説明

CD26により切断可能であるHIVプロドラッグ

本発明は、治療化合物とペプチドとのコンジュゲートである新規なプロドラッグを提供し、ここで、該コンジュゲートは、ジペプチジル−ペプチダーゼにより、より好ましくはDPPIV(ジペプチジルアミノジペプチダーゼIV)としても知られているCD26により切断可能である。本発明のプロドラッグは、式(I)
【化1】


[式中、nは1〜5であり;Yはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンであり;XはD−もしくはL−立体配置の任意のアミノ酸から選択され;[Y−X]の各反復におけるXおよびYは、相互から独立してそして他の反復から独立して選択され;Zは直接結合または1〜4個の炭素原子を有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であり;R1はアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールオキシC14アルキル、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルC14アルキルオキシ、ヘテロアリールオキシC14アルキル、ヘテロアリールC14アルキルオキシであり;R2はアリールC14アルキルであり;R3はC110アルキル、C26アルケニルもしくはC37シクロアルキルC14アルキルであり;R4は水素もしくはC14アルキルである]
その立体異性体および塩を有する。本発明はさらに、薬剤としての該プロドラッグの使用ならびに該プロドラッグを製造する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV阻害化合物がペプチド部分のタンパク質分解により遊離されるかもしくは活性化されるHIV阻害化合物のプロドラッグに関する。本発明はまた、HIV阻害化合物の経口摂取を増加する、血清タンパク質結合、血液脳関門透過もしくは溶解性および生物学的利用能を改変する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現代の薬剤発見技術(例えば、組み合わせ化学、ハイスループット薬理学的スクリーニング、構造に基づく薬剤設計)は、非常に特異的なそして有力な薬剤分子を提供している。しかしながら、これらの新規な化学構造が都合の悪い物理化学的および生物製薬学的(biopharmaceutical)性質を有することはかなり一般的である。その上、新規治療薬の開発中に、研究者は典型的に薬理学的および/もしくは生物学的性質に焦点を当て、物理化学的性質への関心は低い。しかしながら、薬剤分子の物理化学的性質(解離定数、溶解性、分配係数、安定性)は、その製薬学的および生物製薬学的挙動に有意な影響を有する。従って、物理化学的性質は、薬剤開発中に、必要に応じて、決定されそして改変される必要がある。さらに、すでに市場に出回っている多数の既存の薬剤分子の物理化学的性質は、最適ではない。
【0003】
現在、薬剤候補は難水溶性もしくは不十分な吸収の問題のために中断されることが多く、無数の医学の進歩を実現されないままにしている。それでもなお他の製品は市場に到達するが、安全性もしくは効能の懸念のためにそれらの完全な商業的可能性を決して実現しない。プロドラッグは、両方の課題を克服する可能性を有する。該技術は、薬剤の活性型へのプロドラッグの選択的生物転化に内因性酵素を利用する。この技術は、有望な新薬候補を開発の間中ずっと存続させ、そして既存の薬剤製品の安全性および効能を改善する能力を有する。
【0004】
プロドラッグは、体内で活性の親薬剤を遊離するために化学的もしくは酵素的生体内転化を必要とする薬剤分子のほとんど不活性の誘導体である。プロドラッグは、薬剤の都合の悪い性質を克服するように設計される。そのようなものとして、この技術は様々な薬剤の物理化学的、生物製薬学的および/もしくは薬物動態学的性質を改善するために適用することができる。通常、プロドラッグはそのようなものとして生物学的に不活性である。従って、プロドラッグは、薬剤標的に到達するやいなや顕著な効能に達するように親薬剤に効率よく転化される必要がある。
【0005】
一般に、プロドラッグは、改善された薬剤吸収を得るために生体膜を越える薬剤の透過を改善するように、薬剤の作用の持続期間を延長するように(プロドラッグからの親薬剤の徐放、薬剤の減少した初回通過代謝)、薬剤作用を標的に向けるように(例えば、脳もしくは腫瘍ターゲッティング)、薬剤(i.v.製剤、点眼薬など)の水溶解性および安定性を改善するように、局所薬剤送達(例えば、皮膚および眼球薬剤送達)を改善するように、薬剤(例えばペプチド)の化学的/酵素的安定性を改善するようにもしくは薬剤副作用を減少するように設計される。
【0006】
多くのプロドラッグ技術は、転化されなければならない薬剤の種類によりすでに開発されている。これらのプロドラッグ技術には、一般に、ペプチドおよびペプチド模倣物のための環状プロドラッグ化学、第三級アミン、フェノールおよびヒンダードアルコールの可溶化のためのホスホノオキシメチル(POM)化学ならびにエステル化が包含される。また、ターゲッティング戦略は、前立腺癌を標的とするために用いられるペプチドもしくはPSA(前立腺特異抗原)のN末端のホルミル基を切断する細菌のペプチドデホルミラーゼ(deformylase)のような特定の酵素により切断可能な基を連結することにより推進される。
【0007】
治療薬へのペプチドもしくはアミノ酸の連結は、いくつかの理由でこれまでにすでに推進されている。アンチセンス−アンチ遺伝子分野において、治療薬の細胞の取り込みを増加するためにオリゴヌクレオチドもしくはインターカレーターがペプチドに結合されている。しかしながら、これらのオリゴヌクレオチドおよびインターカレーターは、細胞透過後に遊離される必要はなく、そしてプロドラッグとみなすことはできない。治療化合物へのアミノ酸連結の例は、サイトメガロウイルス感染の予防および治療に用いられる、ガンシクロビルのL−バリルエステルプロドラッグ、バルガンシクロビルである。経口投与後に、該プロドラッグは腸および肝臓エステラーゼによりガンシクロビルに迅速に転化される。最近、新規の抗腫瘍ベンゾチアゾールのアラニンおよびリシンプロドラッグが研究されている。ヌクレオシドアナログのアミノ酸エステルプロドラッグのペプチドキャリアーにより媒介される膜輸送は、すでに示されている[非特許文献1;非特許文献2]。薬剤の経口生物学的利用能は、好ましくはL−立体配置の、アミノ酸を含有するアミノ酸プロドラッグ誘導体により媒介できることが実際に示されている。L−バリンは、腸吸収のためのアミノ酸の鎖長およびβ−炭素での分枝の最適な組み合わせを有するようである。hPEPT−1は、L−バリンエステルプロドラッグの増加した全身送達の主要吸収経路として関与することが見出されている。最近、hPEPT−1トランスポーターは遊離のNH2、カルボニル基および脂肪親和性存在と最適に相互作用する必要があり、そしてその標的分子と数個の追加のH−架橋を形成し得ることが示された。L−バリン連結ヌクレオシドアナログエステルは、効率のよいhPEPT−1基質活性のこれらの必要条件を満たし得る[非特許文献3]。しかしながら、アミノ酸がエステル結合によってたいてい連結される小有機分子のアミノ酸プロドラッグ(1個のみのアミノ酸を連結する)は、エステラーゼによりもとの遊離の治療薬に容易に転化されるので、溶解性および生物学的利用能を改善するための先行技術は、それらのみを示す。
【0008】
先行技術文献は、アミノペプチダーゼ(特許文献1)およびアミノトリペプチダーゼ(特許文献2)のような多数のプロテアーゼによるプロドラッグのプロセシングを記述する。特許文献3は、CD26/DPPIVによるプロセシングの際に活性になりそしてその後に該プロテアーゼを不活性化するCD26/DPPIVインヒビターのターゲッティング戦略を記述する。
【0009】
しかしながら、新規の、代わりのそしてより優れたプロドラッグ技術の必要性が依然としてあり、そしてこの必要性は、組み合わせ化学およびハイスループットスクリーニングが高分子量、高いlogP[分配係数]もしくは難水溶性を有する莫大な数の新規化合物を製造し続けるにつれて、大きくなると予測される。
【特許文献1】PCT出願WO01/68145明細書
【特許文献2】PCT出願WO02/00263明細書
【特許文献3】PCT出願WO99/67278明細書
【非特許文献1】Han et al.Pharm.Res.(1998)15:1154−1159
【非特許文献2】Han et al Pharm.Res.(1998)15:1382−1386
【非特許文献3】Friedrichsen et al.Eur.J.Pharm.Sci.(2002)16:1−13
【発明の開示】
【0010】
[発明の要約]
本発明は、治療化合物の溶解性および/もしくは生物学的利用能を改善するために適用することができる新規プロドラッグ技術を提供する。本発明は、治療化合物の溶解性および/もしくは生物学的利用能を改善するためにそれらの誘導体化を含んでなる。本発明は、ペプチド性部分と治療化合物とのコンジュゲートを提供し、ここで、該コンジュゲートは、CD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である。この技術はさらに、治療化合物Dのタンパク質結合を調節するためにそして哺乳動物における特定の部位を標的とするために用いることができる。特定の治療化合物はHIV阻害化合物、特にHIVプロテアーゼ阻害化合物、さらに特に式(Ia)の化合物である。
【0011】
本発明は、薬剤の溶解性、タンパク質結合および/もしくは生物学的利用能を調節するために新規プロドラッグ技術および新規プロドラッグを提供する。本発明において、プロドラッグは治療化合物Dとペプチドのコンジュゲートであり、ここで、該コンジュゲートはジペプチジル−ペプチダーゼにより、より好ましくはジペプチジル−ペプチダーゼIVにより切断可能である。本発明はさらに、該プロドラッグを製造する方法を提供する。本発明はまた、薬剤をより選択的に標的に向けるために、薬剤の脳およびリンパ系送達を改変する、特に高めるためにそして/もしくは血漿における薬剤半減期を延長するためにもプロドラッグ技術を提供する。
【0012】
1つの態様として、本発明は治療化合物Dのプロドラッグを含んでなる製薬学的組成物に関する。治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そしてアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含む。あるいはまた、治療化合物Dは、アミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーAmに結合している。プロドラッグは、該プロドラッグがオリゴペプチドに連結している該治療化合物Dを含んでなることを特徴とし、該オリゴペプチドは一般構造H−[X−Y]nからなり、ここで、nは1〜5の間であり、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互に独立し、そして他の反復から独立して選択され、そしてここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるLアミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDもしくはそのリンカーAmのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。H−[X−Y]nペプチドは遊離アミノ末端、すなわち、未修飾NH2基を有する。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0013】
1つの態様として、ペプチドは2〜5個の間のCD26切断可能反復を有する。別の態様として、CD26切断可能オリゴペプチドH−[X−Y]nはテトラペプチドもしくはヘキサペプチドであり、ここで、少なくとも1つのXは疎水性もしくは芳香族アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは中性もしくは酸性アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは塩基性アミノ酸である。特定の態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、XおよびYの選択により、優れた腸吸収、続いて溶解性の改変と組み合わせた治療化合物の徐放もしくは迅速放出を有するためにVal−Y−[X−Y]12、さらに特にVal−Pro−[X−Y]12の群から選択されるテトラペプチドもしくはヘキサペプチドである。1つの態様として、テトラもしくはヘキサペプチドは、一般構造Val−Y−[X−Y]もしくはVal−Y−[X−Y]2を有する。
【0014】
1つの態様によれば、Yはプロリンもしくはヒドロキシプロリンもしくはジヒドロキシプロリンもしくはアラニンである。別の態様によれば、Xはバリン、アスパラギン酸、セリン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、イソロイシンもしくはロイシンから選択される。別の態様によれば、Xは、遅い切断を有するために酸性アミノ酸アスパラギン酸もしくはグルタミン酸から、治療化合物Dの迅速放出を有するために正に荷電したアミノ酸アルギニン、ヒスチジンもしくはリシンから選択される。
【0015】
オリゴペプチド[X−Y]nは、治療化合物の芳香族基のような有機分子/原子上に存在する、炭水化物上に存在するまたはヌクレオシド上もしくは複素環式基上に存在するまたはアルキル、アルケニルもしくはアルキニル上に存在するまたは無機(anorganic)分子/原子上に存在するアミノ基にアミド結合によって連結されることができる。
【0016】
1つの態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、治療化合物の芳香族基上に存在する、炭水化物上に存在するもしくはヌクレオシド上に存在するアミノ基にアミド結合によって連結される。あるいはまた、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、アミノ基を含んでなるリンカーを介して治療化合物Dに間接的に連結される。そのようなリンカーはオリゴペプチドAmの一般構造を有することができ、ここで、mは1〜15の間、そしてさらに特に1〜3の間であり、もしくはm=1。構造AmにおけるAは、任意のアミノ酸であることができる。1つの態様によれば、m=1、そしてAはバリンである。そのようなリンカーを有するプロドラッグは、一般構造H−[X−Y]n−Am−Dを有する。オリゴペプチドAmもしくはアミノ酸Aは、オリゴペプチドH−[X−Y]nにアミド結合によってそのアミノ末端で連結される。オリゴペプチドAmもしくはアミノ酸Aは、治療化合物Dにアミドもしくはエステル結合によってそのカルボキシ末端で連結される。製薬学的組成物は、ウイルス感染の予防もしくは処置のための薬剤のプロドラッグを含んでなることができる。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0017】
別の態様として、本発明は治療化合物Dのプロドラッグ構築物に関し、ここで、該治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そしてここで、治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含むか、またはここで、治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーに結合しており、該プロドラッグは、一般構造H−[X−Y]nを有するオリゴペプチドに結合している該治療化合物からなり、そしてn=1〜5を特徴とし、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互から独立してそして他の反復から独立して選択され、そしてここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるL −アミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0018】
1つの態様によれば、このプロドラッグは、活性化の際に、CD26/DPPIV酵素への阻害作用を有さない。1つの態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nはテトラペプチドもしくはヘキサペプチドであり、ここで、少なくとも1つのXは疎水性もしくは芳香族アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは中性もしくは酸性アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは塩基性アミノ酸である。特定の態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、Val−Pro、Asp−Pro、Ser−Pro、Lys−Pro、Arg−Pro、His−Pro、Phe−Pro、Ile−Pro、Leu−Pro、Val−Ala、Asp−Ala、Ser−Ala、Lys−Ala、Arg−Ala、His−Ala、Phe−Ala、Ile−AlaおよびLeu−Alaの群から選択される[X−Y]反復で構築される。1つの態様によれば、Yはプロリンもしくはヒドロキシプロリンもしくはジヒドロキシプロリンもしくはアラニンである。
