Eurycomalongifoliaの極性有機抽出物
本発明は、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および該極性有機抽出物から得られるフラクションを含む組成物であって、クアシノイド類、クマリン類、ならびにその配糖体、類似体および誘導体を含み、男性の精子生産ならびに形質および運動性に関する精子の質を改善し、テストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を示す組成物を提供する。前記極性有機抽出物を製造するためのE. longifolia植物の抽出方法、およびこれに続く、クアシノイド類、クマリン類、その配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションを製造するための精製、ならびに不妊症治療用製剤の製造のための使用も提供される。クアシノイド類、クマリン類、その配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションは、複数の投与経路による医薬用途に製剤される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬の技術分野、特に男性の不妊症又は性機能障害の治療用の薬草医薬製剤に関する。より具体的には、本発明は、男性の精子形成を向上させる活性を有するEurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびそのフラクション、不妊治療用製剤の製造のためのその使用、ならびにその抽出方法および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的にトンカットアリ(tongkat ali)、ペナワールパヒト(penawar pahit)、ベダラパヒト(bedara pahit)、トンカットバギンダ(tongkat baginda)、ペタラブミ(petala bumi)、ペサクブミ(pasak bumi)、セツンジャングブミ(setunjang bumi)、カイバビン(cay ba binh)およびプラーライプエアク(plaa-lai-pueak)としても知られる Eurycoma longifolia(Jack)の根又は茎は、単一の薬草として、又は複数の薬草成分の一部として、赤痢、発熱、マラリアおよび男性不妊症等の生殖障害の治療に、伝統的な民間医薬として用いられてきた。数多くの科学論文により、この植物の抽出物から得られるクアシノイド(quassinoids)が、抗マラリア活性(Chan et al., 1986; Kuo et al., 2004; Jiwajinda et al., 2002; Chan et al., 2004)、抗住血吸虫活性(Jiwajinda et al., 2002)、抗潰瘍活性(Tada et al., 1991)、解熱活性(Chan et al., 1995)、細胞毒性(Morita et al. 1993; Kuo et al., 2004)、抗腫瘍促進活性(Jiwajinda et al., 2002)および性欲促進活性(Ang and Sim, 1998)を有することが報告されている。
【0003】
夫婦間(in couples)の不妊症は、1年を超える避妊を行わない性交の後にも女性が妊娠できないこととして定義されており、真剣に子供を持つこと望む夫婦において重要な問題である。WHOによれば(2003年)、1億8600万を超える夫婦の約10〜15%が不妊症に悩まされており、このうち、男性が、この問題の原因となる場合が約30〜40%であり(Royle and Walsh, 1992)、調査時では、20〜30%が、夫婦の両者の組合せによる可能性があった。
【0004】
男性不妊症は、精液中の精子の欠如、精子の変形又は構造異常、女性の卵子を受精させる運動性の欠如、遺伝的障害又は内分泌障害が原因となる場合がある。これまで、男性不妊症の90%超は、精子数の少なさ又は精子の質の低さに起因するものであった(Winston, 1986)。
【0005】
妊娠に必要なのは実際には1個の精子で十分なのだが、精液サンプル中に運動能力のある精子が2000万個未満の場合には、妊娠のチャンスは低下する。男性不妊症のいくつかのケースでは、単に精子の数を増加させることで問題が解決する可能性がある。現状では、精子数を増加させる公知の方法は存在しない。従って、不妊症の男性の少ない精子数を増加させるような製品は、その男性の受精能力を高める可能性があり、不妊状態にある夫婦に多大な恩恵をもたらすであろう。
【0006】
Eurycoma longifolia(Jack)は、男性の生殖能力を高めるマレー地方の伝統的な治療薬としての評判を有し、性欲促進特性を示すことが報告されている(Zakaria and Ali Mohd, 1994)
【0007】
米国特許出願第20040087493号(Sambandan et al., 2004)では、分子量が4,300ダルトンであり、かつ30個〜39個のアミノ酸と糖残基とを有する糖ペプチドを含むE. longifoliaの水性抽出物が、テストステロン合成の活性を増加させ、細胞からのテストステロンの放出を増加させ、精子数を増加させ、かつ精子の運動性を上昇させることが、幅広くクレームされている。また、この抽出物の組成物も、性機能不全又は男性不妊症の治療用にクレームされている。
【0008】
上記先行技術とは異なり、本発明の利点は、クアシノイド類、クマリン類、それら配糖体、類似体および誘導体の組成物を含有し、男性の精子生産を増加させ、精子の運動性を高め、そしてテストステロン合成と細胞からの放出を増大させる、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびそのフラクションを提供することである。また、不妊症治療用製剤の製造における前記組成物の使用、抽出物およびフラクションの作製方法、ならびに化学成分の単離と同定も、本発明により提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびこの極性有機抽出物から得られるフラクションの組成物を広く開示し、前記組成物は、クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含み、男性の精子生産ならびに形質および運動性に関する精子の質を増加させ、テストステロンの合成と細胞からの放出を増加させる生物活性を示す。前記極性有機抽出物を製造するためのE.longifolia植物の抽出方法、およびこれに続く、クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションを製造するための精製、ならびに、不妊症治療用製剤の製造におけるこれらの使用も提供される。クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションは、複数の投与経路による医薬用途に製剤される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様によれば、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物であって、前記抽出物の重量パーセントが5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む、組成物が提供される。
【0011】
前記極性有機抽出物は、男性の精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む生物活性を有する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物であって、前記フラクションが、前記極性有機抽出物の10%〜25%の重量パーセントであり;
ユーリコマノン(eurycomanone)、13α,21-ジヒドロユーリコマノン(13α,21−dihydroeurycomanone)、13(21)-エポキシユーリコマノン(13(21)−epoxyeurycomanone)、ユーリコマノール(eurycomanol)およびその配糖体、ユーリコマオシド(eurycomaoside)およびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体(other glycosides)、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む組成物が提供される。
【0013】
前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、男性の精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む生物活性を有する。
【0014】
本発明の更に別の態様によれば、Eurycoma longifoliaから生物活性成分を単離する方法が提供され、該方法は、
Eurycoma longifolia植物材料から極性有機抽出物を調製すること;
前記極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に通して分画し、水、水と有機溶媒との混合溶液、および有機溶媒を順に用いて溶離することにより、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを得ること;および
分配(partition)法、クロマトグラフィー法および再結晶化法により、生物活性成分を単離して精製すること、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの抽出を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクショから抽出される種々の成分の単離スキームを示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能を評価するための42日間に渡る処置による動物試験の実験計画を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能を評価するための42日間に渡る無処置および処置による動物試験の実験計画を示すフローチャートである。
