説明

CTP印刷版の製造方法

【課題】顔料やマット剤等の用いる溶剤に不溶性の成分を含有する感光液を用いるCTP印刷版の製造方法において、製造時に塗布欠陥の発生が無くまた感光層中に含まれる界面活性剤の悪影響がなく、長期に渡って安定な現像処理を行うことが可能なCTP印刷版の製造方法を提供する事。
【解決手段】支持体上に少なくとも0.1質量%以上の濃度で不溶性成分を有する感光液を塗布して成る画像形成層を有し、レーザー光を光源としてダイレクト露光されるCTP印刷版を製造するための方法であって、少なくともウエブ状の支持体に感光液を塗布する塗布部と、感光液を前記塗布部に供給するための送液手段と、前記送液手段を用いて前記塗布部へ供給するために感光液を貯留する待機タンクを有する製造装置を用いて製造を行うCTP印刷版の製造方法において、前記待機タンク内の感光液の循環を行う循環手段を有するCTP印刷版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版、特にレーザー光を光源としてダイレクト露光される平版印刷版の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外、可視、赤外などの各種レーザーを用いたダイレクト製版システム(コンピュータで作製した画像情報をダイレクトに製版するためにコンピュータ・ツウ・プレート、頭文字をとりCTPシステムとも呼称される)が実用化され、一般商業印刷の分野において広く普及している。このダイレクト製版システムはシステムをデジタル化する事によってスピード、コスト、安定性などの面で従来のフィルムを用いた製版システムに比べて有利であり、今日の一般商業印刷の市場では主流となりつつある。
【0003】
このダイレクト製版システムはこれらの利点から一般商業印刷市場のみならず、新聞印刷市場にも広く浸透しつつある。新聞印刷ではその印刷部数の多さと印刷速度の速さから一般商業印刷に比べて印刷条件が過酷であり、印刷版に対して高い耐刷性が要求される。このため、これまでのフィルム製版システムにおいてはポジ型感光材料よりも架橋反応により高い強度の画像を形成することの出来るネガ型の光重合性感光材料が用いられてきた。このことから新聞印刷市場へのダイレクト製版システムの導入には高い画像強度を持つ平版印刷版が必要不可欠とされていた。
【0004】
これまでのネガ型感光材料を用いたフィルム製版システムでは水銀ランプなどの非常に高いエネルギーを持つ光源で長時間、密着露光を行なう事により感光層の架橋反応を起こすものであり、現像処理によって得られた画像は非常に強固なものであった。ダイレクト製版システムではこれらの光源に比べて低い露光エネルギーで露光処理を行うため、同等の強度を持つ画像の形成は当初、困難とされてきたが、近年では画像強度を改良するために多様な感光材料が開発されている。特に750nm以上の赤外光領域に発光する高出力半導体レーザーの小型化、高出力化が進み、ダイレクト製版システム用の露光用光源として非常に有用であることから、赤外光レーザーを用いたダイレクト製版システムにおいて感光性材料の開発はめざましい発展を遂げ、様々な提案がなされている。
【0005】
例えば特開平7−20629号公報に記載の感光性材料はレゾール樹脂、ノボラック樹脂および潜伏性ブロンステッド酸、赤外吸収剤を含む事を特徴とし、ポジ版にもネガ版にも利用出来る平版印刷版について記載されている。また、特開2000−089452号公報には架橋性を有する化合物が独自の構造であり、バインダーがヒドロキシ基またはアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーで、かつ熱により酸を発生する化合物と赤外線吸収剤を含むネガ型画像記録材料について記載されている。また、特開2001−272778号公報にはボレート錯塩とトリハロアルキル置換化合物および近赤外光から赤外光領域の波長範囲において吸収を有する増感色素を併せて含むことを特徴とした感光材料について記載されている。
【0006】
また、これらのダイレクト製版に対応した平版印刷版(以下CTP印刷版と言う)は、一般的に下記の様な製造装置を用いて製造されている。例えば、陽極酸化、砂目立て等親水性表面処理を施されたアルミニウム支持体のコイルを送り出す手段、感光液を塗布する手段、塗布された表面から溶剤を蒸発させ乾燥する手段、及び再度コイルに巻かれた状態とする巻き取り手段から構成されている。また塗布手段では、アルミニウム支持体の表面処理された側に感光液を塗布する塗布部と感光液を貯留しておく待機タンクとそこから塗布部に送給する送液部から形成されている。
【0007】