【0019】
1つの態様によれば、オリゴペプチド[X−Y]nは、治療化合物の芳香族基上に存在する、炭水化物上に存在するもしくはヌクレオシド上に存在するアミノ基にアミド結合によって連結される。あるいはまた、オリゴペプチド[X−Y]nは、アミノ基を含んでなるリンカーを介して治療化合物Dに間接的に連結される。このリンカーは、有機分子(すなわち、アルキルアミノ、ペプチド、もしくは両方の組み合わせ)を含んでなる。ある態様として、CD26切断可能オリゴペプチドと治療化合物Dとの間のリンカーにおけるアミノ酸の数mは、1〜15の間である。特定の態様として、そのようなリンカーはオリゴペプチドAmの一般構造を有することができ、ここで、mは1〜15の間、そしてさらに特に1〜3の間であり、もしくはm=1。構造AmにおけるAは、任意のアミノ酸であることができる。1つの態様によれば、m=1、そしてAはバリンである。そのようなリンカーを有するプロドラッグは、一般構造H−[X−Y]n−Am−Dを有する。1つの態様によれば、プロドラッグはウイルス感染の予防もしくは処置のための治療化合物のプロドラッグである。別の態様によれば、プロドラッグは式(I)の一般構造を有するHIVプロテアーゼインヒビタープロドラッグである。
【0020】
別の態様として、本発明は治療化合物Dの水溶性および/もしくは血漿タンパク質結合および/もしくは生物学的利用能を該治療化合物にペプチドを連結する(それにより、得られるコンジュゲートはジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である)ことにより調節する(増加するもしくは減少する)方法に関する。1つの態様によれば、ジペプチジル−ペプチダーゼはCD26であり、そして治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そして治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含むか、または治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーに結合しており、そしてここで、オリゴペプチドは一般構造H−[X−Y]nからなり、ここで、nは1〜5の間であり、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互から独立してそして他の反復から独立して選択され、そしてここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるLアミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。1つの態様によれば、オリゴペプチドH−[X−Y]nはテトラペプチドもしくはヘキサペプチドであり、ここで、少なくとも1つのXは疎水性もしくは芳香族アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは中性もしくは酸性アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは塩基性アミノ酸である。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0021】
本発明の別の態様は、プロドラッグがジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である、プロドラッグを製造する方法に関し、該方法は治療的に有効な薬剤Dと構造H−[X−Y]nを有するペプチドを連結する段階を含んでなり、それにより、得られるコンジュゲートはCD26により切断可能である。1つの態様によれば、ジペプチジル−ペプチダーゼはCD26であり、そして治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そして治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含むか、または治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーに結合しており、そしてここで、オリゴペプチドは一般構造H−[X−Y]nからなり、ここで、nは1〜5の間であり、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互から独立してそして他の反復から独立して選択され、そしてここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるLアミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。1つの態様によれば、オリゴペプチドH−[X−Y]nはテトラペプチドもしくはヘキサペプチドであり、ここで、少なくとも1つのXは疎水性もしくは芳香族アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは中性もしくは酸性アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは塩基性アミノ酸である。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0022】
別の態様として、本発明はウイルス感染の処置もしくは予防用の薬剤の製造のための治療化合物Dのプロドラッグの使用に関する。治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そして治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含むか、または治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーに結合しており、そして該プロドラッグがオリゴペプチドに結合している該治療化合物Dを含んでなることを特徴とし、該オリゴペプチドは一般構造H−[X−Y]nからなり、ここで、nは1〜5の間であり、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互から独立してそして他の反復から独立して選択され、ここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるLアミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、治療化合物DのCD26切断可能プロドラッグの製造に一般構造H−[X−Y]nを有するペプチドを用いるプロドラッグの製造の製法に関する。治療化合物Dはペプチドもしくはタンパク質ではなく、そして治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる末端第一級もしくは第二級アミノ基を含むか、あるいはまた、治療化合物Dはアミノ酸のカルボキシル基と結合することができる第一級もしくは第二級アミノ基を含んでなるリンカーに結合している。プロドラッグは、該プロドラッグがオリゴペプチドに結合している該治療化合物Dを含んでなることを特徴とし、該オリゴペプチドは一般構造H−[X−Y]nからなり、ここで、nは1〜5の間であり、ここで、[X−Y]の各反復におけるXおよびYは、相互に独立し、そして他の反復から独立して選択され、そしてここで、Xはアミノ酸であり、そしてYはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンよりなる群から選択されるLアミノ酸であり、そしてここで、H−[X−Y]nのカルボキシ末端とDもしくはそのリンカーのアミノ基との間の結合は、アミドによって起こる。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
【0024】
1つの態様として、ペプチドは2〜5個の間のCD26切断可能反復を有する。別の態様として、CD26切断可能オリゴペプチドと治療化合物との間のリンカーAmにおけるアミノ酸の数mは1であり、そしてAはバリンである。別の態様として、CD26切断可能オリゴペプチドH−[X−Y]nはテトラペプチドもしくはヘキサペプチドであり、ここで、少なくとも1つのXは疎水性もしくは芳香族アミノ酸であり、あるいはまた、ここで、少なくとも1つのXは中性もしくは酸性アミノ酸であり、あるいはまたここで、少なくとも1つのXは塩基性アミノ酸である。特定の態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、Xの選択により、優れた腸吸収、続いて治療化合物の徐放もしくは迅速放出を有するためにVal−Pro−[X−Y]12の群から選択されるテトラペプチドもしくはヘキサペプチドである。プロドラッグ構築物H−[X−Y]n−D内で、治療化合物Dは、H−[X−Y]nペプチドのカルボキシ末端アミノ酸のCOOH基に結合している第一級(NH2)もしくは第二級(NH)アミノ基を有する。治療化合物DがNH2もしくはNH基を有さないか、またはNHもしくはNH2基が反応することができない(例えば立体障害のために)場合、治療化合物Dは、H−[X−Y]nペプチドのカルボキシ末端アミノ酸のCOOH基と反応することができる、NH2もしくはNH基を反応後に有するリンカーと反応させることができる。
【0025】
1つの態様によれば、各Yは独立してプロリンもしくはヒドロキシプロリンもしくはジヒドロキシプロリンもしくはアラニンである。1つの態様として、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、治療化合物の芳香族基上に位置する、炭水化物上に位置するもしくはヌクレオシド上に位置するアミノ基にアミド結合によって連結される。あるいはまた、オリゴペプチドH−[X−Y]nは、アミノ基を含んでなるリンカーを介して治療化合物Dに間接的に連結される。そのようなリンカーはオリゴペプチドAmの一般構造を有することができ、ここで、mは1〜15の間、そしてさらに特に1〜3の間であり、もしくはm=1。構造AmにおけるAは、任意のアミノ酸であることができる。1つの態様によれば、m=1、そしてAはバリンである。そのようなリンカーを有するプロドラッグは、一般構造H−[X−Y]n−Am−Dを有する。オリゴペプチドAmもしくはアミノ酸Aは、オリゴペプチドH−[X−Y]nにアミド結合によってそのアミノ末端で連結される。オリゴペプチドAmもしくはアミノ酸Aは、治療化合物Dにアミドもしくはエステル結合によってそのカルボキシ末端で連結される。製薬学的組成物は、ウイルス感染の予防もしくは処置のための薬剤のプロドラッグを含んでなることができる。1つの態様として、治療化合物は抗ウイルス薬、特にHIVプロテアーゼのインヒビター、さらに特に式(Ia)の化合物であり、そしてプロドラッグは式(I)を有する。
[発明の詳細な記述]
「プロドラッグ(1つもしくは複数)(prodrug or prodrugs)」という用語は、本明細書において用いる場合、活性の親薬剤を遊離するために化学的もしくは酵素的転化を必要とする治療化合物のほとんど不活性の誘導体(もしくは強力に減少した活性、すなわち、非誘導薬剤分子の20%未満、10%未満、5%未満もしくはさらに1%未満の残存活性を有する誘導体)をさす。本発明のプロドラッグは、一般構造H−[X−Y]n−Dを有する。このプロドラッグの化学的性質は、以下に詳細に説明される。プロドラッグは、薬剤の都合の悪い性質を克服するように設計される。そのようなものとして、この技術は様々な薬剤の物理化学的、生物製薬学的および/もしくは薬物動態学的性質を改善するために適用することができる。通常、プロドラッグはそのようなものとして生物学的に不活性である。従って、プロドラッグは、薬剤標的に到達するやいなや顕著な効能に達するように親薬剤に効率よく転化される必要がある。この活性化は、体内に存在する酵素により行われることができ、あるいはまた、酵素をプロドラッグと共投与する。
【0026】
一般に、プロドラッグは、改善された薬剤吸収を得るために生体膜を越える薬剤の透過を改善するように、薬剤の作用の持続期間を延長するように(プロドラッグからの親薬剤の徐放、薬剤の減少した初回通過代謝)、薬剤作用を標的に向けるように(例えば、脳もしくは腫瘍ターゲッティング)、薬剤(i.v.製剤、点眼薬など)の水溶解性および安定性を改善するように、局所薬剤送達(例えば、皮膚および眼球薬剤送達)を改善するように、薬剤(例えばペプチド)の化学的/酵素的安定性を改善するようにもしくは薬剤副作用を減少するように設計される。
【0027】
「治療化合物D」という用語は、本明細書において用いる場合、疾患に有益な効果を有する任意の因子、ある種の疾患もしくは障害の治療として用いられるかもしくは将来に用いられる任意の因子をさす。これはまた、まだ発見もしくは開発段階であるそしてそれらの効能および安全性がまだ証明されていない全ての分子もさす。これには、小有機分子、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂肪族炭素鎖、芳香族化合物ならびにアナログおよび誘導体が包含される。
【0028】
(末端)アミノ基、さらに特に第一級もしくは第二級アミノ基を有する治療化合物Dは、遊離アミノ基(第一級もしくは第二級)、すなわちNHR基(ここで、Rは水素(第一級)もしくは当該技術分野において既知である任意の他の化学基であることができる)を有する治療化合物をさす。該アミノ基は飽和もしくは不飽和炭素によって治療化合物Dに、カルボニルに連結されることができ、もしくはアミノ基が含まれる他のより広範な官能基(アミド、カルバメートなど)の一部であることができるが、各場合におけるアミノ基は、安定なアミド結合を形成するためにアミノ酸と反応することができなければならない。特定の態様として、治療化合物のアミノ基NHRは、アミン機能(functions)の官能基に属し、そしてアミドもしくはカルバメートのようなより広範な一般官能基に属さない。
【0029】
治療化合物はまた、リンカーを介してオリゴペプチドに連結されることもできる。このリンカーは、それによりアミノ酸を包含する、任意の有機構造を有することができ、そして上記のようなNHR基を含有する。
【0030】
「CD26」は、本明細書において用いる場合、その膜結合型および遊離型のジペプチジル−ペプチダーゼIV(EC3.4.14.5)をさす。CD26の同義語は、DPPIV、DPP4、CD26/DPPIVもしくはADCP2(アデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2)である。
【0031】
本明細書において用いる場合、「ジペプチジル−ペプチダーゼ(1つもしくは複数)」は、ジペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する、すなわち、基質における2番目のCO−NHアミド結合の切断により基質側のアミノ末端側からジペプチドを取り除く酵素をさす。CD26と匹敵する活性およびタンパク質分解特異性を有するCD26以外の酵素(すなわち、プロリルオリゴペプチダーゼ)は、「ジペプチジル−ペプチダーゼ(1つもしくは複数)」で呼ばれる。「ジペプチジル−ペプチダーゼIV」は、CD26をさす。
【0032】
本明細書において用いる場合、「ペプチド」もしくは「オリゴペプチド」という用語は、アミド結合により連結されている2個もしくはそれ以上のアミノ酸をさす。治療化合物Dとともに記載される場合、ペプチドもしくはオリゴペプチドは、ペプチドのCOOH基と治療化合物Dもしくは治療化合物に連結されるリンカー上のNH2もしくはNH基に由来する、アミド結合により連結されている2個もしくはそれ以上のアミノ酸をさす。ペプチドの長さは、ペプチドという語の前に来るギリシャ数字により示される(ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチドなど)。
【0033】
