説明

CD37免疫治療薬および二機能性化学療法薬とのその組合せ

本開示は、B細胞関連自己免疫性疾患、炎症性疾患、または過剰増殖性疾患を処置または予防するのに使用するための、ヒト化抗CD37小モジュラー免疫医薬(SMIP)分子、および、同時にまたは順次投与することができるCD37特異的結合分子(たとえば、抗CD37 SMIPタンパク質または抗体)と二機能性化学療法薬(たとえば、ベンダムスチン)との相乗的組合せ療法も提供する。一態様において、本開示は、ヒト化CD37特異的結合分子、および本明細書に提供される有効量のヒト化CD37特異的結合分子をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2008年4月11日に出願された米国仮特許出願番号第61/190,067号の米国特許法119条(e)項の下での利益を主張し、上記仮出願は、その全容が参照として本明細書に援用される。
【0002】
(配列表に関する申告)
この出願に関連する配列表は、紙の文書の代わりにテキストフォーマットで提供され、そしてそれは参照として本明細書に援用される。配列表を含むテキストファイルの名前は、910180_420PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。上記テキストファイルは、286KBであり、2009年4月10日に作成され、本明細書の出願と同時に、EFS−Webによって電子的に提出される。
【0003】
(背景)
(技術分野)
本開示は、一般的には、B細胞障害を処置するための組成物および方法を、さらに具体的には、B細胞関連自己免疫性疾患、炎症性疾患、または過剰増殖性疾患を処置または予防するのに使用するための、ヒト化抗CD37小モジュラー免疫医薬(SMIP)分子、および、CD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬との相乗的組合せ療法を提供する。
【背景技術】
【0004】
(関連分野の説明)
ヒト免疫系は、一般に、侵入する外来物質および病原体から身体を保護する。免疫系の1つの成分は、B細胞とも呼ばれるBリンパ球であり、これは外来物質または病原体に結合することにより、および一部の場合には、外来物質または病原体の破壊を媒介することにより、身体を保護する抗体を産生する。しかし、一部の例では、免疫系機能がうまくいかず疾患が生じることがある。たとえば、B細胞の無制御増殖が関与する数多くのがん、自己免疫性疾患、および炎症性疾患が存在する。
【0005】
B細胞は、CD37などのその細胞表面上の分子により同定することができる。CD37は、細胞表面抗原のテトラスパニン膜貫通型ファミリーに属する高度にグリコシル化された40〜52kDaタンパク質であり、正常な抗体産生B細胞上では高度に発現されているが、プレB細胞またはプラズマ細胞上では発現されていない。正常なB細胞に加えて、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、および毛様細胞性白血病を含む、B細胞起源のほぼすべての悪性腫瘍がCD37発現に陽性である(Mooreら、J. Pathol.152巻:13頁(1987年);MersonとBrochier, Immunol. Lett.19巻:269頁(1988年);およびFaureら、Am. J. Dermatopathol.12巻:122頁(1990年))。
【0006】
少数のCD37特異的免疫療法がすでに開発されている。CD37に特異的なIgG1マウスモノクローナル抗体であるMB−1が131Iで標識され、NHLの処置において臨床試験で試験された(Pressら、J. Clin. Oncol. 7巻:1027頁(1989年);Bernsteinら、Cancer Res.(Suppl.)50巻:1017頁(1990年);Pressら、Front. Radiat. Ther. Oncol. 24巻:204頁(1990年);Pressら、Adv. Exp. Med. Biol. 303巻:91頁(1991年)およびBrownら、Nucl. Med. Biol. 24巻:657頁(1997年)参照)。MB−1抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)などのFcエフェクター機能を欠き、裸のMB−1抗体は、インビボ異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を抑制しなかった(Buchsbaumら、Cancer Res. 52巻:6476頁(1992年))。さらに、別のマウスモノクローナル抗CD37であるG28−1にアドリアマイシンが連結されている免疫複合体が、マウスに投与され、内部移行されてアドリアマイシンが細胞内に放出されていることが明らかにされた(Braslawskyら、Cancer Immunol. Immunother. 33巻:367頁(1991年)参照)。小モジュラー免疫医薬(SMIP(商標))製品と名付けられた、CD37に向けられた、操作された融合タンパク質が現在ヒトにおいて試験中である(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0133939号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0059306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抗体をベースとする治療に関しては広範囲な研究が実施されてきたが、B細胞関連障害または疾患を処置するための代わりのまたは改良された組成物および方法の必要性が当該分野には残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(簡潔な概要)
一態様では、本開示は、ヒト化CD37特異的結合分子、および本明細書に提供される有効量のヒト化CD37特異的結合分子をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。
【0010】
ある種の実施形態では、本開示は、アミノ末端からカルボキシル末端までに、(i)ヒト化重鎖可変領域、(ii)配列番号229に記載されるリンカー、(iii)ヒト化軽鎖可変領域、(iv)IgG1ヒンジ、(v)ヒトIgG1 CH2領域、および(vi)ヒトIgG1 CH3領域を含むヒト化CD37特異的結合分子であって、(a)ヒト化重鎖可変領域はアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト化重鎖FR1、配列番号63に記載される重鎖CDR1、ヒト化重鎖FR2、配列番号65に記載される重鎖CDR2、ヒト化重鎖FR3、配列番号67、68または69に記載される重鎖CDR3およびヒト化重鎖FR4を含み、(b)ヒト化軽鎖可変領域はアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト化軽鎖FR1、配列番号61または62に記載される軽鎖CDR1、ヒト化軽鎖FR2、配列番号64に記載される軽鎖CDR2、ヒト化軽鎖FR3、および配列番号66に記載される軽鎖CDR3、およびヒト化軽鎖FR4を含む、上記ヒト化CD37特異的結合分子を提供する。
【0011】
上記ヒト化CD37特異的結合分子のある種の実施形態では、ヒト化重鎖FR1は、配列番号144を含み、ヒト化重鎖FR2は配列番号151を含み、重鎖FR3は配列番号158を含み、重鎖FR4は配列番号161または162を含む。
【0012】
上記ヒト化CD37特異的結合分子のいずれか1つのある種の実施形態では、ヒト化軽鎖FR1は配列番号171を含み、軽鎖FR2は配列番号182を含み、軽鎖FR3は配列番号195を含み、軽鎖FR4は配列番号206を含む。
【0013】
関連する態様では、本開示は、配列番号253に記載されるアミノ酸配列を含むCD37特異的結合分子を提供する。
【0014】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、配列番号253に記載されるアミノ酸配列から本質的になる。
【0015】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、配列番号253に記載されるアミノ酸配列からなる。
【0016】
関連する態様では、本開示は、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も提供する。
【0017】
別の関連する態様では、本開示は、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的結合分子をコードする単離された核酸分子を含むベクターを提供する。
【0018】
別の関連する態様では、本開示は、上記のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0019】
本開示は、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的結合分子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物も提供する。
【0020】
別の態様では、本開示は、本明細書に提供される有効量のヒト化CD37特異的結合分子をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。
【0021】
ある種の実施形態では、異常なB細胞活性に付随する疾患は、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞骨髄腫、自己抗体産生により特徴づけられる疾患、またはB細胞経路に関連する不適切なT細胞刺激により特徴づけられる疾患である。
【0022】
ある種の実施形態では、自己抗体産生により特徴づけられる疾患は、特発性炎症性筋障害、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、グレーヴズ病、I型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚筋炎、多発性筋炎、またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症(macroglobinemia)である。
【0023】
ある種の実施形態では、異常なB細胞活性に付随する疾患は慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0024】
別の態様では、本開示は、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するために、CD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬とを組み合わせて使用するための組成物および方法を提供する。この組合せにより、これらの化合物は相乗的に作用し、B細胞低減をさらに増加させるという驚くべき結果が得られる。
【0025】
たとえば、本開示は、CD37特異的結合分子およびベンダムスチン(bendamustine)を含む組成物を提供する。
【0026】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、ヒト化抗体またはヒト化SMIPなどのCD37特異的抗体またはSMIPである。
【0027】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、CD37特異的結合においてG28−1 mAbと競合する。
【0028】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、配列番号253に記載されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるヒト化CD37特異的結合分子などの、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的結合分子である。
【0029】
関連する態様では、本開示は、有効量のCD37特異的結合分子およびベンダムスチンをそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。
【0030】
ある種の実施形態では、異常なB細胞活性に付随する疾患は、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞骨髄腫、自己抗体産生により特徴づけられる疾患、またはB細胞経路に関連する不適切なT細胞刺激により特徴づけられる疾患である。
【0031】
ある種の追加の実施形態では、自己抗体産生により特徴づけられる疾患は、特発性炎症性筋障害、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、グレーヴズ病、I型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚筋炎、多発性筋炎、またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症である。
【0032】
ある種の他の実施形態では、異常なB細胞活性に付随する疾患は慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0033】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子とベンダムスチンとは同時に投与される。
【0034】
ある種の他の実施形態では、CD37特異的結合分子およびベンダムスチンは順次投与される。
【0035】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子とベンダムスチンとは一緒に処方される。
【0036】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、ヒト化抗体またはヒト化SMIPなどのCD37特異的抗体またはSMIPである。
【0037】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、CD37特異的結合においてG28−1 mAbと競合する。
【0038】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、配列番号253に記載されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるヒト化CD37特異的結合分子などの、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的結合分子である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、マウスG28.1配列およびCAS−024配列の重鎖可変領域アミノ酸配列アラインメントおよび軽鎖可変領域アミノ酸配列アラインメント、それに加えてコンセンサスアイデンティティー配列を示している。
【図2A】図2A〜2Dは、CAS−001、CAS−002、CAS−003およびCAS−024のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)クロマトグラムを示している。対象のピーク(POI)は、精製されているSMIP分子の98〜99%を有する。CAS−024は非常に鋭い対称的ピークを有する(均一性を示している)が、CAS−001、CAS−002、およびCAS−003ピークはわずかに肩があり(積分すると、その肩はPOIの約35%を占める)、分子の不均一な集団を示している。
【図2B】図2A〜2Dは、CAS−001、CAS−002、CAS−003およびCAS−024のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)クロマトグラムを示している。対象のピーク(POI)は、精製されているSMIP分子の98〜99%を有する。CAS−024は非常に鋭い対称的ピークを有する(均一性を示している)が、CAS−001、CAS−002、およびCAS−003ピークはわずかに肩があり(積分すると、その肩はPOIの約35%を占める)、分子の不均一な集団を示している。
【図2C】図2A〜2Dは、CAS−001、CAS−002、CAS−003およびCAS−024のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)クロマトグラムを示している。対象のピーク(POI)は、精製されているSMIP分子の98〜99%を有する。CAS−024は非常に鋭い対称的ピークを有する(均一性を示している)が、CAS−001、CAS−002、およびCAS−003ピークはわずかに肩があり(積分すると、その肩はPOIの約35%を占める)、分子の不均一な集団を示している。
【図2D】図2A〜2Dは、CAS−001、CAS−002、CAS−003およびCAS−024のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)クロマトグラムを示している。対象のピーク(POI)は、精製されているSMIP分子の98〜99%を有する。CAS−024は非常に鋭い対称的ピークを有する(均一性を示している)が、CAS−001、CAS−002、およびCAS−003ピークはわずかに肩があり(積分すると、その肩はPOIの約35%を占める)、分子の不均一な集団を示している。
【図3】図3は、様々な抗CD37特異的SMIPタンパク質が、Ramos細胞上のCD37へ結合するために親CAS−006分子(キメラ抗CD37 SMIPタンパク質、mVLmVH)と競合している様子を示すグラフであり、親分子と比べた結合親和性に関する指標を提供する。CAS−024(hVHhVL)は、CD37に対してCAS−006と実質的に同じ親和性を有するが、その他の分子(CAS−001、CAS−002、およびCAS−003、すべてhVLhVH)は親和性が2分の1から4分の1に低減している。
【図4A】図4Aおよび4Bは、CAS−006(これらのグラフではSMIP−016と表示されている)に対する追加の結合競合アッセイのグラフである。このグラフでは、マウスヒトハイブリッドSMIP分子(CAS−014 mVHhVLおよびCAS−017 hVLmVH)は、CAS−006よりも高い親和性を有しているが、CAS−024はCAS−006と同じ結合親和性を示しており、CAS−003(hVLhVH)の結合親和性はさらに低い。
【図4B】図4Aおよび4Bは、CAS−006(これらのグラフではSMIP−016と表示されている)に対する追加の結合競合アッセイのグラフである。このグラフでは、マウスヒトハイブリッドSMIP分子(CAS−014 mVHhVLおよびCAS−017 hVLmVH)は、CAS−006よりも高い親和性を有しているが、CAS−024はCAS−006と同じ結合親和性を示しており、CAS−003(hVLhVH)の結合親和性はさらに低い。
【図5−1】図5A〜5Eは、様々な異なる抗CD37抗体とCAS−006(キメラ抗CD37 SMIP分子)との間の競合的結合を示している。
【図5−2】図5A〜5Eは、様々な異なる抗CD37抗体とCAS−006(キメラ抗CD37 SMIP分子)との間の競合的結合を示している。
【図5−3】図5A〜5Eは、様々な異なる抗CD37抗体とCAS−006(キメラ抗CD37 SMIP分子)との間の競合的結合を示している。
【図6A】図6Aおよび6Bは、(A)生存率および(B)無腫瘍の割合により示される濾胞性リンパ腫の動物モデルのインビボ処置において、CAS−024がRituxan(登録商標)よりも統計的に優れていたことを示している。
【図6B】図6Aおよび6Bは、(A)生存率および(B)無腫瘍の割合により示される濾胞性リンパ腫の動物モデルのインビボ処置において、CAS−024がRituxan(登録商標)よりも統計的に優れていたことを示している。
【図7】図7は、CAS−024が化学療法薬のフルダラビン(fludarabine)およびビンクリスチン(vincristine)と相乗的に作用して、マントル細胞リンパ腫(MCL)細胞、Rec−1細胞を殺すことを示している。
【図8】図8は、本開示の抗CD37 SMIP分子を用いて処置されたヒト患者における、末梢血リンパ球の低下のレベルを示す棒グラフである。
【図9】図9は、患者BJBにおけるリンパ球低下および処置経過を示している。BJB(コホート7の一部)は、最初の週の1日目、3日目、および5日目に3.0mg/kgを用いて処置され、続いて第1サイクルで週に3用量で処置され、この同一処置が第2サイクルで施された。患者BJBは、リンパ球の劇的低下(48時間以内)を示し、4日目までに触知可能なリンパ節の低減を示し、処置への応答を続けている。
【図10】図10は、患者GRPにおけるリンパ球低下および処置経過を示している。GRP(コホート4の一部)は、第1サイクルとして週に1回4週間1.0mg/kgを用いて処置され、次に2カ月後第2サイクルで同じ方法で処置を受けた。患者GRPは、リンパ球の劇的低下(2週間以内)を示し、CTスキャンによるリンパ節サイズの36%の低減、脾臓サイズの低減、ヘモグロビンレベルの改善を示し、処置への応答を続けている。
【図11】図11は、Rec−1細胞増殖に対するCAS−024とベンダムスチンとの抑制効果に関する組合せ指標(CI)プロットを示している。
【図12】図12は、SU−DHL−6細胞増殖に対するクロラムブシル単独およびCAS−024との組合せの抑制効果を示している。
【図13】図13は、SU−DHL−6細胞増殖に対するCAS−024とクロラムブシルとの抑制効果に関する組合せ指標プロットを示している。
【図14A】図14Aは、DOHH2細胞の注入により生じ、続いてhuIgG(ヒトIgG、R&D系)、CAS−024、ベンダムスチン、およびCAS−024とベンダムスチンとの組合せを用いて処置された担腫瘍マウスにおける腫瘍量比較を示している。
【図14B】図14Bは、0日目に対する13日目の個々のマウスの腫瘍量を示している。
【図15】図15は、DOHH2細胞の注入により生じ、続いてhuIgG、CAS−024、ベンダムスチン、およびCAS−024とベンダムスチンとの組合せを用いて処置された担腫瘍マウスにおける平均腫瘍量を経時的に示している。値は、測定日ごとの平均±平均の標準誤差である。群ごとの曲線は、群内のマウスのうちの1匹または複数匹が安楽死された後に終わる。
【図16】図16は、DOHH2細胞の注入により生じ、続いてhuIgG、CAS−024、ベンダムスチン、およびCAS−024とベンダムスチンとの組合せを用いて処置された担腫瘍マウスの生存率を経時的に示している。
【図17】図17は、huIgG、CAS−024、ベンダムスチン、およびCAS−024とベンダムスチンとの組合せを用いた処置後の無腫瘍マウスの出現率を経時的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
一態様では、本開示は、CAS−006(マウス抗ヒトCD37モノクローナル抗体G28−1由来の免疫グロブリン可変領域を有する小モジュラー免疫医薬(SMIP)タンパク質)のヒト化型である、CD37特異的結合分子CAS−024(配列番号253)を提供する。CAS−024 SMIPタンパク質は、意外なことに、(1)他のヒト化型CAS−006(たとえば、CAS−002、CAS−003;実施例2および5参照)の最大約25倍のレベルで発現される、(2)CAS−006と同様にCD37に結合することができるが、他のヒト化型は結合しない(実施例4および5参照)、ならびに(3)他のヒト化型の不均一な性質と比べて分子の均一な集団として産生される(実施例3参照)。さらに、本開示は、本明細書に提供される有効量のCAS−024をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法において使用するためのCD37特異的結合分子CAS−024(配列番号253)を提供する。
【0041】
別の態様では、本開示は、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するために、任意のCD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬(たとえば、ベンダムスチン)とを組み合わせて使用するための組成物および方法を提供する。この組合せにより、この化合物の組合せは相乗的に作用し、実質的に有効性が増した治療レジメンをもたらすという驚くべき結果が得られる。
【0042】
本開示をさらに詳細に説明する前に、本明細書で使用されるある種の用語の定義を提供しておけばその理解に有益であろう。追加の定義は本開示全体を通じて説明される。
【0043】
本説明では、どんな濃度範囲、割合範囲、比範囲、または整数範囲も、他の方法で指示されなければ、挙げられる範囲内のどんな整数の値も、および適切な場合にはその分数(たとえば、ある整数の10分の1および100分の1)も含むと理解されるべきである。さらに、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚みなどのどんな物理的特徴にも関連する本明細書に挙げられるどんな数範囲も、他の方法で指示されなければ、挙げられる範囲内のどんな整数も含むと理解されるべきである。本明細書で使用されるように、「約」または「から本質的になる」は、他の方法で指示されなければ、指示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。本明細書で使用される用語「a」および「an」は、列挙された成分の「1つまたは複数」のことだと理解されるべきである。代替物の使用(たとえば、「or」)は、代替物のいずれか1つ、両方またはそのどんな組合せも意味すると理解されるべきである。本明細書で使用するように、用語「挙げられる(include)」と「含む(comprise)」とは同義語として使用される。さらに、本明細書に記載される構造物および置換基の様々な組合せに由来する個々の化合物、または化合物の群は、各化合物または化合物の群が個別に記載されている場合と同じ程度に本出願により開示されると理解されるべきである。したがって、特定の構造物または特定の置換基の選択は本開示の範囲内にある。
【0044】
