説明

FGF2結合性ペプチドおよびそれらの使用

PTX3のN末端領域から始まり、特に、PTX3(82-110)領域にまたがって設計された、FGF2結合性ペプチドをここに記載する。この配列に関連する合成ペプチドは、イン・ビトロおよびイン・ビボにおいて、FGF2に結合し、自然免疫に対して予測される影響を及ぼさずに、FGF2の血管新生促進活性を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イン・ビトロおよびイン・ビボにおいて、FGF2に結合し、自然免疫に対して予測される影響を及ぼさずに、FGF2の血管新生促進活性を抑制することができる、線維芽細胞増殖因子-2(FGF2)結合性ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
ペントラキシン(Pentraxin)類は五量体構造を特徴とするタンパク質のスーパーファミリーである1。古典的な短いペントラキシン類であるC反応性タンパク質(CRP)および血清アミロイドP成分(SAP)は、それぞれヒトおよびマウスにおいて炎症性メディエーターに反応し肝臓にて産生される急性期タンパク質である2,3。ペントラキシンは様々なリガンドに結合し、微生物への自然耐性および細胞壊死組織片および細胞外マトリックス成分の除去に関与する1,4−6
【0003】
長いペントラキシン類は、ペントラキシン様C末端ドメインに結合した無関係のN末端ドメインを特徴とする7。原型の長いペントラキシンPTX3 8,9は45 kDのグリコシル化タンパク質であり、主に、集合して10-20 merの多量体を構成する10。PTX3は、炎症シグナルに反応して様々な細胞種、特に単核食細胞、樹状細胞および内皮細胞により局所的に産生され放出される11。ptx3−/−マウスの研究により、この分子は、イン・ビボにおいて、ヒアルロン酸リッチな細胞外マトリックスの構築から、メスの繁殖性および多様な微生物に対する自然免疫に至るまで、複雑な非重複性の機能を果たすことが示されている12,13。このことには、成分C1q、細胞外マトリックスタンパク質TSG6および選択微生物に対して高親和性にて結合し、成分の活性化を賦活し、マクロファージおよび樹状細胞による病原体の認識を促進する、PTX3の能力が、少なくとも部分的に関係している1,14。このように、PTX3は、様々な病態生理学的な症状において固有の非重複性機能を有する、可溶性パターン認識受容体である1,14
【0004】
線維芽細胞増殖因子-2(FGF2)は、チロシンキナーゼレセプター(FGFR)と高親和性にて相互作用することにより、培養内皮細胞において細胞増殖、走化作用およびプロテアーゼ産生を誘導する、ヘパリン結合性増殖因子である15。FGF2は、イン・ビボにおいて血管新生を誘導し、創傷の治癒、炎症、アテロ−ム性動脈硬化症および腫瘍成長過程において新血管新生を調節する16。細胞外環境において、いくつかの分子がFGF2を捕捉すると、これによりFGF2と内皮細胞FGFRとの相互作用が妨げられ、血管新生活性が抑制される(16に概説されている)。これらの阻害物質の多くは、局所的におよび/または全身的に産生/放出され、血管新生過程の複雑な調整の基礎をなしている。
【0005】
長いPTX3はFGF2と高親和性にて特異的に結合する。従って、長いPTX3は、イン・ビトロにおいてFGF2依存性の内皮細胞増殖を、イン・ビボにおいて血管新生を抑制する17。また、完全PTX3は、FGF2依存性の平滑筋細胞活性化および動脈損傷後の内膜肥厚を抑制する18。このように、PTX3は、これら2つのタンパク質の同時発現を特徴とする、炎症、創傷治癒、アテロ−ム性動脈硬化症および腫瘍などの様々な病理学的状況において、FGF2活性の調節に強力に貢献し得る。しかしながら、かかる高分子の利用が難しく、また、このタンパク質が他の活性を有するために、このタンパク質による治療報告はない。実際としては、PTX3は、C末端ペントラキシンドメインを介してC1qと結合する10
【0006】
現在、PTX3のN末端に基づく生物学的機能はないとされている。このことに基づいて、発明者らはPTX3のN末端のFGF2と相互作用する能力を調べた。
【発明の開示】
【0007】
発明の説明
レトロウイルスにより形質導入した、PTX3のN末端フラグメント(1-178)を過剰発現する内皮細胞は、FGF2に反応して、減少した分裂促進活性を示すことが見出された。精製組換えPTX3(1-178)はFGF2に結合し、PTX3/FGF2相互作用を妨げる。また、PTX3(87-99)エピトープを認識するモノクローナル抗体mAb-MNB4は、FGF2/PTX3相互作用を妨げ、PTX3のFGF2アンタゴニスト活性を消失させる。驚くべきことに、発明者らは、非常に短いペプチドも同様の活性を保持し、治療薬として有用であることを見出した。合成ペプチドPTX3(82-110)、PTX3(97-110)、PTX3(97-107)およびPTX3(100-104)も一貫してFGF2に結合し、BIAcoreセンサーチップに固定化した完全長PTX3とFGF2との相互作用、FGF2依存性の内皮細胞増殖およびイン・ビボ血管新生を抑制する。従って、これらのデータから、PTX3のPTX3(97-110)領域にまたがるN末端伸長部に、非常に短いFGF2結合ドメインを同定することができる。この配列に関連する合成ペプチドは、イン・ビトロおよびイン・ビボにおいて、FGF2に結合し、自然免疫に対して予測される影響を及ぼさずに血管新生促進活性を抑制することができる。
【0008】
従って、本発明の主要対象は、式IのFGF2結合性ペプチド、それらの機能性誘導体、前駆体または医薬上許容される塩である:
R1-Ala-X1-Pro-X2-Ala-R2
(I)
[式中、
X1はArgおよびLysから選択されるアミノ酸であり;
X2はCysおよびThrから選択されるアミノ酸であり;
R1は存在しないか、または配列番号1および配列番号3から選択されるアミノ酸配列からなり;
R2は存在しないか、または配列番号2および配列番号4から選択されるアミノ酸配列からなり、
ただし、R1が存在しない場合、R2も存在せず;R1が配列番号1のアミノ酸配列である場合、R2は配列番号2のアミノ酸配列であり;R1が配列番号3のアミノ酸配列である場合、R2は配列番号2および配列番号4から選択されるアミノ酸配列である]。
【0009】
好ましくは、X1はArgである。より好ましくは、X2はCysである。さらにより好ましくは、本ペプチドは配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号10から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0010】
本発明のさらなる対象は、式Iのペプチドまたはその機能性誘導体を含むコンジュゲートキメラペプチドである。
【0011】
「ペプチド」なる用語は通常、4から100またはそれ以上の連続アミノ酸、たいていは5から20の連続アミノ酸を含有するポリペプチド鎖に適用する。
【0012】
「機能性」なる用語は、FGF2の生物学的活性を顕著に減少させることができるFGF2結合特性を示すペプチドの意味を表す。FGF2の生物学的活性には、分裂促進および血管新生作用が含まれる。特に、本発明のペプチドは、FGF2誘導性の内皮細胞または平滑筋細胞の増殖を抑制することができる。
【0013】
「前駆体」は、細胞または身体への投与前または投与後に、代謝的および酵素学的過程により、本発明の化合物へ変換することができる化合物である。
【0014】
本明細書において「塩」なる用語は、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはそれらの類似体の、カルボキシル基の両方の塩、およびアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、当分野において既知の方法により形成することができ、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、三価鉄または亜鉛の塩など、および有機塩基との塩、例えばトリエタノールアミンのようなアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカインなどと形成される塩を含む。酸付加塩には、例えば、鉱酸、例えば塩酸または硫酸などとの塩、および有機酸、例えば酢酸またはシュウ酸などとの塩が含まれる。このような塩はいずれも、本発明のペプチドおよびポリペプチドまたはそれらの類似体と実質的に同様の活性を有するべきである。
【0015】
本明細書において用いる場合「誘導体」なる用語は、既知の方法により、アミノ酸部分の側鎖またはNもしくはC末端基上に存在する官能基から調製することができる誘導体を意味する。このような誘導体には、例えば、カルボキシル基のエステルまたは脂肪族アミド、および、遊離のアミノ基のN-アシル誘導体または遊離のヒドロキシル基のO-アシル誘導体などがあり、アシル基、例えばアルカノイル基またはアロイル基などと形成される。
【0016】
本発明には、すでに公開されているペプチドのペプチド模倣体も含まれ、模倣体においては、ペプチドの性質が、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティーおよび/またはペプチド基本骨格のレベルで化学的に修飾されている。これらの改変は、同様(改善していない場合)の治療的、診断的および/または薬物動力学的特性を有する、FGF2結合剤を提供することを意図している。
【0017】
