説明

ETBEの製造方法

【課題】簡単な方法で高純度のETBEを収率良く得ることができ、装置の大型化や実用化が可能なETBEの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、イソブテンを含む炭化水素とエタノールとを反応触媒存在下、蒸留塔にて反応蒸留し、ETBEを得る反応蒸留工程S3と、反応蒸留工程S3における残渣を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得るETBE蒸留工程S4と、を備えるETBEの製造方法に存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ETBEの製造方法に関し、更に詳しくは、簡単な方法で高純度のETBEを収率良く得ることができ、装置の大型化や実用化が可能なETBEの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルターシャリーブチルエーテル(以下「ETBE」という。)は、オクタン価が高く(オクタン価:118)、水に溶けにくいため品質が安定している。このため、ETBEは、地球温暖化対策の燃料として期待されている。
近年、ETBEは、ガソリンの代替え燃料、特にハイオク燃料、又は、これらの燃料用添加剤として、欧米(特に欧州)では既に実用化されており、国内でも導入が検討されている。なお、フランスやスペインでは、ETBEをガソリンに約15%添加して使用している。
また、ETBEは、発ガン性の疑いから2004年以降国内で製造停止中の燃料用添加剤メチルターシャリーブチルエーテルの代替え品としても注目されている。
【0003】
かかるETBEは、一般にエタノールとイソブテンとを触媒存在下で反応させることにより製造される。
例えば、ETBEを抽出する方法としては、水を用いて、エタノール−ETBE混合物からETBEを分離するエチル第三ブチルエーテルの分離方法(例えば、特許文献1又は2参照)が知られており、ETBEの合成方法としては、2段階の抽出蒸留を行う第三級エーテルの製造方法(例えば、特許文献3〜5参照)、薄膜法と蒸留を組み合わせたエチル第三ブチルエーテルの精製方法(例えば、特許文献6参照)、水洗浄塔を備えることによりエタノールの無水化を不要とした合成方法(例えば、特許文献7参照)、マイクロ波を利用するアルキルエーテルの製造方法(例えば、特許文献8参照)等が知られている。
【0004】
また、参考までに、エタノールとターシャリーブチルアルコールとからETBEを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献9又は10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−65241号公報
【特許文献2】特開平5−201906号公報
【特許文献3】特開平7−149681号公報
【特許文献4】特開平7−304703号公報
【特許文献5】特開2007−182441号公報
【特許文献6】特開平7−278035号公報
【特許文献7】特開2006−151869号公報
【特許文献8】特開2008−133250号公報
【特許文献9】特開平7−149682号公報
【特許文献10】特開2007−126450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のエチル第三ブチルエーテルの分離方法は、水を加えることよる工程追加により、システムが複雑となり、コストも大きくなる。また、装置に水による錆等が発生し、装置の寿命が短くなる傾向にある。
特許文献3〜5に記載の第三級エーテルの製造方法は、2段階の抽出蒸留を行うものの、ETBEの収率が不十分である。また、特許文献4記載のエーテルの精製方法では、蒸留塔の必要段数が多くなり、装置コストが膨大なものとなり実用化が困難である。さらに、特許文献5記載のETBEの製造方法では、推算法である原子団寄与法によるUNIFAC法および圧力依存性のないvan der Waals型状態方程式であるPeng−Robinson(Peng−Robinson equation of state)式を使用してシステム構築の計算を行っているため、計算結果が不確実なものとなる場合があり、装置の実用化が困難である。
特許文献6記載のエチル第三ブチルエーテルの精製方法は、薄膜法を用いるので、スケールアップが困難であるという欠点がある。
特許文献7記載のETBEの合成方法においては、C4成分を常温で加圧液化させるので、触媒充填層とクッション層を備えた管型反応容器の大型化が必要であり、コストも増大するため、装置の実用化が困難である。
特許文献8記載のアルキルエーテルの製造方法は、装置の大型化が困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な方法で高純度のETBEを収率良く得ることができ、装置の大型化や実用化が可能なETBEの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、反応蒸留工程後の残渣を、所定の高圧条件下で反応蒸留することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)イソブテンを含む炭化水素とエタノールとを反応触媒存在下、蒸留塔にて反応蒸留し、ETBEを得る反応蒸留工程と、反応蒸留工程における残渣を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得るETBE蒸留工程と、を備えるETBEの製造方法に存する。
