説明

ATM運用管理システム

【課題】ATMの運用委託業者側でもリアルタイムにATMと金融機関のホストコンピュータ間の決済処理の進行状況を把握できるATM運用管理システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るATM運用管理システムは、ATM端末と、金融機関のホストコンピュータと、ATM運用管理装置と、GWサーバとを含むATM運用管理システムであって、GWサーバは、ATM端末及びホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段とを有し、ATM運用管理装置は、通報信号を受信する受信手段と、通報信号を受信したとき、取引情報記憶手段から、通報信号の送信時刻の所定前後時刻の間の前記ATM端末における取引情報を抽出する抽出手段と、抽出された取引情報を、通報信号に基づく通報内容とともに通知する通知手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM運用管理システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関は、ATM(Automated Teller Machine:現金自動預払機)の運用・保守業務を警備会社等の委託業者に外部委託するようになってきた。金融機関から委託を受けた警備会社は、ATMの障害対応を行うとともに、ATM内の現金の管理を行い、ATMを停止させぬよう適宜ATM内の現金の補充又は回収作業などを行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のATM、金融機関ホストセンター、及び警備会社間のシステム構成図である。ATMと金融機関(ホストセンター)とはネットワークを介し、利用者のATM操作取引に基づく決済処理が行われる(例えば特許文献2参照)。またATM、警備会社間は保守用回線で接続され、ATMから警備会社に対し通報信号が送信されるようになっている。通報信号は、ATM内の現金残高の状態を示す状態信号や、ATMの障害を示す障害信号などがある。状態信号の種類として、例えばニアフル(ATM内の現金が増え一杯に近づいている状態)、フル(ATM内の現金が増え一杯となった状態)、ニアエンド(ATM内の現金が少なくなり空に近づいている状態)、エンド(ATM内の現金が減少し空の状態)などがある。障害信号の種類として、例えばカード詰まり信号、現金詰まり信号、内部障害信号、等々がある。
【0004】
ATMの障害対応に関し、例えばATMにおいて現金詰まりが発生した場合、利用者はATM備え付けの緊急電話から警備会社のコールセンターへ障害発生の旨を連絡する。また警備会社はATMから通報信号を受信するため、これらにより警備会社はATM障害の発生を認知する。
【0005】
一方、近年、ATMから警備会社側に取引の都度、取引結果情報を、保守用回線を通じて送信するという構成が採用され始めている。ATMは金融機関のホストコンピュータとの決済処理により取引を完了すると、最後に取引結果情報として、取引の種類、取引金額、取引の成否などの情報を警備会社側に送信している。警備会社はこの取引結果情報を例えば取引結果DBに管理する。
【0006】
警備会社は、ATM障害の発生を認知すると、緊急電話や信号を基に対象のATMを特定し、該当のATMの状態を監視画面に呼び出し、直近の取引結果情報をもとに、どのような取引が行われていたのか、入金/出金額はいくらか、どの段階まで取引が進んでいるか等を確認する。また現金詰まり障害はリモートのみからは対処できないため至急その対処要員を現地に向かわせる。
【0007】
対処要員は現地に到着すると、利用者に対し、未払いの現金額(出金額)がいくらであるかなどを正確に把握し、誤りなく利用者に返却する必要がある。ここで、この判断に誤りがあってはならない。ATM内に現金が詰まり、現金が依然ATM内に留まっており、かつ対処要員の手により現金が回収された場合であって、さらに金融機関のホストコンピュータ側でこの利用者の口座上その金額分の決済処理が完了している場合のみ、利用者に現金を手渡すことができる。一方例えば、対処要員の手により現金が回収された場合であっても、金融機関のホストコンピュータ側のこの利用者の口座情報からその金額分の決済処理が未完了である場合は、利用者に現金を手渡してはならず、一旦ATM内に現金を戻してから、利用者にあらためて取引操作をしてもらうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−357204号
