説明

ATMセル転送システムおよびアドレスポーリング制御方法

【課題】各PHYレイヤ機能部へのセル送出頻度に応じたポーリングを実施することで、効率のよいATMセルの転送を可能とする。
【解決手段】セルバッファメモリ12は、ATMスイッチング機能部11によりスイッチングされたATMセルを、各PHYレイヤ機能部2毎に格納する。セルカウンタ14は、セルバッファメモリ12に格納された各PHYレイヤ機能部2毎のATMセルを待機セル数としてカウントする。送信アドレス制御部15は、セルカウンタ14によりカウントされた各PHYレイヤ機能部2毎の待機セル数と、閾値設定レジスタ16に設定された閾値との比較を行い、この比較結果に基づいてATMセル送信部13を制御することによりアドレスポーリングの制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部とがUTOPIAレベル2バスインタフェース(以下、UTOPIA L2バス)により接続されたATMセル転送システムに関し、特に、このATMセル転送システムにおいてATMレイヤ機能部から複数のPHYレイヤ機能部に対してポーリングを行う際のアドレスを決定するためのアドレスポーリング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部をマルチ接続する際のATMセル転送方式として、ATMフォーラムにUTOPIAレベル2バスインタフェース(以下、UTOPIA L2バス)が規定されている。
【0003】
図6にATMレイヤ機能部とPHYレイヤ機能部とがUTOPIA L2バスにより接続された従来のATMセル転送システムの構成を示す。この従来のATMセル転送システムでは、図6に示されるように、ATMレイヤ機能部71とPHYレイヤ機能部2とは、UTOPIA L2に基づいたバス形式で接続される。ATMレイヤ機能部71は、UTOPIA L2バス3のマスタとして動作し、ATMセルを各PHYレイヤ機能部2に送信する。ATMレイヤ機能部71には、最大31個のPHYレイヤ機能部2が接続可能となっている。
【0004】
UTOPIA L2バス3は、ATMレイヤ機能部71からPHYレイヤ機能部2にATMセルを転送する送信データ(TxDATA)、PHYレイヤ機能部2をポーリングするための送信アドレス(TxADDR)、PHYレイヤ機能部2がATMレイヤ機能部71にセルの受信可否を報告するための送信クラブ(TxClav)、ATMレイヤ機能部71がセル送信時にPHYレイヤ機能部2に送信データ有効を示す送信イネーブル(TxEnb)、PHYレイヤ機能部2にデータの先頭位置を通知する送信SOC(TxSOC)からなる制御信号にて成り立っている。全ての制御信号は、送信クロック(TxCLK)に同期して駆動される。送信アドレスTxADDRは5ビットで構成され、PHYレイヤ機能部2のPHY番号(00h〜1Eh)を示す。
【0005】
UTOPIA L2バス3では、ATMレイヤ機能部71からPHYレイヤ機能部2へのセル転送処理について、複数のPHYレイヤ機能部2にそれぞれPHY番号をあらかじめ割り当て、ATMレイヤ機能部71から送信アドレス(TxADDR)としてPHY番号をポーリングすることで、セル送信先のPHYレイヤ機能部2の受信可否を認識し、セルを転送する方法が規定されている。
【0006】
このようなATMセル転送システムにおける従来のアドレスポーリング制御方法におけるATMセル転送の動作を図7および図8を参照して説明する。
【0007】
従来のATMレイヤ機能部71の基本構成例を図7に、そのタイミングチャートを図8に示す。
【0008】
このATMレイヤ機能部71は、ATMスイッチング機能部と、セルバッファメモリ12と、ATMセル送信部13と、送信クロック生成部17とを備えている。
【0009】
ATMスイッチング機能部11は、ATMセルのヘッダの情報に基づき、セルをPHYレイヤ機能部2毎に区分けされたセルバッファメモリ12に格納する。ATMスイッチング機能部11からセルバッファメモリ12への格納動作は、ATMセル送信部13のセル送信動作と非同期で独立して行われる。
【0010】
ATMセル送信部13は、クロック生成部17にて生成されたTxCLKに基づいてTxADDRを順次変化(図8では昇順を想定)させてアドレスポーリングを行い、各PHYレイヤ機能部2の受信可否を確認している。またアドレスポーリングにおいて、ATMセル送信部13は、PHY番号「1Fh」を未使用番号として、有効アドレスの間に挿入しウェイト時間を設けることで、PHYレイヤ機能部2の応答を待つ。
【0011】
