DAP−10およびその使用
本発明は、癌および自己免疫の処置に有用であるインビボでのDAP10の生物学的活性のモジュレーターを同定する方法、およびその因子を使用する方法に関する。被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制し得る。上記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、免疫学および医薬の分野に関する。より具体的に、本発明は、インビボで抗腫瘍活性を増強し、そして自己免疫を減少させるDAP10活性のモジュレーション、およびこのようなモジュレーションを媒介する化合物の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫細胞の活性の閾値は、自己抗原および外来抗原の認識を介して受容される活性化シグナルおよび抑制性シグナルによって調節される。活性化レセプターまたは抑制性レセプターに影響する遺伝的欠損は、免疫系が自己と非自己との間で区別することを不可能にし、自己免疫または感染因子および形質転換細胞に対する異常な応答を引き起こす(1、2)。
【0003】
多くの活性化レセプターは、マルチサブユニット複合体であり、この複合体において、膜貫通アダプタータンパク質が、細胞内部でのシグナルの伝達を担う。DAP10は、造血細胞において発現されるマルチサブユニットレセプター複合体中の活性化レセプターNKG2Dと結合する膜貫通アダプタータンパク質である(3)。NKG2D−DAP10レセプター複合体は、NK,γδ T細胞およびNKT細胞において構成的に発現され、そして生得的な刺激は、その発現をさらにアップレギュレートし得る(3〜6)。活性化の際に、CD8+T細胞およびマクロファージは、適応性の免疫応答の調節に関与するNKG2D−DAP10レセプターを発現する(7、8)。細胞表面におけるNKG2Dの発現は、DAP10タンパク質とのその結合を必要とする。これは、DAP10の膜貫通領域中の酸性アミノ酸と、NKG2Dタンパク質の膜貫通ドメイン中の塩基性アミノ酸との間の相互作用を含む(3)。NKG2DおよびDAP10の発現パターンは、完全に重複しないので、DAP10が他の未だに同定されていないレセプターと結合する(特に、いくつかの骨髄性細胞の集団において)ことが、考えられる。ヒトにおいて、NKG2Dが専らDAP10と結合する(3,4)のに対して、マウスは、NKG2Dについての2つの異なるアイソフォーム(DAP10にのみ結合する長い形態(NKG2D−l)、およびDAP10およびDAP12の両方と対になることが示されている短い形態(NKG2D−s))を発現する(9、10)。
【0004】
免疫レセプター活性化チロシンモチーフ(immunorecepter tyrosine−based activation motif)(ITAM)を介してシグナルを与えるDAP12および他のアダプタータンパク質とは異なり、DAP10は、ITAMを有さないが、DAP10は、PI3−キナーゼ経路の活性化に関与するYXXMモチーフを含む(3)。NK細胞において、DAP10のシグナル伝達は、細胞傷害を直接誘導し、そしてDAP12関連レセプターを介して開始されるサイトカイン産生を増強する(11、12)。T細胞において、DAP10のシグナル伝達は、主に、TCR誘導性シグナルに対する共起刺激を提供する(5)。
【0005】
NKG2D−DAP10レセプター複合体に対する同定されたリガンドは、ヒトにおけるMICA、MICBおよびULBP、ならびにげっ歯類動物におけるRae−1、H60およびMULT−1を含むクラスI MHC様タンパク質である(4、13、14、15)。一般に、それらは、成体の組織において最小限に発現され、そして腫瘍細胞および病原体感染細胞においてアップレギュレートされる。腫瘍細胞におけるNKG2Dリガンドの異所性の発現は、宿主からの腫瘍の拒絶を生じる(16、17)。しかし、NKG2Dリガンドは、正常組織においても同様に発現され得、それによってNKG2D−DAP10複合体の正確な役割を不明確にする。
【0006】
DAP10が、免疫応答の重要な役割を有するもの(player)であることが公知である多くの細胞型において発現され、そして特徴付けられるが、この分子によって果たされる生物学的役割の明確な証拠は、存在しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、進行する免疫応答のダイナミクス(dynamics)または一次免疫応答の開始を変化させるための、DAP10(造血細胞における細胞表面シグナル伝達分子)のモジュレーションに関する。代表的に、免疫応答は、体液性(抗体媒介性)または細胞性(T細胞媒介性)である。体液性免疫応答は、Th2細胞の活性化ならびにIL−4およびIL−10の産生によって特徴付けられ、そして最終的に、抗原特異的B細胞および抗体産生の活性化をもたらす。一方で、細胞性免疫応答は、Th1細胞の活性化ならびにIFN−γおよびIL−12の産生によって特徴付けられ、細胞傷害性T細胞(通常は、CD8+ T細胞)の増殖および活性化を生じる。これらの応答の各々は、特定の病原体から宿主を保護するように設計され、そしてこれらの応答の調節は、健全な免疫系を維持するのに重要である。調節されない免疫応答または異常な免疫応答は、自己免疫、種々の免疫病理、および抑制された抗腫瘍反応性または抗腫瘍反応性の非存在を生じる。免疫応答の1つの同定された調節因子は、調節性T細胞である。調節性T細胞は、宿主免疫応答を極度に抑制し、そして自己中毒回避を誘導する。例えば、Roncaroloら、Curr.Opin.Immunol.12:676−683(2000);Sakaguchiら、Immunol.Rev.182:18−32(2001)を参照のこと。調節性T細胞(「Treg」)は、種々の表現型を有するようであり、したがって調節性T細胞は、一貫して、それらの機能的活性によってのみ同定可能である。現在、その存在(または非存在)が、T細胞応答のこの調節に明確に寄与する単一分子は、同定されていない。本発明者らは、本明細書中で、その活性が細胞性免疫応答の調節に重要であり、したがってインビボの免疫応答をモジュレートするための有意な標的として、DAP10を開示する。
【0008】
したがって、被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制し得る。上記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害し得る。この方法において有用である因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAであり得る。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、NKG2DリガンドまたはLAGE−1を発現する。1つの実施形態において、上記因子は、NK細胞の細胞傷害もしくはNKT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する。上記因子は、NK細胞の増加した増殖またはNKT細胞の増加した増殖を刺激し得る。いくつかの実施形態において、前記因子は、少なくとも特徴的なサイトカインのNK細胞またはNKT細胞からの増加したサイトカイン産生を刺激する。上記特徴的なサイトカインは、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2であり得る。
【0009】
DAP10活性をモジュレートする因子の有効量を細胞に投与する工程を包含する、標的に対する細胞傷害を増加する方法であって、上記DAP10活性は、減少されるか、または排除される方法もまた、本明細書中で特徴付けられる。上記標的は、腫瘍細胞であり得る。いくつかの実施形態において、上記細胞傷害のメディエーターは、NK細胞またはNKT細胞である。上記細胞は、組織または生体にあり得る。
【0010】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害し得るか、または抑制し得る。上記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する。この方法において有用な因子は、DAP10の膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである。1つの実施形態において、前記被験体は、癌を有する。
【0011】
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記癌は、皮膚癌である。特定の実施形態において、上記癌は、化学的に誘導される。
【0012】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、発癌を弱めるか、または改善する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法がまた、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記発癌は、皮膚の発癌である。特定の実施形態において、上記発癌は、化学的に誘導される発癌である。いくつかの実施形態において、上記DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される。
【0013】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、皮膚の腫瘍である。1つの実施形態において、上記腫瘍は、化学的に誘導される。上記DAP10生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価され得る。
【0014】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程;b)試験化合物を上記DAP10−/−に投与する工程;c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程;およびd)試験化合物を、上記試験化合物が上記疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、上記自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程;を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である。この方法によって同定された有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法もまた、本明細書中で特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫応答の重要な調節性のようなDAP10についての生理学的な役割に関する。DAP10の欠如は、原発性の増殖(outgrowth)および転移性腫瘍の増殖(growth)の両方に対する抗腫瘍免疫応答性の増大をもたらし、このことは、DAP10が免疫監視における重要な役割を有するものであることを意味する。DAP10の欠如はまた、自己免疫疾患に対する感受性の上昇をもたらし、このことも、DAP10がインビボの免疫応答の調節に関与することを意味する。したがって、本発明の目的は、特に、癌および自己免疫における免疫応答性を変化させるためのDAP10のモジュレーションに関する。DAP10をモジュレートする因子を同定する能力は、免疫応答の外部からの調節を可能にし、発癌および腫瘍増殖を予防しない場合に、少なくともそれらを減少させるための腫瘍に対する免疫監視の増強を可能にし得る。
【0016】
開示の明確性のために、そして限定としてではなく、本発明の詳細な説明は、以下のサブセクションに分けられる。
【0017】
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。全ての特許、公開された特許出願および他の出版物、ならびにGenBankおよび本明細書中に言及される他のデータベースからの配列は、その全体が参考として援用される。この節に示される定義が、本明細書中に参考として援用される特許、公開された特許出願、および他の出版物ならびにGenBankおよび他のデータベースからの配列に示される定義に反するか、あるいはそれと矛盾する場合、この節に示される定義が、本明細書中に参考として援用される定義より優先する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「因子(agent)」は、本発明の分子の発現および/または活性をモジュレートする(例えば、上方調節(up−modulate)するか、または刺激し、そして下方調節(down−modulate)するか、または阻害する)化合物を含む。本明細書中で使用される場合、用語「インヒビター」または「阻害性因子」は、本発明の分子の発現および/または活性を阻害する因子を含む。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、抗原性エピトープを特異的に結合するのに必要な可変領域配列を含む、単離された結合因子または組換え結合因子をいう。したがって、抗体は、抗体の任意の形態または所望の生物学的活性(例えば、特異的標的抗原を結合すること)を示すそのフラグメントである。したがって、抗体は、その最も広い意味で使用され、そして具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ(nanobody)、ダイアボディ(diabody)、多重特異的抗体(multispecific antibody)(例えば、二重特異的抗体(bispecific antibody))、および抗体フラグメント(scFv、Fab、およびFab2が挙げられるが、これらに限定されない)を網羅するが、但しそれらは、所望の生物学的活性を示す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「自己免疫」とは、被験体の免疫系(例えば、T細胞およびB細胞)が被験体自身の組織に対して反応を始める状態をいう。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「発癌」とは、悪性細胞もしくは新生物性細胞または腫瘍の発生をいう。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞媒介性の応答」とは、T細胞、および免疫系の非特異的な細胞(NK細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、および好塩基球が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介される、抗原、細胞、または生物体に対する宿主の応答をいう。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「DAP10」は、供給源(一般的に認められるWO99/06557に開示されるようなDAP10が挙げられるが、これに限定されない)にかかわらず、DAP10タンパク質の全ての形態を包含する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「転移性腫瘍」とは、原発性腫瘍から離れた部位において増殖する腫瘍細胞をいう。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」とは、B細胞またはT細胞と異なり、そして種々の機構(直接的な細胞溶解、抗体依存性細胞媒介性の溶解、および他の細胞を活性化するIFN−γ産生が挙げられる)によって、生得的な免疫応答において細胞(代表的には、病原体感染細胞または腫瘍細胞のいずれか)を殺すように機能する大きい顆粒リンパ球をいう。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「NKT細胞」とは、NK細胞マーカーもまた発現するT細胞の小さいサブセットをいう。NKT細胞は、NK1.1(CD161)+細胞、CD3+細胞、CD4+/−細胞である。TCR−α鎖は、代表的なT細胞と比較して制限された多様性を有し、そしてNKT細胞は、クラスI様分子(例えば、CD1)を認識する。NKT細胞は、MHCに拘束されず、そしてそのNKT細胞は、抗原提示細胞によって提示されるペプチドを認識しない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されるアミノ酸の比較的短い鎖を含む。用語「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」は、ペプチドを模倣し得るか、またはペプチドに拮抗し得る非ペプチド性の構造エレメントを含む化合物を含む。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「原発性腫瘍」とは、原位置(in situ)に留まる腫瘍をいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「調節性T細胞」または「Treg」とは、他の免疫細胞の機能の抑制を引き起こすT細胞をいう。例えば、von Herrathら、Nature Rev.Immunol.3:223−32(2003)を参照のこと。Tregは、細胞と細胞との接触によって直接的か、または抗炎症性メディエーター(例えば、IL−10、TGF−β、またはIL−4)の分泌を介して間接的かのいずれかで、他の免疫機能を抑制し得る。Levingsら、Arch.Allergy Immunol.129:23−76(2002);Shevach、Nature Rev.Immunol.2:389−400(2002)を参照のこと。いくつかの実施形態において、Tregは、CD4+CD25+ T細胞である。例えば、Waldmannら、Immunity 14:399(2001)を参照のこと。代表的に、Tregは、能動的に、Th1細胞、Th2細胞、またはナイーブなT細胞の増殖およびサイトカイン産生を抑制し、このT細胞の増殖およびサイトカイン産生は、活性化シグナル(例えば、抗原および抗原提示細胞、またはMHCの状況(context)において抗原を模倣するシグナル(例えば、抗CD3抗体+抗CD28抗体)によって培養中に刺激されている。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「低分子干渉(small interfering)RNA」(「siRNA」)または「短鎖干渉(short interfering)RNA」)とは、干渉を指揮し得るか、またはRNA干渉を媒介し得る、約10〜50個の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)からなるRNA(またはRNAアナログ)をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」とは、免疫応答が誘発され得るあらゆる生きている生物体をいい、好ましくは、その被験体は、哺乳動物である。例示の被験体としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞」、または「Tリンパ球」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)由来のT細胞系統内のあらゆる細胞をいう。好ましくは、T細胞は、CD4またはCD8のいずれか(しかし、それらの両方を発現しない)、およびT細胞レセプターを発現する成熟T細胞である。本明細書中に記載される種々のT細胞集団は、当該分野において公知であるそれらのサイトカインプロフィールおよびそれらの機能に基づいて定義され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」とは、被験体に対する治療因子の適用もしくは投与、あるいは疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害についての素因を有する被験体由来の単離組織または単離細胞株に対する治療因子の適用もしくは投与をいい、これらの適用もしくは投与は、その疾患もしくは障害を治癒する(cure)か、治癒する(heal)か、緩和するか、軽減するか、変化させるか、治療するか、改善する(ameliorate)か、改善する(improve)か、またはその疾患もしくは障害に影響を与える目的を伴う。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「腫瘍」とは、任意の悪性細胞または新生物性細胞をいう。
【0036】
(B.細胞の応答のモジュレーション)
被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大させるための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。標的に対する細胞傷害を増加させる方法であって、細胞にDAP10活性をモジュレートする因子の有効量を投与することを包含する方法もまた、本明細書中で特徴付けられ、ここでそのDAP10活性は、減少するか、または排除される。
【0037】
DAP10発現細胞が関与するあらゆる細胞媒介性の応答は、本開示の発明を使用して刺激され得るか、または増大され得る。このような細胞媒介性の応答は、ナイーブな細胞の応答、記憶細胞の応答、Th1細胞の応答、Th2細胞の応答、および調節性T細胞の応答を包含する。細胞媒介性応答は、当該分野において使用され得る慣用的な方法によって測定され得る。例えば、Coliganら編、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons、現行版)を参照のこと。
【0038】
特に、DAP10活性の操作は、標的に対する細胞傷害の増加をもたらし得る。DAP10を発現し、DAP10媒介性の相互作用によってその標的と相互作用する任意の細胞傷害性細胞(または細胞傷害性細胞の先祖)、またはその細胞のDAP10を含む細胞傷害性エフェクター細胞への分化および/もしくは刺激は、この方法によってモジュレートされ得る。このような細胞としては、NK細胞、Treg、NKT細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、樹状細胞、および肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細胞傷害は、任意の適切な方法によって評価され得る。例示の方法としては、標識された標的細胞からの放射標識の放出の試験(例えば、51Cr)、比色定量アッセイ(例えば、CytoTox96(登録商標)非放射性アッセイ(Promega)、グランザイム放出アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ、および生物ルミネセンス細胞傷害アッセイ(例えば、Biovision Research Products(Mountain View、CA))が挙げられる。
【0039】
任意の適切な標的細胞は、細胞媒介性の応答(特に、本発明の細胞傷害性の応答)に対する標的であり得る。好ましくは、上記標的は、哺乳動物である。上記標的は、応答する細胞に対して同系、同種異系、または異種(xenogeneic)であり得る。ほとんどの実施形態において、上記標的は、同系または同種異系である。好ましい実施形態において、上記標的は、応答するエフェクター細胞に対して同系である。上記標的細胞は、正常細胞または異常細胞であり得る。例示の細胞は、腫瘍細胞、ウイルスに感染した細胞、および組換え手段によってDAP10リガンドを発現する細胞を含む。したがって、標的細胞としては、確立された細胞株(例えば、K562細胞)、短期の細胞株(short term cell line)、または被験体から採取されたサンプルから単離される細胞(例えば、解離した腫瘍細胞)が挙げられる。DAP10またはDAP10リガンドを発現する細胞において、その発現は、天然に生じ得るか、当該分野において公知である方法を使用する組換え手段により得る。例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記腫瘍標的または他の細胞性標的は、DAP10に対するリガンドを発現する。ときとして、上記DAP10リガンド(またはDAP10関連リガンド)は、NKG2DリガンドまたはLAGE−1である。
【0041】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。Treg活性は、周知の方法を使用して評価され得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0049696号;同第2004/0173778号;および同第2003/0147865号を参照のこと。代表的に、エフェクターT細胞集団は、規定されたインビトロの標的に応じて、増殖、細胞傷害、またはサイトカイン産生について評価され得る。しかし、このような分析はまた、上記因子のインビボ投与後に、エキソビボで行われ得る。このような分析において、上記因子の有効量は、所望のエフェクター細胞集団の増殖および/もしくは細胞傷害を増加させるか、またはサイトカイン産生を、上記エフェクター細胞集団を補助するものへと変化させるのに必要な量である。1つの例において、上記因子は、NK細胞の増殖および/または細胞傷害を増加させる一方で、IL−4産生およびIL−10産生を減少させ、そして/またはIFN−γ産生を増加させる。インビボ分析は、減少した腫瘍増殖、減少した転移の発生数、および/または減少した死亡率によって評価されるような抗腫瘍応答の増大を含み得る。例えば、Teicher、TUMOR MODELS IN CANCER RESEARCH(Humana Press 2001)を参照のこと。
【0042】
本発明の因子は、DAP10の生物学的活性の阻害または抑制をもたらす、DAP10の発現もしくは機能の任意の局面を阻害し得るか、または抑制し得る。用語「生物学的活性」とは、リガンドとのDAP10相互作用によって媒介される任意の即時効果または下流における効果をいう。上記効果は、ポジティブな効果(例えば、結合した場合にシグナル伝達カスケードを開始する)、またはネガティブな効果(例えば、細胞と細胞との相互作用が、DAP10の非存在下もしくは特定の事象の誘発に必要なシグナルの除去において起きる場合に生じる、新規のシグナル伝達カスケードまたは異なるシグナル伝達カスケードの存在)であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、上記因子は、DAP10細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)経路の誘発を妨害する。PI3−キナーゼ活性は、当該分野において公知である方法によって評価され得る。例示の方法としては、タンパク質のリン酸化、遺伝子の転写、細胞周期の進行、タンパク質とタンパク質との相互作用を試験するアッセイ(例えば、ras、raf、またはfyn)、タンパク質のトランスロケーション(例えば、NF−κBの核へのトランスロケーション)、またはタンパク質産生アッセイ(例えば、サイトカインアッセイ)が挙げられる。例えば、Ausebelら編、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。機能的アッセイ(例えば、増殖および細胞傷害)はまた、当該分野において周知の方法および本明細書によって開示される方法を使用して、上記因子の最終的な下流における効果を示すために使用され得る。増殖は、放射標識の取り込み、ルミネセンス、蛍光比色法などを使用して評価され得る。このような細胞媒介性の応答は、上記因子の投与後に、少なくとも約5%、10%、または20%刺激されるか、または増大されるべきであり、ときとして約30%、40%、または50%刺激されるか、または増大されるべきであり、そして好ましくは約60%、70%、80%、90%、95%、または99%より大きく刺激されるか、または増大されるべきである。
【0043】
1つの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する。このような発現は、任意の機構によって生じ得、その機構としては、転写抑制因子の誘導、転写活性化因子の阻害などが挙げられるが、これらに限定されない。DAP10発現は、任意の適切な手段によって決定され得る。代表的に、DAP10発現は、フローサイトメトリー分析によって評価され得る。いくつかの実施形態において、発現の完全な抑制は生物学的に関係する効果を達成するのに必要ではない可能性がある。このような効果は、標的化されている細胞媒介性の応答が、投与される因子の非存在下において生じる応答から検出可能に変化するものである。このような応答は、少なくとも約5%、10%、または20%刺激されるか、または増大されるべきであり、ときとして約30%、40%、または50%刺激されるか、または増大されるべきであり、そして好ましくは約60%、70%、80%、90%、95%、または99%より大きく刺激されるか、または増大されるべきである。
【0044】
1つの実施形態において、上記因子は、NK細胞、NKT細胞、もしくはT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する。いくつかの実施形態において、上記因子は、NK細胞またはNKT細胞の増殖の増加を刺激し得、それによって、細胞性の細胞傷害性反応を刺激するか、または増大する。
【0045】
本発明の因子はまた、細胞の1つ以上のサブセットからの増加したサイトカイン産生によって、細胞媒介性の応答を刺激し得るか、または増大し得る。いくつかの実施形態において、NK細胞またはNKT細胞が刺激されて、上記因子の非存在下において見られるサイトカイン発現と比較した場合に、少なくとも特徴的なサイトカインの増加した量を産生する。特徴的なサイトカインとしては、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2が挙げられ得る。これらのサイトカインは、多くの方法および市販のキットによって定量的様式で容易に検出され、その方法としては、ELISA、マイクロELISA、および細胞内フローサイトメトリー分析が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Coliganら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。
【0046】
接触の時間、方法、および容器は、評価される機能に適した任意のものであり得る。
【0047】
DAP10を阻害し得るか、または抑制し得る例示の因子としては、抗体、RNAi、RNAiを媒介する化合物(例えば、siRNA)、アンチセンスRNA、本発明の分子の優性/ネガティブな変異体、DAP10膜貫通ドメインなどのペプチド、および/またはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
