説明

CO2回収装置及び回収方法

【課題】再生塔を必要とすることなく、CO吸収液の再生が可能なものであって、装置の小型化が図れ、しかも建設コストを削減する。
【解決手段】処理対象ガスにCO吸収液を接触させて処理対象ガス中のCOを吸収するCO吸収塔1と、CO吸収塔に連通され、CO吸収塔から払い出されるCOリッチ状態のCO吸収液を加熱してCO吸収液からCOを分離させるリボイラとを備える。リボイラ8、15は直列に複数段配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCO回収装置及び回収方法におけるアミン炭酸塩の再生に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉ガス、ボイラ排ガス、天然ガス、石油分解ガスなどでCOを回収する場合、モノエタノールアミン(MEA)などのCO吸収液を用い、まず吸収塔でCOを吸収させ、このCO吸収液を再生塔まで導き、水蒸気に接触させてCOを放散させて再生し、以下これを繰り返しながら循環使用する技術が知られている。
例えば、下記の特許文献1に記載されている技術である。
【0003】
ここで、図3を参照しながら、従来のアミン炭酸塩の再生について説明する。
この図において、符号101はCO吸収塔、102は再生塔を示す。
COを含む処理対象ガスを、配管111を介してCO吸収塔101の内部に塔底部から流入させる。CO吸収塔101では、処理対象ガスが塔内の充填槽にて、塔頂部から給液されたアミン炭酸塩からなるCO吸収液と接触し、発熱反応を伴いながらガス中のCOがCO吸収液に吸収される。COを吸収してCO濃度が濃くリッチ状態となったCO吸収液は、熱交換器112aが介装された配管112を介して、CO吸収塔101から再生塔102へ送られる。
【0004】
再生塔102では、CO吸収液は、塔底部に設置されたリボイラ113から加えられる水蒸気のエネルギーにより分解される。このとき、生じるCOは水蒸気とともに、塔頂部から配管114を介して凝縮器114aへ送られる。凝縮器114aでは、水蒸気が凝縮・分離される。凝縮された水蒸気は液体の状態で、気液分離槽を兼ねたタンク115の底部からポンプ116aにより配管116を介して再生塔102へ戻される。また、COはタンク115の塔頂部から系外に払い出される。
このように再生塔102では、水蒸気がアミン炭酸塩からなるCO吸収液の分解する機能、CO吸収液へ顕熱を供給する機能、およびCOを再生塔から外部へ運び出す機能の3つの機能を果たす。
【0005】
再生塔102内で分解されて、CO濃度が薄くリーン状態となったCO吸収液は、塔底部から、熱交換器112a、ポンプ117a、熱交換器117bがそれぞれ介装された配管117を介してCO吸収塔101へ戻される。
なお、CO吸収塔101では、COが除去された処理対象ガスが配管118を介して外部へ払い出される。
なお、図3の再生塔102には、一般的に充填槽を利用した充填塔が用いられるが、その他、泡鐘槽を利用した泡鐘搭が用いられることもある。
【0006】
次に、図4を用いて従来技術の再生塔102内の様子を説明する。
蒸留の場合は、x−yチャートを用い、トレー塔などの段数計算に利用される。ここでは、x−yチャートの代わりにC−yチャートを用いる。Cはローディングであり、単位はmolCO/molアミンである。yはガス中のCO分圧であり、単位はmolfrである。
【0007】
再生塔102の上部には、CO吸収塔101からCOリッチ状態となったCO吸収液が流入する。このCO吸収液の状態を図3、図4において符号Aで示す。このCOリッチ状態のCO吸収液は、再生塔102内を下降しながらCOを放散し、次第に再生塔の操作線120に沿ってCO濃度が下がりBの状態になる。そして、Bの状態のCO吸収液はリボイラ113に至り、ここで加熱されることでCO濃度がさらに下がりCの状態に至る。すなわち、CO吸収液はCO濃度が薄くリーン状態となる。
ここで、CO吸収液がBの状態からCの状態に至るとき、リボイラ113の段効率が100%であるから、Bから水平線となって延びる物質収支線121と、Cから垂直へ立ち上がる垂直線122とは、CO−アミン吸収液(CO吸収液)の気液平衡線123で交わる。この点が図4においてDである。