図8において、クロック「4」のタイミングでは、TxADDR「01h」が送信されており、これに対応したPHYレイヤ機能部(01h)が選択される。PHYレイヤ機能部(01h)は自分に割り当てられているPHY番号と同じTxADDRを認識すると、セルを受信可能な場合には、次のクロック「5」のタイミングでTxClavにて通知する。ATMセル送信部13はクロック「5」のタイミングでアドレスポーリングに「1F」を挿入しウェイト時間を置いており、この時にTxClavが入力されると選択したPHYレイヤ機能部(01h)がデータ受信可能であることを認識する。
【0012】
選択したPHYレイヤ機能部(01h)が受信可能と認識されると、ATMセル送信部13は、セルバッファメモリにそのPHYレイヤ機能部(01h)に対応した送信待機セルがある場合、クロック「6」のタイミングでTxADDR「01h」を再度送信する。そして、PHYレイヤ機能部(01h)がTxADDRを認識するクロック「7」のタイミングにてデータの転送を開始する。また、データの転送開始と同時に、送信データ有効を示すTxEnbと、データ転送の先頭を示すTxSOCを通知する。PHYレイヤ機能部(01h)はTxADDR、TxEnb、およびTxSOCに基づいて自分宛てのセルを受信する。
【0013】
PHYレイヤ機能部(01h)へのセル転送中、アドレスポーリングは次のPHY番号「02h」から継続して行われる(クロック「8」のタイミング)。上記PHYレイヤ機能部(01h)へのアドレスポーリングと同様に行われ、クロック「13」のタイミングに示すように次にセルを受信可能なPHYレイヤ機能部(04h)が認識されると、ATMセル送信部13は次のセル転送にPHYレイヤ機能部(04h)を予約する。クロック「59」のタイミングにてPHYレイヤ機能部(01h)へのセル転送が終了すると、ウェイトを1クロック置いてクロック「61」のタイミングから予約されたPHYレイヤ機能部(04h)へのセル転送を開始する。
【0014】
上記の従来の転送方法では、各PHYレイヤ機能部2へのポーリングは、送信頻度に関わらず全PHYレイヤ機能部2が一定の回数で行われている。
【0015】
仮に、セルバッファメモリ(01h)に送信待機セルが10セル格納されており、他のPHYレイヤ機能部2行きの送信待機セルは0セルであったとする。この場合においても、ポーリング動作が全PHYレイヤ機能部2に対して一定の回数で行われているため、PHYレイヤ機能部(01h)への送信セルは他の送信セルがないのにも関わらずポーリング周期×N(Nはセルバッファメモリに格納されている順序)時間セルバッファメモリ12に滞留することとなる。
【0016】
上述したように従来のセル転送処理のポーリング方法は、回路規模を簡略化するために、昇順または降順といった順序的な確認方法がとられている。また、ATMレイヤ機能部71が扱える最大のPHYレイヤ機能部数のPHY番号を通知する方法で、PHYレイヤ機能部2の使用、未使用に関わらず行われている。
【0017】
上記ポーリングでは、各PHYレイヤ機能部2へのセルの送出頻度、または各PHYレイヤ機能部2の使用、未使用に関わらず一律(各PHYレイヤ機能部へのセル送出が同一帯域)にて送信が行われている。このため送信頻度の多いPHY機能部のセルの滞留時間が増加し、場合によってはセルバッファメモリがオーバーフローしてセルの廃棄を引き起こすという問題がある。
【0018】
このような問題の解決を目的としたポーリング制御方法が、例えば、特許文献1に紹介されている。このポーリング制御方法は、PHY番号変換レジスタ書き込み機能とPHY番号変換レジスタ機能を備え、アドレスポーリングの順序を任意に変更可能とするものである。しかし、PHYレイヤ機能部の使用/未使用や送信頻度を判断する機能を有していない。このため、使用者が直接レジスタに書き込みを行う必要があり、装置が自立的にポーリング順序を変更することが出来ない。これは、多様に変化するトラフィック状況に合わせた柔軟な対応が出来ないという欠点がある。
【特許文献1】特開平11−27276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述した従来のポーリングでは、各PHYレイヤ機能部へのセルの送出頻度、または各PHYレイヤ機能部の使用、未使用に関わらず一律(各PHYレイヤ機能部へのセル送出が同一帯域)にて送信が行われている。このため送信頻度の多いPHYレイヤ機能部のセルの滞留時間が増加し、場合によってはセルバッファメモリがオーバーフローしてセルの廃棄を引き起こすという問題があった。
【0020】