1つの実施形態において、本発明の方法の因子は、DAP10特異的抗体またはその生物学的に活性なフラグメントである。例示の抗体としては、WO99/06557に開示される抗体が挙げられる。上記抗体は、細胞培養物、ファージ、または種々の動物において産出され得、その動物としては、ウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、類人猿が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の方法において有用な抗体は、代表的に、哺乳動物の抗体である。ファージ技術は、最初の抗体を単離するためか、または変更された特異性またはアビディティー特性を有する改変体を産出するために使用され得る。このような技術は、当該分野において慣用的であり、かつ周知である。1つの実施形態において、上記抗体は、当該分野において公知である組換え手段によって産生される。例えば、組換え抗体は、上記抗体をコードするDNA配列を含むベクターによって宿主細胞をトランスフェクトすることによって産生され得る。1つ以上のベクターが、宿主細胞において少なくとも1つのVL領域および少なくとも1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトするために使用され得る。抗体の産出および産生についての組換え手段の例示の記載としては、Delves、ANTIBODY PRODUCTION:ESSENTIAL TECHNIQUES(Wiley、1997);Shephardら、MONOCLONAL ANTIBODIES(Oxford University Press、2000);およびGoding、MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(Academic Press、1993)が挙げられる。
【0049】
本発明の方法において有用な抗体は、所望の機能(例えば、上昇した半減期)を媒介することおいてその抗体のより大きい効力を増加させるために、組換え手段によって改変され得る。例えば、Borrebaeck(編)ANTIBODY ENGINEERING(Oxford University Press、1995)を参照のこと。例えば、抗体は、組換え手段を使用する置換によって改変され得る。代表的に、その置換は、保存的置換である。例えば、上記抗体の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸が、異なる残基によって置換され得る。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、出願番号WO99/58572;およびAngalら、Mol.Immunol.30:105−08(1993)を参照のこと。アミノ酸の改変は、アミノ酸の欠失、付加、および置換を含む。上記抗体はまた、融合タンパク質であり、この抗体またはその生物学的に活性なフラグメントは、別の生物学的に関連する因子(例えば、サイトカイン、接着分子、共起刺激分子など)、およびこのような分子の生物学的に関連する部分に結合される。
【0050】
「RNA干渉」または「RNAi」とは、RNAの選択的な細胞内分解をいう。RNAiは、細胞内で天然に起こって、外来RNA(例えば、ウイルスRNA)を除去する。天然のRNAiは、他の類似するRNA配列に対する分解機構を指揮する遊離のdsRNAから切断されたフラグメントを介して始まる。あるいは、RNAiは、人の手によって(例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングすることによって)開始され得る。例えば、米国特許出願第20040203145号を参照のこと。したがって、DAP10自体の発現に対するRNAi、あるいはDAP10の発現もしくは機能に対する任意の重要な上流のエフェクターまたは下流のエフェクターが、企図される。いくつかの実施形態において、上記RNAiは、DAP10によって使用されるPI3−Kシグナル伝達経路の1種以上の成分をモジュレートするために使用され得る。
【0051】
公知の配列に基づいてペプチド模倣物を作製する方法は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第5,631,280号;同第5,612,895号;および同第5,579,250号を参照のこと。ペプチド模倣物の使用は、所定の位置における非アミド結合による、非アミノ酸残基の組み込みを包含し得る。本発明の1つの実施形態は、ペプチド模倣物であり、その化合物は、適切な模倣体(mimic)によって置換される結合、ペプチド骨格、またはアミノ酸成分を有する。適切なアミノ酸模倣体であり得る非天然のアミノ酸の例としては、β−アラニン、L−α−アミノ酪酸、L−γ−アミノ酪酸、L−α−アミノイソ酪酸、L−ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、N−ε−Boc−N−.アルファ.−CBZ−L−リジン、N−ε−Boc−N−α−Fmoc−L−リジン、L−メチオニンスルホン、L−ノルロイシン、L−ノルバリン、N−α−Boc−N−δ−CBZ−L−オルニチン、N−δ−Boc−N−α−CBZ−L−オルニチン、Boc−p−ニトロ−L−フェニルアラニン、Boc−ヒドロキシプロリン、およびBoc−L−チオプロリンが挙げられるが、これらに限定されない。DAP10の生物学的に関連する部分の適切なペプチド模倣物、上流および下流のシグナル伝達成分などを含むDAP10の生物学的活性に重要な任意のタンパク質。
【0052】
いくつかの実施形態において、この方法において有用な因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはそれらの生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである。DAP10またはその生物学的に活性なフラグメント、および宿主細胞におけるDAP10の輸送、発現、生物学的活性などを容易にする少なくとも1つのタンパク質ドメインまたはタグを含むDAP10融合タンパク質の使用もまた、企図される。このようなタンパク質およびタグとしては、転写活性化伝達(Trans−Activating Transduction)(TAT)タンパク質、または他のタンパク質の細胞への進入を促進する他のタグおよび輸送ペプチドタグが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、Vocero−Akabaniら、Methods Enzymol.322:508−21(2000)を参照のこと。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、癌を有し、そして下に記載されるような本発明の因子によって処置され得る。
【0054】
(C.DAP活性をモジュレートする因子を同定する方法)
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、発癌を弱めるか、または改善する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法がまた、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記発癌は、皮膚の発癌である。特定の実施形態において、上記発癌は、化学的に誘導される発癌である。いくつかの実施形態において、DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される。
【0055】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、皮膚の腫瘍であり得る。1つの実施形態において、上記腫瘍は、化学的に誘導される。DAP10の生物学的活性は、PBキナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価され得る。
【0056】
任意の適切なDAP10発現細胞は、本発明の方法のうちの同定する方法において使用され得る。DAP10発現は、内因性または外因性であり得る。DAP10発現細胞としては、T細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、マクロファージ、および肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。DAP10の組換え発現のために、任意の適切な宿主細胞が、利用され得る。宿主細胞は、その宿主細胞に対して適切な作動可能に連結した制御領域を有するベクターを使用するDAP10発現構築物によって、遺伝的に操作(形質導入または形質転換またはトランスフェクト)される。DAP10についての例示の配列は、WO99/06557に開示される。DAP10の外因性の発現は、一過性であっても、安定であっても、それらのある程度の組み合わせであってもよい。外因性の発現は、1種以上のさらなるタンパク質(例えば、NKG2D)との同時発現によって、増強されても、最大化されてもよい。外因性の発現は、構成的プロモーター(例えば、SV40、CMVなど)および当該分野において公知である適切な誘導プロモーターを使用して達成され得る。適切なプロモーターは、目的の細胞において機能するプロモーターである。上記ベクターは、例えば、プラスミド、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択または本発明の遺伝子の増幅に適するように改変された従来の栄養培地において培養され得る。その培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択された宿主細胞に関して先に使用された条件であり、そしてその条件は、当業者に明らかである。代表的な宿主細胞としては、BaF細胞、293T細胞、およびマウス肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
DAP10またはその生物学的に活性なフラグメントをコードする核酸を含むベクターまたはプラスミドもまた、本明細書中に提供される。真核生物細胞および原核生物細胞において使用するのに適したベクターは、当該分野において公知であり、そしてそのベクターは、市販されているか、または当業者によって容易に調製される。さらなるベクターはまた、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubelら編、2000)およびSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、(1989)に見出され得る。
【0058】
DAP10の生物学的活性を阻害する化合物は、DAP10の少なくとも1つの生物学的活性を減少させるか、または排除する化合物である。このような阻害は、DAP10の1つ以上の重要な結合残基の直接的な結合によってか、または立体障害、DAP10の酵素的改変などを含む間接的な妨害によって生じ得る。本明細書中で使用される場合、用語「化合物」は、タンパク質部分および非タンパク質部分の両方を含む。1つの実施形態において、上記化合物は、低分子である。別の実施形態において、上記化合物は、タンパク質である。
【0059】
種々の異なる化合物が、本明細書中に提供されるような方法を使用して同定され得る。化合物は、多くの化学的分類を包含し得る。特定の実施形態において、それらの化合物は、有機分子であり、好ましくは、50ダルトンより大きく、かつ約2,500ダルトン未満の分子量を有する有機低分子化合物である。これらの化合物は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含み得、そして少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボニル基を含み得、好ましくは、その化学的官能基の少なくとも2つを含み得る。上記化合物は、上記官能基の1つ以上によって置換される、環状炭素(cyclical carbon)構造もしくは複素環式構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香族(polyaromatic)構造を含み得る。化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログまたはその組み合わせのような生体分子を含む。目的の化合物はまた、抗体もしくは結合フラグメントまたはそれらの模倣体(例えば、Fv、F(ab’)2およびFab)などのペプチド因子およびタンパク質因子を含み得る。
【0060】
同定アッセイのための化合物はまた、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む広範な種々の供給源から得られ得る。例えば、多くの手段は、無作為化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、広範な種々の有機化合物および生体分子のランダムかつ指向型の合成のために利用可能である。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、および動物抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーは、利用可能であるか、または容易に生成される。さらに、天然に生成されるか、または合成で生成されるライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理学的手段および生化学的手段によって容易に改変され、そしてコンビナトリアルライブラリーを生成するために使用され得る。公知の薬理学的因子は、構造アナログを生成するために、指向型またはランダムの化学的改変(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)など)に供され得る。
【0061】
1つの実施形態において、低分子は、同定アッセイにおける化合物として使用され得る。低分子化合物は、分子量が約1000未満であるか、または分子量が約500未満である化合物を含む。1つの実施形態において、低分子は、専らペプチド結合のみを含むことはない。別の実施形態において、低分子は、オリゴマーではない。活性についてスクリーニングされ得る例示の低分子化合物としては、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、炭水化物、有機低分子(例えば、ポリケチド)、および天然産物の抽出物のライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、上記化合物は、小さい、非ペプチド性の有機化合物である。さらなる実施形態において、低分子は、生合成のものではない。
【0062】
本明細書中に提供されるようなDAP10発現細胞は、任意の都合のよいプロトコルを使用して、化合物(または因子)と接触される。いくつかの実施形態において、DAP10発現細胞に対する化合物の効果は、他の細胞の1種以上の型(例えば、標識された標的、増殖するT細胞など)の存在下において評価される。1つの実施形態において、上記細胞は、流体培地の容積を保持し得る容器または類似の構造物(例えば、96ウェルプレートのウェルまたは384ウェルプレートのウェル)中におかれる。上記細胞および上記化合物は、DAP10に媒介される事象の正確な検出を可能にする任意の細胞数を含む任意の容積において接触され得る。1つの実施形態において、存在する細胞の総数は、約1,000個の細胞〜約100,000個の細胞の範囲である。1つの実施形態において、反応容積は、約20マイクロリットル〜200マイクロリットルの範囲である。上記細胞は、任意の時間にわたって、上記化合物および/または他の細胞型と接触され得る。1つの実施形態において、上記接触の時間は、1時間〜8時間の範囲であり、好ましい時間は、4時間である。上記細胞および上記化合物は、DAP10の生物学的活性のモジュレーションのために許容される任意のpHにて、培地中で接触され得る。上記細胞は、種々の温度にて上記化合物と接触され得る。1つの実施形態において、上記細胞の接触のための温度は、しばしば、25℃〜38℃の範囲であり、代表的には、37℃の温度が、使用される。所望の場合、上記細胞は、種々の細胞集団の適当な混合および相互作用を確保するために撹拌され得る。
【0063】
上記接触混合物に存在する化合物の量は、特に、その化合物の性質に依存して変動し得る。1つの実施形態において、上記因子が、有機低分子である場合、反応混合物に存在する化合物の量は、約1フェムトモル〜10ミリモルの範囲であり得る。別の実施形態において、上記因子が、抗体またはその結合フラグメントである場合、上記化合物の量は、約1フェムトモル〜10ミリモルの範囲であり得る。所定の接触容積に含める任意の特定の化合物の量は、当業者に公知の方法を使用して経験的に容易に決定され得る。
【0064】
DAP10の生物学的活性の阻害の存在または非存在は、DAP10の表面における発現、DAP10シグナル伝達(特に、PI3−K経路)、腫瘍標的または他の異常な細胞標的に対する増加した細胞傷害、または増加したサイトカイン産生の評価によって決定される。利用される特定の評価プロトコルは、直接的に評価可能なアッセイの性質に依存して、必然的に変わり、そして当該分野で公知のアッセイ、およびセクションBにおいて本明細書中に開示されるアッセイを利用し得る。例えば、評価される読み出しが、DAP10発現である場合、化合物によって処置されるか、または処置されないかのいずれかであるDAP10発現細胞が、DAP10特異的抗体によって染色され得、そしてDAP10発現の変化が、標準的なフローサイトメトリー分析によって評価される。
【0065】
任意の都合のよい手段が、DAP10の生物学的活性に対する上記化合物の効果を評価するために使用され得、その手段としては、単独か、または他の関連する細胞型の存在下のいずれかにおいて化合物と接触した場合の増殖、細胞傷害、およびインビトロ発現の定量化された測定ならびにインビボでの評価が挙げられるが、これらに限定されない。このような評価は、発癌および腫瘍増殖および転移を阻害する能力における評価を含む。このような分析に適した動物モデルは、当該分野において周知であり、そして下に開示される実施例において開示されるものによって例示される。化合物が、腫瘍発生の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記化合物は、発癌物質に対する曝露後の腫瘍発生の範囲を0%まで減少させ、完全な保護を提供する。同様に、化合物が、腫瘍増殖の速度および/または転移の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記腫瘍の増殖速度は、腫瘍の大きさの測定によって決定される。代表的に、上記腫瘍のサイズは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少する。転移の範囲は、相対的な播種(例えば、病変した器官系の数)およびこれらの部位における相対的な腫瘍組織量を試験することによって評価され得る。腫瘍転移は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少し得る。いくつかの実施形態において、上記化合物は、DAP10の生物学的活性に影響しない他の化合物と比較して評価され得る。
【0066】
1つの実施形態において、RNAiを媒介する化合物は、DAP10の生物学的活性を阻害するために使用され得る。上で考察されるように、RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)を使用してdsRNAと同じ配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する転写後の、標的性の遺伝子サイレンシング技術である。上記プロセスは、内因性リボヌクレアーゼが、より長いdsRNAをより短い21ヌクレオチド長または22ヌクレオチド長のRNA(低分子干渉RNAまたはsiRNAと称される)へと切断する場合に生じる。次いで、より小さいRNAセグメントは、標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成のためのキットは、市販されている。
【0067】
別の実施形態において、DAP10の阻害または抑制を媒介する化合物は、DAP10特異的抗体または上に記載されるようなその生物学的に活性なフラグメントである。なお別の実施形態において、上記化合物は、上に記載されるようなDAP10膜貫通フラグメントである。
【0068】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程、b)試験化合物を上記DAP10−/−に投与する工程;c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程、およびd)試験化合物を、上記試験化合物が上記疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、上記自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法が、本明細書中で特徴付けられる。
【0069】
実施例の節において下に記載される通り、上記DAP10−/−マウスは、自己抗原を用いてチャレンジされる場合、自己免疫疾患に対する著しい感受性を提示する。他の実験的な自己免疫系がまた、上記DAP10−/−マウスを用いて利用され得る。いくつかの実施形態において、上記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である。例えば、種々の実験的疾患モデルの概説については、Lahitaら(編)、TEXTBOOK OF THE AUTOIMMUNE DISEASES(Lippincott、Williams、およびWilkins 2000)の753〜841ページを参照のこと。これらの動物モデルの各々は、少なくとも1つの臨床的に関連のある自己免疫疾患を例示し、それによって、自己免疫疾患の1つ以上の症状を緩和し得るか、または改善し得るスクリーニング化合物に適したモデルを提供する。
【0070】
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、ヒトの多発性硬化症(MS)に対する動物モデルである。EAEは、MSと同じ臨床症状および病理学的症状の多くを共有する、実験的に誘導された疾患である。例えば、Martinら、Ann.Rev.Immunol.10:153−87(1992)を参照のこと。EAEは、アジュバント中のミエリンを用いた免疫によって、マウスの特定の系統において誘導され得る。上記免疫は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびプロテオリピド(PLP)に特異的なCD4+ T細胞を活性化する。次いで、活性化されたT細胞は、中枢神経系に進入し、そして上記疾患の特徴的な解剖病理学、および顕性の「臨床的」徴候(例えば、完全麻痺を生じる後足の上行性不全麻痺)をもたらす。EAEの臨床的徴候は、症状の上行性の重症度の0〜5の尺度に基づいて評価され得る。例えば、Korngoldら、Immunogenetics 24:309−15(1986);Cuaら、Nature 421:744(2003)を参照のこと。
【0071】
したがって、化合物が、少なくとも1つの自己免疫症状の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記化合物は、少なくとも1つの自己免疫症状の範囲を0%まで減少させ、完全な保護を提供する。同様に、化合物が、観察される自己免疫症状の重症度を、その化合物の非存在下(または、DAP10をモジュレートしない化合物の存在下)において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。代表的に、上記症状の重症度は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少する。
【0072】
(D.DAP10抑制因子を使用する処置の方法)
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記癌は、皮膚癌である。特定の実施形態において、上記癌は、化学的に誘導される。
【0073】
本発明の方法によって処置される被験体としては、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、または奇形癌を有する被験体が挙げられる。上記腫瘍は、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、子宮頚、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、および子宮の癌であり得る。このような腫瘍としては、以下が挙げられる:中枢神経系の新生物:多形グリア芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起神経膠細胞の腫瘍、上衣および脈絡叢の腫瘍、松果体の腫瘍、神経の腫瘍、髄芽細胞腫、神経鞘腫、髄膜腫、髄膜の肉腫:眼の新生物: 基底細胞癌、有棘細胞癌、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫;内分泌腺の新生物:下垂体の新生物、甲状腺の新生物、副腎皮質の新生物、神経内分泌系の新生物、胃腸膵臓(gastroenteropancreatic)の内分泌系の新生物、性腺の新生物;頭および首の新生物:頭および首の癌、口腔の腫瘍、咽頭の腫瘍、喉頭の腫瘍、歯原性腫瘍:胸郭の新生物:大細胞肺癌、小細胞肺癌、非小細胞細胞肺癌、胸郭の新生物、悪性中皮腫、胸腺腫、胸郭の原発性生殖細胞腫瘍;消化管の新生物:食道の新生物、胃の新生物、肝臓の新生物、胆嚢の新生物、膵臓外分泌部の新生物、小腸、虫垂および腹膜の新生物、結腸および直腸の腺癌、肛門の新生物;尿生殖器路(genitourinary tract)の新生物:腎細胞癌、腎盂および尿管の新生物、膀胱の新生物、尿道の新生物、前立腺の新生物、陰茎の新生物、精巣の新生物;女性の生殖器官の新生物:外陰および膣の新生物、子宮頚の新生物、子宮体の腺癌、卵巣癌、婦人科学的な肉腫;乳房の新生物;皮膚の新生物:基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫;悪性黒色腫;骨および軟部組織の新生物:骨原性肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、血管肉腫;造血系の新生物:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、HTLV−1、およびT−細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病、へアリーセル白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、肥満細胞性白血病;小児の新生物:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎腫瘍および肝腫瘍。
【0074】
本方法によって同定される有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。本発明に従って処置され得る自己免疫成分を有する自己免疫疾患および自己免疫障害の非限定的な例としては、以下が挙げられる:1型糖尿病、関節炎(慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群(シェーグレン症候群に対する二次的な乾性角結膜炎を含む)、円形脱毛症、虫刺され(arthropod bite)の反応に起因するに起因するアレルギー応答、クローン病、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸結腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、薬疹、らい病の反転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳障害、特発性両側性の進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球ろう、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーヴンズ−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間質性肺線維症(interstitial lung fibrosis)。
【0075】
任意の被験体が、本明細書中に提供される方法および組成物によって処置され得る。このような被験体は、このような処置の必要がある哺乳動物(好ましくは、ヒト)である。本開示の方法および組成物の獣医学的使用がまた、企図される。このような使用は、家畜(domestic animal)、家畜(livestock)および純血種の馬(thoroughbred horse)における発癌の予防、癌の処置、ならびに自己免疫疾患の予防および処置を含む。
【0076】
薬学的組成物および薬学的技術の調製ならびに使用のための種々の薬学的組成物および薬学的技術は、本開示を鑑みて当業者に公知である。適切な薬理学的組成物および関連した投与上の技術の詳細な記載については、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、第20版(Lippincott、WilliamsおよびWilkins 2003)などの教科書によってさらに補足され得る本明細書中の詳細な教示を参照し得る。
【0077】
処方物および送達方法は、一般に、処置されるべき部位および疾患に従って適合される。例示の処方物としては、ミセル、リポソームまたは薬物放出カプセル中に封入される処方物(徐放用に設計された生体適合性コーティング内に組み込まれる活性因子)を含む、非経口投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与)に適した処方物、;経口摂取用処方物;局所使用のための処方物(例えばクリーム、軟膏およびゲル);および他の処方物(例えば、吸入剤、エアロゾルまたはスプレー)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の投薬量は、処置についての必要性の程度および重症度、投与される組成物の活性、被験体の健康全般、ならびに当業者にとって周知である他の考慮事項によって変動する。
【0078】
このような化合物の毒性および治療的効力は、細胞培養物または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定され得る(例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するため)。毒性効果と治療効果との間の用量比が、治療指数であり、そしてその治療指数は、LD50とED50との間の比として表され得る。高い治療指数を示す化合物が、好ましい。これらの細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投薬量の範囲を処方するのに使用され得る。このような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどもしくは全く毒性を伴わずに、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。上記投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動し得る。的確な処方、投与経路および投薬量は、患者の状態、年齢、体重、および治療に対する反応性を考慮して個々の医師によって選択され得る。投薬の量および間隔は、所望の治療効果、または最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルを提供するために、個別に調整され得る。MECは、各化合物に対して変動するが、それは、インビトロのデータから概算され得る;例えば、本明細書中に記載されるアッセイを使用してDAP10の生物学的活性の50%〜90%の阻害を達成するのに必要な濃度。
