DC−DCコンバータ装置
【課題】直流電源の高電圧を効率的に降圧して負荷に供給する。
【解決手段】コンバータ回路4は、入力端41に供給される電源電圧Vinを降圧し、出力端42に直流電力を供給する。コンバータ回路4は、電源電圧Vinを分圧する複数の容量要素C1〜Cnを含む分圧回路43を備える。コンバータ回路4は、分圧回路43と出力端42との間に設けられた複数の給電回路45を備える。これらの給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれが出力端42に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれと出力端42とを接続する。複数の給電回路45には、複数の給電回路45を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnが設けられている。電源電圧Vinが分圧回路43によって分圧されて出力端42に供給されるから、効率的に降圧することができる。
【解決手段】コンバータ回路4は、入力端41に供給される電源電圧Vinを降圧し、出力端42に直流電力を供給する。コンバータ回路4は、電源電圧Vinを分圧する複数の容量要素C1〜Cnを含む分圧回路43を備える。コンバータ回路4は、分圧回路43と出力端42との間に設けられた複数の給電回路45を備える。これらの給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれが出力端42に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれと出力端42とを接続する。複数の給電回路45には、複数の給電回路45を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnが設けられている。電源電圧Vinが分圧回路43によって分圧されて出力端42に供給されるから、効率的に降圧することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を降圧して供給する降圧型のDC−DCコンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、降圧型のDC−DCコンバータ装置を開示している。このようなDC−DCコンバータ装置では、電源から供給される電流をスイッチ素子によって断続し、リアクトルによって平滑化して負荷に供給する。しかし、電源の電圧と、負荷の電圧との間の差が大きい場合、電源の高電圧に耐える素子を用いる必要がある。
【0003】
特許文献2は、電源に対して並列接続されたコンデンサ分圧回路を備えるDC−DCコンバータ回路を開示している。このDC−DCコンバータ装置は、2つのコンデンサの接続点から、負荷としてのトランスに電流を供給する。このため、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧は、負荷であるトランスに対して交流として供給される。
【0004】
特許文献3は、電源に対して並列接続されたコンデンサ分圧回路を備えるDC−DCコンバータ回路を開示している。このDC−DCコンバータ装置は、コンデンサ分圧回路によって得られた2つの電圧が、2つのトランスに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−241071号公報
【特許文献2】特開2010−148227号公報
【特許文献3】特開平6−269171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、電源の電圧と、負荷の電圧との間の差が大きい場合、電源の高電圧に耐える素子を用いる必要がある。
【0007】
特許文献2の構成では、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧を直流として負荷に供給することができない。
【0008】
特許文献3の構成では、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧を、共通の負荷に供給することができないという問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直流電源の高電圧を効率的に降圧して負荷に供給することができるDC−DCコンバータ装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、スイッチ素子における損失を抑制したDC−DCコンバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、入力端(41)に供給される直流電力を降圧し出力端(42)に直流電力を供給するDC−DCコンバータ装置において、入力端(41)の間に直列接続され、入力端に供給される電圧を分圧する複数の容量要素(C1〜Cn)を含む分圧回路(43、44)と、分圧回路と出力端との間に設けられ、複数の容量要素のそれぞれが出力端(42)に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素のそれぞれと出力端とを接続する複数の給電回路(45)と、複数の給電回路に設けられ、複数の給電回路を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dn)と、出力端(42)に接続される容量要素を順に切換えるように複数のスイッチ素子を制御する制御装置(5、6)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、複数の容量要素によって入力端に供給される電圧が分圧される。分圧された電圧は、出力端に供給される。このとき、複数の容量要素のそれぞれが出力端に対して同じ極性の電力を供給する。さらに、出力端に接続される容量要素は、複数の容量要素から順に選択され、切換えられる。この結果、出力端には降圧された直流電力が供給される。この構成によると、直流電源の高電圧を効率的に降圧して負荷に供給することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、スイッチ素子は、出力端(42)の間に直列接続された複数の直列スイッチ素子(D1〜Dn)と、容量要素と直列スイッチ素子とを並列接続する経路に設けられた複数の並列スイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1)とを備えることを特徴とする。この構成によると、直列スイッチ素子と並列スイッチ素子とを含む給電回路網が構成される。これら直列スイッチ素子と並列スイッチ素子とによって、複数の給電回路のひとつが選択的に通電可能状態とされる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、複数の直列スイッチ素子は、出力端(42)の間に逆方向に直列接続された複数のダイオード(D1〜Dn)を備えることを特徴とする。この構成によると、直列スイッチ素子をダイオードによって提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、複数の並列スイッチ素子は、容量要素の正極から出力端の正極(42a)への通電を断続する正極側スイッチ素子(Q1〜Qnf)と、出力端の負極(42b)から容量要素の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子(Qnr〜Qn+1)とを備えることを特徴とする。この構成によると、ひとつの給電回路には、正極側スイッチ素子と負極側スイッチ素子とが設けられる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、分圧回路は、第1の容量要素(C1)と第2の容量要素(C2)とを備え、複数の直列スイッチ素子は、第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)とを備え、複数の並列スイッチ素子は、第1の容量要素(C1)の正極から出力端の正極(42a)への通電を断続する第1の並列スイッチ素子(Q1)と、出力端の負極(42b)から第2の容量要素(C2)の負極への通電を断続する第2の並列スイッチ素子(Q3)とを備え、複数の給電回路は、第1の容量要素と第2の容量要素との中間点と、第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)との中間点との間を接続することにより提供され、第1の容量要素と出力端とを接続する第1の給電回路と、第2の容量要素と出力端とを接続する第2の給電回路とを備えることを特徴とする。この構成によると、2段型の分圧回路を備えるDC−DCコンバータ装置が提供される。しかも、中間点と中間点とがスイッチ素子を設けることなく直接的に接続されるから、スイッチ素子の数を抑制することができる。また、スイッチ素子のスイッチングのための周波数を抑制することができるから、第1の並列スイッチ素子と第2の並列スイッチ素子とにおけるスイッチング損失を抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、分圧回路(43、44)は、入力端(41)の間に直列接続された複数の容量要素(C1〜Cn)を含むコンデンサ分圧回路(43)と、入力端(41)の間に直列接続されるとともに、複数の容量要素のそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素(R1〜Rn)を含む抵抗分圧回路(44)とを備えることを特徴とする。この構成によると、コンデンサ分圧回路の複数の容量要素における電圧の差を、抵抗分圧回路によって抑制することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、さらに、出力端に接続され、出力端に供給される直流電力を平滑化するリアクトル(Lo)およびコンデンサ(Co)を備えることを特徴とする。この構成によると、非絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0020】
請求項8に記載の発明は、さらに、出力端に接続された絶縁トランス(TR)および絶縁トランスの出力を整流する整流器(Dr)を備えることを特徴とする。この構成によると、絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0021】
請求項9に記載の発明は、さらに、出力端に接続された直流負荷を備えることを特徴とする。この構成によると、出力端から直接的に直流負荷へ直流電力を供給することができる。
