説明

C4−留分から粗製1,3−ブタジエンを取得する方法

本発明は、分離壁(T)が塔の長手方向に第1の部分範囲(A)、第2の部分範囲(B)および下部の共通の塔範囲(C)の構成下に配置され、抽出洗浄塔(K)が前接続されている分離塔(TK)中で、選択的な溶剤を用いてのC4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを取得する方法に関する。分離塔(TK)の操作は、分離塔(TK)中へのエネルギー供給量を塔底蒸発器(V)により制御し、下部の共通の塔範囲(C)中で理論的分離段の数を設計し、分離塔(TK)の運転形式を、分離塔(TK)から塔底部流(17)を得ることができるように調節し、この場合この塔底部流は、精製された溶剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的な溶剤を用いてのC4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを取得する方法に関する。
【0002】
C4留分からの粗製1,3−ブタジエンの取得は、C4留分の成分の僅かな差異のために、相対的揮発性の点で複雑な蒸留技術的問題となる。従って、この分離は、所謂抽出蒸留、即ち分離すべき混合物よりも高い沸点を有しかつ分離すべき成分の相対的揮発性の点で差異を高める抽出剤を添加しながらの蒸留によって実施される。適当な抽出剤を使用することによって、所謂C4留分からの抽出蒸留により粗製1,3−ブタジエンを得ることができ、引続き、この粗製1,3−ブタジエンは、1,3−ブタジエンよりも僅かに可溶性の炭化水素、殊にブタンおよびブテンを含有する流れ、ならびに1,3−ブタジエンよりも易溶性の炭化水素、殊にブチンならびに場合によっては1,2−ブタジエンを含有する流れと共に後精製される。
【0003】
本発明においては、C4留分から取得され、このC4留分からブタンとブテンの総和の少なくとも90質量%、有利にブタンとブテンの総和の少なくとも96質量%、特に有利にブタンとブテンの総和の少なくとも99質量%および同時にC4アセチレン少なくとも90質量%、有利にC4アセチレン少なくとも96質量%、特に有利にC4アセチレン少なくとも99質量%が分離された炭化水素混合物は、粗製1,3−ブタジエンと呼称される。粗製1,3−ブタジエンは、価値のある生成物の1,3−ブタジエンをしばしば少なくとも80質量%、有利に90質量%、特に有利に95質量%の含量で含有し、残分の不純物を含有する。
【0004】
これとは異なり、価値のある生成物の1,3−ブタジエンを少なくとも99質量%、有利に99.5質量%、特に有利に99.7質量%の含量で含有し、残分の不純物を含有する炭化水素混合物は、純粋な1,3−ブタジエンと呼称される。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願第10105660.5号の記載から、古典的方法と比較して装置の簡易化された構造の実施態様を有する方法は、公知である。C4留分の分離は、分離塔の上端部にまで延在する分離壁を備えた分離塔中およびこの分離塔に前接続された抽出洗浄塔中で行なわれる。
【0006】
従って、前記のドイツ連邦共和国特許出願第10105660.5号の開示内容は、広範囲に本明細書中に取り入れられている。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願第10105660.5号に記載の方法により、抽出蒸留に使用された分離塔の塔底部から部分脱ガス化された溶剤流は取り出される。この場合、”部分脱ガス化された溶剤”の概念は、1,3−ブタジエンを取得するための抽出蒸留で仕事をしている当業者に公知であり、分離すべきC4留分からのなお溶解された成分を含有し、実際に選択的な溶剤に対して最大の親和力を有する成分を含有する選択的な溶剤を示す。このためには、殊にC4アセチレン、なかんずくエチルアセチレンおよびビニルアセチレンが挙げられる。
【0008】
