説明

EL表示装置、EL表示装置の製造方法、及び電子機器

【課題】 表側と裏側で異なる画像を同時に表示することを実現した両面発光型のEL表示装置と、当該EL表示装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】 EL表示装置1において、第1及び第2画素電極23a、23bと対向電極50は、透明導電膜からなり、第1画素電極23a上には、発光機能層12の出射光を封止部材46側から取り出す封止側発光領域73が形成され、第2画素電極23b上には、発光機能層12の出射光を基板20側から取り出す基板側発光領域74が形成され、封止側発光領域73における第1画素電極23a、及び基板側発光領域74における対向電極50の各々に隣接する遮光層71、72が形成され、封止側発光領域73及び基板側発光領域74における発光機能層12が各々独立して発光することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL表示装置、EL表示装置の製造方法、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロルミネッセンス装置(以下、EL表示装置と称する。)においては、陰極、陽極の両方を透明電極として両側に発光させる、所謂両面発光型が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−332392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献のEL表示装置においては、EL表示装置の反対側が透けて見えるために、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転し、当該表側と裏側とで同時に異なる画像表示を行うことができないという問題があった。
また、当該文献においては、平坦化を用いたトップエミッション構造を有しておらず、マトリクス型のパネルにおいてはアレイ配線によって出射光の取り出し効率が低下するという問題もあった。
更には、表側と裏側の輝度のバランスを調整できない問題や、両面で発光領域が同じパネルでは情報量の変更ができないという問題もあった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、表側と裏側で異なる画像を同時に表示することを実現した両面発光型のEL表示装置と、当該EL表示装置の製造方法と、EL表示装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者は、上記問題点を解決するために、以下の手段を有する本発明を想到した。
即ち、本発明のEL表示装置においては、基板上に、単位画素内の複数のサブ画素毎に形成された第1及び第2画素電極と、当該第1及び第2画素電極に対向する対向電極と、前記第1及び第2画素電極と前記対向電極とによって挟持された発光機能層と、当該発光機能層を封止する封止部材とを具備し、前記第1及び第2画素電極と前記対向電極は、透明導電膜からなり、前記第1画素電極上には、前記発光機能層の出射光を前記封止部材側から取り出す封止側発光領域が形成され、前記第2画素電極上には、前記発光機能層の出射光を前記基板側から取り出す基板側発光領域が形成され、前記封止側発光領域における前記第1画素電極、及び前記基板側発光領域における前記対向電極の各々に隣接する遮光層が形成され、前記封止側発光領域及び前記基板側発光領域における発光機能層が各々独立して発光することを特徴としている。
【0005】
ここで、封止側発光領域においては、第1画素電極と対向電極とによって挟持された発光機能層が発光すると、当該出射光は、遮光層が形成されている第1画素電極の側に出射することなく、対向電極と封止部材を透過して出射する。
一方、基板側発光領域においては、第2画素電極と対向電極とによって挟持された発光機能層が発光すると、当該出射光は、遮光層が形成されている対向電極の側に出射することなく、第2画素電極と基板を透過して出射する。
このような封止側発光領域及び基板側発光領域は、サブ画素毎に形成されていると共に、当該封止側発光領域及び基板側発光領域における発光機能層が各々独立して発光するので、サブ画素毎において封止部材側への発光と基板側への発光とを独立して行うことができる。
また、例えば単位画素内に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色で発光するサブ画素を備えている場合には、単位画素においてフルカラー表示を行うことができると共に、当該フルカラー表示を封止部材側と基板側とに各々異ならせて行うことができる。
【0006】
このように、本発明においては、サブ画素毎に封止部材側への発光と基板側への発光とを独立させて行うことができるので、従来の両面発光型のEL表示装置の問題を解決することができる。従来では、EL表示装置の反対側が透けて見えるために、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転し、当該表側と裏側とで同時に異なる画像表示を行うことができないという問題があった。これに対して、本発明は、封止側発光領域における第1画素電極と基板側発光領域における対向電極とに遮光層が形成され、更に封止側発光領域と基板側発光領域とにおいて独立して発光機能層が発光するので、EL表示装置の反対側が透けて見えることがなく、また、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転することもない。
また、封止側発光領域と基板側発光領域とにおいて独立して発光機能層が発光することから、各領域の輝度バランスを容易に調整することができ、各領域において情報量の変更も容易にできる。
【0007】
また、本発明のEL表示装置においては、前記第1画素電極に形成された遮光層と、前記対向電極に形成された遮光層とのうち、少なくともいずれか一方は、光反射性を有していることを特徴としている。
このようにすれば、上記に記載したEL表示装置と同様の効果が得られると共に、遮光層の光反射性によって、発光効率を向上させて高輝度の表示を実現できる。
具体的には、封止側発光領域における発光機能層の出射光は、対向電極と封止部材を透過して出射すると共に、第1画素電極に形成された光反射性の遮光層に反射した後に対向電極と封止部材を透過して出射する。
また、基板側発光領域における発光機能層の出射光は、第2画素電極と基板を透過して出射すると共に、対向電極に形成された光反射性の遮光層に反射した後に第2画素電極と基板を透過して出射する。
従って、遮光層が光反射性を有していることにより、封止側発光領域と基板側発光領域の各々において更に発光効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明のEL表示装置においては、前記第1画素電極に形成された遮光層と、前記対向電極に形成された遮光層とのうち、少なくともいずれか一方は、光吸収性を有していることを特徴としている。
このようにすれば、上記に記載したEL表示装置と同様の効果が得られると共に、光吸収性を備えた遮光層がブラックマトリクスとして機能し、コントラストの向上を図ることができる。
具体的には、基板側発光領域における対向電極に光吸収性の遮光層が形成されている場合では、当該遮光層が封止部材側から入射する外光を吸収するので、封止部材側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。また、当該遮光層により基板側から入射し発光層を透過する外光を吸収するので、偏向板等を付加することなく、基板側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。
また、封止側発光領域における第1画素電極に光吸収性の遮光層が形成されている場合では、当該遮光層が基板側から入射する外光を吸収するので、基板側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。また、当該遮光層により封止部材側から入射し発光層を透過する外光を吸収するので、偏向板等を付加することなく、封止部材側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。
従って、遮光層が光吸収性を有していることにより、封止側発光領域と基板側発光領域の各々において、コントラストを向上させた表示を行うことができる。
【0009】
また、本発明のEL表示装置においては、前記第1及び第2画素電極の各々には、第1及び第2スイッチング素子が接続されており、当該第1及び第2スイッチング素子が駆動することによって前記発光機能層が発光することを特徴としている。
このようにすれば、第1及び第2スイッチング素子のスイッチング動作に応じて、発光機能層を発光させることができる。これにより、封止側発光領域と基板側発光領域との各々において、発光機能層を独立して発光させることができる。
【0010】
また、本発明のEL表示装置においては、前記第1及び第2画素電極と、前記第1及び第2スイッチング素子との間には、平坦化層が形成されていることを特徴としている。
ここで、平坦化層とは、基板上に形成された第1及び第2スイッチング素子や、当該第1及び第2スイッチング素子に接続された配線等、の形状に起因する凹凸部や段差を埋設することで、平坦化を施す層膜である。また、当該平坦化層は、第1及び第2スイッチング素子と、第1及び第2画素電極と、の各々の電気的絶縁性を得るための層間絶縁層としても機能するものである。
