説明

EGLN2変異体、並びに血栓塞栓性及び冠状動脈性心疾患の予防又は治療におけるその使用

本発明は、アミノ酸配列の58位にセリン又はロイシンを有するヒトEGLN2変異体、及び血栓塞栓性疾患又は冠状動脈性心疾患、特に、脳卒中、遷延性可逆性虚血性神経欠損(PRIND)、一過性脳虚血性発作(TIA)、心筋梗塞及び/又は早期心筋梗塞の予防又は治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸配列の58位にセリン又はロイシンを有するヒトEGLN2変異体及び血栓塞栓性又は冠状動脈性心疾患、特に脳卒中、遷延性可逆性虚血性神経欠損(PRIND)、一過性脳虚血性発作(TIA)、心筋梗塞及び/又は早期心筋梗塞の予防又は治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EGLN2は、そのHIFプロリルヒドロキシラーゼ活性によりプロリルヒドロキシラーゼドメイン含有蛋白質1(PHD1)としても知られており、5つのコーディングエキソンからなる保存ゲノム構造を有する、Egline遺伝子ファミリーの近縁の蛋白質の1グループに属する。HIF(低酸素誘導因子)は、酸素のホメオスタシスの様々な局面において重要な役割を果たす転写制御因子であるが、EGLNアイソフォームである、EGLN1(PHD1)、EGLN2(PHD2)及びEGLN3(PHD3)のHIFの生理的調節への寄与はまだ不明である(Appelhoff, R. J. et al. (2004) J. Biol. Chem., 279, 38458-38465, No. 37)。全てのEGLNアイソフォームは異なる細胞特異的及び誘導性挙動を呈し、これが低酸素へのHIF応答の調節におけるフレキシビリティを可能にすると考えられる。このことは、特定のEGLNアイソザイムの特異的薬理学的阻害が、治療への応用に有用と思われる、HIF応答の選択的調節能を有する可能性があることを意味するものである(Appelhoff, R. J. et al. (2004), 同上)。EGLN2の阻害は、例えば、安静時のさまざまな細胞タイプにわたって広くHIF応答を活性化するはずである。対照的に、EGLN3の特異的阻害は高レベルの酵素を発現する特定の組織での低酸素への応答を選択的に増加させるはずである(Appelhoff, R. J. et al. (2004), 同上)。このことは、虚血性/低酸素性疾患の治療の可能性を開く可能性がある。EGLN2とEGLN3に対して、EGLN1の生理的役割については多くは知られていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
冠状動脈心疾患の発病と進行におけるEGLN2の潜在的関与をより良く理解するために、遺伝子型−表現型関連解析が、本発明に従って、参照番号NM_053046.2として公開されたEGLN2参照配列の470位におけるEGLN2遺伝子の変異に関して、特性が良く分かっている患者群で実施された。EGLN2遺伝子の異なる遺伝的変異体は既にSNP(一塩基多型)として知られ、そしてhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp_ref.cgi?locusId=112398)で公開されている。
【0004】
驚くべきことに、ヒトEGLN2蛋白質をコードする核酸の470位のヌクレオチドの変異、特にシトシンからチミジンへの変異、又はヒトEGLN2蛋白質の58位のアミノ酸への変異、特にセリンからロイシンへの変異は、血栓塞栓性及び冠状動脈性心疾患の発生と相関することが見出された。
【0005】
従って、本発明の主題は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質、及びEGLN2蛋白質をコードする核酸、特に配列番号4の核酸配列に関する。優先的には、本発明に記載の核酸は、DNA又はRNA、好ましくはDNA、特に二本鎖DNAである。核酸の配列は、それが少なくとも1つのイントロン及び/又は1つのポリA配列を有する点で更に特徴付けられ得る。
【0006】
発明の更なる実施態様において、核酸は、好ましくはシャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター又は遺伝子治療活性を有するベクターの形態で、ベクターの調製に使用できる。更に、ノックアウト遺伝子構築体又は発現カセットが上記の核酸を用いて調製できる。この発現ベクターは原核生物又は真核生物発現ベクターであって良い。原核生物発現ベクターの例は、E.coliにおける発現では、例えば、ベクターpGEM又はpUC誘導体、Saccharomyces cerevisiaeにおける発現の真核生物発現ベクターの例は、例えば、ベクターp426Met25又はp426GAL1(Mumberg et al. (1994) Nucl. Acids Res., 22, 5767-5768)、昆虫細胞における発現では、例えば、EP特許第0127839号又はEP特許第0549721号に記載されたようなバキュロウィルスベクター、そして哺乳類細胞における発現では、例えば、全て一般的に入手可能な、ベクターRc/CMV及びRc/RSV又はSV40ベクターである。一般的に、発現ベクターは、例えば、E.coliにおける発現ではtrpプロモーター(例えば、EP特許第0154133号を参照)、酵母における発現ではMet25、GAL1又はADH2プロモーター (Russel et al. (1983), J. Biol. Chem. 258, 2674-2682; Mumberg, 同上)、昆虫細胞における発現ではバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター (例えば、EP特許第0127839号を参照)などの、各宿主細胞に適切なプロモーターをも含む。