説明

CCD信号処理装置および撮像装置

【課題】CCD固体撮像素子の撮像データについて、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行可能にする。
【解決手段】CCD固体撮像素子11は、N(Nは2以上の整数)ラインの画像信号と、このNラインの画像信号を補正するための1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ順次出力する。AD変換部12は固体撮像素子11の出力信号をAD変換する。スミアデータ分離部20はAD変換部12から出力されたセンサー出力データからスミアデータを分離し、各画像データに対応する補正用スミアデータに変換する。減算回路17は各画像データから、対応する補正用スミアデータを減算してスミア補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)を用いた固体撮像素子の信号を処理する技術に関するものであり、特に、高輝度被写体を撮像したときに発生するスミアによる画質の劣化を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDイメージ・センサにおいて、高輝度被写体を撮像したとき、スミアと呼ばれるノイズが発生する場合がある。これは、輝度が高い部分に余分に発生する電荷が、すでに光電変換が終わって垂直CCDで転送している信号電荷に混入するために生じる。スミアが発生すると、輝度の高い部分の上下に筋や帯状の白っぽいノイズが見える。
【0003】
このスミアを補正するために、従来では例えば、スミアは同一列において発生することを利用して、撮像部の上下端に遮光されたスミア補正用の光電変換素子を設け、これらの光電変換素子によって撮像されたOB(Optical Black)データの平均値を用いて、同一列の撮像データを減算補正している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−110375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来技術では次のような問題がある。
【0005】
例えば1フレーム分のデータの読み出し中に高輝度被写体が動いたとき、高輝度被写体の動きに合わせてスミアの発生箇所も動いてしまう。このとき、スミアは列が揃った直線状にはならずに、斜めにうねった線として現れる。ここで、上述のように、撮像部の上下端に設けたスミア補正用光電変換素子のOBデータを用いて減算補正を行うと、スミアのうち補正できない部分が残ってしまう。また、スミアが現れていない部分について不要な補正がなされることになり、画像データが欠落し画質が悪化してしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、CCD固体撮像素子の撮像データについて、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、CCD固体撮像素子として、N(Nは2以上の整数)ラインの画像信号と、このNラインの画像信号を補正するための1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ、順次出力する構成を有するものを前提とする。このような出力を可能にするためには、例えば、CCDの駆動手法によって、画像信号をNラインおきに間引いて読み出すようにすればよい。間引かれたラインでは、垂直転送CCDにあるスミア信号のみが出力されることになり、この結果、Nラインの画像信号と1ラインのスミア信号とが順次出力される。
【0008】
そして本発明は、前記CCD固体撮像素子から出力された信号を処理するCCD信号処理装置として、前記CCD固体撮像素子の出力信号をAD変換し、画像データおよびスミアデータを含むセンサー出力データとしてするAD変換部と、前記AD変換部から出力されたセンサー出力データからスミアデータを分離し、各画像データに対応する補正用スミアデータに変換して出力するスミアデータ分離部と、前記AD変換部から出力されたセンサー出力データのうちの画像データから、前記スミアデータ分離部から出力された、対応する補正用スミアデータを減算してスミア補正を行う減算回路とを備えている。
【0009】
