説明

EBGマテリアル

【課題】EBGを大型化させることなく、電力消費による損失を低減することのできるEBGマテリアルを得る。
【解決手段】導体板2と、同一形状を有する複数の金属小板1と、複数の連結体4と、キャパシタンス要素6とを備え、複数の金属小板1のそれぞれは、規則的に配列され、導体板2の上部に対向配置され、連結体4を介して導体板2と電気的に接続され、隣接する金属小板1ごとに複数個分散配置されたキャパシタンス要素6を介して隣接する金属小板1同士が電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に用いられ、特定の周波数帯の電磁波に対して、その反射位相変化が0°となるEBGマテリアルに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロマグネティックバンドギャップ(EBG)は、誘電体または金属を、2次元あるいは3次元に周期的に配列した構造を有し、これにより、EBG内部または表面上で特定の周波数帯の電磁波の伝搬を禁止するバンドギャップを形成する構造となる。従来のEBGは、誘電体層の表面に金属小板を周期的に配列し、誘電体層の裏面の金属板と金属小板の各々とをスルーホールで導通させることで構成される。
【0003】
隣接する金属小板の間ではキャパシタンス成分が形成される。また、金属小板→スルーホール→金属板→スルーホール→金属小板という電流経路によってインダクタンス成分が形成される。これにより、各周期構造は、LC並列共振回路として振る舞う。したがって、LC並列共振回路の共振周波数において、高いインピーダンスを有し、電磁波の伝搬を禁止するバンドギャップが形成される。
【0004】
LC並列共振を利用することから、EBGの動作周波数は、EBG構造のインダクタンス成分とキャパシタンス成分によって決定され、動作周波数を低くするには、これらの値を大きくする必要が生じる。
【0005】
インダクタンス成分を増大させることは、スルーホールを長くすることに対応する。また、キャパシタンス成分を増大させることは、隣接する金属小板の間隔を狭くし、金属小板を大きくすることに対応する。したがって、EBGの動作周波数を低くするためには、EBGが大型化するという問題がある。
【0006】
このような課題を解決するための方法として、隣接する金属小板の間にバラクタダイオードを配置するものがある(たとえば、非特許文献1参照)。隣接する金属小板の間にキャパシタンス成分を有する集中定数素子を配置することで、キャパシタンス成分を補い、金属小板を大きくすることなくEBGの動作周波数を低くしている。
【0007】
【非特許文献1】Proceedings of the 36th European Microwave Conference、1566〜1569ページ、2006年9月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
非特許文献1における方法は、隣接する金属小板の間にバラクタダイオードを配置したため、前述のインダクタンス成分を形成する電流経路が金属小板全体ではなく、バラクタダイオードが接続された部分に集中する。したがって、バラクタダイオードが持つ抵抗によって電力が消費され、EBGマテリアルでの損失が増大するという課題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、EBGを大型化させることなく、電力消費による損失を低減することのできるEBGマテリアルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るEBGマテリアルは、導体板と、同一形状を有する複数の金属小板と、複数の連結体と、キャパシタンス要素とを備え、複数の金属小板のそれぞれは、規則的に配列され、導体板の上部に対向配置され、連結体を介して導体板と電気的に接続され、隣接する金属小板ごとに複数個分散配置されたキャパシタンス要素を介して隣接する金属小板同士が電気的に接続されるものである。
【0011】
さらに、本発明に係るEBGマテリアルは、導体板と、同一形状を有する複数の金属小板と、複数の連結体と、キャパシタンス要素と、インダクタンス要素とを備え、複数の金属小板のそれぞれは、中空部を有する第1の金属小板と、ギャップを介して第1の金属小板の中空部内に配置された第2の金属小板との対で構成され、複数の金属小板が規則的に配列され、導体板の上部に対向配置され、連結体を介して第2の金属小板と導体板とが電気的に接続され、隣接する金属小板ごとに分散配置されたキャパシタンス要素を介して隣接する第1の金属小板同士が電気的に接続され、第2の金属小板の端部に複数個分散配置されたインダクタンス要素を介して1対を構成する第1の金属小板と第2の金属小板とが電気的に接続されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属小板上の電流分布を乱さないように、隣接する金属小板間に集中定数素子を複数個分散配置し、金属小板上の電流が集中定数素子に集中することをなくすことにより、EBGを大型化させることなく、電力消費による損失を低減することのできるEBGマテリアルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のEBGマテリアルの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図であり、図1(a)は、上面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A’面の断面図である。図1のEBGマテリアルは、第1の金属小板1aおよび第2の金属小板1bを備えた金属小板1、導体板に相当する地板2、ギャップ3、接続導体4、チップインダクタ5、およびチップキャパシタ6で構成される。