哺乳類細胞における発現では、例えば、適切なプロモーターは、真核細胞において構成的、調節可能な、組織特異的又は代謝特異的発現を可能にするものである。本発明の調節要素は、プロモーター、アクチベーター配列、エンハンサー、サイレンサー及び/又はレプレッサー配列である。真核生物における構成的発現を可能にする適切な調節要素の例は、RNAポリメラーゼIIIによって認識されるプロモーター、又はウイルスプロモーター、CMVエンハンサー、CMVプロモーター(実施例13をも参照)、SV40プロモーター又はLTRプロモーター、例えば、MMTV (マウス乳癌ウイルス; Lee et al. (1981) Nature 214, 228-232) 由来、及び、例えば、HBV、HCV、HSV、HPV、EBV、HTLV又はHIV由来の更なるウイルスプロモーターとアクチベーター配列である。真核生物における誘導発現を可能にする調節要素の例は、対応のレプレッサーと組合せたテトラサイクリンオペレーターである(Gossen M. et al. (1994) Curr. Opin. Biotechnol. 5, 516-20)。真核生物における代謝特異的発現を可能にする調節要素の例は、低酸素によって好ましく調節されるプロモーターである。
【0007】
本発明に従って使用される核酸の導入、そしてこのようなトランスフェクション、形質転換又は感染による原核又は真核細胞におけるポリペプチドの発現を可能にするために、核酸は、ウイルス又は非ウイルスベクターの一部として、プラスミドとして存在し得る。ここでの適切なウイルスベクターは、特に:バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びヘルペスウイルスである。ここでの適切な非ウイルスベクターは、特に:ビロソーム、リポソーム、カチオン性脂質、又はポリ−リジン−共役DNAである。
【0008】
遺伝子治療活性を有するベクターの例は、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである(Lindemann et al., 1997, Mol. Med. 3: 466-76; Springer et al., 1998, Mol. Cell. 2: 549-58)。真核生物発現ベクターは、裸のDNAが局所適用で皮膚細胞に侵入することができることから、遺伝子治療使用の単離型として適切である(Hengge et al., 1996, J. Clin. Invest. 97: 2911-6; Yu et al., 1999, J. Invest. Dermatol. 112: 370-5)。遺伝子治療活性を有するベクターは、特に、このように皮膚細胞で非常に高いトランスフェクション効率が達成できることから、リポソームと本発明で使用される核酸とを複合化させることによっても取得できる(Alexander and Akhurst, 1995, Hum. Mol. Genet. 4: 2279-85)。リポフェクションの場合、小単層ベシクルがリポソーム懸濁液の超音波処理によりカチオン性脂質から調製される。このDNAは、正の正味電荷が残りそしてプラスミドDNAがリポソームの100%に複合化するような割合で、リポソームの表面にイオン的に結合される。Felgner et al.(1987、同上)によって用いられた脂質混合物のDOTMA(1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−トリメチルアンモニウムブロミド)とDPOE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)に加えて、その一方で多くの新規脂質製剤が合成され、種々の細胞系のトランスフェクションにおいてその効率が評価された(Behr, J.P. et al. (1989), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 6982-6986; Felgner, J.H. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 2550-2561; Gao, X. & Huang, L. (1991), Biochim. Biophys. Acta 1189, 195-203)。脂質製剤の例は、DOTAP N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルサルフェート又はDOGS(TRANSFECTAM; ジオクタ-デシルアミドグリシルスペルミン)である。細胞への核酸の移行を増加させる補助剤は、例えば、細胞の核へ核酸の輸送を可能にするDNA若しくは合成ペプチド−DNA分子に結合する蛋白質又はペプチドであって良い(Schwartz et al. (1999) Gene Therapy 6, 282; Branden et al. (1999) Nature Biotech. 17, 784)。補助剤は、また細胞の細胞質への核酸の放出を可能にする分子 (Planck et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 12918; Kichler et al. (1997) Bioconj. Chem. 8, 213) 又は、例えば、リポソーム (Uhlmann and Peymann (1990), 同上) を含む。遺伝子治療ベクターの別の特に適切な型は、本発明で使用される核酸を金粒子に塗布させ、そしてこれらをいわゆる遺伝子銃を用いて、組織中に、好ましくは皮膚又は細胞中に発射することによって得ることが可能である(実施例13; Wang et al., 1999, J. Invest. Dermatol., 112: 775-81, Tuting et al., 1998, J. Invest. Dermatol. 111: 183-8) 。
【0009】
