説明

CO2回収装置

【課題】CO2吸収液中に巻き込まれる気泡を抑制することができるCO2回収装置を提供する。
【解決手段】CO2とO2とを含有する排ガス12とCO2吸収液15とを接触させて排ガス12中のCO2を除去するCO2吸収塔16と、CO2吸収塔16でCO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)17中のCO2を除去し、再生する再生塔と、再生塔でCO2を除去した再生CO2吸収液(リーン溶液)15をCO2吸収塔16で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔16の底部16a側の下部液溜部50内に、吸収液中の気泡を凝集する気泡凝集部材51が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2吸収液に同伴する酸素の量を軽減し、再生塔で再生した際のCO2ガス中に含まれる酸素濃度の低減を図ったCO2回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。また、前記のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する工程としては、吸収塔において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させる工程、CO2を吸収した吸収液を再生塔において加熱し、CO2を遊離させると共に吸収液を再生して再び吸収塔に循環して再使用するものが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記従来のCO2回収装置100は、図2に示すように、ボイラやガスタービン等の産業燃焼設備11から排出されたCO2とO2とを含有する排ガス12を冷却水13によって冷却する排ガス冷却装置14と、冷却されたCO2を含有する排ガス12とCO2を吸収するCO2吸収液(以下、「吸収液」ともいう。)15とを接触させて排ガス12からCO2を除去するCO2回収部16Aを有するCO2吸収塔16と、CO2を吸収したCO2吸収液(以下、「リッチ溶液」ともいう。)17からCO2を放出させてCO2吸収液を再生する再生塔18とを有する。
そして、このCO2回収装置100では、再生塔18でCO2を除去した再生CO2吸収液(以下、「リーン溶液」ともいう。)15はCO2吸収塔16でCO2吸収液として再利用する。
【0004】
この従来のCO2回収装置を用いたCO2回収方法では、まず、CO2を含んだボイラやガスタービン等の産業燃焼設備からの排ガス12は、排ガス送風機20により昇圧された後、排ガス冷却装置14に送られ、ここで冷却水13により冷却され、CO2吸収塔16に送られる。
【0005】
前記CO2吸収塔16において、排ガス12はアミン系溶液をベースとするCO2吸収液15と交向流接触し、排ガス12中のCO2は、化学反応(R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3)によりCO2吸収液15に吸収される。
CO2回収部16AでCO2が除去された後のCO2除去排ガスは、CO2吸収塔16内の水洗部16Bでノズルから供給されるCO2吸収液を含む循環する凝縮水19と気液接触して、CO2除去排ガスに同伴するCO2吸収液15が回収され、その後CO2が除去された排ガス21は系外に放出される。
また、CO2を吸収したCO2吸収液17であるリッチ溶液は、リッチソルベントポンプ22により昇圧され、リッチ/リーンソルベント熱交換器23において、再生塔18で再生されたCO2吸収液15であるリーン溶液により加熱され、再生塔18に供給される。
【0006】
再生塔18の上部から内部に放出されたリッチ溶液は、発熱反応を生じて、大部分のCO2を放出する。再生塔18内で一部または大部分のCO2を放出したCO2吸収液はセミリーン溶液と呼称される。このセミリーン溶液は、再生塔18下部に至る頃には、ほぼ全てのCO2が除去されたCO2吸収液15となる。このリーン溶液は再生過熱器24で水蒸気25により過熱され、再生塔18内部に水蒸気を供給している。
一方、再生塔18の頭頂部からは塔内においてリッチ溶液およびセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴ったCO2ガス26が導出され、コンデンサ27により水蒸気が凝縮され、分離ドラム28にて水が分離され、CO2ガス26が系外に放出されて別途回収される。この回収されたCO2ガス26は、石油増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)を用いて油田中に圧入するか、帯水層へ貯留し、温暖化対策を図っている。
分離ドラム28にて分離された水は凝縮水循環ポンプ29にて再生塔18の上部に供給される。再生されたCO2吸収液(リーン溶液)15は、リッチ/リーンソルベント熱交換器23にてリッチ溶液17により冷却され、つづいてリーンソルベントポンプ30にて昇圧され、さらにリーンソルベントクーラ31にて冷却された後、CO2吸収塔16に供給される。
【0007】
