説明

FRP強化資材

【課題】軽量で機械的強度が高く耐候性に優れ、しかも、形状加工、搬送及び施工が容易で作業労力を軽減できるばかりでなく、修繕箇所に優れた美観を付与することができるFRP強化資材を提供する。
【解決手段】 ライニング基材として自然木を使用し、繊維強化樹脂層の上に設けられたトップコート樹脂層とにより構成する。とくに、自然木の繊維質に防腐剤を注入添加し、FRP樹脂を含浸あるいは塗布して硬化させたFRP(繊維強化樹脂)層を形成する。建築物用資材の代表的な加工形状としては、(a)板状、(b)角材、(c)丸太、(d)太鼓落とし、(e)二つ割り等が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタル構造物等の修繕に使用される資材に関し、とくに老朽・劣化したコンクリート部材のメンテナンス工事に使用して好適なFRP強化資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、農業用水路のコンクリートは、凍結と融解の反復、アルカリシリカ反応、水流による浸食・洗掘、砂礫などによる磨耗により壁面や底面が劣化し、数十年経過すると表面に窪みや亀裂が生じ、その破損箇所から漏水に及ぶ場合もある。従来、その修繕にあたってはモルタル等を塗布する方法が一般的に行われていた。
【0003】
また、建築物の屋上等に用いられるコンクリートやモルタル構造物に防水性を付与する手段として、FRP(繊維強化樹脂)層で被覆する方法が知られている。特にRC構造物で、撓み、曲げ応力が強く掛かる部分については、鉄筋の数倍の強度を有する炭素繊維又は炭素繊維強化プラスチックを接着して強化する方法も採用されている。
【0004】
他にも、建築物の屋上を防水する工法として、機械的強度が高く、かつ比重の小さい素材であるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーから成るシートを、防水シートとしてコンクリート下地面に敷設し、アンカー等の留め具によって固定し、この素材が熱可塑性である性状を生かしてシート重合部分の接合を熱融着により行う防水工法が行われている。そして、このポリオレフィン系熱可塑性エラストマーシートは、非常に安定した物性であるため単独で防水層として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、一方では、ドレン等の排水孔の周囲やコンクリート壁の立ち上がり面等の垂直部分は、重要な防水部位として、シートを下地全面に貼り付ける方法が依然として採られている。つまり、コンクリート下地上にプライマーを塗布し、接着剤をプライマー塗布面上及びシート接着面に塗布し、接着面の乾燥後貼り付けを行っている(例えば、特許文献2参照。)。同様に、特許文献3には、防水シートをテープ状接着剤によって下地上に接着する方法が提案されている。また、補修面にレジンコンクリートパネルを接着する補修方法も提案されている(特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−64522号公報
【特許文献2】特開2004−209702号公報
【特許文献3】特開2006−161500号公報
【特許文献4】特開平2009−174255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その中でもレジンコンクリートパネルを補修面に接着する方法は、高い耐久性が得られるばかりでなく、時間、経済性ともに合理的且つ効率的な改修方法といえる。しかしながら、繊維強化合成樹脂製のライニング板などは、補強繊維がガラス繊維等である場合、経年劣化により表面のコート樹脂がサンディングされたりしてガラス繊維等が露出して美観が損なわれ、また、露出したガラス繊維が損壊して飛散するといった問題点があった。しかも、劣化したレジンパネル自体に産業廃棄物処理上の課題が残る。そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、繊維質を有するライニング基材として木材が有用であることを見い出した。本発明は以上のような従来技術の課題に鑑み、軽量で機械的強度が高く耐候性に優れ、しかも、形状加工、搬送及び施工が容易で作業労力を軽減できるばかりでなく、修繕箇所に優れた美観を付与することができるFRP強化資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明のFRP強化資材は、自然木をライニング基材として、これにFRP(繊維強化樹脂)層を形成してなることを第1の特徴とし、自然木チップ又は粉末を圧縮固化させたライニング基材をFRP(繊維強化樹脂)層で被覆してなることを第2の特徴とし、FRP(繊維強化樹脂)製のケースに自然木チップ又は粉末を充填固化させてライニング基材となすことを第3の特徴とし、ライニング基材に防腐剤を添加したことを第4の特徴とし、自然木が間伐材であることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の優れた効果がある。
(1)軽量で機械的強度が高く耐候性に優れ、しかも、適用箇所に応じた種々の形状加工が容易にできる。
(2)搬送及び施工が容易にでき、作業労力を大幅に軽減できる。
(3)自然木の木目を生かして修繕部分に優れた美観を付与することができる。
(4)間伐材を使用することで、経済的に製造することができるばかりでなく、製品も含めて産業廃棄物処理上の問題解決の一助となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明に係るFRP強化資材の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るFRP強化資材の種々の外形パターンを示す斜視図である。
【図2】本発明に係るFRP強化資材を使用した用水路の改修部分を示す短手方向断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【0012】
本発明に係るFRP強化資材は、ライニング基材として自然木を使用し、繊維強化樹脂層の上に設けられたトップコート樹脂層とにより構成されるものである。とくに、自然木の繊維質に防腐剤を注入添加し、FRP樹脂を含浸あるいは塗布して硬化させたFRP(繊維強化樹脂)層を形成することによって、優れた防水性を発揮し得るものとなる。ライニング基材として自然木を使用することで、軽量で形状加工が容易にできる。例えば、図1に示すように、建築物用資材の代表的な加工形状としては、(a)板状、(b)角材、(c)丸太、(d)太鼓落とし、(e)二つ割り等が挙げられる。ライニング基材として用いられる木材は、杉や松といった樹種等は特に限定されないが、無垢材ばかりでなく、間伐材、木材チップ、鋸屑を集成したものでもよい。すなわち、これらを圧縮固化したり、FRP製のケースに充填固化したものでも所期の効果を得ることができる。また、その表面形状についても、構造物の壁面、天井、屋根等の適用箇所に応じて球面、曲面、斜面を持つものでもよい。ライニング基材には必要に応じ、繊維強化樹脂層を形成する前に予め下地処理、プライマー処理等を施しておくことが好ましい。
