説明

DNAメチル化の阻害剤

【課題】ゼブラリン(Zebularine)および関連化合物を用いた、DNAメチル化の阻害法および高メチル化関連疾患の治療または改善法の提供。
【解決手段】ゼブラリンは低メチル化活性を有しており、インビボおよびインビボでDNAメチル化を阻害、逆転、および/または低減するために用いることができる。ゼブラリンなどの2-ピリミジノン誘導体の適用を通じてメチル化関連状態を治療する方法であり、そのような誘導体を含んだ薬学的組成物を含む組成物。DNAメチル化を阻害する際に用いるキットであって、一定量の2-ピリミジノン誘導体を含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2001年7月31日出願の米国仮出願第60/309/242号および2001年8月10日出願の米国仮出願第60/311/435号の恩典を主張し、これらはいずれも参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府支援の言明
米国政府は、国立衛生研究所により授与された助成金(助成番号GM35690およびCA82422を含む)により、ならびに国立衛生研究所による少なくとも一人の発明者の雇用により、本出願における一定の権利を有すると考えられる。
【0003】
開示の分野
本開示は、化合物ゼブラリン(Zebularine)および関連化合物を用いた、DNAメチル化の阻害法および高メチル化関連疾患の治療または改善法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
DNAメチル基転移酵素(DNAメチラーゼとも呼ばれる)は共通のメチル供与体であるS-アデノシルメチオニンからDNA分子の特定の部位にメチル基を転移させる。いくつかの生物機能はDNAにおけるメチル化塩基によるものとされている。最も確立された生物機能は、同族の制限酵素による消化からのDNAの保護である。制限改変現象は細菌でのみ観察されている。哺乳類細胞は少なくともいくつかのメチル基転移酵素を有している:これらの一つ(DNMT1)はDNA上のグアニンの5'(上流)隣のシトシン残基(ジヌクレオチドCpGを形成している)を優先的にメチル化する。このメチル化は遺伝子の活性、細胞分化、腫瘍形成、X-染色体不活化、ゲノムインプリンティング、および他の主要な生体プロセスにおいて役割を果たすということが、いくつかの一連の証拠によって明らかにされている(RazinおよびRiggs編、DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance、Springer-Verlag、ニューヨーク、1984(非特許文献1))。
【0005】
ほとんどの遺伝子配列が多くのメチル化シトシンを含む場合、これらは発現される可能性が低い(Willson、Trends Genet. 7:107-109, 1991(非特許文献2))。特に、遺伝子のプロモーターの一部位がメチル化されている場合、遺伝子サイレンシングが起こる可能性がある。したがって、母系遺伝性の遺伝子コピーが父系遺伝性のコピーよりも高度にメチル化されている場合、父系遺伝性コピーがより効果的に発現されると考えられる。同様に、遺伝子が組織特異的な様式で発現される場合、その遺伝子はそれが活性である組織ではメチル化されていないが、それが不活性である組織では高度にメチル化されていることが多いと思われる。
【0006】
不正なメチル化は、ベックウィズ-ヴィーデマン症候群やプラダー-ウィリ症候群などのいくつかの疾患の原因であり(Henryら、Nature 351:665, 1991(非特許文献3);Nichollsら、Nature 342:281, 1989(非特許文献4))、同様に多くの癌の寄与因子である(LairdおよびJaenisch、Hum. Mo. Genet. 3 Spec. No.:1487-1495, 1994(非特許文献5))と考えられている。腫瘍抑制遺伝子の発現は、正常な非メチル化5'CpG島の新規DNAメチル化によって消失することもある(Issaら、Nature Genet., 7:536, 1994(非特許文献6);Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 91:9700, 1994(非特許文献7);Merloら、Nature Med., 1:686, 1995(非特許文献8);Hermanら、Cancer Res., 56:722, 1996(非特許文献9);Graffら、Cancer Res., 55:5195, 1995(非特許文献10);Hermanら、Cancer Res., 55:4525, 1995(非特許文献11))。そのような高メチル化は今では、3p上の腎癌腫瘍抑制遺伝子であるVHL(Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:9700-9704, 1994(非特許文献7))、6q上のエストロゲン受容体遺伝子(Ottavianoら、Cancer Res., 54:2552, 1994(非特許文献12))および11p上のH19遺伝子(Steenmanら、Nature Genetics, 7:433, 1994(非特許文献13))の発現の欠如に関係するとされている。同様に、CpG島は複数の一般的な型のヒト癌において異常にメチル化されている17pl 3.3で同定された(Makosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1929, 1992(非特許文献14);Makosら、Cancer Res., 53:2715, 1993(非特許文献15);Makosら、Cancer Res. 53:2719, 1993(非特許文献16))。この高メチル化は脳、結腸、および腎癌における17p欠失およびp53突然変異のタイミングおよび頻度と一致している。メチル化の多くの影響が、例えば公開されている国際特許出願第PCT/US00/02530号(国際公開第2000/051639号:特許文献1)に詳細に論じられている。
【0007】
5-フルオロデオキシシチジン(FdCyd)および5-アザシチジン(5-アザ-CR)はいずれも、DNAのメチル化を阻害し、その結果遺伝子発現および細胞分化に影響をおよぼすことが明らかにされている(JonesおよびTaylor、Cell 20:85-93, 1980(非特許文献17);Ostermanら、Biochemistry 27:5204-5210, 1988(非特許文献18))。しかし、これらの化合物はインビボで不安定であるか、または毒性代謝物を生成する(Santiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:6993-6997, 1984(非特許文献19);Newmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6419-6423, 1982(非特許文献20))。したがって、有効で、安定、かつ低毒性のDNAメチル化阻害剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2000/051639号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】RazinおよびRiggs編、DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance、Springer-Verlag、ニューヨーク、1984
【非特許文献2】Willson、Trends Genet. 7:107-109, 1991
【非特許文献3】Henryら、Nature 351:665, 1991
【非特許文献4】Nichollsら、Nature 342:281, 1989
【非特許文献5】LairdおよびJaenisch、Hum. Mo. Genet. 3 Spec. No.:1487-1495, 1994
【非特許文献6】Issaら、Nature Genet., 7:536, 1994
【非特許文献7】Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 91:9700, 1994
【非特許文献8】Merloら、Nature Med., 1:686, 1995
【非特許文献9】Hermanら、Cancer Res., 56:722, 1996
【非特許文献10】Graffら、Cancer Res., 55:5195, 1995
【非特許文献11】Hermanら、Cancer Res., 55:4525, 1995
【非特許文献12】Ottavianoら、Cancer Res., 54:2552, 1994
【非特許文献13】Steenmanら、Nature Genetics, 7:433, 1994
【非特許文献14】Makosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1929, 1992
【非特許文献15】Makosら、Cancer Res., 53:2715, 1993
【非特許文献16】Makosら、Cancer Res. 53:2719, 1993
【非特許文献17】JonesおよびTaylor、Cell 20:85-93, 1980
【非特許文献18】Ostermanら、Biochemistry 27:5204-5210, 1988
【非特許文献19】Santiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:6993-6997, 1984
【非特許文献20】Newmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6419-6423, 1982
【発明の概要】
【0010】
ゼブラリンはメチル化の強力な阻害剤であり、サイレンシングされた腫瘍抑制遺伝子を特異的に再活性化しうることが今や明らかにされている。ゼブラリンはメチル化を阻害し、それによって特定の疾患(高メチル化に関連づけられている癌を含む)と戦い、植物、真菌、および動物のメチル化によりサイレンシングされた遺伝子を活性化するために用いることができる。ゼブラリンは5-アザシチジンよりも実質的に安定で、経口投与することができ、このことは臨床において非常に有益である。
【0011】
本開示は、例えばDNAメチル化を低減または逆転するため、メチル化関連疾患、状態および障害を阻害、改善、逆転、減少または軽減するため、ならびに腫瘍の腫瘍形成状態を改善または低減するための、ゼブラリン(ならびに誘導体、類縁体、および模倣物質)の低メチル化活性の使用法を提供する。本開示は、これらの方法で用いるためのキットをさらに提供する。ゼブラリン、2'-デオキシ-ゼブラリンおよびその誘導体を含むDNAおよびRNAオリゴヌクレオチド;ならびにゼブラリンおよびゼブラリン誘導体を含む薬学的製剤も提供する。
【0012】
前述および他の特徴および利点は、下記のいくつかの態様の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読むことによってさらに明白になると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シチジン、ならびにシチジン類縁体である5-アザシチジンおよびゼブラリンの化学構造を示す図である。
【図2】5-アザシチジンおよび5-アザ-2'デオキシシチジンの代謝の概略を示す図である。
【図3】ゼブラリンおよび2'デオキシ-ゼブラリンの提唱される代謝の概略を示す図である。
【図4】アカパンカビ(N. crassa)由来DNAのサザンブロットを示す図であり、amRIPおよびψ63配列のDNAメチル化に対する5-アザシチジン(5-AC)、トリコスタチンA(TSA)およびゼブラリンの効果を示している。DNAをDpn II(D)またはSau3AI(S)で消化し、ゲル電気泳動で分画し、膜に転写し、am(図4A)またはψ63(図4B)配列について調べた。Dpn IIおよびSau3AIはいずれも配列GATCを認識するが、Sau3AIはC残基がメチル化されている場合には切断することができない。したがって、SレーンとDレーンとの間の違いがDNAメチル化を示している。 図の上の傾斜記号は薬物濃度の上昇を表している。薬物濃度は5-ACは12および24μM;TSAは0.33および3.3μM;ゼブラリンは20、39、78、160および310μMであった。選択したサイズ標準(kb)の位置を示している。
【図5】一連のプレートアッセイ法の写真を示す図であり、アカパンカビのサイレンシングされたhph遺伝子のゼブラリンによる再活性化を示している。アカパンカビN644株は、シトシンのメチル化によってサイレンシングされた大腸菌hph遺伝子の単一のコピーを有する。活性hph遺伝子はハイグロマイシン耐性を与える。 処理は各プレートの上に示している。記載の化合物を各プレートの中央にあるペーパーディスクに適用した。「ハイグロマイシンなし」のプレートは例外として、すべてのプレートを32℃で24時間培養後、5mgのハイグロマイシンBを0.7%の寒天5mlに加えてこれを上層とした。次いでプレートを同じ温度でさらに2日間インキュベートし、写真撮影した。
【図6】一連のプレートアッセイ法の写真を示す図であり、アカパンカビに対するゼブラリンの増殖阻害効果はdim-2DNAメチル基転移酵素に依存しないことを示している。 dim-2に突然変異を有する菌株は、すべての検出可能なメチル基転移酵素活性を欠失している。dim-2菌株(N613)および野生型対照菌株(N242)を高濃度のゼブラリンで攻撃した。ゼブラリンの濃度はプレートの上に示しており、図5と同様にペーパーディスクに適用した。これらのプレートにはハイグロマイシンは適用しなかった。
【図7】表示された処理後のマウス10T1/2細胞における筋肉形成の一連の4つの位相差顕微鏡写真を示す図である。
【図8】RT-PCR分析を示す図であり、表示された処理にかけたヒトT24細胞で産生されたp16 mRNAのレベルを示している。並行GAPDH mRNAレベルも示している。GAPDHの転写はメチル化によって基本的に影響を受けない。
【図9】Ms-SNuPEメチル化試験に用いたp16(図9A)およびp3(図9B)遺伝子座の概略を示す図である。
【図10】表示された処理に対するp16プロモーターおよびエキソン2のT24細胞におけるメチル化状態(図10A)、ならびに対応する毒性レベル(図10B)を示す二つの棒グラフである。薬物処理は各棒の下に示している。
【図11】T24細胞のゼブラリンによる長期持続的処理の効果を解析した図である。図11AはRT-PCR分析で、表示された時点で50μMまたは100μMいずれかのゼブラリンで処理したT24細胞におけるp16遺伝子の発現レベルを示している。二つのフィルム曝露時間(7および41時間)を示している。図8と同様、比較のために並行GAPDHレベルを示している。図11Bは100μMゼブラリンで表示時間処理したT24細胞におけるp16プロモーターおよびp16エキソン2メチル化のレベルの定量的な概略を示す図である。100μMゼブラリンによる処理後に観察された最大の脱メチル化(〜96%から〜47%)は第14日に起こった。
【図12】ゼブラリンで処理した細胞および未処理細胞について、DNMT1およびDNMT3b3のレベルを検出するウェスタンブロット分析を示す図である。
【図13】ゼブラリンで処理したBALB/c nu/nuマウスについての時間に対する相対腫瘍体積のグラフであり、処理群では腫瘍増殖が抑制されたことを示している。
【図14】ゼブラリンで処理したBALB/c nu/nuマウスについての時間に対する体重のグラフであり、すべての処理群で体重減少は非常に小さかったことを示している。
【図15】表示の薬物によるT24細胞のp16遺伝子発現の再活性化を示す図である。
【図16】表示された群についてのp16プロモーターメチル化の相対レベルを示す棒グラフである。
【図17】6時間のインキュベーション期間(10μM、1μCi)後のT24細胞におけるゼブラリン代謝物(pmol/106細胞)の用量依存的増加を示す図である。ZB、ZB-MP、ZB-DPおよびZB-TPはそれぞれゼブラリン、5'一リン酸、5'二リン酸および5'三リン酸代謝物に対応する。未同定代謝物が二つあり、記号?1および?2で示している。
【図18】ゼブラリン(ZB、10μM、1μCi)による24時間のインキュベーション期間後のT24細胞における代謝物レベルの時間経過を示す図である。
【図19】T24細胞におけるゼブラリンのDNAおよびRNAへの相対取り込みを示す棒グラフであり、DNAに比べてRNAには約7倍量のゼブラリンが取り込まれることを示している。
【図20】2'-デオキシ-ゼブラリンまたは2'-デオキシ-5-アザシチジンのいずれかを含むオリゴヌクレオチドによるHhaIメチル基転移酵素の相対阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
配列表
添付の配列表に示す核酸およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822の定義のとおり、ヌクレオチド塩基については標準の略語を用い、アミノ酸については3文字コードを用いて示している。各核酸配列の一方の鎖だけを示しているが、表示した鎖についていかなる言及をする場合にも相補鎖が含まれることが理解される。添付の配列表において、
配列番号:1はp16センスcDNA増幅プライマーである。
配列番号:2はp16アンチセンスcDNA増幅プライマーである。
配列番号:3はGAPDHセンスcDNA増幅プライマーである。
配列番号:4はGAPDHアンチセンスcDNA増幅プライマーである。
配列番号:5は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp16プロモーター/エキソン1センスプライマーである。
配列番号:6は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp16プロモーター/エキソン1アンチセンスプライマーである。
配列番号:7は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp16エキソン2センスプライマーである。
配列番号:8は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp16エキソン2アンチセンスプライマーである。
配列番号:9は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp3センスプライマーである。
配列番号:10は亜硫酸水素塩処理したDNA増幅のためのp3アンチセンスプライマーである。
配列番号:11、12、および13はp16プロモーター/エキソン1 SNuPEプライマーである。
配列番号:14、15、および16はp16エキソン2 SNuPEプライマーである。
配列番号:17、18、および19はp3 SNuPEプライマーである。
配列番号:20はNが2'-デオキシ-ゼブラリンを表すゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドである。
配列番号:21は配列番号:20の相補的であり、かつ5'末端から6番目の位置に5-メチルシトシンを有する。
配列番号:22はメチル化基質オリゴヌクレオチドである。
配列番号:23は配列番号:22に相補的であり、かつ5'末端から5番目の位置に5-メチルシトシンを有する。
【0015】
詳細な説明
I. 略語
5-アザ-CR(5-アザ-C、5-ACも同様):5-アザシチジン
5-アザ-CdR:5-アザ-2'-デオキシシチジン
CK:シチジンキナーゼ
FdCyd:5-フルオロデオキシシチジン
GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
GST:グルタチオン-S-トランスフェラーゼ
IL-2:インターロイキン2
QSAR:定量的構造活性相関
RE:制限エンドヌクレアーゼ
TNF:腫瘍壊死因子
TSA:トリコスタチンA
UK:ウリジンキナーゼ
Zeb:ゼブラリン
【0016】
II. 用語
特に記載がない限り、専門用語は通常の用法に従って用いられる。分子生物学における一般的用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Press発行、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.発行、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.発行、1995(ISBN 1-56081-569-8)に記載されていると考えられる。本明細書において特別な説明がなされていない化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1985)およびThe Condensed Chemical Dictionary (1981)によって例示されるとおり、当技術分野における通常の用法に従って用いられる。
【0017】
本開示の様々な態様の検討を容易にするために、以下に特定の用語の説明を提供する。
【0018】
アルコール:この用語は、構造R-OH(Rはアルキル、特に低級アルキルである)を有する化合物(例えば、メチル、エチルまたはプロピルアルコール)を意味する。アルコールは直鎖状またはイソプロピルアルコールなどの分枝状のいずれであってもよい。
【0019】
アルキル:「アルキル」なる用語は、炭素および水素だけを含む環状、分枝または直鎖アルキル基を意味し、特に記載がない限り、1から12個の炭素原子を含む。この用語はメチル、エチル、n-プロピル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ピバリル、ヘプチル、アダマンチル、およびシクロペンチルなどの基によってさらに例示される。アルキル基は無置換でもよく、または一つもしくは複数の置換基、例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基で置換されていてもよい。
【0020】
「低級アルキル」なる用語は、炭素原子1から5個の環状、分枝または直鎖の一価アルキル基を意味する。この用語はメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、i-ブチル(すなわち2-メチルプロピル)、シクロプロピルメチル、i-アミル、およびn-アミルなどの基によってさらに例示される。低級アルキル基は無置換でも置換されていてもよく、置換アルキルの具体例は1,1-ジメチルプロピルである。
【0021】
アルコキシ:「アルコキシ」なる用語は置換または無置換アルコキシを意味し、ただしアルコキシは構造-O-R(Rは置換または無置換アルキルである)を有する。無置換アルコキシでは、Rは無置換アルキルである。「置換アルコキシ」なる用語は、構造-O-R(Rは非干渉置換基で置換されたアルキルである)を有する基を意味する。
【0022】
アミノ:「アミノ」なる用語は、化学官能基-NR1R2(R1およびR2は独立に水素、アルキル、またはアリール基である)を意味する。
【0023】
類縁体、誘導体または模倣物質:類縁体は親化合物と化学構造が異なる分子、例えば同族体(アルキル鎖長の差などの化学構造の増分によって異なる)、分子断片、一つまたは複数の官能基が異なる構造、イオン化の変化である。構造類縁体は、Remington(The Science and Practice of Pharmacology、第l9版(1995)、第28章)に開示されているものなどの技術による定量的構造活性相関(QSAR)を用いて見いだされることが多い。誘導体は、基本構造に関連し、理論的に基本構造から誘導しうる物質である。模倣物質はもう一つの生物活性分子の活性を模倣する生体分子である。生物活性分子は化合物、例えばゼブラリンの生物活性を模倣する化学構造を含んでいてもよい。
【0024】
動物:生きている多細胞生物、例えば脊椎動物(例えば哺乳類、および鳥類を含む範疇)。哺乳類なる用語にはヒトおよびヒト以外の哺乳類の両方が含まれる。同様に、「被験者」なる用語には、ヒトおよび獣医学上の被験者の両方が含まれる。
【0025】
抗増殖活性:少なくとも一つの細胞型の増殖を低減するが、複数の異なる細胞型(例えば、異なる細胞株、異なる種など)の増殖(絶対的な意味または比に関してのいずれでも)を低減することもある、分子、例えば化合物の活性。特定の態様において、抗増殖活性は、特定の障害または疾患に特徴的なものなどの過剰増殖状態を示す細胞に対して(インビトロまたはインビボのいずれでも)明白であると思われる。
【0026】
特定の態様において、抗増殖活性は化合物の抗腫瘍または抗新生物活性でありうる。そのような分子は、例えば悪性新生物などの腫瘍における細胞の増殖または成長を阻害または防止または低減するために有用であると考えられる。
【0027】