本発明において、新規プロドラッグ技術は、治療薬へのペプチドの連結に基づいて提供され、それにより、コンジュゲートのアミド結合はCD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である。そのようなものとして、一般に治療化合物Dの溶解性、生物学的利用能および効能をより広範に調節することができる。リンパ球表面糖タンパク質CD26は、膜結合ペプチダーゼの独特なクラスに属する。それは一連の多様な機能特性を特徴とし、そしてそれはジペプチジル−ペプチダーゼIV(DPP IV、EC3.4.14.5)と同一である。DPP IVは、プロリル結合を加水分解することができる一群の非定型セリンプロテイナーゼ、プロリルオリゴペプチダーゼ(POP;EC3.4.21.26)ファミリーのメンバーである。766アミノ酸の長さのCD26は、単一の疎水性セグメントにより細胞の脂質二重層膜に固定されており、そして6アミノ酸の短い細胞質尾部を有する[Abbott et al.Immunogenetics(1994)40:331−338]。膜アンカーは、大きな細胞外グリコシル化領域、高システイン領域およびC末端の触媒ドメインにつながっている(Abott et al.上記に引用)。CD26は、上皮細胞(すなわち、腎近位尿細管、腸)上でそしていくつかのタイプの内皮細胞および繊維芽細胞、ならびに白血球サブセット上で強く発現される[Hegen,M.Leukocyte Typing VI.Kishimoto,T.,ed.Garland Publishing,(1997),pp.478−481]。CD26はまた、精液、血漿および脳脊髄液に存在する可溶型としても存在する。それは、細胞内尾部および膜貫通領域を欠く[De Meester et al.Rev.Immunol.Today(1999)20:367−375]。CD26は、そのエキソペプチダーゼ活性に加えて、その基質結合部位の外側でいくつかのタンパク質に特異的に結合する[すなわち、アデノシンデアミナーゼ[Trugnan et al.Cell−Surface Peptidases in Health and Disease.Kenny,& Boustead,eds.BIOS,(1997),pp.203−217]、フィブロネクチン[Gonzalez−Gronow,et al.Fibrinolysis(1996),10(Suppl.3):32]、コラーゲン[Loster et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.(1995),217:341−348]]。CD26は、興味深い(ジペプチジル)ペプチダーゼ触媒活性に恵まれており、そしてそれは様々な天然ぺプチドのN末端の最後から2番目の位置にプロリンもしくはアラニンを有するペプチドに高い選択性を有する。
【0034】
いくつかのサイトカイン、造血成長因子、神経ペプチドおよびホルモンは、それらのN末端でX−ProもしくはX−Alaモチーフを共有し、そして該酵素の効率のよい基質として働くことが示されている[De Meester et al.Rev.Immunol.Today(1999)20:367−375およびMentlein Regul.Pept.(1999)85:9−24に概説される]。さらに、サブスタンスPは、そのH末端にArg−Pro−Lys−Pro[配列番号:1]配列を有し、そしてArg−ProおよびLys−Proの段階的遊離により活性ヘプタペプチドにCD26により切断される11アミノ酸の天然ペプチドの例である[Ahmad et al.Pharmacol.Exp.Ther.(1992),260:1257−1261]。CD26は、非常に小さい天然ペプチド[すなわち、ペンタペプチドエンテロスタチン(Val−Pro−Asp−Pro−Arg)[配列番号:2][Bouras et al.Peptides(1995),16:399−405]からそれらのアミノ末端にSer−Pro、Lys−ProおよびVal−Pro配列をそれぞれ含有するより大きいペプチド[ケモカインRANTESおよびSDF−1αおよびIP−10(68〜77アミノ酸)を包含する][Oravecz et al.J.Exp.Med.(1997),186:1865−1872;Proost et al.J.Biol.Chem.(1998),273:7222−7227;Ohtsuki et al.FEBS Lett.(1998),431:236−240;Proost et al.FEBS Lett.(1998),432:73−76]までジペプチドを切断することができる。
【0035】
比較的限られた基質特異性(最後から2番目のProもしくはAla)がCD26に認められているが、最後から2番目のアミノ酸がProもしくはAlaの代わりにGly、Ser、ValもしくはLeuであった場合に、より低い切断速度が認められていることもある(De Meester et al.上記に引用)。また、末端アミノ酸の性質は、CD26の最終的触媒効率において役割も果たす。CD26によるペプチドの効率のよい切断にアミノ末端で好ましい1番目のアミノ酸として疎水性(すなわち、脂肪族:Val、Ile、Leu、Metおよび芳香族Phe、Tyr、Trp)から塩基性(すなわち、Lys、Arg、His)〜中性(すなわち、Gly、Ala、Thr、Cys、Pro、Ser、Gln、7Asn)〜酸性(すなわち、Asp、Glu)アミノ酸に減少する優先傾向がある(De Meester et al.上記に引用)。また、非天然アミノ酸も認識される。CD26によるマクロファージ由来ケモカイン(MDC)の二重トランケーションが起こることができ、それによりGly1−Pro2続いてTyr3−Gly4を順次失うという結果は、CD26の基質活性が一般に認められているより最後から2番目のProもしくはAlaにそれほど制限されない可能性があることを示唆する[Proost,P.et al.J.Biol.Chem.(1999),274:3988−3993]。
【0036】
多数の他のヒドロラーゼ(EC3)、さらに特にペプチダーゼ(EC3.4)ならびになおさらに特にプロリルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.5)およびX−Proアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.9)のようなアミノペプチダーゼ(EC3.4.11)は、すでに同定されている。また、他のジペプチダーゼ(EC3.4.13)、ペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.15)およびジペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14、このEC群にはまたトリペプチジル−ペプチダーゼも包含される)も、CD26の次に存在する。ジペプチジル−ペプチダーゼI(EC3.4.14.1)はリソソームに存在し、そしてX1がArgもしくはLysであるかまたはX2もしくはX3がProである場合を除いて共通配列X1−X2−X3を有するペプチドからジペプチドを切断する。ジペプチジル−ペプチダーゼII(EC3.4.14.2)は、酸性pHで最大限に活性であるリソソームペプチダーゼであり、そして配列X1−X2−X3(ここで、X2は好ましくはAlaもしくはProである)を有するオリゴペプチド(優先的にトリペプチド)からジペプチドを遊離する。DPP III(EC3.4.14.4)は細胞質ペプチダーゼであり、そして4個もしくはそれ以上の残基を含んでなるペプチドからジペプチドを切断する。ジペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.14.6)。X−Proジペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14.11)は、CD26と同様の活性を有する微生物ペプチダーゼである。それらのあるものはヒトおよび他の哺乳動物に存在し、一方、あるものは酵母および真菌のような微生物により生産される。それらは、まず第一にアミノ酸配列においてだけでなく、アミノ酸配列を認識するそれらの特異性においても異なる。さらに、DPPIVでのデータベーススクリーニングは、新規のプロリン特異的ジペプチダーゼ(DPP8、DPP9、DPP10)を明らかにした[Qi et al.Biochem J.(2003)373,179−189]。これらのプロリン特異的ジペプチダーゼの大部分は、リソソームに細胞内で存在し、そして酸性pHで作用する。DPPIVのみが細胞の外側で膜結合タンパク質としてもしくは分泌タンパク質として存在する。従って、1つの態様によれば、本発明の化合物は中性pHで細胞外もしくは膜結合ジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である。
【0037】
本発明は、ペプチジルプロドラッグ誘導体がCD26のエキソジペプチジル−ペプチダーゼ活性により親化合物に効率よく転化されることを示す。本発明はさらに、ペプチジルプロドラッグ誘導体が親治療化合物に細胞外でプロセシングされることを示す。
【0038】
L−バリン部分はジペプチジルプロドラッグ方法に関与することができるので、この技術は、脂肪親和性化合物を著しくより水溶性でそしてより少ないタンパク質結合にするだけでなく、親分子の経口生物学的利用能および血漿送達ならびにCD26を発現する細胞への親薬剤のより選択的な送達を高める強力な手段になり得る。
【0039】
この結果を考慮して、本発明は薬剤の溶解性、血漿タンパク質結合を調節するためにそして/もしくは生物学的利用能を高めるために新規プロドラッグ技術を提供する。本発明の別の態様として、プロドラッグは、薬剤をより選択的に標的に向けるために、薬剤の脳およびリンパ系送達を高めるためにそして/もしくは血漿における薬剤半減期を延長するために送達される。本発明は、プロドラッグがジペプチジル−ペプチダーゼCD26もしくはCD26と同じ活性およびタンパク質分解特異性を有する他の酵素により切断可能であることを特徴とする、新規プロドラッグを提供する。好ましい態様として、本発明のプロドラッグは、CD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼの切断部位を含有するアミノ酸配列を含む、ペプチド−薬剤コンジュゲートおよびその誘導体である。そのようなものとして、本発明はまた、CD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより特異的に切断される、アミド結合によってペプチドに連結される治療化合物Dを含んでなる治療プロドラッグ組成物も提供する。
【0040】
治療化合物Dは、直接もしくはリンカー基を介してアミノ酸のカルボキシ基に連結されることができる。好ましい態様として、治療化合物Dおよびペプチドは、アミド結合によって直接連結される。治療化合物Dは、アミノ酸のカルボキシル基と、より好ましくはα−カルボキシル基と連結されることができる遊離アミノ基(第一級もしくは第二級)アミドを有することができる。別の好ましい態様として、治療化合物Dおよびペプチドはリンカーを介して連結され、ここで、リンカーは非ペプチド性もしくはペプチド性の性質のものであることができる。治療化合物Dとペプチドとの間の連結がリンカーを介して行われる場合、リンカーと第一のアミノ酸との間の連結は、好ましくはアミド結合である。リンカーは、当業者に既知である任意の結合タイプおよび化学基によって、より好ましくは共有結合により治療化合物Dに連結されることができる。リンカーは、切断後に永久に治療化合物D上にとどまることができ、または哺乳動物に存在する因子とのさらなる反応によりもしくは自己切断段階において、その後に取り除かれることができる。リンカーの切断に影響を及ぼし得る外部因子には、酵素、タンパク質、有機もしくは無機試薬、プロトンおよび他の因子が包含される。リンカーが薬剤に結合したままである態様として、リンカーはペプチドの切断後に薬剤の活性を実質的に阻害しない任意の基であることができる。別の態様として、リンカーは自己切断する。自己切断するリンカーは、CD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼによるペプチドの切断後に薬剤から切断する傾向があるものである。リンカーの自己切断に関与する機序は、例えば分子内環化もしくは自然SN1加溶媒分解であり、そしてペプチド切断の際に薬剤を遊離する。リンカーのいくつかの例は、Atwell et al.(Atwell et al.J.Med.Chem.1994,37:371−380)に提供される。リンカーは、一般に、ペプチドのカルボキシ末端にアミド結合を形成する第一級アミンを含有する。リンカーはまた、薬剤上に存在する第一級アミンにアミド結合を形成するカルボン酸を含有することもできる。リンカーは、当業者に利用可能な反応から選択される1つもしくはそれ以上の反応により薬剤に連結されることができる。
【0041】
1つの態様として、プロドラッグのタンパク質分解に用いることができるプロテアーゼはCD26である。得られる実験データは、CD26がその切断にジペプチド構造にのみ依存することを示す。その活性は、プロリンと薬剤部分との間のアミド結合のすぐ後の治療化合物Dの存在により妨げられない。同じ関連で、従って、ジペプチド薬剤間に追加のペプチドもしくは他のリンカー分子を有する必要はなく、そしてさらに、異なる臓器(高いレベルからより低いレベルに:腎臓、肺、副腎、空腸、肝臓、耳下腺、脾臓、精巣そしてまた皮膚、心臓、膵臓、脳、脊髄、血清上)および異なる細胞タイプ(胸腺細胞、内皮細胞、リンパ球、小グリア細胞のような)上のその組織発現(癌および正常組織の両方上)のために、いくつかの用途およびいくつかの治療用途が予想されることができる。ジペプチドのタンパク質分解の速度は、アミノ末端のアミノ酸および/もしくは2番目のアミノ酸を改変することにより調節することができる。一緒にもしくは加水分解の調節とは独立に、ジペプチドプロドラッグの物理化学的性質を改変することができる。
【0042】
本発明のプロドラッグに用いることができる治療化合物には、ペプチドに直接もしくは間接的に連結されることができそしてそれによりコンジュゲートがCD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である任意の薬剤(ペプチドホルモンのようなタンパク質もしくはペプチド薬剤以外)が包含される。既知の治療化合物に加えて、本発明はまた現在薬剤開発中である新規薬剤分子にもしくはすでに臨床使用中である薬剤分子に適用することもできる。別の好ましい態様として、治療化合物Dは小有機分子であり、そしてペプチド、タンパク質、インターカレーターもしくはオリゴヌクレオチドもしくはそのアナログ(HNA、PNAなどのような)ではない。治療分子は、心臓血管、神経学的、呼吸器系、腫瘍学、代謝性疾患、免疫学、泌尿器学、抗感染薬、炎症および全ての他の治療分野において活性を有することができる。さらに別のより好ましい態様として、治療化合物Dは抗ウイルス活性を有する。なおさらに好ましい態様として、治療化合物Dは抗HIV活性を有する。
【0043】
好ましい薬剤は、第一級アミンを含有するものである。第一級アミンの存在は、薬剤とペプチドとの間のアミド結合の形成を可能にする。第一級アミンは、一般に提供されるような薬剤において見出されることができ、もしくはそれらを化学合成により薬剤に付加することができる。
【0044】
FDAの生物薬剤学分類体系(Biopharmaceutics Classification System)(BCS)に従って、薬剤物質は以下のように分類される:クラスI−高い透過性、高い溶解性;クラスII−高い透過性、低い溶解性;クラスIII−低い透過性、高い溶解性およびクラスIV−低い透過性、低い溶解性。薬剤がこの分類体系において分類される方法は、BCSの指針に記述されている。好ましい態様として、本発明において使用することができる治療化合物Dは、クラスII、IIIおよびIVから選択される。
【0045】
本発明は、ジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能であるプロドラッグを提供する。ジペプチジル−ペプチダーゼは、ペプチダーゼ(EC3.4)ならびになおさらに特にプロリルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.5)およびX−Proアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.9)のようなアミノペプチダーゼ(EC3.4.11)の群から、ジペプチダーゼ(EC3.4.13)、ペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.15)ならびにジペプチジル−ペプチダーゼI(EC3.4.14.1)、II(EC3.4.14.2)、III(EC3.4.14.4)、IV(EC3.4.14.5)、ジペプチジル−ジペプチダーゼ(EC3.4.14.6)およびX−Proジペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14.11)のようなジペプチジル−ペプチダーゼ(EC3.4.14、このEC群にはまたトリペプチジル−ペプチダーゼも包含される)の群から選択することができる。好ましい態様として、プロドラッグは哺乳動物にもしくはより好ましくはヒトに存在するジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である。より好ましい態様として、プロドラッグはジペプチジル−ペプチダーゼIV(CD26)により、精液、血漿および脳脊髄液に存在する可溶型によるのと同様に細胞表面結合型によっても切断可能である。CD26の2つの異なるタイプの存在は、細胞膜での活性化のためのそして体液における活性化のためのプロドラッグの適用を可能にする。それは、プロドラッグがあることができる本発明の別の利点である。
【0046】
1つの特定の態様として、本発明は式(I)
【0047】
【化1】