本開示に従った「結合ドメイン」または「結合領域」は、たとえば、生物学的分子(たとえば、CD37)または、安定していようと一過的であろうと、2つ以上の同一もしくは異なる分子の複合体、または集合体または凝集体を特異的に認識し結合する能力を有するどんなタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドまたはペプチドでもよい。結合領域には、生物学的分子または他の対象の標的に対する、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換え的に産生された結合相手が挙げられる。ウェスタンブロット、ELISA、またはBiacore分析を含む、特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するための様々なアッセイは公知である。
【0045】
本開示の結合ドメインおよびその融合タンパク質は、標的に「特異的にまたは選択的に結合する」ことを含む、所望の程度に結合することができるが、たとえば、約10−1、10−1、10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1、または1013−1より大きいまたはそれに等しい親和性またはK(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡結合定数)で標的分子に結合する場合、試験試料中に存在する他の成分とは有意に結合することはない。「高親和性」結合ドメインとは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも1013−1またはそれより高いKを有するような結合ドメインのことである。「低親和性」結合ドメインとは、最大5×10−1、最大10−1、最大10−1、最大10−1、またはそれより低いKを有するような結合ドメインのことである。代わりに、親和性はMの単位を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)として定義してもよい(たとえば、10−5Mから10−13M)。本開示に従った結合ドメインポリペプチドおよび融合タンパク質の親和性は、従来の技術を使用して容易に決定することができる(たとえば、Scatchardら、(1949年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 51巻:660頁; および米国特許第5,283,173号、米国特許第5,468,614号、または同等物参照)。
【0046】
用語「CD37特異的結合分子」とは、少なくとも約10−1(たとえば、少なくとも約10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1、または1013−1)のKaでCD37に特異的に結合するタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドまたはペプチドのことである。
【0047】
用語「CD37特異的結合ドメイン」とは、分子の特異的CD37結合に関与するCD37特異的結合分子の一部分またはドメインのことである。CD37特異的結合ドメインそれ自体(すなわち、CD37特異的結合分子の他のどの部分も伴なわない)は、少なくとも約10−1(たとえば、少なくとも約10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1、または1013−1)のKaでCD37に結合する。CD37特異的結合ドメインそれ自体で、CD37特異的結合分子として十分である可能性がある。例示的CD37特異的結合ドメインとしては、モノクローナル抗体G28−1などの、抗CD37抗体に由来し得るCD37特異的scFvおよびFabフラグメントが挙げられる。
【0048】
抗体技術に言及する当該分野の用語により理解される用語は、本明細書において明確に定義されていなければ、それぞれが当該分野で獲得した意味を与えられる。たとえば、用語「V」および「V」とは、それぞれ抗体軽鎖および重鎖由来の可変結合領域のことである。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として知られる別個の詳細に定義されたサブ領域で構成されている。用語「C」および「C」とは、「免疫グロブリン定常領域」、すなわち、それぞれ抗体軽鎖または重鎖に由来する定常領域のことであり、後者の領域は、その領域が由来するもとの抗体アイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)に応じて、さらにCH1、CH2、CH3およびCH4定常領域ドメインに分割可能であると理解されている。定常領域ドメインの一部分がFc領域(「結晶化可能フラグメント」領域)を構成し、ここには、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)、CDC(補体依存性細胞傷害)および補体結合、Fc受容体への結合、Fc領域を欠くポリペプチドと比べて長いインビボ半減期、プロテインA結合、ならびにおそらく胎盤移行もなどの免疫グロブリンのエフェクター機能に関与するドメインが含有される(Caponら、Nature、337巻:525頁(1989年)参照)。さらに、Fc領域を含有するポリペプチドは、そのポリペプチドの二量体化または多量体化が可能になる。
【0049】
「ヒンジ領域」は、融合タンパク質が依然としてCD37に特異的に(すなわち、少なくとも約10−1、10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1、または1013−1のKaで)結合することができるように、融合タンパク質において、CD37特異的結合ドメインと別の領域(たとえば、CH2領域)との間に挿入され、その2つを連結するアミノ酸配列である。ある種の実施形態では、ヒンジ領域は免疫グロブリンヒンジ領域である。
【0050】
「免疫グロブリンヒンジ領域」とは、野生型免疫グロブリンヒンジ領域または改変された野生型免疫グロブリンヒンジ領域のことである。
【0051】
結晶学的研究によれば、免疫グロブリンヒンジ領域は、機能的に3つの領域、すなわち、上部ヒンジ領域、コア領域、および下部ヒンジ領域にさらに細分することができる。上部ヒンジ領域は、CH1のカルボキシル末端から、動きを制限するヒンジ中の第1残基、すなわち一般には2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合を形成する第1のシステイン残基までのアミノ酸を含む。上部ヒンジ領域の長さは抗体のセグメント柔軟性と相関する。コアヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド架橋を含有し、下部ヒンジ領域はCH2ドメインのアミノ末端側終端と結合し、CH2中の残基を含む。同上。ヒトIgG1のコアヒンジ領域は、ジスルフィド結合形成により二量体化されると、回転軸として機能し、したがって柔軟性を与えると考えられる環状オクタペプチドになる配列Cys−Pro−Pro−Cys(配列番号264)を含有している。
【0052】
本明細書で使用される「野生型免疫グロブリンヒンジ領域」とは、抗体の一本鎖のCH1領域とCH2領域との間に挿入されこの2つを連結する天然に存在するアミノ酸配列のことである。野生型免疫グロブリンヒンジ領域は、上部ヒンジ領域、コアヒンジ領域、および下部ヒンジ領域のうちCH2領域の一部ではない部分を含有する。例示的野生型免疫グロブリンヒンジ領域は、配列番号90に記載されるヒトIgG1ヒンジ領域であり、ここではそのアミノ末端からそのカルボキシル末端までに、最初の10アミノ酸(EPKSCDKTHT、配列番号263)が上部ヒンジ領域を形成し、次の4アミノ酸(CPPC、配列番号264)がコアヒンジ領域を形成し、最後のアミノ酸(すなわち、プロリン)は下部ヒンジ領域の最初のアミノ酸であり、CH2の一部ではない。
【0053】
「改変された野生型免疫グロブリンヒンジ領域」または「改変された免疫グロブリンヒンジ領域」とは、(a)最大30%のアミノ酸変化(たとえば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換または欠失)を有する野生型免疫グロブリンヒンジ領域、(b)長さが少なくとも10アミノ酸(たとえば、少なくとも12、13、14または15アミノ酸)であり、最大30%のアミノ酸変化(たとえば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換または欠失)を有する野生型免疫グロブリンヒンジ領域の一部分、あるいは(c)コアヒンジ領域を含む野生型免疫グロブリンヒンジ領域の一部分(長さは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15、または少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15アミノ酸でよい)のことである。改変された野生型免疫グロブリンヒンジ領域は、融合タンパク質中でCD37特異的結合ドメインと別の領域(たとえば、CH2領域)との間に挿入されこの2つを連結すると、融合タンパク質をCD37に特異的に(すなわち、少なくとも約10−1、10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1、または1013−1のKaで)結合させる。ある種の実施形態では、野生型免疫グロブリンヒンジ領域中の1つまたは複数のシステイン残基は、1つまたは複数の他のアミノ酸残基(たとえば、1つまたは複数のセリン残基)により置換されてもよい。改変された免疫グロブリンヒンジ領域は、代わりにまたはさらに、野生型免疫グロブリンヒンジ領域のプロリン残基が別のアミノ酸残基(たとえば、セリン残基)により置換されていてもよい。
【0054】
「リンカー」とは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを互いに連結し、得られるポリペプチドがCD37特異的結合が可能であるように、2つのサブ結合ドメインの相互作用と適合するスペーサー機能を与えるアミノ酸配列のことである。
【0055】
本明細書で使用される「誘導体」とは、親化合物に構造的に類似しておりその親化合物から(実際にまたは理論的に)誘導することが可能な化学的にまたは生物学的に修飾された型の化合物のことである。一般には、「誘導体」は、親化合物が「誘導体」を生成するための開始物質であってよいが、親化合物は必ずしも「類似体」を生成するための開始物質として使用されなくてもよい点で「類似体」とは異なる。誘導体は親化合物とは異なる化学的または物理的特性を有していてもよい。たとえば、誘導体は、親化合物または配列と比べて、より親水性であってもよいし、改変された反応性を有する変異配列であってもよい(たとえば、標的に対するその親和性を改変するアミノ酸変化を有するCDR)。
【0056】
「B細胞関連障害または疾患」とは、異常なB細胞活性または正常な、適切な、もしくは予想された経過から逸脱する活性のことである。たとえば、B細胞関連障害または疾患には、損傷または欠損のあるDNAまたは他の細胞成分を有する細胞の不適切な増殖が含まれていてもよい。異常なB細胞活性には、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシス、またはその両方により特徴づけられる細胞増殖が含まれていてもよい。そのような疾患は、たとえば、がん性であれ非がん性であれ、良性であれ悪性であれ、細胞、細胞の集団または組織の、単一のまたは複数の局所的異常増殖を有していてもよい。B細胞関連障害または疾患はまた、正常なレベルで産生されている場合、自己抗体の産生などの異常な抗体産生、またはより好ましい抗体の過剰産生を含んでいてよい。異常なB細胞活性は、B細胞のある種の小集団で起こり他の小集団では起こらなくてもよく、またはT細胞への不適切な抗原提示もしくは他のB細胞経路などによるT細胞の不適切な刺激を含んでいてもよいことも本明細書では企図されている。
【0057】
「処置」または「処置する」とは、治療的処置または予防的(prophylactic/preventative)処置のいずれかのことである。治療的処置は、処置を受ける個体において疾患の少なくとも1つの症状を改善してもよいし、個体において進行性疾患の悪化を遅延させてもよく、または追加の関連疾患の発症を予防してもよい。
【0058】
特異的結合分子または化合物の「治療的有効量(もしくは用量)」または「有効量(もしくは用量)」とは、処置されている疾患の1つまたは複数の症状を改善するのに十分な量の化合物のことである。単独で投与される個々の活性成分に当てはめた場合、治療的有効用量とは、単独のその成分のことである。組合せに当てはめた場合、治療的有効用量とは、連続的に投与しようと同時に投与しようと、治療効果をもたらす活性成分の総量のことである。1つまたは複数の特異的結合分子は、それぞれ有効用量で、本発明の方法に従って投与してよいことを本発明は特に企図している。
【0059】
「異常なB細胞活性に付随する疾患を有する、または有すると疑われる個体」とは、疾患または障害の症状が、異常なB細胞活性もしくはB細胞増殖により引き起こされている可能性があるか、異常なB細胞活性により悪化している可能性があるか、またはB細胞活性の調節により軽減される可能性がある個体である。そのような疾患の例は、B細胞悪性腫瘍またはB細胞がん(たとえば、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、もしくはB細胞骨髄腫)、自己抗体産生により特徴づけられる疾患、または、T細胞への不適切なB細胞抗原提示により引き起こされるかもしくはB細胞が関与する他の経路により引き起こされる不適切なT細胞刺激により特徴づけられる疾患である。
【0060】
追加の定義は、本開示の以下の詳細な説明の中で提供される。
【0061】
(ヒト化CD37特異的結合分子)
一態様では、本開示は、ヒト化CD37特異的結合分子を提供する。これらの分子は、ヒト化抗CD37抗体、ヒト化抗CD37抗体のFabフラグメント、ヒト化CD37特異的一本鎖Fv(scFv)、ヒト化CD37特異的SMIPタンパク質、ヒト化CD37特異的PIMSタンパク質(SMIPの成分を逆方向に含む融合タンパク質)、ヒト化CD37特異的SCORPIONタンパク質、および少なくとも1つのヒト化CD37特異的結合ドメインを含む他の二重または多重特異的結合タンパク質を含む、ヒト化CD37特異的結合ドメインを含有する任意の形態でよい。SMIPタンパク質およびそれを作製するための方法の詳細な説明は、たとえば、米国特許出願公開第2003/0133939号、同第2003/0118592号、および同第2005/0136049号ならびにWO2005017148に見られ得る。PIMSタンパク質を作製するための構築物および方法は、米国出願番号第12/168,875号に記載されている。SCORPIONタンパク質を作製するための方法は、たとえば、PCT出願公開第WO2007/146968号に見られ得る。他の例示的多機能融合タンパク質は、たとえば、米国特許出願公開第2006/0051844号および米国特許第7,166,707号に見られ得る。ある種の二重または多重特異的結合タンパク質は、CD37特異的scFvおよび免疫グロブリン由来ではない1つまたは複数の他の結合ドメインを含んでいてよい。
【0062】
(ヒト化CD37特異的結合ドメイン)
例示的「ヒト化CD37特異的結合ドメイン」は、少なくとも1つのヒトフレームワーク領域を含む、CD37に特異的な免疫グロブリン可変領域である。
【0063】
「ヒトフレームワーク領域」とは、ヒト免疫グロブリン可変領域の野生型(すなわち、天然に存在する)フレームワーク領域、その領域のアミノ酸の約50%未満(たとえば、好ましくは、約45%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、もしくは1%未満)が欠失または置換されている(たとえば、非ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域の1つもしくは複数のアミノ酸残基を対応する位置に有する)ヒト免疫グロブリン可変領域の改変されたフレームワーク領域、あるいは、その領域のアミノ酸の約50%未満(たとえば、45%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、もしくは5%未満)が欠失または置換されている(たとえば、露出した残基の位置でおよび/またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域の1つもしくは複数のアミノ酸残基を対応する位置に有する)非ヒト免疫グロブリン可変領域の改変されたフレームワーク領域であり、したがって、一態様では、免疫原性が低減する。
【0064】
ある種の実施形態では、ヒトフレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン可変領域の野生型フレームワーク領域である。ある種の他の実施形態では、ヒトフレームワーク領域は、アミノ酸欠失または置換を1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの位置に有するヒト免疫グロブリン可変領域の改変されたフレームワーク領域である。さらにある種の他の実施形態では、ヒトフレームワーク領域は、アミノ酸欠失または置換を1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの位置に有する非ヒト免疫グロブリン可変領域の改変されたフレームワーク領域である。
【0065】
ある種の実施形態では、ヒト化CD37特異的結合ドメインは、ヒト軽鎖FR1、ヒト重鎖FR1、ヒト軽鎖FR2、ヒト重鎖FR2、ヒト軽鎖FR3、ヒト重鎖FR3、ヒト軽鎖FR4、およびヒト重鎖FR4から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8個のヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0066】
例示的ヒトFRは、配列番号140〜146(ヒト重鎖FR1)、配列番号147、150および151(ヒト重鎖FR2)、配列番号154〜160(ヒト重鎖FR3)、配列番号161〜163、168および169(ヒト重鎖FR4)、配列番号170〜172、175、および177〜181(ヒト軽鎖FR1)、配列番号182、184〜188および191(ヒト軽鎖FR2)、配列番号194〜198、203および205(ヒト軽鎖FR3)、ならびに配列番号206〜210(ヒト軽鎖FR4)に記載されている。追加の例示的ヒトFR領域は、CAS−001、CAS−002、CAS−003、またはCAS−024などの、本明細書に提供されるCD37特異的SMIPタンパク質のFR領域に見出し得る。
【0067】
CD37特異的結合ドメインに存在する可能性があるヒトFRには、例示的FRの1個または2個のアミノ酸が置換または欠失している、本明細書に提供される例示的FRの改変体も挙げられる。
【0068】
ある種の実施形態では、ヒト化CD37特異的結合ドメインは、(a)ヒト軽鎖FR1、ヒト軽鎖FR2、ヒト軽鎖FR3、およびヒト軽鎖FR4を含むヒト化軽鎖可変領域、ならびに(b)ヒト重鎖FR1、ヒト重鎖FR2、ヒト重鎖FR3、およびヒト重鎖FR4を含むヒト化重鎖可変領域を含む。
【0069】
本明細書に提供されるCD37特異的結合ドメインは、1、2、3、4、5または6個のCDRも含む。そのようなCDRは、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3ならびに重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3から選択される非ヒトCDRまたは改変された非ヒトCDRでもよい。ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、(a)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、ならびに(b)重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0070】
例示的CDRには、配列番号61(RASENVYSYLA)または配列番号62(RTSENVYSYLA)に記載される軽鎖のCDR1、配列番号63(GYMNM)に記載される重鎖のCDR1、配列番号64(FAKTLAE)に記載される軽鎖のCDR2、配列番号65(NIDPYYGGTTYNRKFKG)に記載される重鎖のCDR2、配列番号66(QHHSDNPWT)に記載される軽鎖のCDR3、配列番号67(SVGPFDY)に記載される重鎖のCDR3、配列番号68(SVGPFDS)に記載される重鎖のCDR3、および配列番号69(SVGPMDY)に記載される重鎖のCDR3が挙げられる。好ましい軽鎖CDR1は、配列番号61(RASENVYSYLA)であり、好ましい重鎖CDR3には、配列番号68(SVGPFDS)または配列番号69(SVGPMDY)が挙げられる。
【0071】
追加の例示的CDRには、配列番号128(RTSQNVYSYLA)、129(RTSESVYSYLA)、130(RASQSVYSYLA)、131(RASQSVSSYLA)および132(RASQSVSYYLA)に記載される軽鎖のCDR1、配列番号133(SYMNM)および134(SYWIG)に記載される重鎖のCDR1、配列番号135(AASSLQS)、136(GASTRAT)および137(DASNRAT)に記載される軽鎖のCDR2、配列番号138(IIYPGDSDTRYSPSFQG)および139(RIDPSDSYTNYSPSFQG)に記載される重鎖のCDR2、配列番号220(QHHSDNPWT)に記載される軽鎖のCDR3、ならびに配列番号211(SVGPMDY)、212(SVGPFDY)、213(SVGPMDV)、214(SVGPFDS)、215(SVGPFDP)、216(SVGPFQH)、217(SVGPFDV)、218(SVGPFDI)、および219(SVGPFDL)に記載される重鎖のCDR3が挙げられる。さらに例示的CDRには、本明細書に提供されるCD37特異的SMIPタンパク質中のCDRが挙げられる。
【0072】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト軽鎖FR1、軽鎖CDR1、ヒト軽鎖FR2、軽鎖CDR2、ヒト軽鎖FR3、軽鎖CDR3、およびヒト軽鎖FR4を含むヒト化軽鎖可変領域を含む。
【0073】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト軽鎖FR1、配列番号61または62に記載される軽鎖CDR1、ヒト軽鎖FR2、配列番号64に記載される軽鎖CDR2、ヒト軽鎖FR3、配列番号66に記載される軽鎖CDR3、およびヒト軽鎖FR4を含むヒト化軽鎖可変領域を含む。追加の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、配列番号171に記載されるヒト軽鎖FR1、配列番号61に記載される軽鎖CDR1、配列番号182に記載されるヒト軽鎖FR2、配列番号64に記載される軽鎖CDR2、配列番号195に記載されるヒト軽鎖FR3、配列番号66に記載される軽鎖CDR3、および配列番号206に記載されるヒト軽鎖FR4を含むヒト化軽鎖可変領域を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。追加の例示的ヒト化軽鎖は、配列番号237〜240に記載されており、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的SMIPタンパク質中の軽鎖を含む。
【0074】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト重鎖FR1、重鎖CDR1、ヒト重鎖FR2、重鎖CDR2、ヒト重鎖FR3、重鎖CDR3、およびヒト重鎖FR4を含むヒト化重鎖可変領域を含む。
【0075】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト重鎖FR1、配列番号63に記載される重鎖CDR1、ヒト重鎖FR2、配列番号65に記載される重鎖CDR2、ヒト重鎖FR3、配列番号67、68または69に記載される重鎖CDR3、およびヒト重鎖FR4を含むヒト化重鎖可変領域を含む。追加の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、配列番号144に記載されるヒト重鎖FR1、配列番号63に記載される重鎖CDR1、配列番号151に記載されるヒト重鎖FR2、配列番号65に記載される重鎖CDR2、配列番号158に記載されるヒト重鎖FR3、配列番号67、68または69に記載される重鎖CDR3、および配列番号161に記載されるヒト重鎖FR4を含むヒト化重鎖可変領域を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。追加の例示的ヒト化軽鎖は、配列番号242〜245に記載されており、本明細書に提供されるヒト化CD37特異的SMIPタンパク質中の軽鎖を含む。
【0076】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、FabまたはscFvフラグメントの形態であってよい。好ましい実施形態では、CD37特異的結合ドメインは、リンカーを介して互いに連結されている軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含むヒト化CD37特異的scFvである。追加の実施形態では、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方がヒト化されており、配列番号238に記載されるヒト化軽鎖可変領域および配列番号245に記載されるヒト化重鎖可変領域の両方を含んでいてよい。
【0077】
さらに追加の実施形態では、軽鎖可変領域または重鎖可変領域のみがヒト化されている。たとえば、CD37特異的結合ドメインは、ヒト化軽鎖可変領域(すなわち、少なくとも1つのヒトFRを含む軽鎖可変領域)および非ヒト重鎖可変鎖領域(たとえば、マウスまたはラット)を含んでいてよい。代わりに、CD37特異的結合ドメインは、非ヒト軽鎖可変領域(たとえば、マウスまたはラット)およびヒト化重鎖可変鎖領域(すなわち、少なくとも1つのヒトFRを含む重鎖可変領域)を含んでいてよい。両種類のCD37特異的結合ドメインは、「ハイブリッドヒト−非ヒトCD37特異的結合ドメイン」または「キメラCD37特異的結合ドメイン」と呼んでもよい。
【0078】