アリール:「アリール」なる用語は、単環(例えばフェニル)または複数の縮合環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する一価の不飽和芳香族炭素環基であって、選択的に無置換であるか、または例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ、メルカプト(-SH)、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基で置換されている基を意味する。
【0028】
カルボキシル:この用語はラジカル-COOHを意味し、置換カルボキシルとは-COR(Rはアルキル、低級アルキル、またはカルボン酸もしくはエステルである)を意味する。
【0029】
DNA(デオキシリボ核酸):DNAはほとんどの生きている生物(ある種のウイルスはリボ核酸(RNA)を含む遺伝子を有する)の遺伝物質を構成する長鎖ポリマーである。DNAポリマーの単位は4つの異なるヌクレオチドであり、これらはそれぞれリン酸基が連結したデオキシリボース糖に結合した4つの塩基、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの一つを含む。ヌクレオチドのトリプレット(コドンと呼ぶ)はポリペプチド中の各アミノ酸、または終止信号をコードする。コドンなる用語は、DNA配列が転写されるmRNA中の3つのヌクレオチドの対応する(相補的)配列に対しても用いられる。
【0030】
特に記載がない限り、DNA分子に対するいかなる言及も、そのDNA分子の逆相補体を含むことが意図される。本明細書中の本文によって一本鎖であることが要求される場合を除き、DNA分子は、一本鎖だけを示すように書かれていても、二本鎖DNA分子の両方の鎖を含む。
【0031】
ハロゲン:「ハロゲン」なる用語は、フルオロ、ブロモ、クロロおよびヨード置換基を意味する。
【0032】
複素環:「複素環」なる用語は、単環(例えばベンジル、モルホリノ、ピリジルまたはフリル)または複数の縮合環(例えばナフチル、キノリニル、インドリジニルまたはベンゾ[b]チエニル)を有し、かつN、O、P、またはSと定義される少なくとも一つのヘテロ原子を環内に有する一価の飽和、不飽和、または芳香族炭素環基であって、選択的に無置換であるか、または例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基で置換されていてもよい基を意味する。
【0033】
ヒドロキシル:この用語は化学基-OHを意味する。
【0034】
過剰増殖性障害:細胞の異常増殖によって特徴づけられる障害であって、一般には乾癬などの皮膚障害ならびにすべての臓器系の良性および悪性腫瘍が含まれる。
【0035】
注射用組成物:少なくとも一つの活性成分、例えばゼブラリンまたはゼブラリン様低メチル化活性を有する化合物を含む、薬学的に許容される液体組成物。活性成分は通常、生理的に許容される担体に溶解または懸濁されており、組成物は、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの、少量の一つまたは複数の非毒性補助物質をさらに含んでいてもよい。本開示の化合物およびペプチドと共に用いるのに有用な、そのような注射用組成物は従来からあり、製剤は当技術分野において公知である。
【0036】
メチル化:メチル基を有機分子に導入する化学的または生化学的過程。DNAメチル化、すなわちメチル基のヌクレオチド上への付加は、DNAメチル基転移酵素(MeTase)によって触媒されるDNAの複製後共有結合修飾である(Koomarら、Nucl. Acids Res. 22:1-10, 1994;およびBestorら、J. Mol. Bioi. 203:971-983, 1988)。
【0037】
生体系において、DNAメチル化はDNAのコード機能またはその配列を変えずにDNAの構造を変更するための機構として役立ちうる。DNAメチル化は遺伝性、可逆的および後成的変化である。これは遺伝子発現を、特に遺伝子を不活化することにより変えることができ、発生および疾患に関して深刻な結果となる。
【0038】
腫瘍抑制遺伝子に関与するCpG島のメチル化は、遺伝子発現の低下を引き起こすことがある。そのような領域のメチル化増大は、正常な遺伝子発現の低下につながることが多く、選択的な増殖上の利点を有する細胞集団の選択を引き起こすことがあり、したがって悪性であるか、または悪性となる。
【0039】
本明細書において用いられる「高メチル化」なる用語は、核酸分子上の特定部位(例えばCpG島)、またはより一般的にはゲノムもしくはゲノムの領域(例えばプロモーター領域)でのDNAメチル化の増大または高いレベル(野生型または他の基底レベルなどの基準レベル以上)を意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「低メチル化」なる用語は、核酸分子上の特定部位(例えばCpG島)、またはより一般的にはゲノムもしくはゲノムの領域(例えばプロモーター領域)でのDNAメチル化の低下または低いレベル(野生型または他の基底レベルなどの基準レベル以下)を意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「低メチル化剤」なる用語は、特定部位(例えば特定のCpG島)または一般的にゲノム全体のいずれかで、DNAメチル化を低減または逆転する物質を意味する。低メチル化剤は「低メチル化活性」を有していると言うことができる。一例として、そのような活性を低メチル化剤(または推定低メチル化剤)で処理した、または処理していない並行試料で、特定のDNA分子もしくはその中の部位のメチル化状態および/もしくはレベル、または細胞の全般的なメチル化状態を定量することにより測定した。処理(対未処理)試料におけるメチル化の低下は、その物質が低メチル化活性を有することを示す。
【0042】
異なる低メチル化剤、または同じ物質での異なる処理、または処理された異なる系、またはメチル基転移酵素の突然変異体は、異なるレベルのメチル化低下をきたすことになる。いくつかの態様において、メチル化レベルは低メチル化剤処理後に少なくとも5%低下し、他の態様において、未処理試料に比べて少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下した。特に有効な低メチル化剤、または特に感受性の高い系で用いた低メチル化剤は、さらに大幅な低下レベル、例えば少なくとも60%、70%、80%、90%、またはいくつかの例では95%以上の低下をもたらすことになる。
【0043】
メチル化仲介性状態/疾患/障害:DNA配列のメチル化状態(例えば、メチル化の範囲)、または被験者のゲノム全体のメチル化レベルに関連する、これによって引き起こされる、またはこれによる影響を受ける、被験者の生物学的状態、疾患または障害。
【0044】
高メチル化関連疾患、障害、および状態は、一つまたは複数のDNA配列の高メチル化を示すことによって特徴づけられる。したがって、そのような疾患、障害、および状態は、それを患っていることがわかっている、または疑われる被験者における核酸のメチル化状態(またはレベル)を調べることによって同定することができる。すなわち、特定または全般的DNAメチル化レベルが高いことは、疾患/障害/状態が高メチル化関連であることを示すものである。そのような疾患、障害、および状態を、提供されるゼブラリン含有組成物で処理(または予防)することは有益である。
【0045】
低メチル化関連疾患、障害、および状態は、一つまたは複数のDNA配列の低メチル化を示すことによって特徴づけられる。高メチル化と同じく、低メチル化関連疾患/障害/状態は、それを患っていることがわかっている、または疑われる被験者における核酸のメチル化状態(またはレベル)を調べることによって同定することができる。
【0046】
ヌクレオシド:「ヌクレオシド」には、炭水化物に連結されたピリミジン、プリン、またはその合成類縁体などの塩基を含むモノマーが含まれるが、これに限定されることはない。
【0047】
ヌクレオチド:ヌクレオチドはヌクレオシド+リン酸塩であって、ポリヌクレオチド中の一つのモノマーを形成する。ヌクレオチド配列とはポリヌクレオチドにおける塩基配列を意味する。
【0048】
オリゴヌクレオチド:オリゴヌクレオチドは、長さ約6から約300ヌクレオチドの間の、天然ホスホジエステル結合により連結された複数の連結ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド類縁体とは、オリゴヌクレオチドと同様に機能するが、非天然部分を有する部分を意味する。例えば、オリゴヌクレオチド類縁体は、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドなどの、変更された糖部分または糖間結合などの非天然部分を含んでいてもよい。天然ポリヌクレオチドの機能的類縁体はRNAまたはDNAに結合することができる。類縁体なる用語には、分子に組み込まれた一つまたは複数のゼブラリン誘導体を含むオリゴヌクレオチドが特に含まれる。
【0049】
特定のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド類縁体は、長さ約200ヌクレオチドまでの直鎖配列、例えば少なくとも6塩基、例えば少なくとも8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100もしくは200塩基の長さ、または約6から約50塩基、例えば12、15、もしくは20塩基などの約10〜25塩基である配列(DNAまたはRNAなど)を含みうる。
【0050】
非経口:腸の外、例えば消化管を介さないで投与される。一般に、非経口製剤は経口摂取以外のいかなる可能な様式でも投与される製剤である。この用語は特に、静脈内、くも膜下腔内、筋肉内、腹腔内、または皮下のいずれかの注射、ならびに例えば鼻腔内、皮内、および局所適用を含む様々な表面適用を意味する。
【0051】
医薬品または薬物:被験者に適当に投与した場合に、所望の治療または予防効果を引き出すことができる化合物または組成物。
【0052】
薬学的に許容される担体:本明細書に記載の化合物と共に用いて有用な薬学的に許容される担体は従来から知られている。例えば、医薬品送達に適した組成物および製剤を記載しているRemington's Pharmaceutical Sciences、E. W. Martin、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストン、第15版(1975)を参照されたい。
【0053】
一般に、担体の性質は用いる特定の投与様式に依存することになる。例えば、非経口製剤は通常、媒体として水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、またはグリセロールなどの薬学的および生理的に許容される液体を含む注射用の液体を含む。固体組成物(例えば散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル製剤)については、通常の非毒性固体担体には、例えば医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれることもある。生物学的に中性の担体に加えて、投与する薬学的組成物は湿潤または乳化剤、保存剤、pH緩衝化剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの、少量の非毒性補助物質を含むこともできる。
【0054】
プロドラッグ:一つまたは複数の薬理活性化合物へのインビボ代謝的変換を受ける任意の分子。
【0055】
腫瘍:悪性または非悪性いずれであってもよい新生物。「同じ組織型の腫瘍」とは、特定の臓器(乳房、前立腺、膀胱または肺など)由来の原発性腫瘍を意味する。同じ組織型の腫瘍は異なる亜型の腫瘍に分類することができる(典型例は、腺癌、小細胞癌、扁平上皮癌、または大細胞癌でありうる気管支原性癌(肺癌))。
【0056】
特に説明がない限り、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。単数形の語「a」、「an」、および「the」は本文にそうではないことが明白に示されていない限り、複数の指示物を含む。核酸またはポリペプチドについて示されるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために示している。特に記載がない限り、すべての化合物は(+)および(-)立体異性体の両方、ならびに(+)または(-)立体異性体のいずれかを含む。
【0057】
実践または開示の方法および組成物において、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を用いることができるが、適当な方法および材料を下記に記載する。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、用語の説明を含む本明細書が支配することになる。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0058】
III. いくつかの態様の概要
本開示はDNAメチル基転移酵素の阻害法であって、DNAメチル基転移酵素をDNAメチル基転移酵素を阻害するのに有効な量のゼブラリン(または低メチル化活性を保持している、その類縁体もしくは誘導体)と接触させる段階を含む方法を提供する。そのような方法は、インビボまたはインビトロで実施することができ、方法を細胞内で実施する特定の態様において、細胞は例えば細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞であってもよい。いくつかの場合には、細胞が高メチル化核酸分子(例えば、少なくとも一つのCpGジヌクレオチドを含むもの)を含むことが知られているか、または疑われることが特に企図される。
【0059】
もう一つの態様は、細胞内のDNAメチル化を低減、防止または逆転する方法であって、低メチル化に有効な量のゼブラリンを細胞に投与し、それにより細胞(例えば細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞)内のDNAメチル化を低減、防止または逆転する段階を含む方法を提供する。これらの方法のいくつかの例において、細胞内の核酸は高メチル化されていることが知られているか、または疑われる。特定の企図される例において、ゼブラリンが投与される細胞は過剰増殖細胞(例えば哺乳類腫瘍細胞)である。
【0060】
さらなる態様は、被験者の高メチル化関連疾患、状態、または障害を治療または改善する方法であって、被験者に低メチル化に有効な量のゼブラリン、または低メチル化活性を保持しているその類縁体もしくは誘導体を(例えば薬学的組成物の形で)投与する段階を含む方法。この方法の例において、疾患は過剰増殖性疾患、例えば哺乳類新生物である。
【0061】
細胞の腫瘍形成状態を改善する方法も提供される。そのような方法において、細胞内のCpGジヌクレオチドのシトシンのメチル化を低下させるため、低メチル化に有効な量のゼブラリン、または低メチル化活性を保持している、2-ピリミジノン部分を有する化合物などのその類縁体もしくは誘導体を(例えば薬学的組成物の形で)細胞に投与し、それにより細胞の腫瘍形成状態を改善する。これらの方法の例において、一つまたは複数の抗癌剤も細胞に投与する。特定の態様において、ゼブラリンを投与する細胞は被験者における腫瘍細胞などの細胞である。
【0062】
提供される方法のいくつかの例において、活性化合物(例えばゼブラリン)はオリゴヌクレオチドに組み込まれる。
【0063】
標的配列(例えば少なくとも一つのCpGジヌクレオチドを含むもの)のメチル化阻害法であって、配列を標的配列の少なくとも一部に相補的な誘導体化オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含む方法も提供される。これらの方法において、誘導体化オリゴヌクレオチドは少なくとも一つのゼブラリン残基またはその低メチル化に有効な誘導体を含む。標的配列の具体例は、メチル化によって不活化されることが知られているか、または疑われる腫瘍抑制遺伝子を含む、腫瘍抑制遺伝子の調節領域を含む。これらのメチル化阻害法の例は、細胞、例えば細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞の内部で起こる。
【0064】
もう一つの態様は、少なくとも一つのゼブラリン残基、または少なくとも一つの低メチル化に有効なゼブラリン誘導体を含む誘導体化オリゴヌクレオチドである。そのようなオリゴヌクレオチドの例は、腫瘍抑制遺伝子調節領域内の配列に相同の配列を有する。
【0065】
また、ゼブラリンの誘導体であって、ゼブラリンに比べ生体系において実質的に安定で、低メチル化活性を保持している誘導体も提供される。いくつかの具体例において、そのような誘導体はゼブラリンに比べてより強い低メチル化活性を有する。
【0066】
さらなる態様は、DNAメチル基転移酵素を阻害するためのキットであって、DNAメチル基転移酵素を阻害するのに有効な量のゼブラリンを(例えば薬学的組成物の形で)含み、かつキットをその意図される一つまたは複数の目的のために使用するための説明書を選択的に含んでいてもよいキットを含む。そのようなキットの具体例は、そのような阻害を必要とすることが疑われる被験者、例えばメチル化関連疾患または障害を患っていることが知られているか、または疑われる被験者における高メチル化仲介性疾患または障害を治療するために有用である。
【0067】
IV. DNAメチル化阻害剤としてのゼブラリン
ゼブラリン(図1)は1-β-リボフラノシル-1,2-ジヒドロピリミジン-2-オンおよび1-β-リボフラノシル-2(1H)-ピリミジノンとしても知られ、シチジンデアミナーゼ活性があるとされてきた(例えば、Kimら、J. Med. Chem. 29:1374-1380, 1986;Greerに交付され、表題が「Dramatic Simplification of a Method to Treat Neoplastic Disease by Radiation」の国際公開公報第00/51639号;McCormackら、Biochem Pharmacol. 29:830-832, 1980参照)。
【0068】
ゼブラリンおよび5-フルオロ-ゼブラリンはシチジンデアミナーゼの活性部位に共有結合による水和物として結合することが明らかにされている(Bettsら、J. Mol. Biol. 235:635-656, 1994;Xiangら、Biochemistry 34:4516-4523, 1995;およびFrickら、Biochemistry 28:9423-9430, 1989)。これらの化合物はara-Cまたは5-アザ-シチジンとの併用化学療法において用いるための候補として提唱されている(McCormackら、Biochem. Pharmacol. 28:830-832, 1980;およびLaliberteら、Cancer Chemother. Pharmacol. 30:7-11, 1992)。加えて、ゼブラリンは経口投与すると抗腫瘍活性を有することが報告された(Driscollら、J. Med. Chem. 34:3280-3284, 1991)が、この活性についてこれまでに機構はまったく調べられていない。
【0069】
驚くことに、ゼブラリンは強力で低毒性のDNAメチル化阻害剤(低メチル化剤)であることが明らかにされている。以下にさらに詳しく記載するとおり、ゼブラリンはメチル化を測定するためのアカパンカビ(N. crassa)インビボ系(実施例1)、ならびにヒト膀胱癌細胞株T24および正常マウス胚線維芽細胞株10T1/2などの哺乳類細胞株(実施例2および3)で低メチル化活性を示す。
【0070】
化合物5-アザシチジン(5-アザ-CR;図1)および5-アザ-2'-デオキシシチジン(5-アザ-CdR)はDNAのメチル化を阻害するために用いられている。5-アザ-CRおよび5-アザ-CdRは代謝され(図2参照)、最終的に細胞DNAに取り込まれる。5-アザ-CdRを含むDNAはDNAメチル基転移酵素を直接阻害し、したがってDNAのメチル化を阻害する。
【0071】
ゼブラリンは、図3に概略を示したものと同等または類似であると考えられる代謝経路を介してRNAに取り込まれうるか、または対応する2'-デオキシ化合物への変換後にDNAに取り込まれうる、修飾ピリミジンリボヌクレオシドである(Jeongら、J. Med. Chem. 41:2572-2578, 1998;Bettsら、J. Mol. Biol. 235:635-656, 1994:Xiangら、Biochem. 34:830-832, 1995;およびFrickら、Biochem. 28:8423-9430, 1989)。
【0072】
その方法または実施を任意の一つまたは複数の特定の理論に基づいて行うことを望みはしないが、発明者らはゼブラリンのDNAメチル化を阻害する能力が、ゼブラリンの2-ピリミジノン環が代替塩基としてDNAに取り込まれることによって引き起こされる可能性があることを認識している。または、ゼブラリンの低メチル化活性は、それがRNAに取り込まれる時に生じる可能性もある。さらに、発明者らは、ゼブラリンで観察されるインビボ効果はDNAメチル基転移酵素の直接阻害から、またはRNAサイレンシング機構の妨害などの間接的機構を介して生じる可能性もあることを認識している(例えば、Plasterk、Science, 296:1263-1265, 2002参照)。
【0073】
ゼブラリンはウリジンキナーゼ(UK)の基質であり、ヒト腫瘍細胞は高いUK活性を示す。これは、ゼブラリンが腫瘍細胞に選択的な機構を介して、生理活性のあるリン酸化誘導体を通じて作用する可能性を高めている。Weberら、Cancer Biochem. Biophys. 16:1-15, 1998を参照されたい。
【0074】
発明者らは、DNAメチル化が一つまたは複数の「プロドラッグ」の生物内への送達によって阻害されうることもさらに認識している。そのようなプロドラッグには、例えば、ゼブラリンの一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸誘導体またはその類縁体および同族体;2'-デオキシゼブラリンの一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸誘導体またはその類縁体および同族体;あるいは2-ピリミジノンまたはその誘導体の有効量を細胞に送達することになる任意の他の化合物、特に2-ピリミジノン部分をDNAおよび/またはRNAに代替塩基として取り込まれることになる化合物が含まれうるが、これらに限定されることはない。プロドラッグの様々な形は当技術分野において公知である。そのようなプロドラッグ誘導体の例については、例えば、Methods in Enzymology, 42:309-396, 1985を参照されたく、これは参照として本明細書に組み込まれる。特に企図されるプロドラッグには、2'-デオキシゼブラリンの「マスクされた」一リン酸塩を含み、特にリン酸エステル、リン酸エーテル、およびアルキル化誘導体を含む、ゼブラリンおよび2'-デオキシゼブラリンの「マスクされた」リン酸塩が含まれる。
【0075】
前述の特定の化合物は、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属と、カルシウム、マグネシウムおよびバリウムなどのアルカリ土類金属、アミン塩基、例えばジシクロヘキシルアミン、ピリジン、アルギニン、リシンなどの有機塩基と塩を形成しうることが理解されている。前述のプロドラッグなどの他の化合物は様々な有機および無機酸と塩を形成することもある。単なる例示として、そのような塩には塩酸、臭化水素、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸および様々な他の類似物と形成した塩が含まれうる。
【0076】
興味深いことに、ゼブラリンの活性化に関与すると考えられる最初の酵素(ウリジン-シチジンキナーゼ)は、ヒト卵巣、乳房、直腸、および肺腫瘍を含む、多くのヒト腫瘍において正常値よりも高値を示す(実施例4参照)。この酵素はゼブラリンのインビボ低メチル化活性において重要であると考えられるため、腫瘍組織におけるその上昇は、DNAメチル化の低減(または逆転)を最も必要とする組織における薬物の選択的活性についての機構を提供する。
【0077】
ゼブラリンはアカパンカビ(Neurospora)および哺乳類細胞の両方である程度の毒性を示す(実施例2および図6参照)。この毒性は5-アザ-CRで観察される毒性よりも実質的に低く、そのDNAメチル基転移酵素の阻害によって仲介されるものではないと考えられる(実施例1)。
【0078】
表1はゼブラリンと公知のDNAメチル基転移酵素阻害剤5-アザシチジンとを比較しての化学的および生物学的特徴の概要を示している。
【0079】
(表1) 5-アザシチジンおよびゼブラリンの特徴の概要