【0010】
本発明は、(2)ETBE蒸留工程における高圧条件が0.23MPaより大きい上記(1)記載のETBEの製造方法に存する。
【0011】
本発明は、(3)炭化水素が、プロパン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン及びペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む上記(1)記載のETBEの製造方法に存する。
【0012】
本発明は、(4)反応蒸留工程の前に、エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を更に備える上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0013】
本発明は、(5)反応触媒が陽イオン交換樹脂である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0014】
本発明は、(6)エタノールが、リグノセルロースを加水分解し発酵させて得られたものである上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0015】
本発明は、(7)反応蒸留工程において、100℃以下の温度条件下、純度95重量%以上のETBEを缶出させる上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0016】
本発明は、(8)反応蒸留工程の前に、炭化水素とエタノールとを反応させる主反応工程を更に備える上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0017】
本発明は、(9)主反応工程が加圧気液混相反応方式で施され、反応蒸留工程が反応蒸留方式で施される上記(8)記載のETBEの製造方法に存する。
【0018】
本発明は、(10)加圧気液混相反応方式において、反応温度を100℃以下とし、反応時の気圧をエタノールが液相を保持できる圧力以上とし、イソブテンが気相を循環するようになっている上記(9)記載のETBEの製造方法に存する。
【0019】
本発明は、(11)未反応のエタノールを回収するエタノール回収工程を更に備える上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0020】
本発明は、(12)エタノール回収工程において、常圧条件下、蒸留塔上部より純度が96重量%以下のエタノールを留出させた後、該エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を施し、得られるエタノールを再使用する上記(11)記載のETBEの製造方法に存する。
【0021】
本発明は、(13)未反応のイソブテンを回収するイソブテン回収工程を更に備える上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載のETBEの製造方法に存する。
【0022】
本発明は、(14)イソブテン回収工程において、加圧した圧力条件下、イソブテンを回収する上記(13)記載のETBEの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のETBEの製造方法においては、高圧条件下で施されるETBE蒸留工程を備えることにより、簡単な方法で高純度のETBEを収率良く得ることができる。
また、反応蒸留工程及びETBE蒸留工程は、いずれも特別な装置が不要であるので、装置の大型化や実用化が可能となる。なお、ETBE蒸留工程における圧力の条件は0.23MPaより大きいことが好ましい。
【0024】
本発明のETBEの製造方法においては、炭化水素が、プロパン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン及びペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む混合ガスである場合、ETBEを選択的且つ効率的に製造することができる。
【0025】
本発明のETBEの製造方法においては、反応蒸留工程(又は主反応工程)の前に、エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を更に備えると、ETBEの収率がより向上する。
【0026】
本発明のETBEの製造方法においては、反応触媒が陽イオン交換樹脂であると、イソブテンとエタノールとの反応が速やかに進行する。
【0027】
本発明のETBEの製造方法においては、エタノールが、リグノセルロースを加水分解し発酵させて得られたものであると、低コスト且つ低環境負荷型のプロセスでETBEを製造することができる。
【0028】
本発明のETBEの製造方法においては、反応蒸留工程において、0.7MPa以下の圧力条件下、純度95重量%以上のETBEを缶出させるようにすると、効率良くETBEが得られる。
【0029】
本発明のETBEの製造方法においては、反応蒸留工程の前に、炭化水素とエタノールとを反応させる主反応工程を備え、主反応工程が加圧気液混相反応方式で施され、反応蒸留工程が反応蒸留方式で施される場合、得られるETBEの収率がより向上する。なお、加圧気液混相反応方式においては、反応温度を100℃以下とし、反応時の気圧をエタノールが液相を保持できる圧力以上とし、イソブテンが気相を循環するようにすることが好ましい。
【0030】