【特許文献2】特開2000−285314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、本来、警備会社側の取引結果情報に基づく取引金額と、金融機関側のホストコンピュータ上での取引金額とは、合致するものである。しかし取引結果情報はあくまで保守業務に利用されるための参考的な取引結果の情報であって、ATMと金融機関のホストコンピュータ間の決済処理と異なり、取引結果情報が警備会社側に間違いなく受信され決済処理の確実性が担保されないと利用者がATMでの取引を行えないといった類のものではない。そして運用上の障害やメンテナンス、保守回線の不具合等によって、ATMからの取引結果情報が警備会社側へ反映されない事態が生じると、警備会社側の取引結果情報に基づく取引金額と、金融機関側のホストコンピュータ上での取引金額に差異が生じうる。これは取引結果情報が警備会社側に間違いなく反映されたことが確認された上で、利用者のATMでの取引が行われればこの問題は生じないのだが、取引結果情報はあくまで保守業務に利用されるための参考的な取引結果の情報であるため、警備会社側の取引結果情報に基づく取引金額は、金融機関側のホストコンピュータ上での取引金額と異なり、100%保証されるものではないのである。
【0010】
取引結果情報を参照することで、大半の場合はATM上の決済処理状況を把握でき、また少なくとも状況判断の参考にできるので、警備会社は、運用上取引結果情報を活用し、障害の迅速な対処に役立てている。しかしながら、警備会社側の取引結果情報に基づく取引金額は100%保証されるものではないため、場合によっては、警備会社は、ATMの状況を確認し、またさらに、金融機関側に口座上の決済処理の進行状況を問い合わせるなどする必要があるため、問題解決までに非常に多くの手間や時間を要していた。
【0011】
ところでまた、運用・保守業務の外部委託にあたっては、金融機関は警備会社に対し予め一定額の預託金(現金)を貸し付けておき、警備会社はこの預託金を各ATM内の現金の補充又は回収に充当している。また預託金を一定額に維持するため、適宜、警備会社はその減少分を金融機関に請求し、警備会社はその増加分を金融機関に入金している。この預託金(警備会社保管額+ATM内残高)は、例えば警備会社側の預託金DBで管理される。警備会社はATM内現金残高の更新、確認を行なうため、1日1回の間隔で金融機関側とその突合せ作業(金額集計作業)を行っている。金融機関ホストコンピュータはATMとリアルタイムに決済処理を行っており、またATMは金融機関により運営されているものであるので、金融機関ホストコンピュータ側のATM内現金残高の情報と警備会社側の預託金DBと突合せを行うことにより、ATM内現金残高情報の更新、確認を行なっている。ここで、預託金DBにより管理されるATM内の現金残高を参考にすれば、障害のあったATMの決済処理状況を推測できるとも考えられる。しかし、現状突合せ作業は1日1回の間隔で行われておらず、預託金DBにより管理されるATM内の現金残高はリアルタイムの情報ではないため、この情報を裁処理の進行状況の把握に利用することは困難である。
【0012】
本発明では上記の点に鑑みて、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムにATMと金融機関のホストコンピュータ間の決済処理の進行状況を把握できるATM運用管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るATM運用管理システムは、利用者に対し入出金を行うATM端末と、前記ATM端末からの取引要求を受け入出金の可否をコントロールする金融機関のホストコンピュータと、前記ATM端末の保守管理を行うATM運用管理装置と、GWサーバとを含み構成されるATM運用管理システムであって、前記GWサーバは、前記ATM端末及び前記ホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、前記中継手段により中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段とを有し、前記ATM運用管理装置は、前記ATM端末から障害を通報する通報信号を受信する受信手段と、前記通報信号を受信したとき、前記取引情報記憶手段から、前記通報信号の送信時刻の所定前後時刻の間の前記ATM端末における取引情報を抽出する抽出手段と、抽出された取引情報を、前記通報信号に基づく通報内容とともに通知する通知手段とを有する。
【0014】
また上記課題を解決するため、前記ATM運用管理システムにおいて、前記通知手段は、前記取引情報及び通報内容を、監視用端末に通知し、通知される取引情報は、利用者の口座番号、取引金額、取引種別及び取引成否を示すデータを含む。
【0015】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムにATMと金融機関のホストコンピュータ間の決済処理の進行状況を把握できるATM運用管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のATM、金融機関ホストセンター、及び警備会社間のシステム構成図である。
【図2】本実施形態に係るシステム構成図である。
【図3】GWサーバ10の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。
【図4】GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。
【図5】取引情報DB11の取引情報例を示す。
