説明

C型肝炎ウイルスに対して細胞障害性Tリンパ球反応を誘発するペプチド

【課題】HCV肝炎の治療及び予防のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)またはILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のオリゴペプチドを含む分子を用いて、急性又は慢性HCV肝炎の治療及び予防を行うものであり、上記オリゴペプチドを含む医薬組成物、結合体、C型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する哺乳動物の細胞障害性T細胞をリンパ球中で検出する生体外での方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス特異性細胞障害性T細胞リンパ球エピトープと実質的に同族の化合物を単離し、慢性及び急性C型肝炎ウイルス性肝炎に苦しむか、あるいはそれにさらされる恐れのある哺乳動物の免疫化及び治療に使用することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、急性及び慢性肝炎並びに肝細胞性癌を引き起こす傾向がある、輸血に伴う肝炎の原因物質として、当初、同定された。Choo 等、Science、244巻、359〜362頁(1989年)。感染した人の少なくとも50%が慢性肝炎となり、それらの20%が更に肝硬変になることを考えると、それは世界的に罹患率及び死亡率の大きな原因である。Dienstag、Gastroenterology、85巻、439頁(1983年)。慢性及び急性HCV感染を治療する特効薬は、現在は無い。
HCVの完全な塩基配列及び遺伝子構造は、Choo 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、2451〜2455頁(1991年)により、十分に解明されている。ポジティブ鎖(positive-stranded)RNAのHCVゲノムは、9,379個のヌクレオチドからなり、3,011個のアミノ酸のウイルスポリ蛋白質をコードすることができる単一の大きいオープンリーディングフレームを持っている。HCVと配列が知られている他のウイルスとの間には、配列の全体的な類似性はほとんどないが、その配列の一部(オープンリーディングフレームの5’末端の上流側)は、ペスチウイルスのゲノムの相当位置の配列と類似している。ポリ蛋白質は、なかでも、動物のペスチウイルス及びヒトのフラビウイルスによってコードされるヘリカーゼにも、顕著な配列類似性を示す。コードされたアミノ酸の配列の疎水性プロフィールを比較し、HCVとフラビウイルス(黄熱病ウイルス)の間でこのようなプロフィールを比較すれば、例えば、非構造蛋白質を規定する5つの領域(NS1乃至NS5)の他に、カプシド又はコア(C)とエンベロープ(E1及びE2)を形成する蛋白質に関連して、HCVゲノムの領域を定めることにつながる。
HCVが急性の肝細胞性障害を引き起こし、慢性肝臓病になり、最後には肝細胞性癌に至る一連の障害を開始させる機構は、よく分かっていない。ウイルスが関係する直接機構と免疫的に媒介される間接機構の両方が、HCV慢性肝炎に重要な役割を演じている可能性がある。例えば、HCV感染と自己抗体の存在との間のつながりは、十分に立証されている。Lenzi 等、Lancet、338巻、277〜280頁(1991年)。不幸にも、適当な動物モデル及び組織培養システムが無かったため、宿主肝細胞について、HCVの直接細胞変性効果を分析することが妨げられていた。
いくつかの臨床観察から、宿主免疫反応が、肝細胞障害に寄与しているという仮説が支持されている。即ち、第一に、若年で罹り、免疫的に未熟な宿主に見られる感染が、慢性無症候性キャリア状態となり、第二に、肝細胞障害の証拠のない慢性キャリアが普通であり、第三に、免疫抑制が、慢性C型肝炎における肝細胞障害に良い影響を及ぼす。ウイルス性肝炎及び肝臓病(Viral Hepatitis And Liver Disease)(Hollinger 等、編集者、1991年)、410〜413頁の Alter 参照。最近の報告では、慢性HCV肝炎に苦しむ二人の患者からの肝臓浸潤リンパ球に、HCV特異性、主要組織適合複合体(HLA又はMHC)クラスI限定細胞障害性T細胞(CTL)反応(major histocompatibility complex ("HLA" or "MHC") class I-restricted cytotoxic T cell ("CTL") response)が存在することも証明された。Koziel 等、J. Immunol.、149巻、3339〜3344頁(1992年)。更に具体的には、ウイルス抗原に対する反応は、ほとんど完全にT細胞依存性であると、一般に推定される。抗体反応でさえも、T細胞の助けを必要とする。このように、含まれるエフェクター(作動体)機構について、これにより我々が知るところはほとんど無いが、T細胞は抗原の生成と細胞障害性反応の両方に必要であるため、ウイルス感染に対する感受性は、特にT細胞機能障害に関連している。Roitt 等、免疫学(Immunology)、3版、15.3、1993年。
【0003】
従って、細胞内物質(例えば、感染ウイルス、バクテリアあるいは細胞内寄生体)による攻撃に対する宿主免疫反応の中心となるものは、細胞免疫系、特にHLAクラスICTLにより媒介されるものであろう。クラスI抗原は、修飾された(即ち、癌におけるように、感染するか、あるいはそれとは違うように変性された)自己細胞及び異種細胞のCTLによる認識を制御する細胞表面糖蛋白質である。ウイルス感染宿主細胞がCTLに媒介されて溶解すると、ウイルスは取り除かれ、もし不完全であれば、ウイルスが残存して、結局は慢性組織障害となるかもしれない。ウイルスの残存及び免疫的に媒介された肝臓障害は、HCVに感染した後、慢性C型肝炎に至る重要な機構であると考えられる。
その最も基本的な水準において、細胞免疫反応は、抗原ペプチド、HLA分子及びCTL上のT細胞受容体(TRC)間の多分子相互作用を含むものである。B細胞免疫グロブリン受容体による抗原認識とは異なり、2つの通常のクラスのT細胞は、溶液中にもともと存在する抗原を認識せず、むしろ、2つの全く異なる経路を経て細胞表面に到達した短い抗原ペプチド認識する(Rothbard 等、Ann. Rev. Immunol.、9巻、527〜565頁(1991年)に総説されている。Roetzschke 等、Immunol. Today、12巻、447〜455頁(1991年)も参照のこと)。本発明の課題は、これらの経路の1つ、即ち、ヒトのCD8+T細胞と他の哺乳動物種におけるその対応物を含むものによる活性を誘発することを中心とするものである。
【0004】
ヒトCD8+T細胞は、HLAクラスI分子の抗原結合グルーブ(antigen binding groove)に一旦与えられた短い抗原ペプチド(通常、長さが9〜11残基)を認識する。抗原結合グルーブ、もっと一般的には、HLAクラスI分子は、各HLAクラスI分子の前駆体蛋白質が初めに合成された細胞の表面に存在している。Monaco、Immunol. Today、13巻、173〜179頁(1992年)により報告されているように、このような前駆体蛋白質は、感染ウイルスから得られるであろう。従って、抗原ペプチドは、CTL内で処理されて、原形質内の内生的に(endogenously)合成された抗原の蛋白質分解による開裂によって得られる。次いで、処理されたペプチドは、定住(resident)HLAクラスI蛋白質の抗原結合領域によりHLA対立因子特異性結合モチーフの存在についてそれらが調べられる小胞体の内腔内へ、それらを往復させる輸送体蛋白質族(HLA部位内にコードされた)により、結合される。適当なモチーフを含むペプチドは、対応するHLAクラスI分子により結合され、次いで、β2―ミクログロブリンと結合して、細胞膜内蛋白質として細胞表面へ移動する。細胞表面においては、細胞膜内蛋白質が、CD8+T細胞上の適当に再配列されたTCRへ、抗原ペプチドを与えることができる。この相互作用のT細胞サブセット特異性は、多分子HLA―ペプチド―TCR複合体が、T細胞上のCD8分子と複合体に含まれるHLAクラスI分子との間の相互作用などの副相互作用により安定化されるという事実に由来するものである。
現在、蛋白質がどのように処理されるか、そしてどのペプチド蛋白質がHLAクラスI分子に結合して、CTLに提供されるかを、抗原蛋白質の配列から予測することは困難である。結合モチーフは、いくつかのHLAクラスI分子について、これらの分子から溶出されたペプチドの配列分析により、予測されている。Falk 等、Nature、351巻、290頁(1991年)。しかし、このモチーフに合致する全てのペプチドが、CTL認識可能エピトープとして認識されるわけではない。そのうえ、処理され、HLAクラスI分子に結合したペプチドのなかでも、どれがCTL認識可能エピトープを含んでいるかを同定することは、未だに予測できない。
【0005】
他の系における研究によれば、内生的に合成されたHCV抗原に対するHLAクラスI限定CD8+CTL反応が、このウイルスによる慢性感染の病的結果が観察されることの原因になっていると考えられている。Mondelli 等、Arch. Pathol. Lab. Med.、112巻、489頁(1988年)。この仮説は、必要な試薬と実験システムが無かったため、現在までテストすることができなかった。HCVは、組織培養中で、連続したヒトの細胞株に感染することが実証されておらず、このような研究に用いることのできるHCV感染の唯一の動物モデル(チンパンジー)は、免疫系が十分に確立されていない。
【非特許文献1】Choo 等、Science、244巻、359〜362頁(1989年)
【非特許文献2】Dienstag、Gastroenterology、85巻、439頁(1983年)
【非特許文献3】Choo 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、2451〜2455頁(1991年)
【非特許文献4】Lenzi 等、Lancet、338巻、277〜280頁(1991年)
【非特許文献5】Hollinger 等、編集者、1991年)、410〜413頁の Alter
【非特許文献6】Koziel 等、J. Immunol.、149巻、3339〜3344頁(1992年)
【非特許文献7】Roitt 等、免疫学(Immunology)、3版、15.3、1993年
【非特許文献8】Rothbard 等、Ann. Rev. Immunol.、9巻、527〜565頁(1991年)
【非特許文献9】Roetzschke 等、Immunol. Today、12巻、447〜455頁(1991年)
【非特許文献10】Monaco、Immunol. Today、13巻、173〜179頁(1992年)
【非特許文献11】Mondelli 等、Arch. Pathol. Lab. Med.、112巻、489頁(1988年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
活性の態様とは関係なく、慢性HCV病の場合には、HCVに関するCTL反応が欠如していることが明白である。更に、HCVに感染し、その後、慢性HCV肝炎になった多数の人々がいる。これらの人々における免疫反応を促進して、適当なHCV抗原と反応し、それにより感染を排除することは、望ましいことであろう。急性段階のHCV感染が慢性段階のHCV感染へ進行するのを防ぐことも、望ましいであろう。更に、現在、如何なる種類のHCV感染用ワクチンも入手できないので、好ましくは、ある範囲の抗原決定因子に基づいて、このようなワクチンを確立することが望ましいであろう。従って、本発明の目的は、細胞免疫系を強化又は増大させて、HCV肝炎と戦う物質を提供することである。更に、治療及び予防用途の両方について、細胞免疫系を強化又は増大させて、HCV肝炎と戦う医薬組成物を提供することを目的とする。
その他の発明の特徴に加えて、本発明のこれら及びその他の目的並びに利点は、ここに提供される本発明の記載から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞免疫系を強化又は増大させて、HCV肝炎感染と戦うか、あるいは防止する物質を提供する。特に、本発明は、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)、DLMGYIPLV(Core132―140;配列番号:54)及びQLRRHIDLLV(E1257-266;配列番号:3)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチド又はこのようなポリペプチドを含む分子に関するものである。更に、本発明は、適当な細胞障害性Tリンパ球を、上に挙げたエピトープ群から選ばれたペプチドを含む免疫反応誘発有効量の分子と接触させることからなる、C型肝炎ウイルス抗原に対して免疫反応を起こさせる方法を提供し、更に、CTL特異性エピトープの少なくとも1つを含む医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドを含む分子は、急性又は慢性HCV肝炎の治療及び予防に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ある特定のHCV抗原に対するHLAクラスI限定細胞障害性Tリンパ球(CTL)反応を、特に、このような抗原がHCVに感染した宿主細胞内で発現した場合に、促進するある特定のポリペプチドを提供するものである。このようなポリペプチドは、HCV感染の治療、予防及び診断のための組成物及び方法に、それが急性、慢性のいずれの段階であっても、有用である。刺激されたCTLは、HCVに感染した細胞を殺し、それによりHCV感染の進行を阻止し、妨害しあるいは逆行させる。例えば、上に簡単に述べ、下で更に詳細に述べるCTL反応を、別のHCV抗原に対するTヘルパー反応又は多(multiple)CTL反応と組み合わせるような、エピトープの新規な組み合わせが、本発明の状況(context)内で考えられる。
問題のポリペプチドは、コア(例えば、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)及びLLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2))、NS3(例えば、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)及びKLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28))、NS4(例えば、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)及びLLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35))、NS5(例えば、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42))を始めとして、HCVゲノムの種々の領域から得られる。HCVゲノムにおける数字で示した位置は、Choo 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、2451〜2455頁(1991年)による。
本発明のある実施態様においては、問題のポリペプチドは、下に挙げる他のものと同様に、記載された通りの配列を有しているか、あるいは実質的にそれと同族の配列を有しているであろう。アミノ酸(aa)残基の50%以上が、同一又は類似位置において同一であれば、2つのポリペプチドは、実質的に同族であるといわれる。隣接している(flanking)ポリペプチド又は問題のポリペプチドに結合してもよい他の化学元素とは無関係に、類似位置は、問題のポリペプチドそれ自身の相対位置を意味する。
従って、本発明で用いられる好ましいペプチドは、下記のペプチド:ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、DLMGYIPLV(Core132―140;配列番号:54)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)及びQLRRHIDLLV(E1257-266;配列番号:3)と同一である必要はなく、少なくとも実質的に同族であればよい。対象の化合物は、HCVの少なくとも1つの主要サブタイプに対して、細胞障害性Tリンパ球性活性を促進する能力を持っている。このようなHCVのサブタイプは、Houghten 等、Hepatology、14巻、381〜388頁(1991年)により記載されている。
本発明は、上で同定された同一ポリペプチド群からから選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドに関するものである。好ましいポリペプチドとしては、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)及びこれと実質的に同族のものを挙げることができる。更に好ましいポリペプチドとしては、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)及びこれと実質的に同族のものを挙げることができる。最も好ましいポリペプチドとしては、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)及びこれと実質的に同族のものを挙げることができる。
特に、本発明は、上で詳述したCTLエピトープの1つと実質的に同族であるポリペプチドを含む適当な分子に関するものである。本発明の分子は、少なくとも5つのアミノ酸を含み、また、50個もの多くのアミノ酸を含む。本発明の分子に関する好ましいアミノ酸範囲は、約8個のアミノ酸から約25個未満のアミノ酸である。更に好ましいアミノ酸範囲は、約9個のアミノ酸から約15個未満である。最も好ましいアミノ酸範囲は、約9個のアミノ酸から約13個未満のアミノ酸である。