*示した半減期はPBS(pH7.4)中、50℃での値;5-アザ-CRの半減期は溶液の状態(例えば、pH、温度など)に依存する;例えば、Chanら、J. Pharma. Sci. 68:807-812, 1979;ChatterjiおよびGallelli、J. Pharma. Sci. 68:822-826, 1979参照)。
【0080】
V. 高メチル化関連疾患、障害または状態を治療、治癒、改善、または予防するためのゼブラリンの使用
ゼブラリンの低メチル化活性の同定により、高メチル化に関与する疾患および状態を改善、予防、または治療するために本化合物を使用して利益を受けることが今や可能である。
【0081】
高メチル化関連疾患、障害、および状態は、一つまたは複数のDNA配列の高メチル化を示すことによって特徴づけられる。したがって、そのような疾患、障害、および状態は、それを患っていることが知られているか、または疑われる被験者の核酸のメチル化状態(またはレベル)を調べることによって同定することができる。すなわち、特定または全般的DNAのメチル化が高レベルであるということは、疾患/障害/状態が高メチル化関連であることを示している。そのような疾患、障害、および状態をゼブラリン、例えば薬学的組成物などのゼブラリン含有組成物で治療(または予防)することは有益である。
【0082】
したがって、特定の態様において、ゼブラリンの投与前に、その状態が一つまたは複数のDNA配列の高メチル化に関与しており、したがってゼブラリン治療に対して感受性であると考えられる被験者を見いだすために、被験者のスクリーニングを行うことになる。いくつかの態様におけるそのようなスクリーニングは、被験者からの細胞または組織試料のゲノム、またはそのようなゲノムからの特定の標的配列のメチル化レベルを調べることを含む。いくつかの態様において、スクリーニングは細胞または組織中のウリジン-シチジンキナーゼのレベルを検出することを含む。特定の態様において、治療に使用するためのゼブラリン(またはその誘導体)を選択する前に、メチル化状態およびウリジン-シチジンキナーゼレベルの両方を試験する。ウリジン-シチジンキナーゼレベルおよびメチル化状態の両方を試験する方法は本明細書に記載している。
【0083】
ゼブラリンの低メチル化剤としての活性は、DNAメチル化を受けるいかなる系においても有効であると考えられる。したがって、示した実施例のいくつかは腫瘍を含む過剰増殖性障害などの動物の疾患系に基づいているが、ゼブラリンは他の系においても有用であることが企図される。例えば、ゼブラリンはおそらく、メチル化によって仲介された遺伝子サイレンシングを受けた形質転換植物を含む植物のDNA、またはサイレンシングされた植物の発生遺伝子のメチル化状態を変えるために用いることができる(例えば、表題が「Methods for Altering the Rate of Plant Development and Plants Obtained Therefrom」の米国特許第6,011,200号参照)。
【0084】
他のプロセスがDNAのメチル化によって仲介されており、ゼブラリンはおそらく系のDNAメチル化状態を変えることによってこれらのプロセスに影響を与えるために用いることができる。特に、ゼブラリンの低メチル化活性を、米国特許第5,872,104号(表題「Combinations and Methods for Reducing Antimicrobial Resistance」)に記載されている系と同様に、抗菌耐性を低下させるために用いうることが企図される。そのような方法の例は、例えばrRNA分子上の抗生物質のメチル化仲介性結合阻害を低下させ、それによって処理微生物の抗生物質に対する感受性を高めることにより働く。
【0085】
VI. ゼブラリンおよびその誘導体の製造
市販の中間体からのゼブラリンの化学合成法は公知である。特に、Liuら、J. Med. Chem., 24:662-666, 1981およびDriscollら、J. Med. Chem. 34:3280-3284, 1991を参照されたい。類縁体は、例えばKimら、J. Med. Chem. 29:1374-1380, 1986に記載のとおり、過去に合成されている。ゼブラリンを含むヌクレオチドの合成は、例えばBarchiら(J. Enzyme Inhib. 9:147-162, 1995)に記載されている。
【0086】
本明細書において、例えばMeierら(ChemBioChem, 2:283-285, 2001)に記載の方法を用いて製造しうるものなどの、2'-デオキシゼブラリンのプロドラッグを用いる方法も含まれる。プロドラッグを用いることにより、化合物のインビボでの処理における第一のキナーゼ段階が回避されると考えられる。このキナーゼは、2'-デオキシゼブラリンには活性を持たないと考えられている(図3参照)。
【0087】
ゼブラリンの誘導体は、公知の化学的方法、例えば他の有機基、ハロゲンなどのためのゼブラリンへの一つまたは複数の側鎖の置換または付加による方法を用いて製造することができる。いくつかの誘導体が過去に公表されている(Barchiら、J. Enzyme Inhib. 9:147-162, 1995;Driscollら、J. Med. Chem. 34:3280-3284, 1991)。特に企図されるゼブラリンの類縁体および誘導体には、2'-デオキシ-ゼブラリン、ゼブラリンおよび2'-デオキシ-ゼブラリンの5-フルオロ誘導体、ならびにゼブラリンおよび2'-デオキシ-ゼブラリンの4,6-ジフルオロ誘導体などのピリミジノン基および/またはリボース部分の変異形が含まれる。他の企図されるゼブラリンの類縁体および誘導体には、ハロゲン化誘導体、例えば2'-デオキシ-2'-フルオロ-リボース誘導体などの炭水化物部分への変異形が含まれる。ゼブラリンのプロドラッグを含む特定の誘導体を式Iの構造で表す。