【図6】GWサーバ10の取引情報取得処理を示すフローチャートである。
【図7】ATM運用管理サーバ20の情報処理を示すフローチャートである。
【図8】通報信号の一例を示す。
【図9】抽出された取引情報例を示す。
【図10】監視用端末50上の画面例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を各実施形態において図面を用いて説明する。
【0019】
[システム構成]
(全体構成)
はじめに、具体的な発明の内容を説明する前に、本発明を実施するにあたっての全体構成について説明する。図2は、本実施形態に係るシステム構成図である。図に示されるように、本実施形態に係るATM運用管理システムは、GW(Gateway)サーバ10、ATM運用管理サーバ20、ATM端末30、金融機関ホストコンピュータ(以下単にホストコンピュータという)40、監視用端末50を含み構成される。図に示されるように、例えばGWサーバ10、ATM運用管理サーバ20及び監視用端末50は金融機関から業務委託を受けた警備会社に設置され、ATM端末30はATM設置店舗に設置され、ホストコンピュータ40は金融機関ホストセンターに設置され、相互にネットワークを介して接続されている。
【0020】
GWサーバ10は、ATM端末30及びホストコンピュータ40間の通信を中継するサーバである。本実施形態においては、ATM端末30は、ホストコンピュータ40と決済処理を行う場合、直接ホストコンピュータ40と通信するのではなく、一旦GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してホストコンピュータ40との通信を行う。同様に、ホストコンピュータ40は、直接ATM端末30と通信するのではなく、一旦GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してATM端末30との通信を行う。
【0021】
またGWサーバ10は、取引情報DB11を備えており、ATM端末30及びホストコンピュータ40間でやり取りされた取引情報(取引データ)を保存しておく。取引情報には、利用者がATM端末30を利用する為に必要とされる情報を全て含む。例えば、ATM識別子、取引日時、カード情報(口座番号)、暗証番号、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等を含む。
【0022】
ATM運用管理サーバ20は、警備会社がATMの運用・保守業務を遂行するにあたって必要とされる情報を統括的に管理するサーバである。ATM運用管理サーバ20は、取引結果D21を備えており、各ATM端末30の取引結果(情報)を把握・管理している。
【0023】
ATM端末30は、いわゆる現金自動預払機であり、利用者が現金の入出金や振込みなどの金融取引を行う端末装置である。例えば、金融機関店舗、コンビニエンスストア、駅、専用ATMスタンド等のATM設置場所に設置される。なお図中ATM端末30は1台のみ示されているが、いうまでもなく実際には相当数のATM端末30が存在している。
【0024】
ホストコンピュータ40は、金融機関のホストセンターなどに設置され、一切の金融に関する取引を統括的に管理する。複数の金融機関DB41を備え、利用者(顧客)の金融口座を管理し、ATM端末30の取引要求に応じて様々な金融取引を統括している。
【0025】
監視用端末50は、警備会社の運用管理者がATM端末30を監視するための監視用端末である。運用管理者は、ATM端末30からの通報信号をATM運用管理サーバ20が受信した際、監視用端末50を操作してATM運用管理サーバ20にアクセスし、監視用画面(後述の図10)などから、通報信号の内容、また取引結果DB21に基づく直近の取引情報等を確認できる。この点再度後述する。
【0026】
(ハードウェア)
ここで、本実施形態に係るGWサーバ10のハードウェア構成について簡単に説明しておく。図3は、GWサーバ10の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。GWサーバ10は、主要な構成として、CPU101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、補助記憶装置104、記憶媒体読取装置105、入力装置106、表示装置107、及び通信装置108を含む構成である。
【0027】
CPU101は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路である。また、ROM102は、CPU101で実行される所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を格納するメモリであり、RAM103は、CPU101がROM102に格納された所定の制御プログラム(ソフトウェア部品)を実行して各種の制御を行うときの作業エリア(ワーク領域)として使用するメモリである。
【0028】
