説明

CATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置およびそれを備える無停電電源供給装置

【課題】CATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置およびそれを備える無停電電源供給装置を提供する。
【解決手段】CATVシステムの無停電電源供給装置100において、無停電電源供給装置本体110は、入力側回路111と、出力側回路112とを有し、また、雷防護装置120は、入力側避雷素子121、122と、出力側避雷素子123とを備える。入力側避雷素子121、122は、一端が無停電電源供給装置本体110の入力側に接続され、他端が無停電電源供給装置本体110の接地端子に接続されると共にアースに接続される一対の入力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものであり、出力側避雷素子123は、一端が前記無停電電源供給装置の出力側に接続され、他端が無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共に接地される出力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステムの増幅器などの屋外CATV伝送機器用の電源供給器である無停電電源供給装置用雷防護装置およびそれを備える無停電電源供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電話通信回線、有線放送回線等においては、屋外での通信線が各種機器類に接続されており、且つこの各種機器類は通常商用電源等の電源線に接続されている。
【0003】
上記既存の電話通信線では、屋外線と加入者線との境界部分に加入者保安器を設け、高電圧の印加を避雷素子によって大地へ放流させ、人体への危害を避けるとともに機器本体を保護するものであった。
【0004】
これに対して、商用電源は、大多数が中性接地の単相三線式を採っており、一般には柱上トランスの箇所で一線が接地されている構造である。また商用電源線には漏電ブレーカ及びブレ−カが設けられている。さらに雷サージ等の異常電圧の侵入に備え、商用電源線と大地との間に電源用の避雷素子を接続したものが用いられている(特許文献1参照)。
【0005】
また、有線放送回線として、ケーブルテレビジョン(以下、CATVという)システムの中継伝送網には、幹線増幅器、幹線分配増幅器、幹線分岐増幅器、分配増幅器等色々な増幅器が多数屋外設置されている。これらの増幅器に電源を供給するための電源装置として、無停電電源供給装置(略称:PS)が用いられている。
【0006】
無停電電源供給装置においては、商用電源(AC100V)が装置に入力され、装置内部の回路により増幅器用の電源(例えば、AC60V)に変換し出力する。商用電源が停電してもCATVシステムへの電源供給が途絶えないようにするために、商用電源停電時に自動的に予備電源(蓄電池)からCATVシステムへ電源を供給する。
【0007】
無停電電源供給装置においては、誘導雷などの外来サージや負荷の短絡事故に対する保護回路が設けられている。図5は、従来の無停電電源供給装置の雷対策回路の構成を示す概略図である。図5において、雷によるサージ電流の侵入経路を示している。
【0008】
図5に示すように、無停電電源供給装置1は、金属製筐体10の中に、入力側回路120と、出力側回路130とが設置されている。また、無停電電源供給装置1の雷対策回路として、入力側に接続された避雷素子121、122、及び出力側接続された避雷素子131が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7−3247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図5に示すような回路構成において、落雷時、無停電電源供給装置1にサージ電流が侵入した際に、図5に示すように入力側に接続された避雷素子121、122、及び出力側接続された避雷素子131によりサージ電流をバイバスする経路ができる。これにより、無停電電源供給装置1の内部回路へのサージ電流侵入を防ぐことができるが、バイパス経路上にフィルタF等のインピーダンス成分を持つ素子が搭載されているため、サージ電流の通過により電位が発生しバイパス経路上の電位を上昇させることになる。即ち、無停電電源供給装置1で高電圧が発生する。
【0011】
また、無停電電源供給装置1の金属筐体10は、金属製であり、接地端子と接続していることから、金属筐体10の全体が接地されている状態となり、内部に搭載されているAC60V出力用トランスの配線接続部やその他搭載部品も含め、金属筐体(接地)10とは空間距離による絶縁が保たれている構造となっている。即ち、金属筐体10と内部搭載回路(120、130)の間で絶縁離隔構造である。なお、空間距離の絶縁破壊は、空間距離1mmに対し1kV程度の電圧が加わった状態で発生する。
【0012】