CTP印刷版の製造においては、従来のPS版等の平版印刷版に比べ高感度故に、感光層の均一性は製版、印刷性能に直結するためにシビアに求められる。このため特に、製造時における感光層上に発生する塗布欠陥については重要な問題となっていた。
【0008】
従来から平版印刷版の感光液塗布においては、塗布ムラ、ピンホール、筋ムラ等塗布欠陥の改善のため各種界面活性剤の添加についていくつかの提案がなされている(例えば特許文献1、2)。しかしながら、CTP印刷版ではその機能発現のために顔料やマット剤等に用いる溶剤に不溶性の成分が分散状態で添加されており、新たな界面活性剤の添加により分散状態が壊れ、凝集、沈殿を生じ、塗布欠陥を招く結果をもたらせていた。また感光液への界面活性剤の過度の添加では、前記送液部や待機タンク等での感光液の発泡が多くなり、これまた塗布欠陥の増加に繋がる恐れがあった。
【0009】
さらに、露光後の現像処理工程においては、CTP印刷版の非画像部を溶解除去されるが、感光層中に界面活性剤が量多く含まれる場合には泡立ちがひどくなり、製版に支障を来すなど悪影響を与えることがあった。最近では地球環境保護の観点から出来るだけ廃液を減らすなどの目的で数ヶ月間の長期に渡って現像液、水洗液等の製版処理液を使用することが求められてきている。このため出来るだけ最小限量の界面活性剤の添加で塗布欠陥を低減させることが急務となっていた。
【0010】
またこれまでにCTP印刷版の製造装置及び製造方法について、原材料となる顔料分散液の循環について提案されている(特許文献3)が、顔料単独での分散の重要性について記述されており、感光液として各種原料と混合した状態となる待機タンクでの感光液の撹拌もしくは循環に関して、特に塗布欠陥への影響に関する記述も見られなかった。しかし現実的には、原料として良好な分散状態であっても、他の原材料、特にイオン性や粘性が異なる原材料との混合時には凝集等を生じ、結果として塗布欠陥を生じさせる場合があった。
【特許文献1】特開平2−1856号公報
【特許文献2】特開2005−292772号公報
【特許文献3】特開2003−107726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の課題は、顔料やマット剤等の用いる溶剤に不溶性の成分を含有する感光液を用いるCTP印刷版の製造方法において、製造時に塗布欠陥の発生が無くまた感光層中に含まれる界面活性剤の悪影響がなく、長期に渡って安定な現像処理を行うことが可能なCTP印刷版の製造方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は以下に記載のCTP印刷版の製造方法によって達成できることを見いだした。
1.支持体上に少なくとも0.1質量%以上の濃度で不溶性成分を有する感光液を塗布して成る画像形成層を有し、レーザー光を光源としてダイレクト露光されるCTP印刷版を製造するための方法であって、少なくともウエブ状の支持体に感光液を塗布する塗布部と、感光液を前記塗布部に供給するための送液手段と、前記送液手段を用いて前記塗布部へ供給するために感光液を貯留する待機タンクを有する製造装置を用いて製造を行うCTP印刷版の製造方法において、前記待機タンク内の感光液を、下記関係式を満たす循環を行う循環手段を有するCTP印刷版の製造方法。
(関係式) (a×t)/b≧2、t≧60
a:循環流量〔L/min〕、b:待機タンク投入容量〔L〕、t:循環時間〔min〕
2.前記感光液中に含有される界面活性剤の合計含有濃度が0.05質量%以下である前記1記載のCTP印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、顔料やマット剤等に用いる溶剤に不溶性の成分を含有する感光液を用いるCTP印刷版の製造方法において、製造時に塗布欠陥の発生が無くまた感光層中に含まれる界面活性剤の悪影響がなく、長期に渡って安定な現像処理を行うことが可能となるなど秀逸な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者が鋭意検討した結果、上記課題に対して、少なくともウエブ状の支持体に感光液を塗布する塗布部と、感光液を前記塗布部に供給するための送液手段と、前記送液手段を用いて前記塗布部へ供給するために感光液を貯留する待機タンクを有する製造装置を用いて製造を行うCTP印刷版の製造方法において、より少ない界面活性剤量でも前記待機タンク内の感光液を、下記関係式を満たす循環を行う循環手段を用いることが極めて有用である事が明らかになった。
(関係式) (a×t)/b≧2、t≧60
a:循環流量〔L/min〕、b:待機タンク投入容量〔L〕、t:循環時間〔min〕
