説明

EL表示装置。

【課題】画素回路の構成素子数が少なくても、輝度調整を行うduty駆動ができるEL表示装置を提供する。
【解決手段】スイッチ用トランジスタ11bは、ゲート信号線17から供給された制御信号に応じて導通し、ソース信号線18から供給された信号電位をサンプリングしてコンデンサ19に保持する。駆動用トランジスタ11aのソース端子には、電源供給用回路23の出力をキャンセル電圧Vdd_Lと駆動電圧Vdd_Hを切り替えることにより駆動用トランジスタ11aをキャンセル動作させる。電源セレクタ21は出力を駆動電圧Vdd_Hとハイインピーダンス状態とを選択することで、duty駆動を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子を画素に用いたアクティブマトリクス型のEL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EL素子を用いた平面自発光型のEL表示装置の開発が近年盛んになっている。EL素子は有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用したデバイスである。
【0003】
EL素子は自ら光を発する自発光素子であるため、照明部材を必要とせず軽量化及び薄型化が容易である。また、EL素子の応答速度は数μ秒程度と非常に高速であるので、動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
PLED、OLED、OELなどの有機EL表示パネルは、アクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式は、各画素回路内部の発光素子に流れる電流を、画素回路内部に設けた能動素子(一般には薄膜トランジスタ、TFT)によって制御するものである(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2003−255856公報
【特許文献2】特開2003−271095公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL表示パネルは、低温または高温ポリシリコンからなるトランジスタアレイを用いてパネルを構成する。しかし、EL素子に電流を供給する駆動用トランジスタに特性バラツキがあると、変換される電流信号にもバラツキが発生する。通常、トランジスタは50%以上の特性バラツキがある。そのために、駆動用トランジスタの特性バラツキが表示ムラとして表示され、画像表示品位を低下させるという問題点がある。
【0006】
また、EL素子自身の特性も経時的に変動するため、画像表示品位が低下するという問題点がある。
【0007】
画像表示品位の向上のためには、前記トランジスタやEL素子の特性ばらつきを補正する必要がある。これまで係る補正機能を有した表示装置は提案されているが、画素回路の構成要素が多く複雑だったことから、ディスプレイの高精細化の妨げとなっていた。また、画像表示の輝度調整を行なうduty駆動においても、表示品位の低下なしに実現するには、画素回路の構成要素が複雑になるという問題点があった。
【0008】
すなわち、EL表示装置の輝度調整を行うduty駆動を行うために、画素回路の構成素子数が多くなり、レイアウト面積が大きくなるため、ディスプレイの高精細化には不向きであるという問題点があった、
そこで、本発明は、画素回路の構成素子数が少なくても、輝度調整を行うduty駆動ができるEL表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、EL素子を有する画素がマトリックス状に複数配置された表示画面を有するEL表示装置において、前記各画素のそれぞれは、ソース端子が前記EL素子に接続され、ドレイン端子がアノード電圧配線に接続された駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲート端子に接続され、ソース信号線から映像信号を印加するスイッチ用トランジスタと、前記駆動用トランジスタの前記ゲート端子とソース端子に接続されたコンデンサと、を有し、前記アノード電圧配線に駆動制御電圧を供給する電源供給用回路と、前記アノード電圧配線と前記電源供給用回路との間に配され、前記駆動制御電圧とハイインピーダンス状態に切り替え可能であり、前記駆動制御電圧に切り換えたときに前記表示画面に表示領域を発生させ、前記ハイインピーダンス状態に切り換えたときに前記表示画面に非表示領域を発生させて、前記EL素子に流れる電流を抑制してduty駆動を行う電源セレクタと、を有したEL表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源セレクタによってduty駆動を実現し、画素構成素子数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態のEL表示装置について図1〜図11に基づいて説明する。