【0088】
式Iに関して、R基は独立にHまたは化合物の代謝中に切断されてゼブラリンもしくはゼブラリン誘導体を放出する基である。したがって、特定のR基は独立に、カルボン酸エステル、リン酸エステルおよびエーテルからなる群より選択される。例示的エステルR基はピバロイルであり、例示的エーテル基にはRがアルキル基であるものが含まれる。XはH、F、Cl、Br、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基からなる群より選択することができる。特定の例において、Xは式2aまたは2bの基であってもよい。式2aおよび2bに関して、YはH、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびハロゲンからなる群より選択することができる。Xがハロゲンである場合、化合物はMcCormackら、Biochem Pharmacol. 29:830-832, 1980の方法に従って調製することができる。


【0089】
VII. ゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドの製造およびそれらの使用
ゼブラリンが有効な低メチル化剤であるとの発見により、ゼブラリンはオリゴヌクレオチドに組み込むことができ、得られる誘導体化オリゴヌクレオチドは核酸分子内の特定の標的部位でメチル化を阻害するために用いることができると考えられる。
【0090】
誘導体化オリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドのインビトロ合成法は当業者には公知である。そのような通常の方法を用いて、開示した方法のためにオリゴヌクレオチドを製造することができる。インビトロでのオリゴヌクレオチド合成のための最も一般的な方法は、Letsingerによって考案され、Caruthersによってさらに開発されたホスホラミダイト法である(Caruthersら、Chemical synthesis of deoxyoligonucleotides, in Methods Enzymol. 154:287-313, 1987)。これは段階的様式で実施される非水性固相反応で、単一のヌクレオチド(または修飾ヌクレオチド)を伸長中のオリゴヌクレオチドに付加する。個々のヌクレオチドを反応性の3'-ホスホラミダイト誘導体の形で付加する。Gait(編)、Oligonucleotide Synthesis. A practical approach, IRL Press, 1984も参照されたい。
【0091】
一般に、合成反応は以下のとおりに進行する:第一に、伸長中のオリゴヌクレオチド鎖の5'末端のジメトキシトリチルまたは等価の保護基を酸処理によって除去する。(伸長中の鎖はその3'末端でシリコンビーズなどの固体支持体に固定されている。)オリゴヌクレオチド鎖の新しく遊離された5'末端を、鎖に付加する次のデオキシヌクレオシドの3'-ホスホラミダイト誘導体にカップリング剤のテトラゾールを用いて結合する。カップリング反応は通常、約99%の効率で進行する。残存する未反応の5'末端があればいかなるものもアセチル化によってキャップし、次のカップリングにおける伸長を阻止する。最後に、カップリング段階で生じた亜リン酸トリエステル基を酸化してホスホトリエステルとし、一つのヌクレオチド残基分伸長された鎖を得る。一サイクルごとに一つの残基を加えて、この工程を繰り返す。例えば、米国特許第4,415,732号、第4,458,066号、第4,500,707号、第4,973,679号、および第5,132,418号を参照されたい。この方法または類似の方法を用いるオリゴヌクレオチド合成機が市販されている(例えば、Gene Machines、カリフォルニア州サンカルロスのPolyPlexオリゴヌクレオチド合成機)。加えて、多くの会社がそのような合成を実施している(例えば、テキサス州のSigma-Genosys;カリフォルニア州のOperon Technologies;アイオワ州のIntegrated DNA Technologies;およびカリフォルニア州のTriLink Bio Technologies)。
【0092】
ヌクレオチド類縁体のホスホラミダイト型がいったん生成すれば、ゼブラリンおよびデオキシ-ゼブラリンなどの誘導体化または修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチド類縁体は、基本的には非修飾ヌクレオチドについて前述したとおり、オリゴヌクレオチドに組み込むことができる。ゼブラリンおよびデオキシ-ゼブラリンなどのヌクレオチドおよびヌクレオチド類縁体のホスホラミダイトはMarascoら、J. Org. Chem. 57:6363-6365, 1992に記載のとおり合成および精製することができる。Hurdら、J. Mol. Biol. 286, 389-401, 1998も参照されたい。標準的オリゴヌクレオチド合成法を改変して、合成中の2-ピリミジノン環の不安定性に対処することができる:Zhouら、Nucleic Acids Res. 24:2652-2659, 1996;Adamsら、Tetrahedron Lett. 35:1597-1600, 1994;およびGildeaら、Nucleic Acids Res. 17:2261-2281, 1989を参照されたい。
【0093】
誘導体化オリゴヌクレオチドの使用
少なくとも一つのゼブラリン残基(または低メチル化活性を維持しているその類縁体)を含むよう誘導体化されたオリゴヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドに実質的に相同の標的核酸配列におけるメチル化を阻害することができる。本開示は標的配列のメチル化を阻害する方法であって、その配列を含む細胞を、標的配列の少なくとも一部と相補的なゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含む方法を特に企図する。特定の態様において、標的配列は一つまたは複数のCpGジヌクレオチドを含む。標的配列の具体例には、腫瘍抑制遺伝子などの遺伝子の調節領域が含まれる。
【0094】
ゼブラリンの低メチル化活性の一つまたは複数の機構を解明するために、ゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドを用いることもできる。2'-デオキシ-ゼブラリンを含むオリゴヌクレオチドの阻害効力を他の阻害剤(例えば5-フルオロ-2'-デオキシシチジンまたは5-アザ-2'-デオキシシチジン)を含む類似の配列と比較することにより、ゼブラリンのDNAへの取り込みが低いこと、または別の固有の阻害活性が低いことにより、メチル化阻害剤として弱いかどうかを評価することが可能であると思われる。
【0095】
ゼブラリンの低メチル化活性の一つまたは複数の機構を解明するために、ゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドを用いることもできる。2'-デオキシ-ゼブラリンを含むオリゴヌクレオチドの阻害効力を他の阻害剤(例えば5-フルオロ-2'-デオキシシチジンまたは5-アザ-2'-デオキシシチジン)を含む類似の配列と比較することにより、ゼブラリンのDNAへの取り込みが低いこと、または別の固有の阻害活性が低いことにより、メチル化阻害剤として弱いかどうかを評価することが可能であると思われる。ゼブラリンを含む誘導体化オリゴヌクレオチドにより提供される阻害のレベルが互いに類似または同等である場合、ゼブラリンプロドラッグを投与することによってゼブラリンの低メチル化活性を増強しうることが企図される。これは、より多くの薬物をDNAに取り込むことを可能にし、したがって薬物は相対的に強力になりうる。誘導体化オリゴヌクレオチド、および特にそれらのDNAメチル化を阻害する能力の研究は、Sheikhnejadら(J. Mol. Biol. 285,:2021-2034, 1999)およびMarquezら(Antisense & Nucleic Acid Drug Dev. 9:415-421, 1999)に報告されているとおりに実施することができる。
【0096】
一つの特定のゼブラリン誘導体化オリゴヌクレオチドは下記の配列を有する:

