説明

BMP−ALK3アンタゴニストおよび骨成長促進のためのその使用

特定の態様において、本発明は、骨成長を促進するため、骨密度および骨強度を増大させるための組成物および方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、ALK3−Fc融合タンパク質を含むALK3ポリペプチドを提供する。本発明は、可溶性形態のALK3が、BMP−ALK3シグナル伝達のインヒビターとして作用し、骨密度の増大、骨成長、および骨強度の増大をインビボで促進することを明らかにする。いずれの特定の機構にも束縛されることは望ましくないが、可溶性形態のALK3は、BMP2および/またはBMP4、ならびにおそらくは、ALK3を通じてシグナルを伝達する他のリガンドを阻害することによりこの作用を達成すると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年3月30日に出願された米国仮出願番号61/211,557、2010年2月19日に出願された同61/306,331、2010年3月16日に出願された同61/314,556の利益を主張する。上記で言及した出願の全ての教示は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨粗鬆症から骨折までの範囲に及ぶ骨の障害は、有効な医薬品がほとんどない一連の病理学的状態を示す。その代わりに、処置は、固定化、運動、および食事の変更を含む、物理的介入ならびに行動的介入に重点が置かれている。様々な骨障害を処置するために骨成長を促進し、骨密度を増大させる治療薬を有することが有益である。
【0003】
骨成長と石灰化は、2つのタイプの細胞(破骨細胞と骨芽細胞)の活性に依存するが、軟骨細胞と血管系の細胞もまた、これらのプロセスの重要な局面に関与している。発育上、骨の形成は2つの機構(軟骨内骨化と膜性骨化)を通じて起こる。前者は長手方向の骨の形成に関与しており、後者は、位相的扁平骨(例えば、頭蓋骨)の形成に関与している。軟骨内骨化には、骨芽細胞、破骨細胞、血管系の形成と、その後の石灰化の鋳型となる、成長板の軟骨性の構造の連続的な形成と分解が必要である。膜性骨化の間に、骨が結合組織において直接形成される。いずれのプロセスにも、骨芽細胞の浸潤とそれに続くマトリックスの堆積が必要である。
【0004】
骨折と骨の他の構造的破壊は、少なくとも外見上は、軟骨組織の形成とそれに続く石灰化を含む、一連の発育上の骨形成事象と似ているプロセスにより治癒する。骨折の治癒のプロセスは2つの方法で起こり得る。直接または第1の骨の治癒は、仮骨形成を伴わずに起こる。間接または第2の骨の治癒は、仮骨の前駆段階を伴って起こる。骨折の第1の治癒には、近接している破壊部を超えた力学的連続性の再形成が含まれる。適切な条件下で、破壊の周囲の骨吸収細胞は、トンネル吸収反応(tunnelling resorptive response)を示し、血管の進入とそれに続く治癒のための経路を確立する。骨の第2の治癒は、炎症、軟性仮骨の形成、仮骨の石灰化、および仮骨リモデリングのプロセスに続く。炎症段階では、血腫および出血の形成が、損傷の部位での骨膜および骨内膜の血管の破壊により生じる。炎症細胞がその領域に入り込む。軟性仮骨形成の段階では、上記細胞が新しい血管、線維芽細胞、細胞内物質、および支持細胞を産生し、骨折した断片の間の空間に肉芽組織を形成する。破壊部を超えた臨床的結合が、線維性組織または軟骨組織(軟性仮骨)により確立される。骨芽細胞が形成され、軟性仮骨の石灰化を媒介し、これはその後、層板骨にとって替わられ、正常なリモデリングプロセスに供される。
【0005】
骨折と骨構造の他の物理的な破壊に加えて、骨ミネラル含量および骨量の減少は、多岐にわたる条件により起こり得、深刻な医学的問題を生じる場合がある。骨量の変化は、個人の生涯にわたり比較的予測可能な方法で起こる。およそ30歳までは、男性および女性の骨は両方とも、軟骨内成長板の長さの成長と放射状の成長により最大量にまで成長する。(骨梁骨(例えば、椎骨および骨盤のような扁平骨)については)およそ30歳以降、そして(皮質骨(例えば、四肢に見られる長骨)については)40歳以降は、男性および女性のいずれにおいてもゆっくりとした骨の減少が起こる。女性では、実質的な骨の減少の最終段階がまた、おそらくは閉経後のエストロゲンの不足が原因で起こる。この段階の間に、女性は皮質骨から骨量のさらに10%を、そして骨梁区画からはさらに25%を失う可能性がある。進行性の骨の減少が骨粗鬆症のような病理学的状態を生じるかどうかは、個人の最初の骨量と、悪化しつつある状態が存在するかどうかに大きく依存する。
【0006】
骨の減少は、時折、正常な骨のリモデリングプロセスの不均衡として特徴づけられる。健康な骨は、常にリモデリングに供されている。リモデリングは、破骨細胞による骨の吸収とともに開始する。その後、吸収された骨は、新しい骨組織によって置き換えられ、これは、骨芽細胞によるコラーゲンの形成とそれに続くカルシウム沈着を特徴とする。健康な個体では、吸収と形成の速度は平衡状態にある。骨粗鬆症は、吸収側へのシフトを特徴とする慢性の進行性の状態であり、骨量および骨石灰化の全体的な減少を生じる。ヒトにおいては、骨粗鬆症の前に、臨床的骨減少症(若年成人の骨についての平均値から下に1標準偏差を超え、2.5標準偏差を超えない、骨ミネラル密度)が起こる。世界中では、およそ7500万人に骨粗鬆症のリスクがある。
【0007】
したがって、破骨細胞の活性と骨芽細胞の活性との間での平衡を制御するための方法が、骨折および他の骨の損傷の治癒を促進するため、ならびに骨量および骨石灰化の減少と関係がある、骨粗鬆症のような障害の処置に有用であり得る。
【0008】
骨粗鬆症に関しては、ビタミンK、または高用量の食事性カルシウムとともに、エストロゲン、カルシトニン、オステオカルシンが全て、治療的介入として使用される。骨粗鬆症のための他の治療的アプローチとしては、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、カルシウム模倣物(calcimimetic)、スタチン、アナボリックステロイド、ランタンおよびストロンチウム塩、ならびにフッ化ナトリウムが挙げられる。しかし、このような治療薬には、多くの場合、望ましくない副作用が伴う。
【0009】
骨の減少はまた、多くのがんの重大な合併症でもあり、腫瘍の骨への転移、破骨細胞の活性化、または化学療法の処置の効果によっても引き起こされ得る。特に、乳がんの処置に広く使用されている抗エストロゲン療法は、顕著な骨の減少を引き起こす可能性がある。
【0010】
骨形成不全症のような他の骨の障害は、遺伝的、発生上の、栄養に関する、または他の病理および欠損症により生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、骨成長と石灰化を促進するための組成物および方法を提供することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本開示は、その一部において、ALK3アンタゴニスト活性またはBMPアンタゴニスト活性を有している分子(「ALK3アンタゴニスト」および「BMPアンタゴニスト」)を、骨密度を増大させるため、骨成長を促進するため、および/または骨強度を増大させるために使用できることを明らかにする。この観察は、文献および臨床経験の大半が、多くのBMP、特に、BMP2、BMP4、およびBMP7が、骨の形成の強力な刺激因子であることを示していることを考えると、特に驚くべきことである。本開示は、可溶性形態のALK3が、BMP−ALK3シグナル伝達のインヒビターとして作用し、骨密度の増大、骨成長、および骨強度の増大をインビボで促進することを明らかにする。いずれの特定の機構にも束縛されることは望ましくないが、可溶性形態のALK3は、BMP2および/またはBMP4、ならびにおそらくは、ALK3を通じてシグナルを伝達する他のリガンドを阻害することによりこの作用を達成すると考えられる。したがって、本開示は、BMP−ALK3シグナル伝達経路のアンタゴニストを、骨密度を増大させるため、および骨成長を促進するために使用できることを確立する。可溶性のALK3は、BMP拮抗作用に加えて、またはBMP拮抗作用以外の機構により骨に影響を及ぼす可能性があるが、それにもかかわらず、本開示は、望ましい治療薬が、BMP−ALK3アンタゴニスト活性に基づいて選択され得ることを明らかにする。したがって、特定の実施形態においては、本開示は、低い骨密度または低い骨強度と関係がある障害(例えば、骨粗鬆症)を処置するため、あるいは、骨成長の必要がある患者において(例えば、骨折患者において)骨成長を促進するために、BMP−ALK3アンタゴニスト(例えば、BMP結合性ALK3ポリペプチド、抗BMP抗体、抗ALK3抗体、BMP標的化またはALK3標的化低分子およびアプタマー、ならびにBMPおよびALK3の発現を低下させる核酸を含む)を使用する方法を提供する。さらなる実施形態においては、本開示は、有利な特性を持ち、そして適切なBMP2またはBMP4結合を保持している短縮型のALK3ポリペプチド(例えば、ALK3−Fcポリペプチド)を同定する。
【0013】
特定の態様において、本開示は、BMP2および/またはBMP4に結合する可溶性ALK3ポリペプチドを含有しているポリペプチドを提供する。この可溶性ALK3ポリペプチドは、さらなるリガンドにもまた結合し得る。ALK3ポリペプチドは、BMP結合性ALK3ポリペプチドおよび薬学的に許容され得るキャリアを含有している薬学的調製物として処方され得る。好ましくは、BMP結合性ALK3ポリペプチドは、1マイクロモル未満、または100ナノモル、10ナノモル、もしくは1ナノモル未満のKでBMP2および/またはBMP4に結合する。上記組成物は、サイズ排除クロマトグラフィーにより評価した場合に他のポリペプチド成分に関して少なくとも95%純粋であることが好ましく、上記組成物が、少なくとも98%純粋であることがさらに好ましい。そのような調製物において使用されるBMP結合性ALK3ポリペプチドは、本明細書中に開示するもののいずれかであり得、例えば、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、もしくは41から選択されるアミノ酸配列を有しているポリペプチド、または、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、もしくは41から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有しているポリペプチドであり、これは、配列番号3の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25個を超えないアミノ酸のN末端および/またはC末端短縮を含み、状況に応じてリンカーで、もしくはリンカーを伴わずにFc融合タンパク質に融合させられている。特に、本開示は、ALK3 ECD部分のN末端に0個〜7個のアミノ酸の短縮があり、ALK3 ECD部分のC末端に0個〜12個のアミノ酸の短縮があるALK3ポリペプチドを提供する(これにより、配列番号3のアミノ酸8〜117に対応する機能部分と、配列番号3の8〜117のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であるタンパク質を含有しているポリペプチドを説明する)。特に、ヒトALK3とマウスALK3は、細胞外ドメインにおいてアミノ酸配列レベルで97%〜98%の同一性を有し、ヒトタンパク質またはマウスタンパク質由来のそのようなドメインを含有しているタンパク質が、インビトロおよびインビボで類似する活性を示すことを本明細書中で示す。BMP結合性ALK3ポリペプチドには、天然のALK3ポリペプチドの機能的断片(例えば、配列番号1または3から選択される配列の少なくとも10個、20個、または30個のアミノ酸を含有しているもの)が含まれ得る。驚くべきことに、本明細書中で示すように、ALK3細胞外ドメインのC末端領域にアミノ酸の欠失を含むALK3タンパク質は、BMP2およびBMP4に対する活性を保持しているが、他のリガンド(例えば、BMP6およびBMP7)に対する活性は低下しており、リガンド選択性において改善が得られ、これは、臨床開発または商品化における予期せぬオフターゲット効果を小さくするために一般的に望ましい。このような改変体は、配列番号3のC末端から6個もしくは7個を超えない、12個を超えない、または24個を超えないアミノ酸の欠失を含み得る。状況に応じて、C末端が短縮された形態は、N末端の1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個を超えないアミノ酸も短縮され得る。ALK3タンパク質の上記バリエーションは、ALK3−Fc融合タンパク質に含まれ得る。ALK3−Fc融合タンパク質は、本明細書中で開示する任意のリンカー(配列GGGまたはTGGGまたはSGGGを有しているリンカーを含む)と(あるいは、リンカーを全く含まない)、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、あるいは他の哺乳動物の免疫グロブリンに由来するFc部分とを含み得る。
【0014】
可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドは、天然に存在しているALK3ポリペプチドと比較して、アミノ酸配列の中に(例えば、リガンド結合ドメインの中)に、1個、2個、5個、またはそれ以上の変更を含み得る。アミノ酸配列中の変更は、例えば、哺乳動物、昆虫、もしくは他の真核生物の細胞の中で産生される場合には、ポリペプチドのグリコシル化を変更し得、あるいは、天然に存在しているALK3ポリペプチドと比較して、ポリペプチドのタンパク質分解による切断を変更する可能性がある。
【0015】
BMP結合性ALK3ポリペプチドは、1つのドメインとしてのALK3ポリペプチド(例えば、ALK3のリガンド結合部分)と、望ましい特性(例えば、改善された薬物動態、より容易な精製、特定の組織に対する標的化など)を提供する1つまたは複数のさらなるドメインとを有する融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質の1つのドメインは、インビボでの安定性、インビボでの半減期、取り込み/投与、組織局在性もしくは組織分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の1つあるいは複数を増強し得る。BMP結合性ALK3融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメイン(野生型もしくは変異体)または血清アルブミン、あるいは、改善された薬物動態、改善された溶解度、または改善された安定性のような望ましい特性を提供する他のポリペプチド部分を含み得る。好ましい実施形態においては、ALK3−Fc融合体は、Fcドメインと細胞外ALK3ドメインとの間に配置された比較的構造化されていないリンカーを含む。この構造化されていないリンカーは、ALK3の細胞外ドメインのC末端に対応する場合があり、また、これは、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の人工的な配列、または比較的自由な二次構造の5個〜15個、20個、30個、50個、もしくはそれ以上の長さのアミノ酸、あるいは両方の混合物である場合もある。リンカーには、グリシン残基とプロリン残基が多く含まれ得、例えば、スレオニン/セリンとグリシンの単一配列、あるいは、スレオニン/セリンおよび/もしくはグリシンの反復配列(例えば、GGG、GGGG、TG、SG、TG、またはSGのシングレット(singlet)もしくは反復)が含まれ得る。融合タンパク質には、精製配列(例えば、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合物)が含まれ得る。状況に応じて、可溶性ALK3ポリペプチドには、以下から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基が含まれる:グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分結合体化アミノ酸、および有機誘導化剤結合体化アミノ酸。薬学的調製物にはまた、骨の障害を処置するために使用される化合物のような、1つまたは複数のさらなる化合物が含まれる場合がある。薬学的調製物が、実質的には発熱物質を含まないことが好ましい。一般的には、患者における好ましくない免疫応答の可能性を小さくするために、ALK3タンパク質の天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞系の中でALK3タンパク質を発現させることが好ましい。ヒト細胞系およびCHO細胞系はすでにうまく活用されており、ならびに、他の一般的な哺乳動物発現系が有用であると期待される。
【0016】
特定の態様では、本開示は、可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドには、上記に記載したような、可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドのコード配列が含まれ得る。例えば、単離された核酸には、ALK3の細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列と、ALK3の膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全体をコードする配列が含まれ得るが、停止コドンについては、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインの中に配置されているか、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に配置されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドには、全長のALK3ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号2もしくは4)または部分的に短縮されたバージョンが含まれ得る。上記単離されたポリヌクレオチドにはさらに、3’末端の前少なくとも600個のヌクレオチドにおいて転写終結コドンが含まれているか、そうでなければ、
ポリヌクレオチドの翻訳により、全長のALK3の短縮された部分に対して状況に応じて融合させられた細胞外ドメインが生じるように配置された転写終結コドンが含まれている。好ましい核酸配列は、配列番号12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37、およびそのような核酸またはその相補物に対してストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸である。本明細書中で開示する核酸は、発現のためのプロモーターに対して作動可能であるように連結させることができ、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。細胞は、CHO細胞のような哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0017】
特定の態様においては、本開示は、可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドを作製するための方法を提供する。そのような方法には、適切な細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)の中で本明細書中に開示する核酸(例えば、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37)のいずれかを発現させる工程が含まれ得る。そのような方法には、a)可溶性ALK3ポリペプチドの発現に適している条件下で細胞を培養する工程(ここで、上記細胞は可溶性ALK3発現構築物で形質転換されている);およびb)そのように発現させた可溶性ALK3ポリペプチドを収集する工程が含まれ得る。可溶性ALK3ポリペプチドは、粗画分、部分的に精製された画分、または高度に精製された画分として収集することができる。精製は、例えば、以下の1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれ以上を任意の順序で含む一連の精製工程により行うことができる:プロテインAクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Qセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィー。
【0018】
特定の態様においては、本明細書中に開示するBMP−ALK3アンタゴニスト(例えば、可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチド)を、被験体において骨成長を促進するかまたは骨密度を増大させるための方法において使用することができる。特定の実施形態においては、本開示は、処置の必要がある患者において、低い骨密度と関係がある障害を処置するため、または骨成長を促進するための方法を提供する。1つの方法には、投与の必要がある被験体に対して有効量のBMP−ALK3アンタゴニストを投与する工程が含まれ得る。特定の態様においては、本開示は、本明細書中に記載するような障害または状態の処置のための医薬品を作製するためのBMP−ALK3アンタゴニストの使用を提供する。
【0019】
特定の態様においては、本開示は、骨の成長または石灰化の増進を刺激する物質を同定するための方法を提供する。上記方法には、a)BMPまたはALK3ポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験物質を同定する工程;およびb)骨の成長または石灰化に対する上記物質の効果を評価する工程が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、ヒトALK3前駆体の天然のアミノ酸配列を示す(配列番号1)。ALK3の細胞外ドメイン(残基24〜152)に下線をつける。
【図2】図2は、ヒトALK3前駆体をコードする天然のヌクレオチド配列を示す(配列番号2)。ALK3の細胞外ドメインをコードする配列(ヌクレオチド70〜456)に下線をつける。
【図3】図3は、ヒトALK3の細胞外ドメインの天然のアミノ酸配列を示す(配列番号3)。
【図4】図4は、ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする天然のヌクレオチド配列を示す(配列番号4)。
【図5】図5は、ヒトIgG1のFcドメインの天然のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
【図6】図6は、ヒトIgG1のFcドメインをコードする天然のヌクレオチド配列を示す(配列番号6)。
【図7】図7は、リーダーの無いhALK3(24−152)−hFcのアミノ酸配列を示す(配列番号7)。ヒトALK3の細胞外ドメイン(配列番号3)に下線をつけ、TGGGリンカー配列は太字体とする。
【図8】図8は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−hFcの全長のアミノ酸配列を示す(配列番号11)。ヒトALK3の細胞外ドメイン(配列番号3)に下線をつけ、TGGGリンカー配列は太字体とする。
【図9−1】図9は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号12はコード鎖に対応し、配列番号13はアンチコード鎖に対応する。ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする配列(配列番号4)に下線をつける。
【図9−2】図9は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号12はコード鎖に対応し、配列番号13はアンチコード鎖に対応する。ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする配列(配列番号4)に下線をつける。
【図10】図10は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−mFcの全長のアミノ酸配列を示す(配列番号14)。ヒトALK3の細胞外ドメイン(配列番号3)に下線をつけ、TGGGリンカー配列は太字体とする。
【図11−1】図11は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−mFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号15はコード鎖に対応し、配列番号16はアンチコード鎖に対応する。ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする配列(配列番号4)に下線をつける。
【図11−2】図11は、TPAリーダーを持つhALK3(24−152)−mFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号15はコード鎖に対応し、配列番号16はアンチコード鎖に対応する。ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする配列(配列番号4)に下線をつける。
【図12】図12は、雌性マウスにおける全身の骨ミネラル密度に対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。測定は、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって行った。データは、平均(1つのグループあたりn=8)±SEMである。*,対応のないt検定によりビヒクルに対してP<0.05。hALK3(24−152)−mFcは、処置の31日後および42日後に全身の骨密度を有意に増大させた。