【0010】
細胞表面上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子に結合する内生的に処理されたウイルスペプチドと大きさが釣り合った、8〜12アミノ酸残基の長さに、本発明のペプチドを処理するのが望ましかもしれない。一般には、Schumacher 等、Nature、350巻、703〜706頁(1991年)、Van Bleek 等、Nature、348巻、213〜216頁(1990年)、Rotzschke 等、Nature、348巻、252〜254頁(1990年)及びFalk 等、Nature、351巻、290〜296頁(1991年)を参照のこと。更に詳細に下に示すように、通常、ペプチドは、上記HCV配列の隣接残基の対応部分と同族である少なくとも大部分のアミノ酸を有し、CTL誘発エピトープを含むであろう。
本発明のペプチドは、標準ペプチド合成化学(下記)を合成的に用いるなどの任意の適当な手段、又は組み換えDNA技術(下記)を用いることにより調製することができる。ペプチドは、他の天然に存在するHCV蛋白質及びその断片を実質的に含まないことが好ましいであろうが、ある実施態様では、ペプチドが、天然の断片若しくは粒子、又は非蛋白性である他の化合物と合成的に結合(conjugate)していることができる。ペプチドという用語は、本明細書では、ポリペプチド又はオリゴペプチドと相互に置き換えて用いることができ、隣接アミノ酸のアルファ―アミノ酸とアルファ―カルボキシ基との間のペプチド結合により互いに結合された一連のアミノ酸を示す。ポリペプチド又はペプチドは、任意の適当な長さであることができ、中性(実際には、両性イオン性)の形でも塩の形でもよく、糖鎖形成、側鎖酸化、リン酸化などの修飾を含まなくても、ここに記載されているように、修飾がポリペプチドの生理活性を破壊しない条件であれば、これらの修飾を含んでもよい。
ここで最初に開示した比較的大きいペプチドの実質的に全ての生理活性を維持しながら、ペプチドはできるだけ小さいことが望ましい。生理活性とは、適当なMHC分子を捕捉し、HCV抗原又は抗原様物質に対する細胞障害性Tリンパ球反応を誘発する能力を意味する。細胞障害性Tリンパ球反応とは、問題のHCV抗原に特異的なCD8+Tリンパ球反応を意味し、CD8+、MHCクラスI限定Tリンパ球が活性化される。活性化されたTリンパ球は、細胞致死を伴い、あるいは伴わずに、リンフォカイン(例えば、ガンマインターフェロン)を分泌し、感染した自己細胞又はトランスフェクトされた細胞におけるウイルスの複製を抑制する他の生成物(例えば、セリンエステラーゼ)を遊離する。
【0011】
問題のポリペプチド内の非臨界的な(noncritical)アミノ酸位置において、その生理活性を実質的に妨げることなく、種々の修飾を行うことができる。このような修飾としては、以下で更に論ずるように、置換、欠失及び他のペプチジル残基、C1〜C7アルキル又はC1〜C10アラルキルの付加を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリペプチドのアミノ酸の大部分は、天然に存在するHCV蛋白質又は上で同定されたエピトープの対応部分のアミノ酸と同一又は実質的に同族であり、上述のように、選択されたポリペプチドは、一末端又は両末端で、他のアミノ酸に隣接され及び/又は修飾されることができる。
従って、その実施態様の1つにおける本発明の分子は、放射標識、酵素、蛍光標識、固体マトリックス、担体及び第二のCTLエピトープからなる群から選ばれた物質が結合しているポリペプチドを、上記のように含んでいる。問題のポリペプチドの構成アミノ酸の側鎖における適当な反応性基の有効性に応じて、N及びC末端並びにその間の点を含む任意の適当な位置で、この物質をポリペプチドに結合することができる。更に、リンカーによって、直接又は間接的に、この物質をポリペプチドに結合することができる。好ましい放射標識としては、3H、14C、32P、35S、125I及び種々の放射免疫測定法に用いられる他の適当な放射標識等が挙げられる。好ましい蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン及び蛍光測定法に用いられる他の適当な蛍光標識等が挙げられる。好ましい酵素としては、アルカリホスファターゼ及び測定操作中に用いられるマーカーを始めとする、任意の適当な目的のために有用な他の適当な酵素が挙げられる。好ましい固体マトリックスとしては、ガラス、プラスチック又はセファデックス(Sephadex)(登録商標)クロマトグラフィー媒体などの種々の樹脂を始めとする、他の適当な表面を挙げることができる。好ましい担体としては、免疫原性脂質、蛋白質及びリポソームやウシ血清アルブミンなどの他の適当な化合物が挙げられる。好ましい第二のCTLエピトープとしては、Tヘルパー特異性抗原、B細胞反応を促進する抗原及びCTLを刺激する他の適当な抗原が挙げられる。
本発明のペプチドの末端に、他のアミノ酸を付加して、ペプチドを互いに連結することを容易にし、上で論じた理由のために、担体、支持体又はより大きいペプチドに結合し、あるいはペプチドの物理的、化学的性質を変性することなどに備えることができる。チロシン、システイン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸などの適当なアミノ酸を、ペプチドのC又はN末端に導入することができる。更に、本発明のペプチドは、アセチル化などの末端NH2アシル化や、アンモニア、メチルアミンなどのチオグリコール酸アミド化、末端カルボキシアミド化により修飾されることにより、天然の配列とは異なるものとすることができる。ある例では、これらの修飾により、支持体や他の分子に連結のための部位を与え、それによりリンカー機能を与えてもよい。
【0012】
本発明のHCVペプチド、又は細胞障害性Tリンパ球促進活性を有するその類似体若しくは同族体を、必要に応じて修飾し、未修飾ペプチドの生理活性を高め、あるいは実質的に保持しながら、ある他の目的とする特性、例えば、改良された薬理学的特性を与えるものと理解される。例えば、ここに開示された配列に由来するペプチドのアミノ末端、カルボキシ末端あるいはその両方のいずれかにおいて、例えば、適当なアミノ酸を付加又は欠失させることにより、ペプチド配列内のアミノ酸を伸長、減少又は置換することで、ペプチドを修飾することができる。
ペプチドを修飾して、修飾されたペプチド類似体が、野生型配列のペプチドよりも大きいCTL活性を有するように、CTL誘発活性を実質的に高めてもよい。例えば、特に、N末端の第二の残基が疎水性であり、HLA限定分子に対する結合に関与している場合、ペプチドのN末端の疎水性を高めることが望ましい。N末端における疎水性を高めることにより、T細胞への表示(presentation)の効率が高くなるであろう。他の病気に伴う抗原、特に、宿主が顕著なCTL活性を示さないかもしれないCTL誘発エピトープを含むものは、第二の残基が通常疎水性であるペプチドのN末端において、疎水性残基を置換することにより、CTL誘発性にされるであろう。
従って、保存的(conservative)であっても保存的でなく(non-conservative)ても、挿入、欠失、置換などの種々の変化に、ペプチドを供してもよく、そのような変化により、それらの使用に際して、ある種の利点が得られる。保存的置換とは、生物学的及び/又は化学的に類似している他の残基でアミノ酸残基を置換すること、例えば、1つの疎水性残基を他のものに、あるいは1つの極性残基を他のものに置換することを意味する。置換としては、GlyとAla、ValとIleとLeu、AspとGlu、AsnとGln、SerとThr、LysとArg、PheとTyrなどの組み合わせを挙げることができる。実質的に、HCV細胞障害性Tリンパ球促進エピトープをまねようとする配列部分は、例えば、連結又は結合を容易にするためなどのように、ペプチドの物理的又は化学的性質を変性する目的で、いずれかの末端に他のアミノ酸を付加する場合を除いて、HCVの少なくとも1つのサブタイプの配列とは20%よりも多く異ならないことが好ましい。ペプチド配列の領域が、HCVサブタイプ中で多形である場合は、1つ又はそれ以上の特定のアミノ酸を変えて、他の菌株又はサブタイプのもっと有効に異なる細胞障害性Tリンパ球エピトープをまねるのが好ましいであろう。
上に挙げた代表的なペプチドを始めとして、本発明により同定されるペプチド配列内には、特定のペプチドにその生理活性、即ち、HCV感染細胞又はHCV抗原を発現する細胞に対するクラスI限定細胞障害性Tリンパ球反応を促進する能力を保持させるようにする残基(実質的に、機能的に同等であるもの)がある。これらの残基は、適当な単一アミノ酸置換、欠失又は挿入に続いて、そのように刺激されたCTLによる細胞障害性活性のテストなどの適当な測定を行うことにより、同定することができる。
更に、残基の側鎖によりなされる寄与は、個々の残基をGlyやAlaなどの適当なアミノ酸で体系的に置換することにより、証明することができる。本発明のペプチドの特性の1つである、線状アミノ酸配列のどの残基が、特定のMHC蛋白質との結合に必要かを決める体系的な方法は、公知である。例えば、Allen 等、Nature、327巻、713〜717頁、Sette 等、Nature、328巻、395〜399頁、Takahashi 等、J. Exp. Med.、172巻、2023〜2035頁(1989年)及び Maryanski 等、Cell、60巻、63〜72頁(1990年)参照。
多重アミノ酸置換を許容するペプチドは、一般に、小さくて比較的中性の分子、例えばAla、Gly、Pro又はそれよりも小さい残基を取り入れる。置換、付加又は取り除かれることができる残基の数及び種類は、必須エピトープ点(essential epitopic points)間に必要な間隔と、求められているある特定の構造的、機能的特性とによって決まるであろう。残基の種類によって、例えば、特性のなかでも、疎水性基と親水性基を区別することが意図される。所望であれば、このような変性により、細胞障害性Tリンパ球への表示(presentation)のために、そのMHC分子に対するペプチド類似体の結合親和性を高めることもできる。一般に、エピトープ残基及び/又は構造的に重要な残基間のスペーサー置換、付加又は欠失には、結合を破壊するかもしれない立体及び電荷干渉を避けるように選ばれたアミノ酸又は部分が用いられるであろう。
【0013】
目的とする生理活性を保持しながら多重置換を許容するペプチドは、D―アミノ酸含有ペプチドとして合成してもよい。このようなペプチドは、“インバーソ(inverso)”又は“レトロインバーソ(retro-inverso)”形として、即ち、配列のL―アミノ酸をD―アミノ酸で置換するか、あるいはアミノ酸の配列を逆にし、L―アミノ酸をD―アミノ酸で置換することにより、合成してもよい。D―ペプチドは、ペプチダーゼに対する耐性が実質的により大きく、従って、それに対応するL―ペプチドと比較して、血清及び組織中でそれよりも安定であるので、生理学的条件下でのD―ペプチドの安定性が、対応するL―ペプチドと比較して、親和性の差違をより大きく補償するであろう。置換したかあるいは置換しないL―アミノ酸含有ペプチドは、D―アミノ酸でキャップをかぶせて、抗原ペプチドのエキソペプチダーゼ分解を抑制することができる。
ここに述べた典型的なペプチドの他に、本発明は、HCVに対するMHC限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発することができる該ペプチド領域と関連した他のエピトープ領域を同定する方法を提供する。この方法は、感染及び未感染個体から末梢血リンパ球(PBL)を取得し、PBL細胞を、ペプチド領域[例えば、コア領域(例えば、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)及びLLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2))、NS3(例えば、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)及びKLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28))、NS4(例えば、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)及びLLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35))、NS5(例えば、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42))]由来の合成ペプチド又はポリペプチド断片で曝す(exposing)(即ち、刺激する)ことからなる。DLMGYIPLV(Core132―140;配列番号:54)及びQLRRHIDLLV(E1257-266;配列番号:3)も、この点で同様に有用である。
HCV配列から任意に選ばれ、それぞれ代表的には8〜20残基、好ましくは9〜12残基の長さの重なり合っている合成ペプチドのプールを、細胞を刺激するのに用いることができる。あるいは、HLA―A2特異性CTLエピトープについて下記実施例1に例示するように、特定のHLAクラスI対立因子のCTL指向抗原の結合モチーフに適合するペプチド(Falk 等、Nature、351巻、290〜296頁(1991年))を、テストのために選択した。なかでも、HLA―Aw68(Guo 等、Nature、360巻、364〜366頁(1992年))又はHLA―B27(Jardetzky 等、Nature、353巻、326〜329頁(1991年))などの、他のHLAクラスI対立因子の類似の結合モチーフに適合するペプチドは、ここに述べる方法に従うことによって同定してもよく、従って、本発明の一部と見られるものと考えられる。活性ペプチドは、細胞障害性Tリンパ球活性を誘発するプールから選択することができる。特異性細胞障害性活性を誘発するペプチドの能力は、刺激されたPBL細胞を、目的とされる抗原が細胞によって内生的に合成される(又は、細胞が問題のペプチドで脈動(pulse)される)ように、そのHCVサブゲノム(subgenomic)断片で感染又はトランスフェクトされた自己標識(例えば、51Cr)標的細胞(HLA適合(matched)マクロファージ、T細胞、線維芽細胞又はBリンホブラストイド(lymphoblastoid)細胞など)でインキュベートし、標識の特異放出(specific release)を測定することによって求められる。
【0014】
細胞障害性Tリンパ球反応を促進するエピトープ領域を有するペプチドが、ひとたび同定されると、反応のMHC限定要素が決定され、及び/又は確認される。これは、刺激されたPBL又はその短期系(short term lines)を、問題のペプチドの存在下でインキュベートされた、(標識された)標的細胞若しくは公知のHLAタイプ又は適当な対照のパネルでインキュベートすることを含むものである。CTLで溶解されるパネルの細胞のHLA対立因子を、溶解されない細胞と比較し、問題の抗原に対する細胞障害性Tリンパ球反応のためのHLA限定要素を同定する。
Carbone 等、J. Exp. Med.、167巻、1767頁(1988年)は、繰り返してペプチドを刺激すると、ペプチドを認識するが、もともと存在する抗原を認識しない細胞障害性Tリンパ球が生じるかもしれないように、ペプチドでの刺激により、対応する内生蛋白質に対する親和性が低い細胞障害性Tリンパ球が誘発されるかもしれないことを報告した。刺激された細胞障害性Tリンパ球が、もともと存在するHCV蛋白質を認識できないと、HCV蛋白質治療薬及びワクチン組成物の開発には望ましくないであろうから、この潜在的な制限を克服する方法が用いられる。合成ペプチドに対するよりも、天然に処理された抗原に対する親和性の方が大きいT細胞を同定し、選択するために、本発明では、細胞障害性T細胞の逐次再刺激(sequential restimulation)が用いられる。活性化されたPBLを再刺激することにより、短期細胞障害性Tリンパ球系が株化される。ペプチドで刺激された細胞は、ペプチド及び組み換え又はもともと存在するHCV抗原、例えば、NS3由来ペプチド、で再刺激される。活性を有する細胞は、適当なT細胞ミトゲン、例えば、フィトヘムアグルチニン(PHA)でも刺激される。刺激された細胞は、T細胞ヘルプ(help)の抗原非特異性源としての照射された同種異系のPBLとHCV抗原を備えている。もともと存在するHCV抗原を認識する細胞障害性Tリンパ球の個体群(population)を選択的に拡大し、長期系を株化するために、患者からのPBLサンプルを、まず、ペプチド及び組み換え又はもともと存在するHCV抗原で刺激し、次いで、対応するHCV抗原ポリペプチドを安定に発現するHLA適合Bリンホブラストイド細胞で再刺激する。適当な抗原を作るようにトランスフェクト又は感染された自己、同種異系Bリンホブラストイド又はその他の細胞を用い、内生的に合成された抗原を認識する能力について、細胞株を再確認する。
【0015】