しかし、単に部分脱ガス化された溶剤流は、抽出蒸留部中に再循環させることができない。それというのも、何れにせよ特異的に有害なアセチレンが測定されるからである。従って、分離塔から取り出される塔底物流は、抽出蒸留への再循環までに最初に、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2724365号明細書の記載から公知である排ガス塔に供給されなければならず、この場合この排ガス塔は、塔底から部分脱ガス化された流れが取り出される塔と比較して低い圧力で運転される。排ガス塔中で、部分脱ガス化された溶剤流は、清浄化された、即ち完全に脱ガス化された溶剤の維持下に排ガス塔の塔底部で後処理され、ガス状炭化水素流は、排ガス塔の塔頂部で後処理され、この場合このガス状炭化水素流は、圧縮器により抽出蒸留塔の下部内に返送される。
【0009】
清浄化された溶剤または完全に脱ガス化された溶剤の概念は、本発明においては、C4留分の抽出蒸留のための選択的な溶剤として使用するのに適当であるように、C4留分からの成分の含量がはるかに減少されている溶剤であると理解され、この場合には、粗製1,3−ブタジエンおよびラフィネート1についての所定の規定は、守られている。この場合、重要な成分は、C4アセチレン、殊にエチルアセチレンおよびビニルアセチレンである。
【0010】
本発明の課題は、精製された溶剤の維持下に直接に抽出蒸留塔の塔底部から、C4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを取得するためのよりいっそう経済的な方法を提供することであった。
【0011】
この解決は、分離壁(T)が塔の長手方向に第1の部分範囲(A)、第2の部分範囲(B)および下部の共通の塔範囲(C)の構成下に配置され、抽出洗浄塔(K)が前接続されている分離塔(TK)中で、選択的な溶剤を用いてのC4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを取得する方法から出発する。
【0012】
本発明は、分離塔(TK)中へのエネルギー供給量を塔底蒸発器(V)により調節し、下部の共通の塔範囲(C)中で理論的分離段の数を設計し、分離塔(TK)の運転形式を、分離塔(TK)から塔底流(17)を得ることができるように調節し、この場合この塔底流は、精製された溶剤からなることによって特徴付けられている。
【0013】
意外なことに、抽出蒸留中に再循環させることができる精製された溶剤を直接に抽出蒸留塔の塔底部から取り出すことができ、このために付加的な排ガス塔は不要であることが見出された。このために、塔底蒸発器による抽出蒸留塔中へのエネルギー供給量および分離塔として構成された抽出蒸留塔の下部の共通の塔範囲内での理論的分離段の数を、抽出蒸留塔の塔底部で精製された溶剤を取り出すことができるように確定することは、可能であり、それで十分である。
【0014】
本発明において出発混合物として使用することができる所謂C4留分は、1分子当たり主に4個の炭素原子を有する炭化水素の混合物である。C4留分は、例えばエチレンおよび/またはプロピレンの製造の際に石油留分、例えば液化石油ガス、軽質ベンジンまたはガス油の熱分解によって得ることができる。更に、C4留分は、n−ブタンおよび/またはn−ブテンの接触的脱水の際に得ることができる。C4留分は、一般にブタン、n−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、それと共に微少量のC3炭化水素およびC5炭化水素、ならびにブチン、殊に1−ブチン(エチルアセチレン)およびブテニン(ビニルアセチレン)を含有する。
【0015】
この場合、1,3−ブタジエン含量は、一般に10〜80質量%、特に20〜70質量%、殊に30〜60質量%であり、一方で、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレンの含量は、一般に5質量%を超えない。
【0016】
冒頭に既に定義された抽出蒸留のためには、当該の分離問題、C4留分からの1,3−ブタジエンの取得にとって、抽出剤、即ち選択的な溶剤として、分離すべき混合物よりも高い沸点ならびに簡単な二重結合よりも共役二重結合および三重結合に対する大きな親和力ならびに単結合を有する一般的な物質または混合物、有利に双極性、特に有利に双極性の非プロトン性溶剤がこれに該当する。装置技術的理由から、殆んど腐食性でないかまたは非腐食性の物質が好ましい。