【0013】
(1)EL表示装置の全体構成
まず、EL表示装置の全体構成について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係るEL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態は、EL素子15がマトリックス状に配置された表示画面22とこれを駆動する駆動回路とからなる。すなわち、図2に示すように、EL表示装置は、表示画面22、これを駆動するICからなるソースドライバ回路18、ゲートドライバ回路12、アノード電圧を供給する電源供給用回路23、アノード電圧を選択する電源セレクタ21からなる。
【0015】
表示画面22は、横方向に延びる行状のゲート信号線17、縦方向に延びる列状のソース信号線18、両者が交差する部分に格子状に配された画素16と、各画素16の各行に対応して形成されたアノード電圧配線20を備えている。すなわち、アノード電圧配線20は、横方向に配線されている。
【0016】
(2)画素16の構成
次に、画素16に構成について図1に基づいて説明する。図1は、図2に示したEL表示装置に含まれる画素16の具体的な構成及び結線関係を示す回路図である。
【0017】
図1に示すように、画素16は、EL素子15、スイッチ用トランジスタ11b、駆動用トランジスタ11a、コンデンサ19とを含む。
【0018】
スイッチ用トランジスタ11bのゲート端子dがゲート信号線17に接続され、そのドレイン端子dがソース信号線18に接続され、そのソース端子が駆動用トランジスタ11aのゲート端子gに接続されている。
【0019】
駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dがアノード電圧配線20に接続され、そのソース端子sがEL素子15のアノード端子に接続されている。
【0020】
EL素子15のカソードは、接地電極またはカソード電極Vssに接続されている。このカソード電極Vssの電圧もVssと標記する。なお、この接地電極またはカソード電極Vssは全ての画素16に対して共通に配線されている。
【0021】
コンデンサ19は、駆動用トランジスタ11aのソース端子sとゲート端子gの間に接続している。
【0022】
上記構成において、スイッチ用トランジスタ11bは、ゲート信号線17から供給された制御信号に応じて導通し、ソース信号線18から供給された信号電位をサンプリングしてコンデンサ19に保持する。
【0023】
駆動用トランジスタ11aは、アノード電圧配線20から電流の供給を受け、コンデンサ19に保持された信号電位に応じて駆動電流をEL素子15に流す。
【0024】
(3)ゲートドライバ回路12
次に、ゲートドライバ回路12について説明する。
【0025】
ゲートドライバ回路12は、各ゲート信号線17に制御信号を順次供給して画素16を行単位で線順次走査する。すなわち、オン電圧またはオフ電圧を供給する。
【0026】
ゲートドライバ回路12には、ゲート信号線17を選択するスタートパルスST1、スタートパルスを順次シフトするクロック信号CLKが印加される。また、ゲートドライバ回路12内のスタートパルスの上下シフトレジスタ方向を切り替える信号UDも印加される。
【0027】
なお、必要に応じて、ゲートドライバ回路12には、イネーブル制御端子を付加することが好ましい。ゲートドライバ回路12内には、シフトレジスタ回路が形成されており、スタートパルスをクロック信号CLKに同期して順次シフトさせ、選択するゲート信号線17の位置を変化させる。
【0028】
(4)アノード電圧の制御
次に、アノード電圧の制御について図1、図11〜図13に基づいて説明する。
【0029】
駆動用トランジスタ11aにドレイン端子dに駆動電圧Vdd_Hまたはキャンセル電圧Vdd_Lを印加する。この駆動電圧Vdd_Hとキャンセル電圧Vdd_Lの切り替えは、電源セレクタ21と電源供給用回路23の制御で実現する。
【0030】
図11に示すように、電源セレクタ21がa側に選択されているとき、電源供給用回路23の出力がVdd_Hになっていれば、アノード電圧配線20の電位はVdd_Hとなり、電源供給用回路23の出力がVdd_Lになっていれば、アノード電圧配線20の電位はVdd_Lになる。
【0031】
また、電源セレクタ21を切り替え制御することにより、図12、13で説明するduty駆動を実現できる。このduty駆動は、非表示領域を発生させて、EL素子15に流れる電流を抑制するために行う。これについては、後から詳しく説明するが、ここで簡単に説明すると、電源セレクタ21を切り替えて、表示画面22に帯状の非表示領域を発生し、この非表示領域を画面22の上下方向に、フレーム周期に同期して画像表示させる。
【0032】
(5)閾値電圧補正機能