【図5】図5は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間に渡って毎日経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、ラットの精子数に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図6】図6は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、精子形体に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図7】図7は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、精子の運動性に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図8】図8は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の精巣の単位重量当たりのテストステロンレベルに対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図9】図9は、12.76 mg/kg、25.51 mg/kgおよび51.02 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを30日間経口投与した後の、ラットの血漿ホモジェネートおよび精巣ホモジェネート中のテストステロンレベルに対する効果を示すグラフである。
【図10】図10は、10体積%のプロピレングリコール水溶液で処置したコントロールラット(C)由来の精巣の組織構造示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。
【図11】図11は、25.51 mg/kgのE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションで処置したラット由来の精巣の組織構造示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。L、ライディヒ細胞;1、生殖細胞;2、精子細胞(spermatidic cell)。
【図12】図12は、125 mg/kgのA. paniculata抽出物で処置したラット由来の精巣の組織構造を示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。3、精母細胞の退縮;4、精細管の管腔。
【図13】図13は、E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションおよびA. paniculataの抽出物で処置したラット由来の精巣の組織構造を示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色、×200)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記極性有機抽出物は、Eurycoma longifoliaの根、樹脂又は茎を粉砕して、これを有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液で抽出することにより調製される。
【0017】
前記極性有機抽出物を選択されたフラクションに分画するために用いられる吸着樹脂が充填されたクロマトグラフィー用カラムは、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂であることが好ましい。
【0018】
また、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンから成る群から選択され得る低級アルコール又は極性有機溶媒であることが、更に好ましい。
【0019】
本発明の方法により得られるEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類を含み、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を示す。
【0020】
本発明は、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させるための、ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、これら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、を含む、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの成分の単離および同定を含む。これらクアシノイド類およびクマリン類ならびにその類似体および誘導体は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むクロマトグラフィー法および質量分析(MS)により分析され、紫外線、赤外線、質量分析、核磁気共鳴およびX線回折解析により同定される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、医薬製剤が提供される。この製剤は、医薬的に許容可能な担体と共に、精子形成の改善により性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物を含み、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、男性の精子生産又は精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、テストステロン合成および細胞からのテストステロンの放出を増加させることによる、ヒト又は動物の男性不妊症又は性機能障害の治療のための医薬の製造における、前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物の使用が提供される。
【0023】
前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物は、標準的な方法により、極性有機抽出物および/又はそのフラクションを含有する、ソフトゲルカプセルを含むカプセル、錠剤、ガレン製薬(galenicals)、粉末、顆粒、水性医薬、注射等の臨床使用のための種々の医薬製剤へ製剤可能である。ここで、前記極性有機抽出物および/又はフラクションは、有効成分として、その効能と毒性に基づく治療有効量で、単体又は他の化学物質との組み合わせで、経口、舌下、静脈内、筋内等の種々の投与経路を通じて投与可能である。有効量とは、精子数を増加させ、形体および運動性において精子の質を高め、かつテストステロンレベルおよび細胞からのテストステロン放出を増加させるのに十分な量である。男性の精子形成を改善するのに有効な量は、治療する症状の重症度;年齢、健康状態、身長(size)および体重を含む患者個人のパラメーター;併用される療法と薬物の相互作用:治療頻度;および投与方法に応じることとなる。
【0024】
好ましくは、極性有機抽出物のフラクションの成人用投与量は、1日当たり約0.2〜2.0 mg/kgである。1日に1回又は複数回の投与により、60 kgの成人につき10〜100 mgの範囲の投与量を経口投与することで、所望の結果が得られることが期待される。極性有機抽出物の場合、成人の経口投与量は、1日当たり50〜500 mg/kgの範囲であり得る。このような投与量において対象の反応が不十分な場合には、患者の許容量の範囲で、これを超える投与量(又はより局所的な別の送達経路による、より大量の有効投与量)を用いてもよい。投与量の範囲は、個々の患者の治療に必要な場合には、治療する特定の症状に応じて調節してもよい。化合物の適切な全身濃度を達成するために、1日に複数回投与することも予期される。治療期間は、短期間を基本とし、好ましくは、6か月以下である。
【発明の詳細な説明】
【0025】
本発明の種々の特徴および態様を、以下の実施例において更に説明する。これらの実施例は、本発明の範囲内で操作する方法を当業者に示すために提示されるが、これら実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は、請求項によってのみ定義される。
【実施例1】
【0026】
実施例1
極性有機抽出物の調製
抽出用に選択される植物部位としては、Eurycoma longifolia(Jack)(ニガキ科(Simaroubaceae))の根、樹皮又は茎を用いることができる。抽出前に、各植物部位を乾燥させ、小片へと細断し、そして粉砕機にかけた。
【0027】
本発明の極性有機抽出物は、上記の植物部位を、メタノール、エタノールおよびアセトンを含む水和性有機溶媒又は水とこれら有機溶媒との混合溶液を用いて抽出することにより得られる。抽出温度は、各抽出毎に、50〜70℃の範囲に調節し、6〜8時間かける。抽出懸濁液をろ過し、残渣を、前記と同一の新たな溶媒で再抽出した。例えば、メタノール、エタノールおよびアセトン又は水とこれら有機溶媒との混合溶液であり得る有機溶媒の、乾燥植物部位に対する相対量は、1:10〜1:100である。一つにまとめたろ液を、部分真空下で、24〜27℃の室温で蒸発乾固させて、2重量%〜5重量%の粗抽出物を得た。
【実施例2】
【0028】
実施例2
極性有機抽出物のフラクションの調製
E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、上述の粗抽出物をクロマトグラフィー技術により分離精製することで得られる。極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に吸着させ、次いで、水、水と有機溶媒との混合溶液、およびその後に有機溶媒をこの順番で用いて溶離する。この有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、アセトンおよびイソプロピルアルコール等の低級アルコール又は極性有機溶媒であり得る。
【0029】
或る好ましい実施形態では、樹脂に吸着した極性有機抽出物のフラクションの成分は、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂を充填したカラムに極性有機抽出物を通過させることにより得られる。非吸着成分は、水で洗い流され、樹脂に吸着した成分は、水と有機溶媒との混合溶液、およびその後に有機溶媒のみを用いて溶離される。
【0030】
前記極性有機溶媒を部分真空下で濃縮乾固することで、10〜25重量%のE. longifoliaの所望のフラクションが得られた。E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの単離を図1により示す。
【実施例3】
【0031】
実施例3
極性有機抽出物のフラクションから抽出された成分の同定
E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションから抽出された成分は、200グラムの抽出物乾燥残渣をシリカゲルを充填したカラムに注入し、その後、クロロホルムとメタノールの混合溶液で、極性を高めながら溶離することにより同定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で同程度のRf値を示す種々のサブフラクションを、図2に示すように、F1〜F5として集めてまとめた。
【0032】