【0017】
本発明による方法に適した選択的な溶剤は、例えばブチロラクトン、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ケトン、例えばアセトン、フルフロール、N−アルキル置換低級脂肪族酸アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−ホルミルモルホリン、N−アルキル置換環式酸アミド(ラクタム)、例えばN−アルキルピロリドン、殊にN−メチルピロリドンである。一般に、N−アルキル置換低級脂肪族酸アミドまたはN−アルキル置換環式酸アミドが使用される。特に好ましいのは、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、フルフロールおよび殊にN−メチルピロリドンである。
【0018】
しかし、前記溶剤の混合物、例えばN−メチルピロリドンとアセトニトリルとの混合物、前記溶剤と共溶剤、例えば水および/または第三ブチルエーテルとの混合物、例えばメチル−第三ブチルエーテル、エチル第三ブチルエーテル、プロピル−第三ブチルエーテル、n−ブチル−第三ブチルエーテルまたはイソブチル−第三ブチルエーテルが使用されてもよい。
【0019】
特に好適なのは、有利に水溶液中の、殊に水7〜10質量%、特に有利に水8.3質量%を有する、本明細書中では略記してNMPとして示されたN−メチルピロリドンである。
【0020】
抽出蒸留は、分離塔中で実施され、この分離塔中には、分離壁が塔の長手方向に第1の部分範囲、第2の部分範囲および下部の共通の塔範囲の構成下に配置されており、この分離塔は、前接続された抽出洗浄塔と結合されている。
【0021】
分離塔は、公知方法で複雑な分離の課題のために、一般に少なくとも3つの成分の混合物のために使用され、この場合個々の成分は、それぞれ純粋な形で得ることができる。前記の分離塔は、分離壁、即ち一般に塔の長手方向に向いた平面の薄板を備えており、この薄板は、液体流と処理液流との交叉混合物を塔の分離部分内で阻止する。
【0022】
本明細書中では、特殊に構成された分離塔が使用され、この分離塔の分離壁は、塔の最上点にまで延在し、したがって液体流と処理液流との混合は、専ら下部の共通の塔範囲内で行なわれる。所謂、第1の部分範囲と第2の部分範囲は、分離壁によって互いに分離されている。
【0023】
抽出洗浄塔は、向流洗浄塔である。
【0024】
1つの好ましい方法の実施によれば、
C4留分は、分離塔の第1の部分範囲に、有利にこの第1の部分範囲の中央部に供給され、
塔頂部の流れは、抽出洗浄塔の分離塔の第1の部分範囲から分離塔の下部中に供給され、
抽出洗浄塔中で、向流抽出は、選択的な溶剤の第1の部分流との反応作用によって抽出蒸留塔の上部中で実施され、
選択的な溶剤中で1,3−ブタジエンよりも僅かに可溶性である、C4留分の成分は、抽出洗浄塔の頭頂部を経て取り出され、
抽出洗浄塔からの塔底流は、分離塔の第1の部分範囲の上部中に返送され、
選択的な溶剤の第2の部分流は、第2の部分範囲の上部中の分離塔に返送され、
塔頂生成物は、分離塔の第2の部分範囲(B)から粗製1,3−ブタジエンとして取り出され、
清製された溶剤からなる塔底流は、分離塔の下部の共通の塔範囲から取り出され、本方法に再循環される。
【0025】
従って、好ましくは、分離すべきC4留分は、分離塔の第1の部分範囲に、特に有利にこの第1の部分範囲の中央部中に供給され、分離塔の第1の部分範囲からの塔頂流は、前接続された抽出洗浄塔にこの抽出洗浄塔の下部中で供給され、この抽出洗浄塔中で向流抽出は、選択的な溶剤の第1の部分流との反応作用によって抽出洗浄塔の上部中で実施され、選択的な溶剤中で1,3−ブタジエンよりも僅かに可溶性である、C4留分の成分は、抽出洗浄塔の塔頂部を経て取り出され、特に好ましくは、抽出洗浄塔の頭頂部の凝縮器中で凝縮され、部分的に返送流として再び抽出洗浄塔に供給され、さらに主にブタンおよびブテンを含有する、しばしばラフィネート1と呼称される副生成物として取り出される。
【0026】