次に、閾値電圧補正機能について説明する。
【0033】
ソース信号線18に信号電圧を供給するソースドライバ回路18は、スイッチ用トランジスタ11bが導通した後で、ソース信号線18に基準電位V0を供給している間に、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dに印加する電圧を駆動電圧Vdd_Hとキャンセル電圧Vdd_Lとの間で切換え、駆動用トランジスタ11aの閾値電圧Vthに相当する電圧をコンデンサ19に保持しておく。
【0034】
この閾値電圧補正機能により、EL表示装置は画素16にばらつく駆動用トランジスタ11aの閾値電圧の影響をキャンセルできる。
【0035】
(6)ブートストラップ機能
次に、ブートストラップ機能について説明する。図1に示した画素16はさらにブートストラップ機能も備えている。
【0036】
電源セレクタ21及び電源供給用回路23は、コンデンサ19に信号電位が保持された段階で、その出力をキャンセル電圧Vdd_Lから駆動電圧Vdd_Hに切り替えることにより、アノード電圧配線20に同様の電圧が印加する。したがって、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dの電位はVdd_LからVdd_H電圧に変化する。また、スイッチ用トランジスタ11bを非導通状態にして駆動用トランジスタ11aのゲート端子gをソース信号線18から電気的に切り離す。
【0037】
この動作により、駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsの変動にゲート電位Vgが連動しゲート端子gとソース端子s間の電圧Vgsを一定に維持できる。
【0038】
(7)画素16の動作のタイミングチャート
図3は、図1に示した画素16の動作説明に供するタイミングチャートである。時間軸を共通にして、ゲート信号線17の電位変化、アノード電圧配線20の電圧変化、ソース信号線18の電位変化、EL素子15の発光状態と模式的に示している。なお、このタイミングチャートは、画素16の動作の変化に合わせて期間B〜Hに便宜的に区切ってある。
【0039】
発光期間Bでは、EL素子15が発光状態にある。この後、線順次走査の新しいフィールドに入って、最初の期間Cで、スイッチ用トランジスタ11bがオンし、駆動用トランジスタ11aのゲート電位Vgが初期化される。
【0040】
次に、期間Dに進み、電源供給用回路23の出力が切り替えられ、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dにキャンセル電圧Vdd_Lが印加され、駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsも初期化される。このように駆動用トランジスタ11aのゲート電位Vg及びソース電位Vsを初期化することで、閾値電圧補正動作の準備が完了する。Vdd_L電圧は、EL素子15がオンせず(電流が流れない)、駆動用トランジスタ11aがオフとなる電圧である。
【0041】
次に、閾値補正期間Eに進み、実際に閾値電圧補正動作が行われ、駆動用トランジスタ11aのゲート端子gとドレイン端子dとの間に閾値電圧Vthに相当する電圧が保持される。実際には、Vthに相当する電圧が、駆動用トランジスタ11aのゲート端子gとドレイン端子dとの間に接続されたコンデンサ19に書き込まれる。
【0042】
次に、サンプリング期間Fに進み、映像信号の信号電位VinがVthに足し込まれる形でコンデンサ19に書き込まれる。
【0043】
次に、発光期間Gに進み、信号電圧Vinに応じた輝度でEL素子15が発光する。このときに信号電圧Vinは閾値電圧Vthに相当する電圧によって調整されているため、EL素子15の発光輝度は駆動用トランジスタ11aの閾値電圧Vthのばらつきの影響を受けることがない。
【0044】
なお、発光期間Gの最初でブートストラップ動作が行われ、駆動用トランジスタ11aのゲート−ソース間電圧Vgs=Vin+Vthを一定に維持したまま、駆動用トランジスタ11aのゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇する。
【0045】
(8)画素16の動作
図4〜図10を参照して、図1に示した画素16の動作を詳細に説明する。なお、図4〜図10の図番は、図3に示したタイミングチャートの各期間B〜Hにそれぞれ対応している。
【0046】
(8−1)発光期間B
図4に示すように、発光期間Bでは、アノード電圧配線20の電圧がVdd_Hになり、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dの電位が駆動電圧Vdd_Hにあり、駆動用トランジスタ11aが駆動電流IdsをEL素子15に供給している。
【0047】