例えば、対象へ注射した後に、ペプチドがペプチダーゼによって切断されやすい場合、特定の感受性ペプチド結合を切断が不可能なペプチド模倣体に置換することにより、ペプチドはより安定となり、従って治療薬としてより機能的になる。同様に、L-アミノ酸残基の置換は、タンパク質分解に対するペプチドの感受性を減少させ、最終的にペプチド以外の有機化合物と同様の感受性にまで近づける標準的な方法である。アミノ末端封鎖基、例えばt-ブチルオキシカルボニル、アセチル、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル(azelayl)、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリルおよび2,4,-ジニトロフェニルなども有用である。増大した効力、延長された活性、精製容易性および/または増大した半減期をもたらす他の多くの修飾が当分野において知られている。
【0018】
本発明のペプチドの特性は、変異ペプチドにおいても、維持するまたはさらに増強することができる。変異ペプチドは、1以上のアミノ酸残基が保存的に置換されており、かつ、当分野において既知の方法または下記の実施例に記載の方法によって測定した場合に、同等またはさらに高いレベルの本発明を特徴付ける同じ生物学的活性を示すアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明によると、変異ペプチドの好ましい変化は、「保存的(conservative)」または「安全(safe)」置換として一般に知られるものである。保存的アミノ酸置換とは、分子の構造および生物学的機能を保存するために、十分に類似する化学特性を有するアミノ酸と置換することである。文献には、天然タンパク質の配列および/または構造についての統計学的および物理化学的研究に基づき、保存的アミノ酸置換の選択を行うことができる多くのモデルが記載されている。
【0020】
変異ペプチドは、従来のコードDNAの部位特異的変異誘発技術、コードDNA配列またはアミノ酸レベルにおけるコンビナトリアル技術(DNAシャフリング、ファージディスプレイ/選択など)、コンピュータ支援の設計研究、または好適な他の既知技術により得ることができ、これにより、従来技術における教示および本特許出願の実施例を用いて当業者がルーチン的に入手でき、試験することができる、有限セットの実質的に対応する変異ペプチドが得られる。
【0021】
本発明の別の対象は、式(I)のペプチドまたはその機能性誘導体を含む融合キメラペプチドである。融合および/またはキメラペプチドであるFGF2結合性ペプチドは、式(I)のペプチドのアミノ酸配列または上記に規定のそれらのいずれかの変異体/誘導体、およびFGF2結合活性を著しく損なうことなくさらなる特性が得られるPTX3以外のタンパク質配列に属するアミノ酸配列を含む。
【0022】
融合および/またはキメラタンパク質に含ませることができるさらなるタンパク質配列は、膜結合配列、膜結合タンパク質の細胞外領域、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド含有タンパク質、移行シグナル含有タンパク質から選択することができる。
【0023】
融合および/またはキメラポリペプチドまたはペプチドが示すさらなる特性は、精製がより容易になること、より長く持続する体液中半減期または細胞外局在性である。この後者の特性は、これらのペプチドの単離および精製が容易になる場所というだけでなく、PTX3とFGF2が自然に相互作用する場所に、本発明のペプチドを局在化させることができるので、上記の定義に含まれる融合またはキメラタンパク質の具体的なグループを規定する上で特に重要である。
【0024】
FGF2結合性ペプチドに融合させるべき1以上の配列の選択は、そのペプチドの具体的用途に依拠する。
【0025】
一般的手法として、一般的な遺伝子工学技術、およびエピソームまたは非/相同的組み込みベクターを用いる原核または真核宿主細胞の修飾に用いるウイルスまたはプラスミド起源の複製可能ベクターにおけるクローニング、ならびに形質転換、感染またはトランスフェクションに基づく技術を用いて、融合タンパク質をコードする核酸セグメントを創出することにより融合タンパク質を作製することができる。これらのベクターは、原核または真核宿主細胞において、FGF2結合剤を含む融合タンパク質を、そのベクターの転写開始/終止調節配列の制御下において発現することが可能でなければならず、その細胞において構造的に活性であるまたは誘導可能であることを基準に選択する。次に、安定な細胞株を得るために、細胞株を単離することができる。特に、本発明のFGF2結合剤を発現するよう修飾された細胞を直接用いるまたは投与する場合、好ましい細胞はPTX3を正常に発現するヒト細胞である。細胞外配列、移行シグナルまたはシグナルペプチド含有タンパク質の場合のように、さらなるタンパク質配列により、FGF2結合ドメインを細胞外領域に分泌させることができる場合は、後の工程において、より簡単にその薬剤を培養細胞から収集、精製することができ、あるいは、その細胞を直接用いるまたは投与することもできる。
【0026】
膜結合タンパク質配列の場合のように、さらなるタンパク質配列により、細胞表面上にFGF2結合剤が固定される場合、後の工程において、その薬剤を培養細胞から収集および精製するのは難しくなり得るが、細胞を直接用いるまたは投与することができ、それにより天然PTX3の形態に対応する形態の薬剤が、おそらくその特性が改善されて提供される可能性がある。
【0027】
本発明のFGF2結合性ペプチドは、本発明のペプチドまたは上記に規定の対応する活性変異体の構造および/または配列を利用したコンピュータ支援の薬物設計法によっても、同定することができる。本発明のペプチドは、コンピュータによるモデル化技術を用いて、PTX3とFGF2間のより有効性の高い相互作用を研究するのに用いることもできる。そのようなコンピュータ支援の分析を利用して、合成有機分子もしくはペプチド(例えば4-20アミノ酸長)の形態の、改善されたペプチドもしくは非ペプチド模倣薬を開発することができる。これらの化合物がスクリーニングされ、FGF2への結合能が確認されれば、細胞または動物モデルを用いて、それらの使用を評価することができる。
【0028】
本発明のポリペプチドは、細胞毒性物質、標識(例えばビオチン、蛍光標識)、薬物または他の治療剤から選択され得る異種部分と、直接的に、またはカップリング剤もしくはリンカーの使用を介して、共有結合もしくは非共有結合した、活性なコンジュゲートまたは複合体形態であり得る。有用なコンジュゲートまたは複合体は、当分野において既知の分子および方法(放射性または蛍光標識、ビオチン、細胞毒性物質、薬物または他の治療剤)を用いて創出することができる。細胞毒性物質には、化学療法剤、毒素(例えば、酵素学的に活性な細菌、真菌、植物もしくは動物起源の毒素、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位体(つまり放射性コンジュゲート)が含まれる。利用可能な酵素学的に活性な毒素およびそれらのフラグメントには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害物質、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害物質、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテセン(tricothecene)類などがある。様々な放射性核種が放射性コンジュゲートタンパク質の産生に利用可能である。その例には212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reなどがある。
【0029】
薬物輸送効率の観点において本薬剤を改善するために、有用なコンジュゲートまたは複合体を創出することもできる。この目的においては、本発明のペプチドは、ポリエチレングリコールおよび他の天然または合成ポリマーのような分子との活性コンジュゲートまたは複合体の形態であり得る(Harris JM and Chess RB, Nat Rev Drug Discov.(2003), 2(3):214-21; Greenwald RB et al., Adv Drug Deliv Rev.(2003), 55(2):217-50; Pillai O and Panchagnula R, Curr Opin Chem Biol.(2001), 5(4):447-51)。その際、本発明は、本明細書に記載の化学的に修飾されたペプチドも考慮に入れており、ここでそのペプチドはポリマーと連結している。典型的には、このポリマーは、本コンジュゲートが水性環境、例えば生理学的環境において沈殿しないように、水溶性である。治療に用いる本コンジュゲートは、医薬上許容される水溶性ポリマー部分を含み得る。適切な水溶性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-PEG、モノ-(Cl-C10)アルコキシ-PEG、アリールオキシ- PEG、ポリ-(N-ビニルピロリドン)PEG、トレシル(tresyl)モノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、炭酸ビス-スクシンイミジルPEG、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセリン)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロースまたは他の炭水化物ベースのポリマーなどがある。適切なPEGは、約600から約60,000の分子量、例えば5,000、12,000、20,000および25,000などの分子量を有し得る。コンジュゲートには、このような水溶性ポリマーの混合物も含まれ得る。