本発明の目的は、各PHYレイヤ機能部へのセル送出頻度に応じたポーリングを実施することで、効率のよいATMセルの転送を可能とするシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部とがUTOPIAレベル2バスインタフェースによりマルチ接続されたATMセル転送システムに対して適用される。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明のATMセル転送システムは、ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部とがUTOPIAレベル2バスインタフェースにより接続されたATMセル転送システムであって、
前記ATMレイヤ機能部が、
前記PHYレイヤ機能部に送信しようとするATMセルを、そのヘッダの情報に基づいて宛先となるPHYレイヤ機能部毎にスイッチングするATMスイッチング機能部と、
前記ATMスイッチング機能部によりスイッチングされたATMセルを前記各PHYレイヤ機能部毎に格納するセルバッファメモリと、
前記セルバッファメモリに格納された前記各PHYレイヤ機能部毎のATMセルを待機セル数としてカウントするセルカウンタと、
UTOPIAレベル2に準拠したATMセルの送信処理を行うATMセル送信部と、
待機セル数の閾値と該閾値により設定された待機セル数の範囲に応じた送信回数が記憶されている閾値設定レジスタと、
前記セルカウンタによりカウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、前記閾値設定レジスタに設定された閾値との比較を行い、該比較結果に基づいて前記ATMセル送信部を制御することによりアドレスポーリングの制御を行う送信アドレス制御部とを備えている。
【0023】
また、前記送信アドレス制御部は、前記セルカウンタによりカウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、前記閾値設定レジスタに設定された閾値との比較結果に基づいて、前記各PHYレイヤ機能部毎の1ポーリング周期における送信回数を決定し、決定した送信回数が実現されるように前記ATMセル送信部の制御を行うようにしてもよい。
【0024】
さらに、前記送信アドレス制御部を、
前記ATMセル送信部から各PHYレイヤ機能部に出力されるアドレス信号を監視して、ポーリング周期毎にポーリング回数判定の契機となる信号を出力するとともに、ポーリング制御用として前記アドレス信号を転送するポーリングアドレス監視部と、
前記ポーリングアドレス監視部からの信号を契機に前記セルカウンタの待機セル数を前記閾値設定レジスタに設定されている閾値と比較して、前記各PHYレイヤ機能部毎の1ポーリング周期における送信回数を決定するポーリング回数判定部と、
前記ポーリング回数判定部により決定された前記各PHYレイヤ機能部毎の送信回数を、次のポーリングアドレス周期にて前記ポーリングアドレス監視部から転送されてきたアドレス信号に基づいて制御タイミングを判断し、前記ATMセル送信部のポーリングアドレス生成に反映させるポーリング制御部とから構成するようにしてもよい。
【0025】
本発明によれば、セルカウンタにてセルバッファメモリに格納されたPHYレイヤ機能部毎の待機セル数をカウントし、送信アドレス制御部において閾値設定レジスタに設定された閾値と比較することで、各PHYレイヤ機能部への待機セル数に応じてアドレスポーリングの回数を変更する制御が行われる。これにより、特定のPHYレイヤ機能部行きのセルの滞留と廃棄を抑制するとともに、PHYレイヤ機能部毎のセルの滞留時間を均一とした効率のよいATMセル転送を可能とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、セルカウンタによりセル送信の頻度を判断し、送信アドレス制御部ではこの送信頻度に応じてPHYレイヤ機能部2へのポーリング回数を制御するようにしているので、送信頻度の高いセルのポーリングが優先して実施され、特定のPHYレイヤ機能部行きのセルの滞留と廃棄を抑制するとともに、PHYレイヤ機能部毎のセルの滞留時間を均一とした効率のよいATMセル転送が可能となるというという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態のATMセル転送システムにおけるATMレイヤ機能部1の構成を示すブロック図である。図1において、図7中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0029】