【0008】
ここで操作線について説明を行う。
CO吸収液中のCO濃度変化をdC、水蒸気中のCO濃度変化をdyとすると、 CO吸収液が失うCO量と水蒸気が得るCO量は等しいから(1)式が成立する。
【0009】
【数1】

【0010】
したがって、操作線の傾きdy/dCは液ガス化比L/Vに等しい。
もし、水蒸気が凝縮を伴わない場合は、操作線124のように直線となる。
しかし、実際には、アミン炭酸塩の分解及び液顕熱変化に起因して水蒸気の凝縮が起こるため、操作線120のような下に凸の曲線となる。なお、操作線125は仮想曲線であり、操作線120と125で、全体の操作線を表す。
【0011】
次に、式2にHTU(総括移動高さ)とNTU(総括移動数単位)の式を示す。
【0012】
【数2】

【0013】
微分区間において操作線と平衡線は直線とみなせるので、微分区間では、(3)式が成立する
【0014】
【数3】

【0015】
充填槽におけるNTU合計量は(4)式となる。
【0016】
【数4】

【0017】
【数5】

【0018】
従来法においては(2)〜(5)式を用いて規則充填物のHTU=2〜3mを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005−254212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した従来のCO回収装置では、CO吸収液の再生に再生塔を用いており、再生塔は高さが10mにも達するものもあるため、装置全体が大型化する、あるいは建設コストが嵩むという問題があった。
【0021】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、分解反応を伴う蒸留系において、比揮発度が5以上の吸収液を使用した場合に、再生塔を必要とすることなく吸収液の再生が可能なことを見出した。
すなわち、比揮発度の大きい吸収液を使用する場合には再生塔の負荷が小さくなるため、この性質を利用し、再生塔を必要とすることなく、かつデルタローディングを損なわずにCOを回収することを見出した。
【0022】
ここで、デルタローディング及び比揮発度を、以下のように定義する。
本明細書では、吸収塔から再生手段(CO吸収液再生手段)へ送られる、COを多量に含むCO吸収液をリッチ状態のCO吸収液と言い、このときのCO濃度をリッチローディング(以下CR)という。
これに対し、再生手段から吸収塔へ送られる、COを少量含むCO吸収液をリーン状態のCO吸収液と言い、このときのCO濃度をリーンローディング(以下CL)という。
このリッチローディングとリーンローディングの差をデルタローディング(以下、dC)と定義する。
【0023】
なお、再生塔を循環するCO吸収液循環量はデルタローディングで決定される。
また、ある成分の分圧Pとその成分の液中濃度xについてP/xで表される値を揮発度といい、2成分の揮発度k1,k2に対してk1/k2と表される値を比揮発度と定義する。
【0024】
すなわち、本発明は、高い比揮発度のCO吸収液を利用することにより、再生塔を必要とすることなく、CO吸収液の再生が可能なものであって、装置の小型化が図れ、しかも建設コストを削減することができるCO回収装置及び回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の請求項1に係るCO回収装置は、COを含む複数成分の処理対象ガスからCOを分離回収するCO回収装置であって、前記処理対象ガスにCO吸収液を接触させて前記処理対象ガス中のCOを吸収するCO吸収塔と、前記CO吸収塔に連通され、該CO吸収塔から払い出されるCOリッチ状態のCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させるリボイラとを備え、前記リボイラは直列に複数段配置されていることを特徴とする。
【0026】