本発明のETBEの製造方法においては、エタノール回収工程及び/又はイソブテン回収工程、を更に備える場合、エタノール及び/又はイソブテンを効率よく回収することができる。回収したエタノール及び/又はイソブテンは、再び上述した工程に供することができる。なお、エタノール回収工程において、常圧条件下、蒸留塔上部より純度が96重量%以下のエタノールを留出させることが好ましい。また、イソブテン回収工程において、0.5〜1.5MPaの圧力条件下、イソブテンを回収することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本実施形態に係るETBEの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、エタノールとイソブテンとからETBEを合成する反応の反応温度と、理想気体の平衡反応率との関係を示すグラフである。
【図3(a)】図3(a)は、エタノールとETBEとの蒸気圧線を示すグラフである。
【図3(b)】図3(b)は、エタノールとETBEとの蒸気圧線を示すグラフである。
【図3(c)】図3(c)は、エタノールとETBEとの蒸気圧線を示すグラフである。
【図3(d)】図3(d)は、エタノールとETBEとの蒸気圧線を示すグラフである。
【図4】図4は、エタノールと水の常圧における気液平衡線を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例におけるETBEの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
本発明に係るETBEの製造方法において、イソブテンが含まれる炭化水素が、原油から流動接触分解装置により供給されるものであるとすると、炭化水素の成分はイソブテン、プロパン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン及びペンタンとなる。
この場合、ETBEの製造に関わる反応は以下の(1)〜(6)式で表される。
【0034】
・主反応
(CH)C=CH(V) + CHCHOH(L) → (CH)COCHCH(L) + 56.8kJ/mol (1)
・副反応1(エタノールに対し0.25モル%)
2CHCHOH(L) → HO(L) + (CH)O(V) − 16.3kJ/mol (2)
・副反応2(イソブテンに対し0.25モル%)
(CH)C=CH(V) + HO(L) → (CH)OH(L) + 56.3kJ/mol (3)
・副反応3(副反応4も含めエタノールに対し0.09モル%)
CHCHCH=CH(V) + CHCHOH(L) → CHCH(CH)CHOCHCH(L) + 109.1kJ/mol (4)
・副反応4
CHCH=CHCH(V) + CHCHOH(L) → CHCH(CH)CHOCHCH(L) + 101.8kJ/mol (5)
・副反応5(イソブテンに対し0.42モル%)
2(CH)C=CH(V) → (CH)CCHC(CH)=CH(L) + 111.4kJ/mol (6)
なお、(1)〜(6)式においてVは気相およびLは液相を示し、反応熱は25℃基準で、反応熱のプラス(+)は発熱反応、マイナス(−)は吸熱反応を意味する。
【0035】
また、上述した各成分の標準沸点および反応熱の基礎となる標準生成熱を表1に示す。
〔表1〕

【0036】
図2は、エタノールとイソブテンとからETBEを合成する反応の反応温度と、理想気体の平衡反応率との関係を示すグラフであり、図3の(a)〜(d)は、エタノールとETBEとの蒸気圧線を示すグラフである。
図2に示すように、主反応(式(1))を促進させるためには、低温且つ高圧で反応させるのが有利であるが、各反応には反応平衡の制約がある。
イソブテン、エタノール及びETBEの標準沸点は、表1に示すように、それぞれ−6.9、78.3、72.8℃であり、エタノールとETBEの蒸気圧は、図3の(a)〜(d)に示すように、0.23MPa、102℃で交差し、且つ0.1MPa(66.3℃、ETBEモル分率0.65)、0.5MPa(121.9℃、ETBEモル分率0.5)、1.0MPa(151.5℃、ETBEモル分率0.35)で共沸が存在する。
【0037】
これらのことから、エタノールとETBEの蒸気圧が交差する0.23MPa未満でエタノールとETBEを蒸留分離する場合、塔頂部よりETBEが留出、塔底部より共沸物が缶出することになる。
一方、0.23MPaより大きく、エタノールとETBEの共沸が存在する圧力約1.3MPa以下の範囲で蒸留分離する場合、塔頂部よりエタノールが留出、塔底部より共沸物が缶出することになる。
なお、共沸がない約1.3MPa以上で蒸留分離する場合、塔頂部よりエタノールが留出、塔底部よりETBEが缶出することになる。
【0038】
これらのことから、本発明に係るETBEの製造方法の実施形態の一例を示す。
【0039】
図1は、本実施形態に係るETBEの製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係るETBEの製造方法は、エタノールに混在している水を取り除く脱水工程S1と、イソブテンを含む炭化水素とエタノールとを反応触媒存在下、反応させる主反応工程S2と、混合物を更に蒸留塔にて反応蒸留し、ETBEを得る反応蒸留工程S3と、反応蒸留工程S3における残渣を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得るETBE蒸留工程S4と、ETBE蒸留工程S4における残渣から未反応のイソブテンを回収するイソブテン回収工程S5と、イソブテン回収工程S5後の残渣から未反応のエタノールを回収するエタノール回収工程S6と、を備える。
【0040】