【0015】
上記関係式で、循環流量aは待機タンク内感光液を循環させる流量〔L/min〕を表し、待機タンク投入容量bは待機タンクに初期投入される感光液量〔L〕を表す。また循環時間tは初期投入量の感光液の循環時間、即ち待機タンク内に感光液が投入されてから塗布部へ移送開始となるまでの循環時間〔min〕を表し、また最低循環時間としては60min以上を必要とするものである。
【0016】
また本発明における循環手段とは、待機タンクに投入された感光液を静止させず流動させておくことを目的とするものである。具体的には、待機タンク中で撹拌を行うことや待機タンクからポンプ等を用いて感光液の一部を抜き取り再度投入を繰り返すことなどで達成される。特に待機タンクの一部に配管を設け、ポンプで感光液を連続して移送させ、その配管中にフィルター手段を設けることが、フィルターでの衝突による撹拌効率の向上や粗大異物の除去も可能となるので好ましい態様である。
【0017】
このように待機タンク中の感光液を上記条件で循環することで、塗布欠陥の原因となる不要成分の凝集を抑えること、また凝集に至らずとも感光液成分、特にポリマー成分の部分的な局在化を抑制することで、感光液の均一性が向上するためと推測している。
【0018】
以下に本発明を用いたCTP印刷版の製造装置について図1を用いて説明する。図1は本発明の一例を示す製造装置の概略図である。ウエブ状のアルミニウム支持体100の表面側に感光液を塗布する塗布部20と、感光液を前記塗布部に供給するための送液手段30と、前記塗布部へ供給するために感光液を貯留する待機タンク40が設けられており、この待機タンク40には循環手段45が接続されている。
【0019】
循環手段45は、循環ライン41、待機タンク40内の感光液を循環させる循環ポンプ42、感光液を濾過するためのフィルター手段43とから構成されており、待機タンク40内の感光液は、循環ライン41を経由して下部から上部へ移送されることで循環されるようになっている。また待機タンク40内で感光液が一定に撹拌されるように、循環ライン中の循環流量a(L/min)と待機タンク40の容量b(L)及び循環時間t(min)が次の関係式を満たすように設定されている。
(関係式) (a×t)/b≧2、t≧60
a:循環流量〔L/min〕、b:待機タンク投入容量〔L〕、t:循環時間〔min〕
【0020】
このように、待機タンク40内の感光液は塗布開始までの間に2回以上循環され、フィルター手段を通過しているので、感光液中の不溶性成分は安定に分散が維持され、また待機タンク中に凝集物や沈降物の発生や、待機タンク中でのポリマー成分の局在化が抑制される。従って、この感光液をウエブ状アルミニウム支持体100に塗布することでピンホール、塗布筋等の塗布欠陥のない均一な感光層を形成することができる。また待機タンク40内の感光液は塗布部20へ移送開始後も同様に循環し続けることが好ましい。
【0021】
本発明の特徴である循環手段の構成について詳しく説明する。循環手段は、少なくともポンプと循環ライン及びフィルター手段から構成される。用いられるポンプとしては、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプなどの容積型ポンプが加圧状態での送液性に優れ好ましい。中でもギアポンプが比較的流量も得られ、またギアの噛み合わせにより撹拌効果が高いため好ましい。循環ラインは金属もしくはプラスチック製の配管で構成される。いずれも用いる感光液の溶剤に対して溶解あるいは可塑剤が抽出されるなどの悪影響を及ぼさない材質であれば良い。
【0022】
またフィルター手段としては、一般に市販のカートリッジ式或いはユニット式のフィルターでデプスタイプ、メンブレンタイプいずれも用いることが可能である。またろ材としては、セルロース、セルロースエステル、テフロン(登録商標)、ナイロン、酢酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の素材を用いたものを用いることが出来る。中でもデプスタイプでろ材としてポリプロピレン繊維の不織布を交絡させたものが比較的長期に渡って濾過効率が安定で、一般的な塗布溶剤に広範囲に耐性があり好ましい。また捕集性能としては、用いる不溶性成分の平均粒子径にもよるが、粒子径は形成される画像に当然影響を与えるため通常は数μm以下となるため、5μm以上の粒子が90%以上捕集可能なものが好ましい。
【0023】