補助記憶装置104は、汎用のOS(Operating System)、プログラムを含む各種情報を格納する装置であり、不揮発性の記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)などが用いられる。
【0029】
なお、上記各種情報は、補助記憶装置104以外にも、CD−ROM(Compact Disk - ROM)やDVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリ等の携帯型メディアなどの各種記憶媒体やその他のメディアに記憶されてもよく、これらの記憶媒体に格納された各種情報は、記憶媒体読取装置105などのドライブ装置を介して読み取ることが可能である。
【0030】
入力装置106は、ユーザが各種入力操作を行うための装置である。入力装置106は、マウス、キーボード、表示装置107の表示画面上に重畳するように設けられたタッチパネルスイッチなどを含む。表示装置107は、各種データを表示画面に表示する装置である。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)などから構成される。
【0031】
通信装置108は、ネットワークを介して他の機器との通信を行う装置である。有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポートする。
【0032】
なおATM運用管理サーバ20及び監視用端末50のハードウェア構成についてその説明は省略する。例えば、図3のハードウェア構成と同様のものを適用することができるからである。またATM端末30及びホストコンピュータ40については公知のものをそのまま適用することができる。
【0033】
(機能)
次に、GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の機能構成について簡単に説明する。図4は、GWサーバ10及びATM運用管理サーバ20の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。GWサーバ10は、主要な機能として、中継部12、取引情報記憶部13を含み、ATM運用管理サーバ20は、受信部22、抽出部23、通知部24を含む構成である。
【0034】
GWサーバ10の中継部12は、ATM端末30及びホストコンピュータ40間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する機能を有している。ATM端末30は、ホストコンピュータ40と決済処理を行う場合、GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してホストコンピュータ40との通信を行う。同様に、ホストコンピュータ40は、GWサーバ10にアクセスし、GWサーバ10を介してATM端末30との通信を行う。
【0035】
取引情報記憶部13は、中継された通信に含まれる取引情報を記憶する機能を有している。取引情報(取引データ)には、利用者がATM端末30を利用する為に必要とされる情報を全て含むことができる。取引情報は、例えば、ATM識別子、取引日時、カード情報(口座番号)、暗証番号、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等を含むが、取引情報記憶部13で記憶する情報として、この取引情報の中から暗証番号を除外してもよい。なお、本実施形態において取引情報記憶部13は、取引情報DB11により具現化される。
【0036】
ATM運用管理サーバ20の受信部22は、ATM端末30から障害を通報する通報信号を受信する機能を有している。通報信号のうち障害信号の種類として、例えばカード詰まり信号、現金詰まり信号、内部障害信号、等々がある。
【0037】
抽出部23は、通報信号を受信したとき、取引情報記憶部13から、通報信号の送信時刻から所定前後時刻の間のATM端末30における取引情報を抽出する機能を有している。つまりATM端末30の障害発生した時刻周辺時の取引情報を抽出する。この点再度後述する。
【0038】
通知部24は、抽出部23により抽出された取引情報を、通報信号に基づく通報内容とともに通知する機能を有している。具体的に、取引情報及び通報内容は、監視用端末50に通知され、監視用端末50上では、運用管理者に向けて取引情報及び通報内容が表示される。
【0039】
以上説明したこれらの機能は、実際にはCPU101が実行するプログラムにより実現される。
【0040】
(DB)
図5は、取引情報DB11の取引情報例を示す。上述したように取引情報は、ATM端末30とホストコンピュータ40との間の通信に含まれるものであるので、例えば、ATM識別子、取引日時、カード番号(口座番号)、暗証番号、取引種別、取引金額、取引成否のデータ等を含むが、ここでは取引情報の中から暗証番号を除外してある。
【0041】