図4に示めすように、駆動電流Idsはアノード電圧Vdd_Hから駆動用トランジスタ11aを介してEL素子15を通り、共通接地電極またはカソード電極Vssに流れ込んでいる。
【0048】
(8−2)期間C
次に、期間Cに入ると、図5に示すように、ゲート信号線17の電位が高電位VGH(オン電圧が印加される)に変化することでスイッチ用トランジスタ11bがオン状態となり、駆動用トランジスタ11aのゲート電位Vgはソース信号線18の基準電位V0に初期化(リセット)される。
【0049】
(8−3)期間D
次に、期間Dに進むと、図6に示すように、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dの電位が駆動電圧Vdd_Hからソース信号線18の基準電位V0より十分低いキャンセル電圧Vdd_Lに変化する。
【0050】
これにより駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsがソース信号線18の基準電位V0より十分低いキャンセル電圧Vdd_Lに初期化(リセットまたはキャンセル)される。
【0051】
具体的には、駆動用トランジスタ11aのゲート−ソース間電圧Vgs(ゲート電位Vgとソース電位Vsの差)が駆動用トランジスタ11aの閾値電圧Vthより大きくなるように、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dにキャンセル電圧Vdd_Lを設定する。
【0052】
(8−4)閾値補正期間E
次に、閾値補正期間Eに進むと、図7に示すように、駆動用トランジスタ11aのドレイン端子dの電位がキャンセル電圧Vdd_Lから駆動電圧Vdd_Hに変化し、駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsが上昇を開始する。
【0053】
やがて、駆動用トランジスタ11aのゲート端子−ソース端子間電圧Vgsが閾値電圧Vthとなったところで電流がカットオフする。このようにして駆動用トランジスタ11aの閾値電圧Vthに相当する電圧がコンデンサ19に書き込まれる。これが閾値電圧補正動作である。このとき電流が専らコンデンサ19側に流れ、EL素子15側には流れないようにするため、EL素子15がカットオフとなるように共通接地電極またはカソード電極Vssの電位を設定しておく。
【0054】
(8−5)サンプリング期間F
次に、サンプリング期間Fに進むと、図8に示すように、第1のタイミングでソース信号線18の電位が基準電位V0から信号電位Vinに変化し、駆動用トランジスタ11aのゲート電位VgはVinとなる。したがって、サンプリング期間Fの時、駆動用トランジスタ11aのゲート−ソース間電圧VgsはVin+Vthとなる。
【0055】
(8−6)発光期間G
最後に、発光期間Gになると、図9に示すように、ゲート信号線17がキャンセル電圧側に変化し、スイッチ用トランジスタ11bはオフ状態となる。これにより駆動用トランジスタ11aのゲート端子gはソース信号線18から切り離される。同時にドレイン電流IdsがEL素子15を流れ始める。これによりEL素子15のアノード電位は駆動電流Idsに応じて上昇する。
【0056】
EL素子15のアノード電位の上昇は、すなわち駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsの上昇に他ならない。駆動用トランジスタ11aのソース電位Vsが上昇すると、コンデンサ19のブートストラップ動作により、駆動用トランジスタ11aのゲート電位Vgも連動して上昇する。ゲート電位Vgの上昇量はソース電位Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中駆動用トランジスタ11aのゲート−ソース間電圧VgsはVin+Vthで一定に保持される。
【0057】
(8−7)消光期間H
図1の本実施形態において、アノード電圧配線20の電位を制御することにより、図12(b)に図示するようなduty駆動を実現できる。このduty駆動は、非表示領域を発生させて、EL素子15に流れる電流を抑制するために行なう。以下、消光期間Hのduty駆動について説明する。
【0058】
消光期間Hになると、図10に示すように、アノード電圧配線20の電位が駆動電圧Vdd_Hから、ハイインピーダンスに遷移する。これにより、アノード電圧配線20から電源の供給を受けられず、EL素子15に流れる駆動電流Idsが停止し、EL素子15が消灯する。したがって、消光期間Hでは、EL素子15は消光状態である。
【0059】
なお、ゲート−ソース間電圧Vgsはコンデンサ19により保持されている。アノード電圧配線20の電位がハイインピーダンスから、再び駆動電圧Vdd_Hに遷移すると、アノード電圧配線20より電源の供給を受け、駆動電流Idsが流れることにより、EL素子15が発光する。
【0060】
(9)アノード電圧制御