このような平坦化層が第1及び第2画素電極と第1及び第2スイッチング素子との間に形成されることによって、第1及び第2画素電極を平坦面上に形成することができる。
また、平坦化膜が形成されることで、スイッチング素子の上方にも発光領域を形成できるので、当該スイッチング素子の上方に積極的に封止側発光領域を設けることができ、開口率が向上する。
【0011】
また、本発明のEL表示装置においては、前記封止側発光領域において前記第1画素電極に形成された前記遮光層は、前記平坦化層を介して前記第1スイッチング素子と平面的に重なり合っていることを特徴としている。
本発明によれば、第1画素電極に形成された遮光層と、第1スイッチング素子とが平坦化層を介して平面的に重なり合っているので、基板側発光領域における出射光は、第2画素電極と基板を透過して出射する経路において、第1スイッチング素子によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
一方、従来においては、基板側に出射光を取り出す際に、スイッチング素子やアレイ配線等によって出射光が遮蔽されてしまい、取り出し効率の低下を招いていた。これに対し、本発明によればこのような問題を解決することができる。
【0012】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子は、前記基板側発光領域を除く領域に形成されていることを特徴としている。
ここで、「基板側発光領域を除く領域」とは、例えば封止側発光領域や隔壁が形成されている領域を意味する。
このようにすれば、基板側発光領域における出射光は、第2画素電極と基板を透過して出射する経路において、第1スイッチング素子又は第2スイッチング素子によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
【0013】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の各々は、容量素子に接続されており、当該容量素子は、前記封止側発光領域に重なり合っていることを特徴としている。
ここで、容量素子は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子におけるゲート電極とソース電極との間に絶縁膜が介在することで構成されていることが好ましい。
このようにすれば、基板側発光領域における出射光は、第2画素電極と基板を透過して出射する経路において、容量素子によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明のEL表示装置においては、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の各々は、電源線に接続されており、当該電源線は、前記封止側発光領域に重なり合っていることを特徴としている。
本発明によれば、基板側発光領域における出射光が第2画素電極と基板とを透過して出射する経路において、電源線によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明のEL表示装置においては、前記発光機能層を区画する隔壁が形成されており、当該隔壁は、前記平坦化層を介して前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の少なくともいずれかと、平面的に重なり合っていることを特徴としている。
本発明によれば、基板側発光領域における出射光が第2画素電極と基板とを透過して出射する経路において、第1スイッチング素子や第2スイッチング素子によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
一方、従来においては、基板側に出射光を取り出す際に、スイッチング素子やアレイ配線等によって出射光が遮蔽されてしまい、取り出し効率の低下を招いていた。これに対し、本発明によればこのような問題を解決することができる。
【0016】
また、本発明のEL表示装置においては、前記発光機能層は、前記封止側発光領域と前記基板側発光領域において共通に形成されていることを特徴としている。
このような発光機能層は、封止側発光領域と基板側発光領域とにおいて、共通に形成される。従って、封止側発光領域と基板側発光領域の各々に発光機能層を分けて形成する必要がないので、容易に発光機能層を形成できる。
【0017】
また、本発明のEL表示装置においては、前記発光機能層は、前記封止側発光領域と前記基板側発光領域の各々に形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、封止側発光領域と基板側発光領域との各々に独立して発光機能層が形成されるので、各発光領域において安定した膜厚で発光機能層を形成することができる。
【0018】
また、本発明のEL表示装置の製造方法においては、基板の上方に、第1及び第2スイッチング素子を形成する工程と、前記第1及び第2スイッチング素子の各々に接続する第1及び第2画素電極を形成する工程と、当該第1及び第2画素電極の上方に発光機能層を形成する工程と、前記第1及び第2画素電極に対向する対向電極を形成する工程と、前記発光機能層を封止する封止部材を形成する工程とを含み、前記第1及び第2画素電極と前記対向電極は透明導電膜からなり、前記封止側発光領域における前記第1画素電極、及び前記基板側発光領域における前記対向電極の各々に隣接する遮光層を形成し、前記第1画素電極上に、前記発光機能層の出射光を前記封止部材側から取り出す封止側発光領域を形成し、前記第2画素電極上に、前記発光機能層の出射光を前記基板側から取り出す基板側発光領域を形成することを特徴としている。
【0019】
このような製造方法によって形成されたEL表示装置においては、第1及び第2スイッチング素子のスイッチング動作に応じて、封止側発光領域及び基板側発光領域における発光機能層を各々独立して発光させることができる。
また、封止部材側への発光と基板側への発光とを独立させて行うことができるので、従来の両面発光型のEL表示装置の問題を解決することができる。従来では、EL表示装置の反対側が透けて見えるために、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転し、当該表側と裏側とで同時に異なる画像表示を行うことができないという問題があった。これに対して、本発明は、封止側発光領域における第1画素電極と基板側発光領域における対向電極とに遮光層が形成され、更に封止側発光領域と基板側発光領域とにおいて独立して発光機能層が発光するので、EL表示装置の反対側が透けて見えることがなく、また、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転することもない。
また、封止側発光領域と基板側発光領域とにおいて独立して発光機能層が発光することから、各領域の輝度バランスを容易に調整することができ、各領域において情報量の変更も容易にできる。
【0020】
また、本発明のEL表示装置の製造方法においては、単位画素内の複数のサブ画素毎に前記第1及び第2画素電極を形成することを特徴としている。
このような封止側発光領域及び基板側発光領域は、サブ画素毎に形成されていると共に、当該封止側発光領域及び基板側発光領域における発光機能層が各々独立して発光するので、サブ画素毎において封止部材側への発光と基板側への発光とを独立して行うことができる。
【0021】
また、本発明のEL表示装置の製造方法においては、マスク蒸着法を利用することにより、前記基板側発光領域における前記対向電極に前記遮光層を形成することを特徴としている。
このようにすれば、対向電極上に遮光層を所定のマスクパターンに応じて蒸着して形成することができる。
【0022】
また、本発明の電子機器においては、先に記載のEL表示装置を表示部として具備することを特徴としている。
従って、本発明の電子機器としては、携帯電話機等の電子機器が挙げられる。このように電子機器の表示部に、本発明のEL表示装置を採用することによって、表側及び裏側の両面で異なる画像を同時に表示できる表示部を備えた電子機器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では、本発明に係るEL表示装置、及び電子機器の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、係る実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0024】
(EL表示装置)
図1はEL表示装置1の構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態のEL表示装置は、電気光学物質の一例である電界発光型物質、中でも有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を用いたものであって、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下では、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス方式によって有機EL材料を発光駆動させるものである。
そして、特に本実施形態のEL表示装置は、パネルの表側及び裏側から画像表示を行う両面発光型である。換言すれば、トップエミッション型とボトムエミッション型の表示を行う、所謂ダブルエミッション型である。
【0025】