【0022】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図2】第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図2Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図2Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示し、図2Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示し、図2Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示し、図2Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示し、図2Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図3】本発明を適用した第2実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図3Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図3Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示し、図3Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示し、図3Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示し、図3Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示し、図3Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図4】本発明を適用した第3実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図5】本発明を適用した第4実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図6】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図7】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図8】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図9】第4実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図9Aは、電源電圧Vinを示し、図9Bは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図9Cは、スイッチ素子Q3の駆動信号を示し、図9Dは、リアクトルLoの両端電圧VLを示し、図9Eは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図10】本発明を適用した第5実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図11】本発明を適用した第6実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図12】比較例に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図13】比較例のスイッチ素子Qの駆動信号を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百の位だけが異なる参照符号を付加することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。車両用電力供給装置1は、電源2から入力端41に供給される直流電力を降圧し出力端42から負荷3に直流電力を供給するコンバータ回路4を備える。電源2は、車両に搭載された電池である。電池は、車両の走行用電動機に給電する高電圧の電池である。電池は数百ボルトの直流電力を供給する。電池は、電源電圧Vinを出力する。コンバータ回路4の入力端41には、電源電圧Vinが入力される。コンバータ回路4の出力端42には、負荷3が接続されている。負荷3は、フィルタ回路を構成するリアクトルLoおよびコンデンサCoと、負荷素子Roとを含むことができる。リアクトルLoおよびコンデンサCoは、出力端42に供給される直流電力を平滑化する。この実施形態では、DC−DCコンバータ装置は、コンバータ回路4のみにより、または、リアクトルLo、コンデンサCo、およびコンバータ回路4により提供される。コンバータ回路4は、電源電圧Vinを分圧する分圧回路と、分圧された電圧を順に出力端42に供給するチョッパ回路とを構成する。コンバータ回路4とリアクトルLoとコンデンサCoとは、降圧型のコンバータ装置を提供している。コンバータ回路4は、1段目からn段目までの多段分圧回路を提供する。図中の・・・は、同様の構成の繰り返しを示している。
【0026】
コンバータ回路4は、分圧段と、スイッチング段とを備える。分圧段は、入力端41に供給される電圧を分圧する分圧回路を備える。分圧回路は、入力端41の間に直列接続され、入力端41に供給される電圧を分圧する複数の容量要素C1〜Cnを含むことができる。容量要素C1〜Cnは、コンデンサである。分圧回路は、コンデンサ分圧回路43と、抵抗分圧回路44とを備えることができる。コンデンサ分圧回路43は、入力端41の間に直列接続された複数の容量要素C1〜Cnを含む。抵抗分圧回路44は、入力端41の間に直列接続されるとともに、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素R1〜Rnを含む。抵抗要素R1〜Rnは、抵抗器である。
【0027】
抵抗分圧回路44は、コンデンサ分圧回路43における複数の容量要素C1〜Cnの電圧VC1、VC2、〜VCnをバランスさせるために貢献する。抵抗要素R1〜Rnは、複数の容量要素C1〜Cnの容量の相違と、漏洩電流の相違とに対抗して、複数の容量要素C1〜Cnの充電電圧を互いに等しくする。複数の容量要素C1〜Cnの容量をC、容量要素C1〜Cnの数をn、抵抗要素R1〜Rnの抵抗値をR、容量要素C1〜Cnの最大サージ電圧をVrとすると、抵抗値Rは、R=(Vr−Vin/n)/C・Vinによって与えられる。
【0028】
スイッチング段は、分圧回路と出力端42との間に設けられた複数の給電回路45を備える。複数の給電回路45は、複数の給電回路45を提供する給電回路網45とも呼ぶことができる。複数の給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれと出力端42とを接続する。例えば、容量要素C1と出力端42とを接続する給電回路45−1と、容量要素C2と出力端42とを接続する給電回路45−2と、容量要素Cnと出力端42とを接続する給電回路45−nとを備える。よって、容量要素C1〜Cnの数に対応する数の給電回路45が設けられている。これら複数の給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれが出力端42に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素C1〜Cnと出力端42とを接続する。すなわち、給電回路45−1は、容量要素C1の正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素C1の負極を出力端42の負極42bに接続する。給電回路45−2は、容量要素C2の正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素C2の負極を出力端42の負極42bに接続する。同様に、給電回路45−nは、容量要素Cnの正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素Cnの負極を出力端42の負極42bに接続する。
【0029】
スイッチング段は、複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnを備える。これら複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の給電回路45に設けられている。複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の給電回路45のひとつを選択的に通電可能状態とする。
【0030】
スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnと、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1とを備える。
【0031】
複数の直列スイッチ素子D1〜Dnは、出力端42の間に直列接続されている。複数の直列スイッチ素子D1〜Dnのそれぞれは、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれに対応して設けられている。直列スイッチ素子D1〜Dnのそれぞれは、受動的なスイッチ素子であるダイオードによって提供されている。複数のダイオードD1〜Dnは、出力端42の間に逆方向に直列接続されている。直列スイッチ素子D1〜Dnは、選択されたひとつの容量要素の正極から出力端42の正極42aへの通電と、出力端42の負極42bから選択されたひとつの容量要素の負極への通電とを許容する。直列スイッチ素子D1〜Dnは、選択されたひとつの容量要素の正極と負極との間の短絡を阻止する。
【0032】
複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、容量要素C1〜Cnと直列スイッチ素子D1〜Dnとを並列接続する経路に設けられている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnと、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnとを、1対1に対応付けている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnと複数の直列スイッチ素子D1〜Dnとを含むはしご状の回路の横リンク部分に設けられている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1のそれぞれは、能動的なスイッチ素子であるMOS−FETによって提供されている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnからいずれかひとつを選択する。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、正極側スイッチ素子Q1〜Qnfと、負極側スイッチ素子Qnr〜Qn+1とを備える。正極側スイッチ素子Q1〜Qnfは、容量要素C1〜Cnの正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。負極側スイッチ素子Qnr〜Qn+1は、出力端42の負極42bから容量要素C1〜Cnの負極への通電を断続する。
【0033】
容量要素C1の正極と、直列スイッチ素子D1のカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q1が設けられている。並列スイッチ素子Q1は、容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Q1である。容量要素C1の負極と直列スイッチ素子D1のアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q2f、Q2rが設けられている。並列スイッチ素子Q2rは、出力端42の負極42bから容量要素C1の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Q2rである。並列スイッチ素子Q2fと並列スイッチ素子Q2rは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Q2を提供している。
【0034】
容量要素C2の正極と直列スイッチ素子D2のカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q2f、Q2rが設けられている。並列スイッチ素子Q2fは、容量要素C2の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Q2fである。容量要素C2の負極と直列スイッチ素子D2のアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q3f、Q3rが設けられている。並列スイッチ素子Q3rは、出力端42の負極42bから容量要素C3の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Q3rである。並列スイッチ素子Q3fと並列スイッチ素子Q3rは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Q3を提供している。
【0035】
容量要素Cnの正極と直列スイッチ素子Dnのカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Qnf、Qnrが設けられている。並列スイッチ素子Qnfは、容量要素Cnの正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Qnfである。並列スイッチ素子Qnfと並列スイッチ素子Qnrは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Qnを提供している。容量要素Cnの負極と直列スイッチ素子Dnのアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Qn+1が設けられている。並列スイッチ素子Qn+1は、出力端42の負極42bから容量要素Cnの負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Qn+1である。