一人若しくはそれ以上の患者、又はHLAタイプにおいて、抗HCV細胞障害性Tリンパ球反応を誘発する原因となる本発明の種々のペプチドを同定した場合、化学結合によるかあるいは物理的混合物として、2つ又はそれ以上のペプチドを組成物内で組み合わせることが好ましいこともある。組成物内のペプチドは、同一でも異なっていてもよく、親ペプチドと同等又はそれよりも大きい生理活性を与えるべきである。例えば、ここに述べた方法を用いて、2つ又はそれ以上のペプチドが、特定領域からの異なるかあるいは重なり合った細胞障害性Tリンパ球エピトープ、例えば、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)及びKLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)におけるようなNS3を規定してもよく、これらのペプチドを“カクテル”の形に混合して、細胞障害性Tリンパ球の免疫原性を高めることができる。そのうえ、特に、第二又は後に続くペプチドが、第一のペプチドとは異なるMHC限定要素を持っている場合は、同一又は異なるHCV蛋白質からの、1つの領域の適当なペプチドを他のHCV領域の適当なペプチドと組み合わせることができる。この開示は、コア(Core)、E、NS3、NS4及びNS5領域由来のHCVエピトープ配列を含んでいる。
このペプチド組成物を有効に用いて、別の個体群のために、治療、予防又は診断方法及び本発明の組成物により与えられる免疫範囲を拡げることができる。例えば、主な人種グループ(コーカサス人、アジア人及びアフリカ黒人)中のHLA対立因子の頻度(frequency)を次の表に示す。本発明の治療又はワクチン組成物は、潜在的な治療又は免疫をできるだけ高いパーセントの個体群に与えるために、製剤化されるであろう。
主な人種グループ中のHLA対立因子頻度
HLA対立因子 EUC NAC AFR JPN
A2 45.3 46.6 27.3 43.2
A29 7.4 8.1 12.3 0.4
A31 5.4 6.2 4.4 15.3
A32 8.8 7.1 3 0.1
A33 3.3 3.4 9 13.1
A28* 7.7 9.9 16.6 1.1
略号:EUC、ヨーロッパコーカサス人;NAC、北アメリカコーカサス人;AFR、アフリカ黒人;JPN、日本人
A28*は、2つの対立因子A268及びA269を示す。
【0016】
本発明のペプチドは、結合を介して組み合わせ、ポリマー(多量体)を形成することができ、あるいは結合することなく、混合物として組成物に製剤化することもできる。同一ペプチドをそれ自身に結合して、ホモポリマーを形成している場合、複数の繰り返しエピトープ単位が提供される。ペプチドが異なる場合は、例えば、異なるHCVサブタイプに特異的なエピトープ、サブタイプ内の同一蛋白質又は遺伝子領域に対する異なるエピトープ、サブタイプ内の異なる蛋白質又は遺伝子領域に対する異なるエピトープ、異なる限定特異性及び/又はTヘルパーエピトープを含むペプチドのカクテルを形成して、繰り返し単位を有するヘテロポリマーが提供される。共有結合の他に、分子間及び構造内結合を形成することができる非共有結合が含まれる。
ホモポリマー若しくはヘテロポリマーのための結合、又は単体へのカップリングのための結合は、種々の方法で行うことができる。例えば、システイン残基は、アミノ末端及びカルボキシ末端の両方へ付加することができ、そこでは、システイン残基の制御された酸化を経て、ペプチドが共有結合で結合されている。N―スクシジミジル―3―(2―ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)を始めとする、一方の官能基にはジスルフィド結合を、他方にはペプチド結合を生成する多数のヘテロ二官能性剤(heterobifunctional agents)も有用である。この剤は、それ自身と一方の蛋白質のシステイン残基との間にジスルフィド残基を生成し、他方のリシン又はその他の遊離アミノ基に、アミノ基を介してアミド結合を生成する。このようなジスルフィド/アミド形成剤は、種々のものが知られている。例えば、Immun. Rev.、62巻、185頁(1982年)参照。他の二官能性カップリング剤は、ジスルフィド結合よりも、むしろチオエーテル結合を形成する。これらのチオエーテル形成剤の多くは、市販されており(例えば、Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI から)、6―マレイミドカプロン酸、2―ブロモ酢酸、2―ヨード酢酸、4―(N―マレイミドメチル)シクロヘキサン―1―カルボン酸などのエステルが挙げられる。それらをスクシンイミド又は1―ヒドロキシ―2―ニトロ―4―スルホン酸ナトリウム塩と組み合わせることにより、カルボキシル基を活性化することができる。特に好ましいカップリング剤は、スクシンイミジル―4―(N―マレイミドメチル)シクロヘキサン―1―カルボキシレート(SMCC)である。適切な結合は、結合された基のいずれをも実質的に妨げず、記載のように、例えば、HCV細胞障害性T細胞決定因子/刺激剤、ペプチド類似体又はTヘルパー決定因子/刺激剤として、機能するものと理解されよう。
【0017】
本発明の他の態様では、本発明のペプチドを、HCVTヘルパー細胞エピトープ、即ち、HCVへの細胞障害性T細胞の誘導において協同して働くT細胞を刺激するエピトープと混合又は結合することができる。Tヘルパー細胞は、例えば、Tヘルパー1表現型でも、Tヘルパー2表現型でもよい。
本発明のペプチドは、任意の適当な手段を用いて、製造することができる。ペプチドの大きさが比較的短い(一般に、アミノ酸50個未満、好ましくは20個未満)ため、従来のペプチド合成技術に従って、溶液中又は個体支持体上で合成することができる。種々の自動合成器が市販されており(例えば、Applied Biochems から)、公知のプロトコルに従って使用することができる。例えば、Stewart 及び Young、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)(第2版、Pierce Chemical Co.、1984年)、Tam 等、J. Am. Chem. Soc.、105巻、6442頁(1983年)、Merrifield、Science、232巻、341〜347頁(1986年)、Barany 及び Merrifield、ペプチド(The Peptides)、1〜284頁、(Gross 及び Meienhofer 編、Academic Press、New York、1979年)参照。
あるいは、ペプチドを製造するのに、問題のペプチドをコードする塩基配列を発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトして、発現に適した条件下で培養する適当な組換DNA技術を用いてもよい。これらの操作は、例えば、Sambrook 等、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)、(第2版、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York、1989年)、分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、(Ausubel 等編、John Wiley and Sons, Inc., New York、1987年)及び米国特許第4,237,224号、第4,273,875号、第4,431,739号、4,363,877号、第4,428,941号に一般的に記載されているように、一般に当該技術において知られている。このように、組換DNA由来蛋白質又はペプチドは、1つ又はそれ以上の本発明のペプチド配列を含み、ここで同定されるか、あるいはここに記載されている方法を用いて同定されたHCV細胞障害性T細胞エピトープを作るのに用いることができる。例えば、NS3アミノ酸配列が、ここに記載されているペプチド領域のエピトープをより有効に提供して、細胞障害性Tリンパ球反応を促進するように変更された、本発明の組換NS3由来ペプチドを製造することができる。この手段により、1つのポリペプチドにいくつかのT細胞を組み込むポリペプチドが使用される。
ここで考えられている長さのペプチドをコードする配列を、化学的技術、例えば、Matteucci 等、J. Am. Chem. Soc.、103巻、3185頁(1981年)により合成できるときは、もともと存在しているペプチド配列をコードするものを適当な塩基で置換するだけで、修飾を行うことができる。次いで、コーディング配列に適当なリンカーを設け、当該技術において一般に入手できる発現ベクター、及び適当な宿主を形質転換して、目的とする融合蛋白質を作るのに用いられるベクター内に結合することができる。多数のこのようなベクター及び適当な宿主系が、現在利用できる。融合蛋白質の発現のためには、コーディング配列に、作用可能に結合された開始及び停止コドン、プロモーター及びターミネーター領域、並びに適当な細胞宿主における発現用の発現ベクターを得るための複製系を設けるであろう。例えば、バクテリア宿主と両立できるプロモーター配列を、目的とするコーディング配列の挿入に都合の良い制限部位を含むプラスミドに与える。得られた発現ベクターは、適当なバクテリア宿主に形質転換される。適当なベクター及びコントロール配列を用いて、酵母又は哺乳動物細胞宿主を使用してもよい。本発明のもう一つの態様は、適当な細胞障害性Tリンパ球を、上に列挙したCTLエピトープ群から選ばれた免疫反応促進有効量の分子と接触させることからなる、C型肝炎ウイルス抗原に対する免疫反応を促進する方法に関するものである。本発明の分子及びそのような分子が含むポリペプチドに関して、上に列挙したバリエーションの全てを、免疫反応を促進する方法に関連して用いてもよい。
CTLエピトープ単独でも、放射標識CTLエピトープの複合体でもよく、あるいは、例えば、上述のような、何か他のCTLエピトープ類似体でもよいCTLエピトープ含有分子とCTLとのそのような接触は、生体外で起こってもよい。従って、このような接触が行われた後、それが接触している抗原に関して、CTLが刺激され、次いで、治療目的の始めの宿主(originating host)に戻されてもよく、これについては、以下で更に論ずることにする。勿論、接触された細胞が宿主へ戻されても、戻されなくても、診断目的は満たされる。その目的は、宿主のCTLが、テストされたエピトープに結合することができるかどうか、もしそうであれば、立体構造は変更されるかもしれないが(however configured)、それによって刺激されることができるかどうかに答えることである。事実、本発明は、哺乳動物のリンパ球において、典型的なリガンド―レセプター結合現象の結果であるC型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する細胞障害性T細胞を検出する種々の測定法を意図しているものである。事実、本発明は、リガンド及びレセプターの研究でよく知られている方法を用いて、このような結合の強さを求める測定法を含むものである。
【0018】
本発明の1つの好ましい実施態様(診断1と呼ぶ)は、(a)細胞障害性T細胞についてテストされるリンパ球と同じHLAクラスのものである標的細胞を、上に列挙したエピトープの群から選ばれたペプチドの少なくとも1つを含む分子と接触させる工程、(b)細胞障害性T細胞についてテストされるリンパ球を、上に列挙したエピトープの同じ群又はそれと実質的に同族であるものから選ばれたペプチドの少なくとも1つを含む分子と、HCV特異性CTLを再刺激して、適当な標的細胞に反応するのに十分な条件下で接触させる工程、及び(c)テストされたリンパ球が、標的細胞に細胞障害効果を及ぼすかどうかを求め、それによりHCV蛋白質のT細胞エピトープを認識するCTLの存在を示す工程からなる、哺乳動物のリンパ球において、C型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する細胞障害性T細胞を検出する方法に関するものである。
もう一つ別の好ましい実施態様(診断2と呼ぶ)は、(a)CTLについてテストされるリンパ球を、適当な標識及び上に列挙したエピトープの同じ群又はそれと実質的に同族であるものから選ばれたペプ チドの少なくとも1つを含む分子と、HCV特異性CTLを再刺激して、適当な標的細胞に反応するのに十分な時間、温度、湿度、塩、栄養素及びpHの条件下で接触させる工程、(b)このように接触させた細胞を集菌し、標識分子の不在下で、未結合標識分子を除去するのに十分な媒質で洗浄する工程、及び(c)適当な測定手段を用いて、結合標識分子を測定する工程からなる、哺乳動物のリンパ球において、HCVの特定のT細胞エピトープに結合できるレセプターを有するCTLを検出する方法に関するものである。あるいは、工程(b)は、標識されていない分子又は当該技術において知られている他の手段を有するか、又は有さない低張性溶液を用いて細胞を溶解し、未結合標識分子を含まない膜画分を調製することにより行われてもよい。この方法に関連して用いられる適当な標識としては、放射性同位元素を付けた分子が挙げられ、分子の構成非放射性原子が、3H、14C又は35Sなどの放射性原子で置換されており、分子中にベンゼン環又は他の適当な基が含まれている場合は、125Iをそれにくっつけることができる。その他の適当な標識としては、アルカリホスファターゼなどの、基質を1つの色から他の色に変えることができる酵素の他に、当該技術においてよく知られている方法を用いて、適当なアミノ酸側の基に共有結合でくっつけることができるフルオレセインイソチオシアネートなどの蛍光基が挙げられる。適当な測定手段としては、分光計、結合されたリガンド、例えばペプチドのある特定の濃度を示す発行された標準と反応色を目で比較するためのカラーチャートの他に、シンチレーションガンマ線やガイガーカウンターなどが挙げられる。
【0019】
患者から細胞を入手し、それを培養し、所定の細胞個体群の細胞障害の存在及び程度を求めるのに用いる具体的な方法は、当該技術においてよく知られており、その1つの例示が、下記実施例2に詳述されている。上記診断方法に存在する宿主リンパ球の接触が、生体内又は生体外で起こるかもしれないことも考えられ、もし生体内であれば、診断1、工程(a)及び(c)が生体外で起こり、診断2、工程(b)及び(c)も生体外で起こる。従って、本発明は、他のヒトCTLを検出するために知られている適当に適合する方法により、例えば、HCVに感染したことが知られているか、あるいは感染の疑いがある患者の血液又はその他の組織内のヒトCTLを検出することを規定するものである。例えば、Clerici 等、J. Imm.、146巻、2214〜2219頁(1991年)参照。更に、本発明は、本発明のペプチドに対して特異的なレセプターを有する細胞を検出する方法を提供する。
本発明の測定法は、哺乳動物の免疫系がHCVの上記エピトープにより刺激されたかどうかを求め、それにより、そのような反応の存在及び程度が、HCV感染の存在(即ち、診断用)又はウイルスの病原性効果の強さ(severity)(即ち、予診指示薬として)と相互に関連することができるかどうかを求めるのに有用である。
従って、本発明のペプチドは、ペプチド又は関連ペプチドを用いる治療養生法に対する特定の個体の感受性を求めるのに用いられてもよく、現存する治療プロトコルを改変したり、病気にかかった個体の予後を決定するのに有用であろう。更に、どの個体が、慢性HBV感染となることについて実質的に危険な状態にあるかを予測するために、ペプチドを用いてもよい。
種々の形態のうちの任意の形態の本発明の分子と、生体外方法として上に記載されたCTLとの間の接触は、ヒト及びその他の哺乳動物種を含む哺乳動物で起こることが好ましい。これまでに述べた形態のうちの1つの形態のCTLエピトープを、急性若しくは慢性形の感染に苦しむか、又は全く感染していない個体に導入するのも有用であろう。その場合、この導入は、予防効果がある。
どんな形態でも、また、それについては、宿主へ再導入しようとする生体外刺激CTLに関して、CTLエピトープの好ましい製剤は、医薬組成物としてである。特に、本発明の医薬組成物は、上に挙げたエピトープの群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドを含む分子、又はポリペプチドそれ自身と、薬理学的に許容されうる担体からなる。
当業者は、例えば、HCV肝炎の急性又は慢性病状の治療のために、哺乳動物に化合物を投与する適当な方法を用いることができ、それは、本発明の方法において有用であろうということを理解するであろう。特定の化合物投与するために、2つ以上の経路を用いることができるが、特定の経路が、他の経路よりも直接的で有効な反応をもたらすことができる。従って、ここに提供される記載された方法は、単に典型的なものであり、決して限定するものではない。
【0020】
一般に、上述のような本発明のペプチドは、HCVにすでに感染した個体に、医薬組成物で投与されるであろう。感染の潜伏段階又は急性段階にあるものを、免疫原性ペプチド単独で、あるいは適当に他の治療と複合させて、治療することができる。治療用途では、HCVに対する有効な細胞障害性Tリンパ球反応をもたらし、その症状及び/又は合併症を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に進行を抑えるのに十分な量で、組成物を患者に投与する。これを達成するのに十分な量は、“免疫反応促進量”でもある“治療的又は予防的有効投与量”と定義される。治療又は予防用に有効な量は、治療される病気の段階及び重さ(severity)、患者の年齢、体重および一般的な健康状態並びに処方する医師の判断によって決まるであろう。投与量の規模も、特定の化合物又は刺激されたCTLの投与に伴う可能性がある副作用の存在、性質、程度及び目的とする生理的効果の他に、ペプチド組成物、投与方法、投与のタイミング及び頻度により決まるであろう。種々の条件又は病気の状態により、複合投与を含む長期投与が必要となるかもしれないことは、当業者が理解するところであろう。
適当な投与量及び投与処方は、当業者に知られている従来の用量反応域検出技術により決定することができる。一般に、その化合物の最適投与量よりも少ない少量の投与量で治療を開始する。その後、その状況下で最適の効果が達成されるまで、投与量を少しづつ増やしていく。本発明方法は、代表的には、個体の体重1kg当たり、上記化合物の1つ又はそれ以上を約0.1μg〜約50mg投与することを含むものである。70kgの患者には、約10μg〜約100mgのペプチドを投与し、次いで、患者から取得したPBL中のHCV特異性CTL活性を測定することにより求められる患者のCTL反応に基づいて、数週間から数カ月にわたり、約1μg〜約1mgのペプチドを追加投与を行うのがより一般的であろう。患者から得られた刺激されたCTLの再導入については、代表的には、投与量は、取り出された細胞の数の1%からそれらの全てまでの範囲となるであろう。