上記の核酸の遺伝子治療利用のために、ポリペプチドをコードする核酸の一部が、好ましくはプロモーターとポリペプチドの開始コドン間にイントロン配列を含む1つ又はそれ以上の非コード配列、及び/又はポリA配列、特に遺伝子の3'末端に自然発生的なポリA配列又はSV40ウイルスポリA配列を含むならば、mRNAの安定化がそれによって達成され得るので、それはまた好都合である(Jackson, R.J. (1993) Cell 74, 9-14 及びPalmiter, R.D. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 478-482) 。
【0010】
ノックアウト遺伝子構築物は、例えば、US特許第5,625,122号;US特許第5,698,765号;US特許第5,583,278号及びUS特許第5,750,825号から当業者に周知である。
【0011】
本発明は、更に、本発明のベクター又はノックアウト遺伝子構築物を用いて形質転換される宿主細胞に関する。宿主細胞は原核又は真核細胞であって良いが、原核宿主細胞の例はE.coliであり、真核細胞の例はSaccharomyces cerevisiae又は昆虫細胞である。特に好ましい形質転換宿主細胞はヒト以外のトランスジェニック胚性幹細胞であり、これは本発明に記載のノックアウト遺伝子構築物又は本発明に記載の発現カセットを含むことを特徴としている。宿主細胞及び/又は幹細胞の形質転換の方法は当業者に周知であり、例えば、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクションが挙げられる。
【0012】
本発明の別の主題は、本発明に従う核酸又はベクターを含むトランスジェニック動物に関する。
【0013】
トランスジェニック動物、特にマウスの調製方法は、DE第19625049号及びUS特許第4,736,866号;US特許第5,625,122号;US特許第5,698,765号;US特許第5,583,278号及びUS特許第5,750,825号から当業者に周知であり、例えば、胚又は精母細胞への発現ベクター(上記を参照)の直接注入、又は胚性幹細胞への発現ベクターのトランスフェクションを用いて創り出されるトランスジェニック動物が挙げられる(Polites and Pinkert: DNA microinjection and Transgenic Animal Production, page 15-68, Pinkert, 1994: Transgenic animal technology: a laboratory handbook, Academic Press, London, UK; Houdebine, 1997, Harwood Academic Publishers, Amsterdam, The Netherlands; Doetschman: Gene Transfer in Embryonic Stem Cells; page 115-146, Pinkert, 1994, 同上; Wood: Retrovius-Mediated Gene Transfer; page 147-176, Pinkert, 1994, 同上; Monastersky: Gene Transfer Technology; Alternative Techniques and Applications, page 177-220, Pinkert, 1994, 同上)。本発明で使用される核酸類が、いわゆるターゲッティングベクターに組込まれた場合(Pinkert,1994,同上)、胚性幹細胞のトランスフェクション及び相同的組換え後に、例えば、一般的にヘテロ接合性マウスとして核酸の発現が低下したノックアウトマウスを創り出すことが可能であるが、ホモ接合性マウスはもはや核酸の発現を示さない。このように創り出されたトランスジェニック及びノックアウト細胞又は動物も、遺伝子治療活性を有する薬学的活性物質ベクターのスクリーニング及び同定に使用し得る。
【0014】
本発明の別の主題は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質に特異的に結合する抗体に関する。
【0015】
本発明によれば、「特異的」の用語は、抗体が配列番号3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質に結合するが、配列番号2のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質には本質的に結合しないことを意味し、言い換えれば、この抗体は、58位にセリンを有するEGLN2蛋白質と58位にロイシンを有するEGLN2蛋白質を識別するのに適切である。
【0016】
この抗体はポリクローナルか又はモノクローナルであり、好ましくはモノクローナル抗体である。抗体という用語は、本発明によれば、遺伝子工学により調製された抗体又はその抗原結合部位、及び場合により改変された抗体例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能性抗体、二−又はオリゴ特異的抗体、一本鎖抗体、F(ab)又はF(ab)2フラグメントをも意味するものとして理解される(例えば、EP特許第0368684号、US特許第4,816,567号、US特許第4,816,397号、WO第88/01649号、WO第93/06213号、WO第98/24884号を参照)。
【0017】