【0030】
コンジュゲートは、例えば、本発明のペプチドおよびそのポリペプチド部分のN末端に結合したポリアルキルオキシド部分を含む。PEGは適切なポリアルキルオキシドの1つである。例として、本発明のペプチドはPEGにより修飾することができ、これは 「ペグ化」として知られる工程である。ペグ化は、当分野において既知のいずれかのペグ化反応により行うことができる。例えば、ペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。別の方法においては、PEGの末端ヒドロキシ基またはアミノ基が活性化リンカーに置換されている、活性化PEGを縮合させることにより、コンジュゲートを形成する。
【0031】
本発明の別の対象は、本発明のFGF2結合性ペプチドをコードする核酸、前記核酸とハイブリダイズする核酸、その縮重配列を有する核酸に代表される。
【0032】
本発明はまた、本発明の核酸を発現することができるウイルスまたはプラスミド起源の発現ベクター、およびそのようなベクターにより形質転換された原核または真核宿主細胞、およびそれらに由来する、FGF2結合剤を発現し、分泌するまたは膜表面に発現することができる安定な細胞株を含む。その例にはヒトB細胞がある。
【0033】
本発明のFGF2結合性ペプチドは、上記の宿主細胞を適切な培養培地において培養し、FGF2結合剤を回収する方法により、産生することができる。
【0034】
本発明のペプチドをコードするDNA配列を、適切なベクターへ挿入し、ライゲートすることができる。発現ベクターが形成できれば、適切な宿主細胞に導入すると、そこでペプチドが発現される。
【0035】
本明細書に記載のいずれかの本発明の組換えペプチドの発現は、真核生物細胞(例えば酵母、昆虫または哺乳類細胞)または原核細胞において、適切な発現ベクターを用いて、達成することができる。当分野において既知のいずれかの方法を用いることができる。
【0036】
目的のタンパク質を発現させるために、発現ベクターには、転写および翻訳調節情報を含有する特定ヌクレオチド配列も、目的のタンパク質をコードするDNAに遺伝子発現およびタンパク質産生が起こるように連結して含めるべきである。まず、遺伝子が転写されるには、RNAポリメラーゼにより認識可能であり、このポリメラーゼが結合し、そうして転写工程が開始する、プロモーターが先行しなければならない。
【0037】
そのようなプロモーターには使用するにあたり様々なものがあり、それぞれ様々な効率で働く(強い、および弱いプロモーター)。
【0038】
真核生物宿主については、その宿主の性質に応じて、様々な転写および翻訳調節配列を採用することができる。それらの調節配列は、調節シグナルが、高レベルで発現する特定遺伝子と連結している、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルスなどのようなウイルス起源に由来するものであり得る。例としては、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどがある。抑制および活性化が可能な転写開始調節シグナルを選択し、遺伝子の発現が調節できるようにしてもよい。
【0039】
本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子を以下のようなベクターに挿入する:その分子と作動可能に連結させる転写および翻訳調節シグナルを有し、その目的遺伝子配列を宿主細胞へ導入することができるベクター。
【0040】
発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーを共に導入しておくと、導入DNAによって安定に形質転換されている細胞を選択することができる。マーカーは、栄養要求性の宿主に光合成栄養能を与えるものや、例えば抗生物質または銅のような重金属といった殺生物剤への耐性を与えるものなどがあり得る。選択可能マーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列に直接連結させるか、または共トランスフェクションにより同じ細胞に導入することができる。
【0041】
本発明のタンパク質を最適に産生するために、特に、プラスミドまたはウイルスベクターを含有する特定細胞を選択するために、さらなるベクター要素が有用であり得る:ベクターを含有しないレピシエント細胞の中からベクターを含有するレピシエント細胞を認識し選択することの容易性;特定宿主において望ましいベクターコピー数;および、ベクターを異なる種の宿主細胞間で「行き来(shuttle)」させられることが望ましいかどうか。
【0042】
コンストラクトを含有するベクターまたはDNA配列が発現のために調製できれば、以下のような様々な適切な方法のいずれかにより適切な宿主細胞へDNAコンストラクトを導入することができる:形質転換、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム−沈殿、直接微量注入など。
【0043】
宿主細胞は原核生物または真核生物であり得る。好ましくは真核生物宿主、例えば哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウス、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。なぜなら、真核生物では、タンパク質分子に、正確な折り畳みまたは正確な部位のグリコシル化などの翻訳後修飾がなされるからである。また、酵母細胞も、グリコシル化などの翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母において目的のタンパク質の産生に利用することができる強いプロモーター配列および多コピー数のプラスミドを利用する、多数の組換えDNA法が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物上のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0044】
ベクターの導入後、ベクター含有細胞の成長に選択が起こる選択培地において、宿主細胞を成長させる。クローニングした遺伝子配列が発現されると、目的タンパク質の産生が起こる。
【0045】
多くの総説や書籍において、ベクターおよび原核または真核宿主細胞を用いてクローニングし、組換えタンパク質を産生する方法について教示されている。例えば、Oxford University Pressが出版している「A Practical Approach」シリーズのいくつかの見出し(「DNA Cloning 2:Expression Systems」、1995;「DNA Cloning 4:Mammalian Systems」、1996;「Protein Expression」、1999;「Protein Purification Techniques」、2001)など。
【0046】
本発明のFGF2結合剤がペプチドまたはペプチド模倣体の形態である場合に、その結合剤の産生においてより望ましい化学合成技術の例に、固相合成および液相合成がある。固相合成においては、例えば、合成すべきペプチドのC末端に相当するアミノ酸を、有機溶媒に不溶性の担体に結合させ、アミノ基および側鎖官能基が適切な保護基により保護されたアミノ酸をC末端からN末端へ順々に縮合させる反応、および樹脂に結合したアミノ酸またはペプチドのアミノ基の保護基を除去する反応を、交互に反復させることによって、ペプチド鎖が伸長される。
【0047】
固相合成法は、用いる保護基の種類に応じて、tBoc法およびFmoc法に大まかに分類される。典型的に用いられる保護基には、アミノ基については、tBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl-Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br-Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)およびCl2-Bzl(2,6-ジクロロベンジル);グアニジノ基についてはN02(ニトロ)およびPmc(2,2, 5,7, 8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル);ヒドロキシル基についてはtBu(t-ブチル)などがある。目的のペプチドを合成した後、そのペプチドを脱保護反応にかけ、固体担体から切り離す。このようなペプチド切断反応は、Boc法においてはフッ化水素またはトリ-フルオロメタンスルホン酸によって、Fmoc法においてはTFAによって行うことができる。
【0048】
最後に、組換えDNAまたは化学合成技術により得られたFGF2結合剤を、1以上の精製工程にかける。精製は、精製のための既知のいずれかの方法、つまり、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動などに関するいずれかの従来法により行うことができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いることができる。溶出は、タンパク質精製に一般に用いられる水-アセトニトリルベースの溶媒を用いて行うことができる。本発明は、本発明のFGF2結合剤の精製調製物を含む。本明細書において用いる場合、精製調製物とは、本発明の化合物の乾燥重量で、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%重量の調製物を意味する。