本発明のペプチド及び組成物は、重い病状、即ち、命が危ないか、あるいは命が危なくなる可能性がある状態において、一般に使用してもよいことを心に留めておくべきである。このような場合、外来物質が最小限であること及びペプチドが相対的に非毒性であることのために、これらのペプチド組成物を相当過剰に投与することが可能であり、治療する医師は、それを望ましいものと感じるかもしれない。
治療する医師によって選択された投与量レベル及びパターンで、組成物の単一又は複合投与を行うことができる。いずれにせよ、医薬製剤は、患者を有効に治療するのに十分な量の本発明の細胞障害性Tリンパ球刺激ペプチドを与えなければならない。
治療用では、HCV感染の最初の徴候で、急性感染の場合は、診断後すぐに、投与を開始し、少なくとも症状が弱まるまで、そして、その後のある期間、投与を続けるべきである。十分に定着した慢性の病状では、負荷投与に続いて、維持投与又は追加投与が必要であろう。急性肝炎の治療中に、HCVに対する有効細胞障害性Tリンパ球反応が誘発されることによって、その後に続く慢性肝炎、HCV保菌者段階及び確実な肝細胞性癌の発生が最小限にとどめられるであろう。
本発明の組成物で感染個体を治療すると、急性感染個体における感染の消散を促進するかもしれず、その大部分は、自然に感染を排除することができる。慢性感染になり易い(あるいはその傾向がある)これらの個体については、この組成物は、急性感染から慢性感染への進行を防ぐ方法に、特に有用である。慢性感染になり易い個体が、例えば、ここに記載された診断方法によって、感染前又は感染中に確認される場合は、組成物をそれらの個体を標的にして投与し、大きい個体群に投与することを最小限に抑えることができる。
【0021】
ペプチド組成物を慢性肝炎の治療に用い、保菌者の免疫系を刺激して、ウイルスに感染した細胞を大幅に減少させるか、あるいは除去することさえも可能である。感染後3〜6カ月から、ウイルスに対してテストが陽性となるので、慢性肝炎の個体を確認することができる。感染の急性段階中に、細胞障害性Tリンパ球反応が不十分である(あるいは無い)ために、個体が慢性HCV感染になるかもしれないので、細胞障害性T細胞反応を有効に刺激するのに十分な量の免疫強化ペプチドを製剤内に与え、それに十分な投与様式を提供することが重要である。このように、慢性肝炎の治療及び/又は予防のためには、代表的な投与量は、70kgの患者について、1回の投与当たり約1μgから1,000mgまで、好ましくは5μgから100mgまでの範囲内にある。投与は、少なくとも臨床的症状又は実験室指示薬が、HCV感染が取り除かれたか、あるいは実質的に弱められたことを示すまで、そして、その後のある期間、続けるべきである。免疫投与に続いて、設定された間隔、例えば1週間から4週間で、感染を排除するのに必要なように、おそらく長期間にわたって、維持投与又は追加投与が必要であろう。慢性及び保菌者HCV感染の治療のためには、CTLペプチドを、HCV抗原の組み合わせに対する免疫反応を誘発するペプチド又は蛋白質と組み合わせることが望ましかもしれない。
治療用医薬組成物は、非経口、局部(topical)、経口又は局所(local)投与が意図されており、一般に、例えば、薬理学的に許容されうる担体及び急性又は慢性HCV感染の悪影響を逆にするか防止するのに十分な量の活性成分を含んでいる。担体は、従来から用いられているもののうちの任意のものでよく、溶解度や化合物との反応性の欠如等の化学物理的特性と投与経路によって限定されるだけである。
本発明の医薬組成物に用いる薬理学的に許容されうる酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸などの鉱酸、並びに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸p―トルエンスルホン酸及びアリールスルホン酸などの有機酸から誘導されるものが挙げられる。
ここに記載された薬理学的に許容されうる賦形剤、例えば、ビヒクール、アジュバント、担体又は希釈剤は、当業者によく知られており、一般の人々の手に入るものである。薬理学的に許容されうる担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であるものであり、使用条件下で、有害な副作用又は毒性を持たないものであることが好ましい。
賦形剤の選択は、一部には、組成物を投与するのに用いられる特定の方法による他に、選ばれた特定のエピトープ及びエピトープ製剤によって、決定されるであろう。従って、本発明の医薬組成物には、種々の適当な製剤がある。
下記の経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、直腸内及び膣内投与用製剤は、単に典型的なものであり、決して限定するものではない。
医薬組成物は、非経口、例えば静脈内、皮下、皮内又は筋肉内投与されるのが好ましい。このように、本発明は、水性又は非水性等張無菌注射液を始めとする、非経口投与に適した許容されうる担体に、溶解又は懸濁された細胞障害性Tリンパ球刺激ペプチドの溶液を含む非経口投与用組成物を提供する。
【0022】
全体的に、非経口組成物用有効医薬担体の要件は、当業者によく知られている。Banker 及び Chalmers 編、製剤学及び薬学の実際(Pharmaceutics and Pharmacy Practice)、238〜250頁、J. B. Lippincott Company, Philadelphia, PA (1982年)、及び Toissel、注射できる薬剤のASHPハンドブック(ASHP Handbook on Injectable Drugs)、第4版、622〜630頁(1986年)参照。このような溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、目的の受容体の血液で製剤を等張性にする溶質、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含むことができる水性及び非水性殺菌懸濁液を含むことができる。この化合物は、無菌液体又は液体の混合物などの医薬担体内の薬理学的に許容されうる希釈剤で希釈して、投与してもよい。このような液体としては、水;食塩水;デキストロース水溶液及び関連した糖溶液;エタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコールなどのアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール;ジメチルスルホキシド;2,2―ジメチル―1,3―ジオキソラン―4―メタノールなどのグリセロールケタール;ポリエチレングリコール400などのエーテル;オイル;脂肪酸;脂肪酸エステル又はグリセリド;アセチル化脂肪酸グリセリドなどを挙げることができ、石鹸や洗浄剤などの薬理学的に許容されうる界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの懸濁剤又は乳化剤、及びその他の医薬助剤を添加しても、しなくてもよい。
非経口製剤に有用なオイルとしては、石油、動物、植物又は合成オイルが挙げられる。このような製剤に有用なオイルの具体例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、石油オイル、鉱物油を挙げることができる。非経口製剤での使用に適当な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸を挙げることができる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、適当な脂肪酸エステルの例である。
非経口製剤に用いる適当な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びとりエタノールアミン塩が挙げられ、適当な洗浄剤としては、(a)例えばハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウムなどのカチオン性洗浄剤、(b)例えば、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリル、スルホン酸オレフィン、硫酸アルキル、硫酸オレフィン、硫酸エーテル、硫酸モノグリセリドなどのアニオン性洗浄剤、(c)例えば、酸化脂肪族アミン、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体などのノニオン性洗浄剤、(d)例えば、アルキル―β―アミノプロピオン酸塩、2―アルキルイミダゾリン4級アンモニウム塩などの両性洗浄剤、及び(e)それらの混合物が挙げられる。
非経口製剤は、代表的には、約0.5重量%から約25重量%の活性成分を溶液中に含むであろう。防腐剤及び緩衝剤を用いてもよい。注射部位の刺激をできるだけ少なくするか、あるいは無くするために、このような組成物は、約12から約17までの親水親油バランス(HLB)を有する1つ又はそれ以上のノニオン性界面活性剤を含んでもよい。このような製剤中の界面活性剤の量は、代表的には、約5重量%から約15重量%の範囲であろう。適当な界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタンなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びエチレンオキサイドの疎水性塩基との高分子量付加物、プロピレンオキサイドのプロピレングリコールとの縮合により形成された高分子量付加物を挙げることができる。非経口製剤は、1回の投与量又は多数回の投与量にシールされた入れ物、例えばアンプル及びバイアルで提供することができ、注射に使用する直前に、水などの無菌液体賦形剤を加えるだけでよい凍結乾燥された状態で、貯蔵することができる。先に述べた種類の無菌粉末剤、顆粒剤及び錠剤から、即時調合注射溶液及び分散液を調製することができる。
【0023】
経皮薬剤放出に有用なものを始めとする局部製剤が、当業者によく知られており、本発明に関連して、皮膚に塗布するのに適当である。
経口投与に適した製剤は、かかる化合物が胃腸管の消化分泌から保護されずに経口投与されるならば、エピトープのペプチジル性(peptidyl nature)及びその起こりそうな崩壊を考える特別な配慮が必要である。このような製剤は、(a)液体溶液、例えば、水、食塩水又はオレンジジュースなどの希釈剤に有効量の化合物を溶解したもの、(b)固形剤、顆粒剤の他に、それぞれ所定量の活性成分を含むカプセル、香粉(sachet)、錠剤、ロゼンジ及びトローチ、(c)粉剤、(d)適当な液体での分散液、及び(e)適当なエマルジョンからなることができる。液体製剤は、水及びアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール、ポリエチレンアルコールなどの希釈剤を含んでもよく、薬理学的に許容されうる界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤を添加しても、しなくてもよい。カプセル形は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、コーンスターチなどの不活性充填剤を含む通常のハードシェル又はソフトシェルゼラチンタイプのものとすることができる。錠剤形は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微結晶性セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーゴム、コロイド状二酸化珪素、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸及びその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、芳香剤及び薬理学的に両立しうる賦形剤の1つ又はそれ以上を含むことができる。ロゼンジ形は、ゼラチンとグリセリン又はスクロースとアラビアゴムなどの不活性基剤に活性成分を含む香錠、活性成分に加えて、当該技術で知られているような賦形剤を含むエマルジョン、ゲル等の他に、芳香剤、通常はスクロースとアラビアゴム又はトラガカントゴムに活性成分を含むことができる。
本発明の分子及び/又はペプチドは、単独又は他の成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤にすることができる。エアロゾル製剤については、細胞障害性Tリンパ球刺激ペプチドが、界面活性剤及び噴射剤を有する微粉末の形で、好適に供給される。ペプチドの代表的な割合は、0.01〜20重量%、好ましくは、1〜10重量%である。界面活性剤は、勿論、非毒性でなければならず、噴射剤に可溶性であることが好ましい。このような界面活性剤の例は、炭素数が6〜22の脂肪酸のエステル又は部分エステルであり、例えば、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸、オレイン酸と脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステルが挙げられる。混合又は天然グリセリドなどの混合エステルを用いてもよい。界面活性剤は、組成物の0.1〜20重量%、好ましくは0.25〜5重量%を構成してもよい。組成物の残りは、通常、噴射剤である。例えば、鼻腔内搬送用レシチンなどの単体を、所望に応じて含んでもよい。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容されうる加圧噴射剤の中に入れることができる。それらは、ネブライザーやアトマイザーに入れるなどのように、非加圧製剤用医薬として製剤化してもよい。このようなスプレー製剤は、粘膜へスプレーするのに用いてもよい。
更に、本発明方法で有用な化合物及びポリマーは、乳化基剤や水溶性基剤などの種々の基剤と混合して、座薬にしてもよい。膣内投与に適した製剤は、活性成分の他に、当該技術において適当であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫又はスプレー処方として提供されてもよい。
【0024】
いくつかの実施態様においては、一般にCTLを活性化する少なくとも1つの成分を医薬組成物に含むことが望ましいかもしれない。ウイルス抗原に対して生体内でCTLを活性化することができる脂質、例えばトリパルミトイル―S―グリセリルシステイニルセリルセリン(P3CSS)が同定されており、それは、適当なペプチドに共有結合で結合したとき、ウイルス特異性細胞障害性Tリンパ球を有効に活性化することができる。Deres 等、Nature、342巻、561〜564頁(1989年)参照。本発明のペプチドは、例えば、P3CSS及び個体に投与されたリポペプチドと結合して、HCVに対する細胞障害性Tリンパ球反応を特異的に活性化することができる。更に、適当なエピトープ、例えばある種のNS3エピトープを示すペプチドに結合したP3CSSで、中和抗体の誘導も活性化されるので、2つの組成物を組み合わせて、HCV感染に対する体液性反応及び細胞媒介反応の両方をより有効に誘発することができる。
医薬製剤中の本発明の細胞障害性Tリンパ球刺激ペプチドの濃度は、広範囲に、例えば約1%未満、通常は約10%以上から、20〜50重量%以上もの高濃度まで、変更することができ、選択された特定の投与様式に従って、主に、液体容積、粘度等により選択されるであろう。
かくして、静脈注入用の代表的な医薬組成物は、250mlの無菌リンゲル液及び100mgのペプチドを含むようにすることができよう。非経口投与が可能な化合物を調製する実際の方法は、当業者にとっては公知で、明白であり、例えば、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Science)(第17版、Mack Publishing Company, Easton, PA、1985年)に更に詳細に記載されている。
上記医薬組成物に加えて、シクロデキストリン包含複合体又はリポソームのような包含複合体として、本発明方法の化合物を製剤化してもよいということは、当業者によって評価されるであろう。リポソームは、リンパ球様細胞や感染肝細胞などの特定の細胞を標的にして、ペプチドを作用させるのに役立つ。リポソームは、ペプチド組成物の半減期を長くするのにも使うことができる。本発明で有用なリポソームとしては、エマルジョン、泡沫、ミセル、不溶性単層(monolayer)、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層などが挙げられる。搬送されるペプチドは、CD45抗原と結合するモノクローナル抗体などの、リンパ球様細胞間に広く行き渡っている、例えば受容体と結合する分子、又は他の治療若しくは免疫原性組成物と連結して、リポソームの一部としてこれらの製剤に組み込まれる。このように、目的とするペプチドを充填したリポソームは、その後、リポソームが治療/免疫原性組成物を搬送する、リンパ球様又は肝細胞の部位へ向けられる。本発明で使用するリポソームは、標準小胞形成脂質から形成され、その脂質は、一般に、中性又は負に帯電したリン脂質と、コレステロールなどのステロール含んでいる。リポソームは、例えば、リポソームの大きさ及び血流中でのリポソームの安定性を考慮することにより、一般に選択される。例えば、Szoka 等、Ann. Rev. Biophys. Bioeng.、9巻、467頁(1980年)、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、4,837,028号及び5,019,369号に記載されているように、リポソームを製造するのに種々の方法を用いることができる。免疫細胞を標的とするために、リポソームに組み込まれるリガンドとしては、目的とする免疫系細胞の細胞表面決定因子に特異的な抗体及びその断片を挙げることができる。ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、投与の様式、搬送されるペプチド、治療される病気の段階などによって変わる投与量で、静脈内、局所、局部等に投与されるであろう。