【0036】
入力端41の正極41aと出力端42の正極42aとの間に設けられた正極側スイッチ素子Q1は、正極41aから負極42bへの通電を断続する。出力端42の負極42bと入力端41の負極41bとの間に設けられた負極側スイッチ素子Qnは、負極42bから正極41aへの通電を断続する。直列接続された2つの容量要素の間の中間電位点、または接続点は、中間点と呼ぶことができる。それら2つの容量要素に対応する2つの直列スイッチ素子の間の中間電位点、または接続点は、中間点と呼ぶことができる。これら対応する2つの中間点の間の経路に設けられた正極側スイッチ素子と負極側スイッチ素子とは、上記中間点の間の通電を断続するスイッチ素子を提供している。例えば、容量要素C1と容量要素C2との間の中間点と、直列スイッチ素子D1と直列スイッチ素子D2との間の中間点との間には、正極側スイッチ素子Q2fと負極側スイッチ素子Q2rが設けられている。
【0037】
複数の給電回路45は、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnを含む直列回路部分46と、複数の容量要素C1〜Cnと直列スイッチ素子D1〜Dnを並列に接続する並列回路部分47とを提供している。並列回路部分47は、複数の横リンク部分を含む。これら横リング部分のそれぞれに、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1が設けられている。
【0038】
スイッチング段は、出力端42に接続される容量要素C1〜Cnを順に切換えるように複数のスイッチ素子Q1、Q2f、Q2r〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnを制御する制御装置5、6を備える。制御装置5、6は、容量要素C1〜Cnを、予め定められた順序に従って、出力端42に接続する。言い換えると、制御装置5、6は、複数の容量要素C1〜Cnから、予め定められた順序に従ってひとつの容量要素を選択し、選択された容量要素だけを出力端42に接続する。制御装置5、6は、出力電圧Voが目標電圧になるようにスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号のデューティ比を調節するPWM制御回路(PWM)5を備える。制御装置5、6は、PWM制御回路5からの指令に応じて、スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号、すなわちゲート−ソース間電圧を与えるドライバ回路(DRV)6を備える。
【0039】
図2は、第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図2Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図2Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示す。図2Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示す。図2Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示す。図2Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示す。図2Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。図中の横軸は時刻tを示す。
【0040】
スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号は、周期Tp、オン期間Ton、オフ期間Toffによって特徴付けられる。図示の例においては、スイッチ素子Q1は、時刻t1と時刻t2との間にオン状態になる。スイッチ素子Q2f、Q2rは、時刻t1と時刻t2との間、および時刻t3と時刻t4との間にオン状態になる。スイッチ素子Q3f、Q3rは、時刻t3と時刻t4との間、および時刻t5と時刻t6との間にオン状態になる。スイッチ素子Qnf、Qnrは、時刻t7と時刻t8との間、および時刻t9と時刻t10との間にオン状態になる。スイッチ素子Qn+1は、時刻t9と時刻t10との間にオン状態になる。
【0041】
時刻t1と時刻t2との間においては、第1の給電回路45−1に設けられたスイッチ素子Q1、Q2f、Q2rがオン状態になるから、容量要素C1が出力端42に接続される。これにより、容量要素C1の電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t2と時刻t3との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t1と時刻t3との間は、第1ステージST1と呼ぶことができる。この第1ステージST1においては、容量要素C1に蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0042】
時刻t3と時刻t4との間においては、第2の給電回路45−2に設けられたスイッチ素子Q2f、Q2r、Q3f、Q3rがオン状態になるから、容量要素C2が出力端42に接続される。これにより、容量要素C2の電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t4と時刻t5との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t3と時刻t5との間は、第2ステージST2と呼ぶことができる。この第2ステージST2においては、容量要素C2に蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0043】
この後、容量要素C3、C4・・・Cnに関して、同様の作動が提供される。最終段階においては、以下のような作動が提供される。時刻t9と時刻t10との間においては、第n番目の給電回路45−nに設けられたスイッチ素子Qnf、Qnr、Qn+1がオン状態になるから、容量要素Cnが出力端42に接続される。これにより、容量要素Cnの電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t10と時刻t11との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t9と時刻t11との間は、第nステージSTnと呼ぶことができる。この第nステージSTnにおいては、容量要素Cnに蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0044】
この実施形態によると、電源電圧Vinがコンデンサ分圧回路43によって1/nに分圧される。そして分圧された電圧は、順に、同じ極性となるように出力端42に供給される。また、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1がデューティ駆動されることにより、分圧された電圧がさらに降圧される。この結果、高い電源電圧Vinを降圧して低い出力電圧Voが供給される。また、コンデンサ分圧回路43が設けられるため、耐圧が低い素子によって回路を構成することができる。
【0045】
(第2実施形態)
上記実施形態に代えて、複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1を図3に図示されるシーケンスに従って駆動してもよい。先行する実施形態では、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路46の中間点とを接続するスイッチ素子、例えばQnfとQnrは、リアクトルLoへの通電期間のみオン状態となっている。これに代えて、この実施形態では、制御装置5、6は、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路46の中間点とを接続するスイッチ素子がリアクトルLoへの通電期間の2回分に渡ってオン状態を維持するように駆動信号を出力する。
【0046】
図3は、第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図3Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図3Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示す。図3Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示す。図3Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示す。図3Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示す。図3Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。図中の横軸は時刻tを示す。
【0047】
この実施形態では、スイッチ素子Q2f、Q2rは、時刻t1と時刻t4との間に渡ってオン状態になる。また、スイッチ素子Q3f、Q3rは、時刻t3と時刻t6との間に渡ってオン状態になる。また、スイッチ素子Qnf、Qnrは、時刻t7と時刻t10との間に渡ってオン状態になる。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、電流ILが増減する。この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、この実施形態によると、スイッチ素子Q2f、Q2r〜Qnf、Qnrのスイッチング回数を抑制することができる。
【0048】
(第3実施形態)
上記実施形態では、n段のコンバータ回路4を説明した。これに代えて、この実施形態では、2段のコンバータ回路304を採用する。
【0049】
図4は、本発明を適用した第3実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。この実施形態では、分圧回路は、コンデンサ分圧回路43のみを備える。コンデンサ分圧回路43は、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2とを備える。直列回路部分46は、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2とを備える。並列回路部分47は、複数の並列スイッチ素子Q1、Q2f、Q2r、Q3を備える。第1の並列スイッチ素子Q1は、第1の容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。この構成では、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2との間に中間点がある。また、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2との間に中間点がある。第2の並列スイッチ素子Q2f、Q2rは、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路部分46の中間点との間の通電を断続する。第3の並列スイッチ素子Q3は、出力端42の負極42bから第2の容量要素C2の負極への通電を断続する。この構成によると、第1の容量要素C1と出力端42とを接続する第1の給電回路45−1と、第2の容量要素C2と出力端42とを接続する第2の給電回路45−2とが提供される。この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0050】
(第4実施形態)
上記実施形態では、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路部分46の中間点との間にスイッチ素子を設けた。これに代えて、この実施形態では、中間点と中間点との間を直結したコンバータ回路404を採用する。
【0051】
