説明

B型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物

【課題】B型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物の提供。
【解決手段】主にベニクスノキタケ抽出物中より分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン(4−hydroxy−2,3−dimethoxy−6−methy−5(3,7,11−trimethyl−dodeca−2,6,10−trienyl)−cyclohex−2−enone)で、B型肝炎ウィルスを効果的に抑制することができる。本発明中のベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物はB型肝炎ウィルスを分泌するヒト肝臓癌細胞株HepG2 2.2.15に対して細胞毒性を備え、B型肝炎ウィルスビリオンの生成量を低下させることができ、しかもB型肝炎表面抗原(HbsAg)及びB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の抑制に有効で、こうしてB型肝炎ウィルスを抑制する目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物に関する。特に一種のベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物中から分離純化し、しかもB型肝炎ウィルスの抑制に用いることができるシクロヘキサンケトン化合物に係る。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウィルス(hepatitis B virus, HBV)は肝臓病ウィルス科(Hepadnviridae)に属し、非細胞病変性(noncytopathic)肝臓感染を継続的に引き起こす小型デオキシリボ核酸(DNA)類ウィルスである。それはタンパクエンベロープ(envelope)を備え、現在ヒト肝炎ウィルス中唯一のDNAウィルスである。B型肝炎ウィルスのエンベロープは約25%の脂質と75%の糖タンパクを含む。糖タンパクの主成分はB型肝炎表面抗原(hepatitis B surface antigen; HbsAg)で、B型肝炎ウィルス核心ビリオン中にはB型肝炎エンベロープ抗原(hepatitis B envelope antigen; HbeAg)を含む。内、B型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)は一種の分泌タンパク(secretory protein)で、胎盤を通して胎児の体内に進入する。この時、胎児の免疫システムはなお未成熟であるため、傷害性Tリンパ細胞はB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)に対して耐性を持ち、人体免疫システムはB型肝炎ウィルスを排除することができず、ウィルスが大量に複製される。よって、B型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)は一種の寛容原(tolerogen)と見なされるため、B型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の含量の測定結果は、B型肝炎ウィルス複製と分泌状況の指標とされる。
【0003】
WHOの調査では、世界中で約20億人がB型肝炎ウィルスに感染しているという結果が示されており、B型肝炎ウィルスは感染率が非常に高いウィルスである。感染経路は主に親を介する垂直感染で、感染後は急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、さらには肝臓癌を引き起こす。台湾地区では、30歳以上の男子の約90%がB型肝炎ウィルスに感染しているとされ、内15〜20%がキャリアとして一生を送り、肝硬変、肝臓癌に移行し死に至るケースもある。つまり、台湾はB型肝炎ウィルスの重大な感染地区であり、肝臓癌の発症が多い地区でもある。
【0004】
上記のように、B型肝炎ウィルスの感染と肝臓疾病及び肝臓癌の形成には密接な関係がある。よって、ウィルスの複製を妨げ及び抑制し、慢性感染状態を徹底的に排除することは、ウィルス治療の主要な研究目標である。近年ではインターフェロン、抗ウィルス薬、或いはワクチンを使用したB型肝炎ウィルス感染の防止、治療は既に一定の成果を挙げている。しかし、B型肝炎ウィルスのキャリアに対する治療においては、ウィルスの徹底的な排除はいまだできておらず、これがB型肝炎ウィルスが引き起こす肝臓の関連疾病の致死率を高くする主因となっている。よって、B型肝炎ウィルスを効果的に抑制することができる抗ウィルス薬物の開発が急がれている。
【0005】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)は台湾では牛樟芝、樟芝、牛樟キノコ、紅樟芝などと呼称され、ヒダナシタケ目(Aphyllophorales)、多孔菌科(Polyporaceae)の多年生菌類で、台湾固有の真菌である。ベニクスノキタケは台湾の保護樹木である牛樟樹(Cinnamoum kanehirai Hay)の中空の腐敗心材内壁にのみ生長する。牛樟樹は台湾でも極めて希少な保護樹であり、不法伐採の問題もあるため、牛樟樹中に寄生する野生ベニクスノキタケはさらに希少である。しかもその子実体の生長は非常に緩慢で、生長期は六月から十月の間に限られるため、非常に高価である。
【0006】
ベニクスノキタケの子実体は多年生、無柄で、木栓質(スベリン)から木質を呈し、強烈な樟樹香気を備える。その形態は変化に富み、板状、鐘状、馬蹄形、塔状など様々である。初期は扁平型で鮮紅色を呈し、後にその周辺が放射状に巻き上がり、四週へと拡大し生長する。色も淡褐色或いは淡黄褐色へと変化し、多くの細孔を備える。それはベニクスノキタケの薬用価値が最も豊富な部位である。
【0007】
台湾の民間療法ではベニクスノキタケは解毒、下痢の症状軽減、消炎、肝臓関連疾病治療、抗癌薬として用いられる。ベニクスノキタケは一般の生薬とされるキノコ類同様に、多くの複雑な成分を含む。既に知られている生理活性成分中には、トリテルペノイド(triterpenoids)、多糖体(polysaccharides,β−グリコーゲンなど)、アデノシン(adenosine)、ビタミン(ビタミンB、ナイアシンなど)、タンパク質(免疫グロブリンを含む)、スーパーオキサイドディスムターゼ(superoxide dismutase, SOD)、微量元素(カルシウム、リン、ゲルマニウムなど)、核酸、ステロール類、及び血圧安定物質(antodia acidなど)などがある。これら生理活性成分は抗腫瘍、免疫能力強化、抗過敏、抗ウィルス、抗高血圧、血糖値低下、コレステロール低下などの多種の機能と効果を備えると考えられている。
【0008】
