするか、丸め得る。
【0126】
本発明の特に好ましい態様において、固体経口投与形は、長さ:幅:高さの大きさの比率が、例えば、2.5−5.0:0.9−2.0:1.0、および好ましくは錠剤の底および上の面が互いに独立して平面であるか、または長手軸に対して凸状にカーブしている;側面は平面であり、先端部は任意の形であり、端は所望により面取りされているか、丸められている、錠剤の形に圧縮する。
【0127】
本発明の特に好ましい態様において、固体経口投与形は、長さが約10.0から15.0mm、幅が約5.0から6.0mmおよび高さが約3.0から4.0mmの卵形の錠剤の形に、顆粒から圧縮する。
【0128】
本発明の他の特定の好ましい態様において、固体経口投与形は、、長さが約15.0から18.0mm、幅が約6.0から9.0mmおよび高さが約3.5から5.0mmの卵形の錠剤の形に、顆粒から圧縮する。
【0129】
更に別の本発明の好ましい態様において、僅かに凸状の上部および下部面を有する本質的に円板形の錠剤を提供する。好ましくは、錠剤は直径約8から8.5mmおよび深さ約3から3.5mm、または直径約16mmおよび深さ約6mmを有する。錠剤は、約0.1cmから約1cm、例えば、0.1cmから約0.45cm、たとえば、0.2から0.6cm、たとえば、約0.125cmまたは0.25cmの容量を占める。
【0130】
それらは、更に、透明、無色、または着色され得、またこの製品に個別の見かけを付与し、直ぐに認識できるようにするマークし得る。色素の使用は、見かけを向上させるため、および組成物の同定のために働くことができる。薬学における使用に適した色素は、カロチノイド、酸化鉄またはクロロフィルを含む。
【0131】
以下の実施例は上記発明を説明する;しかし、本発明の範囲をいかなる方法でも限定する意図はない。
【実施例】
【0132】
製剤例1:
フィルム被覆錠剤:
【表6】

*) 処理中に除去した。
【0133】
フィルム被覆錠剤は下記の通り製造する:
バルサルタン、微結晶性セルロース、クロスポビドン、コロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化珪素/Aerosile 200の一部、二酸化珪素およびステアリン酸マグネシウムの混合物を、拡散ミキサー中で混合し、次いでスクリーニングミルを通してふるう。得られる混合物を、再び、拡散ミキサー中で予備混合し、ローラー圧縮機で圧縮し、次いでスクリーニングミルを通してふるう。得られた混合物に、残りのコロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化珪素/Aerosile 200を添加し、最終混合を拡散ミキサー中で成す。全混合物を回転打錠機で圧縮し、錠剤をDiolack pale redを使用して、穿孔パンでフィルムで被覆する。
【0134】
製剤例2:
フィルム被覆錠剤:
【表7】

フィルム被覆錠剤は、例えば、製剤例1に記載のように製造する。
【0135】
製剤例3:
フィルム被覆錠剤:
【表8】

*) Opadry(登録商標) brown OOF16711着色剤の組成は、下記に表にする。
**) 処理中に除去した。
【0136】
Opadry(登録商標)組成:
【表9】

フィルム被覆錠剤は、例えば、製剤例1に記載のように製造する。
【0137】
製剤例4:
カプセル:
【表10】

【0138】
錠剤は下記のように製造する:
造粒/乾燥
バルサルタンおよび微結晶性セルロースを、精製水中に溶解したポビドンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む造粒溶液で、流動床造粒機で噴霧造粒する。得られた顆粒を流動床ドライヤーで乾燥する。
【0139】
粉砕/混合
乾燥顆粒をクロスポビドンおよびステアリン酸マグネシウムと共に粉砕する。次いで、塊を円錐形スクリュータイプミキサーで約10分混合する。
【0140】
カプセル封入
空硬ゼラチンカプセルに、混合したバルク顆粒を制御温度および湿度条件下で充填する。充填したカプセルは、脱塵(dedustee)し、目視検査し、秤量し、品質保証部により検査される。
【0141】
製剤例5:
カプセル:
【表11】