【0049】
上記の本発明の化合物(タンパク質、ペプチド、有機化合物)は医薬として用いることができる。好ましくは、血管新生異常により引き起こされた疾患に対する抗疾患薬として用いることができる。より好ましくは、その血管新生異常は、増殖因子FGF2の活性変化により誘発されたものである。さらにより好ましくは、その疾患は、関節炎疾患、腫瘍転移、糖尿病性網膜症、乾癬、慢性の炎症、動脈硬化症および腫瘍からなる群から選択される。好ましくは、腫瘍は、肉腫、癌腫、カルチノイド、骨腫瘍および神経内分泌腫瘍からなる群より選択される。
【0050】
上記の本発明の化合物(タンパク質、ペプチド、有機化合物)は、FGF2依存性の線維芽細胞または平滑筋細胞の無制御増殖、線維芽細胞の過剰応答に関係する瘢痕形成、および血管形成後の再狭窄と関連する疾患に対する抗疾患薬として用いることができる。
【0051】
実際的には、本発明のFGF2結合性ペプチドは、ひとたびFGF2と結合すると、FGF2阻害物質として作用する。本ペプチドは実際に、内皮細胞または平滑筋細胞のFGF2誘導性の増殖を抑制することができる。従って、そのような分子の治療可能性は、FGF2の阻害が有益である疾患の予防および/または治療である。この後者の効果はFGF2を発現する細胞集団を減少させるために用いることもできる。
【0052】
本発明のFGF2結合性ペプチドは、血管新生異常がFGF2の活性変化により誘発される、血管新生異常による疾患の予防および/または治療のための医薬組成物における活性成分として用いることができる。疾患の例は、関節炎疾患、腫瘍転移、糖尿病性網膜症、乾癬、慢性の炎症、動脈硬化症または腫瘍であり、ここで腫瘍は例えば肉腫、癌腫、カルチノイド、骨腫瘍または神経内分泌腫瘍である。
【0053】
本発明のFGF2結合剤はまた、FGF2依存性の線維芽細胞または平滑筋細胞の無制御増殖、例えば線維芽細胞の過剰応答に関係する瘢痕形成、および血管形成後の再狭窄と関連する疾患の予防および/または治療のための医薬組成物における活性成分として用いることができる。
【0054】
本発明はまた、治療上有効量の式Iのペプチドまたはその機能性誘導体、および適切な希釈剤および/または賦形剤および/またはアジュバントを含む医薬組成物を提供する。上述の疾患の予防および/または治療のための医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は医薬上許容される担体、賦形剤、安定剤または希釈剤と組み合わせて製剤化することができる。本発明の薬剤の特性によっては、本医薬組成物は、自己免疫疾患、炎症または感染のようなCD4+T細胞と関係する疾患に有用であり得る。
【0055】
本発明のFGF2結合性ペプチドを含む医薬組成物は、治療上有効量、つまり、処置動物において医学的に望ましい成果を達成するのに効果的な量の本化合物を含有するあらゆる組成物を含む。医薬組成物は、適切な医薬上許容される担体、動物への投与に適する生物学的に適合性の媒体(例えば、生理食塩水)を含有してもよく、最終的に、活性化合物を医薬に用いることができる調製物へと加工することを容易にする補助剤(賦形剤、安定剤または希釈剤のような)を含んでもよい。
【0056】
医薬組成物は、投与様式の必要性に合致するいずれかの許容される状態に製剤化してもよい。薬物輸送のためにバイオマテリアルおよび他のポリマーを使用すること、ならびに各種技術、および具体的投与様式を検証するためのモデルを使用することが、文献に開示されている。血液−脳関門の透過を改善するために本発明の化合物を修飾することも、有用であり得る。
【0057】
許容される投与様式はいずれも用いることができ、当業者により決定することができる。例えば、投与は、様々な非経口ルート、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、経口、または頬側ルートにより行われ得る。非経口投与は、ボーラス注入または時間をかけた漸進的灌流によるものであり得る。非経口投与のための調製物には、滅菌した水性または非水性溶液剤、懸濁剤および乳剤などがあり、これらは当分野において既知の補助剤または賦形剤を含有してもよく、日常的方法に従って調製することができる。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適切な注射用油性懸濁剤として投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、油脂、例えばゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどがある。
【0058】
注射用水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有してもよく、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランなどがある。必要に応じて、懸濁液は安定剤を含有してもよい。医薬組成物は、注射による投与に適切な溶液を含み、約0.01から99パーセント、好ましくは約20から75パーセントの活性化合物を賦形剤とともに含む。直腸投与することができる組成物には坐剤などある。
【0059】
投与用量は、レピシエントの年齢、性別、健康状態および体重、併用する処置があるならばその種類、処置の頻度および望む効果の性質に依拠するであろうと解される。用量は、当業者が理解しているように個々の対象の目的に合わせて決定できるであろう。各処置に必要な総用量は、複数回投与または単回投与により投与され得る。本発明の医薬組成物は、単独で、またはその症状を対象とする、もしくはその症状の他の徴候を対象とする治療法と併せて投与してもよい。通常、活性成分の1日用量は、体重1キログラムに付き0.01から100ミリグラムからなる。
【0060】
本発明の化合物は、生理食塩水などの医薬上許容される担体に含めて患者に静脈投与してもよい。
【0061】
ペプチドの細胞内輸送のための標準的方法、例えばリポソームによる輸送を用いることができる。そのような方法は当業者によく知られている。本発明の製剤は、非経口投与、例えば静脈内、皮下、筋肉内および腹腔内投与に有用である。
【0062】
医学分野において周知のように、用量は、いずれの患者においても、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与する具体的化合物、性別、投与時間およびルート、一般的健康状態および同時的に投与する他の薬物などの多くの因子に依拠する。
【0063】
本明細書に引用している参考文献はすべて、あらゆるデータ、表、図および引用文献中に存在する文章を含め、参照により本明細書に完全に組み込まれる。さらに、本明細書に引用された参考文献内に引用されている文献の内容もすべて、参照により完全に組み込まれる。既知の方法の工程、従来法の工程、既知の方法または従来法についての参考文献は、本発明のいずれかの局面、記述または実施態様が従来の技術に開示され、教示され、または示唆されていることを承認するものでは決してない。
【0064】
本出願に開示の方法および生産物の特性を理解すれば、さらなる工程の必要性および種類は、従来技術、ならびに本発明の基本的な詳細およびいくつかの用途を記載した、限定を意図していない以下の図および実施例を見直すことにより容易に推測することができる。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
材料と方法
化学品
ヒト組換えFGF2(受入番号09038)およびPTX3(swiss-prot受入番号P26022)を、報告されているように、それぞれ大腸菌(E. coli)およびチャイニーズハムスター卵巣細胞において発現させ、精製した10,19。合成ヒトPTX3(31-60)、PTX3(57-85)およびPTX3(107-132)ペプチドはPrimm(Milan, Italy)より入手し、他のペプチドは全てTecnogen(Piana di Monteverna, Caserta, Italy)より入手した(HPLC純度95%以上)。全てのペプチドについて、表1に一文字コードによりアミノ酸配列を示しており、番号付けは、PTX3リーダー配列における1位のメチオニン残基から始めている。
【0066】
【表1】

【0067】
精製ヒトPTX3に対するラットモノクローナル抗体が先に報告されている10,20(MNB1カタログ番号ALX-804-463、MNB4カタログ番号ALX-804-464、Alexis Biochemicals)。
【0068】
細胞培養物
ウシ胎仔大動脈内皮GM7373細胞21を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するイーグルMEMにおいて成長させた。ヒト胚腎臓(EcoPack2-293)パッケージング細胞(Clontech, CA, USA)を、10%FCSを含有するDMEM(Life Technologies, Gaithersburg, MD)において成長させた。Balb/cネズミ大動脈内皮22106細胞(MAE細胞)はR. Auerbach氏(University of Wisconsin, Madison, WI)に提供頂き、10%FCSを加えたDMEMにおいて成長させた。
【0069】
レトロウイルス感染