本実施形態のATMセル転送システムは、図6に示した従来のATMセル転送システムに対して、ATMレイヤ機能部71を図1に示したATMレイヤ機能部1に置き換えた構成となっている。
【0030】
本実施形態のATMセル転送システムにおけるATMレイヤ機能部1は、図1に示されるように、ATMスイッチング機能部11と、セルバッファメモリ12と、ATMセル送信部13と、セルカウンタ14と、送信アドレス制御部15と、閾値設定レジスタ16と、送信クロック生成部17とを備えている。
【0031】
本実施形態におけるATMレイヤ機能部1は、図7に示した従来のATMセル転送システムにおけるATMレイヤ機能部71に対して、セルカウンタ14と、送信アドレス制御部15と、閾値設定レジスタ16とが新たに追加された構成となっている。
【0032】
ATMスイッチング機能部11は、PHYレイヤ機能部2に送信しようとするATMセル(以下、セルと略す。)を、そのヘッダの情報に基づいて宛先となるPHYレイヤ機能部毎にスイッチングしてセルバッファメモリ12に格納する。
【0033】
セルバッファメモリ12は、ATMスイッチング機能部11によりスイッチングされたATMセルを、各PHYレイヤ機能部2毎に格納する。
【0034】
セルカウンタ14は、セルバッファメモリ12に格納された各PHYレイヤ機能部2毎のATMセルを待機セル数としてカウントする。
【0035】
ATMセル送信部13は、UTOPIAレベル2に準拠したATMセルの送信処理を行う。
【0036】
閾値設定レジスタ16は、待機セル数の閾値とこの閾値により設定された待機セル数の範囲に応じた送信回数が記憶されている。
【0037】
送信アドレス制御部15は、セルカウンタ14によりカウントされた各PHYレイヤ機能部2毎の待機セル数と、閾値設定レジスタ16に設定された閾値との比較を行い、この比較結果に基づいてATMセル送信部13を制御することによりアドレスポーリングの制御を行う。さらに具体的には、送信アドレス制御部15は、セルカウンタ14によりカウントされた各PHYレイヤ機能部2毎の待機セル数と、閾値設定レジスタ16に設定された閾値との比較結果に基づいて、各PHYレイヤ機能部2毎の1ポーリング周期における送信回数を決定し、決定した送信回数が実現されるようにATMセル送信部13のアドレスポーリングの回数制御を行う。
【0038】
例えば、セルバッファメモリ12にPHYレイヤ機能部(01h)行きのセルが10セル滞留している状態とする。この時の閾値設定レジスタ16に、待機セル数の閾値として「5」、送信回数として「2」が設定されていたとすると、次のアドレスポーリングにおいて、アドレス「01」への送信が続けて2回実施される。
【0039】
このように各PHYレイヤ機能部2の送信頻度をセルバッファメモリの待機セル数から判断し、送信頻度に応じてPHYレイヤ機能部2へのポーリング回数を制御することで、特定PHYレイヤ機能部2のセルの滞留と廃棄を抑制するとともに、PHY機能部2毎のセルの滞留時間を均一とした効率のよいATMセルの転送を実現する。
【0040】
次に、本実施形態のATMセル転送システムにおける特徴部分である送信アドレス制御部15の構成を図2に示す。
【0041】
送信アドレス制御部15は、図2に示されるように、ポーリングアドレス監視部21と、ポーリング回数判定部22と、ポーリング制御部23とから構成されている。
【0042】
ポーリングアドレス監視部21は、ATMセル送信部13から各PHYレイヤ機能部2に出力されるアドレス信号(TxADDR)を監視して、ポーリング周期毎にポーリング回数判定の契機となる信号を出力する。また、ポーリングアドレス監視部21は、ポーリング制御用としてTxADDRをポーリング制御部23に転送する。
【0043】
ポーリング回数判定部22は、ポーリングアドレス監視部21からの信号を契機にセルカウンタ14のカウント値を閾値設定レジスタ16の設定値と比較して、PHYレイヤ機能部2毎に1ポーリング周期における送信回数を決定し、ポーリング制御部23に送信する。
【0044】
ポーリング制御部23は、ポーリング回数判定部22から受信したPHYレイヤ機能部毎の送信回数の情報を、次のポーリングアドレス周期にてATMセル送信部13から受信したTxADDRで制御タイミングを判断し、ATMセル送信部13のポーリングアドレス生成に反映させる。
【0045】
次に、本実施形態のATMセル転送システムの動作を図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
セルカウンタ14と送信アドレス制御部15の動作について説明する。(図2参照。)