上記CO回収装置によれば、CO吸収塔にて、COを回収しようとする処理対象ガスがCO吸収液に接触されて処理対象ガス中のCOが吸収される。また、CO吸収塔内のCOリッチ状態のCO吸収液はリボイラへ導かれる、リボイラでは、CO吸収液が加熱されてCO吸収液からCOが分離される。また、ここでは、リボイラが直列に複数段配置されているので、それら複数段のリボイラ内でCO吸収液がそれぞれ熱により分解される。これにより、再生塔を必要とすることなく、CO吸収液の再生が可能となる。
【0027】
また、本発明の請求項2に係るCO回収装置は、前記リボイラを2段配置され、CO吸収液の流れを基準にした前段側の第1リボイラと後段側の第2リボイラとの間には、第1リボイラのCO2吸収液を第2リボイラへ移送する吸収液移送配管と、第2リボイラで分離したCO2を第1リボイラへ移送するガス移送配管を備えることを特徴とする。
この場合、第1リボイラ内のCO吸収液は吸収液移送配管によって第2リボイラへ導かれる。また、第2リボイラ内でCO吸収液の分解により生じるCOはガス移送配管によって第1リボイラへ導かれる。このように、CO吸収液とCOとを別々の専用配管で移送するので、それらの移送効率が良くなり、その分、リッチ状態のCO吸収液のCO濃度がより一層濃くなる。
【0028】
また、本発明の請求項3に係るCO回収方法は、COを含む複数成分の処理対象ガスからCOを分離回収するCO回収方法であって、CO吸収塔にて前記処理対象ガスに圧力が0.3MPaGの条件下で比揮発度5以上のCO吸収液を接触させて前記処理対象ガス中のCOを吸収する工程と、前記CO吸収塔に連通される第1リボイラにて、前記CO吸収塔から払い出されるCOリッチ状態のCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させる第1のCO分離工程と、前記第1リボイラに連通される第2リボイラにて、第1リボイラから払い出されるCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させる第2のCO2分離工程と、を備えることを特徴とする。
この場合、本願の請求項2に記載のCO回収装置を用いたCO回収方法が好適に行える。
【発明の効果】
【0029】
本願の請求項1に係る発明によれば、再生塔を用いることなく、直列に配置した複数段のリボイラによって、CO吸収液の再生が可能となる。また、再生塔を用いる場合に比べ、装置全体の小型化が図れ、しかも建設コストを削減することができる。
【0030】
本願の請求項2に係る発明によれば、リッチ状態のCO吸収液のCO濃度をより濃くすることができ、これにより、大きなデルタローディングを得ることができる。
【0031】
本願の請求項3に係る発明によれば、本願発明に係るCO回収装置を用いたCO回収方法が好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るCO回収装置の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態の気泡槽及びリボイラ内のCO吸収液の様子を可視化したC−yチャートである。
【図3】従来のCO回収装置の一例を示す構成図である。
【図4】従来の再生塔内のCO吸収液の様子を可視化したC−yチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付する図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。
図1は本発明に係るCO回収装置の実施形態を示す。図において符号1はCO吸収塔を示す。このCO吸収塔1の塔底部には原料ガス入口1Aと、COリッチ状態のCO吸収液を払い出すリッチ吸収液出口1Bが形成されている。原料ガス入口1Aには原料ガス供給配管2が接続され、リッチ吸収液出口1Bにはリッチ吸収液払い出し配管3が接続されている。CO吸収塔1の塔頂部にはCOリーン状態のCO吸収液を戻し入れるリーン吸収液入口1Cと、原料ガス出口1Dが形成されている。リーン吸収液入口1Cにはリーン吸収液戻し配管4が接続され、原料ガス出口1Dには原料ガス払い出し管5が接続されている。原料ガス払い出し管5には処理ガスコンデンセートクーラ6が介装されている。