図1に示すようにEL表示装置1は、電気絶縁性の基板20上に、画素部3(図中一点鎖線枠内)と、当該画素部を被覆するカバー基板(後述)とを備えた構成となっている。
そして、画素部3においては、発光した出射光が基板20を透過させて画像表示を行うと共に、カバー基板46(後述)を透過させて画像表示を行うようになっている。
ここで、画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されており、実表示領域4には複数の画素が形成され、ダミー領域5の下層側には走査線駆動回路80および検査回路90が形成されている。
【0026】
実表示領域4に形成された画素の各々には、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)のサブ画素が形成されており、当該RGBの各色サブ画素は、基板20の側と、カバー基板46の側の各々から発光するようになっている。また、RGBの各色光を出力する3個のサブ画素で1個の画素を構成するものとなっている。したがって表示を構成する最小要素となる表示領域を「サブ画素」、RGBの各色サブ画素から構成される表示領域を「画素」(単位画素)と称する。このような構成により、各サブ画素のRGBの各色光が諧調されることで、画素毎にフルカラーの発光をダブルエミッション方式で行うようになっている。
なお、本実施形態においては、「サブ画素」を「サブピクセル」と称し、RGBの各色サブピクセルから構成される表示領域を「ピクセル」(単位画素)と称してもよい。
【0027】
ダミー領域5の下層側に形成された走査線駆動回路80は、シフトレジスタ及びレベルシフタを備えており、実表示領域4のサブ画素毎に形成されたTFTを動作駆動するようになっている。また、ダミー領域5の下層側に形成された検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する不図示の検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0028】
走査線駆動回路80及び検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部及び駆動電圧導通部を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部及び駆動電圧導通部を介して送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0029】
次に、図2〜図4を参照し、EL表示装置1の構成について詳細に説明する。
図2は、EL表示装置1の実表示領域4における一つのサブ画素の等価回路図である。
図3は、EL表示装置1の実表示領域4における一つのサブ画素を拡大視した拡大平面図である。図4は、図3のA−A´断面における断面図である。
【0030】
図2の等価回路図に示すように、EL表示装置1は、スイッチング素子としてTFTを用いたアクティブマトリクス型である。当該EL表示装置1は、走査線101T,101Bと、当該走査線101T,101Bに対して直角に交差する方向に延びるデータ線102T,102Bと、データ線102T,102Bに並列に延びる電源線103とが配線された構成を有する。これらの配線は、マトリクス状に配列されている複数のサブ画素Dの配列方向に延在している。即ち、走査線101T,101Bは図中左右方向に延在し、データ線102T,102B及び電源線103は、図中縦方向に延在している。本実施形態では、図2を参照して、サブ画素Dの一つ当たりの等価回路図を示しているが、マトリクス状に配列する複数のサブ画素Dは、走査線101T,101B、走査線101T,101B、電源線103に対して並列的に接続されている。
【0031】
走査線101T,101Bには、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路201が接続されている。当該走査線駆動回路201は、走査線101T,101Bの各々に対して、異なる走査信号を与えることが可能となっている。
また、データ線102T,102Bには、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路202が接続されている。当該データ線駆動回路202は、データ線102T,102Bの各々に対して、異なるデータ信号を与えることが可能となっている。
このように、走査線101T,101Bやデータ線102T,102Bに信号を付与することが可能となっていることで、EL表示装置1は、後述するようにダブルエミッション方式の表示を行う。
【0032】
また、サブ画素Dは、カバー基板46の側に発光してトップエミッション表示を行う封止側発光領域73と、基板20の側に発光してボトムエミッション表示を行う基板側発光領域74とを有している。
ここで、封止側発光領域73においては、スイッチング用TFT120と、駆動用TFT(第1スイッチング素子)122によって、発光機能層12(後述)が発光駆動する。
また、基板側発光領域74においては、スイッチング用TFT121と、駆動用TFT(第2スイッチング素子)122によって、発光機能層12が発光駆動する。
【0033】
次に、各TFTの動作と、封止側発光領域73及び基板側発光領域74における発光機能層12の発光駆動について説明する。
まず、TFT120において、走査線101Tを介して走査信号がゲート電極に供給されると、データ線102Tのデータ信号は、TFT120のチャネルを介して、保持容量(容量素子)CTに供給される。これにより、TFT120のデータ信号は、保持容量CTによって保持される。そして、TFT120から供給されるデータ信号或いは保持容量CTに保持されたデータ信号がTFT122のゲート電極に供給されると、電源線103の駆動電流は、TFT122のチャネルを介して、画素電極から陰極に流れる。これにより、封止側発光領域73において、画素電極と陰極とにより挟持された発光機能層12は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0034】
次に、TFT121において、走査線101Bを介して走査信号がゲート電極に供給されると、データ線102Bのデータ信号は、TFT121のチャネルを介して、保持容量(容量素子)CBに供給される。これにより、TFT121のデータ信号は、保持容量CBによって保持される。そして、TFT121から供給されるデータ信号或いは保持容量CTに保持されたデータ信号がTFT123のゲート電極に供給されると、電源線103の駆動電流は、TFT123のチャネルを介して、画素電極から陰極に流れる。これにより、基板側発光領域74において、画素電極と陰極とによって挟持された発光機能層12は、これを流れる電流量に応じて発光する。
このようなTFT120,121,122,123の動作により、サブ画素Dは基板20側及びカバー基板46側の各々に向けて発光可能となっている。
【0035】
次に、図3を参照して、サブ画素Dの平面図について説明する。
図3の平面図においては、サブ画素Dを構成する各種配線の積層構造を説明するために、当該各種配線を透過した図となっている。
また、図3に示す各構成要素は、基板20上に形成されるものである。また、各構成要素(配線、TFT、容量素子)の間には、層間絶縁膜が形成されており、電気的絶縁性が得られたものとなっている。また、層間絶縁膜には部分的にコンタクトホールが形成されており、各構成要素間を導通させている。
【0036】
図3に示すように、EL表示装置1は、紙面左右方向にn番目のサブ画素D(n)とn+1番目のサブ画素D(n+1)が隣接した構造を有している。
また、EL表示装置1は、サブ画素D(n),D(n+1)を跨ぐように、発光機能層12の平面パターンとなる発光機能層領域12ARを有している。当該発光機能層領域12ARは、サブ画素D(n)の基板側発光領域74と、サブ画素D(n+1)の封止側発光領域73とに対して、共通に形成されている。また、発光機能層領域12ARは、有機バンク21の平面パターンとなるバンク領域(隔壁)21ARによって囲まれている。また、有機バンク領域21ARは、サブ画素D(n),D(n+1)の各々の中央に形成されており、各サブ画素における封止側発光領域73と基板側発光領域74とを隔離させている。
【0037】
なお、図3においては、バンク領域21ARは、紙面縦方向に延在すると共に、発光機能層領域12ARの両側に形成されているが、当該バンク領域21ARは、紙面左右方向にも延在して形成されているものである。従って、紙面縦方向及び左右方向に延在するバンク領域21ARによって、発光機能層領域12ARが囲まれて形成されている。
【0038】
また、封止側発光領域73と基板側発光領域74においては、走査線101T,101Bは、サブ画素Dが隣接する方向に向けて延在し、当該封止側発光領域73及び基板側発光領域74に重なっている。
これに対して、データ線102T,102B、スイッチング用のTFT120,121、及び電源線103は、紙面縦方向に延在し、封止側発光領域73のみに重なっている。また、TFT120,121のチャネル領域は、走査線101T,101Bに重なり合っており、当該走査線101T,101Bを、TFT120,121のゲート電極としている。
【0039】