サブフラクションF-1およびF-2を、メタノール再結晶を繰り返すことで更に精製すると、それぞれユーリコマノール([α]27D:+85.6°)(c 0.31、ピリジン)およびユーリコマノール-2-O-β-グルコピラノシド([α]27D:+78.0°)(c 1.00、ピリジン)が得られた。
【0033】
クロロホルムおよび濃度を増加させながらメタノールを用いた遠心TLCによりサブフラクションF-3を更に分画すると、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシドが得られた。
【0034】
サブフラクションF-4は、準分取(semi-preparative)用Partisil 10 ODS-3 5μカラム(250×7.6 mm)を用いたHPLCにより更に精製した。アセトニトリル:水(1:9)の移動相による1.6 ml/分での溶離および210nmでの検出により、ユーリコマノン([α]27D:+34.2°)(c 0.32、ピリジン)および 13α(21)-エポキシユーリコマノン([α]27D:+32.1°)(c 0.11、MeOH)が得られた。
【0035】
酢酸エチルとメタノールとの混合溶媒(メタノールの濃度を増加させながら用いる)と、続いてクロロホルムとメタノールとの混合溶媒(メタノールの濃度を増加させながら用いる)を用いた遠心TLCによるサブフラクションF-5の分画により、ユーリコマオシドアグリコン([α]27D:+16.4°)(c 0.30、MeOH)および13,21-ジヒドロユーリコマノン([α]27D:+46.9°)(c 0.11、MeOH)が得られた。
【0036】
上記の抽出された種々の成分の単離スキームを図2に示す。これらの成分の構造は、NMR、MS、UVおよびIRのスペクトルを報告値(Chan et al., 1986; Morita et al., 1990; Kardono et al., 1991)と比較することにより確認した。
【実施例4】
【0037】
実施例4
極性有機抽出物のフラクションによる生殖能の評価
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能の評価を行うため、体重が約220〜250gのSprague Dawley(SD)ラットをセインズマレーシア大学(Universiti Sains Malaysia)の動物舎から購入し、周囲室温で12時間の明暗周期の下に維持した。動物を一晩絶食させ、実験開始前に水を採ることを許可した。実験プロトコルは、セインズマレーシア大学の動物倫理委員会に提出し、承認された。
【0038】
54匹のラットを、それぞれ18匹の動物から成る3種類の処置グループへと振り分けた。コントロールグループ(C)の動物には、水中に10体積%のプロピレングリコールを含むベヒクルのみを与えた。グループEの動物には、10%プロピレングリコール中に含まれるEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを25.51 mg/kgの投与量で摂取させた。グループHBの動物には、Andrographis paniculataの抽出物を125 mg/kgの投与量(25 mg/kgのアンドログラフォリド(andrographolide)を含有)で摂取させた。全ての処置は、42日間の継続的な経口投与により行った。続いて、各グループの12匹の動物について、各オスを個別に2匹のメスラットと共に5日間、この期間内に発情周期が1回経過するように収容することを含む、オスの生殖試験を行った(Morgan and El-Tawil, 2003)。交尾が成功したことを確実なものとするため、全てのメスラットの膣を綿棒で洗浄した。妊娠期間には、メスラットの体重評価を妊娠の指標として用いた。生後は、授乳期間中に子供の体重を、4日目、7日目、11日目、14日目、17日目および21日目に記録した。受精と繁殖の指数も測定した(Ecobichon, 1995)。各グループの他の6匹の動物は、精子分析、血漿テストステロン測定および組織学的試験に付した。上記の実験計画を図3に示す。
【0039】
オスの生殖試験の後、C、EおよびHBの各グループの前記12匹の動物については、さらに42日間の試験を連続して行った(図4参照)。グループE(n=12)については、ウォッシュアウト期間(WE)として、42日間Eurycoma longifolia抽出物の経口投与を中止した。グループHB(n = 12)については、6匹の動物に、A. paniculata抽出物を125 mg/kgの投与量で毎日連続的に摂取させ、Eurycoma longifoliaのフラクションも25.51 mg/kgの投与量で42日間連続して同時投与し(HB+E)、他の6匹の動物(WHB)には、42日間のウォッシュアウト期間を経過させた。ウォッシュアウト期間中は、動物は、水および食料を自由に摂取させた。試験の終了時に、C、 WE、HB+EおよびWHBの各グループの6匹の動物を、オスの生殖試験、精子分析およびテストステロン測定に付した。上記の実験計画を図4に示す。
【実施例5】
【0040】
実施例5
テストステロンおよびクアシノイドの分析
24匹のオスのSDラットを、4つのグループに振り分けた。コントロールグループの動物には、ベヒクルとして、10体積%のプロピレングリコールを含む水与えた。その他のグループの動物には、Eurycoma longifoliaのフラクションを、それぞれ12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で摂取させた。全ての処置は、30日間の継続的な経口投与により行った。最後の処置から24時間後に、全ての動物をジエチルエーテルで麻酔し、血漿テストステロン分析用に、心穿刺により3.0 mlの血液を回収した。次いで、これらの動物を、ジエチルエーテルの過剰投与により屠殺した。精巣ホモジェネート中のテストステロンおよびクアシノイドの分析のため、精巣を精巣摘除術(Remie, 2000)により取り出した。
【実施例6】
【0041】
実施例6
結果
(i)精子分析
Eurycoma longifoliaのフラクションを経口投与したラット(E)では、最初の42日間の処置の後、コントロールC(P<0.01)およびA. paniculata抽出物(HB)(P<0.001)のラットと比較した場合に、精子数の有意な増加が見られた(図5)。Eurycoma longifoliaフラクションおよびA. paniculata抽出物による処置を中止した場合、WEおよびWHBの動物の精子数は、コントロール(C)と同程度のレベルに戻った。Eurycoma longifoliaフラクション(25.51 mg/kg)とA. paniculata抽出物(125 mg/kg)とを同時投与した動物(HB+E)は、A. paniculata抽出物のみを与えた動物(HB)と比較して133.0%の精子数増加を示したが(P<0.01)、WHBおよびWEの精子数に対しては有意差を示さなかった(図5)。42日間のウォッシュアウト期間後のA. paniculata抽出物を与えなかった動物(WHB)の精子数は、処置した動物(HB)と比較した場合に、僅かな回復を示した(図5)。ウォッシュアウト期間(WE)中に42日間Eurycoma longifoliaフラクションを与えなかった動物(WE)の精子数は、E. longifoliaのフラクションを与えた動物(E)と比べて、有意に低下していた(P<0.05)。図6に示すように、試験において42+42日間を通じて処置を行った動物の精子の形体は、コントロールグループの精子の形体に類似しており、正常であることが判明した。
【0042】
図7を参照するに、E. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)の精子の運動性は、42日間の経口投与の後のA. paniculata抽出物を与えたラット(HB)(P<0.001)およびコントロールのラット(P<0.01)と比較した場合に、有意な増加を示していた。グループWEの精子の運動性は、ウォッシュアウト期間中に処置を42日間中止した際にコントロールと同じレベルへと戻っていた。一方で、A. paniculata抽出物とE. longifoliaのフラクションとを同時投与したラット(HB+E)では、HBのラットよりも有意に高い精子運動を示した(P<0.05)。前記抽出物を与えた動物(E)の精子運動は、WEのラットの精子運動よりも有意に高いものであった(P<0.01)。
【0043】
(ii)テストステロン分析
図8を参照するに、E. longifoliaのフラクションを経口投与したラット(E)の精巣の単位重量当たりのテストステロンレベルは、42日間の処置の後、コントロールのラット(C)と比較して増加を示したが、42日間のウォッシュアウト期間の後のグループWEおよびコントロールのラットと比較した際には、有意差は認められなかった。しかしながら、グループWEの動物のホルモンレベルは、グループEの動物のホルモンレベルよりも有意に高いものであった(P<0.05)。
【0044】
図9は、E. longifolia のフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの量で30日間に渡って経口投与した後に行なった、血漿および精巣中のテストステロンレベルの比較試験を示す。コントロールと処置動物との血漿テストステロンレベルに有意差は認められず、アンドロゲン上昇による典型的な用量-反応は観察されなかった。対照的に、E. longifoliaのフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で摂取した動物の精巣ホモジェネートは、血漿と比べて有意に高いテストステロンレベル(P<0.01)を示したが、コントロール動物の血漿および精巣ホモジェネート中のアンドロゲンレベルの間には有意差は認められなかった。E. longifoliaフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で増加させた場合の精巣ホモジェネート中のアンドロゲンレベルは上昇したが、互いに有意差は認められず、テストステロンの用量-反応上昇が認められないことが示された。51.02 mg/kgの投与量では、テストステロンレベルは、25.51 mg/kgの投与量の場合と比べて、有意ではないが低下を示しており、投与量が多いと、アンドロゲンレベルの逆転が観察されたかもしれないことを示していた。この結果は、E. longifoliaフラクションが、動物の精巣中のテストステロンの増加を通じて、精子形成を促進したことを示していた。
【0045】
(iii)クアシノイド分析
E. longifoliaフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で経口投与した動物の精巣ホモジェネートのHPLC分析により、主要なクアシノイド類の一つである、ユーリコマノンが検出されたので、その量を定量した(表1)。単離した純粋なユーリコマノンを用いて検量曲線をプロットすると、r2=0.999で、Y=1250.3X+43.2の方程式が示された[Y:ピークの高さ(mV);X:ユーリコマノン(μg/ml)]。動物の精巣中に検出されたユーリコマノンの量は、E. longifoliaフラクションの投与量の増加とr2=0.972の相関性を示した。ユーリコマノンの濃度は、精巣ホモジェネートのテストステロンレベルの上昇に寄与しているであろうが、血漿中のテストステロンレベルには影響しないものと思われる(図8および図9)。