【0025】
他の態様において、本発明は、活性成分として、ここに述べるように、免疫原性有効量の細胞障害性Tリンパ球刺激ペプチドを含むワクチンに関するものである。ペプチドは、それ自身の担体に結合して、あるいは活性ペプチドユニットのポリマー又はヘテロポリマーとして、ヒトを始めとする宿主に導入されてもよい。このようなポリマーは、免疫反応が増大するという利点があり、異なるペプチドを用いてポリマーを作った場合は、HCVの異なる抗原決定因子と反応する抗体及び/又は細胞障害性T細胞を誘導する追加の能力が得られる。有用な担体は、当該技術においてよく知られており、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、チログロブリン、アルブミン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(D―リシン:D―グルタミン酸)などが挙げられる。ワクチンは、生理的に許容できる(受け入れられる)水、リン酸緩衝生理食塩水、食塩水などの希釈剤を含むこともでき、更に、代表的には、アジュバントを含む。不完全フロインドアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、明礬などのアジュバントは、当該技術においてよく知られている。そして、上述のように、細胞障害性Tリンパ球反応は、本発明のペプチドを、P3CSSなどの脂質に結合させることにより、活性化されることができる。ここで述べるように、注射、エアロゾル、経口、経皮又はその他の経路でペプチド組成物で免疫すると、HCV抗原に特異的な細胞障害性Tリンパ球を大量に生ずることにより、宿主の免疫系がワクチンと反応し、宿主が、HCV感染に対して少なくとも部分的に免疫性となるか、あるいは慢性HCV感染となることに対して抵抗を有するようになる。
本発明のペプチドを含むワクチン組成物を、HCVに感染し易いか、そうでなければその恐れがある患者に投与して、患者自身の免疫反応能力を高める。このような量は、“免疫原性的有効投与量”又は“予防的有効投与量”と定義される。この用途では、正確な量は、患者の健康状態及び年齢、投与の様式、製剤の性質などによって決まるが、一般には、70kgの患者当たり、約1.0μgから約500mgまでの範囲であり、更に一般には、体重70kg当たり、約50μgから約200mgまでの範囲である。ペプチドは、適当なHLAタイプの個体に投与される。例えば、HLA―A2個体用ワクチン組成物については、次のペプチドを投与するのが有用である:ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)、ILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)、DLMGYIPLV(Core132―140;配列番号:54)及びQLRRHIDLLV(E1257-266;配列番号:3)並びにこれと実質的に同族のポリペプチド。
ある場合には、本発明のペプチドワクチンを、HCV、特にHCVエンベロープ及び/又はコア抗原に対する中和抗体反応に向けられたワクチンと組み合わせることが望ましいかもしれない。このようなワクチンは、例えば、組換HCVエンベロープ及び/又はヌクレオカプシドでコードされた抗原(env- and/or nucleocapsid-encoded antigens)又はHCV感染個体から得られた精製血漿製剤で構成されていてもよい。このようなワクチンは、主としてHBsAg及びそのポリペプチド断片に基づくB型肝炎ウイルスについて開発された。HCV及びHBVの両方の予防又は治療を指向する混合ワクチンも、本発明では考えられている。このような混合ワクチンとしては、B型及びC型肝炎ウイルスのどちらか一方又は両方のものを反映する(reflect)抗原決定因子が挙げられる。本発明のHCVに対するペプチドで製剤化されることができるHBVワクチンの例については、一般に、欧州特許第154,902、第291,586号、米国特許第4,565,697号、第4,624,918号、第4,599,230号、第4,599,231号、第4,803,164号、第4,882,145号、第4,977,092号、第5,017,558号及び第5,019,386号参照。ワクチンは、同時に混合して投与することができるし、あるいは別々の製剤として投与することもできる。
治療又は免疫のために、牛痘などの弱毒化ウイルス宿主によって、本発明のペプチドを発現させることもできる。このアプローチは、本発明のHCVペプチドをコードする塩基配列を発現するためのベクターとして、牛痘ウイルスの使用含むものである。急性若しくは慢性HCV感染宿主、又は非感染宿主に導入すると、組換牛痘ウイルスは、HCVペプチドを発現し、それにより、HCVに対する細胞障害性Tリンパ球反応を活性化する。牛痘ベクター及び免疫化プロトコルで有用な方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(カルメットゲラン杆菌)である。BCGベクターは、Stover等、Nature、351巻、456〜460頁(1991年)に記載されている。本発明のペプチドの治療投与又は免疫化に有用な他の種々のベクター、例えばチフス菌ベクターなどは、ここの記載から当業者にとって明白であろう。
【0026】
請求された発明の組成物及び方法は、上で簡単に述べたように、患者のリンパ球を取り出し、刺激量の本発明のペプチドで攻撃誘導し、得られた刺激CTLを患者に戻す半ビボ(ex vivo)療法に用いてもよい。従って、より詳細には、ここで用いられる半ビボ療法は、患者から取り出されたリンパ球又はその他の標的細胞について、体外で行われる療法又は免疫原性手技(manipulations)に関するものである。次いで、刺激濃度のペプチドを、患者が達成又は許容できると思われる水準よりもはるかに過剰に細胞媒体へ与えながら、このような細胞を高投与量の対象ペプチドで、生体外にて培養する。CTLを刺激する処理の後で、細胞を宿主に戻し、それにより、HCV感染を治療する。上述のように、ペプチドをコードする遺伝子を担持するベクターに、宿主細胞を触れさせてもよい。ベクターでトランスフェクトされたら、細胞を生体外で増殖させるか、あるいは患者へ戻すかすればよい。生体外で増殖させた細胞を、所定の細胞濃度に達した後で、患者に戻してもよい。
1つの方法では、患者のCTL前駆体細胞(CTLp)を抗原提供細胞(APC)源及び適当な免疫原性ペプチドと共に、組織培養中でインキュベートすることにより、HCVに対する生体外CTL反応が誘発される。CTLpが活性化され、成熟及び成長(expand)して作動体CTLとなる適当な培養時間(代表的には、1〜4週間)後に、細胞を患者に注入して戻し、そこで、それらの細胞が、それらの特定の標的細胞(HCV感染細胞)を破壊するであろう。特異性細胞障害性T細胞生成の生体外条件を最適化するために、代表的には、刺激因子細胞の培養は、適当な無血清培地中に保持される。正常供与体又は患者の単純静脈穿刺又は白血球搬出に従って、末梢血リンパが都合よくに分離され、CTLpのキラー細胞源として用いられる。1つの実施態様においては、適当なAPCを、無血清培地中の約10〜100μMのペプチドで、適当な培養条件下にて、4時間インキュベートする。次いで、ペプチド装填APCを、キラー細胞個体群により生体外で、最適培養条件下にて5〜10日間インキュベートする。
放射標識細胞、即ち、特定のペプチドでインキュベートされた標的及び更に以下で論ずるように内生的に処理された形のHCV抗原を発現する標的細胞の両方を殺すCTLの存在について、培養を測定することにより、陽性CTL活性化を求めることができる。具体的には、公知の多くの方法により、患者のCTLのMHC限定を求めることができる。例えば、適当な又は不適当なヒトMHCクラスIを発現する異なるペプチド標的細胞に対してテストすることにより、CTL限定を求めることができる。
生体外のCTL誘発には、APC上の対立因子特異性MHCクラスI分子に結合するペプチドの特異認識が必要である。細胞上の空の主要組織適合複合分子のペプチド装填によって、一次CTL反応が誘発される。突然変異細胞株は、MHC対立因子毎に存在していないので、APCの表面から内生MHC結合ペプチドを除去し、次いで、得られた空のMHC分子に問題の免疫原性ペプチドを装填する技術を用いることが好都合であろう。形質転換されず、感染していない細胞、好ましくは患者の内生細胞をAPCとして使用することが、半ビボCTL治療法の開発に関するCTL誘発プロトコルを設計するために望ましい。代表的には、活性化されるべきCTLでAPCをインキュベートする前に、APCの表面上で発現されるべきヒトクラスI分子に装填されるのに十分な量の抗原ペプチドを、APC又は刺激細胞培養に添加する。次いで、静止又は前駆体CTLを、培養内で適当なAPCにより、CTLを活性化するのに十分な時間、インキュベートする。抗原特異性の方法でCTLを活性化するのが好ましい。APCに対する静止又は前駆体CTLの割合は、個体によって異なってもよく、更に、培養条件に対する個体のリンパ球の順応性、病状又は記載された治療様式が用いられる他の状態の性質及び重さなどの可変要因に依存してもよい。しかし、CTL:APC比は、約30:1から300:1の範囲内にあることが好ましい。CTL/APCは、治療に使用可能又は有効な数のCTLを刺激するのに必要な長さの時間、保持されるであろう。
活性化されたCTLは、種々の公知の方法の1つを用いて、APCから有効に分離されるであろう。例えば、APC、刺激細胞に装填されたペプチド又はCTL(又はそのセグメント)に特異的なモノクローナル抗体を、それらの適当な相補リガンドを結合するのに利用してもよい。次いで、適当な手段、例えば、よく知られている免疫沈降法又は免疫測定法により、混合物から抗体標識分子を抽出してもよい。
活性化されたCTLの有効、細胞障害量は、これらのキラー細胞の最終標的である細胞の量と種類の場合と同様に、生体外用途と生体内用途の間で変えることができる。この量は、患者の状態によっても変わるであろうし、開業医により、全ての適当な要因を考慮して、決定されるべきである。しかし、マウスに用いられる約5×106個から約5×107個の細胞に比較して、ヒトの成人については、好ましくは、約1×106個から約1×1012個、より好ましくは、約1×108個から約1×1011個、更に好ましくは、約1×109個から約1×1010個の活性化CD8+細胞が利用される。
細胞成分を再導入する方法は、当該技術において知られており、Honsik 等の米国特許第4,844,893号及び Rosenberg 等の米国特許第4,690,915号に例示されているものなどの方法が挙げられる。例えば、静脈内注入による活性化されたCTLの投与が、代表的には適当である。
次の実施例は本発明を更に明解に示すものであるが、当然のことながら本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0027】
この実施例は、HCVに特異的な応答の誘導能力を試験したペプチドの同定を示すものである。
発表されているHCV−1アミノ酸配列〔Choo等、プロシージングス・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),88,2451−2455(1991)〕を、HLA−A2.1結合モチーフXLXXXXXXVまたはXLXXXXXXXLの存在下でスキャンした。上記モチーフの配列はクラス にのみ有効なCTL刺激にとって必要配列ではあるが、十分な特性ではない。Falk等、ネイチャー(Nature),351,290−296(1991)。このスキャニ ングによって、各々9または10個のアミノ酸残基を有する53種のペプチドが推定されるCTL刺激剤として同定された。この同定された配列をChiron Mimotopes(Cluyton,オーストラリア)で合成した。この53種のペプチドを以下に列挙する。アミノ酸については一文字表記が用いられている:A,Ala;C,Cys;D,Asp;E,Glu;F,Phe;G,Gly;H,His;I,Ile;K,Lys;L,Leu;M,Met;N,Asp;P,Pro;Q,Gln;R,Arg;S,Ser;T,Thr;V,Val;W,Trp;Y,Tyr.
剣標(†)の印がつけられているペプチドは、実施例2に記載されている分析によってCTLエピトープであることが見出された。選択された53個の各ペプチドのHCVゲノム領域、アミノ酸の位置(coordinate)および配列は次の通りである。
HCV−1由来ペプチドの表
HCV−領域 アミノ酸残基位置 配列 配列番号
コア 131-140 ADLMGYIPLV†,* (SEQ ID NO:1)
コア 178-187 LLALLSCLTV (SEQ ID NO:2)
El 257-266 QLRRHIDLLV (SEQ ID NO:3)
El 279-287 DLCGSVFLV (SEQ ID NO:4)
E2/NS1 402-411 LLAPGAKQNV (SEQ ID NO:5)
E2/NS1 665-674 LLLTTTQWQV (SEQ ID NO:6)
E2/NS1 666-674 LLTTTQWQV (SEQ ID NO:7)
E2/NS1 688-697 GLIHLHQNIV (SEQ ID NO:8)
E2/NS1 691-699 HLHQNIVDV (SEQ ID NO:9)
E2/NS1 723-731 FLLLADARY (SEQ ID NO:10)
NS2 758-766 SLAGTHGLV (SEQ ID NO:11)
NS2 845-853 WLQYFLTRV (SEQ ID NO:12)
NS2 901-909 ILQASLLKV (SEQ ID NO:13)
NS2 905-913 SLLKVPVFV (SEQ ID NO:14)
NS2 906-915 LLKVPYFVRV (SEQ ID NO:15)
NS2 940-949 KLGALTGTYV (SEQ ID NO:16)
NS2 963-971 GLRDLAVAV (SEQ ID NO:17)
NS2 966-974 DLAVAVEPV (SEQ ID NO:18)
NS2 966-975 DLAVAVEPVV (SEQ ID NO:19)
NS3 1069-1077 FLATCINGV (SEQ ID NO:20)
NS3 1010-1019 ILLGPADGMV (SEQ ID NO:21)
NS3 1011-1019 LLGPADGMV (SEQ ID NO:22)
NS3 1046-1055 SLTGRDKNQV (SEQ ID NO:23)
NS3 1131-1139 YLVTRHADV (SEQ ID NO:24)
NS3 1068-1177 PLLCPAGHAV (SEQ ID NO:25)
NS3 1169-1177 LLCPAGHAV (SEQ ID NO:26)
NS3 1200-1209 NLETTMRSPV (SEQ ID NO:27)
NS3 1406-1415 KLVALGINAV (SEQ ID NO:28)
NS4 1529-1537 ELTPAETTV (SEQ ID NO:29)
NS4 1585-1593 VLVAYQATV (SEQ ID NO:30)
NS4 1623-1631 PLLYRLGAV (SEQ ID NO:31)
NS4 1652-1661 DLEVVTSTWV (SEQ ID NO:32)
NS4 1674-1683 CLSTGCVVIV (SEQ ID NO:33)
NS4 1789-1797 SLMAFTAAV (SEQ ID NO:34)
NS4 1807-1816 LLFNILGGWV (SEQ ID NO:35)
NS4 1833-1842 GLAGAAIGSV (SEQ ID NO:36)
NS4 1851-1859 ILAGYGAGV (SEQ ID NO:37)
NS4 1886-1894 ILSPGALVV (SEQ ID NO:38)
NS5 2140-2149 LLREEVSFRV (SEQ ID NO:39)
NS5 2159-2168 QLPCEPEPDV (SEQ ID NO:40)
NS5 2189-2198 RLARGSPPSV (SEQ ID NO:41)
NS5 2152-2260 ILDSFDPLV (SEQ ID NO:42)
NS5 2315-2324 PLPPKSPPV (SEQ ID NO:43)
NS5 2399-2408 DLSDGSWSTV (SEQ ID NO:44)
NS5 2449-2457 SLLRHHNLV (SEQ ID NO:45)
NS5 2479-2487 VLDSHYQDV (SEQ ID NO:46)
NS5 2578-2587 RLIVFPDLGV (SEQ ID NO:47)
NS5 2727-2735 GLQDCTMLV (SEQ ID NO:48)
NS5 2733-2741 MLVCGDDLV (SEQ ID NO:49)
NS5 2733-2742 MLVCGDDLVV (SEQ ID NO:50)
NS5 2781-2790 ELITSCSSNV (SEQ ID NO:51)
NS5 2844-2852 ILMTHFFSV (SEQ ID NO:52)
NS5 2995-3003 CLLLLAAGV (SEQ ID NO:53)
Core 132-140 DLMGYIPLV (SEQ ID NO:54)