ヒトPTX3および高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードするcDNAを、報告されているように準備した17。pLX-PTX3 17から、N末端フラグメントPTX3(1-178)(Nterm-PTX3)および分泌のためのリーダー配列PTX3(1-17)と融合したC末端フラグメントPTX3(179-381)(sCterm-PTX3)をコードするcDNAを、PCRおよび標準的クローニング技術により作製した。全てのcDNAはpBABEレトロウイルスベクターにおいてクローニングし、これによりpBABE-PTX3、pBABE-Nterm-PTX3、pBABE-sCterm-PTX3およびpBABE-EGFPが創出され、これらを用いてリポフェクタミン(Lipofectamin)の存在下においてEcoPack2-293パッケージング細胞をトランスフェクトした17。ピューロマイシン(puromycin)(1μg/ml, Sigma)を2週間用いて、形質導入された細胞を選択した。106 cfu/mLより高いウイルス力価を有するクローンをさらなる実験に用いた。次いで、コンフルエントなMAE細胞培養物を、pBABE-PTX3、pBABE-Nterm-PTX3、pBABE-sCterm-PTX3またはpBABE-EGFPパッケージング細胞からの条件培地とともに、ポリブレン(polybrene)(8μg/ml, Sigma)の存在下において、24時間インキュベートした。ピューロマイシンを7日間用いて感染した細胞集団を選択した。落射蛍光顕微鏡(Axiovert S100顕微鏡, x10/0.25; Zeiss, Goettingen, Germany)によるEGFP感染細胞の観察から、レトロウイルス感染効率は80%より高いことが示された。感染細胞による導入遺伝子のタンパク質発現および放出のレベルを評価するために、細胞培養物を無血清条件下において2日間成長させた。次いで、条件培地を回収し、遠心分離により清澄化し、Centricon YM-10フィルター(Millipore)を用いて10倍に濃縮し、100μlアリコートをウェスタンブロット分析により探索した。
【0070】
細胞増殖アッセイ
内皮細胞の細胞増殖アッセイを、報告されているように行った22。簡潔に説明すると、GM7373またはMAE細胞を、96ウェル皿に、それぞれ75,000細胞/cm2または25,000細胞/cm2の密度にて播種した。16時間後、0.4%FCSに加えFGF2(0.55 nM)を含有する新しい培地にて種々のアンタゴニストの存在下または非存在下において細胞をインキュベートした。それぞれ24または48時間後、細胞をトリプシン処理し、Burkerチャンバーにおいて計数した。
【0071】
組換え6xHisタグ化PTX3フラグメントの大腸菌発現および精製
pLX-PTX3から、Nterm-PTX3およびCterm-PTX3 cDNAを、さらなるヌクレオチドを含有するプライマーを用いたPCRにより増幅した。
PTX3-N:
(+)CACCGAGAACTCGGATGATTATGA 8(配列番号17);
(−)TTAACCTGCCGGCAGCCAGCTCC(配列番号18);
PTX3-C:
(+)CACCTGTGAAACAGCTATTTTA(配列番号19);
(−)TTATGAAACATACTGAGCTCC(配列番号20)。
【0072】
これらのcDNAをpENTR TOPOベクターへクローニングし(pENTR Directional TOPO クローニングキット, Invitrogen)、配列決定した。次いで、Gateway(c)技術(Invitrogen)を用いて、pENTR TOPOベクターからNterm-PTX3およびCterm-PTX3 cDNAをpDEST17ベクターへクローニングし、組換えタンパク質のC末端に6xHisタグが挿入されるようにした。次いで、大腸菌BL21-AI細胞(Invitrogen)を2つの組換えプラスミドにより形質転換し、100μg/mLアンピシリン(ampicillin)を含有するLB培地において37℃にて成長させた。0.2%L-アラビノースの存在下において30℃にて一晩インキュベーションして組換えタンパク質発現を誘導した。誘導後、細胞を結合バッファー(20 mMリン酸ナトリウム、0.5 M NaCl、10 mMイミダゾール、pH 7.4)に再懸濁し、超音波処理により溶解させた。清澄化した上清を0.45μmフィルターを通して濾過し、精製するためにニッケルを含む3.0 ml HiTrap固定化金属アフィニティーカラム(IMAC)(Amersham Biosciences)に流し込んだ。製造者の説明書に従って、カラムを100 mM イミダゾール/結合バッファーにより洗浄し、結合したタンパク質を300 mMイミダゾールにより溶出させた。画分を組換えタンパク質の存在についてイムノブロット法により探索し、陽性画分を回収し、PBS中においてゲル濾過クロマトグラフィー(Sephadex G25 column PD10, Amersham)により脱塩した。SDS-PAGE後にゲルを銀染色して評価したところ、組換えタンパク質の純度は90%より高かった(図2A、挿入図を参照のこと)。
【0073】
固相結合アッセイ
FGF2(270 nM)を含有する100 mM NaHCO3、pH 9.6(コーティングバッファー)が100μl/ウェル入ったELISAマイクロプレートを4℃にて16時間インキュベートした。次いで、5%粉乳を含むコーティングバッファーによりウェルを室温にて2時間かけてオーバーコートした。次に、FGF2被覆ウェル上において、完全長PTX3、組換えNterm-PTX3またはCterm-PTX3(全て44 nM)を含有するPBSの100μlアリコートを37℃にて30分間インキュベートした。次いで、ウェスタンブロット分析およびELISAにおいて両PTX3フラグメントを同様の効率で認識するウサギポリクローナル抗PTX3抗体(1:2000希釈)、抗ウサギビオチン化抗体(1:2000)によりウェルを37℃にて1時間連続的にインキュベートし、ストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ(1:5000, Amersham)100μlにより室温にて1時間インキュベートした。次いで、色素原基質 2,29-アジノビス(azinobis)(3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸)を100μl/ウェル量加えた。吸光度の値は、自動ELISA読み取り器において405 nmにおけるもの読み取った。いくつかの実験において、FGF2被覆ウェル上において、ビオチン標識化PTX3(bPTX3)(22 nM)を含有するPBSの100μlアリコートを競合者の存在下または非存在下にて37℃にて30分間インキュベートした。次いで、ウェルを洗浄し、結合bPTX3の量を、報告されているように評価した17。あるいは、上記のように、合成PTX3ペプチドをELISAマイクロプレートウェル上に固定化した(200μg/ウェル)。次いで、FGF2(80 nM)を加え、固定化ペプチドに結合したFGF2を、上記のように、ウサギポリクローナル抗FGF2抗体(1:7000)とともに37℃にて1時間インキュベートした後に免疫複合体検出して評価した。
【0074】
PTX3エピトープマッピング
モノクローナル抗PTX3抗体に結合するエピトープのアミノ酸配列を同定するために、128のペプチドを、SPOT合成技術によりセルロース膜上に配列した23。これらのペプチドは、13アミノ酸長であり、3アミノ酸分ずつフレームシフトさせた。2%乳を含むTween-TBS(MBS)中において4℃にて16時間、膜をブロックした。洗浄後、膜をモノクローナル抗体mAb MNB4またはmAb 16B5(両方ともMBS中1:1000希釈)とともに37℃にて90分間インキュベートし、次いで、ウサギアルカリフォスファターゼ-コンジュゲート抗ラットIgG(1:30,000, Sigma)のMBS溶液とともに37℃にて90分間インキュベートした。報告されているように呈色反応を現像し23、膜の濃度測定分析によりシグナル強度を評価した。
【0075】
BIAcore結合アッセイ
BIAcore X装置(BIAcore Inc, Piscataway, NJ)を用いた。表面プラズモン共鳴法を利用してBIAcoreセンサーチップに固定化されたPTX3へのFGF2の結合能により生じた屈折率の変化を測定した。この目的のために、0.2 M N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩および0.05 M N-ヒドロキシスクシンイミドの混合物50μlにより予め活性化させておいたCM4センサーチップのフローセルとPTX3(2.2μM)を反応させた。これらの実験条件では、約0.1 pmolに相当する5,000レゾナンスユニット(RU)のPTX3が固定化された。ゼラチンの固定化においても同様の結果が得られ、ここでは負の対照として、ブランクの控除のために用いた。次いで、段階的に増加させた濃度のFGF2を、合成PTX3ペプチドとともに、または単独で、PTX3表面上の希釈バッファー(0.005% surfactant P20、5.0μg/mL CaCl2およびMgCl2を含むPBS)に4分間注入し(固定化PTX3と結合させ)、次いで解離が観察されるまで洗浄した。
【0076】
ニワトリ胚絨毛尿膜(CAM)アッセイ
媒体または16pmolのFGF2を含有し、さらに合成PTX3ペプチドを含むまたは含まないアルギン酸ビーズ(5μl)を、報告されているように調製し24、受精した白色レグホン鶏卵のインキュベーションの11日目にCAM上に置いた(1実験群につき卵10個)。72時間後、移植部分に収束する血管を、実体顕微鏡下(STEMI-SR, x2/0.12; Zeiss)、2名の観察者により二重盲検様式にて計測した。
【0077】
結果
PTX3のN末端領域はFGF2に結合する