本実施形態に係るETBEの製造方法によれば、高圧条件下で施されるETBE蒸留工程S4を備えることにより、簡単な方法で高純度のETBEを収率良く得ることができる。
また、反応蒸留工程S3及びETBE蒸留工程S4は、いずれも特別な装置が不要であるので、装置の大型化や実用化が可能となる。
【0041】
以下、各工程について更に詳細に説明する。
(脱水工程)
脱水工程S1は、エタノールに混在している水を取り除く工程である。脱水工程S1を備えることにより、副反応が抑制され、ETBEの収率が向上する。なお、エタノールは、水と混ざりやすく、且つ水と共沸するものであるため、一般に水が混在されている。当然ながら、高純度のエタノールを用いる場合は、かかる工程は不要である。
【0042】
ここで、用いられるエタノールは、特に限定されないが、リグノセルロースを加水分解して糖とし、糖を発酵させて得られたものであることが好ましい。この場合、低環境負荷型のプロセスでETBEを製造することができる。
例えば、リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含むリグノセルロース(木質系バイオマス)を、粉砕、軟化等させた後、酵素に接触させて糖化させ、得られた糖を発酵させることにより、エタノールが得られる。
この場合、エタノール濃度が90重量%以上のエタノール水溶液を用いることが好ましい。
【0043】
脱水工程S1においては、水吸着剤を用いて脱水が施される。
ここで、水吸着剤としては、モレキュラーシーブ(合成又は天然産ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ等)、シリカゲル、活性アルミナ、イオン交換樹脂、硫酸塩無水物、炭酸塩無水物、活性炭、又は澱粉質等が挙げられる。なお、これらは、一種類を単独で用いても、複数種類を混合して用いてもよい。
これらの中でも、水吸着剤は、モレキュラーシーブを用いるのが好ましい。具体的には、天然産ゼオライト、合成ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ等の市販の粒状モレキュラーシーブが好適に用いられる。
【0044】
粒状モレキュラーシーブの形状は、球状、円柱状、ペレット状、破砕状、顆粒状等、解く限定されない。
粒状モレキュラーシーブの粒径は、3〜30メッシュの範囲の大きさのものであることが好ましく、特に、平均細孔直径が0.2〜0.5nmであるものがより好ましい。
【0045】
具体的には、粒状のゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5A又はNSC−4カーボンモレキュラーシーブ等が好ましく用いられ、市販の粒状モレキュラーシーブとしてはモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)、ゼオライト4A(東ソー株式会社製)等が好ましく用いられる。
【0046】
脱水工程S1において、脱水温度は20〜200℃とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。
また、脱水後、原料エタノール中の水分濃度を3000ppm以下とすることが好ましい。
【0047】
(主反応工程)
主反応工程S2は、イソブテンを含む炭化水素とエタノールとを反応触媒存在下、反応させる工程である。かかる工程を施すことにより、イソブテンとエタノールとの反応を平衡状態とすることができ、後述する反応蒸留工程S3において、平衡状態を偏らせることにより、効率よくETBEを得ることができる。
【0048】
主反応工程S2においては、上述したように、炭化水素が、エチレンプラントや、原油から流動接触改質装置又は流動接触分解装置から供給されるものである場合、炭酸水素ガスには、イソブテン、プロパン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン及びペンタンが含まれる。この場合であっても、本実施形態に係るETBEの製造方法においては、ETBEを選択的且つ効率的に製造することができる。なお、炭化水素中のイソブテン濃度は、5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。
【0049】
原料のエタノールに対するイソブテンのモル比は0.1〜10モルであることが好ましく、0.5〜2モルであることがより好ましい。
モル比が0.1未満であると、モル比が上記範囲内にある場合と比較して、エタノールが原料コストに占める割合が高くなるので、比例費増大となる欠点があり、モル比が10を超えると、モル比が上記範囲内にある場合と比較して、副反応が多くなる欠点がある。
【0050】
主反応工程S2において、反応触媒は陽イオン交換樹脂であることが好ましい。この場合、イソブテンとエタノールとの反応が速やかに進行する。
かかる陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂が好適に用いられる。このような強酸性陽イオン交換樹脂としては、イオン交換基としてスルホン酸基(−SOH)等の強酸基が導入された多孔質タイプ(MR形)のスチレン系樹脂が好ましい。
市販のものとしては、例えば、「アンバーリスト」(オルガノ)、「ダイヤイオン」(三菱化学)、「Amberlyst」、「Amberlite」(米国:ローム・アンド・ハース社)、「Dowex」(米国:ダウ・ケミカル社)、「Duolite」(米国:Diamond Shamrock社)等が挙げられる。
【0051】
また、強酸性陽イオン交換樹脂の粒径は、0.5〜1.0mmであることが好ましい。
