説明

BCL2関連癌の診断及び療法のための組成物及び方法

本発明は、対象中のBCL2遺伝子及び/又は遺伝子産物の過剰発現に関連する癌の治療のための方法及び組成物、化学療法及び放射線療法のような抗癌療法の改善のための方法及び組成物を提供する。本発明は、対象における癌療法の効力を決定するための方法、及び細胞のアポトーシスを誘発するための方法も包含する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
政府援助
本発明は、全部もしくは一部、National Cancer Instituteからの助成金番号P01CA76259 、P01CA81534 及びP30CA56036 により援助された。政府は本発明に特定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は癌の診断、特定的にはBCL2関連癌の診断に関する。本発明はさらに、BCL2遺伝子及び/又は遺伝子産物の過剰発現を含んでいる癌の治療のための方法及び組成物を包含する。本発明はその上、化学療法及び他の慣用的癌療法のような抗癌療法の改善のための新規方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
マイクロRNA(miRNA、miR)は、ショウジョウバエ、線虫及びヒトを含む百を超える異なる生物で見いだされている。miRNAは、これらの生物体における発生を変調する多様なプロセスに関与すると信じられている。miRNAは典型的には、miRNA遺伝子から転写された60〜70ヌクレオチドのフォールドバック(foldback)RNA前駆体構造からプロセシングされる。RNA前駆体又はプロセシングされたmiRNA産物は容易に検出され、そしてこれらの分子の欠如は、対応するmiRNA遺伝子の欠失又は機能の喪失を示し得る。
【0004】
癌は米国において及び世界中で死亡率及び罹患率の大きな原因である。特に、慢性リンパ球性白血病(「CLL」)及び他のBCL2関連癌(例えば、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、リンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、癌腫(例えば、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、非小細胞肺癌腫、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫)、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患)は、ヒト成人の臨床的に重要な新生物疾患である。例えば、CLLは西欧世界における成人白血病の最も一般的形態であり、及び前立腺癌の年齢調節発生は、米国の男性間のすべての他の癌の発生をしのいでおり、及び米国におけるすべての男性癌死の、肺癌に続く第二の原因である。
【0005】
13q14でのヘミ接合性及び/又はホモ接合性損失が、報告されたCLLケースの半分以上で生じ、及びCLLにおける最も頻繁な染色体異常を構成する。CLL患者からの組織サンプルの核型分析では比較的少ない染色体異常が同定され、13q14で観察された欠失の特異性及び頻度が病理学的意義を有していることを示唆している。加えて、13ql4欠失が前立腺癌の60%でも生じており、13q14に位置している一つ又はそれより多くの腫瘍抑制遺伝子がCLL及び前立腺癌の両方の病変形成に関与していることを示唆している。
【0006】
クローンホモ接合性及びヘテロ接合性欠失の両方の存在、及びCLL及び前立腺癌における非常に高頻度の13q14喪失は、この領域の欠失が特定の癌タイプの原因に関連していることを示唆する。いくつかのグループは、この欠失された領域中の遺伝子又は複数の遺伝子を同定するためにポジショナルクローニングを使用した。現在まで、CLLの孤発及び家族性ケースにおける13q14の欠失領域から総計で8つの遺伝子が同定されており、DNA及び/又はRNAレベルでの変動についてスクリーニングされた:Leu1(BCMS又はEST70/Leu1)、Leu2(ALT1又は1B4/Leu2)、Leu5(CAR)、CLLD6、KPNA3、CLLD7、LOC51131(推定 亜鉛フィンガータンパク質NY−REN−34抗原)及びCLLD8。しかしながら、ヘテロ接合性の広範な喪失(LOH)、突然変異及び発現研究を含む詳細な遺伝子解析は、発癌におけるこれらの遺伝子のいずれかの一貫した関与を示すことに失敗した。
【0007】
CLLの悪性で、大部分は分裂していないB細胞は、細胞死を抑制することにより真核細胞の生存を促進することにおいて中心的役割を果たすアポトーシス阻害剤(Cory, S., and Adams, J.M., Nature Reviews 2: 647-656 (2002))、Bcl2タンパク質を過剰発現する(Kitada, S., et al, Blood 91: 3379-3389 (1998))。Bcl2タンパク質の過剰発現は、白血病、リンパ腫及び癌腫を含むヒト癌の多くのタイプに付随している(Sanchez-Beato, M., et al, Blood 101: 1220-1235 (2003))。濾胞性リンパ腫において及びびまん性B細胞リンパ腫の一部において、BCL2活性化の機構は、BCL2遺伝子を免疫グロブリン重鎖エンハンサーの制御下に置き、該遺伝子の調節が解除された発現を生じる染色体転座、t(14;18)(q32;q21)、であることが発見された(Tsujimoto, Y., et al., Science 226: 1097-1099 (1984); Tsujimoto, Y., et al., Science 228: 1440-1443 (1985))。しかしながら、BCL2遺伝子はCLL症例の5%未満しか免疫グロブリン座位に並置されておらず(Adachi, M., et al, J. Exp. Med. 171: 559-564 (1990))、CLL癌の大多数においてBCL2が過剰発現される機構は未知である。
【0008】
CLLのための現在の療法は典型的には、単独で又は自家骨髄移植と組み合わせて投与される、化学療法が含まれる。用いられる化学療法剤は、一般的に患者には毒性があり、患者の比較的大部分には部分的寛解のみしか起こさない。BCL2関連癌療法のための療法も、しばしば腫瘍の手術的切除に続いての化学療法を含み得る。しかしながら、CLLのように、化学療法剤(手術有り又は無し)の治癒的特性は限定されている。
【0009】
化学療法単独での治療は限定されており、その癌細胞は構造的に関連しない化学療法剤の広範囲のスペクトルに対してしばしば耐性になる。こうした耐性(「多剤耐性」(MDR)と名付けられている)は、癌患者の治療においてよく起きる問題であり、化学療法剤に対する腫瘍細胞の耐性は臨床腫瘍学においての主要問題を代表する。
【0010】
アポトーシスは、化学療法剤が抗腫瘍応答を誘発する一連の事象時の重要な成分であり、Bcl2が抗癌剤誘発アポトーシスに決定的な役割を有していることを研究は示唆している(Kim, R et al., Cancer 101(11): 2491-2502 (2004) )。さらに、Bcl2を過剰発現するように工学処理された腫瘍細胞は、多くの異なった薬剤の細胞傷害性効果に対する耐性を発現する(Kamesaki et al., Cancer Res. 53: 4251-4256 (1993); Miyashita and Reed, Blood 81: 151-157 (1993))。
【0011】
CLL及び他のBCL2関連癌についての迅速で、経済的及び正確な診断試験に対する要求がある。患者に有意な負の影響を与えない、CLLのようなBCL2関連癌についての経済的及び有効な治療に対する要求がある。もし広範囲の通常の癌がBcl2タンパク質過剰発現と関連するならば、Bcl2の発現を抑制するように方向付ける新規抗癌療法に対するさらなる要求がある。加えて、他の慣用的抗癌治療に比べて増加した効力を示す改善された抗癌療法に対する要求がある。さらに、抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性を増加させることが可能で、それにより癌療法を改善する剤及び方法を同定する要求がある。Bcl2のような抗アポトーシスタンパク質を過剰発現する細胞中のアポトーシスを誘発する方法に対する要求もある。
【0012】
発明の要旨
BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的である配列を有する特定のマイクロRNAがBcl2タンパク質を過剰発現する癌細胞中で調節が解除されていることがここに発見された。
【0013】
従って、本発明はBCL2遺伝子又は遺伝子産物(例えば、RNA、タンパク質)の過剰発現に関連した癌を予防する又は癌を治療する方法を、こうした治療を必要としている対象において提供し、少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなる。本明細書で使用される用語「BCL2」とは、BCL2核酸(例えば、BCL2遺伝子、cDNA、RNA転写体、DNA構築物)を指し、一方、「Bcl2」はBcl2タンパク質生成物を指す。特定の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。特定の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。こうしたmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR15、miR16、miR−15b及びmiR−16−2が含まれる。miR15及びmiR16遺伝子は13ql4に局在化しており、一般にそれぞれmir−15a及びmiR−16−1と呼ばれている。本明細書で使用される用語「miR15」及び「miR−15a」は相互交換的であり、用語「miR16」及び「miR−16−1」も同様である。さらなる態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0014】
本発明はさらに、Bcl2過剰発現に関連した癌を有する対象を治療するための医薬組成物を提供し、該組成物は少なくとも一つの化学療法剤及び少なくとも一つのmiR遺伝子産物を含んでなり、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。一つの態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−15aである。別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−16−1である。さらに別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0015】
本発明はBCL2関連癌を有する対象における癌治療の効力を決定するための方法も包含し、該対象に該少なくとも一つの剤を投与すること、及び引き続いてBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子産物の発現を測定することを含んでなる。特定の態様において、剤の投与に続くmiR遺伝子産物の発現の増加は、治療の成功の指標である。一つの態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−15aである。別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−16−1である。さらに別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0016】
本発明は加えて、抗癌治療(例えば、化学療法、放射線療法)の効力を増加させるための方法を提供し、少なくとも一つの抗癌治療と組み合わせて、少なくとも一つのmiR遺伝子産物を腫瘍細胞に提供することを含んでなる。特定の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。さらなる態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1である。さらに別の態様において、少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0017】
本発明は、抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性を増加させるための方法も提供し、少なくとも一つのmiR遺伝子産物を癌細胞に提供することを含んでなり、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。一つの態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1である。別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。特定の態様において、該抗癌剤は化学療法剤である。別の態様において、該抗癌剤は放射線である。
【0018】
本発明は、細胞のアポトーシスを誘発する方法も包含し、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる少なくとも一つのmiR遺伝子産物と細胞を接触させることを含んでなる。特定の態様において、該miR遺伝子産物は配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。さらなる態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1である。さらに別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。これらの方法に適した細胞には、限定されるわけではないが、Bcl2タンパク質を発現する癌細胞及び他の細胞が含まれる。
【0019】
本発明は加えて、対象においてBCL2関連癌を診断する方法を提供し、対照サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該対象からのサンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルを決定することを含んでなり、該miR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。特定の態様において、該miR遺伝子産物は、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。さらなる態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1である。さらに別の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の態様において、該miR遺伝子産物は、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。特定の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0020】
本発明の前記及び他の目的、特色及び利点は、本発明の態様の以下のより特定された説明から明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明は以下のようである。
【0021】
本発明はその好ましい態様を参照して特定的に示され及び説明されているが、付随する特許請求の範囲に包含されている本発明の範囲から離れることなく、形態及び詳細における多様な変形が行えることを当業者は理解するであろう。
【0022】
本明細書において相互交換的に使用される、「miR遺伝子産物」、「マイクロRNA」、「miR」又は「miRNA」とは、プロセシングされていない又はプロセシングされたmiR遺伝子からのRNA転写体を指す。miR遺伝子産物はタンパク質に翻訳されないので、用語「miR遺伝子産物」はタンパク質を含んでいない。プロセシングされていないmiR遺伝子転写体は「miR前駆体」とも称され、そして典型的には約70〜100ヌクレオチド長のRNA転写体を含んでなる。miR前駆体は、RNAse(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAse III、例えば、大腸菌RNAse III)での消化により、活性19〜25ヌクレオチドRNA分子にプロセシングし得る。この活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、「プロセシングされた」miR遺伝子転写体又は「成熟」miRNAとも称される。
【0023】
活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、天然のプロセシング経路(例えば、無傷の細胞又は細胞溶解物を使用して)を介して、又は合成プロセシング経路(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAase IIIのような単離されたプロセシング酵素を使用して)によりmiR前駆体から得ることが可能である。活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、miR前駆体からプロセシングされることなく、生物学的に又は化学合成により直接的に生成し得ることも理解されている。
【0024】
miR遺伝子産物の多数の配列が表1に提供されている。本明細書のすべての核酸配列は5’から3’方向で与えられている。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【0032】
【表8】