【0046】
表1
30日間種々の投与量でE. longifoliaフラクションを経口投与した後のラット精巣ホモジェネート中に検出されたユーリコマノンの上昇量。結果は、6匹の動物の平均値±標準偏差として示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(iv)組織学的試験
コントロールCのラット精巣の組織構造を図10に示す。精細管内の胚葉および精母細胞は、正常であるように見える。精細管の基底膜から管腔へと伸びた細胞質を有するセルトリ細胞が明確に観察される。
【0049】
25.51 mg/kgのE. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)の精巣の組織構造を図11に示す。精細管内の胚葉および精母細胞は、完全に無傷であり、コントロールCの胚葉および精母細胞と比較した場合に密度が高く、生殖細胞1が増殖していることを示している。精子細胞(spermatidic cell)2の数が多いことは、精子数の増加に寄与する。ライディヒ細胞Lが、図11中に明確に確認される。
【0050】
図12は、125 mg/kgのA. paniculataを42日間経口投与したラット(HB)の精細管中の精母細胞の退縮3を示す。第二精母細胞および精子細胞の未熟な状態での分離と分断(shedding)が観察される。また、成熟精子細胞も、精細管の管腔4内で減少している。
【0051】
図13中の組織構造は、最初にA. paniculataの抽出物を125 mg/kgの量で42日間経口投与し、続いて、更に42日間25.51 mg/kgの E. longifoliaのフラクション(E)で処置したラットの精巣を示している。図12で示された精巣に対するA. paniculataの負の影響は、E. longifoliaを用いた処置により覆された。この精巣は、コントロールラットのものに近似する組織構造を示した。
【0052】
(v)オスの生殖試験
E. longifoliaのフラクションで処置したオスラット(E)は54.17%の交尾指数を示し、コントロール(C)の37.50%およびA. paniculata抽出物を与えたグループ(HB)の31.82%と比べて最も高い値であった(表2)。コントロールおよび処置グループにて、偽妊娠(メスラット体内で、受胎が起きないまま、妊娠兆候を伴って月経が止まる状態として定義される)が観察された。コントロールグループでは52匹の子供が生まれた。グループE(n=40)およびHB(n=26)の全ての子供は、出産後に生存していた。グループEの子供は、授乳期間の初期において、コントロールの子供よりも有意に体重が重かった。更に、E. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)は、授乳期間および離乳期間を通じて、より活動的であった。コントロールの子供の性別の比率(24匹のオス:27匹のメス)およびHBグループの子供の性別の比率(12匹のオス:14匹のメス)と比較した場合に、E. longifoliaのフラクションで処置したグループ(E)では、約26匹のオスおよび14匹のメスの子供が誕生したことは興味深いことである。
【0053】
表2
25.51 mg/kgのE. longifoliaフラクション(E);125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)、およびコントロール(C)の、42日間の経口投与後のオスラットの生殖能に対する効果。
【0054】
【表2】
【0055】
数値は、胎児の体重の平均値±標準偏差で表されている。
* コントロールとの比較で、P<0.05で有意差を有する。
** コントロールとの比較で、P<0.01で有意差を有する。
*** コントロールとの比較で、P<0.001で有意差を有する。
【0056】
42時間のE. longifoliaフラクションの退薬の後には、動物(WE)は、処置下にあった動物(E)(表2)と比べて、僅かに高い交尾率(50.00%)およびオス生殖率(83.33%)を示した(表3)。コントロールおよび処置グループにおいて、メスラットの偽妊娠も観察された。HB+Eで処置した動物の子供の生後21日目の体重は、コントロールの子供の体重と比べて有意に低いものであった(P<0.05)。WEの子供の性別比(14匹のオス:13匹のメス)は、Eの子供の性別比(26匹のオス:14匹のメス、表2)と有意に異なっていた(P<0.05)。A. paniculata抽出物による処置を42日間中止していたにもかかわらず、WHBの動物では出産が認められなかった。グループWHBの動物のオス生殖率は、表2のHBの63.63%と比べて、40.00%に低下していた(表3)。
【0057】
表3
更なる42日間に渡る、A. paniculate抽出物による処置の中止(WHB);E. longifoliaフラクションによる処置の中止(WE)、ならびにA. paniculata抽出物(125 mg/kg)およびE. longifoliaフラクション(25.51 mg/kg)による処置の継続(HB+E)の後のオスの生殖能に対する効果。
【0058】
【表3】
【0059】
数値は、胎児の体重の平均値±標準偏差で表されている。
* コントロールとの比較で、P<0.05で有意差を有する。
** コントロールとの比較で、P<0.01で有意差を有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬の技術分野、特に男性の不妊症又は性機能障害の治療用の薬草医薬製剤に関する。より具体的には、本発明は、男性の精子形成を向上させる活性を有するEurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびそのフラクション、不妊治療用製剤の製造のためのその使用、ならびにその抽出方法および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的にトンカットアリ(tongkat ali)、ペナワールパヒト(penawar pahit)、ベダラパヒト(bedara pahit)、トンカットバギンダ(tongkat baginda)、ペタラブミ(petala bumi)、ペサクブミ(pasak bumi)、セツンジャングブミ(setunjang bumi)、カイバビン(cay ba binh)およびプラーライプエアク(plaa-lai-pueak)としても知られる Eurycoma longifolia(Jack)の根又は茎は、単一の薬草として、又は複数の薬草成分の一部として、赤痢、発熱、マラリアおよび男性不妊症等の生殖障害の治療に、伝統的な民間医薬として用いられてきた。数多くの科学論文により、この植物の抽出物から得られるクアシノイド(quassinoids)が、抗マラリア活性(Chan et al., 1986; Kuo et al., 2004; Jiwajinda et al., 2002; Chan et al., 2004)、抗住血吸虫活性(Jiwajinda et al., 2002)、抗潰瘍活性(Tada et al., 1991)、解熱活性(Chan et al., 1995)、細胞毒性(Morita et al. 1993; Kuo et al., 2004)、抗腫瘍促進活性(Jiwajinda et al., 2002)および性欲促進活性(Ang and Sim, 1998)を有することが報告されている。
【0003】
夫婦間(in couples)の不妊症は、1年を超える避妊を行わない性交の後にも女性が妊娠できないこととして定義されており、真剣に子供を持つこと望む夫婦において重要な問題である。WHOによれば(2003年)、1億8600万を超える夫婦の約10〜15%が不妊症に悩まされており、このうち、男性が、この問題の原因となる場合が約30〜40%であり(Royle and Walsh, 1992)、調査時では、20〜30%が、夫婦の両者の組合せによる可能性があった。
【0004】
男性不妊症は、精液中の精子の欠如、精子の変形又は構造異常、女性の卵子を受精させる運動性の欠如、遺伝的障害又は内分泌障害が原因となる場合がある。これまで、男性不妊症の90%超は、精子数の少なさ又は精子の質の低さに起因するものであった(Winston, 1986)。
【0005】
妊娠に必要なのは実際には1個の精子で十分なのだが、精液サンプル中に運動能力のある精子が2000万個未満の場合には、妊娠のチャンスは低下する。男性不妊症のいくつかのケースでは、単に精子の数を増加させることで問題が解決する可能性がある。現状では、精子数を増加させる公知の方法は存在しない。従って、不妊症の男性の少ない精子数を増加させるような製品は、その男性の受精能力を高める可能性があり、不妊状態にある夫婦に多大な恩恵をもたらすであろう。
【0006】
Eurycoma longifolia(Jack)は、男性の生殖能力を高めるマレー地方の伝統的な治療薬としての評判を有し、性欲促進特性を示すことが報告されている(Zakaria and Ali Mohd, 1994)
【0007】
米国特許出願第20040087493号(Sambandan et al., 2004)では、分子量が4,300ダルトンであり、かつ30個〜39個のアミノ酸と糖残基とを有する糖ペプチドを含むE. longifoliaの水性抽出物が、テストステロン合成の活性を増加させ、細胞からのテストステロンの放出を増加させ、精子数を増加させ、かつ精子の運動性を上昇させることが、幅広くクレームされている。また、この抽出物の組成物も、性機能不全又は男性不妊症の治療用にクレームされている。
【0008】