要約すると上記のHLA−A2.1結合モチーフの少なくとも1つを満足するHCVペプチド配列はHCVゲノムのコア領域から2つ、E1から2つ、E2/NS1から6つ、NS2から9、NS3から9つ、NS4から10およびNS5から15のペプチドを含有している。更に、星印(*;配列番号:1)が付けられたペプチド配列は、アラニン131を有しない同一配列のものに比べて、後述の実施例2に記載された細胞障害性測定において、より能力があることが判った。
【実施例2】
【0028】
この実施例は、ある特定のポリペプチドについて、細胞障害性TリンホサイトにおいてHCVに特異的な応答を誘導するために使用できるか否かを見極めるための方法を記載している。
慢性C型肝炎に感染した患者から採った末梢血単細胞(PBMC)を、同定したポリペプチドのCTL誘導活性を測定するために用いた。8人の患者が、HLAタイピングトレー(One hambda, Canoga Park, CA)を用いた標準ミクロ細胞障害性テストによってHLA−A2陽性であると確認された。これらの患者は各々標準的な臨床上のパラメーターに基く慢性C型肝炎に感染していることが肝臓生検によって確かめられており、そこでは慢性活性肝炎(CAH)が硬変の有無にかかわらず見られた。第2世代(C200/C22−3)を用いる血清 的測定であるオルソHCV ELISAテスト系(Ortho Diagnostics,Inc.,Rasitan,NJ)が同様にして行われた。Bukh等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、187−191に記載された5′NC領域から選択されたプライマーを用いる“巣のようになった”cDNAポリメラーゼ鎖反応そしてそれに続く内部プローブを用いるハイブリダイゼーションによって血清HCVRNAの存在も又検出された。

