説明

FRPパイプの製造方法

【課題】成形すべきパイプの各部位に望ましい形態で樹脂を注入・含浸でき、目標とする大口径・長尺なFRPパイプを容易に効率よくかつ安価に製造可能な方法を提供する。
【解決手段】長尺の強化繊維シート基材を複数枚積層し、その上に可撓性中空中子を配置し、各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳んで端部同士をオーバーラップさせ、可撓性中空中子内包基材を横断面円形のキャビティを形成可能な成形型内に配置し、真空吸引ラインを介してキャビティ内から真空吸引することにより可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させるとともに該膨張に伴い基材をキャビティ内面に押し付け、真空吸引を継続しつつ2本の樹脂注入ラインを介してキャビティ内への樹脂注入を開始し、注入樹脂の真空吸引ラインへの到達を確認後真空吸引と樹脂注入を停止し、その状態に保持して樹脂を硬化させることを特徴とするFRPパイプの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大型(口径が0.3m以上、長さが2m以上)の繊維強化プラスチック(以下、FRP(Fiber reinforced Plastic) と言う。)製のパイプを効率よく安価に製造する方法に関する。とくに、大口径でかつ一般道路では搬送が困難なほどの長尺のパイプほど効果が大きいFRPパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FRPの成形方法として、成形型のキャビティ内に強化繊維基材(例えば、強化繊維織物の積層体)を配置し、キャビティ内にマトリックス樹脂を注入して樹脂を強化繊維基材に含浸させた後、樹脂を硬化させる、いわゆるRTM(Resin Transfer Molding)法が知られている。また、比較的大型のFRPを効率よく成形するために、成形型のキャビティ内を真空吸引し、そのキャビティ内の減圧状態と外部圧との差圧を利用してマトリックス樹脂を注入するようにした、いわゆるVaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法も知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、FRP製パイプを製造する場合、中空の中子を使用し、その中子の外周に強化繊維基材を配置して成形型のキャビティ内に納め、その状態で例えば上記のようなVaRTM法によりFRPパイプを成形する方法も、一般的なFRP成形方法の範疇と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307463号公報
【特許文献2】特許第4104413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば従来のVaRTM法をそのまま採用して、例えば、直径が0.3〜数mでかつ長さが数m〜数百mの大口径・長尺FRPパイプを製造しようとすると、以下のような種々の問題が生じる。
【0006】
まず、例えば中空の中子を使用し、その中子の外周に強化繊維基材を配置して成形型のキャビティ内に納め、その状態で強化繊維基材に含浸させるためのマトリックス樹脂をキャビティ内に注入しようとすると、成形しようとするFRPパイプが大口径・長尺であるため、樹脂が長手方向または/および周方向の全域へ確実に回り込まず、成形に要求される所定の樹脂注入状態を得ることが困難になるおそれがある。樹脂注入が不十分であると、強化繊維基材への樹脂含浸も不十分となり、所望の大口径・長尺FRPパイプを製造できないことになる。
【0007】
また、中空の中子を使用し、その中子の外周に配置した強化繊維基材の所定部位に樹脂を隈なく行き渡らせるためには、前述のようなVaRTM法が好ましい方法と考えられるが、大口径で長尺のパイプの各部位について、真空による減圧部に順次樹脂を吸引・注入し、樹脂注入端を円滑に進めて樹脂をパイプ全周・全長にわたって適切に行き渡らせることは非常に困難なことが多い。
【0008】
さらに、中空中子の外周に、強化繊維基材を大口径・長尺FRPパイプの成形に適した形態で配置することにも、特別の工夫が要求されると考えられる。すなわち、中空中子の外周に単に何重にも強化繊維基材を巻いていくだけでは、目標とする大きな直径のFRPパイプに仕上げることは難しいと考えられる。また、強化繊維基材を数m〜数百mの長さにわたって所望のパイプ形態で中空中子の外周上に均等に緩みや皺が生じない状態で積層していくことも難しいと考えられる。
【0009】
そこで本発明の課題は、例えば、直径が0.3〜数mでかつ長さが数m〜数百mに及ぶ大口径・長尺FRPパイプを製造するに際し、成形すべきパイプの各部位に確実に望ましい形態で樹脂を注入・含浸させることができ、目標とする所定性能の大口径・長尺FRPパイプを容易に効率よくかつ安価に製造可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法は、(1)所定の幅を有し成形すべきFRPパイプの全長にわたってパイプ長手方向に延びる強化繊維シート基材を複数枚積層し、
(2)積層された基材の上に、可撓性中空中子をその中空部が収縮し全体がシート状になった状態で配置し、
(3)積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせて、可撓性中空中子を複数枚の基材で包み込み、
(4)可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を、横断面円形のキャビティを形成可能な成形型のキャビティ内に配置し、