製剤は、例えば、製剤例4に記載のように製造する。
【0142】
製剤例6:
硬ゼラチンカプセル:
【表12】

【0143】
実施例7から11:
【表13】

【0144】
実施例12:フィルム被覆錠剤(FCT)の溶解
溶解許容基準はQ=30分以内に75%(Padddle 50rpm、リン酸緩衝液pH6.8)である。
【表14】

【0145】
本発明は、さらに次の事項(態様)を包含する:
1.各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、上皮下領域におけるATレセプターの増加または上皮におけるATレセプターの増加に関連する状態または疾患の処置のための医薬製品の製造における使用。
2.各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、気管支炎、例えば、慢性気管支炎および気腫、喘息由来の同様なもの、嚢胞性繊維症、間質性肺弛緩、侵襲性肺癌、肺血管疾患および強制呼気の間の気流に対する抵抗性の増加のような、慢性閉塞性肺疾患からなる群から選択される閉塞性気道疾患の処置であり、非喫煙者および喫煙者の高血圧の処置に関連し得る、処置;肺状態および疾患の特定の形の処置;成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置;および侵襲性肺癌における上皮の増殖能の減少;セプシス症候群、肺炎のような肺損傷形成、胃内容物の吸引、胸部外傷、ショック、火傷、脂肪エンボリア(embolia)、心肺バイパス、O毒性、出血性膵炎、間質性および気管支肺胞炎症、上皮および間質性細胞の増殖、コラーゲン蓄積、繊維症の処置のための医薬製品の製造における使用。
3.各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、気管支炎、例えば、慢性気管支炎または気腫のような慢性閉塞性肺疾患、または喘息の処置のための医薬製品の製造における使用。
4.各々ATレセプターアンタゴニストまたはATレセプターモジュレーター、またはそれらの薬学的に許容される塩の、侵襲性肺および侵襲性乳癌の処置のための医薬製品の製造における使用。
5.事項1から4のいずれかの記載にしたがった:
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

からなる群から選択される、ATレセプターアンタゴニスト、または、いずれの場合も、それらの薬学的に許容される塩の使用。
6.事項1から4のいずれかの記載にしたがった、式
【化16】

のバルサルタン、またはその塩の使用。
7.遊離形のバルサルタン、およびコア成分の総重量を基本にして30重量%以上の微結晶性セルロースを含む、固体経口投与形。
8.65%までの微結晶性セルロースを含む、事項7記載の固体経口投与形。
9.12%以下のクロスポビドンを含む、事項7または8に記載の固体経口投与形。
10.遊離形のバルサルタンおよび微結晶性セルロースを含み、バルサルタン対微結晶性セルロースの重量比が2.5:1から0.3:1である、固体経口投与形。
11.20から65%のバルサルタンを含む、事項7から10のいずれかに記載の固体経口投与形。
12.20から360mgのバルサルタンを含む、事項7から11のいずれかに記載の固体経口投与形。
13.20から65%のバルサルタン
31から65%の微結晶性セルロース
2から13%のクロスポビドン
を含む固体経口投与形。
14.250mgを越え360mgまでのバルサルタンを活性剤として含む、固体経口投与単位剤形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基形のバルサルタンおよびコア成分の総重量を基本にして30重量%以上の微結晶性セルロースを含む、錠剤。
【請求項2】
最大65%の微結晶性セルロースを含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
13重量%より少ないクロスポビドンを含む、請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
遊離形態のバルサルタンと微結晶性セルロースを含み、該バルサルタン対該微結晶性セルロールの重量比が2.5:1から0.3:1である、請求項1から3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
20から65%のバルサルタンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
20から360mgのバルサルタンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
20から65%のバルサルタン
31から65%の微結晶性セルロース
2から13%のクロスポビドン
を含む、錠剤。
【請求項8】
250mgを越え360mgまでのバルサルタンを活性剤として含む、請求項1から7のいずれかに記載の錠剤。

【公開番号】特開2010−90169(P2010−90169A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8140(P2010−8140)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願2000−590630(P2000−590630)の分割
【原出願日】平成11年12月22日(1999.12.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】