この発明によって、Nラインの各画像データに対応する補正用スミアデータが、スミアデータ分離部から出力され、減算回路によって、各画像データから、対応する補正用スミアデータが減算されてスミア補正が実現される。したがって、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行することができるので、良好な画質の画像データを出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。図1において、11はCCDを用いた固体撮像素子、12は固体撮像素子11の出力信号をAD変換するAD変換部、13はOB(Optical Black)レベル補正部、14はAD変換およびOBレベル補正後のセンサー出力データからスミアデータを抽出するスミアサンプリング部、15は抽出されたスミアデータのレベル調整を行うレベル調整部、16は過補正すなわち減算によるスミア補正が過剰になることを抑制するために抽出されたスミアデータを補正する過補正抑制部16、17はセンサー出力データからスミアデータを減算してスミア補正を行う減算回路である。
【0013】
A/D変換部12以降の構成によって、CCD信号処理装置が構成されている。また、スミアサンプリング部14、レベル調整部15および過補正抑制部16によって、センサー出力データからスミアデータを分離し、各画像データに対応する補正用スミアデータに変換して出力するスミアデータ分離部20が構成されている。
【0014】
固体撮像素子11は、効果的なスミア補正が実現可能となるように、次のように構成されている。すなわち、N(Nは2以上の整数)ラインの画像信号と、これらNラインの画像信号に対応する1ラインのスミア信号とを、併せて出力可能となっている。そして、Nラインの画像信号と1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ、順次出力する。
【0015】
本実施形態では、N=2、すなわち、固体撮像素子11は、2ラインの画像信号と1ラインのスミア信号とを併せて出力するものとする。図2は固体撮像素子11の出力における、画素の空間配列位置と出力順との関係の一例を示す図である。各数字は出力順を表している。1ライン目が画像ライン0、2ライン目がスミアライン、3ライン目が画像ライン1となっている。図3は図2の場合における実際のデータ出力例である。
【0016】
また本実施形態では、固体撮像素子11の仕様として、次のことを前提とする。
1)出力される3ラインのうち、スミアラインがどのラインであるかは不定
すなわち、図2の例では2ライン目がスミアラインになっているが、1ライン目や3ライン目がスミアラインになる場合もあり得る。ただし、CCD信号処理時には、スミアラインがどのラインであるかは既知であるものとする。
2)各ラインの水平位置ずれ量は不定
すなわち、図2の例では1ライン目に対して、2ライン目が左に1画素分ずれており、3ライン目が左に3画素分ずれているが、このずれ量は不定である。例えば、3ライン目が1ライン目に対して右に1画素分ずれる場合もある。ただし、CCD信号処理時には、このずれ量がどの程度であるかは既知であるものとする。
3)同一列における、画像データとスミアデータとの出力順のずれ量は不定
すなわち、図2の例では、画像ライン0とスミアラインとの出力順のずれ量は−4であり、画像ライン1とスミアラインとの出力順のずれ量は+7である(図4参照)が、このずれ量は不定である。ただし、CCD信号処理時には、このずれ量がどの程度であるかは既知であるものとする。また本実施形態では、このずれ量は±8までであるものとしている。ただし、このずれ量の許容範囲は±8に限定されるものではない。
【0017】
OBレベル補正部13は、A/D変換部12から出力されたデータについて、OBレベルを補正する。具体的には例えば、予め、OB領域の画像データを積算しておき、その平均値からOBレベル補正値を求めておく。そして、出力データから、そのOBレベル補正値を減算する。なお、同一フレームにおけるOB領域の画像データを用いることが好ましいが、例えば前フレームのOB領域の画像データを用いてもかまわない。あるいは、OBレベル補正値を任意に設定してもかまわない。
【0018】
図5はスミアサンプリング部14およびレベル調整部15の具体的な構成例を示す図である。図5において、スミアサンプリング部14は、ライン判別カウンタ101,判別ゲート102,106,107、スミアデータ記憶部103、セレクタ104,105,110、および遅延部108,109,111を備えている。レベル調整部15は、乗算値選択部120および乗算部121を備えている。
【0019】
ライン判別カウンタ101はセンサー出力データに同期した3進カウンタであり、データ出力タイミングに合わせて値「0」「1」「2」を繰り返し出力する。このライン判別カウンタ101の出力を用いることによって、センサー出力データからスミアデータのみを抽出することができる。いま図6に示すとおり、ライン判別カウンタ101の出力のうち、「1」が画像ライン0に対応し、「2」がスミアラインに対応し、「0」が画像ライン1に対応するものとする。