上記先行技術とは異なり、本発明の利点は、クアシノイド類、クマリン類、それら配糖体、類似体および誘導体の組成物を含有し、男性の精子生産を増加させ、精子の運動性を高め、そしてテストステロン合成と細胞からの放出を増大させる、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびそのフラクションを提供することである。また、不妊症治療用製剤の製造における前記組成物の使用、抽出物およびフラクションの作製方法、ならびに化学成分の単離と同定も、本発明により提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物およびこの極性有機抽出物から得られるフラクションの組成物を広く開示し、前記組成物は、クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含み、男性の精子生産ならびに形質および運動性に関する精子の質を増加させ、テストステロンの合成と細胞からの放出を増加させる生物活性を示す。前記極性有機抽出物を製造するためのE.longifolia植物の抽出方法、およびこれに続く、クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションを製造するための精製、ならびに、不妊症治療用製剤の製造におけるこれらの使用も提供される。クアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む極性有機抽出物のフラクションは、複数の投与経路による医薬用途に製剤される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様によれば、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物であって、前記抽出物の重量パーセントが5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む、組成物が提供される。
【0011】
前記極性有機抽出物は、男性の精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む生物活性を有する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物であって、前記フラクションが、前記極性有機抽出物の10%〜25%の重量パーセントであり;
ユーリコマノン(eurycomanone)、13α,21-ジヒドロユーリコマノン(13α,21−dihydroeurycomanone)、13(21)-エポキシユーリコマノン(13(21)−epoxyeurycomanone)、ユーリコマノール(eurycomanol)およびその配糖体、ユーリコマオシド(eurycomaoside)およびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体(other glycosides)、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む組成物が提供される。
【0013】
前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、男性の精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む生物活性を有する。
【0014】
本発明の更に別の態様によれば、Eurycoma longifoliaから生物活性成分を単離する方法が提供され、該方法は、
Eurycoma longifolia植物材料から極性有機抽出物を調製すること;
前記極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に通して分画し、水、水と有機溶媒との混合溶液、および有機溶媒を順に用いて溶離することにより、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを得ること;および
分配(partition)法、クロマトグラフィー法および再結晶化法により、生物活性成分を単離して精製すること、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの抽出を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクショから抽出される種々の成分の単離スキームを示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能を評価するための42日間に渡る処置による動物試験の実験計画を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能を評価するための42日間に渡る無処置および処置による動物試験の実験計画を示すフローチャートである。
【図5】図5は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間に渡って毎日経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、ラットの精子数に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図6】図6は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、精子形体に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図7】図7は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の、精子の運動性に対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図8】図8は、25.51 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクション(E)、125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)およびコントロール(C)を42日間経口投与し、続いて、更に42日間HB+Eの同時投与を行った後の精巣の単位重量当たりのテストステロンレベルに対する効果を示すグラフである。WHBとWEは、それぞれ、第2の42日間でHBおよびEを投与されなかったグループである。
【図9】図9は、12.76 mg/kg、25.51 mg/kgおよび51.02 mg/kg のE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを30日間経口投与した後の、ラットの血漿ホモジェネートおよび精巣ホモジェネート中のテストステロンレベルに対する効果を示すグラフである。
【図10】図10は、10体積%のプロピレングリコール水溶液で処置したコントロールラット(C)由来の精巣の組織構造示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。
【図11】図11は、25.51 mg/kgのE. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションで処置したラット由来の精巣の組織構造示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。L、ライディヒ細胞;1、生殖細胞;2、精子細胞(spermatidic cell)。
【図12】図12は、125 mg/kgのA. paniculata抽出物で処置したラット由来の精巣の組織構造を示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色(H&E)、×100)。3、精母細胞の退縮;4、精細管の管腔。
【図13】図13は、E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションおよびA. paniculataの抽出物で処置したラット由来の精巣の組織構造を示す図である(ヘマトキシリンエオジン染色、×200)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記極性有機抽出物は、Eurycoma longifoliaの根、樹脂又は茎を粉砕して、これを有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液で抽出することにより調製される。
【0017】
前記極性有機抽出物を選択されたフラクションに分画するために用いられる吸着樹脂が充填されたクロマトグラフィー用カラムは、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂であることが好ましい。
【0018】
また、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンから成る群から選択され得る低級アルコール又は極性有機溶媒であることが、更に好ましい。
【0019】
本発明の方法により得られるEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類を含み、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を示す。
【0020】
本発明は、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させるための、ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、これら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;ならびに、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、その別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、を含む、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの成分の単離および同定を含む。これらクアシノイド類およびクマリン類ならびにその類似体および誘導体は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むクロマトグラフィー法および質量分析(MS)により分析され、紫外線、赤外線、質量分析、核磁気共鳴およびX線回折解析により同定される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、医薬製剤が提供される。この製剤は、医薬的に許容可能な担体と共に、精子形成の改善により性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物を含み、男性の精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、男性の精子生産又は精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、テストステロン合成および細胞からのテストステロンの放出を増加させることによる、ヒト又は動物の男性不妊症又は性機能障害の治療のための医薬の製造における、前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物の使用が提供される。
【0023】