抗体の製造方法は、当業者に周知の方法に従って、例えば、ウサギのような哺乳類を、上記ポリペプチド又はその述べた部位を用いて、適切な場合、例えば、フロインドアジュバント及び/又は水酸化アルミニウムゲルの存在下に、免疫化することによって実施される(例えば, Diamond, B.A. et al. (1981) The New England Journal of Medicine, 1344-1349を参照)。免疫反応の結果として動物に生成されたポリクローナル抗体は、その後一般的に知られている方法に従って血液から容易に単離され、そして、例えば、カラムクロマトグラフィーによって精製される。モノクローナル抗体は、例えば、Winter & Milsteinの既知の方法によって製造され得る (Winter, G. & Milstein, C. (1991) Nature, 349, 293-299)。組換え抗体は、上記で特定した特許公報に記載されたようにして製造することができる。
【0018】
本発明の別の主題は、配列番号3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質を製造する方法に関わり、ここで、上述の細胞は適切な培地中で培養され、場合によりEGLN2蛋白質は細胞又は培地から単離される。
【0019】
EGLN2蛋白質は、例えば、適切な発現系において、上記の核酸の発現により、既に上記で説明したように、当業者に周知の方法に従って調製される。適切な宿主細胞は、例えば、E.coli株DHS、HB101又はBL21、酵母株Saccharomyces cerevisiae、例えば、Spodoptera frugiperdaからの昆虫細胞系Lepidoptera、又は動物細胞COS、Vero、293、HaCat、及びHeLaであり、これらは全て一般的に入手可能である。EGLN2蛋白質はまた融合蛋白質の一部でもあっても良い。融合蛋白質は、本明細書では上記で説明したように調製され、それは上記のポリペプチドを含み、融合蛋白質はそれ自体既に上記したポリペプチドの機能を有するか、又はその特異的な機能は融合蛋白質の切断後にのみ機能的に活性である。特に本明細書に含められるものは、約1〜300、好ましくは約1〜200、特に約1〜100、とりわけ約1〜50の割合の外来性アミノ酸を有する融合蛋白質である。そのようなペプチド配列の例は、例えば、E.coliのガラクトシダーゼから導かれ得る原核生物ペプチド配列である。更に、例えば、バクテリオファージM13などのウイルスペプチド配列も、当業者に周知のファージディスプレイ法用の融合蛋白質を製造するために使用され得る。融合蛋白質のペプチド配列の更に適切な例は、融合蛋白質の検出を容易にするペプチドであり、これらは、例えば、「緑色蛍光蛋白質」又はその変異体である。
【0020】
上記の蛋白質の単離及び/又は精製のために、(a)更なるポリペプチド(タグ)を付けることが出来る。適切な蛋白質タグは、例えば、マトリックスへの高親和性吸着、顕著な程度に複合体を溶離させない適切な緩衝液による厳密な洗浄、及びそれに続く吸着複合体の標的溶離を可能にする。当業者に周知の蛋白質タグの例は、(His)6タグ、Mycタグ、FLAGタグ、赤血球凝集素タグ、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)タグ、アフィニティキチン結合タグを有するインテイン又はマルトース結合蛋白質(MBP)タグである。これらの蛋白質タグは、N−又はC−末端及び/又は内部に位置し得る。
【0021】
本発明の更なる主題は、EGLN2蛋白質のモジュレーターのスクリーニング方法に関し、その方法は以下の工程:
(a)EGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸を供し;
(a)試験化合物を供し;そして
(c)EGLN2蛋白質又はEGLN2遺伝子に対する試験化合物の影響を測定するか又は検出する;
からなる。
【0022】
一般的に、EGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸は、例えば、1つのアッセイ系に供せられ、そして試験化合物、特に生化学的又は化学的試験化合物と、例えば、化合物ライブラリーの形態で直接的又は間接的に接触させられる。次いで、EGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸に対する試験化合物の影響を測定又は検出する。その後、適切なモジュレーター、例えば、活性化剤又は阻害剤が、解析及び/又は単離される。化合物ライブラリーのスクリーニングには、当業者に周知の又は市販されているハイスループット・アッセイの使用が好ましい。
【0023】
本発明に記載の「化合物ライブラリー」という用語は、化学合成分子及び天然物を含むあらゆる多様な供給源から集められた、又はコンビナトリーケミストリー法によって生成された多くの化学物質に関わる。
【0024】
一般的に、EGLN2又はEGLN2遺伝子に対する試験化合物の影響は、ヘテロジニアス又はホモジニアス分析で測定又は検出される。本明細書で使用されるように、ヘテロジニアス分析は1つ又はそれ以上の洗浄工程を含む分析法であるが、一方ホモジニアス分析ではそのような洗浄工程は必要ではない。試薬と化合物はただ混合して測定される。
【0025】
適切な機能分析はEGLN2の遺伝子発現、EGLN2の直接活性化又は阻害に基づくものでよい。EGLN2の遺伝子発現のモジュレーターとして試験する生化学又は化学物質の存在下、直接活性化若しくは阻害又は他の蛋白質、例えば細胞蛋白質との複合体形成は、当業者に公知の、又はAppelhoff, R. J. et al. (2004), 同上及び/又は Jaakkola,
P. et al. (2001) Science, 292, 468-472, No. 5516.に記載された手段によって測定し得る。
【0026】
例えば、プロリルヒドロキシラーゼ活性は、プロリルヒドロキシラーゼ若しくはHIF−1αサブユニットのPro、例えば、Pro564の酸化が検出できる質量分光分析により、又は当業者に周知の酵素的分析、例えば、in vitro試験分析及び/又はヒト細胞、動物細胞、細菌細胞若しくは酵母細胞を用いるin vitro全細胞試験分析で測定し得る。
【0027】