【0020】
判別ゲート102は、ライン判別カウンタ101の出力がスミアライン判別値すなわち「2」に一致したとき、出力をアサートする。スミアデータ記憶部103は、直列接続された所定数(図5では6個)の記憶素子103a〜103fを有しており、判別ゲート102の出力がアサートされたとき、センサー出力データを取り込む。また同時に、すでに記憶しているデータをシフトする。この動作によって、スミアデータ記憶部103は、過去6個のスミアデータを常に記憶している。
【0021】
セレクタ104,105は、選択信号SEL0,SEL1に応じて、記憶素子103a〜103fに記憶されたスミアデータのうちのいずれかを選択出力する。セレクタ104の出力は画像ライン0のデータに対応するスミアデータであり、セレクタ105の出力は画像ライン1のデータに対応するスミアデータである。選択信号SEL0,SEL1は、同一列における画像データとスミアデータとの出力順のずれ量に応じて、設定する。
【0022】
判別ゲート106は、ライン判別カウンタ101の出力が画像ライン0判別値すなわち「1」に一致したとき、出力をアサートする。判別ゲート107は、ライン判別カウンタ101の出力が画像ライン1判別値すなわち「0」に一致したとき、出力をアサートする。判別ゲート106,107の出力は、セレクタ104,105の出力とタイミングを合わせるために遅延部108,109によって遅延された後、セレクタ110に選択信号として与えられる。
【0023】
セレクタ110は、選択信号に従って、セレクタ104,105の出力のいずれかをスミアデータとして出力する。すなわち、判別ゲート106の出力がアサートされているときは、セレクタ104の出力を選択出力する一方、判別ゲート107の出力がアサートされているときは、セレクタ105の出力を選択出力する。判別ゲート106,107の出力がいずれもアサートされていないときは、セレクタ110の出力は不定となる。
【0024】
また、センサー出力データは、セレクタ110から出力されるスミアデータとタイミングを合わせるために遅延部111によって遅延されて出力される。以上のような動作によって、スミアサンプリング部14からスミアデータとセンサー出力データとが出力される。ライン判別カウンタ101、判別ゲート102およびスミアデータ記憶部103によって、センサー出力データからスミアデータを抽出し、所定数蓄積する第1手段が構成されている。遅延部111によって、センサー出力データを遅延させる第2手段が構成されている。セレクタ104,105,110、ライン判別カウンタ101、判別ゲート106,107、遅延部108,109によって、第2手段による遅延後のセンサー出力データにおける各画像データに対応するように、第1手段からスミアデータを選択出力する第3手段が構成されている。
【0025】
また、いま図6に示すように、画像ライン0のスミア補正のためのスミアレベル調整には乗算値G0を用い、画像ライン1のスミア補正のためのスミアレベル調整には乗算値G1を用いるものとする。乗算値選択部120は、判別ゲート106,107の出力を選択信号として受け、スミアデータに乗算するための乗算値を選択出力する。判別ゲート106の出力がアサートされているときは、画像ライン0向けの乗算値G0を選択する一方、判別ゲート107の出力がアサートされているときは、画像ライン1向けの乗算値G1を選択する。乗算部121はセレクタ110から出力されたスミアデータに、乗算値選択部120から選択出力された乗算値を乗算し、出力する。以上のような動作によって、レベル調整部15において、スミアデータのレベル調整がなされる。
【0026】
図7は図5の構成における各データの時間変化の一例を示す図であり、図6に対応している。図7に示すように、ライン判別カウンタ101の出力が「2」のときのセンサー出力データ(「11」「14」「17」」…)がスミアデータ記憶部103に順次蓄積されていき、蓄積されたデータの中から、画像ライン0,1の各データに対応するスミアデータがセレクタ110から出力される。例えば、画像ライン1のデータ「15」に対応してスミアデータ「8」が出力され、画像ライン0のデータ「16」に対応してスミアデータ「20」が出力される。また、スミアデータが画像ライン0向けか画像ライン1向けかに応じて、乗算値が選択されている。図7の例では、画像ライン0向けの乗算値G0を3、画像ライン1向けの乗算値G1を2としている。
【0027】
このような動作によって、上述した仕様の固体撮像素子の出力信号から、スミアデータを分離し、レベル調整した上で、画像データとタイミングを合わせて出力することができる。