(5)成形型のキャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられパイプ長手方向に延びる真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と前記積層された基材との間から真空吸引することにより、前記可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させるとともに該膨張に伴い可撓性中空中子の外周面上の前記積層された基材をキャビティ内面に押し付け、
(6)前記真空吸引を継続しつつ、キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられパイプ周方向における左右2箇所にてパイプ長手方向に延びる2本の樹脂注入ラインを介して、成形型の外部より導入される樹脂のキャビティ内への注入を開始し、
(7)注入された樹脂がキャビティ内面に沿ってパイプ周方向に流動し前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインに到達したことを確認した後、前記樹脂注入ラインを介しての樹脂注入および前記真空吸引ラインを介しての真空吸引を停止するとともに前記樹脂注入ラインおよび前記真空吸引ラインと成形型外部との連通を遮断し、
(8)その状態に保持して注入樹脂を硬化させる、
ステップを有することを特徴とする方法からなる。
なお、上記成形型は、少なくとも上、下型に分割された複数の型(場合によっては、上型や下型がさらに複数に分割されることもある)からなり、組み立てられた状態でのキャビティ内面の断面形状が円形である。また、両端部は、完全円板またはドーナッツ型円板からなり、上記上、下型とは接触部でシールされた構成となる。肉厚が薄いパイプの成形時は、両端部だけをフィルムによってバッグする場合もある。
【0011】
この大口径・長尺なFRPパイプの製造方法においては、まず、上記ステップ(1)において、例えば、平坦な、あるいは浅い凹状部を有する基材積層架台上にて、所定の幅を有する長尺の(成形すべきFRPパイプの全長にわたってパイプ長手方向に延びる)強化繊維シート基材を複数枚積層する。この段階では、長尺ではあるが平坦形状のシート基材を積層していくだけであるので、比較的容易に所定の作業を行うことができる。
【0012】
次に、上記ステップ(2)において、上記積層基材上に、可撓性中空中子をその中空部が収縮し全体がシート状になった状態で(つまり、環状に繋がってはいるが、上層と下層との2層に重ねられ、全体としてその2層積層のシート状の形態で)配置される。この段階でも、長尺ではあるが平坦なシート状態の可撓性中空中子を、上記積層基材上の所定位置に配置するだけであるから、比較的容易に所定の作業を行うことができ、かつ、積層基材に対する可撓性中空中子の位置決めも容易に精度良く行うことができる。ただし、次のステップ(3)の動作の一部とも重複するが、最内層(積層基材の最上層)に、予め可撓性中空中子を内蔵させておくことも可能である。
【0013】
次に、上記ステップ(3)において、上記積層された各基材の幅方向両側部分を順次可撓性中空中子側に折り畳んでいき、可撓性中空中子を複数枚の基材で包み込む。このとき、各基材の幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるようにする。このオーバーラップ部を設けておくことにより、後の可撓性中空中子を横断面円形になるように膨張させる際に、その外周に配置されている各基材のオーバーラップ部の基材端部同士が適宜自動的にずれ、基材の周長が不足して基材端間に隙間が生じることが回避される。
【0014】
次に、上記ステップ(4)において、上記可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を、横断面円形のキャビティを形成可能な成形型(例えば、上型と下型とからなる成形型)のキャビティ内に配置する。この段階では、可撓性中空中子も積層基材も未だ折り畳まれた状態にある。
【0015】
次に、上記ステップ(5)において、上記成形型のキャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられパイプ長手方向に延びる真空吸引ライン(例えば、成形型のキャビティ面に露出するように加工された溝からなる真空吸引ライン)を介して、キャビティ内面と上記積層された基材との間から真空吸引することにより、上記可撓性中空中子の長手方向の端部(両端または片側)から流入される気体によって該可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させ、該膨張に伴って可撓性中空中子の外周面上に配置されていた上記積層基材をキャビティ内面に押し付ける。これにより、可撓性中空中子の外周面上の積層基材が、キャビティ内面に沿った形状、つまり、横断面が円形で所定の周長のキャビティ内面に押し付けられたパイプ形状になる。可撓性中空中子の外周に配置されている各基材は可撓性中空中子の膨張に伴って横断面円形になるように膨らむが、このとき、前述の如く、各基材のオーバーラップ部の基材端部同士が適宜自動的にずれるので、基材の周長が膨張した可撓性中空中子の周長に比べて不足しそれによって基材端間に隙間が生じる事態が生じることは回避され、パイプ周方向に連続して延びる積層基材の形態が保たれる。
【0016】
この状態にてステップ(6)においてFRPのマトリックス樹脂が注入される。すなわち、上記真空吸引ラインを介しての真空吸引を継続しつつ、キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられパイプ周方向における左右2箇所にてパイプ長手方向に延びる2本の樹脂注入ライン(例えば、成形型のキャビティ面に露出するように加工された溝からなる樹脂注入ライン)を介して、成形型の外部より導入される樹脂のキャビティ内への注入を開始する。樹脂は、真空吸引により減圧されたキャビティ内圧と、外部圧(大気圧に加え、後述の加圧状態も含む)との差圧によりキャビティ内に注入される。つまり、樹脂注入形態としては、いわゆるRTM法、あるいは、いわゆるVaRTM法を使用することになる。そして、樹脂は2本の樹脂注入ラインからキャビティ内に導入され、その2本の樹脂注入ラインの各ラインから左右のパイプ周方向にキャビティ内面に沿って注入されていく。左右のパイプ周方向に注入されていく樹脂は、実質的にパイプ半周分にわたって充満されればよいので、大口径のFRPパイプの成形であっても、確実にかつ容易に所定の樹脂充満状態を得ることが可能になる。また、パイプ口径が大きくて積層基材の厚みが厚く、注入樹脂の流動や含浸が遅かったり、困難な場合、積層基材の最内層や最外層の上に、樹脂流動抵抗の低い樹脂流動媒体(例えば、合成繊維製のメッシュ織物など)を配置することもある。