図5は、本発明を適用した第4実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。この実施形態では、並列回路部分47は、複数の並列スイッチ素子Q1、Q3を備える。第1の並列スイッチ素子Q1は、第1の容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。第2の並列スイッチ素子Q3は、出力端42の負極42bから第2の容量要素C2の負極への通電を断続する。さらに、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2との中間点と、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2との中間点との間は、通電路によって直接的に接続されている。この構成によると、第1の容量要素C1と出力端42とを接続する第1の給電回路45−1と、第2の容量要素C2と出力端42とを接続する第2の給電回路45−2とが提供される。
【0052】
図6は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q1がオン状態のとき、給電回路45−1が閉じられる。このとき、第1の容量要素C1が出力端42に給電する。この結果、図中に矢印で示される経路で電流ILが流れる。
【0053】
図7は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q1、Q3がオフ状態になると、給電回路45−1、45−2が開かれる。このとき、直列回路部分46は、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILを流すための回路を提供する。直列スイッチ素子D1、D2は、フリーホイール素子として機能する。
【0054】
図8は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q2がオン状態のとき、給電回路45−2が閉じられる。このとき、第2の容量要素C2が出力端42に給電する。この結果、図中に矢印で示される経路で電流ILが流れる。
【0055】
図9は、第4実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図9Aは、電源電圧Vinを示す。図9Bは、並列スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図9Cは、並列スイッチ素子Q3の駆動信号を示す。図9Dは、リアクトルLoの両端電圧VLを示す。図9Eは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【0056】
この実施形態では、時刻t1と時刻t2との間において並列スイッチ素子Q1がオン状態となる。時刻t2と時刻t5との間において並列スイッチ素子Q1がオフ状態となる。時刻t3と時刻t4との間において並列スイッチ素子Q3がオン状態となる。時刻t1と時刻t3との間において並列スイッチ素子Q3がオフ状態となる。このような並列スイッチ素子Q1、Q3のスイッチングにより、リアクトルLoの両端に現れる電圧VLと、リアクトルLoに流れる電流ILとが、図示されるように変化する。
【0057】
この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、この実施形態によると、並列スイッチ素子の数を抑制することができる。この結果、高い効率を提供することができる。
【0058】
図12は、比較例に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。図13は、比較例のスイッチ素子Qの駆動信号を示すタイムチャートである。なお、図13では、図9との対比のために、図9と同じ横軸の目盛が用いられている。
【0059】
この比較例は、分圧回路を備えない単段型の降圧型DC−DCコンバータ回路である。回路は、電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧し、負荷素子Roに電流Ioを供給する。電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧するためのデューティ比D(C)は、D(C)=Vo/Vinである。ひとつのスイッチ素子Qにおけるスイッチング損失Ploss(C)は、Ploss(C)=1/2(Vin・Io・(tr+tf)・fs)で与えられる。項(tr+tf)・fsは、1秒当たりのスイッチング時間を示し、trはスイッチ素子に流れる電流の立ち上がり時間、tfはスイッチ素子に流れる電流の立下り時間、fsはスイッチング周波数(Hz)であり、fs=1/Tpで与えられる。
【0060】
図5に戻り、図5の構成では、電源電圧Vinは、コンデンサ分圧回路43によって分圧される。直列接続された2つの容量要素C1、C2の電圧は、VC1=Vin/2、VC2=Vin/2である。電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧するためのデューティ比D(P)は、D(P)=Vo/VC1=Vo/VC2=Vo/(Vin/2)である。比較例と比較すると、D(P)=2・D(C)である。このように、この実施形態によると、スイッチ素子Q1、Q3のデューティ比が2倍になる。この結果、スイッチ素子Q1、Q2のオン期間が過剰に短くなることを回避できる。
【0061】
また、この実施形態では、並列スイッチ素子Q1、Q3が交互にオン状態になるから、一方のスイッチ素子Q1の駆動周波数は、fs/2となる。よって、ひとつのスイッチ素子Q1のスイッチング損失Ploss(P)は、Ploss(P)=1/2((Vin/2)・Io・(tr+tf)・(fs/2))で与えられる。この実施形態では2つの並列スイッチ素子Q1、Q2がスイッチング動作を実行する。これら2つの並列スイッチ素子Q1、Q2のスイッチング損失Ploss(P2)は、Ploss(P2)=((Vin/2)・Io・(tr+tf)・(fs/2))で与えられる。比較例と比較すると、Ploss(P2)=1/2・Ploss(C)である。このように、この実施形態によると、スイッチング損失が1/2に減る。この結果、スイッチング損失を抑制し、高効率のDC−DCコンバータ装置を提供することができる。
【0062】
(第5実施形態)
上記実施形態では、コンバータ回路4とリアクトルLoとコンデンサCoとによって、非絶縁型のDC−DCコンバータ装置を提供した。これに代えて、コンバータ回路4の出力を種々の負荷に供給してもよい。例えば、コンバータ回路4は、絶縁型のDC−DCコンバータ装置を提供することができる。
【0063】
図10は、本発明を適用した第5実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。負荷503は、絶縁型のDC−DCコンバータ装置を構成するための回路要素を備える。負荷503は、出力端42に接続された絶縁トランスTRと、絶縁トランスTRの出力を整流する整流器Drとを備える。出力端42は、絶縁トランスTRの一次巻線に接続されている。整流器Drは、ダイオードである。負荷503は、絶縁トランスTRの二次巻線に逆方向に並列接続されたフリーホイールダイオードDfを備えることができる。負荷503は、リアクトルLoと、コンデンサCoと、負荷素子Roとを備える。この構成では、コンバータ回路4と、絶縁トランスTRと、フリーホイールダイオードDfと、整流ダイオードDrと、リアクトルLoと、コンデンサCoとによって絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0064】
(第6実施形態)
複数の上記実施形態では、コンバータ回路4の後段にリアクトルLoとコンデンサCoとを含むフィルタ回路を設けた。これに代えて、コンバータ回路4の出力を直接に直流負荷に供給してもよい。
【0065】
図11は、本発明を適用した第6実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。負荷603は、複数の発光ダイオードLEDを含むLEDアレイである。このようなLEDアレイは、車両に搭載された種々の照明装置に利用することができる。例えば、前照灯、尾灯、信号灯、室内照明灯、メータ用表示灯、液晶表示器などのバックライトなどに利用することができる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0067】
例えば、上記実施形態では、ひとつの容量要素をひとつのコンデンサによって提供した。これに代えて、ひとつの容量要素を複数のコンデンサによって提供してもよい。
【0068】
また、第3実施形態および第4実施形態においても、抵抗分圧回路44を採用してもよい。
【0069】
例えば、制御装置5、6が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用電力供給装置、 2 電源(電池)、 3 負荷、 4 コンバータ回路、 41 入力端、 42 出力端、 42a 正極、 42b 負極、 43 コンデンサ分圧回路(分圧回路)、 44 抵抗分圧回路、 45 供給回路、 46 直列回路部分、 47 並列回路部分、 5 PWM制御回路、 6 ドライバ回路、 R1〜Rn 抵抗要素、 C1〜Cn 容量要素、 Q1、Q2f、Q2r〜Qnf、Qnr、Qn+1 並列スイッチ素子(MOS−FET)、 D1〜Dn 直列スイッチ素子(ダイオード)、 Lo リアクトル、 Co コンデンサ、 Ro 負荷素子、 TR 絶縁トランス、 Df フリーホイールダイオード、 Dr 整流器(ダイオード)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を降圧して供給する降圧型のDC−DCコンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、降圧型のDC−DCコンバータ装置を開示している。このようなDC−DCコンバータ装置では、電源から供給される電流をスイッチ素子によって断続し、リアクトルによって平滑化して負荷に供給する。しかし、電源の電圧と、負荷の電圧との間の差が大きい場合、電源の高電圧に耐える素子を用いる必要がある。
【0003】
特許文献2は、電源に対して並列接続されたコンデンサ分圧回路を備えるDC−DCコンバータ回路を開示している。このDC−DCコンバータ装置は、2つのコンデンサの接続点から、負荷としてのトランスに電流を供給する。このため、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧は、負荷であるトランスに対して交流として供給される。
【0004】
特許文献3は、電源に対して並列接続されたコンデンサ分圧回路を備えるDC−DCコンバータ回路を開示している。このDC−DCコンバータ装置は、コンデンサ分圧回路によって得られた2つの電圧が、2つのトランスに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−241071号公報
【特許文献2】特開2010−148227号公報
【特許文献3】特開平6−269171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、電源の電圧と、負荷の電圧との間の差が大きい場合、電源の高電圧に耐える素子を用いる必要がある。
【0007】
特許文献2の構成では、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧を直流として負荷に供給することができない。
【0008】