【0033】
【表9】

【0034】
【表10】

【0035】
【表11】

【0036】
【表12】

【0037】
【表13】

【0038】
【表14】

【0039】
【表15】

【0040】
【表16】

【0041】
【表17】

【0042】
【表18】

【0043】
診断及び予後診断法
本発明に従うと、対照サンプルと比較したサンプル中のmiR遺伝子産物の量の減少、miR遺伝子コピー数の減少を検出することにより、又はmiR遺伝子の一つ又はそれより多くのコピー中の突然変異を検出することによりBCL2関連癌を診断する又は予後診断することが可能であり、該miR遺伝子は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記述された)と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子のmiR遺伝子コピー数における減少(二倍体から一倍体、又はコピーなしへ)は、BCL2関連癌を診断又は予後診断するものである。同様に、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子のmiR遺伝子の一つ又は両方における突然変異は、遺伝子機能の喪失を意味し、及びBCL2関連癌を診断又は予後診断するものである。
【0044】
本明細書で使用される「CLL細胞」は、CLLを有する、又は有していると疑われる対象からのリンパ球であり、該リンパ球は、その全開示が本明細書において援用される、Matutes et al., Leukemia 8(10): 1640-1645(1994)のスコア付けシステムに従って決定された、少なくとも4の「CLLスコア」を有する。本明細書で使用される「前立腺癌細胞」は、前立腺に位置しているかいないかに関わらず、前立腺起源の新生物又は腫瘍原性細胞である。他のBCL2関連癌細胞は当業者には自明であるか、及び/又は本明細書に記述されている。
【0045】
miRの15及びmiR16遺伝子の核酸配列は、GenBank寄託番号AC069475 が与えられているヌクレオチド配列で、クローン317gl1内に含まれている。GenBank寄託番号AC069475 の全開示は、本明細書において援用される。BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子の欠失又は変異は、BCL2関連癌(例えば、CLL、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫)を有していると疑われる対象からの組織中の遺伝子の構造又は配列を決定し、そしてこれを該対象からの冒されていない組織のサンプル中又は正常対照からの組織のサンプル中の、これらの遺伝子の構造又は配列を比較することにより検出し得る。こうした比較はいずれかの適した技術(例えば、本明細書に記載されている)により行い得る。
【0046】
一つの態様において、BCL2関連癌を診断するため、組織サンプルが対象から誘導される。該サンプルは、次に、miR遺伝子産物発現又は一つ又はそれより多くのmiR遺伝子の欠失又は変異の決定のために調製する。適した組織サンプルには、限定されるわけではないが、問題とするところのバイオプシー、ならびに血液及び/又は体液サンプルが含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「BCL2関連癌」とは、BCL2遺伝子又は遺伝子産物の過剰発現に関連した癌であり、適した対照細胞と比べて、一つ又はそれより多くのBCL2遺伝子産物のより高いレベルを発現する細胞により特徴付けられるいずれかの癌であり得る。本発明の方法に従った適した対照細胞は、Bcl2過剰発現癌に冒されていない個体からの細胞であることが可能であり、又はそれらは罹患した対象からの非癌性細胞であることができ、又はそれらはBcl2過剰発現癌に罹患した別の個体からの非癌性細胞であることができる。
【0048】
miR遺伝子欠失又は変異の存在は、例えば、本明細書に記載されたmiR遺伝子のためのプローブを使用する、対象からのゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションにより検出し得る。例えば、組織のサンプルは、BCL2関連癌を有していると疑われる対象から慣用的バイオプシー技術により採取し得る。もしくは、BCL2関連癌を有していると疑われる対象から血液サンプルを採取することが可能であり、DNA抽出のために白血球細胞を単離し得る。血液又は組織サンプルは放射線療法又は化学療法の開始に先立って患者から得ることが可能である。対応する組織又は血液サンプルは、該対象の冒されていない組織から、又は対照として使用するための正常ヒト個体から得ることが可能である。
【0049】
サザンブロットハイブリダイゼーション技術は当業者には自明である。例えば、BCL2関連癌を有していると疑われる対象からの組織又は体液(例えば、血液)から単離されたゲノムDNAは、制限エンドヌクレアーゼで消化し得る。この消化はゲノムDNAの制限断片を発生し、それは例えば、アガロースゲル上での電気泳動により分離し得る。該制限断片は、次に、ハイブリダイゼーション膜(例えば、ニトロセルロース−ナイロン)上にブロットされ、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)に対して特異的な標識プローブとハイブリダイズさせる。一つ又はそれより多くの遺伝子の欠失又は変異は、該対象からのDNAサンプルと等しく処理された対照DNAサンプルと比較された、ハイブリダイゼーション膜上の制限断片パターンの変化により示される。miR遺伝子のコピー数又はmiR遺伝子内の変異の検出に適したプローブ標識及びハイブリダイゼーション条件は、当業者により容易に決定し得る。本明細書で使用される用語「欠失」は、遺伝子の部分的欠失又は全遺伝子の欠失を指す。
【0050】
例えば、サザンブロット ハイブリダイゼーションのためのmiR−15a及びmiR−16−1核酸プローブは、その全開示が本明細書において援用される、Lagos-Quintana et al., Science 294:853-858 (2001) に記述されているmiR−15a及びmiR−16−1マイクロRNAの公開された配列に基づいて設計し得る。miR−15aマイクロRNAのヌクレオチド配列は、uagcagcacauaaugguuugug (配列番号3)である。miR−16−1マイクロRNAのヌクレオチド配列は、uagcagcacguaaauauuggcg (配列番号4)である。miR−15a及びmiR−16−1 DNAを検出するために適したプローブは、それぞれ:
CACAAACCATTATGTGCTTGCTA (配列番号:5)
GCCAATATTTACGTGCTGCTA (配列番号:6)
である。配列番号5及び配列番号6の補体もmiR−15a又はmiR−16−1 DNAを探索するために使用し得る。miR−15a、miR−16−1又は他のmiR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)を検出するための他の適したプローブも、当業者は容易に決定し得る。
【0051】
標識されたDNA及びRNAプローブの製造法、及び標的ヌクレオチド配列へのそれらのハイブリダイゼーションについての条件は、その開示が本明細書において援用される、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., eds., 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 10及び11章、に記載されている。
【0052】
例えば、核酸プローブは、例えば、H、32P、33P、14C、又は35Sのような放射性核種;重金属;又は標識化リガンドのための特異的結合対メンバーとして機能することが可能であるリガンド(例えば、ビオチン、アビジン又は抗体)、蛍光分子、ケミルミネッセント分子、酵素などで標識化し得る。
【0053】
プローブは、それらの全開示が本明細書において援用される、Rigby et al., J. Mol. Biol. 113:237-251(1977) 、のニックトランスレーション法によるか、又はFienberg et al., Anal. Biochem. 132:6-13(1983) 、のランダムプライミング法により高比活性で標識し得る。後者は、一本鎖DNAから、又はRNA鋳型から高比活性の32P−標識プローブを合成するために選択される方法である。例えば、ニックトランスレーション法に従って、既存のヌクレオチドを高放射性ヌクレオチドで置き換えることにより、10cpm/マイクログラムをかなり上回る比活性を有する32P−標識核酸プローブを製造することが可能である。ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィー検出を、ハイブリダイズされたフィルターを写真フィルムに暴露することにより実施し得る。ハイブリダイズされたフィルターにより暴露された写真フィルムのデンシトメトリックスキャニングは、miR15又はmiR16遺伝子コピー数の正確な測定を提供する。もしくは、miR15又はmiR16遺伝子コピー数は、Amersham Biosciences, Piscataway, NJ. から入手可能であるMolecular Dynamics 400-B 2D Phosphorimager のような、コンピューター化されたイメージングシステムにより定量し得る。
【0054】
DNA又はRNAプローブの放射性核種標識化が実際的ではない場合、プローブ分子内に類似体、例えば、dTTP類似体5−(N−(N−ビオチニル−エプシロン−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジン三リン酸を取り込ませるために、ランダム−プライマー法を使用し得る。ビオチニル化プローブオリゴヌクレオチドは、アビジン、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体、蛍光色素に結合された抗体又は呈色反応を生み出す酵素のような、ビオチン結合性タンパク質との反応により検出し得る。
【0055】
miR遺伝子の欠失又は変異は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりこれらの遺伝子の断片を増幅すること、及び増幅された断片を配列決定により又は電気泳動により分析して、対象からのDNAサンプルからの増幅された断片の配列及び/又は長さが対照DNAサンプルからのものと異なっているかどうかを決定しても検出し得る。DNA断片のPCR増幅のための適した反応及びサイクリング条件は、当業者が容易に決定し得る。例示のPCR反応及びサイクリング条件は、下記の実施例に記載されている方法に提供されている。
【0056】
BCL2関連癌の診断は、miR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)の欠失を検出することにより実行し得る。例えば、図2A〜2Dに示されているマーカーのような多様な染色体マーカー間のmiRの検出。例えば、miR−15a及びmiR−16−1を含んでなるマイクロサテライトマーカーD13S272及びD13S273間の13q14の領域における欠失は、BCL2関連癌の存在を示し得る。加えて、13q14における欠失が、miR15又はmiR16が欠失されている、マイクロサテライトマーカーD13Sl150及びD13S272間又は座位Alu18及びマイクロサテライトマーカーD13S272間である場合、BCL2関連癌の存在を示し得る。
【0057】
組織サンプル中の2倍体ゲノム当たりの、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子のコピー数を決定する代替法は、miR−15a/miR−16−l遺伝子クラスターが13ql4に位置し、及びマーカーD13S272及びD13S273に連結されているという事実に頼っている。D13S272及びD13S273マーカーに連結された座位がヘテロ接合性である個体におけるmiR−15a又はmiR−16−1遺伝子のコピーの喪失は、これらのマーカーにおけるヘテロ接合性の喪失から推測し得る。染色体マーカーのヘテロ接合性の喪失を決定するための方法は当業者には自明である。ヘテロ接合性の喪失例の研究は下記実施例3に記載されている。
【0058】
BCL2関連癌を有していると疑われる対象において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子が変異しているかどうかを決定するための別の技術は、例えば、その全開示が本明細書において援用されるOrita, et al., Genomics 5: 874-879 (1989)及び Hayashi, PCR Methods and Applic. 1: 34-38(1991) に記述されているような一本鎖配座多形(SSCP)である。SSCP技術は、PCRにより問題とする遺伝子(例えば、miR遺伝子)の断片を増幅すること;断片を変性させること及び非変性条件下、2つの変性一本鎖の電気泳動を行うことから成っている。一本鎖は、鎖電気泳動移動度に影響する、複合体配列依存性鎖内二次構造の形をとる。
【0059】
一つ又はそれより多くのmiR遺伝子における欠失又は変異は、これらのmiR遺伝子の発現の減少も起こし得る。それ故、BCL2関連癌は、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)から生成されるRNAの発現レベルを検出することによっても診断することが可能であり、miR遺伝子発現の減少はBCL2関連癌を診断するものである。
【0060】
miR遺伝子は転写され、ステムループ構造を形成する前駆体RNAを生成する。前駆体RNAはタンパク質へ翻訳されず、むしろ機能性遺伝子産物であると信じられている「マイクロRNA」又は「miRNA」にプロセシングされる。
【0061】
本明細書において使用される「miR遺伝子産物」とは、以下により完全に記述されるような、miR遺伝子からのプロセシングされた又はプロセシングされていないRNA転写体を意味する。用語「RNA」、「RNA転写体」及び「遺伝子産物」は、miR遺伝子発現の文脈において本明細書では相互交換的に使用される。
【0062】
例えば、miR−15a及びmiR−16−1前駆体RNAは、Lagos-Quintana, et al., Science 294, 853-858 (2001) に記載されている。miR−15a及びmiR−16−1前駆体RNAの配列は、配列番号1及び配列番号2として与えられている。配列番号1及び配列番号2の予測されるステムループ構造は、それぞれ図1A及び1Bに示されている。
[配列番号1]: ccuuggaguaaaguagcagcacauaaugguuuguggauuuugaaaaggugcaggccauauugugcugccucaaaaauacaagg
[配列番号2]: gucagcagugccuuagcagcacguaaauauuggcguuaagauucuaaaauuaucuccaguauuaacugugcugcugaaguaagguugac
いずれかの理論に束縛されるものではないが、miR−15a及びmiR16−l前駆体RNAはmiR−15a/miR−16−1遺伝子クラスターから同時に発現され、及びダイサー/アルゴノート複合体により機能性miRNA産物へプロセシングされると信じられている。例えば、Lee et al., Science 294:862 (2001) を参照されたい。これらの遺伝子からの両方の機能性miRNA産物とも、5’末端モノリン酸及び3’末端ヒドロキシル基を有する22ヌクレオチド長の一本鎖RNA分子である。プロセシングされたmiR−15aマイクロRNAのヌクレオチド配列はuagcagcacauaaugguuugug (配列番号3)である。プロセシングされたmiR−16−1マイクロRNAのヌクレオチド配列はuagcagcacguaaauauuggcg (配列番号4)である。本発明の実施において、miR−15a又はmiR−16−1遺伝子から生成される60〜70nt RNA前駆体分子が検出し得る。もしくは、ダイサー及びアルゴノートタンパク質による前駆体RNAのプロセシングを介して生成される、より短いmiR−15a及びmiR−16−1マイクロRNA遺伝子産物を検出し得る。
【0063】
RNA発現レベルを決定するための方法は当該分野の技術レベル内である。例えば、BCL2関連癌を有していると疑われる対象からの組織又は血液サンプルは本明細書に記載したように得られる。対照として、対応する組織又は血液サンプルは本明細書に記載したように、該対象の冒されていない組織から、又は正常ヒト個体から得ることが可能である。対照組織又は血液サンプルは、次に、該対象からのサンプルと同様に処理される。対象におけるmiR遺伝子発現(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)のレベルは、該対象からの冒されていないサンプルからのレベル、又は正常対照からの組織又は血液中の発現レベルと比較し得る。例えば、BCL2関連癌細胞中の相対的miR発現レベルは、一つ又はそれより多くの基準に関して都合よく決定される。基準は、例えば、一方ではゼロ発現レベル及び同一の患者の正常組織中の遺伝子の発現レベル、又は一方では正常対照群の組織中の発現レベルを含んでなることができる。該基準は、標準細胞株におけるmiR発現レベルも含んでなることができる。一つの態様において、正常発現レベルと比較された、miR発現の減少の程度が、治療に続く未来の臨床結果の指標である。
【0064】
もしくは、BCL2関連癌を有していると疑われる対象におけるmiR遺伝子発現(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)のレベルを、正常ヒト対照の集団から前もって得られているmiR遺伝子発現の平均レベルと比較し得る。
【0065】
細胞中の特定の遺伝子のRNA転写体を決定するための適した技術は当業者には自明である。1つのこうした方法に従うと、全細胞RNAは、核酸抽出緩衝剤の存在下での均質化により、及び続いての遠心分離により細胞から精製し得る。核酸を沈澱させ、DNaseによる処理及び沈澱によりDNAが除去される。RNA分子は、次に、標準技術に従ってアガロースゲル上でのゲル電気泳動により分離され、例えば、いわゆる「ノーザン」ブロッティング技術を使用してニトロセルロースフィルターに移される。RNAは、次に、加熱によりフィルター上に固定される。特定のRNAの検出及び定量は、問題とするRNAに相補的である、適切に標識されたDNA又はRNAプローブを使用して達成される。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., eds., 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 7章、を参照されたい。miR−15a又はmiR−16−1 RNAのノーザンブロットハイブリダイゼーションのために適したプローブには、例えば、配列番号5及び配列番号6が含まれる。
【0066】
miR RNAに対するプローブハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィー検出は、ハイブリダイズされたフィルターを写真フィルムに暴露することにより実施し得る。ハイブリダイズされたフィルターにより暴露された写真フィルムのデンシトメトリックスキャニングは、miR遺伝子転写体レベルの正確な測定を提供する。もしくは、RNA転写体レベルは、例えば、Amersham Biosciences, Piscataway, NJ. から入手可能であるMolecular Dynamics 400-B 2D Phosphorimager での、ハイブリダイゼーションブロットのコンピューター化されたイメージングシステムにより定量し得る。
【0067】