【0052】
反応触媒の使用量は、エタノール1モルに対して、1〜90gであることが好ましく、1〜90gであることがより好ましく、4〜9gであることが更に好ましい。
使用量が1g未満であると、使用量が上記範囲内にある場合と比較して、反応が完結しなくなるおそれがあり、使用量が90gを超えても、触媒効果は頭打ちとなり、コスト高となる。
【0053】
主反応工程S2において、反応触媒の使用方法は、特に限定されず、固定床、流動床、懸濁床の状態で反応に用いることができる。
また、イソブテンとエタノールとを反応させる形式は、特に制限はないが、エタノールが液相を保持出来る加圧気液混相反応方式で施すことが好ましい。この場合、得られるETBEの収率がより向上する。
【0054】
加圧気液混相反応方式においては、イソブテンが気相を循環するようにすることが好ましい。
このとき、気相部分(主に炭化水素)の循環流量と新たな供給量との重量比率は0.5〜10の範囲とすることが好ましく、循環ガス送風機の消費電力コストの観点から、2〜3の範囲とすることがより好ましい。
【0055】
加圧気液混相反応方式においては、反応時の気圧をエタノールが液相を保持できる圧力以上とすることが好ましい。
このとき、液相部分(主にエタノールとETBE)は部分的に循環させることが好ましく、場合によっては循環流を冷却することが好ましい。このとき、循環流量と新たな供給量との重量比率は0.5〜20の範囲とすることが好ましく、実用的には2〜3の範囲とすることがより好ましい。
【0056】
加圧気液混相反応方式において、反応温度は、圧力、液空間速度、触媒量、更には目標の反応率等によって広い範囲で選び得るが、後述する反応触媒の失活を抑制する観点から、100℃以下であることが好ましく、10〜100℃であることがより好ましく、実用性の観点から40〜90℃であることが更に好ましい。
反応温度が低すぎる場合、実用的な反応速度が得られず、反応温度が高すぎる場合には副反応の併発や反応触媒の失活を招きやすい。
【0057】
加圧気液混相反応方式において、反応圧力は0.3MPa以上であることが好ましく、実用性の観点から0.4〜1.0MPaであることがより好ましい。この場合、エタノールの液体状態を保持できる。
【0058】
加圧気液混相反応方式において、液空間速度は0.1〜10(m−エタノール/hr/m−触媒)であることが好ましく、実用性の観点から3〜7(m−エタノール/hr/m−触媒)であることがより好ましい。
【0059】
加圧気液混相反応方式において、蒸留は、流通式、回分式、半回分式いずれの形式も用いることができる。
【0060】
主反応工程S2を経たイソブテンを含む炭化水素、エタノール、及びETBEは、混合物のまま反応蒸留工程S3に供せられる。
【0061】
(反応蒸留工程)
反応蒸留工程S3は、上記混合物を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得る工程である。なお、反応蒸留工程S3においては、上述した主反応工程S2と同様に、イソブテンと、エタノールとを反応触媒存在下、反応させる。
【0062】
まず、反応蒸留工程S3においては、主反応工程S2を経た残渣に含まれるイソブテンとエタノールとを反応させる。
かかる反応は、比較的反応温度の低い低温の反応熱を有効利用できる反応蒸留方式で施される。
【0063】
反応蒸留工程S3において、蒸留塔の反応蒸留部(中間部分)の温度は、反応触媒の失活を抑制する観点から、100℃以下であることが好ましい。蒸留塔の塔頂部の温度は30〜80℃であることが好ましく、実用性の観点から40〜60℃であることがより好ましい。蒸留塔の塔底部の温度は90〜150℃であることが好ましく、実用性の観点から100〜130℃であることがより好ましい。
【0064】
また、塔頂部圧力は、0.7MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。
【0065】
反応蒸留工程S3において、蒸留塔の還流比は0.1〜4で運転されることが好ましく、0.2〜0.8で運転されることがより好ましい。
また、蒸留塔の蒸留分離段は、反応触媒の上方への必要理論段数が5〜20理論段であり、実用性の観点から7〜10理論段であることが好ましい。反応触媒の下方への必要理論段数が2〜30理論段であり、実用性の観点から3〜10理論段であることが好ましい。
蒸留塔への供給は、充填物の下方への必要理論段数が2〜13理論段であり、実用性の観点から3〜10理論段であることが好ましい。
【0066】
ここで、上記充填物としては、1理論段が0.2〜1.0mの範囲であるスルザーパッキン(スルザー社製品)、ロンボパッキン(クーニ社製品)、モンツパッキン(モンツ社製品)等の規則充填物、又は、1理論段が0.8〜2.0mの範囲であるポールリング(ノートン社製品)、ラシヒリング、カスケードミニリング(ドットウェル社製品、登録商標)等の不規則充填物、が挙げられる。
【0067】
上記規則充填物への反応触媒(陽イオン交換樹脂)の組み込みは、エタノールへの触媒活性を考慮すると、密な充填が好ましいが、気体の通気性の観点からは、粗な充填が好ましい。
また、規則充填物に陽イオン交換樹脂を組み込む方法は、特に限定されず、直接組み込んでもよく、反応に不活性なファイバーグラス布又はテフロン(登録商標)布等に包み込み充填してもよい。
この触媒区域は、充填物高さ1mあたり1〜3の理論段相当の蒸留作用が想定される。
【0068】
蒸留塔に組み込まれる陽イオン交換樹脂の量は、蒸留塔へのエタノール供給量に対して、50〜95モル%の反応率が達成されるような量、好ましくは、70〜85モル%の反応率が達成されるような量である。