【図13】図13は、雌性マウスにおける椎骨の骨ミネラル密度に対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。第4および第5腰椎(L4、L5)を含む領域の測定を、DEXAによって行った。データは、平均(1つのグループあたりn=8)±SEMである。**、対応のないt検定によりビヒクルに対してP<0.005。hALK3(24−152)−mFcは、処置の31日後および42日後に椎骨の骨密度を有意に増大させた。
【図14】図14は、雌性マウスにおける皮質骨の厚みに対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。右の近位脛骨(proximal tibia)の測定を、マイクロコンピュータ断層撮影法(マイクロCT)によって行った。データは平均であり(1つのグループあたりn=8)、エラーバーは、±2倍SEMを示す。**、対応のないt検定によりビヒクルに対してP<0.005。hALK3(24−152)−mFcは、6週間の処置後に皮質骨の厚みを有意に増大させた。
【図15】図15は、雌性マウスにおける骨梁骨体積に対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。右の近位脛骨の測定をマイクロCTによって行った。データは平均であり(1つのグループあたりn=8)、エラーバーは±2倍SEMを示す。***、対応のないt検定により処置前のベースラインまたはビヒクルに対してP<0.001。hALK3(24−152)−mFcは、4週間の処置後に骨梁骨の割合を2倍超にした。
【図16】図16は、雌性マウスにおける平均の骨梁の厚みに対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。右の近位脛骨の測定をマイクロCTによって行った。データはグループの平均であり(1つのグループあたりn=8)、エラーバーは±2倍SEMを示す。***、対応のないt検定により処置前のベースラインまたはビヒクルに対してP<0.001。hALK3(24−152)−mFcは、4週間の処置後に骨梁の厚みを有意に増大させた。
【図17】図17は、雌性マウスにおける骨梁骨の微細構造に対する4週間のhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。近位脛骨の骨梁骨の代表的な三次元画像をマイクロCTによって作製した。スケールバー=300μm。
【図18】図18は、骨の形成を刺激する目的のためにBMP−ALK3シグナル伝達軸(signaling axis)によるシグナル伝達を妨害するための、本明細書中に開示する3つのアプローチの例を示す。A:ALK3−Fc。B:選択されるBMPリガンド(単数または複数)に対する抗体。C:ALK3の細胞外ドメインのリガンド結合領域に対する抗体。「BMP2」を、BMPが、BMP2、BMP4、またはALK3についての別の高親和性リガンドであり得ることを説明するために使用する。
【図19】図19は、雌性マウスにおける最大骨荷重に対する6週間のhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。大腿骨の片側分析を、Instron機械式検査デバイスを用いてエキソビボで行った。ニュートン(N)でのデータは平均(1つのグループあたりn=8)±SEMである。**、ビヒクルに対してP<0.01。hALK3(24−152)−mFcは、最大骨荷重を30%増加させた。
【図20】図20は、雌性マウスにおける骨の剛性に対する6週間のhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。大腿骨の片側分析を、Instron機械式検査デバイスを用いてエキソビボで行った。1mmあたりのニュートン(N)でのデータは、平均(1つのグループあたりn=8)±SEMである。*、ビヒクルに対してP<0.05。hALK3(24−152)−mFcは、骨の剛性を14%増大させた。
【図21】図21は、雌性マウスにおける骨を破損させるためのエネルギーに対する、6週間のhALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。大腿骨の片側分析を、Instron機械式検査デバイスを用いてエキソビボで行った。ミリジュール(mJ)でのデータは、平均(1つのグループあたりn=8)±SEMである。*、ビヒクルに対してP<0.05。hALK3(24−152)−mFcは、破損させるためのエネルギーを32%増大させた。
【図22】図22は、確立された骨減少症のOVXマウスモデルにおける骨梁骨体積に対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。近位脛骨の測定をマイクロCTによって行った。データは平均(1つのグループあたりn=7〜8)であり、エラーバーは±2SEMを示す。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。投与前は、OVXマウスは、偽手術されたマウスと比較して骨梁骨体積が少なかった。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の28日目および56日目で、骨体積を有意に増大させた。
【図23】図23は、骨減少症のOVXマウスモデルにおける皮質骨の厚みに対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。皮質骨の測定をマイクロCTによって行った。データは平均(1つのグループあたりn=7〜8)であり、エラーバーは、±2SEMを示す。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の56日目に、皮質の厚みを有意に増大させた。
【図24】図24は、骨減少症のOVXマウスモデルにおける骨内膜の周囲に対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。脛骨骨幹部(tibial shaft)の測定をマイクロCTによって行った。データは平均であり(1つのグループあたりn=7〜8)、エラーバーは、±2SEMを示す。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の56日目に骨内膜の周囲を有意に減少させ、これにより皮質骨の成長のさらなる証拠を提供する。
【図25】図25は、DEXAにより決定した、骨減少症のOVXマウスモデルにおける全身の骨ミネラル密度に対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。データは、平均(1つのグループあたりn=7〜8)±SEMである。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の14日目、28日目、42日目、および56日目に、全身の骨密度を有意に増大させた。
【図26】図26は、骨減少症のOVXマウスモデルにおける椎骨の骨ミネラル密度に対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果を示す。腰椎(椎骨L1〜L6)の分析をDEXAによって行った。データは平均(1つのグループあたりn=7〜8)±SEMである。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の14日目、28日目、42日目、および56日目に椎骨の骨密度を有意に増大させた。
【図27】図27は、DEXAにより決定した、骨減少症のOVXマウスモデルにおける大腿骨−脛骨の骨ミネラル密度に対するmALK3−mFcでの処置の効果を示す。大腿骨と近位脛骨全体の分析をDEXAによって行った。データは、平均(1つのグループあたりn=7〜8)±SEMである。*、OVX+ビヒクルに対してP<0.05。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、処置の28日目、42日目、および56日目に、大腿骨−脛骨の骨密度を有意に増大させた。
【図28】図28は、骨減少症のOVXマウスモデルにおける椎骨の骨微細構造に対する56日間のmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。腰椎(L5)中の骨梁骨の代表的な三次元画像を、マイクロCTによってエキソビボで作製した。スケールバー=300μm。
【図29】図29は、組織形態測定により遠位大腿骨において評価した、雌性マウスにおける骨体積に対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。**、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.01。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、全ての時点で骨体積を有意に増大させた。
【図30】図30は、組織形態測定により遠位大腿骨において評価した、雌性マウスにおける骨の形成速度に対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。***、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.001。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、処置の28日目に骨の形成速度を有意に増大させた。これにより、同化作用による骨の形成の証拠を提供する。
【図31】図31は、組織形態測定により遠位大腿骨において評価した、雌性マウスにおける骨石灰化表面に対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは、平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。**、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.01;*、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.05。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、処置の14日目および28日目に、石灰化表面を有意に増大させ、これにより、同化作用による骨の形成のさらなる証拠を提供する。
【図32】図32は、組織形態測定により遠位大腿骨において評価した、雌性マウスにおける破骨細胞表面に対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは、平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。**、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.01。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、処置の28日目に破骨細胞表面を有意に減少させ、これにより、抗吸収性の骨の形成の証拠を提供する。
【図33】図33は、Luminex xMAP(登録商標)アッセイにより決定した、雌性マウスにおけるRANKL(核因子−κBリガンドの活性化受容体)の血清レベルに対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは、平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。**、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.01;*、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.05。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、全ての時点で循環しているRANKLレベルを有意に低下させた。
【図34】図34は、Luminex xMAP(登録商標)アッセイによって決定した、雌性マウスにおける血清オステオプロテゲリン(OPG)レベルに対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは、平均±SEMである。1つの時点あたり1グループあたりn=6。**、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.01;*、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.05。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、処置の28日目および42日目に、循環しているOPGレベルを有意に増大させた。
【図35】図35は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって評価した、雌性マウスの大腿骨と脛骨におけるスクレロスチンmRNAレベルに対するmALK3(24−152)−mFcの効果を示す。データは、平均±SEMである。***、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.001;*、対応する時点でのビヒクルに対してP<0.05。ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcは、処置の2日目、7日目、および28日目に、スクレロスチンmRNAレベルを有意に低下させた。
【図36】図36は、雌性マウスにおける骨体積に対するhALK3(24−152)−hFcの効果を示す。骨体積を、0日目(ベースライン)にマイクロCTにより近位脛骨において評価し、42日目に(エキソビボ)もまた評価した。データは、平均±SEMである。1つのグループあたりn=6。***、ビヒクルに対してP<0.001。実験の過程全体にわたり、骨体積は、ビヒクルで処置した対照においては20%近く減少したが、hALK3(24−152)−hFcで処置した場合には80%を上回って増加した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
(1.概要)
本開示は、その一部において、BMP−ALK3シグナル伝達経路のインヒビター(例えば、ALK3−Fcタンパク質)が動物において骨の形成を促進するという驚くべき結果を明らかにする。ALK3は、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)/骨形態形成タンパク質(BMP)スーパーファミリーのメンバーの受容体である。TGF−β/BMPスーパーファミリーには、共通する配列エレメントと構造的モチーフを共有する様々な成長因子が含まれる。これらのタンパク質は、脊椎動物と無脊椎動物のいずれにおいても、多種多様な細胞のタイプに対して生物学的効果を発揮することが知られている。このスーパーファミリーのメンバーは、パターン形成および組織特異化において胚発生の間に重要な機能を果たし、様々な分化のプロセス(脂質生成、筋形成、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生、および上皮細胞分化を含む)に影響を及ぼし得る。TGF−βファミリーのメンバーの活性を操作することにより、しばしば、生物において有意な生理学的変化を起こすことが可能である。例えば、Piedmontese牛品種およびBelgian Blue牛品種は、筋肉量の顕著な増加を引き起こすGDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子の機能喪失型変異を有する。Grobetら、Nat Genet.1997,17(1):71−4。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増加、報告によれば、例外的な強さと関係がある。Schuelkeら、N Engl J Med 2004,350:2682−8。
【0022】
TGF−βシグナルは、リガンド刺激に際して、下流のSmadタンパク質をリン酸化し、活性化するI型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体により媒介される(Massague,2000,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169−178)。これらのI型およびII型受容体は、システインを多く含む領域を持つリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予想されるセリン/スレオニン特異性を持つ細胞質ドメインからなる膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に不可欠であり、II型受容体はリガンド結合と、I型受容体の発現に必要である。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化を生じる。
【0023】
アクチビン受容体様キナーゼ−3(ALK3)は、BMPファミリーの複数のリガンドの効果を媒介するI型受容体であり、骨形態形成タンパク質受容体、IA型(BMPR1A)、またはアクチビンA受容体、II型様キナーゼ(ACVRLK)としても知られている。遍在する組織発現を持ついくつかのI型受容体とは異なり、ALK3は、より特異化された機能性と一致する制限された発現パターンを示す(ten Dijke,1993,Oncogene 8:2879−2887)。ALK3は、一般的には、BMP2、BMP4、BMP7、およびBMPファミリーの他のメンバーについての高親和性受容体と理解されている。BMP2とBMP7は、骨芽細胞の分化の強力な刺激因子であり、現在、脊椎固定および特定の偽関節骨折において骨の形成を誘導するために臨床的に使用されている。ALK3は、骨芽細胞においてBMP2およびBMP4のシグナル伝達を媒介する際の重要な受容体と考えられている(Laveryら、2008,J.Biol.Chem.283:20948−20958)。ホモ接合型ALK3ノックアウトマウスは、胚形成初期(9.5日)に死亡する。しかし、骨芽細胞中のALK3の条件的破壊を持つ成体マウスは骨量の増加を示したが、新しく形成した骨が組織崩壊の証拠を示したことが最近報告された(Kamiya,2008,J.Bone Miner.Res.23:2007−2017;Kamiya,2008,Development 135:3801−3811)。この知見は、臨床的使用における骨構築物質としてのBMP2とBMP7(ALK3のリガンド)の有効性と驚くほどの対照をなす。
【0024】
本明細書中で示すように、BMP2およびBMP4に対する結合において実質的な優先傾向を示す可溶性ALK3ポリペプチド(ALK3−Fc)が、インビボで骨成長を促進するため、および骨密度を増大させるために有効である。いずれの特定の機構にも束縛されることは望ましくないが、これらの研究において使用した特定の可溶性ALK3構築物が示した極めて強いBMP2およびBMP4結合(ピコモルの解離定数)を考えると、ALK3の効果は、BMPのアンタゴニスト効果により主に起こると予想される。機構とは無関係に、本明細書中に示すデータから、BMP−ALK3アンタゴニストが正常なマウスにおいて骨密度を増大させることが明らかである。驚くべきことに、ALK3−Fcでの処置により生じた骨は、ALK3条件的ノックアウトマウスにおいて観察されるタイプの組織崩壊の証拠を示さない。骨は動的組織であり、骨を生成し、石灰化を刺激する因子(主に、骨芽細胞)と、骨を破壊し、脱灰する因子(主に、破骨細胞)の平衡状態に応じて成長または小さくなり、そして密度が増大または低下することに留意しなければならない。骨成長と石灰化は、生産性因子を増加させることにより、破壊性の因子を減少させることにより、またはそれらの両方により増大させることができる。用語「骨成長を促進する」および「骨の石灰化を増大させる」は、骨における観察可能な物理的変化をいい、骨に変化が起こる機構に対して変化をもたらさないと意図される。
【0025】
本明細書中に記載した研究において使用した骨成長/密度についてのマウスモデルは、ヒトにおける効能の高度な予測であると考えられ、したがって、本開示は、ヒトにおいて骨成長を促進するため、および骨密度を増大させるために、ALK3ポリペプチドならびに他のBMP−ALK3アンタゴニストを使用するための方法を提供する。BMP−ALK3アンタゴニストとしては、例えば、BMPに結合する可溶性ALK3ポリペプチド、BMPに結合し、ALK3結合を破壊する抗体、ALK3に結合し、BMP結合を破壊する抗体、BMP結合またはALK3結合について選択された非抗体タンパク質(例えば、そのようなタンパク質の例、およびそれらの設計および選択のための方法については、WO/2002/088171、WO/2006/055689、WO/2002/032925、WO/2005/037989、US2003/0133939、およびUS2005/0238646を参照のこと)、BMP結合またはALK3結合について選択された無作為ペプチド(多くの場合は、Fcドメインに付加されている)が挙げられる。BMP結合活性またはALK3結合活性を持つ2つの異なるタンパク質(または他の部分)(特に、I型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)およびII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位をそれぞれブロックするBMPバインダー)を、二官能性結合分子を作製するために互いに連結させることができる。BMP−ALK3シグナル伝達軸を阻害する核酸アプタマー、低分子、および他の物質もまた考えられる。さらに、BMPまたは特に、ALK3の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンス分子、siRNA、またはリボザイム)を、BMP−ALK3アンタゴニストとして使用することができる。
【0026】
本明細書中で使用する用語は、一般的には、本発明の状況において、およびそれぞれの用語が使用される具体的な状況において、当該分野におけるそれらの通常の意味を有する。特定の用語を、本発明の組成物および方法、ならびにそれらを作製、使用するための方法を記載することにおいて、実施者にさらなるガイダンスを提供するために、以下または本明細書中の別の場所で議論する。任意の使用される用語の範囲または意味は、その用語が使用される特定の状況から明らかである。
【0027】
「約」および「およそ」は、一般的には、測定の性質または精度を考慮して、測定した量について許容され得る誤差の程度を意味するものとする。典型的には、例示的な誤差の程度は、提供する値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内であり、より好ましくは、5%以内である。
【0028】
あるいは、および特に生物学的系において、用語「約」および「およそ」は、提供する値の一桁以内、好ましくは5倍以内、そしてより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書中に提供する数量は、特に明記しない限りはおおよそであり、用語「約」または「およそ」が、明らかに記載されていない場合も推定され得ることを意味する。
【0029】
本発明の方法には、互いに配列を比較する(1つまたは複数の変異体(配列改変体)に対して野生型配列を比較することを含む)工程が含まれ得る。このような比較には、典型的には、ポリマー配列の(例えば、当該分野で周知の配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、いくつかを挙げると、BLAST、FASTA、およびMEGALIGN)を使用する)アラインメントが含まれる。そのようなアラインメントにおいて、変異が残基の挿入または欠失を含む場合は、配列アライメントには、残基が挿入されていないかまたは残基が欠失しているポリマー配列中に「ギャップ」(典型的には、ダッシュ記号または「A」で表す)を導入することを当業者は容易に理解することができる。
【0030】
「相同」は、その文法上の形態および綴りのバリエーションの全てにおいて、同じ生物種のスーパーファミリーに由来するタンパク質、ならびに異なる生物種に由来する相同タンパク質を含む、「共通の進化の起源」を持つ2つのタンパク質間の関係をいう。このようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性に関するか、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるかを問わず、それらの配列類似性に反映される配列相同性を有する。
【0031】
用語「配列類似性」は、その文法上の形態の全てにおいて、核酸またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度をいう。核酸またはアミノ酸配列は、共通の進化の起源を共有している場合も、また共有しない場合もある。
【0032】
しかし、一般的慣習および本出願においては、用語「相同」が、「高度に」のような副詞で修飾される場合には、配列類似性を意味し得、共通の進化の起源と関係がある場合も、また関係がない場合もある。
【0033】
(2.ALK3ポリペプチド)
特定の態様においては、本発明はALK3ポリペプチドに関する。本明細書中で使用する場合は、用語「ALK3」は、変異誘発または他の修飾によりそのようなALK3タンパク質から誘導された任意の種および改変体に由来する、アクチビン受容体様キナーゼ3(ALK3)[IA型骨形態形成タンパク質受容体(BMPR1A)、またはアクチビンA受容体、II型様キナーゼ(ACVRLK)とも呼ばれる]タンパク質のファミリーをいう。本明細書中でのALK3の言及は、現在同定されている形態のいずれか1つの言及であると理解される。ALK3ファミリーのメンバーは、一般的には、システインを多く含む領域を持つリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予想されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を持つ細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