特許文献3の構成では、コンデンサ分圧回路によって分圧された電圧を、共通の負荷に供給することができないという問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直流電源の高電圧を効率的に降圧して負荷に供給することができるDC−DCコンバータ装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、スイッチ素子における損失を抑制したDC−DCコンバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、入力端(41)に供給される直流電力を降圧し出力端(42)に直流電力を供給するDC−DCコンバータ装置において、入力端(41)の間に直列接続され、入力端に供給される電圧を分圧する複数の容量要素(C1〜Cn)を含む分圧回路(43、44)と、分圧回路と出力端との間に設けられ、複数の容量要素のそれぞれが出力端(42)に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素のそれぞれと出力端とを接続する複数の給電回路(45)と、複数の給電回路に設けられ、複数の給電回路を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dn)と、出力端(42)に接続される容量要素を順に切換えるように複数のスイッチ素子を制御する制御装置(5、6)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、複数の容量要素によって入力端に供給される電圧が分圧される。分圧された電圧は、出力端に供給される。このとき、複数の容量要素のそれぞれが出力端に対して同じ極性の電力を供給する。さらに、出力端に接続される容量要素は、複数の容量要素から順に選択され、切換えられる。この結果、出力端には降圧された直流電力が供給される。この構成によると、直流電源の高電圧を効率的に降圧して負荷に供給することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、スイッチ素子は、出力端(42)の間に直列接続された複数の直列スイッチ素子(D1〜Dn)と、容量要素と直列スイッチ素子とを並列接続する経路に設けられた複数の並列スイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1)とを備えることを特徴とする。この構成によると、直列スイッチ素子と並列スイッチ素子とを含む給電回路網が構成される。これら直列スイッチ素子と並列スイッチ素子とによって、複数の給電回路のひとつが選択的に通電可能状態とされる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、複数の直列スイッチ素子は、出力端(42)の間に逆方向に直列接続された複数のダイオード(D1〜Dn)を備えることを特徴とする。この構成によると、直列スイッチ素子をダイオードによって提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、複数の並列スイッチ素子は、容量要素の正極から出力端の正極(42a)への通電を断続する正極側スイッチ素子(Q1〜Qnf)と、出力端の負極(42b)から容量要素の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子(Qnr〜Qn+1)とを備えることを特徴とする。この構成によると、ひとつの給電回路には、正極側スイッチ素子と負極側スイッチ素子とが設けられる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、分圧回路は、第1の容量要素(C1)と第2の容量要素(C2)とを備え、複数の直列スイッチ素子は、第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)とを備え、複数の並列スイッチ素子は、第1の容量要素(C1)の正極から出力端の正極(42a)への通電を断続する第1の並列スイッチ素子(Q1)と、出力端の負極(42b)から第2の容量要素(C2)の負極への通電を断続する第2の並列スイッチ素子(Q3)とを備え、複数の給電回路は、第1の容量要素と第2の容量要素との中間点と、第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)との中間点との間を接続することにより提供され、第1の容量要素と出力端とを接続する第1の給電回路と、第2の容量要素と出力端とを接続する第2の給電回路とを備えることを特徴とする。この構成によると、2段型の分圧回路を備えるDC−DCコンバータ装置が提供される。しかも、中間点と中間点とがスイッチ素子を設けることなく直接的に接続されるから、スイッチ素子の数を抑制することができる。また、スイッチ素子のスイッチングのための周波数を抑制することができるから、第1の並列スイッチ素子と第2の並列スイッチ素子とにおけるスイッチング損失を抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、分圧回路(43、44)は、入力端(41)の間に直列接続された複数の容量要素(C1〜Cn)を含むコンデンサ分圧回路(43)と、入力端(41)の間に直列接続されるとともに、複数の容量要素のそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素(R1〜Rn)を含む抵抗分圧回路(44)とを備えることを特徴とする。この構成によると、コンデンサ分圧回路の複数の容量要素における電圧の差を、抵抗分圧回路によって抑制することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、さらに、出力端に接続され、出力端に供給される直流電力を平滑化するリアクトル(Lo)およびコンデンサ(Co)を備えることを特徴とする。この構成によると、非絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0020】
請求項8に記載の発明は、さらに、出力端に接続された絶縁トランス(TR)および絶縁トランスの出力を整流する整流器(Dr)を備えることを特徴とする。この構成によると、絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0021】
請求項9に記載の発明は、さらに、出力端に接続された直流負荷を備えることを特徴とする。この構成によると、出力端から直接的に直流負荷へ直流電力を供給することができる。
【0022】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図2】第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図2Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図2Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示し、図2Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示し、図2Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示し、図2Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示し、図2Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図3】本発明を適用した第2実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図3Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図3Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示し、図3Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示し、図3Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示し、図3Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示し、図3Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図4】本発明を適用した第3実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図5】本発明を適用した第4実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図6】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図7】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図8】第4実施形態の作動状態を示す回路図である。
【図9】第4実施形態の各部の波形を示すタイムチャートであって、図9Aは、電源電圧Vinを示し、図9Bは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示し、図9Cは、スイッチ素子Q3の駆動信号を示し、図9Dは、リアクトルLoの両端電圧VLを示し、図9Eは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【図10】本発明を適用した第5実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図11】本発明を適用した第6実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図12】比較例に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。
【図13】比較例のスイッチ素子Qの駆動信号を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百の位だけが異なる参照符号を付加することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。車両用電力供給装置1は、電源2から入力端41に供給される直流電力を降圧し出力端42から負荷3に直流電力を供給するコンバータ回路4を備える。電源2は、車両に搭載された電池である。電池は、車両の走行用電動機に給電する高電圧の電池である。電池は数百ボルトの直流電力を供給する。電池は、電源電圧Vinを出力する。コンバータ回路4の入力端41には、電源電圧Vinが入力される。コンバータ回路4の出力端42には、負荷3が接続されている。負荷3は、フィルタ回路を構成するリアクトルLoおよびコンデンサCoと、負荷素子Roとを含むことができる。リアクトルLoおよびコンデンサCoは、出力端42に供給される直流電力を平滑化する。この実施形態では、DC−DCコンバータ装置は、コンバータ回路4のみにより、または、リアクトルLo、コンデンサCo、およびコンバータ回路4により提供される。コンバータ回路4は、電源電圧Vinを分圧する分圧回路と、分圧された電圧を順に出力端42に供給するチョッパ回路とを構成する。コンバータ回路4とリアクトルLoとコンデンサCoとは、降圧型のコンバータ装置を提供している。コンバータ回路4は、1段目からn段目までの多段分圧回路を提供する。図中の・・・は、同様の構成の繰り返しを示している。
【0026】
コンバータ回路4は、分圧段と、スイッチング段とを備える。分圧段は、入力端41に供給される電圧を分圧する分圧回路を備える。分圧回路は、入力端41の間に直列接続され、入力端41に供給される電圧を分圧する複数の容量要素C1〜Cnを含むことができる。容量要素C1〜Cnは、コンデンサである。分圧回路は、コンデンサ分圧回路43と、抵抗分圧回路44とを備えることができる。コンデンサ分圧回路43は、入力端41の間に直列接続された複数の容量要素C1〜Cnを含む。抵抗分圧回路44は、入力端41の間に直列接続されるとともに、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素R1〜Rnを含む。抵抗要素R1〜Rnは、抵抗器である。
【0027】
抵抗分圧回路44は、コンデンサ分圧回路43における複数の容量要素C1〜Cnの電圧VC1、VC2、〜VCnをバランスさせるために貢献する。抵抗要素R1〜Rnは、複数の容量要素C1〜Cnの容量の相違と、漏洩電流の相違とに対抗して、複数の容量要素C1〜Cnの充電電圧を互いに等しくする。複数の容量要素C1〜Cnの容量をC、容量要素C1〜Cnの数をn、抵抗要素R1〜Rnの抵抗値をR、容量要素C1〜Cnの最大サージ電圧をVrとすると、抵抗値Rは、R=(Vr−Vin/n)/C・Vinによって与えられる。
【0028】