ポーリングアドレス監視部21は、ATMセル送信部13から各PHYレイヤ機能部2に出力されるアドレス信号(TxADDR)を監視する。ポーリング周期毎(例えば、TxADDR「00h」を認識ごと)にポーリング回数判定の契機となる信号をポーリング回数判定部22に出力する。
【0047】
ポーリング回数判定部22は、ポーリングアドレス監視部21からの信号を契機にセルカウンタ14のカウント値を読み込み、同時にセルカウンタ14のカウント値をクリアする。読み込んだ値を閾値設定レジスタ16の設定値と比較して、PHYレイヤ機能部2毎に1ポーリング周期における送信回数を決定し、ポーリング制御部23に送信する。
【0048】
ポーリング制御部23は、ポーリング回数判定部22から受信したPHYレイヤ機能部2毎の送信回数の情報を、1ポーリング周期後にポーリングアドレス監視部21から受信したTxADDRで制御タイミングを判断し、ATMセル送信部13のポーリングアドレス生成に反映させる。
【0049】
ポーリング制御部23からATMセル送信部13へのポーリング回数制御は、「REPEAT」、「SKIP」の2つの制御信号により行う。REPEATは、当該PHYレイヤ機能部2へのセル送信の繰り返し要求を表す信号である。SKIPは、次のPHYレイヤ機能部2へのポーリングのSKIP要求を表す。SKIPは5ビットであり、ポーリングアドレスのSKIP幅を通知する。
【0050】
図3に、本実施形態のATMセル転送システムにおける処理の1例を示す。ここでは、説明を簡単にするため、アドレス数を31から4に置き換える。つまり、ここでは、PHYレイヤ機能部2のアドレスとしては、00h、01h、02h、03hの4つのみが存在するものとして説明を行う。
【0051】
また、閾値設定レジスタ16には、複数の閾値を設定可能とする。ここで、閾値として「セル数=0、送信回数=0」と設定することで、送信するセルがないPHYレイヤ機能部2へのポーリングをなくし、無駄なセルの滞留時間を軽減することが可能である。また、待機セルの多いPHYレイヤ機能部2については、例えば例として閾値を「待機セル数=5以上、送信回数=2」と設定することで、待機セル数の多いPHYレイヤ機能部2については1周期におけるポーリング回数を増やし、滞留時間を軽減することが可能としている。
【0052】
ここで、セルカウンタ14における各PHYレイヤ機能部(00h、01h、02h、03h)2の待機セル数が、それぞれ「1」、「6」、「0」、「2」であったとする。すると、ポーリング回数判定部22は、閾値設定レジスタ16における設定値を参照して、PHYレイヤ機能部(00h)2に対する送信回数を1回であると決定し、PHYレイヤ機能部(01h)2に対する送信回数を2回であると決定し、PHYレイヤ機能部(03h)2に対する送信回数を0回であると決定し、PHYレイヤ機能部(03h)2に対する送信回数を1回であると決定する。
【0053】
そのため、ポーリング制御部23は、1ポーリング周期において、各PHYレイヤ機能部(00h、01h、02h、03h)2に対して当初はそれぞれ1回ずつポーリングを行うはずたったのを、アドレス00hに対しては1回、アドレス01hに対しては2回、アドレス02hに対しては0回、アドレス03hに対しては1回のポーリングが行われるようにATMセル送信部13を制御する。
【0054】
次に、図4を参照して、本実施形態におけるATMレイヤ機能部1の動作を説明する。図4は、本発明におけるポーリング回数制御のタイミングチャートである。
【0055】
ATMレイヤ機能部1とPHYレイヤ機能部2間の基本的なセル転送動作は、従来のATMセル転送システムにおける動作と同様である。ATMレイヤ機能部1は、TxADDRにてPHYレイヤ機能部2のポーリングを行い、選択したPHYレイヤ機能部2からのTxClavにて受信可能を認識すると、TxDATA、TxEnb、およびTxSOCの制御信号を駆動して、PHYレイヤ機能部2へセルの転送を行う。
【0056】
先に説明した送信アドレス制御部15の動作により、PHYレイヤ機能部(01h)2のセルの滞留が確認されポーリング回数判定部22にて「送信回数=2」と判断されていたとする。アドレスポーリングにおいて、クロック「4」のタイミングでPHYレイヤ機能部「01h」が選択されると、ポーリング制御部23はクロック「5」のタイミングにてREPEAT信号を駆動し、ATMセル送信部13にPHYレイヤ機能部(01h)へのセル転送の繰り返し要求を通知する。ATMセル送信部13は、REPEAT信号にてPHYレイヤ機能部(01h)へのポーリングの繰り返しを認識し、REPEAT信号駆動中はアドレスポーリングを停止する。アドレスポーリング停止中のTxADDRは送信中のPHYレイヤ機能部(01h)2に固定とする。