【0034】
用語「ALK3ポリペプチド」には、ALK3ファミリーメンバーの任意の天然に存在しているポリペプチドを含むポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持しているそれらの任意の改変体(変異体、断片、融合体、およびペプチド模倣体(peptidomimetic)形態を含む)が含まれる。例えば、ALK3ポリペプチドには、ALK3ポリペプチドの配列に対して少なくとも約80%同一である配列を有している、好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれ以上の同一性を有している任意の公知のALK3の配列に由来するポリペプチドが含まれる。例えば、本発明のALK3ポリペプチドは、ALK3タンパク質および/またはBMPに結合し、それらの機能を阻害し得る。好ましくは、ALK3ポリペプチドは、骨成長と骨石灰化を促進する。ALK3ポリペプチドの例としては、ヒトALK3前駆体ポリペプチド(配列番号1)、および可溶性ヒトALK3ポリペプチド(例えば、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、または41)が挙げられる。
【0035】
ヒトALK3前駆体タンパク質の配列(配列番号1)を図1に示し、ヒトALK3前駆体タンパク質をコードする核酸配列(配列番号2;Genbank登録NM_004329のヌクレオチド549〜2144)を図2に示す。可溶性ヒトALK3(細胞外)の、プロセシングされたポリペプチド配列(配列番号3)を図3に示し、ヒトALK3の細胞外ドメインをコードする核酸配列(配列番号4;Genbank登録NM_004329のヌクレオチド618〜1004)を図4に示す。
【0036】
特定の実施形態においては、本発明は、可溶性ALK3ポリペプチドに関する。本明細書中に記載する場合は、用語「可溶性ALK3ポリペプチド」は、一般的には、ALK3タンパク質の細胞外ドメインを含有しているポリペプチドをいう。本明細書中で使用する場合は、用語「可溶性ALK3ポリペプチド」には、ALK3タンパク質の任意の天然に存在している細胞外ドメイン、ならびにそれらの任意の改変体(変異体、断片、およびペプチド模倣体形態を含む)が含まれる。BMP結合性ALK3ポリペプチドは、BMP(特に、BMP2およびBMP4)に結合する能力を保持しているものである。好ましくは、BMP結合性ALK3ポリペプチドは、BMPに対して、1nMまたはそれ未満の解離定数で結合する。ヒトALK3前駆体タンパク質のアミノ酸配列を図1に提供する。ALK3タンパク質の細胞外ドメインはBMPに結合し、これは一般的には可溶性である。したがって、可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドと呼ぶことができる。可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドの例としては、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、または41に説明する可溶性ポリペプチドが挙げられる。配列番号7をALK3(24−152)−hFcと呼び、実施例でさらに記載する。可溶性のBMP結合性ALK3ポリペプチドの他の例には、ALK3タンパク質の細胞外ドメインに加えてシグナル配列(例えば、天然のALK3リーダー配列(配列番号8)、組織プラスミノーゲン(plaminogen)活性化因子(TPA)リーダー(配列番号9)、またはミツバチメリチンリーダー(配列番号10))が含まれる。配列番号11に説明するALK3−hFcポリペプチドは、TPAリーダーを使用する。
【0037】
ALK3ポリペプチドの機能的に活性な断片は、ALK3ポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換えにより産生したポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、断片は、従来のメリフィールド固相f−Mocまたはt−Boc化学のような、当該分野で公知の技術を使用して化学合成することもできる。断片は、(組換えにより、または化学合成により)産生することができ、ALK3タンパク質またはBMPにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るそのようなペプチジル断片を同定するために試験することができる。
【0038】
ALK3ポリペプチドの機能的に活性な改変体は、ALK3ポリペプチドをコードする対応する変異誘発した核酸から組換えにより産生された修飾されたポリペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。改変体を産生させ、ALK3タンパク質またはBMPにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るものを同定するために試験することができる。特定の実施形態においては、ALK3ポリペプチドの機能的改変体は、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、または41より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の場合には、機能的改変体は、配列番号3、7、11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、または41より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0039】
機能的改変体は、治療効能の増強または安定性(例えば、エキソビボの貯蔵寿命およびインビボのタンパク質分解に対する抵抗性)のような目的のために、ALK3ポリペプチドの構造を修飾することにより生成され得る。BMP結合を保持するよう選択する場合は、そのような修飾されたALK3ポリペプチドは、天然に存在しているALK3ポリペプチドの機能的等価物と見なされる。修飾されたALK3ポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によっても産生することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの単独の置き換え、アスパラギン酸のグルタミン酸での単独の置き換え、スレオニンのセリンでの単独の置き換え、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸での同様の置き換え(例えば、保存的変異)は、得られる分子の生物学的活性に対して大きな影響をもたらさないと予想することは合理的である。保存的置き換えは、それらの側鎖と関連しているアミノ酸のファミリー内で行なわれるものである。ALK3ポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的ホモログをもたらすかどうかは、改変体ALK3ポリペプチドの、細胞において野生型ALK3ポリペプチドと同様の様式で応答を生じる能力を評価することにより、容易に決定することができる。
【0040】
特定の実施形態においては、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変更するための、ALK3ポリペプチドの特定の変異を意図する。このような変異は、O結合グリコシル化部位またはN結合グリコシル化部位のような、1つまたは複数のグリコシル化部位を導入あるいは排除するように選択され得る。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は一般に、適切な細胞性グリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニン(またはアスパラギン−X−セリン)(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含む。変更はまた、(O結合グリコシル化部位のための)野生型ALK3ポリペプチドの配列に対する1つもしくは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、あるいはそれらによる置換によって作製され得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸位置の一方または両方での様々なアミノ酸置換または欠失(および/または第2位のアミノ酸の欠失)により、改変されたトリペプチド配列で非グリコシル化が生じる。ALK3ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ALK3ポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによる。使用するカップリング様式に応じて、糖(単数または複数)を、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離のカルボキシル基;(c)遊離のスルフヒドリル基(例えば、システインのスルフヒドリル基);(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニン、またはヒロドキシプロリンのヒドロキシル基);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基);あるいは、(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。これらの方法は、引用により本明細書に組み入れられる、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、およびAplinおよびWriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306に記載されている。ALK3ポリペプチド上に存在する1つまたは複数の炭水化物部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのALK3ポリペプチドの曝露が含まれ得る。この処理により、アミノ酸配列を完全なままに残しつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたは全ての糖の切断が生じる。化学的脱グリコシル化はさらに、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52、およびEdgeら(1981)Anal.Biocehm.118:131により記載されている。ALK3ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.138:350に記載されているように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成され得る。哺乳動物、酵母、昆虫、および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列による影響を受ける可能性がある異なるグリコシル化パターンを導入し得るので、ALK3ポリペプチドの配列は、使用する発現系のタイプに応じて適切に調節することができる。一般的には、ヒトにおいて使用するためのALK3タンパク質は、HEK293またはCHO細胞系のような、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞系中で発現させられるが、他の哺乳動物発現細胞系、グリコシル化酵素が操作された酵母細胞系、および昆虫細胞も同様に有用であると予想される。
【0041】
本開示はさらに、ALK3ポリペプチドの変異体、特にコンビナトリアル変異体のセット、ならびに、短縮変異体を作製する方法を意図する。機能的改変体配列を同定するためには、コンビナトリアル変異体のプールが特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニストもしくはアンタゴニストのいずれかとして作用し得るか、または代わりに、全体として新規の活性を保有するALK3ポリペプチド改変体を作製することであり得る。様々なスクリーニングアッセイを以下に提供する。そのようなアッセイを使用して改変体を評価することができる。例えば、ALK3ポリペプチド改変体は、ALK3リガンドに結合する能力、ALK3リガンドのALK3ポリペプチドに対する結合を妨げる能力、またはALK3リガンドによって引き起こされるシグナル伝達を妨害する能力に関してスクリーニングされ得る。
【0042】
ALK3ポリペプチドまたはその改変体の活性は、細胞に基づくアッセイまたはインビボアッセイにおいても試験することができる。例えば、骨生成または骨破壊に関与する遺伝子の発現に対するALK3ポリペプチド改変体の効果をアッセイすることができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えALK3リガンドタンパク質(例えば、BMP2またはBMP4)の存在下で実施され得、細胞は、ALK3ポリペプチドおよび/またはその改変体を産生するよう、そして、状況に応じて、ALK3リガンドを産生するように、トランスフェクトされ得る。同様に、ALK3ポリペプチドはマウスまたはその他の動物に投与され得、密度または体積のような1つまたは複数の骨の特性が評価され得る。骨折の治癒速度も評価することができる。二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)は、動物において骨密度を評価するための、十分に確立されている非侵襲的定量的技術である。ヒトにおいては、中央DEXAシステムを、脊椎および骨盤において骨密度を評価するために使用することができる。これらは、全体の骨密度の最適な予測法である。末梢DEXAシステムは、例えば、手、手首、足首、および足の骨を含む末梢骨において骨密度を評価するために使用することができる。CATスキャンを含む伝統的なX線画像システムは、骨成長および骨折の治癒を評価するために使用することができる。骨の機械的強度もまた評価することができる。
【0043】
天然に存在しているALK3ポリペプチドに比べて選択的な、または一般に高い効力を有するコンビナトリアルに由来する改変体が作製され得る。同様に、変異誘発は、対応する野生型ALK3ポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じる可能性がある。例えば、変更されたタンパク質を、天然のALK3ポリペプチドの破壊または別の方法での不活化を生じるタンパク質分解または他の細胞性のプロセスに対して、より安定にするか、あるいはより不安定にすることができる。そのような改変体、およびそれらをコードする遺伝子は、ALK3ポリペプチドの半減期を調節することによりALK3ポリペプチドのレベルを変更するために利用することができる。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的効果をもたらすことができ、患者体内の組換えALK3ポリペプチドレベルのより厳密な制御を可能にすることができる。Fc融合タンパク質においては、タンパク質の半減期を変更するために、リンカー(存在する場合は)および/またはFc部分において、変異を生じさせることができる。
【0044】
それぞれが潜在的ALK3ポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーにより、コンビナトリアルライブラリーを産生することができる。例えば、潜在的ALK3ポリペプチドのヌクレオチド配列の縮重セットを、個々のポリペプチドとして、または代わりに、より大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用に)発現させることができるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素により連結させることができる。
【0045】
潜在的ホモログのライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することができる多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成装置で行い、次いでこの合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結させることができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当該分野で周知である(例えば、Narang,SA(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら、(1981)Recombinant DNA,Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules,AG Walton編,Amsterdam:Elsevier pp273−289;Itakuraら、(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら、(1984)Science 198:1056;Ikeら、(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照のこと)。他のタンパク質の特定方向への進化に、このような技術が利用されている(例えば、Scottら、(1990)Science 249:386−390;Robertsら、(1992)PNAS USA 89:2429−2433;Devlinら、(1990)Science 249:404−406;Cwirlaら、(1990)PNAS USA 87:6378−6382;ならびに米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照のこと)。
【0046】
あるいは、他の形態の変異誘発法を利用して、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、アラニンスキャニング変異誘発法などを使用して(Rufら、(1994)Biochemistry 33:1565−1572;Wangら、(1994)J.Biol.Chem.269:3095−3099;Balintら、(1993)Gene 137:109−118;Grodbergら、(1993)Eur.J.Biochem.218:597−601;Nagashimaら、(1993)J.Biol.Chem.268:2888−2892;Lowmanら、(1991)Biochemistry 30:10832−10838;およびCunninghamら、(1989)Science 244:1081−1085)、リンカースキャニング変異誘発法により(Gustinら、(1993)Virology 193:653−660;Brownら、(1992)Mol.Cell Biol.12:2644−2652;McKnightら、(1982)Science 232:316);飽和変異誘発法により(Meyersら、(1986)Science 232:613);PCR変異誘発法により(Leungら、(1989)Method Cell Mol Biol 1:11−19);または化学的変異誘発法などを含むランダム変異誘発法により(Millerら、(1992)A Short Course in Bacterial Genetics,CSHL Press,Cold Spring Harbor,NY;およびGreenerら、(1994)Strategies in Mol Biol 7:32−34)、ALK3ポリペプチド改変体を生成し、スクリーニングによりライブラリーから単離することができる。短縮型(生理活性型)のALK3ポリペプチドを同定するためには、リンカースキャニング変異誘発法が、特に組み合わせ設定において魅力的な方法である。
【0047】
点変異および短縮により作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、およびさらには特定の特性を有している遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための多様な技術は、当該分野で公知である。このような技術は、一般的には、ALK3ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発により作製した遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適応させることができる。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広く用いられている技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程、適切な細胞を、得られたベクターのライブラリーで形質転換する工程、および、所望される活性の検出により、検出された産物の遺伝子をコードするベクターを比較的容易に単離できるような条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる工程を含む。好ましいアッセイとしては、BMP結合アッセイおよびBMP媒介性細胞シグナル伝達のアッセイが挙げられる。
【0048】
特定の実施形態においては、本発明のALK3ポリペプチドには、ALK3ポリペプチド中に天然に存在する翻訳後修飾に加えて、さらなる、翻訳後修飾が含まれ得る。そのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が挙げられるが、これらに限定されない。結果として、改変されたALK3ポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸のような、アミノ酸以外の要素を含み得る。そのようなアミノ酸以外の要素がALK3ポリペプチドの機能に対して及ぼす影響は、他のALK3ポリペプチド改変体について本明細書中に記載するように試験することができる。ALK3ポリペプチドが、細胞内で新生型のALK3ポリペプチドの切断によって産生される場合は、翻訳後プロセシングもまた、タンパク質の正確な折りたたみおよび/または機能に重要であり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3、またはHEK293)は、特定の細胞機構およびそのような翻訳後活性のための特徴的な機構を有しており、ALK3ポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0049】
特定の態様においては、ALK3ポリペプチドの機能的改変体または改変形態は、ALK3ポリペプチドの少なくとも一部と、1つまたは複数の融合ドメインとを有している融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。融合ドメインは、所望する特性を付与するように選択することができる。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティー精製を目的とする場合には、アフィニティークロマトグラフィーのための関連したマトリックス(例えば、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルト結合体化樹脂)を使用する。このようなマトリックスの多くは「キット」の形態で入手することができ、例えば、Pharmacia GST精製システム、および(HIS)融合パートナーとともに使用する場合に有用であるQIAexpressTMシステム(Qiagen)がある。別の例として、融合ドメインを、ALK3ポリペプチドの検出が容易になるよう選択することができる。そのような検出ドメインの例としては、様々な蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、特異的抗体を利用することができる通常短いペプチド配列である「エピトープタグ」が挙げられる。特異的モノクローナル抗体を容易に利用することができる周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。いくつかの場合には、融合ドメインは、関連するプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、融合タンパク質から組換えタンパク質を遊離させることを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフィーによる分離によって融合ドメインから単離することができる。特定の好ましい実施形態においては、ALK3ポリペプチドを、インビボでALK3ポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)に融合させる。「安定化」は、これが破壊の減少によるのか、腎臓によるクリアランスの減少によるのか、または他の薬物動態学効果によるのかにかかわらず、血清半減期を延長させるあらゆるものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に対して所望する薬物動態学的特性を付与することが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合によっても所望の特性を付与することができる。選択することができる他のタイプの融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび(所望する場合は、骨成長または筋肉の成長のさらなる刺激のような、さらなる生物学的機能を付与する)機能的ドメインが挙げられる。
【0050】
具体例として、本発明は、Fcドメインに融合させられた、ALK3の可溶性細胞外ドメインを含む融合タンパク質を提供する(例えば、図5の配列番号5)。Fcドメインの例を以下に示す。
【0051】
【化1】