【0028】
なお、図5の構成では、出力される3ラインのうちスミアラインがどのラインになっても、スミアライン判別値の設定によって、対応可能である。また、画像データとスミアデータとの出力順のずれ量が変わっても、セレクタ104,105の選択信号SEL1,2の設定によって、対応可能である。また、出力順のずれ量が±8よりも大きくなる可能性がある場合は、スミアデータ記憶部103の記憶素子の個数を増やして、選択対象となるスミアデータを増やすようにすればよい。
【0029】
また、画像ラインの数が2よりも多い場合は、ライン判別カウンタ101のカウント上限値を増やすとともに、スミアデータを選択するセレクタ104,105、および画像ライン用の判別ゲート106,107の個数を増やして対応すればよい。
【0030】
図8は過補正抑制部16の構成例を示すブロック図である。図8の過補正抑制部16は、スミアデータのレベルが低すぎるときにスミアデータを補正する低スミアレベル補正部131と、スミアデータのレベルが高すぎるときにスミアデータを補正する高スミアレベル補正部132と、画像データのレベルが低すぎるか高すぎるときにスミアデータを補正する低・高照度レベル補正部133とを備えている。
【0031】
低スミアレベル補正部131は、スミアデータのレベルが低すぎるとき、スミアデータの減算によるS/Nの悪化を回避するために、スミアデータを補正する。具体的には例えば、図9(a)に示すような補正を行う。すなわち、入力されたスミアデータが所定のしきい値TH1を下回っているときは、スミアデータを0にする。図9(a)のような補正処理は、例えば図9(b)の下に示すような入出力関係を有する演算部を設けて、この演算部の出力を入力されたスミアデータから減算することによって、実現される。なお、しきい値TH1を下回っているときにスミアデータを0にする必要は必ずしもなく、そのレベルを下げれば、S/N悪化回避の効果は得られる。
【0032】
高スミアレベル補正部132は、スミアデータのレベルが高すぎるとき、スミアデータの過度の減算によるデータ欠落を回避するために、スミアデータを補正する。図10に示すように、スミア成分が大きすぎるためにスミア成分と信号成分との和が画像撮像素子のダイナミックレンジを大きく上回った場合、画像データからその大きなスミアデータを減算した場合には、データ欠落が生じる可能性がある。そこで、スミアデータのレベルが高すぎるときには、高スミアレベル補正部132によってスミアデータを補正する。具体的には例えば、図11に示すような補正を行う。すなわち、入力されたスミアデータが所定のしきい値TH2を超えたときは、1より小さい補正値SL1をスミアデータにかけて、そのレベルを下げる。なお、このような補正処理は、デジタル回路技術によって容易に実現可能である。
【0033】
低・高照度レベル補正部133は、画像データのレベルが低すぎるとき、あるいは、高すぎるとき、この画像データに対応するスミアデータを補正する。画像データのレベルが低すぎるときにスミアデータを補正する目的は、スミアデータの減算によるS/Nの悪化を回避するためである。画像データのレベルが高すぎるときにスミアデータを補正する目的は、スミアデータの過度の減算によるデータ欠落を回避するためである。具体的には例えば、図12に示すような補正を行う。すなわち、入力された画像データが所定の第1しきい値TH3を下回っているときは、スミアデータの補正ゲインを1より小さい値に設定し、そのレベルを下げる。補正ゲインを下げる際の傾きSL2も設定可能とする。また、入力された画像データが所定の第2しきい値TH4を超えているときも、スミアデータの補正ゲインを1より小さい値に設定し、そのレベルを下げる。補正ゲインを下げる際の傾きSL3も設定可能とする。
【0034】
なお、過補正抑制部16における処理は、上述したものに限られるものではない。例えば、低スミアレベル補正部131および高スミアレベル補正部132におけるスミアデータを用いた補正は、図9および図11に示した手法に限られず、例えば図12のような手法を用いてもかまわない。また、低スミアレベル補正部131、高スミアレベル補正部132および低・高照度レベル補正部133のうちのいずれか1つまたは2つを省いてもよい。あるいは、仕様によっては、過補正抑制部16を省くことも可能である。
【0035】
減算回路17は、過補正抑制回路16から出力された補正用スミアデータを、スミアサンプリング部14から受けた画像データから減算する。これによって、スミア補正が実現される。
【0036】