ある種の実施形態では、ヒト化CD37特異的scFvにおける軽鎖可変領域のカルボキシル末端は、リンカーを介して重鎖可変領域のアミノ末端に連結されている。したがって、こうして得られるscFvは、そのアミノ末端からそのカルボキシル末端までに、軽鎖可変領域、リンカー、および重鎖可変領域を有する。ある種の他の実施形態では、ヒト化CD37特異的scFvにおける重鎖可変領域のカルボキシル末端は、リンカーを介して軽鎖可変領域のアミノ末端に連結されている。したがって、こうして得られるscFvは、そのアミノ末端からそのカルボキシル末端までに、重鎖可変領域、リンカー、および重鎖可変領域を有する。
【0079】
ある種の実施形態では、リンカーは、15〜25アミノ酸などの5〜30アミノ酸を有する。ある種の実施形態では、リンカーは(GlySer)を含み、nおよびmは1〜5から独立に選択される整数でよい。たとえば、ある種の実施形態では、nは4、mは1、2、3、4または5である。ある種の実施形態では、GlyまたはSer以外の1つまたは2つのアミノ酸が、アミノ末端、カルボキシル末端または両末端に存在していてもよい。ある種の他の実施形態では、GlyまたはSer以外の1つまたは2つのアミノ酸を使用して、(GlySer)を含みmおよびnは上記の通りであるリンカーにおいて、GlyまたはSerを置換してもよい。例示的リンカーは、配列番号229に記載される配列(GlyS)を有する。追加の例示的リンカー配列は、配列番号225〜228に記載されている。
【0080】
ある種の実施形態では、ヒト化CD37特異的結合ドメインまたはCD37特異的結合分子は、CD37への結合をG28−1 mAbと競合する。言い換えると、そのような実施形態では、CD37特異的結合ドメインまたはCD37特異的結合分子の不在下でのG28−1 mAbのCD37結合と比べて、他のCD37特異的結合ドメイン(たとえば、抗CD37モノクローナル抗体)またはCD37特異的結合分子の存在下ではG28−1 mAbのCD37結合は低減する。実施例4〜6に記載されるアッセイなどの、競合的結合アッセイは当該分野では公知であり、このアッセイを利用して、所与のCD37特異的結合ドメインまたはCD37特異的結合分子がCD37への結合をG28−1 mAbと競合することが可能かどうかを決定してもよい。
【0081】
(ヒト化CD37特異的SMIPポリペプチド)
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、CD37特異的小モジュラー免疫医薬(SMIP)ポリペプチドである。SMIPタンパク質は、典型的には、そのアミノ末端からカルボキシル末端までに、免疫グロブリン由来の結合ドメイン(たとえば、scFv)、ヒンジ領域、およびエフェクタードメイン(たとえば、IgG CH2領域およびIgG CH3領域)を含む結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質である。好ましい実施形態では、CD37特異的結合SMIPポリペプチドはヒト化されている。
【0082】
ヒト化CD37特異的結合SMIPポリペプチドのヒンジ領域は、免疫グロブリンヒンジ領域であってよい。ある種の実施形態では、ヒンジ領域は、IgGヒンジ、IgAヒンジ、IgDヒンジ、IgEヒンジまたはコアヒンジ領域を含むそのフラグメント(たとえば、長さが4〜20または5〜15アミノ酸)などの、野生型免疫グロブリンヒンジ領域である。ある種の好ましい実施形態では、ヒンジ領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4またはそのフラグメントもしくは改変体から選択される抗体ヒンジ領域であってよい。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、ヒト免疫グロブリンヒンジ領域などの、野生型免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分である。そのような実施形態のための例示的ヒンジは、配列番号90に記載される野生型ヒトIgG1ヒンジ領域、配列番号115に記載される野生型ヒトIgA1ヒンジ、配列番号116に記載される野生型ヒトIgA2ヒンジ、配列番号118に記載される野生型ヒトIgG3ヒンジ、配列番号258に記載されるヒトIgG3ヒンジの一部分、および配列番号127に記載されるヒトIgDヒンジである。ある種の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基を、融合タンパク質構築物設計の一部として、野生型免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ末端またはカルボキシ末端に付加してもよい。そのようなアミノ酸残基は、「ジャンクションアミノ酸」と呼ばれる(表4参照)。
【0083】
ある種の実施形態では、ヒンジ領域は、改変された野生型IgG免疫グロブリンヒンジ領域、または野生型免疫グロブリンヒンジ領域の改変された一部分などの、改変された(変異した)野生型免疫グロブリンヒンジ領域である。たとえば、野生型ヒトIgG1ヒンジ領域は、3個のシステイン残基を含有しており、もっともN末端寄りのシステインは第1システインと呼ばれ、ヒンジ領域のもっともC末端寄りのシステインは第3システインである。ある種の実施形態では、最初のシステインがセリンで置換されているヒトIgG1ヒンジ領域などの、変異ヒトIgG1ヒンジ領域は2個のシステイン残基のみを有する。ある種の他の実施形態では、変異ヒトIgG1ヒンジ領域は、1個のシステイン残基のみを有する。ある種の実施形態では、ヒトIgG1ヒンジ領域中の第3のシステインに対しC末端方向のプロリンは、たとえば、セリンで置換されている。例示的変異ヒトIgG1ヒンジ領域は、配列番号92、94、102、104、255、256、106、108、257、96、110、112、98、および100に記載されている。ヒトIgG3ヒンジ領域の例示的変異部分は、配列番号120、126、259〜261、122、および124に記載されている。ある種の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基を、融合タンパク質構築物設計の一部として、変異免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ末端またはカルボキシ末端に付加してもよい。そのような修飾されたヒンジ領域の例は、配列番号231〜235にイタリック体で示されている。
【0084】
ある種の実施形態では、ヒンジ領域は、野生型ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEヒンジなどの、野生型免疫グロブリンヒンジ領域に、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一である配列を含むかまたは有する。
【0085】
追加の実施形態では、改変されたヒンジ領域は、野生型免疫グロブリンヒンジ領域(たとえば、IgG1ヒンジ領域)を基盤とすることができ、野生型免疫グロブリンヒンジ領域と比べた場合、ただし、融合結合タンパク質の結合ドメインをその標的と相互作用をするように適切に方向づけるのに適した柔軟性または剛直性を修飾されたヒンジが保持するという条件で、1つまたは複数(たとえば、1、2、3、もしくは4)の挿入、1つまたは複数(たとえば、1、2、3、もしくは4)の欠失、1つまたは複数(たとえば、1、2、3、もしくは4)のアミノ酸置換(たとえば、保存的アミノ酸置換もしくは非保存的アミノ酸置換)、あるいは上記変異の組合せを含有することができる。挿入、欠失または置換は、アミノ末端かもしくはカルボキシ末端かまたは両方を含む、野生型免疫グロブリンヒンジ領域中のどこに存在していてもよい。
【0086】
本明細書に記載されるように、CD37特異的SMIPポリペプチドは、免疫グロブリンCH2領域を含んでいてよい。ある種の実施形態では、免疫グロブリンCH2領域は、野生型ヒトIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgM CH2領域を含む、野生型ヒト免疫グロブリンCH2領域などの野生型免疫グロブリンCH2領域である。ある種の実施形態では、免疫グロブリンCH2領域はヒトIgG1 CH2領域である。
【0087】
ある種の他の実施形態では、免疫グロブリンCH2領域は、改変された野生型免疫グロブリンCH2領域である。たとえば、改変された野生型免疫グロブリンCH2領域は、位置234〜238、253、279、310、318、320、322、および331に1、2、3、4または5個の変異を有する、ヒトIgG1 CH2領域であってよい(EU numbering、Wardら、1995年 Therap. Immunol. 2巻:77〜94頁)。そのような位置の変異は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性、Fc受容体結合能力、および/または補体結合を低減または除去する。
【0088】
本明細書に記載されるように、ヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドは、免疫グロブリンCH3領域を含んでいてよい。ある種の実施形態では、免疫グロブリンCH3領域ポリペプチドは、様々な種(すなわち、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物)由来の様々な免疫グロブリンアイソタイプ(たとえば、IgA、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、またはIgM)のうちの任意の1つの野生型CH3領域を含む、野生型免疫グロブリンCH3領域ポリペプチドである。他の実施形態では、免疫グロブリンCH3領域ポリペプチドは、変異免疫グロブリンCH3領域ポリペプチドである。免疫グロブリンCH3領域中の変異は、H433またはN434などの、補体結合に関与している1つまたは複数の位置に存在していてよい。
【0089】
ある種の実施形態では、ヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドは、1つまたは複数の追加の領域を含有していてよい。そのような追加の領域は、発現されたSMIPポリペプチドの分泌のためのアミノ末端にあるリーダー配列、追加のFcサブ領域(たとえば、IgMまたはIgEの野生型または変異CH4領域)、同定または精製目的のためのカルボキシ末端にあるテール配列(たとえば、6−ヒスチジンタグまたはFLAGエピトープを含む、検出または精製のためのエピトープタグ)、あるいは特定の発現系の使用から生じる追加のアミノ酸残基であってよい。本開示の例示的リーダーペプチドには、天然のリーダー配列または他の配列(配列番号223および224に記載される配列など)が挙げられる。
【0090】
本開示は、配列番号2に記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%(たとえば、82%、84%、85%、86%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を示すCD37特異的SMIPポリペプチドを含み、CD37特異的SMIPポリペプチドはCD37に結合する。追加の実施形態では、配列番号2に少なくとも80%の同一性を有するそのようなポリペプチドは、さらにヒト化してもよい。例示的ヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドは、リーダー配列が欠失している配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、52、80、82、84、86、88、および222、ならびに、配列番号247〜254および266〜269からなる群より選択される任意のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0091】
本明細書で使用される「配列同一性」とは、配列を一列に並べ、最大割合の配列同一性を実現するために必要であればギャップを導入した後で、かつ配列同一性の一部としてのどんな保存的置換も考慮せずに、別の参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である1つの配列中のアミノ酸残基の割合のことである。割合配列同一性値は、Altschulら、(1997年)「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁により定義され、パラメータがデフォルト値に設定されているNCBI BLAST2.0ソフトウェアにより生み出される。
【0092】
好ましい実施形態では、本開示は、アミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト化重鎖可変領域(V)、(GS)リンカー(配列番号229)、ヒト化軽鎖可変領域(V)、改変IgG1ヒンジ、ヒトIgG1 CH2領域、およびヒトIgG1 CH3領域を含むヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドを提供する。ヒト化重鎖可変領域は、そのアミノ末端からそのカルボキシル末端までに、ヒト重鎖FR1、配列番号63に記載される重鎖CDR1、ヒト重鎖FR2、配列番号65に記載されるCDR2、ヒト重鎖FR3、配列番号67、68または69に記載されるCDR3、およびヒト重鎖FR4を含む。ヒト化軽鎖可変領域は、そのアミノ末端からそのカルボキシル末端までに、ヒト軽鎖FR1、配列番号61または62に記載される軽鎖CDR1、ヒト軽鎖FR2、配列番号64に記載される軽鎖CDR2、ヒト軽鎖FR3、配列番号66に記載される軽鎖CDR3、およびヒト軽鎖FR4を含む。
【0093】
上の好ましい実施形態の一部では、ヒト重鎖FR1、FR2、およびFR3は、それぞれ配列番号144、151、および158を含み、重鎖FR4は配列番号161または162を含む。追加の好ましい実施形態では、ヒト軽鎖FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれ配列番号171、182、195、および206を含む。または、重鎖および軽鎖の両方がこれらの配列を含有する。
【0094】
CAS−024 SMIPタンパク質は、意外にも、(1)他のヒト化型のCAS−006(たとえば、CAS−002、CAS−003;実施例2および5参照)の最大約25倍のレベルで発現される、(2)CAS−006と同様にCD37に結合することが可能であるが、他のヒト化型は結合しない(実施例4および5参照)、ならびに(3)他のヒト化型の不均一な性質と比べて均一な集団の分子として産生される(実施例3参照)。好ましい実施形態では、本開示は、CAS−024(配列番号253)を含むかまたはそれからなるCD37特異的結合タンパク質を提供する。特に、このヒト化CD37特異的結合分子は、他のヒト化分子とは対照的に、その親キメラ分子(マウス抗ヒトCD37モノクローナル抗体G28−1由来の免疫グロブリン可変領域を有するCAS−006、SMIPタンパク質)と実質的に同じCD37結合親和性を有し、他のヒト化分子と比べて高レベルで発現され、および/または、たとえば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を介して精製される場合、他のヒト化分子とは対照的に、高度な均一性を示す。さらに、このCAS−024 CD37特異的結合分子は、腫瘍増殖を抑制し長期の腫瘍退縮を引き起こすことに有効であることが明らかにされている。
【0095】
本開示は、ヒトまたはヒト化FR、CDR、ヒト化軽鎖可変領域、ヒト化重鎖可変領域、ヒト化scFv、およびヒト化SMIPポリペプチドを含む、ヒト化CD37特異的結合分子およびその成分をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も含む。ヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドをコードする例示的な単離された核酸分子には、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、51、79、81、83、85、87、および221を含む核酸分子が挙げられる。一実施形態では、本開示には、これらの核酸分子を含むベクターおよび前記ベクターを含む宿主細胞が含まれる。
【0096】
本開示には、ポリペプチドを発現するのに適した条件下で宿主細胞を培養し、任意選択で、培養物からポリペプチドを単離することを含む、本明細書に記載されるポリペプチドを生産する過程も含まれる。
【0097】
(組合せ療法に有用な化合物)
本開示は、当該分野で公知であるかまたは本明細書に開示されている任意のCD37特異的結合分子および二機能性化学療法薬(たとえば、ベンダムスチン)を使用する組合せ療法も提供する。
【0098】
組合せ療法に有用なCD37特異的結合分子は、抗CD37抗体、抗CD37抗体のFabフラグメント、CD37特異的一本鎖Fv(scFv)、CD37特異的SMIP、CD37特異的PIMS、CD37特異的SCORPION、および少なくとも1つのCD37特異的結合タンパク質を含む他の二重または多重特異的結合タンパク質を含む、CD37特異的結合ドメインを含有する任意の形態でよい。
【0099】
ある種の実施形態では、二機能性化学療法薬との組合せ療法に有用なCD37特異的結合分子は、CD37特異的抗体である。そのような抗体には、第3回HLDAワークショップにおいてCD37抗原を特徴づけるために使用された抗体、すなわちHD28、G28−1、HH1、BI14、WR17およびF93G6が挙げられる(LingおよびMacLennan、302〜335頁、Leucocyte Typing III. White Cell Differentiation Antigens、Oxford University Press (1987年)参照)。組合せ療法に有用な他のCD37特異的抗体には、RFB−7、Y29/55、MB−1、M−B371、M−B372およびIPO−24が挙げられる(Moldenhaurer、J. Biol.、Regul. Homeost. Agents、14巻:281〜283頁、2000年(これは、上記の全ての抗体が一つのCD37エピトープのみを認識することを述べている)、およびSchwartz−Albiezら、14巻:905〜914頁、1988年(これは、上記エピトープがCD37の炭水化物部分に存在することを示している)参照)。組合せ療法に使用される可能性のある別のCD37特異的抗体は、S−B3(Biosys)である。
【0100】
ある種の実施形態では、二機能性化学療法薬との組合せ療法に有用なCD37特異的結合分子は、CD37特異的SMIPポリペプチドである。例示的SMIPポリペプチドは配列番号2を含む。追加の例示的SMIPポリペプチドには、(1)G28−1 scFv、ヒトIgG1ヒンジ領域中の3つのシステイン残基すべてと第3のシステインに対しカルボキシル末端方向のプロリンとがセリン残基に変異している改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびに野生型ヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv(SSS−S)H WCH2 WCH3、(2)G28−1 scFv、ヒトIgAヒンジの一部分、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv IgAH WCH2 WCH3、(3)G28−1 scFv、ヒンジ領域中の3つのシステイン残基すべてと第3のシステインに対しカルボキシル末端方向のプロリンとがセリン残基に変異している改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VHL11S(SSS−S)H WCH2 CH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(4)G28−1 scFv、第2および第3の位置のシステイン残基と第3のシステインに対しカルボキシル末端方向のプロリンとがセリン残基で置換されている改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VHL11S(CSS−S)H WCH2 CH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(5)G28−1 scFv、第2の位置のシステイン残基と第3のシステインに対しカルボキシル末端方向のプロリンとがセリン残基で置換されている改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VHL11S(CSC−S)H WCH2 CH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(6)G28−1 scFv、ヒンジ領域中の第1および第2のシステイン残基がセリン残基に変異している改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VH11S(SSC−P)H WCH2 WCH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(7)G28−1 scFv、ヒンジ領域中の第1および第3のシステイン残基と第3のシステインに対しカルボキシル末端方向のプロリンとがセリン残基に変異している改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VH11S(SCS−S)H WCH2 WCH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(8)G28−1 scFv、ヒンジ領域中の第3のシステイン残基がセリンで置換されている改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトIgG1 CH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VHL11S(CCS−P)H WCH2 WCH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(9)G28−1 scFv、第1のシステインがセリンで置換されている改変ヒトIgG1ヒンジ、ならびにヒトCH2およびCH3ドメインを含むG28−1 scFv VHL11S(SCC−P)H WCH2 WCH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(10)G28−1 scFvならびにマウスIgE CH2、CH3およびCH4領域を含むG28−1 scFv VHL11S mlgE CH2 CH3 CH4で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、(11)G28−1 scFv、マウスIgAヒンジ、ならびに野生型IgA CH2および4カルボキシアミノ酸GTCYを欠く切断されたIgA CH3ドメイン(配列番号265)を含むG28−1 scFv VHL11S mIgA WIgACH2 T4CH3、(12)G28−1 scFvならびにヒトIgE CH2、CH3およびCH4領域を含むG28−1 scFv VHL11S hIgE CH2 CH3 CH4で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されている、ならびに(13)G28−1 scFv、ヒトIgAヒンジの一部分、野生型IgA CH2および4カルボキシアミノ酸GTCYを欠く切断されたIgA CH3ドメイン(配列番号265)を含むG28−1 scFv VHL11S hIgAH WIgACH2 TCH3で、重鎖可変領域の位置11のロイシンがセリンで置換されているなどの、WO2005017148に記載されているポリペプチドが挙げられる。
【0101】
ある種の実施形態では、二機能性化学療法薬との組合せ療法に有用なCD37特異的結合分子は、ヒト化抗CD37抗体、ヒト化抗CD37抗体のFabフラグメント、ヒト化CD37特異的PIMSタンパク質、ヒト化CD37特異的SCORPIONタンパク質、ならびに少なくとも1つのヒト化CD37特異的結合タンパク質、特にヒト化CD37特異的一本鎖Fv(scFv)およびヒト化CD37特異的SMIPポリペプチドを含む他の二重または多重特異的結合タンパク質を含む、本明細書に記載されるヒト化CD37特異的結合分子である。
【0102】
本開示で企図されているある種のCD37特異的結合分子は、CD37に対して約0.5から約10nMの親和性を有する。本開示で企図されているある種のCD37結合分子の別の特徴は、循環中、約5日から約30日の半減期を示す点である。
【0103】
ある種の実施形態では、CD37特異的結合分子は、CD37特異的結合においてG28−1 mAbと競合することが可能である。
【0104】
ベンダムスチン(4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンズイミダゾール−2−イル]ブタン酸)は、アルキル化薬および代謝拮抗薬活性を有するナイトロジェンマスタードである。ベンダムスチンは、アルキル化基とベンズイミダゾール環との両方を有する。アルキル化基のせいで、ベンダムスチン代謝物は高分子をアルキル化させ架橋させることができるため、DNA、RNAおよびタンパク質合成を阻害し、その後アポトーシスを導く。ベンズイミダゾール環は、ベンダムスチンにプリン類似体として作用させる可能性がある。ベンダムスチン塩酸塩には、商品名TREANDA(登録商標)およびRIBOMUSTIN(登録商標)がある。
【0105】
ベンダムスチンまたはその塩類は、CD37特異的結合分子と組み合わせて使用される可能性がある好ましい治療薬であるが、1つまたは複数のアルキル化基を含みかつプリン類似体として機能することができる他の治療薬も、本開示に従ってCD37特異的結合分子と組み合わせて使用してよい。
【0106】
用語「アルキル化基」とは、本明細書で使用されるように、この基を含む化合物がアルキル基をDNAに結合させることを可能にする基のことである。アルキル化基を含む化合物は、「アルキル化薬」と呼ばれてもよい。ある種の実施形態では、アルキル化薬は、ナイトロジェンマスタードである。
【0107】