ノーザン及び他のRNAブロッティングハイブリダイゼーション技術に加えて、RNA転写体のレベルは、インサイツハイブリダイゼーションの技術に従って実行し得る。この技術は、ノーザンブロッティング技術よりも少ない細胞数しか必要とせず、及び全細胞を顕微鏡カバーガラス上に沈着させること、及び放射活性又は他の方法で標識化されたオリゴヌクレオチド(例えば、cDNA又はRNA)プローブを含有する溶液で、細胞の核酸内容物を探査することを含む。この技術は、BCL2関連癌(例えば、CLL、前立腺癌)を有していると疑われる対象からの組織バイオプシーサンプルを分析するために特によく適している。インサイツハイブリダイゼーション技術の実際は、その全開示が本明細書において援用される米国特許第5,427,916号により詳細に記載されている。miR−15a又はmiR−16−1RNAのインサイツハイブリダイゼーションに適したプローブには、例えば、配列番号5及び配列番号6が含まれる。
【0068】
特定のmiR転写体の相対数は、miR転写体の逆転写、続いてのポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)での増幅によっても決定し得る。miR転写体のレベルは、内部標準、例えば、同一サンプル中に存在する「ハウスキーピング」遺伝子からのmRNAのレベルと比較し得る。内部標準としての使用に適した「ハウスキーピング」遺伝子には、例えば、ミオシン又はグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(G3PDH)が含まれる。定量的RT−PCR及びそれらの変法についての方法は当業者には自明である。
【0069】
miR遺伝子転写の発現を測定するための他の技術も当業者には自明であり、RNAの転写及び分解の速度を測定するための多様な技術が含まれる。
治療法
BCL2関連癌は、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)の単離された遺伝子産物を、単独で又は組み合わせて、BCL2関連癌細胞に投与することにより治療し得る。いずれかの理論に束縛されるものではないが、該miR遺伝子産物はこうした癌細胞の新生物性又は腫瘍原性増殖を抑制すると信じられている。
【0070】
特に、BCL2関連癌は、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子の単離された遺伝子産物を、単独で又は組み合わせて、癌細胞に投与することにより治療し得る。
本明細書で使用される「BCL2関連癌細胞」とは、腫瘍原性又は新生物性細胞であり、それらはBCL2関連癌を患っている対象から単離し得る。BCL2関連癌細胞は、細胞におけるBCL2遺伝子産物の発現レベルの増加を検出することにより、又は該細胞中の癌性又は新生物性表現型を検出することにより同定し得る。当業者は、癌性又は新生物性表現型を有する細胞を容易に同定し得る。例えば、こうした細胞は、培養における接触誘発増殖阻害に非感受性であり、そして長期間培養した場合、病巣を形成するであろう。癌性又は新生物性細胞は、特徴的な形態学的変化、コロニー増殖の無秩序なパターン及び足場非依存性増殖の獲得も示す。癌性又は新生物性細胞は、感受性動物において浸潤性腫瘍を形成する能力も有し、それは当業者には自明の技術を使用して、該細胞を、例えば、胸腺欠損マウスに注射することにより評価し得る。
【0071】
本明細書で使用される「単離された」miR遺伝子産物とは、ヒトの介在を介して天然の状態から変化された又は取り除かれたものである。例えば、生きている動物中に天然に存在するRNAは「単離されて」いない。合成RNA、又はその天然状態で同時に存在する物質から部分的に又は完全に分離されたRNAは「単離されて」いる。単離されたRNAは実質的に精製された形態で存在することが可能であり、又はRNAが送達された細胞中に存在することが可能である。それ故、細胞(例えば、BCL2関連癌細胞)へ計画的に送達された又は該細胞中で発現されたmiR遺伝子産物は、「単離された」遺伝子産物と考えられる。
【0072】
miR遺伝子産物は、多くの標準技術を使用して得ることが可能である。例えば、該遺伝子産物は当該技術分野で公知の方法を使用して化学的に合成又は組換え的に産生し得る。一つの態様において、RNA産物は適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び通常のDNA/RNAシンセサイザーを使用して化学的に合成される。合成RNA分子又は合成試薬の商業的供給元には、例えば、Proligo (Hamburg, Germany)、 Dharmacon Research (Lafayette, CO, U.S.A.)、Pierce Chemical (Perbio Science の一部門、 Rockford, IL, U.S.A.)、Glen Research (Sterling, VA, U.S.A.)、ChemGenes (Ashland, MA, U.S.A.) 及びCruachem (Glasgow, UK) が含まれる。
【0073】
もしくは、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、いずれかの適したプロモーターを使用して、組換え環状又は直線状DNAプラスミドから発現し得る。プラスミドからRNAを発現するために適したプロモーターには、U6又はH1 RNA polIIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。こうした組換えプラスミドは、細胞(例えば、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞))中の、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0074】
組換えプラスミドから発現されたmiR遺伝子産物は、標準技術により培養細胞発現システムから単離し得る。組換えプラスミドから発現されたmiR遺伝子産物は、癌細胞(例えば、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞))へ送達する、又は該癌細胞中で直接発現することも可能である。癌細胞へmiR遺伝子産物を送達するための組換えプラスミドの使用は、以下により詳細に議論されている。
【0075】
複数のmiR遺伝子産物は別の組換えプラスミドから発現することも、又は同一の組換えプラスミドから発現することも可能である。一つの態様において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、単一プラスミドからRNA前駆分子として発現され、そして該前駆分子は、適したプロセシングシステムにより、機能性miR分子にプロセシングされる。適したプロセシングシステムには、例えば、その全開示が本明細書において援用される、Tuschl et al. による米国公開特許出願番号2002/0086356に記載されているインビトロでのショウジョウバエ細胞溶解システムが含まれる。
【0076】
miR遺伝子産物を発現するために適したプラスミドの選択、miR遺伝子産物を発現する核酸配列をプラスミド内へ挿入する方法、及び組換えプラスミドを問題とする細胞へ送達する方法は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Zeng et al., Molecular Cell 9:1327-1333(2002); Tuschl , Nat.Biotechnol, 20:446-448(2002); Brummelkamp et al., Science 296:550-553(2002); Miyagishi et al., Nat. Biotechnol. 20:497-500(2002); Paddison et al., Genes Dev. 16:948-958(2002); Lee et al., Nat. Biotechnol. 20:500-505(2002); 及び Paul et al., Nat. Biotechnol. 20:505-508(2002) を参照されたい。
【0077】
特定の態様において、miR遺伝子産物(単数又は複数)を発現しているプラスミドは、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター制御下のmiR前駆体RNAをコードしている配列を含んでなる。本明細書において使用されるプロモーターの「制御下」とは、プロモーターがmiRNAコード配列の転写を開始できるように、miRNA産物をコードする核酸配列が該プロモーターの3’に位置していることを意味する。
【0078】
miR遺伝子産物は組換えウイルスベクターからも発現し得る。miR遺伝子産物(単数又は複数)が2つの別の組換えウイルスベクターから、又は同一のウイルスベクターから発現し得ることが企図される。組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、標準技術により培養細胞発現システムから単離することも可能であり、又はBCL2関連癌細胞中で直接発現することも可能である。BCL2関連癌細胞へmiR遺伝子産物(単数又は複数)を送達するための組換えウイルスベクターの使用は以下により詳細に議論されている。
【0079】
本発明の組換えウイルスベクターは、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物をコードする配列及びRNA配列を発現するためのいずれかの適したプロモーターを含んでなる。本明細書で記載したように、適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNA polIIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。本発明の組換えプラスミドは、BCL2関連癌細胞中での一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0080】
miR遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を受容することが可能ないずれのウイルスベクターも使用し得る;例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなどに由来するベクター。ウイルスベクターの向性は、他のウイルスからの外被タンパク質又は他の表面抗原でベクターをシュードタイピングすることにより修飾し得る。例えば、本発明のAAVベクターを、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質でシュードタイピングし得る。本発明での使用に適した組換えウイルスベクターの選択、ベクター内へのRNAを発現するための核酸配列を挿入する方法、ウイルスベクターを問題とする細胞へ送達する方法及び発現されたRNA産物の回収は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Dornburg , Gene Therap. 2:301-310(1995); Eglitis , Biotechniques 6:608-614(1988); Miller , Hum. Gene Therap. 1:5-14(1990); 及びAnderson , Nature 392:25-30(1998) 、を参照されたい。
【0081】
好ましいウイルスベクターはAV及びAAVに由来するものである。本発明のmiRNAを発現するために適したAVベクター、組換えAVベクターを構築するための方法、及び標的細胞内に該ベクターを送達するための方法は、その全開示が本明細書において援用される、Xia et al., Nat. Biotech. 20:1006-1010(2002) に記載されている。本発明のmiRNAを発現するために適したAAVベクター、組換えAAVベクターを構築するための方法、及び標的細胞内に該ベクターを送達するための方法は、その全開示が本明細書において援用される、Samulski et al., J. Virol. 61:3096-3101(1987); Fisher et al., J. Virol, 70:520-532(1996); Samulski et al., J. Virol. 63:3822-3826(1989);米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願番号WO 94/13788 ;及び国際特許出願番号WO 93/24641 に記載されている。特定の態様において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、CMV中間初期プロモーターを含んでなる単一組換えAAVベクターから発現される。
【0082】
一つの態様において、本発明の組換えAAVウイルスベクターは、ヒトU6RNAプロモーター制御下、ポリT終結配列と機能可能であるように(operably) 関連してmiR前駆体RNAをコードする核酸配列を含んでなる。本明細書において使用される「ポリT終結配列と機能可能であるように関連して」とは、センス又はアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、ポリT終結シグナルと5’方向ですぐに隣接していることを意味する。ベクターからのmiR配列の転写の間、ポリT終結シグナルは転写を終結させるように作用する。
【0083】
特定の態様において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物が、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞)の新生物性又は腫瘍原性増殖を抑制するために使用される。理論に束縛されるものではないが、プロセシングを受けたmiRNAは、これらの細胞において新生物性又は腫瘍原性増殖を開始する及び/又は維持するために必要である一つ又はそれより多くの標的mRNA中の相補的配列に結合すると信じられている。それ故、本発明はBCL2関連癌、例えば、CLL、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫を治療する方法を、こうした治療を必要とする対象において提供する。本方法は、BCL2関連癌の増殖が抑制されるように、対象に一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなる。一つの態様において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、BCL2転写体内のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0084】
例えば、該一つ又はそれより多くのmiR遺伝子の発現は、原発性又は転移性腫瘍、又は少なくとも以下の組織学サブタイプの癌からの新生物性細胞において減少していてもよいし又は存在しなくてもよい:サルコーマ(中胚葉起源の結合及び他の組織の癌);メラノーマ(色素性メラノサイト由来の癌);癌腫(上皮起源の癌);腺癌(腺上皮起源の癌);神経起源の癌(グリオーマ/神経膠芽腫及び星細胞腫);及び白血病及びリンパ腫のような血液新生物(例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄球性白血病、CLL)。
【0085】
該一つ又はそれより多くのmiR遺伝子の発現は、組織学サブタイプにかかわらず、少なくとも以下の器官又は組織にその起源を有する癌において減少していてもよいし又は存在しなくてもよい:乳房;男性及び女性泌尿生殖器系の組織(例えば、尿管、膀胱、前立腺、精巣、卵巣、子宮頚部、子宮、腟);肺;消化器系の組織(例えば、胃、大及び小腸、結腸、直腸);膵臓及び副腎のような外分泌腺;口及び食道の組織;脳及び脊髄;腎臓(腎臓の(renal));膵臓;肝胆道系(例えば、肝臓、胆嚢);リンパ系;平滑筋及び横紋筋;骨及び骨髄;皮膚;及び眼の組織。
【0086】
該一つ又はそれより多くのmiR遺伝子の発現は、例えば、「全病期グループ分類」(「ローマ数字」でも呼ばれる)又は「腫瘍、節及び転移」(TNM)病期分類システムにより測定された、発生のいずれかの予後段階における癌又は腫瘍中においても、減少していても又は存在しなくてもよい。所与の癌についての適切な予後病期分類システム及び病期記述は、例えば、National Cancer Instituteの「CancerNet」インターネットウェブサイトに記述されているように当該技術分野では公知である。
【0087】
BCL2関連癌についての治療を必要とする対象は、該対象から腫瘍又は新生物性細胞(又は腫瘍又は新生物であると疑われる細胞)のサンプルを得ること、及び一つ又はそれより多くのmiR遺伝子(例えば、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなるmiR遺伝子)の発現が、該対象から得られた正常組織からの細胞(例えば、対照細胞)と比較して、該細胞の少なくとも一部で減少している又は存在しないかを決定することにより同定し得る。細胞中のmiR遺伝子発現レベルを決定するための方法は、当業者には自明であり、及び本明細書に記載されている。もしくは、対象から得られた細胞中の一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の発現を、正常対象の集団から得られた細胞中のこれら遺伝子の平均発現レベルと比較し得る。BCL2関連癌についての治療を必要とする対象は、標準診断技術を使用し、医者により容易に同定され得る。例えば、その全開示が本明細書において援用される、「Chronic lymphatic leukemia:recommendations for diagnosis, staging, and response criteria. International Workshop on Chronic Lymphatic Leukemia」(1989) Annals of Internal Medicine 110(3):236-238 、を参照されたい。例えば、CLLの対象は、循環するCLL細胞、リンパ球増加症(即ち、血液中、10,000細胞/立方ミリメータと等しい又はより高いリンパ球計数)及び骨髄及びリンパ性組織におけるCLL細胞の進行性蓄積を示す。
【0088】
対象の血液又は他の組織におけるBCL2関連癌細胞の同一性は、血液サンプルの直接視覚的観察及び/又は、CLLの場合、リンパ球の「CLLスコア」を決定することにより確認し得る。CLLスコアは、CLL細胞に特徴的な5つのリンパ球表面マーカーの存在又は不存在を示す:CD5+、CD23+、FMC7−及び表面免疫グロブリン(SmIg)の弱い発現(+/−)及びCD22。このスコアリングシステムは、それがCLLに対して定型又は非定型であるかに従って、これら5つの各マーカーについて1又は0の値を与える。CLL細胞は4又は5のCLLスコアを有するが、一方他の白血病からのリンパ球は<1〜3のCLLスコアしか有していない。その全開示が本明細書において援用される、Matutes, et al., Leukemia 8(10): 1640-1645(1994) 及び Moreau, et al., American Journal of Clinical Pathology, 108:378-82(1997) 、を参照されたい。CLL細胞は、正常末梢血B細胞と比較しても、相対的に低いレベルの表面膜免疫グロブリンしか有していない。リンパ球上の表面膜免疫グロブリンレベルは標準技術に従って容易に検出し得る;例えば、その全開示が本明細書において援用される、Rozman, et al., New England Journal of Medicine 333 : 1052-1057(1995) 、を参照されたい。
【0089】
本明細書において使用されるmiR遺伝子産物の「有効量」は、BCL2関連癌を患っている対象において、BCL2関連癌細胞の増殖を抑制するために十分な量である。本明細書において使用される「BCL2関連癌細胞の増殖を抑制するため」とは、該細胞を殺す、又は該細胞の増殖を永久に又は一時的に休止させることを意味する。BCL2関連癌細胞の抑制は、もし該対象中のこうした細胞の数が、miR遺伝子産物を投与した後に一定のままであるか、又は減少していれば推論し得る。BCL2関連癌細胞増殖の抑制は、もしこうした細胞の絶対数が増加しても、腫瘍増殖の速度が減少すれば推論し得る。
【0090】