抽出洗浄塔の塔底流、即ち選択的な溶剤の1,3−ブタジエン、ブタン、ブテンならびに1,3−ブタジエンよりも良好に選択的な溶剤中で可溶性である、C4留分の成分を含有する流れを分離塔の第1の部分範囲の上部中に供給することによって、前記流れと蒸気状で供給されるC4留分との物質交換により、分離塔の第1の部分範囲の上部中で向流抽出は、選択的な溶剤中で1,3−ブタジエンよりも僅かに可溶性の成分の外側への移動によって分離塔の第1の部分範囲の塔頂部で行なうことができる。
【0027】
分離壁の下端部で蒸気状の流れが発生し、この場合この流れは、1,3−ブタジエンと共に選択的な溶剤中で1,3−ブタジエンよりも可溶性である、C4留分の成分、殊にC4アセチレンを含有する。この選択的な溶剤は、上昇する蒸気状の流れから分離塔の第2の部分範囲の上部中に供給される選択的な溶剤の第2の部分流との向流で洗浄除去される。分離塔の第2の部分範囲からの蒸気状の塔頂生成物は、取り出され、この場合、この蒸気状の塔頂生成物は、有利に塔の頭頂部の凝縮器中で凝縮され、凝縮された頭頂部の流れの部分流は、分離塔の部分範囲Bに返送流として返送され、凝縮された頭頂部の流れは、さらに粗製1,3−ブタジエンとして放出される。
【0028】
下部の共通の塔範囲内で、溶剤の完全な脱ガス化が行なわれ、この場合には、抽出蒸留塔の塔底部で精製された溶剤を得ることができる。
【0029】
このために必要とされる、抽出蒸留塔の塔底蒸発器を経てのエネルギー供給量を測定する場合には、当方法の技術者は、それぞれ具体的な場合に選択的な溶剤として使用された物質または物質混合物の熱的負荷可能性を配慮している。
【0030】
選択的な溶剤の熱的負荷可能性が許容される限り、抽出蒸留塔の塔底部中の温度は、有利に抽出蒸留塔の塔頂部でなお流水で凝縮されうるような高さに調節される。
【0031】
しかし、具体的に使用される選択的な溶剤の熱的負荷可能性が塔底部で精製された溶剤を得るために必要とされるであろう温度で十分ではない場合には、選択的な溶剤にとってなお許容されかつ相応して塔の頭頂部で流水と比較して費用のかかる冷媒で冷却される、塔底部での温度で作業されなければならない。
【0032】
特に好ましい選択的溶剤は、前記の記載と同様に、有利に水溶液中の、殊に水7〜10質量%、特に有利に水8.3質量%を有するNMPである。
【0033】
NMPが選択的溶剤として使用される前提条件下で、抽出蒸留塔の塔底部中での温度は、有利に170〜190℃の範囲内、特に有利に180℃までに調節される。相応して、塔頂部の圧力は、分離塔として構成された抽出蒸留塔の第2の部分範囲内で1〜10バール絶対の範囲内、有利に2〜5バール絶対の範囲内、特に有利に3.5バール絶対に調節される。
【0034】
原則的にブタンとブテンとからなる副生成物、所謂ラフィネート1の取得を抽出蒸留塔と分離された、前接続された抽出洗浄塔中に設けることは、不要である。また、工業的および経済的に本方法のための具体的な枠組み条件、殊に分離すべきC4留分の組成およびラフィネート1のための規定を考慮しながら、理論的分離段の数を分離塔の第1の部分範囲内で相応して高めることが実現可能である場合には、抽出洗浄塔を抽出蒸留塔として使用される分離塔の第1の部分範囲内に組み込むことが可能である。
【0035】
また、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10105660号明細書に記載の方法からの次に記載された好ましい変法は、本発明による方法に同様に使用することもできる。1つの好ましい変法において、処理液の流れは、分離塔の分離壁の下端部で、分離塔の第1の部分範囲内に導入される部分流が分離塔の第2の部分範囲内に導入される部分流よりも大量であるように適当な方法によって分離される。処理液の流れの分配を分離壁の下端で制御することによって、簡単で許容される方法で分離塔の第2の部分範囲の塔頂部から取り出される粗製1,3−ブタジエンの流れの必要とされる生成物の規定が保証されうる。
【0036】
特に好ましくは、分離壁の下端部での処理液の流れのこの種の不均一な分離は、分離壁が外側の中央部に配置され、実際に分離塔の第2の部分範囲が分離塔の第1の部分範囲と比較して小さくなるように構成されていることによって達成されうる。
【0037】