用語「プリン類似体」とは、代謝プリン(たとえば、アデニンおよびグアニン)の構造を模倣し、プリン環に代謝プリンとは異なる1、2、3または4つの置換基を有する代謝拮抗薬のことである。例示的プリン類似体には、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチンおよびクラドリビンが挙げられる。
【0108】
治療薬は、プリン類似体の少なくとも1つの機能を有する場合、「プリン類似体として機能することが可能である」。プリン類似体の例示的機能には、リボヌクレオチドレダクターゼ、DNAポリメラーゼ、アデノシンデアミナーゼを阻害すること、およびDNAまたはRNAに組み込まれることなどの、プリンヌクレオチド合成、プリンヌクレオチド代謝、核酸合成、核酸プロセシング、または核酸機能の干渉または阻害が挙げられる。
【0109】
(組成物および方法)
一態様では、本開示は、本明細書に提供される有効量のヒト化CD37特異的結合分子(たとえば、CAS−024)をそれを必要とする被験体(すなわち、異常なB細胞活性に付随する疾患を有するかまたは有すると疑われる個体)に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。
【0110】
別の態様では、本開示は、有効量のCD37特異的結合分子(たとえば、CAS−024)および二機能性化学療法薬(たとえば、ベンダムスチン)をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法を提供する。上記のように、二機能性化学療法薬との組合せ療法に有用なCD37特異的結合分子は、ヒト化CD37特異的結合分子に限定されるものではなく、まだヒト化されていない他のCD37特異的結合分子を含む。
【0111】
一実施形態では、CD37治療薬を含む組成物および二機能性化学療法薬は、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するのに相乗的に作用する。相乗的に作用する2つ以上の化合物は、その化合物の複合効果が、単独で投与された場合のそれぞれの化合物の個々の効果の総和よりも大きくなるように相互作用する(たとえば、Berenbaum、Pharmacol. Rev. 41巻:93頁、1989年参照)。たとえば、CD37を標的とする小モジュラー免疫医薬品と別の薬物または化合物との間の相互作用は、様々な機構的および経験的モデルにより分析してもよい(たとえば、Ouzounovら、Antivir. Res. 55巻:425頁、2002年参照)。薬物の組合せ間の相互作用を分析するための一般に使用されているアプローチは、アイソボール((isobole)イソ効果曲線、アイソボログラムとも呼ばれる)の構築を用い、ここで薬物(d、d)の組合せは、その座標軸が個々の薬物の用量−座標軸であるグラフ上の点で表される(たとえば、Ouzounovら、上記参照;Tallarida、J. Pharmacol. Exp. Therap. 298巻:865頁、2001年も参照)。
【0112】
当該分野で公知の薬物−薬物相互作用(拮抗作用、相加性、相乗作用)を分析するための別の方法には、単独でおよび組み合わせて投与される化合物のIC50値の推定値を提供する、中位効果原理(median effect principle)に従った組合せ指標(CI)の決定が挙げられる(たとえば、Chou. In Synergism and Antagonism Chemotherapy. ChouおよびRideout編. Academic Press、San Diego Calif.、61〜102頁、1991年; CalcuSyn(商標)ソフトウェア参照)。1未満のCI値は、相乗活性を表し、1に等しいCI値は相加活性を表し、1より大きいCI値は拮抗作用を表す。
【0113】
さらに別の例示的方法は、独立効果法(independent effect method)である(PritchardおよびShipman、Antiviral Res. 14巻:181頁、1990年; PritchardおよびShipman、Antiviral Therapy 1巻:9頁、1996年; MACSYNERGY(商標)IIソフトウェア、University of Michigan、Ann Arbor、Mich.)。MACSYNERGY(商標)IIソフトウェアは、計算された相加表面と観察されたデータとを比較して予測される化合物相互作用よりも統計的に大きな(相乗作用)または予測される化合物相互作用より小さな(拮抗作用)領域(容積の形で)を明らかにするディファレンシャルプロットを生み出すことにより、化合物相互作用の三次元(3−D)試験を可能にする。たとえば、CD37特異的結合分子を含む組成物とウイルス複製を改変する二機能性化学療法薬とは、相乗作用ピークの容積により計算される、生み出される相乗作用の容積が、好ましくは、相加効果(すなわち、各薬物単独の効果をすべて加算)よりも約15%大きいか、または好ましくは、相加効果の約2倍から10倍であるか、または好ましくは、相加効果の約3倍から5倍またはそれを超える場合には、相乗活性を有するかまたは相乗効果を有すると見なされる。
【0114】
追加の実施形態では、CD37特異的結合分子および二機能性化学療法薬が投与されて、B細胞悪性腫瘍またはB細胞がんの処置において相乗的に作用することができる。B細胞悪性腫瘍またはB細胞がんには、B細胞リンパ腫[たとえば、様々な形態のホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)もしくは中枢神経系リンパ腫]、白血病[たとえば、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病および慢性筋芽細胞性白血病]ならびに骨髄腫[たとえば、多発性骨髄腫]が挙げられる。追加のB細胞がんには、小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁層リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連(MALT)リンパ組織の節外辺縁層B細胞リンパ腫、結節辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性度不明なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、および移植後リンパ増殖性障害が挙げられる。
【0115】
バーキットリンパ腫(または「バーキットB細胞悪性腫瘍」、または「バーキット腫瘍」、または「悪性リンパ腫バーキット型」)はリンパ系(特に、Bリンパ球)のがんである。バーキットリンパ腫は、3つの主な臨床改変体、すなわち風土性、散発性および免疫不全関連改変体に分けることができる。
【0116】
非バーキットB細胞悪性腫瘍には、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(ヴァルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられるが、これに限定されることはない)、辺縁層リンパ腫(脾臓辺縁層B細胞リンパ腫、結節辺縁層リンパ腫、および粘膜関連リンパ組織(MALT)型の節外辺縁層B細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されることはない)、毛様細胞性白血病、形質細胞性骨髄腫/形質細胞腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、および非バーキット非ホジキンリンパ腫(NHL)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0117】
自己抗体産生により特徴づけられる障害は、自己免疫疾患と見なされることが多い。自己免疫疾患には、関節炎、慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、多発性軟骨炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、炎症性筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、クレスト症候群、炎症性腸疾患関連応答、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸促進症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症反応が関与する状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全、全身性エリテマトーデス(SLE)、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状ループス、ループス脊髄炎、ループス脳炎、若年発症糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、リウマチ熱、シデナム舞踏病、サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性型および遅延型過敏症に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、ヴェーゲナー肉芽腫症およびチャーグストラウス病を含む肉芽腫症、顆粒球減少症、血管炎(過敏性血管炎(hypersensitivity vasculitis/angiitis)、ANCAおよびリウマチ性血管炎を含む)、再生不良性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出が関与する疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン病、グッドパスチャー症候群、ランバートイートン筋無力症症候群、レーノー(Reynaud’s)症候群、シェーグレン(Sjorgen’s)症候群、スティーヴンズ‐ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶反応、対宿主性移植片病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多発性内分泌腺症、血清陰性脊椎関節症、ライター病、スティッフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性ニューロパシーもしくはIgM媒介性ニューロパシー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ヘノッホシェーンライン紫斑病、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性精巣炎および卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーヴズ病、自己免疫性多腺性症候群(もしくは、多腺性内分泌障害症候群)、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)とも呼ばれるI型糖尿病およびシーハン症候群を含む自己免疫性内分泌疾患;自己免疫性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(HIV)、対NSIP閉塞性細気管支炎(非移植)、ギランバレー症候群、大型血管性血管炎(リウマチ性多発性筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管性血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎を含む)、結節性多発動脈炎(PAN)強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎炎)、急速進行性糸球体腎症、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、クリオグロブリン血症、肝炎関連クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠動脈疾患、家族性地中海熱、顕微鏡的多発血管炎、コーガン症候群、ヴィスコット‐オールドリッチ(Whiskott−Aldrich)症候群および閉塞性血栓血管炎、自己免疫性甲状腺疾患(たとえば、グレーヴズ病および橋本甲状腺炎)、シェーグレン症候群、ならびに皮膚筋炎(DM)および多発性筋炎(PM)を含む特発性炎症性筋障害(IIM)が挙げられるが、これらに限定されることはない。上記自己免疫疾患は、ヒト化CD37特異的結合分子を用いて、またはCD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬とを組み合わせて処置してもよい。
【0118】
本開示の一態様では、ヒト化CD37特異的結合分子またはCD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬との組合せは、医薬品組成物で投与される。ヒト化CD37特異的結合分子またはCD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬との組合せをヒトまたは試験動物に投与するためには、結合分子または組合せを、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体を含む組成物に処方するのが好ましい。語句「薬学的にまたは薬理学的に許容可能な」とは、下記の当該分野で周知の経路を使用して投与される場合、アレルギー反応またはその他の有害反応を生じない分子実体および組成物のことである。「薬学的に許容可能な担体」には、任意かつ全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、被膜剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張薬ならびに吸収遅延薬などが挙げられる。さらに、化合物は、水または一般的有機溶媒と溶媒化合物を形成してもよい。そのような溶媒化合物も企図されている。
【0119】
本開示の方法で使用されるヒト化CD37特異的結合分子またはCD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬との組合せを含有する本開示の医薬品組成物は、投与経路に応じて、薬学的に許容可能な担体または添加物を含有していてもよい。そのような担体または添加物の例には、水、薬学的に許容可能な有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容可能な界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、本開示の投薬形態に応じて、適切に、上記の物またはその組合せから選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
医薬品組成物の処方は、選択される投与経路に従って変化する(たとえば、溶液、乳濁液)。投与される抗体を含む適切な組成物は、生理的に許容可能な媒体または担体で調製することができる。溶液または乳濁液では、適切な担体には、たとえば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水溶液もしくはアルコール性/水溶性溶液、乳濁液または懸濁物が挙げられる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または不揮発性オイルが挙げられ得る。静脈内媒体としては、様々な添加物、保存剤、または流体、栄養剤、もしくは電解質補充剤が挙げられ得る。
【0121】
様々な水溶性担体、たとえば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、または水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合した活性化合物を含有していてもよい。そのような賦形剤は、懸濁化剤、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するリン脂質、たとえば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、たとえば、ポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、たとえば、ヘプタデカエチルエネオキシセタノール(heptadecaethyl−eneoxycetanol)、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどの、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物、たとえば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートでもよい。水性懸濁物は、1つまたは複数の保存剤、たとえば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルも含有していてよい。
【0122】
CD37特異的結合分子、CD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬との組合せ、または結合分子を含む組成物、またはその組合せは、貯蔵のために凍結乾燥させ、使用に先立って適切な担体に再構成することができる。この技術は、通常の免疫グロブリンに有効であることが明らかにされている。任意の適切な凍結乾燥および再構成技術を用いることができる。凍結乾燥および再構成により様々な程度の活性喪失がもたらされ得ること、ならびに使用レベルは、調整して補わなければならない可能性があることは当業者に認識される。
【0123】
水の添加による水性懸濁物の調製に適した分散粉末および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つもしくは複数の保存剤と混合した、活性化合物を提供する。適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤は、すでに上に記載された薬剤により例示されている。
【0124】
これらの処方物中のCD37特異的結合分子または二機能性化学療法薬の濃度は、たとえば、約0.5重量%未満から、通常、約1重量%または少なくとも約1重量%から15重量%もしくは20重量%までもの変化に富むことができ、選択された特定の投与方式に従って、主に流体量、粘度などに基づいて選択される。たとえば、非経口注射のための典型的医薬品組成物は、1mLの無菌緩衝化水、および50mgの抗体を含有するように構成することができる。静脈内注射のための典型的組成物は、250mLの無菌リンゲル液、および150mgの抗体を含有するように構成することができる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際的方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、さらに詳細には、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa. (1980年)に記載されている。有効投与量のCD37特異的結合分子(ヒト化CD37特異的結合分子を含む)は、投与あたり体重kgあたり0.01mgから1000mgの範囲内である。
【0125】
医薬品組成物は、無菌注射用水、油性懸濁物、分散液、または無菌注射用溶液もしくは分散液の即時調製のための無菌粉末の形態でもよい。懸濁物は、上に記載されている適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する公知の技術に従って処方してよい。無菌注射用調製物はまた、非毒性非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁物であり得、たとえば、1、3−ブタンジオールにおける溶液としてでもあり得る。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、等)、その適切な混合物、植物油、リンゲル液および等張食塩水を含有する溶剤または分散媒であってよい。さらに、無菌不揮発性油は、溶剤または懸濁化媒体として習慣的に用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意のブランド不揮発性油を用いてよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射液の調製に使用されている。
【0126】
あらゆる場合に、形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性がなければならない。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。流動性は、製造および貯蔵の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤または抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、または同種のものにより実施することができる。多くの場合、等張剤、たとえば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬物、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用により実施することができる。
【0127】
投与に有用な組成物は、その効能を増加させる取り込みまたは吸収促進剤と一緒に処方してもよい。そのような促進剤には、たとえば、サリチル酸塩、グリココール酸塩/リノール酸塩、グリコール酸塩(glycholate)、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプリン酸塩などが挙げられる。たとえば、Fix(J. Pharm. Sci.、85巻:1282〜1285頁、1996年)ならびにOliyaiおよびStella(Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、32巻:521〜544頁、1993年)を参照されたい。
【0128】
さらに、本開示において使用するために企図されている組成物の親水性および疎水性の特性は均衡がとれており、それによってインビトロ使用および特にインビボ使用でその有用性を増強するが、そのような均衡を欠く他の組成物は、有用性が実質的に低くなる。具体的には、本開示において使用するために企図されている組成物は、身体内での吸収およびバイオアベイラビリティを可能にする適度の可溶性を水媒体において有するが、化合物に細胞膜を横切って推定作用部位まで移動させる程度の可溶性も脂質中で有している。したがって、企図されている抗体組成物は、それを標的抗原活性部位にまで送達することができる場合に最大限に効果的である。
【0129】
一態様では、本開示の方法には、CD37特異的結合分子組成物の投与工程が含まれる。ある種の実施形態では、化合物の組合せは、同時に、同一の薬学的に許容可能な担体中で一緒に、または別々に(しかし、同時に)投与してもよい。他の実施形態では、CD37免疫治療薬(すなわち、CD37特異的結合分子)および二機能性化学療法薬は、任意の順序で任意の組み合わせで、順次に投与することができる。
【0130】
結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物は、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、吸入噴霧により、経膣的に、直腸的に、もしくは脳内注射により、またはその任意の組合せにより投与してよい。一実施形態では、CD37特異的結合分子と二機能性化学療法薬の両方は、同時にまたは順次、非経口的に投与される。用語非経口的は、本明細書で使用されるように、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、嚢内注射、または注入法が含まれる。静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射、乳房内注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、眼球後方注射、肺内注射および/または特定部位での外科的移植による投与も同様に企図されている。一般的に、組成物には、レシピエントにとり有害になるおそれのある発熱物質ならびに他の不純物が本質的にない。注射、特に静脈内注射が好ましい。
【0131】
一実施形態では、部位への直接注入による処置かまたは処方物を内部的に送達することができる持続送達もしくは徐放機構を介した処置を必要とするがんまたは罹患組織部位で、投与は実施される。たとえば、組成物(たとえば、可溶性ポリペプチド、抗体、または小分子)の持続送達が可能な生分解性ミクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生分解性ポリマー構造を、がん近くに移植される本開示の処方物に含むことができる。
【0132】
治療組成物はまた、患者の複数部位に送達してもよい。複数回投与を同時に与えてもよいし、ある期間にわたって投与してもよい。ある種の場合には、治療組成物の連続流を提供するのが有益である。追加の治療は、定期的に、たとえば、毎時間、毎日、毎週または毎月施してもよい。
【0133】
本開示の結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物は、1つまたは2つ以上の結合分子、二機能性化学療法薬、またはその任意の組合せを含んでいてよい。追加の治療薬と併用した結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物の投与も本開示では企図されている。本開示で企図されている追加の治療薬は、下の段落に収載されている。
【0134】