スイッチング段は、分圧回路と出力端42との間に設けられた複数の給電回路45を備える。複数の給電回路45は、複数の給電回路45を提供する給電回路網45とも呼ぶことができる。複数の給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれと出力端42とを接続する。例えば、容量要素C1と出力端42とを接続する給電回路45−1と、容量要素C2と出力端42とを接続する給電回路45−2と、容量要素Cnと出力端42とを接続する給電回路45−nとを備える。よって、容量要素C1〜Cnの数に対応する数の給電回路45が設けられている。これら複数の給電回路45は、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれが出力端42に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の容量要素C1〜Cnと出力端42とを接続する。すなわち、給電回路45−1は、容量要素C1の正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素C1の負極を出力端42の負極42bに接続する。給電回路45−2は、容量要素C2の正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素C2の負極を出力端42の負極42bに接続する。同様に、給電回路45−nは、容量要素Cnの正極を出力端42の正極42aに接続し、容量要素Cnの負極を出力端42の負極42bに接続する。
【0029】
スイッチング段は、複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnを備える。これら複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の給電回路45に設けられている。複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の給電回路45のひとつを選択的に通電可能状態とする。
【0030】
スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnは、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnと、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1とを備える。
【0031】
複数の直列スイッチ素子D1〜Dnは、出力端42の間に直列接続されている。複数の直列スイッチ素子D1〜Dnのそれぞれは、複数の容量要素C1〜Cnのそれぞれに対応して設けられている。直列スイッチ素子D1〜Dnのそれぞれは、受動的なスイッチ素子であるダイオードによって提供されている。複数のダイオードD1〜Dnは、出力端42の間に逆方向に直列接続されている。直列スイッチ素子D1〜Dnは、選択されたひとつの容量要素の正極から出力端42の正極42aへの通電と、出力端42の負極42bから選択されたひとつの容量要素の負極への通電とを許容する。直列スイッチ素子D1〜Dnは、選択されたひとつの容量要素の正極と負極との間の短絡を阻止する。
【0032】
複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、容量要素C1〜Cnと直列スイッチ素子D1〜Dnとを並列接続する経路に設けられている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnと、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnとを、1対1に対応付けている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnと複数の直列スイッチ素子D1〜Dnとを含むはしご状の回路の横リンク部分に設けられている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1のそれぞれは、能動的なスイッチ素子であるMOS−FETによって提供されている。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、複数の容量要素C1〜Cnからいずれかひとつを選択する。複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1は、正極側スイッチ素子Q1〜Qnfと、負極側スイッチ素子Qnr〜Qn+1とを備える。正極側スイッチ素子Q1〜Qnfは、容量要素C1〜Cnの正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。負極側スイッチ素子Qnr〜Qn+1は、出力端42の負極42bから容量要素C1〜Cnの負極への通電を断続する。
【0033】
容量要素C1の正極と、直列スイッチ素子D1のカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q1が設けられている。並列スイッチ素子Q1は、容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Q1である。容量要素C1の負極と直列スイッチ素子D1のアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q2f、Q2rが設けられている。並列スイッチ素子Q2rは、出力端42の負極42bから容量要素C1の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Q2rである。並列スイッチ素子Q2fと並列スイッチ素子Q2rは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Q2を提供している。
【0034】
容量要素C2の正極と直列スイッチ素子D2のカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q2f、Q2rが設けられている。並列スイッチ素子Q2fは、容量要素C2の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Q2fである。容量要素C2の負極と直列スイッチ素子D2のアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Q3f、Q3rが設けられている。並列スイッチ素子Q3rは、出力端42の負極42bから容量要素C3の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Q3rである。並列スイッチ素子Q3fと並列スイッチ素子Q3rは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Q3を提供している。
【0035】
容量要素Cnの正極と直列スイッチ素子Dnのカソードとを接続する経路に並列スイッチ素子Qnf、Qnrが設けられている。並列スイッチ素子Qnfは、容量要素Cnの正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する正極側スイッチ素子Qnfである。並列スイッチ素子Qnfと並列スイッチ素子Qnrは、双方向通電を断続するためのスイッチ素子Qnを提供している。容量要素Cnの負極と直列スイッチ素子Dnのアノードとを接続する経路に並列スイッチ素子Qn+1が設けられている。並列スイッチ素子Qn+1は、出力端42の負極42bから容量要素Cnの負極への通電を断続する負極側スイッチ素子Qn+1である。
【0036】
入力端41の正極41aと出力端42の正極42aとの間に設けられた正極側スイッチ素子Q1は、正極41aから負極42bへの通電を断続する。出力端42の負極42bと入力端41の負極41bとの間に設けられた負極側スイッチ素子Qnは、負極42bから正極41aへの通電を断続する。直列接続された2つの容量要素の間の中間電位点、または接続点は、中間点と呼ぶことができる。それら2つの容量要素に対応する2つの直列スイッチ素子の間の中間電位点、または接続点は、中間点と呼ぶことができる。これら対応する2つの中間点の間の経路に設けられた正極側スイッチ素子と負極側スイッチ素子とは、上記中間点の間の通電を断続するスイッチ素子を提供している。例えば、容量要素C1と容量要素C2との間の中間点と、直列スイッチ素子D1と直列スイッチ素子D2との間の中間点との間には、正極側スイッチ素子Q2fと負極側スイッチ素子Q2rが設けられている。
【0037】
複数の給電回路45は、複数の直列スイッチ素子D1〜Dnを含む直列回路部分46と、複数の容量要素C1〜Cnと直列スイッチ素子D1〜Dnを並列に接続する並列回路部分47とを提供している。並列回路部分47は、複数の横リンク部分を含む。これら横リング部分のそれぞれに、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1が設けられている。
【0038】
スイッチング段は、出力端42に接続される容量要素C1〜Cnを順に切換えるように複数のスイッチ素子Q1、Q2f、Q2r〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dnを制御する制御装置5、6を備える。制御装置5、6は、容量要素C1〜Cnを、予め定められた順序に従って、出力端42に接続する。言い換えると、制御装置5、6は、複数の容量要素C1〜Cnから、予め定められた順序に従ってひとつの容量要素を選択し、選択された容量要素だけを出力端42に接続する。制御装置5、6は、出力電圧Voが目標電圧になるようにスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号のデューティ比を調節するPWM制御回路(PWM)5を備える。制御装置5、6は、PWM制御回路5からの指令に応じて、スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号、すなわちゲート−ソース間電圧を与えるドライバ回路(DRV)6を備える。
【0039】
図2は、第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図2Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図2Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示す。図2Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示す。図2Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示す。図2Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示す。図2Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。図中の横軸は時刻tを示す。
【0040】
スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1の駆動信号は、周期Tp、オン期間Ton、オフ期間Toffによって特徴付けられる。図示の例においては、スイッチ素子Q1は、時刻t1と時刻t2との間にオン状態になる。スイッチ素子Q2f、Q2rは、時刻t1と時刻t2との間、および時刻t3と時刻t4との間にオン状態になる。スイッチ素子Q3f、Q3rは、時刻t3と時刻t4との間、および時刻t5と時刻t6との間にオン状態になる。スイッチ素子Qnf、Qnrは、時刻t7と時刻t8との間、および時刻t9と時刻t10との間にオン状態になる。スイッチ素子Qn+1は、時刻t9と時刻t10との間にオン状態になる。
【0041】
時刻t1と時刻t2との間においては、第1の給電回路45−1に設けられたスイッチ素子Q1、Q2f、Q2rがオン状態になるから、容量要素C1が出力端42に接続される。これにより、容量要素C1の電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t2と時刻t3との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t1と時刻t3との間は、第1ステージST1と呼ぶことができる。この第1ステージST1においては、容量要素C1に蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0042】
時刻t3と時刻t4との間においては、第2の給電回路45−2に設けられたスイッチ素子Q2f、Q2r、Q3f、Q3rがオン状態になるから、容量要素C2が出力端42に接続される。これにより、容量要素C2の電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t4と時刻t5との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t3と時刻t5との間は、第2ステージST2と呼ぶことができる。この第2ステージST2においては、容量要素C2に蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0043】