PTX3タンパク質は、古典的な短いペントラキシンであるCRPおよびSAPと相同性を有するC末端203アミノ酸ドメイン(Cterm-PTX3)、および他のいずれの既知タンパク質とも有意な相同性を何ら示さないN末端178アミノ酸伸長部(Nterm-PTX3)を特徴とする8。抗血管新生活性の確認を試みるにあたり、PTX3のFGF2結合ドメインである、2つのCtermまたはNterm-PTX3部分を、FGF2との相互作用能について評価した。
【0078】
先の報告の観察では、完全長PTX3の過剰発現により内皮細胞においてFGF2依存性の増殖が抑制され、これは放出されたPTX3が外来増殖因子と結合し、細胞外環境においてその因子が捕捉されることによることが示されている17。これに基づき、ヒト完全長PTX3、PTX3 N末端伸長部(Nterm-PTX3)または分泌のためのPTX3リーダー配列と融合したPTX3 C末端(sCterm-PTX3)を含むレトロウイルスを、ネズミ大動脈内皮(MAE)細胞に感染させた。対照細胞には、EGFPを含むレトロウイルスをネズミ大動脈内皮(MAE)細胞に感染させた。感染細胞は、同程度の量の対応タンパク質を過剰発現して放出し(図1A)、基本条件下において同程度の成長率を示した。しかしながら、完全長PTX3の過剰発現と同様に、Nterm-PTX3の過剰発現により、外来FGF2に反応して感染細胞が増殖する能力が有意に減少した(図1B)。一方、sCterm-PTX3の過剰発現によっては、対照EGFP感染細胞と比較して抑制は起こらなかった。
【0079】
Nterm-PTX3がFGF2アンタゴニストとして作用する能力をさらに評価するために、感染MAE細胞の条件培地を、FGF2依存性の内皮GM7373細胞増殖を引き起こす能力について評価した(図1C)。Nterm-PTX3感染またはPTX3感染MAE細胞の条件培地の存在下においてGM7373細胞をFGF2とともにインキュベーションすると、予想通り、増殖因子の分裂促進活性が有意に抑制され、一方、sCterm-PTX3感染およびEGFP感染MAE細胞の条件培地ではその効果はなかった(図1C)。10%FCS誘発性のGM7373細胞増殖は、どの条件培地によっても有意に抑制されず、これにより抑制効果の特異性が確認された。
【0080】
Nterm-PTX3のFGF2アンタゴニスト活性が、増殖因子と直接相互作用するNterm-PTX3の能力に依ることを確認するために、形質転換大腸菌細胞から、Nterm-PTX3を組換え6xHisタグ化タンパク質として発現させて精製し;精製組換え6xHisタグ化Cterm-PTX3を対照として用いた(図2A、挿入図)。FGF2相互作用について評価したところ、完全長PTX3および組換えNterm-PTX3フラグメントは、非組織培養プラスチックに固定化したFGF2への結合能を示した。一方、組換えCterm-PTX3においては相互作用は観察されなかった(図2A)。従って、10倍モーラー過剰の組換えNterm-PTX3または完全長PTX3は、固定化FGF2へのビオチン化PTX3(bPTX3)の結合を妨げたが、Cterm-PTX3は妨げなかった(図2B)。
【0081】
まとめると、これらの結果は、PTX3のN末端領域がFGF2と相互作用することを示している。
【0082】
モノクローナル抗Nterm-PTX3抗体によるFGF2/PTX3相互作用の阻害
ウェスタンブロット分析において、ヒト完全長PTX3に対して産生した一連のラットモノクローナル抗体のスクリーニングにより、組換えNterm-PTX3およびCterm-PTX3にそれぞれ選択的に結合する、抗体、mAb-MNB420(MNB4カタログ番号ALX-804-464, Alexis Biochemicals)およびmAb-16B510(MNB1カタログ番号ALX-804-463, Alexis Biochemicals)を同定した(図3A)。
【0083】
前記の2つの抗体により認識されるPTX3エピトープをマッピングするために、発明者らはSPOT合成技術23を利用して、完全ヒトPTX3配列にまたがる128の重複13-merペプチドをセルロース膜上に配列した。2つのモノクローナル抗体により膜を探索したところ、免疫複合体検出により、mAb-MNB4はPTX3のN末端伸長部に存在するエピトープPTX3(87-99)を認識し、一方、mAb-16B5はPTX3のC末端領域に位置するエピトープPTX3(306-312)を認識することが明らかになった(図3B)。
【0084】
FGF2/PTX3相互作用に影響する能力について試験すると、過剰モーラーの遊離の非標識化PTX3と同様に、mAb-MNB4は、固定化FGF2へのbPTX3の結合可能性を妨げるが、mAb-16B5は妨げない(図4A)。ゆえに、mAb-MNB4は、内皮GM7373細胞において、FGF2が発揮する分裂促進活性を抑制する完全長PTX3の能力を無効にするが、一方mAb-16B5にはその効力はない(図4B)。このように、N末端PTX3(87-99)エピトープを認識するmAb-MNB4は、FGF2/PTX3相互作用を中和する。
【0085】
FGF2アンタゴニストとしての合成Nterm-PTX3関連ペプチド
PTX3のN末端伸長部におけるFGF2結合領域の特徴をさらに調べるために、発明者らは、中和を行うmAb-MNB4(上記を参照)により認識されるPTX3(87-99)エピトープを含有する合成ペプチドPTX3(82-110)とともに、Nterm-PTX3アミノ酸配列に部分的にまたがる3つの異なる合成ペプチドPTX3(31-60)、PTX3(57-85)およびPTX3(107-132)のFGF2アンタゴニスト活性を評価した(図5A)。
【0086】
初めの一連の実験において、固相結合アッセイにより、4つの合成PTX3フラグメントを、FGF2と相互作用する能力について評価した。図5Bに示すように、遊離のFGF2は、非組織培養プラスチック上に固定化されたPTX3(82-110)には結合するが、固定化PTX3(31-60)またはPTX3(57-85)には結合せず、固定化PTX3(107-132)とは制限された相互作用のみを示す。
【0087】
次に、表面プラズモン共鳴法を利用して4つのペプチドがFGF2/PTX3相互作用に影響する能力を評価した。結果は、FGF2(0.8μM)はBIAcoreセンサーチップに固定化されたPTX3に高効率で結合する(注射期間の最後の時点に350-400 RUが結合していた)ことを示している(図5C、上方のパネル)。ゼラチン被覆センサーチップには結合しないことから、相互作用の特異性が実証されている。また、段階的に増加する濃度のFGF2(0.1から1.1μM、図5C、下方のパネル)をPTX3表面全体に注入し、FGF2/PTX3相互作用の動力学的パラメーターを評価した。結合データは、解離速度定数(koff)が6 x 10−5 s−1および結合速度定数(kon)が0.2 x 103 s−1 M−1の相互作用が起こることを示しており、よって結果としてKd値は0.3 x 10−6 M−1となる。
【0088】
これに基づき、4つの合成PTX3ペプチドを、移動相のFGF2を捕捉して、これによりPTX3センサーチップとの相互作用を妨げる能力について評価した。図5Dに示すように、PTX3(82-110)では、PTX3表面へのFGF2の結合は、遊離の完全長PTX3において示された強さよりも30倍低い強さで、用量依存的に抑制される(ID50は、遊離のPTX3およびPTX3(82-110)ペプチドについてそれぞれ1.0μMおよび30μMである)。一方、同じ実験条件下において、PTX3(31-60)、PTX3(57-85)およびPTX3(107-132)ペプチドは抑制効果を発揮しなかった(図5Dおよび他の収集データ)。また、PTX3(82-110)と等しいアミノ酸組成を有するスクランブル合成ペプチド[sPTX3(82-110)、表1]は制限された抑制効果を示し(ID50>3000μM)(図5D)、これによりPTX3(82-110)の本来のアミノ酸配列は、FGF2相互作用において重要であることが示された。
【0089】
PTX3(82-110)ペプチドのFGF2への結合能を受けて、発明者らは、このペプチドがFGF2アンタゴニストとして作用する能力を評価することにした。内皮GM7373細胞において試験すると、完全長PTX3とPTX3(82-110)の両方が、外来FGF2が発揮する分裂促進活性を抑制し、一方、スクランブルPTX3(82-110)、PTX3(31-60)、PTX3(57-85)およびPTX3(107-132)ペプチドにはその効力はなかった(図5E)。用量−反応曲線により、PTX3(82-110)のFGF2アンタゴニスト活性は用量依存的であることが確認された(ID50はPTX3(82-110)およびPTX3についてそれぞれ30μMおよび30 nMであった)。
【0090】
PTX3のN末端伸長部における最小直鎖状FGF2結合性配列の同定
まとめると、上記のデータは、PTX3のN末端伸長部における直鎖状アミノ酸配列82-110は、FGF2相互作用において重要な役割を有することを示している。最小直鎖状FGF2結合性配列の同定を試みるにあたり、完全PTX3(82-110)配列にまたがる3つの重複合成ペプチド、PTX3(82-96)、PTX3(82-101)およびPTX3(97-110)(図6Aおよび表1)を、固相結合アッセイにより、FGF2と相互作用する能力について評価した。同じ実験条件下において、遊離のFGF2は、固定化PTX3(97-110)ならびにその元であるPTX3(82-110)および完全長PTX3と結合するが、PTX3(82-96)またはPTX3(82-101)とは相互作用しない(図6B)。ゆえに、PTX3(97-110)は移動相においてFGF2と結合し、これによりBIAcoreセンサーチップに固定化されたPTX3とFGF2との相互作用が妨げられる(図6C)。PTX3(97-110)の抑制活性はその元であるペプチドPTX3(82-110)により示された活性と同程度であり、一方、PTX3(82-96)およびPTX3(82-101)は効力がなかった(図6C)。これらの観察と一致して、PTX3(97-110)は、内皮GM7373細胞においてFGF2が発揮する分裂促進活性を抑制するが、PTX3(82-96)またはPTX3(82-101)は抑制しない(図6D)。