対象の体内におけるBCL2関連癌細胞数は、直接計測により、又は原発性又は転移性腫瘍塊のサイズからの推定により決定し得る。
例えば、対象中のBCL2関連癌細胞数は、全血又は白血球細胞計数を使用して容易に決定し得る。BCL2関連癌細胞数は、免疫組織学的方法、フローサイトメトリー又はBCL2関連癌細胞の特徴的表面マーカーを検出するように設計された他の技術によっても容易に決定し得る。
【0091】
腫瘍塊のサイズは、直接視覚的観察により、又はX線、磁気共鳴映像法(MRI)、超音波及びシンチグラフィーのような診断的イメージング法により確認し得る。腫瘍塊のサイズを確認するために使用される診断的イメージング法は、当該技術分野では公知の造影剤を用いることができるが、又は用いなくてもよい。腫瘍塊のサイズは、組織塊の触診のような物理的手段により、又はキャリパーのような計測器での組織塊の測定によっても確認し得る。
【0092】
当業者は、対象のサイズ及び体重;疾患浸透の程度;対象の年齢、健康及び性;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身的であるかどうかのような因子を考慮に入れて、所与の対象に投与すべき一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量を容易に決定し得る。
【0093】
例えば、miR遺伝子産物の有効量は、治療されるべき腫瘍塊のおよその重量に基づき得る。腫瘍塊のおよその重量は、該塊のおよその容量を計算することにより決定することが可能であり、1立方センチメーターの容量は大体1グラムに等しい。腫瘍塊の重量に基づいた一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量は、腫瘍塊のグラム当たり少なくとも約10マイクログラム、及び腫瘍塊のグラム当たり約10〜500マイクログラムの間であり得る。加えて、有効量は、腫瘍塊のグラム当たり少なくとも約60マイクログラム、又は少なくとも腫瘍塊のグラム当たり約100マイクログラムであり得る。特定の態様において、腫瘍塊の重量に基づいて、有効量が腫瘍内に直接注入される。
【0094】
一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量は、治療されるべき対象のおよその又は推定体重にも基づき得る。一つの態様において、こうした有効量は、本明細書に記載したように、非経口的に又は経腸的に投与される。例えば、対象に投与されるべき一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量は、体重kg当たり約5〜3000マイクログラム範囲であることができ、及び体重kg当たり約700〜1000マイクログラムであることができ、又は体重kg当たり約1000マイクログラムを超え得る。
【0095】
当業者は、所与の対象へ一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物を投与することについての適切な投与計画も容易に決定し得る。例えば、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は対象に一度に投与し得る(例えば、単回注射又はデポジションとして)。もしくは、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、約3〜約28日、より好ましくは約7日〜約10日の期間、対象に1日1回又は2回投与し得る。特定の投与計画において、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は7日にわたって1日1回投与される。投与計画が複数の投与を含んでなる場合、対象に投与される一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物の有効量は、全投与計画にわたって投与された遺伝子産物の総量を含むことが可能であることが理解される。
【0096】
一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、造血幹細胞(HSC)及び/又はBCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞)のような対象の細胞に遺伝子産物を送達するために適したいずれかの手段により、対象へ投与し得る。例えば、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物は、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸で、対象の細胞をトランスフェクトするのに適した方法により投与し得る。該細胞は、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物で直接トランスフェクトすることが可能であり(これらは核酸であるので)、又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸でトランスフェクトすることが可能である。一つの態様において、本明細書に記載された一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなるプラスミド又はウイルスベクターでトランスフェクトされる。
【0097】
真核細胞のためのトランスフェクション法は当該技術分野では公知であり、そして細胞の核又は前核内への核酸の直接注入;エレクトロポレーション;リポソーム輸送又は親油性物質により仲介される輸送;レセプター仲介核酸送達;生物弾道又は粒子加速;リン酸カルシウム沈澱、及びウイルスベクターにより仲介されるトランスフェクションが含まれる。
【0098】
例えば、細胞はリポソーム輸送化合物、例えば、DOTAP(N−[l−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル−アンモニウムメチルスルフェート、Boehringer-Mannheim )又はLIPOFECTINのような均等物でトランスフェクトし得る。使用される核酸の量は、本発明の実施には決定的ではない;0.1〜100マイクログラム核酸/10細胞で受容可能な結果が達成できる。例えば、10細胞当たり、3マイクログラムのDOTAP中に約0.5マイクログラムのプラスミドベクターの比で使用し得る。
【0099】
一つの態様において、BCL2関連癌細胞、例えば、CLL又は前立腺癌細胞が該対象から単離され、miR遺伝子産物をコードする核酸でトランスフェクトされ、及び該対象内に再導入される。特定の態様において、トランスフェクトされ及び再移植された細胞はCLL細胞である。別の態様において、トランスフェクトされ及び再移植された細胞は、BCL2関連癌と診断された対象からのHSCである。
【0100】
対象からBCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞)を単離する技術は、例えば、以下の実施例に記載されているように当業者には自明である。対象からHSCを単離し、同定し、及び培養する技術も、例えば、その全開示が本明細書において援用される、米国特許第5,635,387 及び5,643,741 号及びCampana, et al., Blood 55:1416-1434(1995) 、に開示されているように当業者には自明である。一つの態様において、採取された骨髄はHSCのトランスフェクションに先立って、腫瘍原性又は新生物性細胞が一掃される。適した一掃技術には、例えば、固定化された末梢血細胞の白血球除去、免疫親和性に基づいた選択、又は腫瘍細胞を選択的に殺すための細胞傷害性又は光感作性剤の使用が含まれ、それらは当該技術分野では公知である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Bone Marrow Processing and Purging, Part 5(A. Gee, ed.), CRC Press, Boca Raton, FIa., 1991; Lydaki, et al., J. Photochem. and Photobiol. 32:27-32(1996)及びGazitt, et al, Blood 85:381-389(1995) 、を参照されたい。
【0101】
単離された細胞(例えば、HSC細胞、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞))は、本明細書に記載のいずれかの適した技術によりトランスフェクトされ得る。トランスフェクション後、遺伝子産物の適切な発現レベルの存在を確認するため、細胞の一部を試験することが可能である。miR遺伝子産物の適切な発現が確認されたら、次に残っているトランスフェクトされた細胞を該対象内に再導入し得る。トランスフェクトされた細胞は、静脈注入又は骨髄内への直接注入を含む非経口的方法により該対象内に再導入し得る。トランスフェクトされた細胞は、好ましくは、生理食塩水又は他の薬学的に許容できる坦体中で該対象内に再導入される。再導入に適したトランスフェクトされた細胞数は、対象体重のキログラム当たり約10〜約10細胞である。再導入に利用可能なトランスフェクトされた細胞数は、トランスフェクションに先立った培養での細胞数拡大により増加させ得る。
【0102】
一つの態様において、細胞(例えば、HSC細胞、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞))のゲノムが、細胞のゲノム内に安定的に組み込まれてmiRの長期発現を提供する、miR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸、例えば、プラスミド発現ベクターでトランスフェクトされる。安定な組み込み及び発現は、プローブとしてmiR遺伝子cDNA(又はそれらの断片)を使用するゲノムDNAのサザンブロット分析のような、当該技術分野では公知の技術により確認し得る。miR遺伝子産物の発現は、標準ノーザンブロット技術によっても検出し得る。miR遺伝子産物をコードする配列で安定にトランスフェクトされた細胞は、該対象内に再移植されると、miR遺伝子産物を引き続き発現する。対象からHSCを単離し、一つ又はそれより多くのmiR遺伝子産物を発現するプラスミドでそれらをトランスフェクトし、及びトランスフェクトされたHSCを該対象内に再移植する方法の例は、下記実施例に記載されている。
【0103】
miR遺伝子産物は、いずれかの適した経腸又は非経口投与経路によっても対象に投与し得る。本方法のために適した経腸投与経路には、経口、直腸又は鼻孔内送達が含まれる。適した非経口投与経路には、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス投与、静脈内注入、動脈内ボーラス投与、動脈内注入、及び血管系内へのカテーテル点滴注入);組織周辺及び組織内注射(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注射、網膜内注射又は網膜下注射);皮下注入(浸透圧ポンプによるような)を含む皮下注射又はデポジション;カテーテル又は他の設置デバイス(例えば、網膜ペレット又は座剤、又は多孔質、非多孔質又はゲル状物質を含んでなる移植片)による目的の組織への直接適用;及び吸入が含まれる。一つの態様において、miR遺伝子産物は注射又は注入により投与される。固形腫瘍を含むBCL2関連癌の治療には、miR遺伝子産物は腫瘍内への直接注射により投与し得る。
【0104】
本方法において、miR遺伝子産物は、裸のRNAとして、送達試薬と組み合わせて、又は遺伝子産物を発現する配列を含んでなる核酸(例えば、組換えプラスミド又はウイルスベクター)として対象に投与し得る。miR遺伝子産物の投与に適した送達試薬には、例えば、Mirus Transit TKO 親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)及びリポソームが含まれる。
【0105】
miR遺伝子産物を発現する配列を含んでなる組換えプラスミドが本明細書で議論される。miR遺伝子産物を発現する配列を含んでなる組換えウイルスプラスミドも本明細書で議論され、こうしたベクターを対象の細胞(例えば、HSC細胞、BCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞))に送達する方法は、当業者には自明である。
【0106】
特定の態様において、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸を対象に送達するためにリポソームが使用される。リポソームはmiR遺伝子産物又は核酸の血中半減期を増加させることもできる。本発明のこの態様の実施において、miR遺伝子産物又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸は、投与に先立ってリポソーム中に被包される。
【0107】
本発明での使用に適したリポソームは、一般的に中性又は陰性に荷電したリン脂質及びコレステロールのようなステロールを含む、標準小胞形成脂質から形成し得る。脂質の選択は、所望のリポソームサイズ及び血流中のリポソームの半減期のような因子の考慮により一般的に導かれる。例えば、それらの全開示が本明細書において援用される、Szoka et al., (1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467;及び米国特許第4,235,871、4,501,728、4,837,028 及び5,019,369 号に記載されているように、リポソームを調製するための多様な方法が知られている。
【0108】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸を被包しているリポソームは、リポソームにBCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞、HSC細胞、前立腺癌細胞、他の癌細胞)を標的とさせるリガンド分子を含み得る。一つの態様において、こうした癌細胞において優勢であるレセプターに結合するリガンド(例えば、腫瘍細胞抗原又は癌細胞表面マーカーに結合するモノクローナル抗体)が使用される。
【0109】
miR遺伝子産物又はmiR遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸を被包しているリポソームは、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを避けるために修飾され得る。こうした修飾リポソームは、表面上又はリポソーム構造内に組み入れられたオプソニン化阻害部分を有する。一つの態様において、本発明のリポソームはオプソニン化阻害部分及びリガンドの両方を含み得る。
【0110】
本発明のリポソームの製造において使用するオプソニン化阻害部分は、典型的にはリポソーム膜へ結合された大きな親水性ポリマーである。本明細書で使用する、オプソニン化阻害部分がリポソーム膜に「結合されて」いるとは、例えば、膜それ自身内への脂溶性アンカーのインターカレーションにより、又は膜脂質の活性基への直接結合により化学的又は物理的に膜に結合されている場合である。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは保護的表面層を形成し、MMS及びRESによるリポソームの取り込みを著しく減少させる;例えば、その全開示が本明細書において援用される米国特許第4,920,016号に記載されているように。
【0111】
リポソームを修飾するために適したオプソニン化阻害部分は、好ましくは、約500〜約40,000ダルトン、及びより好ましくは約2,000〜約20,000ダルトンの平均分子量を有する水溶性ポリマーである。こうしたポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEG及びPPG、又はPEG及びPPGステアレート;ポリアクリルアミド又はポリN−ビニルピロリドンのような合成ポリマー;直鎖状、分枝又は樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;多価アルコール、例えば、カルボキシ又はアミノ基が化学的に結合されたポリビニルアルコール及びポリキシリトール、ならびにガングリオシドGMlのようなガングリオシド、が含まれる。PEGのコポリマー、メトキシPEG又はメトキシPPG又はそれらの誘導体も適している。加えて、該オプソニン化阻害ポリマーは、PEGとポリアミノ酸、ポリサッカリド、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン又はポリヌクレオチドとのブロックコポリマーでもあり得る。該オプソニン化阻害ポリマーは、アミノ酸又はカルボン酸、例えば、ガラクツロ酸、グルクロン酸、マンノン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナンを含有する天然のポリサッカリド;アミノ化ポリサッカリド又はオリゴサッカリド(直鎖又は分枝);又は、例えば、生じたカルボキシル基で繋がっている炭酸の誘導体と反応させたカルボキシル化ポリサッカリド又はオリゴサッカリドでもあり得る。一つの態様において、オプソニン化阻害部分はPEG、PPG又はそれらの誘導体である。PEG又はPEG誘導体で修飾されたリポソームは、しばしば「PEG化リポソーム」と称される。
【0112】
オプソニン化阻害部分は、多数の公知の技術のいずれか1つによりリポソーム膜に結合し得る。例えば、PEGのN−ヒドロキシサクシニミドエステルはホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーへ結合することができ、そして次に膜へ結合される。同様に、デキストランポリマーは、Na(CN)BH及び30:12の比でのテトラヒドロフラン及び水のような溶媒混合物を使用した60℃での還元的アミノ化を介して、ステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化し得る。
【0113】
オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、循環系において無修飾リポソームよりも長く残存する。このような理由のため、こうしたリポソームはしばしば「ステルス」リポソームと称される。ステルスリポソームは、多孔質又は「漏出性」微小血管系から栄養を受けている組織で蓄積されることが知られている。それ故、こうした微小血管系欠陥により特徴付けられる組織、例えば、固形腫瘍はこれらのリポソームを効率的に蓄積するであろう;Gabizon, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 18:6949-53(1988) を参照されたい。加えて、RESによる減少した取り込みは、肝臓及び脾臓におけるリポソームの有意な蓄積を防止することにより、ステルスリポソームの毒性を低下させる。それ故、オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、miR遺伝子産物又は該遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸を腫瘍細胞に送達するのに特に適している。
【0114】
本明細書に記載したように、一つの態様において、本発明は対象におけるBCL2遺伝子又は遺伝子産物(例えば、RNA、タンパク質)の過剰発現に関連した癌を予防する又は治療する方法であり、該対象はこうした治療を必要としており、少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を該対象に投与することを含んでなる。Bcl2タンパク質及びBcl2ファミリーのメンバー、ならびに癌におけるそれらの役割は、その内容が本明細書において援用される、Cory, S., and Adams, J.M., Nature Reviews 2: 647-656(2002)及び Sanchez-Beato, M., et al., Blood 101: 1220-1235(2003) に記載されている。ヒトBCL2 cDNA及びタンパク質のヌクレオチド及びミノ酸配列が表2に示されている。
【0115】
【表19】