【0048】
[式中、
nは1、2、3、4もしくは5であり;
Yはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンであり;
XはD−もしくはL−立体配置の任意のアミノ酸から選択され;
[Y−X]の各反復におけるXおよびYは、相互に独立し、そして他の反復から独立して選択され;
Zは直接結合または1〜4個の炭素原子を有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であり;
1はアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールオキシC14アルキル、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルC14アルキルオキシ、ヘテロアリールオキシC14アルキル、ヘテロアリールC14アルキルオキシであり;
2はアリールC14アルキルであり;
3はC110アルキル、C26アルケニルもしくはC37シクロアルキルC14アルキルであり;
4は水素もしくはC14アルキルであり;
アリールは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、場合によりC14アルキル、ヒドロキシ、C14アルキルオキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、アミノ、モノ−もしくはジ(C14アルキル)アミノおよびアミドよりなる群から各々個々に選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいフェニルを意味し;
ヘテロアリールは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、1個もしくはそれ以上の酸素、硫黄もしくは窒素へテロ原子を有する単環式もしくは二環式芳香族複素環を意味し、この芳香族複素環は、場合によりC14アルキル、C14アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシ、アリール、アミド、モノ−もしくはジ(C14アルキル)アミノ、ハロ、ニトロ、ヘテロシクロアルキルおよびC14アルキルオキシカルボニルよりなる群から選択される置換基で1個もしくはそれ以上の炭素原子上で置換されていてもよく、そしてこの芳香族複素環はまた、場合によりC14アルキルもしくはアリールC14アルキルにより第二級窒素原子上で置換されていてもよく;
ヘテロシクロアルキルは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、1個もしくはそれ以上の酸素、硫黄もしくは窒素へテロ原子を有する飽和したもしくは部分的に不飽和の単環式もしくは二環式複素環を意味し、この複素環は、場合によりC14アルキル、C14アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロおよびオキソよりなる群から選択される置換基で1個もしくはそれ以上の炭素原子上で置換されていてもよく、そしてこの複素環はまた、場合によりC14アルキルもしくはアリールC14アルキルにより第二級窒素原子上で置換されていてもよい]
のプロドラッグ化合物、その立体異性体および塩に関する。
【0049】
基もしくは基の一部としてのC14アルキルという用語は、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝鎖状の飽和した1価の炭化水素基を意味する。そのようなC14アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが包含される。
【0050】
基もしくは基の一部としてのC16アルキルという用語は、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝鎖状の飽和した1価の炭化水素基を意味する。そのようなC16アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、3−メチルペンチルなどが包含される。
【0051】
基もしくは基の一部としてのC110アルキルという用語は、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝鎖状の飽和した1価の炭化水素基を意味する。そのようなC110アルキル基の例には、C16アルキル基の例およびヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、3−エチル−ヘプチルなどが包含される。
【0052】
基もしくは基の一部としてのC26アルケニルは、少なくとも1個の二重結合を有しそして2〜6個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝鎖状の1価の炭化水素基を意味する。そのようなC26アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブテニル、2−メチル−1−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、3−メチル−2−ペンテニルなどが包含される。
【0053】
「ハロ」もしくは「ハロゲン」という用語は、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、フルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨードの総称である。
【0054】
37シクロアルキルという用語は、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルの総称である。
【0055】
治療用途には、本発明のプロドラッグ化合物の塩は、対イオンが製薬学的にもしくは生理学的に許容しうるものである。しかしながら、製薬学的に許容できない対イオンを有する塩もまた、例えば、本発明の製薬学的に許容しうる化合物の製造もしくは精製において、用途を見出すことができる。全ての塩は、製薬学的に許容しうるかもしくはそうでないにしても、本発明の範囲内に包含される。
【0056】
本発明のプロドラッグ化合物が形成することのできる製薬学的に許容しうるもしくは生理学的に許容しうる酸付加塩形態は、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸;もしくは例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモン酸などのような有機酸のような適切な酸を用いて都合よく製造することができる。
【0057】
逆に、該酸付加塩形態を適切な塩基での処理により遊離塩基形態に転化することができる。
【0058】
酸性プロトンを含有する本発明のプロドラッグ化合物はまた、適切な有機および無機塩基での処理によりそれらの無毒の金属もしくはアミン付加塩形態に転化することもできる。適切な塩基塩形態は、例えば、アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えば、ベンザチン、N−メチル,−D−グルカミン、ヒドラバミン(hydrabamine)塩、ならびに例えば、アルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含んでなる。
【0059】
逆に、該塩基付加塩形態を適切な酸での処理により遊離酸形態に転化することができる。
【0060】
「塩」という用語はまた、本発明のプロドラッグ化合物が形成することのできる水和物および溶媒付加形態も含んでなる。そのような形態の例は、例えば、水和物、アルコラートなどである。「塩」という用語はまた、本発明の化合物の窒素原子の四級化も含んでなる。塩基性窒素は、例えば、低級アルキルハロゲン化物、硫酸ジアルキル、長鎖ハロゲン化物およびアリールアルキルハロゲン化物を包含する当業者に既知である任意の因子で四級化することができる。
【0061】
本発明のプロドラッグ化合物はまた、それらの互変異性形態で存在することもできる。そのような形態は、上記の式において明白に示されないが、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0062】
1つの態様として、−(Y−X)nにより形成されるペプチド結合の末端アミノ酸の末端アミノ基は、場合によりアセチル、スクシニル、ベンジルオキシカルボニル、グルタリル、モルホリノカルボニルおよびC14アルキルから選択される1もしくは2個のキャッピング基を含有してもよい。
【0063】
1つの態様として、各Xは独立して天然に存在するアミノ酸から選択される。
【0064】
1つの態様として、各Xは独立してアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンもしくはバリンよりなる群から選択されるL−アミノ酸である。
【0065】
1つの態様として、各Yは独立してプロリン、アラニン、グリシン、セリン、バリンもしくはロイシンであり;好ましくは、各Yは独立してプロリンもしくはアラニンである。
【0066】
1つの態様として、nは1、2もしくは3である。
【0067】
1つの態様として、−(Y−X)nは−(Y−X)1もしくは2−Y−Valであり、さらに特に−(Y−X)nは−(Y−X)1もしくは2−Pro−Valである。
【0068】
1つの態様として、(Y−X)nオリゴペプチドはPro−Val、Pro−Asp、Pro−Ser、Pro−Lys、Pro−Arg、Pro−His、Pro−Phe、Pro−Ile、Pro−Leu、Ala−Val、Ala−Asp、Ala−Ser、Ala−Lys、Ala−Arg、Ala−His、Ala−Phe、Ala−IleおよびAla−Leuよりなる群から選択される(Y−X)反復で構築される。
【0069】
1つの態様として、R1はヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールC14アルキルオキシ、アリールもしくはアリールオキシC14アルキルである。
【0070】
1つの態様として、R1はヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラニル−オキシ、テトラヒドロフラニル−オキシ、キノリニル、チアゾリルメチルオキシ、アリール、アリールオキシメチルである。
【0071】
1つの態様として、R1はヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシ、テトラヒドロフラン−3−イル−オキシ、キノリン−2−イル、チアゾール−5−イルメチルオキシ、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル、2,6−ジメチルフェノキシメチルである。
【0072】
1つの態様として、R1は(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシ、(3S)−テトラヒドロフラン−3−イル−オキシ、キノリン−2−イル、チアゾール−5−イルメチルオキシ、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル、2,6−ジメチルフェノキシメチルである。
【0073】
化合物の興味深い群は、以下の制約の1つもしくはそれ以上が当てはまるその式(I)の化合物の群である:
・nが1、2もしくは3である;
・Yがプロリンである;
・各Xが独立してバリン、アスパラギン酸、リシンもしくはプロリンから選択される;
・Zがメチレンである;
・R1がヘテロシクロアルキルオキシである;
・R2がフェニルメチルである;
・R3がC110アルキルである;
・R4が水素である。
【0074】
興味深い化合物は、R2がフェニルメチルである式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0075】
興味深い化合物は、R3がC14アルキルである、特にR3がイソブチルである式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0076】
興味深い化合物は、R4が水素である式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0077】
興味深い化合物は、R2がフェニルメチルであり;R3がイソブチルであり、そしてR4が水素である式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0078】
興味深い化合物は、Z4がメチレンである式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0079】
興味深い化合物は、R1がヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラニル−オキシ、テトラヒドロフラニル−オキシ、キノリニル、チアゾリルメチルオキシ、アリール、アリールオキシメチルであり;R2がフェニルメチルであり;R3がイソブチルであり、そしてR4が水素である式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0080】
化合物の特定の群は、
nが1、2もしくは3であり;
Yがプロリンもしくはアラニンであり;
各Xが独立して天然に存在するアミノ酸から選択され;
Zが直接結合もしくはメチレンであり;
1がヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールC14アルキルオキシ、アリールもしくはアリールオキシC14アルキルであり;
2がフェニルメチルであり;
3がイソブチルであり;
4が水素である
式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群である。
【0081】
また、化合物の特定の群は、
nが1、2もしくは3であり;
Yがプロリンであり;
各Xが独立して天然に存在するアミノ酸から選択され;
Zがメチレンであり;
1がヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラニル−オキシ、テトラヒドロフラニル−オキシ、キノリニル、チアゾリルメチルオキシ、アリール、アリールオキシメチルであり;
2がフェニルメチルであり;
3がイソブチルであり;
4が水素である
式(I)の化合物もしくはその任意の特定の亜群でもある。
【0082】
好ましいプロドラッグは、治療化合物が
【0083】
【化2】