【0034】
CO吸収塔1では、リーン吸収液入口1Cから供給されるリッチ状態のCO吸収液が塔内の充填層を下方へ通過する際に、原料ガス入り口1Aから供給される原料ガス(処理対象ガス)と接触し、発熱反応を伴いながら原料ガス中のCOを吸収してリッチ状態のCO吸収液になる。そして、このリッチ状態のCO吸収液はリッチ吸収液出口1Bから払い出される。また、COを分離された原料ガスは原料ガス出口1Dから払い出される。
なお、ここではリーン吸収液、リッチ吸収液はそれぞれCO濃度を基準とするものであり、COが所定濃度未満となっているCO吸収液をリーン吸収液、COが所定濃度以上となっているCO吸収液をリッチ吸収液と呼ぶ。
【0035】
CO吸収塔1から延びるリッチ吸収液払い出し配管3は、ポンプ3A及び熱交換器7を介装されて、その先端が第1リボイラ8へ接続される。
第1リボイラ8には内部に加熱用コイル8Aが組み込まれており、加熱用コイル8Aには蒸気配管9が接続されている。また、第1リボイラ8の上部にはリッチ吸収液入口8B及びガス出口8Cが形成されている。リッチ吸収液入口8Bには前記リッチ吸収液払い出し配管3が接続され、ガス出口8CにはCO払い出し配管10が接続されている。CO払い出し配管10には、COコンデンセートクーラ11並びに電磁弁12が第1リボイラ8から先端側へ向けて順に介装されている。
また、第1リボイラ8の底部には吸収液出口8D及びガス入口8Eが形成されている。吸収液出口8Dには吸収液移送配管13が接続され、ガス入口8Eにはガス移送配管14が接続されている。
【0036】
第1リボイラ8では、加熱用コイル8Aに蒸気配管9から水蒸気が供給されると、内部に貯留されているCO吸収液であるアミン炭酸塩が分解され、CO及び水蒸気が生じる。COはキャリアスチームとして作用する水蒸気とともに、CO払い出し配管10を介して第1リボイラ8の外部へ排出される。
【0037】
第1リボイラ8から延びる吸収液移送配管13及びガス移送配管14の先端は第2リボイラ15に接続されている。
第2リボイラ15は、内部に加熱用コイル15Aが組み込まれており、加熱用コイル15Aには蒸気配管15Bが接続されている。また、第2リボイラ15の上部には吸収液入口15C及びガス出口15Dが形成されている。吸収液入口15Cには吸収液移送配管13が接続され、ガス出口8Cにはガス移送配管14が接続されている。
また、第2リボイラ15の底部には吸収液出口15Eが形成され、吸収液出口15Eには前記リーン吸収液戻し配管4が接続されている。
【0038】
第2リボイラ15では、加熱用コイル15Aに蒸気配管15Bから水蒸気が供給されると、内部に貯留されているCO吸収液であるアミン炭酸塩が分解され、CO及び水蒸気が生じるとともに、CO吸収液はリーン状態になる。COはキャリアスチームとして作用する水蒸気とともに、ガス移送配管14を介して第1リボイラ8へ移送される。また、リーン状態のCO吸収液は、リーン吸収液戻し配管4から該リーン吸収液戻し配管に介装されたポンプ4Aによって第2リボイラ8の外部へ払い出される。
【0039】
第2リボイラ15から延びるリーン吸収液戻し配管4の先端は前記CO吸収塔1へ接続されている。リーン吸収液戻し配管4とリッチ吸収液払い出し配管3とが交差する箇所にはリーン状態のCO吸収液の熱によってリッチ状態のCO吸収液を加熱する前記熱交換器7が介装され、さらにリーン吸収液払い出し配管の熱交換器7よりもCO吸収塔1側にはアフタークーラ16が介装されている。
【0040】
次に、前記CO回収装置の作用について説明する。
なお、ここでは、圧力が0.3MPaGの条件下で比揮発度が5以上のCO吸収液を使用するのが前提である。
処理対象である原料ガスは、原料ガス供給配管2内を流れてCO吸収塔1に流入し、CO吸収塔1の塔頂部にリーン吸収液戻し配管4から供されるリーン状態のCO吸収液と塔内の充填槽で接触し、発熱反応を伴いながら、CO吸収液によってCOを吸収される。