【0079】
投与の様式は、特に重要ではない。1つの実施形態において、投与の様式は、I.V.ボーラスである。別の実施形態において、投与は、局所的である。あるいは、上記化合物を、全身的な様式よりもむしろ、局所において投与し得る(例えば、しばしば、デポー処方物または持続放出処方物で上記化合物を腫瘍または自己免疫病変に直接注射することによって)。
【0080】
本発明の調節性因子は、単独か、または1種以上のさらなる因子と組み合わせて投与され得る。例えば、1つの実施形態において、本明細書中に記載される2種以上の因子が、被験体に投与され得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される因子は、他の免疫調節因子と組み合わせて投与され得る。他の免疫調節試薬の例としては、共起刺激シグナルをブロックする抗体(例えば、CD28、ICOSに対する抗体)、CTLA4を介して抑制性シグナルを活性化する抗体、および/または他の免疫細胞マーカーに対する抗体(例えば、CD40に対する抗体、CD40リガンドに対する抗体、またはサイトカインに対する抗体)、融合タンパク質(例えば、CTLA4−Fc、PD−I−Fc)、および免疫抑制薬(例えば、ラパマイシン、シクロスポリンAまたはFK506)が挙げられる。特定の場合において、免疫応答を誘発するか、または増大するために、免疫応答をアップレギュレートする他の因子(例えば、T細胞活性化シグナルを送達する因子)をさらに投与することが、望まれ得る。このような因子としては、サイトカイン(例えば、IL−2およびIFN−γ)の同時投与が挙げられるが、これに限定されない。
【0081】
本明細書中に記載される因子は、投与に適した薬学的組成物に組み込まれ得る。このような組成物は、代表的に、上記因子、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用される場合、専門語「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤など(これらは、薬学的投与に適合性である)を含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 第20版(Lippincott、WilliamsおよびWilkins 2003)を参照のこと。任意の従来の媒体および因子が、活性化合物と不適合性である場合を除いて、上記組成物におけるその使用が、企図される。追加の活性化合物がまた、上記組成物に組み込まれ得る。
【実施例】
【0082】
NKG2D−DAP10レセプター複合体およびそのリガンドの発現パターンは、それらが生理学的条件および病理学的条件下で異なる役割を果たし得ることを示唆する。この研究において、DAP10KOマウスの産出を、腫瘍免疫におけるDAP10の重要性を調査するために使用する。DAP10欠損が、Tregの調節性機能およびNK1.1+細胞の抗腫瘍エフェクター機能に影響を与えることによって抗腫瘍免疫を増強することが、予想外にも、観察された。
【0083】
同系の腫瘍に対する効率的な免疫監視は、しばしば、T調節性(Treg)細胞の損なわれた機能に起因して、自己に対する反応性の増加と関連する。本明細書中に含まれるデータは、構成的なDAP10共起刺激シグナル伝達が、腫瘍に対する免疫を制御する調節機構の一部であることを示した。DAP10を欠くマウス(DAP10KO)は、化学的に誘導された皮膚の癌腫および黒色腫の肺への転移に対して増強された免疫応答を示し、それは、遅延した腫瘍増殖および減少した腫瘍の範囲、およびマウスの、腫瘍悪性度からの長期の保護をもたらした。DAP10KOナチュラルキラーTリンパ球(NKT)およびナチュラルキラー(NK)細胞は、この抗腫瘍表現型を担うエフェクターであった。DAP10欠損は、Tregの抑制的な能力を弱め、そして増加したNKT機能(サイトカイン産生および細胞傷害を含む)をもたらし、腫瘍の効率的な殺傷を生じた。DAP10KOマウスにおける野生型Tregの養子移植は、同系の腫瘍に対する耐性を回復させ、このことは、DAP10KO Tregがインビボで機能不全性であることを示した。さらに、DAP10KO T細胞は、増加した自己反応性を示し、それによってDAP10KOマウスを、誘導された自己免疫応答に対して、より感受性にした。このデータは、DAP10構成的シグナル伝達が自己反応性を回避するためのTregおよびNKTの活性化の閾値の調整に重要であるが、また、抗腫瘍機構をモジュレートすることを示した
(材料および方法)
DAP10欠損マウスの産出。マウスDAP10ゲノムの遺伝子座を、129/SV肝臓DNAから作製したLambdaライブラリーに対する放射標識型のハイブリダイゼーションによって同定した。1つのLambdaクローンを、単離し、次いでサブクローニングし、そしてその遺伝子座のさらなる特徴付けのために配列決定した。エキソン3およびエキソン4は、シグナル伝達および細胞表面におけるDAP10タンパク質の発現に重要である。エキソン3は、膜貫通領域をコードし、そしてエキソン4は、DAP10の細胞質ドメインをコードする。従来の置換型標的化ベクターを、5.4kbの相同性配列を組み込みつつ、両方のエキソンについての配列を除去するように設計した。胚性幹(ES)細胞を、直線化したDAP10標的化ベクターと一緒にエレクトロポレーションした。適切にトランスフェクトされたESクローンを、ネオマイシンカセットの除去後の注射のために使用した。上記ESクローンを、サザンブロット分析によってスクリーニングした。使用したプローブは、以下のものである:5’フランキング(flanking)センス−DAP10プローブ、5’−CCAGAGACAGAGTCAAACTATGTAG−3’;5’フランキングアンチセンス−DAP10プローブ、5−CTGTGAGTTCAAGGCTAGCCTGG−3’;3’フランキングセンス−DAP10プローブ、5’−CTAGAGGAACCTTCTTCTGCC−3’;フランキングアンチセンス−DAP10プローブ、5’−GCTCTGGAGCCCTCCTGGT−3’。全ての実験マウス(DAP10KOマウスおよびコントロールC57BL/6Jマウス(Jaxon))を、6〜10週齢にて使用し、かつ性別および歳を対応させた。マウスを、病原体を含まない動物施設において飼育した。この研究において使用される全ての動物手順は、DNAX institutional animal care and use committeeによって承認された。
【0084】
インビボ腫瘍モデル。先に記載されるように(20)、皮膚の腫瘍形成を誘導するために、wt C57BL6マウスおよびDAP10KO C57BL6マウスを、7,12ジメチルベンズアントラセン(DMBA、Sigma)の単一局所用量によって処置し、200μlアセトン中の50μgのDMBAを、各マウスの剃毛(shave)した皮膚に塗布した。発癌のイニシエーションの1週間後、200μlアセトン中の30μgの12−O−テトラデカノイル−ホルボールアセテート(TPA、Sigma)を、各マウスの上記皮膚に塗布した。次いで上記TPAを、20週間にわたって週に2回塗布した。腫瘍を、癌腫の病期に進行させ、そしてマウスの成育率を、1年間分析した。乳頭腫または癌腫の腫瘍を、臨床的判定基準および組織学的特徴に基づいて評点した。移植実験のために、化学的に誘導した皮膚の腫瘍細胞(DMBA−T)を、組織培養条件に適応し、次いでマウスに種々の濃度にてs.c.に注射した。皮下の腫瘍の寸法を、キャリパーを使用して2〜3日毎に測定した。上記腫瘍の体積を、以下の式を使用して決定した:長さ×幅×幅/2。群間の統計学的な差を、2つの群を分析する場合に、対応のないスチューデント両側t検定を使用することによって評価し、そして2つより多い群に対しては、二元配置ANOVAを使用することによって評価した。
【0085】
B16の肺への転移の誘導のために、B16黒色腫細胞(ATCC)を、対数増殖期(≦50%の密集度)のときに、注射のために回収した。単一細胞懸濁物を、細胞解離溶液(Gibco)を使用して調製し、次いで使い捨てのセルストレーナー(cell strainer)によって可能な集塊の除去を行なった。wt C57BL6マウスおよびDAP10KO C57BL6マウスに、1×105個のB16細胞をi.v.に注射したか、または図面の簡単な説明において示される通りに注射し、次いで肺を、腫瘍の接種の2週間後に取り出し、そして転移を、解剖顕微鏡を使用して計測した。NK1.1+細胞のインビボでの枯渇のために、マウスに、−1日目においてマウス1匹あたり0.5mgにて、抗NK1.1 mAbクローンPK136(ATCC)をi.v.に注射し、その後、3日毎にそれを注射した。マウスIgG1κアイソタイプコントロール抗体を、コントロール群に注射するために使用した。Treg細胞のインビボでの枯渇のために、抗CD25 mAbクローンPC−61(ATCC)を、示した日において、マウス1匹あたり0.5mgにてi.v.に注射した(図面の簡単な説明を参照のこと)。NK細胞のインビボでの枯渇のために、マウスに、−2日目にて30μlの抗アシアロGM1 Ab(Cederlane)をi.v.に注射し、その後、4日毎にそれを注射した。インビボ研究のために使用した全ての抗体は、内毒素を含まなかった。インビボでの枯渇の効率を、脾臓の白血球のFAC分析によって検証した。
【0086】
骨髄キメラの産出。レシピエントマウスを、1000radの1種の線量のγ線照射に曝した。ドナーマウスから単離した1.5×107個の骨髄細胞を、レシピエントマウスの尾静脈にi.v.に送達した。再形成の6週間後および8週間後において、レシピエントマウスの末梢血細胞および脾臓細胞をフローサイトメトリーによって分析して、再形成のレベルを評価した。この実験に使用したwtマウスは、再形成の評価を容易にするGFPポジティブであった(Dr.Brian Schaeferによる寄贈品)。8週間において、95%〜98%のレシピエント細胞は、ドナーに由来した。骨髄キメラの成育率は、100%であった。
【0087】
Taqman分析。ナイーブwt B1/6マウスおよびDAP10KOマウスのリンパ節、脾臓ならびに胸腺を、Polytronを使用してSTAT 60試薬(Tel−test Inc.)中でホモジネートした。全RNAを、クロロホルム抽出を行ない、次いでイソプロパノール沈殿を行うことによって単離した。5μgの全RNAを、DNAseミックス(5×first strand buffer(Gibco−BRL)、RNAsin(Promega)およびDNAse I、Rnase free(Boehringer))によって処理した。cDNAを、RT−PCRによって調製した。リアルタイムの転写物の定量化のために、そのcDNAを、GeneAmp(登録商標)5700配列検出器(Applied Biosystems)においてTaqManシステムの化学を使用する蛍光5’ヌクレアーゼアッセイに使用した。遺伝子特異的なTaqman(登録商標)プライマー(F、R)を、Primer Express Software v.1.5.(Applied Biosystems)を使用して、以下に関して作製した(コントロールとしてユビキチンおよび18S rRNA):muDAP10−CCGGATGTGGGACTCTGTCT;TGGGCGCATACATACAAACAC;muDAP12−CCTGGTCTCCCGAGGTCAA;GGCGACTCAGTCTCAGCAATG,muNKG2D−TTCGTTGTTCGAGTCCTTGCT;ACTGGCTGAAACGTCTCTTTGAA。Taqman(登録商標)反応は、200nMの各プライマー、1×SYBR GREEN PCRマスターミックス(Applied Biosystem)および10ngのcDNAを含んだ。IFNγおよびFoxp3に対するプライマーは、Primer Express(ABI)を使用し、そして他のファミリーメンバーとの交差反応性を有さない配列を選択して設計した。リアルタイムPCRは、それぞれ50℃で2分間および95℃で10分間の1サイクル、その後の95℃で15秒間および60℃で1分間の50サイクルから構成された。データ分析は、限界サイクルおよびCtを決定するために配列検出器ソフトウェア利用した。
【0088】
インビトロ機能分析。NKT細胞を、CD19 MACビーズ(Miltenyi)を使用して先にB細胞を枯渇させた脾細胞から取り出した。取り出したNKT細胞の純度は、≧95%であった。サイトカインアッセイのために、NKT細胞を、10%のFCS、100mMのPen/Strep/Glu、1mMのピルビン酸ナトリウム、100μMの非必須アミノ酸、5.5×105Mの2−ME、および25mMのHepesを補充したIscoves培地において、血小板結合性抗CD3 Ab(10μg/ml)またはラットIgG2aアイソタイプコントロールによって活性化した。全ての培養試薬を、Gibco製であった。上清を、48時間後に回収し、そしてサイトカインを、測定した。
【0089】
NK細胞を、抗NK細胞(DX5)MACSマイクロビーズ(Miltenyi)を使用して、B細胞枯渇脾細胞から単離した。使用する取り出した細胞の純度は、>95%であった。上記細胞傷害アッセイのために、NK細胞およびNKT細胞を、50ng/mlのマウスIL−2(Peprotech)を含む完全Iscoves培地中で拡大培養(expand)した。標準的な4時間の51Cr放出アッセイを、先に記載されるように(12)、種々のエフェクター対標的の比(E:T)にて行なった。
【0090】
CD4+CD25+ Tregを、Miltenyi(>96%の純度)のTreg単離キットを使用して脾細胞から単離した。サイトカインアッセイのために、Tregを、IL−2(20ng/ml)の存在下、またはIL−2および可溶性CD3 Ab(10ug/ml)の存在下で、ウェル1つあたり2×105個の細胞にて、48時間にわたって培養した。上清を、回収し、そしてサイトカインを、測定した。
【0091】
フローサイトメトリーおよびサイトカイン分析。フローサイトメトリー表現型分析(phenotyping)のために、マウス細胞を、最初に、抗CD 16/CD32 Ab(クローン2.4G2)と一緒にインキュベートして、Fcの非特異的結合をブロックした。次いで、2色または3色の染色を、以下の染色試薬を使用して行なった:抗CD3 FITC、抗CD3 Cy(クローン17 A2)、抗CD4 FITC(クローンGK1.5)、抗CD25 PEまたは抗CD25ビオチンAb(クローンPC61)、抗NK1.1 PE、抗NK1.1ビオチン、抗NK1.1 FITC(クローンPK136)およびストレプトアビジン−サイクローム(cychrome)(Cy)。全ての上記試薬は、Pharmingen製であった。抗NKG2D PE(クローンCX5)は、Dr.Lewis Lanierの寛大な寄贈品であった。腫瘍細胞におけるNKG2Dリガンドの発現を、NKG2D融合タンパク質(R&D)によって細胞を染色し、次いで抗ヒト二次抗体によって染色することによって染色した。BDマウスThl/Th2キットまたは炎症性キットを使用して、NKT細胞またはTreg細胞によって産生されるサイトカインのレベルを測定した。サンプルを、FACS Caliburフローサイトメーターにおいて分析した。CellQuestTMおよびBD CBAソフトウェアを使用して、獲得したデータを分析した。
【0092】
DTH応答の誘導。DTH応答を誘導するために、マウスに、0日目において、1mgの熱失活したMycobacterium.tuberculosis H37A(Difco Lab)を含むCFA中に乳化した50μgのマウスのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodentrocyte glycoprotein)(MOG)35−55ペプチドをs.c.に注射した。10日目において、マウスに、25μgのMOG35−55ペプチドを仰臥で左側の足蹠に対してs.c.に注射し、そしてPBSを右側の足蹠にs.c.に注射した。右側および左側のフッドパッドの厚さを、キャリパー型の技術者用マイクロメータ(engineer micrometer)を使用して48時間後に測定した。足蹠の腫脹を、左側の足蹠の厚さから右側の足蹠の厚さを減算することによって産出した。動物を、毎日観察し、そして神経学的効果を、任意の臨床スコアにおいて定量化した。EAEスコアリングを、以下の通りに行った:0.無し;1.完全にしなやかな尾;2.後足の脱力;3.右側の不能/片方の後足の不全麻痺(脱力);4.右側の不能/片方の後足の完全麻痺;5.両側の後足の完全麻痺;6.瀕死。
【0093】
増殖アッセイ。マウスに、CFA H37A中に乳化した50μgのMOG35−55をs.c.で免疫した。リンパ節(上腕、腋窩、鼡径)を、9日後に回収し、そして単一細胞懸濁物を、調製した。リンパ節細胞を、MOG35−55ペプチドの異なる濃度を用いて、96ウェルプレート中で5×105個の細胞/ウェルにて72時間にわたって培養した。培養上清中のIFN−γの量を、捕捉用の抗IFN−γ R46A2 mAbおよび検出用のAN18−ビオチン mAbを使用したELISAによって測定した。T細胞増殖性の応答を評価するために、培養物を、48時間にて、1μCi/ウェル[3H]−チミジン(Amersham)を用いてパルスし、そしてその24時間後に回収した。チミジンの取り込みを、β−シンチレーションカウンターにおいて測定した。
【0094】
(結果)
DAP10KOマウスの産出。マウスDAP10遺伝子は、染色体7A3に位置する(DAP12遺伝子に隣接し、かつDAP12遺伝子と反対の転写方向)。DAP10−欠損マウスを産出するために、DAP10ゲノムの遺伝子座を、129/Sv肝臓DNAから作製されたラムダライブラリーに放射標識したハイブリダイゼーションによって同定した。DAP10およびDAP12の両方に対する遺伝子座を含む1つのラムダクローンを、単離した。DAP10遺伝子を破壊するために、機能性DAP10タンパク質に重要であるエキソン3およびエキソン4を、Bruce 4 C57BL/6J胚性幹細胞(図1A)において、除去し、そしてネオマイシン耐性遺伝子(neor)によって置換した。次いで適切に標的化したESクローンを、CREリコンビナーゼ発現ベクターによってトランスフェクトして、neorカセットを除去した。サザンブロット分析により、DAP10遺伝子の正しい標的化を確認した(図1B)。ES細胞を、マウス未分化胚芽細胞に注射して、次いでホモ接合動物を得るために異種交配されるキメラマウスを産出した。DAP10KOマウスは、組織学によって評価したところ、一般的に正常な器官形成を有するようであった。しかし、DAP10KO脾臓がwtの脾臓に対して増加した重量を有し、そしてこの差が、アジュバントおよび自己ペプチド(データは示さず)によって免疫されたマウスにおいてさらに顕著であることが、観察された。これは、DAP10KOマウスが超免疫であり得ることを示唆する、最初の徴候であった。DAP10欠損は、ナイーブなマウスから単離したリンパ組織のTaqman分析によって評価したところ、mRNAレベルにてDAP12遺伝子またはNKG2D遺伝子の基本的な発現に影響を及ぼさなかった(図1C)。次に、通常、DAP10との関連を必要とする細胞表面におけるNKG2Dタンパク質の発現を、分析した。図1Dは、NKG2Dタンパク質の構成的な発現がDAP10KO NK1.1+脾細胞において損なわれたことを示す。しかし、DAP10KO NK1.1+脾細胞は、3日間にわたってIL−2を用いる活性化の際に、NKG2Dの有意なレベルを表し得る(図1D)。最近報告されたように(10)、DAP12と対になる短いNKG2Dアイソフォームは、活性化されたDAP10KO脾細胞において、機能的な表面レセプターとして発現され得る。
【0095】
DAP10欠損は、化学的に誘導された皮膚の腫瘍形成に対する保護を提供し、そしてNK1.1+細胞は、抗腫瘍効果を担う。腫瘍形成の間の免疫監視におけるDAP10の役割を研究するために、本発明者らは、化学的に誘導された皮膚の腫瘍モデルを使用した。マウスを、発癌をイニシエートするために、DMBAの単一用量を用いて局所的に処置し、次いで異常な皮膚細胞の増殖を促進するためにTPAを用いて処置した。TPA処置を4ヶ月間行なって腫瘍を乳頭腫から癌腫まで進行させた。予想通り、wtマウスは、大きさが成長し、そして進行性に悪性の癌腫になった多数の乳頭腫を発症した(図2)。それとは反対に、DAP10KOマウスは、癌腫の病期に進行しなかった、有意に少ない乳頭腫型の腫瘍を発症した(図2)。発癌のイニシエーションの1年後、65%のwtマウスが、皮膚の悪性の癌腫によって死亡したのに対して、DAP10KOマウスは健康であり、そして皮膚の悪性の変態から保護された。したがって、予想外にも、DAP10欠損は、化学的に誘導された皮膚の悪性疾患に対して保護を与えた。
【0096】
化学的に誘導された皮膚の腫瘍モデルは、長期のインビボ枯渇研究において取り扱うことが困難なので、インビトロで安定に適応されるDMBA誘導性の癌腫細胞株(DMBA−T)を使用する皮膚の腫瘍移植モデルを、DAP10KOの抗腫瘍応答に関与する細胞機構の分析を可能にするために利用した。腫瘍形成データと一致して、DAP10KOマウスに対するwt癌腫細胞の皮下接種は、wtマウスへの移植と比較した場合に、顕著に遅延した腫瘍増殖を生じた(図3A)。NK1.1+細胞がDAP10KOマウスの抗腫瘍活性に関与したか否かを決定するために、マウスを抗NK1.1 Ab(PK136)によって処置して、マウスにおいて、NK細胞およびNKT細胞の両方を含むNK1.1+細胞を枯渇させた。NK1.1+細胞を枯渇させたマウスに対するDMBA−T細胞の皮下移植は、wt動物およびDAP10KO動物において、同様の腫瘍増殖を生じた(図3B)。これらのインビボでの枯渇の結果は、NK1.1+細胞がDAP10KOの抗腫瘍効果において主要な役割を果たすことを明確に示唆した。NK1.1の枯渇が、NK細胞およびNKT細胞の両方を取り除いたので、次いで、抗アシアロGM1 Abを用いた処置によってNK細胞のみが枯渇したマウスにおける腫瘍発生を、分析した。図3Cに示すように、抗アシアロGM1 AbによるDAP10KOマウスの処置は、癌腫の腫瘍に対するそれらの感受性を回復させた。これらの知見は、NK細胞が、DAP10KOマウスにおいて移植された皮膚の癌腫の遅延した増殖を担う、一次エフェクターであることを示した。
【0097】
DMBA−T癌腫細胞は、低レベルのNKG2Dリガンドを発現したが、wtマウスにおいて有効な抗腫瘍応答を誘発できなかった(図4A)。枯渇実験によって得られたデータを確認するために、wt細胞ならびにDAP10KO NK細胞およびDAP10KO NK1.1+細胞の、インビトロでDMBA−T癌腫細胞を殺す能力を試験した。興味深いことに、活性化されたDAP10KO NK1.1+細胞は、wt細胞よりDMBA−T癌腫細胞に対して、実質的に細胞溶解活性を示し、そしてこの活性は、主にNKG2D非依存性であった(図4B)。wt細胞およびDAP10KO NK細胞は、同様の効率でDMBA−T癌腫細胞を殺すようであり、そしてそれらの細胞傷害は、抗NKG2D抗体によって部分的に損なわれた(図4C)。上記インビボ実験は、DAP10KOにおいてNK細胞が抗腫瘍活性を主に担うことを、強力に示唆したが、強力な抗DMBA−T細胞細胞傷害のインビトロでの発生は、明確に、NKT細胞も伴う。
【0098】
DAP10欠損は、皮膚の転移に対する保護を与え、そしてNKT細胞は、抗腫瘍表現型を担う最終的なエフェクターであった。DAP10KOマウスの抗腫瘍活性をさらに細かく区別するために、上記B16黒色腫転移モデルを、利用した。肺への転移を誘導するために、B16細胞を、wtマウスおよびDAP10KOマウスに、種々の濃度にてi.v.に注射し、2週間後に、肺を取り出し、そして転移性のコロニーについて分析した。図5に示すように、1×105個のB16細胞を注射したDAP10KOマウスは、動物より3〜5倍低い肺への転移を発症した。1×104個のB16細胞を注射したDAP10KOマウスは、黒色腫の転移から完全に保護された。DAP10KOマウスにおける抗腫瘍活性の造血の起源を調査するために、骨髄キメラを、確立した。wt骨髄細胞によって再構成したDAP10KOマウスは、wt動物と同様の頻度で、B16の転移を発症した(図6A)。対照的に、DAP10KO骨髄細胞によるwtマウスの再構成は、DAP10KO動物において観察された抵抗性に匹敵する、転移に対する抵抗性をもたらした(図6A)。これらの結果は、造血細胞がDAP10KOの抗腫瘍活性を担うことを、明確に示した。
【0099】
インビボ枯渇研究を、B16の転移に対するDAP10KOの増強した抗腫瘍活性におけるこれらの細胞の関与を示すために行った。wt動物からのNK1.1+細胞(NK細胞およびNKT細胞)の枯渇は、未処置のwt動物と比較した場合、肺へのB16の転移の、小さいが有意な増加を生じた(図6B)。さらに、抗NK1.1 Abによって処置したwtマウスは、肺以外の器官(例えば、肝臓、皮膚、腹部、および胸腔)に、B16の転移を与え、このことは、wt動物中のNK1.1+細胞が、B16黒色腫の転移からの小さい程度の保護を提供したことを示した。興味深いことに、DAP10KOマウスからのNK1.1+細胞の枯渇は、wt動物と等しいB16の転移を示す肺と共に、抗腫瘍活性の完全な喪失を生じた。
【0100】
インビボでのNK細胞の機能とNKT細胞の機能とを区別するために、マウスを、選択的にNK細胞を枯渇させるために抗アシアロGM1抗体によって処置した。NK1.1の枯渇とは対照的に、DAP10KOマウスからのNK細胞のみの除去は、本質的に、DAP10KOマウスの抗腫瘍活性に対して効果を有さなかった(図6C)。これらの結果は、NKT細胞が、DAP10KOマウスにおけるB16黒色腫の転移に対する防御を担う主要なエフェクター集団であること示唆した。
【0101】
DAP10欠損は、NKT細胞の機能亢進をもたらした。フローサイトメトリー分析は、脾臓のDAP10KO NKT細胞の減少した頻度を示した(図7A)。NKTのインビボでの活性化は、末梢リンパ器官からのそれらの迅速な枯渇、その後の骨髄由来細胞からの増殖および再生(repopulation)に関連することが報告されている(23)。この知見に基づいて、本発明者らは、BrdU取り込みを測定することによって、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおける脾臓のNKT細胞ならびに骨髄のNKT細胞における増殖速度を分析した。図7Bに示すように、DAP10KO NKT細胞は、wt細胞と比較して、有意に増加した増殖の%を有し、このことは、それらが構成的に機能亢進性であることを示唆した。DAP10欠損が、NKT細胞の機能に影響したか否かを決定するために、wt細胞およびDAP10KO NKT細胞の、サイトカインを産生する能力および腫瘍細胞を殺す能力を、試験した。NKT細胞を、わずかにNKT細胞を活性化し得る抗CD3 Abを使用して精製したので、休止NKT細胞の機能を、正確に評価することができなかった。図7Cに示すように、IgGアイソタイプコントロール抗体(「休止」)と一緒に培養されたNKT細胞は、低レベルのサイトカインを産生し、したがって活性化されなかったと見なされた。血小板結合性抗CD3 Abを有するNKT細胞は、IL−4、IFNγ、TNF−αおよびIL−2を含む全てのNKT特徴的なサイトカインの産生を誘導した(図7C)。興味深いことに、活性化されなかったDAP10KO NKT細胞および活性化されたDAP10KO NKT細胞の両方は、wt細胞と比較した場合、有意により高い量のサイトカインを産生した。
【0102】
IL−2に活性化されたNKT細胞の、NKG2Dリガンドを発現する腫瘍またはNKG2Dリガンドを発現しない腫瘍を殺す細胞傷害能力もまた、試験した。DAP10KO NKT細胞は、wt NKT細胞と比較した場合、NKG2D リガンド発現YAC−1腫瘍細胞をより低い効率で殺し、そして抗NKG2D Abは、部分的に、両方の場合において、その殺傷を阻害した(図8A)。これらの結果は、活性化されたDAP10KO NKT細胞が、部分的に機能性のNKG2Dレセプターを発現するが、NKG2Dについての発現レベルは、wt細胞と比較して非常に低かったことを示唆した(図8B)。興味深いことに、B16黒色腫細胞は、DAP10KO NKT細胞によって効率的に殺されたが、wt細胞によっては効率的に殺されず、そしてこの細胞傷害は、抗NKG2D Abによって著しく影響されなかった(図8A)。これらの結果は、インビボのデータと一致し、そしてDAP10KO NKT細胞が、これらの同系の腫瘍細胞を効率的に殺すようにプログラムされたことを示した。
【0103】
DAP10KO Tregは、機能不全性であった。DAP10欠損マウスがより良好な抗腫瘍応答を開始することを可能にする機構的な経路を理解するために、NK1.1+細胞の内在性の特性に対するDAP10欠損の効果、またはそれらの機能を制御する免疫環境を、決定した。CD25+ Treg細胞が枯渇したマウスにおける皮下のDMBA−T腫瘍増殖を、分析した。インビボ抗CD25 Ab処置によってTregが枯渇したwtマウスは、顕著に、遅延しかつ減少した皮膚の癌腫増殖を示し、さらに、未処置のDAP10KOマウスにおいて観察されたものに類似した(図9A、図9B)。CD25+ Treg細胞が枯渇したDAP10KOマウスは、完全に腫瘍を有さず、このことは、DAP10KO Tregが、ある程度抑制性の活性を有することを示した。これらの増強した抗腫瘍活性はまた、B16黒色腫の転移モデルにおいて観察され、Tregの枯渇が、肺への転移をブロックした(図9B)。興味深いことに、Treg枯渇マウスから単離したwt NKT細胞は、DAP10KO NKT細胞によって媒介される細胞傷害に匹敵する、B16黒色腫細胞およびDMBA−T癌腫細胞の強力なインビトロでの細胞溶解が可能であった(図9C)。
【0104】
マウスおよびDAP10KOマウスに由来する脾細胞の表現型の分析は、CD4+CD25+ Tregの等しい%を示した(図10A)。しかし、DAP10KO Tregは、低い表面密度のCD25を有する、より高い比率のTregを示した。CD25は、IL−2レセプターの重要な成分であり、そしてIL−2の活性化は、Tregの分化および増殖に不可欠であるので、IL−2または可溶性抗CD3 Abを加えたIL−2によって活性化したDAP10KO Tregが、wt細胞と比較した場合に、より低い量のIL−10およびIFN−γを産生したことは、顕著であった(図10B)。次いでTregにおけるNKG2D−DAP10 レセプター複合体の発現を、決定した。図10Cに示すように、本発明者らは、DAP10がTregの機能に直接影響することを示唆する、休止wt TregにおけるDAP10転写物およびNKG2D転写物の存在を観察した。NKG2Dレセプターの表面における発現は、脾臓のT細胞において検出されなかった(図示せず)。
【0105】