【0084】
であるプロドラッグである。
【0085】
好ましいプロドラッグには、
【0086】
【化3】

【0087】
およびそれらの塩形態が包含される。
【0088】
特に、プロドラッグにおけるペプチドのアミノ末端側終端は、X−Pro、X−Ala、X−Gly、X−Ser、X−ValもしくはX−Leuを含んでなり、ここで、Xは任意のアミノ酸もしくはその異性体(すなわち、L−もしくはD−立体配置)を表す。2番目の位置にヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸およびアジリジンカルボン酸を有する他のジペプチドもまた、CD26により切断可能である。好ましい態様として、ペプチドはアミノ末端にX−プロリンもしくはX−アラニンを含んでなる。そのようなものとしてアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびその誘導体から選択することができる。また、改変された(すなわち、ヒドロキシルプロリン)もしくは非天然のアミノ酸を含むこともできる。別の好ましい態様として、ペプチドの長さは2〜10アミノ酸の間であり、そしてそれ故に2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸を有することができる。別の好ましい態様として、ペプチドは[X−Y]n反復単位を含んでなり、ここで、Xは任意のアミノ酸を表し、YはPro、Ala、Gly、Ser、ValもしくはLeuから選択され、そしてnは1、2、3、4もしくは5から選択される。別のさらに好ましい態様として、該ペプチドはジペプチドである。さらにより好ましい態様として、ジペプチドはLys−Proである。別のさらにより好ましい態様として、アミノ酸はL−立体配置を有する。ペプチドのアミノ末端はまた、通常のキャッピング基を含有することもできる。そのようなキャッピング基には、アセチル、スクシニル、ベンジルオキシカルボニル、グルタリル、モルホリノカルボニル、メチルおよび当該技術分野において既知である多数の他のものが包含される。当業者は、コンジュゲートの溶解性、生物学的利用能およびターゲッティングに関するより優れたプロファイルを有するペプチドを得るために置換を行うことができる。従って、本発明には、上記のようなペプチド配列、ならびにコンジュゲートがCD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能なままである限り、そのアナログもしくは誘導体が包含される。
【0089】
別の態様として、本発明のリンカーペプチドは、CD26により切断可能である構造[X−Y]nを有する1つもしくはそれ以上の反復的X−Yジペプチドからなり、CD26切断可能ペプチドとプロドラッグとの間に1個もしくはそれ以上のアミノ酸を含んでなり、そして一般構造[X−Y]n−Amを有する。ここで、Aは任意のアミノ酸である。[X−Y]nオリゴペプチドと連続したAアミノ酸との間の結合は、CD26タンパク質分解を可能にするアミド結合である。2個のAアミノ酸の間およびAアミノ酸とプロドラッグとの間の結合は、アミド結合もしくはエステル結合のいずれかであることができる。mは1〜15の間の長さで変わることができる。1つの態様として、mは1であり、そしてmはエステラーゼもしくはアミノペプチダーゼによりプロドラッグから加水分解されることができる。
【0090】
別の態様として、CD26切断可能オリゴペプチド[X−Y]nは、少なくとも1つのXが疎水性もしくは芳香族アミノ酸である、あるいはまた少なくとも1つのXが中性もしくは酸性アミノ酸である、あるいはまた少なくとも1つのXが塩基性アミノ酸であるペプチドである。より長いペプチド(nが3、4、5である)の疎水性および/もしくはタンパク質分解速度を調節するために、1つより多くのXは所望の効果を得るための側鎖の特定のタイプを有する。
【0091】
また、Yの選択もプロドラッグのタンパク質分解速度、疎水性、溶解性、生物学的利用能および効能に影響を及ぼし得る。
【0092】
さらに別の態様として、一般構造[X−Y]nを有するペプチドは、XF−Y−XF−Y、XF−Y−XS−Y、XS−Y−XF−Y、XS−Y−XS−Y、XB−Y−X−Y、X−Y−XB−YおよびXB−Y−XB−Yの群から選択される構造を有するテトラペプチドもしくはヘキサペプチド、またはXF−Y−XF−Y−XF−Y、XS−Y−XF−Y−XF−Y、XF−Y−XS−Y−XF−Y、XF−Y−XF−Y−XS−Y、XF−Y−XS−Y−XS−Y、XS−Y−XF−Y−XS−Y、XS−Y−XS−Y−XF−YおよびXS−Y−XS−Y−XS−Y、XB−Y−X−Y−X−Y、XB−Y−XB−Y−X−Y、X−Y−XB−Y−XB−Y、XB−Y−X−Y−XB−YおよびXB−Y−XB−Y−XBの群から選択される構造を有するヘキサペプチドである。ここで、Fは迅速を表し、そしてXFはCD26によるジペプチドの迅速放出をもたらすアミノ酸である(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸のような酸性および中性アミノ酸)。ここで、Sは遅いを表し、そしてXSはCD26によるジペプチドの徐放をもたらすアミノ酸である(例えば、荷電および中性アミノ酸)。ここで、Bは塩基性を表し、そしてXBは荷電および親水性ジペプチドの中程度の放出をもたらす塩基性アミノ酸(Lys、ArgおよびHis)である。そのような組み合わせは、特定の疎水性と一緒に明確な分解速度をプロドラッグに与えるペプチドの注文通りの組み合わせを可能にする。例えば、Tyr/Phe−Proジペプチドを有する疎水性プロドラッグの分解は、追加のアミノ末端のGly−Proジペプチドの存在により遅らせることができ、Gly−Pro−Tyr/Phe−Pro[配列番号:3]テトラペプチドプロドラッグをもたらす。疎水性は、追加のTyr/Phe−Proジペプチドを付加することによりさらに増すことができ、ヘキサペプチドプロドラッグGly−Pro−Tyr/Phe−Pro−Tyr/Phe−Pro[配列番号:4]をもたらす。徐放を有する荷電ペプチドプロドラッグが所望される場合、Asp−Pro−Lys−Pro[配列番号:5]はGly−Proより好ましい可能性がある。他の組み合わせは当業者により開発されることができ、ここで、テトラペプチドもしくはヘキサペプチドは、CD26によるペプチドプロドラッグの溶解性および分解速度の調節を可能にする。他の目的のために、プロリンをアラニンで置換することができる。未消化の、部分的に消化されたおよび完全に消化されたプロドラッグの物理化学的性質および分解速度は、逆相クロマトグラフィー上でのその保持時間の決定により評価することができる。
【0093】
本発明は、式(I)のペプチジルプロドラッグ誘導体がCD26のエキソジペプチジル−ペプチダーゼ活性により式(Ia)
【0094】
【化4】