検討された対象物の特性

対象患者
(性) HLA ALT HCV-PCR 肝生検
C-1(m) A2,B44,Cw3 226 陽性 CHA+C
C-2(f) A2,A31,B7,B67,Cw7 99 陽性 CHA
C-3(m) A2,A3,B44,Cw7 155 陽性 CHA
C-4(m) A2,A30,Bw48,Bw64,Cw3 79 陽性 CHA
C-5(f) A2,A3,B65,B75,Cw1,Cw4 97 陽性 CHA
C-6(f) A2,A24,B38,B60,Cw3 190 陽性 CHA
H-1(m) A2,A1,B8,B44,Cw5,Cw7 nl 陽性 nd
H-2(f) A2,A68,B7801,Cw6 nl 陽性 nd

■ この対象は肝炎歴はなく正常な肝臓酵素をもっていた;
生検は行なわれなかった。
▲ この対象は3ヶ月前に急性肝炎Cとなったことがある;
生検は行なわれなかった。

8人のHLA−A2陽性患者全員のPBMCを各々独立して53種のペプチドの全パネルで刺激し、次いで培養が始まった後にペプチド特異性CTL活性を次の方法を用いてテストした:
合成ペプチド及び破傷風毒を用いるPBMCの刺激 患者から採取したPBMCをFicoll−Hypaque濃度勾配(Sigma,St.Louis,MO)上で分離し、Hanksの完全塩溶液(HBSS)(Gibco,Grand Island,NY)中で3回洗浄し、L−グルタミン(2mM)、ゲンタマイシン(10μg/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)および10%の加熱不活性化ヒトAB血清を含有するHEPES(5mM)を加えたRPMI1640培地(Gibco,Grand Island,NY)(完全培地)中に再懸濁し、24ウェルプレート中に4×106細胞/ウェルの濃度で分注した。実施例1に記載された合成ペプチドを凍結乾燥し、次いでDMSO(Malinckrodt,Paris,KY)中20mg/mlで再構築し、次いでRPMI1640培地(Gibco,Grand Island,NY)を用いて1mg/mlにまで希釈した。
この再構築した合成ペプチドを次いで最終濃度10μg/mlとなるまで細胞培養物に添加した。第1週の刺激の間、破傷風毒を1μg/mlの濃度で添加した。3日目に、rIL−2(Hoffman−La Roche,Nutley,N.Y.)を含有する1mlの完全培地を最終濃度10U/mlで各ウェルに添加した。7日目にこの培養物をペプチド、rIL−2および照射された(3000ラッド)自己(autologous)フィーダー細胞で再刺激し;この培養したPBMCを14日目にCTL活性について試験した。ペプチド特異性の細胞質分解活性(後述の細胞障害性測定を参照)を示した選択された培養物を、1μg/mlのペプチドおよび20U/ml IL−1を含有する1mlの完全培地中で1×106の照射(3000ラッド)の自己由来のPBMCで1週間再刺激することによって増殖(expand)させた。
HCV特異性CTLクローンの生成 CTL株を1ウェルにつき0.3、1、10および100細胞の割合でクローニングし、次いで96ウェルのマイクロタイタープレート中、1ウェルにつき0.3または1細胞の割合でサブクローニングした。この細胞をペプチド(1μg/ml)、PHA(1μg/ml)、rIL−2(20U/ml),照射した(3000ラッド)同種異系(アロゲニック)PBMC(105細胞/ウェル)の存在下で静置した。HCV特異性のクローンを上述のように24ウェルプレート中で再刺激した。
標的細胞 同種異系および自己のEBV−形質転換Bリンパ芽球(lymphoblastoid)細胞株(EBV−BCL)をジ・アメリカン・ソサィエティ・フォー・ヒストコンパティビリティ・アンド・イムノゲネティクス(Boston,MA)から購入もしくは患者および健常ドナーから樹立した。最も普通に用いられる標的細胞株(JY)はHLA−A2,B7およびCW7陽性である。この細胞を、L−グルタミン(2mM)、ゲンタマイシン(10μg/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、HEPES(5mM)および10%(vol/vol)加熱不活性化牛胎児血清(FCS;Gibco,Grand Island,NY)を添加したRPMI1640培地中に保持した。標的細胞として使用する前に、自己のPBMC芽細胞の短期間株をL−グルタミン(2mM)、ゲンタマイシン(10μg/ml)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、HEPES(5mM)および10%(vol/vol)加熱不活性化FCSおよび10U/ml rIL−2を加えたRPMI1640中、1μg/mlのPHAで7日間刺激することによって製造した。
組み換え発現ベクター M.Houghton博士(Chiron Corporation,Emeryville,CA)よりHCV−1由来配列を発現する組み換えワクシニアウィルスの供与を受けた。使用したウィルスはHCV−1コア/E1(アミノ酸1−339)およびE2/NS2/NS3(アミノ酸364−1619)を各々発現する。
Cheng等、ジャーナル・オブ・ウィロロジー(J.Virol.),60,337−344(1986)に記載された標準法にしたがって組換えワクシニアウィルスの生成を行なった。ワクシニアに感染した標的を、1×106個の細胞を10〜100の感染多重度(MOI)でロッキングプレート上、室温で1時間感染させ、次いで、1回洗浄後37℃で1晩インキュベーションすることによって調整した。
細胞障害性測定 自己HLAに適合および不適合の(matched and mismatched)EBV−BCLからなる標的細胞を10μg/mlの合成ペプチドと共にインキュベートした。標的細胞を100μciの51Cr(Amersham,Arlington Heights,IL)で1時間標識し、次いでHBSSで3回洗浄した。1ウェル当り5000の標的を含有するU−ボトム96ウェルプレートを使用して、標準的な4時間51Cr−放出測定法で細胞分解活性を測定した。全測定は二回づつ行なった。細胞障害性のパーセントは次の式に基いて算出した:
100×〔(実験放出値−自然放出値)/(最大放出値−自然放出値)〕最大放出値は界面活性剤(1%Triton X−100 Sigma)による標的の分解によって測定した。自然放出は全測定において最大放出の25%より少なかった。
2週間の培養後に行なわれた第1回のCTL測定における作動体(effector)対標的細胞の比40〜80/1でのペプチド存在下でインキュベーションした標的細胞とペプチドを存在させていない標的細胞の間での特異的分解における15%の違いが陽性のCTL応答性を表わすと考えられ、そして再刺激および続くクローニングという追加工程後の再試験によってそれを確認した。
フロー血球計算分析 分析する細胞(0.5×106)をPBS中で1回洗浄し、次いで蛍光プローブー複合抗−CD4および抗−CD8モノクローナル抗体(1eu3a.Leu2a)および同様に標識した対照抗体(Becton Dickinson & Co.)と共にインキュベートした。4℃で30分間インキュベートした後、5%BSA含有PBS中細胞を洗浄し、FACScanTフローサイトメーター(Becton Dickinson & Co.)で分析した。
【実施例3】
【0029】
この実施例は、特定のポリペプチドによる細胞障害性TリンホサイトにおけるHCV−特異性応答を証明し、確認された細胞障害性Tリンホサイト株およびクローンを特徴づける研究の結果を示すものである。
8人の患者の内4人における7個のエピトープに対するCTL応答
実施例2に記載されているようにして、53種のペプチドの各パネルでPBMCの刺激を行ない、初期のインビトロ増殖後に培養物をペプチド特異性CTL活性についてテストした。作動体対標的細胞の比40〜80/1でのペプチド存在下でインキュベートした標的細胞とペプチドを存在させなかった標的細胞の間での特異的分解における15%の違いが陽性のCTL応答性を表わすと考え、そして再刺激および続くクローニングという追加工程後の再試験によってそれを確認した。図1は各陽性ペプチドに対する活性のパーセンテージレベルを示す棒グラフであり、横軸はHCVペプチドを示し(次表でコードされた数によって特定されている)、縦軸は特定の細胞障害性のパーセンテージとしてマークされている。
これらの測定の結果、図1に示され、また次表にまとめられているように、テストされた53のペプチドの内の7つのペプチドに対する応答性において顕著な細胞障害性が認められた。作動体対標的細胞の比が40〜80/1における2週間の培養後、このペプチド特異性細胞障害性が見られる対象C−3(ペプチド3)およびH−1(ペプチド5)の培養物を3週間の培養後にテストした。どの場合にもHLA−A2適合JY EBV−BCLを標的細胞として用いた。

HCVペプチド特異性CTL応答性のまとめ

HCV−ペプチド 応答する
HCV アミノ酸残基 (図1) 対象患者
コア 131-140 1 C-2,C-5
コア 178-187 2 C-2,C-3
NS3 1169-1177 3 C-3
NS3 1406-1415 4 C-2,C-3,C-5
NS4 1789-1797 5 C-2,H-1
NS4 1807-1916 6 C-3
NS5 2252-2260 7 C-2

これらをまとめてみると、8人の実験対象患者の内4人が53種のペプチドの少なくとも1つに対してCTL応答性を示した。実験対象患者C−2が5つのペプチドに応答した。この5つのペプチドの内2つはHCVコアに由来し、あとの3つは各々NS3,NS4およびNS5に由来していた。実験対象患者C−3はHCVコア178-187を含むがHCVコア131-140は含まない4つのペプチドに応答した。これとは対照的にC−5はHCVコア131-140を認識するがHCV178-187は認識しなかった。実験対象患者H−1は1個のペプチドNS41789-1797にだけ応答した。これらペプチドの内いくつかは1人以上の患者に対し刺激作用があり、おそらく高度の免疫原性を示していると考えられる。4人の実験対象患者(C−1,C−4,C−6,H−2)は用いられたペプチドパネルまたは本研究で用いられたパネルにおける残りの46のペプチドでのCTL活性の誘導はほとんど見られなかった。CTL応答は慢性活性肝炎の患者6人の内3人に、また正常な肝臓酵素を有する2人の内1人に見られた。
HCVペプチド特異性CTL株およびクローンの特徴づけ 図2は実験対象患者C−3から得られたHCVペプチドに特異的な典型的なCTL株の実施例に由来するデータを示している。図2の横軸は標識された“作動体/標的細胞比”であり、ここで「作動体」は使用されたHCVペプチドを指している。縦軸は“比分解性%”である。黒ぬり丸印(●)により示されたデータの点はペプチドを加えたHLA−A2に適合したJY EBV−BCL細胞の比分解活性を示し、そして白丸(○)は同じ細胞のペプチドを加えていない培養による比分解活性を示す。このCTL株はCTL測定に先立ち4週間培養しており、そして1週間毎にペプチドおよび自己のフィーダー細胞による再刺激を受けていたものである。ここに示されているように、これらの細胞株はHCVコア178-187(パネル2A)、NS31169-1177(パネル2B)およびNS31406-1415(パネル2C)に特異的であり、そしてHLA A2を組合せたEBV−BCLを認識し、薬剤投与量に応じて、それを分解する。
更に研究を進めるための高度に細胞障害性であるT細胞株を樹立しCTLクローンを生成するために、自己由来の照射PBMC、ペプチドおよびIL−2を用いる1週間毎の再刺激を含む再刺激プロトコールが使用された。確認された株のほとんどが、各週の細胞basisについての細胞分解活性が2−4倍増加していることが観察された。実験対象患者C−2のNS52255-2260に対するCTL応答について、刺激後2週間、E/T比40/1で29%の有意の細胞障害性活性が見られた。PBMCを用いた同様の培養物を2ヶ月後に回収したものでは、刺激後2〜3週間では有意のCTL活性は見られなかった。しかしながら、自己PBMCおよびペプチドにより再刺激を続けることにより4〜5週間後にペプチド特有のCTLを示した。これは、HCV感染の経過中のCTL前駆体の頻度(frequency)の変動を反映しているのかもしれない。
HLA限定性の分析 HLAクラス 限定分析の例が図3に示されている。この分析は実施例2に記載された細胞障害性アッセイによって行なわれ、ペプチドを加えたEBV−BCL細胞(黒丸;●)またはペプチドを加えていないEBV−BCL細胞(白丸;○)および異なったHLAクラス 対立遺伝子を示す標的細胞、すなわちHLA−A2/Cw7(パネル3A)、Cw7(パネル3B)、A2(パネル3C)およびA3(パネル3D)を用いている。この図に示されているように、このHLA−A2 対立遺伝子の存在のみが、実験対象患者C−3に由来する、即ちHLA−A2,A3,B44,Cw7に由来するHCVコア178-187に対して特異的なCTL株による標的細胞の認識および分解に必要かつ十分なものである。CTL誘導プロトコルによれば、このような厳密な(rigogorous)HLA−制限分析は次のような理由で行なわれなかった。即ち本発明(JY)において最もひんぱんに用いられるEBV−BCL標的細胞はHLA−A2,B7およびCw7ペプチド陽性であるからである。実験対象患者C−2からのNS41789-1797およびNS52252-2260に対する作動体はB7およびCw7のコンテクスト(context)中のエピトープを認識し、実験対象患者H−1に由来し、NS52252-2260に特有なものはCw7コンテクスト中のエピトープを認識する。実験対象患者C5からの作動体は標的細胞とHLA−A2対立遺伝子だけを共有する。
細胞表面フェノタイプ 細胞障害性T細胞クローンを実施例2に記載された限界希釈法を用いてクローニングにより株から採った。得られた6個のクローンをエピトープコア131-140およびNS31406-1415を認識する3つのドナーから単離した。このクローンを、JY細胞株である標的細胞に対し異なった数の作働体における(E/T)ペプチド特異性細胞障害性活性テストのために使用した。用いられた細胞障害性活性のためのテストは実施例2に記載されている4時間の51Cr−放出測定であり、その結果を以下の表に示している。実験対象患者C−2およびC−5からのクローンをフローcytometryで分析し、全てCD8+であること、即ち全てのクローンがHLAクラスIに限定されたことが見出された。
HCV特異性CTLクローン
実験対象患者ペプチド クローン 細胞障害性 FACS