【0017】
次に、上記ステップ(7)において、上記注入された樹脂がキャビティ内面に沿ってパイプ周方向に流動し上記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインに到達したことを確認した後、上記樹脂注入ラインを介しての樹脂注入および上記真空吸引ラインを介しての真空吸引を停止するとともに上記樹脂注入ラインおよび上記真空吸引ラインと成形型外部との連通を遮断する。注入された樹脂が真空吸引ラインまで到達した状態では、上述の各パイプ半周分にわたる樹脂充満が完了した状態であるので(つまり、パイプ周方向に全周にわたって樹脂充満が完了した状態であるので)、膨張された可撓性中空中子の外周面上の積層基材に全体にわたって樹脂含浸可能な状態となる。実際には、上記樹脂注入と基材への樹脂含浸は同時進行する。このように所望の全体にわたる樹脂注入、樹脂含浸が完了した状態で、あるいは完了可能な状態になった時点で、真空吸引、樹脂注入が停止される。
【0018】
そして、ステップ(8)において、上記状態に保持して注入樹脂を硬化させる。その場合、硬化を促進させるために、成形型を何らかの手段で加熱してもよい。樹脂硬化により、所望の大口径・長尺FRPパイプの成形が完了し、成形されたFRPパイプが成形型から脱型される。可撓性中空中子は成形されたパイプの一部を構成してもよいが、該中空中子の再使用の観点から、基本的には成形されたFRPパイプの一部を構成するものではなく、FRPパイプ脱型後に、あるいはFRPパイプ脱型前に、可撓性中空中子の膨張状態を解除してFRPパイプ自体から離型させ、次の成形に使用すればよい。可撓性中空中子の外周面を離型容易な材質で形成したり、該外周面とFRPパイプ自体との間に離型シートや離型フィルムを介在させたりしておけば、より容易に離型させることが可能である。また、該離型シートや離型フィルムは、FRPパイプを成形型から脱型し易くするため、予め成形型のキャビティ内面に配置すればよい。
【0019】
このような本発明に係る大口径・長尺FRPパイプの製造方法においては、上記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインも、パイプ周方向における左右2箇所に設けられており、一方の真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と上記積層された基材との間のパイプ周方向における半周分から真空吸引し、他方の真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と上記積層された基材との間のパイプ周方向における残りの半周分から真空吸引するようにすることもできる。このようにすれば、真空吸引についても、樹脂注入に対応させて各パイプ半周分にわけて行うことができ、より望ましい真空吸引状態、樹脂注入状態を現出できる。
【0020】
また、上記キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられた2本の樹脂注入ラインから、上記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインに至る左右半周分の各キャビティ内面の途中部位に、パイプ長手方向に延び、注入樹脂が到達してくるまでは真空吸引ラインとして機能し樹脂到達後は成形型の外部より導入される樹脂の注入ラインに切り換え可能な真空吸引兼樹脂注入ラインが少なくとも一つ設けられており(各半周分に対して少なくとも一つ設けられており)、上記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引は継続しつつ、各真空吸引兼樹脂注入ラインに注入樹脂が到達した時点で該真空吸引兼樹脂注入ラインを真空吸引ラインから樹脂注入ラインに順次切り換えるようにすることもできる。このようにすれば、各半周分についてその途中位置まで注入樹脂が到達したことを確認した後、真空吸引兼樹脂注入ラインを真空吸引ラインから樹脂注入ラインに切り換えて、その途中位置から先の部位については真空吸引を継続しつつ切り換えられた樹脂注入ラインからも樹脂を注入することができるので、注入樹脂が到達しにくい部位が生じるのを回避できる。したがって、とくに大口径のFRPパイプの成形において、キャビティ内面に沿って進む注入樹脂の先端部を、より確実にかつより円滑に先に進めることができるようになり、より確実にパイプ周方向全周にわたって樹脂を注入、充満できるようになる。
【0021】
また、上記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引を継続しつつ樹脂を注入し、該真空吸引ラインに到達した樹脂に空気混入が無くなったことを確認後、真空吸引および樹脂注入を停止するようにすることもできる。このようにすれば、最上部に設けられた真空吸引ラインへの樹脂到達に加え、その到達樹脂中に空気混入が無いことまで確認されるので(つまり、注入された樹脂の先端部にて、樹脂が空気混入の無い極めて良好な状態にてその位置までの導入が完了したことが確認されるので)、ボイド等の無い状態での樹脂硬化が可能になる。
【0022】