【0095】
[式中、R1、R2、R3、R4およびZは、式(I)の化合物において定義するとおりである]
の親治療化合物に効率よく転化されることを示す。
【0096】
式(Ia)のこれらの治療化合物は、HIVプロテアーゼ阻害活性を有することが既知であり、そして全て引用することにより本明細書に組み込まれるEP656887、EP715618、EP810209、US5744481、US5786483、US5830897、US5843946、US5968942、US6046190、US6060476、US6248775、WO99/67417に記述されている。
【0097】
式(Ia)の治療化合物はHIVの複製のインヒビターであるという事実によって、式(I)のプロドラッグ化合物は、HIVに感染した温血動物、特にヒトの処置において有用である。本発明の化合物で予防するかもしくは処置することができるHIVと関連する症状には、エイズ、エイズ関連複合体(ARC)、進行性全身性リンパ節腫(PGL)、ならびに例えばHIVにより媒介される痴呆症および多発性硬化症のような、レトロウイルスにより引き起こされる慢性CNS疾患が包含される。
【0098】
従って、本発明のプロドラッグ化合物は、上記の症状に対する薬剤としてもしくはそれらを処置する方法において用いることができる。薬剤もしくは処置の方法としての該使用は、HIVに感染した温血動物、特にHIVに感染したヒトへの式(I)の化合物の有効治療量の全身投与を含んでなる。従って、本発明のプロドラッグ化合物は、HIV感染と関連する症状を処置するために有用な薬剤の製造において用いることができる。
【0099】
本発明の化合物の立体化学的異性体という用語は、上記に用いる場合、本発明の化合物が有することのできる、同じ結合順序により結合されている同じ原子で構成されているが互いに交換できない異なる3次元構造を有する全ての可能な化合物を定義する。他に記載されないかもしくは示されない限り、化合物の化学表示には該化合物が有することのできる全ての可能な立体化学的異性体の混合物が包含される。該混合物は、該化合物の基本分子構造の全てのジアステレオマーおよび/もしくは鏡像異性体を含有することができる。純粋形態のもしくは相互に混合した両方の本発明の化合物の全ての立体化学的異性体は、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0100】
本明細書に記載するような化合物および中間体の純粋な立体異性体は、該化合物もしくは中間体の同じ基本分子構造の他の鏡像異性体もしくはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体と定義される。特に、「立体異性的に純粋な」という用語は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち、最低80%の一方の異性体および最高20%のもう一方の可能な異性体)〜100%の立体異性体過剰率(すなわち、100%の一方の異性体およびもう一方は全くない)を有する化合物もしくは異性体、さらに特に、90%〜100%の立体異性体過剰率を有する、なおさらに特に94%〜100%の立体異性体過剰率を有する、そして最も特に97%〜100%の立体異性体過剰率を有する化合物もしくは中間体に関する。「鏡像異性的に純粋な」および「ジアステレオマー的に純粋な」という用語は、同様にしかしその一方で問題になっている混合物のそれぞれ鏡像異性体過剰率およびジアステレオマー過剰率を考慮して理解されるべきである。
【0101】
本発明の化合物および中間体の純粋な立体異性体は、当該技術分野で既知の方法の適用により得ることができる。例えば、鏡像異性体は、光学活性酸でのそれらのジアステレオマー塩の選択的結晶化により相互から分離することができる。あるいはまた、鏡像異性体は、キラル固定相を用いてクロマトグラフィー技術により分離することができる。該純粋な立体化学的異性体はまた、適切な出発物質の対応する純粋な立体化学的異性体から得ることもでき、ただし、該反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が所望される場合、該化合物は立体特異的な製造方法により合成される。これらの方法は、鏡像異性的に純粋な出発物質を都合よく用いる。
【0102】
本発明の化合物のジアステレオマーラセミ体は、常法により別個に得ることができる。都合よく用いることができる適切な物理的分離方法は、例えば、選択的結晶化およびクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーである。
【0103】
化合物は1個もしくはそれ以上の不斉中心を含有する可能性があり、従って、異なる立体異性体として存在し得る。化合物に存在する可能性がある各不斉中心の絶対立体配置は、立体化学記述子RおよびSにより示すことができ、このRおよびS表記法は、Pure Appl.Chem.1976,45,11−13に記述されている規則に対応する。
【0104】
1つの態様として、R2置換基を有する炭素原子は「S」立体配置を有し、そしてヒドロキシ置換基を有する隣接する炭素原子は「R」立体配置を有する。
【0105】
本発明はまた、本発明の化合物上に存在する原子の全ての同位体も包含するものとする。同位体には、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子が包含される。一般的な例としてそして限定されることなしに、水素の同位体にはトリチウムおよび重水素が包含される。炭素の同位体には、C−13およびC−14が包含される。
【0106】
本発明はさらに、式(I)のプロドラッグを製造する方法を提供し、ここで、該プロドラッグはCD26のようなジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である。式(I)のプロドラッグを製造するこの方法は、式(Ia)の治療的に有効な薬剤とペプチドを連結する段階を含んでなる。より好ましい態様として、治療的に有効な薬剤もしくはペプチドは、式(Ia)の治療化合物とペプチドをアミド結合によって後の段階で連結することができるように第一段階において誘導体化される。アミド結合を形成するようにカルボキシルとアミノ基を連結する多数の許容しうる方法は、当業者に既知である。
【0107】
一般に、式(Ia)の治療化合物は、EP656887、EP715618、EP810209、US5744481、US5786483、US5830897、US5843946、US5968942、US6046190、US6060476、US6248775、WO99/67417に記述されているように製造することができる。
【0108】
一般的なペプチド化学は当業者にとって容易であり、そしてペプチドを形成するために天然アミノ酸の連結を含む。いくつかの化学戦略が利用可能であり、これらのうち、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)およびtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)化学は最も広く使用されているものである。Fields G.B.は、アミノ酸を相互にもしくは治療化合物Dに連結するために適用することができるペプチド化学の詳細な記述を与える[Fieldsin Methods in Molecular Biology,Vol.35:Peptide Synthesis Protocols Humana Press Inc.:Totawa,(1994),pp.17−27]。固相ならびに液相化学を適用することができる[Atherton & Sheppard Solid Phase Peptide Synthesis IRL Press:Oxford−New York−Tokyo,(1989)]。プロドラッグ製造方法中に反応することができない治療化合物の官能基を保護基の連結によってブロックする保護戦略が用いられなければならない。
【0109】
さらに特に、式(I)のプロドラッグ化合物は、当該技術分野で既知のペプチド化学を用いて式(Ia)の治療化合物から出発して製造することができる。
【0110】
【化5】

【0111】
例えば、アミノ酸をスキーム1に示すようにペプチド結合を形成するように治療化合物に連結することができる。この連結反応は、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)もしくはEDCI(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)およびHOAt(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)のようなカップリング剤もしくはその機能的同等物の存在下で、式PG−Y−OH(式中、PG(保護基)は、例えば、Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)もしくはFmocであることができる)のアミノ保護アミノ酸で、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフランのような適切な反応不活性溶媒もしくは試薬を可溶化する任意の他の溶媒において行うことができる。このようにして形成されるペプチドを次に例えばジクロロメタンにおけるトリフルオロ酢酸での脱保護のような通常の脱保護技術を用いて脱保護することができる。
【0112】
この連結およびその後の脱保護反応段階は、所望のペプチド結合を形成するために試薬としてPG−X−OHを用いて繰り返すことができる。
【0113】
例えばリシンおよびアスパラギン酸のような、アミノ酸のいくつかは、第二の保護基を必要とする可能性があり、そして式PG−(XPG)−OHもしくはPG−(YPG)−OHにおいて表すことができる。
【0114】
あるいはまた、式PG−X−Y−OHもしくはPG−(X)n−OHもしくはPG−(X−Y)n−OHの試薬を上記の反応方法において用いることができる。
【0115】
上記に提示する製造において、反応生成物を反応媒質から単離することができ、そして必要に応じて、例えば、抽出、結晶化、蒸留、研和およびクロマトグラフィーのような当該技術分野において一般に既知である方法論に従ってさらに精製することができる。
【0116】
上記の方法において製造されるような式(I)の化合物は、立体異性体の混合物として、特に鏡像異性体のラセミ混合物の形態で合成される可能性があり、それらを当該技術分野で既知の分割方法に従って相互から分離することができる。式(I)のラセミ化合物は、適当なキラル酸との反応により対応するジアステレオマー塩形態に転化することができる。次に、該ジアステレオマー塩形態を例えば選択的もしくは分別結晶化により分離し、そして鏡像異性体をアルカリによりそれから遊離させる。式(I)の化合物の鏡像異性体を分離する代わりの方法は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体はまた、適切な出発物質の対応する純粋な立体化学的異性体から得ることもでき、ただし、該反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が所望される場合、該化合物は立体特異的な製造方法により合成される。これらの方法は、鏡像異性的に純粋な出発物質を都合よく用いる。
【0117】
化合物の溶解性を予測する方法は存在する。例えば、J Chem Inf ComputSci 1998 May−Jun;38(3):450−6に分子トポロジーおよび神経ネットワークモデリングに基づく薬剤の水溶解性予測が記述されている。
【0118】
実際に、溶解性および生物学的利用能に関連する全てのパラメーター(pKa、分配係数など)を決定することができる。「Drug Bioavailability:Estimation of Solubility,Permeability,Absorption and Bioavailability」は、これらのパラメーターおよびそれらの決定もしくは予測の包括的総括を与える(ISBN 352730438X)。
【0119】
分配係数は、脂肪親和性の尺度である。「logP」値として数字で表され、それらは水/オクタノールもしくは水/リポソームのような2つの不混和相における物質の濃度間の比であり、そしてそれらを容易に計算することができる。高いlogP値を有する物質は、水におけるより脂肪および油においてよく溶解する。これは、受動拡散により体内で脂質(脂肪に基づく)膜に入るそれらの能力を高め、それによりそれらの吸収の可能性を高める。
【0120】
多くの薬剤は1〜4の間のlogP値を有し、それらを経口送達方法に適当にする。高いlogPを有する薬剤は、通常、水に難溶性である。それらは脂溶性であり得るが、それらはGI管において溶解することができず、従って、腸壁中に拡散することができない。たとえそれらが膜に入るとしても、それらは捕捉されるようになる可能性があり、結果として起こる有毒作用を有する。
【0121】
分配係数はまた、計算することもできる。Molinspirationで開発されたlogP予測の方法(miLogP1.2)は、グループ寄与に基づく。グループ寄与は、数千の薬剤様分子のトレーニングセットの実験的logPと計算されたlogPを適合させることにより得られている。該方法は、www.molinspiration.com/services/logp.html(QSAR 15,403(1996))で使用することにより用いることができる。多数の他のLogP決定プログラムが利用可能である。
【0122】
本発明のある種の態様として、式(I)のプロドラッグを薬剤として用いることができる。別の態様として、式(I)のプロドラッグは、HIV感染を予防するかもしくは処置する薬剤を製造するために用いることができる。
【0123】
本発明はさらに、本発明による式(I)のプロドラッグを投与することによりHIV感染を予防するかもしくは処置する方法を提供する。式(I)のプロドラッグは、HIV感染を予防するかもしくは処置するために有効な量で、ヒト、非ヒト動物および哺乳動物を包含する任意のホストに投与することができる。
【0124】
式(I)のプロドラッグの薬物動態プロファイルをさらに最適化するために、それらを疾患の部位でプロドラッグもしくは治療化合物Dの必要な濃度を維持するために有用な適当な送達媒体(例えば、マイクロカプセル、微小球、生体分解性ポリマーフィルム、リポソームおよび脂質フォーム(lipid foam)のような脂質に基づく送達系、粘性のあるinstillatesならびに吸収性の機械的バリア)と併せて投与することができる。
【0125】
プロドラッグもしくは「薬剤」は、熟練者の知識の範囲内の任意の適当な方法により投与することができる。治療薬の当該技術分野において既知である投与の形態には、非経口、例えば、静脈内(例えば抗体インヒビターの)、腹腔内、筋肉内、皮内、ならびに皮下および皮内を包含する上皮、経口、もしくは粘膜面への使用、例えば、エアロゾル懸濁液の吸入を用いる鼻腔内投与による、そして被験体における筋肉もしくは他の組織に埋め込むことによるが包含される。座薬および局所用の、局所的に使用する製剤もまた意図される。投与の経路および場所により、プロドラッグのより疎水性もしくは親水性のペプチド部分を考慮することができる。
【0126】
本発明において、式(I)のプロドラッグは、HIV感染を予防するか、減少するかもしくは処置するために十分な量で導入される。
【0127】
本発明の方法におけるプロドラッグもしくは「薬剤」の投与の最も有効な形態および用量処方計画は、HIV感染の重症度、被験体の健康、以前の病歴、年齢、体重、身長、性別および処置への応答ならびに処置する医師の判断により決まる。従って、投与するプロドラッグの量、ならびにその後の投与の回数およびタイミングは、個々の被験体の応答に基づいて治療を行う医療専門家により決定される。最初に、そのようなパラメーターは、安全性および効能に関して動物モデルにおいて、そしてプロドラッグ製剤の臨床試験中にヒト被験体において適切な試験を用いて熟練した医師により容易に決定される。投与後に、プロドラッグを用いる治療の効能は、臨床像の評価を包含する様々な方法により評価される。
【0128】
従って、本発明の化合物は、それ自体が医薬品として、相互との混合物においてもしくは製薬学的製剤の形態で動物において、好ましくは哺乳動物において、そして特にヒトにおいて用いることができる。
【0129】
さらに、本発明は、通常の製薬学的に無害の賦形剤および助剤に加えて式(I)のプロドラッグの少なくとも1つの有効用量を含有する製薬学的製剤に関する。製薬学的製剤は、通常、0.1〜90重量%のプロドラッグを含有する。製薬学的製剤は、当業者にそれ自体既知である方法で製造することができる。この目的のために、1つもしくはそれ以上の固形もしくは液状の製薬学的賦形剤および/もしくは助剤と一緒に、そして所望に応じて、別の製薬学的活性化合物と組み合わせて、本発明のプロドラッグの少なくとも1つを適当な投与形態もしくは投与形態物にし、それを次にヒト医薬もしくは獣医薬における薬剤として用いることができる。
【0130】
該製薬学的組成物およびそれらの製剤に使用する適当な製薬学的担体は当業者に周知であり、そして本発明内のそれらの選択に特定の制限はない。当業者に既知である適当な担体もしくは賦形剤は、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、不揮発性油、オレイン酸エチル、食塩水中5%のデキストロース、等張性(糖もしくは塩化ナトリウムのような)および化学安定性を高める物質、バッファーならびに防腐剤である。他の適当な担体には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸およびアミノ酸コポリマーのような組成物を与える個体に有害な抗体の生産をそれ自体が誘導しない任意の担体が包含される。それらにはまた、湿潤剤、分散剤、接着剤(stickers)、粘着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)などのような添加剤を、それらが製薬学的実践と一致するという条件で、すなわち、哺乳動物に永久的な損傷を与えない担体および添加剤を包含することもできる。本発明の製薬学的組成物は、任意の既知の方法で、例えば、選択した担体材料と1段階もしくは多段階の方法で有効成分を均質に混合すること、コーティングすることおよび/もしくは研和することにより製造することができ、そして必要に応じて、界面活性剤のような他の添加剤もまた、例えば、通常は約1〜10μmの直径を有する微小球の形態でそれらを得ることを考慮して、すなわち、有効成分の制御もしくは持続放出用のマイクロカプセルの製造のために、微粉末化(inicronisation)により製造することができる。
【0131】
本発明の製薬学的組成物に使用するために適当な界面活性剤は、優れた乳化、分散および/もしくは湿潤特性を有する非イオン性、カチオン性および/もしくはアニオン性物質である。適当なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸および水溶性合成界面活性剤の両方が包含される。適当な石鹸は、高級脂肪酸(CIO−C22)の(例えばオレイン酸もしくはステアリン酸のナトリウムもしくはカリウム塩)、またはココナッツ油もしくは獣脂油から得ることができる天然脂肪酸混合物のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、非置換のもしくは置換されたアンモニウム塩である。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウムもしくはカルシウム塩;脂肪スルホネートおよびサルフェート:スルホン化ベンズイミダゾール誘導体ならびにアルキルアリールスルホネートが包含される。脂肪スルホネートもしくはサルフェートは、通常、8〜22個の炭素原子を有するアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、非置換のアンモニウム塩またはアルキルもしくはアシル基で置換されたアンモニウム塩、例えば、リグノスルホン酸もしくはドデシルスルホン酸または天然脂肪酸から得られる脂肪アルコールサルフェートの混合物のナトリウムもしくはカルシウム塩、硫酸もしくはスルホン酸エステルのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩(ラウリル硫酸ナトリウムのような)および脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸の形態である。適当なスルホン化ベンズイミダゾール誘導体は、好ましくは8〜22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホネートの例は、ドデシルベンゼンスルホン酸もしくはジブチル−ナフタレンスルホン酸のナトリウム、カルシウムもしくはアルカノールアミン塩またはナフタレン−スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物である。また、適当であるのは対応するホスフェート、例えば、リン酸エステルの塩ならびにエチレンおよび/もしくはプロピレンオキシドとp−ノニルフェノールとの付加物、またはリン脂質である。この目的に適当なリン脂質は、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびそれらの混合物のような、セファリンもしくはレシチンタイプの天然(動物もしくは植物細胞に由来する)もしくは合成リン脂質である。
【0132】
適当な非イオン性界面活性剤には、分子に少なくとも12個の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミンもしくはアミドのポリエトキシル化およびポリプロポキシル化誘導体、脂肪族および脂環式アルコール、飽和および不飽和脂肪酸ならびにアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体のようなアルキルアレーンスルホネートおよびジアルキルスルホスクシネートが包含され、該誘導体は、好ましくは、3〜10個のグリコールエーテル基および(脂肪族)炭化水素部分に8〜20個の炭素原子およびアルキルフェノールのアルキル部分に6〜18個の炭素原子を含有する。さらに適当な非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1〜10個の炭素原子を含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールとポリエチレンオキシドとの水溶性付加物であり、これらの付加物は、20〜250個のエチレングリコールエーテル基および/もしくは10〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、通常、プロピレングリコール単位当たり1〜5個のエチレングリコール単位を含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例は、ノニルフェノール−ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールおよびオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートのような)、グリセロール、ソルビタン、ショ糖およびペンタエリトリトールの脂肪酸エステルもまた、適当な非イオン性界面活性剤である。
【0133】
適当なカチオン性界面活性剤には、場合によりハロ、フェニル、置換されたフェニルもしくはヒドロキシで置換されていてもよい4個の炭化水素基を有する第四級アンモニウム塩、好ましくはハロゲン化物;例えばN−置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイルなど)そしてさらなる置換基として非置換のもしくはハロゲン化低級アルキル、ベンンジルおよび/もしくはヒドロキシ−低級アルキル基を含有する第四級アンモニウム塩が包含される。
【0134】
この目的に適当な界面活性剤のさらに詳細な記述は、例えば、「McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.,Ridgewood,New Jersey,1981)」、「Tensid−Taschenbuch」,2d ed.(Hanser Verlag,Vienna,1981)および「Encyclopaedia of Surfactants」,(Chemical Publishing Co.,New York,1981)に見出すことができる。
【0135】
組成物における有効成分の作用の持続期間を制御するために追加の成分を含むことができる。従って、制御放出組成物は、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンなどのような適切なポリマー担体を選択することにより得ることができる。薬剤放出の速度および作用の持続期間はまた、有効成分をヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリニエチルメタクリレートおよび他の上記のポリマーのようなポリマー物質の粒子、例えばマイクロカプセルに導入することにより制御することもできる。
【0136】
そのような方法には、リポソーム、微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセルなどのようなコロイド薬剤送達系が包含される。投与の経路により、製薬学的組成物は保護コーティングを必要とし得る。注入可能な用途に適当な製薬学的形態には、滅菌した水溶液または非水性の溶液もしくは分散液(懸濁液、エマルジョン)およびその即時調製用の滅菌した粉末が包含される。従って、この目的のために典型的な担体には、生体適合性の水性バッファー、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルなどならびにその混合物が包含される。非経口用賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液もしくは不揮発性油が包含される。静脈内用賦形剤には、流体および栄養補充薬、電解質補充薬(リンガーデキストロースに基づくもののような)などが包含される。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどのような防腐剤および他の添加剤もまた存在することができる。
【0137】
本発明は、請求項に記述する本発明の範囲を限定しない、以下の実施例においてさらに記述される。
[実施例]
【0138】
式(I)の化合物の製造の実験部分
式(I)のプロドラッグ化合物の製造を記述する実施例は、以下にPI1と称する式
【0139】
【化6】