(Xは2'-デオキシ-ゼブラリンを表す)。このオリゴヌクレオチドは、Wangら(J. Am. Chem. Soc. 122:12422-12434, 2000)に記載のとおり、HhaIメチラーゼを指向する。Sheikhnejadら(J. Mol. Biol. 285,:2021-2034, 1999)およびMarquezら(Antisense & Nucleic Acid Drug Dev. 9:415-421, 1999)に示されているとおり、哺乳類の酵素を標的とする他の配列を合成することができる。図20に関して、このオリゴヌクレオチドを合成し、2'-デオキシ-ゼブラリンの代わりに2'-デオキシ-5-アザシチジンを有する同じ配列のオリゴヌクレオチドと比較した。2'-デオキシ-ゼブラリンおよび2'-デオキシ-5-アザシチジンと対にするために5-メチルシチジンを有する相補鎖とアニーリングした二本鎖として、修飾オリゴヌクレオチドはいずれも基質オリゴヌクレオチドのメチル化を同程度に阻害した。
【0097】
VIII. DNAメチル化の検出/測定
ヌクレオチド内のシトシンの5-メチル状態を定量および/または測定するために用いる方法の一つのクラスは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ(RE)を用いることに頼っている。各REはDNAを特定の短い(例えば4〜8ヌクレオチド)認識配列で「切断」することができる。そのような切断の位置は消化反応後に生じる断片の長さに基づいて決定することができ、これらの断片は例えばゲル電気泳動、膜への転写、およびハイブリダイゼーションによって検出される。特定のREは、消化が起こるためには認識配列内の特定の塩基が特定のアデニンおよび/またはシトシン残基でメチル化されていなければならないという点で、「メチル化感受性」である。事実、イソシゾマーと呼ばれる特定のREは同じ配列を認識するが、メチル感受性であっても、または非感受性であってもよい。メチル化感受性REの例には、Sau3AIおよびDpnIIが含まれる。メチル化感受性REによる消化後のバンドパターンは、DNAのメチル化パターンに応じて変化する。メチル化されている可能性がある多くのCpGがREの認識配列の外にあり、したがってこれらの方法を用いて調べることはできないため、メチル化感受性REに基づく技術はある程度制限されることもある。
【0098】
個々のメチル化部位の可能性があるものを調べる方法も利用可能である。例えば、特定の標的配列におけるメチル化を検出するためのPCRによる方法を記載している、Shemerら(PNAS 93:6371-6376, 1996)およびKafriら(Genes Dev. 6:705-714, 1992)を参照されたい。
【0099】
5-メチルシトシンの有無について定量/測定する他の方法は、亜硫酸水素塩とシトシンとの特定反応に基づくものである。シトシンが亜硫酸水素塩と反応するとウラシルを形成するが、5-メチルシトシンは修飾されない。これにより、核酸ハイブリダイゼーション反応中に反応したシトシン(現ウラシル)はアデニンと塩基対形成するため、シトシンと5-メチルシトシンは化学的に識別可能となる。そのような方法の例としては、例えば、Frommerら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89:1827-1831, 1992;SadriおよびHornsby、Nuc. Acids Res. 24:5058-5059, 1996;Warneckeら、Nuc. Acids Res. 25:4422-4426, 1997;ZiongおよびLaird、Nuc. Acids Res. 25:2532-2534, 1997;Selkerら、Science 262:1724-1728, 1993;ならびにGonzalgoおよびJones、Nuc. Acids Res. 25:2529-2531, 1997を参照されたい。
【0100】
もう一つのメチル化定量法は、GonzalgoおよびJones(Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)および米国特許第6,251,594号に記載の、メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長(Ms-SNuPE)アッセイ法である。この方法は、DNAにおける特定CpG部位のメチル化レベルの定量的測定を提供する。要するに、ゲノムDNAを前述のとおり亜硫酸水素塩で処理する。次いで、目的とするDNA領域をPCRにより増幅し、プライマーをPCR産物にアニールさせ、元の目的CpG部位の5'直後で停止させる。メチル化シトシン対非メチル化シトシン(CまたはT)の相対比の定量を、アニーリング産物をTaqポリメラーゼおよび(a-32P)dCTPまたは(a-32P)dTTPのいずれかとインキュベートした後、ゲル電気泳動およびPhosphorImager分析により行う。
【0101】
ハイスループットメチル化アッセイ法もメチル化を測定するために有用である。例えば、一つのそのようなアッセイ法は蛍光リアルタイムPCR(TaqMan)技術を用いるハイスループット定量的メチル化アッセイ法のMethylightアッセイ法(Eadsら、Cancer Res. 61:3410-3418, 2001;公開された国際特許出願第PCT/US00/13029号)である。
【0102】
特許文献にも核酸分子におけるメチル化を検出および/または測定する方法が多くみられる。例えば下記を参照されたい:
米国特許第5,786,146号(表題「非メチル化シトシンを修飾する物質を用い、修飾されたメチル化および非メチル化核酸を識別する、メチル化核酸の検出法(Method of detection of methylated nucleic acid using agents which modify unmethylated cytosine and distinguishing modified methylated and non-methylated nucleic acids)」);
米国特許第5,871,917号(表題「異なるメチル化および突然変異核酸の同定(Identification of differentially methylated and mutated nucleic acids)」)
米国特許第6,017,704号(表題「非メチル化シトシンを修飾する物質を用い、修飾されたメチル化および非メチル化核酸を識別する、メチル化核酸の検出法(Method of detection of methylated nucleic acid using agents which modify unmethylated cytosine and distinguishing modified methylated and non-methylated nucleic acids)」);
米国特許第6,200,756号(表題「CpG含有核酸におけるメチル化パターンの同定法(Methods for identifying methylation patterns in a CpG containing nucleic acid)」);
米国特許第6,214,556号(表題「複合DNAメチル化フィンガープリント生成法(Method for producing complex DNA methylation fingerprints)」);および
米国特許第6,251,594号(表題「DNAメチル化の相違に基づく癌診断法(Cancer diagnostic method based upon DNA methylation differences)」)。
【0103】
メチル化の定量および検出法の具体例を下記の実施例において例示する。
【0104】
IX. 治療法
本開示は被験者における過剰増殖性疾患または障害などのメチル化仲介性疾患の治療を含む。この方法は、薬学的に適合する担体中、メチル化仲介性疾患の発生または進行を阻害するために有効な量の、類似の低メチル化作用を有する化合物ゼブラリン、またはその類縁体、模倣物質、もしくは誘導体、あるいはそのような化合物と一つまたは複数の他の医薬品との組み合わせを、被験者に投与する段階を含む。治療は、そのような疾患に対する重大なリスクを有する人口統計群のいかなる患者においても予防的に用いることができるが、被験者は疾患/状態の明確な診断またはそのような疾患発生の可能性を高める一つもしくは複数の因子(例えば、遺伝、環境、または生活様式因子)同定などの、より具体的な基準を用いて選択することもできる。
【0105】
薬物を送達する媒体は、当業者には公知の方法を用いて、化合物の薬学的に許容される組成物を含むことができる。滅菌食塩水またはグルコース溶液などの一般的な担体のいかなるものも用いることができる。投与経路には経口およびくも膜下腔内、静脈内(iv)、腹腔内(ip)、直腸内、局所、眼内、鼻内、および経皮などの非経口経路が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0106】
化合物は、水性塩類媒質などの静脈内注射用のいかなる通常の媒質中でも、または血漿媒質中でも静脈内投与することができる。媒質は、例えば、浸透圧を調節するための薬学的に許容される塩、シクロデキストリンなどの脂質担体、血清アルブミンなどのタンパク質、メチルセルロースなどの親水性物質、界面活性剤、緩衝剤、保存剤および類似のものなどの通常の薬学的補助物質も含まれうる。非経口薬学的担体のより完全な説明は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(第19版、1995)の第95章に見いだすことができる。
【0107】
他の薬学的組成物の態様は、当業者には公知のとおり、通常の薬学的に許容される担体、補助剤、および対イオンとともに調製することができる。いくつかの態様における組成物は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、または懸濁剤といった固体、半固体、および液体剤形における単位投与剤形である。
【0108】
本開示の化合物は治療期間の全体を通してほぼ同じ用量で、漸増投与法で、または負荷量投与法(例えば負荷量は維持量の約2から5倍)で投与することができる。いくつかの態様において、用量は治療中の被験者の状態、疾患もしくは状態の重症度、治療に対する見かけ上の反応、および/または当業者が判断する他の因子に基づいて治療経過中に変動する。いくつかの態様において、例えば腫瘍抑制遺伝子の再メチル化の発生を低下させるために、薬物による長期治療が企図される。
【0109】
ゼブラリンは腫瘍抑制遺伝子の再活性化において役割を果たすため、腫瘍再発を避けるための放射線または通常の化学療法後の継続療法における良好な候補ともなる。特定の態様において、ゼブラリンは細胞移動を防止する糖タンパク質および/またはホルモン受容体をコードする遺伝子を再活性化することができる。ゼブラリンが適正に作用するには腫瘍負荷が大きすぎることはない。
【0110】
いくつかの態様において、低メチル化に有効な量のゼブラリンを含む製剤の持続的腫瘍内(または腫瘍近傍)放出が有益であることもある。緩徐放出製剤は当業者には公知である。例として、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸またはレシチン懸濁剤などのポリマーを用いて持続的腫瘍内放出を実現することができる。
【0111】
いくつかの態様において、送達を、例えばDepoFoam(SkyePharma, Inc、カリフォルニア州サンディエゴ)などの多胞性リポソームを含む注射および/または埋め込み薬物デポーを介して行うことが特に企図される(例えば、Chamberlainら、Arch. Neuro. 50:261-264, 1993;Katriら、J. Pharm. Sci. 87:1341-1346, 1998;Yeら、J. Control Release 64:155-166, 2000;およびHowell、Cancer J. 7:219-227, 2001を参照されたい)。
【0112】
他の態様において、低メチル化に有効な量のゼブラリンを含む薬学的組成物による腫瘍の灌流が企図される。
【0113】
本開示の化合物の治療上有効な量は当業者であれば決定することができる。この化合物は低毒性であるため、高用量、例えば100mg/kgを投与することが可能であるが、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kgまたはそれ以上の用量が企図される。そのような用量範囲の一例は、体重1kgあたり経口で0.1から200mgの単回または分割用量である。用量範囲のもう一つの例は、体重1kgあたり経口で1.0から100mgの単回または分割用量である。経口投与のために、組成物は例えば1.0から1000mgの活性成分、特に1、5、10、15、20、25、50、100、200、400、500、600、800、および1000mgの活性成分を含む錠剤の形で治療中の被験者に症状による用量調節のために提供される。
【0114】
任意の特定の被験者に対する特定の用量レベルおよび投与頻度は変動することがあり、特定の化合物の活性、その化合物の代謝に対する安定性および作用期間、年齢、体重、全般的健康、性別、食餌、投与の様式および時間、排出速度、薬物の組み合わせ、ならびに治療を受けている宿主の状態の重症度を含む様々な因子に依存することになる。
【0115】
低メチル化に有効な量のゼブラリンを含む薬学的組成物を、一つまたは複数の遺伝子配列の高メチル化に関連する、および/またはそれによって引き起こされる様々な疾患および状態の治療または予防において用いることができる。そのような疾患の例には癌、特に腫瘍抑制遺伝子などの一つまたは複数の高メチル化配列を有することによって特徴づけられ、特に高メチル化がその遺伝子の不活化(サイレンシング)をきたしている腫瘍が含まれる。そのような不活化遺伝子および関連する癌の多くは今では同定されており、例えば下記が含まれる:カドヘリン(その不活化は乳房または前立腺腫瘍および扁平上皮癌、ならびに腫瘍細胞の遠隔の節への移動に関与することが多い);エストロゲン受容体(その不活化はエストロゲン受容体陰性乳房腫瘍に関与することが多い;受容体の再活性化は例えばタモキシフェンによる可能性につながる);VHL(その不活化は腎臓癌に関与する);H19(11pに位置する腫瘍抑制遺伝子で、その不活化は多くの腫瘍に関係するとされている);14-3-3σ(いくつかの乳癌でサイレンシングされている);Apaf-1(転移性黒色腫で不活化されているが、この遺伝子に関係するメチル化による不活化は間接的またはApaf-1プロモーター以外の遺伝子領域を通してであると考えられる);およびp53(腫瘍抑制遺伝子で、その不活化は多くの腫瘍、特に不安定腫瘍に関係するとされている)。加えて、17pl 3.3で同定されたものなどの、特定の遺伝子に関与していない、またはまだ関連づけられていないCpG島での高メチル化は、癌形成に寄与している可能性がある。
【0116】
いくつかの他の遺伝子は、腫瘍の増殖、攻撃性、および/または転移を阻害するのに役立つ活性を示すと考えられている。これらのいかなる遺伝子のメチル化仲介性不活化も、腫瘍形成、転移、および/またはより高度に攻撃的な腫瘍の増大につながることがあり、したがってゼブラリンを用いたこれらの遺伝子のメチル化仲介性不活化の阻害または逆転は癌を制御する際に有益でありうる。そのような遺伝子の例には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、メチルグアニンメチル基転位酵素、およびTIMP-3(メタロプロテイナーゼ-3の組織阻害剤)が含まれる。
【0117】
DNAメチル化の結果、メチルシチジンが脱アミノ化されうる。メチルデオキシシチジンは脱アミノ化されるとチミジンになり、デオキシグアニジンではなくデオキシアデノシンと対を形成するため、CG塩基対はTA塩基対に変換され、突然変異につながる。加えて、いくつかの癌は遺伝子の突然変異から生じるか、または突然変異によって促進され、この場合の突然変異はシチジン残基がメチル化され、続いてメチル化デオキシシチジンがチミジンに変換されることによって引き起こされたと考えられる。これは腫瘍抑制遺伝子p53でよく起こる。したがってメチル基転位酵素は突然変異多発箇所(hot spot)を生じる。これは腫瘍遺伝子不安定化、腫瘍転移、腫瘍進行、腫瘍再発および細胞毒性物質による治療に対する腫瘍の抵抗性をきたす結果となりうる。突然変異した遺伝子を含む腫瘍のサブクローンはより攻撃性、転移性、および治療抵抗性となる場合もある。ゼブラリンの低メチル化活性はそのような突然変異の可能性を防止または低減するために用いることができると考えられている。
【0118】
X. 併用療法
本開示はゼブラリン化合物と高メチル化関連疾患の治療において有用な一つまたは複数の他の物質との併用も企図する。例えば、本開示の化合物を有効な量の他の医薬品と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、一つまたは複数の公知の抗癌剤がゼブラリンとともに含まれている。「組み合わせて投与」なる用語は活性物質の同時および逐次投与の両方を意味する。
【0119】
加えて、本開示の化合物および/またはペプチドは有効な量の放射線、抗増殖剤、抗癌剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗感染剤、低メチル化剤、ヌクレオシドおよびその類縁体、ならびに/またはワクチンと組み合わせて投与することもできる。
【0120】
ゼブラリンと組み合わせて用いることができる抗増殖剤の例には下記が含まれるが、これらに限定されることはない:イフォスファミド、シスプラチン、メトトレキセート、プロカリジン、エトポシド、ビスクロロエチルニトロソ尿素(BCNU)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、またはドキソルビシン。
【0121】
ゼブラリンと組み合わせて用いることができる免疫調節剤の非限定例はAS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、γインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(ルイジアナ州ニューオーリンズのImregから)、SK&F 106528、およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)である。
【0122】
いくつかの態様においてゼブラリンと組み合わせて用いられる化合物の具体例は、5-アザシチジン、テトラヒドロウリジン、2'-デオキシ-4-アザシチジン、ara-C、およびトリコスタチンAである。そのような物質はDNAメチル化の阻害においてゼブラリンと相加的および/または相乗的でありうる。例示的相乗効果はテトラヒドロフランまたは他のシチジンデアミナーゼ阻害剤の同時投与または事前投与によって誘導されるため、酵素が結合するゼブラリンの量が減少する。したがってゼブラリンはさらに処理され、例えば核酸に自由に取り込まれる;またはゼブラリンは別の酵素または受容体に結合し、それにより例えば低メチル化剤として作用することができる。すなわち、テトラヒドロウリジンなどのシチジンデアミナーゼ阻害剤は、この酵素がゼブラリンと結合するのを阻害し、それによって有効なゼブラリン濃度を高めるよう機能することができる。テトラヒドロウリジンは哺乳類細胞において安全かつ非毒性であることが明らかにされている。CooperおよびGreer、「The Effect of Inhibition of Cytidine Deaminase by Tetrahydrouridine on the Utilization of Deoxycytidine and 5-bromodeoxycytidine for DNA Synthesis」、Mol. Pharm. 9:698-703 (1973)を参照されたい。Wongら、Proc. Am. Assoc. Cancer Res. and ASCO, 1977も参照されたい。
【0123】
併用療法は、当然のことながらこれらの実施例において提供する一覧に限定されることはないが、一つまたは複数の遺伝子配列の高メチル化に関連する疾患または状態の治療のためのいかなる組成物も含む。
【0124】
XI. キット
本明細書に開示するゼブラリンおよび関連化合物は、DNAメチル基転位酵素阻害に用いるためのキット、核酸のメチル化低減に用いるためのキット、ならびに障害、状態または疾患(例えば、新生物などの過剰増殖性障害、特に一つまたは複数の遺伝子配列のメチル化によって仲介される過剰増殖性障害)の予防および/または治療のためのキットの形で供給することができる。そのようなキットにおいて、一つまたは複数の容器内で低メチル化に有効な量の一つまたは複数の化合物が提供される。化合物は、例えば水溶液中に懸濁して、または凍結乾燥(freeze-dried)もしくは凍結乾燥(lyophilized)粉末として提供することもできる。特定の態様において、化合物は薬学的組成物の形で提供することになる。
【0125】
キットは、使用者が障害、状態または疾患(例えば、メチル化仲介性過剰増殖性障害)をキナーゼ活性改変化合物および/または結合ペプチドで治療または予防するのを補助するための、通常は書面における説明書も含むことができる。そのような説明書はコンピューターで読むことができる媒体で選択的に提供することができる。
【0126】
容器はその中に化合物を提供するが、供給される形態を保持することができる任意の通常の容器、例えば、微量遠心管、アンプル、またはビンであってもよい。いくつかの適用において、治療化合物は、個別の、典型的には使い捨てのチューブまたは他のそのような容器内に、あらかじめ測定した一回使用量で提供することもできる。
【0127】
キット中で提供される化合物の量は、例えば製品が向けられる市場に応じて、いかなる適当な量でありうる。例えば、キットを研究または臨床用に適合させた場合、提供される各低メチル化化合物(例えばゼブラリン)の量は数回の処理に十分な量であると考えられる。
【0128】
特定のキットは、疾患または状態を治療または予防するのに有用な一つまたは複数の他の物質、例えば遺伝子配列の高メチル化によって仲介される、または影響される細胞増殖の阻害、例えばメチル化関連腫瘍の過剰増殖の治療において有用な物質も含む。例えば、そのようなキットは一つまたは複数の有効な用量の抗増殖剤または抗癌剤を含むことができる。
【0129】
本発明を下記の非限定的な実施例によって例示する。
【実施例】
【0130】
実施例1:パンカビ属(Neurospora)におけるDNAメチル化の阻害
本実施例は、アカパンカビ(Neurospora crassa)におけるゼブラリンまたは関連化合物の低メチル化/脱メチル化活性を評価する方法であって、DNAメチル化研究の通常の実験系として役立つ方法を提供する。
【0131】
材料および方法
菌株および培養
アカパンカビ(N. crassa)N644、N242およびN613株、ならびに培養条件は過去に記載されている(Selker、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:9430-9435, 1998)。
【0132】
サザンブロット分析
7×104分生子/mlを接種した液体培養物から単離したDNA試料(〜1μg)でサザンハイブリダイゼーションを実施した。DNAをDpn II(D)またはSau3AI(S)で消化し、ゲル電気泳動で分画し、ナイロン膜に転写し、amRIP(図4A)またはψ63(図4B)配列について調べた。制限エンドヌクレアーゼDpn IIおよびSau3AIはいずれも配列GATCを認識するが、Sau3AIはC残基がメチル化されていると切断することができない。薬物濃度は5-ACでは12および24mM、TSAでは0.33および3.3μM、ならびにゼブラリンでは0.19、0.39、0.78、1.6および3.1μMであった。
【0133】
プレートアッセイ法
プレート試験を過去に記載されたものと基本的に同様の固化培地で実施した(Selker、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:9430-9435, 1998)。要するに、表示のアカパンカビの分生子約2000個を各プレートに播種した。播種後直ちに、各プレートの中央においた直径4mmのWhatman(商標)1番ペーパーディスクから薬物を投与した。
【0134】
結果
ゼブラリンによる処理はアカパンカビにおけるメチル化を低減した
代表的実験の結果を図4に示す。選択したサイズ標準(kb)および開始点(ori)を示している。対照ハイブリダイゼーション(図には示していない)から、消化が完全であることが示された。SおよびDレーンの間の差はDNAメチル化の指標である。
【0135】
これらのデータは、ヒストンデアシラーゼの公知の阻害剤であるTSAによって引き起こされたメチル化の選択的阻害に対して、ゼブラリンが5-AC同様DNAメチル化を全体的に阻害することを示している(SelkerおよびStevens、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8114-8118, 1985;Selker、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:9430-9435, 1998)。ゼブラリンの低メチル化活性は5-アザシチジンと同様の機構で起こると考えられる。
【0136】
サイレンシングされたhph遺伝子のゼブラリンによる再活性化
アカパンカビを用いて、メチル化の低減または逆転におけるゼブラリンの有効性を調べた(Selker、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:9430-9435, 1998)。アカパンカビN644株は、am遺伝子の隣接直接繰返し配列(flanking direct repeat)に対するRIPの作用の結果起こったシトシンのメチル化によりサイレンシング(抑制)された大腸菌hph遺伝子の単一コピーを有する(IrelanおよびSelker、Genetics 146:509-523, 1997参照)。活性hph遺伝子はハイグロマイシン(hyg)耐性を与える。したがって、ハイグロマイシンを含むプレート上でのコロニーの増殖は、メチル化消失によるhph遺伝子の再活性化を示す。
【0137】
プレート(図5)をゼブラリン(表示のとおり、0、2.5、5.0、10、20、100、200、および400nmol)、20nmolの5-アザシチジン(RIP系のための陽性対照として用いる公知の全般的脱メチル化剤)、またはハイグロマイシンなし(最大の分生子増殖を示すための陽性対照)で処理した。
【0138】
ゼブラリンで処理したプレート上の分生子増殖によって示されるとおり、この化合物はメチル化の低減または低減に有効で、それによりhph遺伝子を再活性化する。
【0139】
ゼブラリン毒性はdim-2 DNAメチル基転位酵素に依存しない
dim-2に突然変異を有する菌株はすべての検出可能なメチル基転移酵素活性を欠いている(KouzminovaおよびSelker、「Dim-2 encodes a DNA-methyltransferase responsible for all known cytosine methylation in Neurospora」、EMBO J. August 1, 2001)。ゼブラリン毒性がそのメチル基転位酵素阻害活性によって仲介されているかどうかを調べるために、dim-s菌株(N613)および野生型対照(N242)を高濃度(400nmol)のゼブラリンで攻撃した。これらのプレートにハイグロマイシンは適用しなかった。
【0140】
図6は代表的実験におけるプレートの一連の写真であり、ゼブラリンの増殖阻害効果がdim-2 DNAメチル基転位酵素に依存していないことを示している。これは、登録商標Whatmanフィルターディスク周囲の分生子毒性の領域が、400nmolのゼブラリンで処理したdim-2と野生型菌株の双方でほぼ同等であるため、明白である。
【0141】
実施例2:哺乳類細胞におけるDNAメチル化の阻害
本実施例は、哺乳類細胞におけるDNAメチル化に対するゼブラリン有効性を解析するために用いられている方法を提供する。
【0142】
材料と方法
細胞株
継代数7から15の間の10T1/2細胞の保存培養物を75cm2のプラスティックフラスコ(Falcon)内、10%熱不活化ウシ胎児血清および100U/mlペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco/Life Technologies, Inc.、カリフォルニア州パロアルト)を加えたEagle基本培地中で増殖させた。培養物を空気中5%CO2、37℃の加湿インキュベーター内で増殖させた。
【0143】
T24細胞株は米国基準培養株保存機関(ATCC、メリーランド州ロックビル)から入手し、10%熱不活化ウシ胎児血清および100U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを加えたDMEM中で培養した。培養物を空気中5%CO2、37℃の加湿インキュベーター内で増殖させた。
【0144】
5-アザ-CdR、5-アザ-CRおよびゼブラリン処理
細胞を播種(3×105細胞/100mm皿)し、24時間後、表示の濃度の化合物で処理した。培地を薬物処理後24時間または48時間のいずれかの時点で変えた。
【0145】
10T1/2細胞における筋原性表現型の誘導
10T1/2細胞で筋小管形成を過去に記載されているとおりにアッセイした(Constantinidesら、Nature 267:364-366, 1977)。
【0146】
DNAおよびRNAの単離
DNAおよびRNAを処理の三日後にNucleoBond RNA/DNAミディキット(Clontech Laboratories, Inc.、カリフォルニア州パロアルト)を用いて単離した。
【0147】
再活性化転写物のRT-PCR分析
全RNA(約10μg)を下記の試薬を用いて逆転写した:100単位のRNAsin(Promega Corp.、ウィスコンシン州マディソン)、0.1M DTT(Life Technologies, Inc.)、1000単位のMML V-RT(Life Technologies, Inc.)、1mMデオキシヌクレオチド三リン酸(Boehringer Mannheim、ドイツ)、75μg/ml BSA、1×MMLV-RT緩衝液(Life Technologies, Inc)、および0.025 ODUランダムへキサマー(Random Hexamers)(Amersham-Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)。反応混合物を25℃で10分間、42℃で45分間、90℃で3分間インキュベートした後、4℃で5分間冷却し、その間に1.25μlのMMLV-RT(200U/μl)を加え、次いで試料を42℃で45分間、75℃で10分間インキュベートし、-20℃で保存した。
【0148】
cDNAをp16またはGAPDHのいずれかに特異的なプライマーで増幅した。要するに、PCR反応は、25μl量で94℃で3分間と、94℃で1分間、56℃で30秒間、72℃で40秒間を28サイクル、および72℃で5分間の最終伸長段階(p16増幅)、そして94℃で1分間と、94℃で1分間、58℃で30秒間、72℃で45秒間を19サイクル、および72℃で2分間の最終伸長段階(GAPDH増幅)で実施した。
【0149】
プライマー配列は下記の通りであった。