E/T CD4+ CD8+

C-2 Core131-140 R-14-115 3 67 1.4 83.6
1 42
0.3 27

C-5 Core131-140 H15-17 128 90 2.4 84.3
43 97
14 94

C-5 Core131-140 H15-26 68 84 1.9 97
22 89
7 76

C-5 Core131-140 H15-99 92 90 1.7 98
30 79
10 50

C-3 NS31406-1415 D55-3 0.9 44 nd nd
0.3 16
0.1 5

C-3 NS31406-1415 D55-10 18 69 nd nd
6 66
2 58


内因性抗原の認識 内因的にウィルス抗原を合成する標的細胞の認識および分解が証明され、その結果を図4に示す。図4は2つのパネル、即ち実験対象患者C−5からのCTL株の分析に関するパネル4Aおよび実験対象患者C−3からのD55−3クローンの分析に関するパネル4Bとに分けられており、そのどちらもNS31406-1415に特異的なものである。横軸は“作動体/標識細胞比”であり、縦軸は“比分解性%”である。標的細胞はHLA−A2を組合せたEBV−BCLであり、このものはNS31406-1415ペプチドが加えられている(黒丸;●)かまたは媒体のみ(白丸;○);あるいはHCVアミノ酸配列364−1619(黒角;■)を含有する組み換えワクシニアウィルス構造物に感染していたかまたはHCV配列を有さない同じワクシニアウィルス(白角;□)に感染していたものである。
図4に見られるように、このCTL株はクローンと同様、組換えワクシニアウィルス感染EBV−BCLによって提供され内因的に合成された抗原と外因的に添加されたペプチドの両者を認識する。したがって、in vitroでペプチドにより膨張したCTLは天然に存在するウィルス感染標的細胞を認識し分解する能力を保持している。
【実施例4】
【0030】
この実施例は本発明のペプチドの配列と別の単離物に属するHCV中に含有される配列との比較を示している。
1993年1月のGen EMBLに寄託されたHCVタイプ配列を用いて、本発明のペプチドで表わされるHCV−特異的CTLエピトープとこれまでに同定されている異種のHCVサブタイプの異種単離物のGen EMBL配列との比較を行った。Okamoto等、ジャーナル・オブ・ゲネティクス・オブ・ウィロロジー(J.Gen.Virol.),73,673−679(1992)を参照されたい。このデータは以下の表に示されており、サブタイプは 〜 と番号が付けられており、NDはサブタイプが決定されていないHCV単離物に関している。本発明で挙げられているペプチドと種々のHCVサブタイプのゲノムの対応領域との比較の結果がx/yとして表わされており、ここでxは与えられたエピトープ内でアミノ酸置換が見られない配列の数であり、yは与えられたエピトープをカバーするGen EMBLに寄託された配列の総数である。

HCV アミノ酸残基 HCVサブタイプ
I II III IV ND
コア 131-140 3/3 8/8 1/3 2/2 7/8
コア 178-187 3/3 1/11 0/3 2/2 2/8
NS3 1169-1177 2/3 0/5 0/1 0/1 0/1
NS3 1406-1415 4/5 0/5 0/1 0/1 0/1
NS4 1789-1797 3/3 0/5 0/1 0/1 0/1
NS4 1807-1816 3/3 5/5 0/1 0/1 1/1
NS5 2252-2260 3/3 0/5 0/1 0/1 0/1

このように、公知のHCVサブタイプに関する上記データに示されるように、HCVはかなりの配列変更性(variability)を示している。本発明を治療および予防に用いるためのデザインの際に重要なことは多くのサブタイプの最大数で優占する領域のペプチドを決定することである。上述のように、ペプチド配列NS31406-1415(配列番号:28)は3つの実験対象患者のCTLによって認識され、アメリカおよびヨーロッパで優占な5種のHCVIサブタイプ中4種に存在している。第5番目の単離物であるHCV−Hは第7番目の位置で1個の元来のIleuがValに置換されている点だけが異なっている。
【実施例5】
【0031】
この実施例は、患者のCTL細胞が自己抗原性細胞によって再刺激される能力を示している。
実施例2に記載の方法を用いて、PBMCを本発明のHCV由来合成ペプチドで刺激し、自己の抗原性細胞およびペプチドを用いて週毎に再刺激した。まず、2週間後に培養物をテストし、次いで上述のように標的細胞に対するペプチド特異性CTL活性を1週おきにテストした。以下の表に、インキュベーション後2,3,4および5週間後、PBMC細胞に対する4時間の51Cr−放出アッセイで得られた、標的細胞に対する異なった数の作働体(E/T)に対して、ペプチド特異性細胞障害性活性が示されている。
実験対象患者C−2およびNS5ペプチドに関するデータのために、実験Iに使用するPBMCは実験IIを始める2ヶ月前に採取したものである。患者はこの間何ら治療を受けなかった。
実験対象患者ペプチド 2週間 3週間 4週間 5週間
E/T E/T E/T E/T
C-2 コア131-140 80 61 25 50 72 76 30 76
24 71 10 78
8 43 3 51
C-2 コア178-187 80 29 25 37 64 81 18 60
21 64 6 57
7 33 2 24
C-3 コア178-187 80 19 40 18 33 60 30 76
11 37 10 52
4 20 3 35
C-2 NS52252-2260 40 29 nd
Exp I
NS52252-2260 40 2 25 3 88 59 56 83
Exp II
29 29 19 52
10 10 6 20
C-2 NS31406-1415 80 24 25 11 56 60 22 29
19 30 7 14
6 14 2 7

以上のように、循環する細胞の細胞障害性比活性および再刺激される能力が示されているが、この両者はCTLを基礎とするワクチンにとって必須の特性である。
【実施例6】
【0032】
この実施例は、哺乳動物において、HCV由来のペプチドおよび/又はこれらペプチドと実質的に同一なペプチドを含有する分子に対する免疫応答を引き起こす方法を示している。
合成ペプチドにより哺乳動物にペプチド免疫を施すことによるCD8+CTLの誘導は、Aichele等、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(J.Exp.Med.)またはKast等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,882283−2287(1991)により完全もしくは非完全フロインド・アジュバント中50〜100μgのペプチドを用いて、あるいはHarty等、J.Exp.Med.,175,1531−1538(1992)の方法により脾臓細胞を用いて行なうことができる。HCV感染からの保護は,これらの免疫手段のいずれかにより誘導されたCTLによって行なうことができる。
この発明は好ましい実施態様に重点を置いて記載されているが、当業者であればこの好ましい態様を変更し、ここに記載されている個々の態様とは違った形で発明を実施することができる。即ち、特許請求の範囲に記載されている発明の精神および範囲を逸脱しない限り、どのような改変も本発明に包含されるものである。
本願の請求の要旨は以下の通りである。
1.ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドを含む分子。
2.該分子が、約8個以上、約50個未満のアミノ酸を含む請求の範囲1の分子。
3.該分子が、約9個以上、約13個未満のアミノ酸を含む請求の範囲2の分子。
4.該ポリペプチドが、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)又は実質的にそれと同族である請求の範囲1の分子。 5.該ポリペプチドが、物質と結合しており、該物質が、放射標識、酵素、蛍光標識、固体マトリックス、担体及び第二のCTLエピトープからなる群から選ばれる請求の範囲1の分子。
6.該物質が、第二のCTLエピトープである請求の範囲5の分子。 7.該第二のエピトープが、Tヘルパーエピトープである請求の範囲5の分子。
8.該担体が、免疫原性脂質又は蛋白質を含む請求の範囲5の分子。 9.該ポリペプチドが、リンカーによって間接的に該物質に結合されている請求の範囲5の分子。
10.ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族であるポリペプチド。
11.該ポリペプチドが、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)又は実質的にそれと同族である請求の範囲10のポリペプチド。
12.細胞障害性Tリンパ球を、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたペプチドを含む免疫反応促進有効量の分子と接触させることからなる、C型肝炎ウイルス抗原に対する免疫反応を促進する方法。
13.該接触が、哺乳動物内で生ずる請求の範囲12の方法。
14.該哺乳動物が、HCVの病気に罹っていないか、HCVの保菌者であるか、あるいはHCVの病気に苦しんでいる請求の範囲14の方法。
15.該接触が、生体外で生ずる請求の範囲12の方法。
16.該方法が、該接触された細胞障害性T細胞を宿主へ戻すことを更に含む請求の範囲15の方法。
17.該ポリペプチドが、HCVに対してTヘルパー反応を誘発する第二のポリペプチドと共に投与される請求の範囲12の方法。
18.該ポリペプチドと該Tヘルパー誘発ポリペプチドとが互いに結合している請求の範囲17の方法。
19.(a)細胞障害性T細胞についてテストされるリンパ球と同じHLAクラスのものである標的細胞を、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたペプチドの少なくとも1つを含む分子と接触させる工程、(b)該細胞障害性T細胞についてテストされる該リンパ球を、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたペプチドの少なくとも1つを含む分子と接触させる工程、及び(c)該リンパ球が、該標的細胞に細胞障害効果を及ぼすかどうかを求める工程を含む、哺乳動物のリンパ球において、C型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する細胞障害性T細胞を検出する方法。
20.ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドを含む分子及び薬理学的に許容されうる担体を含む医薬組成物。
21.ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチド及び薬理学的に許容されうる担体を含む医薬組成物。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の、ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、QLRRHIDLLV(配列番号:55)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)からなる群から選ばれたCTLエピトープと実質的に同族のポリペプチドを含む分子は、急性又は慢性HCV肝炎の治療及び予防に用いられる医薬組成物として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】HCV由来のペプチドの存在下でのCTLの生体外成長又は培養の開始(initial in vitro expansion)後に観察されたHCV特異性CTLを示す棒グラフである。横軸は、それぞれ7つのHCVペプチド(実施例3に詳述されている)を示し、縦軸は、比細胞毒性(specific cytotoxicity)パーセントを示す。
【図2】3つのHCVペプチドに特異的なCTL系の細胞障害活性を示す組になった3つのグラフである(実施例3に詳述されている)。横軸は、エフェクター/標的細胞比を示し、縦軸は、比溶解(specific lysis)パーセントを示す。
【図3】HLAクラスI限定分析(実施例3に詳述されている)の結果を示す組になった4つのグラフである。横軸は、エフェクター/標的細胞比を示し、縦軸は、比溶解パーセントを示す。
【図4】内生的に特定のウイルス抗原を合成した標的細胞の認識と溶解に関する測定(実施例3に詳述されている)の結果を示す組になった2つのグラフである。横軸は、エフェクター/標的細胞比を示し、縦軸は、比溶解パーセントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、またはILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)であるCTLエピトープと同じまたは似通った位置に少なくとも80%の同一アミノ酸残基を有するオリゴペプチドを含有する組成物であって、
上記オリゴペプチドはHCVに対してMHC−限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発できるものである、
CTL内でC型肝炎ウイルス(HCV)特異性反応を誘発する医薬組成物。
【請求項2】
以下の(a)及び(b)を含有する結合体であって、
(a)ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)またはILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)であるCTLエピトープと同じまたは似通った位置に少なくとも80%の同一アミノ酸残基を有するオリゴペプチド、
上記オリゴペプチドはHCVに対してMHC−限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発できるものであるオリゴペプチドと、
(b)放射標識、酵素、蛍光標識、固体マトリックス、担体及び追加の(a)のオリゴペプチドからなる群から選ばれる物質とを、
含有する結合体。
【請求項3】
担体が免疫原性脂質又は蛋白質を含む請求項2の結合体。
【請求項4】
以下のオリゴペプチドの内の2種のオリゴペプチドを含有する結合体であって、
各オリゴペプチドはADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、LLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)、LLCPAGHAV(NS31169―1177;配列番号:26)、KLVALGINAV(NS31406―1415;配列番号:28)、SLMAFTAAV(NS41789―1797;配列番号:34)、LLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)またはILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)であるCTLエピトープと同じまたは似通った位置に少なくとも80%の同一アミノ酸残基を有するオリゴペプチドであり、
上記各オリゴペプチドはHCVに対してMHC−限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発できるものであり、
上記結合体はLLALLSCLTV(Core178―187;配列番号:2)又はLLFNILGGWV(NS41807―1816;配列番号:35)のホモポリマーではなく、又はLLALLSCLTIのホモポリマーでもないものであり、
また上記結合体は配列番号:26、28または34のオリゴペプチドと配列番号:1、2、26、28、34、35または42のオリゴペプチドとの組合わせのヘテロポリマーではないものである、
結合体。
【請求項5】
該オリゴペプチドの少なくとも1つが、8個から50個未満のアミノ酸を含有するものである請求項4の結合体。
【請求項6】
追加のオリゴペプチドがTヘルパーエピトープである、請求項4の結合体。
【請求項7】
以下の工程を包含する、C型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する哺乳動物の細胞障害性T細胞をリンパ球中で検出する生体外での方法:
(a)細胞障害性T細胞をテストされるリンパ球と同じHLAクラスのものである標的細胞と、
ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)、および上記の1つと同じまたは似通った位置に少なくとも80%の同一アミノ酸残基を有するオリゴペプチドからなる群から選ばれた少なくとも1つのオリゴペプチドであって、該オリゴペプチドはHCVに対してMHC−限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発できるものであるオリゴペプチドを、
接触させ、
(b)細胞障害性T細胞をテストされるリンパ球を、
ADLMGYIPLV(Core131―140;配列番号:1)、及びILDSFDPLV(NS52252―2260;配列番号:42)、および上記の1つと同じまたは似通った位置に少なくとも80%の同一アミノ酸残基を有するオリゴペプチドからなる群から選ばれた少なくとも1つのオリゴペプチドであって、該オリゴペプチドはHCVに対してMHC−限定細胞障害性Tリンパ球反応を誘発できるものであるオリゴペプチドと、
接触させ、次いで
(c)該リンパ球が該標的細胞に障害を生ぜしめるものであるかどうかを決定する、
工程を包含する、生体外での、C型肝炎ウイルスのT細胞エピトープに反応する哺乳動物の細胞障害性T細胞をリンパ球中で検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265264(P2006−265264A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158108(P2006−158108)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【分割の表示】特願平7−524151の分割
【原出願日】平成7年3月16日(1995.3.16)
【出願人】(503070188)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (5)
【Fターム(参考)】