【0140】
を有するHIVプロテアーゼインヒビターに基づく。
【実施例1】
【0141】
Val−Pro−PI1
段階1
【0142】
【化7】

【0143】
化合物1.1(0.95g;1.69mmol)およびBoc−Val−Pro−OH(0.53g;1.7mmol)を10mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。EDCI(0.36g;1.9mmol)およびHOAt(0.023g;0.17mmol)を加え、そして室温で20時間攪拌した。反応混合物をH2Oに注ぎ、そして酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、そして次にNa2SO4上で乾燥させた。溶媒を除き、そして得られる粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル)により精製した。化合物1.2は、白色の固体として得られた(収率55%、純度95% LC−MS)。
段階2
【0144】
【化8】

【0145】
10mlのCH2Cl2中の化合物1.2(0.77g;0.9mmol)の溶液に10mlのトリフルオロ酢酸を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した後に、溶媒を除いた。粗混合物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.42gの化合物1.3を生成せしめた(収率61%、純度95% LC−MS)。
【実施例2】
【0146】
Asp−Pro−PI1
段階1
【0147】
【化9】

【0148】
化合物2.1(3.16g;5.63mmol)およびBoc−Pro−OH(1.33g;6.18mmol)を30mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。EDCI(1.18g;6.18mmol)およびHOAt(0.077g;0.5mmol)を加え、そして36時間攪拌した。酢酸エチルおよび0.1N HClを加え、そして得られる反応混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を0.1N HCl、H2O、飽和NaHCO3、水およびブラインで洗浄した。Na2SO4上で乾燥させ、そして溶媒の蒸発後に、白色の泡状物(4.39g、103%)が得られた。ジイソプロピルエーテルにおける研和後に、3.9gの化合物2.2が得られた(収率93%、純度97% LC−MS)。
段階2
【0149】
【化10】

【0150】
40mlのCH2Cl2中の化合物2.3(3.7g;4.8mmol)および15mlのトリフルオロ酢酸の混合物を室温で2時間攪拌した。溶媒の蒸発後に、粗混合物を酢酸エチルと飽和NaHCO3との間で分配した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、そしてNa2SO4上で乾燥させた。ジイソプロピルエーテルにおける粗固体の再スラリーおよび濾過により2.73gの化合物2.3を生成せしめた(収率85%、純度>90% NMR)。
段階3
【0151】
【化11】

【0152】
30mlのN,N−ジメチルホルムアミド中の化合物2.3(1.0g;1.5mmol)およびBoc−Asp(OtBu)−OH(0.48g;1.7mmol)の溶液にEDCI(0.32g;1.7mmol)およびHOAt(0.02g;0.15mmol)を加えた。室温で一晩攪拌した後に、反応混合物を酢酸エチルと0.1N HClとの間で分配した。H2O層を3回抽出し、そして合わせた有機層を0.1N HCl、H2O、飽和NaHCO3およびH2Oで洗浄した。Na2SO4上で乾燥させた後に、溶媒を除き、そして残留物をジイソプロピエーテルにおいて研和した。1.12gの化合物2.4が得られた(収率79%、純度94% LC−MS)。
段階4
【0153】
【化12】

【0154】
化合物2.5への化合物2.4の脱保護は、化合物2.3に化合物2.2を脱保護する方法と同様にして行った。
【実施例3】
【0155】
Asp−Pro−Lys−Pro−PI1
【0156】
【化13】