次に本発明が適用可能なCTP印刷版について説明する。本発明におけるCTP印刷版は、金属製支持体上に少なくとも0.1質量%以上の濃度で不溶性成分を有する感光液を塗布して成る画像形成層を有する、レーザー光を光源としてダイレクト露光されるCTP印刷版である。不溶性成分としては、用いる溶剤に不溶性であれば特に問わないが、例えば用いられるレーザー光に対して増感作用、セーフライト性向上のための減感作用、もしくは光熱変換用等の目的で用いられる顔料や画像視認性向上のための顔料等の着色剤、及び版面の傷付き防止や多数枚積載時に版間分離性を向上せしめるために用いるマット剤などが挙げられる。
【0024】
前記着色剤の例としては、下記のような、無機顔料、有機顔料、色素などが挙げることができる。無機顔料としては、雲母状酸化鉄、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、二酸化チタン、被覆雲母、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、ジンククロロメート、モリブデン赤、酸化クロム、鉛酸カルシウム等が挙げられる。又、有機顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アンスロン顔料、キナクリドン顔料、アンスラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、インダスロン顔料、ピランスロン顔料等が挙げられる。又、色素としては、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素が挙げられる。前記着色剤は、単独で用いてもかまわないが、2種以上を併用してもよい。
【0025】
用いられる着色剤の粒径は、平均粒子径として0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。また粒度分布として出来るだけ単分散であることが好ましい。また、顔料の添加量は、全感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0026】
用いられる着色剤は均一に分散させておくことが好ましく、分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0027】
また本発明に係るCTP印刷版の感光層において使用されるマット剤としては、従来公知のマット剤を適宜用いることが出来る。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機ポリマー系の平均粒子径が0.1〜5μmの球状粒子やセラミック、シリカ、アルミナ等の無機系の平均粒子径が0.1〜5μmの微粒子が好適に用いることが出来る。
【0028】
これらを0.1質量%以上含有する感光液を用いて製造させるものであれば、従来公知のCTP印刷版を用いることができる。これらの印刷版の例としては特開平7−20629号公報に記載のレゾール樹脂、ノボラック樹脂および潜伏性ブロンステッド酸、赤外吸収剤を含む事を特徴とする平版印刷版や、特開2000−089452号公報に記載の架橋性を有する化合物が独自の構造であり、バインダーがヒドロキシ基またはアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーで、かつ熱により酸を発生する化合物と赤外線吸収剤を含む平版印刷版、また、特開2001−272778号公報に記載のボレート錯塩とトリハロアルキル置換化合物および近赤外光から赤外光領域の波長範囲において吸収を有する増感色素を併せて含むことを特徴とした平版印刷版等が挙げられる。中でも、平版印刷版の感光層が重合性ポリマーとして側鎖に重合性二重結合を有するモノマーとカルボキシル基含有モノマーの共重合体を有しかつ、光重合開始剤として有機ホウ素塩を有する平版印刷版であればさらに高感度であるために有効に適用できる。
【実施例1】
【0029】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
以下に本実施におけるCTP印刷版の製造装置について図1を用いて説明する。図1は本発明の一例を示す製造装置の概略図である。ウエブ状のアルミニウム支持体100の表面側に感光液を塗布する塗布部20と、感光液を前記塗布部に供給するためのステンレス製の送液手段30と、前記塗布部へ供給するために感光液を貯留するステンレス製の待機タンク40が設けられており、この待機タンク40には循環ライン41が接続されている。
【0031】
循環ライン41には、待機タンク40内の感光液を循環させる循環ポンプ42、感光液を濾過するためのフィルター手段43が設けられており、待機タンク40内の感光液は、循環ライン41を経由して下部から上部へ移送される。また待機タンク40内で感光液が一定に撹拌されるように、循環ライン中の循環流量a(L/min)と待機タンク40の容量b(L)及び循環時間t(min)が次の関係式を満たすように設定されている。