あるいは、上記キャビティ内への樹脂注入が終了した後、成形型の外部より導入される樹脂のキャビティ内への注入を停止し、前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引によるキャビティ内からの樹脂吸引を所定の樹脂量になるまで継続した後、該真空吸引ラインを介しての吸引を停止するようにすることもできる。すなわち、上記真空吸引ラインによる真空吸引を継続すれば、キャビティ内に注入されていた樹脂はその真空吸引ラインに向けて吸引されキャビティ内からある樹脂量吸い出されることになるが、そのキャビティ内からの樹脂吸引が所定の樹脂量(吸引樹脂量)になるまで継続され、同時に可撓性中空中子は微小ながら膨張するので、キャビティ内における基材への樹脂含浸量が低減され、最終的に成形されるFRPパイプにおける繊維体積含有率(Vf)が意図的に増大されることになる。このような動作は、次のようにVf向上の目的で行われる。すなわち、普通にVaRTM成形すると、キャビティ内の内圧について樹脂注入当初(即ち、樹脂が充満する前)は真空度が高いが、樹脂注入が相当進んだ段階、例えば樹脂が充満してきて完全に含浸が完了した段階では、真空吸引部での吸引は継続しているので完全に大気圧までには低くはならないが、既に充満している樹脂のために吸引の効率が低下してかなり真空度が下がった状態となり、樹脂リッチな状況(Vfが低い状況)になるおそれがある。そこで、樹脂注入側を閉鎖した状態で、真空吸引側から充満した樹脂を吸い出して所望のVfにコントロールする(VFを上げる)ことを目的とした動作である。
【0023】
また、本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法においては、上記成形型を下型と上型から構成し、下型上に可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を配置後、上型を閉じて両型間を真空シールするようにすることができる。つまり、両型間をO−リングやシールテープなどで完全にシールし、型間の隙間から空気が出入りしないようにして、上述の真空吸引、樹脂注入をより確実に行わせる。
【0024】
また、本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法においては、基本的にはVaRTM成形を行うものであるから、上記可撓性中空中子の中空部は空気の出入り自在に形成されており、可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させる際に、該可撓性中空中子の端部より中空部内にキャビティ内の空気を導入させるようにする。しかし、可撓性中空中子の中空部は空気の出入り自在に形成されているが、可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させる際に、該可撓性中空中子の中空部内に加圧気体を注入するようにすることもできる。このようにすれば、注入された加圧気体により、可撓性中空中子をキャビティ内面に向けてさらに膨張させることができ、それによって成形型のキャビティ内面と可撓性中空中子の間隔を望ましい間隔に固定すること、すなわち、上述した繊維体積含有率(Vf)が高いFRPパイプの製造が可能になり、大口径の成形であっても、FRPパイプの強度向上や成形精度向上等に寄与できる。
【0025】
また、本発明に係る大口径・長尺FRPパイプの製造方法においては、基本的にはVaRTM成形を行うものであるから、成形型の外部より導入される樹脂をキャビティ内に注入するに際し、例えば、注入樹脂を収容した樹脂タンクにかかる大気圧と、上述の真空吸引による真空圧との差圧を利用して樹脂を注入することができる。しかし、成形型の外部より導入される樹脂をキャビティ内に注入するに際し、加圧樹脂を注入するようにすることもできる。このようにすれば、加圧された樹脂がより確実にキャビティ内面に沿って注入されるようになる。ただし、この場合、キャビティ内面に向けて膨張されている可撓性中空中子が樹脂圧によって収縮されないよう、可撓性中空中子の中空部内圧との大小関係を考慮する必要がある。逆に言えば、可撓性中空中子の中空部内圧は、少なくとも樹脂加圧圧力と同等かそれ以上にする必要がある。樹脂の加圧注入については、例えば樹脂を樹脂注入機により加圧(例えば、最大で3kg/cm2 程度)して注入すればよい。また、その際、樹脂が真空吸引ラインに到達した後、全ての樹脂注入ラインや真空吸引ラインを閉鎖し、暫くの間(例えば、数分〜数十分の間)樹脂を加圧したままにしてキャビティ内に樹脂の静水圧をかけておくことも可能である。このようにすれば、注入された樹脂の強化繊維基材へのより良好な含浸が期待できる。
【0026】
また、本発明に係る大口径・長尺FRPパイプの製造方法においては、上記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、オーバーラップ部のパイプ周方向長さを、成形すべきFRPパイプの直径等に応じて、例えば20mm以上200mm以下の範囲から設定すればよい。このように適切なオーバーラップ代に設定しておくことにより、可撓性中空中子の膨張に伴って積層基材が膨張される際にも、オーバーラップ部の基材端間に隙間が生じるような事態は防止できる。
【0027】
また、積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、積層方向に隣接する基材のオーバーラップ部の位置をパイプ周方向に互いにずらすことが好ましい。つまり、隣接基材のオーバーラップ部の位置が重ならないようにし、局所的に積層基材の厚みが不要に厚くならないようにする。この場合、全ての積層基材について、オーバーラップ部のパイプ周方向における位相をずらすことが好ましい。例えば、全層について、オーバーラップ部の位置が全く同じ位相にこないように、予めプログラミングしておくのが最適である。
【0028】