【0116】
【表20】

【0117】
【表21】

【0118】
BCL2遺伝子産物の発現レベルを検出するための方法は当該技術分野では公知である。例えば、細胞のサンプルにおけるBCL2遺伝子転写体の発現レベルは、本明細書にすでに記載されている技術を使用して検出し得る(例えば、ノーザンブロッティング、インサイツハイブリダイゼーション、RT−PCR)。Bcl2タンパク質の発現レベルの検出は、一般に応用される技術、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., eds., Vol. 2, John Wiley and Sons, Inc., 1998, Chapter 10 、に記載されている免疫染色又はウエスタンブロッティングを使用して達成し得る。
【0119】
Bcl2過剰発現癌は、当業者には自明であり、限定されるわけではないが、白血病、リンパ腫及び癌腫(Kim, R., et al., Cancer 101(11): 2491-2502(2004) ;米国特許第5,789,389 号;及び米国特許第6,800,639 号;その内容は本明細書において援用される、を参照されたい)が含まれる。Bcl2の過剰発現に関連していることが知られている特定の癌には、中でも、CLL、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫が含まれる。
【0120】
特定の態様において、治療を必要としている対象に投与される少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0121】
本明細書で使用される用語「相補的ヌクレオチド配列」は、相補的である別のヌクレオチド配列と水素結合を介して塩基対を形成可能であるポリヌクレオチド配列を意味する。こうした水素結合は、標準ワトソン・クリック塩基対を介してプリン及びピリミジン間(例えば、アデニン及びチミン又はウラシル間、グアニン及びシトシン間)で形成される。本明細書で使用される「ワトソン・クリック塩基対」とは、核酸の向かい側の逆平行鎖上の水素結合塩基との対を指す。ワトソン及びクリックにより最初に作り上げられた塩基対形成の規則は当業者には自明である。例えば、これらの規則は、相補鎖はお互い逆平行で、アデニン(A)はチミン(T)又はウラシル(U)と対をなし、及びグアニン(G)はシトシン(C)と対をなすことを必要とする。本明細書で使用される「ワトソン・クリック塩基対」は、標準AT、AU又はGC塩基対のみでなく、標準塩基又は別の相補的非標準塩基への水素結合が可能であるヌクレオチド類似体の、非標準又は修飾塩基間に形成された塩基対も包含する。こうした非標準ワトソン・クリック塩基対形成の1つの例は、ヌクレオチド類似体イノシンを含んだ塩基対形成であり、そのヒポキサンチン塩基はアデニン、シトシン又はウラシルと2つの水素結合を形成し得る。
【0122】
一つの態様において、少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と100%相補的である(即ち、正確に相補的)ヌクレオチド配列を含んでなる。他の態様において、少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。相補性の領域は、約5〜約15ヌクレオチド長、約5〜約25ヌクレオチド長、又はより特定的には約7〜約12ヌクレオチド長であり得る。BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補性を有するmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217及びmiR−186が含まれる(例えば、表5を参照されたい)。一つの態様において、miR遺伝子産物は配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。こうしたmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−15a、miR−16−1、miR−15b及びmiR−16−2が含まれる。特定の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。そのいくつかが本明細書に記載されている、miR遺伝子産物を対象に投与するための方法は、当該技術分野では公知である。
【0123】
本発明は、癌を有する対象において、抗癌治療の効力を増加させるための方法も包含し、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる少なくとも一つのmiR遺伝子産物を該対象に投与すること、及び加えて、少なくとも一つの抗癌治療剤を対象に投与することを含んでなる。本発明に従うと、抗癌治療は当業者には自明のいずれかの抗癌治療であり得る。適した抗癌治療には、限定されるわけではないが、化学療法、放射線療法 及びそれらの組み合わせ(例えば、放射線化学治療)が含まれる。本発明は、その上、非慣用的癌療法の効力を増加させる方法も企図する。
【0124】
本明細書で使用される化学療法は、癌の治療のための、一つ又はそれより多くの化学物質又は薬剤の投与を指す。本発明の方法に適した化学療法剤は、癌を治療するために有用であることが既知のいずれかの化学物質、例えば、DNAアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質剤、抗代謝製剤、チューブリン安定化剤、チューブリン不安定化剤、ホルモンアンタゴニスト剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、HMG−CoA阻害剤、CDK阻害剤、サイクリン阻害剤、カスパーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、アンチセンス核酸、三重らせんDNA、核酸アプタマー及び分子的修飾ウイルス、細菌又は外毒素剤であり得る。本発明の方法に特に適した剤の例には、限定されるわけではないが、シチジンアラビノシド、メトトレキサート、ビンクリスチン、エトポシド(VP−16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(CDDP)、デキサメタゾン、アルグラビン、シクロホスファミド、サルコリシン、メチルニトロソ尿素、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル(5FU)、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、過酸化水素、オキサリプラチン、イリノテカン、トポテカン、ロイコボリン、カルムスチン、ストレプトゾシン、CPT−Il、タキソール及びそれらの誘導体、タモキシフェン、ダカルバジン、リツキシマブ、ダウノルビシン、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン、イマチニブ、フルダラビン、ドセタキセル及びFOLFOX4が含まれる。
【0125】
本明細書で使用される放射線療法とは、癌の治療のための高エネルギー照射の使用を指す。放射線療法で使用のための高エネルギー照射は、中でも、X線、ガンマ線及び中性子により提供することができる。放射線療法の異なった方法が当該技術分野で公知であり、本発明の方法に適している。これらの方法には、限定されるわけではないが、外部ビーム放射線療法、小線源療法、強度変調放射線療法(IMRT)、移植片放射線療法、全身的照射及び定位的放射性療法が含まれる。
【0126】
用語「対象」「個体」及び「患者」は、限定されるわけではないが、霊長類、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ亜科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯動物、又はネズミ科の種を含む哺乳類のような動物を含むことが本明細書において定義される。好ましい態様において、該動物はヒトである。一つの態様において、該対象は一つ又はそれより多くのBCL2関連癌で苦しんでいる哺乳類(例えば、ヒト)である。本明細書に記載したように、本発明の方法による治療に適したBCL2関連癌には、中でも、リンパ腫、癌腫及び白血病が含まれる。特定の態様において、BCL2関連癌は、BCL2遺伝子又は遺伝子産物(例えば、RNA、タンパク質)の増加した発現(例えば、過剰発現、上方調節)により特徴付けられる癌である。特に適したBCL2関連癌の例には、中でも、CLL、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫が含まれる。一つの態様において、癌はCLLである。別の態様において、癌はリンパ腫である。さらに別の態様において、癌は肺癌である。さらのもっと別の態様において、癌は前立腺癌である。
【0127】
本発明のこの態様の方法に従うと、癌治療の効力が、少なくとも一つのmiR遺伝子産物を対象に投与することにより増加する。該miR遺伝子産物は化学療法剤と共投与(即ち、同時に)することができるし、又はそれを別々に投与することもできる。一つの態様において、miR遺伝子産物はBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的である。こうしたmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217及びmiR−186が含まれる(表5を参照されたい)。さらなる態様において、該miR遺伝子産物は配列番号55のヌクレオチド3741〜3749例えば、miR−15a、miR−16−1、miR−15b及びmiR−16−2と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。一つの態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0128】
抗癌治療の効力の増加は、適した対照と比較して、該対象における該癌の増加した寛解により証明し得る。癌寛解は、該対象における癌細胞の減少、及び/又は腫瘍塊及び/又はサイズの減少のような認められた臨床標準に従って決定し得る。対象におけるBCL2関連癌細胞の数は、直接計測により、又は原発性又は転移性腫瘍塊のサイズからの推定により決定し得る。
【0129】
本発明は、抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性を増加させるための方法も提供し、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる少なくとも一つのmiR遺伝子産物を該細胞に提供することを含んでなる。該細胞に該少なくとも一つのmiR遺伝子産物を提供することにより、該抗癌剤に対する該細胞の感受性が増加する。
【0130】
一つの態様において、抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性を増加させる方法であり、少なくとも一つの抗癌剤を癌細胞に提供すること、及び加えて、少なくとも一つのmiR遺伝子産物を癌細胞に提供することを含んでなり、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物はBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。抗癌剤は、癌を治療することに有用であることが知られているいずれかの剤であることができる。こうした剤には、限定されるわけではないが、化学療法剤及び放射線が含まれる。適した化学療法剤の例は、本明細書の上文に記載されている。
【0131】
本明細書で使用される句「抗癌剤の細胞傷害性効果」とは、該剤の投与により生じるいずれかの細胞損傷及び/又は死を指している。抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性の増加は、抗癌剤のみが提供される対照細胞と比較し、少なくとも一つの抗癌剤及び少なくとも一つのmiR遺伝子産物の投与により生じる細胞障害の重大度の増加、及び/又は細胞死の量又は速度における増加により証明し得る。細胞毒性(例えば、細胞傷害及び/又は死)を評価するための方法は当該技術分野で公知であり、限定されるわけではないが、細胞増殖、細胞成長及び細胞死(例えば、アポトーシス、壊死)をモニターするアッセイが含まれる。
【0132】
本発明のこの態様に使用するために適した細胞には癌細胞が含まれる。特定の態様において、該癌細胞はBCL2遺伝子産物(例えば、RNA、タンパク質)を過剰発現する。一つの態様において、該癌細胞はインビボ細胞(例えば、哺乳類(例えば、ヒト)中のBCL2関連癌細胞)である。別の態様において、該癌細胞は患者サンプル(例えば、バイオプシー、血液)から得られるか、又は確立された癌細胞株又は患者サンプルの癌細胞に由来する細胞株から得ることもできる。特定の態様において、該癌細胞は、Bcl2の過剰発現に関連した癌を有する対象から得られた患者サンプルからのものである。こうした癌の例には、中でも、CLL、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫が含まれる。一つの態様において、癌はCLLである。別の態様において、癌はリンパ腫である。さらに別の態様において、癌は肺癌である。
【0133】
本発明に従うと、化学療法剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性が、該癌細胞に少なくとも一つのmiR遺伝子産物を提供することにより増加する。特定の態様において、該miR遺伝子産物はBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的である。こうしたmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217及びmiR−186が含まれる(表5を参照されたい)。さらなる態様において、該miR遺伝子産物は、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列、例えば、miR−15a、miR−16−1、miR−15b及びmiR−16−2を含んでなる。別の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0134】
本発明の方法で使用されるmiR遺伝子産物は、好ましくは、当該技術分野で公知の技術に従って、対象に投与することに先立って医薬組成物として製剤される。従って、本発明は、少なくとも一つのmiR遺伝子産物を含んでなる医薬組成物を包含する。一つの態様において、miR遺伝子産物は、miR15又はmiR16(例えば、miR−15a又はmiR−16−1)である。他の態様において、該miR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる。本発明の方法に適したmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217及びmiR−186が含まれる(表5を参照されたい)。一つの態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0135】
関連する態様において、本発明の組成物は、少なくとも一つの化学療法剤をさらに含んでなる。癌の治療に有用である多くの化学療法剤が当該技術分野で公知である。本発明の組成物での使用に適した化学療法剤は本明細書に記載されている。特定の態様において、用量当たりに投与される化学療法剤の量は、約0.0001〜1000mg/kg、約0.5〜70mg/kg又は約1〜50mg/kgである。
【0136】
本発明の医薬組成物は少なくとも無菌で及び発熱物質が含まれていないことで特徴付けられる。本明細書で使用される「医薬製剤」は、ヒト及び獣医学使用のための製剤を含む。本発明の医薬組成物を製造するための方法は、例えば、その全開示が本明細書において援用される、Remington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985) に記載されているように、当業者には自明である。
【0137】
一つの態様において、本医薬製剤は、薬学的に許容できる坦体と混合された、miR遺伝子産物又は該遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸(例えば、0.1〜90重量%)、又はそれらの生理学的に許容できる塩を含んでなる。本発明の医薬製剤は、リポソームに被包されたmiR遺伝子産物又は該遺伝子産物をコードする配列を含んでなる核酸、及び薬学的に許容できる担体も含み得る。
【0138】
好ましい薬学的に許容できる坦体は、水、緩衝化水溶液、通常の生理食塩水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、ヌクレアーゼによる分解に耐性であるmiR遺伝子産物を含んでなることができる。当業者は、例えば、2’位が修飾されている一つ又はそれ以上のリボヌクレオチドをmiR遺伝子産物内に取り込ませることにより、ヌクレアーゼ耐性であるmiR遺伝子産物を容易に合成し得る。適した2’修飾リボヌクレオチドには、フルオロ、アミノ、アルキル、アルコキシ及びO−アリルで2’位が修飾されているものが含まれる。
【0139】
例えば、本発明の医薬組成物は、式2’AR−ヌクレオチド:
(式中:
Aは酸素又はハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素又は臭素)であり;及び
Rは水素又は直鎖又は分岐鎖C1〜6アルキルであり;
但しAがハロゲンである場合、Rは取り除かれる)
の一つ又はそれより多くの2’−修飾リボヌクレオチドを取り込んでいるmiR遺伝子産物を含んでなる。好ましい修飾2−リボヌクレオチドは2’−Oメチルリボヌクレオチドである。一つの態様において、本発明の医薬組成物は、各リボヌクレオチドが2’−修飾リボヌクレオチドであるmiR遺伝子産物を含んでなる。
【0140】
本発明の医薬組成物は、慣用的医薬賦形剤及び/又は添加剤も含むことができる。適した医薬賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適した添加剤には、例えば、生理学的生体適合性緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドのような)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)又は、随意に、カルシウム又はナトリウム塩の添加(例えば、塩化カルシウム、アスコビル酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)が含まれる。本発明の医薬組成物は液体形態での使用のために包装することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0141】
本発明の固形医薬組成物のためには、慣用的無毒固体の薬学的に許容できる坦体を使用することができる;例えば、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなど。
【0142】
例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上に列挙したいずれかの坦体及び賦形剤、及び10〜95%、好ましくは25%〜75%のmiR遺伝子産物を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、0.01〜20重量%、好ましくはl%〜10重量%の上記のようにリポソーム中に封入されたmiR遺伝子産物及び噴霧剤を含み得る。望むなら坦体も含ませ得る;例えば、鼻腔内送達のためのレシチン。
【0143】
本発明は、対象における癌療法の効力を決定するための方法も包含し、該対象に少なくとも一つの試験剤を投与すること、及び引き続いて該対象からのサンプル中のmiR遺伝子産物の発現を測定することを含んでなる。一つの態様において、該miR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的である。こうしたmiR遺伝子産物の例には、限定されるわけではないが、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217及びmiR−186が含まれる(表5を参照されたい)。さらなる態様において、該miR遺伝子産物は、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列、例えば、miR−15a、miR−16−1、miR−15b及びmiR−16−2を含んでなる。別の態様において、該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない。
【0144】
特定の態様において、該剤の投与に続く、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるmiR遺伝子産物の発現における増加は、治療に対する好ましい応答の指標である。miR遺伝子産物の発現レベルを検出するための方法は当該技術分野で公知であり、限定されるわけではないが、本明細書の上文に記載した技術(例えば、ノーザンブロッティング、RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション)が含まれる。試験されるべき適した剤には、中でも、有機小分子、ペプチド及び天然に存在する生物学的巨大分子が含まれる。特に適した対象には、Bcl2過剰発現に関連した一つ又はそれより多くの癌を患っている個体が含まれる。
【0145】
本発明はここで以下の非制限実施例により例示されるであろう。
【実施例】
【0146】
以下の技術を実施例1〜4で使用した。
患者サンプル及び細胞株
患者サンプルは、CLL Research Consortium施設でCLLと診断された患者からインフォームドコンセント後に得た。簡単には、末梢血をCLL患者から得、単核細胞をFicoll-Hypaque 濃度勾配遠心分離(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を介して単離し、その全開示が本明細書において援用される、Sambrook, J., et al. (1989), Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY) 、に記述されている標準プロトコルに従ってRNA及びDNA抽出のために処理した。LOH研究のための正常対照として、対応する患者からの頬側粘膜からのDNAが、紙の小片(1〜2mm)上に含まれていた。
【0147】
30のヒト細胞株をAmerican Type Culture Collection (ATCC;Manassas,VA)から入手し、ATCC説明書に従って維持した。これらの細胞株はAS283、BL2、BIa、BJAB、CA46、Namalva、P3HRI、PAPB682、PABm、Raji(バーキットリンパ腫)、Dell、SKDHL、ST486(T細胞リンパ腫)、JM(免疫芽球性B細胞リンパ腫)、MCl16(未分化リンパ腫)、Molt3、Supt11(T−ALL)、U266(多発性骨髄腫)、A549、H1299(肺癌腫)、TE2、TE10(食道癌腫)、HeLa(頚部癌腫)、RC48(腎臓癌腫)及び2220、2221、11609、11611、LNCAP、TSUR(前立腺癌腫)であった。
【0148】
CD5+B細胞分離
扁桃腺を、日常的扁桃摘出術を受けている小児年齢群(3〜9歳)の患者から得た。精製されたB細胞は、ノイラミニダーゼ処理ヒツジ赤血球を含む単核細胞をロゼット形成させることにより得た。B細胞は、その全開示が本明細書において援用されるDono, M., et al., J. Immunol. 164:5596-5604(2000) に記載されているように、非連続Percoll 濃度勾配(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden) によりさらに分画した。50%Percoll 画分から集めたB細胞を抗CD5mAb、続いて、磁気マイクロビーズにコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgとインキュベートした。CD5+B細胞は、MiniMACS システム(Miltenyi Biotec) を使用する磁気カラムMSに保持された細胞を集めることによる陽性選択により得た。
【0149】
体細胞ハイブリッド
体細胞ハイブリッドは、慣用法に従って発生させ、その全開示が本明細書において援用される、Negrini, M., et al., Cancer Res. 54:1818-1824 (1994) に記載されているように、ヒポキサンチン−アミノプテリンチミジン(HAT)培地で選択した。単一細胞クローン及びサブクローンから誘導されたDNAはDNeasy 組織キット(Qiagen) で単離し、染色体13及び染色体2マーカーの存在又は不存在についてRCRによりスクリーニングした(プライマー配列については下記表3を参照されたい)。15のクローンが、t(2;13)(q32;ql4)転座を運んでいるCLLケース(CLL−B)の融合から単離され、t(2;13)(ql2;ql3)転座を運んでいる別のCLLケース(CLL−A)の融合から1クローンが単離された。12のCCL−B由来クローンは、染色体13及び2両方の完全補体を運んでおり、一方、3つはdel(13q)及び染色体2の完全補体を運んでいた。CLL−Aからの単一のクローンは、13ql4に小さな欠失を有する染色体13を運んでおり、染色体2は運んでいなかった。
【0150】
ノーザンブロッティング
総RNA単離は、Tri-Reagent プロトコル(Molecular Research Center, Inc)を使用して実施した。RNAサンプル(各30μg)は、15%アクリルアミド変性(尿素)Criterion プレキャストゲル(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)で分離し、Hybond-N+ 膜(Amersham Pharmacia Biotech) へ移した。α−32P ATPによるハイブリダイゼーションは、7%SDS、0.2M NaPO pH7.0中、42℃で一夜実施した。膜を42℃で、2xSSPE、0.1%SDS中2回、及び0.5xSSPE、0.1%SDS中2回洗浄した。miR15及びmiR16 RNAを検出するために使用したプローブはそれぞれ:
CACAAACCATTATGTGCTTGCTA (配列番号5)及び
GCCAATATTTACGTGCTGCTA (配列番号6)
であった。
【0151】
ブロットを、0.1%SDS/0.1xSSC水溶液で10分間煮沸することによりストリップし、数回再探索した。添加対照として、臭化エチジウムで染色した5S rRNAを使用した。
【0152】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
RT−PCRを、正常CD5+細胞及び23B−CLLサンプル中の遺伝子発現のレベルを分析するために実施した。94℃で20秒、65℃で30秒、68℃で1分の35サイクルについて、10pmolの各遺伝子特異的プライマーを用いる(使用されたプライマーのリストについては下記表3を参照されたい)、Advantage2 PCRキット(Clontech)を使用する各増幅反応に対して、1マイクロリットルのcDNAを使用した。RNAがRT−PCRに十分な純度であったことを確認するため、G3PDH cDNAに特異的なプライマー(Clontech, Palo Alto, CA) を用いるPCRアッセイを使用した。RT−PCR生成物をSambrook, J., et al.,(1989) 、上記文献、に記載されている標準法に従い、アガロースゲル電気泳動により分離した。
【0153】
ウエスタンブロッティング
9B−CLL患者からの細胞溶解液のSDS/PAGEゲルを、GST-SLUG Middle 抗体(Dr. Thomas Look - Harvard, MA から提供された)及びSNX2(Nl 7) 抗体(Santa Cruz Bio Technology, CA)で探索した。検出は、ECL Western Blotting 検出キット(Amersham Pharmacia, UK) を使用し、製造元の説明書に従って実施した。
【0154】
データベース解析
「nr」及び「dbEST」データベースに対する検索、及び短い、ほとんど正確な一致に対する検索は、National Institutes of Health and the National Library of Medicine により維持されている、National Center for Bio Technology Information ウェブサイトを介したアクセスしたBLASTアラインメントツールで実施した。その全開示が本明細書において援用される、Altschul, et al., J. MoI. Biol. 215: 403-10 (1990) 及びAltschul, et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402(1997) も参照されたい。短い配列の相同性についての検索は、Biology workBench ウェブサイトにより提供されているFASTAアラインメントツールでも実施した。
【0155】
【表22】