特に好ましくは、分離壁は、外側の中央部で、第1の部分範囲と第2の分範囲の横断面積比が8:1〜1.5:1、殊に2.3:1の範囲内にあるように配置されている。
選択的にかまたは分離壁を外側の中央部に配置させることに加えて、処理液の流れは、分離壁の下端部で他の方法、例えばフラップまたは邪魔板によって望ましい比で分離塔の2つの部分範囲上に分配される。
【0038】
更に、処理液の流れを分離壁の下端部で分配するための付加的または選択的な方法は、凝縮器の熱導出効率を分離塔の第2の部分範囲の塔頂部で調節することにある。
【0039】
1つの好ましい変法は、圧力が分離塔の2つの部分範囲の上端部でそれぞれ別々に制御可能であることによって特徴付けられている。
【0040】
それによって、粗製1,3−ブタジエンの必要とされる生成物の規定が保証されうる。
【0041】
分離塔の2つの部分範囲の塔頂部の圧力は、有利にそれぞれスプリット−レンジ制御装置(Split-Range-Regelung)により調節されうる。スプリット−レンジ制御装置(Split-Range-Regelung)の概念は、公知方法で1つの装置を示し、それによれば、圧力制御装置の出口は、同時に不活性ガス導管および脱気導管と結合されている。圧力制御装置の弁の調節範囲は、それぞれ弁のみが動作され、即ち不活性ガスが流入するかまたは脱気されるように分割されている。それによって、不活性ガス量ならびに排気中と関連した生成物の損失は、最少化されうる。
【0042】
スプリット−レンジ制御装置(Split-Range-Regelung)に加えてかまたは選択的に、分離塔の2つの部分範囲内での塔頂部の圧力をそれぞれ凝縮器の熱導出効率により分離塔の第2の部分範囲の塔頂部または抽出洗浄塔の塔頂部で調節することができる。
【0043】
1つの好ましい変法において、塔頂部の圧力は、分離塔の第1の範囲内よりも分離塔の第2の部分範囲内で、殊に1〜100ミリバール、特に1〜30ミリバールだけ高くなるように調節される。この方法によって、堅固に溶接されたかまたは費用を掛けて密閉された分離壁を断念することが可能であり、安価で固定されていない分離壁を使用することが可能である。分離塔の第2の部分範囲から分離塔の第1の部分範囲に方向を向いた圧力勾配によって、液状またはガス状の漏洩流がこの方向にのみ発生する可能性があり、したがって第2の分範囲の塔頂部から取り出される価値のある生成物の純度にとって粗製1,3−ブタジエンは、重要ではない。
【0044】
清製された溶剤の塔底流の熱の維持は、殊に分離塔の1つ以上の個所から、分離塔の下部の共通の塔範囲からの液体または液体の部分流を取り出し、抽出蒸留塔からの熱い塔底流との間接的な熱交換によって加熱しおよび/または蒸発させ、再び下部の共通の塔範囲内に返送することにより、好ましくは方法それ自体への熱の調整によって利用されることができる。
【0045】
この場合には、有利に分離段が選択され、この分離段から、抽出蒸留塔のための全エネルギー需要量が最少になるように液体または液体の部分流が取り出される。
【0046】
付加的または選択的に、精製された溶剤の塔底流の熱の維持は、抽出蒸留塔へ供給することができるC4留分との間接的な熱交換のために利用されてもよい。
【0047】
好ましくは、本方法からのC4アセチレン、殊にエチルアセチレンおよびビニルアセチレンの外側への移動のために、分離塔の下部の共通の塔範囲から側方流は、取り出され、洗浄塔に供給され、この洗浄塔中で側方流は、水で洗浄され、この洗浄塔から塔頂流は取り出され、この塔頂流は、部分的または完全に、有利に部分的に凝縮され、凝縮物は、部分的に外側へ移動され、その他の点では、返送流として洗浄塔に供給され、塔底流は、洗浄塔から取り出され、下部の共通の塔範囲に再び供給される。
【0048】
従って、本発明によれば、公知方法と比較して有利に本方法中に再循環される、直接に抽出蒸留塔の塔底部からの精製された溶剤の回収を可能にする、C4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを回収する方法が提供される。このために従来必要とされてきた排ガス塔およびそれに属する周辺装置、殊に熱交換器およびポンプを節約すること、特に抽出蒸留塔中へ返送することができる炭化水素流を圧縮するための圧縮器を節約することによって、投資費は、公知方法と比較してよりいっそう低い。特に好ましいのは、公知技術水準による方法において遙かに大きな流れの消費装置である圧縮器が排除されることである。