また、本発明に係る大口径・長尺FRPパイプの製造方法においては、上記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳んだ状態での各基材の周長を、可撓性中空中子の膨張完了後の状態での可撓性中空中子の周長よりも短くした状態にて、可撓性中空中子内包折り畳み基材を成形型のキャビティ内に配置するようにすることもできる。すなわち、強化繊維基材は、強化繊維が真直状態である場合が最も強度、弾性率が高い。積層基材は厚み方向(パイプ半径方向)外側にいくにしたがって当然に周長は長くなる。ただし、1プライの基材の厚みは通常1mm以下と非常に薄いので、各層の周長はほんの僅かしか違わない。そして、現実的に各基材層を規定の周長に合わせて中空中子を包み込んでいくことは困難である。そのため、規定の周長より長くなった層の基材は、緩みが発生して真直状態ではなくなるおそれがある。そこで、その緩みの回避策として、各層の基材で可撓性中空中子を包み込む際に、包み込んだ(折り畳んだ状態での)基材の周長を規定の周長より短くしておくと、可撓性中空中子が膨張する際に規定の周長まで膨らもうとするので、短い周長の基材のオーバーラップ部は可撓性中空中子の膨張力によってずれて、基材の緩みを抑制できるようになる。
【0029】
また、上記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、基材の少なくともオーバーラップ部に熱可塑性樹脂粒子を予め散布しておき、該熱可塑性樹脂粒子を加熱することによりオーバーラップされる基材の端部同士を仮止めするようにすることもできる。すなわち、オーバーラップ部に熱可塑性樹脂粒子を予め散布して固着させておき、基材を積層して折り畳む際に、アイロンやコテで点付けして仮止めしておくのである。このような仮止めにより、可撓性中空中子を内包した折り畳みを成形型のキャビティ内に搬送、配置する際や、可撓性中空中子が膨張して基材を押し上げていく際に、基材のズレやしわ等の発生を抑制することができる。
【0030】
また、上記可撓性中空中子を伸縮性を有するゴム製の中子から構成し、該ゴム製中子の初期外径を、成形すべきFRPパイプの内径の90%以上(かつ、成形すべきFRPパイプの内径未満)に設定しておくこともできる。すなわち、伸縮性を有するゴム製中子とする場合にも、成形のための膨張時間が永くなりすぎないようにするため、大きな膨張代を見込んでおく必要はない。あるいは、可撓性中空中子を樹脂フィルム(例えば、熱可塑性樹脂フィルム)のシートを熱融着して筒状に形成した中子から構成し、該フィルムシート熱融着中子の初期外径を、成形すべきFRPパイプの内径と同径かそれ以上に設定しておくこともできる。すなわち、フィルムシート自体はほとんど伸びないので、成形すべきFRPパイプの内径と同径かそれよりも少し大きな初期外径としておき、緩みやしわ等が発生した場合にあっても所定の膨張径まで確実に膨張できるようにしておく。
【0031】
また、本発明に係る大口径・長尺FRPパイプの製造方法においては、上述したキャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインと、キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられた2本の樹脂注入ラインとを、上下方向における位置を逆転させた成形型を用いることもできる。すなわち、成形型の下側から真空吸引し、成形型の上側から樹脂注入してもよい。また、可撓性中空中子の中空部を加圧したり、注入する樹脂を加圧したりしない、いわゆる完全な真空RTM(VaRTM)成形方法で該パイプ成形を行う場合は、上型は用いず、その代わりに、下型に可撓性中空中子を内包する積層基材を配設後、所定の寸法のフィルムでバギングして成形することもできる。
【0032】
さらに、本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法においては、上記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳んで可撓性中空中子を複数枚の基材で包み込むまでの工程を、前記成形型とは別の作業台(基材積層架台)上で行い、そこから、可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を成形型内に移送するようにすることができる。可撓性中空中子を内包した折り畳み基材の成形型内への移送は、自動搬送とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法によれば、従来方法では成形が困難なほど大口径でかつ長尺のFRPパイプを成形するに際し、成形すべきパイプの各部位に確実に望ましい形態で樹脂を注入・含浸させることができ、目標とする所定性能の大口径・長尺FRPパイプを複雑な工程を伴うことなく複雑な装置を必要とせずに容易に効率よくしかも安価に製造することができる。その結果、成形品の使用場所近くで、一般道路では搬送が困難なほどの大型のFRPパイプの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施態様に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法における可撓性中空中子および強化繊維シート基材の積層状態を示す概略横断面図である。
【図2】図1の積層における基材端部のオーバーラップ状態の例を示す概略横断面図である。
【図3】成形型内に配置された可撓性中空中子内包基材の中子膨張前の状態を示す概略横断面図である。
【図4】成形型内に配置された可撓性中空中子内包基材の中子膨張後の状態および樹脂注入の状態を示す概略横断面図である。
【図5】本発明の実施に用いる大口径・長尺なFRPパイプの製造装置の一例を示す概略平面図である。