【0150】
PCR増幅を10%DMSO中、100ngのRNAと同等のcDNA鋳型濃度で実施した。すべての反応を増幅の直線範囲内で分析した。PCR産物を2%アガロースゲルに溶解し、次いでアルカリ性条件下でナイロン膜(Zetaprobe;Bio-Rad、カリフォルニア州リッチモンド)に転写した。すべてのブロットをγ-32P-標識した内部オリゴヌクレオチドプローブと、過去に記載されているプロトコル(XiongおよびLaird、Nuc. Acids Res. 25:2532-2534, 1997)を用いてハイブリダイズさせた。
【0151】
結果
10T1/2細胞における筋原性表現型の誘導
環の5つの位置で修飾されたシチジン類縁体(例えば、5-アザ-CRおよび5-アザ-CdR)は、胚細胞の非筋原性C3H 10T1/2 C18株における横紋筋細胞の形成を誘導しうる強力なDNAメチル化阻害剤である(JonesおよびTaylor、Cell 20:85-93, 1980)。したがって、10T1/2細胞に筋原性スイッチを受けさせるゼブラリンの能力を試験した(図7)。
【0152】
未処理の10T1/2細胞は平坦でなめらかな単層を形成し、類上皮のようであった(図7A)が、5-アザ-CdR(図7B)または5-アザ-CR(図7C)のいずれかで処理した10T1/2細胞は薬物処理後約9〜10日で規則的な横紋を有する多核筋小管を形成した。5-アザ-CdRおよび5-アザ-CRはいずれも10T/1/2細胞において莫大な数の筋肉形成を誘導することができた(表2)。ゼブラリンも図2に示すとおり10T1/2細胞で筋肉形成を誘導したが、筋肉形成の程度は5-アザ-CdRまたは5-アザ-CRのいずれの程度と比べても、それほど大きくなかった(表2)。筋肉表現型はシトシンメチル化阻害剤によってのみ誘導されると報告されているため、この結果はゼブラリンが10T1/2細胞でDNAメチル化を阻害することを示していた。
【0153】
ヒト腫瘍細胞株T24におけるp16発現に対するゼブラリンの効果
T24膀胱癌由来細胞株は転写的にサイレントな高メチル化p16遺伝子を含み、これは5-アザ-CdRによって脱メチル化されて、p16遺伝子発現を再活性化しうることが明らかにされている(Gonzalgoら、Cancer Res. 58:1245-1252, 1998)。5-アザ-CdRは以前にp16発現を用量依存的様式で誘導することが明らかにされている(Benderら、Cancer Res. 58:95-101, 1998)ため、二つのリボヌクレオシド類縁体5-アザ-CRおよびZebをp16発現を誘導する能力を評価するために試験した(図8)。Zebは水溶液中で安定であるため、これらの細胞を異なる濃度のゼブラリンで24時間または48時間処理することによって、p16発現におけるゼブラリン処理延長の効果を試験した。次いで、RT-PCRを実施し、p16遺伝子が薬物治療によって誘導されるかどうかを評価した。
【0154】
図8において、陰性対照は双方とも(RNAなし、および未処理試料)p16発現を示さなかった。一方、3μMの5-アザ-CdRによる陽性対照はp16の多大な発現を示した(図8)。
【0155】
漸増濃度の5-アザ-CRによる処理は、用量依存的様式でのp16発現の誘導を示し、3μM用量では発現は観察されなかったが、100μM用量では有意な発現が観察された。それにもかかわらず、100μMの5-アザ-CR処理で観察された最高の発現レベルは3μMの5-アザ-CdR処理で観察されたp16発現レベルの5分の1でしかなかった。
【0156】
ゼブラリンは用量依存的様式および時間依存的様式の両方でp16発現を誘導することができた。300μMのゼブラリンによる24時間の処理は、p16発現を誘導するのに不十分であった。しかし、300μMのゼブラリンで48時間(より長い処理)または500μMのゼブラリンで24時間(より高い用量)のいずれかで処理すると、p16発現が誘導された。ゼブラリンの各用量で、薬物処理の時間(24時間から48時間)とp16遺伝子発現との間で相関性が明白である。処理時間が24時間から48時間に延びると、対応してp16発現の誘導も増大する。p16遺伝子の再活性化はシトシンメチル化阻害剤でのみ示されているため、この結果はゼブラリンがT24細胞でも同様にDNAメチル化を阻害することを示していた。
【0157】
実施例3:持続的処理によるDNAメチル化の阻害
実施例2に記載のものと基本的に同様の方法を用いて、T24細胞の低濃度のゼブラリンによる持続的長期(40日間)処理の効果も試験した。
【0158】
図11Aは、50μMまたは100μMいずれかのゼブラリンで処理したT24細胞におけるp16遺伝子発現、ならびにGAPDHの、表示の時点(第5日、第7日、第14日、第21日、第27日、第33日、および第40日)のRT-PCR分析を示している。例えば第5日の時点について、これはT24細胞を50または100μMいずれかのゼブラリンで5日間持続的に処理し、p16およびGAPDH(内部対照)のmRNAレベルを評価したことを示すことになる。
【0159】
100μMのZebで表示の時間処理したT24細胞におけるp16プロモーターおよびP16エキソン2両方のメチル化を定量し、図11Bにまとめている。100μM Zebの最大の脱メチル化は第14日に起こり、〜96%から〜47%まで低下した。この阻害低下は、デオキシ類縁体の5-アザ-CdRおよび公知の阻害剤のより強力型で観察された効果と類似である。
【0160】
実施例4:腫瘍抑制遺伝子発現の再活性化
本実施例はゼブラリンによる処理が哺乳類の細胞株における腫瘍抑制遺伝子発現を再活性化するのに有効であるとの証拠を提供する。
【0161】
方法と材料
Ms-SNuPEによるDNAメチル化の定量
規定のCpG部位の平均メチル化を、GonzalgoおよびJones(Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)ならびに米国特許第6,251,594号に記載のとおりにMs-SNuPEアッセイ法を用いて定量した。要するに、ゲノムDNA(〜4μg)を4単位のEcoRI(Boehringer Mannheim)(p16プロモーター/エキソン1およびp16エキソン2;図9A)または4単位のRsaI(Boehringer Mannheim)(p3;図9B)で終夜消化して目的領域の外側を切断した。
【0162】
亜硫酸水素ナトリウムによる標準処理の後、その領域のPCR産物を上の鎖のメチル化分析用の鋳型として生成した。亜硫酸水素処理したDNAの増幅に用いたプライマーの配列は下記のとおりであった。