DAP10KO Tregがインビボで機能不全性であったか否かを決定するために、wt Tregを、DAP10KOマウスに移植し、そしてB16黒色腫の転移の発生に対するwt Tregの影響を分析した。1×106個のwt Treg細胞を、DAP10KOマウスに対してi.v.に移植し、そして4日後に、マウスは、B16黒色腫腫瘍細胞を受容した。コントロールマウス(wtおよびDAP10KOの両方)は、B16細胞のみを受容した。図10Cは、DAP10KOマウスにおけるwt Tregの移植が、DAP10KOマウスを、wtマウスに匹敵して、黒色腫の転移に対して感受性にしたこと示す。
【0106】
DAP10KOマウスは、誘導された自己免疫に対して、より感受性であった。DAP10KO Tregの損なわれた機能が自己に対する増加した反応性をもたらすか否かを決定するために、自己抗原(MOG35−55)に対するDAP10KO T細胞のインビトロおよびインビボでの応答を、分析した。図11Aは、MOG35−55ペプチドに対するリコール反応(recall reaction)において、MOG35−55免疫マウスのリンパ節から単離したDAP10KO T細胞は、より良好に増殖し、そしてwt細胞と比較してIFNγのより高いレベルをもたらした。遅延型の過敏性反応(DTH)の誘導は、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおいて、足蹠の同様の腫脹を生じた(図11B)。興味深いことに、MOG35−55に対するDTH応答は、DAP10KO BL/6マウスの40%に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘発したが、BL/6マウスにおいてはEAEを誘発しなかった。EAEに関連した神経学的効果を、DTH応答の誘導の、ちょうど48時間後に観察した。数匹のDAP10KOマウスは、迅速な寛解を伴う穏やかなEAEを発症したのに対して、他のDAP10KOマウスは、寛解前に1ヶ月間持続する重症かつ持続性のEAEを有した。合わせて、このデータは、DAP10KOマウスがMOG35−55誘導性自己免疫応答に対する増加した感受性を有することを示唆した。
【0107】
(考察)
予想外にも、発癌物質の刺激に曝されたDAP10KOマウス、またはNKG2Dリガンドを発現する同系の腫瘍もしくはNKG2Dリガンドを発現しない同系の腫瘍を移植されたDAP10KOマウスは、腫瘍の悪性度に対して増強された抵抗性を示した。DAP10KOマウスの抗腫瘍表現型は、マウスにおいてNK細胞およびNKT細胞の両方を枯渇させることによって逆転された。B16黒色腫モデルにおいて、DAP10KO NKT細胞は、B16腫瘍の排除を媒介するエフェクター細胞であることを証明した。一貫して、インビトロ細胞傷害アッセイは、DAP10KOが、NKG2D依存性の様式でB16黒色腫の腫瘍を効率的に殺し得たが、wt NKT細胞は、そうでなかったことを示した。それとは反対に、DMBA−T癌腫移植モデルにおいて、DAP10KO NK細胞は、腫瘍の拒絶を担う最終的なエフェクターであった。しかし、この腫瘍モデルにおいても、DAP10KO NKT細胞は、NK細胞の活性化を媒介するようであった。実際に、インビトロで活性化されたwt細胞またはDAP10KO NK細胞が、DMBA−T腫瘍を同様の効率で殺したのに対して、DAP10KO NK1.1+細胞は、DMBA−T標的を、wt NK1.1+細胞よりずっと効率的に殺した。さらに、TCRによる刺激の際に、DAP10KO NKT細胞は、IFN−γおよびTNF−α(両方とも殺腫瘍活性を有する)の、より高いレベルをもたらした。インビボにおいて、NKT細胞によるIFN−γの、早期のより高い産生の後に、通常、NK細胞の迅速な活性化および効率的な腫瘍の殺傷が続く(31−35)。
【0108】
DAP10欠損は、構成的に機能亢進したNKT細胞に関連した。DAP10KO NKT細胞は、ナイーブなマウスの脾臓および骨髄の両方における増加した増殖速度を示した。さらに、「休止」DAP10KO NKT細胞および活性化されたDAP10KO NKT細胞は、wt NKT細胞と比較して、有意により高いレベルのサイトカインを産生した。NKT細胞のような自己反応性のT細胞の活性を阻害することによって自己の破壊を防ぐこと(36)が公知であるDAP10KO Tregの機能的特性を、DAP10が、細胞傷害機能を抑制状態に保つ機構に関与するか否かを決定するために、分析した。DAP10KOマウスの分析は、DAP10の基礎的な発現が、Tregが正常に機能するために必要とされたことを示した。DAP10シグナル伝達の欠如は、Tregの分化の状態を変化させるようであり、Tregの抑制性の活性の欠損を生じた。DAP10欠損マウスにおけるwt Tregの養子移植は、上記抑制を回復させ、このことは、実際に、DAP10KO Tregがインビボで機能不全であったことを示した。
【0109】
Tregは、特に、高レベルのCD25抗原(IL−2レセプターの成分)を発現する、高度に分化した細胞である。IL−2は、Tregに対する重要な増殖因子であるだけでなく、Tregの機能をも調節し得る(27、29)。ナイーブなDAP10KO Treg集団は、wt細胞と比較した場合、CD4+CD25low細胞の増加した%を示した。結果的に、TCRを介する活性化に関連するか、またはそれに関連しないIL−2刺激は、DAP10KO TregによるIL−10の有意に減少した産生をもたらした。Tregは、自己反応性を抑制する2つの主要な機構を利用する:IL−10、TGFβおよびIL−4のような免役抑制性サイトカインの産生およびCTLA−4またはGITRのような細胞表面抗原を含む、細胞と細胞との接触性相互作用(37)。したがって、DAP10KO TregによるIL−10の損なわれた産生は、インビボにおけるそれらの細胞の減少した抑制性の活性を担うようである。
【0110】
DAP10シグナル伝達が、いかにしてTregの分化プロセスに寄与するのか?1つの可能性は、DAP10が胸腺におけるTregの成熟に影響することである。Tregの胸腺における発達は、TCR媒介性シグナルおよび最大の共起刺激を必要とする。CD28共起刺激分子、B7共起刺激分子およびCD40共起刺激分子を欠如するマウスは、Tregの損なわれた発達を有する(36、37)。DAP10KOマウスは、正常なTreg数を有したが、Tregの抑制性の機能を損ない、これは、DAP10がTregの完全な成熟に必要とされ得ることを示唆した。DAP10転写物およびNKG2D転写物は、胸腺において良好に発現され、そしてNKG2D−リガンド転写物は、胚において高度に発現されることが見出され(30)、これらのことは、NKG2D−DAP10レセプター複合体が、実際に、自己反応性のT細胞集団の初期の発達に関与し得ることを示唆する。あるいは、DAP10シグナル伝達は、直接的かまたは間接的かのいずれかで、末梢におけるTregの抑制性の機能を維持するために必要とされ得る。本発明者らは、天然のwt Tregにおいて、表面でのNKG2Dの発現を検出できなかったが、mRNA分析は、Tregの調節におけるNKG2D−DAP10レセプター複合体の直接的な関与を示唆する、NKG2DおよびDAP10の両方の発現を明確に示した。DAP10シグナル伝達が、末梢におけるTregの分化に重要である抗原提示細胞によって提供される共起刺激レセプターおよびサイトカインをモジュレートすることによって、Tregの機能に間接的に影響することも、可能である(32)。
【0111】
DAP10KOマウスの分析は、DAP10が、腫瘍認識の免疫寛容機構に関与し、そうして腫瘍に対する免疫療法のための強力な薬物標的を示したことを示唆する。したがって、DAP10シグナル伝達のブロックは、Tregの抑制性の機能を損なうことによって同系の腫瘍に対して、保護的であり得た。当然に、NKG2D−DAP10レセプター複合体のブロックは、腫瘍細胞がNKG2Dリガンドを発現するか、またはNKG2Dリガンドしないかに依存して、異なる帰結を有するようである。興味深いことに、wtマウスは、それらが、予めTregを枯渇した場合にのみ、低レベルのNKG2Dリガンドを発現するDMBA−T腫瘍を拒絶し得た。NKG2Dリガンドのほかに、DMBA−T腫瘍細胞が、Tregによって認識され得る腫瘍関連抗原を発現し、そしてそれらの活性化、およびその後の免疫反応の阻害を誘発することが、可能である。この可能性は、腫瘍特異的な、変異していない自己抗原(LAGE−1と称される)の、Treg細胞に対する生理学的リガンドとしての最近の同定によって支持された(38)。したがって、外来または自己の状況における腫瘍特異的抗原の認識は、腫瘍に対する免疫応答の性質において重要な影響を有し得た。
【0112】
DAP10は免疫調節機能を有するので、DAP10のブロックは、好ましい自己免疫であり得る。しかし、ナイーブなDAP10KOマウスは、自発の自己免疫反応を発生せず、自己免疫表現型に関連するマウスにおける腫瘍の拒絶でもなかった。興味深いことに、MOG自己ペプチドに対するDTH反応の誘導は、DAP10KOマウスにおいてEAEを生じたが、wtマウスにおいてはEAEを生じず、このことは、DAP10KOマウスが、実験的に誘導された自己免疫疾患に対して、より感受性であることを示した。BL/6マウスにおけるEAEの誘導が、CFA中に乳化されたMOG35−55および百日咳毒素(PTX)による免疫を必要とすることが、良好に確立される(39)。PTXの非存在下において、wt BL/6マウスは、代表的に、EAEを発症しないが、しかし、40%のDAP10KOマウスは、PTX処置無しでEAEを発症した。おそらく、DAP10KO Tregの損なわれた調節機能が、増強したT細胞媒介性の自己反応性をもたらし、したがってPTXに対する必要性を除去した。DAP10シグナル伝達はまた、自己免疫応答に関与する他の免疫細胞の活性に影響し得る。2つの研究は、自己反応性のCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞におけるNKG2D−DAP10レセプター複合体の発現を示している(7、8)。後者は、自己免疫疾患に対して遺伝的に感受性であり、不完全なTregおよびNKT細胞の活性を有する他のマウス系統のようなNODマウスの使用を、行なった(28)。NKG2Dシグナル伝達のブロックは、CD8+ T細胞の増殖および活性を阻害することによって自己免疫性糖尿病を予防する(8)。したがって、DAP10機能のブロックは、免疫応答において異なる影響を有するようである。
【0113】
DAP10は、リンパ系細胞および骨髄性細胞において広く発現され、したがってDAP10の生物学は、複合体であることが予想される。上記研究は、同系の腫瘍に対する応答を制御する免疫調節機構におけるDAP10の重要な役割を示し、そしてDAP10共起刺激の1つの生理学的役割が、自己抗原に対する寛容を維持するためにTregを活性化することであることを示唆する。
【0114】
(参考文献)
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
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【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、DAP10遺伝子の標的化を示す。(A)エキソン3およびエキソン4が、ES細胞中の1.4kbのneorカセットによって置換されたDAP10 wt対立遺伝子の概略図。ereリコンビナーゼ遺伝子を含むプラスミドを導入することによって、lox Pフランク(flanked)neor遺伝子が除去される。(B)サザンブロット分析。ESクローンを、未分化胚芽細胞のマイクロインジェクションの前に、neor遺伝子の切り出しを確認するためにサザンブロットによって分析した。サザンスクリーニングは、DAP10標的化ベクターにフランキングする5’プローブおよび3プローブの両方を利用する。ゲノムDNAを、コントロール、または変異体ES細胞から単離し、NcoIによって消化し、そして5’プローブおよび3プローブによってハイブリダイズさせた。wt対立遺伝子(wt)は、6kbのバンドによって表され、標的化された対立遺伝子(HR)は、4.0kbのバンドであり、そしてCREフリップ対立遺伝子(flipped allele)(CF)は、5.1kbのバンドである。(C)DAP10KOリンパ組織のRT PCR分析。全RNAは、wtマウスまたはDAP10KOマウスの脾臓、リンパ節および胸腺から単離され、そしてDAP10遺伝子、NKG2D遺伝子およびDAP12遺伝子に対する特異的プライマーを使用したリアルタイムRT PCR分析に供された。mRNAレベルを、ユビキチンレベルに対して正規化した。(D)NK1.1+細胞上のNKG2Dレセプターの発現。wtまたはDAP10KO 脾細胞(上のパネル)またはIL−2によって3日間活性化されたNK細胞(下のパネル)を、抗NK1.1 FITCと抗NKG2D PE mAbとのカクテルによって染色し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。
【図2】図2は、DAP10欠損マウスが化学的に誘導された皮膚の癌腫に対して保護されることを示す。発癌のイニシエーションの4ヶ月後、皮膚の腫瘍を計測し、そしてそれらの発達の段階(乳頭腫および癌腫)を、臨床的かつ組織学的な判定基準に基づいて決定した。wt腫瘍は、癌腫と乳頭腫との混合であったのに対して、DAP10KO腫瘍は、乳頭腫のみであった。写真は、代表的なwtマウスまたはDAP10KOマウスにおける化学的に誘導された皮膚の腫瘍の外観を示す。その差は、対応のないスチューデントt検定によって決定したところ、統計学的に有意であった(p>0.05)。
【図3】図3は、NK1.1+細胞がDAP10KOマウスにおいて癌の腫瘍の効率的な拒絶を担う、最終のエフェクター細胞であることを示す。(A)wt癌腫細胞の移植。マウス(1群あたりn=10)に、5x104個のwt癌腫細胞をs.c.に注射し、そして1ヶ月間2〜3日毎に腫瘍増殖についてモニタリングした。(B)NK1.1+細胞が枯渇したマウスにおける腫瘍増殖。抗NK1.1 mAb(PK136)またはアイソタイプコントロール(マウスIgG1κ)を、−2日目から開始して5日毎にi.v.に与えた。マウス(1群あたりn=5)に、0日目において5×104個のwt癌腫細胞を与えた。(C)NK細胞が枯渇したマウスにおける腫瘍増殖。抗アシアロGM1ポリクローナル抗体またはPBSを、−2日目、2日目、6日目、10日目においてi.v.に与えられた。マウス(1群あたりn=5)に、5×104個のwt癌腫細胞を0日目に与えた。P値(p>0.05)を、対応のないスチューデントt検定によって決定した。データは、与えられた時点における腫瘍容積の平均±SEMとして示される。
【図4】図4は、DAP10KO NK1.1+細胞が効率的に癌の皮膚の腫瘍を殺すことを示す。(A)DMBA−T癌腫細胞におけるNKG2D−リガンドの発現。NKG2D−Ig融合タンパク質またはIgコントロールと、PE結合体化二次Abとによって染色されたwt癌腫細胞のフローサイトメトリー分析。(B)NK1.1+細胞による癌の皮膚の腫瘍のインビトロでの殺傷。NK細胞、NKT細胞またはNK1.1+細胞を、wt脾細胞またはDAP10KO脾細胞から単離し、そしてIL−2と一緒に7日間培養した。それらは、異なるエフェクター:標的比でのDMBA−T細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのアッセイは、抗NKG2DブロックmAbまたはラットIgG2aアイソタイプコントロール(両方とも10μg/mlにて使用される)の存在下において行なった。
【図5】図5は、DAP10欠損がB16黒色腫の転移に対する免疫の増強と関連することを示す。(A)黒色腫の肺への転移の発症。1×105個または1×104個のB16細胞を、マウスにi.v.注射し、そして肺への転移を、2週後に計測した(p>0.05)。(B)1x105個のB16黒色腫細胞の注射の2週間後でのwtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるB16転移の外観。
【図6】図6は、NKT細胞がDAP10KOマウスにおいてB16黒色腫の転移に対する保護を担うエフェクターであることを示す。(A)骨髄キメラの産生。骨髄キメラマウスの4つの群を産生し、そして抗転移効果におけるDAP10KO免疫細胞の役割を評価するために使用した。使用したドナー−>レシピエントキメラは、以下の通りであった:1.wt GFP+−>wt;2.DAP10KO−>DAP10KO;3.wt GFP+−>DAP10KO;4.DAP10KO−>wt GFP+。1×105個のB16細胞を、キメラに注射し、そして2週間後、その転移を計測した。2つの異なる実験からの代表的な結果。(B)マウスにおけるNK1.1+細胞の枯渇。マウスに、2×104個のB16細胞をi.v.に注射した。抗NK1.1 Ab(PK136)またはアイソタイプコントロール(マウスIgG1κ)に、−2日目から開始して5日毎にi.v.に与えた。肺への転移を、2週間後に計測した。(C)マウスにおけるNK細胞の枯渇。抗アシアロGM1ポリクローナル抗体またはPBSを、−2日目、2日目、6日目、10日目においてi.v.に与えた。1×105個のB16細胞を、0日目においてi.v.に注射し、そして肺への転移を、14日目に計測した。
【図7】図7は、DAP10KO NKT細胞が超活動性であることを示す。(A)wtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるNKT細胞集団のフローサイトメトリー分析。ナイーブなマウスから単離された脾細胞を、抗NK1.1 PE抗体と抗CD3 FITC抗体とによって染色した。NKG2D発現を、抗NKG2D PE Abによって染色し、取り出されたNKT細胞において評価した。(B)NKT細胞の交代速度。マウスに、BrdU(マウス1匹あたり1mg)をi.v.に注射した。24時間後、白血球を、脾臓および骨髄から単離し、そしてBrdUキットを使用してBrdUの取り込みを検出するために染色した。染色された細胞は、フローサイトメトリーによって分析した。(C)DAP10KO NKT細胞は、wt細胞と比較して、より高い量のサイトカインを産生する。wt細胞またはDAP10KO NKT細胞を、ナイーブなマウスの脾細胞から単離し、そして血小板結合性抗CD3 mAbまたはアイソタイプコントロール(「休止」)によってインビトロで活性化させた。細胞を48時間培養し、そしてサイトカイン産生をマウスThl/Th2 CBAキットを使用して上清において測定した。
【図8】図8は、DAP10 NKTKO細胞がB16黒色腫細胞を効率的に殺すことを示す。(A)活性化されたNKTのフローサイトメトリー分析。取り出されたNKTを、IL−2と一緒に5日間培養した。細胞を、抗NK1.1 FITCと、抗CD3 Cyと、抗NKG2D PE Abとのカクテルによって染色した。(B)NKT細胞傷害能力の分析。IL−2活性化NKT細胞を、YAC−1細胞およびB16黒色腫標的細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。YAC−1が、高レベルのNKG2Dリガンドを発現するのに対して、B16は、高レベルのNKG2Dリガンドを発現しない。そのアッセイは、抗NKG2DブロックAbまたはそのアイソタイプコントロール(両方とも、10μg/mlである)の存在下において行なわれた。
【図9】図9は、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるCD4+CD25+ Tregの枯渇を示す。(A)Tregが枯渇したマウスにおけるDMBA−T癌腫細胞の移植。Tregを枯渇させるために、マウスに、−2日目において単一用量の抗CD25 Abを与え、次いで0日目においてDMBA−T細胞を注射した。腫瘍増殖を、3日毎にモニタリングした。(B)Tregが枯渇したマウスにおける転移の発生。枯渇のために、マウスに、−3日目、2日目および7日目において抗CD25 Abを与えた。コントロールマウスに、PBSを与えた。1×105個のB16細胞を、0日目においてi.v.に与え、そして転移を、2週間目において計測した。(C)Tregが枯渇したマウスから単離されたNKT細胞の細胞傷害能力。wtマウスまたはDAP10KOマウスは、−3日目における抗CD25 Ab(クローンPC61、マウス1匹あたり0.5mg)の静脈内注射によってCD25+細胞が枯渇した。0日目において、NKT細胞を、脾臓から単離し、そしてマウスIL−2と一緒に5日間培養した。次いで、NKTを、B16黒色腫細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのデータは、平均±SDとして示される。
【図10】図10は、DAP10欠損がTreg媒介性の抑制の減損と関連することを示す。(A)Tregのフローサイトメトリー分析。脾細胞を、wtマウスまたはDAP10KOマウスから単離し、そして抗CD4 FITC Ab、抗CD25ビオチンAbによって染色し、次いでストレプトアビジン−Cyによって染色した。(B)DAP10KO Tregによるサイトカイン産生の減損。wt TregまたはDAP10KO Tregは、ナイーブなマウスの脾細胞から単離し、そしてIL−2、またはIL−2および可溶性抗CD3 mAbを用いて48時間活性化した。サイトカインの産生を、マウス炎症性CBAキットを使用して上清において測定した。その上清において検出された他のサイトカインは、MCP−I(DAP10KO Tregにおいてダウンレギュレートされた)、およびTNF−α(wt細胞およびDAP10KO細胞によって同様に産生)であった。(C)wt TregおよびDAP10KO TregのTaqman分析。Tregを、マウスCD4+CD25+ Treg単離キットを使用して、wtマウスおよびDAP10KOマウスの脾臓から単離した。全RNAを、3.5×106個のTregから単離し、そしてFoxp3遺伝子、NKG2D遺伝子、DAP10遺伝子、DAP12遺伝子およびIFNγ遺伝子に対する特異的プライマーを使用するリアルタイムRT PCR分析に供した。mRNAレベルを、ユビキチンレベルに対して正規化した。(D)DAP10KOマウスにおけるwt Tregの養子移植。1×106個のwt TregまたはPBSを、−3日目においてDAP10KOマウスにi.v.注射した。マウスに、0日目において、B16黒色腫をi.v.に注射し、そして肺への転移を、14日目に分析した。(D)DAP10KO NKTに対するTregの抑制効果。NKTを、ナイーブなマウスから単離し、そしてマウスIL−2と一緒に5日間培養した。細胞傷害アッセイの12時間前に、NKT細胞を洗浄し、計測し、そしてIL−2を含む培地において、単独か、またはwt TregもしくはDAP10KO Tregと一緒(1:1の比)のいずれかで、培養した。NKT±Tregを、B16黒色腫細胞またはwt癌腫細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのデータは、平均±SDとして示される。
【図11】図11は、DAP10KO T細胞が自己ペプチドMOGに対する増加した反応性を提示することを示す。(A)MOG35−55で免疫されたリンパ節細胞のインビトロ増殖アッセイ。wtリンパ節細胞およびDAP10KOリンパ節細胞を、MOG35−55で免疫されたマウスから単離し、そして異なる濃度にて、MOG35−55ペプチドと一緒に72時間培養した。その増殖性の応答を、[3H]−チミジン取り込みアッセイによって測定した(左のグラフ)。未標識の培養物を使用して、IFN−γの量を決定した(右のグラフ)。データは、三連の平均±SEMである。3つのうちの1つの代表的な実験が示される。(B)DTH応答の誘導。マウスを、0日目において、CFA中に乳化されたMOGによって免疫し、次いで10日目においてMOGを足蹠に注射した。足蹠の腫脹を、48時間後に測定した(左のグラフ)。EAE臨床スコアを、方法に記載されるように決定した。3つの異なる実験の組み合わせたデータ。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、免疫学および医薬の分野に関する。より具体的に、本発明は、インビボで抗腫瘍活性を増強し、そして自己免疫を減少させるDAP10活性のモジュレーション、およびこのようなモジュレーションを媒介する化合物の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫細胞の活性の閾値は、自己抗原および外来抗原の認識を介して受容される活性化シグナルおよび抑制性シグナルによって調節される。活性化レセプターまたは抑制性レセプターに影響する遺伝的欠損は、免疫系が自己と非自己との間で区別することを不可能にし、自己免疫または感染因子および形質転換細胞に対する異常な応答を引き起こす(1、2)。
【0003】
多くの活性化レセプターは、マルチサブユニット複合体であり、この複合体において、膜貫通アダプタータンパク質が、細胞内部でのシグナルの伝達を担う。DAP10は、造血細胞において発現されるマルチサブユニットレセプター複合体中の活性化レセプターNKG2Dと結合する膜貫通アダプタータンパク質である(3)。NKG2D−DAP10レセプター複合体は、NK,γδ T細胞およびNKT細胞において構成的に発現され、そして生得的な刺激は、その発現をさらにアップレギュレートし得る(3〜6)。活性化の際に、CD8+T細胞およびマクロファージは、適応性の免疫応答の調節に関与するNKG2D−DAP10レセプターを発現する(7、8)。細胞表面におけるNKG2Dの発現は、DAP10タンパク質とのその結合を必要とする。これは、DAP10の膜貫通領域中の酸性アミノ酸と、NKG2Dタンパク質の膜貫通ドメイン中の塩基性アミノ酸との間の相互作用を含む(3)。NKG2DおよびDAP10の発現パターンは、完全に重複しないので、DAP10が他の未だに同定されていないレセプターと結合する(特に、いくつかの骨髄性細胞の集団において)ことが、考えられる。ヒトにおいて、NKG2Dが専らDAP10と結合する(3,4)のに対して、マウスは、NKG2Dについての2つの異なるアイソフォーム(DAP10にのみ結合する長い形態(NKG2D−l)、およびDAP10およびDAP12の両方と対になることが示されている短い形態(NKG2D−s))を発現する(9、10)。
【0004】
免疫レセプター活性化チロシンモチーフ(immunorecepter tyrosine−based activation motif)(ITAM)を介してシグナルを与えるDAP12および他のアダプタータンパク質とは異なり、DAP10は、ITAMを有さないが、DAP10は、PI3−キナーゼ経路の活性化に関与するYXXMモチーフを含む(3)。NK細胞において、DAP10のシグナル伝達は、細胞傷害を直接誘導し、そしてDAP12関連レセプターを介して開始されるサイトカイン産生を増強する(11、12)。T細胞において、DAP10のシグナル伝達は、主に、TCR誘導性シグナルに対する共起刺激を提供する(5)。
【0005】
NKG2D−DAP10レセプター複合体に対する同定されたリガンドは、ヒトにおけるMICA、MICBおよびULBP、ならびにげっ歯類動物におけるRae−1、H60およびMULT−1を含むクラスI MHC様タンパク質である(4、13、14、15)。一般に、それらは、成体の組織において最小限に発現され、そして腫瘍細胞および病原体感染細胞においてアップレギュレートされる。腫瘍細胞におけるNKG2Dリガンドの異所性の発現は、宿主からの腫瘍の拒絶を生じる(16、17)。しかし、NKG2Dリガンドは、正常組織においても同様に発現され得、それによってNKG2D−DAP10複合体の正確な役割を不明確にする。
【0006】
DAP10が、免疫応答の重要な役割を有するもの(player)であることが公知である多くの細胞型において発現され、そして特徴付けられるが、この分子によって果たされる生物学的役割の明確な証拠は、存在しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、進行する免疫応答のダイナミクス(dynamics)または一次免疫応答の開始を変化させるための、DAP10(造血細胞における細胞表面シグナル伝達分子)のモジュレーションに関する。代表的に、免疫応答は、体液性(抗体媒介性)または細胞性(T細胞媒介性)である。体液性免疫応答は、Th2細胞の活性化ならびにIL−4およびIL−10の産生によって特徴付けられ、そして最終的に、抗原特異的B細胞および抗体産生の活性化をもたらす。一方で、細胞性免疫応答は、Th1細胞の活性化ならびにIFN−γおよびIL−12の産生によって特徴付けられ、細胞傷害性T細胞(通常は、CD8+ T細胞)の増殖および活性化を生じる。これらの応答の各々は、特定の病原体から宿主を保護するように設計され、そしてこれらの応答の調節は、健全な免疫系を維持するのに重要である。調節されない免疫応答または異常な免疫応答は、自己免疫、種々の免疫病理、および抑制された抗腫瘍反応性または抗腫瘍反応性の非存在を生じる。免疫応答の1つの同定された調節因子は、調節性T細胞である。調節性T細胞は、宿主免疫応答を極度に抑制し、そして自己中毒回避を誘導する。例えば、Roncaroloら、Curr.Opin.Immunol.12:676−683(2000);Sakaguchiら、Immunol.Rev.182:18−32(2001)を参照のこと。調節性T細胞(「Treg」)は、種々の表現型を有するようであり、したがって調節性T細胞は、一貫して、それらの機能的活性によってのみ同定可能である。現在、その存在(または非存在)が、T細胞応答のこの調節に明確に寄与する単一分子は、同定されていない。本発明者らは、本明細書中で、その活性が細胞性免疫応答の調節に重要であり、したがってインビボの免疫応答をモジュレートするための有意な標的として、DAP10を開示する。
【0008】
したがって、被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制し得る。上記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害し得る。この方法において有用である因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAであり得る。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、NKG2DリガンドまたはLAGE−1を発現する。1つの実施形態において、上記因子は、NK細胞の細胞傷害もしくはNKT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する。上記因子は、NK細胞の増加した増殖またはNKT細胞の増加した増殖を刺激し得る。いくつかの実施形態において、前記因子は、少なくとも特徴的なサイトカインのNK細胞またはNKT細胞からの増加したサイトカイン産生を刺激する。上記特徴的なサイトカインは、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2であり得る。
【0009】
DAP10活性をモジュレートする因子の有効量を細胞に投与する工程を包含する、標的に対する細胞傷害を増加する方法であって、上記DAP10活性は、減少されるか、または排除される方法もまた、本明細書中で特徴付けられる。上記標的は、腫瘍細胞であり得る。いくつかの実施形態において、上記細胞傷害のメディエーターは、NK細胞またはNKT細胞である。上記細胞は、組織または生体にあり得る。