固相結合ポリペプチドもアレイの一部になり得る。固相化学と光解離性保護基を用いるこのようなアレイを調製する方法は、例えば、US特許第5,744,305号に記載されている。これらのアレイは、また試験化合物又は化合物ライブラリーと接触させることができ、そして、例えば立体配座を結合させたり又は変化させる相互作用を試験することができる。
【0028】
本発明の別の実施態様において、その方法は全細胞を用いて実施される。通常、マルチウエルプレートの底に増殖する細胞は固定化、透過化及びブロックされ次いで、例えば興味のある基質に対する1次(P)特異抗体によりインキュベートされる。次に、例えば、特異的化学発光又は発色物質と連結したユウロピウム標識又はHRP結合2次抗体が、例えば上記のように、シグナルを発生させるために利用される。顕微鏡の使用との組合せにより、(P)−特異抗体の量が単細胞レベルで定量し得るだけでなく、基質のリン酸化誘導転移又は細胞の形態変化もまた定量できる。
【0029】
有利なことに、本発明の方法は、例えば、ロボット式プレーティング及びロボット式液体移送システムを含む、ロボットシステムにおいて、例えば、マイクロ流体工学、すなわちチャンネル型構造物を用いて実施される。
【0030】
本発明の別の実施態様において、この方法はハイスループット・スクリーニングシステムの形式で実施される。このようなシステムにおいては、有利なことに、このスクリーニング方法は自動化及び小型化され、特に、ロボット制御の小型ウェル及びマイクロ流体工学が使用される。
【0031】
本発明の別の主題は、血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の予防又は治療のための医薬品を製造するための、配列番号2若しくは3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質、又はEGLN2蛋白質をコードする核酸の使用に関する。特に、血栓塞栓性疾患は、脳卒中、遷延性可逆性虚血性神経欠損(PRIND)及び/又は一過性脳虚血性発作(TIA)である。更に、冠状動脈性心疾患は、特に心筋梗塞である。具体的には、配列番号3のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質、又はこのEGLN2蛋白質をコードする核酸が、発作、PRIND及び/又はTIAの予防又は治療のための医薬品の製造に使用され、そして配列番号2のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質又はこのEGLN2蛋白質をコードする核酸が、心筋梗塞、特に早期心筋梗塞の予防又は治療のための医薬品の製造に使用される。
【0032】
詳細には、470位のヌクレオチドが染色体DNA中でチミジン若しくはmRNA中でウラシルであるか、又は58位のアミノ酸がロイシンの場合、脳卒中、PRIND及び/又はTIAの高いリスクが存在する。しかし、もし470位のヌクレオチドがシチジンであるか、又は58位のアミノ酸がセリンの場合、心筋梗塞、特に早期心筋梗塞の高いリスクが存在する。
【0033】
本発明によれば、「EGLN2−C470C」の用語は、対応蛋白質の58位でアミノ酸セリンになる、参照配列NM_053046.2の470位でEGLN2をコードする遺伝子の両方の対立遺伝子にシチジンを有する人のグループを意味する。これらの人々は、このEGLN2変異体に関してホモ接合性である。従って、「EGLN2−C470T」の用語は、EGLN2をコードする遺伝子の1つの対立遺伝子に対応蛋白質の58位がセリンとなるシチジンを、そしてEGLN2をコードする遺伝子の他の対立遺伝子に対応蛋白質の58位がロイシンとなるチミジン有する人のグループを意味する。これらの人々は、このEGLN2変異体に関してヘテロ接合性である。
【0034】
ヒトEGLN2蛋白質をコードする参照配列の核酸配列は、好ましくは配列番号1の核酸配列を有し、そしてヒトEGLN2蛋白質のアミノ酸配列は、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有する。しかしながら、本発明はまたヒトEGLN2及びヒト以外のそのホモログ、例えば、他の哺乳類のEGLN2ホモログ、又はCaenorhabdidis elegans、マウス若しくはラット由来のEGLN2ホモログなどを含むが、ただし、前述の参照配列の470位に対応する位置においてシチジンからチミジンへのヌクレオチド変換、及び/又は前述の参照配列の58位に対応する位置においてセリンからロイシンのアミノ酸変換が存在し、そして更に対応の蛋白質がプロリルヒドロキシラーゼ活性、特にHIFプロリルヒドロキシラーゼ活性を有するという条件の場合である。前述の酵素活性は、例えば上記で既に説明した質量分光分析によって測定し得る。
【0035】
一般的に、470位の特異的ヌクレオチドは、核酸配列決定法、核酸の質量分光分析、ハイブリダイゼーション法及び/又は増幅法によって測定し得る。核酸配列決定法の例は、ピロ配列決定、及び/又は、放射性及び/又は蛍光標識ヌクレオチドを用いる配列決定である。ハイブリダイゼーション法の例は、サザンブロット解析、ノーザンブロット解析及び/又はDNAマイクロアレイによるハイブリダイゼーション法である。増幅法の例は、TaqMan解析、差次的RNA発現分析及び/又は表現差異解析である (Shi M. M. (2002) Am J Pharmacogenomics., 2(3), 197-205; Kozian & Kirschbaum (1999) Trends Biotechnol., 17(2), 73-8.)。
【0036】
更に、58位のアミノ酸配列は、特異的蛋白質の量を測定する方法及び/又は特異蛋白質の活性を測定する方法によって決定できる。特異蛋白質の量を測定する方法の例は、ウェスタンブロット法及び/又はELISAである。特異蛋白質の活性を測定する方法は、当業者に周知のin vitro試験分析及び/又はヒト細胞、動物細胞、細菌細胞又は酵母細胞によるin vitro全細胞試験分析である。