【0013】
本発明に係るパネル状のFRP強化資材やコーナー部のライナー(以下、単にプラ木パネル或いはプラ木ライナーと称する)を、例えば、農業用水路の補修に適用した場合を例に説明する。
【実施例】
【0014】
図2乃至図3に示すように、劣化して窪みが生じ凸凹になった農業用水路の修繕に際し、先ず、高圧水洗浄等で補修面の劣化コンクリート及び表面付着物を除去した後にコンクリート表面をモルタル4で平滑処理し、用水路壁面5及び用水路底面6を被覆するプラ木パネル1Aを接着する。尚、状況に応じて、固着状況の強弱に応じてアンカーピン2で打ち付けて固定してもよい。パネル1A同士の仕継ぎ部分は接着剤3でシールして水分の進入を防ぎ、コンクリートの劣化を防ぐこと、また、水路の流水等による磨耗や流木等による損傷からパネルを守る。アンカー2はパネルの自重による移動や浮遊を防ぐ、アンカー2も経年劣化を考慮すれば樹脂製にすることが好ましく、アンカー穿孔による空隙にはエポキシ樹脂等を充填するとよい。
【0015】
本実施例で使用するプラ木パネル1Aは、杉や松等の板状の自然木をライニング基材として、その表面にFRP(繊維強化樹脂)層を塗布して形成してなるもので、繊維強化樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が使用される。例えば、ゴーレックスEFシリーズ(商品名:岩尾株式会社製)が好適に使用でき、修繕対象に応じて適宜使い分けることができる。パネルサイズ(長さ)×(幅)は補修対象箇所に応じて適宜決定されるものであるが、経済性及び利便性を考慮すれば予め統一された規格サイズで製作するのがよい。また、厚みも限定されるものではないが、10mm程度で所期の耐久性は得られる。尚、水路の角隅部には、例えば、断面が略L字に曲げ成型されたプラ木ライナー1Bを使用することにより、防水性能を高めることができる。
【0016】
また、本発明に使用するエポキシ樹脂はモルタル及びコンクリート打継接着剤として使用するものである。無溶剤タイプのエポキシプライマーも使用できるが、湿潤接着性と塗布作業性の良いエポキシエマルジョンタイプが適する。コンクリート下地にローラー刷毛等で塗布し、コンクリート下地への浸透と水分の揮発をさせてからモルタル4をコテ塗りする。
【0017】
本発明で使用する接着剤3は壁面に塗布しても垂れ難いものが好ましい。そして下地となるモルタル面4とプラ木パネル1の接着面にゴムヘラや刷毛等で塗布する。アンカーピン2の打設によって生じる穿孔による空隙には低粘度又は中粘度の注入補修用エポキシ樹脂が使用できる。
【0018】
アンカーピン2は、ピンとヘッドで構成されるもので、鉄製でメッキされたもの、ステンレス製のもの、ピンはナイロン(ポリアミド)、ヘッドはステンレスのもの、ピンも樹脂のものなどがある。繊維強化樹脂層に用いられる繊維としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらの中でも特に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂が好ましい。前記不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、α、β−不飽和二塩基酸またはその無水物、あるいは、芳香族飽和二塩基酸またはその酸無水物と、グリコール類との重縮合により得られる(場合によっては、酸成分として、脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸を併用してもよい)不飽和ポリエステルを30〜80重量部を、α、β−不飽和単量体70〜20重量部に溶解して得られるものが挙げられる。前記ビニルエステル樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステルの末端をビニル変性したものや、エポキシ樹脂骨格の末端をビニル変性したものが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
例えば、宮崎県は、平成21年12月、県内約200キロの用水路機能診断調査設計業務を発注し、調査が始まり、現在その業務中で、いずれ情報公開、そして、2〜3年後から、予算化、部分補修工事開始の動きになるものと予想される。本発明のFRP強化資材は、日本農林規格に基づき防腐処理するもので、土木、建築、農林事業等に使用できる。尚、それ以外にも、浴槽、風呂の天井や壁、風呂桶、台所用品、台所フロアー、テーブル、什器、枡等の容器、ウッドデッキ等、室内生活製品にも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0020】
1A プラ木パネル(FRP強化資材)
1B プラ木ライナー(FRP強化資材)
2 アンカーピン
3 接着剤
4 モルタル
5 用水路壁面
6 用水路底面
7 壁面と底面の仕継ぎ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然木をライニング基材として、これにFRP(繊維強化樹脂)層を形成したことを特徴とするFRP強化資材。
【請求項2】
自然木チップ又は粉末を圧縮固化させたライニング基材をFRP(繊維強化樹脂)層で被覆してなることを特徴とするFRP強化資材。
【請求項3】
FRP(繊維強化樹脂)製のケースに自然木チップ又は粉末を充填固化させてライニング基材となすことを特徴とするFRP強化資材。
【請求項4】
ライニング基材に防腐剤を添加したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の強化資材。
【請求項5】
自然木が間伐材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の強化資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111196(P2012−111196A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264062(P2010−264062)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(508305258)日新興業株式会社 (4)
【出願人】(392030450)
【Fターム(参考)】