ベニクスノキタケの多種の成分の内、トリテルペノイドに対する研究が最も多い。トリテルペノイドは三十個の炭元素が六角形或いは五角形に結合した天然化合物の総称である。ベニクスノキタケが具える苦味は、主にトリテルペノイドが成分である。1995年、Cherng氏などはベニクスノキタケ子実体の抽出物中に三種の新しいエルゴスタン(ergostane)を骨格とするトリテルペノイド:antcin A、antcin Bとantcin C(引用文献1)が含まれることを発見した。Chen氏などはエタノールによりベニクスノキタケ子実体を抽出後、zhankuic acid A、zhankuic acid B 及びzhankuic acid Cなど三種のトリテルペノイドを発見した(引用文献2)。この他、Chiang氏などは1995年、子実体抽出物中より別の三種のセスキテルペンラクトン(sesquiterpene lactone)と二種のビスフェノール類派生物である新しいトリテルペノイドを発見した。これがすなわち、antrocin, 4,7−ジメトキシ−5−メチル−1,3−ベンゾジオキソール(4,7−dimethoxy−5−methy−1,3− benzodioxole)と2,2',5,5'−テラメトキシ−3,4,3',4'−ビ−メチルレネジオキシ−6,6'−ジメチルビフィニール(2,2',5,5'−teramethoxy−3,4,3',4'−bi− methylenedioxy−6,6'− dimethylbiphenyl)(引用文献3)である。1996年になって、Cherng氏などは同様の分析方法により再度四種の新しいトリテルペノイド:antcin E、antcin F、methyl antcinate G、methyl antcinate H(引用文献4)を発見した。またYang氏などは二種のエルゴスタンを骨格とする新化合物zhankuic acid D、zhankuic acid Eと三種のラノスタン(lanostane)を骨格とする新化合物:15α−アセチル−デハイドロサルファレニック酸(15α−acetyl−dehydrosulphurenic acid)、デハイドロエブリコイック酸(dehydroeburicoic acid)とデハイドラサルファレニック酸(dehydrasulphurenic acid)(引用文献5)を発見した。
【0009】
現在では様々な実験により、ベニクスノキタケ抽出物が前記効果を備えることが知られており、しかもそれが含む成分も続々と分析されている。しかしベニクスノキタケ抽出物中のどの種の有効成分がB型肝炎ウィルス感染を抑制し、B型肝炎ウィルスに関連する肝臓疾病を治療することができるかについては、さらに進んだ実験、研究により明らかにされることが待たれている。よってもしベニクスノキタケ抽出物中に含まれるB型肝炎ウィルスの抑制に真に有効な成分を探し出すことができれば、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌などのB型肝炎ウィルスと関連する肝臓疾病の治療にとって非常に大きな益となる。
【0010】
[引用文献1]Cherng, I. H., and Chiang, H. C. 1995. Three new triterpenoids from Antrodia cinnamomea. J. Nat. Prod. 58:365−371
[引用文献2]Chen, C. H., and Yang, S. W. 1995. New steroid acids from Antrodia cinnamomea, −a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. J. Nat. Prod. 58:1655−1661
[引用文献3]Chiang, H. C., Wu, D. P., Cherng, I. W., and Ueng, C. H. 1995. A sesquiterpene lactone, phenyl and biphenyl compounds from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 39:613−616
[引用文献4]Cherng, I. H., Wu, D. P., and Chiang, H. C. 1996. Triteroenoids from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 41:263−267
[引用文献5]Yang, S. W., Shen, Y. C., and Chen, C. H. 1996. Steroids and triterpenoids of Antrodia cinnamomea−a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. Phytochemistry. 41:1389−1392
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ベニクスノキタケ抽出物のどの成分がB型肝炎ウィルスの感染を効果的に抑制するかを明確にするため、本発明はベニクスノキタケ抽出物中から以下の式(1)を備える化合物を分離純化する。
【化1】

内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)で、R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2m−CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2m−CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2m−CH3,m=1〜12で、n=1〜12である。
【0012】
式(1)の化合物中において、以下に示す式(2)の化合物が最適である。
【化2】

式(2)の化合物の化学名は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン(4−hydroxy−2,3−dimethoxy−6−methy−5(3,7,11−trimethyl−dodeca−2,6,10−trienyl)−cyclohex−2−enone)で、分子式はC24H38O4で、外観は淡黄色粉末状で、分子量は390である。
【0013】
本発明中式(1)、式(2)の化合物はベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物より分離純化し、有機溶剤はアルコール類(メタノール、エタノール或いはプロパノール等)、エステル類(アセチジン等)、アルケン類(ヘキサン等)或いはハロセン(クロロメタン、エチルクロライド等)を含むが、これらに限定しない。内、アルコール類が最適で、エタノールがより最適である。
【0014】
本発明は前記化合物をB型肝炎ウィルス感染の抑制に応用し、さらにB型肝炎ウィルスが引き起こす関連肝臓疾病を治療する医薬組成物中に用いる。これにより急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌などとB型肝炎ウィルス関連の肝臓疾病の治療効果を向上させる。また本発明中では、式(1)或いは/と式(2)の化合物により、感染能力を備えるB型肝炎ウィルスの肝臓癌細胞株HepG2 2.2.15を処理したところ、該肝臓癌細胞株の細胞の相対生存率を効果的に抑制したことが結果として示された。つまり、B型肝炎ウィルスが生成するB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の生成量を低下させ、B型肝炎ウィルス複製と分泌を抑制する目的を達成し、天然成分より抽出した該化合物をB型肝炎ウィルス関連の肝臓疾病の治療に利用することができる。