状況に応じて、Fcドメインは、Asp−265、リジン322、およびAsn−434のような残基に、1つまたは複数の変異を有する。特定の場合には、これらの変異(例えば、Asp−265変異)の1つまたは複数を有している変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、Fcγ受容体に結合する能力が低い。他の場合においては、これらの変異の1つまたは複数(例えば、Asn−434変異)を有している変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い。
【0052】
融合タンパク質の様々な要素を、所望する機能性と合致する任意の様式でアレンジすることができることが理解される。例えば、ALK3ポリペプチドを異種ドメインに対してC末端側に配置することができ、またその代わりに、異種ドメインを、ALK3ポリペプチドに対してC末端側に配置することもできる。ALK3ポリペプチドドメインおよび異種ドメインは融合タンパク質内で必ずしも隣接している必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインのC末端もしくはN末端側に、またはそれらのドメインの間に含めることも可能である。
【0053】
特定の実施形態においては、本発明のALK3ポリペプチドは、ALK3ポリペプチドを安定化させることができる1つまたは複数の修飾を含む。例えば、そのような修飾は、ALK3ポリペプチドのインビトロでの半減期を延ばすか、ALK3ポリペプチドの循環半減期を延ばすか、またはALK3ポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。そのような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ALK3ポリペプチドと安定化ドメインとを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ALK3ポリペプチドに対するグリコシル化部位の付加を含む)、および炭水化物部分の修飾(例えば、ALK3ポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。融合タンパク質の場合は、ALK3ポリペプチドを、IgG分子のような安定化ドメイン(例えば、Fcドメイン)に融合させる。本明細書で使用する場合は、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のような融合ドメイン(例えば、Fc)をいうだけではなく、これには、炭水化物部分のような非タンパク質性修飾またはポリエチレングリコールのような非タンパク質性ポリマーも含まれる。
【0054】
特定の実施形態においては、本発明は、他のタンパク質から単離されたか、そうでなければ他のタンパク質を実質的に含まない、単離された形態および/または精製された形態のALK3ポリペプチドを利用できるようにする。ALK3ポリペプチドは、一般的には、組換え核酸からの発現により産生される。
【0055】
(3.ALK3ポリペプチドをコードする核酸)
特定の態様においては、本発明は、(本明細書中に開示する断片、機能的改変体、および融合タンパク質を含む)ALK3ポリペプチド(例えば、可溶性ALK3ポリペプチド)のいずれかをコードする単離された核酸および/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号2は天然に存在しているヒトALK3前駆体ポリペプチドをコードし、一方、配列番号4は、ALK3のプロセッシングされた細胞外ドメインをコードする。本発明の核酸は、一本鎖であっても、また二本鎖であってもよい。そのような核酸は、DNA分子である場合も、また、RNA分子である場合もある。これらの核酸は、例えば、ALK3ポリペプチドを作製するための方法において、または直接的な治療薬として(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)使用することができる。
【0056】
特定の態様においては、ALK3ポリペプチドをコードする本発明の核酸は、配列番号2または配列番号4の改変体である核酸を含むことがさらに理解される。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体のような、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失によって異なる配列を含む。
【0057】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である、単離された核酸配列または組換え核酸配列を提供する。当業者であれば、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37に相補的な核酸配列、ならびに、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37の改変体もまた、本発明の範囲に含まれることを理解する。さらなる実施形態においては、本発明の核酸配列を単離することができ、本発明の核酸は組換え体であり得、および/または、異種ヌクレオチド配列と融合させることができ、また、DNAライブラリー中に存在させることもできる。
【0058】
他の実施形態においては、本発明の核酸はまた、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37に示されるヌクレオチド配列に対して高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37の相補配列、あるいはそれらの断片を含む。上記で議論したように、当業者であれば、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変更できることを容易に理解する。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変更できることを容易に理解する。例えば、約45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行い、続いて、50℃で2.0×SSCで洗浄を行うことができる。例えば、洗浄工程の塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまでから選択することができる。加えて、洗浄工程の温度は、室温、約22℃での低ストリンジェンシー条件から、約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上げることができる。温度と塩の両方を変更することも可能であり、また、その他の変数を変更して温度または塩濃度を一定に保つこともできる。1つの態様において、本発明は、室温で6×SSC、およびその後の室温で2×SSCでの洗浄という低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0059】
遺伝子コードの縮重が原因で配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37に示した核酸とは異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲内である。例えば、多くのアミノ酸は2つ以上のトリプレットにより指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、または同義コドン(例えば、CAUとCACはヒスチジンの同義コドンである)は、タンパク質のアミノ酸配列には影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。しかし、本発明のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型が、哺乳動物細胞間に存在すると考えられる。当業者であれば、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの約3%〜5%まで)におけるこれらのバリエーションが、天然の対立遺伝子のバリエーションに起因して、所与の種の個体間に存在し得ることを認識する。任意の、および全てのそのようなヌクレオチドのバリエーションおよび生じるアミノ酸多型も、本発明の範囲内である。
【0060】
特定の実施形態においては、本発明の組換え核酸を、発現構築物中の1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列に作動可能であるように連結することができる。調節ヌクレオチド配列は、一般的には、発現に使用する宿主細胞に適している。様々な宿主細胞に関して、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節配列が当技術分野で公知である。典型的には、上記1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダー配列またはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびにエンハンサーまたは活性化因子配列が含まれ得るが、これらに限定されない。当該分野で公知である構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが、本発明によって意図される。プロモーターは天然に存在しているプロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれであってもよい。発現構築物はプラスミドのようにエピソーム上において細胞内に存在する場合があり、また、発現構築物が染色体内に挿入される場合もある。好ましい実施形態においては、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は当該分野で周知であり、使用する宿主細胞に応じて変わる。
【0061】
本発明の特定の態様において、本発明の核酸は、少なくとも1つの調節配列に対して作動可能であるように連結させられたALK3ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターとして提供される。調節配列は当該分野で認識されており、ALK3ポリペプチドの発現を指示するように選択される。したがって、用語、調節配列には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントが含まれる。例示的な調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。例えば、作動可能であるように連結させるとDNA配列の発現を制御する多岐にわたる発現制御配列のいずれかを、これらのベクターにおいて使用して、ALK3ポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることができる。そのような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、発現がT7 RNAポリメラーゼにより方向付けられるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、および原核生物細胞もしくは真核生物細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが公知の他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、および/または発現が所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるものとする。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、およびそのベクターによってコードされる、抗生物質マーカーのような任意の他のタンパク質の発現もまた考慮すべきである。
【0062】
本発明の組換え核酸は、クローニングした遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、トリ、昆虫、または哺乳動物)のいずれか、またはその両方での発現に適しているベクター中に連結することによって作製することができる。組換えALK3ポリペプチドの産生のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。適しているベクターとして、例えば、大腸菌のような原核生物細胞中での発現については、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、およびpUC由来プラスミド。
【0063】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増幅を容易にするための原核生物配列と、真核生物細胞中で発現される1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、およびpHyg由来のベクターが、真核細胞のトランスフェクションに適している哺乳動物発現ベクターの例である。これらベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方において複製および薬物耐性選択を容易にするために、pBR322のような細菌プラスミドに由来する配列を用いて修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン・バー・ウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)のようなウイルスの誘導体を、真核細胞中でのタンパク質の一過性発現に使用することができる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、下記の遺伝子治療送達系の説明の中に見ることができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる様々な方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞と真核生物細胞の両方に適している他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第3版,Sambrook,Fritsch and Maniatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)を参照のこと。いくつかの場合には、バキュロウイルス発現系の使用により、組換えポリペプチドを発現させることが望ましいと考えられる。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、およびpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えば、pAcUW1)、およびpBlueBac由来ベクター(例えば、β−galを含有しているpBlueBac III)が挙げられる。
【0064】
好ましい実施形態においては、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)、およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc.)のようなベクターが、CHO細胞中で本ALK3ポリペプチドが産生されるように設計される。明らかであるように、本発明の遺伝子構築物を使用して、例えば、精製を目的として融合タンパク質または改変体タンパク質を含むタンパク質が産生されるように、培養において増殖させた細胞の中で本発明のALK3ポリペプチドを発現させることができる。
【0065】
本開示はまた、本発明のALK3ポリペプチドの1つまたは複数のコード配列(例えば、配列番号2、4、12、13、15、16、19、21、24、27、32、または37)を含む組換え遺伝子をトランスフェクトした宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞である場合も、真核生物細胞である場合もある。例えば、本発明のALK3ポリペプチドは、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用する)、酵母、または哺乳動物細胞の中で発現させることができる。他の適している宿主細胞は当業者に公知である。
【0066】
したがって、本発明は、さらに、本発明のALK3ポリペプチドを産生する方法に関する。例えば、ALK3ポリペプチドをコードする発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞を、ALK3ポリペプチドの発現が起こることを可能にする適切な条件の下で培養することができる。ALK3ポリペプチドが分泌され得、ALK3ポリペプチドを、ALK3ポリペプチドを含有している細胞と培地の混合物から単離することができる。あるいは、ALK3ポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持される場合があり、細胞が採集され、溶解させられ、タンパク質が単離され得る。細胞培養物には、宿主細胞、培地、およびその他の副産物が含まれる。細胞培養に適している培地は当該分野で周知である。本発明のALK3ポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ALK3ポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いたイムノアフィニティー精製、およびALK3ポリペプチドと融合させられたドメインに結合する物質を用いたアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムをALK3−Fc融合体を精製するために使用することができる)を含む、タンパク質を精製するための当該分野で公知の技術を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはそれらの両方から単離することができる。好ましい実施形態においては、ALK3ポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含有している融合タンパク質である。好ましい実施形態においては、精製は、例えば、以下のうちの三つ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィー工程により達成される:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィー。精製は、ウイルスの濾過および緩衝液交換により完了し得る。本明細書中で明らかにするように、ALK3−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定されるような>98%の純度、およびSDS PAGEにより決定されるような>95%の純度にまで精製した。このレベルの純度は、マウスにおける骨に対する望ましい効果、ならびにマウス、ラット、およびヒト以外の霊長類において許容され得る安全性プロフィールを達成するのに十分であった。
【0067】
別の実施形態においては、組換えALK3ポリペプチドの所望する部分のN末端の、ポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子によって、Ni2+金属樹脂を使用したアフィニティークロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製が可能となり得る。その後、エンテロキナーゼでの処理により精製リーダー配列を除去し、精製されたALK3ポリペプチドを提供することができる(例えば、Hochuliら、(1987)J.Chromatography 411:177;およびJanknechtら、PNAS USA 88:8972を参照のこと)。
【0068】
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。原則的には、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結は、連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端を得るための制限酵素消化、必要に応じた付着末端のフィルイン(filling-in)、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素による連結を使用する、従来の技法に従って行われる。別の実施形態においては、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来技術により合成することができる。あるいは、2つの連続する遺伝子断片の間に相補的な突出を生じるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行うことができ、その後アニーリングさせて、キメラ遺伝子配列を作製することもできる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。
【0069】
(4.代替的なBMPおよびALK3のアンタゴニスト)
本明細書中に示すデータは、BMP−ALK3シグナル伝達のアンタゴニストを骨成長および骨石灰化を促進するために使用できることを明らかにする。可溶性ALK3ポリペプチド、特に、ALK3−Fcが好ましいアンタゴニストであり、そのようなアンタゴニストはBMP拮抗作用以外の機構を通じて骨に影響を及ぼす可能性があるが(例えば、BMP阻害は、ある薬剤の、TGF−βスーパーファミリーの他のメンバーをおそらく含むある範囲の分子の活性を阻害する傾向の指標となり得、そのような集合的な阻害は骨に対する望ましい効果に通じる可能性がある)、抗BMP(例えば、BMP2またはBMP4)抗体、抗ALK3抗体、ALK3、BMP2、もしくはBMP4の産生を阻害するアンチセンス、RNAi、またはリボザイム核酸、ならびに、BMPまたはALK3の他のインヒビター、特に、BMP−ALK3結合を崩壊させるものを含む、他のタイプのBMP−ALK3アンタゴニストも有用であると予想される。
【0070】
ALK3ポリペプチド(例えば、可溶性ALK3ポリペプチド)と特異的反応性がある抗体、ALK3ポリペプチドと競争的にリガンドに結合するか、そうでなければALK3により媒介されるシグナル伝達を阻害する抗体が、ALK3ポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用され得る。同様に、BMPポリペプチドと特異的反応性がある抗体、ALK3結合を崩壊させる抗体を、アンタゴニストとして使用できる場合がある。
【0071】
ALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチド由来の免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を標準的なプロトコールにより作製することができる(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual編、Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press:1988)を参照のこと)。哺乳動物(例えば、マウス、ハムスター、またはウサギ)を、ALK3ポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発することができる抗原性断片、または融合タンパク質で免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与する技術としては、キャリアへの結合体化または当該分野で周知の他の技法が挙げられる。ALK3またはBMPポリペプチドの免疫原性部分を、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体力価を検出することによりモニターすることができる。抗原として免疫原を用いて、標準的なELISAまたは他の免疫アッセイを使用して、抗体レベルを評価することができる。
【0072】
ALK3ポリペプチドの抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、必要に応じて、血清からポリクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体を得るためには、免疫化した動物から抗体を産生する細胞(リンパ球)を採取し、標準的な体細胞融合手順により骨髄腫細胞のような不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を生じさせことができる。このような技術は当該分野で周知であり、これには、例えばハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein,(1975)Nature,256:495−497により最初に開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、(1983)Immunology Today,4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を得るためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.pp.77−96)が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、ALK3ポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養物からモノクローナル抗体を単離することができる。
【0073】
用語「抗体」は、本明細書中で使用する場合は、本発明のポリペプチドと特異的に反応するその断片もまた含むことを意図する。抗体は従来技術を使用して断片化することができ、それらの断片を、抗体全体について上記に記載した様式と同じ様式で有用性に関してスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)断片は、抗体をペプシンで処理することにより作製することができる。得られたF(ab)断片をジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab断片を得ることができる。本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されたALK3またはBMPポリペプチドに対しての親和性を有している、二重特異性、一本鎖、キメラ、ヒト化、および完全ヒト分子を含むようにさらに意図される。抗体は、これに結合させられた、検出することができる標識(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る)をさらに含む場合がある。
【0074】