上記したように、アノード電圧配線20の電位を制御することにより、閾値補正、duty駆動を行なっている。アノード電圧配線20の電位の制御は、図11に図示するような、電源供給用回路23と電源セレクタ21を用いて、切り替えをすることにより、電位の制御を実施している。
【0061】
電源セレクタ21がa側になっているとき、電源供給用回路23の出力がVdd_Hになっていれば、アノード電圧配線20の電位はVdd_Hになり、電源供給用回路12bの出力がVdd_Lになっていれば、アノード電圧配線20の電位はVdd_Lになる。また、電源セレクタ21がb側になっているとき、電源供給用回路23の出力にかかわらず、アノード電圧配線20はハイインピーダンスになる。
【0062】
(10)duty駆動
図12において、映像信号を書き込んでいる画素行をプログラム画素行111と表示する。
【0063】
また、非表示領域113は、電源セレクタ21をb側にし、アノード電源配線20をハイインピーダンスにすることにより、非表示とした画素行または画素行の群を示している。なお、非表示とは、EL素子15に電流が流れていない、または流れても小さい状態をいう。
【0064】
表示領域112は、電源セレクタ21をa側にし、アノード電源配線20の電位をVdd_Hに遷移させ、EL素子15に電流が供給されている画素行または画素行の群を示している。
【0065】
非表示領域113及び表示領域112はフレーム周期または水平同期信号に同期して、表示画面22の上下方向に走査される。
【0066】
(10−1)課題
図13(a)の表示状態では、1つの表示領域112が画面の上から下方向に移動する。フレームレートが低いと、表示領域112が移動するのが視覚的に認識される。特に、まぶたを閉じた時、または顔を上下に移動させた時などに認識されやすくなる。
【0067】
(10−2)第1の解決手段
この課題を解決するために、図13(b)(c)に示すように、表示領域112を複数に分割する。
【0068】
なお、分割された表示領域112は等しく(等分に)する必要はない。例えば、表示領域を4つの領域に分割し、分割された表示領域112aが面積1で、分割された表示領域112bが面積2で、分割された表示領域112cが面積1で、分割された表示領域112dが面積4でもよい。
【0069】
なお、第1〜第4の解決手段では理解を容易にするために表示領域112の面積を分割するとして説明している。しかし、面積を分割するとは、期間(時間)を分割することである。したがって、図1では電源供給用回路23の出力Vdd_H期間を分割することになるから、面積を分割することは、期間(時間)を分割することと同義または類似である。
【0070】
(10−3)第2の解決手段
数フレーム、または、数フィールド(以下、まとめて「フレーム」という。)での表示領域112の面積が平均して目標の大きさになるように制御してもよい。例えば、表示画面22に占める表示領域112の面積を1/10にするとした時、1フレーム目は表示領域112の面積を1/10とし、2フレーム目は表示領域112の面積を1/20とし、3フレーム目は表示領域112の面積を1/20とし、4フレーム目は表示領域112の面積を1/5とし、以上の4フレームで所定の表示面積(表示輝度)の1/10を得る駆動方法が例示される。
【0071】
なお、本実施形態での1フレームまたは1フィールドとは、画素16の画像書き換え周期または表示画面22が上から下まで(下から上まで)走査される周期と同義である。
【0072】
(10−4)第3の解決手段
また、R、G、Bのそれぞれが、数フレームでLの期間の平均が等しくなるように駆動してもよい。
【0073】
しかし、前記数フレームは4フレーム以下にすることが好ましい。表示画像によってはフリッカが発生する場合があるからである。
【0074】
(10−5)第4の解決手段
また、R、G、Bで、数フレームでLの期間の平均を異ならせ、適度なホワイトバランスがとれるように駆動してもよい。
【0075】
この駆動方法は、RGBの発光効率が異なるときに特に有効である。
【0076】
また、RGBで分割数K(Kは表示領域112を複数に分割する数)を異ならせても良い。特にGでは視覚的にめだつため、Gでは分割数をRBに対して多くすることが有効である。
【0077】
(10−6)効果
以上のように、表示領域112を複数に分割することにより画面のちらつきは減少する。したがって、フリッカの発生はなく、良好な画像表示を実現できる。なお、分割はもっと細かくしてもよいが、分割するほど動画表示性能は低下する。
【0078】
また、画像表示のフレームレートを低減することができ、低消費電力化を実現できる。例えば、非点灯領域113を一括にした場合は、フレームレート45Hz以下になるとフリッカが発生する。しかし、非点灯領域113を6分割以上とした場合は、20Hz以下までフリッカが発生しない。
【0079】
(10−7)表示領域112が連続している場合