なお、OBレベル補正部13は、各ライン毎に、個別にOBレベル補正を行うようにしてもよい。これにより、ライン毎にOBレベルがばらついている場合であっても、このばらつきを補正することが可能になる。具体的には例えば、図2に示す画像ライン0,1およびスミアライン毎にOBレベル補正値をそれぞれ設定しておき、上述したライン判別カウンタ101の出力を用いて、それぞれのラインから対応するOBレベル補正値を減算するようにすればよい。
【0037】
以上のように本実施形態によると、Nラインの画像信号とこのNラインの画像信号を補正するための1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ順次出力する構成を有するCCD固体撮像素子に対して、CCD信号処理装置は、Nラインの各画像データに対応する補正用スミアデータを分離して、各画像データから、対応する補正用スミアデータを減算してスミア補正を実行することができる。したがって、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、スミアデータに存在するランダムノイズ等の影響によって、画像データからスミアデータを減算したときにS/Nが悪化してしまう、という問題を回避することを目的としたものである。
【0039】
図13は本実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。図13の構成は図1の構成とほぼ同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付けており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0040】
図13の構成では、スミアデータ分離部20Aは、スミアサンプリング部14、レベル調整部15および過補正抑制部16に加えて、スミアデータ平均化回路30と、1ライン分のスミアデータを蓄積するためのラインメモリー31とを備えている。スミアデータ平均化回路30は、スミアサンプリング部14によって抽出されたスミアデータについて、ラインメモリー31に蓄積されたスミアデータの同一列のデータを用いて、平均化処理を行う。平均化処理後のスミアデータは、ラインメモリー31に再度蓄積されるとともに、レベル調整部15に出力される。
【0041】
スミアデータ平均化回路30における平均化処理は、例えば、FIR(Finite Inpulse Response)処理、IIR(Infinite Inpulse Response)処理等のフィルタ演算処理であればよい。あるいは、抽出されたスミアデータとラインメモリー31に蓄積されたスミアデータとの大小関係を比較し、大きい方または小さい方を用いる等の方法もある。
【0042】
また、この平均化処理を行うことによって、補正用スミアデータの出力タイミングが第1の実施形態よりも遅くなるが、例えば、図5の構成における遅延部11での遅延時間を調整することによって、センサー出力データとのタイミングを合わせることができる。
【0043】
これにより、減算回路17においてセンサー出力から減算される補正用スミアデータは、平均化処理後のスミアデータとなる。したがって、スミアデータに存在するランダムノイズ等の影響による画像データのS/Nの悪化を、回避することが可能になる。
【0044】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、スミアの原因となる高輝度被写体が点光源である場合に、固体撮像素子11における画素の配列やその駆動方法の影響によって撮影画像上でスミアが着色したり、あるいは、スミアデータの過補正により画像データの欠落が発生したりする、といった問題を回避することを目的としたものである。
【0045】
図14は本実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。図14の構成は図1の構成とほぼ同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付けており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0046】
図14の構成では、スミアデータ分離部20Bは、スミアサンプリング部14、レベル調整部15および過補正抑制部16に加えて、レベル調整部15から出力されたスミアデータについて、所定のスミアレベルしきい値を超えたレベルが、所定の連続画素数しきい値を超えた画素数分、連続しているか否かを判定するスミア連続検出回路32を備えている。そして、過補正抑制部16は、スミア連続検出回路32において連続していないと判定されたとき、レベル調整部15から出力されたスミアデータのレベルを下げる補正を行う。
【0047】