【0057】
ATMセル送信部13からPHYレイヤ機能部(01h)2へのセル転送動作は、従来と同様に行われる。クロック「59」のタイミングにてPHYレイヤ機能部(01h)2へのセル転送が終了すると、ウェイトを1クロック置いてクロック「61」のタイミングから繰り返し要求されている(01h)への2セル目の転送を開始する。
【0058】
ポーリング制御部23は、2セル目への転送が開始した次のクロック「62」のタイミングでREPEAT信号の駆動をやめて、ATMセル送信部13へ繰り返し要求解除の通知を行う。ATMセル送信部13は、REPEAT信号にて繰り返し要求解除を認識してクロック「63」のタイミングよりアドレスポーリングを再開する。
【0059】
上記のように、ポーリング制御部23は、ポーリング回数判定部22にてPHYレイヤ機能部の送信回数が「N回」であった場合、ATMセル送信部13にREPEAT信号を「N−1セル」分出力することで、複数送信制御を実現する。
【0060】
またPHYレイヤ機能部(03h)2のセルの滞留がなく、ポーリング回数判定部22にて「送信回数=0」と判断されていたとする。ポーリング制御部23は、クロック「63」のタイミングにてTxADDR(02h)を認識すると、クロック「64」のタイミングでSKIP信号を駆動する。ATMセル送信部13は、SKIP信号にてSKIPを認識し、クロック「65」のタイミングでPHYレイヤ機能部(03h)2をスキップしてPHYレイヤ機能部(04h)2からポーリングする。
【0061】
上記のように、ポーリング制御部23は、ポーリング回数判定部22にてPHYレイヤ機能部2の送信回数が「0回」であった場合、ATMセル送信部13にSKIP信号を出力することで、当該PHYレイヤ機能部2へのポーリングのSKIPを実現する。SKIP信号は5ビットとして、5ビットにてSKIP幅を表す。もし、PHYレイヤ機能部(03h)2からPHYレイヤ機能部(07h)2まで「送信回数=0」と判定されている場合、SKIP信号を「05h」と通知する。ATMセル送信部13はSKIP幅を認識して、クロック「65」のタイミングでPHYレイヤ機能部2を5つスキップしたPHYレイヤ機能部(08h)2からポーリングする。
【0062】
以上の転送処理により本実施形態によればセルの送信頻度を判断するセルカウンタ14と、この送信頻度からポーリング回数を制御する送信アドレス制御部15を備えたことにより、セル送信の頻度を判断し、送信頻度に応じてPHYレイヤ機能部2へのポーリング回数を制御するようにしているので、トラフィックの状況に合わせて柔軟に帯域を変更することが可能となる。また、未使用PHYのポーリングをSKIPしてポーリングアドレスを制限することから効率のよいATMセルの転送を可能とする。そして、送信頻度の高いセルのポーリングを複数回実施することで、特定PHYレイヤ機能部2行きのセルの滞留と廃棄を抑制することができる。
【0063】
また、同じくセルの送信頻度を判断するセルカウンタ14と送信頻度からポーリング回数を制御する送信アドレス制御部15を有し、不要なPHY機能部2へのポーリングをSKIP制御することで、ポーリング周期を短縮した効率のよいセル転送が可能となる。
【0064】
さらに、セルバッファメモリ12の状況からセルの送信頻度を1ポーリング周期で監視しているので、予測の難しいトラフィックの状況に応じて柔軟に対応し、物理レイヤレベルでの帯域変更を行うことが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態のATMセル転送システムについて説明する。
【0066】
上記第1の実施形態において説明したポーリング制御方法は、ATMレイヤ機能部からPHYレイヤ機能部へのセル送信処理のポーリングに適応したものである。略同様な方法で本発明をATMレイヤ機能部のセル受信処理のポーリング、つまりPHYレイヤ機能部からATMレイヤ機能部へのセル送信処理に適応することが可能である。本発明の第2の実施形態のATMセル転送システムは、PHYレイヤ機能部からATMレイヤ機能部へのセル送信処理に本発明を適応したものである。
【0067】
図5に本発明の第2の実施形態のATMセル転送システムの構成を示す。本実施形態は、ATMレイヤ機能部51と複数のPHYレイヤ機能部52とがUTOPIAレベル2バスインタフェース3によりマルチ接続された構成となっている。
【0068】