(関係式) (a×t)/b≧2、t≧60
a:循環流量〔L/min〕、b:待機タンク投入容量〔L〕、t:循環時間〔min〕
【0032】
循環ポンプ42は市販のギアポンプ、フィルター手段43としては、ポリプロピレン製不織布を交絡させた市販のカートリッジフィルター(絶対濾過精度7μm)のものを用いた。
【0033】
上記の装置を用いて、下記に示す感光液材料を投入し、循環流量a、待機タンク容量b、循環時間tを表1の通り実施して感光液を作製し、それぞれウエブ状のアルミニウム支持体100の表面側に感光液の塗布を行いCTP印刷版1〜7を得た。これらについて、塗布欠陥を調査した。結果を表1にまとめた。さらに下記感光液材料にフッ素系界面活性剤(セイミケミカル製サーフロンS381)を追加した感光液材料について表2の通りに実施し、CTP印刷版8〜11を得た。同様に塗布欠陥を調査し結果を表2にまとめた。
【0034】
〔感光液材料〕
ポリマー(化1に示す化合物の10%ジオキソラン溶液) 300質量部
有機ホウ素塩(化2に示す化合物) 4質量部
エチレン性不飽和化合物(化3に示す化合物) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
増感色素(化4に示す化合物) 0.8質量部
着色剤(25%フタロシアニン顔料MEK分散物) 15質量部
重合禁止剤(2,6−ジ−t−ブチルクレゾール) 0.1質量部
トリハロアルキル置換化合物(化5に示す化合物) 1質量部
マット剤(シリコーン樹脂分散物:GE東芝シリコーン社製トスパール145)
0.6質量部
1,3−ジオキソラン 70質量部
シクロヘキサノン 20質量部
(上記感光液材料の内着色剤とマット剤が不溶性成分となり、感光液中に1%含有。)
【0035】
【化1】

【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1、2からも明かなように、感光液の循環の有無で顕著な差異がある。また表2で界面活性剤を0.02質量部以上添加したもの(表2No.10、11)では、製版処理において多数枚製版を実施すると自動現像機の現像槽及び水洗槽で泡立ちが多く、自動製版機の水位センサーやロールを著しく汚し、誤動作や搬送ジャム及び版面への汚れ付着など悪影響を及ぼす結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の活用例として、特に新聞印刷分野向けCTP印刷版製造方法として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一例を示す製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0045】
100 ウエブ状のアルミニウム支持体
20 塗布部
21 バックアップロール
30 送液手段
31 送液ポンプ
40 待機タンク
41 循環ライン
42 循環ポンプ
43 フィルター手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも0.1質量%以上の濃度で不溶性成分を有する感光液を塗布して成る画像形成層を有し、レーザー光を光源としてダイレクト露光されるCTP印刷版を製造するための方法であって、少なくともウエブ状の支持体に感光液を塗布する塗布部と、感光液を前記塗布部に供給するための送液手段と、前記送液手段を用いて前記塗布部へ供給するために感光液を貯留する待機タンクを有する製造装置を用いて製造を行うCTP印刷版の製造方法において、前記待機タンク内の感光液を、下記関係式を満たす循環を行う循環手段を有することを特徴とするCTP印刷版の製造方法。
(関係式) (a×t)/b≧2、t≧60
a:循環流量〔L/min〕、b:待機タンク投入容量〔L〕、t:循環時間〔min〕
【請求項2】
前記感光液中に含有される界面活性剤の合計含有濃度が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のCTP印刷版の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−264047(P2007−264047A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85447(P2006−85447)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】