【0156】
【表23】

【0157】
【表24】

【0158】
実施例1:CLL患者の体細胞ハイブリッド中30kb欠失領域
CLL患者における13ql4での最小領域喪失は明らかになっていない。以前に、13ql4中で欠失された多様な及び相対的に大きな(130〜550kb間)領域がCLL(図2Bを参照されたい)に記載されている。LOH及びサザンブロット解析がAlu18座でのホモ接合性喪失のセントロメア境界を同定するために使用され(図2D)、それはLEU2遺伝子のエクソン5から65kbセントロメア側未満のD13S1150及びD13S272間に位置している。しかしながら、標的腫瘍抑制因子のより良好な局在化を可能にする小さな又は重複するホモ接合性欠失は観察されなかった。
【0159】
CLLにおける欠失の領域をより良好に定義するため、マウスLM−TKの体細胞ハイブリッド、及び13ql4転座及び/又は欠失を運んでいるCLL細胞を発生させた。生じたハイブリッドクローンのPCRスクリーニングは、腫瘍中に存在する染色体13の2つのコピーの分離を可能にした。この様式で、1つのケースにおいて31.4kb欠失が同定され、及び染色体限界点がもう1つにおいて正確に限定された(図2D)。これらの結果は、13ql4腫瘍抑制遺伝子がLEU2遺伝子のエクソン2及び5間の29kb領域内に横たわっていることを示している。体細胞ハイブリッドをスクリーニングするために使用されたプライマーは表3に与えられている。
【0160】
図2に示されたように、体細胞ハイブリッド中の欠失領域は、Liu, et al., Oncogene 25:2463-2473(1997) により数年前に報告された10kb領域を含む、すべての報告された損失領域と一致した。LEU2のエクソン1及び2もその領域内、及び本明細書で定義された領域内にある。しかしながら、LEU2はB−CLLについての可能性にある候補腫瘍抑制遺伝子としては排除されていた(Bullrich, et al., Cancer Res. 61:6640-6648(2001); Migliazza, et al., Blood 97:2098-2104(2001); Wolf, et al., Hum. Mol. Genet. 10:1275-1285(2001) 及びMertens, et al., Blood 99:4116-4121(2002) を参照されたい)。
【0161】
実施例2:miR15及びmiR16遺伝子は染色体13の最小欠失領域中に局在化し及びCD5+細胞中で高度に発現される
公的に利用可能な配列情報及びデータベースを、13ql4での喪失の最小領域中の新規調節遺伝子についてスクリーニングした。2つの最近クローン化されたmiRNA遺伝子、miR15及びmiR16のクラスターは、まさに欠失領域中に位置していた(図2A)。正常組織中のmiR15及びmiR16の発現のレベルを評価するため、miR15及びmiR16 RNAのノーザンブロット分析を、個体の正常扁桃腺から分離されたCD5+B細胞を含む、一団の正常組織で実施した(図3A)。B−CLLがCD5+Bリンパ球の進行性蓄積により特徴付けられるので、CD5+B細胞を対照として使用した。miR15及びmiR16遺伝子両方の広範な発現が観察され、正常CD5+リンパ球が最も高いレベルであった。加えて、miR16は、正常組織中でmiR15よりも高いレベルで一貫して発現された。これらのデータは、miR15及びmiR16遺伝子が正常CD5+B細胞ホメオスタシスに重要な役割を果たしていることを示している。
【0162】
実施例3:miR15及びmiR16遺伝子は13ql4に欠失を有するCLLサンプル中でしばしば欠失又は下方調節される
miR15及びmiR16遺伝子がCLL病変形成に関与しているかどうかを調べるため、60のCLLサンプル及び30のヒト癌細胞株を、ノーザンブロッティングによりmiR15及びmiRl6発現について分析した(図3B)。CLL患者の68%(41/60)、ならびに6つの分析された前立腺癌細胞株の内の5つが、それらの正常組織対応物と比較した場合、発現の有意な減少を示した。これらの発見は、miR15及びmiR16遺伝子が、試験されたB−CLL及び前立腺癌のケースの大部分において下方調節されていることを示している。
【0163】
加えて、60CLLの内の23サンプル(38%)は、miR15前駆体RNAを表している約70ntの明白に同定可能なバンドを示した。70nt miR15バンドは、骨髄を除いて、分析されたいずれの正常組織においても観察されず(図3A)、CLLにおいてmiR15前駆体RNAが非効率的にプロセシングされ得ることを示している。
【0164】
発現の観察された下方調節がCLL中のアレル喪失と相関するかどうかを決定するため、正常DNAが入手可能であった46のCLL患者のマイクロサテライトマーカーD13S272及びD13S273についてLOH研究を実施した(図3B)。我々は、68%の情報価値のあるサンプルが少なくとも1つのマーカーでLOHを示したことを発見した(35の内の24ケース)。4サンプルを除いて(75%)、miRの15/16遺伝子産物の発現が減少していた。12サンプルについては、染色材料の質の悪さのため再現性のある結果が得られなかった。加えて、11の内の6ケース(55%)では、明らかなLOHなしに発現レベルが減少していた。これらのケースにおいて、分析されたマーカーにあっては欠失が検出されるには小さすぎたのであろう。
【0165】
ノーザンブロット分析は、miR15及びmiR16遺伝子産物の両方が13ql4に既知の大きなホモ接合性欠失を有し及び5%未満の正常細胞でのケースで発現され、ゲノム中の別の高度に類似したマイクロRNA遺伝子の存在を指し示している。実際、miR15/miR16遺伝子クラスターと非常に類似したクラスター(しかし異なった前駆体を有する)が染色体3q25−26.1上で報告されている(Lagos-Quintana, et al., Curr. Biol. 12:735-739(2002) を参照されたい)。miR15/16遺伝子発現における差異が染色体13q上の欠失に厳密に関連していることを示すため、染色体13上のmiR16前駆体RNAに対して、及び染色体3上の該遺伝子から産生されるmiRNA前駆体RNAに対して特異的なプローブを設計し、そしてノーザンブロットを探索するために使用した。
【0166】
染色体13からのmiR16前駆体RNAは低レベルで検出されたが、染色体3プローブとの特異的ハイブリダイゼーションは同一サンプル中で観察されなかった。加えて、このクラスターの直ぐセントロメア側に位置する2Mbの領域にわたって、2つのマイクロサテライトマーカーでLOH研究を実施した。17の内の4つの情報価値のあるサンプルは、少なくとも一つのマーカーにおいてLOHを示したが、miR15/16の発現のレベルとの相関は観察されなかった。これらのデータは、CLLにおけるmiR15及びmiRlβ遺伝子発現の下方調節が13ql4でのアレル欠失と相関していることを明白に示しており、及びCLL病変形成におけるmiR15及びmiRl6遺伝子産物の役割の証拠を提供する。
【0167】
実施例4:miR15及びmiRl6はマウスにおけるCLL病変形成にも関与する
miR15及びmiRlβ遺伝子がCLL病変形成に関与しているかどうかをさらに調べるため、CLLを発生するEμ−TCLlトランスジェニックマウス(Bichi, et al., Proc. Natl Acad. Sci USA 99(10):6955-6960(2002)) に研究を拡大した。細胞遺伝学的及び遺伝子変化をEμ−TCL1トランスジェニックマウス中で試験した。ノーザンブロット分析を上述のように実施した(例えば、「ノーザンブロッティング」及び実施例3を参照されたい)。
【0168】
正常マウス脾臓リンパ球と比較し、トランスジェニックマウスのおよそ80%において、CLL細胞中でmiR15及びmiR16のマウス相同体の発現における減少があった。これらの結果は、ヒトCLL及び正常サンプル中のmiR15及びmiR16発現について実施例3に記載されている結果と同様であった。
【0169】
マウス染色体15及びヒト染色体12間の比較を行った。トランスジェニックマウス白血病の比較遺伝子ハイブリダイゼーション(CGH)は、およそ35%が、ヒト染色体12の領域に相当するマウス染色体15領域の増幅を有していたことを示した。これらのマウス白血病の細胞遺伝学的解析は、マウス染色体15のトリソミー又はテトラソミーを示した。12番染色体トリソミーは、ヒトヒトCLLのおよそ25%で起こることが知られている。
【0170】
比較遺伝子ハイブリダイゼーションは、ヒトにおける領域13ql4に相当するマウス染色体14の領域(51.6〜78.5Mb)の喪失も示した。
これらの研究の結果は、CLLマウスモデルが、ヒトCLLの病変形成で生じる事象を要約していることを示している。
【0171】
実施例1〜4に示されたデータを総合すれば、哺乳類でのCLL病変形成におけるmiR15及びmiR16の役割の証拠を提供している。
以下の技術を実施例5〜8で使用した:
患者サンプル及び細胞株
26の患者サンプルは、インフォームドコンセント後、CLL Research Consortium施設でCLLと診断された患者から得た。簡単には、血液をCLL患者から得、記述されている標準プロトコル(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989))に従って、単核細胞をFicoll-Hypaque 濃度勾配遠心分離(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を介して単離し、RNA及びDNA抽出のために処理した。CD5陽性細胞を含有する、2つの異なった個体の各々からの2つの正常プールを対照として使用した。CD5+B細胞は、扁桃腺リンパ球から調製した。簡単には、扁桃腺は、インフォームドコンセント後、日常的扁桃摘出術を受けている小児年齢群(18歳未満)の患者から得た。精製されたB細胞集団は、ノイラミニダーゼ処理ヒツジ赤血球(SRBC)で単核細胞(MNC)からT細胞をロゼット形成させることにより調製した。CD5+B細胞を得るため、記載したように、精製したB細胞を抗CD5モノクローナル抗体(mAb)、続いて磁気マイクロビーズにコンジュゲートされたヤギ抗マウスIg(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)とインキュベートした。CD5+B細胞は、MiniMACS システム(Miltenyi Biotec, Auburn, CA) により磁気カラムMSに保持された細胞を集めることによって、陽性的に選択した。細胞調製の純度の程度は、フローサイトメトリーにより評価すると、95%を超えるものであった。
【0172】
BCL2のウエスタンブロッティング
Bcl2タンパク質のレベルは、ウエスタンブロッティングのための標準手順(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab, Press, Plainview, NY(1989)) を使用し、マウスモノクローナル抗BCL2抗体(Dako)を使用して定量し、第二のマウスモノクローナル抗BCL2抗体(Santa Cruz Bio Technology , Santa Cruz, CA) を使用して確認した。規格化をマウスモノクローナル抗アクチン抗体(Sigma) で実施した。バンド強度は、ImageQuantTL (Nonlinear Dynamics Ltd.) を使用して定量した。
【0173】
RNA抽出、ノーザンブロット及びmiRNACHIP実験
手順は、(Calin, G. A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99: 15524-15529 (2002); Liu, C.G., et al., Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:9740-9744(2004); Calin, G. A., et al., Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A. 101: 11755-11760(2004)) に記述されているように実施した。簡単には、245のヒト及びマウスmiRNA遺伝子に対応する、三重の368プローブを含有する各miRNACHIPマイクロアレイチップ上のハイブリダイゼーションのため、5μgの総RNAからの標識標的を使用した。生データを、及びGeneSpring(登録商標)ソフトウェアーバージョン7.2(Silicon Genetics, Redwood City, CA) で規格化し及び解析した。発現データは、GeneSpring (登録商標)規格化オプション又はBioconductor パッケージ(www.bioconductor.org) のGlobal Median 規格化の両方を使用し、何らの実質的な差違なしに中央値に中心がおかれた。統計的比較はGeneSpring(登録商標)ANOVA ツール及びSAM ソフトウェアー(Significance Analysis of Microarray, wwwstat.stanford.edu/~tibs/SAM/index.html) の両方を使用して実施した。マイクロアレイデータはCalin, G.A., et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 101: 11755-11760(2004) 、に報告されているように、mir−16−1及びmir−15aについてのノーザンブロッティングにより確認した。
【0174】
mir−16−l/mir−15a発現ベクター
野生型(mir−16−1−WT)及び変異(mir−16−1−MUT)mir−16−l/mir−15a発現ベクターは、関連する読み取り枠をセンス配向で哺乳類発現ベクターpSR−GFP−Neo(OligoEngine, Seattle, WA) 内に連結することにより構築した。各構築物はmir−16−1及びmir−15aの両方を含む832bpゲノム配列を含有する。変異構築物はmir−16−1の3’領域中の+7塩基対にCからTへの置換を含有する。配列決定により確認後、各構築物を製造元の説明書(Invitrogen, Carlsbad, CA) に従って、リポフェクタミン2000を使用して293細胞をトランスフェクトした。両構築物の発現は、実施例5に記載したようにノーザンブロット分析により評価した。野生型及び変異pRS−neo−GFP構築物が等しい効率でトランスフェクトされたことを示すため、GFPレベルのウエスタンブロット分析を使用した。
【0175】
トランスフェクションアッセイ
ヒト巨核球細胞(MEG−0l)を、1X非必須アミノ酸及び1mmolピルビン酸ナトリウムを補給した、10%FBS含有RPMI−1640培地中、5%COを含む雰囲気下、37℃で増殖させた。細胞は、0.4μgのホタルルシフェラーゼレポーターベクター(Promega)及び0.08μgのウミシイタケルシフェラーゼ、pRLTK (Promega) 含有対照ベクターを用い、siPORT neoFX(Ambion) を使用し、製造元の説明書に従って12ウェルプレート中で同時トランスフェクトした。各ウェルについて、10nMのmir−16−1−センス(5’-uagcagcacguaaauauuggcg-3’;配列番号341)及び/又はmir−15a−センス(5’-uagcagcacauaaugguuugug-3’;配列番号342)(Dharmacon)、又はmiR−15a−アンチセンス及び/又はmiR−16−1アンチセンス前駆体miRNA阻害剤(Ambion) を使用した。ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性は、二重ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を使用し、トランスフェクション24時間後、継続的に測定した。
【0176】
ルシフェラーゼレポーター実験
ルシフェラーゼレポーター構築物を発生させるため、BCL2遺伝子の3’UTRの546塩基対セグメントをPCRによりヒトゲノムDNAから増幅し、ルシフェラーゼの終止コドンの直ぐ下流のXbal位を使用し、pGL3対照ベクター(Promega) 内に挿入した。特異的断片を発生させるために以下のプライマー組を使用した:
BCL2−UTRF2
5’-CTAGTCTAGAGCCTCAGGGAACAGAATGATCAG-3’(配列番号:343);及び
BCL2−UTRR2
5’-CTAGTCTAGAAAGCGTCCACGTTCTTCATTG-3’;(配列番号:344)。
miR−15a及びmiR−16−1との相補性の部位からそれぞれ5bp及び9bpに欠失を有する2つのBCL2挿入物(図4Aを参照されたい)もQuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene) を使用して発生させた。野生型及び変異体挿入物は配列決定により確認した。
【0177】
実施例5:miR−15a及びmiR−16−1はBCL2転写体の領域と相補性を示し及びBCL2タンパク質の領域と逆相関している発現パターンを示す
2つのマイクロRNA、mir−16−1及びmir−15aは、相同性検索によりBCL2 mRNA配列と相同性を有していると同定された。具体的には、両miRNAの5’末端の最初の9ヌクレオチドは、ヒトBcl2 cDNAクローン、NM_000633の塩基3741〜3749と相補的であることが観察された(図4A)。BCL2転写体中のヌクレオチドのこの領域はマウスにおいて保存されている(図4A)。双方が染色体3q26からの第二のクラスターのメンバーである、miR−15b及びmiR−16−2が、BCL2転写体中の同一領域と相補性を有していることも同定された。
【0178】
mir−16−1及び/又は mir−15a miRNAがBCL2転写体と相互作用するかどうかを評価するため、最初にCLL細胞及び正常CD5陽性リンパ球両方において、miR−15a/miR−16−lの発現レベル及びBcl2タンパク質レベル間に相関が存在するかどうかを決定した。正常CD5陽性Bリンパ球において、染色体13q14からのクラスターは高度に発現されていたが、一方、miR−15b及びmiR−16−2前駆体は、ノーザンブロット分析によりほとんど検出不能であった(Calin, G. A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 99: 15524-15529 (2002)) 。miRNACHIP分析及びウエスタンブロッティングにより、26CLLサンプル及び非罹患個体の扁桃腺からの4正常CD5陽性リンパ球を含んでなる30サンプルの組を分析した。正常CD5陽性リンパ球細胞において、miR−15a及びmiR−16−1 miRNA両方のレベルは高かった。対照的に、Bcl2タンパク質は低レベルで発現された。しかしながら、白血病細胞の大多数において、miR−15a及びmiR−16−1両方が低レベルで発現され、一方、Bcl2タンパク質は過剰発現された(図4B及び表4)。さらに、分析されたすべての白血病サンプルにおいて、miR−15a/miR−16−1の発現レベル及びBcl2の発現レベル間に逆相関を見出した(表4)。それ故、CLLサンプル中、miR−15a及びmiR−16−1発現の下方調節及びBcl2タンパク質の過剰発現が一般的に観察された。
【0179】
【表25】