【0010】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害し得るか、または抑制し得る。上記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する。この方法において有用な因子は、DAP10の膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである。1つの実施形態において、前記被験体は、癌を有する。
【0011】
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記癌は、皮膚癌である。特定の実施形態において、上記癌は、化学的に誘導される。
【0012】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、発癌を弱めるか、または改善する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法がまた、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記発癌は、皮膚の発癌である。特定の実施形態において、上記発癌は、化学的に誘導される発癌である。いくつかの実施形態において、上記DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される。
【0013】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、皮膚の腫瘍である。1つの実施形態において、上記腫瘍は、化学的に誘導される。上記DAP10生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価され得る。
【0014】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程;b)試験化合物を上記DAP10−/−に投与する工程;c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程;およびd)試験化合物を、上記試験化合物が上記疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、上記自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程;を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である。この方法によって同定された有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法もまた、本明細書中で特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫応答の重要な調節性のようなDAP10についての生理学的な役割に関する。DAP10の欠如は、原発性の増殖(outgrowth)および転移性腫瘍の増殖(growth)の両方に対する抗腫瘍免疫応答性の増大をもたらし、このことは、DAP10が免疫監視における重要な役割を有するものであることを意味する。DAP10の欠如はまた、自己免疫疾患に対する感受性の上昇をもたらし、このことも、DAP10がインビボの免疫応答の調節に関与することを意味する。したがって、本発明の目的は、特に、癌および自己免疫における免疫応答性を変化させるためのDAP10のモジュレーションに関する。DAP10をモジュレートする因子を同定する能力は、免疫応答の外部からの調節を可能にし、発癌および腫瘍増殖を予防しない場合に、少なくともそれらを減少させるための腫瘍に対する免疫監視の増強を可能にし得る。
【0016】
開示の明確性のために、そして限定としてではなく、本発明の詳細な説明は、以下のサブセクションに分けられる。
【0017】
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。全ての特許、公開された特許出願および他の出版物、ならびにGenBankおよび本明細書中に言及される他のデータベースからの配列は、その全体が参考として援用される。この節に示される定義が、本明細書中に参考として援用される特許、公開された特許出願、および他の出版物ならびにGenBankおよび他のデータベースからの配列に示される定義に反するか、あるいはそれと矛盾する場合、この節に示される定義が、本明細書中に参考として援用される定義より優先する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「因子(agent)」は、本発明の分子の発現および/または活性をモジュレートする(例えば、上方調節(up−modulate)するか、または刺激し、そして下方調節(down−modulate)するか、または阻害する)化合物を含む。本明細書中で使用される場合、用語「インヒビター」または「阻害性因子」は、本発明の分子の発現および/または活性を阻害する因子を含む。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、抗原性エピトープを特異的に結合するのに必要な可変領域配列を含む、単離された結合因子または組換え結合因子をいう。したがって、抗体は、抗体の任意の形態または所望の生物学的活性(例えば、特異的標的抗原を結合すること)を示すそのフラグメントである。したがって、抗体は、その最も広い意味で使用され、そして具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ(nanobody)、ダイアボディ(diabody)、多重特異的抗体(multispecific antibody)(例えば、二重特異的抗体(bispecific antibody))、および抗体フラグメント(scFv、Fab、およびFab2が挙げられるが、これらに限定されない)を網羅するが、但しそれらは、所望の生物学的活性を示す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「自己免疫」とは、被験体の免疫系(例えば、T細胞およびB細胞)が被験体自身の組織に対して反応を始める状態をいう。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「発癌」とは、悪性細胞もしくは新生物性細胞または腫瘍の発生をいう。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞媒介性の応答」とは、T細胞、および免疫系の非特異的な細胞(NK細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、および好塩基球が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介される、抗原、細胞、または生物体に対する宿主の応答をいう。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「DAP10」は、供給源(一般的に認められるWO99/06557に開示されるようなDAP10が挙げられるが、これに限定されない)にかかわらず、DAP10タンパク質の全ての形態を包含する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「転移性腫瘍」とは、原発性腫瘍から離れた部位において増殖する腫瘍細胞をいう。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」とは、B細胞またはT細胞と異なり、そして種々の機構(直接的な細胞溶解、抗体依存性細胞媒介性の溶解、および他の細胞を活性化するIFN−γ産生が挙げられる)によって、生得的な免疫応答において細胞(代表的には、病原体感染細胞または腫瘍細胞のいずれか)を殺すように機能する大きい顆粒リンパ球をいう。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「NKT細胞」とは、NK細胞マーカーもまた発現するT細胞の小さいサブセットをいう。NKT細胞は、NK1.1(CD161)+細胞、CD3+細胞、CD4+/−細胞である。TCR−α鎖は、代表的なT細胞と比較して制限された多様性を有し、そしてNKT細胞は、クラスI様分子(例えば、CD1)を認識する。NKT細胞は、MHCに拘束されず、そしてそのNKT細胞は、抗原提示細胞によって提示されるペプチドを認識しない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されるアミノ酸の比較的短い鎖を含む。用語「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」は、ペプチドを模倣し得るか、またはペプチドに拮抗し得る非ペプチド性の構造エレメントを含む化合物を含む。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「原発性腫瘍」とは、原位置(in situ)に留まる腫瘍をいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「調節性T細胞」または「Treg」とは、他の免疫細胞の機能の抑制を引き起こすT細胞をいう。例えば、von Herrathら、Nature Rev.Immunol.3:223−32(2003)を参照のこと。Tregは、細胞と細胞との接触によって直接的か、または抗炎症性メディエーター(例えば、IL−10、TGF−β、またはIL−4)の分泌を介して間接的かのいずれかで、他の免疫機能を抑制し得る。Levingsら、Arch.Allergy Immunol.129:23−76(2002);Shevach、Nature Rev.Immunol.2:389−400(2002)を参照のこと。いくつかの実施形態において、Tregは、CD4+CD25+ T細胞である。例えば、Waldmannら、Immunity 14:399(2001)を参照のこと。代表的に、Tregは、能動的に、Th1細胞、Th2細胞、またはナイーブなT細胞の増殖およびサイトカイン産生を抑制し、このT細胞の増殖およびサイトカイン産生は、活性化シグナル(例えば、抗原および抗原提示細胞、またはMHCの状況(context)において抗原を模倣するシグナル(例えば、抗CD3抗体+抗CD28抗体)によって培養中に刺激されている。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「低分子干渉(small interfering)RNA」(「siRNA」)または「短鎖干渉(short interfering)RNA」)とは、干渉を指揮し得るか、またはRNA干渉を媒介し得る、約10〜50個の間のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)からなるRNA(またはRNAアナログ)をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」とは、免疫応答が誘発され得るあらゆる生きている生物体をいい、好ましくは、その被験体は、哺乳動物である。例示の被験体としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞」、または「Tリンパ球」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)由来のT細胞系統内のあらゆる細胞をいう。好ましくは、T細胞は、CD4またはCD8のいずれか(しかし、それらの両方を発現しない)、およびT細胞レセプターを発現する成熟T細胞である。本明細書中に記載される種々のT細胞集団は、当該分野において公知であるそれらのサイトカインプロフィールおよびそれらの機能に基づいて定義され得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」とは、被験体に対する治療因子の適用もしくは投与、あるいは疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害についての素因を有する被験体由来の単離組織または単離細胞株に対する治療因子の適用もしくは投与をいい、これらの適用もしくは投与は、その疾患もしくは障害を治癒する(cure)か、治癒する(heal)か、緩和するか、軽減するか、変化させるか、治療するか、改善する(ameliorate)か、改善する(improve)か、またはその疾患もしくは障害に影響を与える目的を伴う。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「腫瘍」とは、任意の悪性細胞または新生物性細胞をいう。
【0036】
(B.細胞の応答のモジュレーション)
被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大させるための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。標的に対する細胞傷害を増加させる方法であって、細胞にDAP10活性をモジュレートする因子の有効量を投与することを包含する方法もまた、本明細書中で特徴付けられ、ここでそのDAP10活性は、減少するか、または排除される。
【0037】
DAP10発現細胞が関与するあらゆる細胞媒介性の応答は、本開示の発明を使用して刺激され得るか、または増大され得る。このような細胞媒介性の応答は、ナイーブな細胞の応答、記憶細胞の応答、Th1細胞の応答、Th2細胞の応答、および調節性T細胞の応答を包含する。細胞媒介性応答は、当該分野において使用され得る慣用的な方法によって測定され得る。例えば、Coliganら編、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons、現行版)を参照のこと。
【0038】
特に、DAP10活性の操作は、標的に対する細胞傷害の増加をもたらし得る。DAP10を発現し、DAP10媒介性の相互作用によってその標的と相互作用する任意の細胞傷害性細胞(または細胞傷害性細胞の先祖)、またはその細胞のDAP10を含む細胞傷害性エフェクター細胞への分化および/もしくは刺激は、この方法によってモジュレートされ得る。このような細胞としては、NK細胞、Treg、NKT細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、樹状細胞、および肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細胞傷害は、任意の適切な方法によって評価され得る。例示の方法としては、標識された標的細胞からの放射標識の放出の試験(例えば、51Cr)、比色定量アッセイ(例えば、CytoTox96(登録商標)非放射性アッセイ(Promega)、グランザイム放出アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ、および生物ルミネセンス細胞傷害アッセイ(例えば、Biovision Research Products(Mountain View、CA))が挙げられる。
【0039】
任意の適切な標的細胞は、細胞媒介性の応答(特に、本発明の細胞傷害性の応答)に対する標的であり得る。好ましくは、上記標的は、哺乳動物である。上記標的は、応答する細胞に対して同系、同種異系、または異種(xenogeneic)であり得る。ほとんどの実施形態において、上記標的は、同系または同種異系である。好ましい実施形態において、上記標的は、応答するエフェクター細胞に対して同系である。上記標的細胞は、正常細胞または異常細胞であり得る。例示の細胞は、腫瘍細胞、ウイルスに感染した細胞、および組換え手段によってDAP10リガンドを発現する細胞を含む。したがって、標的細胞としては、確立された細胞株(例えば、K562細胞)、短期の細胞株(short term cell line)、または被験体から採取されたサンプルから単離される細胞(例えば、解離した腫瘍細胞)が挙げられる。DAP10またはDAP10リガンドを発現する細胞において、その発現は、天然に生じ得るか、当該分野において公知である方法を使用する組換え手段により得る。例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記腫瘍標的または他の細胞性標的は、DAP10に対するリガンドを発現する。ときとして、上記DAP10リガンド(またはDAP10関連リガンド)は、NKG2DリガンドまたはLAGE−1である。
【0041】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。Treg活性は、周知の方法を使用して評価され得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0049696号;同第2004/0173778号;および同第2003/0147865号を参照のこと。代表的に、エフェクターT細胞集団は、規定されたインビトロの標的に応じて、増殖、細胞傷害、またはサイトカイン産生について評価され得る。しかし、このような分析はまた、上記因子のインビボ投与後に、エキソビボで行われ得る。このような分析において、上記因子の有効量は、所望のエフェクター細胞集団の増殖および/もしくは細胞傷害を増加させるか、またはサイトカイン産生を、上記エフェクター細胞集団を補助するものへと変化させるのに必要な量である。1つの例において、上記因子は、NK細胞の増殖および/または細胞傷害を増加させる一方で、IL−4産生およびIL−10産生を減少させ、そして/またはIFN−γ産生を増加させる。インビボ分析は、減少した腫瘍増殖、減少した転移の発生数、および/または減少した死亡率によって評価されるような抗腫瘍応答の増大を含み得る。例えば、Teicher、TUMOR MODELS IN CANCER RESEARCH(Humana Press 2001)を参照のこと。
【0042】
本発明の因子は、DAP10の生物学的活性の阻害または抑制をもたらす、DAP10の発現もしくは機能の任意の局面を阻害し得るか、または抑制し得る。用語「生物学的活性」とは、リガンドとのDAP10相互作用によって媒介される任意の即時効果または下流における効果をいう。上記効果は、ポジティブな効果(例えば、結合した場合にシグナル伝達カスケードを開始する)、またはネガティブな効果(例えば、細胞と細胞との相互作用が、DAP10の非存在下もしくは特定の事象の誘発に必要なシグナルの除去において起きる場合に生じる、新規のシグナル伝達カスケードまたは異なるシグナル伝達カスケードの存在)であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、上記因子は、DAP10細胞内シグナル伝達を妨害し得る。1つの実施形態において、上記因子は、DAP10によるホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)経路の誘発を妨害する。PI3−キナーゼ活性は、当該分野において公知である方法によって評価され得る。例示の方法としては、タンパク質のリン酸化、遺伝子の転写、細胞周期の進行、タンパク質とタンパク質との相互作用を試験するアッセイ(例えば、ras、raf、またはfyn)、タンパク質のトランスロケーション(例えば、NF−κBの核へのトランスロケーション)、またはタンパク質産生アッセイ(例えば、サイトカインアッセイ)が挙げられる。例えば、Ausebelら編、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。機能的アッセイ(例えば、増殖および細胞傷害)はまた、当該分野において周知の方法および本明細書によって開示される方法を使用して、上記因子の最終的な下流における効果を示すために使用され得る。増殖は、放射標識の取り込み、ルミネセンス、蛍光比色法などを使用して評価され得る。このような細胞媒介性の応答は、上記因子の投与後に、少なくとも約5%、10%、または20%刺激されるか、または増大されるべきであり、ときとして約30%、40%、または50%刺激されるか、または増大されるべきであり、そして好ましくは約60%、70%、80%、90%、95%、または99%より大きく刺激されるか、または増大されるべきである。
【0043】
1つの実施形態において、上記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する。このような発現は、任意の機構によって生じ得、その機構としては、転写抑制因子の誘導、転写活性化因子の阻害などが挙げられるが、これらに限定されない。DAP10発現は、任意の適切な手段によって決定され得る。代表的に、DAP10発現は、フローサイトメトリー分析によって評価され得る。いくつかの実施形態において、発現の完全な抑制は生物学的に関係する効果を達成するのに必要ではない可能性がある。このような効果は、標的化されている細胞媒介性の応答が、投与される因子の非存在下において生じる応答から検出可能に変化するものである。このような応答は、少なくとも約5%、10%、または20%刺激されるか、または増大されるべきであり、ときとして約30%、40%、または50%刺激されるか、または増大されるべきであり、そして好ましくは約60%、70%、80%、90%、95%、または99%より大きく刺激されるか、または増大されるべきである。
【0044】
1つの実施形態において、上記因子は、NK細胞、NKT細胞、もしくはT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する。いくつかの実施形態において、上記因子は、NK細胞またはNKT細胞の増殖の増加を刺激し得、それによって、細胞性の細胞傷害性反応を刺激するか、または増大する。
【0045】
本発明の因子はまた、細胞の1つ以上のサブセットからの増加したサイトカイン産生によって、細胞媒介性の応答を刺激し得るか、または増大し得る。いくつかの実施形態において、NK細胞またはNKT細胞が刺激されて、上記因子の非存在下において見られるサイトカイン発現と比較した場合に、少なくとも特徴的なサイトカインの増加した量を産生する。特徴的なサイトカインとしては、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2が挙げられ得る。これらのサイトカインは、多くの方法および市販のキットによって定量的様式で容易に検出され、その方法としては、ELISA、マイクロELISA、および細胞内フローサイトメトリー分析が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Coliganら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons、最新版)を参照のこと。
【0046】
接触の時間、方法、および容器は、評価される機能に適した任意のものであり得る。
【0047】
DAP10を阻害し得るか、または抑制し得る例示の因子としては、抗体、RNAi、RNAiを媒介する化合物(例えば、siRNA)、アンチセンスRNA、本発明の分子の優性/ネガティブな変異体、DAP10膜貫通ドメインなどのペプチド、および/またはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
1つの実施形態において、本発明の方法の因子は、DAP10特異的抗体またはその生物学的に活性なフラグメントである。例示の抗体としては、WO99/06557に開示される抗体が挙げられる。上記抗体は、細胞培養物、ファージ、または種々の動物において産出され得、その動物としては、ウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、類人猿が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の方法において有用な抗体は、代表的に、哺乳動物の抗体である。ファージ技術は、最初の抗体を単離するためか、または変更された特異性またはアビディティー特性を有する改変体を産出するために使用され得る。このような技術は、当該分野において慣用的であり、かつ周知である。1つの実施形態において、上記抗体は、当該分野において公知である組換え手段によって産生される。例えば、組換え抗体は、上記抗体をコードするDNA配列を含むベクターによって宿主細胞をトランスフェクトすることによって産生され得る。1つ以上のベクターが、宿主細胞において少なくとも1つのVL領域および少なくとも1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトするために使用され得る。抗体の産出および産生についての組換え手段の例示の記載としては、Delves、ANTIBODY PRODUCTION:ESSENTIAL TECHNIQUES(Wiley、1997);Shephardら、MONOCLONAL ANTIBODIES(Oxford University Press、2000);およびGoding、MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(Academic Press、1993)が挙げられる。
【0049】
本発明の方法において有用な抗体は、所望の機能(例えば、上昇した半減期)を媒介することおいてその抗体のより大きい効力を増加させるために、組換え手段によって改変され得る。例えば、Borrebaeck(編)ANTIBODY ENGINEERING(Oxford University Press、1995)を参照のこと。例えば、抗体は、組換え手段を使用する置換によって改変され得る。代表的に、その置換は、保存的置換である。例えば、上記抗体の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸が、異なる残基によって置換され得る。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、出願番号WO99/58572;およびAngalら、Mol.Immunol.30:105−08(1993)を参照のこと。アミノ酸の改変は、アミノ酸の欠失、付加、および置換を含む。上記抗体はまた、融合タンパク質であり、この抗体またはその生物学的に活性なフラグメントは、別の生物学的に関連する因子(例えば、サイトカイン、接着分子、共起刺激分子など)、およびこのような分子の生物学的に関連する部分に結合される。
【0050】
「RNA干渉」または「RNAi」とは、RNAの選択的な細胞内分解をいう。RNAiは、細胞内で天然に起こって、外来RNA(例えば、ウイルスRNA)を除去する。天然のRNAiは、他の類似するRNA配列に対する分解機構を指揮する遊離のdsRNAから切断されたフラグメントを介して始まる。あるいは、RNAiは、人の手によって(例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングすることによって)開始され得る。例えば、米国特許出願第20040203145号を参照のこと。したがって、DAP10自体の発現に対するRNAi、あるいはDAP10の発現もしくは機能に対する任意の重要な上流のエフェクターまたは下流のエフェクターが、企図される。いくつかの実施形態において、上記RNAiは、DAP10によって使用されるPI3−Kシグナル伝達経路の1種以上の成分をモジュレートするために使用され得る。
【0051】
公知の配列に基づいてペプチド模倣物を作製する方法は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第5,631,280号;同第5,612,895号;および同第5,579,250号を参照のこと。ペプチド模倣物の使用は、所定の位置における非アミド結合による、非アミノ酸残基の組み込みを包含し得る。本発明の1つの実施形態は、ペプチド模倣物であり、その化合物は、適切な模倣体(mimic)によって置換される結合、ペプチド骨格、またはアミノ酸成分を有する。適切なアミノ酸模倣体であり得る非天然のアミノ酸の例としては、β−アラニン、L−α−アミノ酪酸、L−γ−アミノ酪酸、L−α−アミノイソ酪酸、L−ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、N−ε−Boc−N−.アルファ.−CBZ−L−リジン、N−ε−Boc−N−α−Fmoc−L−リジン、L−メチオニンスルホン、L−ノルロイシン、L−ノルバリン、N−α−Boc−N−δ−CBZ−L−オルニチン、N−δ−Boc−N−α−CBZ−L−オルニチン、Boc−p−ニトロ−L−フェニルアラニン、Boc−ヒドロキシプロリン、およびBoc−L−チオプロリンが挙げられるが、これらに限定されない。DAP10の生物学的に関連する部分の適切なペプチド模倣物、上流および下流のシグナル伝達成分などを含むDAP10の生物学的活性に重要な任意のタンパク質。
【0052】
いくつかの実施形態において、この方法において有用な因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはそれらの生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである。DAP10またはその生物学的に活性なフラグメント、および宿主細胞におけるDAP10の輸送、発現、生物学的活性などを容易にする少なくとも1つのタンパク質ドメインまたはタグを含むDAP10融合タンパク質の使用もまた、企図される。このようなタンパク質およびタグとしては、転写活性化伝達(Trans−Activating Transduction)(TAT)タンパク質、または他のタンパク質の細胞への進入を促進する他のタグおよび輸送ペプチドタグが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、Vocero−Akabaniら、Methods Enzymol.322:508−21(2000)を参照のこと。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、癌を有し、そして下に記載されるような本発明の因子によって処置され得る。
【0054】
(C.DAP活性をモジュレートする因子を同定する方法)
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、発癌を弱めるか、または改善する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法がまた、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記発癌は、皮膚の発癌である。特定の実施形態において、上記発癌は、化学的に誘導される発癌である。いくつかの実施形態において、DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される。