【0069】
反応蒸留工程S3においては、0.7MPa以下の圧力条件下、純度95重量%以上のETBEを缶出させるようにすることが好ましい。この場合、効率良くETBEが得られる。
【0070】
(ETBE蒸留工程)
ETBE蒸留工程S4は、反応蒸留工程S3における残渣を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得る工程である。
【0071】
ETBE蒸留工程S4において、蒸留塔の塔頂部の圧力は、0.23MPaより大きいことが好ましく、0.3〜1.5MPaであることがより好ましい。
【0072】
蒸留塔の温度は、塔頂部が50〜90℃であり、塔底部の温度が130〜180℃であることが好ましい。
【0073】
蒸留塔の所要理論段数は、10〜30理論段であることが好ましく、実用性の観点から15〜25理論段であることがより好ましい。
還流比は、0.1〜5の範囲で運転されることが好ましく、実用性の観点から2.0〜3.0の範囲で運転されることがより好ましい。
【0074】
ETBE蒸留工程S4において、0.23MPaより大きい圧力条件下、純度95重量%以上のETBEを缶出させるようにすると、効率良くETBEが得られ、未反応のイソブテン及びエタノールの回収損失を減らすことができる。
【0075】
(イソブテン回収工程)
イソブテン回収工程S5は、ETBE蒸留工程S4における残渣から未反応のイソブテンを回収する工程である。
【0076】
イソブテン回収工程S5においては、蒸留塔の塔頂部の圧力は加圧されることが好ましい。具体的には、圧力が0.5〜1.5MPaであることが好ましい。
蒸留塔の所要理論段数は2〜15理論段の範囲で運転させることが好ましく、実用性の観点から3〜7理論段の範囲で運転させることがより好ましい。
蒸留塔の熱負荷を削減するため供給物質の顕熱を利用することにより、蒸留塔への供給段は蒸留塔最下部とし、蒸留塔での新たな熱負荷がない方法、又は、塔最上部より水を供給し還流を行わないことが好ましい。
蒸留塔に充填する充填物としては、上述した規則充填物又は不規則充填物を使用することができるが、経済性の観点から、不規則充填物を使用することが好ましい。
【0077】
なお、得られたイソブテンは、ETBEの製造方法の原料として、再利用することができる。
【0078】
(エタノール回収工程)
エタノール回収工程S6は、イソブテン回収工程S5における残渣から未反応のエタノールを回収する工程である。
【0079】
エタノール回収工程S6において、エタノールを回収する際には、水を蒸留分離する必要がある。
ここで、エタノールと水との気液平衡特性及び設備費等の問題を鑑みると、常圧で蒸留分離する方が有利であるといえる。また、エタノールを回収する際には、図4に示すエタノールと水の気液平衡特性より多くの蒸留理論段が必要とされる。
【0080】
これらのことから、エタノール回収工程S6においては、蒸留塔の塔頂部の圧力を常圧とする。
蒸留塔の温度は、塔頂部が65〜90℃、塔底部が90〜120℃であることが好ましい。
蒸留塔への供給段は、蒸留塔供給段温度と供給する物質の温度がほぼ等しい蒸留段、塔頂部より8〜12理論段に供給するのが好ましい。
蒸留塔の所要理論段数は8〜30理論段であることが好ましく、実用性の観点から10〜20理論段とすることがより好ましい。
還流比は、2〜20の範囲で運転させることが好ましく、実用性の観点から8〜12の範囲で運転させることがより好ましい。
蒸留塔に充填する充填物としては、上述した規則充填物が好ましい。
【0081】
エタノール回収工程S6においては、常圧条件下、純度が96重量%以下のエタノールを留出させた後、該エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を施し、再使用することが好ましい。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、本実施形態に係るETBEの製造方法においては、イソブテンとエタノールとを反応触媒存在下反応させる主反応工程S2を備えているが、必ずしも備える必要はない。
【0084】
イソブテン回収工程S5及びエタノール回収工程S6は、必ずしも必須ではなく、経る順序も特に限定されない。
また、回収されたエタノール及びイソブテンは、そのまま主反応工程S2又は反応蒸留工程S3に流通させてもよく、脱水工程S1等を介して主反応工程S2又は反応蒸留工程S3に流通させてもよく、一時的に取り出し、別途ETBEの製造に用いてもよい。
【実施例】
【0085】
図5は、実施例におけるETBEの製造方法を示すフロー図である。
以下、図5に示す実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
(脱水工程)
エタノールを流路100及び流路280から脱水塔A100に供給した。脱水塔A100は、内容積500mlの撹拌機付き槽型ステンレス反応容器にモレキュラーシーブ3A(水吸着剤、和光純薬工業株式会社製)150mlが充填され、反応容器の空間部を窒素ガスでシールしたものである。
脱水塔A100において、温度67℃、圧力0.101MPaで脱水工程を施した。なお、脱水により分離された水は流路120を経て系外に排出した。
こうして得られたエタノールは、カールフィッシャー水分分析計で水分を測定したところ、含水率が2055ppmであった。
【0087】
(主反応工程)