【0157】
実施例1および2に記述するのと同様の反応方法を用いて、Boc−Lys(Fmoc)−OHを化合物3.1(実施例2において製造するとおり)に連結して、化合物3.2を生成せしめた。Boc脱保護後に、化合物3.3が得られた。次に、Boc−Pro−OHを化合物3.3に連結し、化合物3.4を生成せしめ、それを次にBoc脱保護し、このようにして化合物3.5を生成せしめた。化合物3.5をBoc−Asp(OtBu)−OHと連結し、化合物3.6を生成せしめ、それを最初にBoc脱保護し、そして次にテトラヒドロフラン中でジメチルアミンを用いてFmoc脱保護し、このようにしてAsp−Pro−Lys−Pro−PI1に対応する化合物3.8を生成せしめた。
【実施例4】
【0158】
精製されたCD26、ヒトおよびウシ血清によるPI1へのVal−Pro−PI1の転化
PI1のジペプチド(Val−Pro)誘導体(Val−Pro−PI1)を精製されたCD26(図10)、およびPBS(リン酸緩衝食塩水)に希釈した10%もしくは2%のヒトもしくはウシ血清(図10および11)にさらした。Val−Pro−PI1は、試験した全ての条件においてPI1に効率よく転化された。60分以内に、Val−Pro−PI1は精製されたCD26によりPI1に完全に転化された。10%のBSもしくはHSは、1時間でVal−Pro−PI1の40〜70%をPI1に転化した(図10)。2%のBSおよびHSは、Val−Pro−PI1をPI1にそれぞれ8%および25%転化した。4時間後に、35%および95%の化合物が、それぞれ、BSおよびHSにより加水分解された(図11)。
【0159】
50μMのGP−pNA(グリシルプロリル−パラ−ニトロアニリド)の存在下で、100μMのVal−Pro−PI1はCD26の基質と効率よく競合した(図12)。20μMのVal−Pro−PI1もまた、おそらくCD26により触媒される反応の競合阻害により、GP−pNAからのpNAの遊離を阻害することができた。PBS中2%のBSによるpNAへのGP−pNAの転化は、精製されたCD26よりさらに効率よくVal−Pro−PI1により阻害された(図13)。また、HS(PBS中2%)により触媒されるpNAへのGP−pNA転化は、Val−Pro−PI1により競合的に阻害された(図14)。
【実施例5】
【0160】
Val−Pro−PI1およびPI1化合物の分離
化合物をバッファーA(50mM NaH2Po4+5mMヘプタンスルホン酸pH3.2)およびバッファーB(アセトニトリル)での勾配を用いて逆相RP−8(Merck)上で分離した。
【0161】
0→2分:2%バッファーB;2→8分:20%バッファーB;8→10分:25%バッファーB;10→12分:35%バッファーB;12→30分:50%バッファーB;30→35分:50%バッファーB;35→40分:2%バッファーB;40→45分:2%バッファーB。Val−Pro−PI1およびPI1のRt値は、それぞれ、18.7および17.7分であった。
【実施例6】
【0162】
製薬学的組成物
カプセル剤
式(I)の化合物をエタノール、メタノールもしくは塩化メチレンのような有機溶媒、好ましくはエタノールと塩化メチレンの混合物に溶解する。酢酸ビニルとのポリビニルピロリドンコポリマー(PVP−VA)もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなポリマー、典型的に5mPa.sをエタノール、メタノール、塩化メチレンのような有機溶媒に溶解する。好適には、ポリマーをエタノールに溶解する。ポリマーおよび化合物溶液を混合し、そして次に噴霧乾燥させる。化合物/ポリマーの比率は、1/1〜1/6から選択した。中間範囲は、1/1.5および1/3である。適当な比率は、1/6である。次に、噴霧乾燥した粉末、固体分散体を投与用のカプセルに詰める。1個のカプセルにおける薬剤装填量は、使用するカプセルサイズにより50〜100mgの間である。
フィルムコート錠
錠剤コアの製造
100gの式(I)の化合物、570gのラクトースおよび200gの澱粉の混合物をよく混合し、そしてその後で約200mlの水中5gのドデシル硫酸ナトリウムおよび10gのポリビニルピロリドンの溶液で湿らせる。湿った粉末混合物をふるいにかけ、乾燥させ、そして再びふるいにかける。次に、100gの微晶質セルロースおよび15gの水素化植物油を加えた。全体をよく混合し、そして錠剤に圧縮し、各々10mgの式(I)のプロドラッグを含んでなる10.000個の錠剤を生成せしめる。
コーティング
75mlの変性エタノール中10gのメチルセルロースの溶液に150mlのジクロロメタン中5gのエチルセルロースの溶液を加える。次に、75mlのジクロロメタンおよび2.5mlの1,2,3−プロパントリオールを加える。10gのポリエチレングリコールを融解し、そして75mlのジクロロメタンに溶解する。後者の溶液を前者に加え、そして次に2.5gのオクタデカン酸マグネシウム、5gのポリビニルピロリドンおよび30mlの濃縮色懸濁液を加え、そして全体を均質化する。このようにして得られる混合物で錠剤コアをコーティング装置においてコーティングする。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】5(左側の棒)、10(真ん中の棒)もしくは15分(右側の棒)の反応でCD26により触媒されるGP+pNAへの発色基質GP−pNA(25μM)の転化に対するジペプチドVal−Proの異なる濃度の阻害効果を示す。CD26触媒反応は、400nmでpNA遊離により引き起こされる吸収の増加を記録することにより測定した。
【図2】時間の関数としてPI1(HIVプロテアーゼインヒビター)へのVal−Pro−PI1プロドラッグの転化を示す。A:CD26;B:ウシ血清;C:ヒト血清(両方ともPBS中10%)。
【図3】時間の関数としてPI1(HIVプロテアーゼインヒビター)へのVal−Pro−PI1プロドラッグの転化を示す。図3a:ウシ血清(PBS中2%)、図3b:ヒト血清(PBS中2%)。
【図4】CD26により触媒されるGP+pNA(黄色)へのGP−pNAの転化へのVal−Pro−PI1の阻害(競合)効果を示す。
【図5】2%ヒト血清(PBS中)におけるCD26により触媒されるGP+pNA(黄色)へのGPpNAの転化へのVal−Pro−PI1の阻害(競合)効果を示す。
【図6】2%ウシ血清(PBS中)におけるCD26により触媒されるGP+pNA(黄色)へのGPpNAの転化へのVal−Pro−PI1の阻害(競合)効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
nは1、2、3、4もしくは5であり;
Yはプロリン、アラニン、ヒドロキシプロリン、ジヒドロキシプロリン、チアゾリジンカルボン酸(チオプロリン)、デヒドロプロリン、ピペコリン酸(L−ホモプロリン)、アゼチジンカルボン酸、アジリジンカルボン酸、グリシン、セリン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンであり;
XはD−もしくはL−立体配置の任意のアミノ酸から選択され;
[Y−X]の各反復におけるXおよびYは、相互に独立し、そして他の反復から独立して選択され;
Zは直接結合または1〜4個の炭素原子を有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であり;
1はアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールオキシC14アルキル、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルC14アルキルオキシ、ヘテロアリールオキシC14アルキル、ヘテロアリールC14アルキルオキシであり;
2はアリールC14アルキルであり;
3はC110アルキル、C26アルケニルもしくはC37シクロアルキルC14アルキルであり;
4は水素もしくはC14アルキルであり;
アリールは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、場合によりC14アルキル、ヒドロキシ、C14アルキルオキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、アミノ、モノ−もしくはジ(C14アルキル)アミノおよびアミドよりなる群から各々個々に選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいフェニルを意味し;
ヘテロアリールは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、1個もしくはそれ以上の酸素、硫黄もしくは窒素へテロ原子を有する単環式もしくは二環式芳香族複素環を意味し、この芳香族複素環は、場合によりC14アルキル、C14アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシ、アリール、アミド、モノ−もしくはジ(C14アルキル)アミノ、ハロ、ニトロ、ヘテロシクロアルキルおよびC14アルキルオキシカルボニルよりなる群から選択される置換基で1個もしくはそれ以上の炭素原子上で置換されていてもよく、そしてこの芳香族複素環はまた、場合によりC14アルキルもしくはアリールC14アルキルにより第二級(secondary)窒素原子上で置換されていてもよく;
ヘテロシクロアルキルは、単独でもしくは別の基と組み合わせて用いる場合に、1個もしくはそれ以上の酸素、硫黄もしくは窒素へテロ原子を有する飽和したもしくは部分的に不飽和の単環式もしくは二環式複素環を意味し、この複素環は、場合によりC14アルキル、C14アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロおよびオキソよりなる群から選択される置換基で1個もしくはそれ以上の炭素原子上で置換されていてもよく、そしてこの複素環はまた、場合によりC14アルキルもしくはアリールC14アルキルにより第二級窒素原子上で置換されていてもよい]
を有するプロドラッグ、またはその立体異性体もしくは塩。
【請求項2】
各Xが独立して天然に存在するアミノ酸から選択される請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項3】
nが1、2もしくは3である請求項1もしくは2に記載のプロドラッグ。
【請求項4】
nが2もしくは3であり、そして少なくとも1つのXが疎水性もしくは芳香族アミノ酸である請求項1〜3のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項5】
nが2もしくは3であり、そして少なくとも1つのXが中性もしくは酸性アミノ酸である請求項1〜4のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項6】
nが2もしくは3であり、そして少なくとも1つのXが塩基性アミノ酸である請求項1〜5のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項7】
−(Y−X)nがアミノ末端でX−Pro、X−Ala、X−Gly、X−Ser、X−ValもしくはX−Leuを含んでなる請求項1〜6のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項8】
−(Y−X)nがアミノ末端でX−プロリンもしくはX−アラニンを含んでなる請求項1〜7のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項9】
各Yが独立してプロリン、アラニン、グリシン、セリン、バリンもしくはロイシンである請求項1〜8のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項10】
各Yが独立してプロリンもしくはヒドロキシプロリンもしくはジヒドロキシプロリンもしくはアラニンである請求項1〜9のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項11】
各Yが独立してプロリンもしくはアラニンである請求項1〜10のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項12】
−(Y−X)nが−(Y−X)1もしくは2−Y−Valである請求項1〜11のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項13】
−(Y−X)nが−(Y−X)1もしくは2−Pro−Valである請求項1〜12のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項14】
(Y−X)nオリゴペプチドがPro−Val、Pro−Asp、Pro−Ser、Pro−Lys、Pro−Arg、Pro−His、Pro−Phe、Pro−Ile、Pro−Leu、Ala−Val、Ala−Asp、Ala−Ser、Ala−Lys、Ala−Arg、Ala−His、Ala−Phe、Ala−IleおよびAla−Leuよりなる群から選択される(Y−X)反復で構築される請求項1〜13のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項15】
1がヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールC14アルキルオキシ、アリールもしくはアリールオキシC14アルキルである請求項1〜14のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項16】
1がヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシ、テトラヒドロフラン−3−イル−オキシ、キノリン−2−イル、チアゾール−5−イルメチルオキシ、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル、2,6−ジメチルフェノキシメチルである請求項1〜15のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項17】
1がヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシ、テトラヒドロフラン−3−イル−オキシ、キノリン−2−イル、チアゾール−5−イルメチルオキシ、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル、2,6−ジメチルフェノキシメチルである請求項1〜16のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項18】
1が(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシである請求項1〜17のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項19】
2がフェニルメチルであり;R3がイソブチルであり、そしてR4が水素である請求項1〜18のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項20】
Zがメチレンである請求項1〜19のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項21】
プロドラッグが
【化2】

もしくはその塩である請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
プロドラッグが
【化3】

もしくはその塩である請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
プロドラッグが
【化4】

もしくはその塩である請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
薬剤として使用するための請求項1〜23のいずれか1つに記載のプロドラッグ。
【請求項25】
HIV感染を予防するかもしくは処置するために有用な薬剤の製造のための請求項1〜23のいずれか1つに記載のプロドラッグの使用。
【請求項26】
HIV感染を予防するかもしくは処置するために有効な量の請求項1〜23のいずれか1つに記載のプロドラッグをヒト、非ヒト動物および哺乳動物を包含する任意のホストに投与することによりHIV感染を予防するかもしくは処置する方法。
【請求項27】
通常の製薬学的に無害の賦形剤および助剤に加えて請求項1〜23のいずれか1つに記載のプロドラッグの少なくとも1つの有効用量を含有する製薬学的製剤。
【請求項28】
治療化合物
【化5】

に式H−(X−Y)nのペプチドを連結することにより該プロドラッグの水溶性を調節する、血漿タンパク質結合および/もしくは生物学的利用能を調節する方法(ここで、n、X、Y、R1、R2、R3、R4およびZは請求項1〜23のいずれか1つに定義するとおりであり、そしてここで、得られるコンジュゲートはジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である)。
【請求項29】
ジペプチジル−ペプチダーゼがCD26である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療化合物および式H−(X−Y)nのペプチドを連結する段階を含んでなる、治療化合物
【化6】

のプロドラッグ(ここで、該プロドラッグはジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である)を製造する方法(ここで、n、X、Y、R1、R2、R3、R4およびZは請求項1〜20のいずれか1つに定義するとおりであり、そしてここで、得られるコンジュゲートはジペプチジル−ペプチダーゼにより切断可能である)。
【請求項31】
ジペプチジル−ペプチダーゼがCD26である請求項30に記載の方法。


【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−526872(P2007−526872A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505596(P2006−505596)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050753
【国際公開番号】WO2004/099135
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】