COを除去された原料ガスは、塔頂部から原料ガス払い出し管5を介して塔外へ払い出される。このとき、処理ガスコンデンセートクーラ6によって所定温度まで冷却される。
【0041】
一方、COを吸収してリッチ状態となったCO吸収液は、ポンプ3Aによって昇圧されてリッチ吸収液払い出し配管3内を流れ、熱交換器7を介してリーン状態のCO吸収液により加熱された後、第1リボイラ8まで移送される。ここで、リッチ状態のCO吸収液は、水蒸気を熱源とする加熱用コイル8Aの熱によって分解される。また、第2リボイラ15からガス移送配管14を介して供されるCOと水蒸気とが混合した気泡により攪拌されながら加熱されることも相俟ってCOの分解が促進される。分解されたCOは、キャリア作用をなす水蒸気とともにCO払い出し配管10を通じて外部へ払い出される。そして、払い出されたCOは、COコンデンセートクーラ11によって所定温度まで冷却された後、所定箇所まで移送される。
なお、第1リボイラ8から系外へ払い出された水蒸気分は、図示しない水供給管から液体の形で第1リボイラ8あるいは第2リボイラ15内に補給される。
【0042】
一方、第1リボイラ8内のCO吸収液は、吸収液移送配管13を通じて第2リボイラ15へ移送される。第2リボイラ15では、前記第1リボイラ8にて分解されなかった残りのアミン炭酸塩が、加熱用コイル15Aの熱によって分解される。この第2リボイラ15における分解率は100%近くになる。ここで発生するCOと水蒸気は、前述したようにガス移送配管14を通じて前記第1リボイラ8内まで移送される。一方、分解されて濃度が所定値未満となったリーン状態のCO吸収液は、ポンプ4Aにより昇圧されてリーン吸収液戻し配管4内を流れ、熱交換器7、並びにアフタークーラ16により所定温度まで冷却され、再びCO吸収塔1へ移送される。
【0043】
このときの気泡槽及びリボイラ内のCO吸収液の様子を図2に示す。図2は比揮発度が10のCO吸収液を使用したときの例、比揮発度が5のCO吸収液(例えば、第二級アミン、または第三級アミン)を使用したときの例、比揮発度が2のCO吸収液を使用したときの参考例をそれぞれ示す。
比揮発度が2程度の低い値のとき、ローディングの値が高くなってもCO分圧(y)の値が高くならず気液平衡線は横になだらかに伸びる直線状となる。一方、比揮発度が5あるいは10と高くなるにつれて、気液平衡線22,23は上方への凸が大きくなる曲線状となる。
【0044】
例えば、比揮発度5のCO吸収液を使用した場合を例に挙げてCO吸収液の状態を説明すると、第1リボイラ8のリッチ吸収液入口8Bには、CO吸収塔1側からCOリッチ状態となったCO吸収液が流入する。このCO吸収液の状態を図2において符号Fで示す。このCOリッチ状態のCO吸収液は、第1リボイラ8にて蒸気加熱されることとなり、Gの状態に至る。Gの状態になったCO吸収液は、ここから第2リボイラ15に至り、ここで蒸気加熱されることでCO濃度がさらに下がりHの状態に至る。すなわち、CO吸収液はCO濃度が薄くリーン状態となる。
【0045】
ここで、CO吸収液がFの状態からGの状態に至るとき、第1リボイラ8の段効率が100%であるから、Fから水平線となって延びる物質収支線24と、Gから垂直へ立ち上がる垂直線25とは、CO−アミン吸収液の気液平衡線22で交わる。この点が図2においてIである。
また、CO吸収液がGの状態からHの状態に至るとき、第2リボイラ15の段効率が100%であるから、Gから水平線となって延びる物質収支線26と、Hから垂直へ立ち上がる垂直線27とは、CO−アミン吸収液の気液平衡線22で交わる。この点が図2においてJである。
【0046】
なお、比揮発度が10のときでも第1リボイラ8と第2リボイラ15とを組み合わせた2段でCO吸収液を、リッチ状態からリーン状態へ戻すことが可能となる。
この図から明らかように、比揮発度が5以上のCO吸収液を使用すれば、第1リボイラ8と第2リボイラ15を組み合わせただけで、従前のCO回収装置で使用していた大型の再生塔を備えなくとも、同程度のアミン炭酸塩の分解性能が得られることがわかる。
なお、比揮発度が2のCO吸収液を使用する場合には、気泡槽とリボイラを5段に渡って組み合わせなければならず、大型の再生塔を使用しないメリットが薄れる。