上記2つの要素と落雷時の環境(高湿度)等により、内部回路と接地間で高電圧が発生した場合、スパーク現象が発生する可能性がある。このスパーク現象の発生により、内部回路と接地との間に避雷素子によるバイパス経路とは別の雷サージ侵入経路ができる可能性があり、即ち、サージ電流がスパーク現象により筐体の金属部へ流れる可能性がある。この場合、サーキットプロテクタSの不要動作が発生する問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、CATVシステムの増幅器などの屋外CATV伝送機器用の電源供給器である無停電電源供給装置用雷防護装置およびそれを備える無停電電源供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係るCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置は、CATVシステムの通信線に接続されたアンプに電力を供給するための無停電電源供給装置用雷防護装置であって、一端が前記無停電電源供給装置の入力側に接続され、他端が前記無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共にアースに接続される入力側電源線からのサージ電流を逃がすための一対の入力側避雷素子と、一端が前記無停電電源供給装置の出力側に接続され、他端が前記無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共に接地される出力側電源線からのサージ電流を逃がすための出力側避雷素子とを備え、前記無停電電源供給装置の入力側と出力側との間に雷サージバイパス回路を形成し、前記無停電電源供給装置の入力側とアース間および前記無停電電源供給装置の出力側とアース間に雷サージバイパス回路を形成すると共に、前記無停電電源供給装置の出力側の同軸線の間に雷サージバイパス回路を形成するものである。
【0015】
例えば、前記入力側避雷素子および出力側避雷素子に、故障した際にオープンとなり、故障の有無を確認するための接点端子が設けられる。また、前記接点端子に故障を示すランプが接続される。さらに、前記接点端子に故障の有無を判別しCATV局へ送信する手段が設けられる。
【0016】
また、本発明に係る無停電電源供給装置は、上記本発明に係るCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、CATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置は、サージ電流の通過により電位が発生しバイパス経路上の電位を上昇させること、即ち、無停電電源供給装置1で高電圧が発生することを回避できる。
【0018】
そのため、スパーク現象が発生することがなく、スパーク現象の発生により、内部回路と接地との間に避雷素子によるバイパス経路とは別の雷サージ侵入経路の形成を防止することができ、サーキットプロテクタの不要動作の発生を防止することができる。
【0019】
結果として、CATVシステムの無停電電源供給装置を雷サージ等の異常電圧から確実に保護することができ、無停電電源供給装置のサーキットプロテクタの不要動作の発生がなく、安定して電力を供給することが可能となる。
【0020】
また、CATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置は、既製のCATVシステムの無停電電源供給装置に簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のCATVシステムの無停電電源供給装置の設置状態を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態のCATVシステムの無停電電源供給装置の構成を示す概略図である。
【図3】表示ランプによる雷防護装置の状態を監視する回路構成の例を示す概略図である。
【図4】ステータスモニタで雷防護装置の状態を監視する回路構成の例を示す概略図である。
【図5】従来のCATVシステムの無停電電源供給装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置およびそれを用いた無停電電源供給装置を実施するための最良の形態を、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態のCATVシステムの無停電電源供給装置の設置状態を示す概略図である。図2は、本発明の実施の形態のCATVシステムの無停電電源供給装置の構成を示す概略図である。
【0024】
図1に示すように、CATVシステムの無停電電源供給装置100は、CATVシステムの通信線路に配置されている。入力側は商用電源(AC100V)に接続され、出力側は電源用同軸ケーブルで増幅器(アンプ)に接続され、AC60Vの電源として電力を供給する。なお、出力側はステータス用同軸ケーブルで増幅器(アンプ)に接続されている。
【0025】
また、図2に示すように、CATVシステムの無停電電源供給装置100は、金属ケース101と、無停電電源供給装置本体110と雷防護装置140とから構成されている。無停電電源供給装置本体110と雷防護装置140は金属ケース101に収納されている。