また、データ線102T,102Bは、複数の屈曲部Kを有している。このような屈曲部Kが形成されることにより、データ線102T,102Bの両者が共に重なり合ったり、データ線102T,102BがTFT120,121に重なり合ったりすることがない。また、TFT120,121と屈曲部Kとが重なる部分には、コンタクトホールCが設けられており、データ線102Tと、TFT120のソース領域とが電気的に接続され、データ線102Bと、TFT121のソース領域とが電気的に接続されている。このような屈曲部Kが形成されることにより、封止側発光領域73の面積内にデータ線102T,102BやTFT120,121を重ね合わせて集積することが可能となっている。
【0040】
また、バンク領域21ARにおいては、これに重なるように駆動用のTFT122,123が配設されている。
ここで、TFT122のドレイン領域41D(後述)は、コンタクトホール44a(後述)を介して、第1画素電極23a(後述)に接続されている。また、TFT123のドレイン領域となる高濃度不純物領域41D(後述)は、コンタクトホール44a(後述)を介して、第2画素電極23b(後述)に接続されている。
また、TFT122のソース領域となる高濃度不純物領域41S(後述)は、コンタクトホール43a(後述)を介して、電源線103に接続されている。また、TFT123のソース領域41S(後述)は、コンタクトホール43a(後述)を介して、電源線103に接続されている。
【0041】
また、TFT122のゲート電極42は、TFT120のドレイン電極と導通している。ここで、TFT122のゲート電極42の一部は、層間絶縁膜を介して電源線103と対向配置しており、先述の保持容量CTを構成している。
また、TFT123のゲート電極42は、TFT121のドレイン電極と導通している。ここで、TFT123のゲート電極42の一部は、層間絶縁膜を介して電源線103と対向配置しており、先述の保持容量CBを構成している。従って、保持容量CT,CBは、封止側発光領域73に重なり合っている。
【0042】
次に、図4を参照して、サブ画素Dの断面図について説明する。
図4に示すように、EL表示装置1は、基板20とカバー基板(封止部材)46との間に、TFT素子部11と、発光機能層12と、封止部13とを備えた構成となっている。また、当該EL表示装置1は、発光機能層12の出射光を封止部13に透過させてカバー基板46の側から取り出す封止側発光領域73と、発光機能層12の出射光をTFT素子部11に透過させて基板20の側から取り出す基板側発光領域74とを備え、封止側発光73aと基板側発光74aとを行うようになっている。
【0043】
次に、EL表示装置1の各構成要素について詳述する。
基板20は、基板側発光を行うための透明性基板からなる。透明性基板としては、ガラス基板や樹脂基板等が採用される。ガラス基板は、比較的耐熱性が高いことから、公知の半導体製造工程によってガラス基板上にTFTを容易に形成することが可能となる。一方、樹脂基板は、可撓性を有していることから、フレキシブル性を備えたEL表示装置1を実現するには適した材料である。
【0044】
次に、基板20上に形成されるTFT素子部11について説明する。
TFT素子部11は、発光機能層12をアクティブマトリクス駆動によって発光させるためのTFT122,123を有している。当該TFT122、123の各々は、封止側発光と基板側発光とを各々行うためのスイッチング素子である。そして、当該2つのTFTは、実表示領域4の各サブ画素D内に形成されている。また、TFT122、123の近傍は、シリコン層41、ゲート絶縁層82、ゲート電極42、層間絶縁膜83、ソース電極43(電源線103)、ドレイン電極44、パッシベーション膜84、及び平坦化層85が順次積層された構成となっている。そして、平坦化層85の表面には、後述する画素電極23a、23bが形成されている。
なお、本実施形態においては、基板20上にシリコン層41を形成した構成を採用したが、当該基板20とシリコン層41との間に下地保護層を形成してもよい。このような下地保護層は、基板20からシリコン層41に不純物が拡散するのを防止する、所謂バリア層として機能する層膜であり、その材料としては、SiO等の無機物を主体とする材料が採用される。
【0045】
シリコン層41は、半導体材料からなる半導体層であり、不純物が部分的にドーピングされることによって形成された高濃度不純物領域41S、41D及び低濃度不純物領域41b、41cと、ゲート電極42に対向する位置に形成されたチャネル領域41aと、を備える層膜である。ここで、高濃度不純物領域41S、41Dは、後述するように各々ソース電極43、ドレイン電極44に導通している。また、当該シリコン層41は、下地保護層81上に、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層を形成した後に、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させたポリシリコン層である。また、シリコン層41は、基板20の表面に部分的に形成されており、公知のフォトリソグラフィ法によってパターニングされることで、島状に形成されている。
なお、図4に示すシリコン層41は、表示領域内に形成され、画素電極23a、23bに接続されるTFT122、123を構成するものであるが、図1に示した走査線駆動回路80に含まれるPチャネル型及びNチャネル型のTFT(駆動回路用TFT)においても、基本構造はシリコン層41と同様となっている。
【0046】
ゲート絶縁層82は、シリコン層41の表面に形成されるものであり、ゲート電極42との絶縁性を得るための層膜である。当該ゲート絶縁層82は、SiO及び/又はSiNを主成分とする材料からなり、プラズマCVD法や熱酸化法等の方法によって、約30nm〜200nmの膜厚で形成されている。
【0047】
ゲート電極42は、ゲート絶縁層82の表面全体にドープドシリコンやシリサイド膜、或いはアルミニウム膜やクロム膜、タンタル膜といった金属膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法によってパターニングして形成されたものである。当該ゲート電極42の膜厚は概ね500nm程度である。
【0048】
層間絶縁膜83は、ゲート電極42を埋設して平坦化すると共に、ゲート電極42に対するソース電極43及びドレイン電極44の電気的絶縁性を得るための層膜である。このような層間絶縁膜83は、スピンコート法等の塗布法や、CVD等の気相成膜法によって形成される。ここで、塗布法を利用する場合では、SOG膜等の無機材料やアクリル樹脂等の有機材料を溶媒と混合して塗布した後に、熱処理工程や焼成工程を施すことによって層間絶縁膜83が形成される。また、気相成膜法を利用する場合では、SiOやSiN等によって層間絶縁膜83が形成される。
【0049】
ソース電極43及びドレイン電極44は、層間絶縁膜83の表面に形成される層膜である。また、層間絶縁膜83にはコンタクトホール43a、44aが予め形成されており、当該ソース電極43及びドレイン電極44を形成することで、高濃度不純物領域41S、41Dの各々にソース電極43及びドレイン電極44が接続するようになっている。
ソース電極43及びドレイン電極44の形成方法としては、層間絶縁膜83を覆うように、アルミニウム、クロム、タンタル等の金属膜を200nm〜800nm程度の膜厚で形成した後に、ソース電極43及びドレイン電極44が形成されるべき領域を覆うようにエッチング用マスクを形成し、その後、金属膜をエッチングすることで、ソース電極43及びドレイン電極44を形成する。
【0050】
パッシベーション膜84は、SiN等の材料を用いて、CVD等の気相成膜法によって形成される層膜である。当該パッシベーション膜84は、水分を遮蔽する機能を有しており、後述する平坦化層85を形成する際に溶剤等に含まれる水分がTFT122、123の側に侵入するのを抑制している。
【0051】
平坦化層85は、ソース電極43及びドレイン電極44を形成することによって生じたパッシベーション膜84の凹凸部を埋設して平坦化を施すための層膜である。これにより、平坦化層85の表面、即ち、画素電極23a、23bの形成面が平坦化される。また、当該平坦化層85は、層間絶縁層としても機能する層膜である。
【0052】
このような平坦化層85の形成方法としては、アクリル樹脂を含有した液体材料をスピンコート法により塗布した後に、熱処理によりキュアを施すことにより行われる。ここで、スピンコート法を施すことにより、ソース電極43及びドレイン電極44の形状に起因する凹凸部が埋設されて平坦化が行われる。
【0053】
このような平坦化層85の面上には、画素電極23a、23bが形成されると共に、平坦化層85を貫通するようにコンタクトホールが形成され、当該コンタクトホールに埋設された配線を介して、画素電極23a、23bとドレイン電極44とが接続されている。即ち、画素電極23a、23bは、ドレイン電極44を介して、シリコン層41の高濃度不純物領域41Dに電気的に接続されている。
【0054】
なお、走査線駆動回路80および検査回路90に含まれるTFT(駆動回路用TFT)、即ち、例えばこれらの駆動回路のうち、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型のTFTは、画素電極23a、23bと接続されていない点を除いて上記TFT122、123と同様の構造であり、同一のプロセスで形成される。
【0055】
次に、TFT素子部11上に形成される画素電極23a、23bと、発光機能層12と、陰極(対向電極)50と、について説明する。