図15はスミア連続検出回路32の具体的な構成例を示す図である。また図16はスミア連続検出回路32における判定動作を示すイメージ図である。図15において、スミア連続検出回路32は、所定数の画素分のスミアデータを順次記憶するスミアデータ記憶部321と、スミアデータ記憶部321に記憶された所定数の画素分のスミアデータを入力として、比較判定動作を行うスミアレベル比較部322とを備えている。スミアレベル比較部322は、第1のしきい値としてのスミアレベルしきい値と、第2のしきい値としての連続画素数しきい値とが与えられる。そして図16に示すように、入力されたスミアデータについて、スミアレベルしきい値を超えたレベルが連続画素数しきい値を超えた画素数分、連続しているか否かを、判定する。図16(a)はスミアレベルしきい値を超えたレベルが連続画素数しきい値を超えた画素数分連続している場合、図16(b)は連続していない場合である。
【0048】
スミア連続検出回路32は、この判定結果を過補正抑制部16に出力する。この際、判定結果が「連続していない」であるときには、スミアレベルしきい値を超えたレベルが連続している画素数の値(スミア連続画素数)を、併せて出力するのが好ましい。
【0049】
図17は本実施形態における過補正抑制部16での補正処理の例を示す図である。図17に示すように、過補正抑制部16は、スミア連続検出回路32の判定結果が「連続している」であるとき(すなわちスミア連続画素数が連続画素数しきい値を超えているとき)は、補正ゲインを「1」に保つ。一方、スミア連続検出回路32の判定結果が「連続していない」であるときは、補正ゲインを「1」よりも小さくする。このとき、スミア連続検出回路32から出力されたスミア連続画素数が小さくなるにつれて、補正ゲインをより小さくするようにしてもよい。補正ゲインを下げる際の傾きも設定可能とする。
【0050】
これにより、減算回路17においてセンサー出力から減算される補正用スミアデータは、スミアが連続して生じていない場合には、小さく抑制される。したがって、スミアの原因が点光源である場合に、画像上でスミアが着色したり、画像データの欠落が発生したりするといった問題を回避することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、高輝度被写体が動くことによって、画像データに含まれるスミア成分と補正用スミアデータとの相関が低くなることに起因する、スミア抑圧効果の低下を回避することを目的とする。
【0052】
図18は本実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。図18の構成は図1の構成とほぼ同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付けており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0053】
図18の構成では、スミアデータ分離部20Cは、スミアサンプリング部14、レベル調整部15および過補正抑制部16に加えて、レベル調整部15から出力されたスミアデータについて、スミアが生じている範囲の位置が複数のラインにおいて変化しているか否かを判定するスミア位置変化検出回路35を備えている。そして、過補正抑制部16は、スミア位置変化検出回路35において変化していると判定されたとき、レベル調整部15から出力されたスミアデータの補正を行う。
【0054】
図19はスミア位置変化検出回路35の具体的な構成例を示す図である。また図20はスミア位置変化検出回路35における判定動作を示すイメージ図である。図19において、スミア位置変化検出回路35は、所定数のライン分のスミアデータを順次記憶するスミアデータ記憶部351と、スミアデータ記憶部351に記憶された各ラインのスミアデータを入力として、スミア位置の検出動作を行うスミア位置検出部352とを備えている。スミア位置検出部352は、所定のしきい値としてのスミアレベルしきい値と、スミア傾きしきい値とが与えられる。そして図20に示すように、入力されたスミアデータについて、スミアレベルしきい値を超えたレベルの範囲(図中、ハッチを付した部分)の位置が、複数のラインにおいて、スミア傾きしきい値が示す所定限度を超えて変化しているか否かを判定する。すなわち、nラインにおいて、スミアレベルしきい値を超えたレベルの範囲が、m画素分移動したとき、
スミアの傾き = n/m
(m=0のとき、傾きは最大とする)
を算出し、この値がスミア傾きしきい値を下回っているかを判定する。下回っているとき、スミア位置の変化が所定限度を超えている、と判定する。
【0055】