なお、図2中、符号11aは排ガス12の煙道であり、11bは煙突、32は水蒸気凝縮水である。前記CO2回収装置は、既設の排ガス源からCO2を回収するために後付で設けられる場合と、新設排ガス源に同時付設される場合とがある。煙突11bには開閉可能な扉を設置し、CO2回収装置の運転時は閉止する。また排ガス源は稼動しているが、CO2回収装置の運転を停止した際は開放するように設定する。
【0008】
ところで、CO2を含有する排ガス12とCO2吸収液15とをCO2吸収塔16内で接触させると、CO2吸収塔底部には、CO2吸収塔内を流下したCO2吸収液に気泡が巻き込まれ、この気泡を巻き込んだ状態でリッチ溶液17が貯留される。
この気泡には排ガス中の成分である酸素(O2)を含むため、一般に吸収液中に溶解した酸素の溶存酸素の濃度が約25ppm程度であるのに対し、吸収液中に巻き込まれた気泡中の酸素濃度は約100ppm程度にまで増加する。
【0009】
酸素を含有したCO2がパイプラインにて送出される際、別のCO2源からH2Sを含んだCO2が混入すると、H2SとO2とが反応して固体の硫黄(S)が析出することがあり、酸素(O2)をできるだけ低減することが求められている。
【0010】
また、石油増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)を用いて油田中に圧入する際には、酸素の存在により設備の腐食の発生があり、さらに回収されたCO2ガスを化学用途として利用する場合には、酸素の混入は触媒の劣化等の問題があり、極力除去することが切望されている。
【0011】
従来では、吸収液からの酸素の除去を行うために、フラッシュタンク及び真空ポンプを用いることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−193116号公報
【特許文献2】特表2004−524147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の特許文献2に係る酸素除去技術においては、フラッシュタンク及び真空ポンプ等の除去装置が別途必要となり、その設備費用及び除去エネルギーが必要となり、費用がかかるという問題がある。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、CO2吸収液中に巻き込まれる気泡を抑制することができるCO2回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の発明は、CO2とO2とを含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を除去するCO2吸収塔と、前記CO2吸収塔でCO2を吸収したリッチ溶液中のCO2を除去し、再生する再生塔と、前記再生塔でCO2を除去したリーン溶液を前記CO2吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔の下部液溜部内に、CO2吸収液中への気泡を凝集させる気泡凝集部材が配設されていることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記気泡巻込み防止部材が、ワイヤ材料又は繊維状材料の集合体、充填材、焼結金属のいずれか一種であることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0017】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記気泡巻込み防止部材が、液溜部内の液面近傍又は液面下に浸漬されていることを特徴とするCO2回収装置にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、気泡巻込み防止部材を設けることにより、CO2吸収塔の下部の液溜部に落下するCO2吸収液中に含まれる微細な気泡を凝集させることとなり、結果として微細な気泡を凝集させて、大きくすると共に、浮上させて取り除き、再生塔側へのガス成分の持ち出しを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、従来のCO2回収装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかるCO2回収装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例1に係るCO2回収装置について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るCO2回収装置の構成を示す概略図である。図中、前記図2に示したCO2回収装置と同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
なお、図1では、前述したCO2回収装置100のCO2吸収塔16を示す。
図1に示すように、本発明の実施例に係るCO2回収装置は、CO2とO2とを含有する排ガス12とCO2吸収液(以下、「吸収液」ともいう。)15とを接触させて排ガス12中のCO2を除去するCO2吸収塔16と、CO2吸収塔16でCO2を吸収したCO2吸収液(以下、「リッチ溶液」ともいう。)17中のCO2を除去し、再生する再生塔と、再生塔でCO2を除去した再生CO2吸収液(以下、「リーン溶液」ともいう。)15をCO2吸収塔16で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔16の底部16a側の下部液溜部50内に、吸収液中の気泡を凝集させる気泡凝集部材51が配設されているものである。