【0091】
ペプチドPTX3(97-110)にまたがる最小直鎖状FGF2結合性配列をさらに調べるために、発明者らは、BIAcoreセンサーチップに固定化された以下のより短いペプチドとFGF2との相互作用を測定することにより、それらのPTX3のFGF2への結合を分析した:PTX3(97-107)、PTX3(97-104)、PTX3(100-104)およびPTX3(100-110)(図6E)。ペプチドPTX3(97-107)およびPTX3(100-104)は、FGF2に対して有意な結合を示した。対照的に、ペプチドPTX3(97-104)およびPTX3(100-110)は、BIAcoreセンサーチップに固定化されたPTX3への遊離のFGF2の結合を妨げなかった(図6E)。従って、PTX3(100-104)は、PTX3のN末端伸長部における、最小直鎖状FGF2結合性アミノ酸配列に相当するようである。従って、PTX3(100-104)はFGF2誘導性の内皮細胞増殖を抑制する。
【0092】
合成Nterm-PTX3関連ペプチドはFGF2の血管新生活性を阻害する
イン・ビボにおいてFGF2誘導性の新血管新生に影響を及ぼすNterm-PTX3関連ペプチドの能力を評価するために、FGF2のみ、またはFGF2とPTX3ペプチドを吸収させたゼラチンのスポンジを、11日齢のニワトリ胚のCAM上に移植した。図7に示すように、FGF2(16 pmol/胚)を吸収させたアルギン酸ビーズは、媒体を吸収させたビーズと比較して、強力な血管新生反応を導いた(巨視的に見た移植部へ収束する血管は、2つの実験群についてそれぞれ44±7および11±5血管/胚であった)。イン・ビトロにおける観察と一致して、イン・ビボにおけるFGF2依存性の血管新生反応は、FGF2移植に3.0 nmolのPTX3(82-110)ペプチドを加えることにより、有意に減少した(28±5血管/胚、ANOVAにおいてp<0.05)(図7)。上記観察に相応して、80 nmolのPTX3(97-110)は、FGF2により誘発された血管新生応答において50%の抑制を引き起こし;一方、PTX3(82-96)は効果を示さなかった。
【0093】
考察
発明者らはFGF2相互作用がPTX3のN末端伸長部により媒介されることを報告する。また、中和を行うモノクローナル抗体および合成PTX3関連ペプチドを用いて行った実験により、アミノ酸直鎖状配列PTX3(97-110)がこの相互作用の原因であることを確認した。これらの結果は以下の実験事実に基づいている:i)短いペントラキシンであるCRPおよびSAPは、これらの配列はPTX3 C末端と相同性を有するにもかかわらず7、FGF2結合剤として有効でない17;ii)レトロウイルスによるN末端フラグメント、PTX3(1-178)(Nterm-PTX3)の形質導入により、内皮細胞において外来FGF2が発揮する分裂促進活性が抑制されるが、sCterm-PTX3の導入では抑制されない;iii)組換えNterm-PTX3は、固定化FGF2に結合し、PTX3/FGF2相互作用を阻害するが、Cterm-PTX3ではこれらの事象は起こらない;iv)直鎖状エピトープPTX3(87-99)をマッピングしたモノクローナル抗体mAb-MNB4は、FGF2/PTX3相互作用を妨げ、内皮細胞におけるPTX3のFGF2アンタゴニスト活性を無効にする;v)合成ペプチドPTX3(82-110)およびより短いペプチド、PTX3(97-110)、PTX3(97-107)およびPTX3(100-104)は、FGF2へ結合することによりFGF2/PTX3相互作用を妨げ、これによりイン・ビトロにおけるFGF2依存性の内皮細胞増殖およびイン・ビボにおける血管新生が抑制されるが、PTX3のN末端の異なる領域に基づく他のペプチドではこれらの事象は起こらない。
【0094】
PTX3は、マクロファージ27、線維芽細胞9、筋芽細胞28、ミクログリア29および内皮細胞8により産生され、このことは、内皮においてパラ分泌および自己分泌作用を発揮し得ることを示している。同様に、炎症性メディエーター、IL-1および一酸化窒素30,31などの様々な刺激は、刺激の自己分泌ループを受ける内皮細胞において、FGF2の発現を誘導する。従って、内皮細胞および他の細胞種はPTX3およびFGF2の両方を発現し得る。このように、炎症細胞または内皮細胞自身により産生されるPTX3は、イン・ビトロおよびイン・ビボにおいて、内皮においてFGF2が発揮する自己分泌およびパラ分泌作用に影響を及ぼし得る。これにより、血管新生阻害物質および刺激物質の両方の産生を介して新血管新生の微調整が行われるはずである。
【0095】
FGF2は、内胚葉および中胚葉起源の様々な細胞種を刺激する多面的な増殖因子である32。従って、様々な病態生理学的条件においてFGF2が発揮する役割は、血管新生活性に限定されない。例えば、FGF2は、創傷の治癒過程における線維芽細胞の、およびアテローム性動脈硬化33,34および再狭窄35における平滑筋細胞の遊走および増殖を刺激する。また、FGF2は、損傷した中枢神経系において神経細胞の生存およびグリア細胞の増殖を支持し得る36。これら全ての状況において、PTX3の同時産生37,38により、これらの細胞においてFGF2が発揮する活性が調節されている。実際に、PTX3は、イン・ビトロにおけるFGF2依存性の平滑筋細胞の活性化およびイン・ビボにおける動脈損傷後の内膜肥厚を抑制する18
【0096】
結論として、発明者らは、PTX3のN末端がFGF2相互作用に関与することを初めて実証した。PTX3は、自然免疫、炎症、マトリックス沈着およびメスの繁殖性に重複して関与する多機能性可溶性パターン認識受容体である。PTX3は、異なる分子特性を有する多数のリガンドと相互作用することにより多機能性活性を発揮する。
【0097】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】レトロウイルスを用いて形質導入したNterm-PTX3によるFGF2の分裂促進活性の抑制。(A)EGFP、ヒト完全長PTX3、sCterm-PTX3またはNterm-PTX3を含むレトロウイルスに感染したネズミ大動脈内皮(MAE)細胞の条件培地のウェスタンブロット分析。sCterm-PTX3レーンに存在する2つの免疫反応性バンドは、組換えタンパク質のグリコシル化および非グリコシル化型に相当する10。(B)レトロウイルスが感染したMAE細胞をFGF2(0.55 nM)により刺激した。48時間後、細胞をトリプシン処理し、計数した。データは、偽感染させたFGF2処理細胞において観察された増殖(0.8細胞集団倍加)に対する比率(%)として表している。(C)感染MAE細胞からの条件培地とともにGM7373細胞をインキュベートし、0.55 nM FGF2により即座に処理した。24時間後、細胞をトリプシン処理し、計数した。データは、新しい培地にFGF2を足した培地においてインキュベートしたGM7373細胞において観察された増殖(1.0細胞集団倍加)に対する比率(%)として表している。BおよびCにおいて、データは、3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。
【0099】
【図2】組換えNterm-PTX3によるFGF2/PTX3相互作用の抑制。(A)形質転換大腸菌細胞から、組換え6xHis-タグ化Nterm-PTX3およびCterm-PTX3を発現させ精製した(挿入図は、精製タンパク質を流したSDS-PAGEゲルの銀染色を示す)。次いで、FGF2被覆ウェルを完全長PTX3、Nterm-PTX3またはCterm-PTX3(全て44 nM)とともに30分間37℃にてインキュベートした。材料と方法に記載のウサギポリクローナル抗PTX3抗体とともにインキュベーションすることにより、固定化FGF2に結合したタンパク質の相対量を免疫検出した。(B)FGF2被覆ウェルを、10倍モーラー過剰の完全長PTX3、Nterm-PTX3またはCterm-PTX3の存在下または非存在下において、ビオチン化PTX3(bPTX3, 22 nM)とともにインキュベートした。次いで、固定化FGF2に結合したbPTX3の量を測定し、データを競合者の非存在下において測定した結合に対する比率(%)として表した。全てのデータは、3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。
【0100】
【図3】PTX3エピトープマッピング。(A)完全長PTX3、Nterm-PTX3およびCterm-PTX3(200 ng/レーン)を、モノクローナル抗体mAb-MNB4およびmAb-16B5を用いたウェスタンブロットにより分析した。(B)完全ヒトPTX3配列にまたがる128の重複13-merペプチドをSPOT-合成技術によりセルロース膜上に配列した。次いで、膜をmAb-MNB4(黒の棒グラフ)およびmAb-16B5(灰色の棒グラフ)抗体により探索し、膜の濃度測定分析により免疫複合体を定量化した。前記2抗体により認識されたPTX3ペプチドのアミノ酸配列を一文字コードの下線を引いたイタリック体として示す。