この後、容量要素C3、C4・・・Cnに関して、同様の作動が提供される。最終段階においては、以下のような作動が提供される。時刻t9と時刻t10との間においては、第n番目の給電回路45−nに設けられたスイッチ素子Qnf、Qnr、Qn+1がオン状態になるから、容量要素Cnが出力端42に接続される。これにより、容量要素Cnの電圧が出力端42に供給される。この結果、リアクトルLoに流れる電流ILが徐々に上昇する。時刻t10と時刻t11との間においては、すべてのスイッチ素子がオフ状態になるから、どの容量要素C1〜Cnも出力端42には接続されない。この期間においては、直列スイッチ素子D1〜Dnは、フリーホイールダイオードとして機能することによりフリーホイール回路を提供する。したがって、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILは徐々に減少する。時刻t9と時刻t11との間は、第nステージSTnと呼ぶことができる。この第nステージSTnにおいては、容量要素Cnに蓄えられたエネルギにより負荷3へ直流電力が供給される。
【0044】
この実施形態によると、電源電圧Vinがコンデンサ分圧回路43によって1/nに分圧される。そして分圧された電圧は、順に、同じ極性となるように出力端42に供給される。また、複数の並列スイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1がデューティ駆動されることにより、分圧された電圧がさらに降圧される。この結果、高い電源電圧Vinを降圧して低い出力電圧Voが供給される。また、コンデンサ分圧回路43が設けられるため、耐圧が低い素子によって回路を構成することができる。
【0045】
(第2実施形態)
上記実施形態に代えて、複数のスイッチ素子Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1を図3に図示されるシーケンスに従って駆動してもよい。先行する実施形態では、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路46の中間点とを接続するスイッチ素子、例えばQnfとQnrは、リアクトルLoへの通電期間のみオン状態となっている。これに代えて、この実施形態では、制御装置5、6は、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路46の中間点とを接続するスイッチ素子がリアクトルLoへの通電期間の2回分に渡ってオン状態を維持するように駆動信号を出力する。
【0046】
図3は、第1実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図3Aは、スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図3Bは、スイッチ素子Q2f、Q2rの駆動信号を示す。図3Cは、スイッチ素子Q3f、Q3rの駆動信号を示す。図3Dは、スイッチ素子Qnf、Qnrの駆動信号を示す。図3Eは、スイッチ素子Qn+1の駆動信号を示す。図3Fは、リアクトルLoの電流ILを示す。図中の横軸は時刻tを示す。
【0047】
この実施形態では、スイッチ素子Q2f、Q2rは、時刻t1と時刻t4との間に渡ってオン状態になる。また、スイッチ素子Q3f、Q3rは、時刻t3と時刻t6との間に渡ってオン状態になる。また、スイッチ素子Qnf、Qnrは、時刻t7と時刻t10との間に渡ってオン状態になる。この実施形態においても、第1実施形態と同様に、電流ILが増減する。この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、この実施形態によると、スイッチ素子Q2f、Q2r〜Qnf、Qnrのスイッチング回数を抑制することができる。
【0048】
(第3実施形態)
上記実施形態では、n段のコンバータ回路4を説明した。これに代えて、この実施形態では、2段のコンバータ回路304を採用する。
【0049】
図4は、本発明を適用した第3実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。この実施形態では、分圧回路は、コンデンサ分圧回路43のみを備える。コンデンサ分圧回路43は、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2とを備える。直列回路部分46は、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2とを備える。並列回路部分47は、複数の並列スイッチ素子Q1、Q2f、Q2r、Q3を備える。第1の並列スイッチ素子Q1は、第1の容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。この構成では、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2との間に中間点がある。また、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2との間に中間点がある。第2の並列スイッチ素子Q2f、Q2rは、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路部分46の中間点との間の通電を断続する。第3の並列スイッチ素子Q3は、出力端42の負極42bから第2の容量要素C2の負極への通電を断続する。この構成によると、第1の容量要素C1と出力端42とを接続する第1の給電回路45−1と、第2の容量要素C2と出力端42とを接続する第2の給電回路45−2とが提供される。この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0050】
(第4実施形態)
上記実施形態では、コンデンサ分圧回路43の中間点と直列回路部分46の中間点との間にスイッチ素子を設けた。これに代えて、この実施形態では、中間点と中間点との間を直結したコンバータ回路404を採用する。
【0051】
図5は、本発明を適用した第4実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。この実施形態では、並列回路部分47は、複数の並列スイッチ素子Q1、Q3を備える。第1の並列スイッチ素子Q1は、第1の容量要素C1の正極から出力端42の正極42aへの通電を断続する。第2の並列スイッチ素子Q3は、出力端42の負極42bから第2の容量要素C2の負極への通電を断続する。さらに、第1の容量要素C1と第2の容量要素C2との中間点と、第1の直列スイッチ素子D1と第2の直列スイッチ素子D2との中間点との間は、通電路によって直接的に接続されている。この構成によると、第1の容量要素C1と出力端42とを接続する第1の給電回路45−1と、第2の容量要素C2と出力端42とを接続する第2の給電回路45−2とが提供される。
【0052】
図6は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q1がオン状態のとき、給電回路45−1が閉じられる。このとき、第1の容量要素C1が出力端42に給電する。この結果、図中に矢印で示される経路で電流ILが流れる。
【0053】
図7は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q1、Q3がオフ状態になると、給電回路45−1、45−2が開かれる。このとき、直列回路部分46は、リアクトルLoに蓄えられたエネルギにより電流ILを流すための回路を提供する。直列スイッチ素子D1、D2は、フリーホイール素子として機能する。
【0054】
図8は、第4実施形態の作動状態を示す回路図である。並列スイッチ素子Q2がオン状態のとき、給電回路45−2が閉じられる。このとき、第2の容量要素C2が出力端42に給電する。この結果、図中に矢印で示される経路で電流ILが流れる。
【0055】
図9は、第4実施形態の各部の波形を示すタイムチャートである。図9Aは、電源電圧Vinを示す。図9Bは、並列スイッチ素子Q1の駆動信号を示す。図9Cは、並列スイッチ素子Q3の駆動信号を示す。図9Dは、リアクトルLoの両端電圧VLを示す。図9Eは、リアクトルLoの電流ILを示す。
【0056】
この実施形態では、時刻t1と時刻t2との間において並列スイッチ素子Q1がオン状態となる。時刻t2と時刻t5との間において並列スイッチ素子Q1がオフ状態となる。時刻t3と時刻t4との間において並列スイッチ素子Q3がオン状態となる。時刻t1と時刻t3との間において並列スイッチ素子Q3がオフ状態となる。このような並列スイッチ素子Q1、Q3のスイッチングにより、リアクトルLoの両端に現れる電圧VLと、リアクトルLoに流れる電流ILとが、図示されるように変化する。
【0057】
この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、この実施形態によると、並列スイッチ素子の数を抑制することができる。この結果、高い効率を提供することができる。
【0058】
図12は、比較例に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置を示す回路図である。図13は、比較例のスイッチ素子Qの駆動信号を示すタイムチャートである。なお、図13では、図9との対比のために、図9と同じ横軸の目盛が用いられている。
【0059】
この比較例は、分圧回路を備えない単段型の降圧型DC−DCコンバータ回路である。回路は、電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧し、負荷素子Roに電流Ioを供給する。電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧するためのデューティ比D(C)は、D(C)=Vo/Vinである。ひとつのスイッチ素子Qにおけるスイッチング損失Ploss(C)は、Ploss(C)=1/2(Vin・Io・(tr+tf)・fs)で与えられる。項(tr+tf)・fsは、1秒当たりのスイッチング時間を示し、trはスイッチ素子に流れる電流の立ち上がり時間、tfはスイッチ素子に流れる電流の立下り時間、fsはスイッチング周波数(Hz)であり、fs=1/Tpで与えられる。
【0060】
図5に戻り、図5の構成では、電源電圧Vinは、コンデンサ分圧回路43によって分圧される。直列接続された2つの容量要素C1、C2の電圧は、VC1=Vin/2、VC2=Vin/2である。電源電圧Vinを出力電圧Voに降圧するためのデューティ比D(P)は、D(P)=Vo/VC1=Vo/VC2=Vo/(Vin/2)である。比較例と比較すると、D(P)=2・D(C)である。このように、この実施形態によると、スイッチ素子Q1、Q3のデューティ比が2倍になる。この結果、スイッチ素子Q1、Q2のオン期間が過剰に短くなることを回避できる。
【0061】
また、この実施形態では、並列スイッチ素子Q1、Q3が交互にオン状態になるから、一方のスイッチ素子Q1の駆動周波数は、fs/2となる。よって、ひとつのスイッチ素子Q1のスイッチング損失Ploss(P)は、Ploss(P)=1/2((Vin/2)・Io・(tr+tf)・(fs/2))で与えられる。この実施形態では2つの並列スイッチ素子Q1、Q2がスイッチング動作を実行する。これら2つの並列スイッチ素子Q1、Q2のスイッチング損失Ploss(P2)は、Ploss(P2)=((Vin/2)・Io・(tr+tf)・(fs/2))で与えられる。比較例と比較すると、Ploss(P2)=1/2・Ploss(C)である。このように、この実施形態によると、スイッチング損失が1/2に減る。この結果、スイッチング損失を抑制し、高効率のDC−DCコンバータ装置を提供することができる。
【0062】
(第5実施形態)
上記実施形態では、コンバータ回路4とリアクトルLoとコンデンサCoとによって、非絶縁型のDC−DCコンバータ装置を提供した。これに代えて、コンバータ回路4の出力を種々の負荷に供給してもよい。例えば、コンバータ回路4は、絶縁型のDC−DCコンバータ装置を提供することができる。