得られたエタノールを、流路130、液ポンプP100(液ポンプのポンプ効率90%)、流路140を経て加圧気液混相反応容器R100に入れ、もう一方の反応の原料となる炭化水素(イソブテン17.5重量%、プロパン2.5重量%、イソブタン26.0重量%、1−ブテン44.8重量%、ブタン7.9重量%及びペンタン1.4重量%)を、流路110から加圧気液混相反応容器R100に供給した(エタノール/イソブテンのモル比1/1.1)。なお、加圧気液混相反応容器R100は、内容積100mlの撹拌機付き槽型ステンレス反応容器からなり、陽イオン交換樹脂(反応触媒、オルガノ社製)15mlが充填されている。
【0088】
そして、温度70℃、圧力0.507MPaで、エタノール及びイソブテンを反応容器の上部から供給し、気相部分は循環する方式として、ETBEの製造を行った。このときのエタノール反応率は45.3モル%であり、ETBE収率は99.3モル%であった。
【0089】
(反応蒸留工程)
次に、これらの混合物を、流路150を経て反応蒸留塔RD100に供給した。
反応蒸留塔RD100は、内径15mm、長さ200mmの反応管に、陽イオン交換樹脂(オルガノ社製)10mlを充填されたものであり、塔頂部より上部の蒸留分離段8理論段、反応蒸留段6理論段(陽イオン交換樹脂が充填)、下部の蒸留分離段9理論段より構成されている。なお、触媒層温度を60℃、反応圧力を0.5MPa、エタノール/イソブテンのモル比を1/1.1とし、モレキュラーシーブで脱水したエタノール供給量の触媒容量に対する液空間速度を4.00/hとした。
【0090】
反応蒸留塔RD100において、混合物を塔頂部から15理論段に供給し、塔頂部圧力を0.355MPa、塔頂部温度を51℃、反応蒸留部温度を70℃、塔底部を118℃及び還流比を0.3として反応蒸留を行った。このときのエタノール反応率は80.6モル%であり、ETBE収率は99.3モル%であった。
【0091】
反応蒸留塔RD100の塔頂部から流出する気相部分(主に未反応の炭化水素、蒸気圧相当分のエタノール及び未分離ETBE)は、流路180、圧縮機C100(圧縮機の断熱効率80%)を経て、ETBE蒸留塔D100に供給し、液相部分(主に溶解平衡分の未反応炭化水素、エタノール及び未分離ETBE)は、流路170、液ポンプP200(液ポンプのポンプ効率90%)、流路190を経てETBE蒸留塔D100に供給した。
反応蒸留塔RD100の塔底部からは、純度98.0重量%ETBEを、流路160、流路230を経て缶出した。
【0092】
(ETBE蒸留工程)
ETBE蒸留塔D100は、18理論段で構成されている。
上記気相部分及び上記液相部分をETBE蒸留塔D100の塔頂部から9理論段に供給し、塔頂部圧力を1.013MPa、塔頂部温度を76℃、塔底部を166℃及び還流比を3.0として蒸留分離を行った。
ETBE蒸留塔D100の塔頂部から流出する残渣(主に未反応炭化水素、エタノール、未分離ETBE)を、流路220を経て熱交換器EX100で73℃にて冷却し、流路240を経て未反応イソブテン蒸留塔D200に供給した。
また、塔底部からは純度98.0重量%のETBEを缶出させ、流路210を経、流路230に合流してETBEを得た。
【0093】
(イソブテン回収工程)
未反応イソブテン蒸留塔D200は、5理論段で構成され、流路310より還流の水を塔頂部へ供給し、塔頂部圧力を1.013MPa、塔頂部温度を66℃、塔底部を30℃として蒸留分離を行った。
未反応イソブテン蒸留塔D200の塔頂部から流出する成分(主に未反応炭化水素、蒸気圧相当の水、エタノール、ETBE)は、流路260を経て系外に排出した。また、塔底部より缶出する未反応エタノールは、流路250を経て未反応エタノール蒸留塔D300に供給した。
【0094】
(エタノール回収工程)
未反応エタノール蒸留塔D300は、横幅100mm、高さ1200mm、奥行60mmの蒸留塔に理論段数が20段相当になるように不規則充填物が充填されている。蒸留条件は塔頂温度を79℃、供給するエタノール濃度を10wt%とした。また、上記未反応エタノールは塔の中心の高さから5.0kg/hとなるように連続的に供給した。さらに、塔頂部の還流量は4.8kg/hとした。
【0095】
未反応エタノール蒸留塔D300は、23理論段で構成されている。
未反応エタノール蒸留塔D300において、未反応エタノールを塔頂部から19理論段に供給し、塔頂部圧力を0.101MPa、塔頂部温度を75℃、塔底部温度を100℃及び還流比を10.0として、蒸留分離を行った。
その結果回収したエタノールの濃度は90wt%以上であった。
【0096】
未反応エタノール蒸留塔D300塔頂部より流出する純度94.4重量%エタノールは流路280を経て脱水塔A100に供給して再使用した。塔底部より缶出する水は流路270を経て、未反応イソブテン蒸留塔D200塔頂部より流出する蒸気圧相当の水を補給するための水を供給する流路290と合流し、流路300、液ポンプP300、流路310を経て熱交換器EX200で70℃に冷却し、流路320を経て未反応イソブテン蒸留塔D200塔頂部に供給した。
【0097】
本実施例におけるETBEの製造方法の計算を行った(米国:Simuration Sciences, Inc.の汎用プロセスシミュレータPROII使用し、計算式はSRKM(Soave-Redlich-Kwong Modified)式を用いペンタン/水、ETBE/エタノール、の系については気液平衡データを組み込んだ。)。
なお、各流路における温度、圧力、各成分組成を表2〜4に示す。また、以下の表において、各成分組成の欄の「L」は液体、「V」は気体、「M」は気液混合状態を示す。
【0098】
〔表2〕














【0099】