【0026】
無停電電源供給装置本体110は、入力側回路120と、出力側回路130とを有する。入力側回路120は商用電源(AC100V)に接続されている。また、出力側回路130はAC60Vの電力を出力し増幅器(アンプ)に供給する。また、出力側回路130には、フィルタF、およびサーキットプロテクタSを備えている。
【0027】
また、雷防護装置140は、入力側避雷素子141、142を有する入力側避雷回路と、出力側避雷素子123を有する出力側避雷回路とを備える。入力側避雷素子141、142は、一端が無停電電源供給装置本体110の入力側に接続され、他端が無停電電源供給装置本体110の接地端子に接続されると共にアースに接続される一対の入力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものである。出力側避雷素子143は、一端が前記無停電電源供給装置の出力側に接続され、他端が前記無停電電源供給装置の設置端子に接続されると共に接地される出力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものである。
【0028】
雷防護装置140において、入力側避雷素子141、142と出力側避雷素子143とにより、無停電電源供給装置本体110の入力側と出力側との間に雷サージバイパス回路を形成し、また、無停電電源供給装置本体110の入力側とアース間および無停電電源供給装置本体110の出力側とアース間に雷サージバイパス回路を形成すると共に、無停電電源供給装置本体110の出力側の同軸線の間に雷サージバイパス回路を形成する。
【0029】
これにより、落雷時、無停電電源供給装置100にサージ電流が侵入した際に、図2中の矢印に示すように、サージ電流が雷サージバイパス回路によりバイパスされる。この場合、バイパス回路上にインピーダンス成分がなく、雷サージ印加時に発生する電圧を最小限に抑制することができる。
【0030】
このように本実施の形態においては、CATVシステムの無停電電源供給装置100は、金属ケース101と、無停電電源供給装置本体110と、雷防護装置140とから構成され、無停電電源供給装置本体110は、入力側回路120と、出力側回路130とを有し、また、雷防護装置140は、入力側避雷素子141、142と、出力側避雷素子143とを備える。入力側避雷素子141、142は、一端が無停電電源供給装置本体110の入力側に接続され、他端が無停電電源供給装置本体110の接地端子に接続されると共にアースに接続される一対の入力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものであり、出力側避雷素子143は、一端が前記無停電電源供給装置の出力側に接続され、他端が無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共に接地される出力側電源線からのサージ電流を逃がすためのものである。
【0031】
これにより、CATVシステムの無停電電源供給装置100において、雷防護装置140は、サージ電流の通過により電位が発生しバイパス経路上の電位を上昇させること、即ち、無停電電源供給装置本体110で高電圧が発生することを回避できる。そのため、スパーク現象が発生することがなく、スパーク現象の発生により、内部回路と接地との間に避雷素子によるバイパス経路とは別の雷サージ侵入経路の形成を防止することができ、サーキットプロテクタの不要動作の発生を防止することができる。
【0032】
したがって、CATVシステムの無停電電源供給装置100が雷サージ等の異常電圧から確実に保護され、サーキットプロテクタの不要動作の発生がなく、安定して電力を供給することが可能となる。
また、雷防護装置140を、既製のCATVシステムの無停電電源供給装置に簡単に設置することができる。
【0033】
図3、および図4は、本発明の実施の形態のCATVシステムの無停電電源供給装置の他の構成を示す概略図である。本願発明の他の実施の形態としては、例えば、CATVシステムの無停電電源供給装置100において、入力側避雷素子141、142を有する入力側避雷回路に故障した際にオープン(またはショット)となる接点端子144が設けられる。また、出力側避雷素子143を有する出力側避雷回路に、故障した際にオープン(またはショット)となる接点端子145が設けられる。これにより、入力側避雷素子141、142および出力側避雷素子143が故障した際に接点端子144または145がオープン(またはショット)する。
【0034】
また、故障を示す状態表示ランプ146が設けられる。状態表示ランプ146が接点端子144、145に接続され、状態表示ランプ146が点灯(または、消灯)することで回路の故障を判断することができる。電柱上に接地されるCATVシステムの無停電電源供給装置100の点検が電柱を登ることなく確認することができる。
【0035】
このように、この接点端子144、145を利用して、入力側避雷素子141、142および出力側避雷素子143の状態(故障の有無)を確認することが可能となる。避雷素子が故障した際に、内蔵されている接点端子が切り替わる。この機構を利用し避雷回路部の状態を監視する。