特定の実施形態においては、抗体は組換え抗体である。この用語には、CDRグラフト抗体またはキメラ抗体、ライブラリーから選択された抗体ドメインから組み立てられたヒトまたは他の抗体、単鎖抗体、および単一ドメイン抗体(例えば、ヒトVタンパク質またはラクダVHHタンパク質)を含む、分子生物学の技術により一部が作製された任意の抗体が含まれる。特定の実施形態においては、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、特定の実施形態においては、本発明は、新規の抗体を作製するために利用できる方法をもたらす。例えば、ALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するための方法は、検出可能な免疫応答を刺激するために有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与する工程、このマウスから抗体を産生する細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を得、抗体を産生するハイブリドーマを得るために抗体を産生する細胞を骨髄腫細胞と融合させる工程、および抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために、抗体を産生するハイブリドーマを試験する工程を含み得る。得られれば、ハイブリドーマを、細胞培養において、状況に応じて、ハイブリドーマに由来する細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件で、増殖させることができる。モノクローナル抗体は、細胞培養物から精製することができる。
【0075】
「〜と特異的に反応する」は、抗体に関して使用する場合は、当該分野で一般的に理解されているように、抗体が、目的の抗原(例えば、ALK3ポリペプチド)と目的のものではない他の抗原との間で十分に選択的であること、抗体が、少なくとも、特定のタイプの生物学的試料中の目的の抗原の存在の検出に有用であることを意味するように意図される。治療用途のような、この抗体を利用する特定の方法においては、より高度な結合特異性が所望される場合がある。モノクローナル抗体は、一般には、(ポリクローナル抗体と比較して)所望する抗原と交差反応性ポリペプチドとを効果的に識別するより強い傾向を有する。抗体:抗原の相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗体の抗原に対する親和性である。所望する特異性は様々な親和性の範囲で達成され得るが、一般には、好ましい抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9、またはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。BMPとALK3との間での極めて緊密な結合を考えると、抗BMP抗体または抗ALK3抗体の中和は、一般的に、10−9またはそれ未満の解離定数を有すると予想される。
【0076】
加えて、望ましい抗体を同定するために抗体をスクリーニングするために使用する技術は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を溶液中の抗原に結合させるために使用する場合は、溶液結合を試験することが望ましい場合がある。抗体と抗原との間での相互作用を試験して、特定の望ましい抗体を同定するためには、様々な技術を利用することができる。そのような技術としては、ELISA法、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、BiacoreTM結合アッセイ、Biacore AB,Uppsala,Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.,Gaithersburg,Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット法、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学法が挙げられる。
【0077】
BMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストである核酸化合物のカテゴリーの例としては、アンチセンス核酸、RNAi構築物、および触媒性核酸構築物が挙げられる。核酸化合物は、一本鎖である場合も、また、二本鎖である場合もある。二本鎖の化合物は、鎖の一方または他方が一本鎖である突出あるいは非相補性の領域を含む場合がある。一本鎖の化合物は、自己相補性領域を含む場合がある。これは、その化合物が、二重ヘリックス構造の領域を持つ、いわゆる「ヘアピン」または「ステムループ」構造を形成することを意味する。核酸化合物は、全長のALK3核酸配列またはBMP核酸配列の1000ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、250ヌクレオチド以下、100ヌクレオチド以下、または50、35、30、25、22、20、もしくは18ヌクレオチド以下からなる領域に相補的であるヌクレオチド配列を含み得る。上記相補性領域は、好ましくは、少なくとも8ヌクレオチドであり、状況に応じて、少なくとも10または少なくとも15ヌクレオチド、そして状況に応じて、15ヌクレオチド〜25ヌクレオチドである。相補性領域は、コード配列部分のような、標的転写物のイントロン、コード配列、または非コード配列の内部に存在し得る。一般的には、核酸化合物は、約8ヌクレオチドまたは塩基対〜約500ヌクレオチドまたは塩基対の長さを有する。状況に応じて、長さは約14ヌクレオチド〜約50ヌクレオチドである。核酸は、DNA(特に、アンチセンスとして使用するため)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドであり得る。いずれの一本鎖も、DNAおよびRNAの混合物を含む場合があり、DNAまたはRNAのいずれとしても容易には分類できない修飾された形態を含む場合がある。同様に、二本鎖の化合物は、DNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであり得、いずれの一本鎖も、DNAおよびRNAの混合物を含む場合があり、DNAまたはRNAのいずれとしても容易には分類できない修飾された形態を含む場合がある。核酸化合物は、骨格(ヌクレオチド間結合を含む天然の核酸中の糖−リン酸部分)または塩基部分(天然の核酸のプリン部分もしくはピリミジン部分)への1つまたは複数の修飾を含む、多様な修飾のうちのいずれかを含む場合がある。アンチセンス核酸化合物は、約15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドの長さを有することが好ましい。このアンチセンス核酸化合物は、多くの場合、血清中での安定性、細胞中での安定性、または経口送達される化合物の場合には胃、吸入される化合物については肺のような、化合物が送達される可能性が高い場所での安定性のような特徴を改善するために1つまたは複数の修飾を含む。RNAi構築物の場合、標的転写物に相補的である鎖は、一般的には、RNAまたはその修飾物である。他方の鎖はRNA、DNA、または任意の他のバリエーションであり得る。二本鎖または一本鎖の「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、好ましくは、18ヌクレオチド〜40ヌクレオチド長の長さを有する。状況に応じて、それがダイサー基質となる限りは、約21ヌクレオチド〜23ヌクレオチド長の長さを有する。触媒性または酵素性の核酸は、リボザイムまたはDNA酵素であり得、これには修飾された形態も含まれる場合がある。核酸化合物は、生理学的条件下で、そしてナンセンスまたはセンス制御がほとんどまたは全く効果がない濃度で細胞と接触させると、約50%、75%、90%、またはそれ以上、標的の発現を阻害し得る。核酸化合物の効果を試験するための好ましい濃度は、1、5、および10マイクロモルである。核酸化合物は、例えば、骨成長および石灰化に対する効果についても試験することができる。
【0078】
(5.スクリーニングアッセイ)
特定の態様においては、本発明は、BMP−ALK3シグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(物質)を同定するためのALK3ポリペプチド(例えば、可溶性ALK3ポリペプチド)およびBMPポリペプチドの使用に関する。このスクリーニングを通じて同定した化合物を、インビトロで骨成長または石灰化を調節するそれらの能力を評価するために、試験することができる。状況に応じて、これらの化合物は、インビボで組織増殖を調節するそれらの能力を評価するために、動物モデルにおいてさらに試験することができる。
【0079】
BMPおよびALK3ポリペプチドを標的化することにより組織増殖を調節するための治療薬のスクリーニングのための多くのアプローチが存在する。特定の実施形態においては、化合物のハイスループットスクリーニングを行い、骨に及ぼすBMP媒介性またはALK3媒介性効果を混乱させる物質を同定することができる。特定の実施形態においては、BMPに対するALK3ポリペプチドの結合を特異的に阻害するかまたは減少させる化合物をスクリーニングし、同定するためのアッセイを行う。あるいは、BMPに対するALK3ポリペプチドの結合を増強する化合物を同定するためにアッセイを用いることができる。さらなる実施形態においては、BMPポリペプチドまたはALK3ポリペプチドと相互作用する能力により化合物を同定することができる。
【0080】
様々なアッセイ形式が十分であり、本開示に照らして、本明細書中では明確には記載しないものであっても当業者は理解するものとする。本明細書に記載するように、本発明の試験化合物(物質)は、任意のコンビナトリアル化学法によって作製することができる。あるいは、本発明の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在している生体分子である場合がある。組織増殖の調節因子として作用するそれらの能力について試験しようとする化合物(物質)は、例えば、細菌、酵母、植物、または他の生物によって産生され得るか(例えば、天然の生成物)、化学的に産生され得るか(例えば、ペプチド模倣体を含む低分子)、または組換えによって産生され得る。本発明が意図する試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、糖類、ホルモン、および核酸分子が挙げられる。特定の実施形態においては、試験物質は、約2,000ダルトン未満の分子量を有している有機低分子である。
【0081】
本発明の試験化合物は、単一の分離した実体として提供することができ、また、コンビナトリアル化学によって作製されるような、より複雑なライブラリーの形態で提供することもできる。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル、および他のクラスの有機化合物を含み得る。試験化合物の試験システムへの提示は、単離された形態で、または特に最初のスクリーニング工程では化合物の混合物としてのいずれかであり得る。状況に応じて、化合物は他の化合物で状況に応じて誘導体化することができ、化合物の単離を容易にする誘導体基を有し得る。誘導体基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化架橋剤、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムでは、所定の時間内に調査する化合物の数を最大にするために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製したタンパク質または半精製したタンパク質を用いて導くことができるような、無細胞系で行うアッセイは、試験化合物により媒介される分子標的中の変化の迅速な生成および比較的容易な検出が可能になるよう作製できるという点で、「初期」スクリーニングとして好ましい場合が多い。さらに、試験化合物の細胞毒性または生物学的利用可能性の影響は、一般的には、インビトロ系では無視することができ、その代わりに、アッセイは、ALK3ポリペプチドとBMPとの間の結合親和性の変化として現われ得る、分子標的に対する薬物の効果に主に焦点が当てられている。
【0083】
単なる例であるが、本発明の例示的なスクリーニングアッセイでは、目的の化合物を、通常BMPに結合することができる単離され精製されたALK3ポリペプチドと接触させる。次いで、上記化合物とALK3ポリペプチドの混合物に対して、ALK3リガンドを含む組成物を添加する。ALK3/BMP複合体の検出および定量化により、ALK3ポリペプチドとBMPとの間での複合体形成を阻害する(または増強する)ことに関する化合物の有効性を決定する手段が提供される。化合物の有効性は、様々な濃度の試験化合物を使用して得られたデータから用量反応曲線を作製することにより評価することができる。さらに、対照アッセイを同様に行って、比較のための基準を提供することもできる。例えば、対照アッセイでは、単離され、精製されたBMPを、ALK3ポリペプチドを含む組成物に添加し、ALK3/BMP複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量化する。一般に、反応物を混合することができる順序は変更でき、また同時に混合できることが理解される。さらに、精製されたタンパク質の代わりに細胞抽出物および溶解物を使用して、適切な無細胞アッセイ系を提供することも可能である。
【0084】
ALK3ポリペプチドとBMPとの間での複合体形成は、様々な技術により検出することができる。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、放射標識された(例えば、32P、35S、14C、またはH)、蛍光標識された(例えば、FITC)、または酵素標識されたALK3ポリペプチドまたはBMPのような、検出できるように標識されたタンパク質を使用して、免疫アッセイにより、またはクロマトグラフィー検出により定量化することができる。
【0085】
特定の実施形態においては、本発明は、ALK3ポリペプチドとその結合タンパク質との間での相互作用の程度を直接または間接的のいずれかで測定する際の、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの使用を意図する。さらに、他の検出様式(例えば、光導波路(PCT出願国際公開公報第96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面荷電センサー、および表面力センサーに基づく検出様式)も、本発明の多くの実施形態と適合する。
【0086】
さらに、本発明は、ALK3ポリペプチドとその結合タンパク質との間での相互作用を破壊するかまたは増強する物質を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても知られている、相互作用捕捉アッセイの使用を意図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993)Cell 72:223−232;Maduraら(1993)J Biol Chem 268:12046−12054;Bartelら(1993)Biotechniques 14:920−924;およびIwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693−1696を参照のこと。特定の実施形態においては、本発明は、ALK3ポリペプチドとその結合タンパク質との間での相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を意図する。例えば、Vidal and Legrain,(1999)Nucleic Acids Res 27:919−29;Vidal and Legrain,(1999)Trends Biotechnol 17:374−81;ならびに、米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと。
【0087】
特定の実施形態においては、本発明の化合物は、本発明のALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチドと相互作用するそれらの能力により同定される。化合物とALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチドとの間での相互作用は、共有結合である場合も、また、非共有結合である場合もある。例えば、そのような相互作用は、インビトロでの生化学的方法(光架橋、放射標識リガンドの結合、およびアフィニティークロマトグラフィーを含む)を使用して、タンパク質レベルで同定することができる(Jakoby WBら、1974,Methods in Enzymology 46:1)。特定の場合には、化合物は、BMPポリペプチドまたはALK3ポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、1つの機構に基づくアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これには、固相または流体相結合事象が含まれ得る。あるいは、BMPポリペプチドまたはALK3ポリペプチドをコードする遺伝子をレポーターシステム(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)と共に細胞にトランスフェクトし、好ましくはハイスループットスクリーニングによりライブラリーに対して、またはライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングすることができる。他の機構に基づく結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)を使用する場合もある。結合アッセイは、ウェル、ビーズ、もしくはチップに固定させたか、または固定化抗体に捕獲されたか、またはキャピラリー電気泳動によって分離した標的を用いて行うことができる。結合した化合物は、通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を使用して検出することができる。
【0088】
特定の態様においては、本発明は、骨形成を調節する(刺激するかまたは阻害する)方法および物質、および骨量を増大させるための方法および物質を提供する。したがって、同定された任意の化合物を、インビトロまたはインビボで、細胞あるいは組織全体の中で試験して、骨成長または石灰化を調節するそれらの能力を確認することができる。当該分野で公知の様々な方法を、この目的のために利用することができる。
【0089】
例えば、ALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチド、あるいは試験化合物が骨または軟骨の成長に及ぼす影響は、細胞に基づくアッセイでMsx2の誘導、または骨芽前駆細胞の骨芽細胞への分化を測定することによって決定することができる(例えば、Daluiskiら、Nat.Genet.2001,27(1):84−8;Hinoら、Front Biosci.2004,9:1520−9を参照のこと)。細胞に基づくアッセイの別の例は、間葉系前駆細胞および骨芽細胞中で、本発明のALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチドと試験化合物の骨形成活性を分析する工程を含む。例えば、BMPポリペプチドまたはALK3ポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築して、多能性間葉系前駆細胞C3H10T1/2細胞、前骨芽細胞C2C12細胞、および骨芽細胞TE−85細胞に感染させることができる。次いで、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、およびマトリックス石灰化の誘導を測定することにより、骨形成活性を決定する(例えば、Chengら、J bone Joint Surg Am.2003,85−A(8):1544−52を参照のこと)。
【0090】
本発明は、骨または軟骨の成長を測定するためのインビボアッセイも意図する。例えば、Namkung−Matthaiら、Bone,28:80−86(2001)は、骨折後の初期の骨修復を研究する、ラットの骨粗鬆症モデルを開示している。Kuboら、Steroid Biochemistry & Molecular Biology,68:197−202(1999)も、骨折後の後期の骨修復を研究するラットの骨粗鬆症モデルを開示している。Anderssonら、J.Endocrinol.170:529−537は、マウスを卵巣切除し、それによりマウスは、実質的な骨ミネラル含量および骨ミネラル密度の喪失を生じ、骨梁骨が骨ミネラル密度のおよそ50%を失う、マウス骨粗鬆症モデルを記載している。骨密度は、副甲状腺ホルモンのような因子の投与により卵巣切除したマウスにおいて増大させることができる。特定の態様において、本発明は、当該分野で公知の骨折治癒アッセイを利用する。これらのアッセイには、粉砕法(fracture technique)、組織学的分析、および生体力学的分析が含まれ、例えば、米国特許第6,521,750号(これは、骨折を引き起こすため、そして骨折の程度および修復過程を測定するためのその実験プロトコールの開示のために、その全体が引用により組み入れられる)に記載されている。
【0091】
(6.例示的な治療的使用)
特定の実施形態においては、本発明のBMP−ALK3アンタゴニスト(例えば、ALK3ポリペプチド)は、例えば、損傷(breakage)によるか、減少によるか、または脱石灰化によるかを問わず、骨の損傷と関係がある疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量のBMP−ALK3アンタゴニスト、特に、ALK3ポリペプチドを個体に投与することにより、処置または防止の必要がある個体において骨の損傷を処置または防止する方法を提供する。骨吸収と骨形成に対する二重効果の可能性を考えると、そのような化合物は、現在は同化剤(例えば、副甲状腺ホルモンおよびその誘導体)または抗吸収剤(例えば、ビスホスホネート)で処置している広範な疾患に有用である可能性がある。特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量のBMP−ALK3アンタゴニスト、特に、ALK3ポリペプチドを個体に投与することにより、骨成長または石灰化の必要がある個体において骨成長または石灰化を促進する方法を提供する。これらの方法は、状況に応じて、動物、より好ましくはヒトの治療的処置および予防的処置を目的とする。特定の実施形態においては、本開示は、低い骨密度または低下した骨強度と関係がある障害の処置のためのBMP−ALK3アンタゴニスト(特に、可溶性ALK3ポリペプチド、およびBMPまたはALK3を標的とする中和抗体)の使用を提供する。
【0092】
本明細書中で使用する場合は、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的な試料において、未処置の対照試料と比較して処置した試料において障害もしくは状態の発生を減少させるか、または未処置の対照試料に比べて障害もしくは状態の一つもしくは複数の症状の開始を遅らせるか、またはそれらの重篤度を低下させる化合物をいう。用語「処置する」は、本明細書において使用する場合は、指定された状態の予防、または確立された状態の寛解もしくは排除を含む。いずれの場合にも、予防または処置は、医師により提供される診断、および治療薬の投与についての意図する結果において見定めることができる。
【0093】
本開示は、骨および/もしくは軟骨の形成を誘導する、骨の減少を防ぐ、骨石灰化を増大させる、または骨の脱石灰化を防ぐ方法を提供する。例えば、本発明のBMP−ALK3アンタゴニストは、ヒトおよび他の動物において骨の減少の障害(例えば、骨粗鬆症)を処置する、ならびに骨折および軟骨欠損、または他の骨欠損、損傷、および障害を治癒することにおいて用途を有する。ALK3ポリペプチドまたはBMPポリペプチドは、骨粗鬆症の発症に対する防御対策として、無症状性低骨密度と診断される患者において有用であり得る。
【0094】
1つの特定の実施形態においては、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物での骨折および軟骨欠損の治癒において医学的有用性を見出すことができる。本発明の方法および組成物はまた、閉鎖骨折および開放骨折を減らすことにおいて、ならびにまた、人工関節の定着の改善においても、予防的用途を有する可能性がある。骨形成剤により誘導される新規の骨形成は、先天性の、外傷によって誘導される、または腫瘍切除によって誘発される頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、また美容整形手術にも有用である。特定の場合には、本発明のBMP−ALK3アンタゴニストは、骨形成細胞を誘引する環境を提供する場合があり、骨形成細胞の増殖を刺激する場合があり、また、骨形成細胞の前駆細胞の分化を誘導する場合もある。本発明のBMP−ALK3アンタゴニストはまた、骨粗鬆症の処置に有用である場合もある。
【0095】
Rosenら(編)Primer on the Metabolic Bone Diseases and Disorders of Mineral Metabolism,第7版、American Society for Bone and Mineral Research,Washington D.C.(引用により本明細書中に組み入れられる)は、ALK3−BMPアンタゴニストでの処置の対象であり得る骨の障害の詳細な議論を提供する。一部のリストを本明細書中に提供する。本発明の方法および組成物は、骨粗鬆症(二次性骨粗鬆症を含む)、副甲状腺機能亢進症、慢性腎疾患骨ミネラル障害、性ホルモン遮断(sex hormone deprivation)もしくは性ホルモン除去(sex hormone ablation)(例えば、アンドロゲンおよび/またはエストロゲン)、グルココルチコイド処置、リウマチ性関節炎、重度の熱傷、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、低カルシウム血症、低リン酸血症、骨軟化症(腫瘍誘導性の骨軟化症を含む)、高リン酸血症、ビタミンD欠乏症、副甲状腺機能亢進症(家族性副甲状腺機能亢進症を含む)および偽性副甲状腺機能低下症、腫瘍の骨への転移、腫瘍もしくは化学療法の結果としての骨の減少、骨および骨髄の腫瘍(例えば、多発性骨髄腫)、虚血性骨障害、歯周病および口の骨の減少、クッシング病、パジェット病、甲状腺中毒症、慢性的な下痢状態もしくは吸収障害、尿細管性アシドーシス、または神経性食欲不振症のような、骨の減少を特徴とするか、または骨の減少を引き起こす状態に適用することができる。本発明の方法および組成物は、癒着不能な骨折、別の理由で治癒が遅い骨折、胎児および新生児骨異形成症(例えば、低カルシウム血症、高カルシウム血症、カルシウム受容体欠損、およびビタミンD欠乏症)、骨壊死(顎の骨壊死を含む)、および骨形成不全症を含む、骨の形成または治癒の不全を特徴とする状態にも適用することができる。さらに、同化作用による効果により、そのようなアンタゴニストは、骨の損傷または浸食と関係がある骨の痛みを小さくする。抗吸収効果の結果として、そのようなアンタゴニストは、異常な骨の形成(例えば、骨芽細胞性の腫瘍転移(例えば、原発性の前立腺がんまたは乳がんと関係がある)、造骨性骨肉腫、大理石骨病、進行性骨幹部異形成症、骨内膜骨増殖症、骨斑症、およびメロレオストーシスの障害を処置するために有用であり得る。処置できる他の障害としては、線維性異形成および軟骨形成不全症が挙げられる。
【0096】