【0015】
本発明中では式(1)或いは/と式(2)の化合物をB型肝炎ウィルスが引き起こす関連肝臓疾病を治療する医薬組成物の成分中に利用し、これによりB型肝炎ウィルスの複製と分泌を抑制し、こうして急性或いは慢性肝炎の感染を減少させ、肝炎ウィルスキャリアが肝硬変或いは肝臓癌に進行し死に至る率を低下させることができる。前記医薬組成物は有効剤量の式(1)或いは/と式(2)の化合物を含む他に、薬学上受け入れ可能なキャリアを含むことができる。キャリアは賦形剤(水など)、充填剤(蔗糖或いはでんぷん)、接着剤(セルロース派生物など)、希釈剤、崩解剤、吸収促進剤或いは甘味剤であるが、これに限定するものではない。本発明医薬組成物は一般公知の薬学の製作準備方法により製造することができ、式(1)或いは/と式(2)の有効成分剤量と一種以上のキャリアを相互に混合し、必要な剤型を製作準備する。この剤型は錠剤、粉剤、粒剤、カプセル剤或いはその他液体製剤であるが、これに限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、B型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物で、以下の構造式を備え、
【化3】

内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)で、R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2m−CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2m−CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2m−CH3,m=1〜12で、n=1〜12であることを特徴とするB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物としている。
請求項2の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中から分離製造することを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項3の発明は、前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項2記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項4の発明は、前記アルコール類はエタノールであることを特徴とする請求項3記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項5の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離製造することを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項6の発明は、前記化合物は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン(4−hydroxy−2,3−dimethoxy−6−methy−5(3,7,11− trimethyl−dodeca−2,6,10−trienyl)−cyclohex−2−enone)であることを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物としている。
請求項7の発明は、前記化合物はB型肝炎表面抗原(HbsAg)及びB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の生成量を低下させることによりB型肝炎ウィルスを抑制することを特徴とする請求項1或いは請求項6記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物としている。
請求項8の発明は、前記化合物がB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量を低下させる最適使用濃度は10μg/mlであることを特徴とする請求項7記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物としている。
請求項9の発明は、前記化合物がB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量を低下させる最適使用濃度は1μg/mlであることを特徴とする請求項7記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物としている。
請求項10の発明は、B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物は少なくとも有効剤量の請求項1記載の化合物と医学上受け入れ可能なキャリアを含むことを特徴とするB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物としている。
請求項11の発明は、B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物は少なくとも有効剤量の請求項6記載の化合物と医学上受け入れ可能なキャリアを含むことを特徴とするB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物としている。
請求項12の発明は、前記B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病は急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌を含むことを特徴とする請求項10或いは請求項11記載のB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物としている。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本発明ベニクスノキタケ抽出物中より分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、ヒト肝臓癌腫瘍細胞HepG2 2.2.15の生存率抑制に有効で、しかもB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の形成を抑制することができる。よって該化合物はB型肝炎ウィルスの複製と分泌抑制に用いることができ、同時にB型肝炎ウィルス関連の肝臓疾病の治療に利用することができる。
【0018】