図に示されるように、取引情報DB11には、「取引ID」、「取引日時」、「ATM端末識別子」、「カード番号」、「取引種別」、「取引金額」、「取引成否」等の情報が格納されている。「取引ID」は、取引を特定するための固有のID値である。「取引日時」は、取引された日時分を示す。「ATM端末識別子」は、取引されたATM端末を特定するための固有の識別子を示す。「カード番号」は、利用者のカード番号又は口座番号を示す。「取引種別」は、例えば入金、出金、振込等の取引の種別を示す。「取引金額」は、取引された金額を示す。「取引成否」は、最終的にその取引の成否を示す。
【0042】
なお、取引情報DB11の取引情報は、ATM端末30とホストコンピュータ40との間の通信に含まれるものを取得、保存したものである。1回の取引でも複数の取引データがシーケンス形式で行われるので、取引情報の実際は、通信ログのような情報が取得されうる。しかし、図5では説明の便宜上、複数の取引データシーケンスからなる取引情報であっても、これらの情報を集約、整理し、1回の取引単位毎の取引情報として示したものである。またGWサーバ10側でこれら情報を自動的に集約、整理するようにしてもよい。
【0043】
なおまた、取引情報DB11に格納される上記情報はあくまで一例であり、必要に応じて他の情報も含まれうることはいうまでもない。
【0044】
[情報処理]
次に本実施形態に係るATM運用管理システムにおける情報処理についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
(取引情報取得処理)
図6は、GWサーバ10の取引情報取得処理を示すフローチャートである。上述したように、GWサーバ10の中継部12は、ATM端末30及び前記ホストコンピュータ40間において入出金に関する取引情報を含む通信受信すると(S11)、送信元から送信先へその通信を中継、転送する(S12)。また取引情報記憶部13は、中継された通信に含まれる取引情報を取引情報DB11に保存する処理を行う(S13)。その結果、ATM端末30から金融取引が行われる度にその取引情報を取引情報DB11に蓄積し続けている。
【0046】
(取引情報抽出処理)
図7は、ATM運用管理サーバ20の情報処理を示すフローチャートである。ATM運用管理サーバ20は、ATM端末30から通報信号を受信し、取引情報DB11から取引情報を抽出、そして監視用端末50に対し通報内容とともに取引情報の通知を行う。以下図面を参照しながら説明する。
【0047】
受信部22は、ATM端末30から通報信号を受信する(S21)。図8に通報信号の一例を示す。図に示されるように通報信号には、例えば「日時」、「ATM端末識別子」、「障害種別(エラーコード)」を示す情報が含まれている。
【0048】
通報信号を受信すると、抽出部23は、取引情報DB11からの取引情報の抽出に際しての検索キーを決定する(S22)。具体的に、ATM端末識別子と、抽出を行なう取引情報の時刻間隔とを決定する。
【0049】
具体的に、ATM端末識別子は、通報信号からの「ATM端末識別子」により特定できる。また取引情報DB11から抽出を行なう取引情報の時刻間隔を決定する。抽出すべきは、ATM端末30の障害発生時刻から周辺時刻の間の取引情報である。ここでは通報信号の送信時刻を障害発生時刻とみなし、所定前後時刻(ここでは例えば前後1分とする)の間を、抽出を行なう取引情報の時刻間隔として決定する。例えば、図8を参照すると、送信時刻(「日時」)は、「2010.04.01/10:30.16」であるので、抽出を行なう取引情報の時刻間隔は、「2010.04.01/10:29.16」〜「2010.04.01/10:31.16」の計2分間と決定する。なおこの所定前後時刻は、運用管理者が任意に設定可能である。
【0050】
抽出部23は、ATM端末識別子(101-00002)をキーに、障害発生時刻から周辺時刻の間「2010.04.01/10:29.16」〜「2010.04.01/10:31.16」の取引情報を抽出(検索)する(S23)。図9は、抽出された取引情報例を示す。図5の取引情報DB11の取引情報から抽出した場合の例である。
【0051】
通知部24は、抽出された取引情報を、通報信号の通報内容とともに監視用端末50に対し通知する(S24)。
【0052】
(画面例)
図10は、監視用端末50上の画面例を示す。通知部24からの通知に基づき、警報画面には、「通報内容」、「ATM端末所在地」、「管轄」、「ATM取引データ」が表示されている。「通報内容」は、通報信号に基づく通報の内容を示す。「ATM端末所在地」は、通報信号のATM端末識別子に基づき別途ATM端末所在地を管理するDB等から取得されたATM端末所在地を示す。「管轄」は、同様に別途DBから当該ATM端末を管轄する担当営業所及びその連絡先を示す。例えばこの営業所の対処要員が、今回の障害案件の担当者である。「ATM取引データ」は、上述の通り、抽出された障害発生時刻から周辺時刻の間の取引情報を示す。
【0053】
運用管理者は、監視用端末50上の警報画面(図10)により警報(障害)の内容を確認する。具体的に、どのATM端末のもので、どのような警報、障害内容であるのか、どのような取引が行われていたのか、入金/出金額はいくらか、どの段階まで取引が進んでいるか等を確認する。そして現金詰まり障害の場合、リモートのみからは対処できないため、至急管轄区域の対処要員に連絡し現地への出動要請を行う。運用管理者は、障害及び対応方法の詳細な分析を行い、対処要員に対し警報画面(図10)による情報を伝達するとともに、対処要員の現地到着迄に明確な対応方法の指示を行うとよい。