【0180】
【表26】

【0181】
実施例6:マイクロRNAの発現。miR−15a及びmiR−16−1はトランスフェクトMEG−0l細胞においてBcl2タンパク質の発現を減少させる
miR−15a/miR−16−1含有完全クラスターを発現させることのBcl2発現に対する効果を調べるため、高レベルのBcl2を発現するが、miR−15a/16−1座の1つのアレル欠失及び他のアレルの変化により、miR−15a又はmiR−16−1のどちらも発現しない急性白血病由来細胞株、MEG−0l細胞を使用した。pSR−miR−15/16−WTベクターで過渡的にトランスフェクトされたMEG−0l細胞は、野生型MEG−01細胞(MEG−0lWT)及び空ベクター(MEG−01−pRS−neo−GFP)でトランスフェクトされたMEG−0l細胞と比べて高度に減少したBcl2のレベルを示した(規格化された発現の約7%)(図5A)。この効果を確認するため、家族性CLLのケースで検出され(Calin, G. C, et al., N. Engl. J. Med. 、印刷中)、及び両miRNAの発現を強く減少させる、miR−16−1中に+7(CからT)生殖系列置換を含有する同一の発現ベクター(pSR−miR−15/16−MUT)でトランスフェクトした。予測されるように、Bcl2レベルは、WT細胞又は空ベクターでトランスフェクトされた対照細胞のレベルと同程度であった(75%規格化発現)(図5A)。さらに、pSR−miR−15a/16−lWTでトランスフェクトされた細胞は、固有のアポトーシス経路の活性化を示した(APAF1−カスパーゼ9−PARP経路の活性化により決定された)。対照サンプルのいずれも、変異体構築物(pSR−miR−15/16−MUT)でトランスフェクトされた細胞のサンプルを含み、これらのアポトーシス促進性タンパク質のレベルの変化を示さなかった(図5A)
miR−15a及びmiR−16−1の両方がBcl2タンパク質発現に影響するのかを決定するため、MEG−0l細胞をmiR−15a及びmiR−16−1センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドRNAで過渡的にトランスフェクトした。図5Bに示されているように、miR−15a−センス及びmiR−16−1−センスオリゴヌクレオチドの別々のトランスフェクションは、完全にBcl2発現を消失させたが、一方、両miRNAのアンチセンスRNAのトランスフェクションはBcl2発現に影響しなかった。同様の結果が、両センスRNA又は両アンチセンスRNAが同時トランスフェクトされた場合に得られ(図5B)、miR−15a及びmiR−16−1 miRNA両方がBcl2タンパク質発現に影響することが確認された。
【0182】
実施例7:マイクロRNA、miR−15a及びmiR−16−1、及びBCL2転写体の3’UTR間の直接相互作用の証拠
miR−15a及びmiR−16−1の発現に続いてのBcl2タンパク質レベルの下方調節は、直接効果(即ち、miRNA::mRNA相補性を介する直接的なBCL2転写体へのmiRNAのハイブリダイゼーション)により、又は間接相互作用(即ち、miR−15a及びmiR−16−1と別の標的(単数又は複数)との相互作用、それにより、Bcl2レベルの下方調節が生じる)により説明し得る。これらの可能性を区別するため、miR−15a及びmiR−16−1マイクロRNAに相補性を示す、ヒトBcl2の3’UTRからの536bp配列(配列番号55のヌクレオチド3064〜3599)を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と融合させた。どちらか一方のmiRNA及びBCL2 mRNA間の相互作用はホタルルシフェラーゼ活性(トランスフェクション対照プラスミドのに対して規格化された)を減少させねばならず、一方、どちらか一方のmiRNAとBCL2 mRNAとの相互作用がないと、レポーター遺伝子発現には影響しない。図6A及び6Bに示されたデータは、どちらか又は両方のマイクロRNAでのトランスフェクションに続いて、対照ベクターに比べてルシフェラーゼ活性の有意な抑制が観察されたので、miR−15a/miR−16−l miRNA及びBCL2転写体間の直接相互作用と一致している。対照実験を、BCL2 cDNAと相補的であるmiR−15a及びmiR−16−1中の塩基の9(3’Ml)か又は5(3’M2)を欠く、2つのタイプの変異標的mRNA配列を使用して実施した。予測されるように、両変異体ともmiR−15a及びmiR−16−1及びBCL2の3’UTR間の相互作用を完全に消失させた(図6B)。これらのデータは、miR−15a及びmiR−16−1マイクロRNAの両方がBCL2の3’UTRと直接相互作用することを示している。
【0183】
BCL2遺伝子に影響する転座は、メッセンジャー及びタンパク質両方のレベルを増加させる(Tsujimoto, Y., et al., Science 228: 1440-1443 (1985))。miRNAはmRNA翻訳又はmRNA安定性に影響することにより特異的標的を下方調節し得ることが最近示されているので(Lim, L.P., et al, Nature 433: 769-773 (2005))、mRNA安定性を介したmiR15a/16−l相互作用によりBCL2が下方調節された可能性を試験した。BCL2 mRNAのレベルを、pSR−miR−15/16−WTか又は特異的miR−15a及びmiR−16−1 RNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞からの抽出物を使用するRT−PCR増幅により評価した。対照細胞(例えば、トランスフェクトされていない細胞又は空ベクターでトランスフェクトされた細胞)及びこれらの構築物のいずれかでトランスフェクトされた細胞間に、Bcl2発現のレベルの相違は観察されなかった(図6A)。これらの結果は、miR−15a及びmiR−16−1はmRNA安定性に影響せず、Bcl2 mRNAの翻訳に影響するらしいことを示している。
【0184】
実施例8:推定マイクロRNA/BCL2相互作用の同定
ヒトゲノムにおいては、miRNAのmiRl5/16ファミリーの4つのメンバーが存在し、すべてがBCL2転写体の領域と相補的である同一の9bp配列を有する。この機能的重複性は、Bcl2発現を調節する非常に精微な機能の存在を示唆する。さらに、標的予測ソフトウェアーTargetScan(Lewis, B.P., et al., Cell 120: 15-20(2005)) を使用し、BCL2がmirl5及びmiRNA16を含む、14の異なったmiRNAの潜在的標的として同定された(表5)。これらの発見は、多様な細胞タイプにおいて、他のマイクロRNAがBcl2タンパク質発現を調節し得ることを示唆する。
【0185】
【表27】