また、医薬組成物に製作準備することができ、この医薬組成物は有効剤量の4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンを含む他に、薬学上受け入れ可能なキャリアを含むことができる。キャリアは賦形剤(水など)、充填剤(蔗糖或いはでんぷん)、接着剤(セルロース派生物など)、希釈剤、崩解剤、吸収促進剤或いは甘味剤であるが、これに限定するものではない。本発明医薬組成物は一般公知の薬学の製作準備方法により製造することができ、有効成分剤量のベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物と一種以上のキャリアを相互に混合し、必要な剤型を製作準備する。この剤型は錠剤、粉剤、粒剤、カプセル剤或いはその他液体製剤であるが、これに限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
先ず、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)菌糸体、子実体或いは二者の混合物を取り、公知の抽出方式を利用し、水或いは有機溶剤により抽出し、ベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物を取得する。内、有機溶剤はアルコール類(メタノール、エタノール或いはプロパノール等)、エステル類(アセチジン等)、アルケン類(ヘキサン等)或いはハロセン(クロロメタン、エチルクロライド等)を含むが、これらに限定しない。内、アルコール類が最適で、エタノールがより最適である。
【0020】
抽出後のベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物は、さらに高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography、HPLC)により分離純化し、各一分液(fraction)に対してB型肝炎ウィルス複製の抑制に関連する生物化学テストを行う。最後に、B型肝炎ウィルス複製の抑制効果を備える分液に対して成分分析を行い、さらに各分液中に含まれる有効成分の肝臓癌細胞株HepG2 2.2.15の細胞毒性に対する影響、及びB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)含量などの関連する生物化学テストをそれぞれ行う。こうして最終的に、本発明中の式(1)/式(2)の化合物はB型肝炎ウィルス複製を抑制する効果を備えることが発見された。
【0021】
本発明の説明の便のために、以下に式(2)の4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン化合物について説明する。この他、4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン化合物が、肝臓癌細胞株HepG2 2.2.15が生長する細胞毒性に与える影響を証明し、ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物がB型肝炎ウィルス複製の抑制に有効であるか否かを研究するため、本発明ではMTT分析法により、米国国家癌研究所(National Cancer Institute, NCI)抗腫瘍薬物検査方式に基づき、肝臓癌細胞株HepG2 2.2.15に対して細胞生存率のテストを行う。さらに、半定量酵素免疫分析法を利用し、B型肝炎ウィルスが分泌するB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の含量を測定する。該テストによりベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物は肝臓癌腫瘍細胞HepG2 2.2.15の生存率を低下させ、B型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の形成を効果的に抑制し、こうしてB型肝炎ウィルスの複製と分泌を抑制する目的を達成することが実証された。
前記実施方式に対して以下に詳細に説明する。
【0022】
実施例1:4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンの分離。
【0023】
100グラム前後のベニクスノキタケ菌糸体、子実体或いは二者の混合物を、フラスコ中に入れ、適当な割合の水とアルコール類(70%以上のアルコール類水溶液)を加え、20〜25℃で少なくとも1時間以上撹拌抽出し、この後、濾紙及び0.45 mフィルターにより濾過し抽出液を集める。
【0024】
前記収集したベニクスノキタケ抽出液を、高速液体クロマトグラフィー (High Performance Liquid chromatography)を利用し、RP18のコラム(column)により分析を行い、メタノール(A)及び0.1%〜0.5%の酢酸水溶液(B)をモバイルフェーズ(mobile phase)とし(その溶液比率は:0〜10分間、B比率は95% 〜20%;10〜20分間、B比率は20%〜10%;20〜35分間、B比率は10%〜10%; 35〜40分間、B比率は10%〜95%)、毎分1mlの速度で溶出し、同時に紫外線−可視光線全波長探知器により分析する。
【0025】
25分間から30分間の溶出液収集濃縮により、淡黄色粉末状の固体産物を得ることができる。これが4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンである。分析により、その分子式はC24H38O4で、分子量は390、熔点(m.p.)は48℃〜52℃であることが分かる。核磁気共鳴(NMR)分析値は以下に示す。1H−NMR(CDC13)δ(ppm):1.51、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.07と5.14。13C−NMR(CDC13)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、39.71、39.81、4.027、43.34、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、131.32、135.35、135.92、138.05、160.45と197.12。
【0026】
実施例2:ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物の体外における肝臓癌腫瘍細胞に対する毒性テスト。
【0027】
実施例1中で得たベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物の肝臓癌腫瘍細胞に対する抑制効果をさらにテストするため、本実施例では米国国家癌研究所(National Cancer Institute, NCI)抗腫瘍薬物検査方式により、先ず実施例1中で分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン化合物をHepG2 2.2.15ヒト肝臓腫瘍細胞培養液中に加え、腫瘍細胞生存性テストを行う。細胞生存性のテストは公知のMTT分析法により分析可能である。HepG2 2.2.15はヒトの肝臓癌腫瘍細胞系で、しかも該細胞は感染能力を備えるB型肝炎ウィルスを分泌する。
【0028】