【0049】
圧縮器の排除によって、本発明による方法における電気エネルギーの消費は、公知技術水準と比較してほぼ半分に減少する。
【0050】
本発明を次に図につき詳説する:
図1は、本発明による装置を示す略図である。分離塔を第1の部分範囲A、第2の部分範囲Bおよび下部の共通の塔範囲Cに分割する、塔の長手方向に配置された分離壁Tを備えた分離塔TK中で、第1の部分範囲AにC4留分が供給される。例示的に、第2の部分範囲Bは、40段の理論的分離段を有し、下部の共通の塔範囲Cは、10段の理論的分離段を有する。部分範囲Aからの塔頂流2は、例示的に19段の理論的分離段を有する前接続された抽出洗浄塔Kの下部範囲内に導入される。抽出洗浄塔Kには、第1の溶剤部分流3がこの抽出洗浄塔の上部中で衝突し、向流抽出が起こり、その際に分離塔TKの部分範囲Aの上部中に返送される塔底流7が生じ、および抽出洗浄塔Kの塔頂部の凝縮器中で凝縮される塔頂流4が生じ、この場合凝縮物の1つの部分流は、流れ5として再び抽出洗浄塔K上に供給され、その他の点では、凝縮物は、流れ6として取り出される。
【0051】
分離塔TKには、この分離塔の第2の部分範囲B中で第2の溶剤部分流13が衝突する。第2の部分範囲Bから塔底流14は、取り出され、凝縮され、凝縮された塔頂流14の部分流15は、返送流として分離塔の第2の部分範囲B上に供給され、その他の点では、凝縮された塔頂流14は、粗製1,3−ブタジエン(流れ16)として取り出される。
【0052】
下部の共通の塔範囲Cから、図に示された好ましい実施態様により、側方流8は、取り出され、洗浄塔Sに供給され、洗浄塔S中で水(HOHの流れ)で洗浄される。洗浄塔Sから塔頂流24は、取り出され、凝縮器中で凝縮され、凝縮物の一部分(流れ25)は、返送流として再び洗浄塔S上に供給され、その他の点では、C4アセチレンを含有する流れ26として外側へ移動される。洗浄塔Sの塔底部から、流れ27は、取り出され、再び分離塔TKの下部の共通の塔範囲Cに供給される。分離塔TKの塔底蒸発器は、Vで示されている。
【0053】
水8.3質量%を有する精製された溶剤、例えばNMPからなる、分離塔TKの塔底流17は、分離塔TKの下部の共通の塔範囲Cから取り出されかつ加熱後に流れ17によって再び下部の共通の塔範囲内に供給される液体流との熱の調整のために利用される。
【0054】
更に、図中に例示されたように、塔底流17の熱の維持は、有利に分離塔TKに供給されるC4留分(流れ1)を予熱するために利用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の1実施例を示す系統図。
【符号の説明】
【0056】
1 C4留分の流れ、 2、4、24 塔頂流、 3 第1の溶剤部分流、 5 凝縮物の1つの部分流、 6 凝縮物の流れ、 7 塔底流、 8 側方流、 13 第2の溶剤部分流、 14 塔底流、 15 塔底流14の部分流、 16 粗製1,3-ブタジエンの流れ、 17 分離塔TKの塔底流、 25 凝縮物の一部分の流れ、 26 C4アセチレンを含有する流れ、 A 第1の部分範囲、 B 第2の部分範囲、 C 下部の共通の塔範囲、 K 抽出洗浄塔、 S 洗浄塔、 T 分離壁、 TK 分離塔、 V 塔底蒸発器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離壁(T)が塔の長手方向に第1の部分範囲(A)、第2の部分範囲(B)および下部の共通の塔範囲(C)の構成下に配置され、抽出洗浄塔(K)が前接続されている分離塔(TK)中で、選択的な溶剤を用いてのC4留分からの抽出蒸留によって粗製1,3−ブタジエンを取得する方法において、分離塔(TK)中へのエネルギー供給量を塔底蒸発器(V)により制御し、下部の共通の塔範囲(C)中で理論的分離段の数を設計することにより、分離塔(TK)の運転形式を、分離塔(TK)から塔底部流(17)を得ることができるように調節し、この場合この塔底部流は、精製された溶剤からなることを特徴とする、粗製1,3−ブタジエンを取得する方法。