〔表3〕























【0100】
〔表4〕

【0101】
本実施例に係るETBEの製造方法において、エタノール57.41トンと低純度イソブテン中のイソブテン76.84トンから純度98重量%のETBEを119.14トンを得ることができた。なお、ETBEの成分組成は、ETBE98.01重量%、イソブタン0.02重量%、1ブテン0.06重量%、ブタン0.02重量%、ジエチルエーテル0.01重量%、ペンタン0.17重量%、エタノール0.69重量%、ターシャリーブタノール0.30重量%、エチル2−ブチルエーテル0.21重量%、イソブチレン0.52重量%(常温でガス状の物質イソブタン、1ブテン、ブタンは溶解平衡分)であった。
【0102】
以上より、ETBE回収率96.0%、未反応エタノール回収率97.4%(エタノール水溶液のエタノール純度94.4重量%)であった。なお、未回収ETBEおよびエタノールは未反応低純度イソブテンとともに蒸気圧相当分として系外に排出されている。
従って、本システムではETBEを製造、精製し未反応エタノールを再利用すると同時に、反応熱の有効利用を図り装置コストおよび操業費等の点から熱利用性の高い、ETBEを製造できることが確認された。
【符号の説明】
【0103】
100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200,210,220,230,240,250,260,280,290,300,310,320・・・流路
100A・・・脱水塔
C100・・・圧縮機
D100・・・ETBE蒸留塔
D200・・・未反応イソブテン蒸留塔
D300・・・未反応エタノール蒸留塔
P100,P200,P300・・・液ポンプ
R100・・・加圧気液混相反応容器
RD100・・・反応蒸留塔
S1・・・脱水工程
S2・・・主反応工程
S3・・・反応蒸留工程
S4・・・ETBE蒸留工程
S5・・・イソブテン回収工程
S6・・・エタノール回収工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブテンを含む炭化水素とエタノールとを反応触媒存在下、蒸留塔にて反応蒸留し、ETBEを得る反応蒸留工程と、
前記反応蒸留工程における残渣を高圧条件下で反応蒸留し、ETBEを得るETBE蒸留工程と、
を備えるETBEの製造方法。
【請求項2】
前記ETBE蒸留工程における高圧条件が0.23MPa以上である請求項1記載のETBEの製造方法。
【請求項3】
前記炭化水素が、プロパン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン及びペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1記載のETBEの製造方法。
【請求項4】
前記反応蒸留工程の前に、前記エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を更に備える請求項1〜3のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項5】
反応触媒が陽イオン交換樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項6】
前記エタノールが、リグノセルロースを加水分解し発酵させて得られたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項7】
前記反応蒸留工程において、100℃以下の温度条件下、純度95重量%以上のETBEを缶出させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項8】
前記反応蒸留工程の前に、前記炭化水素とエタノールとを反応させる主反応工程を更に備える請求項1〜7のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項9】
前記主反応工程が加圧気液混相反応方式で施され、
前記反応蒸留工程が反応蒸留方式で施される請求項8記載のETBEの製造方法。
【請求項10】
前記加圧気液混相反応方式において、反応温度を100℃以下とし、反応時の気圧を前記エタノールが液相を保持できる圧力以上とし、前記イソブテンが気相を循環するようになっている請求項9記載のETBEの製造方法。
【請求項11】
未反応のエタノールを回収するエタノール回収工程を更に備える請求項1〜10のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項12】
前記エタノール回収工程において、常圧条件下、蒸留塔上部より純度が96重量%以下のエタノールを留出させた後、該エタノールに混在している水を取り除く脱水工程を施し、得られるエタノールを再使用する請求項11記載のETBEの製造方法。
【請求項13】
未反応のイソブテンを回収するイソブテン回収工程を更に備える請求項1〜12のいずれか一項に記載のETBEの製造方法。
【請求項14】
前記イソブテン回収工程において、加圧した圧力条件下、イソブテンを回収する請求項13記載のETBEの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162478(P2011−162478A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26903(P2010−26903)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】