【0015】
金属小板1は、正方形等の多角形、または円形等をしており、規則的に配列され、ギャップ3により第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとに隔てられている。すなわち、金属小板1は、図1に示すように、中空部を有する第1の金属小板と、ギャップ3を介して第1の金属小板1aの中空部内に配置された第2の金属小板1bとで構成される。さらに、図1においては、金属小板1の形状が正方形であり、金属小板1の規則的な配列の一例として、各端部が等間隔となるように隣接して格子状に2次元配列されている場合を例示している。
【0016】
地板2は、金属小板1と対向して配置される。そして、第2の金属小板1bは、接続導体4によって地板2と接続される。
【0017】
また、第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとの間には、チップインダクタ5が設けられている。さらに、隣接する第1の金属小板1a同士の間には、チップキャパシタ6が設けられている。ここで、チップキャパシタ6は、隣接する第1の金属小板1a同士の接続に当たって、それぞれ複数個が分散配置されている。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1における図1(b)に示したEBGマテリアルの断面図の中の点線で示した部分を取り出した断面図であり、EBGマテリアルの周期構造の1単位(以下、これをセルと呼ぶ)の断面を示したものである。このセルの断面図に基づいて、EBGマテリアルの動作を、次に説明する。
【0019】
EBGマテリアルの周期構造内(すなわち、セル内)では、隣接する第1の金属小板1a間の容量結合により、キャパシタンス成分Cが生じる。ここで、第1の金属小板1a間に設けられるチップキャパシタ6の静電容量をCとする。
【0020】
また、第2の金属小板1bから接続導体4を介して地板2を通り、隣接する接続導体4を介して第2の金属小板1bに流れる電流の経路によって、インダクタンス成分Lが生じる。ここで、第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとの間に設けられるチップインダクタ5のインダクタンス成分をLとする。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態1の図2におけるセルをLC並列共振回路で表現した回路図である。図2に断面図として示された1つのセルは、図3で示すLC並列共振回路によって簡易的に表現される。さらに、このようなセルが2次元に配列されると、LC並列共振回路の共振周波数において、高いインピーダンスを有し、バンドギャップを形成することになる。
【0022】
LC並列共振回路の共振周波数は、チップインダクタ5とチップキャパシタ6の素子値を調整することで任意の値をとることができる。しかし、従来の構造のように、金属小板1の外周の辺の中央にチップキャパシタ6を配置した場合には、チップキャパシタ6によって金属小板1上の電流分布が変化し、金属小板1のそれぞれの辺の中央に電流が集中する。
【0023】
図4は、従来のEBGマテリアルの直上に線状アンテナを配置した場合において、アンテナによってEBGマテリアル表面に励振される電流の向きを示すベクトル図である。この図4を見ると、金属小板1の辺の中央付近に電流が集中していることが確認できる。
【0024】
したがって、チップキャパシタ6に含まれる抵抗により電力が消費されてしまい、アンテナに入力された電力が効率よく空間に放射されなくなってしまう。すなわち、アンテナの放射効率が低下してしまうという問題がある。
【0025】
これに対して、本実施の形態1におけるEBGマテリアルは、チップキャパシタ6を第1の金属小板1aの1辺あたりに複数個並べて分散配置し、第1の金属小板1aの辺に配置するチップキャパシタ6の数を増やすによって、金属小板1上の電流分布が乱されないように(すなわち、辺の中央部分に電流が集中しないように)している。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの直上に線状アンテナを配置した場合において、アンテナによってEBGマテリアルの表面に励振される電流の向きを示すベクトル図である。図4と対比すると、図5において、金属小板1上の電流分布の乱れが抑えられ、効果的に電流の分散がなされていることが確認できる。
【0027】
この結果、チップキャパシタ6に電流が集中することがなくなり、チップキャパシタ6に含まれる抵抗による電力消費を低減し、アンテナの放射効率の劣化を防ぐことが可能となる。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの直上に配置した線状アンテナの放射効率を示す図である。図6において、実線は、本実施の形態1におけるEBGマテリアルを用いた場合の放射効率であり、点線は、従来のEBGマテリアルを用いた場合の放射効率である。
【0029】
この例では、本実施の形態1のEBGマテリアルを用いることにより、使用する周波数帯域における放射効率の最悪値が、従来のEBGマテリアルを用いる場合と比較して、約4dB改善している。
【0030】
以上のように、実施の形態1によれば、隣接する金属小板の間に配置するチップキャパシタを、金属小板1上の電流分布が乱されないように複数個並べて分散配置している。これにより、1つのチップキャパシタに電流が集中することがなくなり、従来の1つのチップキャパシタを利用したEBGマテリアルよりも損失の小さなEBGマテリアルを得ることが可能となる。
【0031】