【請求項2】
液体または液体の部分流を下部の共通の塔範囲(C)からの1つ以上の個所から取り出し、分離塔(TK)からの塔底流(17)との間接的な熱交換によって加熱しおよび/または蒸発させ、再び分離塔(TK)の下部の共通の塔範囲(C)に返送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
分離塔(TK)の下部の共通の塔範囲(C)からの液体または液体の部分流を、エネルギー需要が分離塔(TK)に対して最少化されるように選択される分離段から取り出す、請求項2記載の方法。
【請求項4】
分離塔(TK)からの塔底流(17)の一部分を分離塔(TK)に供給される分離することができるC4留分(19)との間接的な熱交換のために利用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
理論的分離段の数を分離塔(TK)の第1の部分範囲(A)内で相応してよりいっそう大きくなるように設計することにより、抽出洗浄塔(K)を構造的に分離塔(TK)の第1の部分範囲(A)内に組み込む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分離塔(TK)の下部の共通の塔範囲(C)から側方流(8)を取出し、側方流(8)を洗浄塔(S)に供給し、この洗浄塔中で水洗を実施し、洗浄塔(S)から塔頂流(24)を取出し、塔の頭頂部の凝縮器中で完全にかまたは有利に部分的に凝縮し、部分的に返送流(25)として再び洗浄塔(S)上に供給し、その他の点では、流れ(26)として外側へ移動させ、塔底流(27)を洗浄塔(S)から分離塔(TK)の下部の共通の塔範囲(C)中に返送する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
C4留分(1)は、分離塔(TK)の第1の部分範囲(A)に、有利にこの第1の部分範囲の中央部に供給され、
分離塔(TK)の第1の部分範囲(A)から塔頂部の流れ(2)は、抽出洗浄塔(K)の下部中に供給され、
抽出洗浄塔(K)中で、向流抽出は、選択的な溶剤の第1の部分流(3)との反応作用によって抽出蒸留塔(K)の上部中で実施され、
選択的な溶剤中で1,3−ブタジエンよりも僅かに可溶性である、C4留分の成分は、抽出洗浄塔(K)の頭頂部を経て取り出され(4)、
抽出洗浄塔(K)からの塔底流(7)は、分離塔(TK)の第1の部分範囲(A)の上部中に返送され、
選択的な溶剤の第2の部分流(13)は、第2の部分範囲(B)の上部中の分離塔(TK)に返送され、
塔頂生成物(14)は、分離塔(TK)の第2の部分範囲(B)から粗製1,3-ブタジエン(16)として取り出され、
精製された溶剤からなる塔底流(17)は、分離塔(TK)の下部の共通の塔範囲(C)から取り出され、本方法に再循環される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
選択的な溶剤として、有利に水溶液中の、殊に水7〜10質量%、特に有利に水8.3質量%を有するN−メチルピロリドンを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分離塔(TK)の塔底部中の温度を170〜190℃、有利に180℃に調節し、分離塔(TK)の第2の部分範囲(B)の頭頂部での圧力を1〜10バール絶対、有利に2〜5バール絶対、特に有利に3.5バール絶対の範囲内に調節する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−525481(P2007−525481A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529876(P2006−529876)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005407
【国際公開番号】WO2004/103937
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】