追加の治療薬は、B細胞関連分子でよい。本開示により企図されている他のB細胞関連分子には、CD37ではないB細胞表面分子に結合する結合分子が含まれる。B細胞関連分子には、CD19(Bリンパ球抗原CD19;Bリンパ球表面抗原B4、またはLeu−12とも呼ばれる)、CD20、CD21、CD22(B細胞受容体CD22;Leu−14、Bリンパ球細胞接着分子、またはBL−CAMとも呼ばれる)、CD23、CD40(B細胞表面抗原CD40;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5、CD40L受容体、またはBp50とも呼ばれる)、CD80(Tリンパ球活性化抗原CD80;活性化B7−1抗原、B7、B7−1、またはBB1とも呼ばれる)、CD86(Tリンパ球活性化抗原CD86;活性化B7−2抗原、B70、FUN−1、またはBU63とも呼ばれる)、CD137(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9とも呼ばれる)、CD152(細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4またはCTLA−4とも呼ばれる)、L6(腫瘍関連抗原L6;膜貫通型4スーパーファミリーメンバー1、膜成分表面マーカー1、またはM3S1とも呼ばれる)、CD30(リンパ球活性化抗原CD30;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー8、CD30L受容体、またはKi−1とも呼ばれる)、CD50(細胞間接着分子−3(ICAM3)、またはICAM−Rとも呼ばれる)、CD54(細胞間接着分子−1(ICAM1)、または主要群ライノウイルス(Major group rhinovirus)受容体とも呼ばれる)、B7−H1(活性化T細胞、B細胞、および骨髄性細胞により発現される免疫抑制受容体のリガンド;PD−L1とも呼ばれる;Dong、ら、「B7−H1, a third member of the B7 family, co−stimulates T−cell proliferation and interleukin−10 secretion」、Nat. Med.、5巻:1365〜1369頁(1999年)参照)、CD134(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4、OX40、OX40L受容体、ACT35抗原、またはTAX転写的に活性化された糖タンパク質1受容体とも呼ばれる)、41BB(4−1BBリガンド受容体、T細胞抗原4−1BB、またはT細胞抗原ILA)、CD153(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー8、CD30リガンド、またはCD30−Lとも呼ばれる)、CD154(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー5、TNF関連活性化タンパク質、TRAP、またはT細胞抗原Gp39とも呼ばれる)、Toll受容体、または同類のものが挙げられる。
【0135】
追加の治療薬として企図されている化学療法薬の例には、ナイトロジェンマスタード(たとえば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシル)、ニトロソ尿素(たとえば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(メチル−CCNU))、エチレンイミンおよびメチルメラミン(たとえば、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホラミド(チオテパ)、およびヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン))、アルキルスルホン酸(たとえば、ブスルファン)、ならびにトリアジン(たとえば、ダカルバジン(dacabazine)(DTIC))などのアルキル化剤;葉酸類似物(たとえば、メトトレキセート、トリメトレキセート、およびペメトレキセド(マルチ標的葉酸拮抗薬))、ピリミジン類似物(たとえば、5−フルオロウラシル(5−FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5−アザシチジン、および2,2’−ジフルオロデオキシシチジン)、ならびにプリン類似物(たとえば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2’−デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2−CdA))などの代謝拮抗薬;カンプトテシン(CPT)、トポテカン、およびイリノテカンなどのI型トポイソメラーゼインヒビター;エピポドフィロトキシン(たとえば、エトポシドおよびテニポシド)、ならびにビンカアルカロイド(たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然物;アクチノマイシンD、ドキソルビシン、およびブレオマイシンなどの抗腫瘍抗生物質;5−ブロモデオキシウリジン(5−bromodeozyuridine)、5−ヨードデオキシウリジン、およびブロモデオキシシチジンなどの放射線増感剤;シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなどの白金錯化合物;ヒドロキシ尿素などの置換尿素;ならびにN−メチルヒドラジン(MIH)およびプロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0136】
自己免疫疾患の処置のために本開示により企図されている追加の治療薬は、免疫抑制剤と呼ばれ、これは処置を受けている個体の免疫系を抑制または遮蔽するよう作用する。免疫抑制剤には、たとえば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、グルココルチコイド、関節炎の処置のための疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、または生物的反応修飾物質が挙げられる。DMARD説明書中の組成物は、RAに加えて他の多くの自己免疫疾患の処置にも有用である。
【0137】
例示的NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、VioxxおよびCelebrexなどのCox−2インヒビター、ならびにシアリレート(sialylate)からなる群より選択される。例示的鎮痛薬は、アセトアミノフェン、オキシコドン、塩酸プロポキシフェン(proporxyphene)のトラマドールからなる群より選択される。例示的グルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンまたはプレドニゾンからなる群より選択される。例示的生物的反応修飾物質には、細胞表面マーカー(たとえば、CD4、CD5、など)に向けられた分子、TNFアンタゴニスト(たとえば、エタネルセプト(Enbrel)、アダリムマブ(Humira)およびインフリキシマブ(Remicade))などのサイトカインインヒビター、ケモカインインヒビターならびに接着分子インヒビターが挙げられる。生物的反応修飾物質には、モノクローナル抗体および組換え型の分子も挙げられる。例示的DMARDには、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシシクロロキン、Gold(経口(オーラノフィン)および筋肉内)およびミノサイクリンが挙げられる。
【0138】
結合分子組成物および追加の治療薬は、同一処方物中で同時に与えてよいことが企図されている。または、薬物は別々の処方物で、しかし同時に投与され、ここで同時にとは、薬物が、たとえば、互いに数分、数時間または数日以内に与えられることである。
【0139】
別の態様では、追加の治療薬は、結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物の投与に先立って投与される。事前投与とは、結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物を用いた処置に先立つこと数分、数時間、または1週間の範囲内で追加の治療薬を投与することである。追加の治療薬は、結合分子組成物の投与後に投与されることがさらに企図されている。後投与は、結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物の処置または投与の数分、数時間または数週間より後での投与を表すことを意味する。
【0140】
結合分子が追加の治療薬と組み合わせて投与され、追加の治療薬がサイトカインもしくは増殖因子または化学療法薬である場合、投与は、放射線治療薬または放射線治療の使用を含んでもよいことがさらに企図されている。抗体組成物と組み合わせて施される放射線治療は、処置を行っている医師により決められた通りに、がんの処置を受けている患者に典型的に与えられる線量で施される。
【0141】
これらの組成物は、単回用量または複数回用量で投与してよい。先ず動物モデル、次に臨床試験における標準用量応答実験により、特定の病態および患者集団に対する最適投与量が明らかにされる。
【0142】
結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物の投与により、単回用量処置後B細胞集団は少なくとも20%低減する。一実施形態では、B細胞集団は、少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。B細胞低減は、B細胞絶対数の正常範囲の下限未満への低減として定義される。B細胞回復は、B細胞絶対数の、たとえば、被験体の基線値または正常範囲の70%、80%、90%までの回復として定義される。さらに、本開示の結合分子、二機能性化学療法薬、または組合せ組成物の投与により、処置されている疾患または障害に目的の臨床効果が生じる。
【0143】
一部の実施形態では、異常なB細胞活性に付随する疾患に罹り、本開示に従った処置を受けている患者は、当該分野では周知であり一般的に使用される下記の臨床基準に基づいて、処置に対する全体的で有益な応答を実証する可能性がある。
【0144】
たとえば、慢性関節リウマチに冒された患者では、投与は患者の状態を臨床的に有意である程度に改善し得[たとえば、米国リウマチ学会予備的改善検出(American College of Rheumatology Preliminary Detection of Improvement(ACR20))を達成する]、ならびに/または、圧痛のある関節腫脹の20%改善および残りのACR基準の3/5での20%改善をもたらす可能性がある(Felsonら、Arthritis Rheum. 1995年、38巻:727〜35頁)。CD37特異的およびCD20特異的結合分子の投与後のRA患者における改善の生物学的基準には、タンパク質またはRNAレベルを介して測定されるサイトカインレベルの変化の測定が含まれる。対象のサイトカインには、TNF−α、IL−1、インターフェロン、BlyおよびAPRILが挙げられるが、これらに限定されるものではない。サイトカイン変化は、B細胞数の低減または活性化T細胞の低減による可能性がある。RA患者では、骨代謝回転(骨吸収または浸食)に関連するマーカーは、CD20特異的結合分子の投与前および投与後に測定される。関連マーカーには、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、コラーゲン分解断片、ヒドロキシプロリン、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ、およびRANKリガンド(RANKL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。RA改善に関連する他の読み出し(readout)には、C反応性タンパク質(CRP)レベル、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子、CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体の測定、ならびにフローサイトメトリーを介した全身B細胞レベルおよびリンパ球数の評価が挙げられる。滑膜生検からの滑膜中のB細胞レベルの評価、RANKLおよび他の骨因子ならびにサイトカイン(上記のもの)のレベルの評価を含む、特定因子をRA患者の滑膜から測定することもできる。
【0145】
関連する態様では、他の疾患に対する組合せ投与の効果は、当該分野で公知の基準に従って測定してもよい。たとえば、本発明に従って処置されたクローン病患者は、寛解が150ユニットである、クローン病活動性指数(Crohn’s Disease Activity Index(CDAI))の改善を約50から約70ユニットの範囲で達成することが企図されている(Simonisら、Scand. J Gastroent. 1998年、33巻:283〜8頁)。150または200のスコアーは正常だと見なされ、450のスコアーは重症スコアーと見なされる。CD37特異的およびCD20特異的結合分子の投与により、炎症性腸疾患に冒された個体において核周辺型抗好中球抗体(pANCA)および抗出芽酵母抗体(anti−Saccharomyces cervisiae)(ASCA)が低減することがさらに望ましい。
【0146】
本開示に従って処置される成人および若年筋炎患者は、測定されるコアセットの6のうちの3が約20%改善し、コア測定値の多くて2が約25%悪化するなどの、評価のコアセットにおける改善を達成する可能性があることがさらに企図されている(Riderら、Arthritis Rheum. 2004年、50巻:2281〜90頁参照)。
【0147】
本開示に従って処置されるSLE患者は、全身性ループス活動性基準(Systemic Lupus Activity Measure(SLAM))またはSLE疾患活動性指数(SLE Disease Activity Index(SLEDAI))スコアーの少なくとも1ポイントの改善を達成する可能性があることがさらに企図されている(Gladmanら、J Rheumatol 1994年、21巻:1468〜71頁)(Tanら、Arthritis Rheum. 1982年、25巻:1271〜7頁)。5より大きいSLAMスコアーまたは2より大きいSLEDAIスコアーは、臨床的活動性疾患と見なされる。処置に対する応答は、2つの疾患活動性基準(SLE疾患活動性指数[SLEDAI]および全身性ループス活動性基準)ならびに2つの生活の質基準(患者の全体的評価およびクルップ疲労強度スケール(Krupp Fatigue Severity Scale))についての、改善または安定化として定義してよい(Petriら、Arthritis Rheum. 2004年、50巻:2858〜68頁)。SLE患者への結合分子の投与により、抗二本鎖DNA抗体が低減することがさらに企図されている。または、英国諸島ループス評価群基準(British Isles Lupus Assessment Group Criteria(BILAG))を使用して改善を評価してもよい。
【0148】
本開示に従って処置される多発性硬化症患者は、Kurtzke拡大身体障害状態スケール(Kurtzke Expanded Disability status scale(EDSS))(Kurtzke, F.、Neurology 1983年、33巻:1444〜52頁)に基づく少なくとも0.5の臨床スコアーの改善、またはKurtzkeスケール(Rudickら、Neurology 1997年、49巻:358〜63頁)に基づく少なくとも1.0の臨床的疾患の悪化の遅延を達成する可能性があることがさらに企図されている。
【0149】
本開示に従って処置されるIIMに罹っている患者は、特発性炎症性筋障害基準(Idopathic Inflammatory Myopathy Criteria(IIMC))評価(Miller, F.、上記を参照)に記載されている5つの基準のうちの少なくとも1つの低減を達成する可能性があることがさらに企図されている。IIM患者への投与により、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドラーゼ、C反応性タンパク質、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、抗核自己抗体(ANA)、筋炎特異的抗体(MSA)、および抽出可能な核内抗原に対する抗体からなる群より選択されるIIM関連因子が低減する可能性があることがさらに企図されている。または、患者は、Riderら、Arthritis Rheum.、50巻(7号):2281〜2290頁(2004年)に記載されている6つの基準のうちの3つを満たし、悪化するのは2つ以下の基準だけである。
【0150】
一部の実施形態では、B細胞がんに罹り本開示に従った処置を受けている患者は、当該分野では周知であり一般的に使用され、下に記載されている、腫瘍サイズの低減、腫瘍数の低減および/または疾患症状の改善などの臨床基準に基づいて、処置に対する全体的で有益な応答を実証する可能性がある。
【0151】
例示的臨床基準は米国立がん研究所(NCI)から提供されており、これはがんの種類の一部を、「無痛性(indolent)」リンパ腫および「侵襲性(aggressive)」リンパ腫という臨床範疇に分けている。無痛性リンパ腫としては、細胞学的「等級」に分類される、濾胞細胞リンパ腫、びまん性小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)、リンパ形質細胞性/ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、辺縁層リンパ腫および毛様細胞性白血病が挙げられる。侵襲性リンパ腫としては、びまん性混合および大細胞型リンパ腫、バーキットリンパ腫/びまん性非切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫ならびにAIDS関連リンパ腫が挙げられる。一部の場合には、国際予後指数(International Prognostic Index(IPI))が、侵襲性および濾胞性リンパ腫の場合に使用される。IPIにおいて考慮すべき要因には、年齢(60未満の年齢対60を超える年齢)、血清乳酸デヒドロゲナーゼ(正常レベル対高レベル)、パフォーマンスステータス(0または1対2〜4)(下の定義を参照)、病期(IまたはII対IIIまたはIV)、および結節外部位関与(0または1対2〜4)が挙げられる。危険要因が2つ以上の患者は、5年間の無再発および全生存の見込みが50%未満である。
【0152】
侵襲性IPIにおけるパフォーマンスステータスは、以下の通りに定義されている。等級説明:0 完全な活動ができ、疾患前の全動作を制限されることなく実行することができる:1 身体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能であり軽度のまたは座って行える性質の作業、たとえば、軽度の家事、事務作業を行うことができる;2 起きている時間の最大および約50%超は、歩行可能であり身の回りのことはすべて可能であるが、どんな作業活動も実行することができない;3 身の回りのことは限られたことしかできず、起きている時間の50%超はベッドまたは椅子にとどまっている;4 完全な身体障害であり、身の回りのことは何もできず、完全にベッドまたは椅子にとどまっている;5 死亡(The International Non−Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project. A predictive model for aggressive non−Hodgkin’s lymphoma. N. Engl. J. Med. 329巻:987〜94頁、1993年参照)。
【0153】
典型的に、リンパ腫の等級は、低悪性度のリンパ腫は通常、結節性疾患として現れ、多くの場合に無痛性または進行が遅いという基準を使用して臨床的に評価される。中悪性度および高悪性度の疾患は、通常、はるかに侵襲性の疾患として現れ、大きな節外性の巨大腫瘍がある。
【0154】
Ann Arbor分類法も使用して、腫瘍、特に非ホジキンスリンパ腫の進行を測定する。この方法では、成人NHLの第I、第II、第IIIおよび第IV段階を、患者が明確な全身性症状を有する(B)かまたは前記症状を有さない(A)かに応じてAおよびB範疇に分類することができる。B指定は以下の症状を有する患者に与えられる:診断前の6カ月間に10%を超える体重が原因不明で低減、体温が38℃を超える原因不明の熱、および夜の大量発汗。段階の定義は以下の通りである:第I段階 単一リンパ節領域の関与または単一のリンパ節外器官もしくは部位の限局的関与。第II段階 横隔膜の同一側の2つ以上のリンパ節領域の関与、または単一の関連リンパ節外器官もしくは部位および、横隔膜の同一側の他のリンパ節領域と共にまたはそれなしでのその局所リンパ節の限局的関与。第III段階 おそらくリンパ節外器官もしくは部位の限局的関与、脾臓の関与、または両方の関与を伴う、横隔膜の両側のリンパ節領域の関与。第IV段階 関連するリンパ節関与と共にまたはそれなしでの1つまたは複数のリンパ節外部位の播種性(多発性)関与、または遠隔(非局所的)節関与を伴なう孤立したリンパ節外器官関与。さらなる詳細は、The International Non−Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project: A predictive model for aggressive non−Hodgkin’s lymphoma, New England J. Med. (1993年)329巻:987〜994頁を参照されたい。
【0155】
一態様では、本開示に従った方法の治療効果は、応答のレベルにより決定され、たとえば、部分応答は、初めのサイズの2分の1未満までの腫瘍の低減として定義される。完全応答は、臨床的または放射線学的評価により裏付けられる疾患の全消失として定義される。一実施形態では、本発明に従って処置を受けている個体は、処置に対する少なくとも部分応答を実証する。
【0156】
国立がん研究所と連携して開発されたNHLを評価するためのCheson基準(Chesonら、J Clin Oncol. 1999年、17巻:1244頁; Grillo−Lopezら、 Ann Oncol. 2000年、11巻:399〜408頁)に従えば、疾患および疾患関連症状の検出可能な臨床的および放射線学的証拠がすべて完全消失し、リンパ節がすべて正常サイズに戻り、脾臓のサイズが退縮し、ならびに骨髄からリンパ腫がなくなっているときに、完全応答が得られる。
【0157】
患者が疾患の完全消失を示し、脾臓のサイズが退縮しているが、リンパ節が75%超退縮しており、骨髄が明確でないときは、未確認の完全応答が得られる。未確認の完全応答は、部分応答の基準を満たしさらに上回っている。全体的応答は、全体的腫瘍負荷の少なくとも50%の低減として定義される。
【0158】
類似の基準が、他の様々な形態のがんまたは過剰増殖性疾患用に開発されており、当業者であれば容易に利用することができる。たとえば、CLLの評価基準を記載しているChesonら、Clin Adv Hematol Oncol. 2006年、4巻:4〜5頁、AMLの基準を記載しているChesonら、J Clin Oncol. 2003年、21巻:4642〜9頁、骨髄異形成症候群の基準を記載しているChesonら、Blood 2000年、96巻:3671〜4頁を参照されたい。
【0159】
別の態様では、B細胞がんを有する患者における治療応答は、治療を受けていない患者と比べて、疾患進行の緩徐化が顕著である。緩徐な疾患進行または上の要因のうちのいずれの測定も、骨スキャン、CTスキャン、ガリウムスキャン、リンパ管造影図(lymphangiogram)、MRI、PETスキャン、超音波などを含む当該分野で周知の技術を使用して実施してよい。
【0160】
追加の態様として、本開示は、本開示の方法に有用な1つまたは複数の化合物または組成物を含み、本開示の方法を実行するためのその使用を促進する形でパッケージされたキットを含む。非常に単純な実施形態では、そのようなキットは、本開示の方法を実行するための化合物または組成物の使用を説明するラベルが容器に添付されているかまたは包装に含まれている、密封瓶または器などの容器にパッケージされた本開示の方法の実行に有用な本明細書に記載されている化合物または組成物を含む。好ましくは、化合物または組成物は、単位投与量の形態でパッケージされている。キットは、好ましい投与経路に従って組成物を投与するのに、またはスクリーニングアッセイを実行するのに適しているデバイスをさらに含んでいてよい。キットは、本開示の方法での結合分子組成物の使用を説明するラベルを含んでいてよい。
【実施例】
【0161】
(実施例)
(実施例1)
(CD37特異的結合分子)
様々なCD37特異的結合タンパク質は、表2〜4に提供される例示的成分を用いて作製することができる。たとえば、抗体またはSMIP分子を作製することができ、これらの分子はキメラ、ヒト化、またはヒトでも可能である。さらに具体的には、好ましい軽鎖可変領域CDRは、配列番号236〜240および247〜254に見られ、好ましい重鎖可変ドメインCDRは、配列番号241〜245および247〜254を含む。さらに、好ましい軽鎖可変領域および重鎖可変領域を、それぞれ配列番号236〜240および配列番号241〜245において提供している。好ましい軽鎖可変領域および重鎖可変領域を、配列番号247〜254においても見出し得る。好ましい可変ドメインリンカーは、配列番号225〜229を含み、好ましいヒンジは配列番号230〜235を含む。
【0162】
特に好ましい実施形態はCAS−024[G28−1 VH(M99F、Y102S)−VL(T25A)scFv(SSC−P)H WCH2 WCH3]であり、これはヒトCD37に結合する組換え483アミノ酸一本鎖融合タンパク質である。結合ドメインは、重鎖CDR3および軽鎖CDR1に変異を含む、G28−1抗体可変領域CDRに基づくヒト化scFvを含む。可変ドメインを、(GS)(25アミノ酸)配列(配列番号229)により連結しており、この配列を3アミノ酸ジャンクション(GDQ)を介して改変された上部およびコアIgG1ヒンジ領域のアミノ末端に連結している(これらのヒンジ領域に見出される3つのシステインのうちの最初の2つはそれぞれセリンで置換している)。ヒンジのカルボキシ末端を、IgGのCH2およびCH3ドメインを含むエフェクタードメインに融合している。CAS−024のアミノ酸配列を、配列番号253に記載している。図1は、マウスG28.1配列およびCAS−024配列の重鎖可変領域アミノ酸配列アライメントおよび軽鎖可変領域アミノ酸配列アライメントに加えて、コンセンサスアイデンティティー配列を示している。
【0163】
【表1−1】