MTT分析法は細胞増殖(cell proliferation)、生存率(percent of viable cells)及び細胞毒性(cytotoxicity)の分析にしばしば用いられる分析方法である。内、MTT(3−[4,5− dimethylthiazol−2−yl]2,5−diphenyltetrazolium bromide)は黄色染色剤で、活細胞に吸収され、粒腺体中のコハク酸塩テトラゾリウム還元酵素(succinate tetrazolium reductase)により還原され不溶水性となり、しかも青紫色のformazanを呈する。よってformazan形成の有無により、細胞の生存率を判断及び計算することができる。
【0029】
先ず、ヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.15を10%のウシ胎児血清及び200μg/mlの抗生物質G418を含む12種の必須アミノ酸、グルタミンアンモニアと8種のビタミンのみを含む低限量基礎培養基(minimum essential medium, MEM)(Gibco Co.,USA)において24時間培養する。増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素−EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10 mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせ、さらに5000個の細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。テスト時には、それぞれ各一孔内にジメチルサルフォキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)により調整する0.1、1、10μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照組、純化分離を経ないベニクスノキタケエタノール抽出物)及び4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン(試験組)、完全にいかなる物質をも添加しない制御組を加え、37℃、5% CO2 で22時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、2時間の反応後、培養基を除去し、50μlのジメチルサルフォキシド(DMSO)を加え、結晶を溶解させる。最後に酵素免疫分析器により、570 nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、測定された数値と未処理の制御組の細胞数値を比較する。計算により得られた細胞の相対生存率(%)は図1に示す。
【0030】
図1は、本実施例で分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンはヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.15の生存率に対する影響の結果を示す。図により、対照組のベニクスノキタケ粗抽出物の細胞生存率に対する結果と比較し、4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、ヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.15の生存率低下に有効であることが分かる。しかも濃度が10μl/mlベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物により処理後の癌細胞生存率は81%以下である。よって、ベニクスノキタケ抽出物から分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、肝臓癌腫瘍細胞HepG2 2.2.15の生長抑制に確実に利用可能であることが証明された。
【0031】
実施例3:ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物の体外におけるB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する影響。
【0032】
実施例1で分離純化したベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物のB型肝炎ウィルスが発生するB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する影響をテストするため、本実施例では先ず、ヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.1を培養する。次に、この細胞の培養基中にベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物を加え、さらに半定量の酵素免疫分析法(enzyme−linked immunoabsorbent assy, ELISA)により培養基中のB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の生成量を測定し、この2種のウィルス指標により、ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物がB型肝炎ウィルス抑制に有効であるか否かを評価する。内、HepG2 2.2.1細胞はB型肝炎ウィルス遺伝子組(HBV genome)を含むプラスミドを利用しヒト肝臓腫瘍細胞株HepG2に感染させ、抗生物質G418のスクリーニングを経てB型肝炎表面抗原(HbsAg)、B型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)、ヌクレオカプシド(nucleocapsid)、ウィルスビリオン(virion)の細胞株(Sells,M.A., Chen,M.L. and Acs,G.1987.Production of hepatitis B virus particles in HepG2 cells transfected with cloned hepatitis B virus DNA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84:1005−1009)を得る。
【0033】