なお、本実施の形態1では、第1の金属小板1aおよび第2の金属小板1bは、正方形であり、金属小板1の各端部が等間隔となるように隣接して規則的に2次元配列されている場合を例示したが、本発明は、これらの形状および配列に限定されるものではない。例えば、形状を正方形以外の多角形または円形とし、それぞれが隣接して規則的に配列されている場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、図示していないが、地板2と、第1の金属小板1aおよび第2の金属小板1bを備えた金属小板1との間を誘電体で満たしても、同様の効果を得ることができる。また、図1では、隣接する第1の金属小板1a同士の間のチップキャパシタ6を、第1の金属小板1aの1辺あたり2個として図示しているが、3個以上とすることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、第2の金属小板1bと地板2は、接続導体4によって接続されているが、それぞれが電気的に接続されていればよく、例えば、地板2と金属小板1との間を誘電体で満たした場合には、接続導体4としてスルーホールを用いることができ、この場合にも同様の効果を得ることができる。
【0034】
さらに、上述の実施の形態では、金属小板1が第1の金属小板1aおよび第2の金属小板1bを備えている場合を例示したが、金属小板1が一体になっている場合にも、隣接する金属小板同士の接続に用いるチップキャパシタを複数個分散配置することにより、同様の効果を得ることができる。
【0035】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図であり、図7(a)は、上面図であり、図7(b)は、図7(a)におけるA−A’面の断面図である。図7において、実施の形態1と同一の構成要素は、図1と同一符号で表し、説明は省略する。また、EBGマテリアルの動作原理についても、実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0036】
本実施の形態2における図7の構成は、先の実施の形態1における図1の構成と比較すると、第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとの間に配置されたチップインダクタ5の数が多くなっている一方で、隣接する第1の金属小板1a同士の間に配置されたチップキャパシタ6の数が少なくなっている。
【0037】
より具体的には、本実施の形態2では、チップインダクタ5をギャップ3に放射状に分散配置(すなわち、第2の金属小板1bの4辺のそれぞれに対応して分散配置)している。さらに、本実施の形態2では、チップキャパシタ6を第1の金属小板1aの1辺あたりに1個ずつ配置している。従って、本実施の形態2のEBGマテリアルは、チップキャパシタ6の数および配置は、従来のままであるが、チップインダクタ5の数および配置を工夫することにより、電力消費の低損失化を図っている。
【0038】
EBGマテリアルのバンドギャップの帯域を広げるためには、先の図3に示した簡易等価回路におけるインダクタンス成分を増大させることが必要となる。しかしながら、一般に、チップインダクタのインダクタンス値が大きくなるほど、そのチップインダクタに含まれる抵抗値も大きくなる。
【0039】
これに対して、図7に示すように、複数のチップインダクタ5をギャップ3に放射状に配置する構造をとることによって、チップインダクタ5へ流入する電流の集中を防ぎ、チップインダクタ5に含まれる抵抗による電力消費を低減することができる。これは、EBGマテリアルの上部に設置されるアンテナの放射効率の劣化抑制にもつながる。
【0040】
以上のように、実施の形態2によれば、第1の金属小板と第2の金属小板との間に複数のチップインダクタを配置することにより、EBGマテリアルの上部に配置されるアンテナの放射効率の劣化を抑制しながら、インダクタンス成分を所望の値に増大させることができ、バンドギャップの広帯域化が可能となる。
【0041】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図であり、図8(a)は、上面図であり、図8(b)は、図8(a)におけるA−A’面の断面図である。図8において、先の実施の形態1と同一の構成要素は、図1と同一符号で表し、説明は省略する。また、EBGマテリアルの動作原理についても、先の実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0042】
本実施の形態3における図8の構成は、先の実施の形態1における図1の構成と比較すると、隣接する第1の金属小板1a同士の間に配置されたチップキャパシタ6の数は同じであるが、第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとの間に配置されたチップインダクタ5の数が多くなっている。
【0043】
より具体的には、本実施の形態3では、先の実施の形態2と同様に、チップインダクタ5をギャップ3に放射状に分散配置(すなわち、第2の金属小板1bの4辺のそれぞれに対応して分散配置)している。さらに、本実施の形態3では、先の実施の形態1と同様に、チップキャパシタ6を第1の金属小板1aの1辺あたりに2個ずつ並列に分散配置している。従って、本実施の形態3のEBGマテリアルは、チップキャパシタ6の数および配置と、チップインダクタ5の数および配置をともに工夫することにより、電力消費の低損失化を図っている。
【0044】
実施の形態3では、隣接する第1の金属小板1a同士の間のチップキャパシタ6と、第1の金属小板1aと第2の金属小板1bとの間のギャップ3に配置されるチップインダクタ5をそれぞれ複数個並列に分散配列している。このような構成をとることによっても、チップキャパシタ6およびチップインダクタ5に含まれる抵抗によって消費される電力の低減が可能である。