【0164】
【表1−2】

記載事項は、上部およびコア領域内に見出される第1のシステインのみに変異を有するかまたは第1および第2のシステインに変異を有するIgG1ヒンジに関する略字を表している。唯一の例外は配列番号84であり、これは使用される(基本的に、末端にプロリンを有するコアIgG1配列のみ)完全長ヒンジアミノ酸(CPPCP、配列番号230)配列を表している。
CDR変異ナンバリングはカバットナンバリングスキームに基づいている。
【0165】
SMIP分子または抗体などの、CD37特異的結合分子に使用してよい追加のヒンジ領域を以下の表に与える。
【0166】
【表2】

SMIP分子または抗体などの、CD37特異的結合分子に使用してよい追加のフレームワーク領域を以下の表に与える。
【0167】
【表3A】

【0168】
【表3B】

CD37特異的SMIP分子の好ましい例示的成分部分(発現および搬出のために使用されるリーダー配列、しかしこの配列は細胞から搬出されると成熟融合タンパク質から取り除かれる;軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとを連結させてscFv結合ドメインを形成するのに使用されるリンカー配列;scFv結合ドメインをエフェクタードメインに連結させるのに使用されるヒンジ;ならびにエフェクタードメインを含む)、ならびに、好ましいCAS−024融合タンパク質を含むある種のCD37特異的SMIP分子を、表4、
【0169】
【表4−1】

【0170】
【表4−2】

【0171】
【表4−3】

【0172】
【表4−4】

【0173】
【表4−5】

に与える。
【0174】
(実施例2)
(CAS−024および他のCD37特異的結合タンパク質の発現)
CAS−024および他のCD37特異的結合SMIP分子を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)哺乳動物細胞発現系にクローン化した。SMIP分子を産生するトランスフェクトされたCHO細胞を振盪フラスコで培養し、回収された細胞培養上清をOctec Q プロテインAセンサーを使用して力価測定した。
【0175】
CAS−024構築物(25アミノ酸可変ドメインリンカーを有するVHVLフォーマット)が、その他のヒト化抗CD37SMIP分子(大部分が、15アミノ酸可変ドメインリンカーを有するVLVHフォーマット)の最大約10倍の予想外に優れた発現レベルを有していたことを、表5、
【0176】
【表5】

は示している。実際、完全ヒト化VLVH構築物はすべて、いずれかの方向のマウスヒトハイブリッド分子同様、発現が不十分であった(データは示されていない)(実施例5参照)。
【0177】
(実施例3)
(CAS−024および他のCD37特異的結合タンパク質の精製およびサイズ排除クロマトグラフィー)
さらに多くのタンパク質を作製するために、CAS−024および他のいくつかのCD37特異的結合SMIP分子をコードする核酸を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)哺乳動物細胞発現系にクローン化した。SMIP分子を産生するトランスフェクトされたCHO細胞を振盪フラスコで培養した。
【0178】
CD37特異的結合SMIP分子はすべて、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによりCHO培養上清から精製した。50mLのrProteinA FFセファロースカラム(GE Healthcare)を、dPBSを用いて1.5カラム容量(CV)にて5.0ml/分(150cm/時)で平衡化した。培養上清を、AKTA Explorer 100 Air(GE Healthcare)を使用して、流速1.7ml/分でrProteinA Sepharose FFカラムに充填し、組換えSMIP分子を捕獲した。カラムを、5カラム容量(CV)にてdPBSで、次に1.0M NaCl、20mM リン酸ナトリウム、pH6.0で、次に25mM NaCl、25mM NaOAc、pH5.0で洗浄した。組換えCD37特異的結合分子を、100mMグリシン、pH3.5を用いてカラムから溶出させた。溶出産物の画分(10mL)を回収し、次に溶出容量の20%の0.5M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH6.0を用いてpH5.0に戻した。この溶出産物を、約25mg/mLタンパク質まで濃縮し、濾過で無菌化した。
【0179】
この濃縮し無菌化したタンパク質を、GPCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりさらに精製し、より高分子量の凝集体からSMIP(二量体)分子を分離した。1LのSuperdex 200 FFセファロースを含有するXK 50/100カラム(GE Healthcare)を、dPBSを用いて1.5カラム容量(CV)にて12.6ml/分(38cm/時)で平衡化した。最大容量の54ml(3% CV)の試料をカラムに加えた。カラムは12.6ml/分で流れ続け、溶出タンパク質を40mL画分に分画した。各画分を、分析HPLCを使用して産物品質について分析し、溶出画分を、対象(非凝集化)の約95%タンパク質を超えるまでプールした。こうして得られたプールを、0.22μmの濾過で無菌化し、濃縮し、次に20mM リン酸ナトリウム、240mMショ糖、pH6.0を用いて処方した。
【0180】
CAS−001(配列番号6)、CAS−002(配列番号48)、CAS−003(配列番号52)、およびCAS−024(配列番号253)について対象のタンパク質(POI)を含有するピークを示すSECトレースをそれぞれ、図2A〜2Dに示す。CAS−024ピークは、CAS−001、CAS−002、およびCAS−003試料(より広く非対称)よりも狭く対称的である。CAS−006(キメラ)分子は、CAS−024に類似する鋭いピークを生み出す。CAS−001、CAS−002、およびCAS−003試料はすべて、わずかにテーリングする肩(shoulder)を有しており、これをまとめれば、POI領域の約35%を占める。この「肩」をPOIから分離するのは困難であり、おそらく、この「肩」は、誤って折り畳まれた配座異性体または分子の異種集団(たとえば、グリコシル化のレベルが異なっている)のいずれかを表している。これにより、CAS−024は発現がより良好であったことだけでなく、この構築物はまた分子のより均一な集団を産生することも示す。
【0181】
(実施例4)
(CAS−024による細胞結合は、他のCD37特異的結合タンパク質よりも意外にも優れている)
競合アッセイを使用して、Ramos細胞(バーキットリンパ腫由来のBリンパ芽球様細胞系統)上に見られるCD37に対する、種々の抗CD37特異的小モジュラー免疫医薬(SMIP)分子の結合親和性を比較した。SEC精製キメラ抗CD37 SMIP分子(CAS−006、配列番号247)を、FMAT Blue(登録商標)蛍光色素(Applied Biosystems)で標識し、精製無標識キメラ抗CD37 SMIP分子(正の対照)および精製無標識ヒト化抗CD37 SMIP試験分子と競合する標準として使用した。より高い親和性ほどより弱い蛍光シグナルとして表われ、FL1蛍光値を使用して競合曲線を生成した。手短に言えば、試薬FMAT Blue(登録商標)標識キメラ抗CD37 SMIP分子を、FACSブロッキング緩衝液中に2μg/mlまで希釈し、精製タンパク質試料(CAS−001(配列番号6)、CAS−002(配列番号48)、CAS−003(配列番号52)、およびCAS−024(配列番号253))を、50μg/mlから0.02μg/mlまでの範囲の濃度まで1対2で連続的に希釈した。Ramos細胞を1,000rpm、5分間で回収し、4×10細胞/10ml緩衝液でFACSブロッキング緩衝液中に再懸濁させた。黒96ウェルプレートの各ウェルに以下の、50μl試料、50μl FMAT Blue(登録商標)標識キメラ抗CD37 SMIP分子、および50μl Ramos細胞(4×10/ウェル)を添加した。プレートを室温で30分間インキュベートし、中程度の細胞サイズおよび低シグナルに対するゲートを有する8200 Cellular Detection System(Applied Biosystems)上で読み取った。
【0182】
CAS−024(25アミノ酸可変ドメインリンカーのあるVHVL scFvを有するヒト化抗CD37SMIP分子)は、CD37に対して親キメラ抗CD37 SMIP分子と同じ親和性を有し、一方で、逆VLVH構造およびより短い16アミノ酸可変ドメインリンカーを有するヒト化抗CD37 SMIP分子よりも、CD37に対して意外にも最大4倍の親和性を有することが、このFMAT競合アッセイにより明らかになった(図3参照)。最良の結合は、CAS−006またはCAS−024よりもまだ有意に少ないが、どんなCDR変異もないVLVH構築物(CAS−001)に見出された。しかし、CAS−001は一貫して発現が最低の構築物であり、精製分子の非均一集団を産生し、この構築物に関しても、CAS−024はCAS−001の1.5から2倍まで良好に結合した。
【0183】
この結果はまた、CAS−024の重鎖CDR3中のM99およびY102が変異されているために驚きであった。Y102位は一般に保存されており、この位置の変化だけで結合が低減または消滅すらすることを予想する。(たとえば、CAS−062(位置Y102で変異されている)は、検出可能であるが、CAS−001またはCAS−024と比べて結合がひどく低減しており、一方、CAS−063からCAS−067まではそれぞれ、位置M99またはD101に変異が付加されると、このアッセイにおいて結合活性が、かろうじて検出可能〜全く検出できない、になる、データは示していない)。したがって、CAS−024の構造は、驚くべきことに、キメラ分子のCAS−006と同程度に結合する分子を提供した。
【0184】
(実施例5)
(マウスヒトハイブリッドCD37特異的結合タンパク質と比べたCAS−024の発現および細胞結合)
CAS−024および他のCD37特異的結合SMIP分子を、組換えDNA技術により作製し、7日間HEK293細胞にトランスフェクトした。細胞培養上清を7日目に回収し、Octec Q プロテインAセンサーを使用して力価測定した。
【0185】
実施例2で見出された結果に類似して、ここで表6は、CAS−024(25アミノ酸可変ドメインリンカーを有するVHVLフォーマット)が、その他のヒト化またはマウスヒトハイブリッド抗CD37 SMIP分子の約5倍から約27倍良好に発現したことを示している。マウスヒトハイブリッド分子は、VHVLまたはVLVH方向とは無関係に十分発現しなかった。
【0186】
【表6】

実施例4に記載される競合アッセイを使用して、Ramos細胞へのCAS−024の結合と比べた、種々のマウスヒトハイブリッド抗CD37 SMIP分子の結合親和性を比較した。SEC精製キメラ抗CD37 SMIP分子(CAS−006、配列番号247)を、FMAT Blue(登録商標)蛍光色素(Applied Biosystems)で標識し、精製無標識キメラ抗CD37 SMIP分子(CAS−006、正の対照)および精製無標識ヒト化抗CD37 SMIP試験分子、すなわち、CAS−002(配列番号48)、CAS−003(配列番号52)、CAS−014(配列番号251)、CAS−017(配列番号252)およびCAS−024(配列番号253)と競合する標準として使用した。
【0187】
CAS−024(25アミノ酸リンカーのあるVHVLヒト化分子)は、CD37に対して親キメラ抗CD37 SMIP分子(CAS−006)と同じ親和性を有するが、CAS−002およびCAS−003(16アミノ酸リンカーのあるVLVHヒト化分子)はそれほどよくは結合しない(2分の1〜3分の1への低減を示した)ことを、このFMAT競合アッセイにより再び示した(図4A参照)。マウスヒトハイブリッド分子は、可変ドメイン方向(22アミノ酸リンカーのあるマウスVH−ヒト化VLまたは16アミノ酸リンカーのあるヒト化VL−マウスVH)とは無関係に、CAS−006およびCAS−024と同じ程度またはそれよりも良好にさえ(1.5から2倍)結合した(図4B参照)。変異のないマウスヒトハイブリッド分子は、方向とは無関係に、CAS−006と同じ程度またはそれよりも良好に結合すること、およびCDR変異のない完全ヒト化VLVH構築物は他のヒト化分子よりも良好に結合するが、それでもCAS−006またはCAS−024と比べると結合は低減していることを、これらのデータは明らかにしている。合わせると、この分子のCDR中に変異が無いほうが良好なバインダー(binder)になることを、これらのデータは示唆している。さらに、特定の順序(VLVHまたはVHVL)は、より長い可変ドメインリンカーが使用される場合でも、発現問題を解決しないと思われた(CAS−014参照)。したがって、親分子CAS−006に類似するCAS−024構造および特性のある分子を選択することは予測不可能であった。
【0188】
(実施例6)
(CAS−006および様々なCD37特異的抗体はCD37上の同一または重複しているエピトープに結合する)
CAS−006および前記の他のCD37特異的抗体が結合するCD37エピトープを同定するための実験を実施した。未結合体化MB371(番号555457)およびFITC結合体化MB371(番号555456)をBD Pharmingen(San Jose、CA)から、FITC結合体化BL14(番号0457)をImmunotech/Beckman Coulter(Fullerton、CA)から、FITC結合体化NMN46(番号RDI−CBL 136FT)および未結合体化NMN46(番号RDI−CBL 136)をRDI(Flanders、NJ)から、FITC結合体化IPO24(番号186−040)および未結合体化IPO24(番号186−020)をAncell Corporation(Bayport、MN)から、FITC結合体化HHI(番号3081)および未結合体化HH1(番号3080)をDiaTec.Com(Oslo、Norway)から、ならびにFITC結合体化WR17(YSRTMCA483F)および未結合体化WR17(YSRTMCA483S)をAccurate Chemical&Scientific(Westbury、NY)から入手した。CAS−006 SMIPタンパク質を、実施例2に記載の通りに作製した。
【0189】
CAS−006を、製造元の説明書に従って、Molecular Probes Fluororeporter FITC Labeling Kit(F6434)を使用して次の通りにFITCに結合体化した。すなわち、13.5mg/mLの対象のCAS−006タンパク質ピーク(POI)をPBSを用いて5mg/mLに調整した。1mg(200μl)を攪拌バー(stirbar)を用いてキットチューブに添加し、1M NaHCO(6N NaOHを用いてpH8.5に調整)を0.1Mの最終濃度まで添加した。50μl DMSOを370μgのFITCに添加し、添加するFITCのμlを決定する以下の式、すなわち[添加するFITC溶液のμl=5mg/mLタンパク質×0.2mL×389×100×目的のモル比/CAS−006の分子量(110,000)]を使用して、モル比15、20、30および40のFITC対タンパク質でチューブに添加した。
【0190】
反応液を光から遮断し、室温で75分間連続して攪拌した。反応液をキットに記載されている通りに調製したスピンカラムに添加し、1100gで5分間回転させてアジドを含むPBSに緩衝液を交換し、未結合体化FITCを除去した。280nMおよび494nMでのODを、2μlをNanodrop上に滴下して決定し、CAS−016の減衰係数を、開始未結合体化SMIP分子の希釈度を読み取ることによりこの機器にて実験的に決定した。結合体のそれぞれの濃度は4.25mg/mlであり、以下のFITC対タンパク質比を決定した。すなわち、15の比で2.7FITC/CAS−016、20の比で3.7FITC/CAS−016、30の比で4.4FITC/CAS−016、および40の比で5.1FITC/CAS−016であった。
【0191】
BSAを3mg/mLまで添加してタンパク質の安定化を助けた。各分画の結合を、Ramosでは100〜24,300×、ヒトPBMCでは3200〜25,600までの範囲の希釈度で評価した。すべて結合していたが、MR30比をさらに使用するために選択した。なぜならば、MR30比は使用される滴定範囲にわたりよく維持される高MFIを与え、この反応において結合活性がもっとも影響を受けないことを示しているからであった。
【0192】
FITC標識抗体結合体を、開始結合実験において10ng/mLから10μg/mLまで量を漸増(titrate)し、ブロッキング実験での最適使用量を決定した。選択したレベルは飽和量のすぐ下であり、その後に続くアッセイでは一定に保たれ、ブロッキング抗体のレベルを10倍の範囲を超えて増加させた。データを、ブロッキング抗体の濃度に対する最大結合の割合としてプロットし、そのため、レベルが高いほど効率的ブロッキングが低いことを示し、レベルが低いほど効率的なブロッキング活性が高いことを示す。試験をした抗体すべてが、無標識試薬なしで観察される最大結合のブロッキング活性を示した(図5)。
【0193】
次に、BJAB細胞(リンパ芽球様B細胞系統)を、MB371、BL14、NMN46、IPO24、HH1、WR17およびキメラCAS−006 SMIPを含む、抗CD37mAbの様々なクローンのパネルを用いて染色した。
【0194】
競合結合アッセイのために、2.5×10BJAB細胞を、暗所氷上で45分間、指示濃度(2.5、1.25、0.6または0.3μg/ml)の未結合体化抗CD37 MAbまたは染色培地の存在下で、1.25μg/mLのFITC結合体化抗CD37 mAbを有する染色培地(2%のマウス血清を含むPBS)中96ウェルV底プレートでインキュベートした。ブロッキング抗体およびFITC標識抗体結合体を、細胞の添加に先立って、反応物に添加した。次に、細胞をPBSを用いて2.5回洗浄し、1%パラホルムアルデヒド(USB、Cleveland、Ohio)で固定した。処理された細胞を、FACsCalibur装置およびCellQuestソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用するフローサイトメトリーにより分析した。
【0195】
FACクロスブロッキングアッセイでは、2.5×10BJAB細胞を、暗所室温で45分間、5μg/mL染色培地の未結合体化抗CD37 MAbの存在下で、染色培地(2%のマウス血清を含むPBS)中96ウェルV底プレートでインキュベートした。FITC結合体化抗CD37mAbを、最終濃度2μg/mlまで添加し、無標識試薬を3.3μg/mlまで希釈した。反応物を、暗所室温で45分間さらにインキュベートし、次にPBSを用いて2.5回洗浄し、最後にPBS中1%パラホルムアルデヒド(USB、Cleveland、Ohio)に固定した。細胞を、Cell Questソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用するFACsCalibur装置でのフローサイトメトリーにより分析した。
【0196】
細胞結合アッセイでは、細胞を、約4×10細胞/mLの濃度で、2%FBS(Gibco/Invitrogen)(染色培地)を含有するPBS(Gibco/Invitrogen、Grand Island NY)中に懸濁した。次に、細胞を蒔き、次に試験試料を、染色培地に希釈して、最終指定濃度まで1対1で添加した。反応物を氷上で45分間インキュベートした。試料を遠心分離し、PBSを用いて2回洗浄した。FITCヤギ抗ヒトIgG(CalTag、Burlingame CA)を最終希釈度1対50で添加し、氷上で45分間インキュベートした。試料を遠心分離し、PBSで洗浄し、次に200μlのPBS中1%パラホルムアルデヒド(USB、Cleveland、Ohio)に固定した。細胞を、Cell Questソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用するFACsCalibur装置でのフローサイトメトリーにより分析した。
【0197】
各抗体は、結合の用量依存的抑制を示し、このことは、試験したすべての分子が同一のまたは密接に関連したエピトープに結合することを示していた。結合抑制に対する異なった効力を、抗体ごとに観察した。CAS−006 SMIPは、試験した全分子の中でもっとも高いレベルのブロッキング活性を有しており、HH1は中間レベルのブロッキング活性を与え、WR17、IPO24はMB371よりも良好にブロックしたが、その他の2つの無標識分子ほど効果的ブロッキングを示さなかった(図5)。
【0198】
ブロッキング活性の分析に加えて、様々なCD37標的化抗体を、CD37受容体への結合をめぐって互いに競合するその能力について試験する類似の一連の実験を実施した。これらの実験からの結果は、試験されたすべての分子に対するブロッキング実験において得られた結果と同様に、様々なCD37標的化抗体およびCAS−006が同一のまたは密接に重複するエピトープを有することを示した。
【0199】
(実施例7)
(SCIDマウスでの樹立皮下ヒト腫瘍(DOHH2)異種移植モデルにおけるCAS−024の用量応答)
この実験の目的は、SCIDマウスでの樹立皮下ヒト腫瘍(DOHH2)異種移植モデルのモデルにおけるCAS−024を用いた処置に対する用量応答を調べることであった。DOHH2は、濾胞性リンパ腫に罹った患者由来のCD20CD37ヒトBリンパ芽球様細胞系統である(Kluin−Nelemansら、Leukemia 5巻:221頁、1991年)。したがって、DOHH2は非バーキットNHLに罹った患者由来であった。
【0200】
500万のDOHH2細胞を、6.5週齢で平均体重18.0±0.1g(14.6gから22.6gまでの範囲)の雌性CB−17SCIDマウス(Harlan、Somerville、NJ)の側腹部皮下に注射した。腫瘍播種の8日後に、触知可能な腫瘍が大部分のマウスで明白になっていた。担腫瘍マウスを、同等の平均腫瘍量を有する4群に分類した(n=群あたり14、群ごとに5マウスの2ケージおよび4マウスの1ケージ)。分類の日を0日目と定義した。腫瘍径を1対のカリパスを用いて決定し、腫瘍量を、式:V=1/2[長さ×(幅)]を使用して計算した。基線平均腫瘍量は228mm、中央値基線腫瘍サイズは224mm、範囲は179mmから284mmであった。
【0201】
【表7】