【0055】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;b)DAP10の生物学的活性の阻害について上記細胞を評価する工程;およびc)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、上記試験化合物を、同定する工程;を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。上記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、上記腫瘍は、皮膚の腫瘍であり得る。1つの実施形態において、上記腫瘍は、化学的に誘導される。DAP10の生物学的活性は、PBキナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価され得る。
【0056】
任意の適切なDAP10発現細胞は、本発明の方法のうちの同定する方法において使用され得る。DAP10発現は、内因性または外因性であり得る。DAP10発現細胞としては、T細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、マクロファージ、および肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。DAP10の組換え発現のために、任意の適切な宿主細胞が、利用され得る。宿主細胞は、その宿主細胞に対して適切な作動可能に連結した制御領域を有するベクターを使用するDAP10発現構築物によって、遺伝的に操作(形質導入または形質転換またはトランスフェクト)される。DAP10についての例示の配列は、WO99/06557に開示される。DAP10の外因性の発現は、一過性であっても、安定であっても、それらのある程度の組み合わせであってもよい。外因性の発現は、1種以上のさらなるタンパク質(例えば、NKG2D)との同時発現によって、増強されても、最大化されてもよい。外因性の発現は、構成的プロモーター(例えば、SV40、CMVなど)および当該分野において公知である適切な誘導プロモーターを使用して達成され得る。適切なプロモーターは、目的の細胞において機能するプロモーターである。上記ベクターは、例えば、プラスミド、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択または本発明の遺伝子の増幅に適するように改変された従来の栄養培地において培養され得る。その培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択された宿主細胞に関して先に使用された条件であり、そしてその条件は、当業者に明らかである。代表的な宿主細胞としては、BaF細胞、293T細胞、およびマウス肥満細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
DAP10またはその生物学的に活性なフラグメントをコードする核酸を含むベクターまたはプラスミドもまた、本明細書中に提供される。真核生物細胞および原核生物細胞において使用するのに適したベクターは、当該分野において公知であり、そしてそのベクターは、市販されているか、または当業者によって容易に調製される。さらなるベクターはまた、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubelら編、2000)およびSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、(1989)に見出され得る。
【0058】
DAP10の生物学的活性を阻害する化合物は、DAP10の少なくとも1つの生物学的活性を減少させるか、または排除する化合物である。このような阻害は、DAP10の1つ以上の重要な結合残基の直接的な結合によってか、または立体障害、DAP10の酵素的改変などを含む間接的な妨害によって生じ得る。本明細書中で使用される場合、用語「化合物」は、タンパク質部分および非タンパク質部分の両方を含む。1つの実施形態において、上記化合物は、低分子である。別の実施形態において、上記化合物は、タンパク質である。
【0059】
種々の異なる化合物が、本明細書中に提供されるような方法を使用して同定され得る。化合物は、多くの化学的分類を包含し得る。特定の実施形態において、それらの化合物は、有機分子であり、好ましくは、50ダルトンより大きく、かつ約2,500ダルトン未満の分子量を有する有機低分子化合物である。これらの化合物は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含み得、そして少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボニル基を含み得、好ましくは、その化学的官能基の少なくとも2つを含み得る。上記化合物は、上記官能基の1つ以上によって置換される、環状炭素(cyclical carbon)構造もしくは複素環式構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香族(polyaromatic)構造を含み得る。化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログまたはその組み合わせのような生体分子を含む。目的の化合物はまた、抗体もしくは結合フラグメントまたはそれらの模倣体(例えば、Fv、F(ab’)2およびFab)などのペプチド因子およびタンパク質因子を含み得る。
【0060】
同定アッセイのための化合物はまた、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む広範な種々の供給源から得られ得る。例えば、多くの手段は、無作為化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、広範な種々の有機化合物および生体分子のランダムかつ指向型の合成のために利用可能である。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、および動物抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーは、利用可能であるか、または容易に生成される。さらに、天然に生成されるか、または合成で生成されるライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理学的手段および生化学的手段によって容易に改変され、そしてコンビナトリアルライブラリーを生成するために使用され得る。公知の薬理学的因子は、構造アナログを生成するために、指向型またはランダムの化学的改変(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)など)に供され得る。
【0061】
1つの実施形態において、低分子は、同定アッセイにおける化合物として使用され得る。低分子化合物は、分子量が約1000未満であるか、または分子量が約500未満である化合物を含む。1つの実施形態において、低分子は、専らペプチド結合のみを含むことはない。別の実施形態において、低分子は、オリゴマーではない。活性についてスクリーニングされ得る例示の低分子化合物としては、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、炭水化物、有機低分子(例えば、ポリケチド)、および天然産物の抽出物のライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、上記化合物は、小さい、非ペプチド性の有機化合物である。さらなる実施形態において、低分子は、生合成のものではない。
【0062】
本明細書中に提供されるようなDAP10発現細胞は、任意の都合のよいプロトコルを使用して、化合物(または因子)と接触される。いくつかの実施形態において、DAP10発現細胞に対する化合物の効果は、他の細胞の1種以上の型(例えば、標識された標的、増殖するT細胞など)の存在下において評価される。1つの実施形態において、上記細胞は、流体培地の容積を保持し得る容器または類似の構造物(例えば、96ウェルプレートのウェルまたは384ウェルプレートのウェル)中におかれる。上記細胞および上記化合物は、DAP10に媒介される事象の正確な検出を可能にする任意の細胞数を含む任意の容積において接触され得る。1つの実施形態において、存在する細胞の総数は、約1,000個の細胞〜約100,000個の細胞の範囲である。1つの実施形態において、反応容積は、約20マイクロリットル〜200マイクロリットルの範囲である。上記細胞は、任意の時間にわたって、上記化合物および/または他の細胞型と接触され得る。1つの実施形態において、上記接触の時間は、1時間〜8時間の範囲であり、好ましい時間は、4時間である。上記細胞および上記化合物は、DAP10の生物学的活性のモジュレーションのために許容される任意のpHにて、培地中で接触され得る。上記細胞は、種々の温度にて上記化合物と接触され得る。1つの実施形態において、上記細胞の接触のための温度は、しばしば、25℃〜38℃の範囲であり、代表的には、37℃の温度が、使用される。所望の場合、上記細胞は、種々の細胞集団の適当な混合および相互作用を確保するために撹拌され得る。
【0063】
上記接触混合物に存在する化合物の量は、特に、その化合物の性質に依存して変動し得る。1つの実施形態において、上記因子が、有機低分子である場合、反応混合物に存在する化合物の量は、約1フェムトモル〜10ミリモルの範囲であり得る。別の実施形態において、上記因子が、抗体またはその結合フラグメントである場合、上記化合物の量は、約1フェムトモル〜10ミリモルの範囲であり得る。所定の接触容積に含める任意の特定の化合物の量は、当業者に公知の方法を使用して経験的に容易に決定され得る。
【0064】
DAP10の生物学的活性の阻害の存在または非存在は、DAP10の表面における発現、DAP10シグナル伝達(特に、PI3−K経路)、腫瘍標的または他の異常な細胞標的に対する増加した細胞傷害、または増加したサイトカイン産生の評価によって決定される。利用される特定の評価プロトコルは、直接的に評価可能なアッセイの性質に依存して、必然的に変わり、そして当該分野で公知のアッセイ、およびセクションBにおいて本明細書中に開示されるアッセイを利用し得る。例えば、評価される読み出しが、DAP10発現である場合、化合物によって処置されるか、または処置されないかのいずれかであるDAP10発現細胞が、DAP10特異的抗体によって染色され得、そしてDAP10発現の変化が、標準的なフローサイトメトリー分析によって評価される。
【0065】
任意の都合のよい手段が、DAP10の生物学的活性に対する上記化合物の効果を評価するために使用され得、その手段としては、単独か、または他の関連する細胞型の存在下のいずれかにおいて化合物と接触した場合の増殖、細胞傷害、およびインビトロ発現の定量化された測定ならびにインビボでの評価が挙げられるが、これらに限定されない。このような評価は、発癌および腫瘍増殖および転移を阻害する能力における評価を含む。このような分析に適した動物モデルは、当該分野において周知であり、そして下に開示される実施例において開示されるものによって例示される。化合物が、腫瘍発生の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記化合物は、発癌物質に対する曝露後の腫瘍発生の範囲を0%まで減少させ、完全な保護を提供する。同様に、化合物が、腫瘍増殖の速度および/または転移の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記腫瘍の増殖速度は、腫瘍の大きさの測定によって決定される。代表的に、上記腫瘍のサイズは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少する。転移の範囲は、相対的な播種(例えば、病変した器官系の数)およびこれらの部位における相対的な腫瘍組織量を試験することによって評価され得る。腫瘍転移は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少し得る。いくつかの実施形態において、上記化合物は、DAP10の生物学的活性に影響しない他の化合物と比較して評価され得る。
【0066】
1つの実施形態において、RNAiを媒介する化合物は、DAP10の生物学的活性を阻害するために使用され得る。上で考察されるように、RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)を使用してdsRNAと同じ配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する転写後の、標的性の遺伝子サイレンシング技術である。上記プロセスは、内因性リボヌクレアーゼが、より長いdsRNAをより短い21ヌクレオチド長または22ヌクレオチド長のRNA(低分子干渉RNAまたはsiRNAと称される)へと切断する場合に生じる。次いで、より小さいRNAセグメントは、標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成のためのキットは、市販されている。
【0067】
別の実施形態において、DAP10の阻害または抑制を媒介する化合物は、DAP10特異的抗体または上に記載されるようなその生物学的に活性なフラグメントである。なお別の実施形態において、上記化合物は、上に記載されるようなDAP10膜貫通フラグメントである。
【0068】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程、b)試験化合物を上記DAP10−/−に投与する工程;c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程、およびd)試験化合物を、上記試験化合物が上記疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、上記自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法が、本明細書中で特徴付けられる。
【0069】
実施例の節において下に記載される通り、上記DAP10−/−マウスは、自己抗原を用いてチャレンジされる場合、自己免疫疾患に対する著しい感受性を提示する。他の実験的な自己免疫系がまた、上記DAP10−/−マウスを用いて利用され得る。いくつかの実施形態において、上記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である。例えば、種々の実験的疾患モデルの概説については、Lahitaら(編)、TEXTBOOK OF THE AUTOIMMUNE DISEASES(Lippincott、Williams、およびWilkins 2000)の753〜841ページを参照のこと。これらの動物モデルの各々は、少なくとも1つの臨床的に関連のある自己免疫疾患を例示し、それによって、自己免疫疾患の1つ以上の症状を緩和し得るか、または改善し得るスクリーニング化合物に適したモデルを提供する。
【0070】
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、ヒトの多発性硬化症(MS)に対する動物モデルである。EAEは、MSと同じ臨床症状および病理学的症状の多くを共有する、実験的に誘導された疾患である。例えば、Martinら、Ann.Rev.Immunol.10:153−87(1992)を参照のこと。EAEは、アジュバント中のミエリンを用いた免疫によって、マウスの特定の系統において誘導され得る。上記免疫は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびプロテオリピド(PLP)に特異的なCD4+ T細胞を活性化する。次いで、活性化されたT細胞は、中枢神経系に進入し、そして上記疾患の特徴的な解剖病理学、および顕性の「臨床的」徴候(例えば、完全麻痺を生じる後足の上行性不全麻痺)をもたらす。EAEの臨床的徴候は、症状の上行性の重症度の0〜5の尺度に基づいて評価され得る。例えば、Korngoldら、Immunogenetics 24:309−15(1986);Cuaら、Nature 421:744(2003)を参照のこと。
【0071】
したがって、化合物が、少なくとも1つの自己免疫症状の範囲を、その化合物の非存在下において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。1つの実施形態において、上記化合物は、少なくとも1つの自己免疫症状の範囲を0%まで減少させ、完全な保護を提供する。同様に、化合物が、観察される自己免疫症状の重症度を、その化合物の非存在下(または、DAP10をモジュレートしない化合物の存在下)において観察されるものと比較して減少させる場合、その化合物は、DAP10の生物学的活性のインヒビターである。代表的に、上記症状の重症度は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少する。
【0072】
(D.DAP10抑制因子を使用する処置の方法)
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する方法が、本明細書中で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記癌は、皮膚癌である。特定の実施形態において、上記癌は、化学的に誘導される。
【0073】
本発明の方法によって処置される被験体としては、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、または奇形癌を有する被験体が挙げられる。上記腫瘍は、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、子宮頚、胆嚢、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、および子宮の癌であり得る。このような腫瘍としては、以下が挙げられる:中枢神経系の新生物:多形グリア芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起神経膠細胞の腫瘍、上衣および脈絡叢の腫瘍、松果体の腫瘍、神経の腫瘍、髄芽細胞腫、神経鞘腫、髄膜腫、髄膜の肉腫:眼の新生物: 基底細胞癌、有棘細胞癌、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫;内分泌腺の新生物:下垂体の新生物、甲状腺の新生物、副腎皮質の新生物、神経内分泌系の新生物、胃腸膵臓(gastroenteropancreatic)の内分泌系の新生物、性腺の新生物;頭および首の新生物:頭および首の癌、口腔の腫瘍、咽頭の腫瘍、喉頭の腫瘍、歯原性腫瘍:胸郭の新生物:大細胞肺癌、小細胞肺癌、非小細胞細胞肺癌、胸郭の新生物、悪性中皮腫、胸腺腫、胸郭の原発性生殖細胞腫瘍;消化管の新生物:食道の新生物、胃の新生物、肝臓の新生物、胆嚢の新生物、膵臓外分泌部の新生物、小腸、虫垂および腹膜の新生物、結腸および直腸の腺癌、肛門の新生物;尿生殖器路(genitourinary tract)の新生物:腎細胞癌、腎盂および尿管の新生物、膀胱の新生物、尿道の新生物、前立腺の新生物、陰茎の新生物、精巣の新生物;女性の生殖器官の新生物:外陰および膣の新生物、子宮頚の新生物、子宮体の腺癌、卵巣癌、婦人科学的な肉腫;乳房の新生物;皮膚の新生物:基底細胞癌、扁平上皮癌、皮膚線維肉腫、メルケル細胞腫;悪性黒色腫;骨および軟部組織の新生物:骨原性肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、血管肉腫;造血系の新生物:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、HTLV−1、およびT−細胞白血病/リンパ腫、慢性リンパ性白血病、へアリーセル白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、肥満細胞性白血病;小児の新生物:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、神経芽細胞腫、骨腫瘍、横紋筋肉腫、リンパ腫、腎腫瘍および肝腫瘍。
【0074】
本方法によって同定される有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法が、本明細書中でさらに特徴付けられる。本発明に従って処置され得る自己免疫成分を有する自己免疫疾患および自己免疫障害の非限定的な例としては、以下が挙げられる:1型糖尿病、関節炎(慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群(シェーグレン症候群に対する二次的な乾性角結膜炎を含む)、円形脱毛症、虫刺され(arthropod bite)の反応に起因するに起因するアレルギー応答、クローン病、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸結腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、薬疹、らい病の反転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳障害、特発性両側性の進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球ろう、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーヴンズ−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間質性肺線維症(interstitial lung fibrosis)。
【0075】
任意の被験体が、本明細書中に提供される方法および組成物によって処置され得る。このような被験体は、このような処置の必要がある哺乳動物(好ましくは、ヒト)である。本開示の方法および組成物の獣医学的使用がまた、企図される。このような使用は、家畜(domestic animal)、家畜(livestock)および純血種の馬(thoroughbred horse)における発癌の予防、癌の処置、ならびに自己免疫疾患の予防および処置を含む。
【0076】
薬学的組成物および薬学的技術の調製ならびに使用のための種々の薬学的組成物および薬学的技術は、本開示を鑑みて当業者に公知である。適切な薬理学的組成物および関連した投与上の技術の詳細な記載については、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、第20版(Lippincott、WilliamsおよびWilkins 2003)などの教科書によってさらに補足され得る本明細書中の詳細な教示を参照し得る。
【0077】
処方物および送達方法は、一般に、処置されるべき部位および疾患に従って適合される。例示の処方物としては、ミセル、リポソームまたは薬物放出カプセル中に封入される処方物(徐放用に設計された生体適合性コーティング内に組み込まれる活性因子)を含む、非経口投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与)に適した処方物、;経口摂取用処方物;局所使用のための処方物(例えばクリーム、軟膏およびゲル);および他の処方物(例えば、吸入剤、エアロゾルまたはスプレー)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の投薬量は、処置についての必要性の程度および重症度、投与される組成物の活性、被験体の健康全般、ならびに当業者にとって周知である他の考慮事項によって変動する。
【0078】
このような化合物の毒性および治療的効力は、細胞培養物または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定され得る(例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するため)。毒性効果と治療効果との間の用量比が、治療指数であり、そしてその治療指数は、LD50とED50との間の比として表され得る。高い治療指数を示す化合物が、好ましい。これらの細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投薬量の範囲を処方するのに使用され得る。このような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどもしくは全く毒性を伴わずに、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。上記投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動し得る。的確な処方、投与経路および投薬量は、患者の状態、年齢、体重、および治療に対する反応性を考慮して個々の医師によって選択され得る。投薬の量および間隔は、所望の治療効果、または最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルを提供するために、個別に調整され得る。MECは、各化合物に対して変動するが、それは、インビトロのデータから概算され得る;例えば、本明細書中に記載されるアッセイを使用してDAP10の生物学的活性の50%〜90%の阻害を達成するのに必要な濃度。
【0079】
投与の様式は、特に重要ではない。1つの実施形態において、投与の様式は、I.V.ボーラスである。別の実施形態において、投与は、局所的である。あるいは、上記化合物を、全身的な様式よりもむしろ、局所において投与し得る(例えば、しばしば、デポー処方物または持続放出処方物で上記化合物を腫瘍または自己免疫病変に直接注射することによって)。
【0080】
本発明の調節性因子は、単独か、または1種以上のさらなる因子と組み合わせて投与され得る。例えば、1つの実施形態において、本明細書中に記載される2種以上の因子が、被験体に投与され得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される因子は、他の免疫調節因子と組み合わせて投与され得る。他の免疫調節試薬の例としては、共起刺激シグナルをブロックする抗体(例えば、CD28、ICOSに対する抗体)、CTLA4を介して抑制性シグナルを活性化する抗体、および/または他の免疫細胞マーカーに対する抗体(例えば、CD40に対する抗体、CD40リガンドに対する抗体、またはサイトカインに対する抗体)、融合タンパク質(例えば、CTLA4−Fc、PD−I−Fc)、および免疫抑制薬(例えば、ラパマイシン、シクロスポリンAまたはFK506)が挙げられる。特定の場合において、免疫応答を誘発するか、または増大するために、免疫応答をアップレギュレートする他の因子(例えば、T細胞活性化シグナルを送達する因子)をさらに投与することが、望まれ得る。このような因子としては、サイトカイン(例えば、IL−2およびIFN−γ)の同時投与が挙げられるが、これに限定されない。
【0081】
本明細書中に記載される因子は、投与に適した薬学的組成物に組み込まれ得る。このような組成物は、代表的に、上記因子、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用される場合、専門語「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤など(これらは、薬学的投与に適合性である)を含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY 第20版(Lippincott、WilliamsおよびWilkins 2003)を参照のこと。任意の従来の媒体および因子が、活性化合物と不適合性である場合を除いて、上記組成物におけるその使用が、企図される。追加の活性化合物がまた、上記組成物に組み込まれ得る。
【実施例】
【0082】
NKG2D−DAP10レセプター複合体およびそのリガンドの発現パターンは、それらが生理学的条件および病理学的条件下で異なる役割を果たし得ることを示唆する。この研究において、DAP10KOマウスの産出を、腫瘍免疫におけるDAP10の重要性を調査するために使用する。DAP10欠損が、Tregの調節性機能およびNK1.1+細胞の抗腫瘍エフェクター機能に影響を与えることによって抗腫瘍免疫を増強することが、予想外にも、観察された。
【0083】
同系の腫瘍に対する効率的な免疫監視は、しばしば、T調節性(Treg)細胞の損なわれた機能に起因して、自己に対する反応性の増加と関連する。本明細書中に含まれるデータは、構成的なDAP10共起刺激シグナル伝達が、腫瘍に対する免疫を制御する調節機構の一部であることを示した。DAP10を欠くマウス(DAP10KO)は、化学的に誘導された皮膚の癌腫および黒色腫の肺への転移に対して増強された免疫応答を示し、それは、遅延した腫瘍増殖および減少した腫瘍の範囲、およびマウスの、腫瘍悪性度からの長期の保護をもたらした。DAP10KOナチュラルキラーTリンパ球(NKT)およびナチュラルキラー(NK)細胞は、この抗腫瘍表現型を担うエフェクターであった。DAP10欠損は、Tregの抑制的な能力を弱め、そして増加したNKT機能(サイトカイン産生および細胞傷害を含む)をもたらし、腫瘍の効率的な殺傷を生じた。DAP10KOマウスにおける野生型Tregの養子移植は、同系の腫瘍に対する耐性を回復させ、このことは、DAP10KO Tregがインビボで機能不全性であることを示した。さらに、DAP10KO T細胞は、増加した自己反応性を示し、それによってDAP10KOマウスを、誘導された自己免疫応答に対して、より感受性にした。このデータは、DAP10構成的シグナル伝達が自己反応性を回避するためのTregおよびNKTの活性化の閾値の調整に重要であるが、また、抗腫瘍機構をモジュレートすることを示した
(材料および方法)
DAP10欠損マウスの産出。マウスDAP10ゲノムの遺伝子座を、129/SV肝臓DNAから作製したLambdaライブラリーに対する放射標識型のハイブリダイゼーションによって同定した。1つのLambdaクローンを、単離し、次いでサブクローニングし、そしてその遺伝子座のさらなる特徴付けのために配列決定した。エキソン3およびエキソン4は、シグナル伝達および細胞表面におけるDAP10タンパク質の発現に重要である。エキソン3は、膜貫通領域をコードし、そしてエキソン4は、DAP10の細胞質ドメインをコードする。従来の置換型標的化ベクターを、5.4kbの相同性配列を組み込みつつ、両方のエキソンについての配列を除去するように設計した。胚性幹(ES)細胞を、直線化したDAP10標的化ベクターと一緒にエレクトロポレーションした。適切にトランスフェクトされたESクローンを、ネオマイシンカセットの除去後の注射のために使用した。上記ESクローンを、サザンブロット分析によってスクリーニングした。使用したプローブは、以下のものである:5’フランキング(flanking)センス−DAP10プローブ、5’−CCAGAGACAGAGTCAAACTATGTAG−3’;5’フランキングアンチセンス−DAP10プローブ、5−CTGTGAGTTCAAGGCTAGCCTGG−3’;3’フランキングセンス−DAP10プローブ、5’−CTAGAGGAACCTTCTTCTGCC−3’;フランキングアンチセンス−DAP10プローブ、5’−GCTCTGGAGCCCTCCTGGT−3’。全ての実験マウス(DAP10KOマウスおよびコントロールC57BL/6Jマウス(Jaxon))を、6〜10週齢にて使用し、かつ性別および歳を対応させた。マウスを、病原体を含まない動物施設において飼育した。この研究において使用される全ての動物手順は、DNAX institutional animal care and use committeeによって承認された。