【0163】
PCR条件:
p16プロモーター/エキソン1:94℃で3分間と、94℃で45秒間、67℃で45秒間、および72℃で45秒間を40サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長段階。
p16エキソン2:94℃で3分間と、94℃で1分間、62℃で45秒間、および72℃で45秒間を40サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長段階。
p3:95℃で2分間と、95℃で1分間、50℃で50秒間、および72℃で1分間を40サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長段階。
【0164】
PCR産物を電気泳動して、2%アガロースゲルからQiaquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて単離し、鋳型を最終量30μLの二重蒸留水中に溶出した。
【0165】
次いで、二組の鋳型4μlを、1×PCR緩衝液、1μM最終濃度プライマー、1μCiの[32P]dCTPまたはdTTP、および1単位の1:1 Taq/TaqStart抗体(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)からなる混合物6μlに加えた。一回のヌクレオチド伸長は95℃で1分間の後、50℃で2分間、および最後に72℃で1分間(p16プロモーター/エキソン1およびp16エキソン2)ならびに95℃で1分間の後、46℃で30秒間、および最後に72℃で20秒間(p3)のインキュベーションを含んでいた。SNuPEプライマーの配列は下記のとおりであった。

【0166】
チューブを短時間回転させた後、4μlの停止溶液を加えて反応液量10μlとし、試料を95℃で5分間煮沸した後、1.5μlを15%の変性ポリアクリルアミドゲル(7M尿素)上に導入した。ゲルを90Wで1.5時間泳動させ、次いで80℃で40分間乾燥した。ゲルをホスフォイメージング(phosphorimaging)カセットに曝露して[32P]dCTP対[32P]dTTPの取り込みの比を定量し、メチル化パーセントの定量を3つの異なるCpG部位から平均した。次いでゲルをBioMax MRフィルム(Kodak)に曝露して、実験結果を記録した。
【0167】
細胞毒性の定量
コロニー形成アッセイ法のために10T1/2(250/60mm皿)およびT24細胞(100/60mm皿)を三組ずつ播種した。10T1/2細胞およびT24を表示濃度の化合物で処理した。いったん細胞コロニーが認識されれば(12〜14日後)、細胞を100%メタノール中で固定し、10%ギムザ染色剤で染色した。細胞の生存パーセンテージを、処理プレート上の平均コロニー数を未処理プレート上の平均コロニー数で割って100をかけることにより評価した。
【0168】
結果
10T1/2細胞株のDNAメチル化および細胞毒性に対するゼブラリンの効果
10T1/2細胞は5-アザ-CRまたは5-アザ-CdRいずれかの脱メチル化作用によって筋肉に分化するよう誘導されうるため、ZebのDNAメチル化を阻害する能力を調べ、これら二つの薬物と比較した。Ms-SNuPEにより分析した、これら三つの薬物によるDNAメチル化の阻害を表2に示している。0.3μMの5-アザ-CdRによる処理により、有効なメチル化は対照の86%に比べて54%を示したが、3μMの5-アザ-CRでは有効なメチル化は59%、30μMのゼブラリンでは58%となった(表2)。
【0169】
(表2) 10T1/2細胞におけるDNAメチル化の阻害

10T1/2細胞を表示のシチジン類縁体で24時間処理し、9〜10日後に筋肉細胞について+から+++として採点した(+は最小の筋肉形成を表し、+++は最大の筋肉形成を表す)。DNAメチル化の阻害を定量するために、Ms-SNuPE分析を用いてp3遺伝子座のメチル化パーセントを分析した。細胞死滅は、同様に処理し、14〜16日後にギムザ染色剤で染色した、250細胞を含む培養物におけるコロニー形成率の低下によって決定した。結果は二つの異なる実験における三組のプレートで得た平均値である。
【0170】
表2は、コロニー形成率の低下によって測定した、三つの薬物すべての培養10T1/2細胞に対する細胞毒性も示している。0.3μM用量の5-アザ-CdRは、3μMの5-アザ-CRまたは30μMのゼブラリンのいずれと比べても細胞毒性がかなり高い(コロニー形成率のそれぞれ74%対24%対17%低下、表2)。しかし、0.3μMの5-アザ-CdRおよび3μMの5-アザ-CRはいずれもかなりの細胞死を引き起こすが、30μMゼブラリンは非常にわずかな細胞死しか引き起こさなかった。
【0171】
ヒト腫瘍細胞のDNAメチル化に対するゼブラリンの効果
膀胱癌細胞株および腫瘍において、p16プロモーターおよびエキソン2遺伝子座はいずれもメチル化されることが多く、p16プロモーターの脱メチル化はp16発現に直接対応することが以前に見いだされている(Gonzalez-Zuluetaら、Cancer Res. 55:4531-4537, 1995;Benderら、Cancer Res. 58:95-101, 1998)。p16遺伝子発現が試験した三つの薬物すべてによって誘導されうる(図8)ことを考慮して、p16プロモーターおよびp16エキソン2両方の脱メチル化におけるこれらの薬物の有効性をMs-SNuPE分析によりさらに調査した。
【0172】
図10から、3μMの5-アザ-CdR処理によりp16プロモーターのメチル化が96%から52%まで低下した(表3)ことが明らかである。p16プロモーターにおいて、漸増濃度の5-アザ-CRはメチル化のレベル低下を示し、3μM用量でのメチル化レベル91%から出発して100μM用量での68%に低下した(表3)。
【0173】
300μM、500μM、および1mMのゼブラリンによる24時間の処理は、p16プロモーターのメチル化レベルのそれぞれ91%、85%、および72%への低下を引き起こした(表3)。300μM、500μM、および1mMのゼブラリンによる処理を48時間に延長することで、メチル化のより強い阻害がみられ、p16プロモーターのメチル化レベルはそれぞれ80%、77%、および68%に低下した(表3)。この脱メチル化パターンは図8に示すp16発現分析と良好な相関性を示したが、一次ではなかった。これらの結果より、ゼブラリンおよび5-アザ-CRによるp16発現の再活性化はp16プロモーターおよびエキソン2領域両方におけるメチル化阻害と相関することが示唆された。
【0174】
表3は、コロニー形成率の低下により測定した、三つのすべての薬物の培養T24細胞に対する細胞毒性についても示している。3μM用量の5-アザ-CdRは非常に細胞毒性が高い(コロニー形成率75%低下)。5-アザ-CRは用量依存的細胞毒性を示し、3μM用量でのごくわずかな細胞毒性効果から、100μM用量でのかなりの細胞毒性効果(コロニー形成率54%低下)が観察された。これとは対照的に、ゼブラリンは用量依存的細胞毒性を示したが、時間依存的細胞毒性は有意ではなかった。すなわち、処理時間を延長しても、ゼブラリンのいかなる用量でも細胞毒性を有意に増大させることはなかった。最高の細胞毒性は1mMのゼブラリンで48時間処理したT24細胞で観察され(コロニー形成率23%低下)、これは5-アザ-CRまたは5-アザ-CdRのいずれと比べてもかなり低いものである。これらの結果は、T24細胞においてゼブラリンは、非常に高濃度の場合にも5-アザ-CRまたは5-アザ-CdRのいずれよりもはるかに細胞毒性が低いことを示している。
【0175】
(表3)T24細胞におけるDNAメチル化の阻害

【0176】
ゼブラリン処理細胞におけるDNAメチル基転位酵素の減少
T24細胞をゼブラリンで処理すると、DNMT1およびDNMT3b3のレベルの有意な低下が起こった。DNMT3b3のmRNAはT24細胞で発現される唯一の3b転写物で、DNMT3aレベルはこれに対する適当な抗体が得られないために評価することができなかった。したがって、図12に関して、タンパク質抽出物を処理および未処理両方のT24細胞から単離し(300万細胞群、処理は500μMのゼブラリンで48時間)、図12に示すとおりDNMT1およびDNMT3b3の得意抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。β-アクチンを導入対照として含め、各タンパク質の分子量を示す。
【0177】
ヒト腫瘍細胞における細胞毒性
図10Bは、コロニー形成率の低下により測定した、三つのすべての薬物の培養T24細胞に対する細胞毒性について示している。3μM用量の5-アザ-CdRは非常に細胞毒性が高い(コロニー形成率75%低下)。5-アザ-CRは用量依存的細胞毒性を示し、最高レベルは100μM用量でみられた(コロニー形成率54%低下)。一方、ゼブラリンは用量依存的細胞毒性を示したが、時間依存的細胞毒性はわずかであった。すなわち、処理時間を延長しても、ゼブラリンのいかなる用量でも細胞毒性を有意に増大させることはなかった。最高の細胞毒性は1mMのゼブラリンで48時間処理したT24細胞で観察され(コロニー形成率23%低下)、これは5-アザ-CRまたは5-アザ-CdRのいずれと比べても有意に低い毒性である。
【0178】
実施例5:ヒト肺腫瘍におけるウリジン-シチジンキナーゼの定量
本実施例はウリジン-シチジンキナーゼ活性について組織を試験するための代表的方法を提供する。ウリジン-シチジンキナーゼはゼブラリン活性化に関与する第一の酵素であると考えられているため、腫瘍組織におけるその増加は、DNAメチル化の低減(または逆転)を最も必要としている組織での薬物の選択的活性に関する機構を提供する。
【0179】
ウリジンキナーゼアッセイ法
ヒト肺腫瘍からの臨床生検組織試料、および並行正常組織試料を、50mMトリスHCl、pH7.5、5mMベンズアミジン、20%グリセロール、および5%H2Oを含む緩衝液に懸濁した。抽出直前に緩衝液を2mM DTTおよび0.5mM PMSFにとった。組織試料をこの混合物中でホモジナイズし、次いで5秒パルスで3回超音波処理して細胞を破壊した。細胞抽出物を4℃、14,000gで10分間遠心分離し、上清を除去した。
【0180】
タンパク質抽出を、標準としてウシ血清アルブミンを用い、Bradford法により定量した。
【0181】
キナーゼアッセイ反応混合物は50mM MgCl2、5mM ATP、および85%H2Oを含んでいた。使用直前に2mM DTTを加える。反応混合物150μlに5μlの200mM CPおよびCPK(1単位/μl)を加え、37℃で2分間インキュベートすることにより、反応を開始した。次いで、500μMの3H標識したウリジンを加え、試料を37℃で1分間インキュベートした後、酵素抽出物を加え、0〜15分間インキュベートした。沸騰H2O浴中で2分間加熱することにより、反応を停止した。
【0182】
生成したヌクレオチドの量は、反応混合物20μlをDE-81の2.2cm Whatmanフィルターディスクにスポットすることにより定量した。風乾後、ディスクを1mMギ酸アンモニウム中緩やかに撹拌しながら10分間を2回、および脱イオン水中緩やかに撹拌しながら5分間を2回で洗浄して、ヌクレオシド基質を除去した。酵素を含まない対照試料を各定量と同時にアッセイすることは有用である。洗浄したペーパーディスクを加熱乾燥し、次いで個々のシンチレーションバイアルに入れ、0.1M HCl-0.1M KCl中で30分間溶出し、次いでシンチレーション混合物中で10分間振盪した。放射能をシンチレーション計数して定量した。酵素活性をpmol/分/mgタンパク質で表す。
【0183】
これらの分析からのデータを表4に報告する。表4に示すとおり、肺腫瘍の30%が関連する正常組織に比べて実質的に高いレベルのウリジン/シチジンキナーゼ(UK/CK)を有していた。
【0184】
(表4)ヒト腫瘍におけるウリジン-シチジンキナーゼ活性