SCIDマウスの担腫瘍群は、200μgのhuIgG(負の対照)または200μg、100μg、30μg、10μgもしくは3μgのCAS−024を含有する0.2mLのPBSのIP注射を介して0日目、4日目、および8日目に処置を受けた。CAS−024の2つの最低用量溶液を、注射の日に調製して、もっとも希釈された溶液に担体タンパク質を添加する必要を回避した。薬物溶液は、下記の通りに色分けした(下の表8参照)。
【0202】
【表8】

huIgGおよびCAS−024を、mg/kgではなく、マウスあたりμgで送達したことに注意されたい。便宜上、近似のmg/kgを記載しており、これは、0日目のマウスの平均体重(18.0±0.1g)に基づいている。この実験での体重範囲は14.6gから22.6gまでであった。
【0203】
用量溶液を類似する容積で調製し、チューブの内容物を取り外し可能なラベルに記載した。マウスを処置も評価もしてもいない研究者が、各チューブ上にカラーコードを貼り、実験ノートにチューブ内容物のコードおよび種類を記述した。マウスを目視検査により毎日モニターした。体重を毎週決定し、腫瘍径を処置群を知らされていない(上を参照)観察者により週当たり少なくとも3回(M、W、F)決定した。腫瘍量を上記の通りに計算した。その腫瘍量が1500mm(または金曜日に1200mm)を超えた場合、マウスを安楽死させた。死亡は腫瘍プロトコルのエンドポイントではなく、他の方法で記載されていなければ、マウスの「生存」を、その腫瘍量が既定限度に達したためにマウスを安楽死させた時点により決定した(プロトコルは、(1)その腫瘍量が上記のパラメータを超えた場合、(2)腫瘍の潰瘍形成が起こった場合、(3)腫瘍がマウスの運動性を阻害した場合、および(4)体重低減が体重の20%を超えた場合に、マウスを安楽死させるよう指示した)。
【0204】
CAS−024 100μg処置群の1匹のマウスを、体重低減が20%を超えたために35日目に安楽死させた。このマウスはその時点で266mmの腫瘍量があり、生存率分析に関して打ち切りデータとして処理した(腫瘍増殖のせいで35日現在で安楽死させたのではない)。実験の終了時での無腫瘍出現率の計算のために、このマウスを、その腫瘍の増殖のせいで実験中に安楽死させられた1匹に分類した(その腫瘍はその死亡時には再び増殖していた)。他のマウスで死亡しているものは見つからず、体重低減、腫瘍潰瘍形成、または損なわれた運動性のせいで安楽死させたマウスはいなかった。処置群のいずれにおいても毒性の明白な徴候または体重低減を観察しなかった(データは示していない)。
【0205】
統計的分析はすべて、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。平均腫瘍量および平均相対的腫瘍量の有意差は、Dunn多重比較ポスト検定を用いるノンパラメトリックデータ用の一元配置ANOVA(クラスカルウォリス検定)を使用して決定した。それぞれのCAS−024処置群とhuIgG群との間の差を調べるために、群すべてを比較した。CAS−024群間のみでの比較では、huIgG群は除外した。さらに、高および中用量(200μg、100μg、および30μg)群は1つのデータセットとして分析し、中および低用量(30μg、10μg、および3μg)群は別のデータセットとして分析した。経時的なマウスの生存の有意差は、生存曲線を比較するためのログランク検定を用いるKaplan−Meier生存分析を使用して決定した。無腫瘍マウスの出現率の有意差は、フィッシャー正確検定を使用して決定した。p値<0.05を有意と見なした。
【0206】
CAS−024は、DOHH2腫瘍の増殖に対して用量依存的阻害効果を有していた。低(3μg)用量レジメン群を例外として、各CAS−024処置群の平均腫瘍量は、早くも5日目にはヒトIgG処置群の平均腫瘍量よりも有意に低く、12日目までずっと低いままであった。huIgG処置マウスを、開始12日目に安楽死させ、したがって、CAS−024処置群とhuIgG群との腫瘍量の比較はその後の時点では実施しなかった。用量応答に関しては、実験のどの時点でも2つの最高用量群の平均腫瘍量に有意差はなかった。対照的に、これら2つの群の平均腫瘍量は、12日目から16日目まで、3つの低用量群のそれぞれの平均腫瘍量とは有意に異なっていた(16日目は低用量群では最後の評価可能な時点であった)。同様に、30μgおよび10μg用量群のマウスの平均腫瘍量は、この同一期間にわたって、互いとも、低用量群とも異なっていた。
【0207】
huIgGを用いて処置したマウスの腫瘍は、急速に増殖し、この群のすべてのマウスを19日目までに安楽死させた。下の表9および10に要約されるように、CAS−024用量レジメンのいずれかで処置されたマウスの生存は、huIgG処置群に比べて長かった(すべての場合でp<0.0001)。用量応答に関しては、最高の(200μgおよび100μg)用量レジメンで処置したマウスの生存曲線に有意差はなかった(p=0.7091)。この群比較を例外として、各用量群の生存曲線と低用量レジメンで処置した群のそれぞれの生存曲線との間には有意差があった(p値は0.0132から<0.0001までの範囲であった)。
【0208】
【表9】

マウスを0日目、4日目、および8日目に、IP注射を介して指示されたタンパク質で処置した。数字は1日当たりに注射されたタンパク質の量(μg)を示す。
マウスの「生存」は、腫瘍増殖のためにマウスを安楽死させた日により決定した。CAS−024 100μg用量群中の1匹のマウスは体重低減が20%を超えたために35日目に安楽死させた。このマウスはその時点で腫瘍量が266mmであり、Kaplan Meier分析に関して打ち切りデータとして処理した(腫瘍量は35日目までに既定限度に達してはいなかった)。他のマウスで、既定限度に達したその腫瘍量以外の理由で安楽死させたマウスはいなかった。
「無腫瘍」マウスは、触知可能なSC腫瘍を有していなかった。腫瘍細胞がないことを、組織学により確証しなかった。実験は61日目に終了した。
各群を、HuIgG処置対照群と比較した。
生存時間の中央値は、観察期間の終了時に50%を超えるマウスが生存しているときは、不明確である。
太字の値は、指示群の生存曲線がHuIgG対照の生存曲線とは有意に異なることを示している(それぞれの場合で、p<0.0001、ログランク検定)。
太字の値は、huIgG処置対照群とは有意に異なっている。
1匹のマウスを35日目に体重低減が20%を超えたために安楽死させた。このマウスはその時点で腫瘍量が266mmであり、Kaplan Meier分析に関して打ち切りデータとして処理した。
【0209】
【表10】

群に関する情報は表7の説明文を参照されたい。
p値<0.05は強調のために太字になっている。
【0210】
huIgG処置群および2つの最低(10μgおよび3μg)CAS−024用量群のマウスをすべて、その腫瘍増殖のために安楽死させた。対照的に、200μgまたは100μgのCAS−024を用いて処置されたマウス群の大部分の腫瘍が、触知可能な腫瘍が存在しない点にまで後退した。実験の終了時までに、2つの最高用量群のそれぞれのマウスの11/14(79%)および30μg用量群のマウスの5/14(36%)が無腫瘍のままであった(それぞれ、p<0.0001および0.0407対huIgG群)。
【0211】
したがって、CAS−024は、SCIDマウスの樹立皮下ヒト腫瘍(DOHH2)異種移植片の増殖に対して用量依存的抑制効果を示した。2つの最高用量レジメン(IP注射あたり100μgまたは200μg;累積用量300μgまたは600μgで、これはそれぞれ、約16.7mg/kgまたは33mg/kgに相当する)は類似の抑制効果があり、腫瘍増殖の抑制、生存の延長、および完全な腫瘍後退の誘導に関して、試験されたレジメンの中でもっとも有効であった。
【0212】
(実施例8)
(SCIDマウスの樹立ヒト腫瘍(DOHH2)異種移植モデルにおける単一薬物としてのCAS−024およびRituxan(登録商標)の効能)
本実験の目的は、SCIDマウスの樹立ヒト腫瘍(DOHH2)異種移植モデルにおける単一薬物としてのCAS−024およびRituxanの効能を調べることであった。上に記載する通り、DOHH2は、濾胞性リンパ腫に罹った患者由来のCD20CD37ヒトBリンパ芽球様細胞系統である。
【0213】
500万のDOHH2細胞を、6.5週齢の雌性CB−17SCIDマウス(Harlan、Somerville、NJ)の側腹部に皮下注射した。腫瘍播種の8日後に、触知可能な腫瘍が大多数のマウスで明白になっていた。担腫瘍マウスを、同等の平均腫瘍量を有する4群に分類した(n=群あたり15、群ごとに5マウスの3ケージ)。分類の日を実験0日目と定義した。腫瘍径を1対のカリパスを用いて決定し、腫瘍量を、式:V=1/2[長さ×(幅)を使用して計算した。基線平均腫瘍量は228mm、中央値基線腫瘍サイズは227mm、範囲は181mmから272mmであった。マウス(処置群あたり15)を、0日目、4日目、および8日目に、200μgのヒトIgG、CAS−024、またはRituxan(登録商標)(3回の処置後総量で600μg)を含有する0.2mLのPBSのIP注射を介して処置した。huIgG、CAS−024、およびRituxan(登録商標)IP処置群で、溶液を類似の容積で調製し、チューブの内容物を、取り外し可能なラベルに記載した。マウスを処置も評価もしてもいない研究者が、各チューブ上にカラーコードを貼り、実験ノートにチューブ内容物のコードおよび種類を記述した。
【0214】
マウスを目視検査により毎日モニターした。体重を毎週決定し、腫瘍径を処置群を知らされていない(上を参照)観察者により週当たり少なくとも3回(M、W、F)決定した。腫瘍量を上記の通りに計算した。各群のすべてのマウスが生存していた最後の日の腫瘍量もまた、式:
【0215】
【数1】

を使用して、0日目に対する腫瘍量として表した。
【0216】
その腫瘍量が1500mm3(または金曜日に1200mm3)を超えた場合、マウスを安楽死させた。死亡は我々の腫瘍プロトコルのエンドポイントではなく、他の方法で記載されていなければ、マウスの「生存」を、その腫瘍量が既定限度に達したためにマウスを安楽死させた時点により決定した(我々のプロトコルは、その腫瘍量が上記のパラメータを超える場合、腫瘍の潰瘍形成が起こる場合、腫瘍がマウスの運動性を阻害する場合、または体重低減が20%を超える場合に、マウスを安楽死させるよう指示する)。
【0217】
統計的分析はすべて、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。平均腫瘍量および平均相対的腫瘍量の有意差を、Dunn多重比較ポスト検定を用いるノンパラメトリックデータ用の一元配置ANOVA(クラスカルウォリス検定)を使用して決定した。経時的なマウスの生存の有意差は、生存曲線を比較するためのログランク検定を用いるKaplan−Meier生存分析を使用して決定した。無腫瘍マウスの出現率の有意差は、フィッシャー正確検定を使用して決定した(p値<0.05を有意と見なした)。
【0218】
マウスを、その腫瘍量が上記の限度に達した場合に安楽死させた。CAS−024処置群の1匹のマウスを、体重低減が20%を超えたために45日目に安楽死させた。このマウスはその時点で明白なSC腫瘍がなく、このマウスを生存率分析に関して打ち切りデータとして処理し(腫瘍増殖のせいで45日現在で安楽死させたのではない)、実験の終了時での無腫瘍出現率の比較には含めなかった。他のマウスで死亡しているものは見つからず、体重低減、腫瘍潰瘍形成、または損なわれた運動性のせいで安楽死させたマウスはいなかった。処置群のいずれにおいても毒性の明白な徴候または体重低減を観察しなかった(データは示していない)。
【0219】
CAS−024およびRituxan処置マウスは、処置に対して敏速な応答を示した。CAS−024およびRituxan(登録商標)処置群の平均腫瘍量は、早くも4日目(薬物の単回注射後)にはヒトIgG処置群の平均腫瘍量よりも有意に低く、11日目までずっと低いままであった。CAS−024処置群とRituxan(登録商標)処置群との間の平均腫瘍量または平均相対的腫瘍量には、11日目まで有意差はなかった。huIgG処置マウスを、開始11日目に安楽死させ、したがって、腫瘍量の比較はその後の時点では実施しなかった。
【0220】
huIgGを用いて処置されたマウスの腫瘍は急速に増殖し、この群のすべてのマウスを15日目までに安楽死させた。対照的に、15日目までに、CAS−024およびRituxan処置群の大部分の腫瘍は、触知可能な腫瘍が存在しない点にまで後退していた。注目すべきことに、処置に対する応答は、CAS−024処置群のみで持続した。実験の終了時までに、Rituxan処置マウスはすべて、その腫瘍増殖のせいで安楽死させられたが、CAS−024処置群のマウスの10/14(71%)は無腫瘍のままであった。表9を参照されたい。したがって、実験の終了時に、CAS−024処置群の生存曲線および無腫瘍マウスの出現率は、huIgG対照群およびRituxan(登録商標)処置群とは有意に異なっていた。図6は、濾胞性リンパ腫のこの動物モデルのインビボ処置では、CAS−024がRituxanよりも統計的に優れていたことを示している。
【0221】
【表11】