【0084】
インビボ腫瘍モデル。先に記載されるように(20)、皮膚の腫瘍形成を誘導するために、wt C57BL6マウスおよびDAP10KO C57BL6マウスを、7,12ジメチルベンズアントラセン(DMBA、Sigma)の単一局所用量によって処置し、200μlアセトン中の50μgのDMBAを、各マウスの剃毛(shave)した皮膚に塗布した。発癌のイニシエーションの1週間後、200μlアセトン中の30μgの12−O−テトラデカノイル−ホルボールアセテート(TPA、Sigma)を、各マウスの上記皮膚に塗布した。次いで上記TPAを、20週間にわたって週に2回塗布した。腫瘍を、癌腫の病期に進行させ、そしてマウスの成育率を、1年間分析した。乳頭腫または癌腫の腫瘍を、臨床的判定基準および組織学的特徴に基づいて評点した。移植実験のために、化学的に誘導した皮膚の腫瘍細胞(DMBA−T)を、組織培養条件に適応し、次いでマウスに種々の濃度にてs.c.に注射した。皮下の腫瘍の寸法を、キャリパーを使用して2〜3日毎に測定した。上記腫瘍の体積を、以下の式を使用して決定した:長さ×幅×幅/2。群間の統計学的な差を、2つの群を分析する場合に、対応のないスチューデント両側t検定を使用することによって評価し、そして2つより多い群に対しては、二元配置ANOVAを使用することによって評価した。
【0085】
B16の肺への転移の誘導のために、B16黒色腫細胞(ATCC)を、対数増殖期(≦50%の密集度)のときに、注射のために回収した。単一細胞懸濁物を、細胞解離溶液(Gibco)を使用して調製し、次いで使い捨てのセルストレーナー(cell strainer)によって可能な集塊の除去を行なった。wt C57BL6マウスおよびDAP10KO C57BL6マウスに、1×105個のB16細胞をi.v.に注射したか、または図面の簡単な説明において示される通りに注射し、次いで肺を、腫瘍の接種の2週間後に取り出し、そして転移を、解剖顕微鏡を使用して計測した。NK1.1+細胞のインビボでの枯渇のために、マウスに、−1日目においてマウス1匹あたり0.5mgにて、抗NK1.1 mAbクローンPK136(ATCC)をi.v.に注射し、その後、3日毎にそれを注射した。マウスIgG1κアイソタイプコントロール抗体を、コントロール群に注射するために使用した。Treg細胞のインビボでの枯渇のために、抗CD25 mAbクローンPC−61(ATCC)を、示した日において、マウス1匹あたり0.5mgにてi.v.に注射した(図面の簡単な説明を参照のこと)。NK細胞のインビボでの枯渇のために、マウスに、−2日目にて30μlの抗アシアロGM1 Ab(Cederlane)をi.v.に注射し、その後、4日毎にそれを注射した。インビボ研究のために使用した全ての抗体は、内毒素を含まなかった。インビボでの枯渇の効率を、脾臓の白血球のFAC分析によって検証した。
【0086】
骨髄キメラの産出。レシピエントマウスを、1000radの1種の線量のγ線照射に曝した。ドナーマウスから単離した1.5×107個の骨髄細胞を、レシピエントマウスの尾静脈にi.v.に送達した。再形成の6週間後および8週間後において、レシピエントマウスの末梢血細胞および脾臓細胞をフローサイトメトリーによって分析して、再形成のレベルを評価した。この実験に使用したwtマウスは、再形成の評価を容易にするGFPポジティブであった(Dr.Brian Schaeferによる寄贈品)。8週間において、95%〜98%のレシピエント細胞は、ドナーに由来した。骨髄キメラの成育率は、100%であった。
【0087】
Taqman分析。ナイーブwt B1/6マウスおよびDAP10KOマウスのリンパ節、脾臓ならびに胸腺を、Polytronを使用してSTAT 60試薬(Tel−test Inc.)中でホモジネートした。全RNAを、クロロホルム抽出を行ない、次いでイソプロパノール沈殿を行うことによって単離した。5μgの全RNAを、DNAseミックス(5×first strand buffer(Gibco−BRL)、RNAsin(Promega)およびDNAse I、Rnase free(Boehringer))によって処理した。cDNAを、RT−PCRによって調製した。リアルタイムの転写物の定量化のために、そのcDNAを、GeneAmp(登録商標)5700配列検出器(Applied Biosystems)においてTaqManシステムの化学を使用する蛍光5’ヌクレアーゼアッセイに使用した。遺伝子特異的なTaqman(登録商標)プライマー(F、R)を、Primer Express Software v.1.5.(Applied Biosystems)を使用して、以下に関して作製した(コントロールとしてユビキチンおよび18S rRNA):muDAP10−CCGGATGTGGGACTCTGTCT;TGGGCGCATACATACAAACAC;muDAP12−CCTGGTCTCCCGAGGTCAA;GGCGACTCAGTCTCAGCAATG,muNKG2D−TTCGTTGTTCGAGTCCTTGCT;ACTGGCTGAAACGTCTCTTTGAA。Taqman(登録商標)反応は、200nMの各プライマー、1×SYBR GREEN PCRマスターミックス(Applied Biosystem)および10ngのcDNAを含んだ。IFNγおよびFoxp3に対するプライマーは、Primer Express(ABI)を使用し、そして他のファミリーメンバーとの交差反応性を有さない配列を選択して設計した。リアルタイムPCRは、それぞれ50℃で2分間および95℃で10分間の1サイクル、その後の95℃で15秒間および60℃で1分間の50サイクルから構成された。データ分析は、限界サイクルおよびCtを決定するために配列検出器ソフトウェア利用した。
【0088】
インビトロ機能分析。NKT細胞を、CD19 MACビーズ(Miltenyi)を使用して先にB細胞を枯渇させた脾細胞から取り出した。取り出したNKT細胞の純度は、≧95%であった。サイトカインアッセイのために、NKT細胞を、10%のFCS、100mMのPen/Strep/Glu、1mMのピルビン酸ナトリウム、100μMの非必須アミノ酸、5.5×105Mの2−ME、および25mMのHepesを補充したIscoves培地において、血小板結合性抗CD3 Ab(10μg/ml)またはラットIgG2aアイソタイプコントロールによって活性化した。全ての培養試薬を、Gibco製であった。上清を、48時間後に回収し、そしてサイトカインを、測定した。
【0089】
NK細胞を、抗NK細胞(DX5)MACSマイクロビーズ(Miltenyi)を使用して、B細胞枯渇脾細胞から単離した。使用する取り出した細胞の純度は、>95%であった。上記細胞傷害アッセイのために、NK細胞およびNKT細胞を、50ng/mlのマウスIL−2(Peprotech)を含む完全Iscoves培地中で拡大培養(expand)した。標準的な4時間の51Cr放出アッセイを、先に記載されるように(12)、種々のエフェクター対標的の比(E:T)にて行なった。
【0090】
CD4+CD25+ Tregを、Miltenyi(>96%の純度)のTreg単離キットを使用して脾細胞から単離した。サイトカインアッセイのために、Tregを、IL−2(20ng/ml)の存在下、またはIL−2および可溶性CD3 Ab(10ug/ml)の存在下で、ウェル1つあたり2×105個の細胞にて、48時間にわたって培養した。上清を、回収し、そしてサイトカインを、測定した。
【0091】
フローサイトメトリーおよびサイトカイン分析。フローサイトメトリー表現型分析(phenotyping)のために、マウス細胞を、最初に、抗CD 16/CD32 Ab(クローン2.4G2)と一緒にインキュベートして、Fcの非特異的結合をブロックした。次いで、2色または3色の染色を、以下の染色試薬を使用して行なった:抗CD3 FITC、抗CD3 Cy(クローン17 A2)、抗CD4 FITC(クローンGK1.5)、抗CD25 PEまたは抗CD25ビオチンAb(クローンPC61)、抗NK1.1 PE、抗NK1.1ビオチン、抗NK1.1 FITC(クローンPK136)およびストレプトアビジン−サイクローム(cychrome)(Cy)。全ての上記試薬は、Pharmingen製であった。抗NKG2D PE(クローンCX5)は、Dr.Lewis Lanierの寛大な寄贈品であった。腫瘍細胞におけるNKG2Dリガンドの発現を、NKG2D融合タンパク質(R&D)によって細胞を染色し、次いで抗ヒト二次抗体によって染色することによって染色した。BDマウスThl/Th2キットまたは炎症性キットを使用して、NKT細胞またはTreg細胞によって産生されるサイトカインのレベルを測定した。サンプルを、FACS Caliburフローサイトメーターにおいて分析した。CellQuestTMおよびBD CBAソフトウェアを使用して、獲得したデータを分析した。
【0092】
DTH応答の誘導。DTH応答を誘導するために、マウスに、0日目において、1mgの熱失活したMycobacterium.tuberculosis H37A(Difco Lab)を含むCFA中に乳化した50μgのマウスのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodentrocyte glycoprotein)(MOG)35−55ペプチドをs.c.に注射した。10日目において、マウスに、25μgのMOG35−55ペプチドを仰臥で左側の足蹠に対してs.c.に注射し、そしてPBSを右側の足蹠にs.c.に注射した。右側および左側のフッドパッドの厚さを、キャリパー型の技術者用マイクロメータ(engineer micrometer)を使用して48時間後に測定した。足蹠の腫脹を、左側の足蹠の厚さから右側の足蹠の厚さを減算することによって産出した。動物を、毎日観察し、そして神経学的効果を、任意の臨床スコアにおいて定量化した。EAEスコアリングを、以下の通りに行った:0.無し;1.完全にしなやかな尾;2.後足の脱力;3.右側の不能/片方の後足の不全麻痺(脱力);4.右側の不能/片方の後足の完全麻痺;5.両側の後足の完全麻痺;6.瀕死。
【0093】
増殖アッセイ。マウスに、CFA H37A中に乳化した50μgのMOG35−55をs.c.で免疫した。リンパ節(上腕、腋窩、鼡径)を、9日後に回収し、そして単一細胞懸濁物を、調製した。リンパ節細胞を、MOG35−55ペプチドの異なる濃度を用いて、96ウェルプレート中で5×105個の細胞/ウェルにて72時間にわたって培養した。培養上清中のIFN−γの量を、捕捉用の抗IFN−γ R46A2 mAbおよび検出用のAN18−ビオチン mAbを使用したELISAによって測定した。T細胞増殖性の応答を評価するために、培養物を、48時間にて、1μCi/ウェル[3H]−チミジン(Amersham)を用いてパルスし、そしてその24時間後に回収した。チミジンの取り込みを、β−シンチレーションカウンターにおいて測定した。
【0094】
(結果)
DAP10KOマウスの産出。マウスDAP10遺伝子は、染色体7A3に位置する(DAP12遺伝子に隣接し、かつDAP12遺伝子と反対の転写方向)。DAP10−欠損マウスを産出するために、DAP10ゲノムの遺伝子座を、129/Sv肝臓DNAから作製されたラムダライブラリーに放射標識したハイブリダイゼーションによって同定した。DAP10およびDAP12の両方に対する遺伝子座を含む1つのラムダクローンを、単離した。DAP10遺伝子を破壊するために、機能性DAP10タンパク質に重要であるエキソン3およびエキソン4を、Bruce 4 C57BL/6J胚性幹細胞(図1A)において、除去し、そしてネオマイシン耐性遺伝子(neor)によって置換した。次いで適切に標的化したESクローンを、CREリコンビナーゼ発現ベクターによってトランスフェクトして、neorカセットを除去した。サザンブロット分析により、DAP10遺伝子の正しい標的化を確認した(図1B)。ES細胞を、マウス未分化胚芽細胞に注射して、次いでホモ接合動物を得るために異種交配されるキメラマウスを産出した。DAP10KOマウスは、組織学によって評価したところ、一般的に正常な器官形成を有するようであった。しかし、DAP10KO脾臓がwtの脾臓に対して増加した重量を有し、そしてこの差が、アジュバントおよび自己ペプチド(データは示さず)によって免疫されたマウスにおいてさらに顕著であることが、観察された。これは、DAP10KOマウスが超免疫であり得ることを示唆する、最初の徴候であった。DAP10欠損は、ナイーブなマウスから単離したリンパ組織のTaqman分析によって評価したところ、mRNAレベルにてDAP12遺伝子またはNKG2D遺伝子の基本的な発現に影響を及ぼさなかった(図1C)。次に、通常、DAP10との関連を必要とする細胞表面におけるNKG2Dタンパク質の発現を、分析した。図1Dは、NKG2Dタンパク質の構成的な発現がDAP10KO NK1.1+脾細胞において損なわれたことを示す。しかし、DAP10KO NK1.1+脾細胞は、3日間にわたってIL−2を用いる活性化の際に、NKG2Dの有意なレベルを表し得る(図1D)。最近報告されたように(10)、DAP12と対になる短いNKG2Dアイソフォームは、活性化されたDAP10KO脾細胞において、機能的な表面レセプターとして発現され得る。
【0095】
DAP10欠損は、化学的に誘導された皮膚の腫瘍形成に対する保護を提供し、そしてNK1.1+細胞は、抗腫瘍効果を担う。腫瘍形成の間の免疫監視におけるDAP10の役割を研究するために、本発明者らは、化学的に誘導された皮膚の腫瘍モデルを使用した。マウスを、発癌をイニシエートするために、DMBAの単一用量を用いて局所的に処置し、次いで異常な皮膚細胞の増殖を促進するためにTPAを用いて処置した。TPA処置を4ヶ月間行なって腫瘍を乳頭腫から癌腫まで進行させた。予想通り、wtマウスは、大きさが成長し、そして進行性に悪性の癌腫になった多数の乳頭腫を発症した(図2)。それとは反対に、DAP10KOマウスは、癌腫の病期に進行しなかった、有意に少ない乳頭腫型の腫瘍を発症した(図2)。発癌のイニシエーションの1年後、65%のwtマウスが、皮膚の悪性の癌腫によって死亡したのに対して、DAP10KOマウスは健康であり、そして皮膚の悪性の変態から保護された。したがって、予想外にも、DAP10欠損は、化学的に誘導された皮膚の悪性疾患に対して保護を与えた。
【0096】
化学的に誘導された皮膚の腫瘍モデルは、長期のインビボ枯渇研究において取り扱うことが困難なので、インビトロで安定に適応されるDMBA誘導性の癌腫細胞株(DMBA−T)を使用する皮膚の腫瘍移植モデルを、DAP10KOの抗腫瘍応答に関与する細胞機構の分析を可能にするために利用した。腫瘍形成データと一致して、DAP10KOマウスに対するwt癌腫細胞の皮下接種は、wtマウスへの移植と比較した場合に、顕著に遅延した腫瘍増殖を生じた(図3A)。NK1.1+細胞がDAP10KOマウスの抗腫瘍活性に関与したか否かを決定するために、マウスを抗NK1.1 Ab(PK136)によって処置して、マウスにおいて、NK細胞およびNKT細胞の両方を含むNK1.1+細胞を枯渇させた。NK1.1+細胞を枯渇させたマウスに対するDMBA−T細胞の皮下移植は、wt動物およびDAP10KO動物において、同様の腫瘍増殖を生じた(図3B)。これらのインビボでの枯渇の結果は、NK1.1+細胞がDAP10KOの抗腫瘍効果において主要な役割を果たすことを明確に示唆した。NK1.1の枯渇が、NK細胞およびNKT細胞の両方を取り除いたので、次いで、抗アシアロGM1 Abを用いた処置によってNK細胞のみが枯渇したマウスにおける腫瘍発生を、分析した。図3Cに示すように、抗アシアロGM1 AbによるDAP10KOマウスの処置は、癌腫の腫瘍に対するそれらの感受性を回復させた。これらの知見は、NK細胞が、DAP10KOマウスにおいて移植された皮膚の癌腫の遅延した増殖を担う、一次エフェクターであることを示した。
【0097】
DMBA−T癌腫細胞は、低レベルのNKG2Dリガンドを発現したが、wtマウスにおいて有効な抗腫瘍応答を誘発できなかった(図4A)。枯渇実験によって得られたデータを確認するために、wt細胞ならびにDAP10KO NK細胞およびDAP10KO NK1.1+細胞の、インビトロでDMBA−T癌腫細胞を殺す能力を試験した。興味深いことに、活性化されたDAP10KO NK1.1+細胞は、wt細胞よりDMBA−T癌腫細胞に対して、実質的に細胞溶解活性を示し、そしてこの活性は、主にNKG2D非依存性であった(図4B)。wt細胞およびDAP10KO NK細胞は、同様の効率でDMBA−T癌腫細胞を殺すようであり、そしてそれらの細胞傷害は、抗NKG2D抗体によって部分的に損なわれた(図4C)。上記インビボ実験は、DAP10KOにおいてNK細胞が抗腫瘍活性を主に担うことを、強力に示唆したが、強力な抗DMBA−T細胞細胞傷害のインビトロでの発生は、明確に、NKT細胞も伴う。
【0098】
DAP10欠損は、皮膚の転移に対する保護を与え、そしてNKT細胞は、抗腫瘍表現型を担う最終的なエフェクターであった。DAP10KOマウスの抗腫瘍活性をさらに細かく区別するために、上記B16黒色腫転移モデルを、利用した。肺への転移を誘導するために、B16細胞を、wtマウスおよびDAP10KOマウスに、種々の濃度にてi.v.に注射し、2週間後に、肺を取り出し、そして転移性のコロニーについて分析した。図5に示すように、1×105個のB16細胞を注射したDAP10KOマウスは、動物より3〜5倍低い肺への転移を発症した。1×104個のB16細胞を注射したDAP10KOマウスは、黒色腫の転移から完全に保護された。DAP10KOマウスにおける抗腫瘍活性の造血の起源を調査するために、骨髄キメラを、確立した。wt骨髄細胞によって再構成したDAP10KOマウスは、wt動物と同様の頻度で、B16の転移を発症した(図6A)。対照的に、DAP10KO骨髄細胞によるwtマウスの再構成は、DAP10KO動物において観察された抵抗性に匹敵する、転移に対する抵抗性をもたらした(図6A)。これらの結果は、造血細胞がDAP10KOの抗腫瘍活性を担うことを、明確に示した。
【0099】
インビボ枯渇研究を、B16の転移に対するDAP10KOの増強した抗腫瘍活性におけるこれらの細胞の関与を示すために行った。wt動物からのNK1.1+細胞(NK細胞およびNKT細胞)の枯渇は、未処置のwt動物と比較した場合、肺へのB16の転移の、小さいが有意な増加を生じた(図6B)。さらに、抗NK1.1 Abによって処置したwtマウスは、肺以外の器官(例えば、肝臓、皮膚、腹部、および胸腔)に、B16の転移を与え、このことは、wt動物中のNK1.1+細胞が、B16黒色腫の転移からの小さい程度の保護を提供したことを示した。興味深いことに、DAP10KOマウスからのNK1.1+細胞の枯渇は、wt動物と等しいB16の転移を示す肺と共に、抗腫瘍活性の完全な喪失を生じた。
【0100】
インビボでのNK細胞の機能とNKT細胞の機能とを区別するために、マウスを、選択的にNK細胞を枯渇させるために抗アシアロGM1抗体によって処置した。NK1.1の枯渇とは対照的に、DAP10KOマウスからのNK細胞のみの除去は、本質的に、DAP10KOマウスの抗腫瘍活性に対して効果を有さなかった(図6C)。これらの結果は、NKT細胞が、DAP10KOマウスにおけるB16黒色腫の転移に対する防御を担う主要なエフェクター集団であること示唆した。
【0101】
DAP10欠損は、NKT細胞の機能亢進をもたらした。フローサイトメトリー分析は、脾臓のDAP10KO NKT細胞の減少した頻度を示した(図7A)。NKTのインビボでの活性化は、末梢リンパ器官からのそれらの迅速な枯渇、その後の骨髄由来細胞からの増殖および再生(repopulation)に関連することが報告されている(23)。この知見に基づいて、本発明者らは、BrdU取り込みを測定することによって、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおける脾臓のNKT細胞ならびに骨髄のNKT細胞における増殖速度を分析した。図7Bに示すように、DAP10KO NKT細胞は、wt細胞と比較して、有意に増加した増殖の%を有し、このことは、それらが構成的に機能亢進性であることを示唆した。DAP10欠損が、NKT細胞の機能に影響したか否かを決定するために、wt細胞およびDAP10KO NKT細胞の、サイトカインを産生する能力および腫瘍細胞を殺す能力を、試験した。NKT細胞を、わずかにNKT細胞を活性化し得る抗CD3 Abを使用して精製したので、休止NKT細胞の機能を、正確に評価することができなかった。図7Cに示すように、IgGアイソタイプコントロール抗体(「休止」)と一緒に培養されたNKT細胞は、低レベルのサイトカインを産生し、したがって活性化されなかったと見なされた。血小板結合性抗CD3 Abを有するNKT細胞は、IL−4、IFNγ、TNF−αおよびIL−2を含む全てのNKT特徴的なサイトカインの産生を誘導した(図7C)。興味深いことに、活性化されなかったDAP10KO NKT細胞および活性化されたDAP10KO NKT細胞の両方は、wt細胞と比較した場合、有意により高い量のサイトカインを産生した。
【0102】
IL−2に活性化されたNKT細胞の、NKG2Dリガンドを発現する腫瘍またはNKG2Dリガンドを発現しない腫瘍を殺す細胞傷害能力もまた、試験した。DAP10KO NKT細胞は、wt NKT細胞と比較した場合、NKG2D リガンド発現YAC−1腫瘍細胞をより低い効率で殺し、そして抗NKG2D Abは、部分的に、両方の場合において、その殺傷を阻害した(図8A)。これらの結果は、活性化されたDAP10KO NKT細胞が、部分的に機能性のNKG2Dレセプターを発現するが、NKG2Dについての発現レベルは、wt細胞と比較して非常に低かったことを示唆した(図8B)。興味深いことに、B16黒色腫細胞は、DAP10KO NKT細胞によって効率的に殺されたが、wt細胞によっては効率的に殺されず、そしてこの細胞傷害は、抗NKG2D Abによって著しく影響されなかった(図8A)。これらの結果は、インビボのデータと一致し、そしてDAP10KO NKT細胞が、これらの同系の腫瘍細胞を効率的に殺すようにプログラムされたことを示した。
【0103】
DAP10KO Tregは、機能不全性であった。DAP10欠損マウスがより良好な抗腫瘍応答を開始することを可能にする機構的な経路を理解するために、NK1.1+細胞の内在性の特性に対するDAP10欠損の効果、またはそれらの機能を制御する免疫環境を、決定した。CD25+ Treg細胞が枯渇したマウスにおける皮下のDMBA−T腫瘍増殖を、分析した。インビボ抗CD25 Ab処置によってTregが枯渇したwtマウスは、顕著に、遅延しかつ減少した皮膚の癌腫増殖を示し、さらに、未処置のDAP10KOマウスにおいて観察されたものに類似した(図9A、図9B)。CD25+ Treg細胞が枯渇したDAP10KOマウスは、完全に腫瘍を有さず、このことは、DAP10KO Tregが、ある程度抑制性の活性を有することを示した。これらの増強した抗腫瘍活性はまた、B16黒色腫の転移モデルにおいて観察され、Tregの枯渇が、肺への転移をブロックした(図9B)。興味深いことに、Treg枯渇マウスから単離したwt NKT細胞は、DAP10KO NKT細胞によって媒介される細胞傷害に匹敵する、B16黒色腫細胞およびDMBA−T癌腫細胞の強力なインビトロでの細胞溶解が可能であった(図9C)。
【0104】
マウスおよびDAP10KOマウスに由来する脾細胞の表現型の分析は、CD4+CD25+ Tregの等しい%を示した(図10A)。しかし、DAP10KO Tregは、低い表面密度のCD25を有する、より高い比率のTregを示した。CD25は、IL−2レセプターの重要な成分であり、そしてIL−2の活性化は、Tregの分化および増殖に不可欠であるので、IL−2または可溶性抗CD3 Abを加えたIL−2によって活性化したDAP10KO Tregが、wt細胞と比較した場合に、より低い量のIL−10およびIFN−γを産生したことは、顕著であった(図10B)。次いでTregにおけるNKG2D−DAP10 レセプター複合体の発現を、決定した。図10Cに示すように、本発明者らは、DAP10がTregの機能に直接影響することを示唆する、休止wt TregにおけるDAP10転写物およびNKG2D転写物の存在を観察した。NKG2Dレセプターの表面における発現は、脾臓のT細胞において検出されなかった(図示せず)。
【0105】
DAP10KO Tregがインビボで機能不全性であったか否かを決定するために、wt Tregを、DAP10KOマウスに移植し、そしてB16黒色腫の転移の発生に対するwt Tregの影響を分析した。1×106個のwt Treg細胞を、DAP10KOマウスに対してi.v.に移植し、そして4日後に、マウスは、B16黒色腫腫瘍細胞を受容した。コントロールマウス(wtおよびDAP10KOの両方)は、B16細胞のみを受容した。図10Cは、DAP10KOマウスにおけるwt Tregの移植が、DAP10KOマウスを、wtマウスに匹敵して、黒色腫の転移に対して感受性にしたこと示す。
【0106】
DAP10KOマウスは、誘導された自己免疫に対して、より感受性であった。DAP10KO Tregの損なわれた機能が自己に対する増加した反応性をもたらすか否かを決定するために、自己抗原(MOG35−55)に対するDAP10KO T細胞のインビトロおよびインビボでの応答を、分析した。図11Aは、MOG35−55ペプチドに対するリコール反応(recall reaction)において、MOG35−55免疫マウスのリンパ節から単離したDAP10KO T細胞は、より良好に増殖し、そしてwt細胞と比較してIFNγのより高いレベルをもたらした。遅延型の過敏性反応(DTH)の誘導は、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおいて、足蹠の同様の腫脹を生じた(図11B)。興味深いことに、MOG35−55に対するDTH応答は、DAP10KO BL/6マウスの40%に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘発したが、BL/6マウスにおいてはEAEを誘発しなかった。EAEに関連した神経学的効果を、DTH応答の誘導の、ちょうど48時間後に観察した。数匹のDAP10KOマウスは、迅速な寛解を伴う穏やかなEAEを発症したのに対して、他のDAP10KOマウスは、寛解前に1ヶ月間持続する重症かつ持続性のEAEを有した。合わせて、このデータは、DAP10KOマウスがMOG35−55誘導性自己免疫応答に対する増加した感受性を有することを示唆した。
【0107】
(考察)
予想外にも、発癌物質の刺激に曝されたDAP10KOマウス、またはNKG2Dリガンドを発現する同系の腫瘍もしくはNKG2Dリガンドを発現しない同系の腫瘍を移植されたDAP10KOマウスは、腫瘍の悪性度に対して増強された抵抗性を示した。DAP10KOマウスの抗腫瘍表現型は、マウスにおいてNK細胞およびNKT細胞の両方を枯渇させることによって逆転された。B16黒色腫モデルにおいて、DAP10KO NKT細胞は、B16腫瘍の排除を媒介するエフェクター細胞であることを証明した。一貫して、インビトロ細胞傷害アッセイは、DAP10KOが、NKG2D依存性の様式でB16黒色腫の腫瘍を効率的に殺し得たが、wt NKT細胞は、そうでなかったことを示した。それとは反対に、DMBA−T癌腫移植モデルにおいて、DAP10KO NK細胞は、腫瘍の拒絶を担う最終的なエフェクターであった。しかし、この腫瘍モデルにおいても、DAP10KO NKT細胞は、NK細胞の活性化を媒介するようであった。実際に、インビトロで活性化されたwt細胞またはDAP10KO NK細胞が、DMBA−T腫瘍を同様の効率で殺したのに対して、DAP10KO NK1.1+細胞は、DMBA−T標的を、wt NK1.1+細胞よりずっと効率的に殺した。さらに、TCRによる刺激の際に、DAP10KO NKT細胞は、IFN−γおよびTNF−α(両方とも殺腫瘍活性を有する)の、より高いレベルをもたらした。インビボにおいて、NKT細胞によるIFN−γの、早期のより高い産生の後に、通常、NK細胞の迅速な活性化および効率的な腫瘍の殺傷が続く(31−35)。
【0108】
DAP10欠損は、構成的に機能亢進したNKT細胞に関連した。DAP10KO NKT細胞は、ナイーブなマウスの脾臓および骨髄の両方における増加した増殖速度を示した。さらに、「休止」DAP10KO NKT細胞および活性化されたDAP10KO NKT細胞は、wt NKT細胞と比較して、有意により高いレベルのサイトカインを産生した。NKT細胞のような自己反応性のT細胞の活性を阻害することによって自己の破壊を防ぐこと(36)が公知であるDAP10KO Tregの機能的特性を、DAP10が、細胞傷害機能を抑制状態に保つ機構に関与するか否かを決定するために、分析した。DAP10KOマウスの分析は、DAP10の基礎的な発現が、Tregが正常に機能するために必要とされたことを示した。DAP10シグナル伝達の欠如は、Tregの分化の状態を変化させるようであり、Tregの抑制性の活性の欠損を生じた。DAP10欠損マウスにおけるwt Tregの養子移植は、上記抑制を回復させ、このことは、実際に、DAP10KO Tregがインビボで機能不全であったことを示した。
【0109】
Tregは、特に、高レベルのCD25抗原(IL−2レセプターの成分)を発現する、高度に分化した細胞である。IL−2は、Tregに対する重要な増殖因子であるだけでなく、Tregの機能をも調節し得る(27、29)。ナイーブなDAP10KO Treg集団は、wt細胞と比較した場合、CD4+CD25low細胞の増加した%を示した。結果的に、TCRを介する活性化に関連するか、またはそれに関連しないIL−2刺激は、DAP10KO TregによるIL−10の有意に減少した産生をもたらした。Tregは、自己反応性を抑制する2つの主要な機構を利用する:IL−10、TGFβおよびIL−4のような免役抑制性サイトカインの産生およびCTLA−4またはGITRのような細胞表面抗原を含む、細胞と細胞との接触性相互作用(37)。したがって、DAP10KO TregによるIL−10の損なわれた産生は、インビボにおけるそれらの細胞の減少した抑制性の活性を担うようである。
【0110】
DAP10シグナル伝達が、いかにしてTregの分化プロセスに寄与するのか?1つの可能性は、DAP10が胸腺におけるTregの成熟に影響することである。Tregの胸腺における発達は、TCR媒介性シグナルおよび最大の共起刺激を必要とする。CD28共起刺激分子、B7共起刺激分子およびCD40共起刺激分子を欠如するマウスは、Tregの損なわれた発達を有する(36、37)。DAP10KOマウスは、正常なTreg数を有したが、Tregの抑制性の機能を損ない、これは、DAP10がTregの完全な成熟に必要とされ得ることを示唆した。DAP10転写物およびNKG2D転写物は、胸腺において良好に発現され、そしてNKG2D−リガンド転写物は、胚において高度に発現されることが見出され(30)、これらのことは、NKG2D−DAP10レセプター複合体が、実際に、自己反応性のT細胞集団の初期の発達に関与し得ることを示唆する。あるいは、DAP10シグナル伝達は、直接的かまたは間接的かのいずれかで、末梢におけるTregの抑制性の機能を維持するために必要とされ得る。本発明者らは、天然のwt Tregにおいて、表面でのNKG2Dの発現を検出できなかったが、mRNA分析は、Tregの調節におけるNKG2D−DAP10レセプター複合体の直接的な関与を示唆する、NKG2DおよびDAP10の両方の発現を明確に示した。DAP10シグナル伝達が、末梢におけるTregの分化に重要である抗原提示細胞によって提供される共起刺激レセプターおよびサイトカインをモジュレートすることによって、Tregの機能に間接的に影響することも、可能である(32)。