【0063】
図10は、本発明を適用した第5実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。負荷503は、絶縁型のDC−DCコンバータ装置を構成するための回路要素を備える。負荷503は、出力端42に接続された絶縁トランスTRと、絶縁トランスTRの出力を整流する整流器Drとを備える。出力端42は、絶縁トランスTRの一次巻線に接続されている。整流器Drは、ダイオードである。負荷503は、絶縁トランスTRの二次巻線に逆方向に並列接続されたフリーホイールダイオードDfを備えることができる。負荷503は、リアクトルLoと、コンデンサCoと、負荷素子Roとを備える。この構成では、コンバータ回路4と、絶縁トランスTRと、フリーホイールダイオードDfと、整流ダイオードDrと、リアクトルLoと、コンデンサCoとによって絶縁型のDC−DCコンバータ装置が提供される。
【0064】
(第6実施形態)
複数の上記実施形態では、コンバータ回路4の後段にリアクトルLoとコンデンサCoとを含むフィルタ回路を設けた。これに代えて、コンバータ回路4の出力を直接に直流負荷に供給してもよい。
【0065】
図11は、本発明を適用した第6実施形態に係るDC−DCコンバータ装置を含む車両用電力供給装置1を示す回路図である。負荷603は、複数の発光ダイオードLEDを含むLEDアレイである。このようなLEDアレイは、車両に搭載された種々の照明装置に利用することができる。例えば、前照灯、尾灯、信号灯、室内照明灯、メータ用表示灯、液晶表示器などのバックライトなどに利用することができる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0067】
例えば、上記実施形態では、ひとつの容量要素をひとつのコンデンサによって提供した。これに代えて、ひとつの容量要素を複数のコンデンサによって提供してもよい。
【0068】
また、第3実施形態および第4実施形態においても、抵抗分圧回路44を採用してもよい。
【0069】
例えば、制御装置5、6が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用電力供給装置、 2 電源(電池)、 3 負荷、 4 コンバータ回路、 41 入力端、 42 出力端、 42a 正極、 42b 負極、 43 コンデンサ分圧回路(分圧回路)、 44 抵抗分圧回路、 45 供給回路、 46 直列回路部分、 47 並列回路部分、 5 PWM制御回路、 6 ドライバ回路、 R1〜Rn 抵抗要素、 C1〜Cn 容量要素、 Q1、Q2f、Q2r〜Qnf、Qnr、Qn+1 並列スイッチ素子(MOS−FET)、 D1〜Dn 直列スイッチ素子(ダイオード)、 Lo リアクトル、 Co コンデンサ、 Ro 負荷素子、 TR 絶縁トランス、 Df フリーホイールダイオード、 Dr 整流器(ダイオード)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端(41)に供給される直流電力を降圧し出力端(42)に直流電力を供給するDC−DCコンバータ装置において、
前記入力端(41)の間に直列接続され、前記入力端に供給される電圧を分圧する複数の容量要素(C1〜Cn)を含む分圧回路(43、44)と、
前記分圧回路と前記出力端との間に設けられ、複数の前記容量要素のそれぞれが前記出力端(42)に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の前記容量要素のそれぞれと前記出力端とを接続する複数の給電回路(45)と、
複数の前記給電回路に設けられ、複数の前記給電回路を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dn)と、
前記出力端(42)に接続される前記容量要素を順に切換えるように複数の前記スイッチ素子を制御する制御装置(5、6)とを備えることを特徴とするDC−DCコンバータ装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子は、
前記出力端(42)の間に直列接続された複数の直列スイッチ素子(D1〜Dn)と、
前記容量要素と前記直列スイッチ素子とを並列接続する経路に設けられた複数の並列スイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項3】
複数の前記直列スイッチ素子は、
前記出力端(42)の間に逆方向に直列接続された複数のダイオード(D1〜Dn)を備えることを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項4】
複数の前記並列スイッチ素子は、
前記容量要素の正極から前記出力端の正極(42a)への通電を断続する正極側スイッチ素子(Q1〜Qnf)と、
前記出力端の負極(42b)から前記容量要素の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子(Qnr〜Qn+1)とを備えることを特徴とする請求項3に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項5】
前記分圧回路は、
第1の容量要素(C1)と第2の容量要素(C2)とを備え、
複数の前記直列スイッチ素子は、
第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)とを備え、
複数の前記並列スイッチ素子は、
前記第1の容量要素(C1)の正極から前記出力端の正極(42a)への通電を断続する第1の並列スイッチ素子(Q1)と、
前記出力端の負極(42b)から前記第2の容量要素(C2)の負極への通電を断続する第2の並列スイッチ素子(Q3)とを備え、
複数の前記給電回路は、
前記第1の容量要素と前記第2の容量要素との中間点と、前記第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)との中間点との間を接続することにより提供され、前記第1の容量要素と前記出力端とを接続する第1の給電回路と、前記第2の容量要素と前記出力端とを接続する第2の給電回路とを備えることを特徴とする請求項3に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項6】
前記分圧回路(43、44)は、
前記入力端(41)の間に直列接続された複数の容量要素(C1〜Cn)を含むコンデンサ分圧回路(43)と、
前記入力端(41)の間に直列接続されるとともに、複数の前記容量要素のそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素(R1〜Rn)を含む抵抗分圧回路(44)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項7】
さらに、前記出力端に接続され、前記出力端に供給される直流電力を平滑化するリアクトル(Lo)およびコンデンサ(Co)を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項8】
さらに、前記出力端に接続された絶縁トランス(TR)および前記絶縁トランスの出力を整流する整流器(Dr)を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項9】
さらに、前記出力端に接続された直流負荷を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項1】
入力端(41)に供給される直流電力を降圧し出力端(42)に直流電力を供給するDC−DCコンバータ装置において、
前記入力端(41)の間に直列接続され、前記入力端に供給される電圧を分圧する複数の容量要素(C1〜Cn)を含む分圧回路(43、44)と、
前記分圧回路と前記出力端との間に設けられ、複数の前記容量要素のそれぞれが前記出力端(42)に対して同じ極性の電力を供給するように、複数の前記容量要素のそれぞれと前記出力端とを接続する複数の給電回路(45)と、
複数の前記給電回路に設けられ、複数の前記給電回路を選択的に通電可能状態とする複数のスイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1、D1〜Dn)と、
前記出力端(42)に接続される前記容量要素を順に切換えるように複数の前記スイッチ素子を制御する制御装置(5、6)とを備えることを特徴とするDC−DCコンバータ装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子は、
前記出力端(42)の間に直列接続された複数の直列スイッチ素子(D1〜Dn)と、
前記容量要素と前記直列スイッチ素子とを並列接続する経路に設けられた複数の並列スイッチ素子(Q1〜Qnf、Qnr、Qn+1)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項3】
複数の前記直列スイッチ素子は、
前記出力端(42)の間に逆方向に直列接続された複数のダイオード(D1〜Dn)を備えることを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項4】
複数の前記並列スイッチ素子は、
前記容量要素の正極から前記出力端の正極(42a)への通電を断続する正極側スイッチ素子(Q1〜Qnf)と、
前記出力端の負極(42b)から前記容量要素の負極への通電を断続する負極側スイッチ素子(Qnr〜Qn+1)とを備えることを特徴とする請求項3に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項5】
前記分圧回路は、
第1の容量要素(C1)と第2の容量要素(C2)とを備え、
複数の前記直列スイッチ素子は、
第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)とを備え、
複数の前記並列スイッチ素子は、
前記第1の容量要素(C1)の正極から前記出力端の正極(42a)への通電を断続する第1の並列スイッチ素子(Q1)と、
前記出力端の負極(42b)から前記第2の容量要素(C2)の負極への通電を断続する第2の並列スイッチ素子(Q3)とを備え、
複数の前記給電回路は、
前記第1の容量要素と前記第2の容量要素との中間点と、前記第1の直列スイッチ素子(D1)と第2の直列スイッチ素子(D2)との中間点との間を接続することにより提供され、前記第1の容量要素と前記出力端とを接続する第1の給電回路と、前記第2の容量要素と前記出力端とを接続する第2の給電回路とを備えることを特徴とする請求項3に記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項6】
前記分圧回路(43、44)は、
前記入力端(41)の間に直列接続された複数の容量要素(C1〜Cn)を含むコンデンサ分圧回路(43)と、
前記入力端(41)の間に直列接続されるとともに、複数の前記容量要素のそれぞれに並列接続された複数の抵抗要素(R1〜Rn)を含む抵抗分圧回路(44)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項7】
さらに、前記出力端に接続され、前記出力端に供給される直流電力を平滑化するリアクトル(Lo)およびコンデンサ(Co)を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項8】
さらに、前記出力端に接続された絶縁トランス(TR)および前記絶縁トランスの出力を整流する整流器(Dr)を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【請求項9】
さらに、前記出力端に接続された直流負荷を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のDC−DCコンバータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−253942(P2012−253942A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125522(P2011−125522)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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