スミア位置変化検出回路35は、この判定結果を過補正抑制部16に出力する。この際、判定結果が「所定限度を超えて変化している」であるときには、スミアの傾きを、併せて出力するのが好ましい。この判定結果は、スミアの原因となる高輝度被写体が移動したか否か、またその移動速度がどの程度であるか、を表している。
【0056】
図21は本実施形態における過補正抑制部16での補正処理の例を示す図である。図21に示すように、過補正抑制部16は、スミア位置変化検出回路35の判定結果が「所定限度を超えて変化していない」であるとき(すなわちスミアの傾きがスミア傾きしきい値を超えているとき)は、補正ゲインを「1」に保つ。一方、スミア位置変化検出回路35の判定結果が「所定限度を超えて変化している」であるときは、補正ゲインを変える。このとき、補正ゲインを変える際の傾きも設定可能とする。
【0057】
これにより、減算回路17においてセンサー出力から減算される補正用スミアデータは、スミア発生位置が複数ラインにおいて変化しているときは、それに応じて補正される。したがって、高輝度被写体の移動に起因するスミア抑圧効果の低下を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明では、たとえ高輝度被写体が動いた場合であっても、スミア補正を適切に実行することができるので、例えば、良好な画質の画像データを出力可能な撮像装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。
【図2】固体撮像素子出力における、画素の空間配列位置と出力順との関係の一例である。
【図3】図2の場合における実際のデータ出力例である。
【図4】画像ラインとスミアラインとの出力順のずれ量を示す図である。
【図5】スミアサンプリング部およびレベル調整部の具体的な構成例を示す図である。
【図6】固体撮像素子出力と、ライン判別カウンタ値およびレベル調整のための乗算値との関係を示す図である。
【図7】図5の構成における各データの時間変化の一例である。
【図8】過補正抑制部の構成例を示すブロック図である。
【図9】低スミアレベル補正部における補正処理の例を示す図である。
【図10】データ欠落が生じるメカニズムを説明するための図である。
【図11】高スミアレベル補正部における補正処理の例を示す図である。
【図12】低・高照度レベル補正部における補正処理の例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。
【図15】スミア連続検出回路の具体的な構成例を示す図である。
【図16】スミア連続検出回路の判定動作を示すイメージ図である。
【図17】過補正抑制部での補正処理の例を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る、CCD信号処理装置を含む撮像装置を示すブロック図である。
【図19】スミア位置変化検出回路の具体的な構成例を示す図である。
【図20】スミア位置変化検出回路の判定動作を示すイメージ図である。
【図21】過補正抑制部での補正処理の例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
11 固体撮像素子
12 AD変換部
13 OBレベル補正部
14 スミアサンプリング部
15 レベル調整部
16 過補正抑制部
17 減算回路
20,20A,20B,20C スミアデータ分離部
30 スミアデータ平均化回路
31 ラインメモリー
32 スミア連続検出回路
35 スミア位置変化検出回路
101 ライン判別部
102,106,107 判別ゲート
103 スミアデータ記憶部
103a〜103f 記憶素子
104,105,110 セレクタ
108,109,111 遅延部
131 低スミアレベル補正部
132 高スミアレベル補正部
133 低・高照度レベル補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCD固体撮像素子から出力された信号を処理するCCD信号処理装置であって、
前記CCD固体撮像素子は、N(Nは2以上の整数)ラインの画像信号と、このNラインの画像信号を補正するための1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ、順次出力するものであり、
前記CCD信号処理装置は、
前記CCD固体撮像素子の出力信号をAD変換し、画像データおよびスミアデータを含むセンサー出力データとして出力するAD変換部と、
前記AD変換部から出力されたセンサー出力データからスミアデータを分離し、各画像データに対応する補正用スミアデータに変換して出力するスミアデータ分離部と、