「生存」は、マウスを腫瘍増殖のために安楽死させた日により決定した。CAS−024用量群中の1匹のマウス以外((f)参照)、腫瘍量が既定限度に達した以外の理由で安楽死させられたマウスはいなかった。
各群をHuIgG処置対照群と比較した。
「無腫瘍」マウスには触知可能なSC腫瘍はなく、腫瘍細胞がないことの裏付けを、組織学により確証しなかった。
生存時間の中央値は、観察期間の終了時に50%を超えるマウスが生存しているときには不明確である。
太字の値はHuIgG対照の値とは有意に異なっている。
1匹のマウスを45日目に体重低減が20%を超えたために安楽死させた。このマウスにはその時点では明白なSC腫瘍がなく、81日目の無腫瘍マウスの比較では群から除外した。
【0222】
結論として、CAS−024およびRituxanは、SCIDマウスのヒト腫瘍(DOHH2)異種移植モデルにおける単一薬物として有効であった。両薬物は、大多数のマウスで最初の腫瘍後退を引き起こしたが、最適抗CD20処置後に腫瘍が再発したために、長期腫瘍後退をCAS−024を用いて処置されたマウスの群でのみ観察した。したがって、CAS−024、すなわちヒト化抗CD37 SMIPは、Rituxan(登録商標)処置が時間の経過と共に十分に機能しなくなることを示すモデルを含む前臨床腫瘍異種移植モデルにおいて顕著な効能を示している。したがって、これらの結果は、B細胞リンパ腫および白血病患者のCAS−024処置は、有益であり、かつ、Rituxan(登録商標)処置がうまくいかない患者における実行可能な代替処置であることを示唆する。
【0223】
(実施例9)
(化学療法薬と組み合わせたCAS−024のインビトロ評価)
CAS−006は化学療法薬のフルダラビンと組み合わせると相乗的に作用し、インビトロで慢性リンパ性白血病(CLL)細胞を殺すことはすでに実証されていた(たとえば、米国特許出願公開第2007/0059306号参照)。CLL細胞はインビトロの細胞培養では活発に分裂しないので、化学療法薬とのその相乗作用に関してCAS−006またはCAS−024のプロアポトーシス(pro−apoptotic)効果に細胞増殖は必要ではないことをデータは示している。したがって、本実験の目的は、CAS−024および様々な化学療法薬が、インビトロの細胞培養において活発に増殖し分裂するマントル細胞リンパ腫(MCL)細胞系統であるRec−1に対して有効であるかどうか、およびCAS−024と化学療法薬(剤)との組合せが、様々な化学療法薬に対するマントル細胞リンパ腫細胞の応答を脱感作するのかまたは増強するのかを決定することであった。試験される化学療法薬は、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびフルダラビンであり、これらは非ホジキンリンパ腫および他のリンパ性悪性腫瘍を処置するために使用されている。
【0224】
マントル細胞リンパ腫に罹った患者から樹立されたRec−1細胞、CD37+ヒトB細胞系統を、ドキソルビシン、ビンクリスチン、またはフルダラビンの存在下でまたは不在下で、架橋されたCAS−024に対する応答での増殖抑制について試験した(図7参照)。CAS−024を抗ヒトIgG F(ab)’と一緒にプレインキュベートし、このタンパク質を架橋した。細胞を、様々な濃度のドキソルビシン、ビンクリスチン、またはフルダラビンの存在下でまたは不在下で、培地単独を用いてまたは様々な濃度の架橋CAS−024タンパク質を含有する培地を用いて培養した。培養物を96時間インキュベートし、ATP生存細胞検出システム(すなわち、ATP放出により定量化される生存細胞)を使用して、増殖抑制を評価した。
【0225】
ChouおよびTalalay(Adv. Enzyme Regul. 22巻:27頁、1984年)の半数影響/組合せ指標(CI)法をデータ分析のために使用した。前定義された用量レベルでの各薬物組合せに割り当てられた数値は、異なる薬物組合せ間の定量的薬物/薬物相互作用比較を可能にした。結果を、効果レベルが細胞増殖の抑制割合を表す、組合せ指標(CI)対効果レベルとして表した。効果レベルごとの平均CI±SEMは、3実験の平均値であった。CI<1.0を相乗作用と見なし、CI=1.0は相加性と、CI>1.0を拮抗作用と見なした。表される値は、効果レベルごとの平均±SEMであり、3つの独立したアッセイの平均であった。
【0226】
CAS−024とビンクリスチンまたはフルダラビンとの組合せは、相乗効果があり(CI<1.0)、CAS−024とドキソルビシンとの組合せは相加性であった(CIは1.0と有意に異なってはいない)。CAS−024と化学療法薬との組合せのどれもが、全効果レベルにわたり拮抗作用(CI>1.0)ではなかった。したがって、CAS−024と試験された3つの化学療法薬それぞれとの組合せは、薬物誘導増殖抑制に対して標的細胞を脱感作することはなく、それどころか、標的細胞増殖に対する相乗的または相加的抑制効果を生じた。好ましい実施形態は、CAS−024(配列番号253)とビンクリスチンまたはフルダラビンとの組合せである。確立した化学療法薬の効能が、CAS−024と組み合わせて使用する場合に増加することを、これらのデータは示している。
【0227】
(実施例10)
(予備的臨床第1/2相結果)
本明細書に提供されるように、CD37 SMIP分子は、慢性リンパ性白血病(CLL)において使用される他の治療抗体と比べて、CLL細胞を著しい強度で直接的におよびナチュラルキラー(NK)細胞媒介性で殺すことを媒介することを、前臨床試験は実証している。したがって、第1/2相非盲検用量漸増試験を、慢性リンパ性白血病(CLL)を再発した患者で開始した。
【0228】
再発した/難治性CLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)に罹かり、十分な臓器機能、血小板>30,000/mmを有する患者が適格であった。6用量および2つの異なる計画(コホート1〜10)を試験しており、または試験する。計画された用量は、4用量に関して、1週間に一回、0.03mg/kgから10mg/kg IVまでの範囲である(コホート1〜6および9)。第2の計画(コホート7、8、および10)は、第1週目の1日目、3日目および5日目に、3.0mg/kg、6.0mg/kg、または10.0mg/kgを、続いて毎週3用量を試験する。用量漸増および漸減は、有害事象共通用語規準(Common Toxicity Criteria Adverse Events(CTC AE))毒性グレードに基づいている。患者は、第1サイクル後に正の生物学的効果がある場合、2回追加のサイクルを受けてもよい。
【0229】
結果:現在まで、22患者が登録されており(コホート1〜7および9)、処置を終えている(全員が前フルダラビンおよびリツキシマブ処置を受けている)。6患者は第2サイクルに入っており、2患者は第3サイクルに入っている。処置中の患者は、いくつかの前レジメンを終えている(たとえば、コホート4患者は6から10(中央値6)、コホート5は5から13(中央値9.5)の前レジメンを受けた)。10人中8人が高リスクゲノム特徴を有している[del(17p13.1)、n=5およびdel(11q22.3)、n=3]。用量制限毒性または重大な有害事象は起きていない。軽度(グレード1〜2)注入毒性を3患者で観察した。0.3mg/kg用量で開始して、del(17p13.1)を有する患者を含む8患者全員が生物活性の証拠を実証した。2患者は皮膚白血病が部分的に消去し、末梢性リンパ球数の中央値低減が64%であった(図5参照)。1患者は末梢性リンパ球数が99%低減し、重大な有害事象はなく、処置3カ月後も継続して応答した(図6参照)。1患者は、ヘモグロビンが40%増加し、CTスキャンにより決定するときリンパ節サイズが36%低減し、そして処置3カ月後も継続して応答している(図7参照)。2患者は血小板数が著しく増加した。
【0230】
結論:現在まで、このCD37 SMIP分子は良好な耐用性を示す処置であり、注入毒性は最小であり用量制限毒性は全く観察されていない。リンパ球数が著しく低下した患者は腫瘍崩壊症候群の徴候を示していなので、何であれ補体関与があるとも思われる。高リスクゲノムCLLを有する患者において腫瘍リンパ球血球数の低減、リンパ節/脾臓サイズの低減、皮膚白血病の消去、および/または骨髄疾患の部分的消去、および/または正常造血機能の改善を促進することを、CD37 SMIP分子の低非飽和用量ですでに観察している。
【0231】
(実施例11)
(ベンダムスチンと組み合わせたCAS024のインビトロ効能)
本実験は、Rec−1(マントル細胞リンパ腫細胞系統)およびSU−DHL−6(びまん性大細胞型リンパ腫系統)細胞に対するCAS024、ベンダムスチン、およびCAS024とベンダムスチンとの組合せの効果を決定することであった。
【0232】
CD37を発現している以下のヒト細胞系統、すなわち、Rec−1およびSU−DHL−6(どちらもDSMZ製、Braunschweig,Germany)を使用した。ベンダムスチン(TREANDA(登録商標))は、University of Washington Pharmacy(Seattle、WA)より購入し、PBSに溶解して使用まで−20℃で保存した。
【0233】
Rec−1およびSU−DHL−6細胞を、96ウェル黒側面黒底プレート中100μL培地に1×10細胞/ウェルで蒔いた。細胞を、抗ヒトIgG F(ab)’と一緒にプレインキュベートした様々な濃度のCAS024で処置し、プレートをベンダムスチンの段階希釈の存在下で、5%CO、37℃で96時間インキュベートした。各ウェルの最終容積は150μLであった。インキュベーション後、プレートを室温まで冷却して、100μL/ウェルのATPlite検出試薬(Perkin Elmer、Boston、MA)を用いて標識した。このアッセイは、細胞ATPを生細胞のマーカーとして測定する。試料を、Topcount NXT(Perkin Elmer、Waltham、MA)プレートリーダーを使用したルミネセンスの検出により分析した。Prism(バージョン4.0、Graphpad Software、San Diego、CA)において4パラメータカーブフィットを使用してデータを調整し、50%抑制をもたらす濃度として定義されているIC50を無処置培養物と比較した。
【0234】
相乗作用決定では、半数影響/組合せ指標(CI)法をデータ分析のために使用した(ChouおよびTalalay)。前定義された用量レベルでの各薬物組合せに割り当てられた数値は、異なる薬物組合せ間の定量的薬物/薬物相互作用比較を可能にする。CI値は相互作用を3つの範疇、すなわち、相乗作用、相加性、および拮抗作用(それぞれ、CI<1.0、=1、または>1.0)に割り当てる。標識化およびデータ調整後、組合せ指標(CI)値を、Calcusynソフトウェアパッケージ(Biosoft、Cambridge、UK)を使用して決定した。2つの別個の実験の結果は、CAS024とベンダムスチンとの組合せにより、標的細胞増殖に対して相乗的抑制効果があることを示す(図11参照)。CAS024とベンダムスチンとの組合せにより、SU−DHL−6細胞増殖も相乗的に抑制することを示す類似の結果を得た。
【0235】
CAS−024と別のアルキル化薬、すなわちクロラムブシルとの組合せ効果もまた、上記の方法および図12に示される濃度を使用して決定した。ベンダムスチンとは違って、CAS−024と組み合わせたクロラムブシルは、SU−DHL−6細胞増殖に対して相乗的抑制効果を生じなかった(図13参照)。
【0236】
(実施例12)
(ヒト腫瘍異種移植モデルにおけるベンダムスチンと組み合わせたCAS024の効能)
本実験は、SCIDマウスにおける皮下DOHH2ヒト腫瘍異種移植片に対する、ベンダムスチンと組み合わせたCAS024の効能と個々に投与された各薬物の効能とを比較することであった。
【0237】
腫瘍異種移植片の樹立および処置群への分類。上記のように、DOHH2は、濾胞性リンパ腫に罹った患者由来のCD20CD37ヒトBリンパ芽球様細胞系統である。500万のDOHH2細胞を、雌性CB−17 SCIDマウスの側腹部に皮下注射した。腫瘍播種の8日後に、触知可能な腫瘍が大多数のマウスで明白になっていた。担腫瘍マウスを、同等の平均腫瘍量を有する5群に分類した(群あたりn=15、群ごとに5マウスの3ケージ)。分類の日を0日目と定義した。腫瘍径を1対のカリパスを用いて決定し、腫瘍量を、式:V=1/2[長さ×(幅)]を使用して計算した。基線平均腫瘍量は231mm、中央値基線腫瘍サイズは229mm、範囲は201mmから261mmであった。
【0238】
インビボ処置。マウスの群を、10μgのhuIgG(0日目、4日目、8日目、IV)、10μgのCAS024(0日目、4日目、8日目、IV)、10mg/kgベンダムスチン(0日目、2日目、4日目、7日目、9日目、IP)、または10μgのCAS024(0日目、4日目、8日目、IV)および10mg/kgベンダムスチン(0日目、2日目、4日目、7日目、9日目、IP)を含有する0.2mLのPBSの注射で処置した。
【0239】
モニタリングおよびエンドポイント。マウスを目視検査により毎日モニターした。体重を毎週決定し、腫瘍径を処置群を知らされていない(上を参照)観察者により週当たり少なくとも3回(M、W、F)決定した。腫瘍量を上記の通りに計算した。
【0240】
その腫瘍量が1500mm(または金曜日に1200mm)を超えた場合、マウスを安楽死させた。死亡は本実験のエンドポイントではなく、他の方法で記載されていなければ、マウスの「生存」を、その腫瘍量が既定限度に達したためにマウスを安楽死させた時点により決定した。その腫瘍量が上記のパラメータを超えた場合、腫瘍の潰瘍形成が起きた場合、腫瘍がマウスの運動性を阻害した場合、または体重低減が20%を超えた場合に、マウスを安楽死させた。
【0241】
統計的分析。統計的分析はすべて、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。平均腫瘍量および平均相対的腫瘍量の有意差を、Dunn多重比較ポスト検定を用いるノンパラメトリックデータ用の一元配置ANOVA(クラスカルウォリス検定)を使用して決定した。経時的なマウスの生存の有意差を、生存曲線を比較するためのログランク検定を用いるKaplan−Meier生存分析を使用して決定した。無腫瘍マウスの出現率の有意差を、フィッシャー正確検定を使用して決定した。p値<0.05を有意と見なした。
【0242】
ベンダムスチン処置群において、薄汚い外皮と下痢が6日目前後に始まるのを観察した。10日目、CAS024+ベンダムスチン処置群の1匹のマウスを、体重低減が20%以上になったために安楽死させた。このマウスを、生存曲線の分析に関して打ち切りデータとして処理した。CAS024単独の処置群において、毒性の臨床的徴候を観察しなかった。
【0243】
すべての処置が、huIgGと比べたDOHH2の増殖に対する抑制効果を実証した。13日目(すべてのマウスが生存していた最後の日)、すべての処置群の平均腫瘍量および平均相対的腫瘍量は、マウスのhuIgG対照群とは統計的に異なっていた(図14Aおよび4B)。平均腫瘍量および平均相対的腫瘍量の有意差をまた、ベンダムスチン処置群とCAS024+ベンダムスチン組合せ処置群との間でも観察した。他の2つのどの処置群間にも、平均腫瘍量または平均相対的腫瘍量に有意差はなかった。4群の経時的平均腫瘍量を図15に示す。
【0244】
huIgGを用いて処置されたマウスの腫瘍は急速に増殖し、この群のマウスはすべて17日目までに安楽死させた。図16に示され表12および13で要約されるように、任意の処置群で投薬されたマウスの生存は、huIgG処置群と比べて長かった(すべての群でp≦0.0001)。3つの処置群すべての生存曲線間および互いの間の生存曲線にも有意差があり、CAS024/ベンダムスチン組合せはどちらの単一薬物よりも優れていた。
【0245】
実験の終了時(34日目)にはhuIgG処置マウスは1匹も生存していなかった(したがって、無腫瘍は0)(図17および表12)。その他の群の無腫瘍マウスの出現率は、CAS024処置群およびベンダムスチン処置群で0/15(0%)、CAS024+ベンダムスチン組合せ処置群で2/14(14%)であった。どの処置群間にも無腫瘍マウス出現率に有意差はなかった。
【0246】
【表12】

マウスの「生存」を、そのマウスを腫瘍増殖のために安楽死させた日によって決定した。CAS024+ベンダムスチン組合せ群の1匹のマウスを、10日目に体重低減が20%以上になったために安楽死させた。このマウスを、生存曲線を計算するときには打ち切りデータとして処理した。その腫瘍量が既定限度に達したこと以外の理由で安楽死させたマウスは他にはいなかった。
太字の値は、指示された群の生存曲線がhuIgG対照の生存曲線とは有意に異なっていることを示している(すべての処置群でp<0.0001;ログランク検定)。
「無腫瘍」マウスには触知可能なSC腫瘍がない。腫瘍細胞がないことを、組織学により確証しなかった。実験は34日目に終わった。
CAS024+ベンダムスチン組合せ群において、1匹のマウスを、10日目に体重低減が20%以上になったために安楽死させた。毒性理由で安楽死させたマウスは他にはいなかった。
【0247】
【表13】

本実験は、ベンダムスチンと組み合わせたCAS024が、SCIDマウスのDOHH2腫瘍増殖に対して、どちらかの薬物単独の場合に見られる効果よりも大きな抑制効果を表したことを示している。
【0248】
上記の様々な実施例を組み合わせて、追加の実施例を提供することができる。本明細書で言及されるかつ/または出願データシートに収載される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許出版物はすべてが、参照によりその全体が本明細書に援用される。実施形態の態様は、様々な特許、出願および出版物の概念を用いてさらに追加の実施形態を提供する必要がある場合には、改変することができる。
【0249】
上の詳細な説明に照らして、実施形態にはこれらのおよび他の変化を加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲において開示される特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、権利が与えられるそのような特許請求の範囲の同等物のすべての範囲とともにあらゆる考えられる実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端からカルボキシル末端までに、
(i)ヒト化重鎖可変領域、
(ii)配列番号229に記載されるリンカー、
(iii)ヒト化軽鎖可変領域、
(iv)IgG1ヒンジ、
(v)ヒトIgG1 CH2領域、および
(vi)ヒトIgG1 CH3領域
を含むヒト化CD37特異的結合分子であって、
(a)該ヒト化重鎖可変領域がアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト重鎖FR1、配列番号63に記載される重鎖CDR1、ヒト重鎖FR2、配列番号65に記載される重鎖CDR2、ヒト重鎖FR3、配列番号67、68または69に記載される重鎖CDR3、およびヒト重鎖FR4を含み、
(b)該ヒト化軽鎖可変領域がアミノ末端からカルボキシル末端までに、ヒト軽鎖FR1、配列番号61または62に記載される軽鎖CDR1、ヒト軽鎖FR2、配列番号64に記載される軽鎖CDR2、ヒト軽鎖FR3、配列番号66に記載される軽鎖CDR3、およびヒト軽鎖FR4を含む、
ヒト化CD37特異的結合分子。
【請求項2】
前記ヒト重鎖FR1が配列番号144を含み、前記ヒト重鎖FR2が配列番号151を含み、前記重鎖FR3が配列番号158を含み、および、前記重鎖FR4が配列番号161または162を含む、請求項1に記載のヒト化CD37特異的結合分子。
【請求項3】
前記ヒト軽鎖FR1が配列番号171を含み、前記軽鎖FR2が配列番号182を含み、前記軽鎖FR3が配列番号195を含み、および、前記軽鎖FR4が配列番号206を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化CD37特異的結合分子。
【請求項4】
配列番号253に記載されるアミノ酸配列を含むCD37特異的結合分子。
【請求項5】
配列番号253に記載されるアミノ酸配列からなる、請求項4に記載のCD37特異的結合分子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヒト化CD37特異的結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヒト化CD37特異的結合分子および薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有効量のヒト化CD37特異的結合分子をそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法。
【請求項11】
前記異常なB細胞活性に付随する疾患が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞骨髄腫、自己抗体産生により特徴づけられる疾患、またはB細胞経路に関連する不適切なT細胞刺激により特徴づけられる疾患である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記自己抗体産生により特徴づけられる疾患が、特発性炎症性筋障害、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、グレーヴズ病、I型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚筋炎、多発性筋炎、またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記異常なB細胞活性に付随する疾患が、慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
CD37特異的結合分子およびベンダムスチンを含む組成物。
【請求項15】
前記CD37特異的結合分子がCD37特異的抗体またはSMIPである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記CD37特異的分子がヒト化抗体またはヒト化SMIPである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記CD37特異的結合分子が、CD37特異的結合においてG28−1 mAbと競合する、請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記CD37特異的結合分子が、請求項1から5のいずれか一項に記載のヒト化CD37特異的結合分子である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
有効量のCD37特異的結合分子およびベンダムスチンをそれを必要とする被験体に投与することを含む、B細胞を低減させるためかまたは異常なB細胞活性に付随する疾患を処置するための方法。
【請求項20】
前記異常なB細胞活性に付随する疾患が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞骨髄腫、自己抗体産生により特徴づけられる疾患、またはB細胞経路に関連する不適切なT細胞刺激により特徴づけられる疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記自己抗体産生により特徴づけられる疾患が、特発性炎症性筋障害、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、グレーヴズ病、I型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚筋炎、多発性筋炎、またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記異常なB細胞活性に付随する疾患が、慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記CD37特異的結合分子およびベンダムスチンが同時に投与される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記CD37特異的結合分子およびベンダムスチンが順次投与される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CD37特異的結合分子およびベンダムスチンが一緒に処方される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CD37特異的結合分子がCD37特異的抗体またはSMIPである、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記CD37特異的分子がヒト化抗体またはヒト化SMIPである、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記CD37特異的結合分子が、CD37特異的結合においてG28−1 mAbと競合する、請求項19から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記CD37特異的結合分子が、請求項1から5のいずれか一項に記載のヒト化CD37特異的結合分子である、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−516084(P2011−516084A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504229(P2011−504229)
【出願日】平成21年4月11日(2009.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/040288
【国際公開番号】WO2009/126944
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(503256494)トルビオン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】TRUBION PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】