【0101】
【図4】mAb-MNB4はFGF2/PTX3相互作用を妨害する。(A)FGF2被覆したウェルを、完全長PTX3、mAb-MNB4またはmAb-16B5(全て220 nM)の存在下または非存在下において22 nM bPTX3とともにインキュベートした。次いで、固定化FGF2に結合したbPTX3の量を測定し、データを、競合者の非存在下において測定された結合に対する比率(%)として表した。(B)mAb-MNB4またはmAb-16B5(両方とも2.2μM)の存在下または非存在下において、FGF2(0.55 nM)とPTX3(220 nM)とともにGM7373細胞をインキュベートした。24時間後、細胞をトリプシン処理し、計数した。データは、FGF2のみとインキュベートしたGM7373細胞において観察された増殖に対する比率(%)として表している。全てのデータは、3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。
【0102】
【図5】合成PTX3ペプチドによるFGF2/PTX3相互作用の阻害。(A)ヒトPTX3 N末端および関連する合成PTX3ペプチドの略図。(B)示したPTX3ペプチド(200μg/ウェル)により被覆したウェルに、FGF2(80 nM)を加え、結合したFGF2の量を評価した。データは、PTX3被覆ウェルに結合したFGF2の量に対する比率(%)として表しており、これらは3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。(C)上方のパネル:FGF2(0.8μM)をPTX3被覆またはゼラチン被覆BIAcoreセンサーチップ全体に注入した。下方のパネル:段階的に増加させた量のFGF2(0.1、0.5、0.8および1.1μM)の固定化PTX3への結合を示すセンサーグラムオーバーレイ。反応を(RU、レゾナンスユニットとして)時間の関数として記録した。D)段階的に増加させた濃度の完全長PTX3(黒い四角)または合成ペプチドPTX3(82-110)(黒丸)、スクランブルPTX3(82-110)(白丸)、またはPTX3(57-85)(白い四角)の存在下、FGF2(0.8μM)をPTX3被覆BIAcoreセンサーチップ全体に注入した。注入の終了時に反応を記録し、アンタゴニスト濃度の関数としてプロットした。各ペプチドについて、2-3の独立した実験において同様の結果が得られた。(E)PTX3(220 nM)または示したPTX3ペプチド(全て66μM)の存在下または非存在下において、GM7373細胞をFGF2(0.55 nM)とともにインキュベートした。データは、FGF2のみとインキュベートしたGM7373細胞において観察された増殖に対する比率(%)として表しており、これらは3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。
【0103】
【図6】FGF2アンタゴニストとしてのPTX3(97-110)ペプチド。(A)各ペプチドをまたがるPTX3(82-110)の略図。(B)示したPTX3ペプチド(200μg/ウェル)により被覆したウェルをFGF2(80 nM)とともにインキュベートし、結合したFGF2の量を評価した。データは、PTX3被覆ウェルに結合したFGF2の量に対する比率(%)として表しており、これらは3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。(C)段階的に増加させた濃度のPTX3(82-110)(黒丸)、PTX3(97-110)(白丸)、PTX3(82-101)(黒い四角)またはPTX3(82-96)(黒い三角)の存在下において、FGF2(0.8μM)をPTX3被覆BIAcoreセンサーチップ全体に注入した。注入の終了時に反応を記録し、アンタゴニスト濃度の関数としてプロットした。各ペプチドについて、2-3回の独立した実験において同様の結果が得られた。(D)示したPTX3ペプチド(全て66μM)の存在下または非存在下において、GM7373細胞をFGF2(0.55 nM)とともにインキュベートした。データは、FGF2のみとインキュベートしたGM7373細胞において観察された増殖に対する比率(%)として表しており、これらは3回独立して繰り返した実験の平均±SDである。(E)段階的に増加させた濃度のPTX3(97-110)(丸)、PTX3(100-110)(丸)、PTX3(97-104)(上向きの三角)、またはPTX3(97-107)(下向きの三角)、PTX3(104-113)(菱形)、PTX3(100-113)(上向きの三角)、PTX3(100-104)(四角)の存在下において、FGF2(0.8μM)をPTX3被覆BIAcoreセンサーチップ全体に注入した。注入の終了時に反応を記録し、アンタゴニスト濃度の関数としてプロットした。各ペプチドについて、2-3回の独立した実験において同様の結果が得られた。
【0104】
【図7】PTX3(82-110)ペプチドの抗血管新生活性。ニワトリ胚の絨毛尿膜(CAM)に、媒体(a)または16pmolのFGF2(3 nmolのPTX3(82-110)の非存在下(b)または存在下(c)において)を含有するアルギン酸ビーズを11日目に移植し、14日目に撮影した。原倍率、x 5。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IのFGF2結合性ペプチド、またはその医薬上許容される塩:
R1-Ala-X1-Pro-X2-Ala-R2
(I)
[式中、
X1は、ArgおよびLysから選択されるアミノ酸であり;
X2は、CysおよびThrから選択されるアミノ酸であり;
R1は、存在しないか、または配列番号1および配列番号3から選択されるアミノ酸配列からなり;
R2は、存在しないか、または配列番号2および配列番号4から選択されるアミノ酸配列からなり、
ただし、
R1が存在しない場合は、R2も存在せず;R1が配列番号1のアミノ酸配列である場合は、R2は配列番号2のアミノ酸配列であり;R1が配列番号3のアミノ酸配列である場合は、R2は配列番号2および配列番号4から選択されるアミノ酸配列である]。
【請求項2】
X1がArgである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
X2がCysである、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号10から選択されるアミノ酸配列からなる、上記請求項のいずれかに記載のペプチド。
【請求項5】
上記請求項のいずれかに記載のペプチドを含む、融合キメラペプチド。
【請求項6】
融合アミノ酸配列が、以下の群から選択されるヒトPTX3以外のタンパク質配列に属する、請求項5に記載の融合キメラペプチド:膜結合性タンパク質、膜結合性タンパク質の細胞外領域、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド含有タンパク質、移行シグナル含有タンパク質。
【請求項7】
上記請求項のいずれかに記載のペプチドを含む、コンジュゲートキメラペプチド。
【請求項8】
上記請求項のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸分子、またはその核酸分子とハイブリダイズする核酸分子、またはその縮重配列を含む核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
前記ペプチドが分泌されるまたは細胞の膜表面上に発現される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
医薬として用いるための、請求項1から7のいずれかに記載のペプチド。
【請求項13】
血管新生異常により引き起こされる疾患に対する抗疾患薬として用いるための、請求項1から7のいずれかに記載のペプチド。
【請求項14】
血管新生異常が増殖因子FGF2の活性変化により誘発される、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
疾患が、関節炎疾患、腫瘍転移、糖尿病性網膜症、乾癬、慢性の炎症、動脈硬化症および腫瘍からなる群から選択される、請求項13または14に記載のペプチド。
【請求項16】
腫瘍が、肉腫、癌腫、カルチノイド、骨腫瘍および神経内分泌腫瘍からなる群から選択される、請求項15に記載のペプチド。
【請求項17】
線維芽細胞または平滑筋細胞のFGF2依存性の無制御増殖、線維芽細胞の過剰反応に関係する瘢痕形成および血管形成後の再狭窄と関連する疾患に対する抗疾患薬として用いるための、請求項1から7のいずれかに記載のペプチド。
【請求項18】
治療上有効量の請求項1から7のいずれかに記載のペプチドおよび適切な希釈剤および/または賦形剤および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−523457(P2009−523457A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551712(P2008−551712)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000538
【国際公開番号】WO2007/085412
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(306032202)テクノジェン・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】TECNOGEN S.p.A.
【Fターム(参考)】