画素電極23a、23bの各々は、封止側発光領域73に対応する第1画素電極と、基板側発光領域74に対応する第2画素電極である。当該第1画素電極23a及び第2画素電極23bは、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide(登録商標))(出光興産社製)等の透明性金属等によって形成され、これらの材料の単層構造や2層構造が好適に採用される。
【0056】
また、第1画素電極23aと平坦化層85との間には、光反射性を有する遮光層71が形成されている。当該遮光層71は、アルミ(Al)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属膜によって形成されたものである。また、当該遮光層71とTFT122とは、平坦化層85を介して平面的に重なり合っている。換言すれば、カバー基板46側から見て、遮光層71がTFT122を被覆するようになっている。また、TFT122は、基板側発光領域74にはみ出ていない構成となっている。これにより、基板側発光領域74における出射光がTFT122を透過することがない。
なお、本実施形態においては、遮光層71は光反射性を有するものとなっているが、遮光層71の変形例として光吸収性を有していてもよい。この場合、顔料分散樹脂によって遮光層71が形成されることが好ましい。
また、本実施形態においては、遮光層71とTFT122とが平面的に重なり合っているが、遮光層71とTFT123とが平面的に重なり合ってもよい。
また、本実施形態において、「重なり合っている」とは、両者が完全に一致して重なり合っている状態や、両者の各々の少なくとも一部分が重なり合っている状態を含むことを意味している。
【0057】
また、画素電極23a、23b上には、発光機能層12と陰極50とが形成されている。当該発光機能層12は、正孔注入/輸送層70及び有機EL層60によって構成されている。
正孔注入/輸送層70は、形成材料として。例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、又はそれらのドーピング体等を用いて形成された層膜である。具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いて正孔注入/輸送層70を形成することができる。
【0058】
有機EL層60は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が採用される。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上述した高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。また、有機EL層60の膜厚は、100nm程度であることが好ましい。
【0059】
また、本実施形態のEL表示装置1は、カラー表示を行うべく有機EL層60が、その発光波長帯域が光の三原色にそれぞれ対応して形成されている。例えば、有機EL層60として、発光波長帯域が赤色に対応した赤色用有機EL層60R、緑色に対応した緑色用有機EL層60G、青色に対応した青色用有機EL層60Bとをそれぞれに対応するサブ画素R、G、Bに設け、これらサブ画素R、G、Bをもってカラー表示を行う1画素が構成されている。
【0060】
このような正孔注入/輸送層70及び有機EL層60は、サブ画素D(n+1)の封止側発光領域73と、サブ画素D(n)の基板側発光領域74において共通に形成されたものであり、複数のサブ画素の各々を区画する有機バンク(隔壁)21に囲まれた発光機能層領域12ARとして形成されたものである(図3参照)。
【0061】
更に、有機バンク21と平坦化層85の間、又は第1画素電極23aと第2画素電極23bとの間には、親液性制御層25が形成されている。
親液性制御層25は、例えばSiOなどの親液性材料を主体として形成されたものであって、画素電極23a、23bの上方において、正孔注入/輸送層70及び有機EL層60の各々を濡れ広がせるものである。また、当該親液性制御層25は、親液性を付与するためたけでなく、第1画素電極23aと第2画素電極23bの間に形成されている。これにより、遮光層71が形成されることで生じる段差部に親液性制御層25が形成されるので、当該段差部における電流集中や短絡を防ぐようになっている。
【0062】
有機バンク21は、アクリル樹脂やポリイミド樹脂などからなるものであって、その表面は親液性制御層25よりも高い撥液性を有している。そして、画素電極23a、23bには親液性制御層25に設けられた開口部25a、及び有機バンク21に設けられた開口部21aの開口内部に、正孔注入/輸送層70と、有機EL層60とが画素電極23a、23b側からこの順で積層されている。
また、有機バンク21は、平坦化層85を介してTFT122、123と平面的に重なり合っており、換言すれば、カバー基板46側から見て、有機バンク21がTFT122、123を被覆するようになっている。また、TFT122、123は、封止側発光領域73にはみ出ていない構成となっている。
なお、本実施形態における親液性制御層25の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層21を構成するアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。
【0063】
なお、本実施形態においては、発光機能層12は、正孔注入/輸送層70と有機EL層60とからなる2層構造を採用したが、有機EL層60上に電子注入層を形成した3層構造を採用してもよい。
この場合、電子注入層を形成するための材料としては、例えばバソクプロインとセシウムの共蒸着膜が好適に採用される。バソクプロインとセシウムの共蒸着膜は、バソクプロインとセシウムを蒸発源とする共蒸着法により形成される。
また、このような材料以外にも、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属のハロゲン化物あるいは酸化物を含む材料を採用してもよい。アルカリ金属としては例えばLi、Na、Csが用いられ、アルカリ土類金属としては例えばCa、Ba、Srが用いられ、希土類金属としては例えばSm、Tb、Erが用いられる。これら金属は、特にフッ化物として用いられ形成されているのが好ましいが、これ以外のハロゲン化物、すなわち塩化物や臭化物としてもよく、また、酸化物としてもよい。このような電子注入層Bの形成材料となる化合物において、LiFなど蒸着が可能なものについては、その化合物を溶媒トラップ法もしくはコールドトラップ法によるガス中蒸着法などにより、粒径が1μm以下の超微粒子に製造することが可能である(例えば「分散・凝集の解明と応用技術,(1992),P.30」参照)。したがって、この超微粒子を分散媒中に均一に分散させて分散液(コロイド)とすることにより、液滴吐出法での塗布、すなわち液相プロセスでの成膜が可能となる。
【0064】
陰極50は、発光機能層12の上方、及び有機バンク21の上方に形成される電極である。
当該陰極50は、図1に示す実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されている。陰極50を形成するための材料としては、電子注入効果の大きい材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、これらの材料だけでは、電気抵抗が大きく電極として機能しないため、アルミニウムや金、銀、銅などの金属層やITO、酸化錫などの金属酸化物導電層との積層体と組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム金属、ITOの積層体を、透明性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0065】
また、陰極50には遮光層72が形成されている。
当該遮光層72は、光反射性を有しており、基板側発光領域74の領域内と有機バンク21の上方に形成されている。このような遮光層72を構成する材料としては、先述の遮光層71と同様に、アルミ(Al)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属膜が採用される。また、当該遮光層72は、基板側発光領域74と有機バンクを限定して形成されたものであって、封止側発光領域73にははみ出ていない構成となっている。
また、先述の封止側発光領域73内に形成された遮光層71と、基板側発光領域74内の形成された遮光層72との平面的な位置関係について説明すると、遮光層71の端部と遮光層72の端部とが一致している、もしくは、遮光層71の一部分と、遮光層72の一部分とが重なるように形成されている。これにより、EL表示装置1の非発光状態では、封止側から見ても基板側から見ても、実表示領域4の全面が遮光層で覆われた状態となり、表裏光抜けが生じることがない。
また、EL表示装置1の発光状態においては、封止側発光領域73で発光した出射光は封止側発光領域73のみに出射され、基板側発光領域74で発光した出射光は基板側発光領域74のみに出射される。
なお、本実施形態においては、遮光層72は光反射性を有するものとなっているが、遮光層72の変形例として光吸収性を有していてもよい。この場合、顔料分散樹脂によって遮光層72が形成されることが好ましい。
【0066】
次に、陰極50の上方に形成される封止部13について説明する。
封止部13は、陰極50とカバー基板46との間に形成されるものであり、陰極50側から透明保護膜45Aと接着層45Bとが順次積層されて構成されている。更に、接着層45Bの上方には、カバー基板46が設けられている。