本実施形態の各PHYレイヤ機能部52は、それぞれ、UTOPIAレベル2のスレーブとしてATMレイヤ機能部51行きのセルの送信処理を行うATMセル送信部25と、ATMレイヤ機能部行きのセルが格納されるセルバッファメモリ26と、セルバッファメモリに格納されたセルのカウントを行うセルカウンタ27と、閾値設定レジスタ28と、セルカウンタ27のカウントセル数と閾値設定レジスタ28の値を比較しセル数が閾値を超えていた場合にアドレスポーリングの制御要求を行う判定部29を有する。
【0069】
またATMレイヤ機能部51は、UTOPIAレベル2のマスタとしてセルの受信処理を行うATMセル受信部30と、PHYレイヤ機能部2からの要求に基づき受信アドレスポーリングの制御を行う受信アドレス制御部31と、受信アドレスの制御における指標となる送信回数設定レジスタ32とを有する。
【0070】
UTOPIAレベル2において、ATMレイヤ機能部51の各PHYレイヤ機能部52からのセル受信動作は、PHYレイヤ機能部52からATMレイヤ機能部51へATMセルを転送する受信データ(RxDATA)、PHYレイヤ機能部52をポーリングするための受信アドレス(RxADDR)、PHYレイヤ機能部52がATMレイヤ機能部51に受信セルの有無を通知するための受信クラブ(RxClav)、ATMレイヤ機能部1がセル受信時にPHYレイヤ機能部52に受信データ有効を示す受信イネーブル(RxEnb)、PHYレイヤ機能部52がATMレイヤ機能部51に受信データの先頭位置を通知する受信SOC(RxSOC)からなる制御信号により実現されている。
【0071】
PHYレイヤ機能部52は、ATMレイヤ機能部51からのRxADDRにて自身のPHY番号を認識し、ATMレイヤ機能部51行きのセルがセルバッファに格納されている場合、RxClavにてATMレイヤ機能部51に通知する。ATMレイヤ機能部51は、RxClavにて受信セルの有無を認識しPHYレイヤ機能部52からのセル受信処理へと移行する。
【0072】
本実施形態では、PHYレイヤ機能部52の判定部29にて、一定周期(ポーリング周期)でセルバッファメモリ26に格納されたセル数をセルカウンタ27から確認を行い、閾値設定レジスタ28の値以上のセルの滞留が見られた場合、ATMレイヤ処理部51に受信ポーリング制御の要求をREQUEST信号にて通知する。ATMレイヤ処理部51では、PHYレイヤ機能部52からのREQUEST信号にてPHYレイヤ機能部52のセル滞留を認識する。そして受信アドレス制御部31が次のポーリング周期において、送信回数設定レジスタ32に設定された回数でATMセル受信部30に対して当該PHYレイヤ機能部52のポーリングの繰り返し制御を行う。
【0073】
これにより、ATMレイヤ機能部51がPHYレイヤ機能部52からのREQUEST信号により受信頻度を判断し、セルが滞留しているPHYレイヤ機能部52から受信回数を制御することで、PHYレイヤ機能部52のセルの滞留を抑制した効率よいセル転送を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態のATMセル転送システムにおけるATMレイヤ機能部1の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の送信アドレス制御部15の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のATMセル転送システムにおける処理の1例を示す図である。
【図4】図1のATMセル転送システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態のATMセル転送システムの構成を示すブロック図である。
【図6】従来のATMセル転送システムの構成を示すブロック図である。
【図7】従来のATMセル転送システムにおけるATMレイヤ機能部71の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示したATMレイヤ機能部71の動作を示すタイミングチャートであある。
【符号の説明】
【0075】
1 ATMレイヤ機能部
2 PHYレイヤ機能部
3 UTOPIAレベル2バスインタフェース(UTOPIA L2バス)
11 ATMスイッチング機能部
12 セルバッファメモリ
13 ATMセル送信部
14 セルカウンタ
15 送信アドレス制御部
16 閾値設定レジスタ
17 送信クロック生成部
21 ポーリングアドレス制御部
22 ポーリング回数判定部
23 ポーリング制御部
25 ATMセル送信部
26 セルバッファメモリ
27 セルカウンタ
28 閾値設定レジスタ