【図6】図5の装置のパイプ横断面方向に見た概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施態様に係る大口径・長尺なFRPパイプ(直径約1m、長さ約20m、肉厚約4mm)の製造方法を示している。先ず、図5、図6に示す大口径・長尺なFRPパイプの製造装置1の全体を参照するに、所定の幅を有し成形すべきFRPパイプの全長にわたってパイプ長手方向に延びる強化繊維シート基材2が、強化繊維基材クリール3から繰り出され、繰り出された複数枚の強化繊維シート基材2が、基材積層架台4上で所定形態に積層される。積層された基材2の上に、可撓性中空中子5が、その中空部が収縮し全体がシート状になった状態で配置される。そして、基材積層架台4上で、図1、図2に示すように、積層された各基材2の幅方向両側部分を可撓性中空中子5側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせて、可撓性中空中子5を複数枚の基材2で包み込む。可撓性中空中子5は、前述の如く、ゴム製中子や、フィルムシート熱融着中子に形成されている。オーバーラップ部6、7の位置は、成形すべきFRPパイプの周方向に位相をずらすことが好ましい。また、オーバーラップ長(オーバーラップ部6、7のパイプ周方向長さ)L1、L2は、前述の如く20mm以上200mm以下に設定すればよい。因みに、強化繊維シート基材2は、東レ株式会社製炭素繊維”T300”平織物(目付:300g/m2 )を12層積層したものである。
【0036】
基材積層架台4上で図1、図2に示したように所定の形態に可撓性中空中子5を内包した折り畳み基材8は、図3に示すように、横断面円形のキャビティ9を形成可能な成形型10のキャビティ9内に移送されて配置される。移送は、例えば自動搬送によることが好ましい。本実施態様では、成形型10は、下型11と上型12で構成され、下型11上の所定位置に可撓性中空中子内包基材8が配置された後、チェーンブロック13等を用いて上型12が閉じられる。このとき、下型11と上型12との間は、例えばO−リング31で真空シールされる。図3に示す状態では、可撓性中空中子内包基材8は未だ折り畳まれたままである。
【0037】
図3の状態から図4の状態への動作を説明する。成形型10のキャビティ9内面の少なくとも最上部に設けられパイプ長手方向(図3、図4における紙面と垂直の方向)に延びる真空吸引ライン14a、14b(本実施態様では、パイプ周方向における左右2箇所にてパイプ長手方向に延びる2本の真空吸引ラインが設けられている。)を介して、キャビティ9内面と積層基材8との間から、真空吸引ライン14a、14bに接続された真空ポンプ15を用い、樹脂トラップ16を介して真空吸引することにより、可撓性中空中子5がキャビティ9内面に向けて膨張される。同時に、可撓性中空中子5の膨張に伴いその外周面上に配置されている積層基材8がキャビティ9内面に押し付けられる。
【0038】
可撓性中空中子5がキャビティ9内面に向けて所定の形態に膨張された状態に維持され、上記真空吸引が継続されつつ、キャビティ9内面の少なくとも最下部に設けられパイプ周方向における左右2箇所にてパイプ長手方向に延びる2本の樹脂注入ライン17a、17bを介して、成形型10の外部より導入される樹脂貯槽18中の樹脂19のキャビティ9内への注入が開始される。上記真空吸引ライン14a、14bと樹脂注入ライン17a、17bの上下方向の位置は、逆転してもよいので、図6には上下逆転した位置にて示してある。
【0039】
注入された樹脂がキャビティ9内面に沿ってパイプ周方向に流動し(図4においては、パイプ周方向の左右半周分にわたって下方から上方に向かって流動し)、キャビティ9内面の最上部に設けられた真空吸引ライン14a、14bに到達したことを確認(樹脂トラップ16等で確認可能)した後、樹脂注入ライン17a、17bを介しての樹脂注入および真空吸引ライン14a、14bを介しての真空吸引が停止されるとともに樹脂注入ライン17a、17bおよび真空吸引ライン14a、14bと成形型10外部との連通が図示を省略したバルブ操作等により遮断される。十分に樹脂が注入され、注入された樹脂が十分に基材8に含浸された状態が保持されて、注入樹脂が硬化される。樹脂硬化は、常温硬化、加熱硬化のいずれも可能である。樹脂が硬化することにより、所定の大口径・長尺FRPパイプの成形が完了する。
【0040】
本実施態様では、キャビティ9内面の最下部に設けられた樹脂注入ライン17a、17bから最上部に設けられた真空吸引ライン14a、14bに至る左右半周分の各キャビティ9内面の途中部位に、パイプ長手方向に延び、注入樹脂が到達してくるまでは真空吸引ラインとして機能し樹脂到達後は成形型の外部より導入される樹脂の注入ラインに切り換え可能な真空吸引兼樹脂注入ライン21a、21b、22a、22bが少なくとも一つづつ(図示例では、左右2つづつ)設けられている。そして、最上部に設けられた真空吸引ライン14a、14bを介しての真空吸引は継続しつつ、各真空吸引兼樹脂注入ライン21a、21b、22a、22bに注入樹脂が到達した時点で該真空吸引兼樹脂注入ライン21a、21b、22a、22bが真空吸引ラインから樹脂注入ラインに順次切り換えられる。例えば、代表して図4に真空吸引兼樹脂注入ライン22aについて切り替えの様子を示すように、真空吸引兼樹脂注入ライン22aの部分に樹脂注入ライン17bからの注入樹脂が到達するまでは、真空吸引兼樹脂注入ライン22aはバルブ23を開きバルブ24を閉じることにより真空吸引ラインとして利用され、注入樹脂が到達した時点で、真空吸引兼樹脂注入ライン22aはバルブ23を閉じバルブ24を開くことにより樹脂注入ラインとして利用される。その上位に位置する真空吸引兼樹脂注入ライン22bについても同様に注入樹脂が到達した時点で真空吸引ラインから樹脂注入ラインに切り換えられる。真空吸引兼樹脂注入ライン21a、21b側についても同様に、注入樹脂が到達した時点で真空吸引ラインから樹脂注入ラインに順次切り換えられる。このように、キャビティ9内面に沿う樹脂流路を適宜分割し、分割された樹脂流路に対して樹脂の注入進行方向に順次真空吸引路から樹脂注入路に切り換えていくことにより、各分割樹脂流路に確実に樹脂を充満させることができ、最終的にキャビティ9内面に沿う樹脂流路の全長にわたって良好に樹脂を充満させることができる。換言すれば、とくに大口径のFRPパイプの成形において、キャビティ9内面に沿って進む注入樹脂の先端部を、より確実にかつより円滑に良好な状態にて先に進めることができるようになり、より確実にパイプ周方向全周にわたって樹脂を注入、充満できるようになる。