透明保護膜45Aは、出射光を遮蔽することなく透過させると共に、EL表示装置1の外部から侵入する水分や酸素に対するガスバリア性を備えた部材である。この透明保護膜45Aの材料としては、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiO)等が採用される。なお、窒化シリコンを採用する場合には、透明性を有する程度に薄膜化する必要がある。
接着層45Bは、透明保護膜45Aにカバー基板46を接着すると共に、カバー基板46の外部からの衝撃を緩衝する緩衝材としての機能を有するものである。
カバー基板46は、基板側発光を行うための透明性基板からなる。透明性基板としては、ガラス基板や樹脂基板等が採用される。また、電気絶縁性を有することが好ましい。
【0067】
次に、このように構成されたEL表示装置1の動作について説明する。
不図示のゲート配線からゲート電極42に電位が付与されると、ゲート電極42の近傍で生じる電界の作用によってソース電極43からドレイン電極44に電流が流れる。即ち、これによってTFT122、123のオン・オフ状態が決まる。
ここで、TFT122がオン状態となる場合では、陰極50と第1画素電極23aとの間に電流が流れ、有機EL層60において電子と正孔が結合することで出射光が生じる。また、その電流量によって発光強度が制御される。そして、出射光は、遮光層71が形成されている第1画素電極23aの側に出射することなく、陰極50とカバー基板46を透過し、封止側発光領域73から出射する。また、遮光層71は光反射性を有しているので、第1画素電極23aの側に発光した出射光は、遮光層71によって反射され、カバー基板46を透過して封止側発光領域73から出射する。このように、TFT122のスイッチング状態によって、封止側発光領域73における発光が制御される。
【0068】
一方、TFT123がオン状態となる場合では、陰極50と第2画素電極23bとの間に電流が流れ、有機EL層60において電子と正孔が結合することで出射光が生じる。また、その電流量によって発光強度が制御される。そして、出射光は、遮光層72が形成されている陰極50の側に出射することなく、第2画素電極23bと基板20を透過し、基板側発光領域74から出射する。また、遮光層72は光反射性を有しているので、陰極50の側に発光した出射光は、遮光層72によって反射され、基板20を透過して基板側発光領域74から出射する。このように、TFT123のスイッチング状態によって、基板側発光領域74における発光が制御される。
【0069】
このように本実施形態のEL表示装置1においては、TFT122、123の各々が独立に駆動することによって、封止側発光領域73と基板側発光領域74とにおいて独立して発光させるようになっている。即ち、TFT122、123を別々に駆動させて、EL表示装置1の表面側と裏面側で異なる表示を同時に行うことが可能となる。
また、当該封止側発光領域73及び基板側発光領域74は、サブ画素毎に形成され、各サブ画素がR、G、Bの各色を発光するので、EL表示装置1の両面においてフルカラー表示が行われる。
【0070】
上述したように、本実施形態のEL表示装置1においては、封止側発光領域73及び基板側発光領域74は、サブ画素毎に形成されていると共に、当該封止側発光領域73及び基板側発光領域74における発光機能層12が各々独立して発光するので、サブ画素毎においてカバー基板46側への発光と基板20側への発光とを独立して行うことができる。
また、例えば単位画素内に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色で発光するサブ画素を備えている場合には、単位画素においてフルカラー表示を行うことができると共に、当該フルカラー表示をカバー基板46側と基板20側とに各々異ならせて行うことができる。
【0071】
このように、本実施形態においては、サブ画素毎にカバー基板46側への発光と基板20側への発光とを独立させて行うことができるので、従来の両面発光型のEL表示装置の問題を解決することができる。従来では、EL表示装置の反対側が透けて見えるために、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転し、当該表側と裏側とで同時に異なる画像表示を行うことができないという問題があった。これに対して、本発明は、封止側発光領域73における第1画素電極23aと基板側発光領域74における陰極50とに遮光層71、72が形成され、更に封止側発光領域73と基板側発光領域74とにおいて独立して発光機能層12が発光するので、EL表示装置1の反対側が透けて見えることがなく、また、パネルの表側と裏側とにおいて表示画像が反転することもない。
また、封止側発光領域73と基板側発光領域74とにおいて独立して発光機能層12が発光することから、各領域73、74の輝度バランスを容易に調整することができ、各領域73、74において情報量の変更も容易にできる。
【0072】
また、第1画素電極23aに形成された遮光層71と、陰極50に形成された遮光層72とは、光反射性を有しているので、発光効率を向上させて高輝度の表示を実現できる。
具体的には、封止側発光領域73における発光機能層12の出射光は、陰極50とカバー基板46を透過して出射すると共に、第1画素電極23aに形成された光反射性の遮光層71に反射した後に陰極50と封止部材を透過して出射する。また、基板側発光領域74における発光機能層12の出射光は、第2画素電極23bと基板20を透過して出射すると共に、陰極50に形成された光反射性の遮光層72に反射した後に第2画素電極23bと基板20を透過して出射する。従って、遮光層が光反射性を有していることにより、封止側発光領域73と基板側発光領域74の各々において更に発光効率を向上させることができる。
【0073】
また、EL表示装置1においては、第1画素電極23a及び第2画素電極23bの各々には、TFT122とTFT123とが接続されており、当該TFT122、123が駆動することによって発光機能層12を発光させることができる。これにより、封止側発光領域73と基板側発光領域74との各々において、発光機能層12を独立して発光させることができる。
【0074】
また、EL表示装置1においては、第1画素電極23a及び第2画素電極23bと、TFT122、123との間に、平坦化層85が形成されているので、第1画素電極23a及び第2画素電極23bを平坦面上に形成することができる。
また、平坦化膜85が形成されることで、TFT122、123の上方にも発光領域を形成できるので、当該TFT122の上方に積極的に封止側発光領域73を設けることができ、開口率が向上する。
【0075】
また、EL表示装置1においては、封止側発光領域73において第1画素電極23aに形成された遮光層71は、平坦化層85を介してTFT122と平面的に重なり合っているので、基板側発光領域74における出射光は、第2画素電極23bと基板20を透過して出射する経路において、TFT122によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域74における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
一方、従来においては、基板側に出射光を取り出す際に、スイッチング素子やアレイ配線等によって出射光が遮蔽されてしまい、取り出し効率の低下を招いていた。これに対し、本実施形態によればこのような問題を解決することができる。
【0076】
また、EL表示装置1においては、有機バンク21が形成されており、当該有機バンク21は平坦化層85を介してTFT122、123と平面的に重なり合っているので、基板側発光領域74における出射光は、第2画素電極23bと基板20を透過して出射する経路において、TFT123によって遮光されずに出射される。従って、基板側発光領域74における出射光の取り出し効率を向上させることができる。
一方、従来においては、基板20側に出射光を取り出す際に、スイッチング素子やアレイ配線等によって出射光が遮蔽されてしまい、取り出し効率の低下を招いていた。これに対し、本実施形態によればこのような問題を解決することができる。
【0077】
また、EL表示装置1においては、発光機能層12は、封止側発光領域73と基板側発光領域74において共通に形成されている。これにより、封止側発光領域73と基板側発光領域74の各々に発光機能層12を分けて形成する必要がないので、容易に発光機能層12を形成できる。
【0078】
また、EL表示装置1においては、データ線102T,102B、電源線103、TFT120,121、保持容量CT,CBが基板発光領域74に形成されていないので、基板側発光74aが遮蔽されるのを抑制できる。従って、出射光の取り出し効率を向上させることができる。
また、データ線102T,102B、電源線103、TFT120,121、保持容量CT,CBは、封止側発光領域73やバンク領域21に形成されているので、出射光の遮蔽に寄与しない部分に形成することができる。
【0079】
(EL表示装置の変形例1)
次に、EL表示装置の変形例1について説明する。
ここでは、上記のEL表示装置1と異なる部分について説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
先に記載したEL表示装置1においては、遮光層71、72が光反射性を有していたが、本変形例においては、当該遮光層71、72が光吸収性を有している。
【0080】