【0037】
個々の変異体の検出用試料の例は、細胞、組織又は体液、特に血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞である。好ましくは、試料は、更なる解析用の、試料の核酸若しくは染色体DNA又は蛋白質を単離及び/又は精製するために、当業者に周知の従来法によって前処理される。
【0038】
本発明に従う変異体の同定の好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)核酸プローブ、特に試料、特に、例えば検査すべき人又は患者由来の細胞、組織、体液、血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞から、DNAプローブを単離し;
(b)プライマー、特に実施例に明記されたプライマーを用いて、ENGL2遺伝子の470位を包含する特異的領域を増幅し;
(c)増幅された領域の配列を決定し;そして
(d)配列決定された領域を解析する。
【0039】
本発明に従う変異体の測定の代わりの方法は、以下の工程を含む:
(a)試料、特に、例えば検査すべき人又は患者由来の細胞、組織、体液、血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞から、ENGL2蛋白質を単離し;そして
(b)EGLN2蛋白質の58位のアミノ酸を決定する。
【0040】
より好ましい工程は実施例において個々に又は集合的に規定されており、各工程を参照することによって本明細書に組み入れられている。
【0041】
最後に、本発明の主題は、血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の治療薬を製造する方法に関し、ここで、その方法は以下の工程:
(a)上記のスクリーニング法を実施し;
(b)血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の治療に適切な、測定又は検出した試験化合物を単離し;そして
(c)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又は補助物質により測定又は検出した試験化合物を製剤化する;
を含む。
【0042】
上記方法の工程(c)に従って、検出した試験化合物は、例えば、塩化ナトリウム溶液などの生理学的緩衝液、脱塩水、安定剤、ε−アミノカプロン酸若しくはペプスタチンA又はEDTAなどの金属イオン封鎖剤、白色ワセリン、低粘度パラフィン及び/又は黄ろうなどのゲル製剤など、通常1つ又はそれ以上の薬学的に許容される添加剤又は補助物質により、投与の種類に応じて製剤化される。
【0043】
例えば、適切な更なる添加剤は、例えば、Triton X−100又はデオキシコール酸ナトリウムなどの界面活性剤、及び、例えばポリエチレングリコール又はグリセロールなどのポリオール、例えば、蔗糖又はグルコースなどの糖類、例えば、グリシンなどのアミノ酸又は特にタウリン若しくはベタインなどの双性イオン化合物、及び/又は、例えば、ウシ又はヒト血清アルブミンなどの蛋白質である。界面活性剤、ポリオール及び/又は双性イオン化合物が好ましい。
【0044】
生理的緩衝液は、好ましくは約6.0〜8.0のpH、とりわけ約6.8〜7.8のpH、特に約7.4のpH、及び/又は約200〜400ミリオスモール/L、好ましくは約290〜310ミリオスモール/Lの浸透圧を有する。医薬品のpHは、一般的に適切な有機又は無機緩衝液、例えば、好ましくはリン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4(2−ヒドロキシエチル)ピペラジノ)−エタンスルホン酸)又はMOPS緩衝液(3−モルホリノ−1−プロパンスルホン酸)を用いて調整される。それぞれの緩衝液の選択は、一般的に所望の緩衝液モル濃度に依存する。リン酸緩衝液は、例えば、注射又は輸液に適切である。
【0045】
医薬品は、従来の方法、例えば、本発明の医薬品を含む、例えば錠剤又はカプセル剤などの経口剤形によって、粘膜、例えば鼻又は口腔を介した皮下に埋め込んだデポ剤(dispositories)の形態で、注射剤、輸液又はゲルによって投与できる。更に、上記のような特殊な関節疾患を治療するために本医薬品を局所的及び局部的に、適切な場合、リポソーム複合体の形態で投与することが可能である。更に、治療は、医薬品の時間制御型放出を可能にする経皮治療システム(TTS)を用いて実施することが可能である。TTSは、例えばEP公開第0944398号、EP公開第0916336号、EP公開第0889 723号又はEP公開第0852493号から公知である。
【0046】
注射液は、一般的に、比較的少量だけ、例えば約1から約20mlの溶液又は懸濁液が体内に投与される場合に使用される。輸液は、一般的に、例えば1リットル以上のやや多い溶液又は懸濁液が投与される場合に使用される。輸液と対照的に、注射液ではほんの数ミリリットルが投与されるだけなので、注射時の血液又は組織液のpH及び浸透圧の小さな変化は、それ自体顕著ではないか又は単に痛覚について目立たない程度のものである。従って、使用前の本発明に従う製剤の希釈は一般的に不要である。しかしながら、比較的大量の投与の場合には、本発明に従う製剤は、少なくともほぼ等張液が得られる程度まで、投与前に手短に希釈されるべきである。等張液の例は、0.9%強度の食塩溶液である。輸液の場合には、希釈は、例えば滅菌水を用いて実施され、一方投与は、例えばいわゆるバイバスを介して行われ得る。
【0047】
以下の図、表、配列及び実施例は、発明の範囲を制限することなく本発明を説明するものである。
【実施例】
【0048】
配列決定と解析によるSNP検出
増幅のためのオリゴヌクレオチド(プライマー)