【0045】
チップキャパシタ6を図8のように配置することによって、先の図3で示した簡易等価回路の共振周波数を低くすることができ、低い周波数帯で動作するEBGマテリアルを小型化することができる。さらに、チップインダクタ5を図8のように配置することによって、インダクタンス成分を増大させているのでバンドギャップを広帯域化できる。
【0046】
以上のように、実施の形態3によれば、EBGマテリアルの上部に配置されるアンテナの放射効率の劣化を抑制しながら、EBGマテリアルの小型化およびバンドギャップの広帯域化が可能となる。
【0047】
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図であり、図9(a)は、上面図であり、図9(b)は、図9(a)におけるA−A’面の断面図である。本実施の形態4における図9では、アンテナ7が図示されている。このアンテナ7は、EBGマテリアルの上部にEBGマテリアルと略平行に配置される任意形状のアンテナであり、ここでは、線状アンテナとする。
【0048】
なお、図9において、先の実施の形態1と同一の構成要素は、図1と同一符号で表し、説明は省略する。また、EBGマテリアルの動作原理についても、先の実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0049】
本実施の形態4では、アンテナ7の直下のセルに分散配置されるチップインダクタ5およびチップキャパシタ6の個数を最も多くし、それらのセルから離れるにしたがって、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6の個数が少なくなるように、チップ配置を分布させる。そして、EBGマテリアルの端では、チップ部品の個数は、最少となる。
【0050】
EBGマテリアルの上部にアンテナ7を配置すると、EBGマテリアルの表面に励振される電流の強度は、アンテナからの位置によって分布するようになる。したがって、電流強度の分布に合わせて、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6を並列に分散配置させる箇所を決定することにより、チップ部品の数を最適化することができる。
【0051】
本実施の形態4では、アンテナ7の直下で、EBGマテリアル上に励振される電流が最大となるので、この部分に対して、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6を並列に分散配置させている。さらに、アンテナ7から離れるにしたがって電流の強度は小さくなることから、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6の個数も、それに応じて少なくさせている。
【0052】
このような構成とすることで、EBGマテリアルの全てのセルにおいて、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6を複数個並列に分散配置させるよりも、全体として少ない個数で効果的に電流の分散を行うことができ、EBGマテリアルの低コスト化が可能となる。
【0053】
以上のように、実施の形態4によれば、アンテナによってEBGマテリアル上に励振される電流の強度分布にしたがって、チップインダクタおよびチップキャパシタの個数分布を調整することにより、EBGマテリアル全体で必要となるチップ部品の数量を減少させた上で、低損失化を図ることができる。したがって、EBGマテリアルの低コスト化を図ることが可能となる。
【0054】
実施の形態5.
図10は、本発明の実施の形態5におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図であり、図10(a)は、上面図であり、図10(b)は、図10(a)におけるA−A’面の断面図である。本実施の形態5における図10では、アンテナ7aが図示されている。このアンテナ7aは、EBGマテリアルの上部にEBGマテリアルと略平行に配置される直線偏波を有するアンテナであり、ここでは、線状アンテナとする。
【0055】
なお、図10において、先の実施の形態1と同一の構成要素は、図1と同一符号で表し、説明は省略する。また、EBGマテリアルの動作原理についても、先の実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0056】
本実施の形態5では、アンテナ7aと平行な向きに配置されるチップインダクタ5およびチップキャパシタ6を、複数並列に分散配置している。一方、アンテナ7と垂直な向きに配置されるチップインダクタ5およびチップキャパシタ6は、並列配置としていない。
【0057】
EBGマテリアルの上部に直線偏波を有するアンテナ7aを配置すると、EBGマテリアルの表面に励振される電流の向きは、アンテナ7aの向きと平行な成分が強くなる。したがって、アンテナの向きに合わせて、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6を並列に分散配置する箇所を決定することによって、チップ部品の個数を低減させることができる。
【0058】
本実施の形態5では、アンテナ7aと平行な向きの電流が強くEBGマテリアル上に励振されるので、アンテナ7aと平行な向きにチップインダクタ5およびチップキャパシタ6を複数並列に分散配置させている。このような構成とすることで、EBGマテリアルの全てのセルにおいて、チップインダクタ5およびチップキャパシタ6を複数個並列に分散配置させるよりも少ない個数で効果的に電流の分散を行い、EBGマテリアルの低コスト化が可能となる。
【0059】