【0186】
本明細書で提供されたデータは、マイクロRNA(例えば、miR−15a、miR−16−1)下方調節の結果としてのBcl2過剰発現は、ヒトB−CLLの病変発生に寄与する重要な機構であることを示している。とりわけ、miR−15a及びmiR−16−1の下方調節が、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)のケースでも報告されている (Eis, P. S., et al., Proc Natl. Acad. Sd. USA 102: 3627-3632 (2005))。従って、マイクロRNA(例えば、miR−15a、miR−16−1)下方調節の結果としてのBcl2の過剰発現は他のヒト悪性病変に関与しているようである。
【0187】
実施例9:ヒト細胞中のmiR遺伝子産物の発現
一つ又はそれ以上の全miR前駆体RNAをコードするcDNA配列を、その全開示が本明細書において援用される、Zeng, et al, Mol Cell 9:1327-1333 (2002) の手順に従って、サイトメガロウイルス最初期(CMV−IE)プロモーターの制御下で発現される不適切mRNAに関連して別々にクローン化する。
【0188】
簡単には、miR前駆体をコードする二本鎖cDNA配列の末端にXhoIリンカーを置き、これらの構築物をpBC12/CMVプラスミド中に存在するXhoI部位内に別々にクローン化した。pBC12/CMVプラスミドは、その全開示が本明細書において援用されるCullen, (1986), Cell 46:973-982 に記載されている。miR前駆体RNA配列を含有するプラスミドは、pCMV−miR(例えば、miR−16−1についてはpCMV−miR16)と称されている。
【0189】
一つ又はそれより多くのpCMV−miR構築物は、FuGene6試薬(Roche) を使用する標準技術により、培養ヒト293T細胞内に別々にトランスフェクトした。全RNAを上記のように抽出し、プロセシングされたマイクロRNAの存在を、miR特異的プローブでのノーザンブロット分析により検出する。
【0190】
一つ又はそれより多くのpCMV−miR構築物を、培養ヒト癌細胞株(例えば、癌腫細胞株2220、2221、11609、11611、LNCAP、TSUR)内へも別々にトランスフェクトした。全RNAを上記のように抽出し、癌細胞中のプロセシングされたマイクロRNAの存在を、miR特異的プローブでのノーザンブロット分析により検出する。トランスフェクトされた癌細胞は、形態学における変化、接触阻害を克服する能力及び形質転換された表現型を示す他のマーカーについても評価する。
【0191】
実施例10:miR遺伝子産物によるBCL2関連癌細胞のトランスフェクション
BCL2関連癌と診断された対象からのBCL2関連癌細胞を単離し、以下のように一つ又はそれ以上のマイクロRNAをコードするプラスミドでトランスフェクトした。
【0192】
CD5+B細胞を上述のように分離し、及びBCL2関連癌細胞(例えば、CLL細胞)を、視覚的点検により、又はもし癌がCLLであれば、その全開示が本明細書において援用されるMatutes, et al., Leukemia 8(10): 1640-1645(1994) のスコア付けシステムに従ってCLLスコアを決定することにより同定する。少なくとも4のCLLスコアを有するCD5+B細胞はCLL細胞と考えられる。
【0193】
単離されたBCL2関連癌細胞は、標準技術により、miR発現構築物(例えば、pCMV−miR15、pCMV−miR16)でトランスフェクトする。全RNAを上記のように抽出し、プロセシングされたマイクロRNAの存在を、特定のmiR(例えば、miR−15a、miR−16−1)に特異的なプローブでのノーザンブロット分析により検出する。miR遺伝子配列の安定な組み込みは、特定のmiR遺伝子配列に特異的なプローブを使用するサザンブロットハイブリダイゼーションによっても確認される。
【0194】
実施例11:miR遺伝子産物による造血幹細胞のトランスフェクション
BCL2関連癌(例えば、CLL)と診断された対象からの造血幹細胞(HSC)は以下のように骨髄から得た。
【0195】
骨髄は、標準技術を使用し、手術室において全身麻酔下の対象の腸骨から採取された。総計で約750〜1000mlの骨髄について、ヘパリン処置シリンジ内への複数の吸引が行われた。吸引された髄質は即時に、100mlの培地当たり10,000単位の保存料非含有ヘパリンを含有する輸送培地(TC-199, Gibco, Grand Island, New York) 内に移した。吸引された髄質は3つの段々とより細かくなるメッシュを通して濾過し、細胞凝集、デブリ及び骨粒子がない細胞懸濁液を得る。濾過髄質は次に自動化血液成分分離装置(例えば、Cobe2991細胞処理機)でさらに処理し、「バフィーコート(buffy coat)」(即ち、赤血球及び血小板を含まない白血球)を得る。
【0196】
バフィーコート調製物は、以下のように、免疫磁気ビーズ(Dynal A.S., Oslo, Norway) で、CD34細胞について陽性選択することにより造血幹細胞(HSC)について部分富化する。バフィーコート調製物を補充アルファ培地に懸濁し、1:20希釈したマウス抗HPCA−I抗体と、穏やかにチューブを反転させながら4℃で45分インキュベートした。細胞を、補充アルファ培地中で3回洗浄し、次にヤギ抗マウスIgG(75μlの免疫ビーズ/10 CD34細胞)のFc断片でコートされたビーズとインキュベートした。4℃で45分のインキュベーション後、ビーズに付着した細胞を、磁気粒子濃縮器を使用し、製造元により指示されているように陽性選択した。
【0197】
HSCについて富化された該調製物からの2x10細胞を、0.4mlの総容量の2%ヒトAB血清及び10mMヘペス緩衝液含有イスコブ修飾ダルベック培地(IMDM)中、5mlポリプロピレン管(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA) 内でインキュベートし、標準技術により、miR発現構築物(例えば、pCMV−miR15、pCMV−miR16)でトランスフェクトする。マイクロRNAの発現は、トランスフェクトHSCの一部でノーザンブロット分析により確認し、miR遺伝子配列の安定な組み込みはHSCの一部でサザンブロット分析により確認した。およそ4x10/kg体重〜約8x10/kg体重の残っているトランスフェクト細胞を、標準骨髄移植技術に従って対象内に再移植した。
【0198】
該実験を反復するが、以下のように、トランスフェクション及び再移植に先立って、電離放射線により骨髄から新生物細胞を一掃する。バフィーコート調製物中の細胞を、約20%自家血漿を含むTC−199中で約2x10/mlの細胞濃度に調整する。組換えヒト造血成長因子rH IL−3又はrH GM−CSFを細胞懸濁液に加えて造血新生物の増殖を刺激し、それによりそれらの電離放射線に対する感受性を増加させる。細胞は次に5〜10Gy電離放射線に暴露し、約20%自家血漿含有TC−199中、4℃で1回洗浄し、上記のようにmiR発現構築物(例えば、pCMV−miR15、pCMV−miR16)でトランスフェクトする。
【0199】
実施例12:リポソーム被包マイクロRNAの調製
リポソーム調製1−1:1:4:5のモル比のラクトシルセレブロシド、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン及びコレステロールから成るリポソームは、その全開示が本明細書において援用される米国特許第4,235,871号:に記載されている逆相蒸発法により調製した。リポソームは、100μg/mlのプロセシングされたマイクロRNA又は500μg/ml(例えば、pCMV−miR15、pCMV−miR16)の水性溶液中で調製される。このように調製されたリポソームは、プロセシングされたマイクロRNA(例えば、miR−15a、miR−16−1 RNA)か又はマイクロRNAを発現する構築物(例えば、pCMV−miR15、pCMV−miR16プラスミド)を被包する。
【0200】
リポソームは次に0.4ポリ炭酸塩膜を通過させ、生理食塩水に懸濁し、135mM塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.4、でのカラムクロマトグラフィーにより未被包材料から分離する。リポソームはさらに精製することなく使用するか、又は以下に記載したように修飾する。
【0201】
上で調製したリポソームの適量を適切な反応容器に入れ、それに20mMメタ過ヨウ素酸ナトリウム、135mM塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)の溶液を攪拌しながら加えた。生じた混合物を暗所で90分、約20℃の温度に放置した。過剰の過ヨウ素酸塩は、反応混合物を250mlの緩衝化塩溶液(135mM塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.4)に対して2時間透析することにより除去する。生成物は、炭水化物のヒドロキシル基のアルデヒド基への酸化により修飾された表面を有するリポソームである。標的化基又はオプソニン化抑制剤部分は、これらのアルデヒド基を介してリポソーム表面にコンジュゲートされる。
【0202】
リポソーム調製2−マレイミドベンゾリル−ホスファチジルエタノールアミン(MBPE)、ホスファチジルコリン及びコレステロールから成る第二のリポソーム調製物は、以下のように得る。MBPEは、タンパク質を含むスルフヒドリル含有化合物をリポソームへカップリングするための活性化リン脂質である。
【0203】
その全開示が本明細書において援用される、Kitagawa, et al., J. Biochem. 79:233-236(1976) に記述されているように、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン(DMPE)(100ミリモル)を、2当量のトリエチルアミン及び50mgのm−マレイミドベンゾリルN−ヒドロキシスクシンイミドエステル及びを含有する5mlの無水メタノールに溶解する。生じた反応物は、窒素ガス雰囲気下、室温で一夜反応を進行させ、クロロホルム/メタノール/水(65/25/4)で、シリカゲルHの薄層クロマトグラフィーにかけると、より速く移動する生成物へのDMPEの定量的変換が明らかになる。減圧下でメタノールを除去し、生成物をクロロホルムに再溶解する。クロロホルム相を1%塩化ナトリウム及びマレイミドベンゾリル−ホスファチジルエタノールアミン(MBPE)で2回抽出し、溶媒としてクロロホルム/メタノール(4/1)を用いてケイ酸クロマトグラフィーにより精製する。精製後、薄層クロマトグラフィーは、ニンヒドリン陰性である単一のリン酸塩を含有するスポットを示した。
【0204】
リポソームを、100μg/mlのプロセシングされたマイクロRNAの水性溶液中、又はマイクロRNAをコードするプラスミドの溶液中、米国特許第4,235,871号(上記文献)の逆相蒸発法により、1:9:8のモル比のMBPE、ホスファチジルコリン及びコレステロールで調製する。100mM塩化ナトリウム−2mMリン酸ナトリウム(pH6.0)、でのカラムクロマトグラフィーにより未被包材料からリポソームを分離する。
【0205】
実施例13:リポソーム被包miR遺伝子産物への抗CD5+又は抗前立腺腫瘍抗体の付着
適切な容器に、1.1ml(約10ミリモル含有)の上記反応性アルデヒド基を運んでいるリポソーム調製物1又はリポソーム調製物2を入れる。0.2mlの200mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液及び1.0mlのCD5+細胞表面マーカー指向性モノクローナル抗体又は前立腺腫瘍細胞l抗原の3mg/ml溶液を該調製物に攪拌しながら加える。生じた反応混合物を一夜放置し、その間4℃の温度を維持する。反応混合物をバイオゲルA5Mアガロースカラム(Biorad, Richmond, Ca; 1.5X37cm) で分離する。
実施例14:miR遺伝子産物によるインビボでのヒト前立腺腫瘍増殖の阻害
ホルモン不応性ヒト前立腺腺癌細胞株(PC−3)をヌードマウス内に接種し、マウスを治療及び対照群に分割する。マウスの腫瘍が100〜250立方ミリメーターに達した時、リポソームに被包した一つ又はそれ以上のプロセシングされたマイクロRNA(例えば、miR−15a、miR−16−1)を対照群の腫瘍内に直接注入する。対照群の腫瘍には坦体溶液のみを被包しているリポソームを注入する。腫瘍容量は研究を通して測定した。Dunning R-3327 ラット前立腺腺癌モデルにおいて、前立腺腫瘍増殖を阻害することにおけるmiR遺伝子産物の効力も、以下のように評価した。Dunning R-3327前立腺腺癌細胞の高転移性及び悪性クローン(RT−3.1)をコペンハーゲンラット内に接種し、次にそれらを治療及び対照群に分割する。両群ともおよそ一週間以内に固形腫瘍塊を形成する。治療群のラットの腫瘍に、リポソームに被包したプロセシングされたマイクロRNAを、5週間にわたり週2回注入した。対照群の腫瘍にはリポソーム被包坦体溶液のみを注入した。腫瘍容量は研究を通して測定する。
【0206】
前に参照文献として援用されていないすべての参照文献の関連する教示は、本明細書において援用される。当業者は、本発明が対象を実施する、及び記載された目的及び利点、ならびに本明細書に固有のものを得るためによく適応していることを容易に理解するであろう。本発明は、それらの精神又は必須の特質から離れることなく他の特異的形態で具体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
本特許又は出願ファイルは少なくとも一つのカラーで仕上げられた図を含む。カラーの図を含むこの特許又は特許出願印刷物のコピーは、依頼及び必要な料金の支払い後、本事務所により提供されるであろう。
【図1】図1A及び1Bは、それぞれ、miR15及びmiRl6前駆体RNAの予測された二次構造の略図による表現である。RNA二次構造予測は、Matthews, et al., J. MoI. Biol. 288:911-940(1999) の「mfold」プログラム バージョン3.1を使用して実施し、らせん状セグメント中のG/Uゆらぎ塩基対に適応させるためにマニュアルで精密化された。プロセシングされたmiR15及びmiR16 miRNAは下線が付されている。Lagos-Quintana, et al., Science 294:853-858 (2001) から改作された。
【図2】図2Aは、CLLにおける13ql4腫瘍抑制因子座位内の遺伝子地図であり、miRl5/16遺伝子クラスターの局在化を示している。遺伝子マーカーの位置及び地図上の遺伝子の位置が示されている。図2Bは、以前に報告されている13ql4欠失の地図であり、水平にストライプを付けたボックスにより印を付けられている。 図2Cは、D13S1150及びD13S272マーカー間の座位の地図である。この座位中の各遺伝子の配向は遺伝子名の下の矢印により印を付けられており、縦棒は各遺伝子について対応するエクソンの位置を印付けている。図2Dは、AIu18及びD13S272マーカー間の座位の地図である。棒及びボックスはLEU2/ALT1及びLEU1についてのエクソンの位置を印付けている。短い縦の矢印は、miRl5及びmiR16遺伝子の位置を印付けている。丸は、2つの独立した白血病ケース(CLL−A及びCLL−B)の融合から誘導された体細胞ハイブリッドクローンをスクリーニングするために使用されたPCRプライマーの位置を印付けている。斜線を付けたボックスは、このハイブリッド中に存在する染色体13の位置を表している。「←〜31.4kb→」は、t(2;13)(ql2;ql3)転座、両側性網膜芽細胞腫及び潰瘍性大腸炎を有するCLLの患者から誘導された、クローンCLL−A中のおよそ31.4kbの欠失領域を示している。長い縦の矢印は、t(2;13)(q32;ql4)転座を運んでいるクローンCLL−B中の限界点の位置を表しており、及び「←〜29kb→」は、このクローンからのおよそ29kbの欠失領域を示している。
【図3A】図3Aは正常ヒト腎臓、前立腺、肝臓、膵臓、骨格筋(「Sk筋肉」)、精巣、CD5+B細胞(CD5+)、白血病細胞(「Per B1 Leuk」)及び骨髄(「BM」)におけるmiR15及びmiR16遺伝子発現のノーザンブロット分析である。
【図3B】図3Bは、18CLL患者におけるマイクロサテライトマーカーD13S272及びD13S273のヘテロ接合性喪失(「LOH」)分析である。正常ヒトCD5+細胞からのDNAを対照として使用した。サンプルのLOH状態は、「+/+」「+/−」「−/−」「NI」(情報価値がない)、「?」(材料が不十分)及び「ND」(実施されていない)として示されている。臭化エチジウム染色ノーザンゲルを規格化対照として使用した。
【図4】図4Aは、ヒトmiRNA、miR−15a(Hsa_miR−15;配列番号58)又はmiR−16−1(Hsa_miR−16;配列番号59)及びヒトBCL2 cDNA(Hsa_BCL2;配列番号57)、ならびにマウスmiRNAs、miR−15a(Mmu_miR−15;配列番号61)又はmiR−16−1(Mmu_miR−16;配列番号62)及びマウスBCL2 cDNA(Mmu_BCL2;配列番号60)間のmiR::mRNA相補性(レッドヌクレオチド(red nucleotides))の領域を示している。miR−15a及びmiR−16−1において標的とされた欠失の部位が、2つの異なった3’UTR変異体構築物について示されている:miRNA::mRNA相互作用の原因となる9bpのすべてを欠く3’M1、及び相補性の領域中の最初の5bpを欠く3’M2。図4Bは、5つの異なったCLLサンプル(CLL)、ならびに正常患者からのCD5陽性Bリンパ球のプールしたサンプル(CD5プール)の各々におけるBcl2タンパク質のレベルを示しているウエスタンブロットである。ジャーカットT細胞(T細胞白血病細胞株)をBcl2タンパク質発現の対照として使用した。βアクチン(Actin)レベルを規格化のために使用した。各サンプルにおけるmiR−16−1及びmiR−15aマイクロRNAの相対的発現は、マイクロアレイシグナル強度により決定され、ブロットの下の対応するレーンの下に示されている。
【図5A】図5Aは、トランスフェクトされていないMEG−01細胞(MEG−01 WT)、ならびに空ベクターでトランスフェクトされたMEG−01細胞(MEG−01−pRS−neo−GFP)、mir−15a/miR−16−lクラスター含有ベクターでトランスフェクトされたMEG−01細胞(MEG−01−pRS−15a/16−lWT)、miR−16a前駆体の3’領域中に+7置換(CからT)を有するmir−15a/miR−16−lクラスター含有ベクターでトランスフェクトされたMEG−01細胞(MEG−01−pRS−15a/16−lMUT)中の、Bcl2タンパク質ならびに多様なアポトーシスアクチベーター(例えば、APAFl、Pro−C9、C9、PARP及び切断PARP)の完全長及び切断型のレベルを示しているウエスタンブロットである。データは二重の実験で確認された。pRS−15a/16−1 WTトランスフェクト細胞は、APAF1(アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1、チトクロムcインターアクター)、プロカスパーゼ9(固有のアポトーシス経路)及びポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP、多様なアポトーシス経路の最終エフェクター)の切断を示した。アクチンを添加対照としてモニターした。
【図5B】図5Bは、miR−15a及び/又はmiR−16−1センス(miR−15a、miR16−l)又はmiR−15a及び/又はmiR−16−1アンチセンス(miR−15a_AS、miR16−l_AS)RNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされたMEG−0l細胞におけるBcl2タンパク質のレベルを示しているウエスタンブロット(WB)である。トランスフェクトされていないMEG−01細胞(MEG−01−WT)を対照として使用した。ベータ−アクチン(Actin)レベルを使用して規格化を実施した。ノーザンブロット(NB)は、miR−15−センス及びmiR−16−センスオリゴヌクレオチドのトランスフェクション効率を評価するため実施した。RT−PCR生成物は同一細胞中のBCL2転写体のmRNAレベルを表し、それはベータ−アクチン(Actin)mRNAレベルに対して規格化される(RT−PCR)。
【図6】図6Aは、miR−15−a及び/又はmiR−16−1センスRNAオリゴヌクレオチド(それぞれmiR15a S及びmiR−16−1 S)又はmiR−15−a及び/又はmiR−16−1アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(それぞれmiR15a A及びmiR−16−1 A)でトランスフェクトされた細胞中の、ウミシイタケルシフェラーゼトランスフェクション対照に規格化された、ホタルルシフェラーゼ発現の相対的抑制(抑制倍率)を示している棒グラフである。細胞は空対照ベクター(pGL−3−Cont)又はmiR−15−a及び/又はmiR−16−1センス又はアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされた。全ての実験は三重に二回実施した(n=6)。図6Bは、ウミシイタケルシフェラーゼトランスフェクション対照に対して規格化されたホタルルシフェラーゼ発現の相対的抑制を示している棒グラフである。細胞は空対照ベクター(pGL−3−Cont)、miR−15a及びmiR−16−1センスRNAオリゴヌクレオチド(pSR−15a/16−lS+3’UTR)又はmiR−15a及びmiR−16−1アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(pSR−15a/16−lA+3’UTR)RNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされた。3’UTRは、野生型BCL2 3’UTR配列に融合されたルシフェラーゼレポーター遺伝子を表す。2つの異なった3’UTR変異体もトランスフェクトされ、1つは、miR−15a及びmiR−16−1中の相補的なmiRNA::mRNA領域の9bpのすべてを欠く一つの変異体(pSR−15a/16−1 S+3’Ml)及び他方は同じ相補的領域中の最初の5bpを欠いている(pSR−15a/16−lS+3’M2)。全ての実験は三重に二回実施した(n=6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCL2関連癌を有する対象において抗癌治療の効力を増加させる方法であって:
a)対象に少なくとも一つの抗癌治療を投与すること;及び
b)対象に少なくとも一つのmiR遺伝子産物を投与すること、ここで少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる;
を含んでなり、該抗癌治療の効力が増加される、前記方法。
【請求項2】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物がmiR−15a又はmiR−16−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗癌治療が化学療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗癌治療が放射線療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
癌が慢性リンパ球性白血病(CLL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
癌がリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リンパ腫が濾胞性リンパ腫、小細胞リンパ腫、大細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫から成る群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌が肺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗癌治療の効力の増加が、適した対照と比較して、対象における癌の増加した寛解によって証明される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
BCL2関連癌を有するヒト対象において抗癌治療の効力を増加させる方法であって:
a)少なくとも一つの抗癌治療を対象に投与すること;及び
b)対象に少なくとも一つのmiR遺伝子産物を投与すること、ここで少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなり;
を含んでなり、該抗癌治療の効力が増加される、前記方法。
【請求項14】
抗癌剤の細胞傷害性効果に対する癌細胞の感受性を増加させる方法であって、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる少なくとも一つのmiR遺伝子産物を癌細胞に投与することを含んでなり、該抗癌剤に対する該細胞の感受性が増加される、前記方法。
【請求項15】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−15a又はmiR−16−1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
癌細胞が、対照細胞と比較してBcl2タンパク質の増加した発現を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
癌細胞が対象中に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
対象がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに抗癌剤を投与することを含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物及び抗癌剤が共投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
癌細胞がCLL細胞、肺癌細胞及びリンパ腫細胞から成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
癌細胞が濾胞性リンパ腫細胞、小細胞リンパ腫細胞、大細胞リンパ腫細胞及び非ホジキンリンパ腫細胞から成る群より選択されるリンパ腫細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
癌細胞が肺癌細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
肺癌が非小細胞肺癌腫細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
癌細胞が、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫から成る群より選択される癌と関連している細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
抗癌剤に対する癌細胞の感受性の増加が、該癌細胞の死により証明される、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
細胞にアポトーシスを誘発する方法であって、該細胞と少なくとも一つのmiR遺伝子産物を接触させることを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物がBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、前記方法。
【請求項31】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−15a又はmiR−16−1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−l37、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
細胞が癌細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
癌細胞が、対照細胞と比較してBcl2タンパク質の増加した発現を示す、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
癌細胞がCLL細胞、肺癌細胞及びリンパ腫細胞から成る群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
癌細胞が濾胞性リンパ腫細胞、小細胞リンパ腫細胞、大細胞リンパ腫細胞及び非ホジキンリンパ腫細胞から成る群より選択されるリンパ腫細胞である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
癌細胞が肺癌細胞である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
肺癌が非小細胞肺癌腫細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
癌細胞が、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、メラノーマ、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、結腸直腸癌、脳癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ球増殖性疾患、腎癌腫、肝細胞癌腫及び胃癌腫から成る群より選択される癌と関連している細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
癌細胞が対象中に存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
対象がヒトである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連する癌を治療する方法であって、少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を対象に投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物はBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなり、それにより癌を治療する、前記方法。
【請求項45】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−15b又はmiR−16−2である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−181b、miR−181c、miR−181d、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−153−1、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−129−2、miR−9、miR−137及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
対象がヒトである、請求44に記載の方法。
【請求項49】
癌が慢性リンパ球性白血病(CLL)である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
癌がリンパ腫である、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
リンパ腫が、濾胞性リンパ腫、大細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫から成る群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
癌が肺癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
肺癌が非小細胞肺癌腫である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連する癌を治療する方法であって、少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を対象に投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物はBCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなり、但し該miR遺伝子産物はmiR−15a又はmiR−16−1ではない、前記方法。
【請求項55】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連する癌を治療する方法であって、少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を対象に投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−9及びmiR−137から成る群より選択される、前記方法。
【請求項56】
Bcl2関連癌を治療するための医薬組成物であって、少なくとも一つの抗癌剤及び少なくとも一つのmiR遺伝子産物を含んでなり、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、前記医薬組成物。
【請求項57】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物がmiR−15aである、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項59】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物がmiR−16−1である、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項60】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項61】
対象中の癌療法の効力を決定するための方法であって、対象に少なくとも一つの療法剤を投与すること、及び引き続いて、対象からのサンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現を測定することを含んでなり、miR遺伝子産物が、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、前記方法。
【請求項62】
対象がCLLを有する、請求項61記載の方法。
【請求項63】
対象がBcl2タンパク質の過剰発現に関連した癌を有する、請求項61記載の方法。
【請求項64】
miR遺伝子産物が、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2又はそれらの組み合わせである、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
適した対照と比較したmiRの遺伝子産物の発現の増加が、成功した治療を示す、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連した癌を予防する方法であって、対象に少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、前記方法。
【請求項67】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連した癌を予防する方法であって、対象に少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなり、但し、miR遺伝子産物はmiR− 15a又はmiR−16−1ではない、前記方法。
【請求項68】
対象中のBCL2遺伝子産物の過剰発現に関連した癌を予防する方法であって、対象に少なくとも一つのmiR遺伝子産物の有効量を投与することを含んでなり、少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−30、miR−15b、miR−16−2、miR−217、miR−205、miR−204、miR−103、miR−107、miR−9及びmiR−137から成る群より選択され、それにより該癌を予防する、前記方法。
【請求項69】
対象中のBCL2関連癌を診断する、又は予後診断する方法であって:
i)対象からのサンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを決定すること;及び
ii)対照に対する該サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを比較すること、ここで対照からのものと比較して、対象からのサンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルにおける減少が、BCL2関連癌の診断又は予後診断であり、及び
少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、BCL2遺伝子転写体中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる;
を含んでなる、前記方法。
【請求項70】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−15a又はmiR−16−1である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195、miR−34、miR−153、miR−21、miR−217、miR−205、miR−204、miR−211、miR−143、miR−96、miR−103、miR−107、miR−129、miR−9、miR−137、miR−217、miR−186及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、miR−182、miR−181、miR−30、miR−15a、miR−16−1、miR−15b、miR−16−2、miR−195及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、配列番号55のヌクレオチド3741〜3749と相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
対照が、BCL2関連癌を有していない対象からの少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルである、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
対照が、対象の非癌性サンプルからの少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルである、請求項69に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−507918(P2009−507918A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531200(P2008−531200)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/035100
【国際公開番号】WO2007/033023
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】