前記Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物および/又はこの極性有機抽出物から得られるフラクションから成る組成物は、標準的な方法により、極性有機抽出物および/又はそのフラクションを含有する、ソフトゲルカプセルを含むカプセル、錠剤、ガレン製薬(galenicals)、粉末、顆粒、水性医薬、注射等の臨床使用のための種々の医薬製剤へ製剤可能である。ここで、前記極性有機抽出物および/又はフラクションは、有効成分として、その効能と毒性に基づく治療有効量で、単体又は他の化学物質との組み合わせで、経口、舌下、静脈内、筋内等の種々の投与経路を通じて投与可能である。有効量とは、精子数を増加させ、形体および運動性において精子の質を高め、かつテストステロンレベルおよび細胞からのテストステロン放出を増加させるのに十分な量である。男性の精子形成を改善するのに有効な量は、治療する症状の重症度;年齢、健康状態、身長(size)および体重を含む患者個人のパラメーター;併用される療法と薬物の相互作用:治療頻度;および投与方法に応じることとなる。
【0024】
好ましくは、極性有機抽出物のフラクションの成人用投与量は、1日当たり約0.2〜2.0 mg/kgである。1日に1回又は複数回の投与により、60 kgの成人につき10〜100 mgの範囲の投与量を経口投与することで、所望の結果が得られることが期待される。極性有機抽出物の場合、成人の経口投与量は、1日当たり50〜500 mg/kgの範囲であり得る。このような投与量において対象の反応が不十分な場合には、患者の許容量の範囲で、これを超える投与量(又はより局所的な別の送達経路による、より大量の有効投与量)を用いてもよい。投与量の範囲は、個々の患者の治療に必要な場合には、治療する特定の症状に応じて調節してもよい。化合物の適切な全身濃度を達成するために、1日に複数回投与することも予期される。治療期間は、短期間を基本とし、好ましくは、6か月以下である。
【発明の詳細な説明】
【0025】
本発明の種々の特徴および態様を、以下の実施例において更に説明する。これらの実施例は、本発明の範囲内で操作する方法を当業者に示すために提示されるが、これら実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は、請求項によってのみ定義される。
【実施例1】
【0026】
実施例1
極性有機抽出物の調製
抽出用に選択される植物部位としては、Eurycoma longifolia(Jack)(ニガキ科(Simaroubaceae))の根、樹皮又は茎を用いることができる。抽出前に、各植物部位を乾燥させ、小片へと細断し、そして粉砕機にかけた。
【0027】
本発明の極性有機抽出物は、上記の植物部位を、メタノール、エタノールおよびアセトンを含む水和性有機溶媒又は水とこれら有機溶媒との混合溶液を用いて抽出することにより得られる。抽出温度は、各抽出毎に、50〜70℃の範囲に調節し、6〜8時間かける。抽出懸濁液をろ過し、残渣を、前記と同一の新たな溶媒で再抽出した。例えば、メタノール、エタノールおよびアセトン又は水とこれら有機溶媒との混合溶液であり得る有機溶媒の、乾燥植物部位に対する相対量は、1:10〜1:100である。一つにまとめたろ液を、部分真空下で、24〜27℃の室温で蒸発乾固させて、2重量%〜5重量%の粗抽出物を得た。
【実施例2】
【0028】
実施例2
極性有機抽出物のフラクションの調製
E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションは、上述の粗抽出物をクロマトグラフィー技術により分離精製することで得られる。極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に吸着させ、次いで、水、水と有機溶媒との混合溶液、およびその後に有機溶媒をこの順番で用いて溶離する。この有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、アセトンおよびイソプロピルアルコール等の低級アルコール又は極性有機溶媒であり得る。
【0029】
或る好ましい実施形態では、樹脂に吸着した極性有機抽出物のフラクションの成分は、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂を充填したカラムに極性有機抽出物を通過させることにより得られる。非吸着成分は、水で洗い流され、樹脂に吸着した成分は、水と有機溶媒との混合溶液、およびその後に有機溶媒のみを用いて溶離される。
【0030】
前記極性有機溶媒を部分真空下で濃縮乾固することで、10〜25重量%のE. longifoliaの所望のフラクションが得られた。E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションの単離を図1により示す。
【実施例3】
【0031】
実施例3
極性有機抽出物のフラクションから抽出された成分の同定
E. longifoliaの極性有機抽出物のフラクションから抽出された成分は、200グラムの抽出物乾燥残渣をシリカゲルを充填したカラムに注入し、その後、クロロホルムとメタノールの混合溶液で、極性を高めながら溶離することにより同定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で同程度のRf値を示す種々のサブフラクションを、図2に示すように、F1〜F5として集めてまとめた。
【0032】
サブフラクションF-1およびF-2を、メタノール再結晶を繰り返すことで更に精製すると、それぞれユーリコマノール([α]27D:+85.6°)(c 0.31、ピリジン)およびユーリコマノール-2-O-β-グルコピラノシド([α]27D:+78.0°)(c 1.00、ピリジン)が得られた。
【0033】
クロロホルムおよび濃度を増加させながらメタノールを用いた遠心TLCによりサブフラクションF-3を更に分画すると、6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシドが得られた。
【0034】
サブフラクションF-4は、準分取(semi-preparative)用Partisil 10 ODS-3 5μカラム(250×7.6 mm)を用いたHPLCにより更に精製した。アセトニトリル:水(1:9)の移動相による1.6 ml/分での溶離および210nmでの検出により、ユーリコマノン([α]27D:+34.2°)(c 0.32、ピリジン)および 13α(21)-エポキシユーリコマノン([α]27D:+32.1°)(c 0.11、MeOH)が得られた。
【0035】
酢酸エチルとメタノールとの混合溶媒(メタノールの濃度を増加させながら用いる)と、続いてクロロホルムとメタノールとの混合溶媒(メタノールの濃度を増加させながら用いる)を用いた遠心TLCによるサブフラクションF-5の分画により、ユーリコマオシドアグリコン([α]27D:+16.4°)(c 0.30、MeOH)および13,21-ジヒドロユーリコマノン([α]27D:+46.9°)(c 0.11、MeOH)が得られた。
【0036】
上記の抽出された種々の成分の単離スキームを図2に示す。これらの成分の構造は、NMR、MS、UVおよびIRのスペクトルを報告値(Chan et al., 1986; Morita et al., 1990; Kardono et al., 1991)と比較することにより確認した。
【実施例4】
【0037】
実施例4
極性有機抽出物のフラクションによる生殖能の評価
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションによる生殖能の評価を行うため、体重が約220〜250gのSprague Dawley(SD)ラットをセインズマレーシア大学(Universiti Sains Malaysia)の動物舎から購入し、周囲室温で12時間の明暗周期の下に維持した。動物を一晩絶食させ、実験開始前に水を採ることを許可した。実験プロトコルは、セインズマレーシア大学の動物倫理委員会に提出し、承認された。
【0038】
54匹のラットを、それぞれ18匹の動物から成る3種類の処置グループへと振り分けた。コントロールグループ(C)の動物には、水中に10体積%のプロピレングリコールを含むベヒクルのみを与えた。グループEの動物には、10%プロピレングリコール中に含まれるEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを25.51 mg/kgの投与量で摂取させた。グループHBの動物には、Andrographis paniculataの抽出物を125 mg/kgの投与量(25 mg/kgのアンドログラフォリド(andrographolide)を含有)で摂取させた。全ての処置は、42日間の継続的な経口投与により行った。続いて、各グループの12匹の動物について、各オスを個別に2匹のメスラットと共に5日間、この期間内に発情周期が1回経過するように収容することを含む、オスの生殖試験を行った(Morgan and El-Tawil, 2003)。交尾が成功したことを確実なものとするため、全てのメスラットの膣を綿棒で洗浄した。妊娠期間には、メスラットの体重評価を妊娠の指標として用いた。生後は、授乳期間中に子供の体重を、4日目、7日目、11日目、14日目、17日目および21日目に記録した。受精と繁殖の指数も測定した(Ecobichon, 1995)。各グループの他の6匹の動物は、精子分析、血漿テストステロン測定および組織学的試験に付した。上記の実験計画を図3に示す。
【0039】
オスの生殖試験の後、C、EおよびHBの各グループの前記12匹の動物については、さらに42日間の試験を連続して行った(図4参照)。グループE(n=12)については、ウォッシュアウト期間(WE)として、42日間Eurycoma longifolia抽出物の経口投与を中止した。グループHB(n = 12)については、6匹の動物に、A. paniculata抽出物を125 mg/kgの投与量で毎日連続的に摂取させ、Eurycoma longifoliaのフラクションも25.51 mg/kgの投与量で42日間連続して同時投与し(HB+E)、他の6匹の動物(WHB)には、42日間のウォッシュアウト期間を経過させた。ウォッシュアウト期間中は、動物は、水および食料を自由に摂取させた。試験の終了時に、C、 WE、HB+EおよびWHBの各グループの6匹の動物を、オスの生殖試験、精子分析およびテストステロン測定に付した。上記の実験計画を図4に示す。
【実施例5】
【0040】
実施例5
テストステロンおよびクアシノイドの分析
24匹のオスのSDラットを、4つのグループに振り分けた。コントロールグループの動物には、ベヒクルとして、10体積%のプロピレングリコールを含む水与えた。その他のグループの動物には、Eurycoma longifoliaのフラクションを、それぞれ12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で摂取させた。全ての処置は、30日間の継続的な経口投与により行った。最後の処置から24時間後に、全ての動物をジエチルエーテルで麻酔し、血漿テストステロン分析用に、心穿刺により3.0 mlの血液を回収した。次いで、これらの動物を、ジエチルエーテルの過剰投与により屠殺した。精巣ホモジェネート中のテストステロンおよびクアシノイドの分析のため、精巣を精巣摘除術(Remie, 2000)により取り出した。