図13(a1)〜(a3)は図12のように表示領域112が連続している場合の明るさ調整方式である。
【0080】
図13(a1)の表示画面22の表示輝度が最も明るく、図13(a2)の表示画面22の表示輝度が次に明るく、図13(a3)の表示画面22の表示輝度が最も暗い。図13(a1)から図13(a3)への変化(またはその逆)は、先にも記載したように電源セレクタ21の制御により、容易に実現できる。
【0081】
このときに、ソースドライバ回路14が出力するプログラム電流またはプログラム電圧の大きさを変化させる必要がない。すなわち、映像信号を変化させずに表示画面22の輝度変化を実施できる。
【0082】
また、図13(a1)から図13(a3)への変化のときに、画面のガンマ特性は全く変化しない。したがって、表示画面22の輝度によらず、表示画像のコントラスト、階調特性が維持される。これは本実施形態の効果のある特徴である。
【0083】
従来の画面の輝度調整では、表示画面22の輝度が低いときは、階調性能が低下する。すなわち、高輝度表示の時は64階調表示を実現できても、低輝度表示の時は、半分以下の階調数しか表示できない。これに比較して、本実施形態の駆動方法では、画面の表示輝度に依存せず、最高の64階調表示を実現できる。
【0084】
(10−8)表示領域112が分散している場合
図13(b1)〜(b3)は、図12で説明したように表示領域112が分散している場合の明るさ調整方式である。
【0085】
図13(b1)の表示画面22の表示輝度が最も明るく、図13(b2)の表示画面22の表示輝度が次に明るく、図13(b3)の表示画面22の表示輝度が最も暗い。図13(b1)から図13(b3)への変化(またはその逆)は、先にも記載したようにゲートドライバ回路12のシフトレジスタ回路61などの制御により、容易に実現できる。図13(b)のように表示領域112を分散させれば、低フレームレートでもフリッカが発生しない。
【0086】
(10−9)低フレームレート
さらに、低フレームレートでも、フリッカが発生しないようにするには、図13(c)のように表示領域112を細かく分散させればよい。しかし、動画の表示性能は低下する。したがって、動画を表示するには、図13(a)の駆動方法が適している。静止画を表示し、低消費電力化を要望する時は、図13(c)の駆動方法が適している。図13(a)から図13(c)の駆動方法の切り替えも、シフトレジスタの制御により容易に実現できる。
【0087】
(10−10)変更例
図13は非表示領域113が等間隔で構成されているが、これに限定するものではない。表示画面22の1/2の面積が連続して表示領域112とし、残りの面積が図12(c1)のように等間隔に表示領域112と非表示領域113が繰り返すように駆動してもよい。
【0088】
(11)応用例
本実施形態の駆動方式を実施するEL表示装置を表示ディスプレイとして用いた本実施形態の表示装置について説明する。
【0089】
(11−1)第1の応用例
図15は、EL表示装置の一例である情報端末装置の携帯電話の平面図である。
【0090】
筐体143にアンテナ141などが取り付けられている。142aは、表示画面22の明るさを変化させる切換キー、142bは電源オン/オフキー、142cがゲートドライバ回路12bの動作フレームレートを切り替えるキーである。145はホトセンサである。ホトセンサ145は、外光の強弱にしたがって、duty比などを変化させて、表示画面22の輝度を自動調整する。
【0091】
(11−2)第2の応用例
図16はビデオカメラの斜視図である。
【0092】
ビデオカメラは撮影(撮像)レンズ部153とビデオカメラ本体143と具備している。本実施形態のEL表示パネルは表示モニター144としても使用されている。表示画面22は支点151で角度を自由に調整できる。表示画面22を使用しない時は、格納部153に格納される。
【0093】
(11−3)第3の応用例
本実施形態のEL表示パネルまたはEL表示装置などはビデオカメラだけでなく、図17に示すような電子カメラにも適用できる。
【0094】
すなわち、本実施形態のEL表示装置はカメラ本体161に付属されたモニター22として用いる。カメラ本体161にはシャッタ163の他、スイッチ142a、142cが取り付けられている。
【0095】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のEL表示装置について図18に基づいて説明する。図18は、本実施形態に係るEL表示装置を示す模式的な回路図である。
【0096】
第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態がNチャネル型のトランジスタを用いて画素回路を構成しているのに対し、本実施形態はPチャネル型のトランジスタを用いて画素回路を構成していることである。図18の画素回路も、図1に示した画素回路と同様に閾値電圧補正動作、移動度補正動作及びブートストラップ動作を行うことができる。