【0111】
DAP10KOマウスの分析は、DAP10が、腫瘍認識の免疫寛容機構に関与し、そうして腫瘍に対する免疫療法のための強力な薬物標的を示したことを示唆する。したがって、DAP10シグナル伝達のブロックは、Tregの抑制性の機能を損なうことによって同系の腫瘍に対して、保護的であり得た。当然に、NKG2D−DAP10レセプター複合体のブロックは、腫瘍細胞がNKG2Dリガンドを発現するか、またはNKG2Dリガンドしないかに依存して、異なる帰結を有するようである。興味深いことに、wtマウスは、それらが、予めTregを枯渇した場合にのみ、低レベルのNKG2Dリガンドを発現するDMBA−T腫瘍を拒絶し得た。NKG2Dリガンドのほかに、DMBA−T腫瘍細胞が、Tregによって認識され得る腫瘍関連抗原を発現し、そしてそれらの活性化、およびその後の免疫反応の阻害を誘発することが、可能である。この可能性は、腫瘍特異的な、変異していない自己抗原(LAGE−1と称される)の、Treg細胞に対する生理学的リガンドとしての最近の同定によって支持された(38)。したがって、外来または自己の状況における腫瘍特異的抗原の認識は、腫瘍に対する免疫応答の性質において重要な影響を有し得た。
【0112】
DAP10は免疫調節機能を有するので、DAP10のブロックは、好ましい自己免疫であり得る。しかし、ナイーブなDAP10KOマウスは、自発の自己免疫反応を発生せず、自己免疫表現型に関連するマウスにおける腫瘍の拒絶でもなかった。興味深いことに、MOG自己ペプチドに対するDTH反応の誘導は、DAP10KOマウスにおいてEAEを生じたが、wtマウスにおいてはEAEを生じず、このことは、DAP10KOマウスが、実験的に誘導された自己免疫疾患に対して、より感受性であることを示した。BL/6マウスにおけるEAEの誘導が、CFA中に乳化されたMOG35−55および百日咳毒素(PTX)による免疫を必要とすることが、良好に確立される(39)。PTXの非存在下において、wt BL/6マウスは、代表的に、EAEを発症しないが、しかし、40%のDAP10KOマウスは、PTX処置無しでEAEを発症した。おそらく、DAP10KO Tregの損なわれた調節機能が、増強したT細胞媒介性の自己反応性をもたらし、したがってPTXに対する必要性を除去した。DAP10シグナル伝達はまた、自己免疫応答に関与する他の免疫細胞の活性に影響し得る。2つの研究は、自己反応性のCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞におけるNKG2D−DAP10レセプター複合体の発現を示している(7、8)。後者は、自己免疫疾患に対して遺伝的に感受性であり、不完全なTregおよびNKT細胞の活性を有する他のマウス系統のようなNODマウスの使用を、行なった(28)。NKG2Dシグナル伝達のブロックは、CD8+ T細胞の増殖および活性を阻害することによって自己免疫性糖尿病を予防する(8)。したがって、DAP10機能のブロックは、免疫応答において異なる影響を有するようである。
【0113】
DAP10は、リンパ系細胞および骨髄性細胞において広く発現され、したがってDAP10の生物学は、複合体であることが予想される。上記研究は、同系の腫瘍に対する応答を制御する免疫調節機構におけるDAP10の重要な役割を示し、そしてDAP10共起刺激の1つの生理学的役割が、自己抗原に対する寛容を維持するためにTregを活性化することであることを示唆する。
【0114】
(参考文献)
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、DAP10遺伝子の標的化を示す。(A)エキソン3およびエキソン4が、ES細胞中の1.4kbのneorカセットによって置換されたDAP10 wt対立遺伝子の概略図。ereリコンビナーゼ遺伝子を含むプラスミドを導入することによって、lox Pフランク(flanked)neor遺伝子が除去される。(B)サザンブロット分析。ESクローンを、未分化胚芽細胞のマイクロインジェクションの前に、neor遺伝子の切り出しを確認するためにサザンブロットによって分析した。サザンスクリーニングは、DAP10標的化ベクターにフランキングする5’プローブおよび3プローブの両方を利用する。ゲノムDNAを、コントロール、または変異体ES細胞から単離し、NcoIによって消化し、そして5’プローブおよび3プローブによってハイブリダイズさせた。wt対立遺伝子(wt)は、6kbのバンドによって表され、標的化された対立遺伝子(HR)は、4.0kbのバンドであり、そしてCREフリップ対立遺伝子(flipped allele)(CF)は、5.1kbのバンドである。(C)DAP10KOリンパ組織のRT PCR分析。全RNAは、wtマウスまたはDAP10KOマウスの脾臓、リンパ節および胸腺から単離され、そしてDAP10遺伝子、NKG2D遺伝子およびDAP12遺伝子に対する特異的プライマーを使用したリアルタイムRT PCR分析に供された。mRNAレベルを、ユビキチンレベルに対して正規化した。(D)NK1.1+細胞上のNKG2Dレセプターの発現。wtまたはDAP10KO 脾細胞(上のパネル)またはIL−2によって3日間活性化されたNK細胞(下のパネル)を、抗NK1.1 FITCと抗NKG2D PE mAbとのカクテルによって染色し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。
【図2】図2は、DAP10欠損マウスが化学的に誘導された皮膚の癌腫に対して保護されることを示す。発癌のイニシエーションの4ヶ月後、皮膚の腫瘍を計測し、そしてそれらの発達の段階(乳頭腫および癌腫)を、臨床的かつ組織学的な判定基準に基づいて決定した。wt腫瘍は、癌腫と乳頭腫との混合であったのに対して、DAP10KO腫瘍は、乳頭腫のみであった。写真は、代表的なwtマウスまたはDAP10KOマウスにおける化学的に誘導された皮膚の腫瘍の外観を示す。その差は、対応のないスチューデントt検定によって決定したところ、統計学的に有意であった(p>0.05)。
【図3】図3は、NK1.1+細胞がDAP10KOマウスにおいて癌の腫瘍の効率的な拒絶を担う、最終のエフェクター細胞であることを示す。(A)wt癌腫細胞の移植。マウス(1群あたりn=10)に、5x104個のwt癌腫細胞をs.c.に注射し、そして1ヶ月間2〜3日毎に腫瘍増殖についてモニタリングした。(B)NK1.1+細胞が枯渇したマウスにおける腫瘍増殖。抗NK1.1 mAb(PK136)またはアイソタイプコントロール(マウスIgG1κ)を、−2日目から開始して5日毎にi.v.に与えた。マウス(1群あたりn=5)に、0日目において5×104個のwt癌腫細胞を与えた。(C)NK細胞が枯渇したマウスにおける腫瘍増殖。抗アシアロGM1ポリクローナル抗体またはPBSを、−2日目、2日目、6日目、10日目においてi.v.に与えられた。マウス(1群あたりn=5)に、5×104個のwt癌腫細胞を0日目に与えた。P値(p>0.05)を、対応のないスチューデントt検定によって決定した。データは、与えられた時点における腫瘍容積の平均±SEMとして示される。
【図4】図4は、DAP10KO NK1.1+細胞が効率的に癌の皮膚の腫瘍を殺すことを示す。(A)DMBA−T癌腫細胞におけるNKG2D−リガンドの発現。NKG2D−Ig融合タンパク質またはIgコントロールと、PE結合体化二次Abとによって染色されたwt癌腫細胞のフローサイトメトリー分析。(B)NK1.1+細胞による癌の皮膚の腫瘍のインビトロでの殺傷。NK細胞、NKT細胞またはNK1.1+細胞を、wt脾細胞またはDAP10KO脾細胞から単離し、そしてIL−2と一緒に7日間培養した。それらは、異なるエフェクター:標的比でのDMBA−T細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのアッセイは、抗NKG2DブロックmAbまたはラットIgG2aアイソタイプコントロール(両方とも10μg/mlにて使用される)の存在下において行なった。
【図5】図5は、DAP10欠損がB16黒色腫の転移に対する免疫の増強と関連することを示す。(A)黒色腫の肺への転移の発症。1×105個または1×104個のB16細胞を、マウスにi.v.注射し、そして肺への転移を、2週後に計測した(p>0.05)。(B)1x105個のB16黒色腫細胞の注射の2週間後でのwtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるB16転移の外観。
【図6】図6は、NKT細胞がDAP10KOマウスにおいてB16黒色腫の転移に対する保護を担うエフェクターであることを示す。(A)骨髄キメラの産生。骨髄キメラマウスの4つの群を産生し、そして抗転移効果におけるDAP10KO免疫細胞の役割を評価するために使用した。使用したドナー−>レシピエントキメラは、以下の通りであった:1.wt GFP+−>wt;2.DAP10KO−>DAP10KO;3.wt GFP+−>DAP10KO;4.DAP10KO−>wt GFP+。1×105個のB16細胞を、キメラに注射し、そして2週間後、その転移を計測した。2つの異なる実験からの代表的な結果。(B)マウスにおけるNK1.1+細胞の枯渇。マウスに、2×104個のB16細胞をi.v.に注射した。抗NK1.1 Ab(PK136)またはアイソタイプコントロール(マウスIgG1κ)に、−2日目から開始して5日毎にi.v.に与えた。肺への転移を、2週間後に計測した。(C)マウスにおけるNK細胞の枯渇。抗アシアロGM1ポリクローナル抗体またはPBSを、−2日目、2日目、6日目、10日目においてi.v.に与えた。1×105個のB16細胞を、0日目においてi.v.に注射し、そして肺への転移を、14日目に計測した。
【図7】図7は、DAP10KO NKT細胞が超活動性であることを示す。(A)wtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるNKT細胞集団のフローサイトメトリー分析。ナイーブなマウスから単離された脾細胞を、抗NK1.1 PE抗体と抗CD3 FITC抗体とによって染色した。NKG2D発現を、抗NKG2D PE Abによって染色し、取り出されたNKT細胞において評価した。(B)NKT細胞の交代速度。マウスに、BrdU(マウス1匹あたり1mg)をi.v.に注射した。24時間後、白血球を、脾臓および骨髄から単離し、そしてBrdUキットを使用してBrdUの取り込みを検出するために染色した。染色された細胞は、フローサイトメトリーによって分析した。(C)DAP10KO NKT細胞は、wt細胞と比較して、より高い量のサイトカインを産生する。wt細胞またはDAP10KO NKT細胞を、ナイーブなマウスの脾細胞から単離し、そして血小板結合性抗CD3 mAbまたはアイソタイプコントロール(「休止」)によってインビトロで活性化させた。細胞を48時間培養し、そしてサイトカイン産生をマウスThl/Th2 CBAキットを使用して上清において測定した。
【図8】図8は、DAP10 NKTKO細胞がB16黒色腫細胞を効率的に殺すことを示す。(A)活性化されたNKTのフローサイトメトリー分析。取り出されたNKTを、IL−2と一緒に5日間培養した。細胞を、抗NK1.1 FITCと、抗CD3 Cyと、抗NKG2D PE Abとのカクテルによって染色した。(B)NKT細胞傷害能力の分析。IL−2活性化NKT細胞を、YAC−1細胞およびB16黒色腫標的細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。YAC−1が、高レベルのNKG2Dリガンドを発現するのに対して、B16は、高レベルのNKG2Dリガンドを発現しない。そのアッセイは、抗NKG2DブロックAbまたはそのアイソタイプコントロール(両方とも、10μg/mlである)の存在下において行なわれた。
【図9】図9は、wtマウスおよびDAP10KOマウスにおけるCD4+CD25+ Tregの枯渇を示す。(A)Tregが枯渇したマウスにおけるDMBA−T癌腫細胞の移植。Tregを枯渇させるために、マウスに、−2日目において単一用量の抗CD25 Abを与え、次いで0日目においてDMBA−T細胞を注射した。腫瘍増殖を、3日毎にモニタリングした。(B)Tregが枯渇したマウスにおける転移の発生。枯渇のために、マウスに、−3日目、2日目および7日目において抗CD25 Abを与えた。コントロールマウスに、PBSを与えた。1×105個のB16細胞を、0日目においてi.v.に与え、そして転移を、2週間目において計測した。(C)Tregが枯渇したマウスから単離されたNKT細胞の細胞傷害能力。wtマウスまたはDAP10KOマウスは、−3日目における抗CD25 Ab(クローンPC61、マウス1匹あたり0.5mg)の静脈内注射によってCD25+細胞が枯渇した。0日目において、NKT細胞を、脾臓から単離し、そしてマウスIL−2と一緒に5日間培養した。次いで、NKTを、B16黒色腫細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのデータは、平均±SDとして示される。
【図10】図10は、DAP10欠損がTreg媒介性の抑制の減損と関連することを示す。(A)Tregのフローサイトメトリー分析。脾細胞を、wtマウスまたはDAP10KOマウスから単離し、そして抗CD4 FITC Ab、抗CD25ビオチンAbによって染色し、次いでストレプトアビジン−Cyによって染色した。(B)DAP10KO Tregによるサイトカイン産生の減損。wt TregまたはDAP10KO Tregは、ナイーブなマウスの脾細胞から単離し、そしてIL−2、またはIL−2および可溶性抗CD3 mAbを用いて48時間活性化した。サイトカインの産生を、マウス炎症性CBAキットを使用して上清において測定した。その上清において検出された他のサイトカインは、MCP−I(DAP10KO Tregにおいてダウンレギュレートされた)、およびTNF−α(wt細胞およびDAP10KO細胞によって同様に産生)であった。(C)wt TregおよびDAP10KO TregのTaqman分析。Tregを、マウスCD4+CD25+ Treg単離キットを使用して、wtマウスおよびDAP10KOマウスの脾臓から単離した。全RNAを、3.5×106個のTregから単離し、そしてFoxp3遺伝子、NKG2D遺伝子、DAP10遺伝子、DAP12遺伝子およびIFNγ遺伝子に対する特異的プライマーを使用するリアルタイムRT PCR分析に供した。mRNAレベルを、ユビキチンレベルに対して正規化した。(D)DAP10KOマウスにおけるwt Tregの養子移植。1×106個のwt TregまたはPBSを、−3日目においてDAP10KOマウスにi.v.注射した。マウスに、0日目において、B16黒色腫をi.v.に注射し、そして肺への転移を、14日目に分析した。(D)DAP10KO NKTに対するTregの抑制効果。NKTを、ナイーブなマウスから単離し、そしてマウスIL−2と一緒に5日間培養した。細胞傷害アッセイの12時間前に、NKT細胞を洗浄し、計測し、そしてIL−2を含む培地において、単独か、またはwt TregもしくはDAP10KO Tregと一緒(1:1の比)のいずれかで、培養した。NKT±Tregを、B16黒色腫細胞またはwt癌腫細胞に対する細胞傷害アッセイにおいてエフェクターとして使用した。そのデータは、平均±SDとして示される。
【図11】図11は、DAP10KO T細胞が自己ペプチドMOGに対する増加した反応性を提示することを示す。(A)MOG35−55で免疫されたリンパ節細胞のインビトロ増殖アッセイ。wtリンパ節細胞およびDAP10KOリンパ節細胞を、MOG35−55で免疫されたマウスから単離し、そして異なる濃度にて、MOG35−55ペプチドと一緒に72時間培養した。その増殖性の応答を、[3H]−チミジン取り込みアッセイによって測定した(左のグラフ)。未標識の培養物を使用して、IFN−γの量を決定した(右のグラフ)。データは、三連の平均±SEMである。3つのうちの1つの代表的な実験が示される。(B)DTH応答の誘導。マウスを、0日目において、CFA中に乳化されたMOGによって免疫し、次いで10日目においてMOGを足蹠に注射した。足蹠の腫脹を、48時間後に測定した(左のグラフ)。EAE臨床スコアを、方法に記載されるように決定した。3つの異なる実験の組み合わせたデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍は、NKG2Dリガンドを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍は、LAGE−1を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記因子は、NK細胞の細胞傷害もしくはNKT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記因子は、NK細胞の増加した増殖またはNKT細胞の増加した増殖を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記因子は、少なくとも特徴的なサイトカインのNK細胞またはNKT細胞からの増加したサイトカイン産生を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記特徴的なサイトカインは、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
DAP10活性をモジュレートする因子の有効量を細胞に投与する工程を包含する、標的に対する細胞傷害を増加する方法であって、該DAP10活性は、減少されるか、または排除される、方法。
【請求項14】
前記標的は、腫瘍細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞傷害のメディエーターは、NK細胞またはNKT細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞は、組織または生体にある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記因子は、DAP10の膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体は、癌を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記癌は、皮膚癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌は、化学的に誘導される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10の生物学的活性の阻害について該細胞を評価する工程;および
c)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を発癌を弱めるか、または改善する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法。
【請求項27】
前記発癌は、皮膚の発癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記発癌は、化学的に誘導される発癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10の生物学的活性の阻害について該細胞を評価する工程;および
c)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法。
【請求項31】
前記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍は、皮膚の腫瘍である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記腫瘍は、化学的に誘導される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記DAP10生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程;
b)試験化合物を該DAP10−/−に投与する工程;
c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程;および
d)試験化合物を、該試験化合物が該疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、該自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程;
を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法。
【請求項36】
前記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法によって同定された有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法。
【請求項38】
自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10発現細胞においてDAP10の生物学的活性を維持するか、増強するか、または回復させる化合物の有効量を、投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10活性またはDAP10発現のモジュレーションについて該DAP10発現細胞を評価する工程;および
c)DAP10発現細胞においてDAP10の生物学的活性を維持し、増強し、または回復させる化合物を、自己免疫疾患を予防するか、または処置する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する化合物を同定する方法。
【請求項1】
被験体において腫瘍に対する細胞媒介性の応答を刺激するか、または増大するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記因子は、DAP10膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍は、NKG2Dリガンドを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍は、LAGE−1を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記因子は、NK細胞の細胞傷害もしくはNKT細胞の細胞傷害を増強するか、または増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記因子は、NK細胞の増加した増殖またはNKT細胞の増加した増殖を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記因子は、少なくとも特徴的なサイトカインのNK細胞またはNKT細胞からの増加したサイトカイン産生を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記特徴的なサイトカインは、IL−4、IFN−γ、TNF−α、またはIL−2である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
DAP10活性をモジュレートする因子の有効量を細胞に投与する工程を包含する、標的に対する細胞傷害を増加する方法であって、該DAP10活性は、減少されるか、または排除される、方法。
【請求項14】
前記標的は、腫瘍細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞傷害のメディエーターは、NK細胞またはNKT細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞は、組織または生体にある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
調節性T細胞を抑制するか、または阻害するための方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害する因子を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記因子は、DAP10の発現を阻害するか、または抑制する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記因子は、DAP10の細胞内シグナル伝達を妨害する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記因子は、DAP10によるPI3キナーゼ経路の誘発を妨害する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記因子は、DAP10の膜貫通ドメイン、DAP10特異的抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、またはDAP10のsiRNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体は、癌を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
癌を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10の生物学的活性を阻害するか、または抑制する因子の有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記癌は、皮膚癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌は、化学的に誘導される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10の生物学的活性の阻害について該細胞を評価する工程;および
c)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を発癌を弱めるか、または改善する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、発癌を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法。
【請求項27】
前記発癌は、皮膚の発癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記発癌は、化学的に誘導される発癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記DAP10の生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10の生物学的活性の阻害について該細胞を評価する工程;および
c)DAP10の生物学的活性をダウンレギュレートする化合物を、腫瘍増殖を阻害する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、腫瘍増殖を阻害する化合物を同定するための方法。
【請求項31】
前記腫瘍は、原発性腫瘍または転移性腫瘍である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍は、皮膚の腫瘍である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記腫瘍は、化学的に誘導される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記DAP10生物学的活性は、PI3キナーゼシグナル伝達の誘導、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した細胞傷害、NK細胞もしくはNKT細胞の増加した増殖、またはNK細胞もしくはNKT細胞による増加したサイトカイン産生によって評価される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
a)DAP10−/−マウスにおいて実験的自己免疫疾患を誘導する工程;
b)試験化合物を該DAP10−/−に投与する工程;
c)少なくとも1つの自己免疫疾患の指標を評価する工程;および
d)試験化合物を、該試験化合物が該疾患の指標を減少させるか、または排除する場合に、該自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物として同定する工程;
を包含する、自己免疫疾患を弱めるか、または改善する化合物を同定するための方法。
【請求項36】
前記実験的自己免疫疾患は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎、実験的自己免疫心筋炎、実験的自己免疫卵巣炎、または実験的自己免疫精巣炎である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法によって同定された有効な化合物を投与する工程を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法。
【請求項38】
自己免疫疾患を予防するか、または処置する方法であって、その必要がある被験体に、DAP10発現細胞においてDAP10の生物学的活性を維持するか、増強するか、または回復させる化合物の有効量を、投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
a)DAP10発現細胞と試験化合物とを接触させる工程;
b)DAP10活性またはDAP10発現のモジュレーションについて該DAP10発現細胞を評価する工程;および
c)DAP10発現細胞においてDAP10の生物学的活性を維持し、増強し、または回復させる化合物を、自己免疫疾患を予防するか、または処置する化合物として、該試験化合物を同定する工程;
を包含する、自己免疫疾患を予防するか、または処置する化合物を同定する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−521814(P2008−521814A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543443(P2007−543443)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042459
【国際公開番号】WO2006/058077
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042459
【国際公開番号】WO2006/058077
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
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