【0022】
この気泡凝集部材51は、吸収塔16の底部側の下部液溜部50の液面近傍又は液面下に浸漬するように設置するようにすればよい。
【0023】
この気泡凝集部材51を設けることにより、下部液溜部50に落下する吸収液中に含まれる微細な気泡を凝集させることとなり、結果として微細な気泡を凝集させて、大きくすると共に、浮上させて、下部液溜部50内から取り除くこととなる。
その結果、再生塔に送込まれるリッチ溶液17中に気泡が存在しなくなるので、酸素は溶存酸素のみとなることとなる。
【0024】
この気泡凝集部材51としては、例えばワイヤ状のワイヤメッシュ部材(例えば気体中のミストを凝集させるデミスタ等を例示することができる。)や、繊維状の繊維集合部材(例えば気体中のミストを凝集させるコアレッサー等を例示することができる。)等を挙げることができる。
また、ワイヤ材料又は繊維状材料の集合体(積層体も含む)以外には、例えば充填材又は焼結金属を挙げることができる。
【0025】
このような材料の気泡凝集部材51を設置することにより、吸収液中の微細な気泡を凝集させて、浮上させることができる。すなわち、吸収液中の微細な気泡を凝集させて、浮上させることとなるので、再生塔への気泡の持ち出し量を極力低減することができる。よって、排ガス12中に含まれるガス成分の酸素(O2)及び窒素(N2)を除去して、再生塔側へのガス成分の持ち出しを大幅に低減することができる。
【0026】
以上、本実施例に係るCO2回収装置は、CO2吸収塔16の下部液溜部50内に気泡巻込防止部材51を配設してなるので、吸収液15中に巻き込まれた気泡を凝集させて除去することができる。この結果、再生塔に送られるリッチ溶液17中の酸素は溶存酸素のみとなり、再生塔から回収されたCO2ガス中に含まれる酸素濃度を低減することができる。このため、再生塔から回収されるCO2ガスを圧縮する際に硫黄成分が析出するのを抑制することができる。また、CO2ガスを化学用途として用いる場合には、触媒の劣化等の問題が解消される。
【0027】
[試験例]
CO2吸収塔16の下部液溜部50内に気泡凝集部材51を配置させ、アミン系のCO2吸収液を用いて、排ガス中のCO2を除去する際に、酸素濃度を計測したところ、気泡凝集部材51を設置する以前は、リッチ溶液17中の酸素濃度が、54ppmであったものが、気泡凝集部材51を設置することで16ppm程度に低減し、約70%の酸素を除去することができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係るCO2回収装置は、吸収塔内において、排ガス中に含まれるガス成分の酸素(O2)及び窒素(N2)を除去して、再生塔側へのガス成分の持ち出しを大幅に低減し、再生塔から回収されるCO2ガス中の酸素濃度を低減し、例えばCO2ガスを圧縮する際に硫黄成分(S)が析出するのを防止することに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0029】
12 CO2とO2とを含有する排ガス
15 CO2吸収液(リーン溶液)
16 CO2吸収塔
17 CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)
18 再生塔
50 下部液溜部
51 気泡凝集部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2とO2とを含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を除去するCO2吸収塔と、前記CO2吸収塔でCO2を吸収したリッチ溶液中のCO2を除去し、再生する再生塔と、前記再生塔でCO2を除去したリーン溶液を前記CO2吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、
前記CO2吸収塔の下部液溜部内に、CO2吸収液中への気泡を凝集させる気泡凝集部材が配設されていることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記気泡巻込み防止部材が、ワイヤ材料又は繊維状材料の集合体、充填材、焼結金属のいずれか一種であることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記気泡巻込み防止部材が、液溜部内の液面近傍又は液面下に浸漬されていることを特徴とするCO2回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−279897(P2010−279897A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134947(P2009−134947)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】