このような構成を有するEL表示装置1において、基板側発光領域74における陰極50に光吸収性の遮光層72が形成されている場合では、当該遮光層72がカバー基板46側から入射する外光を吸収するので、カバー基板46側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。
また、封止側発光領域73における第1画素電極23aに光吸収性の遮光層71が形成されている場合では、当該遮光層71が基板20側から入射する外光を吸収するので、基板20側に表示を行う画像のコントラストを向上することができる。
従って、遮光層71、72が光吸収性を有していることにより、ブラックマトリクスとして機能するので、封止側発光領域73と基板側発光領域74の各々において、コントラストを向上させた表示を行うことができる。
【0081】
(EL表示装置の変形例2)
次に、EL表示装置の変形例2について説明する。
ここでは、上記のEL表示装置1と異なる部分について説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
先に記載したEL表示装置1においては、発光機能層12がサブ画素毎に共通に形成されていたが、本変形例においては、前記封止側発光領域73と前記基板側発光領域74の各々に発光機能層12が形成されている。
【0082】
このような構成を有するEL表示装置1においては、封止側発光領域73と基板側発光領域74との各々に独立して発光機能層12が形成されるので、各発光領域において安定した膜厚で発光機能層12を形成することができる。
【0083】
なお、上記のEL表示装置1においては、サブ画素内に封止側発光領域73と基板側発光領域74とを備えた構成を採用したが、当該サブ画素内に形成することに限定せずに、EL表示装置のパネル部に、封止側発光領域73と基板側発光領域74を備えた構成を採用してもよい。このようにすれば、パネル部の封止側発光領域73において、カバー基板46側に画像を表示することが可能となり、パネル部の基板側発光領域74において、基板20側に画像を表示することが可能となる。また、当該封止側発光領域73と基板側発光領域74は、各々独立して異なる画像を表示することができる。
【0084】
(EL表示装置の製造方法)
次に、図5〜図7を参照して、上記のEL表示装置1の製造方法について説明する。
図5〜図7は、上記の図2に対応する図面であって、EL表示装置1の実表示領域4における一つのサブ画素を拡大視した拡大断面図である。
【0085】
まず、図5(a)に示すように、基板20上にTFT122、123を形成する(第1及び第2スイッチング素子を形成する工程)。当該工程においては、公知の半導体製造工程を利用することで行われる。
更に、TFT122、123の上方に層間絶縁膜83を形成した後に、コンタクトホール43a、44aを形成し、ソース電極43及びドレイン電極44を形成する。更に、パッシベーション膜84を全面に形成した後に、ドレイン電極44の一部を露出させる。当該吐出部分は、後に画素電極23a、23bと接触接合される部位である。
【0086】
次に、図5(b)に示すように、平坦化層85を形成した後に、ドレイン電極44の露出部分に対応させてコンタクトホール85aを形成する。
このような平坦化層85は、スピンコート法等の塗布法によって塗布された後に、熱処理工程やキュア工程によって形成された層膜である。また、平坦化層85を構成する具体的な材料としては、有機材料を主成分として含む材料が採用され、その中でも、例えば、アクリル樹脂膜を採用することが好ましい。なお、アクリル樹脂以外にも、他の有機材料としてポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂(以下、BCB樹脂と称す)等を採用してもよい。
【0087】
次に、図5(c)に示すように、遮光層71を形成する(封止側発光領域における第1画素電極に隣接する遮光層を形成)。
当該遮光層71は、後に形成される第1画素電極23aの下層に位置する層膜であり、封止側発光領域73に形成されるものである。また、当該遮光層71は、光反射性又は光吸収性のいずれかの性質を有している。当該遮光層71が光反射性を有している場合には、反射光を利用して封止側発光領域において出射させることができるので、発光効率の向上を図ることができる。また、当該遮光層71が光吸収性を有している場合には、ブラックマトリクスとして機能するので、コントラストの向上が実現できる。
ここで、光反射性を有する場合には、アルミ(Al)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属膜を平坦化層85の全面に形成した後に、フォトリソグラフィ技術やパターニング技術によって、所定のパターンに形成される。
また、光吸収性を有する場合には、顔料分散樹脂を含有する液体材料を平坦化層85の全面に塗布形成した後に、キュア等の工程を経て、フォトリソグラフィ技術やパターニング技術によって、所定のパターンに形成される。
【0088】
次に、図5(d)に示すように、第1画素電極23a及び第2画素電極23bを形成する(第1及び第2スイッチング素子の各々に接続する第1及び第2画素電極を形成する工程)。
これにより、平坦化層85のコンタクトホール85aを介して第1画素電極23a及び第2画素電極23bの各々が、TFT122、123のドレイン電極44に接触して導通状態となる。また、第1画素電極23a及び第2画素電極23bは、上記のようにITO等の透明性導電膜を利用して形成される。更に、フォトリソグラフィ技術やパターニング技術によって、所定のパターンに形成される。
このような第1画素電極23a及び第2画素電極23bは、サブ画素毎に形成される。これにより、各サブ画素内において、封止側発光と基板側発光とを行うことが可能となる。
【0089】
次に、図6(a)に示すように、親液性制御層25を形成する。
当該工程においては、第1画素電極23aと第2画素電極23bとの間に形成される。当該親液性制御層25は、SiOなどの親液性材料を主体として形成されたものであって、画素電極23a、23bの上方において、正孔注入/輸送層70及び有機EL層60の各々を濡れ広がせるものである。また、当該親液性制御層25は、親液性を付与するためたけでなく、第1画素電極23aと第2画素電極23bの間に形成されることで、遮光層71が形成されることで生じる段差部に親液性制御層25が形成されることとなり、当該段差部における電流集中や短絡を防ぐようになる。
【0090】
次に、図6(b)に示すように、有機バンク21を形成する。
当該工程においては、スピンコート法等の塗布法を利用して行われる。具体的には、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料を溶剤に溶解させて当該溶液を塗布した後に、キュアを行って硬化する。更に、レジスト塗布後にフォトリソグラフィ技術によってレジストを部分的に除去した後に、レジスト開口部の樹脂材料を除去することで、有機バンク21が残留して形成される。なお、有機バンク21の材料として、感光性の樹脂材料を採用すれば、レジスト塗布工程は不要になる。
【0091】
次に、図6(c)に示すように、発光機能層12を形成する(第1及び第2画素電極の上方に発光機能層を形成する工程)。
当該発光機能層12を構成する正孔注入/輸送層70及び有機EL層60の形成方法としては、液体吐出法が好適に用いられる。当該液体吐出法においては、各種材料を好適な溶媒に溶解させた液体材料を微細な領域に正確に吐出して定着させることができるので、フォトリソグラフィが不要になり、材料の無駄が発生せず、製造コストの低減が可能になる。
【0092】
次に、図7(a)に示すように、陰極50を形成する(第1及び第2画素電極に対向する対向電極を形成する工程)。
当該陰極50の形成方法としては、蒸着法が利用される。当該蒸着法を利用することにより、有機EL層60や有機バンク21を含む実表示領域4の全面に陰極50が形成される。
なお、本実施形態においては、有機EL層60上に陰極50を形成しているが、有機EL層60と陰極50との間に電子注入層を形成してもよい。当該電子注入層を形成するには、マスク蒸着法が用いられる。
【0093】
次に、図7(b)に示すように、遮光層72を形成する(基板側発光領域における対向電極の各々に隣接する遮光層を形成)。
当該遮光層72の形成方法としては、マスク蒸着法が利用される。当該蒸着法を利用することにより、所定の部位にみに遮光層72を形成することが可能となる。
また、遮光層72は、基板側発光領域74に形成されるものである。また、当該遮光層72は、光反射性又は光吸収性のいずれかの性質を有している。当該遮光層72が光反射性を有している場合には、反射光を利用して基板側発光領域において出射させることができるので、発光効率の向上を図ることができる。また、当該遮光層72が光吸収性を有している場合には、ブラックマトリクスとして機能するので、コントラストの向上が実現できる。
ここで、光反射性を有する場合には、アルミ(Al)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属膜を平坦化層85の全面に形成した後に、フォトリソグラフィ技術やパターニング技術によって、所定のパターンに形成される。
また、光吸収性を有する場合には、顔料分散樹脂を含有する液体材料を平坦化層85の全面に塗布形成した後に、キュア等の工程を経て、フォトリソグラフィ技術やパターニング技術によって、所定のパターンに形成される。
【0094】