1U/CK:ウリジン/シチジンキナーゼpmol/分/mgタンパク質;腫瘍の値を正常組織の値の上に示す。
2腫瘍における活性/隣接する対の正常組織における活性の比。
【0185】
実施例6:ゼブラリンのインビボ効果
本実施例はBALB/c nu/nuマウスのEJ6腫瘍に対するゼブラリンのインビボ効果について記載する。さらに、実施例6はヒト腫瘍細胞に対するゼブラリンの有効性も示す。
【0186】
材料および方法
4〜6週齢の雄BALB/c nu/nuマウス(Harlan、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)の左右の側腹部にEJ6細胞(5×105/注射)を皮下接種した。肉眼的(50〜200mm3)腫瘍形成(4〜6週間後)後にゼブラリン処置を開始した。ゼブラリン(500mg/kgまたは1000mg/kg)を18日間毎日腹腔内注射または経口胃管栄養法にて投与した。対照マウスには0.45%食塩水を18日間腹腔内注射または経口胃管栄養法にて投与した。マウス(n=30)を5群(対照群、500mg/kg腹腔内注射、500mg/kg経口、1000mg/kg腹腔内注射、および1000mg/kg経口)に分類した。各処置群は最低5匹のマウス(1群につき少なくとも6腫瘍)からなっていた。
【0187】
腫瘍体積(TV)をノギスで測定し、次の式を用いて計算した:腫瘍体積=LD2/2(Lは最長直径であり、Dは最短直径である)。相対腫瘍体積(RTV)は次の通りに計算した:RTV=TVn/TV0(TVnは第n日に計算した体積である)。マウスを最終処置の24時間後に屠殺した。腫瘍を摘出し、ただちに中性緩衝化ホルマリンで固定し、次いで凍結切片のためにOCT化合物中に包埋した。凍結切片を加工し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。すべての組織検査はLeica DM LB顕微鏡(Leica Microsystems、ドイツ)を用いて光学顕微鏡検査により実施した。
【0188】
全RNAを腫瘍から単離し、通常の方法を用いて遺伝子発現を分析した。DNAも単離し、下記に記載のとおり、Ms-SnuPEによりp16プロモーターのメチル化状態を測定した。
【0189】
結果
対照および処置マウス群の腫瘍切片を摘出し、H&E染色により分析した。各群から採取した腫瘍切片の全領域の代表的画像を比較した。染色した切片を調べることにより、未処置の腫瘍切片に対して処置腫瘍切片では支質に対する腫瘍細胞の比は低いことが明らかとなった。
【0190】
図13に示す時点ですべてのマウス群の腫瘍体積を測定した。同様に、図14では表示時点で各群のマウス(n=5または6)を秤量し、体重を最初の処置後の日数に対してプロットした。要するに、図13に示すとおり、腫瘍の増殖は対照群に比べてすべての処置群で抑制されたようにみえ、1000mg/kg経口または腹腔内処置群では腫瘍の退行が認められた。図14に示すとおり、すべての処置群で体重減少は非常に小さく、最大の体重減少(〜7%)は1000mg/kg処置群で観察された。さらに、下記に示すとおり、p16の再活性化が認められた。
【0191】
ゼブラリンはインビボでp16遺伝子発現を再活性化する
BALB/c nu/nuマウスで増殖中のEJ6腫瘍細胞において、ゼブラリン処置後のp16遺伝子再活性化がヒトp16 cDNAに特異的なプライマーを用いたRT-PCRにより検出された。GAPDH mRNAレベルを投入RNAの量および完全性の対照とするために測定した。対照群は0.45%NaClの腹腔内注射または経口胃管栄養法いずれかにて擬似処置したマウスから得た腫瘍である。各群について、類似の独立した腫瘍6つのうちの1つから得た結果を図15に示している。
【0192】
代表群のEJ6腫瘍細胞から単離したDNAのp16プロモーターのメチル化状態を、Ms-SnuPE分析を用いて定量した。図16に示す結果は、各群で二回ずつ実施した4つの独立腫瘍からの3つのCpG部位の平均であった。
【0193】
実施例7:ゼブラリンの代謝
ヒト膀胱癌細胞(T24)を抗生物質含有DMEM+10%FCS培地中でインキュベートした後に、ゼブラリンの代謝を同定した。これらの実験では比活性200DPM/pmolのゼブラリン(10μM、1μCi)を用いた。インキュベーション終了時に、細胞を60%メタノールで抽出し、一定量をSAX-10 HPLCで次のメタノール/水勾配を用いて分析した:1〜5分は1%MeOH、5〜25分は25%MeOHまでの勾配、25〜35分は25%MeOHの定濃度、および10分後に1%MeOHに戻る。リン酸化代謝物を標準合成試料との比較により同定した。この方法を用いて、6時間インキュベーション後の濃度の関数としての代謝物生成を調べた(図17)。生成した主代謝物は5'-三リン酸塩であった。一方、24時間のインキュベーション期間後にゼブラリン(10μM、1μCi)を一回投与すると、薬物作用の仲介において重要であると考えられる不明の代謝物(?2、図18)の生成がみられた。
【0194】
T24細胞において同様のインキュベーションプロトコルに従い(ゼブラリン(10μM、1μCi)24時間、細胞DNAおよびRNAを三試薬法を製造者の指示に従って用いて単離した。ゼブラリンおよび2'-デオキシゼブラリンのレベルを、それぞれ精製したRNAおよびDNAの全放射能を測定することにより定量した。ゼブラリンおよび2'-デオキシゼブラリンの同定を、消化RNAおよびDNAの逆相HPLC分析および標準品との比較により行った。図19において、棒グラフはT24細胞におけるゼブラリンのDNAおよびRNAへの相対的取り込みを示しており、DNAに比べてRNAに約7倍量のゼブラリンが取り込まれることを示している。
【0195】
本開示は、DNAメチル化を阻害するためのゼブラリンおよびその誘導体を用いるための態様を提供する。この方法は、高メチル化関連の癌などの高メチル化関連疾患を、被験者にゼブラリン(またはその誘導体)を投与することにより治療または改善する手段をさらに提供する。本開示の正確な詳細は、記載の発明の精神から逸脱することなく、変動または改変されうることが明白である。発明者らは、添付の特許請求の範囲内に入るすべてのそのような改変および変異形を特許請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中の核酸メチル化を低減、防止または逆転する方法であって、低メチル化に有効な量の2-ピリミジノン誘導体を細胞に投与し、それにより細胞中のDNAメチル化を低減、防止または逆転する段階を含む方法。
【請求項2】
2-ピリミジノン誘導体またはその代謝物がDNAメチル基転位酵素を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞に高メチル化核酸分子を含むことが知られているか、または疑われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
既知の、または疑いがある高メチル化核酸分子がCpGジヌクレオチドを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
2-ピリミジノン誘導体が炭水化物誘導体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
2-ピリミジノン誘導体がゼブラリンまたはゼブラリン誘導体である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
DNAメチル化を低減、防止または逆転することが細胞の腫瘍形成状態を改善する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
2-ピリミジノン誘導体がオリゴヌクレオチドに組み込まれる、請求項6記載の方法。
【請求項10】
2-ピリミジノン誘導体がオリゴヌクレオチド中で細胞に投与される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
2-ピリミジノン誘導体がRNAに組み込まれる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
2-ピリミジノン誘導体がDNAに組み込まれる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
細胞中の核酸が高メチル化されていると知られているか、または疑われる、請求項9記載の方法。
【請求項14】
細胞が細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項15】
細胞が過剰増殖細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
過剰増殖細胞が哺乳類腫瘍細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
シチジンデアミナーゼ阻害剤を細胞に事前または同時投与する段階をさらに含む、 請求項1記載の方法。
【請求項18】
シチジンデアミナーゼ阻害剤がテトラヒドロウリジンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
2-ピリミジノン誘導体が4,6-ジフルオロピリミジノン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
4,6-ジフルオロピリミジノン誘導体が4,6-ジフルオロ-ゼブラリン誘導体である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
被験者の高メチル化関連疾患、状態、または障害を治療または改善する方法であって、被験者に低メチル化に有効な量のゼブラリン、または低メチル化活性を保持しているその類縁体もしくは誘導体を投与する段階を含む方法。
【請求項22】
類縁体または誘導体が下記式

[式中、R基は独立に、カルボン酸エステル、リン酸エステルおよびエーテルからなる群より選択され、XはH、F、Cl、Br、アルキル、および下記式

または

(式中、YはH、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびハロゲンからなる群より選択される)による基からなる群より選択される]を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
疾患が過剰増殖性疾患である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
ゼブラリンが薬学的組成物の形で投与される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
ゼブラリンがオリゴヌクレオチドに組み込まれる、請求項21記載の方法。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドがRNAである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドがDNAである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ゼブラリンがオリゴヌクレオチド中で提供される、請求項21記載の方法。
【請求項29】
細胞の腫瘍形成状態を改善する方法であって、細胞内のCpGジヌクレオチドのシトシンのメチル化を低下させるため、低メチル化に有効な量のゼブラリンを細胞に投与し、それにより細胞の腫瘍形成状態を改善する段階を含む方法。
【請求項30】
抗癌剤を細胞に投与する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
抗癌剤がイフォスファミド、シスプラチン、メトトレキセート、プロカリジン、エトポシド、BCNU、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドキソルビシン、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ゼブラリンが薬学的組成物の形で提供される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
細胞が被験者の細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
標的配列のメチル化阻害法であって、配列を標的配列の少なくとも一部に相補的な誘導体化オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含み、誘導体化オリゴヌクレオチドが少なくとも一つの2-ピリミジノン部分を含む方法。
【請求項35】
オリゴヌクレオチドがDNAを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
オリゴヌクレオチドがRNAを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
標的配列がCpGジヌクレオチドを含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
標的配列が腫瘍抑制遺伝子の調節領域を含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
接触が細胞内で起こる、請求項34記載の方法。
【請求項40】
細胞が細菌細胞、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
誘導体化オリゴヌクレオチドが少なくとも一つのゼブラリン残基を含む、請求項38記載の方法。
【請求項42】
ゼブラリンに比べ生体系における低メチル化活性を保持している、ゼブラリンの誘導体。
【請求項43】
ゼブラリンに比べてより強い低メチル化活性を有する、請求項42記載の誘導体。
【請求項44】
リン酸化ゼブラリン誘導体である、請求項42記載の誘導体。
【請求項45】
2'-デオキシ-ゼブラリン誘導体である、請求項44記載の誘導体。
【請求項46】
下記式

[式中、R基は独立に、カルボン酸エステル、リン酸エステルおよびエーテルからなる群より選択され、XはH、F、Cl、Br、アルキル、および下記式

または

(式中、YはH、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびハロゲンからなる群より選択される)による基からなる群より選択される]を有する、請求項44記載の誘導体。
【請求項47】
核酸メチル化を低減、防止または逆転するためのキットであって、有効な量の2-ピリミジノン誘導体を含むキット。
【請求項48】
2-ピリミジノン誘導体が4,6-ジフルオロ-ゼブラリン誘導体である、請求項47記載のキット。
【請求項49】
阻害を必要としていることが疑われる被験者の高メチル化仲介性疾患または障害を治療するための、請求項47記載のキット。
【請求項50】
説明書をさらに含む、請求項47記載のキット。
【請求項51】
治療を必要とする被験者に少なくとも一回用量の治療物質を投与するための用法を説明書に含む、請求項50記載のキット。
【請求項52】
2-ピリミジノン誘導体がゼブラリンである、請求項47記載のキット。
【請求項53】
2-ピリミジノン誘導体およびテトラヒドロウリジンを含む薬学的組成物。
【請求項54】
2-ピリミジノン誘導体がゼブラリン類縁体である、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
2-ピリミジノン誘導体がゼブラリンである、請求項54記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−248223(P2010−248223A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144618(P2010−144618)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【分割の表示】特願2003−517229(P2003−517229)の分割
【原出願日】平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願人】(502418376)ステイト オブ オレゴン アクティング バイ アンド スルー ザ オレゴン ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケイション オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ オレゴン (5)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(504043048)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (3)
【出願人】(500389748)ユニバーシティー オブ マイアミ (3)
【Fターム(参考)】