先ず、ヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.1を10%のウシ胎児血清及び200μg/mlの抗生物質G418を含むMEM培養基(Gibco Co.,USA)において24時間培養する。増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素−EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10 mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせ、さらに5000個の細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。テスト時には、それぞれ各一孔内にジメチルサルフォキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)により調整し、濃度がそれぞれ0.1、1、10μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照組、純化分離を経ないベニクスノキタケエタノール抽出物)及び4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン、完全にいかなる物質をも添加しない制御組を加え、37℃、5% CO2で22時間培養する。その後、適量の各培養液を取り、抗ヒトB型肝炎ウィルス表面抗原の単株抗体と抗ヒトB型肝炎ウィルスエンベロープ抗原の多源抗体の酵素免疫テスト試薬分析セット(general biologicals corp., Taiwan, ROC.)により、抗体−抗原−抗体酵素接合体のサンドイッチ複合体を利用し、過酸化水素を含むO−フェニレンジアミン(O−phenylenediamine, OPD)により着色する。さらに酵素免疫分正規により450 nm 波長において、培養液中のB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の含量を測定する。その陰性判定は以下の公式に基づく。Cutoff value=O.D. negative control +0.025内、OD450の吸光値は比較値を上回り、すなわち陽性である。その結果は図2と図3に示す。
【0034】
図2は、本実施例が分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量に対する影響を示す。図に示すように、対照組のベニクスノキタケ粗抽出物のB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量に対する結果と比較し、4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、B型肝炎表面抗原(HbsAg)の生成抑制に有効であることが分かる。しかもベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物の濃度を増して行くに従い、B型肝炎表面抗原(HbsAg)の生成量は減っている。前記各濃度のベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物処理後のB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量は60%以下にまで低下し、内、濃度が10μg/mlのベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物のB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量に対する抑制効果が最良で、そのB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量は28%以下にまで低下している。よってベニクスノキタケ抽出物中から分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、B型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量の低下に有効であることは確実で、これはベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物がB型肝炎ウィルス増殖を抑制する機能を備えることを示している。
【0035】
図3は、本実施例が分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する影響を示す。図に示すように、対照組のベニクスノキタケ粗抽出物のB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する結果と比較し、4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、B型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の生成抑制に有効であることが分かる。しかもベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物処理後のB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量は84%以下にまで低下し、内、濃度が1μg/mlのベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物のB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する抑制効果が最良で、そのB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量は57%以下にまで低下している。よってベニクスノキタケ抽出物中から分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、B型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量の低下に有効であることは確実である。
【0036】
前記4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのHepG2 2.2.15細胞に対する毒性テストの結果(図1参照)と比較したところ、該ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物がB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量を抑制する数値は、該ベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物がヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.15生存率を抑制する数値より高いことが分かる。これは4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する抑制効果が、それが細胞に対して毒性を備えるためではないことを示している。
【0037】