以下のプライマーが、参照番号NM_053046.2に示されるEGLN2配列中の470位におけるCからTへのヌクレオチド変換の検出に使用された:
プライマー1:5'- CTGTCCAGGAGTGCCTAGTG -3' (参照配列NM_053046.2; 配列番号5 のヌクレオチド444−463);
プライマー2:5'- GGGCTGGCAGTGGTAGAG -3' (参照配列 NM_053046.2; 配列番号6の塩基504−521の相補配列)。
【0049】
増幅のためのPCRプロトコール
使用した試薬はApplied Biosystems (Foster City、USA)製:20ngのゲノムDNA;1単位TaqGold DNAポリメラーゼ;1×Taq ポリメラーゼ緩衝液;500μMのdNTPs;2.5mMのMgCl2;前掲の200nMの各増幅プライマー対;H2Oを加えて(ad)5μlにする。
【0050】
遺伝子型特定のためのPCRの増幅プログラム:
95℃10分間 ×1サイクル;

95℃30秒間
70℃30秒間 ×2サイクル;

95℃30秒間
65℃30秒間 ×2サイクル;

95℃30秒間
60℃30秒間 ×2サイクル;

95℃30秒間
56℃30秒間
72℃30秒間 ×40サイクル;

72℃10分間
4℃30秒間 ×1サイクル;
【0051】
SNPのミニ配列決定と検出のためのプロトコール
使用した試薬はApplied Biosystems 社 (Foster City、USA)製。2μl精製PCR産物、1.5μlのBigDye−Terminatorキット、前掲の200nMの配列決定プラマー;H2Oで10μlにする。
【0052】
配列決定のための増幅プログラム:
96℃2分間 ×1サイクル;

96℃10秒間
55℃10秒間
65℃4分間 ×30サイクル;

72℃7分間
4℃30秒間 ×1サイクル;
【0053】
配列決定生成物の解析
配列は、まず予備データを得るためにSequenz Analyse ソフトウエア(Applied Biosystems社、Foster City、USA)で解析され、次いでPhred、Phrap、Polyphred及びConsedソフトウェアで処理された。Phred、Phrap、Polyphred及びConsedは、Washington大学のPhil Greenによって作成されたものである(http://www.genome.washington.edu)。
【0054】
結果
被験者群の特性
表1は研究対象者群の特性を示す。
【表1】

【0055】
EGLN2遺伝子の変異体の頻度と分布
表2は、検討した患者群の参照配列NM_053046.2の470位におけるEGLN2遺伝子の遺伝的変異体の頻度と分布を示す。
【表2】

【0056】
以下では、EGLN2−C470C(EGLN2Ser58Ser)及びEGLN2−C470T(EGLN2Ser58Leu)を有する個人だけが考慮に入れられる。
【0057】
早期心筋梗塞の発症に対するEGLN2の変異体の影響
表3は、検討した患者群において早期心筋梗塞(男性では55歳未満、女性では60歳未満)及び発作/PRIND(遷延性可逆性虚血性神経欠損)/TIA(一過性虚血性発作)の発症に対する参照配列NM_053046.2の470位におけるEGLN2の遺伝子型の影響を示す。0.05未満のP値は統計的に有意性ありを示す。
【表3】

【0058】
結果
1.EGLN2―C470Cを有する患者は、EGLN2―C470Tを有する患者に比べて早期心筋梗塞に対し統計的に高い発生率を示した。
2.EGLN2―C470Tを有する患者は、EGLN2―C470Cを有する患者に比べて発作、PRIND及び/又はTIAの罹患リスクの有意な増加を示した。
【0059】
冠状動脈性心疾患の患者年齢に対するEGLN2の変異体の影響
図5は、患者群における冠状動脈性心疾患の発症年齢に対する、参照配列NM_053042.2の470位におけるEGLN2の遺伝子型の影響を示す。
【0060】
結果
冠状動脈性心疾患の早期発症に対するEGLN2―C470C(EGLN2Ser58Ser) を有する患者の年齢の有意な依存性が、EGLN2−C470T(EGLN2Ser58Leu)を有する患者の年齢に比べて認められた。
【0061】
結論:
前掲のEGLN2をコードする遺伝子及び/又は蛋白質EGLN2の遺伝的変異体の間の統計的に有意な相関は、血栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の発症における前述の遺伝的変異体の関与を示唆するものである。その結果として、前述の遺伝的変異体は、血栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の予後、特に早期心筋梗塞及び脳卒中、PRIND及び/又はTIAの予後の生物学的マーカーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】NCBI番号NM_053046を有するヒトEGLN2遺伝子の核酸配列を示す。470位における遺伝的変異C→T(太字)を有する遺伝子断片の増幅に使用されるプライマーは下線で示される。
【図2】NCBI番号NM_053046を有する核酸配列から導かれるヒトEGLN2のアミノ酸配列を示す。EGLN蛋白質中の58位のアミノ酸を太字で示す。
【図3】58位にロイシンを含むヒトEGLN2変異体のアミノ酸配列を示す。EGLN蛋白質中の58位のアミノ酸を太字で示す。
【図4】470位にトレオニンを含むヒトEGLN変異体遺伝子の核酸配列を示す。
【図5】患者群の冠状動脈性心疾患の発症年齢に対する、EGLN蛋白質の58位のアミノ酸変換をもたらす参照配列NM_053042.2の470位におけるEGLN2の遺伝子型の影響を示す。
【0063】
配列の説明
配列番号1は、NCBI番号NM_053046を有するヒトEGLN2蛋白質の核酸配列を示す。