【0054】
対処要員は現地に到着すると、まずATM端末内の現金詰まりを解消させる。そして警報画面のATM取引データによれば、「取引成否」はNGであるから、ホストコンピュータ40の決済処理は完了しておらず、利用者に現金(\20,000)を手渡さず、例えば現金を一旦ATM端末内に戻し、利用者にあらためて取引操作をしてもらうことにより対応を完了させる。
【0055】
なお、抽出部23は取引情報DB11から抽出を行なう取引情報の時刻間隔を決定するに際し、上述の実施形態では、通報信号の送信時刻を障害発生時刻とみなした。現実には送信時刻前に障害は発生していると考えられるが、抽出すべき取引情報を送信時刻の周辺時刻(一定時刻範囲)の間のものを抽出する、といったように時間的な幅をもたせることでこの多少の誤差は吸収することができる。
【0056】
[総括]
従来、取引結果情報を参照することで、大半の場合はATM上の決済処理状況を把握でき、また少なくとも状況判断の参考にできるので、警備会社は、運用上取引結果情報を活用し、障害の迅速な対処に役立てていた。しかしながら、警備会社側の取引結果情報に基づく取引金額は100%保証されるものではないため、場合によっては、警備会社は、ATMの状況を確認し、またさらに、金融機関側に口座上の決済処理の進行状況を問い合わせるなどする必要があるため、問題解決までに非常に多くの手間や時間を要していた。
【0057】
本発明に係るATM運用管理システムにおいては、GWサーバは、ATM端末及びホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を記憶し、ATM運用管理サーバは、ATM端末から障害を通報する通報信号を受信すると、通報信号の送信時刻の所定前後時刻の間の前記ATM端末における取引情報を抽出し、抽出された取引情報を、通報信号に基づく通報内容とともに通知するので、金融機関側に口座上の決済処理の進行状況を問い合わせるなどすることなく、警備会社側で、通報のあったATM端末の決済処理の進行状況を正確に把握でき、保守委託業者として迅速且つ適切にATM端末障害の対応を行うことができる。また、利用者にとっても迅速に問題が解決されるので、例えば利用者に対して返金が極端に遅延するという事態も避けることができる。
【0058】
以上本発明によれば、ATMの運用委託業者側でもリアルタイムにATMと金融機関のホストコンピュータ間の決済処理の進行状況を把握できるATM運用管理システムを提供することが可能となる。なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 GWサーバ
11 取引情報DB
12 中継部
13 取引情報記憶部
20 ATM運用管理サーバ
22 受信部
23 抽出部
24 通知部
30 ATM端末
40 金融機関ホストコンピュータ
41 金融機関DB
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 補助記憶装置
105 記憶媒体読取装置
106 入力装置
107 表示装置
108 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対し入出金を行うATM端末と、前記ATM端末からの取引要求を受け入出金の可否をコントロールする金融機関のホストコンピュータと、前記ATM端末の保守管理を行うATM運用管理装置と、GWサーバとを含み構成されるATM運用管理システムであって、
前記GWサーバは、
前記ATM端末及び前記ホストコンピュータ間において入出金に関する取引情報を含む通信を中継する中継手段と、
前記中継手段により中継された通信に含まれる取引情報を記憶する取引情報記憶手段と、
を有し、
前記ATM運用管理装置は、
前記ATM端末から障害を通報する通報信号を受信する受信手段と、
前記通報信号を受信したとき、前記取引情報記憶手段から、前記通報信号の送信時刻の所定前後時刻の間の前記ATM端末における取引情報を抽出する抽出手段と、
抽出された取引情報を、前記通報信号に基づく通報内容とともに通知する通知手段と、
を有することを特徴とするATM運用管理システム。
【請求項2】
前記通知手段は、
前記取引情報及び通報内容を、監視用端末に通知し、
通知される取引情報は、利用者の口座番号、取引金額、取引種別及び取引成否を示すデータを含むこと、
を特徴とする請求項1記載のATM運用管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−215790(P2011−215790A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82185(P2010−82185)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】