更に、図1に示すように、遮光層72を含み陰極50の上方に透明保護膜45Aを形成する。透明保護膜45Aの材料としては、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiO)等が採用される。なお、窒化シリコンを採用する場合には、透明性を有する程度に薄膜化する必要がある。
また、透明保護膜45Aの上方に接着層45Bを配置して、カバー基板46を貼り合わせる(発光機能層を封止する封止部材を形成する工程)ことによって、EL表示装置1が完成となる。
このように形成されたEL表示装置1は、サブ画素内に封止側発光領域73と基板側発光領域74とを備え、両面発光が可能な所謂ダブルエミッション型のEL表示装置となる。
【0095】
上述したように、本実施形態のEL表示装置1の製造方法においては、上記のEL表示装置を製造することができるので、同様の効果が得られる。
特に、サブ画素毎に第1画素電極23a及び第2画素電極23bを形成し、封止側発光領域73及び基板側発光領域74を形成しているので、当該領域73、74における発光機能層12が各々独立して発光させることができる。
また、マスク蒸着法を利用することにより、基板側発光領域73における陰極50に遮光層72を形成しているので、当該遮光層72を所定のマスクパターンに応じて蒸着して形成することができる。
【0096】
(電子機器)
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る電子機器について説明する。本発明の電子機器の一実施形態たる携帯電話1000は、図8に示す折り畳み状態と、図9に示す使用状態とを備えた折り畳み式の携帯電話であって、本体部1001と、表示体部1002とを有している。
【0097】
表示体部1002の内部には、上記の実施形態のEL表示装置1が配置され、表示体部1002にて表側表示面1003と、裏側表示面1004にて表示画面を視認できるように構成されている。このような携帯電話1000によると、各種操作や各種状況に応じて、特に折り畳み状態と使用状態の状態変化に応じて、表側表示面1003及び/又は裏側表示面1004において、明るい表示画面を視認することができるようになる。
【0098】
なお、本実施形態においては、折り畳み式の携帯電話を例示して説明したが、他の電子機器の表示部においても、表面発光型のEL表示装置を適用することができる。
なお、本発明のEL表示装置、及び電子機器は、先に示した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のEL表示装置の構成を模式的に示す平面図。
【図2】本発明のEL表示装置におけるサブ画素の等価回路図。
【図3】本発明のEL表示装置におけるサブ画素の拡大平面図。
【図4】本発明のEL表示装置におけるサブ画素の拡大断面図。
【図5】本発明のEL表示装置の製造方法を説明するために図。
【図6】本発明のEL表示装置の製造方法を説明するために図。
【図7】本発明のEL表示装置の製造方法を説明するために図。
【図8】本発明の電子機器を示す斜視図。
【図9】本発明の電子機器を示す斜視図。
【符号の説明】
【0100】
1 EL表示装置、 12 発光機能層、 12AR 発光機能層領域(発光層)、 20 基板、 21 有機バンク(隔壁)、 21AR バンク領域(隔壁)、 23a 第1画素電極、 23b 第2画素電極、 46 カバー基板(封止部材)、 50 陰極(対向電極)、 60 有機EL層(発光機能層)、 70 正孔注入/輸送層(発光機能層)、 71、72 遮光層、 73 封止側発光領域、74 基板側発光領域、 85 平坦化層、 122 TFT(第1スイッチング素子)、 123 TFT(第2スイッチング素子)、 1000 携帯電話(電子機器)、 CT,CB 保持容量(容量素子)、 D サブ画素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、単位画素内の複数のサブ画素毎に形成された第1及び第2画素電極と、当該第1及び第2画素電極に対向する対向電極と、前記第1及び第2画素電極と前記対向電極とによって挟持された発光機能層と、当該発光機能層を封止する封止部材と、
を具備し、
前記第1及び第2画素電極と前記対向電極は、透明導電膜からなり、
前記第1画素電極上には、前記発光機能層の出射光を前記封止部材側から取り出す封止側発光領域が形成され、
前記第2画素電極上には、前記発光機能層の出射光を前記基板側から取り出す基板側発光領域が形成され、
前記封止側発光領域における前記第1画素電極、及び前記基板側発光領域における前記対向電極の各々に隣接する遮光層が形成され、
前記封止側発光領域及び前記基板側発光領域における発光機能層が各々独立して発光することを特徴とするEL表示装置。
【請求項2】
前記第1画素電極に形成された遮光層と、前記対向電極に形成された遮光層とのうち、少なくともいずれか一方は、光反射性を有していることを特徴とする請求項1に記載のEL表示装置。
【請求項3】
前記第1画素電極に形成された遮光層と、前記対向電極に形成された遮光層とのうち、少なくともいずれか一方は、光吸収性を有していることを特徴とする請求項1に記載のEL表示装置。
【請求項4】
前記第1及び第2画素電極の各々には、第1及び第2スイッチング素子が接続されており、当該第1及び第2スイッチング素子が駆動することによって前記発光機能層が発光することを特徴とする請求項1に記載のEL表示装置。
【請求項5】
前記第1及び第2画素電極と、前記第1及び第2スイッチング素子との間には、平坦化層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項6】
前記封止側発光領域において、前記第1画素電極に形成された前記遮光層は、前記平坦化層を介して前記第1スイッチング素子と平面的に重なり合っていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子は、前記基板側発光領域を除く領域に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項8】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の各々は、容量素子に接続されており、
当該容量素子は、前記封止側発光領域に重なり合っていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項9】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の各々は、電源線に接続されており、
当該電源線は、前記封止側発光領域に重なり合っていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項10】
前記発光機能層を区画する隔壁が形成されており、
当該隔壁は、前記平坦化層を介して前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の少なくともいずれかと、平面的に重なり合っていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項11】
前記発光機能層は、前記封止側発光領域と前記基板側発光領域において共通に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項12】
前記発光機能層は、前記封止側発光領域と前記基板側発光領域の各々に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のEL表示装置。
【請求項13】
基板の上方に、
第1及び第2スイッチング素子を形成する工程と、
前記第1及び第2スイッチング素子の各々に接続する第1及び第2画素電極を形成する工程と、
当該第1及び第2画素電極の上方に発光機能層を形成する工程と、
前記第1及び第2画素電極に対向する対向電極を形成する工程と、
前記発光機能層を封止する封止部材を形成する工程と、
を含み、
前記第1及び第2画素電極と前記対向電極は、透明導電膜からなり、
前記封止側発光領域における前記第1画素電極、及び前記基板側発光領域における前記対向電極の各々に隣接する遮光層を形成し、
前記第1画素電極上に、前記発光機能層の出射光を前記封止部材側から取り出す封止側発光領域を形成し、
前記第2画素電極上に、前記発光機能層の出射光を前記基板側から取り出す基板側発光領域を形成することを特徴とするEL表示装置の製造方法。
【請求項14】
単位画素内の複数のサブ画素毎に前記第1及び第2画素電極を形成することを特徴とする請求項13に記載のEL表示装置の製造方法。
【請求項15】
マスク蒸着法を利用することにより、前記基板側発光領域における前記対向電極に前記遮光層を形成することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のEL表示装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のEL表示装置を表示部に備えることを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−128077(P2006−128077A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223630(P2005−223630)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】