【0047】
このようにCOガス処理装置によれば、大型の再生塔を備えなくても、リッチ状態のCO吸収液を、第1リボイラ8と第2リボイラ15とを通過させることにより、アミン炭酸塩を好適に分解することができ、所定効率のCO回収を図りながら装置の小型化、並びに建設コストを削減することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、圧力が0.3MPaGの条件下で比揮発度が5あるいは10のCO吸収液を使用する例を説明したが、これに限られることなく、比揮発度が5以上のCO吸収液を使用すれば足りる。比揮発度が5未満のものを用いると、従前の再生塔の同程度のCO回収率を得るためには、気泡槽とリボイラを4段に渡って組み合わせなければならず、再生塔を使用しないメリットが損なわれる。
【0049】
また前記実施形態では、リボイラを2段直列に配置しているが、これに限られることなく、リボイラを3段以上直列に配置してもよい。例えば、リボイラを直列に3段配置した場合には、図2中Cbで示す例の破線で示すように、前述した実施形態のCO回収装置の例に比べ、CO吸収液のCO濃度をより濃くすることができ、これにより、COの高い回収率が得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 CO吸収塔
2 原料ガス供給配管
3 リッチ吸収液払い出し配管
3A ポンプ
4 リーン吸収液戻し配管
5 原料ガス払い出し管
7 熱交換器
8 第1リボイラ
10 CO払い出し配管
13 吸収液移送配管
14 ガス移送配管
15 第2リボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COを含む複数成分の処理対象ガスからCOを分離回収するCO回収装置であって、
前記処理対象ガスにCO吸収液を接触させて前記処理対象ガス中のCOを吸収するCO吸収塔と、
前記CO吸収塔に連通され、該CO吸収塔から払い出されるCOリッチ状態のCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させるリボイラとを備え、
前記リボイラは直列に複数段配置されていることを特徴とするCO回収装置。
【請求項2】
前記リボイラは2段配置され、
前段側の第1リボイラと後段側の第2リボイラとの間には、第1リボイラのCO2吸収液を第2リボイラへ移送する吸収液移送配管と、第2リボイラで分離したCO2を第1リボイラへ移送するガス移送配管を備えることを特徴とする請求項1に記載のCO回収装置。
【請求項3】
COを含む複数成分の処理対象ガスからCOを分離回収するCO回収方法であって、
CO吸収塔にて前記処理対象ガスに圧力が0.3MPaGの条件下で比揮発度5以上のCO吸収液を接触させて前記処理対象ガス中のCOを吸収する工程と、
前記CO吸収塔に連通される第1リボイラにて、前記CO吸収塔から払い出されるCOリッチ状態のCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させる第1のCO分離工程と、
前記第1リボイラに連通される第2リボイラにて、第1リボイラから払い出されるCO吸収液を加熱して該CO吸収液からCOを分離させる第2のCO2分離工程と、
を備えることを特徴とするCO回収方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13877(P2013−13877A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150131(P2011−150131)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境調和型製鉄プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(306022513)新日鉄住金エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】