以上のように、実施の形態5によれば、アンテナによってEBGマテリアル上に励振される電流の向きにしたがって、チップインダクタおよびチップキャパシタの個数分布を調整することにより、EBGマテリアル全体で必要となるチップ部品の数量を低減させた上で、低損失化を図ることができる。したがって、EBGマテリアルの低コスト化を図ることが可能となる。
【0060】
さらに、先の実施の形態4で述べた方法を併用し、アンテナによってEBGマテリアル上に励振される電流の強度分布にしたがって、チップインダクタおよびチップキャパシタの個数分布をさらに調整することにより、さらに効率的にチップ部品の数量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1における図1(b)に示したEBGマテリアルの断面図の中の点線で示した部分を取り出した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の図2におけるセルをLC並列共振回路で表現した回路図である。
【図4】従来のEBGマテリアルの直上に線状アンテナを配置した場合において、アンテナによってEBGマテリアル表面に励振される電流の向きを示すベクトル図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの直上に線状アンテナを配置した場合において、アンテナによってEBGマテリアルの表面に励振される電流の向きを示すベクトル図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるEBGマテリアルの直上に配置した線状アンテナの放射効率を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態3におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態4におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態5におけるEBGマテリアルの構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1 金属小板、1a 第1の金属小板、1b 第2の金属小板、2 地板(導体板)、3 ギャップ、4 接続導体(連結体)、5 チップインダクタ(インダクタンス要素)、6 チップキャパシタ(キャパシタンス要素)、7、7a アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体板と、同一形状を有する複数の金属小板と、複数の連結体と、キャパシタンス要素とを備え、
前記複数の金属小板のそれぞれは、規則的に配列され、前記導体板の上部に対向配置され、前記連結体を介して前記導体板と電気的に接続され、隣接する金属小板ごとに複数個分散配置された前記キャパシタンス要素を介して隣接する金属小板同士が電気的に接続されることを特徴とするEBGマテリアル。
【請求項2】
請求項1に記載のEBGマテリアルにおいて、
前記複数の金属小板のそれぞれは、中空部を有する第1の金属小板と、ギャップを介して前記第1の金属小板の前記中空部内に配置された第2の金属小板との対で構成され、前記複数の金属小板が規則的に配列され、前記導体板の上部に対向配置され、前記連結体を介して前記第2の金属小板と前記導体板とが電気的に接続され、隣接する金属小板ごとに複数個分散配置された前記キャパシタンス要素を介して隣接する第1の金属小板同士が電気的に接続され、前記第2の金属小板の端部に1個配置されるかまたは複数個分散配置された前記インダクタンス要素を介して1対を構成する前記第1の金属小板と前記第2の金属小板とが電気的に接続されることを特徴とするEBGマテリアル。
【請求項3】
導体板と、同一形状を有する複数の金属小板と、複数の連結体と、キャパシタンス要素と、インダクタンス要素とを備え、
前記複数の金属小板のそれぞれは、中空部を有する第1の金属小板と、ギャップを介して前記第1の金属小板の前記中空部内に配置された第2の金属小板との対で構成され、前記複数の金属小板が規則的に配列され、前記導体板の上部に対向配置され、前記連結体を介して前記第2の金属小板と前記導体板とが電気的に接続され、隣接する金属小板ごとに分散配置された前記キャパシタンス要素を介して隣接する第1の金属小板同士が電気的に接続され、前記第2の金属小板の端部に複数個分散配置された前記インダクタンス要素を介して1対を構成する前記第1の金属小板と前記第2の金属小板とが電気的に接続されることを特徴とするEBGマテリアル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のEBGマテリアルにおいて、
複数個分散配置される前記キャパシタンス要素、前記インダクタンス要素、または前記キャパシタンス要素および前記インダクタンス要素の両方は、EBGマテリアルの上部にアンテナが配置される場合に、前記アンテナの直下で個数が最大となり、前記アンテナから離れた位置にあるほど個数が減少するように分散配置されることを特徴とするEBGマテリアル。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のEBGマテリアルにおいて、
複数個分散配置される前記キャパシタンス要素、前記インダクタンス要素、または前記キャパシタンス要素および前記インダクタンス要素の両方は、EBGマテリアルの上部に、前記複数の金属小板の隣接方向に対して略平行にアンテナが配置される場合に、前記アンテナによってEBGマテリアル上に励振される電流の流れ方向に応じて分散配置されることを特徴とするEBGマテリアル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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