29 判定部
30 ATMセル受信部
31 受信アドレス制御部
32 送信回数設定レジスタ
33 受信クロック生成部
51 ATMレイヤ機能部
52 PHYレイヤ機能部
71 ATMレイヤ機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部とがUTOPIAレベル2バスインタフェースにより接続されたATMセル転送システムにおいて前記ATMレイヤ機能部から前記複数のPHYレイヤ機能部に対してポーリングを行う際のアドレスを決定するためのアドレスポーリング制御方法であって、
前記ATMレイヤ機能部から前記PHYレイヤ機能部に送信しようとするATMセルを、そのヘッダの情報に基づいて宛先となるPHYレイヤ機能部毎にスイッチングするステップと、
スイッチングされた前記ATMセルを前記各PHYレイヤ機能部毎に格納するステップと、
格納された前記各PHYレイヤ機能部毎のATMセルを待機セル数としてカウントするステップと、
カウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、予め設定された待機セル数の閾値との比較を行い、該比較結果に基づいて前記ATMセル送信部を制御することによりアドレスポーリングの制御を行うステップと、
を備えたアドレスポーリング方法。
【請求項2】
前記アドレスポーリングの制御を行うステップでは、カウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、予め設定された閾値との比較結果に基づいて、前記各PHYレイヤ機能部毎の1ポーリング周期における送信回数を決定し、決定した送信回数が実現されるようにATMセルの送信制御を行う請求項1記載のアドレスポーリング方法。
【請求項3】
ATMレイヤ機能部と複数のPHYレイヤ機能部とがUTOPIAレベル2バスインタフェースにより接続されたATMセル転送システムであって、
前記ATMレイヤ機能部が、
前記PHYレイヤ機能部に送信しようとするATMセルを、そのヘッダの情報に基づいて宛先となるPHYレイヤ機能部毎にスイッチングするATMスイッチング機能部と、
前記ATMスイッチング機能部によりスイッチングされたATMセルを前記各PHYレイヤ機能部毎に格納するセルバッファメモリと、
前記セルバッファメモリに格納された前記各PHYレイヤ機能部毎のATMセルを待機セル数としてカウントするセルカウンタと、
UTOPIAレベル2に準拠したATMセルの送信処理を行うATMセル送信部と、
待機セル数の閾値と該閾値により設定された待機セル数の範囲に応じた送信回数が記憶されている閾値設定レジスタと、
前記セルカウンタによりカウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、前記閾値設定レジスタに設定された閾値との比較を行い、該比較結果に基づいて前記ATMセル送信部を制御することによりアドレスポーリングの制御を行う送信アドレス制御部と、
を備えたATMセル転送システム。
【請求項4】
前記送信アドレス制御部は、前記セルカウンタによりカウントされた前記各PHYレイヤ機能部毎の待機セル数と、前記閾値設定レジスタに設定された閾値との比較結果に基づいて、前記各PHYレイヤ機能部毎の1ポーリング周期における送信回数を決定し、決定した送信回数が実現されるように前記ATMセル送信部の制御を行う請求項3記載のATMセル転送システム。
【請求項5】
前記送信アドレス制御部が、
前記ATMセル送信部から各PHYレイヤ機能部に出力されるアドレス信号を監視して、ポーリング周期毎にポーリング回数判定の契機となる信号を出力するとともに、ポーリング制御用として前記アドレス信号を転送するポーリングアドレス監視部と、
前記ポーリングアドレス監視部からの信号を契機に前記セルカウンタの待機セル数を前記閾値設定レジスタに設定されている閾値と比較して、前記各PHYレイヤ機能部毎の1ポーリング周期における送信回数を決定するポーリング回数判定部と、
前記ポーリング回数判定部により決定された前記各PHYレイヤ機能部毎の送信回数を、次のポーリングアドレス周期にて前記ポーリングアドレス監視部から転送されてきたアドレス信号に基づいて制御タイミングを判断し、前記ATMセル送信部のポーリングアドレス生成に反映させるポーリング制御部と、
から構成されている請求項3または4記載のATMセル転送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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