【0036】
さらに、例えば、接点端子に故障の有無を判別しCATV局へ送信する通信手段を設けるようにしてもよい。ここで、通信手段は、CATVシステムを利用した有線通信手段または無線通信手段である。
【0037】
図3は、表示ランプによる雷防護装置の状態を監視する回路構成の例を示す図である。図3(a)は、ノーマリークローズ(NC接点回路で、即ち状態表示ランプ146が、正常時点灯、異常時消灯の回路である。また、図3(b)は、ノーマリーオープン(NO)接点回路で、即ち状態表示ランプ146が、正常時消灯、異常時点灯の回路である。
【0038】
また、図3中の状態表示ランプ146用電源は、無停電電源供給装置100に接続されている商用電源または無停電電源供給装置100から出力されるAC60Vの電源を使用することができる。なお、バッテリ、太陽電池等を搭載し状態表示ランプ用電源として利用することも可能である。
【0039】
図4は、ステータスモニタで雷防護装置の状態を監視する回路構成の例を示す図である。図4(a)は、ノーマリークローズ(NC)接点回路である。また、図4(b)は、ノーマリーオープン(NO)接点回路である。これらの接点回路は、ステータスモニタへ接続される。これにより、ステータスモニタで避雷回路部の状態を監視することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、CATVシステムの増幅器などの屋外CATV伝送機器用の電源供給器である無停電電源供給装置の雷防護に利用できる。また、CATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置は、既製のCATVシステムの無停電電源供給装置に簡単に設置することができるため、既製のCATVシステムの無停電電源供給装置の雷防護機能を向上するためにも利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1,100 CATVシステムの無停電電源供給装置
10,101 金属ケース
110 無停電電源供給装置本体
120 入力側回路
121,122,131 避雷素子
130 出力側回路
140 雷防護装置
141,142 入力側避雷素子
143 出力側避雷素子
144,145 接点端子
146 状態表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATVシステムの通信線に接続されたアンプに電力を供給するための無停電電源供給装置用雷防護装置であって、
一端が前記無停電電源供給装置の入力側に接続され、他端が前記無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共にアースに接続される入力側電源線からのサージ電流を逃がすための一対の入力側避雷素子と、
一端が前記無停電電源供給装置の出力側に接続され、他端が前記無停電電源供給装置の接地端子に接続されると共に接地される出力側電源線からのサージ電流を逃がすための出力側避雷素子とを備え、
前記無停電電源供給装置の入力側と出力側との間に雷サージバイパス回路を形成し、前記無停電電源供給装置の入力側とアース間および前記無停電電源供給装置の出力側とアース間に雷サージバイパス回路を形成すると共に、前記無停電電源供給装置の出力側の同軸線の間に雷サージバイパス回路を形成することを特徴とするCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置。
【請求項2】
前記入力側避雷素子および出力側避雷素子に、故障した際にオープンとなり、故障の有無を確認するための接点端子が設けられることを特徴とする請求項1に記載のCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置。
【請求項3】
前記接点端子に故障を示すランプが接続されることを特徴とする請求項2に記載のCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置。
【請求項4】
前記接点端子に故障の有無を判別しCATV局へ送信する手段が設けられることを特徴とする請求項2または3に記載のCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のCATVシステムの無停電電源供給装置用雷防護装置を備えることを特徴とする無停電電源供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−193632(P2010−193632A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35827(P2009−35827)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000153720)株式会社白山製作所 (36)
【出願人】(505430377)金沢ケーブルテレビネット株式会社 (1)
【Fターム(参考)】