上記のように、本発明ベニクスノキタケ抽出物中より分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンは、ヒト肝臓癌腫瘍細胞HepG2 2.2.15の生存率抑制に有効で、しかもB型肝炎表面抗原(HbsAg)とB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の形成を抑制することができる。よって該化合物はB型肝炎ウィルスの複製と分泌抑制に用いることができ、同時にB型肝炎ウィルス関連の肝臓疾病の治療に利用することができる。また、医薬組成物に製作準備することができ、この医薬組成物は有効剤量の4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンを含む他に、薬学上受け入れ可能なキャリアを含むことができる。キャリアは賦形剤(水など)、充填剤(蔗糖或いはでんぷん)、接着剤(セルロース派生物など)、希釈剤、崩解剤、吸収促進剤或いは甘味剤であるが、これに限定するものではない。本発明医薬組成物は一般公知の薬学の製作準備方法により製造することができ、有効成分剤量のベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物と一種以上のキャリアを相互に混合し、必要な剤型を製作準備する。この剤型は錠剤、粉剤、粒剤、カプセル剤或いはその他液体製剤であるが、これに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明実施例で分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのヒト肝臓癌細胞HepG2 2.2.1生存率に対する影響の結果を示す。図(A)は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンで、図(B)はベニクスノキタケ粗抽出物である。垂直線は3回の独立試験の標準偏差値を示す。
【図2】本実施例で分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量に対する影響の結果を示す。図(A)は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンで、図(B)はベニクスノキタケ粗抽出物である。垂直線は3回の独立試験の標準偏差値を示す。
【図3】本実施例で分離した4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンのB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量に対する影響の結果を示す。図(A)は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトンで、図(B)はベニクスノキタケ粗抽出物である。垂直線は3回の独立試験の標準偏差値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物で、以下の構造式を備え、
【化1】

内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)で、R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2m−CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2m−CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2m−CH3,m=1〜12で、n=1〜12であることを特徴とするB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物。
【請求項2】
前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中から分離製造することを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項3】
前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項2記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項4】
前記アルコール類はエタノールであることを特徴とする請求項3記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項5】
前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離製造することを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項6】
前記化合物は4−ハイドロキシ−2,3−ジメトキシ−6−メチル−5(3,7,11−トリメチル−2,6,10−トリエニル)−2−シクロヘキサンケトン(4−hydroxy−2,3−dimethoxy−6−methy−5(3,7,11− trimethyl−dodeca−2,6,10−trienyl)−cyclohex−2−enone)であることを特徴とする請求項1記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物。
【請求項7】
前記化合物はB型肝炎表面抗原(HbsAg)及びB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)の生成量を低下させることによりB型肝炎ウィルスを抑制することを特徴とする請求項1或いは請求項6記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物。
【請求項8】
前記化合物がB型肝炎表面抗原(HbsAg)生成量を低下させる最適使用濃度は10μg/mlであることを特徴とする請求項7記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物。
【請求項9】
前記化合物がB型肝炎エンベロープ抗原(HbeAg)生成量を低下させる最適使用濃度は1μg/mlであることを特徴とする請求項7記載のB型肝炎ウィルスの抑制に用いるベニクスノキタケシクロヘキサンケトン化合物。
【請求項10】
B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物は少なくとも有効剤量の請求項1記載の化合物と医学上受け入れ可能なキャリアを含むことを特徴とするB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物。
【請求項11】
B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物は少なくとも有効剤量の請求項6記載の化合物と医学上受け入れ可能なキャリアを含むことを特徴とするB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物。
【請求項12】
前記B型肝炎ウィルスが引き起こす疾病は急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌を含むことを特徴とする請求項10或いは請求項11記載のB型肝炎ウィルスが引き起こす疾病の治療に用いる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−13152(P2009−13152A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203975(P2007−203975)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(505364913)國鼎生物科技股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】