上記議論に加えて、以下のプロフィールのいずれかを有している人が、ALK3アンタゴニストでの処置の候補であり得る:エストロゲンまたは他のホルモン補充治療を受けていない閉経後の女性;腰部骨折または喫煙の個人歴または母系歴を持つ人;高身長(5フィート7インチ超)であるかまたは痩せ形(125ポンド未満)である閉経後の女性;骨の減少と関係がある臨床状態を持つ男性;PrednisoneTMのようなコルチコステロイド、DilantinTMおよび特定のバルビツール酸のような様々な抗発作薬物治療、または高用量の甲状腺補充薬を含む、骨の減少を引き起こすことが知られている薬物治療を使用している人;1型糖尿病、肝疾患、腎疾患、骨粗鬆症の家族歴を有している人;高い骨代謝回転(例えば、尿試料中の過剰のコラーゲン)を有している人;甲状腺機能亢進症のような甲状腺の状態を持つ人;ごく軽度の外傷の後に骨折を経験した人;椎骨骨折のX線による証拠または骨粗鬆症の他の兆候を有したことがある人。
【0097】
骨粗鬆症(一般的に言うと、低い骨密度または骨強度の状態を意味する)は、様々な要因により引き起こされ得るか、または様々な要因と関係があり得る。女性であること、特に、閉経後の女性であること、低体重を有していること、および座位の多い生活様式を送ることは、全て、骨粗鬆症(骨折のリスクに通じる骨ミネラル密度の低下)のリスクファクターである。
【0098】
骨粗鬆症は、別の障害と関係がある状態として、または特定の薬物の使用によっても起こり得る。薬物または別の医学的状態により生じる骨粗鬆症は、二次性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られている状態においては、身体が産生した過剰量のコルチゾールが、骨粗鬆症および骨折を生じる。二次性骨粗鬆症と関係がある最も一般的な薬物は、副腎により天然に産生されるホルモンであるコルチゾールと同様に作用する薬物のクラスであるコルチコステロイドである。(甲状腺により産生される)適度なレベルの甲状腺ホルモンが骨格の発達に必要であるが、過剰の甲状腺ホルモンは骨量を徐々に減少させる可能性がある。アルミニウムを含有している制酸剤は、腎臓に問題を持つ人、特に、透析を受けている人が高用量で摂取すると、骨の減少に通じることがある。二次性骨粗鬆症を引き起こす可能性がある他の薬物としては、発作を防ぐために使用されるフェニトイン(Dilantin)およびバルビツール酸;関節炎のいくつかの形態、がん、および免疫障害のための薬物であるメトトレキセート(Rheumatrex、Immunex、Folex PFS);いくつかの自己免疫疾患を処置するため、および臓器移植患者において免疫系を抑制するために使用される薬物であるシクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺がんおよび子宮内膜症を処置するために使用される黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(Lupron,Zoladex);抗凝血薬であるヘパリン(Calciparine、Liquaemin);ならびに高コレステロールを処置するために使用されるコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が挙げられる。がん治療により生じる骨の減少は、広く認識されており、がん治療による骨の減少(cancer therapy induced bone loss)(CTIBL)と呼ばれている。骨転移は、BMP−ALK3アンタゴニストでの処置により修正され得る骨内の空洞を生じる可能性がある。
【0099】
状況に応じて、本明細書中に開示するBMP−ALK3アンタゴニスト、特に、可溶性ALK3を、がん患者において使用することができる。特定の腫瘍(例えば、前立腺、乳房、多発性骨髄腫、または副甲状腺機能亢進症を引き起こす任意の腫瘍)を有している患者は、腫瘍による骨の減少、ならびに、骨転移および治療剤による骨の減少について高いリスクを有する。そのような患者は、骨の減少または骨転移の証拠がない場合でも、BMP−ALK3アンタゴニストで処置される場合がある。また、患者が、骨の減少または骨転移の証拠についてモニタリングされ、指標がリスクの増大を示唆した場合には、BMP−ALK3アンタゴニストで処置される場合もある。一般的には、DEXAスキャンが骨密度の変化を評価するために利用され、骨リモデリングの指標が骨転移の可能性を評価するために使用され得る。血清マーカーがモニタリングされ得る。骨特異アルカリホスファターゼ(BSAP)は、骨芽細胞中に存在する酵素である。BSAPの血中レベルは、骨転移および骨リモデリングの増加をもたらす他の状態がある患者において増大する。オステオカルシンおよびプロコラーゲンのペプチドも骨形成および骨転移と関係がある。BSAPの増加は、前立腺がんにより生じた骨転移を有する患者において検出されており、比較的程度は低いが、乳がんからの骨転移においても検出されている。骨形態形成タンパク質7(BMP−7)レベルは、骨に転移した前立腺がんにおいて高いが、膀胱がん、皮膚がん、肝臓がん、または肺がんが原因である骨転移においては高くない。I型カルボキシ末端テロペプチド(ICTP)は、骨の吸収の間に形成されるコラーゲン中で見られる架橋である。骨は絶えず分解され再形成されるので、ICTPは全身で見られるであろう。しかし、骨転移の部位では、そのレベルは正常な骨の領域よりも有意に高いであろう。ICTPは、前立腺がん、肺がん、および乳がんが原因である骨転移において高レベルで見られる。別のコラーゲン架橋、I型N末端テロペプチド(NTx)は、骨代謝回転の間にICTPと共に産生される。NTxの量は、肺がん、前立腺がん、および乳がんを含む多くの様々なタイプのがんにより生じた骨転移において増加する。また、NTxのレベルは骨転移の進行に伴い増加する。したがって、このマーカーは、転移を検出するためにも、疾患の程度を測定するためにも使用することができる。吸収の他のマーカーとしては、ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンが挙げられる。吸収マーカーまたは骨転移マーカーの増加はいずれも、患者におけるBMP−ALK3アンタゴニスト治療の必要性を示す。
【0100】
別の実施形態においては、BMP−ALK3アンタゴニストを、慢性腎疾患骨ミネラル障害(CKD−MBD)、相互に関係がある骨格の広範な症候群、心臓血管、および腎疾患により生じる無機質代謝障害を持つ患者において使用することができる。CKD−MBDは、腎性骨形成異常症(ROD)と呼ばれることが多い様々な骨格の病理を含み、これは、BMP−ALK3アンタゴニストでの処置についての好ましい実施形態である。様々な病原因子の相対的寄与に依存して、RODが、骨リモデリングの多様な病原性のパターンとして現われる(Hruskaら、2008,Chronic kidney disease mineral bone disorder(CKD−MBD);Rosenら(編)Primer on the Metabolic Bone Diseases and Disorders of Mineral Metabolism,第7版、American Society for Bone and Mineral Research,Washington D.C,pp 343−349)。この範囲の一方の末端には、活発なリモデリング部位の数が少ないこと、大幅に抑制された骨の形成、および低い骨吸収を特徴とする尿毒症性骨形成異常および低い骨代謝回転を有するRODがある。他方の極には、副甲状腺機能亢進症、高い骨代謝回転、および線維性骨炎を有するRODがある。BMP−ALK3アンタゴニストが同化作用による効果と抗吸収性の効果の両方を発揮することを考えると、これらの物質は、RODの病理範囲にわたる患者に有用であり得る。
【0101】
BMP−ALK3アンタゴニストは、他の薬学的薬剤と組み合わせて投与され得る。組み合わせた投与は、単一の共処方物(co-formulation)の投与により行われる場合も、同時投与により行われる場合も、また、別々の時点での投与により行われる場合もある。BMP−ALK3アンタゴニストは、他の骨活性剤と共に投与される場合に、特に有利である場合がある。患者は、組み合わせて、BMP−ALK3アンタゴニストを受容し、カルシウムサプリメント、ビタミンD、適切な運動、および/または、いくつかの場合には、他の薬物を摂取することから利益が得られる場合がある。他の薬物の例としては、ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、副甲状腺ホルモン、ならびにラロキシフェンが挙げられる。ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、ならびにラロキシフェンは、骨リモデリングサイクルに影響を及ぼし、抗吸収薬として分類される。骨リモデリングは、骨吸収と骨形成の2つの異なる段階からなる。抗吸収薬は、骨リモデリングサイクルの骨吸収部分を遅らせるか、または中止するが、このサイクルの骨成形部分を遅らせることはない。結果として、新たな形成が骨吸収より大きな速度で継続し、骨密度が徐々に高くなり得る。副甲状腺ホルモンの一つの形態であるテリパラチドは、骨リモデリングサイクルにおける骨形成の速度を増加させる。アレンドロネートは、閉経後の骨粗鬆症の予防(1日5mgまたは週1回35mg)および処置(1日10mgまたは週1回70mg)の両方について承認されている。アレンドロネートは、骨の減少を少なくし、骨密度を増大させ、脊椎、手首、および腰部の骨折のリスクを低下させる。アレンドロネートは、グルココルチコイド(即ち、プレドニゾンおよびコルチゾン)の長期使用の結果としての男性および女性におけるグルココルチコイド誘導性の骨粗鬆症の処置について、そして男性における骨粗鬆症の処置についても承認されている。アレンドロネート+ビタミンDは、閉経後の女性における骨粗鬆症の処置について(週1回70mg+ビタミンD)、そして骨粗鬆症を有している男性において骨量を改善するための処置について承認されている。イバンドロネートは、閉経後の骨粗鬆症の予防および処置について承認されている。月1回の錠剤(150mg)として摂取されるイバンドロネートは、毎月同じ日に摂取されるべきである。イバンドロネートは、骨の減少を少なくし、骨密度を増大させ、脊椎骨折のリスクを低下させる。リセドロネートは、閉経後の骨粗鬆症の予防および処置について承認されている。毎日(5mgの用量)または週1回(35mgの用量またはカルシウムと共に35mgの用量)摂取されるリセドロネートは、骨の減少を遅らせ、骨密度を増大させ、脊椎および脊椎以外の骨折のリスクを低下させる。リセドロネートもまた、グルココルチコイド(即ち、プレドニゾンまたはコルチゾン)の長期使用により生じるグルココルチコイド誘導性の骨粗鬆症を予防および/または処置するための男性および女性による使用について承認されている。カルシトニンは、カルシウム制御および骨代謝に関与している天然に存在しているホルモンである。閉経後5年を超えた女性において、カルシトニンは骨の減少を遅らせ、脊椎の骨密度を増大させ、骨折に伴う疼痛を軽減し得る。カルシトニンは、脊椎骨折のリスクを低下させる。カルシトニンは、注射剤(毎日50IU〜100IU)または鼻腔スプレー(毎日200IU)として使用することができる。エストロゲン療法(ET)/ホルモン療法(HT)は、骨粗鬆症の予防について承認されている。ETは、骨の減少を少なくし、脊椎および腰部の両方において骨密度を増加させ、閉経後の女性における腰部および脊椎の骨折のリスクを低下させることが示されている。ETは、最も一般的には、毎日およそ0.3mgの低用量または毎日およそ0.625mgの標準用量を送達する錠剤または皮膚貼付剤の形態で投与され、70歳以降に開始される場合でも有効である。エストロゲンが単独で摂取される場合は、女性の子宮内層のがん(子宮内膜がん)の発症リスクを増加させる可能性がある。このリスクを排除するために、医療提供者は、完全な子宮を持つ女性にはエストロゲンと組み合わせてホルモンであるプロゲスチンを処方する(ホルモン補充療法、すなわちHT)。ET/HTは、閉経症状を軽減し、骨の健康に対して有益な効果を有していることが示されている。副作用としては、膣出血、乳房圧痛、気分障害、および胆嚢疾患を挙げることができる。ラロキシフェン、1日60mgは、閉経後の骨粗鬆症の予防および処置について承認されている。これは、それらの潜在的な短所なしにエストロゲンの有益な効果を提供するために開発された選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる薬物のクラスに属する。ラロキシフェンは、骨量を増加させ、脊椎骨折のリスクを低下させる。ラロキシフェンが腰部および他の脊椎以外の骨折のリスクを低下させることができることを実証するデータは、未だ得られていない。副甲状腺ホルモンの一つの形態であるテリパラチドは、閉経後の女性および骨折のリスクが高い男性における骨粗鬆症の処置について承認されている。この薬物は、新しい骨の形成を刺激し、骨ミネラル密度を有意に増加させる。閉経後の女性において、脊椎、腰部、足、肋骨、および手首における骨折の減少が認められた。男性においては、骨折の減少は脊椎において認められたが、他の部位での骨折の減少を評価するデータは不十分であった。テリパラチドは最長24ヶ月、毎日の注射として自己投与される。
【0102】
(7.薬学的組成物)
特定の実施形態においては、本発明のBMP−ALK3アンタゴニスト(例えば、ALK3ポリペプチド)を、薬学的に許容され得るキャリアとともに処方する。例えば、ALK3ポリペプチドは、単独で、または薬学的処方物(治療用組成物)の成分として投与することができる。本発明の化合物は、ヒトの医学または獣医学において使用するための任意の便利な方法での投与のために処方することができる。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明の治療法には、組成物を全身投与するか、またはインプラントもしくはデバイスとして局所投与する工程が含まれる。投与する場合は、本発明での使用のための治療用組成物は、当然、発熱性物質を含まない生理学的に許容され得る形態である。上記のような組成物中に状況に応じてさらに含めることができるALK3アンタゴニスト以外の治療的に有用な物質は、本発明の方法において、本発明の化合物(例えば、ALK3ポリペプチド)と同時に投与される場合も、また、連続して投与される場合もある。
【0104】
典型的には、ALK3アンタゴニストは、非経口的に投与される。非経口投与に適している薬学的組成物には、1つまたは複数の薬学的に許容され得る滅菌された等張性の水性もしくは非水性の溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルジョン、または使用の直前に滅菌された注射可能な溶液もしくは分散物になるように再構成することができる滅菌された粉末と組み合わせて、1つまたは複数のALK3ポリペプチドが含まれる場合がある。これには、抗酸化物質、緩衝液、静菌剤、処方物を意図するレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含めることができる。本発明の薬学的組成物において利用することができる適切な水性および非水性のキャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。適度な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散物の場合には必要とされる粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0105】
さらに、組成物は、カプセル化される場合があり、また、標的組織部位(例えば、骨)への送達のための形態で注射される場合もある。特定の実施形態においては、本発明の組成物には、標的組織部位(例えば、骨)に1つまたは複数の治療用化合物(例えば、ALK3ポリペプチド)を送達し、発達中の組織のための構造を提供することができ、状況に応じて身体が吸収することができるマトリックスを含めることができる。例えば、マトリックスは、ALK3ポリペプチドの徐放を提供し得る。そのようなマトリックスは、他の移植医学的適用のために現在使用されている材料から形成することができる。
【0106】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生体分解性、機械的特性、美容上の外観、および界面特性に基づく。本発明の組成物の特定の用途により、適切な処方が決まる。組成物に利用可能なマトリックスは、生体分解性であり化学的に規定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物であり得る。他の可能な材料は、生体分解性であり、生物学的に十分定義されたもの、例えば骨または皮膚コラーゲンである。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分からなる。他の可能なマトリックスは、非生体分解性であり化学的に定義されたもの、例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックスである。マトリックスは、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムのように、上記タイプの材料の任意の組み合わせからなり得る。バイオセラミックは、孔径、粒径、粒子の形状、および生体分解性を変更するために、カルシウム−アルミン酸−リン酸のような組成および加工処理を変えることができる。
【0107】
特定の実施形態においては、本発明の方法は、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(矯味矯臭基材、通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用する)、粉末剤、顆粒剤の形態で、または水性液体もしくは非水液体中の溶液もしくは懸濁物として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(不活性な基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン)またはスクロースおよびアカシアを使用して)として、ならびに/あるいは洗口剤などとして経口投与することができ、それぞれが予め決定された量の物質を有効成分として含む。物質はまた、ボーラス、舐剤、またはペースト剤としても投与され得る。
【0108】
経口投与用の固形投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒剤など)においては、本発明の1種類または複数の治療化合物を、1種類または複数の薬学的に許容され得るキャリアと混合することができる。キャリアは、例えば、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、および/または以下のうちのいずれかである:(1)充填剤または増量剤(例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシア);(3)保湿剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム);(5)溶液遅延剤(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物);(7)加湿薬(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート);(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物);ならびに、(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合は、薬学的組成物にはまた、緩衝剤も含まれ得る。同様のタイプの固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、ソフトおよびハードゼラチンカプセルにおいて充填剤として使用することもできる。
【0109】
経口投与用の液体投薬形態としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。液体投薬形態には、有効成分に加えて、例えば水または他の溶媒のような当該分野で通常使用されている不活性な希釈剤、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物が含まれる場合がある。経口組成物にはまた、不活性な希釈剤に加えて、加湿薬、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、香料、および保存剤のようなアジュバントも含まれ得る。
【0110】
懸濁物には、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにこれらの混合物が含まれる場合がある。
【0111】
本発明の組成物にはまた、アジュバント(例えば、保存剤、加湿薬、乳化剤、および分散化剤)が含まれる場合がある。様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど)を含めることにより、微生物の作用の防止を確実にすることができる。等張剤(例えば、糖類、塩化ナトリウムなど)を組成物中に含めることが望ましい場合もある。加えて、吸収を遅延させる物質(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることにより、注射可能な薬学的形態の吸収を延長する場合もある。
【0112】
投与レジメンは、本発明の化合物(例えば、ALK3ポリペプチド)の作用を変化させる様々な要因を考慮して主治医により決定されることが理解される。様々な要因としては、形成が所望される骨重量、骨密度低下の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、および食習慣、骨の減少を生じ得る任意の疾患の重篤度、投与期間、ならびに他の臨床上の要因が挙げられるが、これらに限定されない。状況に応じて、投与量は、再構成に使用するマトリックスのタイプおよび組成物中の化合物のタイプに応じて変わるであろう。他の公知の増殖因子を最終的な組成物に加えることもまた、投与量に影響を及ぼす場合がある。進行は、例えば、X線(DEXAを含む)、組織形態測定、およびテトラサイクリン標識によって、骨の成長および/または修復を定期的に評価することによりモニターすることができる。
【0113】
特定の実施形態においては、本発明はまた、ALK3ポリペプチドのインビボでの産生のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、ALK3ポリヌクレオチド配列を上記に列挙した障害を有している細胞または組織に導入することによって、その治療効果を達成する。ALK3ポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いて達成することができる。ALK3ポリヌクレオチド配列の治療的送達には、標的化リポソームの使用が好ましい。
【0114】
本明細書中で教示するような遺伝子治療に利用することができる様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されない。多数のさらなるレトロウイルスベクターには、複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターは全て、形質導入された細胞を同定し、作製できるように、選択マーカーの遺伝子を導入するかまたは組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を結合させることによって標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を使用することにより達成される。当業者は、ALK3ポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノムに挿入するか、またはウイルスエンベロープに結合させることができることを理解するものとする。1つの好ましい実施形態においては、ベクターは骨または軟骨に標的化される。
【0115】
あるいは、組織培養細胞に、レトロウイルス構造遺伝子gag、pol、およびenvをコードするプラスミドを、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクションすることができる。次いで、これらの細胞に、目的の遺伝子を含むベクタープラスミドをトランスフェクトする。得られる細胞は、レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
【0116】
ALK3ポリヌクレオチドの別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質に基づく系(水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達ビヒクルとして有用である人工的な膜小胞である。RNA、DNA、および無傷のビリオンをその水性内部にカプセル化し、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraleyら、Trends Biochem.Sci.,6:77,1981を参照のこと)。リポソームビヒクルを使用する効率的な遺伝子移入の方法は当該分野で公知であり、例えば、Manninoら、Biotechniques,6:682,1988を参照のこと。リポソームの組成は、通常、ステロイド(特に、コレステロール)と組み合わせた、リン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質を使用することも可能である。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度、および2価の陽イオンの存在に依存する。
【0117】
リポソームの生成に有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームの標的化もまた、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、当該分野で公知である。
【実施例】
【0118】
(実施例)
ここに本発明を一般的に記載したが、本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されると考えられる。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を単に説明する目的のために含めるものであって、本発明を限定するようには意図しない。
【0119】
(実施例1:ALK3−Fc融合タンパク質の作製)
天然のヒトALK3のアミノ酸配列と対応するヌクレオチド配列を、図1、2に示す。出願人らは、ヒトALK3の細胞外ドメイン(天然の残基24〜152)(図3、4)を最小リンカー(アミノ酸残基TGGGを含む)を介してヒトFcドメイン(図5、6)とC末端で融合させたALK3−hFc融合タンパク質を設計して、図7に示すタンパク質を得た。以下の3つのリーダー配列を検討した:
(i)天然:MPQLYIYIRLLGAYLFIISRVQG(配列番号8)
(ii)組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号9)
(iii)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号10)。
【0120】
選択したhALK3(24−152)−hFcの形態(配列番号11)は、TPAリーダーを利用し、図8に示すプロセシングされていないアミノ酸配列を有する。この融合タンパク質をコードするセンスヌクレオチド配列と対応するアンチセンス配列を図9に示す。アミノ酸配列を変化させないC→T置換(下線を付けた)が1137位に組み込まれているhALK3(24−152)−hFcをコードする代替えのセンスヌクレオチド配列を以下に示す。
【0121】
【化2】