【0041】
なお、本発明においては、図4に2点鎖線で示すように、加圧ポンプ41を設け、可撓性中空中子5の中空部に導入される空気を加圧したり、加圧ポンプ42を設け、例えば樹脂貯槽18内を加圧して成形型10内へ加圧樹脂を注入したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る大口径・長尺なFRPパイプの製造方法は、あらゆる大口径・長尺FRPパイプの製造に適用でき、とくに、オイルライザー用掘削土石の搬送パイプ、海水淡水化用海水取水管、オイルライン用パイプ、ボーリング用掘削土石搬送ケーシングチューブ等の製造に好適なものである。
【符号の説明】
【0043】
1 大口径・長尺なFRPパイプの製造装置
2 強化繊維シート基材
3 強化繊維基材クリール
4 基材積層架台
5 可撓性中空中子
6、7 オーバーラップ部
8 可撓性中空中子内包基材
9 キャビティ
10 成形型
11 下型
12 上型
13 チェーンブロック
14a、14b 真空吸引ライン
15 真空ポンプ
16 樹脂トラップ
17a、17b 樹脂注入ライン
18 樹脂貯槽
19 樹脂
21a、21b、22a、22b 真空吸引兼樹脂注入ライン
23、24 バルブ
31 O−リング
41、42 加圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)所定の幅を有し成形すべきFRPパイプの全長にわたってパイプ長手方向に延びる強化繊維シート基材を複数枚積層し、
(2)積層された基材の上に、可撓性中空中子をその中空部が収縮し全体がシート状になった状態で配置し、
(3)積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせて、可撓性中空中子を複数枚の基材で包み込み、
(4)可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を、横断面円形のキャビティを形成可能な成形型のキャビティ内に配置し、
(5)成形型のキャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられパイプ長手方向に延びる真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と前記積層された基材との間から真空吸引することにより、前記可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させるとともに該膨張に伴い可撓性中空中子の外周面上の前記積層された基材をキャビティ内面に押し付け、
(6)前記真空吸引を継続しつつ、キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられパイプ周方向における左右2箇所にてパイプ長手方向に延びる2本の樹脂注入ラインを介して、成形型の外部より導入される樹脂のキャビティ内への注入を開始し、
(7)注入された樹脂がキャビティ内面に沿ってパイプ周方向に流動し前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインに到達したことを確認した後、前記樹脂注入ラインを介しての樹脂注入および前記真空吸引ラインを介しての真空吸引を停止するとともに前記樹脂注入ラインおよび前記真空吸引ラインと成形型外部との連通を遮断し、
(8)その状態に保持して注入樹脂を硬化させる、
ステップを有することを特徴とするFRPパイプの製造方法。
【請求項2】
前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインも、パイプ周方向における左右2箇所に設けられており、一方の真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と前記積層された基材との間のパイプ周方向における半周分から真空吸引し、他方の真空吸引ラインを介して、キャビティ内面と前記積層された基材との間のパイプ周方向における残りの半周分から真空吸引する、請求項1に記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項3】
前記キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられた2本の樹脂注入ラインから、前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインに至る左右半周分の各キャビティ内面の途中部位に、パイプ長手方向に延び、注入樹脂が到達してくるまでは真空吸引ラインとして機能し樹脂到達後は成形型の外部より導入される樹脂の注入ラインに切り換え可能な真空吸引兼樹脂注入ラインが少なくとも一つ設けられており、前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引は継続しつつ、各真空吸引兼樹脂注入ラインに注入樹脂が到達した時点で該真空吸引兼樹脂注入ラインを真空吸引ラインから樹脂注入ラインに順次切り換える、請求項1または2に記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項4】
前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引を継続しつつ樹脂を注入し、該真空吸引ラインに到達した樹脂に空気混入が無くなったことを確認後、真空吸引および樹脂注入を停止する、請求項1〜3のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項5】