【0097】
(変更例)
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0098】
上記各実施形態では、画素行は1画素行ずつ選択し、映像信号の書込み、キャンセルを実施するとしたが、これに限定するものではない。
【0099】
例えば、複数画素行を同時に選択し、映像信号の書込み、キャンセルをしてもよい。図14はその実施形態である。図14では、隣接した画素行を異なるソース信号線18(18a、18b)に接続し、2画素行を同時に選択できるように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態のEL表示装置の画素構成の説明図である。
【図2】EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】動作説明に関するタイミングチャートである。
【図4】発光期間Bの動作を説明する回路図である。
【図5】期間Cの動作を説明する回路図である。
【図6】期間Dの動作を説明する回路図である。
【図7】閾値補正期間Eの動作を説明する回路図である。
【図8】サンプリング期間Fの動作を説明する回路図である。
【図9】発光期間Gの動作を説明する回路図である。
【図10】消光期間Hの動作を説明する回路図である。
【図11】電源セレクタと電源供給用回路のブロック図である。
【図12】プログラム画素行を示す駆動方法の説明図である。
【図13】duty駆動法の説明図である。
【図14】第1の応用例の説明図である。
【図15】第2の応用例の説明図である。
【図16】第3の応用例の説明図である。
【図17】第3の応用例の説明図である。
【図18】第2の実施形態のEL表示装置の画素構成の説明図である。
【符号の説明】
【0101】
11 トランジスタ
12 ゲートドライバ回路
14 ソースドライバ回路
15 EL素子
16 画素
17 ゲート信号線
18 ソース信号線
19 コンデンサ
20 アノード電圧配線
21 電源セレクタ
22 表示画面
23 電源供給用回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EL素子を有する画素がマトリックス状に複数配置された表示画面を有するEL表示装置において、
前記各画素のそれぞれは、
ソース端子が前記EL素子に接続され、ドレイン端子がアノード電圧配線に接続された駆動用トランジスタと、
前記駆動用トランジスタのゲート端子に接続され、ソース信号線から映像信号を印加するスイッチ用トランジスタと、
前記駆動用トランジスタの前記ゲート端子とソース端子に接続されたコンデンサと、
を有し、
前記アノード電圧配線に駆動制御電圧を供給する電源供給用回路と、
前記アノード電圧配線と前記電源供給用回路との間に配され、前記駆動制御電圧とハイインピーダンス状態に切り替え可能であり、前記駆動制御電圧に切り換えたときに前記表示画面に表示領域を発生させ、前記ハイインピーダンス状態に切り換えたときに前記表示画面に非表示領域を発生させて、前記EL素子に流れる電流を抑制してduty駆動を行う電源セレクタと、
を有したEL表示装置。
【請求項2】
前記駆動制御電圧は、前記EL素子を発光させる駆動電圧と前記キャンセル電圧とからなり、
前記電源供給用回路が前記駆動制御電圧を前記キャンセル電圧から前記駆動電圧に切り換えたときに前記表示画面に前記表示領域を発生させる、
請求項1記載のEL表示装置。
【請求項3】
前記ソース信号線に前記映像信号を供給するソースドライバ回路が、
前記スイッチ用トランジスタが導通した後で、前記ソース信号線に基準電位を供給している間に、前記駆動用トランジスタの前記ドレイン端子に印加する電圧をキャンセル電圧と駆動電圧との間で切換え、前記駆動用トランジスタの閾値電圧に相当する電圧をコンデンサに保持する、
請求項1記載のEL表示装置。
【請求項4】
前記コンデンサに信号電位が保持されたときに、前記電源供給用回路は出力を前記キャンセル電圧と前記駆動電圧に変化させることにより、
前記駆動用トランジスタの前記ドレイン端子の電位を前記キャンセル電圧と前記駆動電圧に変化させ、
前記スイッチ用トランジスタにゲート信号を送るゲートドライバ回路は、前記スイッチ用トランジスタを非導通状態にして、前記駆動用トランジスタの前記ゲート端子を前記ソース信号線から電気的に切り離す、
請求項1記載のEL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−2801(P2010−2801A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162793(P2008−162793)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】