【0122】
【化3】

TPAリーダーを持ち、マウスFcでヒトFcを置換したhALK3(24−152)−Fcの改変体を図10に示す。この改変体をコードするセンスヌクレオチド配列とその対応するアンチセンス配列を図11に示す。出願人らは、71位(天然のALK3 ECD配列中では70位)にアスパラギンを有しているhALK3(24−152)−mFcの1つの形態を構築した。このタンパク質をCHO細胞系中で発現させ、N末端配列決定により、N末端ブロックを持つ1つの主要な種を明らかにし、このことは、配列番号7のタンパク質と一致する天然のグルタミン(Q)残基での開始と、主要ではない1つのGAQNLDSMLHGTGMKの配列(配列番号17)を示している。出願人らはさらに、天然のALK3配列を有しているhALK3(24−152)−hFcタンパク質を構築した。マウスALK3の細胞外ドメイン(マウス前駆体中の天然の残基24〜152)とマウスFcドメインを含む別のALK3−Fc改変体を、同様の方法により作製した。この改変体mALK3(24−152)−mFcのアミノ酸配列を以下に示し、ALK3ドメインに下線を付けた。
【0123】
【化4】

【0124】
【化5】

(実施例2.ALK3−Fcに対するリガンドの結合)
BiacoreTM法を使用して、BMP/GDFファミリーの15を上回るメンバーに対するALK3−Fc融合タンパク質の結合親和性を決定した。HEK 293細胞由来のmALK3−mFcは、hBMP2とhBMP4に対して高い結合親和性(それぞれ、K=2.43×10−9および9.47×10−10)を示し、さらに、いくつかの他のリガンド(hBMP6およびhBMP7を含む)に対しては中程度の結合親和性を示した。hALK3(24−152)−hFcも同様の結合プロフィールを示した。具体的には、HEK 293細胞由来のhALK3(24−152)−hFcは、hBMP2およびhBMP4に対して、それぞれ6.53×10―10および1.02×10−9のKで結合したが、CHO細胞由来のhALK3(24−152)−hFcは、hBMP2およびhBMP4に対して、それぞれ4.53×10−10および7.03×10−10のKで結合した。mALK3(24−152)−mFcと同様に、両タイプの細胞に由来するhALK3(24−152)−hFcは、他のリガンドの中でも、hBMP6およびhBMP7に対して中程度の結合親和性を示した。
【0125】
BMP2およびBMP4に対するALK3−Fcの全体的な選択性が重要である。いずれの特定の機構にも束縛されることは望ましくないが、出願人らは、これらの結果に基づいて、ALK3−Fcが、BMP2およびBMP4に結合し、それによりこれらのリガンドによるシグナル伝達を阻害することにより主にインビボでその効果を発揮するとの仮説を立てる。したがって、BMP2および/またはBMP4に対する抗体もまた骨の形成を刺激すると予想される。あるいは、ALK3リガンド結合ドメインに対する抗体が、ALK3に媒介されるシグナル伝達をより広く阻害すると予想される。図18は、骨形成を促進するための、BMP2、BMP4、および状況に応じたさらなるリガンドによるシグナル伝達を妨害するための本明細書中で提案する3つのアプローチの例を図式的に示す。
【0126】
ヒトALK3の細胞外ドメイン(ECD)の短縮型改変体が組み込まれている一連のALK3−Fcタンパク質を作製し、それらのリガンド結合親和性についてhALK3(24−152)−hFcと比較した。N末端の6、12、27、または31アミノ酸の欠失、C末端の6または12アミノ酸の欠失を持つALK3 ECD改変体、および二重短縮型を、HEK 293細胞中で発現させ、Mabクロマトグラフィー(プロテインAカラム)により精製した。BiacoreTM法を使用して、これらの改変体に対する結合についてBMP/GDF/TGFβリガンドスーパーファミリーのメンバーをスクリーニングした。
【0127】
【表1】

上記に示したように、評価したC末端短縮形態は、全長のALK3 ECDと比較して、BMP2/BMP4に対して類似するかまたは高い結合親和性を示し、一般的には、BMP6/BMP7に対する結合は減少したが、ALK3CΔ12は、全長のALK3 ECDと同様の親和性でBMP7に対する結合を保持していた。対照的に、N末端短縮形態は、BMP2に対する結合を減少させ、BMP4に対する結合をなくす傾向があり、BMP6/BMP7に対する結合に対して様々な効果を示す。興味深いことに、二重短縮改変体ALK3NΔ6CΔ6は、BMP6/BMP7に対する結合が検出不可能であることと組み合わせて、全長のALK3 ECDと比較してBMP2/BMP4に対して高い親和性を示す。所望される標的であるBMP2およびBMP4に対してより大きな選択性を持つ分子は、これらが患者においてはほとんど「オフターゲット」効果を有さないであろうとの理由から有用である。N末端配列決定は、N末端の6アミノ酸の短縮をコードする核酸が、細胞培養物中で発現させると、6アミノ酸の短縮を有しているポリペプチドの集団と、7アミノ酸の短縮を有しているポリペプチドの集団とを生じることを明らかにした。まとめると、これらは、N末端に7アミノ酸までの短縮を、そしてC末端に12アミノ酸までの短縮を含むhALK3−hFcポリペプチドは、有用な活性を保持しており、オフターゲットリガンドに対する結合において望ましい驚くべき減少を示すことを示している。したがって、配列番号3の少なくともアミノ酸8〜117を含むAKL3ポリペプチドを、本明細書中に記載する目的のために使用できる。
【0128】
リガンド結合特性を使用して、CHO細胞由来のhALK3(24−152)−hFcタンパク質の質を、HEK 293細胞由来のhALK3(24−152)−hFcタンパク質の質と比較した。BiacoreTM法により決定した場合は、hALK3(24−152)−hFcに対するBMP2の親和性(Kd)は、融合タンパク質の供給源によっては異なることはなかった。しかし、CHO細胞により作製された活性タンパク質の割合は、それらのそれぞれのRmax値に基づくと、HEK 293細胞により作製された活性タンパク質の割合よりも高かった。Rmaxは、(MW/MW)×R×S(式中、MWは分析物の分子量であり、MWはリガンドの分子量であり、Rは、応答単位における固定化レベルであり、Sはモル化学量論である)に等しいタンパク質の質の測定値である。BMP4結合についての対応する分析は、CHO細胞由来のタンパク質が、HEK 293細胞由来のタンパク質よりも、BMP4に対して高い親和性を示したこと(それぞれ、314pM対1020pMのK)、およびCHO細胞により作製されたタンパク質についてのRmax値が、HEK 293細胞由来のタンパク質についてのRmax値の3倍であることを明らかにし、重ねて、活性タンパク質の高い割合を示した。したがって、hALK3(24−152)−hFcタンパク質の供給源としてのCHO細胞の予想できなかった利点として、BMP4に対するタンパク質のより高い結合親和性と、より高いタンパク質の質(Rmax値)により生じると予想されるより大きな生体利用性が挙げられる。
【0129】
(実施例3.hALK3−mFcはマウスにおいて骨の状態を改善する)
出願人らは、ALK3−mFcの1つのバージョンの、マウスにおいて骨の状態を改善する能力を調べた。12週齢の雌性C57BL/6マウス(1つのグループあたりn=8)を、10mg/kgのhALK3(24−152)−mFcまたはビヒクル(Tris緩衝化生理食塩水)で、全部で6週間の、週に2回の腹腔内注射によって処置した。ビヒクルと比較して、hALK3(24−152)−mFcは、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって決定すると、31日目までに全身の骨密度を有意に増大させ、この効果は42日目の本研究の完了時まで維持された(図12)。骨密度に対するhALK3(24−152)−mFcでの処置の同様の効果は、これらの同じ時点で、DEXAにより腰椎の局所分析についても観察された(図13)。加えて、高解像度の脛骨骨幹部および近位脛骨の測定も、マイクロコンピュータ断層撮影法(マイクロCT)により行って、皮質骨および骨梁骨のそれぞれに対するhALK3(24−152)−mFcの効果を決定した。ビヒクルと比較すると、hALK3(24−152)−mFcでの処置は、i)6週までに皮質骨の厚みを(図14)、ii)4週までに骨梁骨体積を(図15)、そしてiii)4週までに平均の骨梁の厚み(図16)を有意に増大させた。近位脛骨全体のマイクロCTにより作製した切片の代表的な三次元再構成(図17)は、骨梁骨微細構造に対するhALK(24−152)−mFcでの処置(4週間)の堅調な刺激効果を強調する。重要なことは、hALK(24−152)−mFcでの処置は、研究過程全体にわたり、脂肪分の少ない組織(lean tissue)の量、脂肪量、または赤血球量において有意な変化を生じることはなかった。
【0130】
まとめると、上記データは、hALK3(24−152)−mFcを、骨ミネラル密度の増大、ならびに、皮質骨および骨梁骨の両方の正味の形成の増大を通じて骨の状態を選択的に改善するためにインビボで使用できることを示している。
【0131】
(実施例4.hALK3−mFcはマウスにおいて骨強度を高める)
実施例3に記載した実験において、出願人らはまた、骨強度を高めるhALK3(24−152)−mFcの能力も調べた。6週間の投与後、大腿骨を収集し、−20℃で凍結保存した。後に、骨を解凍して室温とし、破壊的4点曲げ試験を、Instron機械的試験装置(Instron mechanical testing instrument)(Instron 4465を改造した5500)を用いて左大腿骨の中央骨幹について行った。固定した支持体間の間隔は7mmであり、荷重適用の2点間の間隔は2.5mmであった。荷重を、骨が破損するまで3mm/分の一定の変位速度でかけ、最大荷重、剛性、およびエネルギー吸収のデータを、Bluehill v 2.5ソフトウェアで計算した。ビヒクルと比較すると、hALK3(24−152)−mFcは、最大骨荷重を30%(図19)、骨の剛性を14%(図20)、そして骨が破損するまでのエネルギーを32%(図21)、有意に増大させた。これらの知見は、hALK3(24−152)−mFcでの処置を用いて観察した(実施例3)骨組成物の改良に伴い、骨強度の増大が起こったことを示している。
【0132】
(実施例5.骨減少症のOVXマウスモデルの骨に対するmALK3−mFcの効果)
閉経後の女性におけるエストロゲンの不足は、骨の減少、特に、骨梁骨の減少を促進する。したがって、出願人らは、骨の減少が確立された骨減少症の卵巣切除した(OVX)マウスモデルにおいて骨の状態を改善する、mALK3(24−152)−mFcの能力を調べた。両側OVXまたは偽手術を行った8週齢の雌性C57BL/6マウスを、その後、8週間の間処置しないまま維持した。8週間の最後に、マイクロCTとDEXAによるベースラインの測定によって、偽処置と比較して、OVXマウスにおける有意な骨の減少を確認した。最も注目すべきは、マイクロCTにより近位脛骨において決定した、骨梁骨体積の43%の減少(図22、0日目の時点)であった。その後、マウスを、10mg/kgのmALK3(24−152)−mFcまたはビヒクル(Tris緩衝化生理食塩水)で、8週間の間週に2回のip注射により処置した。
【0133】
mALK3(24−152)−mFcでの処置は、エストロゲンの不足が続いているにも関わらず、骨梁および皮質骨の両方において改善をもたらした。56日目の研究の終了時までに、mALK3(24−152)−mFcで処置したOVXマウスの近位脛骨における骨梁骨体積は、OVX対照と比較して250%近く、偽性の対照と比較して80%を上回るほどに増加した(図22)。mALK3(24−152)−mFcでの処置によってはまた、皮質の厚みの増大(図23)と、OVX対照と比較した脛骨骨幹部における骨内膜の周囲の減少(図24)により示されるような、皮質骨の成長も生じた。これらの改善には、骨ミネラル密度の増大が伴った。OVX対照と比較すると、mALK3(24−152)−mFcでの処置は、14日目までに全身の骨ミネラル密度を有意に増大させ(DEXAにより決定した)、この改善は、研究の終了時まで維持された(図25)。mALK3(24−152)−mFcでの処置についても、同様の効果が、腰椎(図26)と大腿骨−脛骨(図27)のミネラル密度に対して観察された。マイクロCT分析による椎骨の骨梁骨の三次元画像(図28)は、エストロゲンの不足が進行しているにも関わらず、mALK3(24−152)−mFcでの処置に伴う骨の状態の堅調な改善を強調する。これらの知見は、mALK3(24−152)−mFcが、骨減少症のマウスモデルにおけるエストロゲンの減少(withdrawal)に伴う骨(骨梁骨を含む)の悪化を反転させることができることを示している。骨減少症の状態から、性腺が無傷である対照の骨の量を上回る状態に(図22〜24、28)、および性腺が無傷である対照の骨の質に匹敵する状態(図25〜27)に骨を変化させるmALK3(24−152)−mFcの能力は、この物質が抗吸収効果のみならず、同化作用の効果も発揮することの証拠である。
【0134】
(実施例6.マウスにおける骨の組織形態測定および血清生体マーカーに対するmALK3−mFcの効果)
別の研究において、出願人らは、組織形態測定および血清の生体マーカーにより評価した、マウスの骨の状態を改善するmALK3−mFcの能力を調べた。12週齢の雌性C57BL/6マウスを、10mg/kgのmALK3(24−152)−mFcまたはビヒクル(Tris緩衝化生理食塩水)で、週に2回の腹腔内注射により処置した。マウスのコホートを、骨と血清が収集できるように、処置の14日後、28日後、および42日後に剖検した。蛍光化合物であるカルセイン(20mg/kg)とデメクロサイクリン(20mg/kg)を、動的組織形態測定分析のために、それぞれ、剖検の9日前および2日前にマウスに腹腔内投与した。
【0135】
骨を、以下のように組織形態測定のために調製した。剖検時に、右大腿骨を取り外し、大腿骨の遠位4分の1について、脱水、メチルメタクリレートによる浸潤、およびメチルメタクリレートへの包埋からなる組織学的調製を行った。回転式ミクロトームを使用して、4μmおよび8μmの厚みの前頭切片のセットを得た。薄い方の切片をGoldnerトリクロームで染色し、これを静的パラメーターの分析に使用した。一方、厚い方の切片は染色しないままマウントし、動的パラメーターの分析に使用した。組織形態測定を、OsteoMeasure画像分析ソフトウェアを実行するビデオサブシステムに接続したNikon Eclipse E4000光学/落射蛍光顕微鏡を用いて、処置について盲検様式で(treatment−blind manner)行った。
【0136】
遠位大腿骨の組織形態測定分析は、ALK3−Fcの同化作用による効果と抗吸収効果の両方を明らかにした。ビヒクルと比較すると、mALK3(24−152)−mFcは、3つの時点全てで、骨体積を最大90%有意に増大させた(図29)。重要なことは、mALK3(24−152)−mFcが、骨の形成速度を120%程度増大させ(図30)、そして骨石灰化表面を115%程度増大させた(図31)ことである。これらの後者のパラメーターは同化作用による骨成長の指標であると考えられるが、同化作用による効果のさらなるマーカーである骨芽細胞表面と類骨表面は、より穏やかなまたは無視できる程度の増大を示した。組織形態測定分析はまた、mALK3(24−152)−mFcが、28日目にのみ破骨細胞の表面を有意に減少させた(図32)ので、一時的な抗吸収性効果の証拠を提供し、同様の効果が浸食面でも観察された。
【0137】
骨の状態についての血清の生体マーカーに対するmALK3(24−152)−mFcでの処置の効果もまた調べた。RANKL(核因子−κBリガンドの受容体活性化因子)は骨芽細胞により産生され、破骨細胞の分化についての重要な活性化因子である。一方、オステオプロテゲリン(OPG)は、RANKLシグナル伝達の内因性インヒビターである。したがって、RANKL/OPG比は、破骨細胞の活性、骨量、および骨質の重要な決定要素である(Boyceら、2008,Arch Biochem Biophys 473:139−146)。この実験では、RANKLおよびOPGの血清濃度を、Luminex xMAP(登録商標)技術が組み込まれているMillipore製品(MBN2A−41KおよびMBN−41K−1OPG)で測定した。mALK3(24−152)−mFcでの処置により、3つの時点全てで、ビヒクルと比較して血清のRANKLレベルは有意に低下し(図33)、そして28日目および42日目に、血清OPGレベルは有意に増大した(図34)。これらの結果は、mALK3(24−152)−mFcでの処置が、抗吸収作用を通じて骨の形成を一部刺激することを示している。
【0138】
(実施例7.マウスにおけるスクレロスチン遺伝子の発現に対するmALK3−mFcの効果)
スクレロスチンタンパク質は、骨の形成についての重要なネガティブ調節因子であり、スクレロスチンシグナル伝達の妨害が、インビボで骨に対して同化作用効果を発揮することが報告されている(Liら、2009,J Bone Miner Res 24:578−588)。したがって、出願人らは、インビボでのmALK3(24−152)−mFcでの処置が、骨におけるスクレロスチン遺伝子の発現を変化させるかどうか、そしてこれにより、スクレロスチンレベルの低下がALK3−Fcの骨を再構築する作用の一部を媒介できる可能性があるかどうかを調べた。12週齢の雌性C57BL/6マウスを、mALK3(24−152)−mFcまたはビヒクル(PBS)で、週に2回の腹腔内注射により処置した。マウスのコホートを、両方の大腿骨と脛骨の収集ができるように、処置の2日後、7日後、14日後、および28日後に剖検した。大腿骨と脛骨を分離し、残っている筋肉または結合組織を全て除去した。
【0139】
スクレロスチン遺伝子の発現を以下のように分析した。骨を、内部骨髄幹(interior marrow shaft)を露出させるためにトリミングし、骨髄細胞を、3mLの注射器に取り付けた21ゲージ針を使用して、滅菌した生理食塩水で洗い流した。それぞれのマウス由来の大腿骨と脛骨を一緒に粉砕し、RNAを、製造業者の説明書にしたがってRibopureキット(Ambion)を用いて、得られた粉末から抽出した。骨試料中のRNAの完全性を、製造業者の説明書にしたがってAgilent Technologies 2100 Bioanalyzer上で行ったRNA Nano Chips(Agilent Technologies)により確認した。RNAから、TaqMan RT試薬(Applied Biosystems)を使用して逆転写させ、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、スクレロスチンプローブ/プライマーおよびEukaryotic 18S rRNA Endogenous Control(いずれもApplied Biosystemsによる)を用いて行った。増幅は、Applied Biosystems 7300 Systemを用いて行い、結果を2”−ΔΔCt法を使用して分析した。
【0140】
ビヒクルと比較して、mALK3(24−152)−mFcでの処置は、調べた4つの時点のうちの3つで、骨のスクレロスチンmRNAのレベルを有意に低下させた(図35)。この知見は、スクレロスチンの発現の低下が、骨に対するmALK3(24−152)−mFcの同化作用効果および/または抗吸収効果に寄与している可能性があることを示している。
【0141】
(実施例8.マウスにおける骨の状態に対するhALK3−hFcの効果)
出願人らは、マウスにおける骨の状態に対するヒト構築物hALK3(24−152)−hFcの効果を調べた。12週齢の雌性C57BL/6マウス(1つのグループあたりn=6)を、10mg/kgのhALK3(24−152)−hFcまたはビヒクル(Tris緩衝化生理食塩水)で、全部で6週間にわたる週に2回の腹腔内注射により処置した。実験の過程全体で、骨梁骨体積は、近位脛骨のマイクロCT分析により決定すると、ビヒクルで処置した対照においてはおよそ20%減少したが、hALK3(24−152)−hFcで処置した場合は80%を上回って増大した(図36)。研究結果によると、骨梁数(34%)および骨梁の厚み(20%)におけるベースラインからの有意な増大もまた、hALK3(24−152)−hFcを用いて観察されたが、ビヒクルを用いた場合には観察されなかった。研究結果によると、ビヒクルと比較して、hALK3(24−152)−hFcはDEXAにより決定すると、全身の骨ミネラル密度を有意に増大させた。DEXAによる腰椎(L1−L6)の局所分析はまた、ビヒクルと比較した研究結果により、骨ミネラル密度に対するhALK3(24−152)−hFcの有意な刺激因子効果(21%の増大)を明らかにした。
【0142】
これらの結果は、ヒト構築物hALK3(24−152)−hFcはマウスにおいて骨の状態を改善することができることを示しているが、げっ歯類におけるその効果の大きさは、免疫応答により鈍ったと予想される。まとめると、上記知見は、ALK3−Fc構築物が、1)身体軸骨格および四肢骨格の両方において、抗吸収作用と同化作用の両方により骨の形成を促進し、2)骨の機械的強度を改善し、そして3)確立された骨減少症のマウスモデルにおいてエストロゲンの不足により誘導された骨の減少を逆転させることを示している。
【0143】
(実施例9.例示的なhALK3−hFc核酸およびタンパク質)
本実施例は、本明細書中に提供する方法にしたがい、CHO細胞中でALK3構築物を発現させるために使用した核酸構築物をまとめ、細胞培養物から単離した成熟タンパク質を提供する。
【0144】
A.配列番号19の核酸をCHO細胞中で発現させ、以下のALK3−Fc種を単離した。
(1)グルタミン(Edman分解によるN末端配列決定についてブロックされる傾向がある)で始まるhALK3(24−152)−hFc配列を配列番号7に示す。
(2)hALK3(GA,24−152)−hFc配列を以下に示す(配列番号20)。これは、リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持している。
【0145】
【化6】