【実施例6】
【0041】
実施例6
結果
(i)精子分析
Eurycoma longifoliaのフラクションを経口投与したラット(E)では、最初の42日間の処置の後、コントロールC(P<0.01)およびA. paniculata抽出物(HB)(P<0.001)のラットと比較した場合に、精子数の有意な増加が見られた(図5)。Eurycoma longifoliaフラクションおよびA. paniculata抽出物による処置を中止した場合、WEおよびWHBの動物の精子数は、コントロール(C)と同程度のレベルに戻った。Eurycoma longifoliaフラクション(25.51 mg/kg)とA. paniculata抽出物(125 mg/kg)とを同時投与した動物(HB+E)は、A. paniculata抽出物のみを与えた動物(HB)と比較して133.0%の精子数増加を示したが(P<0.01)、WHBおよびWEの精子数に対しては有意差を示さなかった(図5)。42日間のウォッシュアウト期間後のA. paniculata抽出物を与えなかった動物(WHB)の精子数は、処置した動物(HB)と比較した場合に、僅かな回復を示した(図5)。ウォッシュアウト期間(WE)中に42日間Eurycoma longifoliaフラクションを与えなかった動物(WE)の精子数は、E. longifoliaのフラクションを与えた動物(E)と比べて、有意に低下していた(P<0.05)。図6に示すように、試験において42+42日間を通じて処置を行った動物の精子の形体は、コントロールグループの精子の形体に類似しており、正常であることが判明した。
【0042】
図7を参照するに、E. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)の精子の運動性は、42日間の経口投与の後のA. paniculata抽出物を与えたラット(HB)(P<0.001)およびコントロールのラット(P<0.01)と比較した場合に、有意な増加を示していた。グループWEの精子の運動性は、ウォッシュアウト期間中に処置を42日間中止した際にコントロールと同じレベルへと戻っていた。一方で、A. paniculata抽出物とE. longifoliaのフラクションとを同時投与したラット(HB+E)では、HBのラットよりも有意に高い精子運動を示した(P<0.05)。前記抽出物を与えた動物(E)の精子運動は、WEのラットの精子運動よりも有意に高いものであった(P<0.01)。
【0043】
(ii)テストステロン分析
図8を参照するに、E. longifoliaのフラクションを経口投与したラット(E)の精巣の単位重量当たりのテストステロンレベルは、42日間の処置の後、コントロールのラット(C)と比較して増加を示したが、42日間のウォッシュアウト期間の後のグループWEおよびコントロールのラットと比較した際には、有意差は認められなかった。しかしながら、グループWEの動物のホルモンレベルは、グループEの動物のホルモンレベルよりも有意に高いものであった(P<0.05)。
【0044】
図9は、E. longifolia のフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの量で30日間に渡って経口投与した後に行なった、血漿および精巣中のテストステロンレベルの比較試験を示す。コントロールと処置動物との血漿テストステロンレベルに有意差は認められず、アンドロゲン上昇による典型的な用量-反応は観察されなかった。対照的に、E. longifoliaのフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で摂取した動物の精巣ホモジェネートは、血漿と比べて有意に高いテストステロンレベル(P<0.01)を示したが、コントロール動物の血漿および精巣ホモジェネート中のアンドロゲンレベルの間には有意差は認められなかった。E. longifoliaフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で増加させた場合の精巣ホモジェネート中のアンドロゲンレベルは上昇したが、互いに有意差は認められず、テストステロンの用量-反応上昇が認められないことが示された。51.02 mg/kgの投与量では、テストステロンレベルは、25.51 mg/kgの投与量の場合と比べて、有意ではないが低下を示しており、投与量が多いと、アンドロゲンレベルの逆転が観察されたかもしれないことを示していた。この結果は、E. longifoliaフラクションが、動物の精巣中のテストステロンの増加を通じて、精子形成を促進したことを示していた。
【0045】
(iii)クアシノイド分析
E. longifoliaフラクションを12.76、25.51および51.02 mg/kgの投与量で経口投与した動物の精巣ホモジェネートのHPLC分析により、主要なクアシノイド類の一つである、ユーリコマノンが検出されたので、その量を定量した(表1)。単離した純粋なユーリコマノンを用いて検量曲線をプロットすると、r2=0.999で、Y=1250.3X+43.2の方程式が示された[Y:ピークの高さ(mV);X:ユーリコマノン(μg/ml)]。動物の精巣中に検出されたユーリコマノンの量は、E. longifoliaフラクションの投与量の増加とr2=0.972の相関性を示した。ユーリコマノンの濃度は、精巣ホモジェネートのテストステロンレベルの上昇に寄与しているであろうが、血漿中のテストステロンレベルには影響しないものと思われる(図8および図9)。
【0046】
表1
30日間種々の投与量でE. longifoliaフラクションを経口投与した後のラット精巣ホモジェネート中に検出されたユーリコマノンの上昇量。結果は、6匹の動物の平均値±標準偏差として示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(iv)組織学的試験
コントロールCのラット精巣の組織構造を図10に示す。精細管内の胚葉および精母細胞は、正常であるように見える。精細管の基底膜から管腔へと伸びた細胞質を有するセルトリ細胞が明確に観察される。
【0049】
25.51 mg/kgのE. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)の精巣の組織構造を図11に示す。精細管内の胚葉および精母細胞は、完全に無傷であり、コントロールCの胚葉および精母細胞と比較した場合に密度が高く、生殖細胞1が増殖していることを示している。精子細胞(spermatidic cell)2の数が多いことは、精子数の増加に寄与する。ライディヒ細胞Lが、図11中に明確に確認される。
【0050】
図12は、125 mg/kgのA. paniculataを42日間経口投与したラット(HB)の精細管中の精母細胞の退縮3を示す。第二精母細胞および精子細胞の未熟な状態での分離と分断(shedding)が観察される。また、成熟精子細胞も、精細管の管腔4内で減少している。
【0051】
図13中の組織構造は、最初にA. paniculataの抽出物を125 mg/kgの量で42日間経口投与し、続いて、更に42日間25.51 mg/kgの E. longifoliaのフラクション(E)で処置したラットの精巣を示している。図12で示された精巣に対するA. paniculataの負の影響は、E. longifoliaを用いた処置により覆された。この精巣は、コントロールラットのものに近似する組織構造を示した。
【0052】
(v)オスの生殖試験
E. longifoliaのフラクションで処置したオスラット(E)は54.17%の交尾指数を示し、コントロール(C)の37.50%およびA. paniculata抽出物を与えたグループ(HB)の31.82%と比べて最も高い値であった(表2)。コントロールおよび処置グループにて、偽妊娠(メスラット体内で、受胎が起きないまま、妊娠兆候を伴って月経が止まる状態として定義される)が観察された。コントロールグループでは52匹の子供が生まれた。グループE(n=40)およびHB(n=26)の全ての子供は、出産後に生存していた。グループEの子供は、授乳期間の初期において、コントロールの子供よりも有意に体重が重かった。更に、E. longifoliaのフラクションで処置したラット(E)は、授乳期間および離乳期間を通じて、より活動的であった。コントロールの子供の性別の比率(24匹のオス:27匹のメス)およびHBグループの子供の性別の比率(12匹のオス:14匹のメス)と比較した場合に、E. longifoliaのフラクションで処置したグループ(E)では、約26匹のオスおよび14匹のメスの子供が誕生したことは興味深いことである。
【0053】
表2
25.51 mg/kgのE. longifoliaフラクション(E);125 mg/kgのA. paniculataの抽出物(HB)、およびコントロール(C)の、42日間の経口投与後のオスラットの生殖能に対する効果。
【0054】
【表2】
【0055】
数値は、胎児の体重の平均値±標準偏差で表されている。
* コントロールとの比較で、P<0.05で有意差を有する。
** コントロールとの比較で、P<0.01で有意差を有する。
*** コントロールとの比較で、P<0.001で有意差を有する。
【0056】
42時間のE. longifoliaフラクションの退薬の後には、動物(WE)は、処置下にあった動物(E)(表2)と比べて、僅かに高い交尾率(50.00%)およびオス生殖率(83.33%)を示した(表3)。コントロールおよび処置グループにおいて、メスラットの偽妊娠も観察された。HB+Eで処置した動物の子供の生後21日目の体重は、コントロールの子供の体重と比べて有意に低いものであった(P<0.05)。WEの子供の性別比(14匹のオス:13匹のメス)は、Eの子供の性別比(26匹のオス:14匹のメス、表2)と有意に異なっていた(P<0.05)。A. paniculata抽出物による処置を42日間中止していたにもかかわらず、WHBの動物では出産が認められなかった。グループWHBの動物のオス生殖率は、表2のHBの63.63%と比べて、40.00%に低下していた(表3)。
【0057】
表3
更なる42日間に渡る、A. paniculate抽出物による処置の中止(WHB);E. longifoliaフラクションによる処置の中止(WE)、ならびにA. paniculata抽出物(125 mg/kg)およびE. longifoliaフラクション(25.51 mg/kg)による処置の継続(HB+E)の後のオスの生殖能に対する効果。
【0058】
【表3】
【0059】
数値は、胎児の体重の平均値±標準偏差で表されている。
* コントロールとの比較で、P<0.05で有意差を有する。
** コントロールとの比較で、P<0.01で有意差を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物であって、前記抽出物の重量パーセントが5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む、組成物。
【請求項2】