前記キャビティ内への樹脂注入が終了した後、成形型の外部より導入される樹脂のキャビティ内への注入を停止し、前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインを介しての真空吸引によるキャビティ内からの樹脂吸引を所定の樹脂量になるまで継続した後、該真空吸引ラインを介しての吸引を停止する、請求項1〜3のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項6】
前記成形型を下型と上型から構成し、下型上に前記可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を配置後、上型を閉じて両型間を真空シールする、請求項1〜5のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項7】
前記可撓性中空中子の中空部は空気の出入り自在に形成されており、前記可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させる際に、中空部内にキャビティ内の空気を導入させる、請求項1〜6のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項8】
前記可撓性中空中子の中空部は空気の出入り自在に形成されており、前記可撓性中空中子をキャビティ内面に向けて膨張させる際に、該可撓性中空中子の中空部内に加圧気体を注入する、請求項1〜6のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項9】
成形型の外部より導入される樹脂をキャビティ内に注入するに際し、注入樹脂を収容した樹脂タンクにかかる大気圧と、前記真空吸引による真空圧との差圧を利用して樹脂を注入する、請求項1〜8のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項10】
成形型の外部より導入される樹脂をキャビティ内に注入するに際し、加圧樹脂を注入する、請求項1〜5、8のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項11】
前記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、オーバーラップ部のパイプ周方向長さを20mm以上200mm以下とする、請求項1〜10のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項12】
前記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、積層方向に隣接する基材のオーバーラップ部の位置をパイプ周方向に互いにずらす、請求項1〜11のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項13】
全ての積層基材について、オーバーラップ部のパイプ周方向における位相をずらす、請求項12に記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項14】
前記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳んだ状態での各基材の周長を、可撓性中空中子の膨張完了後の状態での可撓性中空中子の周長よりも短くした状態にて、可撓性中空中子内包折り畳み基材を成形型のキャビティ内に配置する、請求項1〜13のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項15】
前記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳み、幅方向両側部分の端部同士をオーバーラップさせるに際し、基材の少なくともオーバーラップ部に熱可塑性樹脂粒子を予め散布しておき、該熱可塑性樹脂粒子を加熱することによりオーバーラップされる基材の端部同士を仮止めする、請求項1〜14のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項16】
前記可撓性中空中子を伸縮性を有するゴム製の中子から構成し、該ゴム製中子の初期外径を、成形すべきFRPパイプの内径の90%以上に設定しておく、請求項1〜15のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項17】
前記可撓性中空中子を樹脂フィルムのシートを熱融着して筒状に形成した中子から構成し、該フィルムシート熱融着中子の初期外径を、成形すべきFRPパイプの内径と同径かそれ以上に設定しておく、請求項1〜15のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項18】
前記キャビティ内面の少なくとも最上部またはその近傍に設けられた真空吸引ラインと、前記キャビティ内面の少なくとも最下部またはその近傍に設けられた2本の樹脂注入ラインとを、上下方向における位置を逆転させた成形型を用いる、請求項1〜17のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。
【請求項19】
前記積層された各基材の幅方向両側部分を可撓性中空中子側に折り畳んで可撓性中空中子を複数枚の基材で包み込むまでの工程を、前記成形型とは別の作業台上で行い、そこから、可撓性中空中子を内包した折り畳み基材を成形型内に移送する、請求項1〜18のいずれかに記載のFRPパイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131523(P2011−131523A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294189(P2009−294189)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】