前記AD変換部から出力されたセンサー出力データのうちの画像データから、前記スミアデータ分離部から出力された、対応する補正用スミアデータを減算してスミア補正を行う減算回路とを備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スミアデータ分離部は、
前記センサー出力データから、各画像データに対応するスミアデータを抽出するスミアサンプリング部と、
前記スミアサンプリング部によって抽出された各スミアデータについて、対応する画像データに応じて、レベル調整を行うレベル調整部とを備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記スミアサンプリング部は、
前記センサー出力データからスミアデータを抽出し、所定数、蓄積する第1手段と、
前記センサー出力データを遅延させる第2手段と、
前記第2手段による遅延後の前記センサー出力データにおける各画像データに対応するように、前記第1手段から、スミアデータを選択出力する第3手段とを備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記スミアデータ分離部は、
1ライン分のスミアデータを蓄積するためのラインメモリーと
前記スミアサンプリング部によって抽出されたスミアデータについて、前記ラインメモリーに蓄積されたスミアデータの同一列のデータを用いて、平均化処理を行うスミアデータ平均化回路とを備え、
平均化処理後のスミアデータを、前記ラインメモリーに再度蓄積するとともに、前記レベル調整部に出力するものである
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記スミアデータ分離部は、
前記レベル調整部から出力されたスミアデータについて、減算によるスミア補正が過剰になることを抑制するために、補正を行う過補正抑制部をさらに備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記過補正抑制部は、
スミアデータのレベルが所定のしきい値を下回るとき、このスミアデータのレベルを下げる低スミアレベル補正部を備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記過補正抑制部は、
スミアデータのレベルが所定のしきい値を超えるとき、このスミアデータのレベルを下げる高スミアレベル補正部を備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記過補正抑制部は、
スミアデータに対応する画像データのレベルが、所定の第1しきい値を下回るとき、および、所定の第2しきい値を超えるとき、このスミアデータのレベルを下げる低・高照度レベル補正部を備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記スミアデータ分離部は、
前記レベル調整部から出力されたスミアデータについて、所定の第1のしきい値を超えたレベルが、所定の第2のしきい値を超えた画素数分、連続しているか否かを判定するスミア連続検出回路を備え、
前記過補正抑制部は、前記スミア連続検出回路において、連続していないと判定されたとき、前記スミアデータのレベルを下げる補正を行う
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項10】
請求項5において、
前記スミアデータ分離部は、
前記レベル調整部から出力されたスミアデータについて、所定のしきい値を超えたレベルの範囲の位置が、複数のラインにおいて、所定限度を超えて変化しているか否かを判定するスミア位置変化検出回路を備え、
前記過補正抑制部は、前記スミア位置変化検出回路において、所定限度を超えて変化していると判定されたとき、前記スミアデータのレベルを補正する
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記A/D変換部から出力されたセンサー出力データについて、各ライン毎に独立した補正値を用いて、OBレベルを補正するOBレベル補正部を備えている
ことを特徴とするCCD信号処理装置。
【請求項12】
N(Nは2以上の整数)ラインの画像信号と、このNラインの画像信号を補正するための1ラインのスミア信号とを、出力ラインを変えながら1画素分ずつ、順次出力するCCD固体撮像素子と、
前記CCD固体撮像素子から出力された信号を処理する、請求項1記載のCCD信号処理装置とを備えた
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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