前記極性有機抽出物が、精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物であって、前記フラクションが、前記極性有機抽出物の10%〜25%重量パーセントであり、かつ前記フラクションが:
ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;および
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、ならびにその別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む、組成物。
【請求項4】
前記フラクションが、精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Eurycoma longifoliaから生物活性成分を単離する方法であって、
(i)Eurycoma longifolia植物材料から極性有機抽出物を調製する工程;
(ii)前記極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に通して分画し、水、水と有機溶媒との混合溶液、および有機溶媒を順に用いて溶離することで、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを得る工程;および
(iii)分配法、クロマトグラフィー法および再結晶化法により、生物活性成分を単離して精製する工程、
を含む、前記単離する方法。
【請求項6】
前記工程(i)により得られる前記極性有機抽出物の重量パーセントが、5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、ならびにその配糖体、類似体および誘導体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(ii)により得られる前記極性有機抽出物のフラクションが、10%〜25%の重量パーセントであり、かつ前記フラクションが:
ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;および
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、ならびにその別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記生物活性が、精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(i)が、粉砕されたEurycoma longifoliaの根、樹脂又は茎に対して、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液を用いた抽出を行なうことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(ii)の前記吸着樹脂が充填されたクロマトグラフィー用カラムが、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、低級アルコール又は極性有機溶媒である、請求項5又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記低級アルコール又は前記極性有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療用医薬の製造における、請求項1〜2に記載のEurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物の使用。
【請求項14】
ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療用医薬の製造における、請求項3〜4に記載のEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物の使用。
【請求項15】
医薬的に許容可能な担体と共に、ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の請求項1〜2に記載の組成物を有効成分として含む、医薬製剤。
【請求項16】
医薬的に許容可能な担体と共に、ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の請求項3〜4に記載の組成物を有効成分として含む、医薬製剤。
【請求項1】
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物であって、前記抽出物の重量パーセントが5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、それらの配糖体、類似体および誘導体を含む、組成物。
【請求項2】
前記極性有機抽出物が、精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物であって、前記フラクションが、前記極性有機抽出物の10%〜25%重量パーセントであり、かつ前記フラクションが:
ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;および
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、ならびにその別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む、組成物。
【請求項4】
前記フラクションが、精子数を増加させ、精子の運動性を上昇させ、かつテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させる生物活性を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
Eurycoma longifoliaから生物活性成分を単離する方法であって、
(i)Eurycoma longifolia植物材料から極性有機抽出物を調製する工程;
(ii)前記極性有機抽出物を、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂に通して分画し、水、水と有機溶媒との混合溶液、および有機溶媒を順に用いて溶離することで、Eurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを得る工程;および
(iii)分配法、クロマトグラフィー法および再結晶化法により、生物活性成分を単離して精製する工程、
を含む、前記単離する方法。
【請求項6】
前記工程(i)により得られる前記極性有機抽出物の重量パーセントが、5%以下であり、かつクアシノイド類、クマリン類、ならびにその配糖体、類似体および誘導体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(ii)により得られる前記極性有機抽出物のフラクションが、10%〜25%の重量パーセントであり、かつ前記フラクションが:
ユーリコマノン、13α,21-ジヒドロユーリコマノン、13(21)-エポキシユーリコマノン、ユーリコマノールおよびその配糖体、ユーリコマオシドおよびそのアグリコン、ならびにこれら全ての類似体および誘導体を含むクアシノイド類;および
6-メトキシクマリン-7-O-α-D-グリコピラノシド、ならびにその別の配糖体、類似体および誘導体を含むクマリン類、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記生物活性が、精子数を増加させること、精子の運動性を上昇させること、ならびにテストステロンの合成および細胞からの放出を増加させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(i)が、粉砕されたEurycoma longifoliaの根、樹脂又は茎に対して、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液を用いた抽出を行なうことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(ii)の前記吸着樹脂が充填されたクロマトグラフィー用カラムが、スチレン-ジビニルベンゼン合成樹脂又はデキストラン合成樹脂である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、低級アルコール又は極性有機溶媒である、請求項5又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記低級アルコール又は前記極性有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療用医薬の製造における、請求項1〜2に記載のEurycoma longifoliaの極性有機抽出物を含む組成物の使用。
【請求項14】
ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療用医薬の製造における、請求項3〜4に記載のEurycoma longifoliaの極性有機抽出物のフラクションを含む組成物の使用。
【請求項15】
医薬的に許容可能な担体と共に、ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の請求項1〜2に記載の組成物を有効成分として含む、医薬製剤。
【請求項16】
医薬的に許容可能な担体と共に、ヒト又は動物の性機能障害又は男性不妊症の治療に有効な治療量の請求項3〜4に記載の組成物を有効成分として含む、医薬製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−500342(P2010−500342A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523734(P2009−523734)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/MY2007/000054
【国際公開番号】WO2008/018785
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(509039253)ユニバーシティ セインズ マレーシア (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/MY2007/000054
【国際公開番号】WO2008/018785
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(509039253)ユニバーシティ セインズ マレーシア (1)
【Fターム(参考)】
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