B.以下に示すhALK3(24−146)−hFcをコードする核酸(配列番号21)をCHO細胞中で発現させた。
【0146】
【化7】

【0147】
【化8】

以下のタンパク質種を単離した。
(1)グルタミン(Edman分解によるN末端配列決定についてブロックされる傾向がある)で始まるhALK3(24−146)−hFcを以下に示す(配列番号22)。
【0148】
【化9】

【0149】
【化10】

(2)リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持しているhALK3(GA,24−146)−hFc配列を以下に示す(配列番号23)。
【0150】
【化11】

C.以下に示すhALK3(24−140)−hFcをコードする核酸(配列番号24)をCHO細胞中で発現させた。
【0151】
【化12】

【0152】
【化13】

以下のタンパク質種を単離した。
(1)グルタミン(Edman分解によるN末端配列決定についてブロックされる傾向がある)で始まるhALK3(24−140)−hFcを以下に示す(配列番号25)。
【0153】
【化14】

(2)リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持しているhALK3(GA,24−140)−hFc配列を以下に示す(配列番号26)。
【0154】
【化15】

D.以下に示すhALK3(30−152)−hFcをコードする核酸(配列番号27)をCHO細胞中で発現させた。
【0155】
【化16】

【0156】
【化17】

以下のタンパク質種を単離した。
(1)リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持しているhALK3(GA,30−152)−hFcを以下に示す(配列番号28)。
【0157】
【化18】

(2)リーダー配列由来の最初のアラニンを保持しているhALK3(A,30−152)−hFcを以下に示す(配列番号29)。
【0158】
【化19】

【0159】
【化20】

(3)リーダーと最初のロイシンが除去され、最初のヒスチジンが残っている(事実上NΔ7)、hALK3(31−152)−hFc配列を以下に示す(配列番号30)。
【0160】
【化21】

(4)以下に示すさらなる種であるhALK3(30−152)−hFcが予想された(配列番号31)が、N末端配列決定によっては同定されなかった。
【0161】
【化22】

E.以下に示すhALK3(30−146)−hFcをコードする核酸(配列番号32)をCHO細胞中で発現させた。
【0162】
【化23】

【0163】
【化24】

以下のタンパク質を単離した。
(1)リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持しているhALK3(GA,30−146)−hFcを以下に示す(配列番号33)。
【0164】
【化25】

【0165】
【化26】

(2)リーダー配列由来の最初のアラニンを保持しているhALK3(A,30−146)−hFcを以下に示す(配列番号34)。
【0166】
【化27】

(3)リーダーと最初のロイシンが除去されており、最初のヒスチジンが残っている(事実上、NΔ7CΔ6)、hALK3(31−146)−hFc配列を以下に示す(配列番号35)。
【0167】
【化28】

(4)以下に示すさらなる種であるhALK3(30−146)−hFc(配列番号36)が予想されたが、N末端配列決定によっては同定されなかった。
【0168】
【化29】

F.以下に示すhALK3(30−140)−hFcをコードする核酸(配列番号37)をCHO細胞中で発現させることができる。
【0169】
【化30】

【0170】
【化31】

以下のタンパク質種を単離することができる。
(1)リーダー配列由来の最初のグリシン−アラニンを保持しているhALK3(GA,30−140)−hFcを以下に示す(配列番号38)。
【0171】
【化32】

(2)リーダー配列由来の最初のアラニンを保持しているhALK3(A,30−140)−hFcを以下に示す(配列番号39)。
【0172】
【化33】

(3)リーダー配列と最初のロイシンが除去されており、最初のヒスチジンが残っている(事実上、NΔ7CΔ12)、hALK3(31−140)−hFc配列を以下に示す(配列番号40)。
【0173】
【化34】

(4)さらなる種であるhALK3(30−140)−hFcを以下に示す(配列番号41)。
【0174】
【化35】

(引用による組み込み)
本明細書中で言及した全ての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が具体的かつ個別に引用により本明細書中に組み入れらていることが示されているかのように、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0175】
本発明の事項の具体的な実施形態が議論されてきたが、上記詳細は説明であり、限定ではない。多くのバリエーションが、本明細書の概要および以下の特許請求の範囲を参照して、当業者に明らかであろう。本発明の完全な範囲は、そのようなバリエーションとともに、等価物および詳細についてのそれらの全範囲とともに、特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
サイズ排除クロマトグラフィーにより決定すると、タンパク質不純物に関して少なくとも95%純粋である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
BMP2またはBMP4について10−8Mを超えない解離定数を示す、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項5】
グリコシル化されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
動物において骨形成を刺激するかまたは骨ミネラル密度を増大させる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
CHO細胞中での発現により産生された、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドを2つ含むホモ二量体。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドを含む薬学的調製物。
【請求項10】
実質的に発熱物質を含まない、請求項9に記載の薬学的調製物。
【請求項11】
請求項1に記載のポリペプチドのコード配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号12の配列を含む、請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11に記載のポリヌクレオチドに対して作動可能であるように連結されたプロモーター配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項11に記載の組換えポリヌクレオチドで形質転換した細胞。
【請求項15】
哺乳動物細胞である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
CHO細胞またはヒト細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
ALK3ポリペプチドを作製する方法であって:
a)可溶性ALKポリペプチドの発現に適している条件下で細胞を培養する工程であって、ここで、前記細胞は請求項11に記載の組換えポリヌクレオチドで形質転換されている、工程;および
b)そのように発現させたBMP結合性ALK3ポリペプチドを収集する工程
を含む、方法。
【請求項18】
骨成長を促進するため、骨密度を増大させるため、または骨強度を高めるための方法であって:
a)配列番号3に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3から選択される少なくとも50個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド;
c)BMP2に結合し、BMP2とALK3との間での相互作用を阻害する抗体;
d)BMP4に結合し、BMP4とALK3との間での相互作用を阻害する抗体;ならびに、
e)ALK3に結合し、ALK3とALK3の1つまたは複数のリガンドとの間での相互作用を阻害する抗体
からなる群より選択される、有効量のBMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストを被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、以下の特徴:
i)少なくとも10−7MのKでALK3リガンドに対して結合する;および
ii)細胞中でALK3シグナル伝達を阻害する
のうちの1つまたは複数を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、ALK3ポリペプチドドメインに加えて、インビボでの安定性、インビボでの半減期、取り込み/投与、組織局在性もしくは組織分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1つまたは複数を増強する1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分結合体化アミノ酸、および有機誘導化剤結合体化アミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
骨に関連する障害を処置するための方法であって、投与の必要がある被験体に、有効量のBMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記BMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストが:
a)配列番号3に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3から選択される少なくとも50個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド;
c)BMP2に結合し、BMP2とALK3との間での相互作用を阻害する抗体;
d)BMP4に結合し、BMP4とALK3との間での相互作用を阻害する抗体;ならびに、
e)ALK3に結合し、ALK3とALK3の1つまたは複数のリガンドとの間での相互作用を阻害する抗体
からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、以下の特徴:
i)少なくとも10−7MのKでALK3リガンドに対して結合する;および
ii)細胞中でALK3シグナル伝達を阻害する
のうちの1つまたは複数を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、ALK3ポリペプチドドメインに加えて、インビボでの安定性、インビボでの半減期、取り込み/投与、組織局在性もしくは組織分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1つまたは複数を増強する1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分結合体化アミノ酸、および有機誘導化剤結合体化アミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記骨に関連する障害が、原発性骨粗鬆症および二次性骨粗鬆症からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記骨に関連する障害が、閉経後の骨粗鬆症、性腺機能低下による骨の減少、腫瘍による骨の減少、がん治療による骨の減少、骨転移、多発性骨髄腫、およびパジェット病からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
第2の骨活性物質を投与する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記骨活性物質が、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節因子、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、カルシウムサプリメント、およびビタミンDサプリメントからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項34】
前記アミノ酸配列が、配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも97%同一である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記アミノ酸配列が、配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも98%同一である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項36】
前記アミノ酸配列が、配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記アミノ酸配列が、配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項38】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項39】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも97%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項40】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも98%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項41】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項42】
配列番号11、14、20、22、23、25、26、28、29、30、31、33、34、35、36、38、39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項43】
グリコシル化されている、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項44】
動物において骨形成を刺激するかまたは骨ミネラル密度を増大させる、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項45】
CHO細胞中での発現により産生された、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項46】
請求項33に記載のポリペプチドを2つ含むホモ二量体。
【請求項47】
請求項33に記載のポリペプチドまたは請求項46に記載のホモ二量体、および、薬学的に許容され得る賦形剤を含む、薬学的調製物。
【請求項48】
実質的に発熱物質を含まない、請求項47に記載の薬学的調製物。
【請求項49】
配列番号12、15、19、21、24、27、32、および37の任意の核酸の相補物に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離された核酸。
【請求項50】
請求項49に記載の単離された核酸配列を含む細胞。
【請求項51】
CHO細胞である、請求項50に記載の細胞。
【請求項52】
ヒトALK3の細胞外ドメイン由来の第1のアミノ酸配列および異種アミノ酸配列を含むポリペプチドであって、ここで、前記第1のアミノ酸配列は、配列番号1の25位〜31位のいずれかで始まり、配列番号1の140位〜152位のいずれかで終わる配列からなる、ポリペプチド。
【請求項53】
前記異種アミノ酸配列が抗体の定常ドメインを含む、請求項52に記載のポリペプチド。
【請求項54】
前記異種アミノ酸配列がIgGのFcドメインを含む、請求項52に記載のポリペプチド。
【請求項55】
前記IgGがヒトIgG1である、請求項54に記載のポリペプチド。
【請求項56】
骨成長を促進するため、骨密度を増大させるため、または骨強度を高めるための方法であって、配列番号3のアミノ酸8〜117のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む有効量のポリペプチドを被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項57】
前記ポリペプチドが、以下の特徴:
i)少なくとも10−7MのKでALK3リガンドに対して結合する;および
ii)細胞中でALK3シグナル伝達を阻害する
のうちの1つまたは複数を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ポリペプチドが、ヒトBMP6と実質的には結合しない、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリペプチドが、ヒトBMP7と実質的には結合しない、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記ポリペプチドが、ALK3ポリペプチドドメインに加えて、インビボでの安定性、インビボでの半減期、取り込み/投与、組織局在性もしくは組織分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1つまたは複数を増強する1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分結合体化アミノ酸、および有機誘導化剤結合体化アミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
骨に関連する障害を処置するための方法であって、投与の必要がある被験体に、配列番号3のアミノ酸8〜117のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む有効量のポリペプチドを投与する工程を含む、方法。
【請求項64】
前記部(a)または(b)のポリペプチドが、以下の特徴:
i)少なくとも10−7MのKでALK3リガンドに対して結合する;および
ii)細胞中でALK3シグナル伝達を阻害する
のうちの1つまたは複数を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸8〜117のアミノ酸配列に対して同一であるアミノ酸配列を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリペプチドが、インビボでの安定性、インビボでの半減期、取り込み/投与、組織局在性もしくは組織分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1つまたは複数を増強する1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分結合体化アミノ酸、および有機誘導化剤結合体化アミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記骨に関連する障害が、原発性骨粗鬆症および二次性骨粗鬆症からなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記骨に関連する障害が、骨の痛み、閉経後の骨粗鬆症、性腺機能低下による骨の減少、腫瘍による骨の減少、がん治療による骨の減少、骨転移、多発性骨髄腫、およびパジェット病からなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
第2の骨活性物質を投与する工程をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項72】
前記骨活性物質が、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節因子、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、カルシウムサプリメント、およびビタミンDサプリメントからなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
(a)BMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニスト;および
(b)第2の骨活性物質
を含む、薬学的調製物。
【請求項74】
骨成長を促進するか、または骨密度を増大させる物質を同定する方法であって:
a)ALK3ポリペプチドのリガンド結合ドメインに対して、BMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストのポリペプチドと競合的に結合する試験物質を同定する工程;および
b)組織の増殖に対する前記物質の効果を評価する工程を含む、方法。
【請求項75】
骨に関連する障害の処置用の医薬品を作製するための、BMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストのポリペプチドの使用。
【請求項76】
骨に関連する障害を予防するための方法であって、投与の必要がある被験体に対して、有効量のBMPアンタゴニストまたはALK3アンタゴニストを投与する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2012−522507(P2012−522507A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503633(P2012−503633)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029282
【国際公開番号】WO2010/114860
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】