配列番号2は、NCBI番号NM_053046を有する核酸配列から導かれるヒトEGLN2のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、58位にロイシンを含むヒトEGLN2変異体遺伝子の核酸配列を示す。
配列番号4は、470位にトレオニンを含むヒトEGLN変異体の核酸配列を示す。
配列番号5は、参照配列NM_053046.2のヌクレオチド444−463の第1プライマー配列を示す。
配列番号6は、参照配列NM_053046.2の塩基504−521の相補配列の第2プライマー配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質。
【請求項2】
請求項1に記載のEGLN2蛋白質をコードする核酸。
【請求項3】
配列番号4に記載の核酸配列を含む、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の核酸を含む、ベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の核酸を含む、又は請求項4に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の核酸を含む、又は請求項4に記載のベクターを含むトランスジェニック動物。
【請求項7】
請求項1に記載のEGLN2蛋白質に特異的に結合する抗体。
【請求項8】
請求項1に記載のEGLN2蛋白質を産生する方法であって、請求項5に記載の細胞を適切な培養培地で培養し、場合によりEGLN2蛋白質を細胞又は培養培地から単離する方法。
【請求項9】
配列番号2又は3に記載のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、以下の工程:
(a)EGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸を供し;
(b)試験化合物を供し;そして
(c)EGLN2蛋白質又はEGLN2遺伝子に対する試験化合物の影響を測定又は検出する;
を含む方法。
【請求項10】
試験化合物が化学物質ライブラリーの形態で供せられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
EGLN2蛋白質又はEGLN2遺伝子に対する試験化合物の影響がヘテロジニアス又はホモジニアスアッセイにおいて測定又は検出される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
アレイ上で実施される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
全細胞を用いて実施される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ロボットシステムにおいて実施される、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
マイクロ流体工学を用いて実施される、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ハイスループット・スクリーニングの方法である、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の予防又は治療用の医薬品の製造のための、配列番号2又は3に記載のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸の使用。
【請求項18】
血栓塞栓性疾患が脳卒中、遷延性可逆性虚血性神経欠損(PRIND)及び/又は一過性脳虚血性発作(TIA)からなるグループから選ばれる、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
冠状動脈性心疾患が心筋梗塞である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸が、脳卒中、PRIND及び/又はTIAの予防又は治療のための医薬品の製造に用いられる、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項21】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むEGLN2蛋白質又はEGLN2蛋白質をコードする核酸が、心筋梗塞、特に早期心筋梗塞の予防又は治療のための医薬品の製造に使用される、請求項17又は19に記載の使用。
【請求項22】
血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の治療用の医薬品を製造する方法であって、以下の工程:
(a)請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法を実施し;
(b)測定又は検出した、血栓塞栓性及び/又は冠状動脈性心疾患の治療に適切な試験化合物を単離し;そして
(c)測定又は検出した試験化合物を、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又は補助物質で製剤化する;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−511027(P2009−511027A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534896(P2008−534896)
【出願日】平成18年9月30日(2006.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009518
【国際公開番号】WO2007/042166
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】